説明

ターボチャージャ用ノズルベーン開度規制ストッパ構造

【課題】ノズルベーンの全開側または全閉側の開度調整作業が容易に行えるターボチャージャのノズルベーン開度規制ストッパ構造を提供する。
【解決手段】ストッパ30は、アクチュエータブラケット43に取り付けられた遮熱板44に設けられるナット受け部44aと、遮熱板44に対して移動するアクチュエータロッド26に設けられる可動側ストッパ部33とからなり、アクチュエータ27は、その駆動力を発生させるアクチュエータ本体41と、このアクチュエータ本体41の駆動力を伝達するアクチュエータロッド26とから構成され、可動側ストッパ部33は、アクチュエータ本体41からノズルベーン側へ延びるアクチュエータロッド26に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルベーンの全開側または全閉側の開度を規制するとともに該全開側または全閉側の開度を調整可能なターボチャージャ用ベーン開度規制ストッパ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用エンジン等に用いられるターボチャージャでは、エンジンの排気ガスを、タービンハウジングに形成されたスクロール内に充填し、このスクロールの内周側に設けられた複数のノズルベーンを通じてこれらのノズルベーンの内周側に設けられたタービンホイールに作用させる構造が採用されている。
【0003】
複数のノズルベーンは、2枚の環状のプレート間に形成された排気ガス通路にアクチュエータによって開度(翼角)が変更可能に設けられた可変ノズル機構に含まれる。
この可変ノズル機構によって、エンジン回転数に応じて複数のノズルベーンの開度が変更されると、2枚のプレート間の排気ガス通路を流れる排気ガスの流速が変化し、タービンホイールの回転数が変化する。
【0004】
例えば、エンジン回転数が低速域の状態からエンジン回転数を上げて加速を行う場合には、ノズルベーンの開度を全閉に近い状態にして排気ガスの流路を狭めることにより排気ガスの流速を高めてタービンホイールの回転数を上昇させる必要がある。
このようなノズルベーンの全閉側の開度の規制と全閉側の開度の調整とにストッパ構造が必要になる。
【0005】
上記した従来のターボチャージャ用ノズルベーン開度規制ストッパ構造として、図8に示すように、ターボチャージャを構成するタービンホイールの回転軸を回転自在に支持するベアリングハウジングに、ノズルベーンの開度を規制するとともに開度を調整可能なストッパ構造を設けたものが知られている。
【0006】
図8において、ターボチャージャ100は、タービンホイールを回転自在に収容するタービンハウジング102と、このタービンハウジング102に取付けられるとともにタービンホイールの回転軸を回転自在に支持するベアリングハウジング103と、タービンホイールに流れ込む排気ガスの流速を複数のノズルベーンにより調整する可変ノズル機構105とを備える。
【0007】
可変ノズル機構105は、複数のノズルベーンの開度を一括して調整するために支軸111に取付けられたレバー112と、このレバー112の先端部にピン113を介して連結された連結機構114と、この連結機構114に連結されたロッド116を備えるアクチュエータ117と、前記レバー112の揺動角度を規制するためにベアリングハウジング102に一体に形成された延出部121と、この延出部121にねじ込まれたストッパボルト122と、このストッパボルト122を延出部121に固定するロックナット123とを備える。
【0008】
ストッパボルト122の作用としては、アクチュエータ117が作動してロッド116が図の右斜め下方に引かれると、連結機構114が図の右斜め下方に移動し、連結機構114に連結されたレバー112が支軸111を中心にして時計回りに揺動し、レバー112がストッパボルト122の先端に当たってレバー112のそれ以上の揺動が規制される。即ち、ノズルベーンの全閉側の開度が規制される。
【0009】
ノズルベーンの全閉側の開度を調整するには、ロックナット123を緩め、ストッパボルト122を回し、延出部121に対してストッパボルト122の先端122aを前進又は後退させる。この結果、レバー112がストッパボルト122の先端122aに当たるまでの揺動角が変化し、ノズルベーンの全閉側の開度が変更される。
【0010】
また、複数のノズルベーンの開度を同期させて変更するための同期機構が設けられたターボチャージャが知られている(例えば、特許文献1参照。)
特許文献1の図1によれば、ターボチャージャ1には、複数のノズルベーン53を同期して回転させるための同期機構6が設けられている。同期機構6は、その駆動源となるアクチュエータ70を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−90714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図8に示したストッパ構造では、ベアリングハウジング103の紙面表側にコンプレッサハウジングが取付けられ、ストッパボルト122によりノズルベーンの全閉側の開度を調整する場合には、ベアリングハウジング103、アクチュエータ117及びコンプレッサハウジングなどの大きな部品で囲まれて奥まった狭いスペースでストッパボルト122やロックナット123を回さなければならず、調整作業がやりにくい。
【0013】
また、特許文献1では、ノズルベーン53の全閉側の開度を規制する又は調整するためのストッパ構造が記載されていないため、ノズルベーン53を全閉側でわずかに開いた状態を維持することが難しく、エンジンの低速回転域からの加速性能を向上させるのは難しい。
【0014】
本発明の目的は、ノズルベーンの全開側または全閉側の開度調整作業が容易に行えるターボチャージャのノズルベーン開度規制ストッパ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、かかる目的を達成するため、アクチュエータによりノズルベーンの開度を変更することでタービンホイールへ流れる排気ガスの流速を変更可能な可変ノズル機構と、前記ノズルベーンの全開側又は全閉側の開度を規制するとともに該ノズルベーンの全開側または全閉側の開度を調整可能なストッパとを備え、前記ストッパは、前記アクチュエータをターボチャージャ本体に取り付けるアクチュエータブラケットに設けられた固定側ストッパ部と、該固定ブラケットに対して移動する可動部に設けられるとともに前記固定側ストッパ部に当接可能な可動側ストッパ部とから構成され、前記アクチュエータは、その駆動力を発生させるアクチュエータ本体と、このアクチュエータ本体の駆動力を伝達するロッドとから構成され、前記可動側ストッパ部は、前記アクチュエータ本体から前記ノズルベーン側へ延びて進退する前記ロッドに設けられていることを特徴とする。
【0016】
従来のように、例えば、ベアリングハウジングに突出部が設けられ、この突出部に設けられたストッパボルトでノズルベーンの全閉側の開度を規制する場合は、ストッパボルトがベアリングハウジングに近い狭い位置に設けられるので、ストッパボルトを回してノズルベーンの全閉側の開度の調整作業を行う際に、ストッパボルトのロックナットやストッパボルト自体が回しにくくなる。
【0017】
これに対して本発明のように、可動側ストッパ部をアクチュエータのロッドに設けることで、ベアリングハウジングやタービンハウジングから離れた広いスペースでストッパによってノズルベーンの全開側または全閉側の開度を調整しやすくすることができる。
【0018】
従って、調整作業時間の短縮、高精度な調整が可能になる。更に、従来のように、ベアリングハウジングにストッパボルトを取付ける突出部を形成する必要がなくなって、ベアリングハウジングが軽量になり、また、ベアリングハウジングの形状がより単純になって容易に製造することができる。
【0019】
また、本発明において好ましくは、前記可動側ストッパ部は、前記ロッドに設けられたナットであり、前記固定側ストッパ部は、前記アクチュエータに熱が伝わらないように前記アクチュエータブラケットに取付けられた遮熱板であるとよい。
【0020】
このように、ベアリングハウジング等の鋳物にストッパを設けるのに比べて、アクチュエータブラケット又は遮熱板等の鋼板にストッパを設けることで、製造が容易になり、コストを削減することができる。
【0021】
また、本発明において好ましくは、前記遮熱板は前記アクチュエータを前記アクチュエータブラケットへ固定するボルトによってアクチュエータブラケットに供締めされて取り付けられるとともに、該遮熱板を貫通するように設けられた前記ロッドの貫通穴の周縁部によって前記ナットのナット受け部が形成されるとよい。
【0022】
このように構成することによって、遮熱板に形成れる貫通穴を用いて固定側ストッパ部を形成するので、新たな部材を設ける必要がなく構造簡単に、且つ軽量コンパクトに製造できる。
【0023】
また、本発明において好ましくは、前記ロッドの先端部と前記ノズルベーン側とが長さ調整可能な連結機構で連結され、前記可動側ストッパ部は、前記連結機構を構成するボディに長さ調整可能にねじ結合される調整ボルトからなり、前記固定側ストッパ部は、前記アクチュエータブラケットに一体に形成されたストッパ片からなるとよい。
【0024】
かかる構成によれば、ストッパを、アクチュエータとノズルベーン側との中間部に配置することができ、ストッパによるノズルベーンの全閉側の開度の調整をより広いスペースで行うことができるため、作業性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明において好ましくは、前記ロッドの先端部と前記ノズルベーン側とが長さ調整可能な連結機構で連結され、前記可動側ストッパ部は、前記アクチュエータブラケットに長さ調整可能にねじ結合された調整ボルトからなり、前記固定側ストッパ部は、前記連結機構を構成するボディに形成された当て板からなるとよい。
【0026】
かかる構成によれば、ストッパを、アクチュエータとノズルベーン側との中間部に配置することができ、ストッパによるノズルベーンの全閉側の開度の調整をより広いスペースで行うことができるため、作業性を向上させることができる。
また、可動側ストッパ部に設けられる突出部には、ストッパのためのボルト等が取付けられていないため、可動側ストッパ部が軽量になり、アクチュエータが作動したときのノズルベーンの開度変化の応答性を向上させることができる。
このストッパはノズルベーン全開側の開度調整用として配しても良い。
【発明の効果】
【0027】
以上記載のごとく本発明によれば、ストッパは、アクチュエータをターボチャージャ本体に取り付けるアクチュエータブラケットに設けられた固定側ストッパ部と、該固定ブラケットに対して移動する可動部に設けられるとともに固定側ストッパ部に当接可能な可動側ストッパ部とから構成され、アクチュエータは、その駆動力を発生させるアクチュエータ本体と、このアクチュエータ本体の駆動力を伝達するロッドとから構成され、可動側ストッパ部が、アクチュエータ本体からノズルベーン側へ延びて進退する前記ロッドに設けられているので、ベアリングハウジングやタービンハウジングから離れた広いスペースでストッパによってノズルベーンの全閉側または全開側の開度を調整しやすくすることができる。
【0028】
従って、調整作業時間の短縮、高精度な調整が可能になる。更に、従来のように、ベアリングハウジングにストッパボルトを取付ける突出部を形成する必要がなくなって、ベアリングハウジングが軽量になり、また、ベアリングハウジングの形状がより単純になって容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るターボチャージャのノズルベーン開度規制ストッパ構造(第1実施形態)を示す側面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】本発明に係る可変ノズル機構の一部を示す断面図(第1実施形態)である。
【図4】本発明に係るノズルベーン開度規制ストッパ構造の作用を示す説明図(第1実施形態)である。
【図5】本発明に係るノズルベーンの開度の変化を示す説明図であり、(a)はアクチュエータ作動前のノズルベーンの開度が大きい状態を示し、(b)はアクチュエータ作動後のノズルベーンの開度が全閉側で規制された状態を示す。
【図6】本発明に係るノズルベーン開度規制ストッパ構造(第2実施形態)を示す側面図である。
【図7】本発明に係るノズルベーン開度規制ストッパ構造(第3実施形態)を示す側面図である。
【図8】従来のノズルベーン開度規制ストッパ構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0031】
(第1実施形態)
図1に示すように、ターボチャージャ10は、タービンホイールを回転自在に収容するタービンハウジング12と、このタービンハウジング12に取付けられるとともにタービンホイールの回転軸を回転自在に支持するベアリングハウジング13と、このベアリングハウジング13のタービンハウジング12とは反対側(紙面の表側)に取付けられるコンプレッサハウジング(不図示)と、タービンホイールに流れ込む排気ガスの流速を複数のノズルベーンにより調整可能な可変ノズル機構15とを備える。
【0032】
上記可変ノズル機構15のうち、外部に配置されるアクチュエータ側組立体16は、ノズルベーン側に連結されてベアリングハウジング13に回動自在に支持された支軸21と、この支軸21に一端が取付けられたアウタレバー22と、このアウタレバー22の他端に連結ピン23を介して連結された長さ調整可能な連結機構24と、この連結機構24に連結されたアクチュエータロッド26を備えるアクチュエータ27とからなる。
【0033】
アクチュエータロッド26は、複数のノズルベーンの開度を全閉側で規制するとともに複数のノズルベーンの開度を全閉側で調整するストッパ30の一部を構成するフランジ付きナット31及びこのフランジ付きナット31をアクチュエータロッド26に固定するロックナット32が取付けられている。
【0034】
フランジ付きナット31は、一側面にフランジ31aが一体成形されている。
これらのフランジ付きナット31及びロックナット32は、可動側ストッパ部33を構成している。
【0035】
連結機構24は、一端が連結ピン23を介してアウタレバー22に連結されたボディ35と、このボディ35に形成された窓部35a内に回転自在に配置されたアジャストナット36と、おねじ26aが形成されたアクチュエータロッド26にボディ35を固定するためのロックナット37とからなる。
【0036】
ボディ35は、おねじ26aが挿入されるおねじ挿通穴35bが形成されている。
アジャストナット36は、ボディ35のおねじ挿通穴35bに挿入されたおねじ26aがねじ結合されている。
【0037】
従って、ロックナット37を緩め、アジャストナット36を回転させることでボディ35のおねじ挿通穴35bに対するおねじ26aの挿入量が変化し、ボディ35の先端部、即ち連結ピン23の位置を、アクチュエータロッド26の軸方向に移動させることができる。この結果、アウタレバー22の初期位置、即ちノズルベーンの初期翼角を変更することができる。
【0038】
アクチュエータ27は、アクチュエータ本体41と、このアクチュエータ本体41内から外部に延びるアクチュエータロッド26とからなる。
アクチュエータ本体41は、ケース42(図3参照)と、このケース42内を2室に区画するように設けられたゴム製のダイアフラム(不図示)とからなり、このダイアフラムにアクチュエータロッド26が取付けられている。
【0039】
また、アクチュエータ本体41は、タービンハウジング12に固定された鋼板製のアクチュエータブラケット43に取付けられ、このアクチュエータブラケット43に、タービンハウジング12から放射される熱がアクチュエータ本体41に当たらないように遮る遮熱板44が取付けられている。
【0040】
遮熱板44は、ストッパ30の一部を構成する固定側ストッパ部としてのナット受け部44aが突出形成され、このナット受け部44aと、上記した可動側ストッパ部33(フランジ付きナット31及びロックナット32)とはストッパ30を構成している。
【0041】
ここで、フランジ付きナット31のフランジ31aと遮熱板44のナット受け部44aとの距離をLとする。ロックナット32を緩め、フランジ付きナット31を回して距離Lを変更することで後で詳述するノズルベーンの最小開度を調整することができる。
【0042】
図2に示すように、ターボチャージャ10は、タービンホイール11を回転自在に収容するタービンハウジング12と、タービンホイール11の回転軸(不図示。符号11aはタービンホイール11の回転軸の軸線である。)を回転自在に支持するとともにタービンハウジング12に隣接して取付けられたベアリングハウジング13と、タービンホイール11へ流れ込む排気ガスの流速を調整するためにタービンハウジング12及びベアリングハウジング13のそれぞれの間に且つそれぞれの内側に配置されたノズル組立体17とを備える。なお、符号46はタービンハウジング12及びノズル組立体17のそれぞれの間をシールするシールリング、47はタービンハウジング12とベアリングハウジング13との間をシールするシールリング、48はベアリングハウジング13とノズル組立体17(詳しくは、ノズルマウント51)との間をシールする皿ばね状のバックプレートである。
上記シールリング46,47の断面にはハッチングを施さず、黒塗りとしている(以下同様)。
【0043】
タービンホイール11は、回転軸の一端部に設けられたハブ11bと、このハブ11bの外周面に設けられた複数のタービン翼11cとからなる。
タービンハウジング12は、タービンホイール11の排気ガス下流側に設けられた排気ガス排出口12aを形成する筒状の内周壁12bと、この内周壁12bを囲むように内周壁12bの半径方向外側に形成された筒状の外周壁12cと、内周壁12bの中間部から半径方向外側に延びて外周壁12cの一端部に繋がる環状壁12dとからなる。
【0044】
ベアリングハウジング13は、タービンホイール11の回転軸を支持する筒状の内周壁13aと、この内周壁13aから半径方向外側に立ち上がる環状壁13bと、この環状壁13bの外周縁に繋がる筒状の外周壁13cとを備える。
【0045】
ノズル組立体17は、タービンハウジング12の外周壁12cに形成された内方突出フランジ部12f及びベアリングハウジング13の外周壁13cのそれぞれに挟まれて固定された環状のノズルマウント51と、このノズルマウント51に周方向に並ぶように且つ回動自在に取付けられた複数のノズル52と、これらのノズル52の一端部にそれぞれ一端が取付けられたレバープレート53と、これらのレバープレート53の他端にそれぞれ設けられた係合凸部53aに係合する溝部54aを外周部に複数有するとともに内周部がノズルマウント51の小径部51aに回転自在に嵌合するドライブリング54と、ノズル52を構成するノズルベーン52aをノズルマウント51とで挟み込むようにノズルマウント51に取付けられた環状のノズルプレート56とからなる。
上記ドライブリング54は、外周部に1つの切欠き部が形成され、この切欠き部に支軸21(図1参照)の内側端部に設けられたアーム部が係合している。
【0046】
上記のアクチュエータ側組立体16(図1参照)とノズル組立体17とは、可変ノズル機構15を構成している。
アクチュエータ27(図1参照)を作動させてドライブリング54を回動させることで、各レバープレート53がノズルマウント51に対して一定の方向に揺動し、ノズル52が回動することで、ノズルベーン52aの翼角が変化する。
【0047】
ノズル52は、上記のノズルベーン52aと、このノズルベーン52aの回動軸となるノズル軸52bと、ノズル52の軸方向位置を規制するフランジ52cとが一体成形された部品であり、ノズル軸52bは、ノズルマウント51に開けられた軸受穴部51bに回動自在に嵌合し、ノズル軸52bの端部にレバープレート53が加締め固定されている。
【0048】
ノズルプレート56は、環状のプレート部56aと、このプレート部56aの内周端からタービンホイール11のタービン翼11cの外形に沿って且つ所定の隙間を保ってタービンホイール11の軸方向に延びる筒状部56bとからなる一体成形品である。
【0049】
ノズルマウント51とノズルプレート56とは、排気ガスが流れる排気ガス通路61を形成し、この排気ガス通路61は、排気ガスが、タービンハウジング12に渦巻き状に形成されたスクロール62からタービンホイール11に流れる途中の通路として形成されている。
【0050】
従って、排気ガス通路61に設けられたノズルベーン52aの翼角を可変ノズル機構15により変化させることで、タービンホイール11に作用する排気ガスの流速を変更することが可能になり、ターボチャージャ10に備えるコンプレッサの過給圧を制御することができる。
【0051】
図3に示すように、連結機構24のボディ35は、薄板状に形成されて連結ピン23(図1参照)に連結される平板部35dと、この平板部35dから円柱状に膨出された円柱部35eとが一体成形され、円柱部35e内におねじ挿通穴35bが形成されている。
【0052】
アクチュエータ27のアクチュエータ本体41に備えるケース42に、ボルト66,66及びナット67,67でアクチュエータブラケット43及び遮熱板44が共締めされている。なお、符号41aはアクチュエータ本体41内に負圧を取り込む負圧導入口である。
【0053】
遮熱板44は、アクチュエータブラケット43に隣接する基部プレート部44bと、この基部プレート部44bから立ち上げられた環状のテーパ部44cと、このテーパ部44cの先端部に形成された平坦なナット受け部44aとを備える。
ナット受け部44aは、アクチュエータロッド26が貫通する貫通穴44eが形成され、アクチュエータロッド26に直交するように形成された平坦部である。
【0054】
以上に述べたストッパ30の作用を次に説明する。
図1の状態で、アクチュエータ本体41内に負圧を導入すると、アクチュエータ本体41内のダイアフラムが移動し、これに伴ってダイアフラムに取付けられたアクチュエータロッド26が、図4に示すように、矢印Aの向きに引かれ、フランジ付きナット31のフランジ31aが遮熱板44のナット受け部44aに当たってアクチュエータロッド26の移動が停止する。
【0055】
この結果、連結機構24及び連結ピン23も移動して、アウタレバー22が、矢印Bで示すように、支軸21を中心にして想像線で示す位置から実線で示す位置まで角度θだけ揺動する。これにより、支軸21も角度θだけ回動し、これに伴って、図2において、タービンハウジング12及びベアリングハウジング13の内側に配置されたノズル組立体17を構成するドライブリング54が回動し、各レバープレート53が一斉に揺動し、各ノズル52が回動し、ノズルベーン52aの開度が小さくなる。
【0056】
即ち、図5(a)に示すように、アクチュエータが作動前には、各ノズルベーン52aの開度(図中の符号α1はノズルベーン52aが完全に閉じた時の開度(翼角)をゼロとしたときの開度である。)は大きい状態にあり、隣り合うノズルベーン52a間の流路面積(図中の符号C1はノズルベーン52a間のクリアランスである。)は大きい。
【0057】
アクチュエータを作動させると、図5(a)の状態から図5(b)に示すように、各ノズルベーン52aが矢印で示すごとく反時計回りに回動し、各ノズルベーン52aの開度(図中の符号α2はノズルベーン52aが完全に閉じた時の開度(翼角)をゼロとしたときの開度であり、α2<α1である。)は全閉に近い状態に小さくなり、隣り合うノズルベーン52a間の流路面積(図中の符号C2はノズルベーン52a間のクリアランスであり、C2<C1である。)は最小になる。この結果、隣り合うノズルベーン52a間を流れる排気ガスの流速が大きくなり、タービンホイールの回転数が上昇する。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態に関し、第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図6に示すように、連結ピン23とアクチュエータロッド26とを連結する連結機構70は、一端が連結ピン23を介してアウタレバー22に連結されたボディ71と、このボディ71に形成された窓部35a内に回転自在に配置されたアジャストナット36と、アクチュエータロッド26にボディ71を固定するロックナット37と、ボディ71にアクチュエータロッド26と平行に配置されるようにねじ結合されたストッパボルト73と、このストッパボルト73をボディ71に固定するロックナット74とからなる。
【0059】
上記のストッパボルト73及びロックナット74は、複数のノズルベーンの開度を全閉側で規制するとともに複数のノズルベーンの開度を全閉側で調整するストッパ75の一部となる可動側ストッパ部77を構成している。
【0060】
ボディ71は、薄板状に形成されて連結ピン23に連結された平板部71cと、この平板部71cから共に円柱状に膨出されるとともに平行に配置された2つの円柱部35e,71eとが一体成形され、円柱部35e内におねじ26aが挿入されるおねじ挿通穴35bが形成され、円柱部71e内にストッパボルト73のおねじ73aがねじ込まれるめねじ71hが形成されている。
【0061】
アクチュエータ本体41を支持するためにタービンハウジング12に取付けられたアクチュエータブラケット76は、ストッパボルト73の頭部73cに対向する位置にストッパ片76aが一体成形されている。
【0062】
ストッパ片76aは、複数のノズルベーンの開度を全閉側で規制するとともに複数のノズルベーンの開度を全閉側で調整するストッパ75の一部となる固定側ストッパ部であり、アクチュエータ27が作動し、アクチュエータロッド26がアクチュエータ本体41に引き込まれたときに連結機構70のストッパボルト73の頭部73cが当たる部分である。
【0063】
上記した可動側ストッパ部77とストッパ片76aとは、ストッパ75を構成し、ストッパボルト73の頭部73cがストッパ片76aに当たることで、ノズルベーン52a(図5(b)参照)の最小開度を規制することができる。
【0064】
ここで、ストッパボルト73の頭部73cとストッパ片76aとの距離をLとする。ロックナット74を緩め、ストッパボルト73を回して距離Lを変更することで、図5(a),(b)に示したように、ノズルベーンの最小開度を調整することができる。
【0065】
(第3実施形態)
第3実施形態に関し、第1実施形態、第2実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図7に示すように、連結ピン23とアクチュエータロッド26とを連結する連結機構80は、一端が連結ピン23を介してアウタレバー22に連結されたボディ81と、このボディ81に形成された窓部35a内に回転自在に配置されたアジャストナット36と、アクチュエータロッド26にボディ81を固定するロックナット37とからなる。
【0066】
ボディ81は、薄板状に形成されて連結ピン23に連結された平板部81cと、この平板部81cに形成された側方突出部81dに備える当て板82と、平板部81cから一体に円柱状に膨出された円柱部35eとからなる。
側方突出部81dは、複数のノズルベーンの開度を全閉側で規制するとともに複数のノズルベーンの開度を全閉側で調整するストッパ90の一部となる可動側ストッパ部である。
【0067】
アクチュエータ本体41を支持するためにタービンハウジング12に取付けられたアクチュエータブラケット84は、連結機構80の当て板82に対向する位置に突出片84aが一体成形され、この突出片84aに、当て板82に当たることで連結機構80の移動を規制するストッパ部86が設けられている。
【0068】
ストッパ部86は、突出片84aに形成されためねじにおねじ87aがねじ結合されるとともに頭部87bが当て板82に対向するように配置されたストッパボルト87と、このストッパボルト87を突出片84aに固定するロックナット88とからなり、複数のノズルベーンの開度を全閉側で規制するとともに複数のノズルベーンの開度を全閉側で調整するストッパ90の一部となる固定側ストッパ部である。
【0069】
ストッパボルト87の頭部87bに当たる当て板82は、例えば、ボディ81が鋳造製である場合に、鋳物よりも硬度が高い鋼板製とされ、頭部87bとの当接による当て板82の摩耗が抑えられる。
上記した側方突出部81dとストッパ部86とは、ストッパ90を構成している。
【0070】
アクチュエータ27が作動し、アクチュエータロッド26がアクチュエータ本体41に引き込まれたときに、連結機構80の当て板82がストッパボルト87の頭部87bに当たることで、ノズルベーン52a(図5(b)参照)の最小開度を規制することができる。
【0071】
ここで、連結機構80の当て板82とストッパボルト87の頭部87bとの距離をLとする。ロックナット88を緩め、ストッパボルト87を回して距離Lを変更することで図5(a),(b)に示したように、ノズルベーンの最小開度を調整することができる。
【0072】
尚、第1実施形態では、図3に示したように、遮熱板44に形成されたナット受け部44aを固定側ストッパ部としたが、これに限らず、アクチュエータブラケット43に突出部を形成し、この突出部を固定側ストッパ部としてもよい。
また、第1実施形態〜第3実施形態は、アクチュエータのロッドがストロークして短くなった際にベーン開度が全閉になる形態での全閉側の開度を規制するものであるが、アクチュエータのロッドがストロークして長くなった際にベーン開度が全開になる形態での全開側の開度を規制するようにしてもよい。
【0073】
すなわち、第1実施形態では可動側ストッパ部33の位置を遮熱板44の固定側ストッパ部44a対して反対側(図3において固定側ストッパ部44aの右側)に位置させ、また、第2実施形態では可動側ストッパ部77とストッパ片76aの配置関係(図6参照)を逆にし、第3実施形態ではストッパ部86と当て板82との配置関係(図7参照)を逆にして全開側の開度を規制してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、可変ノズル機構の駆動源としてのアクチュエータにロッドを備えるターボチャージャに好適である。
【符号の説明】
【0075】
10 ターボチャージャ
13 ベアリングハウジング
15 可変ノズル機構
24,70,80 連結機構
26 ロッド(アクチュエータロッド)
26a おねじ
27 アクチュエータ
30,75,90 ストッパ
33,77,81d 可動側ストッパ部
35,71,81 ボディ
35b おねじ挿通穴
36 アジャストナット
32,37,74,88 ロックナット
41 アクチュエータ本体
43,76,84 アクチュエータブラケット
44 遮熱板
44a,76a,86 固定側ストッパ部
52a ノズルベーン
73,87 調整ボルト(ストッパボルト)
α1,α2 ノズルベーンの開度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータによりノズルベーンの開度を変更することでタービンホイールへ流れる排気ガスの流速を変更可能な可変ノズル機構と、前記ノズルベーンの全開側又は全閉側の開度を規制するとともに該ノズルベーンの全開側または全閉側の開度を調整可能なストッパとを備え、前記ストッパは、前記アクチュエータをターボチャージャ本体に取り付けるアクチュエータブラケットに設けられた固定側ストッパ部と、該固定ブラケットに対して移動する可動部に設けられるとともに前記固定側ストッパ部に当接可能な可動側ストッパ部とから構成され、前記アクチュエータは、その駆動力を発生させるアクチュエータ本体と、このアクチュエータ本体の駆動力を伝達するロッドとから構成され、
前記可動側ストッパ部は、前記アクチュエータ本体から前記ノズルベーン側へ延びて進退する前記ロッドに設けられていることを特徴とするターボチャージャ用ノズルベーンの開度規制構造。
【請求項2】
前記可動側ストッパ部は、前記ロッドに設けられたナットであり、前記固定側ストッパ部は、前記アクチュエータに熱が伝わらないように前記アクチュエータブラケットに取付けられた遮熱板であることを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ用ノズルベーン開度規制ストッパ構造。
【請求項3】
前記遮熱板は前記アクチュエータを前記アクチュエータブラケットへ固定するボルトによってアクチュエータブラケットに供締めされて取り付けられるとともに、該遮熱板を貫通するように設けられた前記ロッドの貫通穴の周縁部によって前記ナットのナット受け部が形成されることを特徴とする請求項2記載のターボチャージャ用ノズルベーン開度規制ストッパ構造。
【請求項4】
前記ロッドの先端部と前記ノズルベーン側とが長さ調整可能な連結機構で連結され、前記可動側ストッパ部は、前記連結機構を構成するボディに長さ調整可能にねじ結合される調整ボルトからなり、前記固定側ストッパ部は、前記アクチュエータブラケットに一体に形成されたストッパ片からなることを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ用ノズルベーン開度規制ストッパ構造。
【請求項5】
前記ロッドの先端部と前記ノズルベーン側とが長さ調整可能な連結機構で連結され、前記可動側ストッパ部は、前記アクチュエータブラケットに長さ調整可能にねじ結合された調整ボルトからなり、前記固定側ストッパ部は、前記連結機構を構成するボディに形成された当て板からなることを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ用ノズルベーン開度規制ストッパ構造。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−72400(P2013−72400A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213555(P2011−213555)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】