説明

センサ装置

【課題】回路規模を大きくすることなく、増幅過程において混入したノイズ成分を除去して、デジタル変換することができるセンサ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】電圧検出型のセンサ部20と、センサ部20から出力される電圧信号を所定のチョッピング周波数でチョッピングして変調信号を生成し、当該変調信号を増幅して増幅信号とした後、当該増幅信号を復調して出力信号として出力するチョッパアンプ部10と、非反転入力端子と反転入力端子との間の電圧差を増幅するオペアンプ14、オペアンプの反転入力端子に接続された入力抵抗R1、及び、オペアンプ14の反転入力端子と出力端子との間に接続されたコンデンサC1が設けられ、チョッパアンプ部10から出力される出力信号を、所定のサンプリング周波数でサンプリングし、サンプリングされた出力信号を積分する積分部13と、積分部13によって積分された出力信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量を検出するセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、物理量を電気量に変換するセンサ部を備えたセンサ装置が知られている。この種のセンサ装置として、例えば、物体から放たれる赤外線を吸収することによって、物体の温度を測定する熱電対が挙げられる。
【0003】
この種の熱電対は、温度の温度変化量を電圧信号で表す。熱電対は、例えば、温度変化量が1度である場合には、その温度変化量を2,3μVの電圧値の電圧信号で表す。
【0004】
このように、温度変化量は微小な電圧値の電圧信号で表される。そのため、その電圧信号を用いて物体の温度を精度良く測定するためには、当該電圧信号を高い利得で増幅することが要される。
【0005】
従って、従来から、センサ装置では、熱電対などのセンサ部から電圧信号を受け取り、その電圧信号を増幅する増幅器が設けられている。しかしながら、このような増幅器からの出力には、増幅器固有のオフセット電圧、低周波数の1/fノイズが混入し易い。
【0006】
ところで、従来から、増幅器固有のオフセット電圧、低周波数の1/fノイズを効率良く取り除くためのチョッピング技術が広く知られている。この種のチョッピング技術は、例えば、非特許文献1及び2に記載されており、増幅器による増幅処理において混入したオフセット電圧及び1/fノイズ部分を電圧信号から分離する。
【0007】
この種のチョッピング技術は、オフセット電圧及び1/fノイズ部分の周波数を、チョッピング周波数及びその周波数の奇数倍の周波数に変換する。一方、温度変化を表す電圧信号部分の周波数を、低周波数帯の周波数に変換する。これにより、チョッピング周波数及びその周波数の奇数倍の周波数を有するオフセット電圧及び1/fノイズ部分だけが、ローパスフィルタによって除去されうる状態となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Diels, Roger, ”Reliable, High Quality Infrared Sensors Have Found Their Way Into Automotive Climate Control”, Melexis Product Sheet
【非特許文献2】Bakker, A and Huijsing, J.h., “A CMOS Chopper Opamp with Integrated Low-Pass Filter”, Proceedings of the 23rd European Solid-State Circuits Conference, 1997 ESSCIRC’ 97
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、センサ装置において、上記したように、チョッピング周波数及びその奇数倍の周波数を有するオフセット電圧及び1/fノイズ部分だけを、ローパスフィルタによって除去し、低周波数帯にある温度変化を表す電圧信号部分だけを取り出すことは、以下の問題をはらんでいる。
【0010】
すなわち、増幅処理において混入するオフセット電圧及び1/fノイズは極めて低い低周波数帯に存在する。このような周波数帯に存在するオフセット電圧及び1/fノイズが、チョッピング技術によって、チョッピング周波数及びその奇数倍の周波数を有するように処理される。そして、温度変化を表す電圧信号部分が、低周波数帯の周波数を有するように処理される。
【0011】
このような低い周波数帯の、温度変化を表す電圧信号部分だけを精度よく取り出すためには、低いカットオフ周波数を有するローパスフィルタが必要となる。ここに、ローパスフィルタのカットオフ周波数は、1/(2πRC)(但し、Rは抵抗値、Cは静電容量)で表される。
【0012】
そして、低いカットオフ周波数をローパスフィルタが有するためには、RCで表される時定数が大きいことが必要となる。このように、RCで表される時定数を大きくするためには、抵抗値及び静電容量のいずれか一方が大きいことが必要となる。
【0013】
一般に、チョッピングを行う構成要素、及び、ローパスフィルタは、モノリシック集積回路に実装されている。しかしながら、ローパスフィルタの時定数を大きくするために、例えば、抵抗器の数を増やしたり大きなコンデンサを使用すると、ローパスフィルタの回路規模が大きくなってしまう。すると、センサ装置の回路規模が大きくなってしまう。
【0014】
また、最近では、物体の温度をさらに精度良く測定するために、ローパスフィルタを通過した電圧信号部分をデジタル信号に変換するデジタル変換部が設けられていることが多い。このようなデジタル変換部は、多数の構成要素からなるので、さらに、センサ装置の回路規模が大きくなってしまう。
【0015】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、回路規模を大きくすることなく、増幅過程において混入したノイズ成分を除去して、デジタル変換することができるセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一局面に係るセンサ装置は、物理量を電圧値に変換し、当該電圧値を表す電圧信号を出力する電圧検出型のセンサ部と、前記センサ部から出力される前記電圧信号を所定のチョッピング周波数でチョッピングして変調信号を生成し、当該変調信号を増幅して増幅信号とした後、当該増幅信号を復調して出力信号として出力するチョッパアンプ部と、非反転入力端子と反転入力端子との間の電圧差を増幅するオペアンプ、前記オペアンプの反転入力端子に接続された入力抵抗、及び、前記オペアンプの前記反転入力端子と出力端子との間に接続されたコンデンサが設けられ、前記チョッパアンプ部から出力される前記出力信号を、所定のサンプリング周波数でサンプリングし、サンプリングされた前記出力信号を積分する積分部と、当該積分部によって積分された前記出力信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部と、を備えることを特徴とする(請求項1)。
【0017】
この構成によれば、少なくともオペアンプを有する積分部を備えている。
【0018】
一般に、オペアンプは、入力された信号の周波数が所定の周波数を超えると、その信号の周波数が大きくなるにつれて、増幅率が減少する性質を有しているので、積分部は、入力される出力信号の周波数が所定の周波数を超えると、その周波数が大きくなるにつれて増幅率を減少させる機能を有することができる。このような機能を積分部が有することによって、積分部は、入力される信号の周波数が所定の周波数以内の範囲内であればその信号を通過させる一方で、入力される信号の周波数が所定の周波数を超えるにつれてその信号を通過しにくくする。
【0019】
これにより、別途、ローパスフィルタを設けることが要されずに、積分部によってローパスフィルタとしての機能を実行させることができる。また、積分部による積分値がデジタル変換部によってデジタル信号に変換される。そのため、センサ装置の回路規模を大きくすることなく、増幅過程において混入したノイズ成分を除去して、デジタル変換することができるセンサ装置を提供することができる。
【0020】
上記構成において、前記サンプリング周波数を調整するサンプリング周波数調整部をさらに備える構成とすることができる(請求項2)。
【0021】
先述されたように、積分部では、入力される出力信号の周波数が所定の周波数を超えると、その周波数が大きくなるにつれて増幅率が減少する。そして、増幅率が減少する境となる所定の周波数は、サンプリング周波数の大きさにより決まる。
【0022】
結果として、積分部は、入力される出力信号の周波数がサンプリング周波数の大きさにより決まる或る周波数を超えるにつれてその出力信号を通過させにくくするローパスフィルタとして機能する。そのため、積分部は、サンプリング周波数の大きさが決まれば、そのサンプリング周波数の大きさによって決まる或る周波数を超えるノイズ成分を通過させにくくすることができる。
【0023】
この構成によれば、サンプリング周波数調整部によってサンプリング周波数が調整されるので、積分部に入力される出力信号に含まれる或る周波数帯のノイズ成分のうち、積分部を通過させにくくすべきノイズ成分の周波数を調整することができる。これにより、積分部を通過しようとしている出力信号に混入している或る周波数帯のノイズ成分のうち、サンプリング周波数の大きさで決まる或る周波数を超えるノイズ成分が除去される。結果として、積分部を通過する信号のうち、ノイズ成分が占める割合を調整することができる。
【0024】
上記構成において、前記チョッピング周期と、前記サンプリング周期とが同期しており、前記チョッピング周波数は、前記サンプリング周波数のn倍(但し、nは1以上の自然数)である構成とすることができる(請求項3)。
【0025】
一般に、積分器(積分部)に入力される出力信号の周波数が、0〜サンプリング周波数まで増加すると、積分器から出力される信号の電圧値が所定の電圧値から0に減少する。その後、積分器に入力される出力信号の周波数が、サンプリング周波数の2以上の自然数倍となる毎に、積分器から出力される信号の電圧値が0となる。つまり、積分器に入力される出力信号の周波数が、サンプリング周波数の倍数となる度に、積分器から出力される信号の電圧値が0となる(非特許文献2及び図5参照)参照)。
【0026】
また、一般に、チョッパアンプ部における増幅過程において電圧信号に混入したノイズ成分は、チョッピング周波数及びその奇数倍の周波数を有する増幅信号となる。
【0027】
この構成によれば、チョッピング周期とサンプリング周期とが同期しており、チョッピング周波数は、前記サンプリング周波数のn倍(但し、nは1以上の自然数)である。これにより、チョッピング周波数及びその奇数倍の周波数が、積分器から出力される出力信号の電圧値が0となるサンプリング周波数及びその倍数の周波数と一致する。
【0028】
そのため、チョッピング周波数又はその奇数倍の周波数を有する電圧信号が積分器(積分部)に入力されても、積分器から出力される出力信号の電圧値が0となるため、チョッピング周波数又はその奇数倍の周波数を有する電圧信号に混入しているノイズ成分は積分器からの出力信号には反映されない。
【0029】
従って、センサ部からの電圧信号に混入しているノイズ成分を精度よく除去することができる。
【0030】
上記構成において、抵抗器及びコンデンサで構成され、前記チョッパアンプ部及び前記積分部を作動させるためのパルスを生成する発振部をさらに備えており、前記発振部の前記抵抗器及び前記コンデンサは、前記積分部の前記入力抵抗及び前記コンデンサの温度特性と同じ温度特性を有する構成とすることができる(請求項4)。
【0031】
一般に、発振部によるパルスによって作動する積分部における増幅率は、発振部の抵抗器の抵抗値と、積分部の入力抵抗の抵抗値との間の比率で定まる。また、この積分部における増幅率は、発振部のコンデンサの静電容量と、積分部のコンデンサの静電容量との間の比率でも定まる。
【0032】
この構成によれば、発振部の抵抗器及びコンデンサは、積分部の入力抵抗及びコンデンサの温度特性と同じ温度特性を有する。これにより、センサ装置の内部温度が変動したときには、発振部及び積分部の抵抗値が同じ値だけ変動し、発振部及び積分部の静電容量が同じ容量だけ変動する。
【0033】
結果として、センサ装置の内部温度が変動しても、発振部の抵抗器の抵抗値と、積分部の入力抵抗の抵抗値との間の比率、及び、発振部のコンデンサの静電容量と、積分部のコンデンサの静電容量との間の比率は変わらない。したがって、センサ装置の内部温度が変動したときに、積分部における増幅率が変動することを抑制することができる。
【0034】
上記構成において、抵抗器及びコンデンサで構成され、前記チョッパアンプ部及び前記積分部を作動させるためのパルスを生成する発振部をさらに備えており、前記発振部の前記抵抗器及び前記コンデンサは、前記積分部の前記入力抵抗及び前記コンデンサの電気的特性と同じ電気的特性を有する構成とすることができる(請求項5)。
【0035】
先述されたように、発振部によるパルスによって作動する積分部における増幅率は、発振部の抵抗器の抵抗値と、積分部の入力抵抗の抵抗値との間の比率で定まる。また、この積分部における増幅率は、発振部のコンデンサの静電容量と、積分部のコンデンサの静電容量との間の比率でも定まる。
【0036】
この構成によれば、発振部の抵抗器及びコンデンサは、積分部の入力抵抗及びコンデンサの電気的特性と同じ電気的特性を有する。ここに、電気的特性の一例として、シート抵抗の特性が挙げられる。
【0037】
そのため、発振部の抵抗器及び積分部の入力抵抗の製造時におけるプロセスばらつきが生じたときには、発振部の抵抗器及び積分部の入力抵抗の電気的特性が同じであるため、発振部の抵抗器の抵抗値、及び、積分部の入力抵抗の抵抗値は同じ値だけ変動する。したがって、発振部の抵抗器及び積分部の入力抵抗の製造時におけるプロセスばらつきが生じても、発振部の抵抗器の抵抗値と、積分部の入力抵抗の抵抗値との間の比率は変わらない。
【0038】
また、発振部のコンデンサ及び積分部のコンデンサの製造時におけるプロセスばらつきが生じたときには、発振部のコンデンサ及び積分部のコンデンサの電気的特性が同じであるため、発振部のコンデンサ及び積分部のコンデンサの静電容量は同じ容量だけ変動する。したがって、発振部のコンデンサ及び積分部のコンデンサの製造時におけるプロセスばらつきが生じても、発振部のコンデンサの静電容量と、積分部のコンデンサの静電容量との間の比率は変わらない。
【0039】
したがって、発振部の抵抗器及び積分部の入力抵抗の製造時におけるプロセスばらつき、或いは、発振部及び積分部の各々のコンデンサの製造時におけるプロセスばらつきが生じでも、積分部における増幅率が変動することを抑制することができる。
【0040】
上記構成において、前記デジタル変換部で前記デジタル信号に変換された前記出力信号を記憶する第1及び第2の記憶部と、前記センサ部から前記チョッパアンプ部に対する前記電圧信号の出力を遮断させる遮断部と、前記デジタル変換部からの前記出力信号を、前記第1及び第2の記憶部のいずれに記憶させるかを選択する選択部と、前記遮断部によって、前記センサ部から前記チョッパアンプ部に対する前記電圧信号の出力を遮断させるとともに、前記選択部によって、前記デジタル変換部からの前記出力信号を前記第1の記憶部へ記憶させることを選択させた状態で、前記デジタル変換部で前記デジタル信号に変換された前記出力信号を前記第1の記憶部へ記憶させ、前記遮断部によって、前記センサ部から前記チョッパアンプ部に対する前記電圧信号の出力を遮断させずに、前記選択部によって、前記デジタル変換部からの前記出力信号を前記第2の記憶部へ記憶させることを選択させた状態で、前記デジタル変換部で前記デジタル信号に変換された前記出力信号を前記第2の記憶部へ記憶させる制御部と、前記第1の記憶部に記憶された前記出力信号と、前記第2の記憶部に記憶された前記出力信号との間の差分を求める減算部と、をさらに備える構成とすることができる(請求項6)。
【0041】
この構成によれば、センサ部からチョッパアンプ部に対する電圧信号の出力を遮断させた状態で、第1の記憶部へ記憶された、デジタル変換部からの出力信号と、センサ部からチョッパアンプ部に対する電圧信号の出力を遮断させない状態で、第2の記憶部へ記憶された、デジタル変換部からの出力信号との間の差分を求める。
【0042】
これにより、ノイズ成分が混入した状態の、温度変化を表すデジタル信号と、ノイズ成分のみを表すデジタル信号との差分が求められる。そのため、センサ装置に固有のノイズ成分が除去された、温度変化を表すデジタル信号を得ることができるため、より精度よく、物体の温度を計測することができる。
【0043】
上記構成において、前記センサ装置と前記チョッパアンプ部は、前記センサ装置からの前記電圧信号を伝送する複数の信号線で接続されており、前記遮断部は、前記複数の信号線を短絡させる短絡スイッチで構成されており、前記選択部は、前記第1及び第2の記憶部のいずれかを、前記デジタル変換部へ接続させる切換スイッチで構成されており、前記制御部は、前記デジタル変換部で前記デジタル信号に変換された前記出力信号を前記第2の記憶部へ記憶させる回数を、前記デジタル変換部で前記デジタル信号に変換された前記出力信号を前記第1の記憶部へ記憶させる回数よりも多くなるように、前記選択部及び前記遮断部を制御する構成とすることができる(請求項7)。
【0044】
この構成によれば、第1の記憶部へ出力信号を記憶させる回数よりも、第2の記憶部へ出力信号を記憶させる回数が多くなるように選択部及び遮断部が制御される。そのため、センサ部からチョッパアンプ部に対する電圧信号の出力が遮断されるとともにデジタル変換部からの出力信号が第1の記憶部へ記憶される状態となる回数よりも、センサ部からチョッパアンプ部に対する電圧信号の出力が遮断されずにデジタル変換部からの出力信号が第2の記憶部へ記憶される状態となる回数のほうが多くなる。
【0045】
したがって、センサ部からチョッパアンプ部に対する電圧信号の出力が遮断される状態となる回数が、センサ部からチョッパアンプ部に対する電圧信号の出力が遮断されない状態となる回数よりも少なくなる。
【0046】
その結果、センサ部とチョッパアンプ部とを接続する複数の信号線が短絡する回数を少なくすることができるため、センサ部とチョッパアンプ部とを接続する信号線が短絡することによりセンサ装置の負荷が重たくなることが抑制される。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、別途、ローパスフィルタを設けることが要されずに、積分部によってローパスフィルタとしての機能を実行することができる。また、積分部による積分値がデジタル変換部によってデジタル信号に変換される。そのため、センサ装置の回路規模を大きくすることなく、増幅過程において混入したノイズ成分を除去して、デジタル変換することができるセンサ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンサ装置の構成の一例を示した図である。
【図2】チョッパアンプ部の構成の一例を示した図である。
【図3】チョッパアンプ部で行われる動作の一例を説明するための図である。
【図4】積分器の構成の一例を示した図である。
【図5】チョッパアンプ及び積分器の周波数特性の一例を表した図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るセンサ装置の構成の他の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に、本発明の一実施形態に係るセンサ装置を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ装置の構成の一例を示した図である。図2は、チョッパアンプ部の構成の一例を示した図である。図3は、チョッパアンプ部で行われる動作の一例を説明するための図である。図4は、積分器の構成の一例を示した図である。
【0050】
図1に示されるセンサ装置1は、以下に示される各構成要素を統括的に制御するコントローラ(制御部)11を備える。そして、センサ装置1は、物理量を電圧値に変換し、当該電圧値を表す電圧信号を出力する電圧検出型のセンサ部20、チョッパアンプ部10、及び、AD変換回路(デジタル変換部)12を備える。
【0051】
チョッパアンプ部10は、図2に示されるように、第1のチョッパ回路100、オペアンプ101、及び、第2のチョッパ回路102を備える。チョッパアンプ部10は、以上の構成要素を備えているので、チョッパアンプ部10では、例えば、図3に示される動作が行われる。
【0052】
チョッパアンプ部10において、第1のチョッパ回路100は、センサ部20(図6参照)から出力される電圧信号Vinの入力を受け付ける。図3(a)は、センサ部20の周波数特性の一例を示している。センサ部20は、検出した温度変化を電圧値の変化で表した電圧信号Vinを第1のチョッパ回路100へ出力する。このような電圧信号Vinは、図3(a)では、チョッピング周波数fcよりも低い周波数帯の周波数を有する信号とされている。そして、第1のチョッパ回路100は、センサ部20から受け付けた電圧信号Vinを、所定のチョッピング周波数fcでチョッピングして変調する。
【0053】
これにより、センサ部20から出力された電圧信号Vinの周波数が、チョッピング周波数fc及びその奇数倍の周波数に変調される。図3(b)は、第1のチョッパ回路100の周波数特性の一例を示している。第1のチョッパ回路100は、センサ部20から出力された電圧信号Vinを受け付けると、その電圧信号Vinをチョッピング周波数fcでチョッピングする。その結果、図3(b)に示されるように、チョッピング周波数fc及びその奇数倍の周波数を有する電圧信号Vinが得られる。
【0054】
ここに、図3(b)において、電圧信号Vinの電圧値は、電圧信号Vinが有する周波数が、チョッピング周波数fcから順次奇数倍されるにつれて小さくなっていることが判る。その理由は以下に示される通りである。
【0055】
或る周波数の信号をチョッピング周波数fcで変調するには、チョッピング周波数fcを有する方形波が用いられる。方形波は、基本周波数としてチョッピング周波数fcを有する基本波と、その基本周波数(チョッピング周波数fc)の所定倍の周波数を有する高調波とから成り立っている。このような方形波の周波数スペクトラムとして、例えば、方形波のデューティ比が50%である際には、基本周波数(チョッピング周波数fc)の奇数倍の周波数において高調波が存在する周波数スペクトラムが得られる。
【0056】
そして、方形波の周波数スペクトラムにおいて、高調波はその周波数が高くなるほど、その値が小さくなることが知られている。したがって、方形波の周波数スペクトラムにおいて、高調波の値は、高調波が有する周波数が、基本周波数(チョッピング周波数fc)から順次奇数倍されるにつれて小さくなることが判る。
【0057】
このような方形波を用いて電圧信号Vinを変調したときには、電圧信号Vinに方形波が重畳したような波形の信号が得られる。結果として、その信号において、チョッピング周波数fc及びその奇数倍の周波数の成分が、変調された電圧信号Vinとして得られる。
【0058】
したがって、電圧信号Vinの電圧値は、電圧信号Vinの周波数が、チョッピング周波数fcから順次奇数倍されるにつれて小さくなる。
【0059】
オペアンプ101は、チョッピング周波数fc及びその奇数倍の周波数に変調された電圧信号Vinの電圧値を増幅する。この増幅過程において、オペアンプ101に固有のオフセット電圧及び1/fノイズ(以下、ノイズ成分という)が混入する。このようなノイズ成分は、一般に、チョッピング周波数fcよりも低域の低周波数帯に位置する。
【0060】
図3(c)はオペアンプ101の周波数特性の一例を示している。オペアンプ101は、第1のチョッパ回路100で、チョッピング周波数fc及びその奇数倍の周波数に変調された電圧信号Vinを受け付けると、その電圧信号Vinを所定の増幅率で増幅する。結果として、チョッピング周波数fc及びその奇数倍の周波数に変調された電圧信号Vinが増幅されるが、その電圧信号Vinには、図3(c)に示されるように、チョッピング周波数fcよりも低域の低周波数帯に位置するノイズ成分が混入する。
【0061】
第2のチョッパ回路102は、オペアンプ101の出力信号を復調して出力信号Voutとして出力する。図3(d)は、第2のチョッパ回路102の周波数特性の一例を示している。図3(d)に示されるように、オペアンプ101で増幅された電圧信号Vin部分は、第2のチョッパ回路102による復調によって、センサ部20から出力された時点における周波数と同じ周波数を有するようになる。
【0062】
その一方で、オペアンプ101による増幅過程において混入した低周波数帯のノイズ成分は、第2のチョッパ回路102による復調によって、チョッピング周波数fc及びその奇数倍の周波数を有するようになる。
【0063】
AD変換回路12は、いわゆる二重積分型A/Dコンバータで構成されている。AD変換回路12は、積分器(積分部)13、比較器15、CR発振回路(発振部)16、及び、カウンタ17を備える。
【0064】
積分器13は、図1及び4に示されるように、オペアンプ14、オペアンプ14の反転入力端子14Aに接続された入力抵抗R1、及び、オペアンプ14の反転入力端子14Aと出力端子14Bとの間に接続されたコンデンサC1が設けられている。また、オペアンプ14において、非反転入力端子14Cは接地されている。
【0065】
そして、入力抵抗R1の他端には、スイッチSW1が設けられている。このスイッチSW1は、抵抗R1の他端側を、チョッパアンプ10に通じる端子a側と、基準電圧Vrefが印加された端子b側とのいずれの端子に接続させるかを切り換えるためのスイッチである。尚、スイッチSW1は、コントローラ11により制御される。
【0066】
以下に、積分器13における積分処理の概要を説明する。積分器13では、まず、スイッチSW1がa側に位置した状態で、チョッパアンプ10から出力された出力信号VouTの積分を開始する。このとき、コンデンサC1は、出力信号Voutによって充電される。積分器13は、一定の時間(以下、サンプリング期間という)の間、この状態を維持する。
【0067】
そして、コンデンサC1の充電が開始されてからサンプリング期間が経過すると、コントローラ11は、スイッチSW1をb側へ切り換える。これにより、入力抵抗R1の他端には基準電圧Vref(出力信号Voutとは逆の極性の電圧)が印加される状態となる。すると、コンデンサC1が放電を開始するので、積分器13の出力電圧が順次上昇する。そして、積分器13の出力電圧が一定の電圧(例えば、基準電圧Vref)に達すると、コントローラ11によってスイッチSW1がa側及びb側のいずれにも位置しない状態とされる。これにより、積分器13による積分処理が終了する。
【0068】
一般に、積分器13のオペアンプ14は、入力された信号の周波数が所定の周波数を超えると、その信号の周波数が増加する毎に、増幅率が減少する性質を有している。これにより、積分器13は、積分器13に入力される出力信号の周波数が所定の周波数(例えば、サンプリング周波数の1.5倍の周波数)を超えると、周波数が大きくなるにつれて増幅率が減少させる機能を有することができる。従って、入力される信号の周波数が所定の周波数以内の範囲内であればその信号は通過でき、入力される信号の周波数が所定の周波数を超えるにつれてその信号は通過しにくくなる。つまり、積分器13は、ローパスフィルタとしての機能を有する。
【0069】
比較器15は、積分器13からの出力信号の電圧値と基準電圧Vrefとを比較する。比較器15は、積分器13の出力電圧が一定の電圧(例えば、基準電圧Vref)に達したときには、例えば、Hレベルの信号をコントローラ11へ出力する。コントローラ11は、Hレベルの信号を比較器15から受け取ると、積分器13による積分処理を終了させる。
【0070】
カウンタ17は、コンデンサC1の放電が開始されてから、積分器13の出力信号が一定電圧(基準電圧Vref)になるまでの間、クロックパルスのパルス数をカウントする。カウンタ17によりカウントされるパルス数は、積分器13に入力される電圧信号の電圧値に比例する。このように、カウンタ17によりカウントされたパルス数が、温度変化を表すデジタル信号として、後段の回路へ出力される。
【0071】
CR発振回路16は、コンデンサと抵抗器とを備える発振器である。このCR発振回路16は、チョッパアンプ部10及び積分器13が動作するためのクロックパルスを生成する。尚、CR発振回路16は、図1では、AD変換回路12に設けられているが、AD変換回路12とは独立して設けられていてもよい。
【0072】
カウンタ17は、比較器15からHレベルの電圧信号を受けている間中、CR発振回路16から出力されるクロックパルスの数をカウントする。そして、カウントされた値をデジタル信号として後段の回路へ出力する。これにより、コンデンサC1の充電電気量に応じた値のデジタル信号が出力される。ここに、CR発振回路16のコンデンサ及び抵抗器は、積分部13の入力抵抗R1及びコンデンサC1の温度特性と同じ温度特性を有している。また、CR発振回路16のコンデンサ及び抵抗器は、積分部13の入力抵抗R1及びコンデンサC1の電気的特性と同じ電気的特性を有している。
【0073】
AD変換回路12は、先述された構成を有するので、チョッパアンプ10から出力された電圧信号が積分器13において積分され、その積分値に応じた値のデジタル信号が出力される。
【0074】
また、センサ装置1では、図4に示されるように、CR発振回路16から出力されるクロックパルスを受け付けて所定の処理(後述)を行うことで、積分器13のスイッチSW1がa側に位置する頻度を調整するパルス幅調整回路(サンプリング周波数調整部)24が設けられている。このようなパルス幅調整回路24は、例えば、コントローラ11(図1参照)の内部に設けられる。パルス幅調整回路24は、スイッチSW1がa側に位置する頻度を調整することにより、積分器13がチョッパアンプ10からの出力信号をサンプリングする頻度を表すサンプリング周波数を調整する。
【0075】
このように、パルス幅調整回路24によって、積分器13がチョッパアンプ部10からの出力信号をサンプリングするサンプリング周波数を調整することができるため、本実施形態に係るセンサ装置1は、以下に示されるような利点を有する。
【0076】
積分器13では、先述されたように、入力される出力信号の周波数が所定の周波数を超えると、その周波数が大きくなるにつれて増幅率が減少する。増幅率が減少する境となる所定の周波数は、サンプリング周波数の大きさにより決まる(図5参照)。図5では、増幅率が減少する境となる所定の周波数は、サンプリング周波数fsの1.5倍の周波数である。
【0077】
結果として、積分器13は、積分器13に入力される出力信号の周波数がサンプリング周波数fsの大きさにより決まる或る周波数を超えるにつれてその出力信号を通過させにくくするローパスフィルタとして機能する。そのため、積分器13は、サンプリング周波数fsの大きさが決まれば、そのサンプリング周波数fsの大きさによって決まる或る周波数を超えるノイズ成分を通過させにくくすることができる。
【0078】
本実施形態に係るセンサ装置1では、パルス幅調整回路24によって、積分器13が出力信号をサンプリングするサンプリング周波数fsが調整されるので、積分器13に入力される出力信号に含まれる或る周波数帯のノイズ成分のうち、積分器13を通過させにくくすべきノイズ成分の周波数を調整することができる。これにより、積分器13を通過しようとしている出力信号に混入している或る周波数帯のノイズ成分のうち、サンプリング周波数fsの大きさで決まる或る周波数を超えるノイズ成分が除去される。その結果、積分器13を通過する信号のうち、ノイズ成分が占める割合を調整することができる。
【0079】
このようなパルス幅調整回路24は、図4では、クロック源(本実施形態ではCR発振回路16)から出力されたクロックパルスを分周することによって基準信号を発生させるタイミング発生回路19、及び、基準信号のパルス幅を調整することにより、当該パルス幅で表されるサンプリング期間の長さを調整するタイミング調整回路18、で構成されている。ここに、タイミング発生回路19から出力される基準信号は、サンプリング期間の長さの調整を行う際に基準とされるサンプリング基準期間を表すパルス幅の基準信号である。
【0080】
また、タイミング調整回路18は、基準信号のパルス幅を広げてサンプリング期間を延長し、また、基準信号のパルス幅を狭めてサンプリング期間を短縮する。このように、パルス幅調整回路24は、サンプリング期間を調整することによって、そのサンプリング期間の逆数で表されるサンプリング周波数fsを調整する。
【0081】
以上に示される構成のセンサ装置1では、チョッピング周波数fcの逆数で表されるチョッピング周期と、サンプリング周波数fsの逆数で表されるサンプリング周期とが同期している。
【0082】
また、チョッピング周波数fcは、サンプリング周波数fsのn倍(但し、nは1以上の自然数)とされている。このようなチョッピング周波数fcとサンプリング周波数fsとの関係は、例えば、パルス幅調整回路24によるサンプリング周波数fsの調整によって実現される。ここに、図5では、チョッピング周波数fcは、サンプリング周波数fsの2倍とされている。
【0083】
チョッピング周波数fcとサンプリング周波数fsとはこのような関係を有するため、以下の作用及び効果が奏される。
【0084】
図5は、チョッパアンプ部10及び積分器13の周波数特性の一例を表した図である。図5において、斜線が描かれた領域は、0〜fnの範囲内の周波数のセンサ出力であり、このセンサ出力が、デジタル出力として反映されるべき出力である。
【0085】
図5において、センサ部20から出力された時点では低周波数帯に位置するノイズ成分は、チョッパアンプ部10によって、チョッピング周波数fc及びその奇数倍の周波数を有するノイズ成分とされる。
【0086】
そして、積分器13の周波数応答は、積分器13に入力される出力信号の周波数が、0〜サンプリング周波数fsまで増加すると、積分器13から出力される信号の電圧値が所定の電圧値Vintから0に減少する。その後、積分器13に入力される出力信号の周波数が、サンプリング周波数fの2以上の自然数倍となる毎に、積分器13から出力される信号の電圧値が0となる。尚、以上に示される周波数応答は、例えば、非特許文献2にも記載されている。
【0087】
積分器13の周波数応答は、オペアンプ14の特性によって、入力された信号の周波数が所定の周波数(図5では、サンプリング周波数fsの1.5倍の周波数)を超えると、その信号の周波数が10倍される毎に、増幅率が1/10となる。尚、図5において、このことが、“−20dB/decade”の表示で示されている。
【0088】
本実施形態に係るセンサ装置1によれば、先述されたように、チョッピング周期とサンプリング周期とが同期しており、チョッピング周波数は、前記サンプリング周波数のn倍(但し、nは1以上の自然数)である。これにより、チョッピング周波数fc及びその奇数倍の周波数が、積分器13から出力される出力信号の電圧値が0となるサンプリング周波数fs及びその倍数の周波数と一致する。
【0089】
そのため、チョッピング周波数fs又はその奇数倍の周波数を有する電圧信号が積分器13に入力されても、積分器13から出力される出力信号の電圧値が0となるため、チョッピング周波数fs又はその奇数倍の周波数を有する電圧信号に混入しているノイズ成分は積分器13からの出力信号には反映されない。従って、センサ部20からの電圧信号に混入しているノイズ成分を精度よく除去することができる。
【0090】
図6は、本発明の一実施形態に係るセンサ装置の構成の他の例を示した図である。このセンサ装置1Aでは、センサ部20とチョッパアンプ部10とを接続する2本の信号線Lには、2本の信号線Lを短絡させる短絡スイッチ(遮断部)SW2が設けられている。
【0091】
また、センサ装置1Aでは、AD変換回路12の後段には、第1メモリ(第1の記憶部)21と、第2メモリ(第2の記憶部)22とが設けられている。そして、AD変換回路12からの出力信号を、第1メモリ21及び第2メモリ22のいずれに記憶させるかを選択する切換スイッチ(選択部)SW3が設けられている。この切換スイッチSW3は、AD変換回路12を、第1メモリ21及び第2メモリ22のいずれに接続させるかを切り換える。
【0092】
そして、第1メモリ21及び第2メモリ22の後段には、第1メモリ21の出力と第2メモリ22の出力との間の差分を求める減算器23が設けられている。
【0093】
このセンサ装置1Aでは、コントローラ11(図1参照)は、短絡スイッチSW2を閉状態とすることによって、センサ部20からチョッパアンプ部10に対する電圧信号の出力を遮断させる。一方、コントローラ11は、短絡スイッチSW2を開状態とすることによって、センサ部20からの電圧信号をチョッパアンプ部10へ入力させる。
【0094】
さらに、コントローラ11は、切換スイッチSW3を第1メモリ21側に切り換えることによって、AD変換回路12を第1メモリ21へ接続する。一方、コントローラ11は、切換スイッチSW3を第2メモリ22側に切り換えることによって、AD変換回路12を第2メモリ22へ接続する。
【0095】
このような構成のセンサ装置1Aでは、コントローラ11は、センサ部20からチョッパアンプ部10に対する電圧信号の出力を遮断させた状態で、AD変換回路12からのデジタル信号を第1メモリ21へ記憶させる。
【0096】
このとき、センサ部20とチョッパアンプ部10とを接続する2本の信号線Lが短絡しているので、チョッパアンプ部10に入力される電圧信号で表される電圧値は、センサ部20に固有のインピーダンスによる電圧降下によって定まる電圧値である。そして、チョッパアンプ部10へ電圧信号が入力されて、チョッパアンプ部10のオペアンプ101における増幅過程において、オペアンプ101に固有のノイズ成分が混入する。そのため、チョッパアンプ部10からの出力信号は、ノイズ成分を有する出力信号である。
【0097】
そして、ノイズ成分を有する電圧信号が、チョッパアンプ部10からAD変換回路12へ入力される。AD変換回路12では、積分器13によって、ノイズ成分を有する電圧信号が積分されるので、積分器13の積分値には、オペアンプ101の他、積分器13のオペアンプ14に固有のノイズ成分が反映される。そのため、AD変換回路12からのデジタル信号では、チョッパアンプ部10のオペアンプ101、及び、積分器13のオペアンプ14に固有のノイズ成分が反映された状態となる。
【0098】
従って、チョッパアンプ部10に対するセンサ部20の出力が遮断された状態で第1メモリ21に記憶されるデジタル信号は、チョッパアンプ部10のオペアンプ101、及び、積分器13のオペアンプ14に固有のノイズ成分が反映されたデジタル信号である。
【0099】
一方、コントローラ11は、センサ部20からチョッパアンプ部10に対する電圧信号の出力を遮断させない状態で、AD変換回路12からのデジタル信号を第2メモリ22へ記憶させる。つまり、コントローラ11は、短絡スイッチSW2を開状態として、2本の信号線Lを短絡させない状態で、AD変換回路12からのデジタル信号を第2メモリ22へ記憶させる。
【0100】
このとき、チョッパアンプ部10に対するセンサ部20の出力が遮断されていないので、チョッパアンプ部10からはオペアンプ101に固有のノイズ成分を含む、温度変化を表す電圧信号がAD変換回路12へ入力される。
【0101】
また、AD変換回路12では、積分器13によって、ノイズ成分を含む、温度変化を表す電圧信号が積分されるので、積分器13の積分値には、温度変化を表す電圧信号の他に、オペアンプ101に固有のノイズ成分、及び、積分器13のオペアンプ14に固有のノイズ成分が反映される。そのため、AD変換回路12からのデジタル信号では、温度変化を表す電圧信号の他、チョッパアンプ部10のオペアンプ101、及び、積分器13のオペアンプ14に固有のノイズ成分が反映された状態となる。
【0102】
コントローラ11は、第1メモリ21に記憶されたデジタル信号と、第2メモリ22に記憶されたデジタル信号との間の差分を減算器23によって求める。これにより、ノイズ成分を表すデジタル信号が減算により0となり、温度変化を表すデジタル信号が残った状態となる。
【0103】
また、コントローラ11は、デジタル変換回路12でデジタル信号に変換された出力信号を第2メモリ22へ記憶させる回数を、出力信号を第1メモリ21へ記憶させる回数よりも多くなるように制御する。
【0104】
つまり、コントローラ11は、短絡スイッチSW2を開状態とするとともに切換スイッチSW3を第2メモリ22側に位置させる回数を、短絡スイッチSW2を閉状態とするとともに切換スイッチSW3を第1メモリ21側に位置させる回数よりも多くする。これにより、センサ部20とチョッパアンプ部10とを接続する信号線Lを短絡させる回数を少なくすることができるため、センサ部20とチョッパアンプ部10とを接続する2本の信号線Lが短絡することにより、センサ装置1Aの負荷が重たくなることが抑制される。
【0105】
特に、コントローラ11が、デジタル変換回路12でデジタル信号に変換された出力信号を、センサ装置1Aの起動当初において1回だけ第1メモリ21へ記憶させ、その後には、デジタル変換回路12でデジタル信号に変換された出力信号を第2メモリ22に記憶させる状態を維持する処理を行えば、以下に示される利点がある。
【0106】
すなわち、コントローラ11は、センサ装置1Aの起動当初において1回だけ、短絡スイッチSW2を閉状態とするとともに切換スイッチSW3を第1メモリ21側に位置させる。その後、コントローラ11は、短絡スイッチSW2を開状態とするとともに切換スイッチSW3を第2メモリ22側に位置させた状態を維持する。
【0107】
これにより、センサ装置1Aの起動当初において、ノイズ成分が反映されているが温度変化を表す電圧信号が反映されていないデジタル信号が第1メモリ21に記憶される。その後、ノイズ成分及び温度変化を表す電圧信号が反映されているデジタル信号が第2のメモリ22に随時記憶される。
【0108】
結果として、センサ装置1Aの起動当初において得られた、ノイズ成分が反映されたデジタル信号と、その後に随時更新される、ノイズ成分及び温度変化を表す電圧信号が反映されたデジタル信号との間の差分が、減算器23により得られることになる。
【0109】
以上に示される処理をコントローラ11が行うことによって、チョッパアンプ部10及びAD変換回路12の各々は、センサ装置1Aの起動当初だけ、ノイズ成分を表す電圧信号を処理し、その後、ノイズ成分の他に温度変化を表す電圧信号を処理することになる。
【0110】
その結果、センサ装置1Aは、チョッパアンプ部10及びAD変換回路12に対して、ノイズ成分の他に温度変化を表す電圧信号の処理を集中的に行わせた状態で、ノイズ成分が除去されたデジタル信号を得ることができる。したがって、センサ装置1Aは、本来、温度変化を表す電圧信号をデジタル信号として得るための、チョッパアンプ部10及びAD変換回路12を効率良く活用した状態で、ノイズ成分が除去されたデジタル信号を得ることができる。
【0111】
さらに、コントローラ11は、短絡スイッチSW2を閉状態とするとともに切換スイッチSW3を第1メモリ21側に位置させて、ノイズ成分が反映されたデジタル信号を第1メモリ21に記憶させる処理を定期的に行い、その処理が行われている時以外は、短絡スイッチSW2を開状態とするとともに切換スイッチSW3を第2メモリ22側に位置させて、ノイズ成分及び温度変化を表す電圧信号が反映されたデジタル信号を順次第2メモリ22に記憶させる処理を行ってもよい。
【0112】
これにより、センサ装置1Aは、ノイズ成分が反映されたデジタル信号を第1メモリ21に記憶させる処理を定期的に行い、その処理が行われている時以外は、ノイズ成分及び温度変化を表す電圧信号が反映されたデジタル信号を順次第2メモリ22に記憶させる処理を行う。
【0113】
以上のように、センサ装置1Aは、ノイズ成分が反映されたデジタル信号を第1メモリ21に記憶させる処理を定期的に行うため、センサ装置1Aの内部温度の変動などによってノイズ成分の電圧値が変動しても、電圧値が変動したノイズ成分が反映されたデジタル信号が第1メモリ21に記憶されることになる。
【0114】
また、センサ装置1Aは、ノイズ成分が反映されたデジタル信号を第1メモリ21に記憶させる処理を行う時以外には、ノイズ成分及び温度変化を表す電圧信号が反映されたデジタル信号を順次第2メモリ22に記憶させる処理を行うため、センサ装置1Aの内部温度の変動などによってノイズ成分の電圧値が変動しても、電圧値が変動したノイズ成分、及び、温度変化を表す電圧信号が反映されたデジタル信号が第2メモリ22に記憶されることになる。
【0115】
その結果、センサ装置1Aでは、電圧値が変動したノイズ成分が反映されたデジタル信号と、電圧値が変動したノイズ成分、及び、温度変化を表す電圧信号が反映されたデジタル信号との間の差分が、減算器23により得られることになる。これにより、センサ装置1Aは、ノイズ成分の電圧値の変動にかかわらず、ノイズ成分が除去されたデジタル信号を得ることができる。
【符号の説明】
【0116】
1,1A センサ装置
10 チョッパアンプ部
11 コントローラ
12 AD変換回路
13 積分器
14 オペアンプ
14A 反転入力端子
14B 出力端子
14C 非反転入力端子
16 CR発振回路
20 センサ部
21 第1メモリ
22 第2メモリ
23 減算器
24 パルス幅調整回路
SW2 短絡スイッチ
SW3 切換スイッチ
L 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量を電圧値に変換し、当該電圧値を表す電圧信号を出力する電圧検出型のセンサ部と、
前記センサ部から出力される前記電圧信号を所定のチョッピング周波数でチョッピングして変調信号を生成し、当該変調信号を増幅して増幅信号とした後、当該増幅信号を復調して出力信号として出力するチョッパアンプ部と、
非反転入力端子と反転入力端子との間の電圧差を増幅するオペアンプ、前記オペアンプの反転入力端子に接続された入力抵抗、及び、前記オペアンプの前記反転入力端子と出力端子との間に接続されたコンデンサが設けられ、前記チョッパアンプ部から出力される前記出力信号を、所定のサンプリング周波数でサンプリングし、サンプリングされた前記出力信号を積分する積分部と、
当該積分部によって積分された前記出力信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部と、
を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記サンプリング周波数を調整するサンプリング周波数調整部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記チョッピング周波数の逆数で表されるチョッピング周期と、前記サンプリング周波数の逆数で表されるサンプリング周期とが同期しており、前記チョッピング周波数は、前記サンプリング周波数のn倍(但し、nは1以上の自然数)であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
抵抗器及びコンデンサで構成され、前記チョッパアンプ部及び前記積分部を作動させるためのパルスを生成する発振部をさらに備えており、
前記発振部の前記抵抗器及び前記コンデンサは、前記積分部の前記入力抵抗及び前記コンデンサの温度特性と同じ温度特性を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
抵抗器及びコンデンサで構成され、前記チョッパアンプ部及び前記積分部を作動させるためのパルスを生成する発振部をさらに備えており、
前記発振部の前記抵抗器及び前記コンデンサは、前記積分部の前記入力抵抗及び前記コンデンサの電気的特性と同じ電気的特性を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記デジタル変換部で前記デジタル信号に変換された前記出力信号を記憶する第1及び第2の記憶部と、
前記センサ部から前記チョッパアンプ部に対する前記電圧信号の出力を遮断させる遮断部と、
前記デジタル変換部からの前記出力信号を、前記第1及び第2の記憶部のいずれに記憶させるかを選択する選択部と、
前記遮断部によって、前記センサ部から前記チョッパアンプ部に対する前記電圧信号の出力を遮断させるとともに、前記選択部によって、前記デジタル変換部からの前記出力信号を前記第1の記憶部へ記憶させることを選択させた状態で、前記デジタル変換部で前記デジタル信号に変換された前記出力信号を前記第1の記憶部へ記憶させ、
前記遮断部によって、前記センサ部から前記チョッパアンプ部に対する前記電圧信号の出力を遮断させずに、前記選択部によって、前記デジタル変換部からの前記出力信号を前記第2の記憶部へ記憶させることを選択させた状態で、前記デジタル変換部で前記デジタル信号に変換された前記出力信号を前記第2の記憶部へ記憶させる制御部と、
前記第1の記憶部に記憶された前記出力信号と、前記第2の記憶部に記憶された前記出力信号との間の差分を求める減算部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記センサ装置と前記チョッパアンプは、前記センサ装置からの前記電圧信号を伝送する複数の信号線で接続されており、
前記遮断部は、前記複数の信号線を短絡させる短絡スイッチで構成されており、
前記選択部は、前記第1及び第2の記憶部のいずれかを、前記デジタル変換部へ接続させる切換スイッチで構成されており、
前記制御部は、
前記デジタル変換部で前記デジタル信号に変換された前記出力信号を前記第2の記憶部へ記憶させる回数を、前記デジタル変換部で前記デジタル信号に変換された前記出力信号を前記第1の記憶部へ記憶させる回数よりも多くなるように、前記選択部及び前記遮断部を制御することを特徴とする請求項6に記載のセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−47775(P2011−47775A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195986(P2009−195986)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】