説明

タイヤの姿勢制御装置および方法

【課題】車両に装着された転動中のタイヤの姿勢を制御するタイヤの姿勢制御装置及び方法であって、タイヤの偏摩耗を抑制するように制御する。
【解決手段】タイヤセンタ位置から同じ距離はなれたタイヤショルダー側の2つのタイヤ測定位置における接地状態を検出し、検出した接地状態に基づいて、タイヤ1回転に少なくとも1回以上、前記2つのタイヤ測定位置における接地長を求める。この後、1より大きい第1の閾値と、1より小さい第2の閾値を定めたとき、算出した2つの接地長の比率が、第1の閾値より大きい場合、あるいは、第2の閾値より小さい場合、タイヤのキャンバ角を前記比率が1になるように制御する制御信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装着された転動中のタイヤの姿勢を制御するタイヤの姿勢制御装置及びタイヤの姿勢制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着され負荷荷重を受けたタイヤは、車両のサスペンション機構の影響を受けるため、静止状態においてキャンバ角は0でない。転動中においても同様である。また、負荷荷重の変化によってサスペンジョン機構のジオメトリー変化し、この変化によりタイヤの姿勢(キャンバ角)は変化する。一般に、高負荷荷重になると、車輪が車両進行方向外側に広がるトーアウト傾向となり、車輪が接地面鉛直方向に対して、車両内側に倒れるように傾斜するネガティブキャンバ傾向となる。
このように、タイヤは車両に装着されたとき姿勢は変化するため、タイヤが路面と接地するタイヤの接地面の形状は対称形状からずれる。このため、タイヤの接地面内で発生する力も非対称な発生分布となり、この分布がタイヤの偏摩耗の原因となっている。
【0003】
一方、下記特許文献1には、タイヤの動的状態推定方法とその装置、及びセンサ付きタイヤが記載されている。
当該特許文献では、タイヤトレッドのセンタ位置を基準として、タイヤ幅方向の対称な2つの位置に歪みゲージを取り付け、歪ゲージの出力波形から接地長を求め、求めた接地長から荷重、横力、前後力を推定する方法が記載されている。
しかし、当該文献の装置は、タイヤに作用する負荷荷重、前後力等を推定することはできても、タイヤの姿勢を制御するものではない。このため、タイヤの偏摩耗の抑制を実現することはできない。
【0004】
【特許文献1】特開2005−343281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、車両に装着された転動中のタイヤの姿勢を制御するタイヤの姿勢制御装置及び方法であって、タイヤの偏摩耗を抑制するようにタイヤの姿勢を制御する装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両に装着された転動中のタイヤの姿勢を制御するタイヤの姿勢制御装置であって、タイヤセンタ位置から同じ距離はなれたタイヤショルダー側の2つのタイヤ測定位置における接地状態を検出する検出手段と、検出した前記接地状態に基づいて、タイヤ1回転に少なくとも1回以上、前記2つのタイヤ測定位置における接地長を算出する算出手段と、1より大きい第1の閾値と、1より小さい第2の閾値を定めたとき、算出した前記2つのタイヤ測定位置における接地長の比率が、前記第1の閾値より大きい場合、あるいは、前記第2の閾値より小さい場合、前記比率が1になるようにタイヤのキャンバ角を制御する制御信号を生成する判定・制御手段と、を有することを特徴とするタイヤの姿勢制御装置を提供する。
【0007】
その際、前記検出手段は、タイヤ内面に装着される加速度センサであることが好ましい。
また、前記判定・制御手段は、前記比率が前記第2の閾値以上前記第1の閾値以下の場合、前記制御信号を生成しないことが好ましい。
さらに、タイヤ正規荷重条件におけるタイヤの接地幅およびタイヤ幅方向の接地端を定めたとき、前記タイヤ測定位置は、前記接地幅の10〜25%の距離、前記接地端から離れた位置であることが好ましい。
【0008】
また、本発明は、車両に装着された転動中のタイヤの姿勢を制御するタイヤの姿勢制御方法であって、タイヤセンタ位置から同じ距離はなれたタイヤショルダー側の2つのタイヤ測定位置における接地状態を検出するステップと、検出した前記接地状態に基づいて、タイヤ1回転に少なくとも1回以上、前記2つのタイヤ測定位置における接地長を算出するステップと、1より大きい第1の閾値と、1より小さい第2の閾値を定めたとき、算出した前記2つのタイヤ測定位置における接地長の比率が、前記第1の閾値より大きい場合、あるいは、前記第2の閾値より小さい場合、前記比率が1になるようにタイヤのキャンバ角を制御する制御信号を生成するステップと、を有することを特徴とするタイヤの姿勢制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、タイヤ1回転に少なくとも1回以上、2つのタイヤ測定位置における接地長を算出し、算出した2つの接地長の比率が、前記第1の閾値より大きい場合、あるいは、前記第2の閾値より小さい場合、接地長の比率が1になるように、タイヤのキャンバ角を制御する制御信号を生成し、時々刻々変化するタイヤの姿勢に対して、タイヤの接地面の形状が線対称になるように制御するので、タイヤの接地形状は略線対称に維持される。このため、タイヤの横力を効果的に発生させつつ、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付の図面に示す実施形態に基づいて、本発明のタイヤの姿勢制御装置および方法を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明のタイヤの姿勢制御方法を実施するタイヤの姿勢制御装置の一実施形態の構成図である。
図1に示すタイヤの姿勢制御装置10は、車両に装着されたタイヤの転動中、車両のサスペンション機構が負荷荷重に依存して変化する機構特性やタイヤの接地面に発生する横力や前後力によってタイヤの姿勢(キャンバ角)が変化しようとしても、タイヤの接地面の形状が対称形状を維持するようにタイヤの姿勢を制御する装置である。
タイヤの姿勢制御装置10は、データ取得部16、接地長算出部18及び判定・制御部20を主に備え、この他にデータ取得部16、接地長算出部18及び判定・制御部20の動作制御及び機能を管理するCPU22及び各部で使用する閾値等の条件及び各部で算出したデータを記憶保持するメモリ24を備える。
【0012】
データ取得部16は、タイヤ26に取り付けた加速度センサ28から出力される加速度信号を取得する部分である。加速度センサ28は、半径方向Rにおける加速度を検出し、出力するものであり、本発明の、接地状態を検出する手段に対応し、例えば、半導体加速度センサが用いられる。
半導体加速度センサは、具体的には、Siウエハ外周枠部内にダイアフラムが形成されたSiウエハと、このウエハ外周枠部を固定する台座とを有し、ダイアフラムの一方の面の中央部に重錘が設けられ、ダイアフラムには複数のピエゾ抵抗体が形成されている。この半導体加速度センサに加速度が作用した場合、ダイアフラムは変形し、この変形によりピエゾ抵抗体の抵抗値は変化する。この変化を加速度の情報として検出できるようにブリッジ回路が形成されている。
加速度センサ28は、半導体加速度センサに限定されるものではなく、タイヤ26の半径方向Rの加速度が検出可能な加速度センサであればよい。
【0013】
このような加速度センサ28は、図2に示すように、タイヤトレッド26aのセンタ位置(タイヤセンタ位置)Cから同じ距離はなれたタイヤショルダー側の2つのタイヤ測定位置Sにおける加速度の検出のために、タイヤ空洞領域に面するインナライナ部分26bに設けられる。これにより、タイヤの半径方向Rの加速度を計測することができる。ここで、タイヤ正規荷重条件におけるタイヤの接地幅およびタイヤ幅方向の接地端を定めたとき、タイヤ測定位置は、上記接地幅の10〜25%の距離、好ましくは10〜15%の距離、タイヤ幅方向の接地端から離れた位置である。すなわち、タイヤ接地幅をTwとしたとき、センタ位置Cに対してタイヤ幅方向の対称な2つの測定位置Sの間隔は、0.5・Tw以上である。タイヤ正規荷重条件とは、200kPaの内圧条件及びJATMA、TRA、あるいはETRTOで規定される最大荷重の85%の荷重条件をいう。
【0014】
加速度センサ28から出力される計測信号は、データ取得部16に供給される。データ取得部16は、加速度センサ28から送られる半径方向Rの加速度の計測信号を増幅する図示されないアンプと、アナログデータである加速度信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてデジタルデータに変換する図示されないAD変換回路とを備える。データ取得部16は、デジタルデータに変換された加速度データを、接地長算出部18に供給する。
【0015】
接地長算出部18は、接地長の算出を行う部分である。接地長算出部18は、供給された加速度データに対して、フィルタを用いた平滑化処理を施してノイズ成分を取り除き、滑らかに変化する加速度データとし、この加速度データを用いて接地長を算出する。
平滑化処理のためのフィルタとしては、例えば、所定の周波数をカットオフ周波数とするデジタルフィルタが用いられる。カットオフ周波数は、転動速度またはノイズ成分によって変化するが、例えば、車輪速度が60(km/時)の場合、カットオフ周波数は、0.5〜2(kHz)とされる。この他に、デジタルフィルタの替わりに、移動平均処理またはトレンドモデル等を用いて平滑化処理を行ってもよい。
図3(a)は、平滑化処理前の加速度データ70の一例を示し、図3(b)は、平滑化処理後の加速度データ76の一例を示す図である。
【0016】
ここで、図3(a)および(b)に示すように、車輪が1回転する間(回転角度360°)、すなわち、1つの区間72において、タイヤの接地変形により加速度が大きく変化する領域74a、74bが生じる。これは、タイヤトレッドが回転して接地領域に進入するとき、タイヤの回転による遠心力加速度成分が急激に変化し、また接地領域から出るとき、タイヤの回転による遠心力加速度成分が急激に変化するからである。このため、加速度データ76において、急激に大きく変化する領域74aを接地前端領域と定め、急激に大きく変化する領域74bを接地後端領域と定めることができる。
【0017】
図4は、図3(a),(b)とは異なる加速度データの例を示す図である。
図4に示すように、タイヤトレッドが接地する接地前端領域において、タイヤの変形により踏み込みピークPが生じ、タイヤが接地領域から出る接地後端領域において、タイヤトレッドが接地した状態から離れるときの変形により蹴り出しピークPが生じる。
接地長算出部18は、この加速度が大きく変化する領域において、踏み込みピークPの値および、その位置(タイミング)、ならびに蹴り出しピークPの値および、その位置(タイミング)を検出する。踏み込みピークPの位置とは、タイヤが1回転する間で踏み込みピークPが生じるタイミングのことである。
また、蹴り出しピークPの位置とは、タイヤが1回転する間で蹴り出しピークPが生じるタイミングのことである。
【0018】
本実施形態においては、車輪が1回転する間(区間72)で、最初に最も加速度が大きくなるところを踏み込みピークPとする。そして、この最初に最も加速度が大きくなるところの値を踏み込みピークPの値Vとする。さらに、この踏み込みピークPが発生するタイミングを第1タイミングTとする。
【0019】
また、踏み込みピークP後、一端加速度の値が小さくなった以降において、再度加速度が最も大きくなるところを、蹴り出しピークPとし、再度加速度が最も大きくなるところの値を蹴り出しピークPの値V2とする。この蹴り出しピークPが発生するタイミングを第2タイミングTとする。
このように、車輪の1回転する間の加速度の値の変化を調べ、踏み込みピークPおよび蹴り出しピークPに該当するピークの値をそれぞれ、踏み込みピーク値Vおよび蹴り出しピーク値Vとして、その値がメモリ24に記録される。さらに、踏み込みピークPの第1タイミングTと、蹴り出しピークPの第2タイミングTもメモリ24に記録する。
【0020】
接地長算出部18は、踏み込みピーク値Vおよび蹴り出しピーク値Vそれぞれを基準とし、これらの各基準の50%の値を所定値として定め、これらの所定値を加速度データが上から下に横切るときの時間と下から上に横切るときの時間との差分である時間間隔δを接地長時間として求め、車輪を装着するハブ近傍に設けられた図示されない車輪速センサから求められる車両の走行速度と時間間隔δを乗算することにより、接地長を求める。接地長算出部18には、タイヤトレッドの2つのタイヤ測定位置Sにおける加速度データが供給されるので、タイヤ測定位置Sにおける2つの接地長が算出される。接地長算出部18における接地長の算出はタイヤ1回転ごとに1回行われ、タイヤ測定位置Sにおける接地長の情報は、判定・制御部20に常に供給される。
なお、接地長を求めるための時間間隔δは、上記基準の50%とを所定値として求めたが、50%に限定されず、10%〜100%の範囲の数値を用いることができる。
また、2つの加速度センサ28をタイヤ周上の1箇所に設ける他、本発明では、タイヤ測定位置Sとタイヤ幅方向の同じ位置に、タイヤ周上の複数箇所に加速度センサ28を設けてもよい。これにより、タイヤ1回転に当たり複数回接地長を計測することができる。
【0021】
判定・制御部20は、タイヤ計測位置Sにおける接地長の比率(車両装着外側の接地長に対する車両装着内側の接地長の比率)を算出し、比率が予め設定された第1の閾値以下であり、第2の閾値以上である場合、タイヤの姿勢を制御するための制御信号を生成しない。ここで、第1の閾値は1より大きい値であり、例えば1.1〜1.5の範囲にある値である。第2の閾値は1より小さい値であり、例えば0.5〜0.9の範囲にある値である。一方、接地長の上記比率が、第1の閾値より大きい場合、キャンバ角がポジディブキャンバ(車両を正面から見たとき逆ハの字状にタイヤが傾いている状態)方向に変化するように制御する制御信号が生成される。接地長の比率が、第2の閾値より小さい場合、タイヤのキャンバ角がネガディブキャンバ(車両を正面から見たときハの字状にタイヤが傾いている状態)方向に変化するように制御する制御信号が生成される。すなわち、接地長の比率が、第1の閾値より大きい場合、あるいは、1より小さい第2の閾値より小さい場合、タイヤのキャンバ角を上記接地長の比率が1になるように制御する制御信号を生成する。
サスペンション制御装置14は、サスペンションの構成部材のアーム長さやローアーム取り付け点の移動等をアクチュエータ等によって調整して車輪のキャンバ角を制御する部分である。
【0022】
図5(a)〜(d)は、図2に示タイヤ測定位置Sとセンタ位置Cに加速度センサを設けて接地長を求めたときの結果(転動速度50km/時)を示す図である。図5(a)は、スリップ角+1度の状態である。図5(a)では、図中両側の接地長のうち、左側の接地長が右側の接地長に比べて長くなっている。図5(b)は、スリップ角+3度の状態であり、図5(a)の接地長と比較して、図中左側の接地長が長くなり、右側の接地長は短くなっていることがわかる。これに対して、図5(c)は、スリップ角+1度の状態で、キャンバ角を制御して、上記接地長の比率が1になるようにしたときの図である。同様に、図5(d)は、スリップ角+3度の状態で、キャンバ角を制御して、上記接地長の比率が1になるようにしたときの図である。このように、スリップ角によって生じた接地面の非対称形状を対称形状に制御することができる。
【0023】
図6は、横軸にスリップ角を、縦軸に横力を採り、キャンバ角を0度、±3度、±6度、±9度に変えた時の横力を示している。上記接地長の比率を1に近づけるように制御することで、接地面の形状は対称性を持つので、横力は増加する。図6は、このことを示している。例えば、点Qの位置、すなわちスリップ角度を−1.2度、キャンバ角+9度のときの接地面の形状は略対称形状を成し、横力は、点Pの位置であるスリップ角が−1.5度、キャンバ角0度のときの横力と同じ値になる。これより、同じ横力を発生させる場合でも、キャンバ角を制御し、接地面の形状を線対称にすることで、スリップ角を小さくできる。したがって、横力の発生時、タイヤ幅方向のセンタ位置Cを挟んで一方の側に発生しやすいタイヤ摩耗を抑制でき、偏摩耗を低減することができる。
【0024】
このようなタイヤの姿勢制御装置10で行われるタイヤの姿勢制御方法について、以下説明する。図7は、タイヤの姿勢制御方法を示すフローチャートである。
【0025】
まず、接地長算出部18では、車輪の回転/非回転が判定される(ステップS10)。回転/非回転の判定は、車輪を装着するハブ近傍に設けられた車輪速センサから供給されるパルス信号によって判断される。極低速状態(例えば、時速10km/時以下)を非回転と判定するために、所定の時間内に供給されるパルス信号の数が一定数以下の場合、非回転と判定する。
非回転と判定されると、次に、所定時間(例えば、10分等)車両が停止しているか否かが判定される(ステップS20)。車両が停止しているか否かは、車両に設けられた速度計の信号によって判断される。所定時間車両が停止していると判定された場合、再度車輪の回転の有無が判定される。所定時間車両が停止していると判定された場合、タイヤの姿勢制御方法は終了する。所定時間車両が停止していない場合、ステップS10に戻る。
一方、ステップS10において、車輪が回転していると判定された場合、接地長の算出が行われる(ステップS30)。車輪回転状態のとき、接地長算出部18には、データ取得部16から加速度データが常時供給されている。接地長の算出は、供給されている加速度データを用いて行われる。接地長の算出方法は上述したとおりである。
【0026】
次に、判定・制御部20において、内側接地長/外側接地長の比率Aが算出される(ステップS40)。内側接地長とは、タイヤを車両に装着したとき車両内側に位置するタイヤ測定位置Sにおける接地長をいい、外側接地長とは、タイヤを車両に装着したとき車両外側に位置するタイヤ測定位置Sにおける接地長をいう。次に、算出された比率Aが予め設定された第1の閾値βおよび第2の閾値αと比較される(ステップS50)。比較の結果、比率Aが第2の閾値α以上であり、第1の閾値β以下である条件を持たすとき、タイヤの姿勢を制御されず、制御信号は生成されない(ステップS60)。
【0027】
一方、ステップS50で上記条件を満たさないとき、比率Aが第2の閾値αより小さいか否かが判定される(ステップS70)。比率Aが第2の閾値αより小さい場合、タイヤのキャンバ角をネガティブキャンバ方向に変化するように制御ずる(ステップS80)。比率Aが第2の閾値αより小さくない場合、すなわち、比率Aが第1の閾値βより大きい場合
、タイヤのキャンバ角をポジティブキャンバ方向に変化するように制御ずる(ステップS90)。
この後、ステップS10に戻る。このような処理は、タイヤ1回転ごとに少なくとも1回以上行われ、タイヤの姿勢をリアルタイムで制御する。
このように、時々刻々変化するタイヤの姿勢に対して、タイヤの接地面の形状が線対称になるように制御するので、タイヤの接地面の形状は略線対称に維持される。このため、タイヤの横力を効果的に発生させつつ、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。
【0028】
以上、本発明のタイヤの姿勢制御装置および方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のタイヤの姿勢制御装置の一実施形態の構成図である。
【図2】本発明のタイヤの姿勢制御装置で取得する加速度データを得るために用いる加速度センサの取り付け位置を説明する図である。
【図3】(a)及び(b)は、本発明のタイヤの姿勢制御装置で取得される加速度データの一例を示す図である。
【図4】本発明の車輪の姿勢制御方法において接地長を算出する方法を説明する図である。
【図5】(a)〜(d)は、複数の条件下のタイヤの接地長の例を示す図である。
【図6】タイヤに発生する横力の、スリップ角とキャンバ角に対する関係を示すグラフである。
【図7】本発明のタイヤの姿勢制御方法の一実施形態の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
10 タイヤの姿勢制御装置
14 サスペンション制御装置
16 データ取得部
18 接地長算出部
20 判定・制御部
22 CPU
24 メモリ
26 タイヤ
26a タイヤトレッド
26b インナライナ部分
28 加速度センサ
72 区間
74a、74b 領域
76 加速度データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着された転動中のタイヤの姿勢を制御するタイヤの姿勢制御装置であって、
タイヤセンタ位置から同じ距離はなれたタイヤショルダー側の2つのタイヤ測定位置における接地状態を検出する検出手段と、
検出した前記接地状態に基づいて、タイヤ1回転に少なくとも1回以上、前記2つのタイヤ測定位置における接地長を算出する算出手段と、
1より大きい第1の閾値と、1より小さい第2の閾値を定めたとき、算出した前記2つのタイヤ測定位置における接地長の比率が、前記第1の閾値より大きい場合、あるいは、前記第2の閾値より小さい場合、前記比率が1になるようにタイヤのキャンバ角を制御する制御信号を生成する判定・制御手段と、を有することを特徴とするタイヤの姿勢制御装置。
【請求項2】
前記検出手段は、タイヤ内面に装着される加速度センサである請求項1に記載のタイヤの姿勢制御装置。
【請求項3】
前記判定・制御手段は、前記比率が前記第2の閾値以上前記第1の閾値以下の場合、前記制御信号を生成しない請求項1または2に記載のタイヤの姿勢制御装置。
【請求項4】
タイヤ正規荷重条件におけるタイヤの接地幅およびタイヤ幅方向の接地端を定めたとき、前記タイヤ測定位置は、前記接地幅の10〜25%の距離、前記接地端から離れた位置である請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤの姿勢制御装置。
【請求項5】
車両に装着された転動中のタイヤの姿勢を制御するタイヤの姿勢制御方法であって、
タイヤセンタ位置から同じ距離はなれたタイヤショルダー側の2つのタイヤ測定位置における接地状態を検出するステップと、
検出した前記接地状態に基づいて、タイヤ1回転に少なくとも1回以上、前記2つのタイヤ測定位置における接地長を算出するステップと、
1より大きい第1の閾値と、1より小さい第2の閾値を定めたとき、算出した前記2つのタイヤ測定位置における接地長の比率が、前記第1の閾値より大きい場合、あるいは、前記第2の閾値より小さい場合、前記比率が1になるようにタイヤのキャンバ角を制御する制御信号を生成するステップと、を有することを特徴とするタイヤの姿勢制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−292283(P2009−292283A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147259(P2008−147259)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】