説明

ターボチャージャ

本発明は、排気ガス用の供給ダクトを備えたタービンハウジング(2)と、タービンハウジング(2)に回転可能に取り付けられるタービンロータ(4)と、タービンロータ(4)を半径方向外側で包囲する案内格子(18)とを有し、案内格子(18)が羽根取付リング(6)を有し、羽根取付リング(6)が、各々、羽根取付リング(6)に取り付けられる羽根シャフト(8)を有する複数の案内羽根(7)を有し、案内格子(18)が、端部のうちの一方において羽根シャフトに締結される関連する羽根レバー(20)によって案内羽根(7)に動作可能に連結される調整リング(5)を有し、各羽根レバー(20)が、他方の端部において、調整リング(5)の関連する係合凹部(24)と係合するように配置することができるレバー頭部(23)を有し、案内格子(18)が、少なくとも、案内羽根(7)によって形成されるノズル断面を通る最小貫流を設定する止め具(25)を有し、止め具(25)が、案内格子(18)に固定することができる別個の構成部品として具現化される、可変タービンジオメトリ(VTG)を有するターボチャージャ(1)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段によるターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
かかるターボチャージャは、EP 1 564 380 A1号明細書から既知である。この公報は、調整リングが脆弱化しないように、調整リングに一体化して連結される止め具を提案している。
【0003】
しかしながら、調整リングに止め具を一体形成する結果、既知のターボチャージャの場合、たとえば、案内羽根列の端部位置の補正がなされるべきであるかまたはなされなければならない場合、案内羽根列(guide vane cascade)を取り付けた後に止め具の突起を後加工する(aftermachine)ことは、あるとしても、比較的高いコストでしか行うことができない。さらに、既知のターボチャージャの止め具の突起は、羽根の調整レバーの締結リングに当接する結果、端部位置を制限し、それによってまた端部位置の正確な調整がより困難となる。それは、1つの理由として、これら羽根調整レバーの締結リングには製造公差があり、別の理由として、位置決め(間隔あけ)の結果、不正確さがもたらされるためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、案内羽根列またはディフューザの取付けを簡略化することができる、請求項1の前段に開示されているタイプのターボチャージャであって、最小貫流の少なくとも1つの簡単かつ正確な調整がディフューザのみで可能である、ターボチャージャを作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【0006】
少なくとも、案内羽根によって形成されるノズル断面を通る最小貫流の調整を可能にする止め具が、案内羽根列に固定することができる別個の構成部品として形成されるという事実により、案内羽根列の取付け後に、この止め具を、必要な止め位置の正確な調整のために簡単な方法で後加工することができる。これは、止め具が案内羽根列に一体型で連結されていないためである。したがって、案内羽根列の2つの端部位置のうちの一方の再調整が必要となる場合、所望の端部位置に適した止め部品を選択し、簡単な方法で取り付けることができ、または、設けられる止め部品を、突起の後加工によって調整した後、案内羽根列に取り付けることができる。したがって、汎用タイプのターボチャージャの場合に止め具の一体形成のために問題となる正確な端部位置設定を、意図された方法で行うことができる。
【0007】
原則的に、止め具を、ハウジングに固定される支持リングか、または可動調整リングに固定することができる。そして、これに応じて、止め具の突起は、調整リングの嵌合止め面か、または羽根レバーの締結リングのいずれかと相互作用する。
【0008】
さらに、ディフューザ全体を、カートリッジとして完全に事前組立することができ、それがタービンハウジングに取り付けられる前に、最小貫流を調整することができる、という利点がもたらされる。
【0009】
したがって、最小貫流の調整は、タービンハウジングと、軸受ハウジング等、ターボチャージャの他の構成部品と、から独立して、行われる。また、軸受ハウジングとタービンハウジングとの間のダクト位置は、もはや最小貫流調整にはいかなる影響も与えない。同様に、調整レバーの摩耗および調整リングに対するその作用は、最小貫流量に対していかなる影響も与えない。
【0010】
したがって、溶接の場合、羽根シャフトを、羽根レバーの最小貫流調整に必要な位置に直接連結し、したがって、後続する調整プロセスを不要とすることが考えられる。このように、最小の流れが変化する危険および可能性が排除される。
【0011】
従属請求項は、主題として本発明の有利な発展を有する。
【0012】
請求項8において、各々独立して扱うことができる対象として、案内羽根列が定義されている。
【0013】
本発明のさらなる詳細、利点および特徴は、図面を参照して、例示的な実施形態の以下の説明からもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に、本発明によるターボチャージャ1を示し、それは、タービンハウジング2と、それに軸受ハウジング19を介して連結されているコンプレッサハウジング3と、を有する。ハウジング2、3および19は、回転軸Rに沿って配置されている。羽根支持リング6の配置を半径方向外側の案内羽根列18の一部として例示するために、タービンハウジング2は部分的に断面で示されており、案内羽根列18は、枢軸または羽根シャフト8とともに、円周に亙って配置されている多数の案内羽根7を有する。この結果、ノズル断面が形成され、案内羽根7の位置に応じて、そのノズル断面は大きくなったり小さくなったりし、かつ、そのノズル断面によって、回転軸Rの中央に取り付けられたタービンロータ4がエンジンの排気ガスの作用に晒される程度が、高くなったり低くなったりする。排気ガスは、タービンロータ4を介して同じシャフトに着座しているコンプレッサロータ17を駆動するために、供給通路9を介して供給され中央ダクト10を介して排出される。
【0015】
案内羽根7の移動または位置を制御するために、操作装置11が設けられている。これは、本来任意に形成されてもよいが、好ましい実施形態は制御ハウジング12を備え、制御ハウジングは、それに締結されているラム部材14の制御移動を制御して、羽根支持リング6の後方に位置する調整リング5上へのその移動を、調整リングの自由回転移動に変換する。羽根支持リング6とタービンハウジング2の環状部分15との間に、案内羽根7用の自由空間13が形成されている。この自由空間13を保護することができるように、羽根支持リング6は、一体型で形成されているスペーサ16を有する。例示的な場合では、3つのスペーサ16が、各々120°の角度間隔で羽根支持リング6の円周に配置されている。しかしながら、原則的に、かかるスペーサ16をそれより多くまたは少なく提供することが可能である。
【0016】
図2では、本発明による案内羽根列18の第1実施形態の部分斜視図を拡大して示す。
【0017】
この案内羽根列18のすべての羽根レバーに対し代表的な羽根レバー20を示し、それは、一方の端部において、開口22を備えた締結リング21を有し、開口22には、羽根シャフト8の一端が固定されている。
【0018】
羽根レバー20のレバー頭部23は、調整リング5の係合凹部24に配置されており、したがって、調整リング5と係合している。
【0019】
さらに、図2は、止め具25の配置を、別個の構成部品の形態で示す。止め具25は、図示する実施形態の場合、羽根支持リング6に固定された止め具本体26を有する。止め具本体26は、調整リング5のスロット31に係合する、半径方向外側に突出する突起27を有する。調整リング5のスロット31は、2つのストップカム29および30によって境界が定められている。ストップカム29および30は、スロット31内部に向き、突起27の対応する隣接面と係合することができる、止め嵌合面を有する。図2の図の場合、案内羽根列18のノズル断面を通る最小貫流を調整するための、ストップカム29に対する止め位置が示されている。
【0020】
図2がさらに示すように、側面34の上端にストップブリッジ28が配置されており、それは、ストップカム29の方に向き、側面34に対して直角に延在している。案内羽根列18の取付けの過程の間に、正確な位置をまだ調整することができないことが明らかとなる場合に、正確な位置調整のために必要である時、このストップブリッジ28を後加工することができる。この目的のために、止め具25を、羽根支持リング6から分離することができ、精密装置においてストップブリッジ28の適当な部分を除去することにより後加工することができる。
【0021】
図3には、本発明による案内羽根列18の第2実施形態を示す。この実施形態の場合、図2のものに対応する同じ部品には同じ符号を付しており、それにより構成および機能に関して先の説明を参照することができる。
【0022】
ストップブリッジ28の追加とは対照的に、第2実施形態の止め具25には、調整プレート32が設けられている。調整プレート32は、固定クリップ36等により止め具本体26に締結することができる、固定プレート35を有する。当然ながら、調整プレート32を止め具本体26に締結する他の任意のタイプの可能性も考えられる。
【0023】
第2実施形態の場合、ストップブリッジ28の代りに、調整プレート32には、突起27の側面34に対して平行に延在するストッププレート33が設けられており、これは、図3から明らかな突起27までの距離を占有し、それにより、正確な止め位置を画定することができる。
【0024】
したがって、本実施形態により、調整プレート32を交換することによって止め位置を達成することができ、それにより、本実施形態の場合にもまた、特に最小貫流の正確な調整が簡単かつ安価な方法で可能である。
【0025】
開示を補足するために、図1〜図3における本発明の概略図を明示的に参照する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明によるターボチャージャの基本構成の断面斜視図を示す。
【図2】本発明による案内羽根列の第1実施形態の斜視図を示す。
【図3】本発明による案内羽根列の第2実施形態の、図2に対応する斜視図を示す。
【符号の説明】
【0027】
1 ターボチャージャ
2 タービンハウジング
3 コンプレッサハウジング
4 タービンロータ
5 調整リング
6 羽根支持リング
7 案内羽根
8 羽根シャフト
9 供給通路
10 軸方向ダクト
11 操作装置
12 制御ハウジング
13 案内羽根7用の自由空間
14 ラム部材
15 タービンハウジング2の環状部分
16 スペーサ/距離カム
17 コンプレッサロータ
18 案内羽根列/ディフューザ
19 軸受ハウジング
20 羽根レバー
21 締結リング
22 開口
23 レバー頭部
24 係合凹部
25 止め具
26 止め具本体
27 突起
28 ストップブリッジ
29、30 ストップカム
31 スロット
32 調整プレート
33 ストッププレート
34 側面
35 固定プレート
36 固定クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス用の供給通路(9)を備えたタービンハウジング(2)と、
該タービンハウジング(2)に回転可能に取り付けられるタービンロータ(4)と、
案内羽根列(18)であって、
半径方向外側において該タービンロータ(4)を取り囲み、
羽根支持リング(6)を有し、
各々、該羽根支持リング(6)に取り付けられる羽根シャフト(8)を有する多数の案内羽根(7)を有し、
端部のうちの一方によって該羽根シャフト(8)に締結される関連する羽根レバー(20)を介して、該案内羽根(7)と機能的に連通する調整リング(5)であって、各羽根レバー(20)が、他方の端部に、該調整リング(5)の関連する係合凹部(24)と係合することができるレバー頭部(23)を有する、調整リング(5)を有し、かつ
少なくとも、該案内羽根(7)によって形成されるノズル断面を通る最小貫流の調整用の止め具(25)を有する、
案内羽根列(18)と、
を備える、可変タービンジオメトリ(VTG)を備えたターボチャージャ(1)であって、
該止め具(25)が、該案内羽根列(18)に固定されることが可能な別個の構成部品として形成されることを特徴とする、ターボチャージャ。
【請求項2】
請求項1に記載のターボチャージャであって、
前記止め具(25)が、前記羽根支持リング(6)に固定されることが可能であり、かつ前記調整リング(5)のスロット(31)に係合する突起(27)を有することを特徴とする、ターボチャージャ。
【請求項3】
請求項1に記載のターボチャージャであって、
前記止め具(25)が、前記調整リング(5)に固定されることが可能であり、かつ隣接する案内羽根(7)の締結リング(21)により境界が定められる空間に係合することを特徴とする、ターボチャージャ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のターボチャージャであって、
前記突起(27)がストップブリッジ(28)を有することを特徴とする、ターボチャージャ。
【請求項5】
請求項2または3に記載のターボチャージャであって、
前記止め具(25)が調整プレート(32)を備えることを特徴とする、ターボチャージャ。
【請求項6】
請求項5に記載のターボチャージャであって、
前記調整プレート(32)が、寸法が可変でありかつ前記止め具(25)に固定されることが可能な交換可能構成部品として形成されることを特徴とする、ターボチャージャ。
【請求項7】
請求項2または3に記載のターボチャージャであって、
前記最小貫流が、羽根シャフト(8)の羽根レバー(20)に対する位置決めによって調整されることを特徴とする、ターボチャージャ。
【請求項8】
可変タービンジオメトリ(VTG)を備えたターボチャージャ(1)用の案内羽根列(18)であって、該ターボチャージャ(1)のタービンロータ(4)を半径方向外側において取り囲み、以下の部品
羽根支持リング(6)と、
各々、該羽根支持リング(6)に取り付けられる羽根シャフト(8)を有する、多数の案内羽根(7)と、
端部のうちの一方によって該羽根シャフト(8)に締結される関連する羽根レバー(20)を介して、該案内羽根(7)と機能的に連通する調整リング(5)であって、各羽根レバー(20)が、他方の端部に、該調整リング(5)の関連する係合凹部(24)と係合することができるレバー頭部(23)を有する、調整リング(5)と、
少なくとも、該案内羽根(7)によって形成されるノズル断面を通る最小貫流の調整用の止め具(25)と、
を有する案内羽根列(8)であり、
請求項1〜7の特徴部分の特徴のうちの少なくとも1つを具備することを特徴とする、案内羽根列。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−537727(P2009−537727A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510355(P2009−510355)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004397
【国際公開番号】WO2007/134787
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(500124378)ボーグワーナー・インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】