説明

ターボチャージャ

【課題】製造コストを抑え、且つシール部とジャーナル軸受の同軸性を確実に確保できるターボチャージャを提供する。
【解決手段】センターハウジング6を、第1、第2ハウジング7、8に分割して設けることにより加工性を高めることができ、製造コストを抑えることができる。また、第1、第2ハウジング7、8をそれぞれに適した材料で設けることが可能になるため、コストを抑えることができる。さらに、タービン側の第1ハウジング7に、軸受ホルダ10(ジャーナル軸受9を支持する部分)とシール部11の両方を設けるため、シール部11とジャーナル軸受9の同軸性を確実に確保することができる。このため、シール部11とジャーナル軸受9の軸ズレに起因するシール部11のシール低下を防ぐことができ、ターボチャージャの信頼性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気の過給を行うターボチャージャに関し、特にタービン羽根車(タービンホイール)の回転をコンプレッサ羽根車(コンプレッサホイール)に伝達するシャフトを回転自在に支持するセンターハウジング(軸受ハウジング)に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャの一例を、図6を参照して説明する。なお、後述する[発明を実施するための形態]および[実施例]と同一機能物に同一符号を付すものである。
ターボチャージャは、
タービン羽根車1を収容するタービンハウジング2と、
コンプレッサ羽根車3を収容するコンプレッサハウジング4と、
2つの羽根車1、3を結合するシャフト5を回転自在に支持するセンターハウジング6と、
を備えて構成される。
【0003】
センターハウジング6は、タービン側から排気ガスの熱の影響を受けながらシャフト5を高速回転自在に支持するものであり、高温に耐える高耐熱の材料によって設ける要求がある。
また、センターハウジング6は、ジャーナル軸受9およびスラスト軸受23が組み付けられるとともに、潤滑用のオイル通路17および冷却用の冷却水通路22等が形成されるものであり、加工性に優れる材料を用いる要求がある。
即ち、センターハウジング6の材料には、相反する耐熱性と加工性が要求される。しかるに、耐熱性が優先されるため、加工性が犠牲になり、コストアップの要因になっていた。
【0004】
これに対し、センターハウジング6を分割して設ける技術の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の技術を図7を参照して説明する。
特許文献1のセンターハウジング6は、タービンハウジング2に接する第1ハウジング7と、コンプレッサハウジング4に接する第2ハウジング8とを結合したものであり、第1ハウジング7にシール部11を設け、第2ハウジング8にジャーナル軸受9を支持する軸受ホルダ10を設けるものであった。
【0005】
しかし、特許文献1の技術は、シール部11が設けられる第1ハウジング7と、軸受ホルダ10が設けられる第2ハウジング8とを組付けた場合、組付誤差によってシール部11と軸受ホルダ10に軸ズレが生じ、シール部11とジャーナル軸受9に軸ズレが生じる可能性がある。
組付誤差によってシール部11とジャーナル軸受9に軸ズレが生じると、シール部11のシール性が低下する。すると、シール部11からオイル漏れが生じてオイル消費が増加したり、高温の排気ガスが侵入してオイルの劣化を促進したり、またシール部11やジャーナル軸受9にコジリが発生して焼き付きが生じる懸念がある。
【0006】
また、特許文献1の技術には、コンプレッサハウジング4に接する第2ハウジング8をアルミニウムで設けることが好ましいとの記載がある。
しかし、第2ハウジング8は軸受ホルダ10(ジャーナル軸受9を支持する部分)を備える部材であり、アルミニウムは線熱膨張率が大きいため、高温になると軸受ホルダ10とジャーナル軸受9との間のクリアランスが広がり、シャフト5の支持精度が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−150961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は製造コストを抑え、且つシール部とジャーナル軸受の同軸性を確実に確保できるターボチャージャの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔請求項1の手段〕
請求項1のターボチャージャは、タービンハウジングに接する第1ハウジングと、コンプレッサハウジングに接する第2ハウジングとを結合してセンターハウジングを設けたものである。
このように、複雑な形状が要求されるセンターハウジングを、第1、第2ハウジングに分割して設けることにより加工性を高めることができ、製造コストを抑えることができる。また、第1、第2ハウジングをそれぞれに適した材料で設けることが可能になり、センターハウジングのコストを抑えることができる。
【0010】
タービンハウジングに接する第1ハウジングに、軸受ホルダ(ジャーナル軸受を支持する部分)とシール部の両方を設けているため、第1ハウジングと第2ハウジングに組付けによってシール部とジャーナル軸受に軸ズレが生じる不具合がなく、シール部とジャーナル軸受の同軸性を確実に確保することができる。
これによって、シール部とジャーナル軸受の軸ズレによって生じるシール部のシール性の低下を防ぐことができ、シール部からオイル漏れが生じる不具合を回避することができる。即ち、シール部のオイル漏れに起因するオイル消費の増加や白煙の発生を防ぐことができるとともに、シール部やジャーナル軸受の焼き付きを防止することができ、ターボチャージャの信頼性を高めることができる。
【0011】
さらに、軸受ホルダは、耐熱性が要求される第1ハウジングに設けられる。第1ハウジングは、耐熱性が要求される材料によって設けられるため、線熱膨張率が小さく抑えられる。その結果、例え高温になったとしても、軸受ホルダとジャーナル軸受との間のクリアランスの広がりが抑えられるため、シャフトの支持精度の低下を防ぐことができ、ターボチャージャの信頼性を高めることができる。
【0012】
〔請求項2の手段〕
請求項2の第1ハウジングは、軸受ホルダとシール部との間に、シャフトから外径方向へ広がる空間部によって形成される断熱層を備える。
断熱層によってタービン側から与えられた熱が軸受ホルダに伝るのを抑えることができ、軸受ホルダに支持されるジャーナル軸受の温度を低減することができる。このため、ジャーナル軸受におけるオイルのコーキング(詰まり)を防ぐことができ、ジャーナル軸受の信頼性を高めることができる。
また、断熱層では、シャフトの表面に付与されたオイルが、シャフトの遠心力で内径方向から断熱層の外径方向へ分離するため、高温側(タービン側)に導かれるオイル量を抑えることができ、高温側においてオイルが劣化する不具合を回避することができる。
【0013】
〔請求項3の手段〕
請求項3の断熱層は、第2ハウジング側の面に凹部が設けられて、断熱層と第2ハウジングとの間に挟まれる部位の第1ハウジングの軸方向の厚みを薄く設けるものである。
凹部によって断熱層と第2ハウジングとの間に挟まれる部位の第1ハウジングの軸方向の厚みが薄く設けられることにより、薄く設けられた部位の熱抵抗が大きくなり、伝熱が抑えられる。これによって、タービン側から与えられた熱が軸受ホルダに伝わるのを抑えることができ、軸受ホルダに支持されるジャーナル軸受の温度をさらに低減することができ、ジャーナル軸受の信頼性を高めることができる。
【0014】
〔請求項4の手段〕
請求項4の第2ハウジングの内部には、第1ハウジングとの接触箇所の近傍に、冷却水が循環供給される冷却水通路が設けられる。
第1ハウジングから第2ハウジングに伝えられる熱が、冷却水通路を循環する冷却水によって奪われるため、第2ハウジングの温度を抑えることができ、第2ハウジングの熱疲労を軽減することができる。
【0015】
〔請求項5の手段〕
請求項5のターボチャージャは、冷却水通路の外側に、タービンハウジングと第1ハウジングとの熱的結合部が設けられる。
第1ハウジングから第2ハウジングの内側へ伝えられる熱が、冷却水通路を循環する冷却水によって冷却されるため、第2ハウジングに伝わった熱によって軸受ホルダの温度が上昇するのを抑えることができる。このため、軸受ホルダに支持されるジャーナル軸受の温度を低減することができ、ジャーナル軸受の信頼性を高めることができる。
【0016】
〔請求項6の手段〕
請求項6の第1ハウジングは、第2ハウジングに比較して高耐熱の材料で形成される。 これにより、タービン側において耐熱性が求められる第1ハウジングの耐熱性を確保することができる。
また、第2ハウジングは、第1ハウジングに比較して低耐熱の材料で形成されるため、材料費を抑えるとともに、加工性を高めることが可能になる。
【0017】
〔請求項7の手段〕
請求項7の第1ハウジングは、第2ハウジングに比較して低熱伝導率の材料で形成される。
これにより、第2ハウジングへの伝熱が抑えられるため、第2ハウジングの温度上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ターボチャージャの軸方向に沿う断面図である(実施例1)。
【図2】センターハウジングの分解断面図である(実施例1)。
【図3】センターハウジングをコンプレッサ側から見た図である(実施例1)。
【図4】図1のA−A線に沿う断面図である(実施例1)。
【図5】ターボチャージャの軸方向に沿う断面図である(実施例2)。
【図6】ターボチャージャの軸方向に沿う断面図である(従来例1)。
【図7】ターボチャージャの軸方向に沿う断面図である(従来例2)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して[発明を実施するための形態]を説明する。
ターボチャージャは、
排気ガスにより駆動されるタービン羽根車1を収容するタービンハウジング2と、
吸気を加圧するコンプレッサ羽根車3を収容するコンプレッサハウジング4と、
タービン羽根車1の回転をコンプレッサ羽根車3に伝達するシャフト5を回転自在に支持するセンターハウジング6と、
を備える。
【0020】
センターハウジング6は、タービンハウジング2に接する第1ハウジング7と、コンプレッサハウジング4に接する第2ハウジング8とを軸方向に結合して設けられる。
第1ハウジング7は、シャフト5を回転自在に支持するジャーナル軸受9を支持する軸受ホルダ10を備えるとともに、ジャーナル軸受9よりもタービン側においてシャフト5との間をシールするシール部11を備える。
【実施例】
【0021】
以下において本発明が適用された具体的な一例(実施例)を、図面を参照して説明する。実施例は具体的な一例を開示するものであって、本発明が実施例に限定されないことは言うまでもない。
なお、以下の実施例において上記[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
【0022】
[実施例1]
実施例1を図1〜図4を参照して説明する。
ターボチャージャは、エンジン(燃料の燃焼により回転動力を発生する内燃機関:ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等を問わない、レシプロエンジン、ロータリーエンジン等を問わない)に搭載されるものであり、
この実施例のターボチャージャは、車両走行用エンジンに搭載されるものである。
【0023】
ターボチャージャは、エンジンから排出される排気ガスのエネルギーによって、エンジンに吸い込まれる吸気を加圧する過給器であり、図1に示すように、
・エンジンから排出された排気ガスによって回転駆動されるタービン羽根車1と、
・このタービン羽根車1を収容する渦巻形状のタービンハウジング2と、
・タービン羽根車1の回転力により駆動されて吸気を加圧するコンプレッサ羽根車3と、
・このコンプレッサ羽根車3を収容する渦巻形状のコンプレッサハウジング4と、
・タービン羽根車1の回転をコンプレッサ羽根車3に伝達するシャフト5と、
・このシャフト5を高速回転自在に支持するセンターハウジング6と、
を備える。
【0024】
また、この実施例のセンターハウジング6は、図2に示すように、
・タービンハウジング2に接する第1ハウジング7と、
・コンプレッサハウジング4に接する第2ハウジング8とを、
軸方向に結合したものである。
【0025】
第1ハウジング7と第2ハウジング8の結合手段は限定されるものではないが、具体的な一例としてこの実施例の第1ハウジング7と第2ハウジング8は、複数本のボルト12によって締結されるものである。
第2ハウジング8には、軸方向へ伸びるボルト挿通穴13が複数形成されている。また、第1ハウジング7の第2ハウジング8側の面(図2左側の面)には、第2ハウジング8のボルト挿通穴13に対応する位置に、ボルト12が締結する雌ネジ穴が形成されている。そして、図2の左側(第1ハウジング7とは異なる側)からボルト12をボルト挿通穴13に挿入し、そのボルト12を第1ハウジング7の雌ネジ穴に螺合することで、第2ハウジング8と第1ハウジング7とが強固に締結されるものである。
【0026】
なお、第2ハウジング8と第1ハウジング7が締結されてなるセンターハウジング6は、Vバンド等の連結部材14を用いてタービンハウジング2に連結されるとともに、ボルト等の連結部材15を用いてコンプレッサハウジング4に連結されるものである。
【0027】
第1ハウジング7は、耐熱性の材料より選択されるとともに、低熱伝導率の材料より選択されるものであり、この実施例ではステンレスによって設けられている。
第1ハウジング7の概略形状は、タービンハウジング2に連結される略円盤形状を呈するフランジ部16と、このフランジ部16の中心側からコンプレッサ側に向かって伸びる筒状を呈する軸受ホルダ10とを、一体に設けたものである。
【0028】
軸受ホルダ10は、シャフト5の軸芯を一定に保ちつつシャフト5を回転自在に支持するジャーナル軸受9を支持するものである。
ジャーナル軸受9の構造は限定されるものではないが、この実施例では一例として2つのフローティングメタルによる流体軸受を採用している。2つのフローティングメタルは、軸方向に離間した状態で軸受ホルダ10の内周面に配置されるものであり、幅方向(軸方向)の略中央部には内外を貫通する複数のオイル孔が形成されている。このオイル孔には、センターハウジング6内に形成されたオイル通路17からオイルが供給され、フローティングメタルとシャフト5との間に供給オイルによる流体層が形成される。
【0029】
第1ハウジング7におけるタービン側の端部には、センターハウジング6とシャフト5の間をシールして、タービン側の排気ガスの一部がセンターハウジング6内に侵入するのを阻止するのと同時に、オイルがタービンハウジング2側に流出するのを阻止するシール部11が設けられている。
このシール部11の構造は限定されるものではないが、具体的な一例としてこの実施例のシール部11は、金属製シールリングを用いて第1ハウジング7とシャフト5との間をシールするものであり、シャフト5のタービン側の外周に設けられた環状溝の内部に金属製シールリングを配置し、金属製シールリングの外周面が第1ハウジング7の内周面(具体的には第1ハウジング7におけるシャフト挿通孔の内周面)に摺接するものである。
【0030】
第1ハウジング7におけるフランジ部16の内部には、タービン側の熱の伝達を抑制する断熱層21が設けられている。この断熱層21は、軸受ホルダ10とシール部11との間に設けられ、シャフト挿通孔から外径方向へ広がる略円盤状の空間部である。
【0031】
第2ハウジング8は、第1ハウジング7の材質(低熱伝導率の材料)、および第1ハウジング7内に設けた断熱層21により、第1ハウジング8からの熱の伝達が阻害される。また、第2ハウジング8は、オイルが循環供給されるオイル通路17、および冷却水が循環供給される冷却水通路22が形成され、温度上昇が抑えられる。
このようにして、第2ハウジング8は、第1ハウジング7より温度が低いものであり、第1ハウジング7に比較して耐熱性に対する要求が低い。このため、第2ハウジング8は、第1ハウジング7に比較して加工性およびコストを優先した材料より設けられるものであり、この実施例ではアルミニウム(アルミニウム合金を含む)によって設けられている。
【0032】
第2ハウジング8の中心部には、第1ハウジング7の軸受ホルダ10が嵌め入れられる組付穴が設けられている。また、第2ハウジング8の中心部のコンプレッサ側には、スラスト軸受23が組み入れられるスラスト軸受室(凹部)が形成されている。
なお、スラスト軸受23は、シャフト5の軸方向位置を一定に保ちつつシャフト5を回転自在に支持するものである。
【0033】
第2ハウジング8に設けられるオイル通路17は、オイルポンプの吐出したオイルの一部を、ジャーナル軸受9とスラスト軸受23の両方へ供給するものである。具体的に、オイル通路17の上流側は途中で分岐しており、軸受ホルダ10に設けたオイル供給孔を介してジャーナル軸受9にオイルを供給するとともに、スラスト軸受23にオイルを供給するように設けられている。
また、オイル供給孔からタービン側のフローティングメタルに向かうオイルの一部は、断熱層21へ導かれ、その一部がシール部11を潤滑するように設けられている。
【0034】
ジャーナル軸受9で潤滑に使用されたオイル、スラスト軸受23で潤滑に使用されたオイル、および断熱層21で落下したオイルは、第2ハウジング8内で合流した後、ドレン通路(オイル通路17の下流側通路)を介してオイルパン等へ戻される。
なお、図3における符号24はスラスト軸受23にオイルを導くオイル穴であり、符号25はスラスト軸受23を通過したオイルをドレン通路に導くドレン穴である。
また、図4における符号26は、断熱層21内に落下したオイルをドレン通路に導くドレン穴である。
【0035】
第2ハウジング8に設けられる冷却水通路22は、エンジンの冷却水の一部が循環供給されるものであり、第2ハウジング8における第1ハウジング7との接触箇所の近傍に設けられる。この冷却水通路22は、図4に示すように、シャフト挿通穴の周囲を囲んで設けられるものである。
【0036】
さらに、この実施例では、冷却水通路22の外側に、タービンハウジング2と第1ハウジング7との熱的結合部α(タービンハウジング2と第1ハウジング7とが直接接触する部分)が配置される。
具体的に、第1ハウジング7から第2ハウジング8に伝わる熱は、断熱層21の外側のフランジ部16を介して伝わる。そこでこの実施例では、第1ハウジング7から第2ハウジング8へ熱の伝達が開始される部位に冷却水通路22を設けて、第2ハウジング8に伝わる熱を冷却水通路22を循環する冷却水によって効率的に除去するものである。
【0037】
(実施例1の効果1)
この実施例のターボチャージャは、タービンハウジング2に接する第1ハウジング7に、軸受ホルダ10(ジャーナル軸受9を支持する部分)とシール部11の両方を設けている。
このため、第1ハウジング7と第2ハウジング8に組付けによってシール部11とジャーナル軸受9に軸ズレが生じる不具合がなく、シール部11とジャーナル軸受9の同軸性を確実に確保することができる。
これによって、シール部11とジャーナル軸受9の軸ズレによって生じるシール部11のシール性の低下を防ぐことができ、シール部11からオイル漏れが生じる不具合を回避することができる。即ち、シール部11のオイル漏れに起因するオイル消費の増加や白煙の発生を防ぐことができるとともに、シール部11やジャーナル軸受9の焼き付きを防止することができ、ターボチャージャの信頼性を高めることができる。
【0038】
(実施例1の効果2)
この実施例では、複雑な形状が要求されるセンターハウジング6を、第1、第2ハウジング7、8に分割して設けることにより加工性を高めることができ、製造コストを抑えることができる。
また、第1、第2ハウジング7、8を、それぞれに適した材料で設けることが可能になるため、センターハウジング6のコストを抑えることができる。
【0039】
具体的には、タービン側から受熱する第1ハウジング7を耐熱性に優れたステンレスで設けることで、高温になる第1ハウジング7の信頼性を高めることができる。
一方、
・第1ハウジング7を低熱伝導率の材料であるステンレスで設けて第2ハウジング8への伝熱を抑制し、
・第1ハウジング7内に断熱層21を設けて第2ハウジング8への伝熱を抑制し、
・第2ハウジング8内に冷却水通路22を設けて第2ハウジング8の温度上昇を抑制し、
・第2ハウジング8内にオイル通路17を設けて第2ハウジング8の温度上昇を抑制するため、
第2ハウジング8の温度上昇が抑えられる。
このため、第2ハウジング8には加工性とコストを優先した材料を用いることができ、第2ハウジング8のコストを抑えることができる。即ち、第2ハウジング8を加工性に優れ、且つ比較的に低コストなアルミニウムで設けることができる。その結果、冷却水通路22やオイル通路17等の加工性が要求される第2ハウジング8のコストを抑えることができ、結果的にセンターハウジング6のコストを抑えることができる。
【0040】
(実施例1の効果3)
この実施例の第1ハウジング7には、軸受ホルダ10とシール部11との間にシャフト5から外径方向へ広がる断熱層21が設けられている。
この断熱層21によってタービン側の熱が軸受ホルダ10に伝わるのを抑えることができ、軸受ホルダ10に支持されるジャーナル軸受9の温度を低減することができる。このため、ジャーナル軸受9におけるオイルのコーキングを防ぐことができ、ジャーナル軸受9の信頼性を高めることができる。
また、断熱層21では、シャフト5の表面に付与されたオイルが、シャフト5の遠心力で内径方向から断熱層21の外径方向へ飛散して分離するため、高温のタービン側に導かれるオイル量を抑えることができ、高温側におけるオイル劣化を抑えることができる。
【0041】
(実施例1の効果4)
この実施例の冷却水通路22は、第2ハウジング8に形成されるものであり、第1ハウジング7との接触箇所の近傍に設けられる。
このように、第2ハウジング8のうち、第1ハウジング7に近い部位に冷却水通路22を設けることにより、第1ハウジング7から第2ハウジング8に伝えられる熱が、冷却水通路22を循環する冷却水によって奪われるため、第2ハウジング8の全体の温度を抑えることができ、第2ハウジング8の熱疲労を軽減することができる。
【0042】
(実施例1の効果5)
この実施例のセンターハウジング6は、冷却水通路22の外側に、タービンハウジング2と第1ハウジング7との熱的結合部αが設けられる。
第1ハウジング7から第2ハウジング8の内側へ伝えられる熱が、冷却水通路22を循環する冷却水によって効果的に冷却され、第2ハウジング8に伝わった熱によって軸受ホルダ10の温度が上昇するのを防ぐことができる。このため、軸受ホルダ10に支持されるジャーナル軸受9の温度を低減することができ、ジャーナル軸受9の信頼性を高めることができる。
【0043】
(実施例1の効果6)
この実施例の軸受ホルダ10は、ステンレス製の第1ハウジング7に設けられる。ステンレスは、線熱膨張率が小さいため、例え高温になったとしても、軸受ホルダ10とジャーナル軸受9との間のクリアランスの広がりが抑えられ、シャフト5の支持精度が低下する不具合が生じない。
【0044】
[実施例2]
実施例2を図5を参照して説明する。なお、この実施例2において上記実施例1と同一符号は、同一機能物を示すものである。
この実施例2のターボチャージャは、断熱層21における第2ハウジング8に近い側の面(断熱層21における図中左側の面)に、断熱層21と第2ハウジング8との間に挟まれる部位の第1ハウジング7の軸方向の厚みを薄くする凹部27を設けたものである。
具体的に凹部27は、断熱層21の第2ハウジング8に近い側の面にリング状に形成された環状溝であり、フランジ部16から軸受ホルダ10に至る部位の肉厚を全周に亘って薄くするものである。
【0045】
薄く設けられた部位は熱抵抗が大きくなる。このため、凹部27が設けられる部位(第1ハウジング7においてフランジ部16から軸受ホルダ10に至る部分)の熱抵抗が大きくなり、フランジ部16から軸受ホルダ10への伝熱が抑えられる。
これによって、タービン側から与えられた熱が軸受ホルダ10に伝わるのを抑えることができるため、軸受ホルダ10に支持されるジャーナル軸受9の温度をさらに低減することができ、ジャーナル軸受9の信頼性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
上記の実施例では、ジャーナル軸受9の一例として2つのフローティングメタルを用いる例を示したが、軸方向に長い一体型のフローティングメタルを用いても良い。あるいは、ジャーナル軸受9として転がり軸受(ボールベアリング等)を用いるものであっても良い。
【0047】
上記の実施例では、「第1ハウジング7をステンレス、第2ハウジング8をアルミニウム」で設ける例を示したが、材料は限定されるものではなく、例えば「第1ハウジング7を鉄、第2ハウジング8をアルミニウム」で設けたり、「第1ハウジング7をステンレス、第2ハウジング8を鉄」で設けるなど、適宜変更可能なものである。
【0048】
上記の実施例では、センターハウジング6を第1ハウジング7と第2ハウジング8で設け、第1ハウジング7と第2ハウジング8を直接結合する例を示したが、第1、第2ハウジング7、8とは別に第3ハウジングを設け、3つのハウジングを結合してセンターハウジング6を設けても良い。
【0049】
上記の実施例では、センターハウジング6に冷却水通路22が設けられる水冷タイプのターボチャージャに本発明を適用する例を示したが、冷却水通路22を有しないタイプのターボチャージャに本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 タービン羽根車
2 タービンハウジング
3 コンプレッサ羽根車
4 コンプレッサハウジング
5 シャフト
6 センターハウジング
7 第1ハウジング
8 第2ハウジング
9 ジャーナル軸受
10 軸受ホルダ
11 シール部
21 断熱層
22 冷却水通路
27 凹部
α 熱的結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスにより駆動されるタービン羽根車(1)を収容するタービンハウジング(2)と、
吸気を加圧するコンプレッサ羽根車(3)を収容するコンプレッサハウジング(4)と、
前記タービン羽根車(1)の回転を前記コンプレッサ羽根車(3)に伝達するシャフト(5)を回転自在に支持するセンターハウジング(6)と、
を備えるターボチャージャにおいて、
前記センターハウジング(6)は、前記タービンハウジング(2)に接する第1ハウジング(7)と、前記コンプレッサハウジング(4)に接する第2ハウジング(8)とを結合して設けられ、
前記第1ハウジング(7)は、前記シャフト(5)を回転自在に支持するジャーナル軸受(9)を支持する軸受ホルダ(10)を備えるとともに、前記ジャーナル軸受(9)よりも前記タービン羽根車(1)側において前記シャフト(5)との間をシールするシール部(11)を備えることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
請求項1に記載のターボチャージャにおいて、
前記第1ハウジング(7)は、前記軸受ホルダ(10)と前記シール部(11)との間に、前記シャフト(5)から外径方向へ広がる空間部によって形成される断熱層(21)を備えることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項3】
請求項2に記載のターボチャージャにおいて、
前記断熱層(21)における前記第2ハウジング(8)側の面には、
前記断熱層(21)と前記第2ハウジング(8)との間に挟まれる部位の前記第1ハウジング(7)の軸方向の厚みを薄くする凹部(27)が設けられることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のターボチャージャにおいて、
前記第2ハウジング(8)の内部には、前記第1ハウジング(7)との接触箇所の近傍に、冷却水が循環供給される冷却水通路(22)が設けられることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項5】
請求項4に記載のターボチャージャにおいて、
前記冷却水通路(22)の外側に、前記タービンハウジング(2)と前記第1ハウジング(7)との熱的結合部(α)が配置されることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載のターボチャージャにおいて、
前記第1ハウジング(7)は、前記第2ハウジング(8)に比較して高耐熱の材料で形成されることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のターボチャージャにおいて、
前記第1ハウジング(7)は、前記第2ハウジング(8)に比較して低熱伝導率の材料で形成されることを特徴とするターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−15033(P2013−15033A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146507(P2011−146507)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】