説明

タッチパネル及び内視鏡装置のプロセッサ

【課題】所定の領域を確実に押圧可能な操作性の高いタッチパネル、及び操作性の高いタッチパネルを含む内視鏡装置のプロセッサを実現する。
【解決手段】タッチパネル40には、被写体画像の明るさ等を調整するための第1〜第8表示ボタン61〜68が設けられている。第1〜第8表示ボタン61〜68のうち、例えば第1表示ボタン61が押圧されると、押圧位置を示す信号を受信したプロセッサ制御回路により、第1表示ボタン61の中心点と押圧位置とのずれ量が算出される。このずれ量に基づき、第1表示ボタン61について設定されていた反応可能な領域が拡張される。そして、最後に第1表示ボタン61が押圧されてからの経過時間が所定の上限時間内に、第1表示ボタン61の押圧により実行される機能を打ち消すべく第2表示ボタン62が押圧されると、拡張された反応領域が元の基準領域に戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル及び内視鏡装置のプロセッサに関し、特に、タッチパネルを備えた内視鏡装置のプロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、様々な機器、例えばナビゲーション装置、ATM機器等において幅広く採用されている(例えば特許文献1参照)。ユーザは、タッチパネル画面上の領域を押圧することにより、所定の動作を実行させることができる。
【0003】
一方、医療用の内視鏡装置を用いた被写体観察では、ユーザは、患者の体内にスコープを挿入し、照明光を照射しつつ体内組織を撮影する。そして、モニタ上に表示される体内組織を観察しながら、さらにスコープを異なる部位に挿入し、撮影するといった動作が繰り返される。
【特許文献1】特開2005−181562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡装置のプロセッサにタッチパネルを使用した場合、ユーザは、被写体観察のための様々な動作を繰り返しながらタッチパネルを操作する。このためユーザは、常にタッチパネルの正面を向いた状態で操作できるとは限らず、タッチパネルの操作性が問題となり得る。特に、タッチパネルの側方から操作する場合や、モニタ表示を見えやすくするために室内を暗くした場合等においては、タッチパネル上に表示された表示ボタンの視認性が低下し、表示ボタンの周辺領域を押圧してしまうといったことが考えられる。
【0005】
そこで本発明は、所定の領域を確実に押圧可能な操作性の高いタッチパネル、及び操作性の高いタッチパネルを含む内視鏡装置のプロセッサを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタッチパネルは、所定の機能を実行させるために、ユーザの押圧に反応する第1の反応領域と、第1の反応領域が押圧されると実行される機能を打ち消すために、ユーザの押圧に反応する第2の反応領域と、ユーザの押圧を検出する検出手段と、第1の反応領域の範囲を調整する調整手段とを備える。そしてタッチパネルは、調整手段が、検出手段により第1の反応領域の押圧が検出されると第1の反応領域の範囲を基準領域から変更し、検出手段により第1の反応領域の押圧の次に第2の反応領域の押圧が検出されると第1の反応領域の範囲を基準領域に戻すことが可能であることを特徴とする。
【0007】
第1および第2の反応領域のいずれか一方が所定のパラメータを増加させ、他方が前記所定のパラメータを減少させるために押圧されることが好ましい。この場合、パラメータの値を表示する表示手段をさらに有することがより好ましい。
【0008】
タッチパネルは、第1の反応領域の最後の押圧からの経過時間を測定する計時手段をさらに有し、経過時間が上限時間内であるときに第2の反応領域の押圧が検出されると、調整手段が、第1の反応領域の範囲を基準領域に戻すことが好ましい。
【0009】
調整手段は、基準位置からの押圧位置のずれの大きさと方向に応じて、第1の反応領域の範囲を拡張することが好ましい。基準位置は、例えば第1の反応領域の中心である。
【0010】
調整手段は、例えば、第1の反応領域の形状を変更せずに第1の反応領域を移動させる。また、第1および第2の反応領域は、互いに近接して配置されていることが好ましい。
【0011】
本発明のプロセッサは、内視鏡装置のプロセッサであり、上述のタッチパネルを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定の領域を確実に押圧可能な操作性の高いタッチパネル、及び操作性の高いタッチパネルを含む内視鏡装置のプロセッサを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態における電子内視鏡装置のプロセッサを示す斜視図である。
【0014】
電子内視鏡装置(内視鏡装置)は、スコープ(図示せず)とプロセッサ30とを含む。スコープは、患者の体腔内の撮影に用いられる。プロセッサ30は、スコープに照明光を供給するとともに、スコープから送られてくる画像信号を処理する。プロセッサ30の前面30Fには、スコープ挿入口34が設けられている。スコープは、スコープ挿入口34に挿入され、プロセッサ30に接続される。
【0015】
プロセッサ前面30Fには、電源スイッチ36、ポンプ、光源等(いずれも図示せず)を操作するための操作ボタン38、およびタッチパネル40が設けられている。タッチパネル40は、電子内視鏡装置における所定の機能を実行させるために、ユーザによって操作される。
【0016】
図2は、本実施形態の電子内視鏡装置のブロック図である。
【0017】
プロセッサ30には、光源32と、プロセッサ制御回路50等が設けられている。光源32は、被写体を照明するための照明光を出射する。照明光は、光量絞り駆動モータ46によって駆動される絞り38を通過し、導光レンズ(図示せず)を介して、ライトガイド12の入射端12Aに入射する。ライトガイド12は、照明光を観察部位のあるスコープ20の先端部に伝達し、ライトガイド12を通った照明光は、出射端12Bから出射される。
【0018】
プロセッサ制御回路50は、プロセッサ30全体を制御し、照明光の照射を制御するための信号を光量絞り駆動モータ46に送信する。このプロセッサ制御回路50からの信号に基づいて、光量絞り駆動モータ46及び絞り38は、被写体に照射する照明光の光量を調整する。また、プロセッサ制御回路50には、後述するタイマー回路54が設けられている。
【0019】
被写体である観察部位で反射した照明光は、対物レンズ(図示せず)及びカラーフィルタ(図示せず)を通ってCCD22の受光面に到達する。そして、光電変換により生じた、カラーフィルタを通る色に応じた被写体像の画像信号を形成するための電荷が、CCD22の受光面に蓄積される。CCD22において生成された画像信号は、順次読み出され、初期信号処理回路24に送られる。
【0020】
スコープ20内には、スコープ20全体を制御するスコープ制御部26と、スコープ20の特性や信号処理に関するデータがあらかじめ記憶されたEEPROM28が設けられている。スコープ制御部26は、初期信号処理回路24に対して制御信号を送るとともに、適宜EEPROM28からデータを読み出す。
【0021】
また、初期信号処理回路24では、読み出された画像信号に増幅処理が施され、さらにアナログの画像信号からデジタルの画像信号に変換される。そして、ホワイトバランス調整など様々な処理がデジタルの画像信号に対して施され、輝度信号、色差信号が生成される。輝度信号及び色差信号は、プロセッサ30のプロセッサ信号処理回路48に送信される。
【0022】
プロセッサ信号処理回路48においては、輝度信号及び色差信号がNTSC信号などの映像信号に変換され、プロセッサ30に接続されたモニタ60に出力される。この結果、被写体像がモニタ60に表示される。
【0023】
タッチパネル40は、タッチパネル部40aとLCD部40bとを有し、これらはパネル制御回路42aおよびLCD制御回路42bによってそれぞれ制御される。タッチパネル部40aは透明な部材で構成されており、LCD部40bの表示面上に配置されている。そして、タッチパネル部40aの押圧操作可能な領域と、LCD部40bの表示領域とが対応している。
【0024】
LCD部40bにおいては、LCD制御回路42bの制御により、各種機能を実行させるためにタッチパネル部40a上で予め割り当てられた押圧領域(以下反応領域という)が表示可能である。ユーザは、タッチパネル部40aを通してLCD部40bの表示を見ることで、タッチパネル部40a上にあたかも後述する表示ボタン等が存在しているかのように認識できる。以下、説明の便宜上、タッチパネル部40a上の反応領域を表示ボタンといい、LCD部40bにおける表示をタッチパネル部40a上の表示として説明する。なお、LCD部40bは、LCD制御回路42bにより、各種パラメータの設定値や画像なども表示可能となっている。
【0025】
電子内視鏡装置10の様々な機能を実行するためにユーザが表示ボタンを押圧すると、位置検出回路44(検出手段)により、タッチパネル部40a上の押圧位置が検出される。そして、検出された押圧位置を示す信号が、位置検出回路44からパネル制御回路42aを介してプロセッサ制御回路50に送信される。
【0026】
押圧位置を示す信号を受信したプロセッサ制御回路50の制御により、電子内視鏡装置10における様々な機能、例えば被写体画像の画質調整等が実行される。さらに、押圧位置を示す信号等に基づいて、後述するように、タッチパネル40における様々な制御が実行される。
【0027】
図3は、タッチパネル40を拡大して示す図である。図4は、タッチパネル40において、互いに関連する機能を実行させるための2つの反応領域のうち一方の範囲が拡張する状態を概略的に示す図である。
【0028】
タッチパネル部40aにおいては、第1〜第8表示ボタン61〜68が表示されている。これらの第1〜第8表示ボタン61〜68を押圧することにより、被写体画像の赤色成分のレベル、青色成分のレベル、送気ポンプの送気量、および被写体画像の明るさを調整することができる。
【0029】
そして、調整可能なこれらのパラメータの値(レベル)は、第1〜第4レベルインジケータ70〜73、第1〜第4レベル表示領域74〜77(表示手段)において示されている。なお、第1〜第4レベル表示領域74〜77の枠は実際には表示されないため、破線で示されている。
【0030】
例えば、現時点での赤色成分のレベルは、第1レベルインジケータ70と第1レベル表示領域74により表示されているように“−1”であるところ、第2表示ボタン62が1回押圧されると、1だけ低下して“−2”となる。また、現時点での青色成分のレベルは、第2レベルインジケータ71、および第2レベル表示領域75に表示されているように“+1”であるところ、第3表示ボタン63が2回押圧されると、2だけ上昇して“+3”となる。
【0031】
このように、第1〜第4レベルインジケータ70〜73、第1〜第4レベル表示領域74〜77によって各パラメータの値が表示されるため、ユーザは、第1〜第8表示ボタン61〜68を誤って操作した場合、直ちに誤操作に気付くことができる。これらの表示により、意図した通りにパラメータが変更されていないことを直ちに認識できるからである。
【0032】
上述の例においては、第2表示ボタン62が1回押圧されたことを示す信号を受信したプロセッサ制御回路50により、設定されたレベル“−2”に相当するまで赤色成分のレベルを低下させる処理が施される。被写体画像の青色成分についても同様に、プロセッサ制御回路50の制御により、レベル“+3”に相当するまで強められる。
【0033】
第1、第2表示ボタン61、62は、ユーザの押圧によりタッチパネル40が反応する第1、第2反応領域61R、62Rをそれぞれ示している(図4参照)。第3〜第8表示ボタン63〜68についても同様に、押圧されると反応する第3〜第8反応領域63R〜68Rを示す(図示せず)。なお本実施形態においては、第1〜第8反応領域61R〜68Rは、各パラメータの増加あるいは減少のために割り当てられた領域であり、いずれも正方形で同じ大きさで統一されている。
【0034】
第1および第2表示ボタン61、62は、同一のパラメータである赤色成分のレベルを調整するために押圧される。すなわち、第1反応領域61Rは、赤色成分のレベルを1だけ向上させるために押圧され、第2反応領域62Rは、赤色成分のレベルを1だけ低下させるために押圧される。このことから明らかであるように、第1および第2反応領域61R、62Rの一方は同一のパラメータを増加させ、他方はそのパラメータを減少させるためのものであるため、第1および第2反応領域61R、62Rは、いずれも、他方の押下により実行される機能を打ち消すために押圧される場合がある。
【0035】
第3〜第8表示ボタン63〜68が示す第3〜第8反応領域63R〜68Rについても同様であり、それぞれ対になる第3および第4反応領域63R、64R・第5および第6反応領域65R、66R・第7および第8反応領域67R、68Rにおいては、一方の押圧により実行される機能を、他方の押圧により打ち消すことができる。
【0036】
このように、第1〜第8反応領域61R〜68R(すなわち第1〜第8表示ボタン61〜68)のうちで、同じパラメータを調整するために用いられる互いにペアとなるものは、図3に示すように互いに近接するように配置されている。タッチパネル40の操作性の観点からである。第1〜第8反応領域61R〜68Rを表示する第1〜第8表示ボタン61〜68の外側の領域が押圧された場合、原則として、上述の各パラメータの調整は実行されない。
【0037】
しかしながら、本実施形態では、ユーザがスコープ20の操作等のためにタッチパネル40を正面から見て操作できない姿勢にあること等の理由により、ボタン操作が困難な状態にある場合にもタッチパネル40を容易に操作できるように、第1〜第8表示ボタン61〜68についての反応領域の範囲が、所定の場合に拡張される。
【0038】
例えば、第1表示ボタン61が押圧されると、押圧位置P(図4(a)参照)を示す信号を受信したプロセッサ制御回路50において、第1表示ボタン61の示す第1反応領域61Rの中心点61C(基準位置)からの押圧位置Pのずれ量(ずれの大きさと方向)が算出される。
【0039】
すなわち、点Oを原点としてタッチパネル40を規定する座標系における、第1反応領域61Rの中心点61Cの座標値と、押圧位置Pの座標値との差に基づいて、押圧位置Pが、いずれの方向にどれだけ中心点61Cからずれているかが、ベクトル量Bとして算出される。なお、この演算処理における基準位置は、第1反応領域61Rの中心点61Cには限らず、第1反応領域61R内、もしくは外部の任意の点であっても良い。
【0040】
そして、第1反応領域61Rの第1〜第4頂点V〜Vのうち、押圧位置Pから最も遠い第2頂点Vの座標値をそのままとし、押圧位置Pに最も近い第4頂点Vの座標値にはベクトル量Bを加えて第6頂点Vまで移動させ、これらの頂点以外の第1および第3頂点V、Vの座標値にはそれぞれベクトル量BのY成分およびX成分のみを加えて第5および第7頂点V、Vまで移動させる(図4(b)参照)。
【0041】
そして、移動後の第5〜第7頂点V〜Vと、移動されていない第2頂点Vとを頂点とする矩形状の領域が、新たな第1反応領域である第1拡張領域61R’(変更領域)となるように、プロセッサ制御回路50(調整手段)の制御によって第1反応領域61Rの範囲が変更される。
【0042】
このように、ベクトルの方向に含まれる3つの頂点をベクトル量Bに対応させて移動させ、押圧された第1反応領域61Rの範囲を押圧位置Pに応じて拡張することにより、タッチパネル40の操作性が向上する。これは、第1表示ボタン61を操作する際に、中心点61Cよりも押圧位置P側の領域を押圧し易い状態にあるユーザが、次の操作時に、変更前の第1反応領域61Rから外れた位置、例えば点Px(図4(b)参照)を押圧した場合であっても、タッチパネル40によりユーザの指示を受けることが可能となるからである。
【0043】
図5は、反応領域拡張ルーチンを示すフローチャートである。図6は、第1反応領域61Rについて設定されている中心領域を示す図である。図7は、拡張された第1反応領域61R’を示す図であり、図8は、図6とは異なる中心領域を例示する図である。
【0044】
反応領域拡張ルーチンは、位置検出回路44(図2参照)からの信号を受信したプロセッサ制御回路50により、第1反応領域61R(第1表示ボタン61)が押圧されたと判断されると開始される。反応領域拡張ルーチンが開始されると、ステップS52において、押圧位置PのX座標Xt,Y座標Ytが、それぞれ第1反応領域61Rの拡張処理のためのX座標値Xbp,Y座標値Ybpとされ、ステップS54に進む。
【0045】
ここで、図6に示すように、第1反応領域61Rにおいては、中心点61C(Xbpd,Ybpd)の周囲に、太い破線で示す中心領域61Aが設定されている。中心領域61Aは、第1反応領域61Rが、近接する第2、第4反応領域62、64が示す第2、第4反応領域62R、64R(図3、4参照)に重ならないように拡張するために設けられている。中心領域61A(図6参照)は、説明の便宜上、中心点61C(Xbpd,Ybpd)を中心とする一辺の長さが2aの正方形である。
【0046】
ステップS54以下では、押圧位置Pが中心領域61Aの内側にあるか否かが判断され、その結果に応じて、第1反応領域61Rの拡張が制限される。まず、ステップS54において、押圧位置PのX座標値Xbpが、中心点61CのX座標値Xbpdにaを加えた値であるX軸上限値(図6参照)よりも大きいか否かが判断され、X軸上限値よりも大きいと判断されるとステップS56に進み、X軸上限値以下であると判断されるとステップS58に進む。
【0047】
ステップS56では、押圧位置PのX座標値XbpがX軸上限値“Xbpd+a”を超えている(図6参照)ため、第1拡張領域61R’が第4反応領域64R(図3参照)と重なることを避けるための演算処理が行われる。すなわち、図6に示すように、第1反応領域61Rの拡張処理の基準となる点を、押圧位置Pから、X軸上限値“Xbpd+a”と等しいX座標値Xbsを有する基準位置Ps(Xbs,Ybs)に変換する。
【0048】
そして、中心領域61Aの輪郭線上にある基準位置Ps(Xbs,Ybs)を基準として第1拡張領域61R’の範囲を定めることにより、第1拡張領域61R’と第4反応領域64R(図3、4参照)との重複が防止される。
【0049】
ステップS58では、押圧位置PのX座標値Xbpが、中心点61CのX座標値Xbpdからaを減じた値であるX軸下限値よりも小さいか否かが判断され、X軸下限値よりも小さいと判断されるとステップS60に進み、X軸下限値以上であると判断されるとステップS62に進む。ステップS60では、ステップS56における演算処理と同じ目的で、第1反応領域61Rの拡張処理の基準となる点を、押圧位置Pから、X軸下限値“Xbpd−a”をX座標値Xbsとする基準位置Ps(図示せず)に変換する。
【0050】
ステップS62〜S68においては、ステップS54〜S60と同様の演算処理が、座標系のY軸方向に関して実施される。すなわち、ステップS62では、押圧位置PのY座標値Ybpが、Y軸上限値“Ybpd+a”よりも大きいか否かが判断され、Y軸上限値よりも大きいと判断されるとステップS64に進み、Y軸上限値以下であると判断されるとステップS66に進む。
【0051】
ステップS64では、押圧位置PのY座標値YbpがY軸上限値を超えているため、中心領域61Aの輪郭線上にある基準位置Psを基準として第1拡張領域61R’の範囲を定めるために、第1反応領域61Rの拡張処理の基準となる点が、押圧位置Pから、Y軸上限値“Ybpd+a”をY座標値Ybsとする基準位置Ps(図示せず)に変換される。
【0052】
ステップS66では、押圧位置PのY座標値Ybpが、Y軸下限値“Ybpd−a”よりも小さいか否かが判断され、Y軸下限値よりも小さいと判断されるとステップS68に進み、Y軸下限値以上であると判断されるとステップS70に進む。ステップS68では、拡張処理の基準となる点を、押圧位置Pから、Y軸下限値“Ybpd−a”をY座標値Ybsとする基準位置Ps(図示せず)に変換する。
【0053】
ステップS70では、基準位置Psが設定されたか否かが判断され、基準位置Psが設定されたと判断されるとステップS72に進み、基準位置Psが設定されなかったと判断されるとステップS74に進む。なお、基準位置Psが設定されなかった場合とは、例えば押圧位置P(図6参照)のように、中心領域61A内に押圧位置があり、押圧位置から直接、第1拡張領域61R’の範囲を定めることができる場合である。
【0054】
ステップS72では、基準位置Psの座標値(Xbs,Ybs)に基づいて、第1反応領域61Rを第1拡張領域61R’に拡張する処理(図7参照)が実行される。このとき、中心点61Cと基準位置Psとのずれ量を示すベクトルB(図4、6参照)に基づいて、第1拡張領域61R’が設定される。
【0055】
一方、ステップS74では、押圧位置Pの座標値(Xbp,Ybp)に基づいて、第1反応領域61Rを第1拡張領域61R’に拡張する処理が実行される。このとき、ステップS72と同様に、中心点61Cと押圧位置Pとのずれ量を示すベクトルBに基づいて第1拡張領域61R’が設定される。
【0056】
以上のように、押圧位置Pと中心点61Cとの距離が大きい場合(図6参照)においても、第1拡張領域61R’が、近接する第2表示ボタン62、もしくはX軸正の側に配置された第4表示ボタン64(図3参照)が示す第2、第4反応領域62R、64Rと重なることを防止しつつ、ユーザにより押圧され易い領域を含む第1拡張領域61R’が設定される。
【0057】
なお、図4および図7等に例示された第1反応領域61Rの拡張処理が施された場合にあっても、第1表示ボタン61(図3参照)の表示領域は変更されない。すなわち、第1表示ボタン61は、常に、拡張されていない初期状態の第1反応領域61R(基準領域・図7において実線で示された領域)を表示する。
【0058】
これは、タッチパネル40における表示の切換制御を省き、LCD部40b(図2参照)上で安定した表示を行うためである。これに対し、プロセッサ制御回路50およびLCD制御回路42b(図2参照)の制御により、第1表示ボタン61の表示領域を、破線で示す第1拡張領域61R’に一致させるように拡張等しても良いが、第1表示ボタン61の表示範囲が頻繁に変化すると、却ってユーザに混乱を生じさせる可能性もあることから、上述の本実施形態の方が望ましい。以上の点は、第2〜第8表示ボタン62〜68(図3参照)についても同様である。
【0059】
また、図6においては、説明の便宜上、中心領域61Aの輪郭の長さを定めるaの値はいずれも同一であったものの、実際には、第1反応領域61Rと周辺の第2、第4反応領域62R、64Rとの間隔、それぞれの形状、大きさ等に応じて、適当なX軸上限値、X軸下限値、Y軸上限値、およびY軸下限値を定めるように、適宜調整される。
【0060】
例えば、第2反応領域62Rとの間隔が狭いことから、X軸負の方向への第1反応領域61Rへの拡張を、X軸正の方向への拡張よりも抑える場合、図8に示すように、X軸下限値を中心点62CのX座標値Xbpdと一致させた中心領域61Aが設定される。この結果、図4(b)に例示された場合とは反対側に第1反応領域61Rが拡張してしまい、第1拡張領域61R’が第2反応領域62Rに接することが確実に防止される。
【0061】
また、このような場合においても、X軸下限値を中心点62CのX座標値Xbpdに一致させず、中心点62CのX座標値Xbpdよりもa’だけ小さいX座標値“Xbpd−a’(a>a’)”を、X軸下限値としても良い(図8参照)。
【0062】
なお、第1反応領域61Rの拡張とともに、第2反応領域62Rを同様に拡張しても良い。すなわち、第1表示ボタン61が押圧されたとき、上述のように第1反応領域61Rを拡張すると同時に、直接押圧されてはいない第2反応領域62Rを、ベクトル量B(図4、6、7参照)に基づいて拡張し、第2拡張領域(図示せず)としても良い。これは、第2反応領域62Rが第1反応領域61Rに近接しているため、第2反応領域62Rにおいてユーザが押下し易い部分は、第1反応領域61Rとほぼ同じだからである。
【0063】
図9は、表示領域拡張ルーチンを示すフローチャートである。図10は、基準領域復活ルーチンを示すフローチャートであり、図11は、第1表示ボタン61の周囲を示すタッチパネル40の拡大図である。
【0064】
表示領域拡張ルーチンは、プロセッサ制御回路50により第1反応領域61R(第1表示ボタン61)が押圧されたと判断されると開始する。ステップS82では、赤色成分のレベルが1だけ向上され、ステップS84に進む。ステップS84においては、タイマー回路54(図2参照)による、第1反応領域61Rが最後に押圧されてからの経過時間Trの測定が開始され、ステップS86に進む。
【0065】
ステップS86では、フラグPrがPr=1に設定され、ステップS88に進む。フラグPrは、最後に押圧された反応領域が第1反応領域61Rであるとき(すなわちパラメータを前回と同様に増加あるいは減少させる指示であるとき)に“1”、最後に押圧された反応領域が第2反応領域62Rであるとき(すなわちパラメータを前回とは反対に増加あるいは減少させる指示であるとき)に“−1”、最後に押圧された反応領域が第1、第2反応領域61R、62R以外であるときに“0”に設定される。
【0066】
ステップS88では、第1反応領域61Rの範囲が第1拡張領域61R’(図11参照)に拡張され、表示領域拡張ルーチンは終了する。
【0067】
一方、基準領域復活ルーチンは、表示領域拡張ルーチンの終了後にいずれかの反応領域62が押圧されると開始される。ステップS92では、フラグPr=−1であるか否かが判断され、フラグPr=−1であると判断されるとステップS94に進み、フラグPr=−1でないと判断されると、基準領域復活ルーチンは終了する。ステップS94では、赤色成分のレベルが1だけ低下され、ステップS96に進む。
【0068】
ステップS96においては、タイマー回路54が測定する経過時間Trが上限時間Tmを超えているか否かが判断され、経過時間Trが上限時間Tmを超えていると判断されると基準領域復活ルーチンは終了し、経過時間Trが上限時間Tm以内であると判断されると、ステップS98に進む。ステップS98においては、第1拡張領域61R’の範囲が基準領域、すなわち拡張前の第1反応領域61Rの範囲に戻され、基準領域復活ルーチンは終了する。
【0069】
このように、本実施形態においては、第1反応領域61Rの次に第2反応領域62Rが押圧された場合であって、第1反応領域61Rが最後に押圧されてからの経過時間Trが所定の上限時間Tm内であるときに第2反応領域62Rが押圧されると、設定されていた第1拡張領域61R’が基準領域である第1反応領域61Rに自動的に戻される(図10のステップS98参照)。
【0070】
これは、例えば1秒間といった短い上限時間Tm内に第2反応領域62Rが押圧された場合、先の第1反応領域61Rの押圧は誤った操作(段落[0031]参照)であって、第1反応領域61Rの押圧によって実行される機能を打ち消すために第2反応領域62Rが押圧されたものと考えられるため、第1拡張領域61R’の設定が不要だからである。このように、誤った操作の直後に第1拡張領域61R’の設定が解除された場合、引き続き第1反応領域61Rが押圧されることはないと考えられるため、タッチパネル40の操作に支障は生じない。
【0071】
そして、誤って拡張された第1拡張領域61R’を直ちに基準領域に戻すことにより、第1拡張領域61R’が設定されていることに起因する誤作動、例えば、図11に例示する状態において、第4反応領域64R(第4表示ボタン64)を押圧しようとしたユーザが、誤って第1拡張領域61R’を押圧してしまうことが防止される。すなわち、所定の上限時間Tm内に、パラメータの変更の方向性(増加または減少)が反転した場合には、拡張された反応領域による誤操作を防止すべく、反応領域は拡張以前の状態(基準領域)に戻される。
【0072】
一方、上限時間Tmを超えるまでに第2反応領域62Rが押圧されなかった場合、第1反応領域61Rの押圧は正しい操作によるものと考えられるため、そのまま第1拡張領域61R’が維持される。この場合、ユーザにより押圧される可能性の高い第1表示ボタン61について、押圧され易い部分を反応可能な領域として含む第1拡張領域61R’が設定されていることにより、タッチパネル40の操作性が向上される。
【0073】
ただし、比較的長い時間に渡って第1拡張領域61R’が押圧されない場合、基準領域に戻しても良い。この場合、ユーザは、例えばスコープ20の操作や、赤色成分のレベル調整以外の機能を実行させるための操作中であると考えられるからである。
【0074】
また、上限時間Tmを設けず、第1反応領域61Rの次に第2反応領域62Rが押圧された場合には、経過時間Trに係わらず自動的に第1拡張領域61R’を第1反応領域61R(基準領域)に戻しても良い。そして、第1反応領域61Rと第2反応領域62Rの押圧の間で他の第3〜第8反応領域63R〜68Rが押圧された場合においても、第1反応領域61Rの押圧から第2反応領域62Rの押圧までの経過時間Trが上限時間Tm内である限り、ユーザが調整したいパラメータが変化したものとみなして、第1拡張領域61R’を第1反応領域61Rに戻しても良い。
【0075】
なお、第1反応領域61以外の第2〜第8反応領域62R〜68Rが押圧された場合においても、表示領域拡張ルーチンおよび基準領域復活ルーチンにおける処理等と同様の処理が実行される。
【0076】
以上のように本実施形態によれば、第1〜第8表示ボタン61〜68の押圧に反応する第1〜第8反応領域61R〜68Rの範囲を、実際に押圧された位置に応じて第1〜第8拡張領域61R’〜68R’に拡張し、さらに所定の場合には自動的に第1〜第8反応領域61R〜68Rに戻すことにより、タッチパネル40、およびタッチパネル40が設けられたプロセッサ30の操作性を向上させることができる。
【0077】
第1〜第8表示ボタン61〜68、及び対応する第1〜第8反応領域61R〜68Rの数、範囲、配置等は、本実施形態に限定されない。例えば、第1〜第8反応領域61R〜68Rの拡張によりタッチパネル40の操作性を向上させることが好ましいものの、第1〜第8反応領域61R〜68R(基準領域)の少なくとも一部を含むように、移動させても良い。第1〜第8反応領域61R〜68Rの形状を保ったままで、もしくは面積を広げつつ、元の基準領域の一部を含むように移動させた場合においても、操作性を向上できるからである。この場合においても、押圧位置Pと中心点61Cとのずれ量を示すベクトルB(図4、6等参照)に基づき、第1〜第8反応領域61R〜68Rの移動量が算出される。
【0078】
さらに、表示ボタン、反応領域は、例えば円形、楕円形であっても良い。また、複数の表示ボタン同士を互いに隣接するように配置しても良い。中心領域61A等(図6、8参照)を調整することにより、隣接する反応領域を、互いに重ならないように拡張することが可能だからである。
【0079】
本実施形態における電子内視鏡装置10のプロセッサ30は、手袋をしたユーザにより操作されることが多いため、タッチパネル40は抵抗膜方式を採用することが好ましいものの、これには限定されない。例えば、静電容量方式等を用いても良い。そして、これまでの実施形態においては、抵抗膜方式等を前提としてタッチパネル部40aが押圧されると第1〜第8反応領域61R〜68Rの範囲が変更されていたものの、採用される方式によっては、ユーザの指がタッチパネル部40aに接触しただけで第1〜第8反応領域61R〜68Rの制御が実行され得る。また、タッチパネル40を、デジタルカメラ、携帯電話等に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本実施形態における電子内視鏡装置のプロセッサを示す斜視図である。
【図2】電子内視鏡装置のブロック図である。
【図3】タッチパネルを拡大して示す図である。
【図4】2つの反応領域のうち一方の範囲が拡張する状態を概略的に示す図である。
【図5】反応領域拡張ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】第1反応領域について設定されている中心領域を示す図である。
【図7】拡張された第1反応領域を示す図である。
【図8】図6とは異なる中心領域を例示する図である。
【図9】表示領域拡張ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】基準領域復活ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】第1表示ボタンの周囲を示すタッチパネルの拡大図である。
【符号の説明】
【0081】
10 電子内視鏡装置(内視鏡装置)
30 プロセッサ
40 タッチパネル
44 位置検出回路(検出手段)
50 プロセッサ制御回路(調整手段)
54 タイマー回路(計時手段)
61R 第1反応領域(第1の反応領域・基準領域)
62R 第2反応領域(第2の反応領域)
70〜73 第1〜第4レベルインジケータ(表示手段)
74〜77 第1〜第4レベル表示領域(表示手段)
C 中心点(基準位置)
Tm 上限時間
Tr 経過時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機能を実行させるためにユーザの押圧に反応し、基準領域を占める第1の反応領域と、
前記第1の反応領域が押圧されると実行される機能を打ち消すために、ユーザの押圧に反応する第2の反応領域と、
ユーザの押圧を検出する検出手段と、
前記第1の反応領域の範囲を調整する調整手段とを備え、
前記調整手段が、前記検出手段により前記第1の反応領域の押圧が検出されると前記第1の反応領域の範囲を前記基準領域の少なくとも一部を含む変更領域に変更し、前記検出手段により前記第1の反応領域の押圧の次に前記第2の反応領域の押圧が検出されると前記第1の反応領域の範囲を前記変更領域から前記基準領域に戻すことが可能であることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記第1および第2の反応領域のいずれか一方が所定のパラメータを増加させ、他方が前記所定のパラメータを減少させるために押圧されることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記パラメータの値を表示する表示手段をさらに有することを特徴とする請求項2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記第1の反応領域の最後の押圧からの経過時間を測定する計時手段をさらに有し、前記経過時間が上限時間内であるときに前記第2の反応領域の押圧が検出されると、前記調整手段が、前記第1の反応領域の範囲を前記基準領域に戻すことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記調整手段が、基準位置からの前記押圧位置のずれの大きさと方向に応じて、前記第1の反応領域の範囲を拡張することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記基準位置が前記第1の反応領域の中心であることを特徴とする請求項5に記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記調整手段が、前記第1の反応領域の形状を変更せずに前記第1の反応領域を移動させることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記第1および第2の反応領域が、互いに近接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項9】
請求項1に記載のタッチパネルを備えたことを特徴とする内視鏡装置のプロセッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−37343(P2009−37343A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199804(P2007−199804)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】