説明

タンシンの根から単離の認知障害治療予防用タンシノン含有組成とその使用

本発明はタンジンから単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだタンシノン化合物類を含む組成で、ベータアミロイドの凝集と毒性に対して強力な阻害効果を示し、Y字型迷路研究と受動回避研究で確認した記憶学習障害の回復活性を示す組成に関する。それ故認知機能障害を治療予防する治療薬又は健康食品として、安全に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は認知障害症の予防治療活性を示すタンシン(Salviae Milltiorrhizae)画分含有組成と、その使用に関する。
【背景技術】
【0002】
生命現象の制御で主要な役割を果たす脳と脊髄からなる中枢神経系(CNS)は、感覚運動や(不)随意運動から思考、記憶、運動、言語などに通じる人機能の全てを管理する必須器官である。従って脳卒中、外傷などに起因する神経細胞の急速進行性アポトーシスと同様に、老年認知症、例えばアルツハイマー病又はパーキンソン病などに起因するCNSに現れる変性疾患のような緩徐進行性アポトーシスにより、神経回路網の不可逆な機能障害をもたらし、ついには人機能の永久的不全を生じる。中でも代表的な老年認知症であるアルツハイマー病を患う患者は、寿命の延長と近代的福祉施設の両者に比例して増加した。韓国保健社会福祉研究所(Korea Institute for Health and Social Affair)による公的調査によると、韓国人の中での老人の割合は、2000年には7%を越し8.3%(3,970、000人)に達し、2019年には14.4%に近づくはずである。特に老年認知症を患う65才以上の患者の割合は、韓国では8.2%になると推定される。欧米の国々では、65才以上の患者では約10%が、80才以上の患者では約40−50%が、老年認知症を患う。500万人以上の患者がこの疾患を患っているので、これにより生ずる医療費は一年に1000億ドルと推定される。韓国では20万人以上の人が認知症を患っていることが分かった。米国では2030年には現在の患者数の二倍以上に、2050年には1400万人(350%以上)に増加すると推定された。
【0003】
認知機能障害が始まるアルツハイマー病は、人間性の破綻を生ずる長期変性疾患の一つであるので、現在まで有効な予防薬、例えば、アリセプト(商標名)(Aricept)(ファイザー社(Pfizer Co.))、エクセロン(商標名)(Exelon)(ノバルティス社(Novartis Co.))、ライミニル(商標名)(Reiminyl)(ヤンセンファーマ社)(Janssen Co.))のようなアセチルコリンエステラーゼ阻害薬、又はエビキサ(商標名)(Ebixa)(ルンドベック社(Lundbeck Co.))のようなN−メチルーD−アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストの開発が試みられた。しかしアセチルコリンエステラーゼ阻害薬は、認知能力低下を緩和するだけで、この疾患の病原学的原因を満足できるようには治療できなかった。これらの薬はいくらかの患者(約40−50%)に一時的な緩和効果を示すにすぎず、長期にはその有効性を維持できず、更には長期治療では、肝毒性、嘔吐、食欲不振のような種々の有害な応答を示す。従って現在この疾患を予防治療する新規治療薬開発の緊急な必要性がある。多数の多国籍製薬会社により大規模な開発投資がなされ、特にアルツハイマー病の病原学的因子と推定される約40のアミノ酸からなるベータアミロイドの再生量を低下するベータセクレターゼ阻害薬、又はガンマセクレターゼ阻害薬の開発に焦点が合わされた。韓国ではアルツハイマー病の基礎研究は活発に試みられたが、アルツハイマー治療薬の開発は現在まで僅かにすぎない。ガンマセクレターゼ阻害薬の開発で毒性と大いに関連することが、動物モデル試験と同様に臨床試験でも見いだされているので、この阻害薬は推奨できないことが証明されたが、ベータセクレターゼ阻害薬の開発が推奨できることが、遺伝子欠如の形質転換動物モデル試験で証明された。又ベータアミロイド凝集が関与する因子に標的を合わすことは、安全な手段と見なされる。米国のアクソニックス社(Axonyx Co.)が開発した“フェセリン”(Phenserine)は、第二相臨床試験が進行中であると報告されており、コリンエステラーゼ阻害と同様にベータアミロイド凝集阻害の二重活性を示す(グリーグら(Greig et al.)、ジャーナルオブメディシナルケミストリー(J. Med. Chem.)、44巻、4062−4071頁、2001年、www.medicalnewstoday.com, www.alzforum.org/drg/drc)。
【0004】
ベータアミロイドを用いるワクチン開発は、他の可能な方法として知られている。エラン社(Elan Co.)によるワクチンの連続研究の進展は、臨床試験中の脳炎のような予期しない有害応答により失敗したと報告された。しかしベータアミロイドワクチンは、動物モデル試験では認知機能を緩和し、脳細胞の活性と同様に損傷脳神経細胞の活性を改善し、アルツハイマー症候群を緩和することが報告された(ジェナスら(Janus et al.)、ネーチャー(Nature)、408巻、979−982頁、2000年;モーガンら(Morgan et al.)、ネーチャー(Nature)、408巻、982−985頁、2000年)。
【0005】
タンジン(シソ科)抽出物は、種々の疾患、例えば腹痛、外傷、不眠症、発疹などが治療でき、アビエチン系化合物に属する幾つかのジテルペンキニーネ色素、例えばタンシノンI、ジヒドロタンシノンI、タンシノンIIA、タンシノンIIB、メチレンタンシノンなどを含有する(イルムーチェンら(Il-Moo Chang et al.)、オリエンタルメディシンアンドメディカルサイエンスエンサイクロペディア(Oriental Medicine and Medical Science Encyclopedia)、ソウルナショナルユニバーシティ(Seoul National University)、2003年)。
【0006】
又タンジン(シソ科)の薬理活性、例えば抗酸化活性(ユンファキム(Yun-Hwa Kim)、コリアンジャーナルオブソサエティオブフッドクッカリーサイエンス(Korean J. Soc. Food Cookery Sci.)、19巻、4頁、2003年)、抗ガン活性(オクヒーキム(Ok-Hee Kim)、ジャーナルオブアプライドファルマコロジー(The Journal of Applied Pharmacology)、7巻、29−34頁、1999年)、血圧低下効果(韓国特許10−0327894)などが報告されている。しかしタンジン(シソ科)から単離のタンシノン化合物類の認知機能障害に対する治療効果については、上記文献のいずれにも報告も開示もされていないが、その開示はここに文献として組み入れる。
【0007】
タンジン(シソ科)から単離のタンシノン化合物類の認知機能障害に対する阻害効果を、既に周知のスクリーニング検査により調査するために、本発明の本発明人らは、ベータアミロイド凝集の強力な阻害効果を示す種々の植物を広範囲に選別し、受動回避試験などを用いて記憶学習回復の研究を検査し、タンジン(シソ科)から単離のタンシノン化合物類が、ベータアミロイド凝集と細胞毒性を阻害することで神経細胞増殖を刺激し、更には神経細胞損傷に起因する記憶学習損傷を回復することを確認して本発明をついに完成した。
【0008】
本発明のこれらと他の目的は、以下に与える本発明の詳細な説明で明らかになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、神経細胞の増殖を刺激し、更には神経細胞損傷に起因する記憶学習損傷を回復できるベータアミロイド凝集と細胞毒性に関する機構により、認知機能障害を治療予防するために、有効成分としてタンジン(シソ科)から単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだ有効量のタンシノン化合物類を含む医薬組成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従い認知機能障害を治療予防するために、有効成分として有効量のタンジン(シソ科)から単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだタンシノン化合物類を含む医薬組成が提供される。
【0011】
化学式1

【0012】
ミルチロン
【0013】
化学式2

【0014】
1,2−ジジヒドロミルチロン
【0015】
化学式3

【0016】
タンシノンIIA
【0017】
化学式4

【0018】
タンシノンI
【0019】
化学式5

【0020】
ジヒドロイソタンシノンI
【0021】
具体的には本発明は、認知機能障害を治療予防するために、有効成分としてタンジン(シソ科)から単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだタンシノン化合物類と、医薬的に容認の担体、希釈剤又はアジュバントとを含む医薬組成を提供する。
【0022】
本発明の目的は、タンジン(シソ科)から単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだ有効量のタンシノン化合物類を、その中に医薬的に容認の担体と一緒に哺乳類に投与することを含む、該哺乳類の認知機能障害を治療又は予防する方法を提供することである。
【0023】
本発明の目的は、認知機能障害の治療予防用治療薬の製造に、タンジン(シソ科)から単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだタンシノン化合物類の使用を提供することである。
【0024】
ここで開示の“認知機能障害”という用語は、アルツハイマー型認知症、脳血管障害型認知症、ピック病、クロイツフェルトヤコブ病、頭部損傷に起因する認知症、パーキンソン病などを含み、好ましくはパーキンソン病を含む。
タンジンから単離した発明性のタンシノン化合物類は、以下の好ましい実施形態に従い生成できる。
【0025】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0026】
タンジンから単離した発明性のタンシノン化合物類は、以下の方法で詳細に生成できる。
【0027】
タンジンから単離した発明性のタンシノン化合物類は、以下からなる段階を含む方法により生成できる。第一段階で、0.1乃至0.2倍容積のメタノールをタンジンの乾燥地下茎に添加し、還流抽出又は超音波抽出による抽出法で抽出し、溶液をろ過に付し上澄み液を得、35乃至45℃範囲の温度でロータリーエバポレーターにより濃縮し、乾燥してタンジンの乾燥粗抽出粉末を得る。第二段階で、該粗抽出物を蒸留水に懸濁し、それにジエチルエーテルを加え、混合と分別を3乃至6回行いタンジンのジエチルエーテル可溶画分を得る。このジエチルエーテル可溶抽出物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(シリカゲル60、70−230メッシュ)で溶出溶媒の極性を増加しながら溶媒混合物(ヘキサン:酢酸エチル)による溶出を繰り返し、本発明のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIを得る。又上記方法を改良するか、又は更なる段階に付し、技術的に周知の在来法、例えば文献に開示の方法(ハルボーン、ジェイビー(Harborne, J.B.)、植物化学物質法:植物分析の近代技法ガイド(Phytochemical methods: A guide to modern techniques of plant analysis)、第3版、6−7頁、1998年)によりより強力な画分又は化合物に分別単離しても良い。
【0028】
本発明の別様態に従うと、認知機能障害を治療予防するために、活性成分として有効量の上述の生成法で生成したタンジンから単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだタンシノン化合物類を含む医薬組成を提供する。
【0029】
本発明の目的は、上述の生成法で生成したタンジンから単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだ有効量のタンシノン化合物類を、その中に医薬的に容認の担体と一緒に哺乳類に投与することを含む該哺乳類の認知機能障害を治療又は予防する方法を提供することである。
【0030】
本発明の目的は、認知機能障害の治療予防用治療薬の製造に、上述の生成法で生成したタンジンから単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだタンシノン化合物類の使用を提供することである。
【0031】
本発明の医薬組成は、組成全重量に基づいて約0.01−50重量%の上記抽出物を含有できる。
【0032】
認知機能障害に対するタンジンから単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだタンシノン化合物の阻害効果を判定するための種々のスクリーニング検査から、タンジンから単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだタンシノン化合物類が、ベータアミロイドの凝集と同様にベータアミロイドに起因する毒性と細胞アポトーシスを阻害して、神経細胞増殖を刺激し、更には神経細胞損傷に起因する記憶学習損傷を回復することが確認された。
【0033】
認知機能障害の治療予防のための発明性の組成は、その組成の全重量に基づいて上記化合物を0.01−50重量%含有できる。
【0034】
発明性の組成は更に技術的に周知の使用法に従い在来の担体、アジュバント又は希釈剤を含有できる。該担体は、使用応用法に従い適切な物質を使用するのが好ましいが、限定はされない。適切な希釈剤はレミントン薬学科学(Remington's Pharmaceutical Science)(マック出版社(Mack Publishing Co.)、イートン(Eaton)、ペンシルバニア州(PA))の文書テキストに記載されている。
【0035】
下文の以下処方の方法と賦活剤類は、範例にしかすぎずこの発明を決して制限するものではない。
【0036】
本発明に従う組成は、医薬的に容認の担体、アジュバント又は希釈剤、例えばラクトース、右旋糖、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン類、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシ安息香酸エステル、プロピルヒドロキシ安息香酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油含有の医薬組成として提供できる。処方類は更に、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香味剤、乳化剤、防腐剤及び類似体を含んでも良い。この発明の処方は、技術的に周知の方法のいずれかを用いて患者に投与後、活性成分の急速放除、持続的放除又は遅延放除が提供されるように処方できる。
【0037】
例えば本発明の化合物類は、油類、プロピレングリコール、又は通常注入を実現するのに用いる溶剤に溶解できる。担体の適切例としては、生理食塩水、ポリエチレングリコール、エタノール、植物油、ミリスチン酸イソプロピルなどが挙げられるが、これらに限定はされない。局所投与用には、本発明の抽出物は軟膏とクリーム形状に処方できる。
本組成含有の医薬処方類は、経口投薬形状(粉末剤、錠剤、カプセル剤、軟カプセル剤、水薬、シロップ剤、エリキシル薬、粉末剤、小袋、顆粒)、又は局所調剤(クリーム、軟膏、ローション、ゲル、芳香軟膏、パッチ、ペースト、噴霧溶液、エアロゾル及び類似体)、又は注入可能調剤(溶液、懸濁液、エマルジョン)のような任意の形状で調剤できる。
【0038】
医薬投薬形状の本発明の組成は、その医薬的容認の塩類形状で使用でき、単独又は他の医薬活性化合物との適切な関連、又は組み合わせで使用できる。
【0039】
発明性化合物又は組成の望ましい用量は、被験者の健康状態と体重、重症度、薬剤形状、投与経路と期間により変わり、当業者により選択できる。しかし好ましい効果を得るには、通常本発明の発明性抽出物又は化合物類は、体重kg/一日当たり10g/kg、好ましくは1乃至3g/kgの範囲の量を投与することが推奨される。この用量を一日に一回又は数回に分けて投与できる。組成に関しては、発明性化合物の量が、組成全重量に基づいて0.01乃至50重量%、好ましくは0.5乃至40重量%存在する必要がある。
【0040】
本発明の医薬組成は、種々の経路を通して哺乳類(ラット、マウス、家畜又は人)のような対象動物に投与できる。全様式の投与が意図され、例えば投与は、経口、経直腸、静脈内注入、筋肉内注入、皮下注入、皮内注入、くも膜下腔内注入、硬膜外注入又は脳室内注入によりできる。
【0041】
本発明の別の目的は、タンジンから単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだタンシノン化合物類を含む健康食品、又は食品添加物を、認知機能障害を治療予防するために、食品学的に承認の添加物と一緒に提供することである。
【0042】
本発明の健康食品は、組成全重量に基づいて上記化合物類を0.01乃至80重量%、好ましくは1乃至50重量%含有する。
【0043】
上記健康食品は、健康食品、健康飲料などに含有でき、粉末、顆粒、錠剤、咀嚼錠剤、カプセル剤、飲料などとして使用できる。
【0044】
又本発明は、上述化合物0.01乃至80重量%、アミノ酸類0.001乃至5重量%、ビタミン類0.001乃至2重量%、糖類0.001乃至20重量%、有機酸類0.001乃至10重量%、適量の甘味剤とフレイバー類を添加して、認知機能障害を予防治療用の健康食飲料組成を提供する。
【0045】
健康食品を開発するために、本発明の上記化合物類を含む添加可能食品の例は、種々の食品、飲料、ガム、複合ビタミン剤、健康改善食品、及び類似体であり、粉末、顆粒、錠剤、咀嚼錠剤、カプセル剤又は飲料などとして使用できる。
【0046】
又本発明の化合物は、調製粉乳、成長期用調製粉乳、成長期用調整食品のような乳幼児食品に添加することにより、認知機能障害を予防改善できる。
【0047】
上述組成を食品、添加物又は飲料に添加でき、食品又は飲料中の上述化合物の量は、通常健康食品組成用食品の全重量の約0.1乃至80重量%、好ましくは1乃至50重量%の範囲であり、健康飲料組成100mlの割合に1乃至30g、好ましくは3乃至10gの範囲である。
【0048】
本発明の健康飲料組成が、必須成分として上述の化合物を指定割合で含有すると定めると、他の液体成分には特別な制限はなく、その他成分は在来飲料のように種々の脱臭剤、天然炭水化物などでもよい。上記の天然炭水化物は、グルコース、果糖などのような単糖類、麦芽糖、サッカロースなどのような二糖類、デキストリン、シクロデキストリンのような在来糖、キシリトール、エリスリトールなどのような糖アルコールがある。上記の物以外の他の脱臭剤としては、タウマチンのような天然脱臭剤、レバウディオサイドA、グリチルリチンなどのようなステビア抽出物、サッカリン、アスパルテームなどのような合成脱臭剤が好んで使用できる。上述の天然炭水化物の量は、通常本飲料組成100mlの割合に、約1乃至20g、好ましくは5乃至12gの範囲である。
【0049】
上述の組成以外の成分は、種々の栄養剤類、ビタミン、鉱物又は電解質、合成香味剤、チーズとチョコレートなどの場合の着色改良剤、ペクチン酸とその塩、アルギン酸とその塩、有機酸、保護コロイド接着剤、pH制御剤、安定剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸塩飲料で用いる炭酸化剤などである。上述の物以外の成分は、天然果実ジュース生成用の果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料でもよく、その成分は独立でも、組み合わしても使用できる。この成分類の割合は余り重要ではないが、通常本組成100重量%当たり約0乃至20重量%の範囲である。上記抽出物を含む添加可能食品の例は、種々の食品、飲料、ガム、複合ビタミン、健康改良食品及び類似体がある。
【0050】
この発明性の組成は更に、クエン酸、フマール酸、アジピン酸、乳酸、リンゴ酸のような有機酸、リン酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酸性ピロリン酸塩、ポリリン酸塩のようなリン酸塩、ポリフェノール、カテキン、α―トコフェロール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、緑茶抽出物、甘草根抽出物、キトサン、タンニン酸、フィチン酸などのような天然抗酸化剤などの一つ以上を含む。
【0051】
タンジンから単離の上述の化合物は、20乃至90%に高濃縮した液体型、粉末型又は顆粒型でもよい。
【0052】
同様にタンジンから単離の上述の化合物は、更にラクトース、カゼイン、右旋糖、グルコース、サッカロース及びソルビトールの一つ以上を含むことができる。
【0053】
本発明の発明性化合物は、毒性も有害な影響も持たない。それ故安全に使用できる。
【0054】
当業者には本発明の組成、使用及び調合で、発明の精神又は範囲から逸脱することなしに、種々の修正と変更ができることが明白である。
【発明の効果】
【0055】
本発明で説明したように、タンジン(シソ科)から単離のタンシノン化合物類は、ベータアミロイドの凝集と、ベータアミロイドに起因する毒性と細胞アポトーシスを阻害し、神経細胞増殖を刺激する。それ故有害作用なしに、認知機能障害の治療予防のための治療薬又は健康食品と使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明を以下の実施例によりより具体的に説明する。しかし本発明はこれらの実施例に如何なる形でも制限されないと理解する必要がある。
【0057】
以下の参考実施例、実施例及び実験実施例は、更にその範囲を限定することなしに本発明の説明を意図する。
【0058】
実施例1 タンジン抽出物から単離のタンシノン化合物類の生成
【0059】
1−1 メタノール可溶抽出物の生成
ソウルにあるキュンドン(Kyung-dong)市場で購入の乾燥タンジン15kgを小片に切断し、メタノール2.5Lと混合し、3時間の還流抽出を3回行った。残渣をろ過して上澄み液を得、濾液を真空エバポレーターにより40℃で乾燥して、メタノール可溶抽出物3.4kgを得た。
【0060】
1−2 ジエチルエーテル可溶抽出物の生成
メタノール可溶抽出物3.4kgを蒸留水に懸濁し、それにジエチルエーテル溶媒を加えた。懸濁物を分別に3乃至4回かけ、水溶性抽出物とジエチルエーテル可溶抽出物を得た。ジエチルエーテル可溶抽出物を濃縮乾燥して、タンジンのジエチルエーテル可溶抽出物300gを得た。
【0061】
1−3タンシノン化合物類の生成
図1に示すように、タンジンのジエチルエーテル可溶抽出物300gを、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(シリカゲル60、70―230メッシュ)に負荷し、溶媒混合物(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で溶出して15の精製画分を得た。更に精製するために、該画分の中の第4画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(シリカゲル60、70―230メッシュ)に負荷し、溶媒混合物(ヘキサン:酢酸エチル=25:1)で溶出してミルチロンと1,2−ジジヒドロミルチロンを得た。該画分の中の第6画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(シリカゲル60、70―230メッシュ)に負荷し、溶媒混合物(ヘキサン:酢酸エチル=15:1)で溶出し、ジクロルメタンで再結晶してタンシノンIIAを得た。該画分の中の第11画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(シリカゲル60、70―230メッシュ)に負荷し、溶媒混合物(ヘキサン:アセトン=20:1)で溶出し、ジクロルメタンで再結晶してタンシノンIとジヒドロイソタンシノンIを得た。各化合物の測定物理化学物性を以下に示す。
【0062】
化学式1
ミルチロン
分子式:C19H22O2
分子量:282
1H-NMR (500 MHz, CDCl3, ppm): 7.59 (1H, d, J=7.9 Hz), 7.11 (1H, d, J=7.9 Hz), 7.07 (1H, s), 3.18 (2H, t, J=6.4 Hz), 3.02 (1H, sept, J=6.8 Hz), 1.79 (2H, m), 1.65 (2H, m), 1.30 (6H, s), 1.16 (6H, d J=6.9 Hz)
13C-NMR (125 MHz, CDCl3, ppm): 182.5, 181.7, 149.8, 145.2, 144.4, 140.0, 134.6, 133.9, 128.4, 128.0, 38.0, 34.6, 31.9, 30.0, 27.0, 21.7, 19.2
【0063】
化学式2
1,2−ジジヒドロミルチロン
分子式:C19H20O2
分子量:280
1H-NMR (500 MHz, CDCl3, ppm): 7.85 (1H, d, J=10.1 Hz), 7.09-7.49 (2H, ABq, J=7.7 Hz), 7.08 (1H, s), 6.31 (1H, td, J=5, 10 Hz), 3.01 (1H, sept, J=7.1 Hz), 2.26 (2H, d, J=4.5 Hz), 1.27 (6H, s), 1.15 (6H, d J=7 Hz)
13C-NMR (125 MHz, CDCl3, ppm): 183.3, 181.6, 148.1, 145.0, 140.1, 137.3, 134.6, 134.4, 130.7, 129.4, 124.8, 38.5, 34.1, 29.8, 28.5, 27.0, 21.6
【0064】
化学式3
タンシノンIIA
分子式:C19H18O3
分子量:294
1H-NMR (500 MHz, CDCl3, ppm): 7.64 (1H, d, J=8 Hz), 7.56 (1H, d, J=8 Hz), 7.23 (1H, d, J=1 Hz), 3.20 (2H, t, J=6.4 Hz), 2.28 (3H, d, J=1 Hz), 1.80 (2H, m), 1.66 (2H, m), 1.32 (6H, s)
13C-NMR (125 MHz, CDCl3, ppm): 183.6, 175.7, 171.7, 150.1, 144.1, 141.1, 133.3, 127.4, 126.5, 121.4, 120.8, 119.9, 37.8, 34.7, 31.2, 29.9, 19.1, 17.9
【0065】
化学式4
タンシノンI
分子式:C18H12O3
分子量:276
1H-NMR (500 MHz, CDCl3, ppm): 9.23 (1H, d, J=8 Hz), 8.27 (1H, d, J=8 Hz), 7.77 (1H, d, J=8 Hz), 7.27-7.55 (3H, m), 2.68 (3H, s), 2.29 (3H, s)
13C-NMR (125 MHz, CDCl3, ppm): 183.6, 175.8, 161.4, 142.3, 135.4, 133.8, 133.1, 132.9, 130.8, 129.8, 128.6, 125.0, 123.3, 121.9, 120.7, 120.7, 118.9, 20.1, 9.0
【0066】
化学式5
ジヒドロイソタンシノンI
分子式:C18H14O3
分子量:278
1H-NMR (500 MHz, CDCl3, ppm): 9.28 (1H, d, J=8 Hz), 7.72-8.28 (2H, q, J=8 Hz), 7.39-7.58 (2H, m), 4.97 (1H, t, J=9 Hz), 4.43 (1H, dd, J=9, 6Hz), 3.63-3.68 (1H, m), 2.69 (3H, s), 1.42 (3H, d, J=7 Hz)
13C-NMR (125 MHz, CDCl3, ppm): 184.5, 175.9, 170.7, 135.2, 134.9, 132.3, 132.1, 130.6, 129.0, 128.4, 126.3, 125.1, 120.5, 118.6, 81.8, 34.9, 20.0, 19.0
【0067】
実験実施例1 生体外活性試験
【0068】
1−1 実験準備
【0069】
1−1−1 ベータアミロイド凝集の阻害試験
合成ベータアミロイド1−42(バッヘム社(BACHEM))をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して250μM溶液にし、黒色平底マイクロプレート(フルオレッセントブラックプレート)上で1/10にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈して、凝集を誘発した。実施例1で生成したタンシンノン化合物類のベータアミロイド凝集に対する阻害活性を比較して、10μg/mlで50%以上の阻害活性を示す試験サンプルを使用に選び、添加して室温で1時間反応した。チオフラビンT(ThT)を50mMグリシン緩衝液で希釈し、この希釈溶液を穴当たり150μlずつ各穴に添加した。マイクロプレートリーダー(サファイア(SAFIRE)、テカン社(TECAN))により、励起波長450nm/発光波長480nmで吸光度を測定し、ベータアミロイド凝集に対する試験サンプルの阻害活性を50%抑制濃度(IC50)に変換した。
【0070】
1−1−2 ベータアミロイド毒性の阻害試験
マウス神経細胞株HT22を、10%ウシ胎児血清(FBS)(ハイクロン社(Hyclone))と1%ペニシリン/ストレプトマイシン(シグマ社(Sigma Co))を補給したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(ジブコ社(Gibco BRL))でインキュベートした。試験前にHT22細胞を、穴当たり5×10の密度で96個穴プレートでインキュベートし、更に試験サンプル処理前に無血清DMEM培地で1時間インキュベートした。試験サンプルとして用いる実施例1で生成した種々濃度のジエチルエーテル抽出物をこれに加え、1時間インキュベートした。凝集ベータアミロイド(USペプチド社(US Peptide))を25μMになるようにこれと処理し、18時間インキュベートし細胞壊死を誘発した。臭化3−(4,5−ジメチルー2−チアゾリル)−2,5−ジフェニルー2Hテトラゾリウム(MTT)の5mg/ml溶液を、各穴に穴当たり15μl加え、穴で4時間インキュベートした。溶解緩衝液(10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、50%ジメチルフォルムアミド、pH4.7)を各穴に、穴当たり100μl加え一晩反応した。反応18時間後、溶液の吸光度をマイクロプレートリーダー(サファイア(SAFIRE)、テカン社(TECAN))により、570nm/630nm波長で測定した(ジルラドン、エフら(Gillardon、F, et al)、ブレインリサーチ(Brain Research)、706(1)巻、169−172頁、1996年)。
【0071】
1−1−3 細胞毒性の測定
試験サンプルの細胞毒性を測定するために、1−1−2に開示と同様の方法に従いHT22細胞をインキュベートし、実施例1で生成した種々濃度の試験サンプルを細胞に加え18時間インキュベートした。MTT溶液と溶解緩衝液を細胞に連続に加え、吸光度をマイクロプレートリーダー(サファイア(SAFIRE)、テカン社(TECAN))により、570nmで測定した。
【0072】
1−2 ミルチロン(化合物S−2−3)活性の結果
図2に示されるように、ミルチロン(化合物S−2−3)は、ベータアミロイド凝集に強力な阻害効果(0.72mg/ml)を示したが、ベータアミロイド毒性を阻害しなかった。
【0073】
1−3 1,2−ジジヒドロミルチロン(化合物S−2−6)活性の結果
図3に示されるように、1,2−ジヒドロミルチロン(化合物S−2−6)はベータアミロイド凝集に強力な阻害効果(0.49mg/ml)を示したが、ベータアミロイド毒性を阻害しなかった。
【0074】
1−4 タンシノンIIA(化合物S−4−4−1)活性の結果
図4に示されるように、タンシノンIIA(化合物S−4−4−1)は、試験サンプルの中でベータアミロイド凝集にもっとも強力な阻害効果(0.14mg/ml)を示し、ベータアミロイド毒性に対し僅かしか阻害効果を示さなかった。
【0075】
1−5 タンシノンI(化合物S−8−4)活性の結果
図5に示されるように、タンシノンI(化合物S−8−4)は、ベータアミロイド凝集に強力な阻害効果(0.19mg/ml)を示し、ベータアミロイド毒性に対し全く阻害効果を示さなかった。
【0076】
1−6 ジヒドロタンシノンI(化合物S−8−11)活性の結果
図6に示されるように、ジヒドロタンシノンI(化合物S−8−11)は、ベータアミロイド凝集に強力な阻害効果(0.40mg/ml)を示し、ベータアミロイド毒性に対し全く阻害効果を示さなかった。
【0077】
実験実施例2 生体内の活性試験
【0078】
2−1 実験計画法
受動回避試験のために、サムタッコ社(Samtaco Co.)から購入の体重25gのICRオスマウスを、檻当たり5匹のマウスを飼育し、檻を以下の温度22±2℃と相対湿度50±5%の条件に維持し、12時間の間隔で規則的に制御した明暗条件に保った。
合成ベータアミロイド1−42(バッヘム社(BACHEM))をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して250μM溶液にし、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で10nMに希釈し、37℃で4日間(受動回避試験)又は6日間(Y字型迷路試験)で凝集した。
凝集ベータアミロイド1−42を文献に開示の方法に従いマウスに投与した(ローセン(Lausen)、ベルカンプ(Belknap)、ジャーナルオブファルマコロジカルメソッド(J. Pharmacol. Methods)、16巻、355−357頁、1986年)。
凝集ベータアミロイド1−42の50μlを、ゲージ26の針を備えた50μlハミルトン(Hamilton)マイクロシリンジで十字縫合領域に深さ2.4mmで投与した。ベータアミロイド投与後、行動試験をY字型迷路試験と受動回避(PA)試験に分割した。Y字型迷路試験を投与後2日間、PA試験を投与後3日間行った。各試験を10匹以上のマウスで行った。
実験終了持に、動物の脳を染色のために、10%フォルマリン溶液に運び保存した。
【0079】
2−2 薬物療法
ベータアミロイド投与後、実施例1で生成のタンシノン化合物類を、Y字型迷路試験の場合には1日に一回の間隔でマウスに投与し、受動回避試験の場合には3日間継続的に試験サンプルに投与し、二つの群、即ち一つは50mg/kg処置群と、他の群は100mg/kg処置群に分けた。各試験を投与翌日に行った。
【0080】
2−3 行動手段
【0081】
2−3−1 急性アルツハイマー病モデル実験―Y字型迷路試験
ベータアミロイド投与後2日目に、Y字型迷路試験を行った。黒色のY字型迷路ボックスは、互いに等しい角度を有する三本のアーム(長さ40cm;高さ10cm、幅5cm)からなる。迷路の中心にマウスを置き、この迷路で8分間自由に行動させた。マウスの通路へ入る順序を観察し、四肢が経路内に入る場合の進入待ち時間を測定した。空間記憶を測定するために、以下の経験式1により測定自発性進入岐路交替行動を計算し、マウスが持続的に三つの通路に進入した時を、一回の実際交替とした。
自発性進入岐路交替(%)=(実際交替/アームへの進入総数―2)×100
タンシノンIIA(化合物S−4−4−1)が、試験サンプル中でベータアミロイド凝集に対しもっとも強力な阻害効果を示し、経口投与試験(2000mg/kg)で毒性を示さなかったので、この化合物50mg/kgをベータアミロイドを脳室内経路で直接処理したマウスに経口投与し、脳損傷に対するこの化合物の回復効果をY字型迷路試験で見いだした。タンシノンIIA100mg/kgの処置でも、又タンシノンIIAの100mg/kgと同様の効果を示した。図7に見られるように、マウスのベータアミロイド投与に起因する記憶学習障害が、タンシノンIIA(化合物S−4−4−1)処置により回復が示された。
【0082】
2−3−2 急性アルツハイマー病モデル実験―受動回避試験
ベータアミロイド投与後3日目に、受動回避試験を行った。黒色の回避シャトル箱を、格納扉(長さ4cm×幅3.5cm)で分割した同じ大きさの二つの部屋(長さ18cm×幅9.5cm×高さ17cm)に分け、電気により暗室の床上を走れるようにした。明室は蝶番付きプレキシグラス蓋上に20ワットのランプを備え、マウスが格納扉を通して暗室に進入できるようにした。
実験は訓練セッションと試験セッションからなった。
訓練セッションでは、体重25gのオスマウスを最初明室に置き、慣れさせた。次いで扉を開け、マウスが暗さを好んで明室から出て、暗室に入るやいなや直ちにその扉を閉め、電気ショック(0.25mA、3秒間、一回)をグリッド床から3秒間マウスに送った。
訓練セッション後24時間で、同一実験を再度マウスに行い、明室に留まる待ち時間を測定した。データは、3秒間の0.25mAの電気ショックによる前回訓練の記憶を意味する指標と見なした。明室から暗室に進入する待ち時間を、待ち時間による段階として測定した。限界時間(300秒)以内に暗室に進入しない場合には、値300秒を待ち時間とした。実施例で生成の試験サンプルを経口投与したマウスを用いて、受動回避試験を行った。
図8に示すように、待ち時間の変化は記憶低下又は回復を意味し、待ち時間の延長は記憶の向上を意味する。偽手術の対照群では待ち時間の変化はなく、溶媒投与の媒体対照群では、タンシノンIIA(化合物S−4−4−1)処置の待ち時間は、偽対照群に比べ有意に増加した(p<0.05)。
【0083】
2−3−3 急性アルツハイマー病モデル実験における染色脳の免疫化学
行動試験の終わりに、マウスの脳を10%フォルマリンに運び24時間保持し、30%サッカロース溶液に移した。この脳を固定後、クリオスタットを用いて、幅40μmに脳の冠状切断を行った。脳切片をクレシルバイオレット染色して脳神経細胞の損傷を確認し、アセチルトランスフェラーゼ(ChAT)染色してコリン作動性神経の損傷を確認し、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)染色してアストロサイトの活性化を確認した。
【0084】
(a)クレシルバイオレット染色
組織をゼラチン塗布スライド上に置きクレシルバイオレットで染色後、エタノールを用いて組織を脱水した。組織を約3分間インキュベートし、0.5%クレシルバイオレットに30分間浸漬した。この溶液をエタノールで再脱水した後に、切片をキシレンに3分間浸漬した。乾燥組織をカナダバルサム封入剤で固定した。
【0085】
(b)免疫組織化学
全ての抗体培養間の洗浄工程では、組織洗浄にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いた。内因性ペルオキダーゼの活性を低下するために、組織を0.5%過酸化水素で前処理後、室温で5%FBSで1時間処理して、非特異的結合を除去した。マウス抗GFAP(1:200)モノクロナル抗体と、ヤギ抗ChAT(1:200)ポリクローナル抗体を用いて、組織を一晩4℃でインキュベートした。西洋わさびペオキシダーゼ共役抗マウスIgGと抗ヤギIgG二次抗体(1:600)を、室温で1時間インキュベートし、培養後ジアミノベンジジン(DAB)キットで検出した。
図9に示されるように、ベータアミロイドに起因する記憶学習の損傷は、海馬の特定領域と緊密に相関し、タンシノンIIA(化合物S−4−4−1)は記憶学習の損傷を有意に回復することが確認された。ChAT染色とGFAP染色の結果では、タンシノンIIA(化合物S−4−4−1)によりベータアミロイドに起因するコリン作用性神経の損傷を回復し、ベータアミロイドに起因する炎症反応と相関するアストロサイト活性の増加が減少した。
以下に賦形剤の処方法と種類を説明するが、本発明はこれらに限定されない。代表的調合例を以下に説明した。
【0086】
粉末調合
ミルチロン 50mg
ラクトース 100mg
タルク 10mg
粉末調合は上記成分を混合し、封入包みに詰めて調合した。
【0087】
錠剤調合
1,2−ジジヒドロミルチロン 50mg
コーンスターチ 100mg
ラクトース 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
錠剤調合は上記成分を混合し、錠剤化して調合した。
【0088】
カプセル剤調合
タンシノンIIA 50mg
コーンスターチ 100mg
ラクトース 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
錠剤調合は上記成分を混合し、在来のゼラチン調合法によりゼラチンカプセルに詰めて調合した。
【0089】
注射調合
タンシノンI 50mg
注射用蒸留水 適量
pH制御剤 適量
注射調合は活性成分を溶解し、pHを約7.5に制御し、次いで全成分を2mlアンプルに詰め、在来の注射調合法により殺菌して調合した。
【0090】
液体調合
ジヒドロイソタンシノン 0.1−80g
砂糖 5−10g
クエン酸 0.05−0.3%
カラメル 0.005−0.02%
ビタミンC 0.1−1%
蒸留水 79−94%
炭酸ガス 0.5−0.82%
液体調合は活性成分を溶解し、全成分を詰め、在来の液体調合法により殺菌して調合した。
【0091】
健康食品の調合
タンシノンIIA 1000mg
ビタミン混合物 適量
ビタミンA酢酸エステル 70μg
ビタミンE 1.0mg
ビタミンB1 0.13mg
ビタミンB2 0.15mg
ビタミンB6 0.5mg
ビタミンB12 0.2μg
ビタミンC 10mg
ビオチン 10μg
ニコチン酸アミド 1.7mg
葉酸 50μg
パンテニン酸カルシウム 0.5mg
ミネラル混合物 適量
硫酸第1鉄 1.75mg
酸化亜鉛 0.82mg
炭酸マグネシウム 25.3mg
第一リン酸カリウム 15mg
第二リン酸カルシウム 55mg
クエン酸カリウム 90mg
炭酸カルシウム 100mg
塩化マグネシウム 24.8mg
上述のビタミン混合物とミネラル混合物は、多くの形に変えられる。そのような変形は本発明の精神と範囲から逸脱するとは見なさない。
【0092】
健康飲料の調合
ミルチロン 1000mg
クエン酸 1000mg
オリゴ糖 100g
アンズ濃縮物 2g
タウリン 1g
蒸留水 900ml
健康飲料の調合は活性成分を溶解し、85℃で1時間撹拌し、濾過後全成分を1000mlアンプルの詰め、在来の健康飲料調合法で殺菌して調合した。
この発明をこのように説明したが、同じことが多くの形に変えられることは明白である。そのような変形は本発明の精神と範囲から逸脱するとは見なさなく、そのような修正の全ては当業者には明白であり、以下の特許の請求項の範囲内に含まれることを意図する。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明で説明したように、タンジン(シソ科)から単離のタンシノン化合物類は、ベータアミロイドの凝集と同様に、ベータアミロイドに起因する毒性と細胞アポトーシスを阻害し、神経細胞増殖を刺激する。それ故認知機能障害を治療予防する治療薬類又は健康食品として、有害作用なしに使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
本発明の上記と他の目的、特性及び他の利点が、付随図面と組み合わした以下の詳細説明でより明白に理解できる。
【図1】図1にタンジン抽出物からタンシノン化合物類の単離スキームを示す。
【図2】図2にベータアミロイドの凝集と細胞毒性に対するミルチロン(化合物S−2−3)の阻害効果を示す。
【図3】図3にベータアミロイドの凝集と細胞毒性に対するジジヒドロミルチロン(化合物S−2−6)の阻害効果を示す。
【図4】図4はベータアミロイドの凝集と細胞毒性に対するタンシノンIIA(化合物S−4−4−1)の阻害効果を表す。
【図5】図5はベータアミロイドの凝集と細胞毒性に対するタンシノンI(化合物S−8−4)の阻害効果を表す。
【図6】図6はベータアミロイドの凝集と細胞毒性に対するジヒドロタンシノンI(化合物S−8−11)の阻害効果を表す。
【図7】図7にタンシノンIIA(化合物S−4−4−1)を用いた記憶学習研究(Y字型迷路試験)の結果を示す。
【図8】図8にタンシノンIIA(化合物S−4−4−1)を用いた記憶学習試験(受動回避試験)の結果を示す。
【図9】図9に対照群とタンシノンIIA(化合物S−4−4−1)で治療した試験群間のマウス染色脳の比較を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
認知機能障害を治療予防するために、有効成分としてタンジンから単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだタンシノン化合物類と、医薬的に容認の担体、希釈剤又はアジュバントとを含む医薬組成物。
【請求項2】
該認知機能障害が、アルツハイマー型認知症、脳血管型認知症、ピック病、クロイツフェルトヤコブ病、頭部損傷又はパーキンソン病起因の認知症から選んだ、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
有効量のタンジンから単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだタンシノン化合物類と、その中の医薬的に容認の担体とを一緒に哺乳類に投与することを含む、該哺乳類の認知機能障害の治療又は予防法。
【請求項4】
認知機能障害の治療予防用の治療薬製造にタンジンから単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選択のタンシノン化合物類の使用。
【請求項5】
認知機能障害を治療予防するために、タンジンから単離のミルチロン、1,2−ジジヒドロミルチロン、タンシノンIIA、タンシノンI及びジヒドロタンシノンIからなる一群から選んだタンシノン化合物類を、食品学的に容認の添加物と一緒に含む健康食品。
【請求項6】
該健康食品が粉末、顆粒、錠剤、咀嚼錠剤、カプセル剤又は飲料型として提供される、請求項5に記載の健康食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−511467(P2009−511467A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534443(P2008−534443)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003999
【国際公開番号】WO2007/040345
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(505114433)デジタル バイオテック カンパニー リミテッド (5)
【出願人】(508095991)イルサング ファーマセウティカルズ カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】