説明

セロトニン受容体アンタゴニストとしての1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの代謝産物

1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの代謝産物及び当該化合物の使用。本発明の代謝産物は式(II)に示す通りであり:(II)におけるR1、R2、及びR3については本明細書中に示す。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの哺乳動物代謝産物である化合物及びそれらの薬学的組成物、並びに例えば5−HT1アンタゴニストを必要とする疾患の処置方法における治療薬としての当該化合物の使用に関する。本発明の代謝産物は、5−HT1A受容体及び5−HT1B(以前は5−HT1Dに分類されていた)受容体の一方又は両方に結合する。これらはうつ病、不安、強迫性障害(OCD)及び5−HT1アゴニスト若しくはアンタゴニストを必要とするその他の障害の処置又は予防に有用であり、心臓への副作用、特にQTc延長の可能性を減少させる。
【背景技術】
【0002】
セロトニン1(5−HT1)受容体、特に5−HT1A受容体及び5−HT1B受容体の一方又は両方に対するアンタゴニストは、高血圧、全ての形態のうつ病(例えば、癌患者のうつ病、パーキンソン病患者のうつ病、心筋梗塞後のうつ病、亜症候性の症候性うつ病、不妊症女性のうつ病、小児うつ病、大うつ病性障害、単一エピソードのうつ病、反復性うつ病、児童虐待に誘発されるうつ病、分娩後うつ病、気分変調;非定型的特徴、メランコリー的特徴、精神病的特徴、緊張病的特徴を有する又はそれらを有さない、軽度、中程度、又は重度のうつ病;季節性感情障害、老人性うつ病、慢性うつ病;抑うつ気分を伴う適応障害又は不安及び抑うつ気分を伴う適応障害;不安・抑うつ共存型;物質誘発性気分障害;並びに一般的な病状に続発する気分障害)、双極性障害(抑うつ期の双極性障害を含む)、全般性不安障害、社会不安、分離不安障害、恐怖症(例えば、広場恐怖、社会恐怖、及び単純恐怖)、心的外傷後ストレス症候群、回避性人格障害、早漏、摂食障害(例えば、過食症、拒食症、及び神経性大食症)、肥満、薬物依存(例えば、アルコール、コカイン、ヘロイン、フェノバルビタール、マリファナ、ニコチン及びベンゾジアゼピンに対する嗜癖)、群発性頭痛、片頭痛、疼痛、アルツハイマー病、強迫性障害;広場恐怖を伴うパニック障害及び広場恐怖を伴わないパニック障害、記憶障害(例えば、痴呆、健忘障害、及び加齢性認知低下(ARCD))、パーキンソン病(例えば、パーキンソン病における痴呆、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群及び遅発性ジスキネジー)、内分泌障害(例えば、高プロラクチン血症)、血管痙攣(特に脳血管における血管痙攣)、小脳性運動失調、胃腸管障害(運動性及び分泌の変化を含む)、統合失調症の陰性症状、月経前症候群、線維筋痛症候群、緊張性尿失禁、ツレット症候群、抜毛癖、窃盗癖、男性不能症、癌(例えば、小細胞肺癌)、慢性発作性片頭痛、頭痛(血管障害関連)、自閉症、広汎発達障害NOS、アスペルガー障害、選択的無言症、慢性運動性又は音声チック障害、身体化障害、不眠症、間欠性爆発性障害、放火癖、病的賭博、衝動調節障害、月経前不快気分障害、並びに注意欠陥/過活動性障害(ADHD)、及び5−HT1アゴニスト又はアンタゴニストが必要とされるその他の障害の処置に有用である。
【0003】
欧州特許公報434,561(1991年6月26日公開)は、7−アルキル、アルコキシ、及びヒドロキシ置換−1−(4−置換−1−ピペラジニル)−ナフタレンに言及する。これらの化合物は、片頭痛、うつ病、不安、統合失調症、ストレス及び疼痛の処置に有用な5−HT1アゴニスト及びアンタゴニストであると述べられている。
欧州特許公報343,050(1989年11月23日公開)は、有用な5−HT1Aリガンド療法薬としての7−非置換、ハロゲン化、及びメトキシ置換−1−(4−置換−1−ピペラジニル)−ナフタレンに言及する。
【0004】
PCT公報WO94/21619(1994年9月29日公開)は、5−HT1アゴニスト及びアンタゴニストとしてのナフタレン誘導体に言及する。
PCT公報WO97/36867(1997年10月9日公開)及びWO98/14433(1998年4月9日公開)は、精神療法薬としての有用性を有する関連するベンジル(ベンジリデン)−ラクタム誘導体に言及する。
PCT公報WO96/00720(1996年1月11日公開)は、有用な5−HT1アゴニスト及びアンタゴニストとしてのナフチルエーテルに言及する。
PCT公報WO97/36867(1997年10月9日公開)及びWO98/14433(1998年4月9日公開)は、精神療法薬としての有用性を有する関連するベンジル(ベンジリデン)−ラクタム誘導体に言及する。
【0005】
欧州特許公報701,819(1996年3月20日公開)は、5−HT再取込阻害薬と組み合わせて5−HT1アゴニスト及びアンタゴニストを使用することに言及する。
Glennonらは、彼らの文献「5−HT1D Serotonin Receptors」,Drug DevRes.,22,25−36(1991)において有用な5−HT1リガンドとしての7−メトキシ−1−(1−ピペラジニル)−ナフタレンに言及する。
Glennonの文献「Serotonin Receptors:Clinical Implications」,Neuroscience and Behavioral
Reviews,14,35−47(1990)は、食欲抑制、体温調節、心血管/降圧効果、睡眠、精神病、不安、うつ病、悪心、嘔吐、アルツハイマー病、パーキンソン病及びハンティングトン病を含むセロトニン受容体に関連する薬理学的効果に言及する。
【0006】
国際特許出願WO95/31988(1995年11月30日公開)は、うつ病、全般性不安、パニック障害、広場恐怖、社会恐怖、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、記憶障害、拒食症及び神経性大食症、パーキンソン病、遅発性ジスキネジー、高プロラクチン血症等の内分泌障害、血管痙攣(特に脳血管における血管痙攣)及び高血圧、運動性及び分泌の変化を伴う胃腸管障害、並びに性機能障害等のCNS障害を処置するために5−HT1Aアンタゴニストと組み合わせて5−HT1Dアンタゴニストを使用することに言及する。
G.Maura et al.,J.Neurochem,66(1),203−209(1996)は、5−HT1A受容体に選択的又は5−HT1A受容体及び5−HT1D受容体の両方に選択的なアゴニストの投与が、治療法が確立していない多因性症候群であるヒト小脳性運動失調の処置において大きな改善を示し得ることを記載する。
欧州特許公報666,261(1995年8月9日公開)は、チアジン及びチオモルフォリン誘導体に言及し、これらが白内障の処置に有用であることをクレームしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一つの局面において、本発明は、式Iを有する1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの精製及び単離された代謝産物に関する。別の局面において、本発明は、式I、式II、及び/又は式II’を有する代謝産物に関する。本発明はまた、当該代謝産物の一つ又はそれ以上を利用する薬学的組成物;当該代謝産物の一つ又はそれ以上を用いて5−HT1アンタゴニストを必要とする疾患を処置する方法、及び当該代謝産物を標準として利用するアッセイに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実例において、そしてそれに限定されることなく、本発明は、式(I):
【化1】

を有する1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの精製及び単離された代謝産物、並びにそれらのラセミジアステレオマー混合物及び光学異性体、それらのプロドラッグ、並びに薬学的に許容できる該代謝産物の塩、ラセミジアステレオマー混合物、及び光学異性体に関する。式(I)に従う精製及び単離された代謝産物は、1−[6−(1−エチル−1,2−ジヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンである。
【0009】
別の実施態様において、本発明は、式(II):
【化2】

[式中、
1はH、OH、=O、O−グルクロニド、又はO−スルフェートであり;
2はH、OH、O−グルクロニド、又はO−スルフェートであり;
3はOH、O−グルクロニド、又はO−スルフェートであり、ただしR3がOHの場合、R1又はR2の少なくとも一方はOH、=O、O−グルクロニド、又はO−スルフェートである]
を有する1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの精製及び単離された代謝産物、それらのラセミジアステレオマー混合物及び光学異性体、それらのプロドラッグ、薬学的に許容できるそれらの塩、ラセミジアステレオマー混合物、又は光学異性体に関する。
【0010】
一つの実施態様において、式(II)の化合物は、式(II’):
【化3】

[式中のR1、R2、及びR3は、式(II)に示される通りである]
に示される立体化学を有する。
【0011】
一つの局面において、本発明は、一つ又はそれ以上の式(II)の代謝産物及び薬学的に許容できる担体;好ましくは一つ又はそれ以上の式(II’)の代謝産物及び薬学的に許容できる担体;より好ましくは式(I)の代謝産物を個別に又はそれらの任意の組み合わせとして、及び薬学的に許容できる担体を含む薬学的組成物に関する。
【0012】
別の実例において、本発明は、式(II);好ましくは式(II’);より好ましくは式(I)の代謝産物を個別に又はそれらの任意の組み合わせとして含む、1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの代謝的運命を評価するためのアッセイに関する。
【0013】
通常の技術を有する化学者は、本発明の特定の化合物が、特定の立体化学的、互変異性的、又は幾何学的な立体配置をとることで立体異性体、互変異性体、位置異性体、及び幾何異性体を生じ得る一つ又はそれ以上の原子を含み得ることを認識するはずである。このような異性体及びそれらの混合物は全て本発明に包含される。本発明の化合物の水和物及び溶媒化合物もまた包含される。
【0014】
本発明はまた、同位体で標識した化合物であって、一つ又はそれ以上の原子が自然界で通常見られる原子量又は質量数と異なる原子量又は質量数を有する原子で置換されているという事実を除けば、本発明に包含される他の化合物の中でも特に式I、II、及びII’に示される化合物と同一であるものを包含する。本発明の化合物中に組み込むことができる同位体の例として、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、35S等の、それぞれ、水素、炭素、窒素、酸素、及び硫黄の同位体が挙げられる。
【0015】
上述の同位体及び/又はその他の原子のその他の同位体を含有する、本発明の化合物、それらのプロドラッグ、及び当該化合物又はプロドラッグの薬学的に許容できる塩は、本発明の範囲内である。特定の同位体で標識された本発明の化合物、例えば3H及び14C等の放射性同位体が組み込まれた化合物は、薬物及び/又は基質の組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化(すなわち、3H)及び炭素−14(すなわち、14C)同位体は、それらの製造容易性及び検出性の点で特に好ましい。さらに、重水素(すなわち2H)等のより重い同位体による置換は、代謝安定性の向上、例えばインビボ半減期の増加又は投薬必要量の減少に起因する特定の治療的利点をもたらす場合があり、それ故いくつかの状況においては好ましい場合がある。同位体で標識された本発明の式I、II、及びII’の化合物及びそれらのプロドラッグは、一般的には、以下に例示する手順又は当該分野で公知の手順を実行することによって製造することができる。14C−1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンは、米国特許第5,552,412号に概説及び例示される方法において非同位体標識試薬を容易に入手できる同位体標識試薬で置換することによって製造することができる。
【0016】
実質的に純粋な形態の又は組成が既知の混合物中の1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの代謝産物は、インビトロ若しくはインビボの代謝研究における分析用標準として、又は新規化合物の化学的合成若しくは生合成における中間体として使用することができる。当該代謝産物は固体として単離され得るか、又は溶液中に単離され得る。
【0017】
また、本発明は、有効量の式II、より好ましくは式II’、最も好ましくは式Iの化合物又は薬学的に許容できるそれらの塩、及び薬学的に許容できる担体を含む、ヒトを含む哺乳動物における、うつ病、不安、不安を随伴するうつ病、気分変調、心的外傷後ストレス障害、パニック性恐怖症、強迫性障害(OCD)、ツレット症候群が併存するOCD、境界人格障害、睡眠障害、精神病、痙攣、運動異常、ハンチントン病又はパーキンソン病の症状、痙性、癲癇に起因する痙攣の抑制、脳虚血、食欲不振、失神発作、運動低下、頭蓋外傷、薬物依存、早漏、月経前症候群(PMS)に関連する気分障害及び食欲障害、炎症性腸疾患、摂食行動の変化、炭水化物渇望の抑止、黄体期後期精神症状、禁煙による症状、パニック障害、双極性障害、睡眠障害、時差ボケ、認知障害、高血圧、過食症、食欲不振、肥満、心不整脈、ニコチン若しくはタバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、オピオイド又はコカインに対する依存又は嗜癖から選択される薬物依存及び嗜癖;病的賭博;抜毛癖(trichotilomania);頭痛、脳卒中、外傷性脳損傷(TBI)、精神病、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジー、運動過剰症、失読症、統合失調症、多発脳梗塞性痴呆、癲癇、アルツハイマー型老年痴呆(AD)、パーキンソン病(PD)、注意欠陥過活動性障害(ADHD)並びにツレット症候群から選択される障害又は状態を処置するための薬学的組成物に関する。
【0018】
本発明はまた、ヒトを含む哺乳動物における上記の障害又は状態の処置方法であって、そのような障害又は状態の処置に有効な量の式II、より好ましくは式II’、最も好ましくは式Iの化合物又は薬学的に許容できるそれらの塩をそのような処置が必要な哺乳動物に投与することからなる方法に関する。
【0019】
本発明はまた、5−HT1B受容体のアンタゴニスト、逆アゴニスト又は部分アゴニストとしての活性を提供するのに有効な量の式II、より好ましくは式II’、最も好ましくは式Iの化合物及び薬学的に許容できる担体を含む、哺乳動物における上記の障害又は状態の処置に使用するための薬学的組成物に関する。
【0020】
本発明はまた、哺乳動物における上記の障害又は状態の処置方法であって、5−HT1B受容体のアンタゴニスト、逆アゴニスト又は部分アゴニストとしての活性を提供するのに有効な量の式Iの化合物をそのような処置が必要な哺乳動物に投与することからなる方法に関する。
【0021】
本明細書中で使用する場合、用語「うつ病」は、うつ病性障害、例えば、単一エピソード又は反復性の大うつ病性障害、並びに気分変調性障害、抑うつ神経症、及び神経症性うつ病;食欲不振、体重減少、不眠症及び早朝覚醒、並びに精神運動制止を含むメランコリー性のうつ病;食欲亢進、睡眠過剰、精神運動性激越若しくは被刺激性、不安及び恐怖症、季節性感情障害、又は双極性障害若しくは躁うつ病、例えば、双極I型障害、双極II型障害及び循環気質障害を含む非定型うつ病(又は反応性抑うつ)を含む。
【0022】
用語「うつ病」に包含されるその他の気分障害としては、早期発症又は後期発症の、非定型特徴を有する又は有さない気分変調性障害;早期発症又は後期発症の、抑うつ気分を伴うアルツハイマー型痴呆;抑うつ気分、アルコール、アンフェタミン、コカイン、幻覚薬、吸入剤、オピオイド、フェンシクリジン、鎮静薬、催眠薬、抗不安薬及びその他の物質により誘発される障害を伴う血管性痴呆;抑うつ型の統合失調感情障害;並びに抑うつ気分を伴う適応障害が挙げられる。
【0023】
本明細書中で使用する場合、用語「不安」は、広場恐怖を伴う又は伴わないパニック障害、パニック障害の病歴がない広場恐怖、特定の恐怖症、例えば、特定の動物恐怖、社会恐怖、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害及び急性ストレス障害を含むストレス障害、並びに全般性不安障害等の不安障害を含む。
【0024】
「全般性不安」は、典型的には、過度の不安又は心配の期間が長期化(例えば、少なくとも6ヶ月)しその期間の大部分で症状が顕れることと定義される。不安及び心配は制御するのが困難であり、そして情動不安、疲れ易さ、集中力の欠如、被刺激性、筋肉の緊張、及び睡眠障害を伴い得る。
【0025】
「パニック障害」は、反復性のパニック発作がありその後少なくとも1ヶ月間別のパニック発作があるのではないかとの懸念が持続することと定義される。「パニック発作」は、強い不安感、怯え又は恐怖感に突然襲われる不連続な期間である。パニック発作の間、その者は、動悸、発汗、震え、息切れ、胸痛、悪心及びめまいを含む種々の症状を経験し得る。パニック障害は、広場恐怖を伴い又は伴わずに生じ得る。
【0026】
「恐怖症」は、広場恐怖、特定恐怖及び社会恐怖を含む。「広場恐怖」は、パニック発作が起こったときに逃げるのが困難であるか若しくは恥ずかしい思いをすることになる、又は助けを求めることができなさそうな場所又は状況にいることに対する不安により特徴付けられる。広場恐怖は、パニック発作の病歴が無くとも起こり得る。「特定恐怖」は、恐れの対象又は状況により惹起される不安が臨床的に重大であることにより特徴付けられる。特定恐怖は、以下の亜類型を含む:動物又は昆虫をきっかけとする動物型;自然環境における対象、例えば嵐、高所又は水をきっかけとする自然環境型;血液若しくは外傷を見ること又は注射若しくはその他の侵襲的医療処置を見たり受けたりすることをきっかけとする血液−注射−外傷型;公共輸送機関、トンネル、橋、エレベーター、飛行、運転又は閉鎖空間等の特定の状況をきっかけとする状況型;並びにその他の刺激をきっかけとして恐れが生じるその他の類型。特定恐怖はまた単純恐怖とも称される。「社会恐怖」は、特定の類型の社会状況又は行動状況に遭遇することにより惹起される不安が臨床的に重大であることにより特徴付けられる。社会恐怖はまた、社会不安障害とも称され得る。
【0027】
用語「不安」の範囲に含まれる他の不安障害としては、アルコール、アンフェタミン、カフェイン、大麻、コカイン、幻覚薬、吸入剤、フェンシクリジン、鎮静薬、催眠薬、抗不安薬 及び他の物質により誘発される不安障害、並びに不安を伴う又は不安及びうつ病の共存する適応障害が挙げられる。
【0028】
別の実例において、本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるセロトニン作動性の神経伝達を増強することにより処置され得る状態又は障害を処置するための薬学的組成物であって:
a)薬学的に許容できる担体;
b)式I、II若しくはII’の一つ若しくはそれ以上の代謝産物又は薬学的に許容できるそれらの塩(例えば、式Iの代謝産物、若しくは式IIの代謝産物、若しくは式II’の代謝産物又はそれらの任意の組み合わせであり得る);及び
c)一つ若しくはそれ以上の5−HT再取込阻害薬、好ましくはセルトラリン、又は薬学的に許容できるそれらの塩;
を含み、活性化合物(すなわち、当該代謝産物及び5−HT再取込阻害薬)の量は、その組み合わせがそのような障害又は状態を処置するのに有効といえる量である、薬学的組成物に関する。
【0029】
別の実例において、本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるセロトニン作動性の神経伝達を増強することにより処置され得る障害又は状態の処置方法であって:
a)上記の式I、II若しくはII’の一つ若しくはそれ以上の代謝産物又は薬学的に許容できるそれらの塩(例えば、式Iの代謝産物、若しくは式IIの代謝産物、若しくは式II’の代謝産物又はそれらの任意の組み合わせであり得る);及び
b)一つ若しくはそれ以上の5−HT再取込阻害薬、好ましくはセルトラリン、又は薬学的に許容できるそれらの塩;
をそのような処置が必要な哺乳動物に投与することからなり、活性化合物(すなわち、当該代謝産物及び5−HT再取込阻害薬)の量は、その組み合わせがそのような障害又は状態を処置するのに有効といえる量である、処置方法に関する。
【0030】
別の実例において、本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるセロトニン作動性の神経伝達を増強することにより処置され得る障害又は状態の処置方法であって:
a)一つ若しくはそれ以上の5−HT1Aアンタゴニスト又は薬学的に許容できるそれらの塩;及び
b)式I、II若しくはII’の一つ若しくはそれ以上の代謝産物又は薬学的に許容できるそれらの塩;
をそのような処置が必要な哺乳動物に投与することからなり、各活性化合物(すなわち、5−−HT1Aアンタゴニスト及び当該代謝産物)の量は、その組み合わせがそのような障害又は状態を処置するのに有効といえる量である、処置方法に関する。
【0031】
別の実例において、本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるセロトニン作動性の神経伝達を増強することにより処置され得る障害又は状態を処置するための薬学的組成物であって:
a)一つ若しくはそれ以上の5−HT1Aアンタゴニスト又は薬学的に許容できるそれらの塩;及び
b)式I、II若しくはII’の一つ若しくはそれ以上の代謝産物又は薬学的に許容できるそれらの塩;
を含み、各活性化合物(すなわち、5−HT1Aアンタゴニスト及び当該代謝産物)の量は、その組み合わせがそのような障害又は状態を処置するのに有効といえる量である、薬学的組成物に関する。
【0032】
本明細書中で使用するセルトラリン、(1S−シス)−4−(3,4−ジクロロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−N−メチル−1−ナフタレンアミンは以下の構造式:
【化4】

を有し、通常はその塩酸塩の形態で使用される。セルトラリンの合成については、ファイザー社が譲り受けた米国特許第4,536,518号に記載されている。塩酸セルトラリンは抗うつ薬及び食欲抑制薬として有用であり、うつ病、薬物依存、不安、強迫性障害、恐怖症、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、及び早漏の処置においても有用である。
【0033】
本発明の処置方法において、代謝産物は被験体に直接的に、例えば錠剤として投与することができるし、当該代謝産物は被験体の体内で代謝を通じて生成されることによって投与することもできる。例えば、本発明の代謝産物は、その投与後に被験体の体内において代謝を通じて当該代謝産物を形成する量の1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンを被験体に投与することによって、疾患又は状態を処置すべき被験体に効果的に投与することができる。さらに、1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの投与経路及び用量は、その代謝産物の所望のインビボ濃度及び生成速度を得るために変更することができる。
【0034】
上記の状態の一つ又はそれ以上の処置に使用する場合、1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの代謝産物は、上述した一つ又はそれ以上のその他の薬剤と組み合わせて使用することができる(個別に同時投与することも同一の薬学的組成物として同時投与することもできる)。
【0035】
本発明の化合物の薬学的に許容できる酸付加塩は、その化合物自体又はその任意のエステルから形成され得、製薬化学分野において多くの場合に使用される薬学的に許容できる塩が含まれる。例えば、塩は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、スルホン酸(ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、及びトルエンスルホン酸等の薬剤を含む)、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、ジーpートルイル酸、酒石酸、硫酸、硝酸、リン酸、酒石酸、ピロ硫酸、メタリン酸、コハク酸、ギ酸、フタル酸、乳酸等の無機酸又は有機酸により形成され得る。
【0036】
本発明の化合物は、上述のように、薬学的に許容できる塩の形態で投与され得る。塩は、有機化学分野の通例どおり、本発明の化合物が塩基性の場合は上記のような適切な酸と反応させることによって形成するのが簡便である。塩は、穏やかな温度で高収率で直ちに形成し、多くの場合、その合成の最終工程としての適切な酸洗浄により当該化合物を単離するのみで製造される。塩形成性の酸は適当な有機溶媒又は水性の有機溶媒、例えばアルカノール、ケトン又はエステルに溶解させる。他方、本発明の化合物が遊離塩基形態であることが望まれる場合は、慣例に従い塩基による最終洗浄工程により単離する。好ましい塩酸塩の製造技術は、遊離塩基を適切な溶媒に溶解させ、分子ふるいによってその溶液を完全に乾燥させた後に塩化水素ガスを通気するというものである。
【0037】
医薬品として使用する場合、本発明の化合物をヒトに投与する用量はやや広い範囲で変更可能であり、それは担当医の判断に任される。その塩形成部分が相当の分子量を有する塩の形態、例えば、ラウリン酸塩(laureate)の形態で投与する場合、化合物の用量を調整するのが望ましいことに留意されたい。これらの化合物は、約0.25mg/日から約1500mg/日まで、好ましくは約0.25〜約300mg/日の用量範囲で単回投与又は分割投与により投与するのが最も望ましいが、処置を受ける被験体の体重及び状態並びに選択された特定の投与経路に依存して必然的にばらつきが生じる。しかし、約0.01mg/kg体重/日〜約10mg/kg体重/日の範囲の用量レベルが使用されるのが最も望ましい。それでもやはり、処置を受ける者の体重及び状態並びにその医薬品に対する個々人の応答、さらには選択された薬学的処方の類型及びそのような投与が行われる期間及び間隔に依存してばらつきが生じ得る。いくつかの例では、上記範囲の下限以下の用量レベルで十分以上であり得るが、他の例では、さらに大用量であっても、そのような大用量が一日を通じた投与のために最初にいくつかの小用量に分割される限り、いかなる有害な副作用をも生じることなく使用され得る。あらゆる例において、投与される化合物の量は活性化合物の溶解度、使用される処方及び投与経路等の要因に依存するはずだ。
【0038】
本発明の化合物の投与経路は重要ではない。当該化合物は消化管から吸収され得るが、当該化合物は経皮的に投与することができるし、その例において望まれる場合は直腸から吸収させるために坐剤として投与することもできる。錠剤、咀嚼錠、カプセル剤、溶液剤、非経口溶液剤、トローチ剤、坐剤及び懸濁剤を含む、全ての一般類型の組成物を使用することができる。組成物は、一つの投薬単位に一日量又は一日量の扱いやすい一画分を含むよう処方され、投与単位は単一の錠剤若しくはカプセル剤又は扱いやすい量の液剤であり得る。経皮投与及び経口投与が好ましい。
【0039】
一般的に全ての組成物は、製薬化学分野において典型的な方法に従って製造され、及び/又は本明細書中で例示されるようなインビボ若しくはインビトロの代謝反応により単離される。親化合物、1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンは、米国特許出願番号11/083,188、米国特許出願公開公報2005−0245521A1に概説及び/又は例示される手順によって製造される。代謝産物は直接的に合成することができるし、実施例に記載されるようなインビトロ又はインビボの酵素的又は代謝的反応によって形成することもできる。
【0040】
処方法は当該分野で周知であり、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,19th Edition(1995)に開示される。本発明において使用する薬学的組成物は、無菌、非発熱性の液体溶液剤若しくは懸濁剤、コーティングカプセル剤、坐剤、凍結乾燥粉末剤、経皮用パッチの形態又は当該分野で公知のその他の形態であり得る。
【0041】
カプセル剤は、当該化合物と適当な賦形剤を混合し、適当量の混合物でカプセルを充填することによって製造される。一般的な賦形剤として、不活性粉末物質、例えば多くの異なる種類のデンプン、粉末セルロース、特に結晶性及び微結晶性セルロース、糖、例えば、フルクトース、マンニトール及びスクロース、粒粉並びに同様の食用粉末が挙げられる。
【0042】
錠剤は直接圧縮によって、湿式造粒によって、又は乾式造粒によって製造される。それらの処方物は通常、賦形剤、結合剤、滑沢剤及び崩壊剤並びに当該化合物を含む。典型的な賦形剤として、例えば、各種デンプン、ラクトース、マンニトール、カオリン、リン酸カルシウム又は硫酸カルシウム、無機塩、例えば塩化ナトリウム及び粉糖が挙げられる。粉末セルロース誘導体も有用である。典型的な錠剤用結合剤は、デンプン、ゼラチン及び糖、例えばラクトース、フルクトース、グルコース等のような物質である。アラビアゴム、アルギン酸塩、メチルセルロース、ポリビニルピロリジン等を含む天然ゴム及び合成ゴムでもよい。ポリエチレングリコール、エチルセルロース及び蝋もまた結合剤として使用できる。
【0043】
滑沢剤は、臼の中で錠剤と杵が付着するのを防止するために錠剤処方物に添加され得る。滑沢剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウム、ステアリン酸並びに硬化植物油等の滑りやすい固体から選択される。
【0044】
錠剤用崩壊剤は、錠剤が湿った際に化合物を放出するよう錠剤の崩壊を促進する物質である。崩壊剤として、デンプン、粘土、セルロース、アルギン及びゴムが挙げられ、より具体的には、例えば、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、木材セルロース、粉末海綿、陽イオン交換樹脂、アルギン酸、グアールガム、柑橘類果肉並びにカルボキシメチルセルロース、さらにはラウリル硫酸ナトリウムが使用され得る。
【0045】
錠剤は、香味剤若しくは密封剤としての糖により、又はその錠剤の溶解性を調整する薄膜形成性の保護剤によりコーティングされることが多い。当該化合物はまた、その処方にマンニトール等の口当たりの良い物質を多量に使用することによって咀嚼錠として処方され得、このような処方は当該分野で十分に確立している。
【0046】
化合物を坐剤として投与することが望まれる場合、典型的な基剤が使用され得る。カカオ脂は伝統的な坐剤用基剤であり、蝋の添加によりその融点を若干上昇させる調整がなされ得る。特に、様々な分子量のポリエチレングリコールを含む水混和性の坐剤用基剤が広く使用されている。
【0047】
当該化合物の効果は、適切な処方により遅らせたり長引かせたりすることができる。例えば、当該化合物の緩慢溶解性ペレットを製造し、錠剤又はカプセル剤に組み込むことができる。この技術は、数種の異なる溶解速度のペレットを製造し、これらのペレットの混合物でカプセル剤を充填することによって改善され得る。錠剤又はカプセル剤は、予測可能な期間、溶解に抗する薄膜でコーティングされ得る。非経口製剤もまた、当該化合物を、血清中でそれらを穏やかにしか分散させることのできない油性媒体若しくは乳化媒体に溶解又は懸濁することによって、長時間作用性を付与され得る。
【0048】
そうでないことが示されない限り:
「処置する」は、疾患、障害若しくは状態、又はそれらの1つ若しくはそれ以上の症状を、逆転、緩和、その進行を抑制、又は予防することを意味し、かつこれらを包含し;そして「処置」及び「治療的に」は、上で定義されたような処置行為を意味する。
【0049】
本明細書中で使用する場合、「セロトニン作動性の神経伝達の増強」は、興奮したシナプス前細胞から放出され、シナプスを横切り、そしてシナプス後細胞を剌激又は阻害するセロトニンによるニューロンプロセスを増大又は改善することを意味する。
【0050】
本明細書中で使用する場合、「薬物依存」は、薬物に対する異常な渇望若しくは欲求、又は嗜癖を意味する。このような薬物は一般に、経口、非経口、経鼻又は吸入を含む種々の投与手段のいずれかによりこれに罹患した者に投与される。本発明の方法により治療され得る薬物依存の例は、アルコール、ニコチン、コカイン、ヘロイン、フェノバルビタール及びベンゾジアゼピン(例えばValium(商標))に対する依存である。本明細書中で使用される場合、「薬物依存の処置」は、このような依存を軽減又は緩和することを意味する。
【0051】
「被験体」は、哺乳動物を含み、そしてヒトを含む動物である。
「Gluc.」はグルコロニド(glucoronide)置換基を意味する。グルクロン酸は、当該代謝産物又は親化合物の酸又はアルコール又はフェノール部分と反応して「グルクリド(glucuride)」を形成する。グルクロン酸は、第II相の結合反応であるグルクロン酸抱合によって代謝産物に転移される置換基である。
【0052】
「精製及び単離された」には、研究者に理解されているように、本発明の目的にとって十分な程度、実質的に純粋かつ単離されているものが含まれる。
【0053】
本発明は、研究者に理解されているように、式(I)、(II)及び(II’)の化合物並びに本発明のその他の化合物と、一つ又はそれ以上の原子が自然界において通常見出されるのと異なる原子量又は質量数の原子で置換されていることを除いて同一である、同位体標識された化合物を包含する。
【0054】
1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの代謝産物及び追加の化合物又は追加の化合物群の組み合わせの「同時投与」は、これらの化合物が一つの組成物として又は同じ単位投与剤形の一部として一緒に投与され得ることを意味する。「同時投与」はまた、1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの代謝産物及び追加の化合物又は追加の化合物群を別個にではあるが同じ治療的処置計画又は投与計画の一部として投与することを包含する。当該化合物は、必ずしも本質的に同じ時点で投与される必要はないが、それが望ましい場合はそのようにすることができる。従って、「同時投与」は、例えば、1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの代謝産物及び追加の化合物を別個の製剤又は剤形としてであるが同じ時点で投与することを包含する。「同時投与」はまた、異なる時点及び任意の順序で個別に投与することも包含する。例えば、適当な場合、患者は、一つ又はそれ以上の処置成分を午前中に摂取し、一つ又はそれ以上のその他の成分を夜に摂取することができる。
【0055】
用語「プロドラッグ」は、インビボで本発明の化合物を生じるよう変換される化合物を意味する。この変換は様々な機構によって、例えば血中での加水分解を通じて起こり得る。プロドラッグの使用に関する特筆すべき議論が、T.Higuchi and W.Stella,“Pro−drugs as Novel Delivery Systems.”Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series,and in“”Bioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987により提供される。
【0056】
例えば、本発明の化合物がカルボン酸官能基を含む場合、プロドラッグは、その酸基の水素原子を(C1−C8)アルキル、(C2−C12)アルカノイルオキシメチル、4〜9個の炭素原子を有する1−(アルカノイルオキシ)エチル、5〜10個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)−エチル、3〜6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4〜7個の炭素原子を有する1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5〜8個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3〜9個の炭素原子を有するN−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4〜10個の炭素原子を有する1−(N−(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3−フタリジル、4−クロトノラクトニル、γ−ブチロラクトン−4−イル、ジ−N,N−((C1−C2))アルキルアミノ(C2−C3)アルキル(例えばβ−ジメチルアミノエチル)、カルバモイル−(C1−C2)アルキル、N,N−ジ(C1−C2)アルキルカルバモイル−(C1−C2)アルキル及びピペリジノ−、ピロリジノ−又はモルホリノ(C1−C3)アルキル)等の基で置換することにより形成されるエステルを含み得る。
【0057】
同様に、本発明の化合物がアルコール官能基を含む場合、プロドラッグは、そのアルコール基の水素原子を(C1−C6)アルカノイルオキシメチル、1−((C1−C6)アルカノイルオキシ)エチル、1−メチル−1−((C1−C6)アルカノイルオキシ)エチル、(C1−C6)アルコキシカルボニルオキシメチル、N−(C1−C6)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C1−C6)アルカノイル、α−アミノ(C1−C4)アルカノイル、アリールアシル及びα−アミノアシル、又はα−アミノアシルα−アミノアシル(各α−アミノアシル基は、天然Lアミノ酸、P(O)(OH)2、−−P(O)(O(C1−C6)アルキル)2又はグリコシル(炭水化物のヘミアセタール形態のヒドロキシル基の除去により生じる基)から独立して選択される)等の基で置換することにより形成され得る。
【0058】
本発明の化合物がアミン官能基を含む場合、プロドラッグは、アミン基の水素原子をRX−カルボニル、RXO−カルボニル、NRXX1−カルボニル(RX及びRX1は各々独立して((C1−C10)アルキル、(C3−C7)シクロアルキル、ベンジルであるか、又はRX−カルボニルは天然α−アミノアシル若しくは天然α−アミノアシル−天然α−アミノアシルである)、−−C(OH)C(O)OYx(YxはH、(C1−C6)アルキル又はベンジルである)、−−C(OYx0)Yx1(Yx0は(C1−C4)アルキルであり、Yx1は((C1−C6)アルキル、カルボキシ(C1−C6)アルキル、アミノ(C1−C4)アルキル又はモノ−N−若しくはジ−N,N−(C1−C6)アルキルアミノアルキルである)、−−C(Yx2)Yx3(Yx2はH又はメチルであり、Yx3はモノ−N−又はジ−N,N−(C1−C6)アルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジン−1−イル又はピロリジン−1−イルである)等の基で置換することによって形成され得る。
【0059】
本明細書中で使用する場合、用語「有効量」は、特定の疾患及び病理学的状態を処置することのできる本発明の方法の化合物の量を意味する。本発明に従って投与される化合物の具体的な用量は、当然、例えば、投与される化合物、投与経路、被験体の状況、及び処置対象の病理学的状態の重篤度を含むその症例を取り巻く特定の環境によって決定されるはずである。
【0060】
本発明はまた疾患を処置するために消費者により使用されるキットを提供するという利点がある。当該キットは、a)5−HT1Bアゴニスト/アンタゴニスト及び薬学的に許容できる担体、ビヒクル、若しくは希釈剤を含む薬学的組成物、並びに、場合によりb)特定の疾患を処置するために当該薬学的組成物を使用する方法を記載した説明書を含む。説明書はまた、当該キットが、エストロゲン投与に伴う副作用という付随する傾向を実質的に軽減しつつ疾患を処置するものであることを示し得る。
【0061】
本願において使用する場合、「キット」には、分割されたボトル又は分割されたホイルパック等の、単位投与剤形を個別に収納するための容器が含まれる。容器は、当該分野で公知の任意の従来的形状又は形態であり得、薬学的に許容できる部材、例えば紙若しくは段ボールの箱、ガラス若しくはプラスチック製のボトル若しくは瓶、(例えば、異なる容器に入れ替えするための錠剤の詰め替え分を保持するための)再封可能な袋、又は治療スケジュールに従ってパックから押し出すための個々の用量を含むブリスターパックで構成される。採用される容器は、使用される正確な投与剤形に依存し得、例えば、従来的な段ボール箱は液体懸濁物を保持するのには一般的には使用されない。単一投与剤形を販売するために一つ以上の容器を単一パッケージ品としてまとめて使用することが可能である。例えば、錠剤は、ボトルの中に収納され、そしてそのボトルは箱の中に収納される。
【0062】
このようなキットの一例は、いわゆるブリスターパックである。ブリスターパックは包装品において周知であり、薬学的単位投与剤形(錠剤、カプセル等)の包装に広く用いられている。ブリスターパックは一般的に、好ましくは透明のプラスチック材質のホイルで覆われた比較的硬い材質のシートからなる。包装プロセスの間に、プラスチックホイルに窪みが形成される。これらの窪みは包装しようとする個々の錠剤若しくはカプセル剤の大きさ及び形状を有するか又は包装しようとする複数の錠剤及び/若しくはカプセル剤を収納するための大きさ及び形状を有する。次に、錠剤又はカプセル剤を窪みに適宜配置し、そして比較的硬い材質のシートでプラスチックホイルの、窪みが形成された方向と反対側のホイル面を封着する。その結果、錠剤又はカプセル剤はプラスチックホイルとシートとの間の窪みに個別に密封されるか又は、所望の場合、まとめて密封される。好ましくは、シートの強度は、その窪みに手で圧力を加えてシートの窪みの位置に開口部を形成することによってブリスターパックから錠剤又はカプセル剤を取り出すことができるものである。その後、錠剤又はカプセル剤はその開口部から取り出すことができる。
【0063】
医師、薬剤師若しくは被験体に対する情報及び/又は指示を、例えば、そこで特定された錠剤若しくはカプセル剤が摂取されるべき投与日に相当する数字を錠剤若しくはカプセル剤の隣に付す形式、又は同じタイプの情報を含むカードの形式で含むタイプの書面による記憶補助を提供するのが望ましい。そのような記憶補助の別の例は、カードに印刷されたカレンダー、例えば、次のようなカレンダー「第1週、月曜日、火曜日、」...等...「第2週、月曜日、火曜日、...」等、である。他の種類の記憶補助は容易に明らかとなるはずである。“1日用量”は単一の錠剤若しくはカプセル剤でもよいし、所定日に摂取する数個の錠剤若しくはカプセル剤であってもよい。
【0064】
別の具体的なキットの態様は、1日用量を一度ずつ分配するよう設計されたディスペンサーである。好ましくは、ディスペンサーは、投与計画の遵守をさらに容易にするよう記憶補助を備える。このような記憶補助の例は、分配された1日用量の回数を示す機械式カウンターである。このような記憶補助の別の例は、例えば、最後の1日用量を取った日付を読み上げ、及び/又は次の用量を取るべき日付を注意喚起する液晶表示又は可聴式リマインダ信号を備える電池式マイクロチップメモリーである。
【0065】
式I、II及びII’の代謝産物は本質的に塩基性であり、様々な無機酸及び有機酸を用いて幅広い様々の異なる塩を形成することができる。そのような塩は、動物への投与に対して薬学的に許容できるものでなければならないが、実際は、反応混合物から式Iの化合物を最初は薬学的に許容できない塩として単離し、次いで後者をアリカリ試薬を用いた処理によって遊離塩基化合物へと単純に変換し、その後にその遊離塩基を薬学的に許容できる酸付加塩へと変換するのが望ましい場合が多い。本発明の塩基化合物の酸付加塩は、水性の溶剤又はメタノール若しくはエタノール等の適当な有機溶媒中の実質的に等量の選択された無機酸又は有機酸でその塩基化合物を処理することによって容易に製造される。その溶媒を注意深く蒸発させることで、所望の固形の塩が得られる。
【0066】
本発明の塩基化合物の薬学的に許容できる酸付加塩を製造するのに使用される酸は、非毒性の酸付加塩、すなわち薬学的に許容できる陰イオンを含有する塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩又は重硫酸塩、リン酸塩又は酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩若しくは酸性クエン酸塩、酒石酸塩又は酒石酸水素塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩及びパモ酸(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸))塩を形成する酸である。
【0067】
式I、II及びII’の代謝産物並びにそれらの薬学的に許容できる塩(以降、まとめて「活性化合物」とも称する)は有用な精神治療薬であり、セロトニン1A(5−HT1A)受容体及び/又はセロトニン1B(5−HT1B)受容体の強力なアゴニスト及び/又はアンタゴニストである。
【0068】
生物学的アッセイ
米国特許出願番号11/083,188に示される通り、そこで報告された試験化合物は、1000nM又はそれ以下のIC50値を有した。本発明の式Iの代謝産物は、100nM又はそれ以下のIC50値を示した。
【0069】
本発明の化合物の様々なセロトニン−1受容体に対する親和性は、文献に記載されるような標準的な放射標識リガンド結合アッセイを用いて測定することができる。5−HT1Aへの親和性は、Hoyerらの手順(Brain Res.,376,85(1986))を用いて測定することができる。5−HT1Bへの親和性は、Heuring及びPeroutkaの手順(J.Neurosci.,7,894(1987))を用いて測定することができる。
【0070】
5−HT1B結合部位における本発明の化合物のインビトロ活性は、以下の手順に従って測定することができる。ウシ尾状核組織をホモジナイズし、50mM TRIS・塩酸塩(塩酸トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン)を含有するpH7.7の緩衝液20容量に懸濁する。次いでホモジネートを45,000Gで10分間遠心分離する。次いで上清を廃棄し、得られたペレットを約20容量の50mM TRIS・塩酸塩緩衝液(pH7.7)に再懸濁する。次いでこの懸濁液を37℃で15分間プレインキュベートした後、この懸濁液を再び45,000Gで10分間遠心分離し、上清を廃棄する。得られたペレット(約1グラム)を、0.01パーセントのアスコルビン酸を含有し(最終pH7.7)、かつ10μMのパルジリン及び4mMの塩化カルシウム(CaCl2)も含有する15mM TRIS・塩酸塩緩衝液150mlに再懸濁する。この懸濁液を使用前少なくとも30分間、氷上に置く。
【0071】
次いで阻害薬、コントロール又はビヒクルを以下の手順に従ってインキュベートする。20パーセントのジメチルスルホキシド(DMSO)/80パーセントの蒸留水の溶液50μlに、0.01パーセントのアスコルビン酸を含有し(pH7.7)、かつ10μMのパルジリン及び4μMの塩化カルシウム、並びに100nMの8−ヒドロキシ−DPAT(ジプロピルアミノテトラリン)及び100nMのメスレルギン(mesulergine)も含有する50mM TRIS・酸塩緩衝液中のトリチウム化5−ヒドロキシトリプタミン(2nM)200μlを添加する。この混合物に750μlのウシ尾状核組織を添加し、得られた懸濁液を、均一な懸濁液になるまでボルテックスする。次いでこの懸濁液を振とう式水浴中、25℃で30分間インキュベートする。インキュベーション完了後、懸濁液をガラス繊維フィルター(例えばWhatman GF/B−フィルターTM)を使用してろ過する。次いでペレットを50mM TRIS・塩酸塩緩衝液(pH7.7)4mlで3回洗浄する。次いで5mlのシンチレーション液(aquasol2TM)を入れたシンチレーションバイアルにペレットを入れ、一晩静置する。各用量の化合物についてパーセント阻害を計算できる。次いでパーセント阻害値からIC50値を計算できる。
【0072】
5−HT1A結合能に関する本発明の化合物の活性は、以下の手順に従って測定できる。ラット脳皮質組織をホモジナイズし、1グラムのロットのサンプルに分割し、そして10容量の0.32Mショ糖溶液で希釈する。次いでこの懸濁液を900Gで10分間遠心分離し、上清を分離し、70,000Gで15分間再遠心分離する。上清を廃棄し、ペレットを15mM TRIS・塩酸塩(pH7.5)10容量に再懸濁する。この懸濁液を37℃で15分間インキュベートする。プレインキュベーションが完了した後、懸濁液を70,000Gで15分間遠心分離し、上清を廃棄する。得られた組織ペレットを、4mMの塩化カルシウム及び0.01パーセントのアスコルビン酸を含有する50mM TRIS・塩酸塩緩衝液(pH7.7)に再懸濁する。実験の用意ができるまで組織を−70℃で保存する。この組織を使用直前に解凍し、10μmパルジリンで希釈し、氷上に置くことができる。
【0073】
次いで組織を以下の手順に従ってインキュベートする。50マイクロリットルのコントロール、阻害薬又はビヒクル(最終濃度1パーセントDMSO)を種々の投薬量で調製する。この溶液に、4mMの塩化カルシウム、0.01パーセントのアスコルビン酸及びパルジリンを含有する50mM TRIS・塩酸塩緩衝液(pH7.7)中1.5nM濃度のトリチウム化DPAT 200μlを添加する。次いでこの溶液に750μlの組織を添加し、得られた懸濁液を、均一になるまでボルテックスする。次いで懸濁液を振とう式水浴中、37℃で30分間インキュベートする。次いでこの溶液をろ過し、154mMの塩化ナトリウムを含有する10mM TRIS・塩酸塩(pH7.5)4mlで2回洗浄する。各用量の化合物、コントロール又は賦形剤についてパーセント阻害を計算する。パーセント阻害値からIC50値を計算する。
【0074】
5−HT1A受容体及び5−HT1B受容体における本発明の化合物のアゴニスト活性及びアンタゴニスト活性は、以下の手順に従って単一飽和濃度を使用して測定できる。雄性Hartleyモルモットを屠殺し、海馬から5−HT1A受容体を切り出し、5−HT1B受容体はMcllwain組織細断機を用いて350mMでスライスし、適当な切片から黒質を切り出すことにより得る。手持ち式ガラス−テフロン(登録商標)ホモジナイザーを使用して個々の組織を1mM EGTAを含有する5mM HEPES緩衝液(pH7.5)中でホモジナイズし、35,000×g、10分間、4℃で遠心分離する。1mM EGTAを含有する100mM HEPES緩衝液(pH7.5)に、最終濃度がチューブ1本あたり20mg(海馬)又は5mg(黒質)のタンパク質となるようにペレットを再懸濁する。各チューブの反応混合物が、2.0mM MgCl2、0.5mM ATP、1.0mM cAMP、0.5mM IBMX、10mM ホスホクレアチン、0.31mg/mL クレアチンホスホキナーゼ、100μMのGTP及び0.5〜1マイクロキュリーの[32P]−ATP(30Ci/mmol:NEG−003−New England Nuclear)を含有するようこれらの薬剤を添加する。シリコン処理した微量遠心チューブ(三重試験)に組織を添加することにより、30℃、15分間のインキュベーションを開始する。各チューブに組織20μL、薬物又は緩衝液10μL(最終濃度の10倍)、32nMアゴニスト又は緩衝液10μL(最終濃度の10倍)、フォルスコリン20μL(最終濃度3μM)、及び上記反応混合物40μLを入れる。カラムからのcAMP回収をモニタリングするための[3H]−cAMP(30Ci/mmol:NET−275−New England Nuclear)40,000dpmを含有する2%SDS、1.3mM cAMP、45mM ATP溶液100μLを添加することにより、インキュベーションを停止する。[32P]−ATP及び[32P]−cAMPの分離は、Salomon et al.,Analytical Biochemistry,1974,58,541−548の方法を使用して行う。放射能を液体シンチレーション計数により定量する。最大阻害を、5−HT1A受容体にについては10μM (R)−8−OH−DPAT、5−HT1B受容体については320nM 5−HTにより規定する。次いで試験化合物によるパーセント阻害を、5−HT1A受容体については(R)−8−OH−DPAT、5−HT1B受容体については5−HTの阻害効果との関係で計算する。フォルスコリン剌激アデニル酸シクラーゼ活性のアゴニスト誘発阻害の逆転を、32nMアゴニストの効
果との関係で計算する。
【0075】
以下の手順に従って、本発明の化合物のモルモットにおける5−HT1Bアゴニスト誘発低体温への拮抗作用に関するインビボ活性を試験することができる。
ヒトether−a−go−go関連遺伝子カリウムチャネル(hERG)における本発明の化合物のインビトロ活性は、以下の手順に従って決定することができる。ヒトERGチャネルを発現するHEK−293細胞を、標準的な細胞培養技術に従って増殖させる。細胞を収集し、遠心分離し、そして得られたペレットをその後の使用のために凍結する。実験日に凍結した細胞ペレットを秤量し(96ウェルアッセイプレートあたり100mg)、そして10mM KCl及び1mM MgCl2を含有する冷50mM Tris塩基(4℃でpH約7.4)20容量中でホモジナイズする。次いでホモジネートを45,000Gで10分間遠心分離する。上清をデカントし、膜ペレットをPolytronにより10mM KCl及び1mM MgCl2を含有する冷50mM Tris塩基(4℃でpH約7.4)に再懸濁して20mg/mLの濃度にする。PVT WGA SPAビーズ(PEI処理A型)を秤量して希釈した組織に添加し、これも20mg/mLの濃度にする。次いで膜/ビーズ溶液を低温室(4℃)で2時間、Roto−Torque(Cole−Palmer Model 7637)で穏やかに回転(スピード2、高)させる。次いでこのプレインキュベーション後、ビーズスラリーを1000rpm、5分間、4℃で遠心分離する。上清をデカントし、そしてペレットを10mM KCl及び1mM MgCl2を含有する50mM Tris塩基(22℃でpH約7.4)に再懸濁して膜及びビーズの濃度が5mg/mlになるようにする。再懸濁したSPAビーズ/膜混合物を、直ぐにアッセイに使用する。ビーズ及び膜をそれぞれ1mg/ウェル及び25マイクログラムタンパク質/ウェルの最終濃度で使用する。化合物の希釈は10%DMSO/50mM Tris緩衝液(pH7.4)中で行う(最終DMSO濃度が1%になるよう、10×最終濃度にする)。薬物希釈物を含有する96ウェルSPAプレートに、放射リガンドを加える(最終濃度5nMの3H−ドフェチリド)。インキュベーションは組織/ビーズスラリーの添加により開始する。アッセイプレートを1時間インキュベートし、次いでMicroBetaシンチレーションカウンターを使用して放射能を定量する。次いで特異的結合のパーセント阻害を計算することができる。
【0076】
以下の手順に従って、本発明の化合物のモルモットにおける5−HT1Bアゴニスト誘発低体温への拮抗作用に関するインビボ活性を試験することができる。
Charles Riverから入手した雄性Hartleyモルモット(到着時体重250〜275グラム、試験時体重300〜600グラム)を、本実験における被験体として用いる。モルモットは、実験前少なくとも7日間、午前7時から午後7時まで照明を点灯するという標準的な実験条件下で管理する。試験時まで食物と水を自由に与える。
【0077】
本発明の化合物は、溶液として1mL/kgの用量を投与することができる。使用するビヒクルを化合物の溶解度に応じて変更する。試験化合物は、典型的には、PCT公報WO93/11106(1993年6月10日公開)に記載される通りに製造でき、5.6mg/kgの用量で皮下投与される[3−(1−メチルピロリジン−2−イルメチル)−1H−インドール−5−イル]−(3−ニトロピリジン−3−イル)−アミン等の5−HT1Bアゴニストの60分前に経口投与(p.o.)又は0分前に皮下投与(s.c.)する。1回目の体温の読み取りを行う前に、木屑を入れた金網床の透明プラスチック製シューボックスに各モルモットを入れ周囲に30分間慣れさせる。次いで各々の体温の読み取りの後に動物を同じシューボックスに戻す。各々の体温測定前に、各動物を片手でしっかりと30秒間保つ。体温測定には小動物用探針を備えたデジタル体温計を用いる。探針はエポキシチップを有する半屈曲性ナイロン製である。体温探針を直腸に6cm挿入し、そこで30秒間又は安定な記録が得られるまで保持する。次いで体温を記録する。
【0078】
p.o.スクリーニング実験において、−90分に「薬物投与前」基準体温の読取りを行い、−60分に試験化合物を投与し、さらに−30分に読取りを行う。次いで0分に5−HT1Bアゴニストを投与し、30分、60分、120分及び240分後に体温を測定する。
【0079】
皮下スクリーニング実験において、薬物投与前基準体温の読み取りを−30分に行う。試験化合物及び5−HT1Bアゴニストを同時に投与し、そして体温を30分、60分、120分及び240分後に測定する。
二元配置分散分析によりデータを分析し、Newman−Keuls事後分析において再測定を行う。
【0080】
本発明の活性化合物は、イヌから摘出された伏在静脈片の収縮作用についてスマトリプタンを模倣する程度を試験することにより、抗片頭痛薬としての評価を行うことができる(P.P.A.Humphrey et al.,Br.J.Pharmacol.,94,1128(1988))。この効果は、公知のセロトニンアンタゴニスト、メチオテピンにより遮断され得る。スマトリプタンは片頭痛の処置に有用であることが知られており、麻酔したイヌにおいて頸動脈の血管抵抗を選択的に高める働きをする。スマトリプタンの効果の薬理学的基礎は、W.Fenwick et al.,Br.J.Pharmacol.,96,83(1989)で議論されている。
【0081】
セロトニン5−HT1アゴニスト活性は、受容体源としてラット皮質、放射リガンドとして[3H]−8−OH−DPATを使用して5−HT1A受容体について記載されたように(D.Hoyer et al.,Eur.J.Pharm.,118,13(1985))、及び受容体源としてウシ尾状核、放射リガンドとして[3H]セロトニンを使用して5−HT1B受容体について記載されたように(R.E.Heuring and S.J.Peroutka,J.Neuroscience,7,894(1987))、インビトロ受容体結合アッセイにより測定することができる。
【0082】
式I、II及び/又はII’の代謝産物は、一つ又はそれ以上のその他の治療薬、例えば、三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、ドチエピン、ドキセピン、トリミプラミン、ブトリピリン(butripyline)、クロミプラミン、デシプラミン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、ノルトリプチリン若しくはプロトリプチリン)、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(例えば、イソカルボキシアジド、フェネルジン若しくはトラニルシクロプラミン(tranylcyclopramine))、若しくは5−HT再取込阻害薬(例えば、フルボキサミン、セルトラリン、フルオキセチン若しくはパロキセチン)等の別の抗うつ薬と併用して、及び/又はドパミン作動性抗パーキンソン症候群薬等の抗パーキンソン病薬(例えば、レボドパ、好ましくは末梢デカルボキシラーゼ阻害薬、例えば、ベンセラジド若しくはカルビドパとの組み合わせ、若しくはドパミン作用薬、例えば、ブロモクリプチン、リスリド若しくはペルゴリドとの組み合わせ)と併用して、若しくはレボキセチン等のノルアドレナリン再取込阻害薬(NRI)と併用して使用するのがよい。本発明は、一つ又はそれ以上のその他の治療薬と組み合わせた、一般式(I)の代謝産物又は生理学的に許容できそれらの塩若しくは溶媒化合物の使用を包含することが理解されるべきである。
【0083】
5−HT再取込阻害薬(例えば、フルボキサミン、セルトラリン、フルオキセチン若しくはパロキセチン)、好ましくはセルトラリン、又は薬学的に許容できるそれらの塩若しくは多型と組み合わせた、式I、II及び/又はII’の代謝産物及び薬学的に許容できるそれらの塩(本明細書において、式Iの代謝産物及び5−HT再取込阻害薬の組み合わせを、「活性な組み合わせ」と称する)は、有用な精神療法薬であり、そしてセロトニン作動性の神経伝達の増強によりその処置が促進される障害(例えば、高血圧、全ての形態のうつ病(例えば、癌患者のうつ病、パーキンソン病患者のうつ病、心筋梗塞後のうつ病、亜症候性の症候性うつ病、不妊症女性のうつ病、小児うつ病、大うつ病性障害、単一エピソードのうつ病、反復性うつ病、児童虐待に誘発されるうつ病、分娩後うつ病、気分変調;非定型的特徴、メランコリー的特徴、精神病的特徴、緊張病的特徴を有する又はそれらを有さない、軽度、中程度、又は重度のうつ病;季節性感情障害、老人性うつ病、慢性うつ病;抑うつ気分を伴う適応障害又は不安及び抑うつ気分を伴う適応障害;不安・抑うつ共存型;物質誘発性気分障害;並びに一般的な病状に続発する気分障害)、双極性障害(抑うつ期の双極性障害を含む)、全般性不安障害、社会不安、分離不安障害、恐怖症(例えば、広場恐怖、社会恐怖、及び単純恐怖)、心的外傷後ストレス症候群、回避性人格障害、早漏、摂食障害(例えば、過食症、拒食症、及び神経性大食症)、肥満、薬物依存(例えば、アルコール、コカイン、ヘロイン、フェノバルビタール、マリファナ、ニコチン及びベンゾジアゼピンに対する嗜癖)、群発性頭痛、片頭痛、疼痛、アルツハイマー病、強迫性障害;広場恐怖を伴うパニック障害及び広場恐怖を伴わないパニック障害、記憶障害(例えば、痴呆、健忘障害、及び加齢性認知低下(ARCD))、パーキンソン病(例えば、パーキンソン病における痴呆、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群及び遅発性ジスキネジー)、内分泌障害(例えば、高プロラクチン血症)、血管痙攣(特に脳血管における血管痙攣)、小脳性運動失調、胃腸管障害(運動性及び分泌の変化を含む)、統合失調症の陰性症状、月経前症候群、線維筋痛症候群、緊張性尿失禁、ツレット症候群、抜毛癖、窃盗癖、男性不能症、癌(例えば、小細胞肺癌)、慢性発作性片頭痛、頭痛(血管障害関連)、自閉症、広汎発達障害NOS、アスペルガー障害、選択的無言症、慢性運動性又は音声チック障害、身体化障害、不眠症、間欠性爆発性障害、放火癖、病的賭博、衝動調節障害、月経前不快気分障害、並びに注意欠陥/過活動性障害(ADHD)の処置において使用され得る。
【0084】
セロトニン(5−HT)再取込阻害薬、好ましくはセルトラリンは、ヒトを含む哺乳動物において、セロトニンのシナプトソーム取込みを遮断する能力に部分的に起因して、うつ病;薬物依存;パニック障害、全般性不安障害、広場恐怖、単純恐怖、社会恐怖及び心的外傷後ストレス障害を含む不安障害;強迫性障害;回避性人格障害及び早漏に対して肯定的な活性を示す。
【0085】
米国特許第4,536,518号は、うつ病のためのセルトラリンの合成、薬学的組成物及び使用を記載し、全て参照により本明細書に加入される。
【0086】
抗うつ薬としての活性な組み合わせの活性及び関連する薬理学的特性は、Koe,B.et al.,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,226(3),686−700(1983)に記載される以下の(1)〜(4)の方法により測定することができる。具体的には、活性は、(1)マウスが水槽から逃げ出そうとする努力に対して影響する能力(Porsoltのマウス「行動低下(behavior despair)」試験)、(2)インビボでマウスにおける5−ヒドロキシトリプトファンに誘発される行動上の病状を増強する能力、(3)インビボでラットの脳における塩酸p−クロロアンフェタミンのセロトニン枯渇活性に拮抗する能力、並びに(4)インビトロでラット脳細胞のシナプトソームによるセロトニン、ノルエピネフリン及びドパミンの取込みを遮断する能力を調査することにより測定することができる。インビボでのマウスにおけるレセルピン低体温に対抗する活性な組み合わせの能力は、米国特許第4,029,731号に記載される方法に従って測定することができる。
【0087】
本発明の組成物は、一つ又はそれ以上の薬学的に許容できる担体を用いる従来の様式で処方され得る。従って、本発明の活性化合物を経口投与、口腔投与、鼻腔内投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋内投与若しくは皮下投与)若しくは直腸投与のために、又は吸入若しくは吹入による投与に適した形態で処方され得る。
【0088】
経口投与のために、薬学的組成物は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース若しくはリン酸カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク若しくはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン若しくはデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)等の薬学的に許容できる賦形剤を用いて従来の手段により製造される、例えば、錠剤又はカプセル剤の形態であり得る。錠剤は当該分野で周知の方法でコーティングされ得る。経口投与用の液体製剤は、例えば、溶液剤、シロップ剤若しくは懸濁剤の形態であり得るし、それらを使用前に水又はその他の適切な媒体で構成するための乾燥製品として提供することもできる。このような液体製剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース又は硬化食用脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアラビアゴム);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル又はエチルアルコール);及び保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル又はソルビン酸)等の薬学的に許容できる添加物を用いて従来の手段により製造され得る。
口腔内投与のために、組成物は従来の様式で処方された錠剤又はロゼンジ剤の形態であり得る。
【0089】
本発明の活性化合物は、注射による非経口投与(従来のカテーテル法又は注入を使用する場合を含む)用に処方され得る。注射用処方物は、添加された保存剤を含む単位投与形態で、例えば、アンプルで、又は多用量容器で提供され得る。組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁剤、溶液剤又は乳剤等の形態であり得、そして懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤等の処方薬剤を含み得る。あるいは活性成分は、使用前に適当な媒体(例えば、発熱物質を含有しない滅菌水)で再構成するための粉末形態であり得る。
【0090】
本発明の活性化合物はまた、例えば、カカオ脂又はその他のグリセリド等の従来的な坐剤用基剤を含有する坐剤又は貯留浣腸剤等の直腸組成物として処方され得る。
【0091】
鼻腔内投与又は吸入による投与のために、本発明の活性化合物は、ポンプ式噴霧容器から患者により押し出される若しくは汲み上げられる溶液剤若しくは懸濁剤の形態で、又は適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素若しくはその他の適切な気体を用いる加圧容器若しくはネブライザーからのエアゾール噴霧物として送達されるのがよい。加圧エアゾール剤の場合、投与単位は一定量を送達する弁を設けることにより測定され得る。加圧容器又はネブライザーは、活性化合物の溶液又は懸濁物を含み得る。吸入器又は注入器において使用するカプセル及びカートリッジ(例えば、ゼラチン製のもの)は、本発明の化合物及びラクトース又はデンプン等の適当な粉末基剤の粉末混合物を含有するように処方され得る。
【0092】
上記の状態(例えば、うつ病)の処置のために平均的成人に経口投与、非経口投与又は口腔内投与する本発明の活性化合物の推奨用量は、1日1〜4回投与され得る単位用量あたり0.1〜200mgの活性成分である。
【0093】
平均的成人における上記の状態(例えば、片頭痛)の処置のためのエアゾール処方物は、好ましくは、計量された各用量又はエアゾールの「一吹き」が本発明の化合物を20μg〜1000μg含有するように調整される。エアゾールによる一日の総用量は100μg〜10mgの範囲内になるはずである。投与は1日数回、例えば、2、3、4又は8回、例えば、各回1、2又は3用量を投与され得る。
【0094】
上記状態のいずれかを有する被験体の処置のために、5−HT再取込阻害薬、好ましくはセルトラリンと共に本発明の活性化合物を使用することに関し、これらの化合物が、上記のいずれかの経路により、単独で又は薬学的に許容できる担体と組み合わせてのいずれによっても投与することができること、並びにこのような投与が単回投与及び複数回投与のどちらによっても行うことができることに留意するべきである。より具体的には、活性な組み合わせは、多様な種々の異なる剤形で投与され得る、すなわちそれらは、錠剤、カプセル剤、口中錠、トローチ剤、ハードキャンデー剤、散剤、噴霧剤、水性懸濁剤、注射液剤、エリキシル剤、シロップ剤等の形態で、種々の薬学的に許容できる不活性担体と組み合わされ得る。このような担体としては、固体賦形剤又は増量剤、滅菌水性媒体、及び種々の非毒性有機溶剤等が挙げられる。さらに、このような経口用薬学的処方物は、甘味及び/又は風味を加える目的で一般に用いられる種類の種々の薬剤により適宜、甘味及び/又は風味を加えられ得る。一般に、式Iの代謝産物は、全組成の約0.5%〜約90質量%の範囲の濃度レベルで、すなわち所望の単位用量を提供するのに十分な量でこのような剤形に加えられ、5−HT再取込阻害薬、好ましくはセルトラリンは、全組成の約0.5〜約90質量%の範囲の濃度レベルで、すなわち所望の単位用量を提供するのに十分な量でこのような剤形に加えられる。
【0095】
上記の状態の処置のために平均的成人に経口投与、非経口投与又は口腔内投与される混合処方物(本発明の活性化合物及び5−HT再取込阻害薬を含有する処方物)における本発明の活性化合物の推奨一日量は、1日に1〜4回投与され得る単位用量当たり約0.01mg〜約2000mg、好ましくは約0.1mg〜約200mgの式Iの活性成分である。
【0096】
上記の状態の処置のために平均的成人に経口投与、非経口投与又は口腔内投与される混合処方物における5−HT再取込阻害薬、好ましくはセルトラリンの推奨一日量は、例えば、1日に1〜4回投与され得る単位用量当たり約0.1mg〜約2000mg、好ましくは約1〜約200mgの5−HT再取込阻害薬である。
【0097】
上記の状態の処置のために平均的成人に経口投与、非経口投与又は口腔内投与される混合処方物における本発明の活性化合物に対するセルトラリンの好ましい用量比は、約0.00005〜約20,000、好ましくは約0.25〜約2,000である。
【0098】
平均的成人における上記の状態の処置のためのエアゾール混合処方物は、好ましくは、計量された各用量又はエアゾール「一吹き」が約0.01μg〜約100mgの本発明の活性化合物、好ましくは約1μg〜約10mgのこのような化合物を含有するよう調整される。投与は1日数回、例えば、2、3、4又は8回、例えば、各回1、2又は3用量が投与され得る。
【0099】
平均的成人における上記の状態の処置のためのエアゾール処方物は、好ましくは、計量された各用量又はエアゾールの「一吹き」が約0.01mg〜約2000mgの5−HT再取込阻害薬(好ましくはセルトラリン)、好ましくは約1mg〜約200mgのセルトラリンを含有するよう調整される。投与は1日数回、例えば、2、3、4又は8回、例えば、各回1、2又は3用量が投与され得る。
【0100】
上記のように、式Iの代謝産物と組み合わせた5−HT再取込阻害薬、好ましくはセルトラリンは、抗うつ薬としての治療用途に容易に適合され得る。一般に、5−HT再取込阻害薬、好ましくはセルトラリン、及び式Iの化合物を含有するこれらの抗うつ組成物は通常、約0.01mg〜約100mg/kg体重/日の5−HT再取込阻害薬(好ましくはセルトラリン)、好ましくは約30mg/kg体重/日、より好ましくは約0.1mg〜約10mg/kg体重/日のセルトラリン;約0.001〜約100mg/kg体重/日の範囲の式Iの化合物、好ましくは約30mg/kg体重/日、より好ましくは約0.01〜約10mg/kg体重/日の範囲の式Iの化合物の範囲の用量で投与されるが、処置される被験体の状態及び選択される特定の投与経路に依存して必然的にばらつきが生じるはずである。
【0101】
本明細書中で引用した全ての参考文献及び特許は参照により加入される。
以下のスキーム及び実施例は本発明の解説として提供されるのであり;これらは如何なる形でも本発明の範囲を拘束するものではない。
【実施例】
【0102】
実施例1
1−[6−(1−エチル−1,2−ジヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの単離
1−[6−(1−エチル−1,2−ジヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オン(式I)は、1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オン(100mg)を投与した被験体から採取したヒト血清から単離した。プールした血清サンプル(3mL)に対して、0.05M炭酸緩衝液、pH10を添加した後、メチル−t−ブチルエーテルで抽出した。抽出物をHPLC−MSに注入し、その溶出液を1分間フラクションとして回収した。
1−[6−(1−エチル−1,2−ジヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オン(式I)の質量スペクトルは、m/z 453のプロトン化分子イオンを有し、これは、1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンよりも16ユニット大きい。m/z 453の衝突解離によりm/z 200のフラグメントイオンを確認した。
【0103】
実施例2
1−[6−(1−エチル−1,2−ジヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの生合成手順
1−[6−(1−エチル−1,2−ジヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オン(式I)は、1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オン(10μM)をO2/CO2(95/5)の雰囲気下、37℃で4時間、ヒト肝細胞(約1.0×106細胞/mL)と共にインキュベートすることによって生合成した。インキュベートの終了時に、0.05M炭酸緩衝液、pH10を添加し、その混合物に対してメチル−t−ブチルエーテルによる抽出を行った。その抽出物をHPLC−MSに注入した。
1−[6−(1−エチル−1,2−ジヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オン(式I)の質量スペクトルは、m/z 453のプロトン化分子イオンを有し、これは、1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンよりも16マスユニット大きい。m/z 453の衝突解離質量スペクトルは、とりわけ、m/z 435、378、320、200のフラグメントイオンを生じ、これらは構造的帰属と整合する。[MS(イオンスプレー,ポジティブモード,衝突解離):m/z 453(プロトン化分子イオン)435,378,377,320,200,174,164,146]。
このサンプルはHPCL−NMR分析にも供し、プロトンNMRスペクトルを得た。化学シフト(δ)は、MeCN−d3の残留プロトンのシフト1.93ppmを基準としたテトラメチルシランに対する相対的なppmで報告する。1HNMRスペクトルは、0.92ppmでの共鳴(d、3H、J=6.5Hz)及び3.95ppmでの共鳴(四重線、1H、J=6.5Hz)を含み、これらはその構造的帰属と整合する。
1H NMR(600MHz,MeCN−d3:(0.1% D2O中TFA−d))ppm 9.15(d,1H),8.51(dd,1H),7.93(d,1H),7.23−7.28(m,2H),7.20(d,1H),7.11(dd,1H),3.95(四重線,1H),3.72−3.79(m,2H),3.47(d,2H),3.03−3.26(m,7H),2.99(m,1H),2.82(s,3H),2.71(dd,1H),2.08−2.16(m,1H),1.98−2.04(m,2H),1.84−1.90(m,1H),0.92(d,3H),0.64(t,3H)。
【0104】
実施例3
グルクロニド抱合体
ジヒドロキシ代謝産物のグルクロニド抱合体の証拠は、ラットへの1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの投与及びHPLC−MSによる生体液の分析後に得た。m/z 629のプロトン化分子イオンを有する代謝産物は、親薬物への16マスユニット及び176マスユニットの付加(+酸素;+グルクロン酸)を示す。m/z 629のマスフラグメンテーションはm/z 453(176マスユニットのニュートラルロス)を生じ、これは、グルクロン酸抱合体の特徴的な質量スペクトルフラグメンテーションパターンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】

[式中、
1はH、OH、=O、O−グルクロニド、又はO−スルフェートであり;
2はH、OH、O−グルクロニド、又はO−スルフェートであり;
3はOH、O−グルクロニド、又はO−スルフェートであり、ただしR3がOHの場合、R1又はR2の少なくとも一方はOH、=O、O−グルクロニド、又はO−スルフェートである]
に相当する1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの単離及び精製された代謝産物、それらのラセミジアステレオマー混合物若しくは光学異性体、それらのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるそれらの塩、ラセミジアステレオマー混合物、若しくは光学異性体。
【請求項2】
式II’:
【化2】

[式中、
1はH、OH、=O、O−グルクロニド、又はO−スルフェートであり;
2はH、OH、O−グルクロニド、又はO−スルフェートであり;
3はOH、O−グルクロニド、又はO−スルフェートであり、ただしR3がOHの場合、R1又はR2の少なくとも一方はOH、=O、O−グルクロニド、又はO−スルフェートである]
に相当する請求項1に記載の代謝産物、それらのラセミジアステレオマー混合物及び光学異性体、それらのプロドラッグ、並びに該代謝産物、ラセミジアステレオマー混合物、又は光学異性体の薬学的に許容できる塩。
【請求項3】
式(I):
【化3】

に相当する請求項2に記載の代謝産物、それらのラセミジアステレオマー混合物及び光学異性体、それらのプロドラッグ、並びに該代謝産物、ラセミジアステレオマー混合物、光学異性体、及びプロドラッグの薬学的に許容できる塩。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の代謝産物及び薬学的に許容できる担体を含む薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の代謝産物を含む1−[6−(1−エチル−1−ヒドロキシ−プロピル)−ピリジン−3−イル]−3−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−ピロリジン−2−オンの代謝運命を評価するためのアッセイ。
【請求項6】
哺乳動物における、うつ病、不安、不安を随伴するうつ病、気分変調、心的外傷後ストレス障害、パニック性恐怖症、強迫性障害(OCD)、ツレット症候群が併存するOCD、境界人格障害、睡眠障害、精神病、痙攣、運動異常、ハンチントン病又はパーキンソン病の症状、痙性、癲癇に起因する痙攣の抑制、脳虚血、食欲不振、失神発作、運動低下、頭蓋外傷、薬物依存、早漏、月経前症候群(PMS)に関連する気分障害及び食欲障害、炎症性腸疾患、摂食行動の変化、炭水化物渇望の抑止、黄体期後期精神症状、禁煙による症状、パニック障害、双極性障害、睡眠障害、時差ボケ、認知障害、高血圧、過食症、食欲不振、肥満、心不整脈、ニコチン若しくはタバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、オピオイド又はコカインに対する依存または嗜癖から選択される薬物依存及び嗜癖;病的賭博;抜毛癖;頭痛、卒中、外傷性脳損傷(TBI)、精神病、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジー、運動過剰症、失読症、統合失調症、多発脳梗塞性痴呆、癲癇、アルツハイマー型老年痴呆(AD)、パーキンソン病(PD)、注意欠陥過活動性障害(ADHD)並びにツレット症候群から選択される障害又は状態の処置方法であって、そのような障害又は状態の処置に有効な量の請求項1〜3のいずれか一項に記載の一つ若しくはそれ以上の代謝産物又はそのような障害若しくは状態の処置に有効な薬学的に許容できるそれらの塩をそのような処置が必要な哺乳動物に投与することからなる、上記方法。
【請求項7】
哺乳動物におけるセロトニン作動性の神経伝達を増強することにより処置され得る障害又は状態を処置するための薬学的組成物であって、
a)薬学的に許容できる担体;
b)請求項1〜3のいずれか一項に記載の一つ又はそれ以上の代謝産物;及び
c)一つ若しくはそれ以上の5−HT再取込阻害薬又は薬学的に許容できるそれらの塩;
を含み、活性化合物の量はその組み合わせがそのような障害又は状態の処置に有効といえる量である、上記組成物。
【請求項8】
5−HT再取込阻害薬がセルトラリン又は薬学的に許容できるそれらの塩である、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
哺乳動物における、うつ病、不安、不安を随伴するうつ病、気分変調、心的外傷後ストレス障害、パニック性恐怖症、強迫性障害(OCD)、ツレット症候群が併存するOCD、境界人格障害、睡眠障害、精神病、痙攣、運動異常、ハンチントン病又はパーキンソン病の症状、痙性、癲癇に起因する痙攣の抑制、脳虚血、食欲不振、失神発作、運動低下、頭蓋外傷、薬物依存、早漏、月経前症候群(PMS)に関連する気分障害及び食欲障害、炎症性腸疾患、摂食行動の変化、炭水化物渇望の抑止、黄体期後期精神症状、禁煙による症状、パニック障害、双極性障害、睡眠障害、時差ボケ、認知障害、高血圧、過食症、食欲不振、肥満、心不整脈、ニコチン若しくはタバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、オピオイド又はコカインに対する依存または嗜癖から選択される薬物依存及び嗜癖;病的賭博;抜毛癖;頭痛、卒中、外傷性脳損傷(TBI)、精神病、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジー、運動過剰症、失読症、統合失調症、多発脳梗塞性痴呆、癲癇、アルツハイマー型老年痴呆(AD)、パーキンソン病(PD)、注意欠陥過活動性障害(ADHD)並びにツレット症候群から選択される障害又は状態の処置方法であって、そのような処置を必要とする哺乳動物に:
a)請求項1〜3のいずれか一項に記載の代謝産物;及び
b)5−HT再取込阻害薬又は薬学的に許容できるそれらの塩;
を投与することからなり、活性化合物の量はその組み合わせがそのような障害又は状態を処置するのに有効といえる量である、上記方法。
【請求項10】
5−HT再取込阻害薬がセルトラリンである、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2008−543829(P2008−543829A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516446(P2008−516446)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001775
【国際公開番号】WO2006/136945
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】