説明

タービン設備の制御方法およびタービン設備

タービン設備に設けられた機器に課せられた制約を遵守しつつ、減速部にかかる負荷を制御した起動運転を行うことができるタービン設備の制御方法およびタービン設備を提供する。
タービン部に流入する作動流体の温度を上昇させる昇温ステップS1と、熱源部によりタービン部に流入する作動流体の温度を上昇させる際に、圧縮部の吐出側から吸入側にバイパスする作動流体の流量を増加させる流量増加ステップS2と、バイパスする作動流体の流量の増加から所定時間経過後に、バイパスする作動流体の流量を減少させる流量減少ステップS3と、を有することを特徴とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン設備の制御方法およびタービン設備、特に、原子炉等を熱源に用いて作動流体を閉鎖系で循環させるクローズドサイクルガスタービンに用いて好適なタービン設備の制御方法およびタービン設備に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉等を熱源に用いて作動流体を閉鎖系で循環させるクローズドサイクルガスタービンでは、起動時の昇速運転のみに用いるモータや、発電機をモータとして使用するための電気機器SFC(Static Frequency Converter)等の設備容量を、プラント建設コストの低減を図るために、可能な限り小さくしている。
【0003】
そのため、クローズドサイクルガスタービンでは、閉鎖系中の作動流体、例えばヘリウムガスの充填量を、原子炉内の燃料球がヘリウムの流れにより循環する程度まで減らした状態、かつ、低い温度状態で定格回転数まで昇速される。
このように、起動時に閉鎖系中の作動流体の充填量を減らす技術は従来から提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3020853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、原子炉の昇温レートが制限されているため、クローズドサイクルガスタービンが定格回転数に達しても、しばらくの間は発電機がモータとして使用される。そのため、クローズドサイクルガスタービンと発電機との間に配置された減速ギア等に、負のトルクが負荷された状態の運転が継続されることになる。
その後、原子炉の発熱によりタービンに流入する作動流体の温度が上昇し、タービン出力が増加される。この過程で軸出力は負の出力から正の出力に推移し、タービンと発電機とを繋ぐ減速ギア等にかかるトルクも負のトルクから正のトルクへと推移する。
【0006】
減速ギアには、ギアの自重で歯車の負荷分担が正規の値からずれたり、歯の当たり位置が正規からずれたりして、フレッティング等の不具合が発生することを防止する、最低限必要なトルクが規定されている。
【0007】
ところが、上述のように減速ギア等にかかるトルクが、負のトルクから正のトルクへと推移する際には、必ず、規定された最低限必要なトルクを下回るという問題があった。
さらに、原子炉の昇温レートが制限されていることから、減速ギア等にかかるトルクの増加レートも制限され、規定された最低限必要なトルクを下回る時間を短くすることも困難であった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、タービン設備に設けられた機器に課せられた制約を遵守しつつ、減速部にかかる負荷を制御した起動運転を行うことができるタービン設備の制御方法およびタービン設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のタービン設備の制御方法は、作動流体を圧縮する圧縮部と、圧縮された前記作動流体を加熱する熱源部と、加熱された前記作動流体により回転駆動されるタービン部と、少なくとも前記圧縮部、前記熱源部および前記タービン部の間で前記作動流体を循環させる循環流路と、を有するタービン設備の制御方法であって、タービン部に流入する作動流体の温度を上昇させる昇温ステップと、前記熱源部により前記タービン部に流入する作動流体の温度を上昇させる際に、前記圧縮部の吐出側から吸入側にバイパスする前記作動流体の流量を増加させる流量増加ステップと、前記バイパスする作動流体の流量の増加から所定時間経過後に、前記バイパスする作動流体の流量を減少させる流量減少ステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、タービン部に流入する作動流体の温度を上昇させる際に、バイパスする作動流体の流量を所定時間の間増加させ、その後にバイパスする作動流体の流量を減少させるため、減速部にかかる負荷が所定値よりも0に近くなる時間を短縮できる。
【0011】
つまり、タービン部に流入する作動流体の温度上昇を開始する際に、圧縮機の吐出側から吸入側にバイパス、つまり還流する作動流体の流量を増やすことにより、圧縮機の駆動に必要なトルクが大きくなり、減速部にかかる負荷が大きくなる。その後、時間の経過とともに、タービン部に流入する作動流体の温度がさらに高くなるため、タービン部において発生する回転駆動力が大きくなり、減速部にかかる負荷が徐々に0に近くなる。
【0012】
作動流体温度の上昇開始から所定時間が経過すると、減速部にかかる負荷の絶対値は、減速部における不具合発生を防止するために必要な所定値まで近づき、この段階で、バイパスする作動流体の流量を減少させる。このとき、圧縮機に圧縮される作動流体の流量が減少し、圧縮機の駆動に必要なトルクが減少する。同時に、タービン部では十分な回転駆動力が発生しているため、減速機にかかる負荷は、それまでとは反対方向に働く負荷となる。例えば、発電機により圧縮機などを回転駆動していたときの減速器にかかる負荷を負の負荷とすると、正の負荷となる。さらに、減速機にかかる正の負荷の値は、上述の所定値よりも大きくなる。
【0013】
さらに、バイパスする作動流体の流量のみを調整して、減速部にかかる負荷を制御するため、熱源部が、例えば原子炉などの昇温レートが制限された熱源の場合であっても、熱源部に課せられた昇温レート等の制約を遵守しつつ、減速部にかかる負荷を制御することができる。
【0014】
上記発明においては、前記流量増加ステップおよび前記流量減少ステップにおける前記バイパスする作動流体の流量を、前記作動流体温度の上昇開始からの経過時間に基づいて算出する第1算出ステップと、前記圧縮機の吸入側および吐出側の間の圧力比と、記圧縮機に吸入される前記作動流体の温度に基づいて算出された前記圧縮機の修正回転数とに基づいて、前記圧縮機においてサージングの発生防止に必要なバイパス流量を算出する第2算出ステップと、前記第1および第2算出ステップにより算出された前記バイパス流量のうち、流量の大きなバイパス流量を選択する選択ステップと、前記圧縮部の吐出側から吸入側にバイパスする前記作動流体の流量を、前記選択されたバイパス流量に調節する流量調節ステップと、をさらに有することが望ましい。
【0015】
本発明によれば、作動流体温度の上昇開始からの経過時間に基づいたバイパス流量、および、圧縮機におけるサージングの発生を防止するバイパス流量のうち、流量が大きなバイパス流量を選択して、バイパスする作動流体の流量を選択したバイパス流量に調節するため、減速部にかかる負荷が所定値よりも0に近づくこと、および、圧縮機におけるサージングの発生が防止される。
【0016】
本発明のタービン設備は、作動流体を圧縮する圧縮部と、前記作動流体により回転駆動されるタービン部と、少なくとも前記圧縮部および前記タービン部の間で前記作動流体を循環させる循環流路と、前記圧縮部の吐出側から吸入側に前記作動流体をバイパスさせるバイパス流路と、該バイパス流路を流れる前記作動流体の流量を調整する流量調整部と、起動時に減速部を介して前記圧縮部および前記タービン部を回転駆動する電動機と、上記本発明の制御方法を行う制御部と、が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、制御部が上記本発明の制御方法を行うことにより、圧縮機の吐出側から吸入側にバイパスする作動流体の流量が調節され、減速部にかかる負荷が制御される。
【0018】
さらに、バイパスする作動流体の流量のみを調整して、減速部にかかる負荷を制御するため、熱源部が、例えば原子炉などの昇温レートが制限された熱源の場合であっても、熱源部に課せられた昇温レート等の制約を遵守しつつ、減速部にかかる負荷を制御することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のタービン設備の制御方法およびタービン設備によれば、タービン部に流入する作動流体の温度を上昇させる際に、バイパスする作動流体の流量を所定時間の間増加させ、その後にバイパスする作動流体の流量を減少させることにより、タービン設備に設けられた機器に課せられた制約を遵守しつつ、減速部にかかる負荷を制御した起動運転を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る発電設備の構成を説明する模式図である。
【図2】図1の発電設備における制御を説明するブロック図である。
【図3】図1の発電設備における起動時の制御を説明するフローチャートである。
【図4】図1の発電設備におけるタービン部に流入する作動流体の温度の時間変化、および、第2バイパス弁の開度の時間変化を説明するグラフである。
【図5】図1の発電設備における減速ギア部にかかるトルクを説明するグラフである。
【図6】本発明の第1の実施形態の変形例に係る発電設備における制御を説明するブロック図である。
【図7】図6の発電設備の起動時におけるタービン部に流入する作動流体の温度の時間変化と、第1および第2バイパス弁開度の時間変化を説明するグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る発電設備の構成を説明する模式図である。
【図9】図8の発電設備における制御を説明するブロック図である。
【図10】図9の発電設備の起動時における制御を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る発電設備の構成を説明する模式図である。
【図12】図11の発電設備における制御を説明するブロック図である。
【図13】図11の発電設備の起動時における制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係るクローズドサイクルガスタービンを備えた発電設備について図1から図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る発電設備の構成を説明する模式図である。
本実施形態では、本発明を作動流体であるヘリウムガスを閉鎖した循環系で循環させるとともに(クローズドサイクル)、圧縮された作動流体を加熱する熱源として原子炉を用いるガスタービンを備えた発電設備に適用して説明する。
発電設備(タービン設備)1には、図1に示すように、同一の回転軸2上に配置されたタービン部3、低圧圧縮機(圧縮部)4、高圧圧縮機(圧縮部)5および減速ギア部(減速部)6と、減速ギア部6に接続された発電機(電動機)7と、高圧圧縮機5により圧縮された作動流体を加熱する原子炉(熱源部)8と、作動流体を原子炉8、タービン部3、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5の順に循環させる循環流路9と、が主に設けられている。
【0022】
タービン部3は、図1に示すように、回転軸2に配置され、原子炉8から供給された高温高圧の作動流体により回転駆動されるものである。
原子炉8とタービン部3との間、および、タービン部3と低圧圧縮機4との間は、循環流路9によって作動流体が流通可能に接続されている。
【0023】
低圧圧縮機4は、図1に示すように、回転軸2に配置され、回転軸2を介して供給された回転駆動力を用いて、作動流体を圧縮するものである。
タービン部3と低圧圧縮機4との間、および、低圧圧縮機4と高圧圧縮機5との間は、循環流路9によって作動流体が流通可能に接続されている。
【0024】
高圧圧縮機5は、図1に示すように、回転軸2に配置され、回転軸2を介して供給された回転駆動力を用いて、作動流体をさらに高圧に圧縮するものである。
低圧圧縮機4と高圧圧縮機5との間、および、高圧圧縮機5と原子炉8との間は、循環流路9によって作動流体が流通可能に接続されている。
【0025】
原子炉8は、図1に示すように、高圧圧縮機5とタービン部3との間に配置され、高圧圧縮機5から吐出された高圧の作動流体を加熱して、タービン部3に高温高圧の作動流体を供給するものである。
高圧圧縮機5と原子炉8との間、および、原子炉8とタービン部3との間は、循環流路9によって作動流体が流通可能に接続されている。
【0026】
減速ギア部6は、図1に示すように、回転軸2と発電機7との間を回転駆動力の伝達を可能に接続するものであって、回転軸2から発電機7へ、または、発電機7から回転軸2へ、回転数を変換しつつ回転駆動力を伝達するものである。
減速ギア部6は、複数の歯車の組み合わせから構成されるものであって、種々の組み合わせ形式を用いることができる。例えば、減速ギア部6として遊星ギアを用いることができるが、特に限定するものではない。
【0027】
発電機7は、図1に示すように、減速ギア部6と回転駆動力が伝達可能に接続されたものであって、発電設備1が運転状態にあるときには、回転軸2および減速ギア部6を介してタービン部3により回転駆動され、発電を行うものである。
一方、発電設備1の起動時には、外部から供給された電力を用いて、回転軸2および減速ギア部6を介してタービン部3、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5を回転駆動するものである。
【0028】
循環流路9は、図1に示すように、原子炉8、タービン部3、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5の間で作動流体を循環させる流路である。
循環流路9には、タービン部3から流出した作動流体と、高圧圧縮機5から吐出された作動流体との間で熱交換を行う再生熱交換器21と、低圧圧縮機4に吸入される作動流体と、海水との間で熱交換を行う冷却器22と、低圧圧縮機4から吐出された作動流体と、海水との間で熱交換を行う中間冷却器23と、が設けられている。
【0029】
再生熱交換器21は、図1に示すように、タービン部3から流出した作動流体から熱を回収して、原子炉8に流入する作動流体を加熱する熱交換器である。再生熱交換器21は、タービン部3と低圧圧縮機4との間、および、高圧圧縮機5と原子炉8との間に配置されている。
【0030】
冷却器22は、図1に示すように、再生熱交換器21から流出した作動流体の熱を、海水に放熱させる熱交換器である。冷却器22は、再生熱交換器21と低圧圧縮機4との間に配置されている。
なお、上述のように海水に作動流体の熱を放熱させる構成の冷却器22を用いてもよいし、他の媒体に作動流体の熱を放熱させる構成の熱交換器を用いてもよく、特に限定するものではない。
【0031】
中間冷却器23は、図1に示すように、低圧圧縮機4から吐出された作動流体の熱を、海水に放熱させる熱交換器である。中間冷却器23は、低圧圧縮機4と高圧圧縮機5との間に配置されている。
なお、上述のように海水に作動流体の熱を放熱させる構成の中間冷却器23を用いてもよいし、他の媒体に作動流体の熱を放熱させる構成の熱交換器を用いてもよく、特に限定するものではない。
【0032】
さらに、循環流路9には、図1に示すように、低圧圧縮機4に吸入される作動流体の流量を増加させる第1バイパス流路(バイパス流路)31と、作動流体の充填量、つまり循環流路9内を流れる作動流体の流量を調節するとともに、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5に吸入される作動流体の流量を増加させる第2バイパス流路(バイパス流路)32と、が設けられている。
【0033】
第1バイパス流路31は、図1に示すように、中間冷却器23から流出した作動流体の一部を低圧圧縮機4と冷却器22との間に還流させる流路である。言い換えると、一端が中間冷却器23と高圧圧縮機5との間の循環流路9に接続され、他端が冷却器22と低圧圧縮機4との間の循環流路9に接続された流路である。
第1バイパス流路31には、還流する作動流体の流量を調節する第1バイパス弁36が設けられている。
【0034】
第1バイパス弁36は、図1に示すように、第1バイパス流路31に配置され、第1バイパス流路31を流れる作動流体の流量を調節する弁である。言い換えると、低圧圧縮機4に吸入される作動流体の流量を調節する弁であって、流量を調節することにより、低圧圧縮機4におけるサージングの発生を防止するものである。
本実施形態では、2つの第1バイパス弁36が並列に配置されている例に適用して説明するが、第1バイパス弁36の数は、2つよりも多くてもよいし、少なくてもよく、特に限定するものではない。
【0035】
第2バイパス流路32は、図1に示すように、高圧圧縮機5の吐出側および低圧圧縮機4の吸入側の一方、または、両方に作動流体を充填する流路であるとともに、高圧圧縮機5から吐出された作動流体の一部を再生熱交換器21と冷却器22との間に還流させる流路である。言い換えると、一方の端部が高圧圧縮機5と再生熱交換器21との間に接続され、他方の端部が冷却器22と低圧圧縮機4との間に接続された流路である。
【0036】
第2バイパス流路32には、外部の作動流体充填系と接続された第1バッファタンク41および第2バッファタンク42と、第1バッファタンク41および第2バッファタンク42の間に配置された第2バイパス弁(流量調整部)43と、が設けられている。
【0037】
第1バッファタンク41は、第2バイパス流路32における高圧圧縮機5側に配置されたタンクである。第2バッファタンク42は、第2バイパス流路32における冷却器22側に配置されたタンクである。
【0038】
循環流路9に作動流体を充填する場合には、作動流体充填系から第1バッファタンク41および第2バッファタンク42の一方、または、両方を介して作動流体が充填される。
一方、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5に吸入される作動流体の流量を調節する場合には、高圧圧縮機5から吐出された作動流体の一部は、第1バッファタンク41、第2バッファタンク42の順に流れて、再生熱交換器21と冷却器22との間に還流される。
【0039】
第2バイパス弁43は、図1に示すように、第1バッファタンク41および第2バッファタンク42の間の第2バイパス流路32に配置され、第2バイパス流路32を流れる作動流体の流量を調節する弁である。言い換えると、発電設備1の運転時には、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5に吸入される作動流体の流量を調節する弁であり、かつ、起動時には、減速ギア部6にかかるトルクを制御する弁である。
【0040】
第2バイパス弁43には、図2に示すように、第2プログラム制御部51から弁開度を制御する制御信号が入力されている。
本実施形態では、2つの第2バイパス弁43が並列に配置されている例に適用して説明するが、第2バイパス弁43の数は、2つよりも多くてもよいし、少なくてもよく、特に限定するものではない。
【0041】
図2は、図1の発電設備における制御を説明するブロック図である。
さらに、発電設備1には、図2に示すように、昇温開始指令に基づいて、第2バイパス弁43を制御する第2プログラム制御部(制御部)51が設けられている。
第2プログラム制御部51における第1バイパス弁36の制御については、以下に説明する。
【0042】
次に、上記の構成からなる発電設備1における発電について説明する。
発電設備1において運転、つまり発電が行われる場合には、図1に示すように、原子炉8に流入した高圧の作動流体は原子炉8において発生した熱を吸収してさらに加熱され、例えば、約900℃の作動流体として原子炉8から循環流路9に流出する。
【0043】
作動流体は循環流路9からタービン部3に流入する。タービン部3は、流入した高温高圧の作動流体が有するエネルギから回転駆動力を発生させ、発生した回転駆動力を回転軸2に伝達する。
【0044】
回転駆動力は回転軸2から減速ギア部6に伝達され、減速ギア部6から発電機7に伝達される。回転軸2の回転数は、減速ギア部6により発電機7の駆動に適切な回転数に減速されている。
発電機7は、伝達された回転駆動力により回転駆動されて発電を行っている。
【0045】
一方、作動流体はタービン部3から流出する際に約500℃まで温度が低下し、循環流路9を介して再生熱交換器21に流入する。再生熱交換器21では、タービン部3から流入した作動流体と、後述する高圧圧縮機5から吐出された作動流体との間で熱交換が行われ、再生熱交換器21から流出する。
【0046】
再生熱交換器21から流出した作動流体は、循環流路9を介して冷却器22に流入して海水との間で熱交換を行い、約20℃まで冷却された後、冷却器22から流出する。
冷却器22から流出した作動流体は、循環流路9を介して低圧圧縮機4に吸入される。低圧圧縮機4は、回転軸2を介してタービン部3から供給された回転駆動力により、吸入した作動流体を圧縮し、循環流路9に吐出する。
【0047】
低圧圧縮機4から吐出された作動流体は、循環流路9を介して中間冷却器23に流入して海水との間で熱交換を行い、約20℃まで冷却された後、中間冷却器23から流出する。
中間冷却器23から流出した作動流体は、循環流路9を介して高圧圧縮機5に吸入される。高圧圧縮機5は、回転軸2を介してタービン部3から供給された回転駆動力により、低圧圧縮機4により圧縮された作動流体をさらに高圧に圧縮し、循環流路9に吐出する。
【0048】
高圧圧縮機5から吐出された作動流体は、循環流路9を介して再生熱交換器21に流入し、上述のタービン部3から流出した作動流体との間で熱交換を行い、例えば、約450℃に加熱され、循環流路9に流出する。
再生熱交換器21から流出した作動流体は、循環流路9を介して原子炉8に流入し、上述の過程が繰り返される。
【0049】
循環流路9を流れる作動流体の流量が少ない場合、言い換えると、低圧圧縮機4に流入する作動流体の流量が少ない場合には、第1バイパス弁36が開かれ、低圧圧縮機4におけるサージングの発生が防止される。
つまり、第1バイパス弁36を開くことにより、低圧圧縮機4から吐出され中間冷却器23から流出された作動流体の一部が、第1バイパス流路31を介して、冷却器22と低圧圧縮機4との間の循環流路9に流入する。そのため、循環流路9の全体における作動流体の循環流量と比較して、低圧圧縮機4に流入する作動流体の流量が増加し、低圧圧縮機4におけるサージングの発生が防止される。
【0050】
一方、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5に流入する作動流体の流量が少ない場合には、第2バイパス弁43が開かれ、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5におけるサージングの発生が防止される。
つまり、第2バイパス弁43を開くことにより、高圧圧縮機5から吐出された作動流体の一部が、第2バイパス流路32、第1バッファタンク41および第2バッファタンク42を介して、再生熱交換器21および冷却器22の間の循環流路9に流入する。そのため、循環流路9の全体における作動流体の循環流量と比較して、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5に流入する作動流体の流量が増加し、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5におけるサージングの発生が防止される。
【0051】
さらに、循環流路9を循環する作動流体の充填量が少ない場合には、第1バッファタンク41や、第2バッファタンク42を介して接続された作動流体充填系から、作動流体が循環流路9内に充填される。
【0052】
次に、本実施形態の特徴である発電設備1の起動時における制御について説明する。
図3は、図1の発電設備における起動時の制御を説明するフローチャートである。
発電設備1の起動時は、図1に示すように、外部から発電機7に電力が供給される。電力が供給された発電機7は、電動機として回転駆動力を発生し、減速ギア部6および回転軸2を介してタービン部3,低圧圧縮機4および高圧圧縮機5を回転駆動する。
【0053】
図4は、図1の発電設備におけるタービン部に流入する作動流体の温度の時間変化、および、第2バイパス弁の開度の時間変化を説明するグラフである。図5は、図1の発電設備における減速ギア部にかかるトルクを説明するグラフである。
ここで、図5における正のトルクは、タービン部3により発電機7が回転駆動される場合に減速ギア部6にかかるトルクの値を示し、負のトルクは、発電機7によりタービン部3、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5が回転駆動される場合に減速ギア部6にかかるトルクの値を示している。
【0054】
発電設備1が起動されて昇温開始指令が入力される(T1)までは、タービン部3などが、例えば毎分約6000回転の定格回転数で回転駆動される。このとき、タービン部3に流入する作動流体の温度Tin、および、第2バイパス弁43の開度V2は、図4および図5に示すように、一定に制御されている。これにより、減速ギア部6にかかるトルクは、負の目標トルク−Qに制御されている。
【0055】
その後、発電設備1に昇温開始指令が入力(T1)されると、原子炉8の昇温が開始され、図4に示すように、原子炉8により加熱されタービン部3に流入する作動流体の温度Tinの昇温も開始される(ステップS1(昇温ステップ))。
同時に、第2プログラム制御部51は、第2バイパス弁43の開度V2を開く制御を行う(ステップS2(流量増加ステップ))。
【0056】
タービン部3に流入する作動流体の温度Tinが上昇すると、タービン部3において回転駆動力が発生する。その一方で、第2バイパス弁43が開かれることにより、高圧圧縮機5の吐出側から再生熱交換器21と冷却器22との間の循環流路9に還流する作動流体の流量が増加し、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5の駆動に必要なトルクは増加する。
減速ギア部6にかかるトルクの絶対値は、タービン部3における回転駆動力により減少する一方で、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5の駆動トルク増加により増加するため、全体的には図5に示すように増加する(図5において右下がりとなる)。
【0057】
第2バイパス弁43が開かれた後も、原子炉8の昇温は継続され、図4に示すように、タービン部3に流入する作動流体の温度Tinも上昇し続ける。
そのため、タービン部3において発生する回転駆動力も上昇し続け、図5に示すように、減速ギア部6にかかるトルクの絶対値はタービン部3に流入する作動流体の温度上昇にともない減少する(図5において右上がりとなる)。
【0058】
昇温開始指令が入力されてから所定時間が経過すると(T2)、減速ギア部6にかかるトルクは、目標トルク−Qになる。
ここで、第2プログラム制御部51は、第2バイパス弁43の開度V2を下げる制御を行う(ステップS3(流量減少ステップ))。
【0059】
第2バイパス弁43の開度V2が下げられると、高圧圧縮機5の吐出側から再生熱交換器21と冷却器22との間の循環流路9に還流する作動流体の流量が減少し、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5の駆動に必要なトルクは減少する。
減速ギア部6にかかるトルクは、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5の駆動に必要なトルクの減少により、素早く増加して負の所定トルク(所定値)−Q1から正の所定トルク(所定値)Q1の間を越える。
【0060】
ここで、図5における点線で示されたグラフは、第2バイパス弁43の開度を調節することなく、タービン部3に流入する作動流体温度Tinを上昇させた場合の減速ギア部6にかかるトルクの時間変化を示すものである。
図5に示されるように、第2プログラム制御部51により第2バイパス弁43の開度を制御することにより、減速ギア部6にかかるトルクが、正の第1所定トルクQ1から負の第1所定トルク−Q1の間に含まれる時間が短縮されている。
【0061】
なお、図5における正の第1所定トルクQ1から負の第1所定トルク−Q1の間の領域は、減速ギア部6にかかるトルクの値が小さく、減速ギア部6を構成する歯車等にフレッティングが生じる可能性が高い領域である。
【0062】
上記の構成によれば、タービン部3に流入する作動流体の温度Tinを上昇させる際に、バイパスする作動流体の流量を所定時間の間増加させ、その後にバイパスする作動流体の流量を減少させるため、減速ギア部6にかかるトルクの絶対値が所定トルク−Q1よりも0に近くなる時間を短縮できる。そのため、起動運転を行う際に、原子炉8に課せられた昇温レートなど、発電設備1に設けられた機器に課せられた制約を遵守しつつ、減速ギア部6にかかるトルクを制御することができる。
【0063】
さらに、バイパスする作動流体の流量のみを調整して、減速ギア部6にかかるトルクを制御するため、昇温レートが制限された原子炉8などの熱源を用いる発電設備1であっても、原子炉8に課せられた昇温レート等の制約を遵守しつつ、減速ギア部6にかかるトルクを制御することができる。
【0064】
〔第1の実施形態の変形例〕
次に、本発明の第1の実施形態の変形例について図6および図7を参照して説明する。
本変形例の発電設備の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、第1バイパス弁の制御が異なっている。よって、本実施形態においては、図6および図7を用いて第1バイパス弁の制御のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図6は、本変形例の発電設備における制御を説明するブロック図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0065】
本実施形態の発電設備101における制御部150には、図6に示すように、第2バイパス弁43の開度を制御する第2プログラム制御部51と、第1バイパス弁(流量調整部)36の開度を制御する第1プログラム制御部(制御部)151と、が設けられている。
第1プログラム制御部151は、昇温開始指令に基づいて、第1バイパス弁36の開度を制御するものである。
プログラム制御部151における第1バイパス弁36の開度制御については、以下に説明する。
【0066】
次に、本実施形態の特徴である発電設備101の起動時における制御について説明する。
なお、起動時には、第2プログラム制御部51および第1プログラム制御部151のそれぞれが第2バイパス弁43および第1バイパス弁36の開度を制御するが、第2プログラム制御部51による第2バイパス弁43の開度制御は、第1の実施形態における制御と同様であるので、その説明を省略する。
さらに、発電設備101における発電については、第1の実施形態における発電と同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
図7は、図6の発電設備の起動時におけるタービン部に流入する作動流体の温度の時間変化と、第1および第2バイパス弁開度の時間変化を説明するグラフである。なお、図7中のグラフV1は、第1バイパス弁36の開度を示し、グラフV2は第2バイパス弁43の開度を示すものである。
【0068】
発電設備101が起動されて昇温開始指令が入力される(T1)までは、タービン部3などが、例えば毎分約6000回転の定格回転数で回転駆動される。このとき、タービン部3に流入する作動流体の温度Tin、第1バイパス弁36の開度V1、および、第2バイパス弁43の開度V2は、図7に示すように、一定に制御されている。
【0069】
その後、発電設備101に昇温開始指令が入力(T1)されると、原子炉8の昇温が開始され、図7に示すように、原子炉8により加熱されタービン部3に流入する作動流体の温度Tinの昇温も開始される。
同時に、第1プログラム制御部151は、第1バイパス弁36の開度V2を開く制御を行う。
【0070】
第1バイパス弁36が開かれると、低圧圧縮機4から吐出され中間冷却器23を通過した冷媒の一部が、第1バイパス流路31を介して低圧圧縮機4の吸入側に還流される。言い換えると、低圧圧縮機4に圧縮される作動流体の流量が増加し、低圧圧縮機4の駆動に必要な駆動トルクが増加する(図1参照。)。
すると、電動機である発電機7と、低圧圧縮機4の間に配置された減速ギア部6にかかるトルクの絶対値も増加する。
【0071】
第1バイパス弁36および第2バイパス弁43が開かれた後も、原子炉8の昇温は継続され、図7に示すように、タービン部3に流入する作動流体の温度Tinも上昇し続ける。
そのため、タービン部3において発生する回転駆動力も上昇し続け、第1の実施形態と同様に、減速ギア部6にかかるトルクの絶対値はタービン部3に流入する作動流体の温度上昇にともない減少する。
【0072】
昇温開始指令が入力されてから所定時間が経過すると(T2)、減速ギア部6にかかるトルクは、目標トルク−Qになる。
ここで、第1プログラム制御部151および第2プログラム制御部51は、図7に示すように、それぞれ第1バイパス弁36の開度V1および第2バイパス弁43の開度V2を下げる制御を行う。
【0073】
第1バイパス弁36の開度V1が下げられると、低圧圧縮機4の吐出側から吸入側に還流する作動流体の流量が減少し、低圧圧縮機4の駆動に必要なトルクは減少する。
減速ギア部6にかかるトルクは、低圧圧縮機4および高圧圧縮機5の駆動に必要なトルクの減少により、素早く増加して負の所定トルク(所定値)−Q1から正の所定トルク(所定値)Q1の間を越える。
【0074】
上記の構成によれば、第1プログラム制御部51および第2プログラム制御部151を用いて、それぞれ第1バイパス弁36の開度V1および第2バイパス弁43の開度V2を制御することで、減速ギア部6にかかるトルクの制御が容易となる。
【0075】
つまり、第1および第2バイパス弁36,43の合計容量を、減速ギア部6にかかるトルク制御に用いることができるため、第1および第2バイパス弁43のいずれか一方を大型化、または、個数の増加をする必要がなくなる。そのため、減速ギア部6にかかるトルクの制御に用いられる操作端の変更や、追加が不要となり、発電設備101におけるイニシャルコストの増加を抑制することができる。
【0076】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図8から図10を参照して説明する。
本実施形態の発電設備の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、第2バイパス弁の制御方法が異なっている。よって、本実施形態においては、図8から図10を用いて第2バイパス弁の制御方法のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図8は、本実施形態に係る発電設備の構成を説明する模式図である。図9は、図8の発電設備における制御を説明するブロック図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0077】
本実施形態の発電設備201には、図8および図9に示すように、高圧圧縮機5における吸入側の作動流体圧力と、吐出側の作動流体圧力との圧力比を測定する第2圧力比測定部261と、タービン部3に流入する作動流体の温度を測定する温度測定部262と、修正回転数を算出する修正回転数演算部263と、がさらに設けられている。
【0078】
第2圧力比測定部261は、図8に示すように、高圧圧縮機5に吸入される作動流体の圧力と、高圧圧縮機5から吐出された作動流体の圧力との比を測定する測定部である。第2圧力比測定部261に測定された圧力比は、図9に示すように、制御部250の第2サージング制御部251に入力される。
【0079】
温度測定部262は、図8に示すように、タービン部3に流入する作動流体の温度を測定する測定部である。温度測定部262に測定された温度は、図9に示すように、修正回転数演算部263に入力される。
【0080】
修正回転数演算部263は、図9に示すように、温度測定部262から入力された温度Tiと、タービン部3の実回転数Nとに基づいて、下記の式により修正回転数N1を算出するものである。
N1=N/√(Ti)
修正回転数演算部263により算出された修正回転数N1は、第2サージング制御部251に入力される。
【0081】
さらに、本実施形態の発電設備201における制御部250には、図9に示すように、昇温開始指令が入力されてから経過した時間に基づいて第2バイパス弁43の開度V2を制御する第2プログラム制御部51と、高圧圧縮機5におけるサージングの発生を防止する吸入流量を算出し、第2バイパス弁43の開度V2を制御する第2サージング制御部251と、第2プログラム制御部51および第2サージング制御部(制御部)251から出力された制御信号のうち、第2バイパス弁43の開度V2が大きい制御信号を選択する第2選択部252と、が設けられている。
【0082】
第2サージング制御部251は、図9に示すように、第2圧力比測定部261から入力された圧力比と、修正回転数演算部263から入力された修正回転数N1とに基づいて、高圧圧縮機5におけるサージングの発生を防止する吸入流量を算出し、算出された吸入流量に基づいて第2バイパス弁43の開度V2を算出し、開度V2を制御する制御信号を出力するものである。
第2サージング制御部251から出力された制御信号は、第2選択部252に入力される。
【0083】
ここで、算出されるサージングの発生を防止する吸入流量は、高圧圧縮機5においてサージングが発生する吸入流量に、所定の余裕代(マージン)が上乗せされた流量である。そのため、算出される第2バイパス弁43の開度V2は、上述のマージンが上乗せされた流量の作動流体が高圧圧縮機5に流入する開度である。
【0084】
第2選択部252は、図9に示すように、フィードバック制御部51から入力された制御信号、および、第2サージング制御部251から入力された制御信号にかかる第2バイパス弁43の開度V2のうち、開度の大きな制御信号を選択するものである。
選択された制御信号は、第2選択部252から第2バイパス弁43に出力されている。
【0085】
次に、本実施形態の特徴である発電設備201の起動時における制御について説明する。
なお、起動時には、第2プログラム制御部51および第2サージング制御部251のそれぞれが第2バイパス弁43の開度V2を算出して制御信号を出力するが、第2プログラム制御部51による第2バイパス弁43開度V2の算出等は、第1の実施形態における場合と同様であるので、その説明を省略する。
さらに、発電設備201における発電については、第1の実施形態における発電と同様であるので、その説明を省略する。
【0086】
図10は、図9の発電設備の起動時における制御を説明するフローチャートである。
発電設備201の起動時には、図10に示すように、第2プログラム制御部51におけるバイパス流量の算出、および、第2バイパス弁43の開度V2の算出(ステップS21(第1算出ステップ))と、第2サージング制御部251におけるバイパス流量の算出、および、第2バイパス弁43の開度V2の算出(ステップS22(第2算出ステップ))と、がそれぞれ独立に行われる。
【0087】
制御部250の第2サージング制御部251には、図9に示すように、第2圧力比測定部261から高圧圧縮機5の吸入側および吐出側の作動流体の圧力比が入力され、かつ、修正回転数演算部263から修正回転数N1が入力される。
【0088】
第2サージング制御部251は、入力された圧力比および修正回転数N1に基づいて、高圧圧縮機5におけるサージングの発生を防止する吸入流量を算出する。第2サージング制御部251におけるサージングの発生を防止する流量は、予め第2サージング制御部251に記憶されたテーブル等に基づいて算出される。
第2サージング制御部251は、さらに、算出された吸入流量に基づいて第2バイパス弁43の開度V2を算出し、第2バイパス弁43の開度を制御する制御信号を第2選択部252に出力する。
【0089】
第2選択部252には、図9に示すように、第2サージング制御部251から第2バイパス弁43の開度V2を制御する制御信号が入力されるとともに、第2プログラム制御部51からも第2バイパス弁43の開度V2を制御する制御信号が入力される。
【0090】
第2選択部252は、入力された制御信号のうち、第2バイパス弁43の開度が大きな制御信号を選択し、選択した制御信号を第2バイパス弁43に出力する(ステップS23(選択ステップ))。
第2バイパス弁43は、入力された制御信号に基づいて開度V2が調節され、第2バイパス流路32を流れる作動流体の流量が調節される(ステップS24(流量調節ステップ))。
【0091】
上記の構成によれば、作動流体温度の上昇開始からの経過時間、つまり、昇温開始指令の入力から経過した時間に基づいたバイパス流量、および、高圧圧縮機5におけるサージングの発生を防止するバイパス流量のうち、流量が大きなバイパス流量を選択して、バイパスする作動流体の流量を選択したバイパス流量に調節するため、減速ギア部6にかかるトルクが目標トルクQおよび−Qよりも0に近づくこと、および、圧縮機におけるサージングの発生が防止される。
特に、外乱により高圧圧縮機5におけるサージングが発生しやすい状況となっても、高圧圧縮機5におけるサージングの発生を防止することができる。
【0092】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図11から図13を参照して説明する。
本実施形態の発電設備の基本構成は、第2の実施形態と同様であるが、第2の実施形態とは、第1バイパス弁の制御方法が異なっている。よって、本実施形態においては、図11から図13を用いて第1バイパス弁の制御方法のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図11は、本実施形態に係る発電設備の構成を説明する模式図である。図12は、図11の発電設備における制御を説明するブロック図である。
なお、第2の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0093】
本実施形態の発電設備301には、図11および図12に示すように、低圧圧縮機4における吸入側の作動流体圧力と、吐出側の作動流体圧力との圧力比を測定する第1圧力比測定部361がさらに設けられている。
【0094】
第1圧力比測定部361は、図11に示すように、低圧圧縮機4に吸入される作動流体の圧力と、低圧圧縮機4から吐出された作動流体の圧力との比を測定する測定部である。第1圧力比測定部361に測定された圧力比は、図12に示すように、制御部350の第1サージング制御部351に入力される。
【0095】
さらに、本実施形態の発電設備301における制御部350には、図12に示すように、昇温開始指令の入力から経過した時間に基づいて、第1バイパス弁36の開度V1を制御する第1プログラム制御部151と、低圧圧縮機4におけるサージングの発生を防止する吸入流量を算出し、第1バイパス弁36の開度V1を制御する第1サージング制御部(制御部)351と、プログラム制御部151および第1サージング制御部351から出力された制御信号のうち、第1バイパス弁36の開度が大きい制御信号を選択する第1選択部352と、が設けられている。
【0096】
第1サージング制御部351は、図12に示すように、第1圧力比測定部361から入力された圧力比と、修正回転数演算部263から入力された修正回転数N1とに基づいて、低圧圧縮機4におけるサージングの発生を防止する吸入流量を算出し、算出された吸入流量に基づいて第1バイパス弁36の開度V1を算出し、開度を制御する制御信号を出力するものである。
第1サージング制御部351から出力された制御信号は、第1選択部352に入力される。
【0097】
ここで、算出されるサージングの発生を防止する吸入流量は、低圧圧縮機4においてサージングが発生する吸入流量に、所定の余裕代(マージン)が上乗せされた流量である。そのため、算出される第1バイパス弁36の開度V1は、上述のマージンが上乗せされた流量の作動流体が低圧圧縮機4に流入する開度である。
【0098】
第1選択部352は、図12に示すように、プログラム制御部151から入力された制御信号、および、第1サージング制御部351から入力された制御信号にかかる第1バイパス弁36の開度V1のうち、開度の大きな制御信号を選択するものである。
選択された制御信号は、第1選択部352から第1バイパス弁36に出力されている。
【0099】
次に、本実施形態の特徴である発電設備301の起動時における制御について説明する。
発電設備301の起動時には、第2の実施形態と同様に、第2選択部252に第2プログラム制御部51および第2サージング制御部251から第2バイパス弁43の開度V2を制御する信号が入力され、第2選択部252により選択された制御信号が第2バイパス弁43に入力されている。
【0100】
図13は、図11の発電設備の起動時における制御を説明するフローチャートである。
上述の第2バイパス弁43の開度制御と同時に、図13に示すように、第2プログラム制御部151におけるバイパス流量の算出、および、第1バイパス弁36の開度V1の算出(ステップS31(第1算出ステップ))と、第1サージング制御部351におけるバイパス流量の算出、および、第1バイパス弁36の開度V1の算出(ステップS32(第2算出ステップ))と、がそれぞれ独立に行われる。
【0101】
制御部350の第1サージング制御部351には、図12に示すように、第1圧力比測定部361から低圧圧縮機4の吸入側および吐出側の作動流体の圧力比が入力され、かつ、修正回転数演算部263から修正回転数N1が入力される。
【0102】
第1サージング制御部351は、入力された圧力比および修正回転数N1に基づいて、低圧圧縮機4におけるサージングの発生を防止する吸入流量を算出する。第1サージング制御部351におけるサージングの発生を防止する流量は、予め第1サージング制御部351に記憶されたテーブル等に基づいて算出される。
第1サージング制御部351は、さらに、算出された吸入流量に基づいて第1バイパス弁36の開度V1を算出し、第1バイパス弁36の開度を制御する制御信号を第1選択部352に出力する。
【0103】
第1選択部352には、図12に示すように、第1サージング制御部351から第1バイパス弁36の開度V1を制御する制御信号が入力されるとともに、プログラム制御部151からも第1バイパス弁36の開度V1を制御する制御信号が入力される。
【0104】
第1選択部352は、入力された制御信号のうち、第1バイパス弁36の開度が大きな制御信号を選択し、選択した制御信号を第1バイパス弁36に出力する(ステップS33(選択ステップ))。
第1バイパス弁36は、入力された制御信号に基づいて開度が調節され、第1バイパス流路31を流れる作動流体の流量が調節される(ステップS34(流量調節ステップ))。
【0105】
上記の構成によれば、昇温開始指令が入力されてから経過した時間に基づいたバイパス流量、および、低圧圧縮機4におけるサージングの発生を防止するバイパス流量のうち、流量が大きなバイパス流量を選択して、バイパスする作動流体の流量を選択したバイパス流量に調節するため、減速ギア部6にかかるトルクが目標トルクQおよび−Qよりも0に近づくこと、および、低圧圧縮機4においてサージングが発生することを防止することができる。
特に、外乱により低圧圧縮機4におけるサージングが発生しやすい状況となっても、低圧圧縮機4におけるサージングの発生を防止することができる。
【0106】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態では、圧縮機が2段、つまり低圧圧縮機4および高圧圧縮機5から構成されている例に適用して説明したが、圧縮機は1段であってもよいし、3段以上のものであってもよく、特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0107】
1,101,201,301 発電設備(タービン設備)
3 タービン部
4 低圧圧縮機(圧縮部)
5 高圧圧縮機(圧縮部)
6 減速ギア部(減速部)
7 発電機(電動機)
8 原子炉(熱源部)
9 循環流路
31 第1バイパス流路(バイパス流路)
32 第2バイパス流路(バイパス流路)
43 第2バイパス弁(流量調整部)
51 第2プログラム制御部(制御部)
151 第1プログラム制御部(制御部)
251 第2サージング制御部(制御部)
351 第1サージング制御部(制御部)
S1 昇温ステップ
S2 流量増加ステップ
S3 流量減少ステップ
S21,S31 第1算出ステップ
S22,S32 第2算出ステップ
S23,S33 選択ステップ
S24,S34 流量調節ステップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を圧縮する圧縮部と、
圧縮された前記作動流体を加熱する熱源部と、
加熱された前記作動流体により回転駆動されるタービン部と、
少なくとも前記圧縮部、前記熱源部および前記タービン部の間で前記作動流体を循環させる循環流路と、
を有するタービン設備の制御方法であって、
タービン部に流入する作動流体の温度を上昇させる昇温ステップと、
前記熱源部により前記タービン部に流入する作動流体の温度を上昇させる際に、前記圧縮部の吐出側から吸入側にバイパスする前記作動流体の流量を増加させる流量増加ステップと、
前記バイパスする作動流体の流量の増加から所定時間経過後に、前記バイパスする作動流体の流量を減少させる流量減少ステップと、
を有することを特徴とするタービン設備の制御方法。
【請求項2】
前記流量増加ステップおよび前記流量減少ステップにおける前記バイパスする作動流体の流量を、前記作動流体温度の上昇開始からの経過時間に基づいて算出する第1算出ステップと、
前記圧縮機の吸入側および吐出側の間の圧力比と、記圧縮機に吸入される前記作動流体の温度に基づいて算出された前記圧縮機の修正回転数とに基づいて、前記圧縮機においてサージングの発生防止に必要なバイパス流量を算出する第2算出ステップと、
前記第1および第2算出ステップにより算出された前記バイパス流量のうち、流量の大きなバイパス流量を選択する選択ステップと、
前記圧縮部の吐出側から吸入側にバイパスする前記作動流体の流量を、前記選択されたバイパス流量に調節する流量調節ステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のタービン設備の制御方法。
【請求項3】
作動流体を圧縮する圧縮部と、
前記作動流体により回転駆動されるタービン部と、
少なくとも前記圧縮部および前記タービン部の間で前記作動流体を循環させる循環流路と、
前記圧縮部の吐出側から吸入側に前記作動流体をバイパスさせるバイパス流路と、
該バイパス流路を流れる前記作動流体の流量を調整する流量調整部と、
起動時に減速部を介して前記圧縮部および前記タービン部を回転駆動する電動機と、
請求項1または請求項2に記載の制御方法を行う制御部と、
が設けられていることを特徴とするタービン設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−524957(P2011−524957A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501452(P2011−501452)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/JP2009/056931
【国際公開番号】WO2009/119917
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】