説明

タイムベース用のレイアウト

【課題】シリコン共振器におけるように必ずしも温度安定性を必要としない周波数を有し、しかも周囲の熱的条件に係わらずに正確で低コストのタイムベースを得るために使用されることのできる共振器に基づいたレイアウトを提供すること
【解決手段】二つの発振器を含むタイムベースであって、その一つは、他方よりも低い周波数を有し、後者は断続的にスタンバイモードにセットされ、二つの発振器間の周波数差により第1安定時間基準(REF)、最も低い周波数を有する発振器の周波数を分周することにより得られる第2永久的時間基準(RTC)、及び、第1安定時間基準(REF)により決定される時間間隔の間に第1発振器(OSC1)により計数されるパルスに依存する除算因子を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はレイアウト、特に時間基準を発生させるように仕組まれたタイムピース用及びタイムベース用等のレイアウト、及び時間基準を発生させる方法に、関する。
【背景技術】
【0002】
タイムピースの分野において、タイムピースに存在するタイムベースの正確性につき問題が生じており、特にクロノメータにおいては温度に起因する信号の周波数ドリフトを補償するための共振器から出力される信号の較正についての問題が生じている。
【0003】
最もよく知られたタイムベースは、音叉タイプの32kHz共振器を含み、音叉タイプ32kHz共振器による遮断が、熱特性である第1次熱係数をキャンセルするために選択される。これによって、−20ppb/℃のドリフトを与える二乗則熱特性を有する時間保持機能が維持される。しかしながら、熱特性によるドリフトは未だに高過ぎて、タイムピースが例えばスイス公認クロノメーター検定協会(COSC)の規格に従ったクロノメータの特長を実現することのできるように正確なタイムベースは、得られていない。
【0004】
そのようなドリフトの影響を減じるための様々な解決方法が、時計メーカーによって工夫されている。第1の方法は、温度測定により温度によって生じる狂いを電子的に補償することである。しかしながら、この方法は、適正な温度測定を適用することと初期較正工程の実施とを必要とする。他の方法は、ディー.ランフランチ,イー.ディークストラ,及びディー.エビッシャー著、「年間3秒の正確性を有する、マイクロプロセッサーを基礎とするアナログ腕時計用チップ」スイス電子・微細技術センター,ISSCC 1994年発行(D.Lanfranchi、E.DijkstraとD.AebischerによるA microprocessor−based analog wristwatch chip with 3−seconds/year accuacy、CSEM(Swiss Centre for Electronics and Microtechnology)、ISSCC 1994)なる文献に開示されている。この文献は、ゼロオーダの第1及び第2の熱係数を有するZT−カットクォーツ共振器の使用を採用する方法を、開示する。この場合、約2MHzといった高周波数で動作する共振器が、周波数が約32KHzといった他の、精密性の低いクォーツ共振器における周波数ドリフトが存在するか否かを決定するための時間基準として、使用される。しかしながら、この解決方法は、高い周波数のZTクォーツ共振器を付加することが必要となり、そうすると時計システムのコストを押し上げる結果となる。この大きなコストがかかるという問題を解決するために、ZTクォーツが、正確性の低い32KHzクォーツと組み合わせされて使用され、かつ、ZTクォーツを使用する発振器をスタンバイモードに常時切り替えることにより非常に低い平均的なコストを実現するために使用される。タイムピースにおける残留熱に応じて、非常に正確な時間基準が、二つのタイムベースを同調させるために、短期間の間に、定期的に、動作される。しかしながら、この解決方法は、高い温度安定性の周波数を有する高精密な共振器を用いなければならない。また、ZTタイプのクォーツ共振器の追加は、製造コスト、及びサイズを増大させることとなり、これらのいずれも望ましくない。
【0005】
本願と同日に本願出願人により出願されたフランス特許の主題である「集積共振器及びそれを組み込んで成るタイムベース」(Integrated resonators and time bases incorporating such resonators)との表題を有する文献は、シリコン基板に集積された、異なる共振モードを有すると共に異なる周波数を発振する二つの共振器を含むタイムベースが開示されている。これらの共振器それぞれは、温度に起因する非常に高い周波数のドリフトを有する。開示されたこれらの共振器の作動条件において、二つの共振器から出力される信号間の相違は、非常に正確な時間基準を得るために使用されることができ、その温度によるドリフトが非常に小さいことが、見出された。第1次熱係数のキャンセルが、これら二つの共振器の周波数間の相違によって、得られる。第2次熱係数の低減は、基板における二つの共振器の適切な配置によって達成される。そのような共振器に基づいて、クロノメータに適用するに十分であると考えられる程、温度に対して安定し、かつ正確であるタイムベースを組み立てることが可能である。しかしながら、前述の特許出願に示される通り、そのような共振器の周波数が高いので、結局のところ、腕時計のような携帯型にするには、コストの非常に高いタイムベースとなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、この発明の課題は、上述の欠点を克服することであり、特には、シリコン共振器におけるように必ずしも温度安定性を必要としない周波数を有し、しかも周囲の熱的条件に係わらずに正確で低コストのタイムベースを得るために使用されることのできる共振器に基づいたレイアウトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
それゆえ、この発明の主題は、レイアウト、特に、その出力信号が時間基準を形成するように仕組まれたタイムベースのためのレイアウトであって、
出力信号が時間基準を形成するように仕組まれたレイアウトであって、
・周波数Fのシリコン共振器を含む第1発振器、
・その周波数F2が前記第1発振器の周波数とは異なるところの、シリコン共振器を含む第2発振回路、
・第1発振器から出力される信号と第2発振回路から出力される信号との差により、第1温度安定時間基準を発生する手段、
・第1発振器により出力される信号と第1温度安定化時間基準とを比較することにより、第1発信器から出力される信号の温度に起因する周波数ドリフトを決定する手段、
・前記ドリフトの値に従って第1発振器から出力される信号の周波数を分周し、第2温度安定時間基準を形成する出力信号を発生するプログラマブル較正手段、
を有することを特徴とするレイアウトである。
【0008】
この発明のレイアウトは、以下の特徴を有するところの、
・計数フェーズの間に、及び、第1時間基準の既定サイクル数を越えるときに、第1発振器により発振したパルス数を計数する計数手段を含むレイアウト、
・前記周波数ドリフトを決定し、かつ、前記計数が可能な期間中に、計数されたパルス数及び前記第1時間基準の前記サイクル数に従って前記プログラマブル較正手段を制御する手段を有するレイアウト、
・スタンバイモードに第2発振器を断続的にセットするためのスタンバイモード選択手段を含み、かつ第2発振器の動作フェーズ期間中に前記計数フェーズが動作するようにしたレイアウト、
・少なくとも一つの先行する計数フェーズ中に、第2時間基準に要求される正確さに従って、及び/又は第1発振器のために計数されたパルス数に従って、二つの連続する再動作の間の時間間隔を変化させるための手段を有するスタンバイモード選択手段を備えたレイアウト、
・計数フェーズ中に、第1発振器により発振されたパルス数から温度情報を発生させる手段を含むレイアウト、
・第1温度安定時間基準に関する較正情報を記憶する手段を含むレイアウト、
・第1発振器の絶対的正確性のための、及び/又は温度に起因する第1発振器の周波数ドリフトを補償するための、一定範囲の分割係数を有するプログラマブル周波数分周器を有する較正手段を含むレイアウト、
・その第1次温度係数が第1発振器(OSC1)における第1次温度係数を有する比率λ.F/Fの範囲内にあるシリコン共振器と、因子λにより前記共振器からの出力信号を除算する周波数分周器とを含み、第2発振器(OSC2)の出力信号を発生させる第2発振器を含むレイアウト、
である。
【0009】
この発明の他の主題は、時間基準を形成するために仕組まれた信号発生方法であり、以下のようなステップ、すなわち
・シリコン共振器を含む第1発振器により第1周波数を発生させること、
・比率F20/λ.F10を乗じられた前記第1発振器の共振器における第1次熱係数とほぼ等しい第1次熱係数を有するところの、シリコン共振器を含む第2発振器により、第1周波数とは異なる第2周波数を発生させること、
・前記後者を因子λで除算した後に、前記第1発振器により出力される信号と第2発振器から出力される信号との周波数差による第1温度安定時間基準を発生させること、
・第1発振器により出力された信号と第1時間基準との比較による、第1発振器により出力された信号の温度による周波数ドリフトを決定すること、
・前記ドリフトの値に従って、第2時間基準を形成する出力信号を発生させるために、第1発振器により出力される信号の周波数を較正すること、
を含む。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、COCSの要求を満足させるに十分に正確な基準時刻を、簡単な方法で、シリコン共振器を使用して、発生させるために前記した各種の特徴を有する。特にこの発明は、高い正確性を有する複数の共振器を必要とせず、また、ZTクォーツ共振器のような大きな熱的に安定な複数の共振器を必要としない。これらは、高価であり、タイムベースのサイズを大きくしてしまい、タイムベースの製造を複雑化させる。さらに、シリコン共振器の実装は、この発明に係るデバイスを様々に適用すること、特にシリコン集積回路を使用する既存のもの、例えば、ハンドヘルド・コンピュータ、パーソナルデジタルアシスタントや他の小型電子デバイスに使用することの考慮を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の他の特徴と利点とは、単なる例として与えられている以下の記述及び添付図面の参照により、明らかになる。
【0012】
図1は、各々シリコン共振器を含む二つの発振器から出力される異なる信号の周波数差を使用したタイムベースの概略図である。この図において、第1発振器OSC1は、発振器OSC2より低い周波数で動作する。第2発振器の出力側に、第2発振器OSC2に付随して設けられたところの、整数λにより周波数を除算する周波数分周器DIV2が設けられる。因子λによる周波数分周の後に、第1発信器OSC1から出力される信号S1と第2発振器OSC2から出力される信号S2との周波数差が、時間基準REFを形成し、その周波数は、周波数間の比が第1次熱係数の比率の逆数であるならば、安定である。
【0013】
上述の単純な利用形態において開示されたように、もしも二つの発振器OSC1,OSC2が上述の条件を満足するように選択されるならば、時間基準REFのための第1次熱係数のキャンセルが実現され、それ故に、二つの発振器が広い熱ドリフトを示してるにしても、安定な周波数差が得られる。
【0014】
実際には、第1発振器OSC1の周波数がFであると、第1近似として、周波数Fは以下のようである。
【0015】
(ΔT)=F10(1+αΔT)
ただし、ΔTは温度変数であり、αは発振器OSC1における共振器の第1次熱係数であり、F10はその固有周波数である。
【0016】
そして、第2発振器の周波数がFであると、第1近似として、周波数Fは以下のようである。
【0017】
(ΔT)=F20(1+αΔT)
ただし、αは発振器OSC2の第1次熱係数であり、F20はその固有周波数であり、また、次の条件が満足される。
【0018】
λα10=α20
よって、第2発振器OSC2の周波数を因子λで除算すると、以下に示される周波数F’が得られる。
【0019】
F’(ΔT)=F(ΔT)/λ
=(F20/λ)(1+αΔT)
=(F10α/α)(1+αΔT)
さらに、F’とFとの差により、周波数Fが以下のように得られる。
【0020】
(ΔT)=F’(ΔT)−F(ΔT)=F10(α1−α2)/α2
すなわち、高次熱係数を無視することによって、温度に依存しない周波数が、時間基準REFとなる周波数である。既述したように、前述の特許出願にも、周波数差FRの第2次熱係数をキャンセルし、又は、大幅に減少させる手段が開示されている。
【0021】
図2は、既に記述した原理を使用した、特にタイムベースにおけるレイアウトを図示する。レイアウトは、第2発振器OSC2より低い周波数で動作する第1発振器OSC1を含む。プログラマブル較正手段が、第1発振器OSC1の出力について作動し、第1発振器OSC1によって出力される信号S1の周波数のプログラマブル分周を実行し、かくしてタイムベースにおける時間基準RTCの出力を発生させる。プログラマブル較正手段は、図2の例のように、第1発振器によって出力された信号S1の要素Nによって周波数を分周するプログラマブル分周器により、実行される。
【0022】
第2分周器DIV2は第2発振器OSC2の出力について作動し、整数λによる周波数分周を実行し、周波数分周を基礎にして第1発信器OSC1からの出力S1との差が第1時間基準REFを形成する。既述したように、発振器は、少なくとも信号REFを示す第1次熱係数が0となるように、選択される。この方法においては、第1時間基準REFの周波数は温度安定である。
【0023】
この発明におけるタイムベースは、初期較正フェーズにおいて使用される較正ブロックCALを含み、そしてそれは較正フェーズ外の通常の操作において較正から得られるデータを記憶しておくために使用される。
【0024】
この較正ブロックCALはコントロールブロックCTRLに結合され、コントロールブロックCTRLの機能は、第1の低消費の発振器OSC1に結合したプログラマブル分周器DIV1を制御すること、である。このために、このコントロールブロックは、第1発振器から出力される信号S1、安定参照信号REF、及び較正フェーズで生じて較正ブロックに記憶されたデータDCALを使用する。また、このコントロールブロックCTRLはまた、継続的に動作している発振器OSC1と共に、スタンバイモードに切り替えるための、又は発振器OSC2を復帰作動させるための制御信号MVを発生する。
【0025】
レイアウト操作原理と様々な態様とが、以下に詳細に述べられる。
【0026】
較正ブロックCALは、安定な時間基準REFの値をメモリに蓄える。この値は、初期較正フェーズで得られ、その初期較正フェーズの間にこの安定な基準が極めて正確な外部基準と比較される。例えば、ppm(10−6)の正確性を得るために10に等しい数である安定な基準REFの所与のパルス数を係数するために外部基準と関連して必要とされる時間を測定することによって、これが達成される。
【0027】
安定な基準周波数REFの値は、計数されたパルスの数と外部基準を使用して測定された較正時間との比率を計数することによって得られる。このように、もし較正時間が1.872Sであれば、安定な基準周波数は、10/1.872=0.534MHzとなるであろう。要求された測定精度に応じて、パルスの数はより高くなるが、較正時間が比例して長くなるだろう。
【0028】
較正によって得られた安定な基準周波数REFの値は、較正ブロックCALの中に、例えば、約1ppmの正確性を以って蓄積される。測定の正確性に不利な影響を与えることなしに、初期の較正が、周囲の温度でなされる。なぜなら、安定な基準REFの温度ドリフトはとても低いからである。前記基準周波数の値は、タイムベースの較正フェーズ外の通常の操作においても利用可能であるように、較正ブロックCALに不揮発性の方法で、蓄えられる。
【0029】
コントロールブロックCTRLは、第1発振器OSC1の出力信号S1と安定な基準信号REFとから、前記較正手段を制御する制御信号を発生させるために、較正情報を利用する。図2の例において、この制御信号は、第1発振器OSC1による出力で動作する第1プログラマブル分周器DIV1における除数因子Nを調整するために、使用される。
【0030】
制御信号が決定される方法が、図3における流れ図によって示される。この流れ図において、計数フェーズがあり、この計数フェーズの間に、第1発振器OSC1によって出力されたパルスと安定な基準REFのパルスとが平行して計数される。
【0031】
この決定過程が、ステップ30において、第2発振器OSC2が、コントロールブロックCTRLによって発生した再起動信号MVによって再起動するときに、開始する。前記安定な基準REFは、引き続くフェーズのため有用である。引き続いてリセットステップ20となり、そのリセットステップ20の間に、安定基準REFのパルスを計数する計数器Nの値が0にリセットされ、計数フェーズの終わりの指示ENDフラグがNOにセットされ、そして、第1発振器OSC1により出力された信号S1のパルスを計数する計数器の値Nが0にリセットされる。
【0032】
安定な基準REFの期間に対応した待ち時間(ステップ22)の後において、予め定められた値Mより計数器の値Nが小さいことがステップ23での比較の後に確認されたときに、計数器の値Nがステップ21で増加する。値Mは、計数フェーズの期間と定義できる安定な基準REFのパルスの数に、対応する。計数器の値Nが値Mに達すると、安定な基準REFのパルスを計数するプロセスがステップ24で終了し、そのステップ24でENDフラグがYESにセットされ、その信号YESは計数フェーズの終了を示す。ステップ24で計数フェーズが終了すると、第2発振器OSC2が、ステップ31で、第2発振器をセットするために信号MVを発生することによって、スタンバイモードにリセットされる。
【0033】
上記されたステップ21、22、23が進行している間に、信号S1の期間に相当する待ち時間(ステップ12)の後に、計数フェーズが終了していない事実がENDフラグの値を検知することにより検出されるときに、計数器の値Nがステップ11で増加される。
【0034】
しかしながら、もし、ENDフラグの値が計数フェーズの終了を示すなら、ステップ33にて、分周器DIV1をプログラムするように企図された除算因子の値Nが、初期較正により得られた周波数基準値Fで乗じると共に計数が行われているときの周波数基準のサイクル数Mで除算された低消費発振器のパルス数Nであるとして、決定される。
【0035】
周波数F’1の信号はそれゆえ、プログラマブル分周器の出力で、以下のようにして得る。
【0036】
F’=F/N=(F/N(M/F
ただし、周波数1Hzの信号は秒を与える。
【0037】
もし、今、第1発振器OSC1のある特定時間における周波数F1が増加すれば、計数されたパルス数Nが増加し、分周器DIV1に適用される除数要素の値Nが比例して大きくなる。前記値を有する第1分周器DIV1のそのようなプログラミング後に、デバイスによって出力された時間基準RTCは、再調整される。
【0038】
第1発振器OSC1において例えば約百万パルスを計数するように、安定な基準REFのための予め定められたパルス数Mが、選択される。このパルスの数は、タイムベースに要求される正確性によって、調整されなければならないが、パルス数が多きければ大きいほど得られる正確性が大きくなり、他方、デバイスのコストが大きくなる。
【0039】
この発明によるデバイスのコストを減じるために、最も低い周波数で動作する発振器OSC1のみが半永久的に作動する。有利な態様に従えば、第2発振器OSC2が、周期的にスタンバイモードにセットされる。安定な基準REFはそれ故に、発振器OSC2が作動している操作モードにおいてのみ使用される。
【0040】
これは、デバイスのコストを大幅に減少させる。約1MHの低消費発振器の周波数と約100KHzの周波数差とにより、10秒の初期較正が、正確な周波数基準REFを得るために必要であるが、永久的な出力を有する発振器OSC1の百万サイクルを計数するのはたったの1秒である。その結果として、1ppmの正確さで秒を刻むタイムピースが実現される。
【0041】
この発明におけるデバイスに関して、例えばタイムピースに組み込まれる装置には熱による遅れが生じることがあり、その場合には、高周波数発振器の再起動の比率が決定される。共振器における熱ドリフトの高い値(約30ppm/℃)のために、除数因子Nの再調整を温度変化における少なくとも10℃毎に行う必要がある。約1℃/分の温度慣性がある場合には、6秒毎に高周波数発振器OSC2を1秒間再起動することが必要になり、その結果、二つの発振器が永久的に動作するデバイスに比べると、6の因子によりシステムを操作するに要する消費電力を低減することができる。
【0042】
共振器を正確に製造することによって、絶対的な正確性を要求される周波数基準は±0.05%となる。±15℃の温度範囲にわたる30ppm/℃のドリフトは、全体的な同様のドリフトを生じる。それゆえ、もし、永久的に動作する発振器OSC1の周波数値の99.1%と100.1%との間にある除算因子を発生させることのできるプログラマブル分周器DIV1が使用されるならば、絶対的な正確性及び温度変化に対する補償が、共振器における如何なる事前の調整を要することなく、達成される。
【0043】
さらに、温度安定時間基準REFと(もし、第2熱係数の影響が無視されるならば)温度に対する良好な線形性を示す第1発振器OSC1の出力信号とを適用しているから、永久的に作動する第1発振器OSC1の周波数値は発振器における温度についての直接的表示となり、これは、良好な直線性をもって、デジタル信号として1℃につき約1/30の正確性となる。
【0044】
この場合において、較正フェーズにおいて、初期温度Tを測定し、かつ、予め定められたパルス数Mの範囲内でこの温度における第1発信器OSC1のパルス数N10を計数することが、必要である。この計数プロセスは、通常の動作モードにおいて較正フェーズ外で使用される既述した計数フェーズと同様である。これらの初期値T及びN10は、基準周波数Fと同様に、不揮発性の状態で較正ブロックに格納される。通常の動作においては、第1発振器の出力信号S1であるパルス数N1から各係数フェーズの後に温度が、以下の式に従って得られる数Nの関数として、再評価される。
【0045】
T=T+(N−N10)/(N10α
好適には、コントロールブロックCTRLは、温度差ΔT=T−Tを決定し、かつ、図3中の破線で示されたステップ35に従って以下の式によるこの温度差値を発生される手段を有する。
【0046】
ΔT=(N−N10)/(N10α
以上の考察からすると、この発明は様々に変形し、広範囲に応用することができる結果となる。つまり、この発明は温度計型装置内における温度情報を使用することによりこの温度情報を利用し、又は発振器OSC2のスタンバイフェーズ/動作フェーズの継続期間を制御するためにこの情報を好適に単に利用することができ、それ故にこの発明に係るデバイスのコストを最小にすることができる。
【0047】
かくして、図3に示されるように、スタンバイモードと引き続く再起動との切り替えの間における時間間隔は、第1発振器OSC1の出力信号S1のパルス数に相当する待ち受け時間(ステップ32)の値τにより決定される。この値は、固定されることができ、この場合、時間基準RTCについて要求される正確性及び可能な最大熱ドリフトに応じて、決定される。この値はまた、例えば図3におけるステップ40により示唆される例に従って、較正因子Nにより測定された周波数ドリフトについての線形予測法により、又は直接的に、ステップ13の後に引き続いて計数されるように値N1から、各係数フェーズの後に決定されることもできる。
【0048】
結論として、これまで説明されたこの発明は、タイムベースに適用するのみならず、高い正確性の要求される温度計タイプの装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、前記単なる実施例として開示されたタイムベースの概要図である。
【図2】図2は、この発明に従ったタイムベースの概略図である。
【図3】図3は、この発明に従ったレイアウトの中に含まれるコントロールボックスCTRLの操作を記述する流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力信号が時間基準を形成するように仕組まれたレイアウトであって、
・周波数Fのシリコン共振器を含む第1発振器(OSC1)、
・その周波数Fが前記第1発信器(OSC1)の周波数と相違するところの、シリコン共振器を含む発振回路、
・前記第1発信器(OSC1)から出力される信号(S1)と第2発振器(OSC2)から出力される信号(S2)との差によって、第1温度安定時間基準(REF)を発振する手段、
・第1発振器(OSC1)により出力される信号(S1)の温度による周波数ドリフトを、第1発振器(OSC1)から出力される信号(S1)と前記第1温度安定時間基準(REF)とを比較することにより、決定する手段、
・前記ドリフトの値に従って第1発振器(OSC1)から出力される信号(S1)の周波数を分周し、第2温度安定時間基準(RTC)を形成する前記出力信号を発生するプログラマブル較正手段(DIV1)、
を有することを特徴とするレイアウト。
【請求項2】
前記請求項1に記載のレイアウトであって、
・計数フェーズの間に、及び、第1時間基準(REF)の既定サイクル数(M)を越えるときに、第1発振器(OSC1)により発振したパルス数(N1)を計数する計数手段(10,11,12,13)、及び
・前記周波数ドリフトを決定し、かつ、前記係数が可能な期間中に、計数されたパルス数(N1)及び前記第1時間基準(REF)の前記サイクル数(M)に従って前記プログラマブル較正手段を制御する手段(33)、
を含むことを特徴とするレイアウト。
【請求項3】
前記請求項2に記載のレイアウトであって、
・スタンバイモードに第2発振器(OSC2)を断続的にセットするためのスタンバイモード選択手段(MV)を含み、かつ
・第2発振器(OSC2)の動作フェーズ期間中に前記計数フェーズが動作すること、を特徴とするレイアウト。
【請求項4】
前記請求項3に記載のレイアウトであって、
前記スタンバイモード選択手段(MV)が、少なくとも一つの先行する計数フェーズ中に、第2時間基準(RTC)に要求される正確さに従って、及び/又は第1発振器(OSC1)のために計数されたパルス数(N1)に従って、二つの連続する再動作の間の時間間隔を変化させるための手段、
を含むことを特徴とするレイアウト。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか一項に記載のレイアウトであって、
計数フェーズ中に、第1発振器(OSC1)により発振されたパルス数(N1)から温度情報を発生させる手段、
を含むことを特徴とするレイアウト。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか一項に記載のレイアウトであって、
第1温度安定時間基準(REF)に関する較正情報を記憶する手段、
を含むことを特徴とするレイアウト。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか一項に記載のレイアウトであって、
前記較正手段が、第1発振器(OSC1)の絶対的正確性のための、及び/又は温度に起因する第1発振器(OSC1)の周波数ドリフトを補償するための、一定範囲の分割係数を有するプログラマブル周波数分周器、
を含むことを特徴とするレイアウト。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のレイアウトであって、
第2発振器(OSC2)が、その第1次温度係数が第1発振器(OSC1)における第1次温度係数を有する比率λ.F/Fの範囲内にあるシリコン共振器と、因子λにより前記共振器からの出力信号を除算する周波数分周器とを含み、第2発振器(OSC2)の出力信号を発生させること
を特徴とするレイアウト。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のレイアウトを含むタイムベース。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のレイアウトを含む温度計。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のレイアウトを含むタイムピース。
【請求項12】
以下のステップを含み、時間基準を形成する信号を発生させる方法。
・シリコン発振器を含む第1発信器(OSC1)による第1周波数を発生させること、 ・シリコン共振器を含む第2発振器(OSC2)により、第1周波数とは異なる第2周波数F2を発生させること、
・第1発振器(OSC1)により出力される第1信号(S1)と第2発振器(OSC2)から出力される前記第2出力信号(S2)との間の周波数差による第1温度安定時間基準(REF)を発生させること、
・第1発振器(OSC1)により出力された信号(S1)と第1時間基準(REF)との比較による、第1発振器(OSC1)により出力された信号(S1)の温度による周波数ドリフトを決定すること、
・前記ドリフトの値に従って、第2時間基準(RTC)を形成する出力信号を発生させるために、第1発振器(OSC1)により出力される信号(S1)の周波数を較正すること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−500479(P2007−500479A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529529(P2006−529529)
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000288
【国際公開番号】WO2004/102809
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(503393294)セーエスエーエム サントル スイス ドュレクトロニック エ ドゥ ミクロテクニック エスアー (3)
【Fターム(参考)】