説明

センサ付き転がり軸受装置

【課題】信号処理部が出力する5つの信号の全ての線形性を良くできて、その後の物理量の算出を行う際の演算で生じる演算誤差を小さくでき、算出を目的とする物理量を正確に検出できるセンサ付き転がり軸受装置を提供すること。
【解決手段】ラジアル変位信号を求めるための変位検出部の出力を取り出す出力端子T、R、BおよびFとは別の出力端子YT、YR、YBおよびYFから、アキシアル変位信号をもとめるための出力を取り出すようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ付き転がり軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサ付き転がり軸受装置としては、特開2007−127253号公報(特許文献1)に記載されている車輪用転がり軸受装置がある。
【0003】
この車輪用転がり軸受装置は、インダクタンス型の変位検出部を、軸方向に2列に配置し、上記2列に配置された変位検出部からの信号を信号処理回路に入力して、信号処理回路で、4つの径方向の変位に関する信号と、1つの軸方向の変位に関する信号を算出し、これらの信号に基づいて、車輪用転がり軸受装置の3つの並進荷重と、2つのモーメント荷重とを算出するようになっている。
【特許文献1】特開2007−127253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の装置では、上記信号処理回路が有する各受動素子を、上記4つの径方向の変位に関する信号の線形性が良くなるように設定すると、1つの軸方向の変位に関する信号の線形性が悪くなり、逆に、上記信号処理回路が有する各受動素子を、上記1つの軸方向の変位に関する信号の線形性が良くなるように設定すると、4つの径方向の変位に関する信号の線形性が悪くなる。
【0005】
すなわち、5つの信号の全ての信号の線形性を良くすることが困難である。このことから、その後の演算において生じる演算誤差を小さくすることが難しい。
【0006】
そこで、本発明の課題は、信号処理部が出力する5つの信号の全ての線形性を良くできて、その後の物理量の算出を行う際の演算で生じる演算誤差を小さくでき、算出を目的とする物理量を正確に検出できるセンサ付き転がり軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明のセンサ付き転がり軸受装置は、
軌道面を内周面に有する第1軌道部材と、
軌道面と、環状の被変位検出部とを外周面に有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置された転動体と、
上記被変位検出部の径方向の変位と、上記被変位検出部の軸方向の変位とを検出するセンサ装置と
を備え、
上記センサ装置は、
上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第1変位検出部と、
上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第2変位検出部と、
上記第1変位検出部に上記軸方向に間隔をおいて位置すると共に、上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第3変位検出部と、
上記第2変位検出部に上記軸方向に間隔をおいて位置すると共に、上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第4変位検出部と
を有し、
上記第1変位検出部からの信号に基づいて、上記被変位検出部において互いに直交する2つの径方向の変位に基づく第1ラジアル変位信号および第2ラジアル変位信号を出力する第1信号処理部と、
上記第3変位検出部からの信号に基づいて、上記被変位検出部において互いに直交する2つの径方向の変位に基づく第3ラジアル変位信号および第4ラジアル変位信号を出力する第2信号処理部と、
上記第2変位検出部および上記第4変位検出部からの信号に基づいて、上記被変位検出部の軸方向の変位に基づくアキシアル変位信号を出力する第3信号処理部と
を備えることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、4つのラジアル変位信号の出力のための変位検出部および信号処理部と、アキシアル変位信号の出力のための変位検出部および信号処理部とが、異なっているから、4つのラジアル変位信号および1つのアキシアル変位信号の全ての信号の線形性を優れたものにすることができる。したがって、4つのラジアル変位信号および1つのアキシアル変位信号を用いる後段の演算における演算誤差を格段に小さくすることができる。したがって、検出すべき物理量、例えば、以下の実施形態で述べる5つの荷重の検出をより正確に行うことができる。
【0009】
また、一実施形態では、
上記第1変位検出部は、上記第2変位検出部、上記第3変位検出部および上記第4変位検出部の夫々は、周方向に略等間隔に配置された4つの部分からなり、
N1を、自然数とし、N2を、N1より小さい自然数とするとき、
上記第1変位検出部の上記各部分は、直接に接続されたN1個の第1コイル素子からなり、
上記第2変位検出部の上記各部分は、上記第1変位検出部の上記各部を構成する上記直接に接続されたN1個の第1コイル素子のうちで、直接に接続されたN2個の第1コイル素子からなり、
上記第3変位検出部の上記各部分は、直接に接続されたN1個の第2コイル素子からなり、
上記第4変位検出部の上記各部分は、上記第3変位検出部の上記各部を構成する上記直接に接続されたN1個の第2コイル素子のうちで、直接に接続されたN2個の第2コイル素子からなる。
【0010】
上記実施形態によれば、第1変位検出部を構成する複数の第1コイル素子の幾つかを、第2変位検出部を構成する第1コイル素子として兼用し、かつ、第3変位検出部を構成する複数の第2コイル素子の幾つかを、第4変位検出部を構成する第2コイル素子として兼用しているから、センサ装置の製造コストを大幅に削減できる。また、上記第1変位検出部および第2変位検出部を、同一の軸方向の位置に配置できると共に、第3変位検出部および第4変位検出部を、同一の軸方向の位置に配置できて、センサ装置の配置スペースを小さくできて、センサ付き転がり軸受装置をコンパクトにすることができる。
【0011】
また、一実施形態では、
上記第1信号処理部、上記第2信号処理部および上記第3信号処理部の夫々は、
第1ノードと、
第2ノードと、
上記第1ノードと上記第2ノードとの間に並列に接続された上記各部分およびコンデンサと、
上記第1ノードに一端が接続された抵抗と
を有し、
上記第1信号処理部の上記抵抗の抵抗値と、上記第2信号処理部の上記抵抗の抵抗値とは同一である一方、上記第1信号処理部の上記抵抗の抵抗値は、上記第3信号処理部の上記抵抗の上記抵抗値と異なる。
【0012】
上記実施形態によれば、上記第1信号処理部の上記抵抗の抵抗値と、上記第3信号処理部の上記抵抗の上記抵抗値とを互いに独立に適切に設定することにより、容易に、4つのラジアル変位信号および1つのアキシアル変位信号の線形性を優れたものにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセンサ付き転がり軸受装置によれば、4つのラジアル変位信号の出力のための変位検出部および信号処理部と、アキシアル変位信号の出力のための変位検出部および信号処理部とが、異なっているから、4つのラジアル変位信号および1つのアキシアル変位信号の全ての信号の線形性を優れたものにすることができる。したがって、4つのラジアル変位信号および1つのアキシアル変位信号を用いる後段の演算における演算誤差を格段に小さくすることができて、荷重信号等の検出すべき物理量の検出を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明のセンサ付き転がり軸受装置の一実施形態である従動輪用の車両用転がり軸受装置の軸方向の断面図である。
【0016】
この車両用転がり軸受装置は、内軸1、内輪2、第1軌道部材としての外輪3、転動体としての複数の第1の玉4、転動体としての複数の第2の玉5、ケース部材6、および、センサ装置10を備える。
【0017】
上記内軸1は、小径軸部19と、中径軸部20と、大径軸部21とを有している。上記小径軸部19の外周面には、ネジが形成されている。上記中径軸部20は、小径軸部19に段部18を介して連なると共に、小径軸部19の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部21は、中径軸部20の小径軸部19側とは反対側に位置している。上記大径軸部21は、中径軸部20に段部22を介して連なると共に、中径軸部20の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部21の外周面は、軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝23を有し、この軌道溝23の外径は、中径軸部20から離れるにしたがって、大きくなっている。
【0018】
上記内軸1は、センター穴31を有している。上記センター穴31は、内軸1の軸方向の大径軸部21側の端面の径方向の中央部に、形成されている。上記第センター穴31は、円筒状の部分を有し、軸方向に所定距離延在している。また、上記内軸1は、軸方向の大径軸部21側の端部に、ロータ(あるいは車輪)(図示せず)を取り付けるための、ロータ取付用のフランジ(あるいは車輪取付用のフランジ)50を有している。
【0019】
上記内輪2は、内軸1の中径軸部20の外周面に外嵌されて固定されている。上記内輪2の軸方向の大径軸部21側の端面は、上記段部22に当接している。上記内輪2は、その外周面の大径軸部21側に軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝28を有している。この軌道溝28の外径は、大径軸部21から離れるにしたがって、大きくなっている。上記内輪2の外周面は、軸方向の大径軸部21側とは反対側に、円筒外周面26を有し、この円筒外周面26は、軌道溝28の大径軸部21側とは反対側に位置する軌道肩部29に段部30を介して連なっている。軌道肩部29は、円筒外周面35を有している。内輪2の外周面の軸方向の端部に位置する円筒外周面26の外径は、軌道肩部29の円筒外周面35の外径よりも小さくなっている。
【0020】
内輪2の軸方向の大径軸部21側の端面は、段部22に当接している。図1に示すように、ナット63が、小径軸部19のネジに螺合している。内輪2の軸方向の大径軸部21側とは反対側の端面は、ナット63の軸方向の大径軸部21側の端面に当接している。ナット63を、軸方向の大径軸部21側に所定距離ネジ込むことにより、内輪2を、内軸1に確実に固定するようになっている。
【0021】
上記外輪3は、大径軸部21の径方向の外方に位置している。上記外輪3の内周面は、軌道面としてのアンギュラ型の第1軌道溝44と、軌道面としてのアンギュラ型の第2軌道溝45とを有している。上記外輪3は、車体への固定のための車体取付用のフランジ75を有している。上記複数の第1の玉4は、内輪2の軌道溝28と、外輪3の第1軌道溝44との間に、第1保持器40によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されており、上記複数の第2の玉5は、内軸1の軌道溝23と、外輪3の第2軌道溝45との間に、第2保持器41によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。
【0022】
上記ケース部材6は、筒部材52と、円板状の蓋部材53とで構成されている。筒部材52の内周面の外輪3側の端部は、外輪3の外周面の小径軸部19側の端部に止めネジ55により固定されている。一方、蓋部材53は、筒部材52の外輪側とは反対側の開口を閉塞している。このようにして、センサ付き転がり軸受装置の内部へ異物が侵入するのを防止している。
【0023】
上記センサ装置10は、第1変位検出部70、第2変位検出部70、第3変位検出部71、第4変位検出部71およびターゲット部材73を有する。上記第2変位検出部70は、第1変位検出部70の一部からなり、第1変位検出部70の一部は、第1変位検出部70および第2変位検出部70で兼用されている。図1に70で示されているのは、第1変位検出部および第2変位検出部の兼用部分である。
【0024】
また、上記第4変位検出部71は、第3変位検出部71の一部からなり、上記第3変位検出部71の一部は、第3変位検出部71および第4変位検出部71で兼用されている。図1に71示されているのは、第3変位検出部および第4変位検出部の兼用部分である。
【0025】
このことから、上記第1変位検出部70と、第2変位検出部70とは、配置された箇所の軸方向の位置が同一であり、第3変位検出部71と、第4変位検出部71とは、配置された箇所の軸方向の位置が同一である。
【0026】
上記第1乃至第4変位検出部70,71は、筒部材52の内周面に固定されている。一方、ターゲット部材73は、筒形状を有している。ターゲット部材73の軸方向の一端部は、内輪2の円筒外周面26に圧入によって押しこまれている。上記ターゲット部材73の一端部は、内輪2の外周面の一端部としての円筒外周面26に外嵌されて固定されている。上記内軸1、内輪2およびターゲット部材73は、第2軌道部材を構成している。また、ターゲット部材73の外周面は、被変位検出部になっている。
【0027】
図2は、図1における第1変位検出部70の周辺の拡大断面図である。
【0028】
上記第3変位検出部71は、第1変位検出部70よりも車輪側(ロータ取付用のフランジ50側)に位置している。第1および第3変位検出部70,71の夫々は、筒部材52の内周面に固定されている。上記第1変位検出部70は、第3変位検出部71と同一であり、第1変位検出部70は、第3変位検出部71に対して軸方向に間隔において配置されている。第1変位検出部70は、第3変位検出部71に略軸方向に重なっている。
【0029】
図3は、この車両用転がり軸受装置が、車両の所定位置に設置されている状態における、第1変位検出部70の周方向の構成を示す周方向の配置図である。
【0030】
上記第1変位検出部70は、4つの部分からなる。具体的には、上記第1変位検出部70は、第1部分103、第2部分104、第3部分105、第4部分106からなり、第1部分103は、図3において点線101で囲まれた領域に存在する4つの第1コイル素子103a、103b、103c、103dからなる。
【0031】
また、第2部分104は、図3において、第1コイル素子103dから時計回りに次の4つの第1コイル素子からなり、第3部分105は、時計回りに、その次の4つの第1コイル素子からなり、第4部分106は、時計回りに、その次の4つの第1コイル素子からなる。
【0032】
尚、図3において、紙面の上方は、車両用転がり軸受装置が、車両の所定位置に設置されている状態における、鉛直方向上方に相当し、紙面の下方は、鉛直方向下方に相当し、紙面の右側は、車両用転がり軸受装置が設置されている車両のリア側に相当し、紙面の左側は、上記車両のフロント側に相当する。
【0033】
図3に示すように、各第1コイル素子は、その検出面(図3においては、222で示す)を、筒部材52の径方向の内方に向けるように配置されている。各第1コイル素子103a、103b、103c、103dは、筒部材52の径方向に延在している。
【0034】
図4は、上記第1部分103の4つの第1コイル素子103a、103b、103c、103dの接続関係を示す模式図である。
【0035】
図4に示すように、4つの第1コイル素子103a、103b、103c、103dは、直列に接続されている。図4に図示はしないが、第1コイル素子103aと、第1コイル素子103bとは、筒部材52(図3参照)の径方向の内方側において接続され、第1コイル素子103bと、第1コイル素子103cとは、上記径方向の外方において接続され、第1コイル素子103cと、第1コイル素子103dとは、上記径方向の内方側において接続されている。
【0036】
直列に配置された4つ第1コイル素子103a、103b、103c、103dに電流が流れた際、各第1コイル素子103a、103b、103c、103dの巻方向は、ある瞬間において、第1コイル素子103aは、径方向の内方側がN極、第1コイル素子103bは、径方向の内方側がS極、第1コイル素子103cは、径方向の内方側がS極、第1コイル素子103dは、径方向の内方側がN極になるように、配線が巻かれている。
【0037】
各第1コイル素子103a、103b、103c、103dにおけるインダクタンスをL、コイルが巻かれている材質の径方向の内方の端面(検出面)の面積をA、その材質の透磁率をμ、コイルの巻き数をN、上記端面(検出面)からターゲット部材73(図2参照)までの間隔(ギャップ)をdとすると、次式(a)が成立する。
L=A×μ×N/d ・・・(a)
【0038】
したがって、ターゲット部材73(図2参照)までのギャップdが変化すると、各第1コイル素子103a、103b、103c、103dのインダクタンスLが変化して、各1コイル素子103a、103b、103c、103dにおいて、出力電圧が変化する。この車輪用転がり軸受装置は、各1コイル素子103a、103b、103c、103dの出力電圧に基づく第1部分103の出力電圧の変動を検出することにより、上記端面(検出面)からターゲット部4までの径方向のギャップを検出するようになっている。上述のように、4つの第1コイル素子103a、103b、103c、103dを直列に接続しているから、第1変位検出部70の出力電圧を大きくすることができる。
【0039】
図5は、第1変位検出部70を構成する複数の第1コイル素子のうちの1つの第1コイル素子103aの検出面A1と、その第1コイル素子103aに略軸方向に重なる第3変位検出部71を構成する複数の第2コイル素子のうちの1つの第2コイル素子153aの検出面A2との位置関係を示す図である。
【0040】
図5に示すように、ターゲット部材73の外周面である被変位検出部は、第1環状溝134および第2環状溝135を有している。第1環状溝134および第2環状溝135は、周方向に延在している。上記第1環状溝134および第2環状溝135の夫々は、断面矩形の形状を有している。上記第2環状溝135は、第1環状溝134に対して軸方向に間隔をおいて第1環状溝134の車輪側に位置している。
【0041】
尚、図示しないが、車輪用転がり軸受装置に荷重が一切作用していない状態において、第1変位検出部70を構成する16個の各第1コイル素子103a、103b、103c、103d、…と、この16個の各第1コイル素子103a、103b、103c、103d、…に軸方向に重なる第3変位検出部71を構成する16個の各第2コイル素子と、第1環状溝134と、第2環状溝135との関係は、全て同一の位置関係になっている。また、第1変位検出部70および第3変位検出部71を構成する都合32個のコイル素子は、コイルの巻き方を除いて同一のコイル素子となっている。
【0042】
図5に示すように、軸方向において、検出面A1の中央部は、第1環状溝134の第2環状溝135側の縁に略一致している一方、検出面A2の中央部は、第2環状溝135の第1環状溝134側の縁に略一致している。
【0043】
この状態から仮にターゲット部材73が軸方向の蓋部材53側に距離δだけ変位したとすると、検出面A1と第1環状溝134との軸方向のラップ長(軸方向の重なっている長さ)が減少する一方、検出面A2と第2環状溝135との軸方向のラップ長(軸方向の重なっている長さ)が増大する。このことから、第1コイル素子103aのギャップの変位検出値が減少する一方、第2コイル素子153aのギャップの変位検出値が増大する。このように、ターゲット部材73が軸方向に変位すると、第1コイル素子103aが検出する変位検出値と、第2コイル素子153aとが検出する変位検出値とに差が生じる。
【0044】
第1環状溝134および第2環状部135は、ターゲット部材73が軸方向に移動した場合に、各第1コイル素子と、その第1コイル素子に軸方向に略重なる各第2コイル素子とが検出する変位検出値を正負逆向きに変化させるように、第1および第2コイル素子に対する軸方向位置が設定されている。第1コイル素子の変位検出値と、第2コイル素子の変位検出値の差を取ることにより、被変位検出部(内輪2、内軸1)の軸方向の並進量(軸方向の変位であり、並進荷重と相関関係がある)を検出するようになっている。
【0045】
車両の中心側(以下、インナ側という)の第1変位検出部の各部分103,104,105,106の変位検出値と、この各部分103,104,105,106に軸方向に重なる車輪側(以下、アウタ側という)の第3変位検出部71の各部分の変位検出値との差を取ることにより、第2軌道部材の軸方向への単位並進量に対する変位検出値が増幅され、これによってセンサ装置10の軸方向の変位の検出感度を高めることができるのである。
【0046】
尚、図5に図示した配置とは逆に、インナ側の第1環状溝を、第1変位検出部の検出面に対してアウタ側にずらし、アウタ側の第2環状溝を第3変位検出部の検出面に対してインナ側にずらして配置しても良く、この場合でも上記配置と同様の作用効果が得られる。
【0047】
図6は、第1変位検出部70の出力を処理する第1信号処理部の一部の一例としてのギャップ検出回路90を示す図である。尚、図6においては、第1変位検出部70において、車両の前後方向に位置する第1部分103および第3部分105、および、鉛直方向に位置する第2部分104および第4部分106を単純化して、簡略化して描いている。また、図6において、矢印AおよびBは、対応を示している。
【0048】
図6に示すように、第1変位検出部70において、鉛直方向に位置する第2部分104および第4部分106の夫々は、発振器130に接続されている。発振器130から一定周期の交流電流が、第2部分104および第4部分106に供給されるようになっている。第2部分104および第4部分106の夫々には、同期用のコンデンサ131,139が並列に接続されている。
【0049】
図6に示すように、上記第1信号処理部は、第1ノード381と第2ノード382と、第1ノード381と第2ノード382との間に並列に接続された第1変位検出部の第4部分106およびコンデンサ131と、第1ノード381に一端が接続された抵抗120とを有する。
【0050】
また、上記第1信号処理部は、第1ノード383と第2ノード384と、第1ノード383と第2ノード384との間に並列に接続された第1変位検出部の第2部分104およびコンデンサ139と、第1ノード383に一端が接続された抵抗121とを有する。
【0051】
上記第2部分104と、第4部分106の出力電圧(検出値)を、差動アンプ132に入力して、上記同一直線の方向(鉛直方向)に対応する出力電圧(第1ラジアル変位信号)とすることにより、温度ドリフトを取り除くようにしている。なお、図示していないが、前後方向に位置する第1部分103および第3部分105についても、上記と同様に差動アンプで差を取ることによって温度ドリフトを取り除き、第2ラジアル変位信号を出力するようになっている。
【0052】
上記第1信号処理部90は、図6に示す鉛直方向用の信号処理回路と、これと同様の構成を有する前後方向用の信号処理回路(図示せず)とからなっている。
【0053】
また、説明は省略するが、第3信号処理部は、第1信号処理部と同様の構成を有し、図6に示すような鉛直方向用の信号処理回路と、前後方向用の信号処理回路とからなっている。
【0054】
再び、図3を参照して、上記第2変位検出部は、4つの部分からなる。具体的には、上記第2変位検出部は、第1部分203、第2部分204、第3部分205、第4部分206からなり、第1部分203は、図3において点線101で囲まれた領域に存在する4つの第1コイル素子103a、103b、103c、103dのうちの2つの第1コイル素子、具体的には、第1コイル素子103a、103bからなる。
【0055】
また、第2部分204は、図3において、第1コイル素子103dから時計回りに次の2つの第1コイル素子からなり、第3部分205は、時計回りに、第2部分204から二つの第1コイル素子をとばして、その次の2つの第1コイル素子からなり、第4部分206は、時計回りに、第3部分205から二つの第1コイル素子をとばして、その次の2つの第1コイル素子からなる。この関係は、第2変位検出部と第4変位検出部との関係においても同様に成立する。
【0056】
すなわち、第4変位検出部も4つの部分からなり、第4変位検出部の各部分は、第3変位検出部の各部分の4つの第2コイル素子のうちの2つの第2コイル素子からなっている。第2変位検出部と第4変位検出部とは、軸方向に略重なっている。
【0057】
図4を参照すると、第2変位検出部の第1部分203は、直接に接続された2つの第1コイル素子103a、103bからなる。
【0058】
第2変位検出部の各部分の出力と、その各部分に軸方向に重なる第4変位検出部の各部分の出力とは、第3信号処理部としての、図6に示す回路と同様の構成の回路によって、差動増幅されるようになっている。
【0059】
ここで、図6に120で示す抵抗の抵抗値と、121で示す抵抗の抵抗値とは、第1および第3変位検出部からの信号を処理する信号処理回路と、第2および第4変位検出部からの信号を処理する信号処理回路とで、異なる値に設定されている。各信号処理回路での上記抵抗の抵抗値は、各信号処理回路での出力信号である差動増幅された信号の線形性が良い値に設定されている。
【0060】
図7は、車輪に作用している5つの荷重を算出(以下に詳述する)する途中の過程において、従来使用されていた演算法を示す図であり、図8は、本発明の装置で、車輪に作用している5つの荷重を算出する途中の過程において、使用されている演算法を示す図である。
【0061】
図7に示すように、従来の方法では、変位検出部が、軸方向に2列に配置された第1および第2変位検出部しかなく、ラジアル方向の変位を算出するときと、アキシアル方向の変位を算出するときで、同じ変位検出部の出力を用いて、演算がおこなわれている。
【0062】
これに対し、図3を参照して、本願発明では、ラジアル方向の変位においては、4つの直列に接続されたコイル素子からなる第1および第3変位検出部からの出力(図3においては、R(リア)、F(フロント)、T(トップ)およびB(ボトム)での出力)から算出する一方、アキシアル方向においては、2つの直列に接続されたコイル素子からなる第2および第4変位検出部からの出力(図3においては、YR、YF、YTおよびYBでの出力)から算出している(尚、図3、図4において、GND、R、YRは対応している)。
【0063】
したがって、本実施形態では、図8に示すように、ラジアル方向の信号処理と、アキシアル方向の信号処理を、互いに独立に行うことができる。すなわち、本実施形態では、差動信号の出力の線形性を高めるのに、ラジアル変位の算出を行う信号処理部と、アキシアル変位の算出を行う信号処理部で、図6で抵抗120、抵抗121に相当する抵抗を、互いに独立に設定できて、全ての信号の線形性を優れたものにすることができるのである。
【0064】
図9は、図6に示す従来演算を用いる装置において、各信号処理回路が出力した信号の一例を示す図であり、図10は、本実施形態の装置において、各信号処理回路が出力した信号の一例を示す図である。
【0065】
図9と、図10とを比較して、本実施形態の装置において、従来装置と比較して、各信号の線形性が格段に向上されている。このことから、本実施形態の装置では、従来装置と比較して、演算誤差を格段に小さくすることができて、検出すべき物理量(本実施形態では、以下に示す5つの荷重)を、正確に検出することができる。
【0066】
図11は、各信号処理回路における、図6に120および121に示す抵抗の抵抗値の設定方法について説明する模式図である。
【0067】
図11に示すように、図6に120および121に示す抵抗の抵抗値が適正値よりも大きいと、出力信号が下に凸の曲線になり、逆に抵抗の抵抗値が適切値よりも小さいと、出力信号が上に凸の曲線になる。この現象を利用して、抵抗の抵抗値を適正値(出力が直線になる値)に設定することができる。
【0068】
本実施形態の装置は、各信号処理回路に接続された演算部を有し、この演算部で、車輪に作用する各方向のモーメント荷重及び並進荷重を、算出している。
【0069】
図12は、方向について説明する図である。
【0070】
図12に示すように、本実施形態では、車輪の前後水平方向をx軸方向、車輪の左右水平方向(軸方向)をy軸方向、車輪の上下方向をz軸方向と定義する。
【0071】
また、インナ側(車両の中心側)の第1変位検出部の各部分の出力信号に、添え字「1」を使用し、アウタ側(車輪側)の変位検出部の各部分の出力信号に、添え字「2」を使用する。また、上述のように、車両の前側、後側、上側および下側に各変位検出部の各部分を配置し、前側の部分の変位検出値を「f(front)」と定義し、後側の部分の変位検出値を「r(rear)」と定義し、上側の部分の変位検出値を「t(top)」と定義し、下側の部分の変位検出値を「b(bottom)」と定義する。
【0072】
したがって、第1乃至第4変位検出部の各16つの部分の出力信号は、次のように定義できる。
f1:第1変位検出部のf配置部分の変位検出値
r1:第1変位検出部のr配置部分の変位検出値
t1:第1変位検出部のt配置部分の変位検出値
b1:第1変位検出部のb配置部分の変位検出値
f2:第3変位検出部のf配置部分の変位検出値
r2:第3変位検出部のr配置部分の変位検出値
t2:第3変位検出部のt配置部分の変位検出値
b2:第3変位検出部のb配置部分の変位検出値
Yf1:第2変位検出部のf配置部分の変位検出値
Yr1:第2変位検出部のr配置部分の変位検出値
Yt1:第2変位検出部のt配置部分の変位検出値
Yb1:第2変位検出部のb配置部分の変位検出値
Yf2:第4変位検出部のf配置部分の変位検出値
Yr2:第4変位検出部のr配置部分の変位検出値
Yt2:第4変位検出部のt配置部分の変位検出値
Yb2:第4変位検出部のb配置部分の変位検出値
【0073】
更に、5つの差動信号、x1、x2、z1、z2およびy1を、次のように定義する。
x1=f1−r1
x2=f2−r2
z1=b1−t1
z2=b2−t2
y1=Yf2+Yr2+Yt2+Yb2−(Yf1+Yr1+Yt1+Yb1)
【0074】
上述のように、各変数を定義した場合、
上記5つの値、x1、x2、z1、z2およびy1と、
車輪用転がり軸受装置に作用しているx方向の力の大きさ(Fx)、車輪用転がり軸受装置に作用しているy方向の力の大きさ(Fy)、車輪用転がり軸受装置に作用しているz方向の力の大きさ(Fz)、車輪に作用しているx軸の回りのモーメント荷重の大きさ(Mx)、および、車輪に作用しているz軸の回りのモーメント荷重の大きさ(Mz)と
は、線形関係があり、下の関係(1)が成立する。

ここで、m11〜m55は、定数である。
【0075】
したがって、上記(1)から下の(2)式が導かれる。

【0076】
本実施形態の車輪用転がり軸受装置の上記演算部は、記憶部を有し、この記憶部には、上記(2)式のnij(iとjの夫々は、1〜5の値をとる)で示された5行5列の定数行列の25個の要素が、ルックアップテーブルとして、予めインプットされている。
【0077】
本実施形態の車輪用転がり軸受装置では、各センサが、信号処理部に信号を出力すると、信号処理部が、それらの信号に基づいて、差動信号x1、x2、z1、z2およびy1を算出する。そして、その後に、その算出されたx1、x2、z1、z2およびy1と、上記記憶部に記憶されている5行5列の定数行列の25個の要素nijとから(2)式の演算を行って、車輪用転がり軸受装置に作用している実際の力(荷重)であるFx、Fy、Fz、MxおよびMzを算出するようになっている。換言すると、本実施形態においては、上記nijを参照するだけで、簡単安価かつ正確に、車両の上下方向の並進荷重、車両の進行方向の並進荷重、車輪の軸方向の並進荷重、車両の上下方向の回りのモーメント荷重、車両の進行方向の回りのモーメント荷重を算出することができる。
【0078】
上記実施形態の車輪用転がり軸受装置によれば、4つのラジアル変位信号を出力する信号処理部と、アキシアル変位信号を出力する信号処理部とが、異なっているから、4つのラジアル変位信号および1つのアキシアル変位信号の全ての信号の線形性を優れたものにすることができる。したがって、4つのラジアル変位信号および1つのアキシアル変位信号を用いる後段の演算における演算誤差を格段に小さくすることができて、5つの荷重(3つの並進荷重と2つのモーメント荷重)の検出をより正確に行うことができる。
【0079】
また、上記実施形態の車輪用転がり軸受装置によれば、第1変位検出部70を構成する複数の第1コイル素子103a、103b、103c、103d、…のうちの幾つかの第1コイル素子103a、103b、…を、第2変位検出部を構成する第1コイル素子として兼用し、かつ、第3変位検出部71を構成する複数の第2コイル素子の幾つかを、第4変位検出部を構成する第2コイル素子として兼用しているから、センサ装置10の製造コストを大幅に削減できる。また、上記第1変位検出部70および第2変位検出部71を、容易に同じ軸方向の位置に配置できると共に、第3変位検出部および第4変位検出部を、容易に同じ軸方向の位置に配置できて、車輪用転がり軸受装置をコンパクトにできる。
【0080】
また、上記実施形態の車輪用転がり軸受装置によれば、上記第1信号処理部の抵抗120,121の抵抗値と、第3信号処理部の抵抗の抵抗値とを互いに独立に適切に設定しているから、容易に、4つのラジアル変位信号および1つのアキシアル変位信号の全ての信号の線形性を優れたものにすることができる。
【0081】
尚、上記実施形態の車両用転がり軸受装置では、被変位検出部が、内軸1と別体のターゲット部材73の外周面であったが、この発明では、ターゲット部材がなくて、被変位検出部が、内軸(または内輪)の外周面の一部であっても良い。また、上記実施形態の車両用転がり軸受装置では、内軸1に、内軸1と別体の内輪2が嵌合される構成であったが、この発明では、内輪がなくて、第2軌道部材が、内軸単体で構成されるか、または、内軸とターゲット部材で構成されても良く、内軸が、内軸の外周面に二つの軌道面を有する構成であっても良い。
【0082】
また、この発明で使用できるセンサ装置は、上記実施形態で用いたセンサ装置10に限らず、以下の図13、図14および図15に一部が示されるセンサ装置であっても良い。
【0083】
詳しくは、図13に示すセンサ装置400のように、ターゲット部材473に、環状溝134,135を形成せず、環状溝134,135が存在していた位置に、周囲の構成材料よりも大きい(或いは小さい)透磁率を有する環状帯部434,435を形成しても良い。上記環状帯部434,435は、例えば鋼材の場合には、含有カーボン量を変えることによって、形成することができる。
【0084】
また、図14に示すセンサ装置500のように、ターゲット部材573において、上記実施形態において環状溝134,135が形成されていた位置に、外周面が円筒面の凸部541,542を形成し、上記実施形態において環状部150が形成されていた位置に、凸部541,542よりも丘部の外径が小さい環状部550を形成しても良い。
【0085】
また、図15に示すセンサ装置600のように、ターゲット部材673の外周面に、軸方向の断面において、傾斜方向が互いに逆向きの傾斜部643,644を形成しても良く、傾斜部643,644の一部に、溝を有する環状部を形成しても良い。なお、図15では、両傾斜部643,644は、接合部分が谷形となっているが、その接合部分を、山形となる両傾斜部としても良い。
【0086】
また、この発明のセンサ付き転がり軸受装置で使用できる環状溝は、図5に示す上記実施形態の環状溝134,135のように、断面矩形状の環状溝に限らない。
【0087】
例えば、図16に示すターゲット部材700の軸方向の模式断面図に示すように、環状のターゲット部材700の外周面に軸方向に間隔をおいて配置されると共に、断面二等辺三角形状または断面正三角形状の2つの環状溝734,735を使用することもできる。尚、図16において、738および739は、従来の溝の位置を示す仮想線である。
【0088】
図17は、図16に示す断面二等辺三角形状の環状溝734,735を有するターゲット部材700を使用した場合の、Y1信号の波形を示す図である。
【0089】
一実験例によると、本発明者は、ターゲット部材に形成する環状溝として、図5に示す断面矩形状の環状溝134,135を使用した場合よりも、図16に示す断面二等辺三角形状の環状溝734,735を使用した方が、各出力信号の線形性を良くすることができることを確認した。
【0090】
このことから、ターゲット部材に形成する環状溝として、図16に示す断面二等辺三角形状の環状溝734,735を使用すると、更に、検出すべき物理量の検出を正確に行うことができる。
【0091】
尚、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、変位検出部70,71を、筒部材52に固定したが、この発明では、変位検出部を、外輪に直接取り付けても良い。
【0092】
また、上記実施形態では、センサ付き転がり軸受装置が、車輪用転がり軸受装置であったが、この発明のセンサ付き転がり軸受装置は、従動輪用または駆動輪用の車輪用転がり軸受装置に限らず、例えば磁気軸受装置等の車輪用転がり軸受装置以外の如何なる軸受装置であっても良い。上記実施形態で説明した本発明の構成を、複数のモーメント荷重や並進荷重を測定するニーズのある各種軸受装置に適用することができるのは、言うまでもないからである。
【0093】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受では、センサ付き転がり軸受の転動体が玉であったが、この発明では、センサ付き転がり軸受の転動体が、ころであっても良く、また、ころおよび玉を含んでいても良い。
【0094】
また、上記実施形態の車輪用転がり軸受装置では、第2変位検出部が、第1変位検出部の一部からなっていると共に、第4変位検出部が、第3変位検出部の一部からなっていたが、この発明では、第1変位検出部が、第2変位検出部の一部からなっていると共に、第3変位検出部が、第4変位検出部の一部からなっていても良い。また、異なる変位検出部で兼用されるコイル素子が一切なく、第1乃至第4変位検出部の全てが、互いに独立であっても良い。本発明では、第1変位検出部と第3変位検出部とが、軸方向に離間されて配置され、また、第2変位検出部と第4変位検出部とが、軸方向に離間されて配置されていさえすれば良いからである。
【0095】
また、上記実施形態の車輪用転がり軸受装置では、各変位検出部が、リア方向、フロント方向、トップ方向、ボトム方向に配置された4つの部分からなっていたが、この発明では、各変位検出部は、4つ以外の部分からなっていても良く、1乃至3の部分からなっていても良く、5つ以上の部分からなっていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明のセンサ付き転がり軸受装置の一実施形態である従動輪用の車両用転がり軸受装置の軸方向の断面図である。
【図2】図1における第1変位検出部の周辺の拡大断面図である。
【図3】この車両用転がり軸受装置が、車両の所定位置に設置されている状態における、第1変位検出部の周方向の構成を示す周方向の配置図である。
【図4】第1変位検出部の第1部分の4つの第1コイル素子の接続関係を示す模式図である。
【図5】第1変位検出部を構成する複数の第1コイル素子のうちの1つの第1コイル素子の検出面と、その第1コイル素子に略軸方向に重なる第3変位検出部を構成する複数の第2コイル素子のうちの1つの第2コイル素子の検出面との位置関係を示す図である。
【図6】第1変位検出部の出力を処理する第1信号処理部の一部の一例としてのギャップ検出回路を示す図である。
【図7】車輪に作用している5つの荷重を算出(以下に詳述する)する途中の過程において、従来使用されていた演算法を示す図である。
【図8】本発明の装置で、車輪に作用している5つの荷重を算出する途中の過程において、使用されている演算法を示す図である。
【図9】図6に示す従来演算を用いる装置において、各信号処理回路が出力した信号の一例を示す図である。
【図10】本実施形態の装置において、各信号処理回路が出力した信号の一例を示す図である。
【図11】各信号処理回路における、図6に示す抵抗の抵抗値の設定方法について説明する模式図である。
【図12】方向について説明する図である。
【図13】本発明で使用できるセンサ装置の一部を示す図である。
【図14】本発明で使用できるセンサ装置の一部を示す図である。
【図15】本発明で使用できるセンサ装置の一部を示す図である。
【図16】本発明で使用できるセンサ装置の一部を示す図である。
【図17】図16に示す断面二等辺三角形状の環状溝を有するターゲット部材を使用した場合の、Y1信号の波形の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1 内軸
2 内輪
3 外輪
4 第1の玉
5 第2の玉
70 第1変位検出部
71 第3変位検出部
73 ターゲット部材
第1変位検出部の第1部分 103
第1変位検出部の第2部分 104
第1変位検出部の第3部分 105
第1変位検出部の第4部分 106
第1コイル素子 103a、103b、103c、103d
第2コイル素子 153a
第2変位検出部の第1部分 203
第2変位検出部の第2部分 204
第2変位検出部の第3部分 205
第2変位検出部の第4部分 206

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道面を内周面に有する第1軌道部材と、
軌道面と、環状の被変位検出部とを外周面に有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置された転動体と、
上記被変位検出部の径方向の変位と、上記被変位検出部の軸方向の変位とを検出するセンサ装置と
を備え、
上記センサ装置は、
上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第1変位検出部と、
上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第2変位検出部と、
上記第1変位検出部に上記軸方向に間隔をおいて位置すると共に、上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第3変位検出部と、
上記第2変位検出部に上記軸方向に間隔をおいて位置すると共に、上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第4変位検出部と
を有し、
上記第1変位検出部からの信号に基づいて、上記被変位検出部において互いに直交する2つの径方向の変位に基づく第1ラジアル変位信号および第2ラジアル変位信号を出力する第1信号処理部と、
上記第3変位検出部からの信号に基づいて、上記被変位検出部において互いに直交する2つの径方向の変位に基づく第3ラジアル変位信号および第4ラジアル変位信号を出力する第2信号処理部と、
上記第2変位検出部および上記第4変位検出部からの信号に基づいて、上記被変位検出部の軸方向の変位に基づくアキシアル変位信号を出力する第3信号処理部と
を備えることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記第1変位検出部は、上記第2変位検出部、上記第3変位検出部および上記第4変位検出部の夫々は、周方向に略等間隔に配置された4つの部分からなり、
N1を、自然数とし、N2を、N1より小さい自然数とするとき、
上記第1変位検出部の上記各部分は、直接に接続されたN1個の第1コイル素子からなり、
上記第2変位検出部の上記各部分は、上記第1変位検出部の上記各部を構成する上記直接に接続されたN1個の第1コイル素子のうちで、直接に接続されたN2個の第1コイル素子からなり、
上記第3変位検出部の上記各部分は、直接に接続されたN1個の第2コイル素子からなり、
上記第4変位検出部の上記各部分は、上記第3変位検出部の上記各部を構成する上記直接に接続されたN1個の第2コイル素子のうちで、直接に接続されたN2個の第2コイル素子からなることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項3】
請求項2に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記第1信号処理部、上記第2信号処理部および上記第3信号処理部の夫々は、
第1ノードと、
第2ノードと、
上記第1ノードと上記第2ノードとの間に並列に接続された上記各部分およびコンデンサと、
上記第1ノードに一端が接続された抵抗と
を有し、
上記第1信号処理部の上記抵抗の抵抗値と、上記第2信号処理部の上記抵抗の抵抗値とは同一である一方、上記第1信号処理部の上記抵抗の抵抗値は、上記第3信号処理部の上記抵抗の上記抵抗値と異なることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−156677(P2009−156677A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334129(P2007−334129)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】