説明

タイムスレービング装置

本発明はパケットデータ伝送ネットワークにおけるタイムスレービングのための装置に関する。各データパケットはタイムラベルを有しており、前記装置はネットワークから受信したパケットを受け取ることを目的とした一時記憶手段を有している。
本発明によれば、前記装置は、
一時記憶手段が、ネットワークの特性に依存した所定の時間(IPDV)の間に受信したデータを記録することのできる記憶容量を有している
ように構成されており、
前記装置はさらに、
入来パケットのタイムラベルに応じてローカル受信クロックを再生する手段と、
前記所定の時間(IPDV)と再生されたローカル受信クロックとに依存するある時点において一時記憶手段内のデータを読み取る手段
を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドリフトの制限されたタイムスレービング装置に関する。
本発明は、より詳細には、インターネットタイプ(IP)のネットワークにおける、送信端末と受信端末との間でのリアルタイムのデータ伝送に関する。
【0002】
伝送ネットワークにおいて、データはノイズを被る。このノイズのため、しばしば受信者レベルでのディジタルストリームの再構成が困難になる。
本発明は、より詳細には、データ列が被る一時的なノイズと、各パケットにより伝送される時間情報に従って、受信設備の要求を満たす精度でパケットを一時的に保存することとに関する。
【0003】
当業者に公知の解決手段の要点は、位相同期ループを直接、受信した時間情報に従属させることにある。このような解決手段は特にノイズのある環境には不向きである。というのも、伝送遅延に生じる変動が位相同期ループのラッチングを妨げるからである。
【0004】
クロック回復のための別の解決手段の要点は、受信装置の入力側でバッファメモリの充填レベルに応じて周波数シンセサイザを駆動することにある。この解決手段は、ネットワーク全体のスループットが変化しうる場合、したがって特にIPプロトコルの場合には不向きである。
【0005】
本発明は、パケットデータ伝送ネットワークにおけるタイムスレービングのための装置を提案することにより、これらの欠点のうちの少なくとも幾つかを解消することを提案する。各データパケットはタイムラベルを含んでおり、装置は一時記憶手段を有している。本発明によれば、
一時記憶手段は、ネットワークの特性に依存した所定の時間の間に受信したデータを記録することのできる記憶容量を有しており、
前記装置はさらに、
入来パケットのタイムラベルに応じてローカル受信クロックを再生する手段と、
前記所定の時間(IPDV)と再生されたローカル受信クロックとに依存するある時点において前記一時記憶手段内のデータを読み取る手段
を有している。
【0006】
有利な実施形態によれば、一時記憶手段内のデータを読み取る手段は、前記所定の時間と再生されたローカルクロックとの差が正である場合に、一時記憶手段内のデータを読み取るように構成されている。
【0007】
有利な実施形態によれば、ローカルクロックを再生する手段は、データパケットのローカル受信クロックと、該ローカルクロック及びデータパケットの送信クロックの周波数に依存する2つの時点の間に受信したデータパケットのタイムラベルとの間のずれを合計することができる。
【0008】
有利な実施形態によれば、前記装置は立上り時の収束時間を短縮する手段を有している。
【0009】
有利な実施形態によれば、前記装置は位相ノイズを低減する手段を有している。
【0010】
有利には、位相ノイズを低減する手段はディジタルローパスフィルタを有している。
【0011】
有利な実施形態によれば、前記装置は人工ノイズを発生させる手段を有している。
【0012】
本発明はまた、パケットデータ伝送ネットワークにおけるタイムスレービングのための方法であって、各データパケットがタイムラベルを有しており、前記方法が前記ネットワークから受信したパケットを一時記憶するステップ有しているようにした方法において、前記記憶ステップの間、前記ネットワークの特性に依存した所定の時間にわたってデータを記憶し、前記方法がさらに、入来パケットのタイムラベルに応じてローカル受信クロックを再生するステップと、前記所定の時間と再生されたローカル受信クロックとに依存するある時点において前記一時記憶手段内のデータを読み取るステップを有していることを特徴とする方法に関する。
【0013】
本発明は、添付図面を参照した有利な実施例及び実施形態により、より良く理解され、説明される。これらの実施例は限定的なものではない。
図1は、受信及び送信モジュールを備えたネットワークの例を示しており、
図2は、本発明による装置の有利な実施形態を示しており、
図3は、ローカル受信クロックを再生するモジュールの有利な実施形態を示しており、
図4は、ラッチング時間の改善を可能にするローカル受信クロックを再生するモジュールの改良形形態を示しており、
図5は、ネットワーク内のパケットの伝搬遅延を推定するモジュールを示しており、
図6は、位相ノイズの最小化を可能にするクロック再生モジュールの改良形態を示しており、
図7は、位相ノイズの最小化を可能にするクロック再生モジュールの第2の例を示しており、
図8は、位相ノイズの改善に使用されるローパスフィルタの例を示しており、
図9は、人工ノイズ発生器の実施形態を示している。
【0014】
図示されたモジュールは機能ユニットであり、物理的に区別可能なユニットに対応する場合も対応しない場合もある。例えば、これらのモジュール又はそのうちの幾つかはまとまって単一のコンポーネントを形成してもよいし、ソフトウェアの同一部分の機能を構成するものであってもよい。逆に、あるモジュールが別個の物理的エンティティから構成されていてもよい。
本発明は、一般に、タイムスタンプを処理するデータフレームを有するパケットでデータが伝送されるようなネットワークに適用される。有利な実施形態によれば、フレームはRTP(《real time protocol》を表す頭字語)プロトコルに準拠する。
【0015】
図1には、データストリームを伝送する手段1とIPプロトコルに準拠するようにこのストリームを適応させる手段2とを有するネットワーク設備の例が示されている。手段2はIPタイプのネットワークを介してIP適応手段3に向けてIPデータストリームを伝送し、IP適応手段3は、ストリームの宛先である手段4に理解可能な形のデータストリームが形成されるように、IPストリームを脱カプセル化する。
【0016】
手段1及び4は、有利な実施形態においては、MPEGタイプの、特にMPEG−2タイプのストリームを符号化及び復号化する装置である。
IPネットワーク5は、データパケットが非常に重大な遅延の変動を被るようなネットワークである。このため、装置4によるデータパケットの受信中に問題が生じ、装置4はもはやデータパケットを正しく復号化することができない。発生した一時的ノイズが受信装置4におけるデータストリームの再構成を妨げる。
【0017】
図2には、IPデータストリームの受信時にデータを適応させるモジュール3が部分的に示されている。
【0018】
IPパケットはネットワーク5から受信され、一時記憶手段とも呼ばれるバッファメモリ6にロードされる。バッファメモリ6は、例えば、FIFO(《First-in First-out》を表す頭字語)タイプのメモリであり、IPネットワーク5から受信したパケットが受信装置3において受信されるとき及び受信されているときに、このパケットを記録することを目的としている。
バッファメモリ6はネットワーク5の特性に依存した容量を有している。特に、容量はIPネットワーク5を介した伝送の遅延における変動の最大振幅であるIPネットワーク5のパラメータに依存している。
このパラメータ(IPDV,《IP Delay Variation》を表す頭字語)は定数であり、例えば、ユーザが入力することのできるものであってもよいし、ネットワーク設備のさまざまなアイテムに既知のものであってもよい。
【0019】
受信したパケットは図3に詳細の示されているモジュール7にも伝送される。モジュール7は、送信端及び受信端におけるオシレータ(オシレータ8)の相対ドリフトに応じて、ローカル受信クロックを修正することができる。
受信クロックを再生するモジュール7は、伝送中のRTPパケットに挿入されたタイムラベルの値を供給することを任務とするタイムベースオシレータTxであるローカルオシレータTxとローカルオシレータRx8との間の実際の周波数ずれを補償しなければならない。
それゆえ、モジュール7は再生されたローカルタイムRxを出力側13に出力する。この再生されたローカルタイムは減算器9に送られる。減算器9はローカルクロックRxが参照するIPDV遅延と再生されたローカルタイム13との間の差を計算する。
この減算の結果(信号11)に依存して、データがバッファメモリ6に読み込まれる。モジュール10は読取り信号12をバッファメモリ6に送信する。
差《再生されたローカルタイムRx引くことのIPDV》がバッファ6から出力すべき次のパケットのタイムラベルの値よりも大きければ、データは読み込まれ、読取り信号12が活動化される。
そうでなければ、データはこの差がバッファ6から出力すべき次のパケットのタイムラベルの値よりも大きくない限り読み込まれず、読取り信号12は活動化されない。
【0020】
図3には、ローカルタイムRxを脚制するモジュール7の実施形態が示されている。
【0021】
モジュール7は、一方では入力として入来パケットのタイムラベルを受信し、他方ではフィードバックとして再生されたローカルタイムRx13を受信する微分器15を有している。
微分器15はタイムラベルと再生されたローカルタイムRx13との差を出力側19に供給する。
この差はアキュムレータ16により受信される。アキュムレータ6は微分器15から瞬時のずれ19を受信し、それらを合計する。
瞬時のずれの総計は決定オートマトン17に送られる。
決定オートマトン17はローカルタイムカウンタ18の定期的な更新を命令する。この更新の周期Tupdateは、ローカルクロックRxの周波数と送信クロックTxの周波数との間の可能な最大のずれに依存している。このずれは、2つのクロックのために選ばれたオシレータコンポーネントの技術的特性から導出される。送信オシレータRxが±10ppmの精度を有し、受信オシレータが±5ppmの精度を有しているならば、2つのオシレータの間の最大のずれは30ppm(すなわち、相対的には±15ppm)となりうる。
可能な限り最も規則的な再生ローカルタイムRx13を得るために、各更新の補正の振幅はローカルオシレータRx8の周期Tに限定される。
【0022】
したがって:
Tupdate<1/abs([Frx−Ftx]max)
ここで、absは「絶対値」関数を表しており、
Frx、Ftxはそれぞれ(オシレータ8が発生させる)ローカルタイムRxの周波数、送信クロックTxの周波数を表している。クロックTxのサンプルは、RTPパケットで輸送される90KHzタイムラベルを介して送信される。
【0023】
モジュール17は送信クロックTxに対するローカルクロックRxの進み又は遅れを推定する。
進み又は遅れの推定は、受信したパケット内に含まれているタイムラベルの値とローカルクロックRx8との間の測定された瞬時のずれの総計の符号から導出されるものであり、アキュムレータ16により行われる。総計は2つの決定時点の間Tupdateに受信したパケットにわたって計算される。(信号RTZによる)モジュール16のゼロ復帰は各Tupdateにおいて行われる。
モジュール17は、モジュール18に向けて信号21JUMP、22FREEZE、及び23INITを発生させる。なお、モジュール18は時間どおりにローカルタイムカウンタをセットするものである。
【0024】
ローカルタイムカウンタRxはスレーブ時間Rxの位相を表す。この位相はRTPパケットのタイムラベルにより輸送された位相サンプルと比較される(15)。
信号JUMP21は、ローカルタイムベースRxが送信クロックTxに対して遅れたときに活動化される。したがって、クロックRxは進められる。
信号FREEZE22は、ローカルタイムベースRxが送信クロックTxに対して進んだときに活動化される。したがって、クロックRxは遅らされる。
モジュール17は信号21JUMP,22FREEZE,23INIT及び20RTZをTupdateの周期で活動化させる。
ネットワーク伝送遅延の変動がバッファメモリ6の補償容量IPDVを超えると、ローカルタイムカウンタ18は信号INITにより再初期化される。再初期化値は受信したパケットのタイムラベルの値である。
モジュール18は入力として信号21JUMP,22FREEZE及び23INITを受信する。
モジュール18は時間どおりにローカルタイムカウンタ18をセットする。
信号JUMPはローカルタイムカウンタを2だけ増分する、すなわち、クロックの1ティック:Rx+1jump=2。
信号FREEZEはローカルタイムカウンタの増分を不能にする、すなわち、クロックの1ティック:Rx−1freeze=0。
2つの決定時点の間Tupdate、ローカルタイムカウンタ18はローカルクロックRx8の周波数のタイミングで規則的に増分される。
【0025】
カウンタ18は、クロックRx(8)とジャンプ21及びフリーズ22信号から発する補正とを積分する(数学的な意味で)。したがって、カウンタ18は微分器9に新たなローカルタイム13を供給する。
【0026】
図4及び5は、図3に示されている装置の改良形態を示したものである。
【0027】
この改良形態は、推定器24の形態をとった急収束モジュールを付加することにより立上り時の収束時間の改善を可能にする。
急収束はタイミング回復システムのラッチング時間を明らかに短縮する。
推定器24は図5に示されているように学習段階を実行する。学習段階が終了すると、図4に示されているように平均遅延を補正する段階に進む。
学習段階は推定理論を必要とする。平均のいずれの推定量も、語の数学的な意味において、モジュール24の推定機能を実行するのに適している。実験に基づいた平均の計算は、例えば、当業者に周知の完全に適切な不偏推定量である。
推定量24として計算された平均遅延の推定値は、入力減算器15の結果から減算される。モジュール15は位相コンパレータとも呼ばれうる。というのも、モジュール15に達するサンプルは2つの位相だからである。
RTPパケットは、27mHzにおけるクロックTxのサンプルである90KHzタイムラベルを携えている。
信号13(スレーブクロックRxの位相)は、RTPパケットが受信されしだいサンプリングされる。
減算器の出力19は位相の変動又は遅延を決定する。この遅延は位相誤差としても参照される。なぜならば、スレーブ信号の位相はRTPパケットに含まれている位相に正確に従うわけではないからである。
推定器24はスレービングの立上り時におけるこの平均遅延を計算することを目的としている。モジュール30は推定器を駆動する。モジュール30は受信した最初のn個のパケットをスレービングによりカウントする。n個のパケットが受信されると、モジュール30は算術平均の計算を確認する推定終了信号を供給する。ハードウェアによる実施を単純化するために、2のべきからnを選んでよい。
【0028】
サンプルの個数nは最大許容推定誤差によって決まる。この数nは、装置の使用されるコンテキストに、特に、スレービングと所望の性能とに依存する。推定理論、特に、スチューデントの法則のおかげで、サンプル数nの迅速な決定を考慮に入れることが可能になる。有利な実施形態では、nは8192に固定される。
最初のn個のパケットの間、システムは位相誤差の平均を求め、それをモジュール24に記憶させるために位相誤差を累算する。
モジュール32は、受信時にローカルタイムカウンタRxとの値の整合性を得るために、RTPパケットのタイムラベルの値を適合させる。
【0029】
モジュール26は100Hzでサンプリングクロックを生成する。このサンプリングクロックは、ローカルクロックRx8に使用される27MHzクロックを分割することにより得られる。モジュール26により生成されたこのクロックにより、モジュール17による決定をエッジに基づいてトリガすることが可能になり、また図6に記載されているディジタルフィルタ31がアクティブであるときにこのディジタルフィルタ31をサンプリングすることが可能になる。
【0030】
位相補正は、信号FREEZE(22)を信号Jump(21)から減算することに相当する。この補正は、加算器28を介して、ローカルクロックにより駆動されるカウンタ18に対して施される。クロックのティックの間に位相補正が決定される、すなわち、ジャンプ又はフリーズが決定されると、カウンタは1+xの値だけ増分される。ただし、xは厳密に正(+1)又は負(−1)である。Xはスレービングのゲインを増大させるために1の倍数であってもよい。
【0031】
図6には、位相ノイズの最小化を可能にする図2のクロック再生モジュール7の改良形態が示されている。
【0032】
具体的には、本発明は非線形カーネルに基づいている。非線形系の性質の1つは出力ノイズを入力ノイズから無相関化することである。ノイズという概念は確率的な意味で理解されなければならない。ノイズは入力及び出力信号の予期しない変動を含意し、知られるのは期待値と分散だけである。入力ノイズはRTPパケットに加えられたネットワークジッタである。出力ノイズはこの非線形スレービングの決定誤差(ジャンプ又はフリーズ)に関係している。このことが位相ノイズである決定ノイズを生じさせる。この位相ノイズは、例えばMPEG規格のようなある種の規格の安定性要件よりも大きくなる場合もありうる。
したがって、この実施形態は、位相ノイズの伝播を所望のコンポーネントに対してだけに限定するために、クロック回復装置の上流及び/又は下流で信号のディジタル処理を行うことを提案している。
図6の装置は、それゆえ、ディジタルローパスフィルタ31を有している。
ディジタルローパスフィルタ31はIIR又はFIRタイプのフィルタである。
フィルタ31の勾配は用途の必要に応じて決定される。
例えばMPEGの場合であれば、周波数ドリフトが達成すべき目標である。この場合、40dB/decの減衰又は−2の勾配が必要である。
フィルタ31の1つ又は複数の極の位置は、不所望な位相変調(すなわち、位相ノイズ)の振幅LFが一方では位相変調テンプレートによりその低周波数部分(LF)において許容されるように、また、カットオフ周波数が低周波数位相変調振幅とフィルタの特定の勾配(例えば、MPEGのフレームワークで認められるドリフトに対しては、−2)との交点にあるように、決められる。
【0033】
図7には、図6に記載されている改良された装置の、カウンタの配置が異なる第2の実施形態が示されている。
【0034】
図8には、図6及び7で使用することのできるMPEG−2規格に準拠した装置に適用されるローパスフィルタの例のテンプレートが示されている。カットオフ周波数は、位相誤差の振幅LF(秒で表示)がMPEG−2規格の位相特性図と適合するように、決定される。
【0035】
2つの注目すべき値がよく使用される:
・HF位相誤差(ジッタ)とLF位相誤差(ワンダ)の間の境界は10mHz(位相変調周波数)にある。
・HF部分(ジッタ>10mHz)における位相誤差の振幅は500ns以下である。
【0036】
系の入力ノイズに関係なくフィルタの最適動作を可能にさせるために、第2の前置処理を含めてもよい。したがって、図9は人工ノイズ発生モジュール32を含んだ本発明の別の改良形態を提案している。
モジュール32は装置の入力側に配置されており、系の入力ノイズに関係なくフィルタの最適動作を可能にする。人工ノイズを加えることにより、最大ノイズ基準に従ってスレーブ動作を安定化させることができる。スレービングは非線形であるため、入力ノイズは直接出力側には繰り越されない。人工ノイズの付加は全体的な性能を変えるのではなく、ノイズの全体的なエクスカーションを制限する。人工ノイズが入力ノイズと同じパワーを有していれば、変動は対数目盛で数十というレベルではなく2倍以内に制限される。人工ノイズの分散が入力ノイズの分散に等しければ、入力側におけるノイズのエクスカーションは2の比で変動する。ノイズのエクスカーションは人工ノイズ(ネットワークジッタなし)の分散から人工ノイズとネットワークノイズの分散の和まで変動する。
人工ノイズ発生器の役割は、ランダムノイズを系の入力ノイズに重ね合わせることにより、スレービングの固有極を安定化させ、それをローパスフィルタの極から引き離すことである。また、人工ノイズの別の目的は、配置の条件に関係なくスレービングの性能を安定化させることである。
【0037】
期待値と分散とによって定義される人工ノイズのいずれの発生器を使用してもよい。有利な実施形態では、一様な法則性を示すノイズ発生器が使用される。
【0038】
制御理論によれば、極の最大限の安定化は、人工ノイズの分散が入力ノイズの分散に等しい場合に達成される。
人工ノイズを付加することにより、このような系の過渡立上り期間を制御すること、ならびに、入力ノイズに関係なく過渡立上り期間を予測することも可能になる。
【0039】
本発明の上記さまざまな改良形態は組み合わせて使用することも、個別に使用することもできることに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】受信及び送信モジュールを備えたネットワークの例を示す。
【図2】本発明による装置の有利な実施形態を示す。
【図3】ローカル受信クロックを再生するモジュールの有利な実施形態を示す。
【図4】ラッチング時間の改善を可能にするローカル受信クロックを再生するモジュールの改良形形態を示す。
【図5】ネットワーク内のパケットの伝搬遅延を推定するモジュールを示す。
【図6】位相ノイズの最小化を可能にするクロックを再生するモジュールの改良形態を示す。
【図7】位相ノイズの最小化を可能にするクロックを再生するモジュールの第2の例を示す。
【図8】位相ノイズの改善に使用されるローパスフィルタの例を示す。
【図9】人工ノイズ発生器の実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケットデータ伝送ネットワークにおけるタイムスレービングのための装置であって、
各データパケットがタイムラベルを有しており、
前記装置が前記ネットワークから受信したパケットを受け取ることを目的とした一時記憶手段(6)を有している形態の装置において、
前記一時記憶手段(6)は、前記ネットワーク(5)の特性に依存した所定の時間(IPDV)の間に受信したデータを記録することのできる記憶容量を有しており、
前記装置はさらに、
入来パケットのタイムラベルに応じてローカル受信クロックを再生する手段(7)と、
前記所定の時間(IPDV)と再生されたローカル受信クロックとに依存するある時点において前記一時記憶手段内のデータを読み取る手段
を有していることを特徴とする、パケットデータ伝送ネットワークにおけるタイムスレービングのための装置。
【請求項2】
前記一時記憶手段(6)内のデータを読み取る手段は、前記所定の時間(IPDV)と再生されたローカルクロックとの間の差が前記一時記憶手段(6)から出力されるべき次のパケットのタイムラベルの値よりも大きい場合に、前記一時記憶手段(6)内のデータを読み取るように構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
ローカルクロックを再生する手段は、データパケットのローカル受信クロック(Rx)と、該ローカルクロック(Rx)及びデータパケットの送信クロック(Tx)の周波数に依存する2つの時点の間に受信したデータパケットのタイムラベルとの間のずれを合計することができる、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
立上り時の収束時間を短縮する手段を有している、請求項1から3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
位相ノイズを低減する手段(31)を有している、請求項1から4のいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
位相ノイズを低減する手段(31)はディジタルローパスフィルタを有している、請求項4記載の装置。
【請求項7】
人工的なノイズを発生させる手段(32)を有している、請求項1から6のいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
パケットデータ伝送ネットワークにおけるタイムスレービングのための方法であって、
各データパケットがタイムラベルを有しており、
前記方法が前記ネットワークから受信したパケットを一時記憶するステップ(6)有しているようにした方法において、
前記記憶ステップの間、前記ネットワーク(5)の特性に依存した所定の時間(IPDV)にわたってデータを記憶し、
前記方法はさらに、
入来パケットのタイムラベルに応じてローカル受信クロックを再生するステップと、
前記所定の時間(IPDV)と再生されたローカル受信クロックとに依存するある時点において前記一時記憶手段内のデータを読み取るステップ
を有していることを特徴とする、パケットデータ伝送ネットワークにおけるタイムスレービングのための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−531360(P2007−531360A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504392(P2007−504392)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050937
【国際公開番号】WO2005/093978
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】