説明

タキキニンレセプター拮抗物質として適したピペリジンカルボキサミド誘導体

本発明は、式(I)の化合物


の化合物またはその医薬上許容される塩または溶媒和物、その調製法、タキキニンによる疾患の治療におけるその使用、ならびにこれを含有する医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、[(4−アセチルアミノ)エチル]アミノ1−ピペリジニル誘導体、その塩および誘導体、その調製法、これらを含有する医薬組成物ならびにその医学的用途に関する。
【背景技術】
【0002】
WO 03/099787は、サブスタンスPおよび他のニューロキニンを包含する、タキキニンのいくつかのピペリジン誘導体拮抗物質を開示する。
【特許文献1】WO 03/099787公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
したがって、本発明は、一つの態様において、式(I)の化合物、(2R,4S)−4−{[2−(アセチルアミノ)エチル]アミノ}−N−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−N−メチル−1−ピペリジンカルボキサミド
【化1】

またはその医薬上許容される塩または溶媒和物を提供する。
【0004】
一般式(I)の化合物の好適な医薬上許容される塩は、医薬上許容される有機または無機酸を用いて形成される酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、アルキル−またはアリールスルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩またはp−トルエンスルホン酸塩)、リン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩およびマレイン酸塩を包含する。
【0005】
溶媒和物は、例えば、水和物である。
【0006】
誤解を避けるために、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩または溶媒和物の単離された形態は、4−(S)−(4−アセチル−ピペラジン−1−イル)−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチル−フェニル)−ピペリジン−1−カルボン酸、[1−(R)−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−エチル]−メチルアミドの代謝によりインビボで産生される式(I)の化合物を含まない。
【0007】
もう一つ別の態様において、本発明は、実質的に純粋な式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩または溶媒和物を提供する。
【0008】
式(I)の化合物において、くさび形結合は、結合が紙面の上にあることを示し、β構造と呼ばれる。
【0009】
2位のβ構造は、R構造に対応し、4位のβ構造はS構造に対応する。2位および4位のRまたはS構造の帰属は、Cahn、IngoldおよびPrelogの法則、Experientia 1956,12、81に従ってなされてきた。
【0010】
さらに、式(I)の化合物は、1以上の結晶形態において存在し、式(I)の化合物の結晶形態は、多形体において存在し、これは本発明に含まれる。
【0011】
本発明の化合物は、4−(S)−(4−アセチル−ピペラジン−1−イル)−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチル−フェニル)−ピペリジン−1−カルボン酸、[1−(R)−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−エチル]−メチルアミドのヒト代謝物であり、これはWO 02/32867において記載されている。
【0012】
本発明の化合物はそれ自体、インビトロおよびインビボの両方で、サブスタンスPおよび他のニューロキニンをはじめとするタキキニンレセプターの拮抗物質であり、従って、サブスタンスPおよび他のニューロキニンをはじめとするタキキニンによる疾患の治療において有用である。
【0013】
タキキニンは、共通のカルボキシ末端配列(Phe−X−Gly−Leu−Met−NH2)を共有するペプチドのファミリーである。これらは、より低く、かつ進化した生活型の生理機能に積極的に関与する。哺乳動物の生活型において、主なタキキニンはサブスタンスP(SP)、ニューロキニンA(NKA)およびニューロキニンB(NKB)であり、これらは神経伝達物質および神経調節物質として作用する。哺乳動物タキキニンは、多くの人間の疾患の病態生理の一因となる。
3種のタキキニンレセプター、すなわち、NK1(SP−選択性)、NK2(NKA−選択性)およびNK3(NKB−選択性)が同定され、これらは、中枢神経系(CNS)および末梢神経系全体にわたって広く分布する。
【0014】
特に、本発明の化合物は、NK1レセプターの拮抗物質である。
【0015】
NK−レセプター結合親和力は、Beattie D.T.ら(Br.J.Pharmacol、116:3149−3157、1995)により記載された方法の変法を用いることにより調製されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞膜において安定に発現された、組み換えヒトNKレセプターから[H]−サブスタンスP(SP)を置換する化合物の能力を測定することにより、濾過結合分析においてインビトロで決定された。
簡単にいうと、リガンド結合は、3mM MnCl、0.02%BSA、0.5nM[H]−サブスタンスP(30−56Ci/mmol Amersham)、最終膜タンパク質濃度30−50μg/ml、および試験化合物を含有する0.4mlの50mM HEPES、pH7.4中で行われた。インキュベーションは室温で40分間進行し、濾過により停止させた。過剰のサブスタンスP(1μM)を用いて非特異性結合を決定し、全結合の約6−10%に相当する。各化合物のIC50値を、8点10倍希釈阻害曲線により決定した。別の実験において決定された[H]−サブスタンスPのKを用いてpK値を計算した。
【0016】
本発明の化合物は、FLIPR技術を用いて、ヒト−NK−CHO細胞においてSPにより誘発される細胞内カルシウム増加を阻害するその効果を決定するための機能分析においてさらに特徴づけられる。簡単に言うと、細胞質カルシウムインジケーターFluo−4 AM(2μM)とともに30分インキュベーションした後、細胞を洗浄し、3以上の異なる濃度の拮抗物質の不在または存在下で60分間、37℃で、20mM Hepesを含むHankの平衡塩類溶液中インキュベートし、次いでSP(2pM−300nM)の非累積濃度応答曲線を実行した。拮抗物質の効力(pK値)をSchild分析から計算した。
【0017】
本発明の化合物のNKレセプターでの作用を、通常の動物モデルを用いて決定することができる。従って、Rupniak & Williams、Eur.J.of Pharmacol.、1994により記載されるようなアレチネズミフットタッピングモデルを用いて、NKレセプターで結合できる能力を決定した。
【0018】
本発明の化合物は、CNS障害および精神病性障害の治療、特に、抑鬱状態の治療または予防および/または、これに限定されないが、Diagnostic Statistical of Mental Disorder(DSM) IV edition edit by American Psychiatric AssociationおよびInternational Classification Diseases 10th revision(ICD10)において定義されるような不安の治療において有用である。
【0019】
従って、例えば、抑鬱状態抑鬱は、抑鬱気分エピソード、抑鬱障害、双極性障害、他の心的状態、精神病性および適応障害、月経前および不快気分障害(PMDD)を包含する。従って、例えば、抑鬱気分エピソードは、大鬱病エピソードおよび混合エピソードを包含する。抑鬱障害は、大鬱病性障害(MDD)、単回または再発エピソード(精神病性特徴、緊張性特徴、メランコリー特徴、非典型的特徴、不安抑鬱、または分娩後発病の有無を問わない)、気分変調性障害(早期または後期発症、非典型的特徴の有無を問わない)および他に特定されない抑鬱障害を包含する。双極性障害は、双極性IおよびII障害、気分循環性障害および他に特定されない双極性障害を包含する。他の気分、精神病性および適応障害は、神経症性鬱病;これに限定されないが、心筋梗塞、糖尿病、流産、妊娠中絶、抑鬱気分を伴うアルツハイマー型認知症(早期発症または後期発症)、抑鬱気分を伴う血管性認知症を包含する一般的健康状態による気分障害;これに限定されないが、アルコール、アンフェタミン、コカイン、幻覚剤、吸入剤、オピオイド、フェンシクリジン、鎮静剤、睡眠薬、抗不安薬および他の物質を包含する物質誘発性気分障害;抑鬱型の統合失調性感情障害;憂鬱感を伴う適応障害;混合不安および憂鬱感を伴う適応障害を包含する。
【0020】
不安という用語は、パニック発作、広場恐怖症、不安障害、適応障害および分離不安障害および月経前不快気分障害(PMDD)を包含する。従って、例えば、不安障害は、広場恐怖症の有無を問わないパニック障害、パニック障害の病歴のない広場恐怖症、特定恐怖症、社会恐怖症(社会不安障害)、強迫性障害、急性および外傷後ストレス障害、全般性不安障害、一般的健康状態による不安障害、物質誘発性不安障害、他に特定されない不安障害および混合不安−抑鬱障害を包含する。適応障害は、不安を伴う適応障害および混合不安および憂鬱感を伴う適応障害を包含する。本発明の化合物は鎮痛剤として有用である。特に、外傷痛、例えば、術後疼痛;外傷性剥離疼痛、例えば、腕神経叢;慢性疼痛、例えば、関節痛、例えば、変形性関節炎、関節リウマチまたは乾癬性関節炎においておこるもの;神経因性疼痛、例えば、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、分節性または肋間神経痛、線維筋痛、灼熱痛、末梢神経障害、糖尿病性神経障害、化学療法起因性神経障害、AIDS関連神経障害、後頭神経痛、膝神経痛、舌咽神経痛、反射性交感神経性ジストロフィー、幻肢痛;様々な形態の頭痛、例えば、片頭痛、急性または慢性緊張性頭痛、顎関節痛、上顎洞痛、群発性頭痛;歯痛;癌性疼痛;内臓由来の疼痛;胃腸痛;神経絞扼痛;スポーツ障害痛;月経困難症;生理痛;髄膜炎;くも膜炎;筋骨格系疼痛;腰痛、例えば、脊髄狭窄;椎間板脱;坐骨神経痛;アンギナ;強直性脊柱炎;痛風;熱傷;瘢痕痛;掻痒および視床痛、例えば、脳卒中後の視床痛の治療において有用である。
【0021】
本発明の化合物はまた、睡眠変調症(dyssomnia)、一次性不眠、睡眠時無呼吸、ナルコレプシー、および概日リズム障害をはじめとする睡眠障害または睡眠異常の治療もしくは他の障害に関連するか、または起因する睡眠障害および/または睡眠異常の治療においても有用である。
【0022】
本発明の化合物はまた、認識障害の治療または予防においても有用である。認識障害は、認知症、健忘障害および他に特定されない認識障害を包含する。
【0023】
さらに、本発明の化合物はまた認識および/または記憶障害のない健常なヒトにおいて、記憶および/または認識促進剤としても有用である。
【0024】
本発明の化合物はまた、多くの物質に対する耐性および依存症の治療においても有用である。例えば、これらはニコチン、アルコール、カフェイン、フェンシクリジン(フェンシクリジン様化合物)への依存症の治療において、もしくはアヘン剤(例えば、大麻、ヘロイン、モルヒネ)またはベンゾジアゼピン類への耐性または依存症の治療において;コカイン、催眠鎮静剤、アンフェタミンまたはアンフェタミン関連薬(例えば、デキストロアンフェタミン、メチルアンフェタミン)またはその組み合わせに対する中毒の治療においても有用である。
【0025】
本発明の化合物はまた、抗炎症薬としても有用である。特に、喘息、インフルエンザ、慢性気管支炎および関節リウマチにおける炎症の治療において;胃腸管の炎症性疾患、例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患および非ステロイド系抗炎症薬誘発損傷;皮膚の炎症性疾患、例えば、ヘルペスおよび湿疹;膀胱の炎症性疾患、例えば、膀胱炎および急迫性尿失禁、過活動膀胱および眼ならびに歯髄炎症の治療においても有用である。
【0026】
本発明の化合物はまた、アレルギー性疾患、特に、皮膚のアレルギー性疾患、例えば、蕁麻疹、および気道のアレルギー性疾患、例えば、鼻炎の治療においても有用である。
【0027】
本発明の化合物はまた、妄想型統合失調症、解体型統合失調症、緊張型統合失調症、非定型型統合失調症、残遺統合失調症を包含する統合失調症の治療または予防においても有用である。
【0028】
本発明の化合物また、嘔吐(emesis)、すなわち、悪心、むかつきおよび嘔吐(vomiting)の治療においても有用である。嘔吐は、急性嘔吐、遅発性嘔吐および期待的嘔吐を包含する。本発明の化合物は、どのように誘発されたものでも、嘔吐の治療において有用である。例えば、嘔吐は、薬剤、例えば、癌化学療法剤、例えば、アルキル化剤、例えば、シクロホスファミド、カルムスチン、ロムスチンおよびクロラムブシル;細胞傷害性抗生物質、例えば、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、マイトマイシン−Cおよびブレオマイシン;代謝拮抗物質、例えば、シタラビン、メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル;ビンカ・アルカロイド、例えば、エトポシド、ビンブラスチンおよびビンクリスチン;その他、例えば、シスプラチン、ダカルバジン、プロカルバジンおよびヒドロキシ尿素;およびその組み合わせ;放射能疾患;放射線治療、例えば、胸部または腹部の照射、例えば、癌の治療において;毒薬;毒素、例えば、代謝障害または感染、例えば、胃炎により生じるか、あるいは細菌またはウイルス性胃腸感染症の間に放出される毒素;妊娠;前庭障害、例えば、乗り物酔い、眩暈(vertigo)、目まい(dizziness)およびメニエール病;術後病;消化管閉塞;胃腸運動の低下;内臓痛、例えば、心筋梗塞または腹膜炎;片頭痛;頭蓋内圧の増大;頭蓋内圧の減少(例えば、高山病);オピオイド鎮痛剤、例えば、モルヒネ;および胃食道逆流疾患(GERD)、例えば、浸食性GERDおよび症候性GERDまたは非浸食性GERD、胃酸過多(acid indigestion)、暴飲暴食、酸性胃(acid stomach)、胸焼け(sour stomach)、胸焼け(waterbrash)/逆流、胸焼け(heartburn)、例えば、一時的胸焼け、夜間胸焼け、および食事誘発性胸焼け、消化不良および機能性消化不良により誘発され得る。
【0029】
本発明の化合物はまた、胃腸障害、例えば、過敏性腸症候群、胃食道逆流症(GERD)、例えば、浸食性GERDおよび症候性GERDまたは非浸食性GERD、胃酸過多、暴飲暴食、酸性胃、胸焼け、胸焼け/逆流、胸焼け、例えば一時的胸焼け、夜間胸焼け、および食事誘発性胸焼け、消化不良および機能性消化不良(例えば、潰瘍様消化不良、運動不全型消化不良および不特定消化不良)、慢性の便秘;皮膚障害、例えば、乾癬、掻痒症(pruritus)および日焼け;血管痙攣疾患、例えば、アンギナ、血管性頭痛およびレイノー病;脳虚血、例えば、くも膜下出血後の脳血管痙攣;線維症および膠原病、例えば、強皮症および好酸性肝蛭症;免疫促進または抑制に関連する障害、例えば、全身性紅斑性狼瘡およびリウマチ性疾患、例えば、結合組織炎;および咳の治療においても有用である。
【0030】
本発明の化合物はまた、月経前不快気分障害(PMDD)、慢性疲労症候群および多発性硬化症の治療においても有用である。
【0031】
本発明の化合物は、他の活性物質、例えば、制吐剤(5HT3拮抗物質およびデキサメタゾンを包含する)、セロトニン作用物質、選択的セロトニン再摂取阻害剤(SSRI)、ノルアドレナリン再摂取阻害剤(SNRI)、三環式抗うつ剤、ドーパミン作用性抗うつ剤またはナトリウムチャンネルの阻害剤と組み合わせて投与することができる。
【0032】
好適な5HT3拮抗物質であって、本発明の化合物との組み合わせにおいて使用できるものとしては、例えば、オンダンセトロン、グラニセトロンおよびメトクロプラミドが挙げられる。
【0033】
好適なセロトニン作用物質であって、本発明の化合物との組み合わせにおいて用いることができるものとしては、スマトリプタン、ラウウォルシン、ヨヒンビンおよびメトクロプラミドが挙げられる。
【0034】
好適なSSRIであって、本発明の化合物との組み合わせにおいて使用できるモノとしては、例えば、フルオキセチン、シタロプラム、フェモキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、インダルピン、セルトラリンおよびジメルジンが挙げられる。
【0035】
好適なSNRIであって、本発明の化合物との組み合わせにおいて使用できるものとしては、ベンラファキシンおよびレボキセチンが挙げられる。
【0036】
好適な三環式抗うつ剤であって、本発明の化合物との組み合わせにおいて使用できるものとしては、イミプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミンおよびノルトリプチリンが挙げられる。
【0037】
好適なドーパミン作用性抗うつ剤であって、本発明の化合物との組み合わせにおいて使用できるものとしては、ブプロピオンおよびアミネプチンが挙げられる。
【0038】
電位依存性ナトリウムチャンネルの好適な阻害剤であって、本発明の化合物との組み合わせにおいて使用できるものとしては、ラモトリジン、カルバマゼピン、およびフェニトインが挙げられる。
【0039】
組み合わせまたは組成物の2以上の化合物を同時に(同じかまたは異なる医薬処方において)または連続的に投与することができる。
【0040】
本発明は従って、治療、特にヒトの医療において使用するための、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩または溶媒和物を提供する。
【0041】
本発明のさらなる態様として、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩または溶媒和物の、タキキニン(サブスタンスPおよび他のニューロキニンを包含する)による疾患の治療において用いられる医薬の調製における使用も提供される。
【0042】
本発明のさらなる態様として、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩または溶媒和物のタキキニン(サブスタンスPおよび他のニューロキニンを包含する)による疾患の治療における使用も提供される。
【0043】
別の、またはさらなる態様において、ヒトを包含する哺乳動物の治療法、特に、サブスタンスPおよび他のニューロキニンを包含するタキキニンによる疾患の治療における方法であって、有効量の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を投与することを含む方法が提供される。
【0044】
治療についての言及は、予防ならびに確立された症状の軽減を包含することが意図されると理解される。
式(I)の化合物は、化学原料として投与することができるが、活性成分は、好ましくは医薬処方として提示される。
【0045】
従って、本発明は、任意の都合良い経路により投与するために処方された、少なくとも1つの式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩または溶媒和物を含む医薬組成物も提供する。このような組成物は、好ましくは、医薬、特にヒトの医薬における使用に適応され、1以上の医薬上許容される担体または賦形剤を用いて通常の方法で都合良く処方することができる。
【0046】
従って、式(I)の化合物は、経口、口腔内、非経口、局所(眼および鼻を包含する)、持続性薬剤または直腸投与用、もしくは吸入または吹送(口または鼻のいずれかを経由する)による投与に適した形態において処方することができる。
【0047】
経口投与に関して、医薬組成物は、例えば、医薬上許容される賦形剤、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);フィラー(例えば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);もしくは湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いた通常の手段により調製される、錠剤またはカプセルの形態をとることができる。錠剤は、当該分野において周知の方法によりコーティングすることができる。経口投与用液体製剤は、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液の形態をとってもよいし、もしくは使用前に他の好適なビヒクルで復元される乾燥製品として提供してもよい。このような液体製剤は、通常の手段により、医薬上許容される添加剤、例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分画植物油);および保存料(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を用いて調製することができる。製剤は、緩衝塩、フレーバー、着色剤および甘味料を適宜含有してもよい。
【0048】
経口投与用製剤は、好適には、活性化合物を制御放出するために処方することができる。
【0049】
口腔内投与に関して、組成物は、錠剤の形態をとっても良いし、もしくは通常の方法で処方してもよい。
【0050】
本発明の化合物は、ボーラス注入法または持続注入による非経口投与用に処方することができる。注射用処方は、単位投与形態において、例えば、アンプル中または多剤容器中で提供することができる。組成物は、懸濁液、溶液または油性または水性ビヒクル中エマルジョンの形態をとることができ、処方剤、例えば、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤を含有することができる。別法として、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば、無菌無ピロゲン水で復元される粉末形態であってよい。
【0051】
本発明の化合物は、局所投与用に、軟膏、クリーム、ジェル、ローション、ペッサリー、エアゾルまたは滴剤(例えば、点眼薬、点耳薬または点鼻薬)の形態に処方することができる。軟膏およびクリームは、例えば、水性または油性基剤とともに、好適な増粘剤および/またはゲル化剤を添加して処方することができる。眼へ投与するための軟膏は、滅菌成分を用いて無菌方法で製造することができる。
【0052】
ローションは、水性または油性基剤を用いて処方することができ、一般に、1以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、または着色剤も含有することができる。滴剤は、1以上の分散剤、安定化剤、可溶化剤または懸濁化剤を含む水性または非水性基剤を用いて処方することができる。これらは、保存料も含有することができる。
【0053】
本発明の化合物はさらに、直腸組成物、例えば、坐剤または停留浣腸であって、例えば、通常の坐剤基剤、例えば、カカオ脂または他のグリセリドを含有するものにおいて処方することができる。
【0054】
本発明の化合物はまた、持続性薬剤として処方することもできる。このような長期作用型処方は、移植(例えば、皮下または筋肉内)によるか、または筋肉内注射により投与することができる。従って、例えば、本発明の化合物は、好適なポリマーまたは疎水性物質(例えば、許容される油中エマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、または難溶性誘導体、例えば、難溶性塩を用いて処方することができる。
【0055】
鼻内投与に関して、本発明の化合物は、好適な計量または単位投与装置による投与用溶液として、あるいは別法として好適な送達装置を用いた投与に適した担体と混合された粉末として、処方することができる。
【0056】
本発明の化合物の提案される用量は、1日あたり約1000mgである。患者の年齢および状態に応じて用量に慣習的な変更を加えることが必要であり、正確な用量は最終的に診察する医師または獣医師の判断によると理解される。用量は、投与の経路および選択される特定の化合物にも依存する。
したがって、非経口投与に関して、1日量は、典型的には、1日あたり1から約100mg、好ましくは1から80mgである。経口投与に関して、1日量は典型的には、1から300mg、例えば、1から100mgの間である。
【0057】
式(I)の化合物、ならびにその塩および溶媒和物は、以下に概略を記載する一般法により調製することができる。
【0058】
式(I)の化合物は、式(II);
【化2】

(II)
の化合物をN−アセチルエチレンジアミン(III)で、溶媒、例えば、アルコール(すなわち、メタノール)中、好適な金属還元剤、例えば、ナトリウムボロヒドリドまたはナトリウムトリアセトキシボロヒドリドの存在下で、還元的N−アルキル化することにより調製することができる。
【0059】
式(I)の化合物を塩、例えば、医薬上許容される塩として調製することが望ましい場合、これは、式(I)の化合物を遊離塩基の形態において、適切な量の好適な酸と、好適な溶媒、例えば、アルコール(例えば、エタノールまたはメタノール)、エステル(例えば、酢酸エチル)またはエーテル(例えば、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン)中で反応させることにより達成できる。
【0060】
医薬上許容される塩は、式(I)の化合物の他の医薬上許容される塩を包含する他の塩から、通常の方法を用いて調製することもできる。
式(II)の化合物は公知化合物であり、その調製は、WO 0232867において記載されている。
【0061】
特に記載しない限り、中間体および実施例において:
プロトン磁気共鳴(NMR)スペクトルは、Varian装置で、300、400または500 MHz、Bruker装置で300 MHzで記録し、化学シフトは、内部標準として残存する溶媒系を用いてppm(δ)で記録する。分裂パターンは、s、一重項;d、二重項;t、三重項;q、四重項;m、多重項;b、ブロードとして記載する。NMRスペクトルは、25から90℃の範囲の温度で記録した;1より多い配座異性体が検出された場合、最も多いものの化学シフトを記録する。質量スペクトル(MS)は、4 II三連四重極質量分析計(Micromass UK)またはES(+)およびES(−)イオン化モードで動作するAgilent MSD 1100質量分析計、またはES(+)およびES(−)イオン化モードで動作するAgilent LC/MSD 1100質量分析計であって、HPLC装置Agilent 1100 Series[LC/MS−ES(+):分析は、Supelcosil ABZ +Plus(33x4.6 mm、3μm)(移動相:100% [水+0.1% HCOH]1分間、次に100%[水+0.1% HCOH]から5%[水+0.1% HCOH]および95%[CHCN ]で5分、最後にこれらの条件下で2分間;T=40℃;流束=1mL/分で行う;LC/MS−ES(−):分析はSupelcosil ABZ +Plus(33x4.6mm、3μm)(移動相:100%[水+0.05% NH]で1分間、次に100%[水+0.05% NHから5%[水+0.05%NH]および95%[CHCN]で5分、最後にこれらの条件下で2分間;T=40℃;流束=1mL/分で行う]と連結されたもので取得した。質量スペクトルにおいて、分子イオンクラスター中の1つのピークだけを記録する。旋光度を20℃で、Jasco DIP360装置(l=10cm、セル容積=1mL、λ=589nm)で測定した。フラッシュシリカゲルクロマトグラフィーを、Merck AG Darmstadt(ドイツ)により供給されるシリカゲル230−400メッシュ上、またはVarian Mega Be−Siプレパックカートリッジ上またはプレパックBiotageシリカカートリッジ上で行った。
【0062】
T.l.c.とは、0.25mmシリカゲルプレート(60F−254 Merck)上、UV光で可視化された薄層クロマトグラフィーを意味する。精密濾過装置を用いることにより行われる層分離について:WhatmanまたはAlltechによるポリプロピレンフリットを有する相分離カートリッジ。SCX手段:VarianによるSCX−カートリッジ(0.75mmol/g装填)。
溶液は無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。
塩化メチレンを水素化カルシウム上で再蒸留し、テトラヒドロフランをナトリウム上で再蒸留した。
本文中で次の略語を使用する:AcOEt=酢酸エチル、EtOH=エタノール、MeOH=メタノール、THF=テトラヒドロフラン、NaBH4=ナトリウムボロヒドリド。
【実施例1】
【0063】
(2R,4S)−4−{[2−(アセチルアミノ)エチル]アミノ}−N−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−N−メチル−1−ピペリジンカルボキサミド
【化3】

2−(R)−(4−フルオロ−2−メチル−フェニル)−4−オキソ−ピペリジン−1−カルボン酸、[1−(R)−3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−エチル]−メチルアミド(15g)の100mlのEtOH中溶液に、8.6 mlのN−アセチルエチレンジアミンを添加し、得られた溶液を室温で、MS(ES/+):m/z=589[M+H]+を用いてイミンの形成後3時間撹拌した。次に、NaBH4(1.67g)を添加し、混合物を室温で40分間撹拌し、次に100 mlのH2Oで慎重にクエンチした。反応物を真空中で濃縮し、水性残留物を酢酸エチルで抽出した。有機層を乾燥し、真空中で濃縮して、残留物(Syn/Antiの約8:2混合物)を得、これをフラッシュクロマトグラフィー(AcOEt/MeOH 8:2)により精製して、標記化合物(4g)を白色固体として得た。
T.l.c.: AcOEt/MeOH 8:2、Rf=0.25(ニンヒドリンで検出 )。MS(ES/+):m/z=591 [M+H]
NMR−(d−DMSO) δ(ppm)
7.97 δ(s、1H)、7.71δ(t、1H)、7.67δ(s、2H)、7.13δ(dd、1H)、6.88δ(dd、1H)、6.75δ(m、1H)、5.30δ(q、1H)、4.11δ(d、1H)、3.33δ(m、1H)、3.04δ(q、2H)、2.68δ(m、1H)、2.68δ(s、3H)、2.55δ(m、3H)、2.32δ(s、3H)、1.90δ(m、1H)、1.83δ(m、1H)、1.75δ(s、3H)、1.80−1.55δ(bs、1H)、1.45δ(d、3H)、1.36δ(m、1H)、1.15δ(q、1H)
【0064】
調剤例
A.錠剤
【表1】

【表2】

活性成分を他の賦形剤とブレンドする。ブレンドを圧縮して、適切なパンチを用いて錠剤を形成する。錠剤は通常の技術およびコーティングを用いてコーティングすることができる。
【0065】
カプセル
【表3】

活性成分を微結晶セルロースとブレンドし、次いで好適なカプセル中に充填する。
【0066】
注射
活性成分 2−20 mg/mL
注射に好適な緩衝溶液pH3.5(3.0−4.0) 10 mLにするために十分な量
(例えば、注射用無菌水中クエン酸緩衝液またはNaCl 0.9%)。
【0067】
処方をガラスまたはプラスチックバイアルまたはアンプル中に包装することができる。処方は、ボーラス注入法または注入により、例えば、D5W または0.9%NaClで希釈した後に投与することができる。
【0068】
本発明の化合物のNKレセプターに対する親和力は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞膜において発現された組み換えヒトNKレセプターから[3H]−サブスタンスP(SP)を置換する化合物の能力をインビトロで測定する、NKレセプター結合親和力法を用いて決定した。親和力値は、置換リガンドの阻害定数(Ki)の負の対数(pKi)として表す。
【0069】
少なくとも2つの測定の平均として本発明の化合物について得られるpKi値は、pKi10.7である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物またはその医薬上許容される塩または溶媒和物。
【請求項2】
単離された形態における請求項1記載の化合物。
【請求項3】
治療において用いられる請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
タキキニン(サブスタンスPおよび他のニューロキニンを包含する)による疾患の治療において用いられる医薬の調製における請求項1または2記載の化合物の使用。
【請求項5】
1種または複数の医薬上許容される担体または賦形剤との混合物において、請求項1または2記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項6】
有効量の請求項1または2記載の式(I)の化合物の投与を含む、特に、サブスタンスPおよび他のニューロキニンを包含するタキキニンによる疾患の治療において、ヒトを包含する哺乳動物を治療する方法。
【請求項7】
抑鬱状態、不安、睡眠障害、嘔吐または過活動膀胱の治療における請求項6記載のヒトをはじめとする哺乳動物の治療法であって、有効量の請求項1または2記載の式(I)の化合物を投与することを含む方法。
【請求項8】
請求項1または2記載の化合物を調製するための方法(A)であって、式(II):
【化2】

の化合物をN−アセチルエチレンジアミン(III)で還元的N−アルキル化に付し、続いて、必要であるか、または望ましい場合、該化合物をその塩または溶媒和物として単離することを含む方法。

【公表番号】特表2009−501750(P2009−501750A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521885(P2008−521885)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007117
【国際公開番号】WO2007/009778
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】