説明

ダイアル式入力装置

【課題】入力がない状態での消費電力を可及的に減らし、携帯電話やリモコンなどの機器の電池への負担を軽減することである。
【解決手段】マイコンによるパルスの判定は、位相差を有する3個のパルスのオンオフの順序によりその回転方向を判定し、パルスの数により回転量を判定し、パルス電極が発生するパルスに規定の時間だけ変化がない場合にマイコンをスリープし、いずれかのパルス電極のパルスに変化があったときにマイコンを復帰する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオ再生装置などのリモコン送信機や携帯電話等に利用されるダイアル式の入力装置に関するものである。さらに詳しくは、一般にジョグダイアルやジョグシャトルと呼ばれている円形のダイアルを回転させることによりビデオの早送り、巻き戻し、画面のスクロールなどの操作を行うためのダイアル式入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今のビデオ再生装置のリモコン送信機等にはダイアル式入力装置が設けられ、このダイアル式入力装置は、ダイアルの回転を電気的パルス信号として出力するロータリーエンコーダと呼ばれる信号発生装置が内蔵されている。ダイアル式入力装置に一般的に利用されているロータリーエンコーダは、例えば図9に示すように、ダイアルと一体または連動した円形のコード板31上に位相を(例えば1/4)ずらした一対の櫛歯状電極32、33と、これらの櫛歯状電極32、33上をそれぞれ摺動する摺動子34、35とが設けられ、ダイアルとともにコード板31が回転することにより、櫛歯状電極32と摺動子34、櫛歯状電極33と摺動子35の接触および非接触によりそれぞれパルス波を発生し、この2つのパルス波をマイコンで解析、処理することによりダイアルの回転速度、回転方向および回転量を検出する。35はコモン電極である。
【特許文献1】特開平5−133765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のダイアル式入力装置は、ロータリーエンコーダ31からのパルス波の入力を受けるために、常に入力可能状態で待機(STANDBY)しなければならず、その間は若干消費電力が少なくなるものの、リモコンや携帯電話などの電池を電源とするような機器では、この待機中の消費電力さえも電池容量への大きな負担となっていた。
また、上述のような2組のパルス波を発生するロータリーエンコーダ31では、ダイアルの初動時に最初のパルスの変化からはダイアルの回転方向が判定できないという問題点があった。
【0004】
さらに、上述のような櫛歯状電極32、33と摺動子34、35との摺動により接触部分が磨耗することが必至であり、耐用回転数が限られている。耐用年数を延ばすために櫛歯状電極32、33と摺動子34、35の接触圧を下げれば、パルス波の立ち上がりが悪くなったり、湿気や埃の付着に対して弱くなってしまう。
接触したときの接触抵抗を下げ、また錆や腐食による劣化を防ぐために、櫛歯状電極や摺動子に金めっきを施したものもあるが、摺動によりめっきが剥がれて劣化することは時間の問題であり根本的に解決することはできていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、パルスを発生するためのパルス電極をプリント基板の同一円周上に位相差を設定して少なくとも3対配置し、このパルス電極の位置にパルス電極に接離して開閉する押圧接点を設け、ダイアルの裏側の外周帯部にこの押圧接点を押圧する複数の突片を設けてなるものである。
また、パルス電極が発生する位相差を有する3個のパルスは1つのパルスの一部が他のパルスの一部と重畳するように、前記突片による押圧接点の押圧は、突片に押圧される面がパルス幅に対応した幅を有する押圧体を介して行うように構成する。
【0006】
マイコンによるパルスの判定は、位相差を有する3個のパルスのオンオフの順序によりその回転方向を判定し、パルスの数により回転量を判定し、パルス電極が発生するパルスに規定の時間だけ変化がない場合にマイコンをスリープし、いずれかのパルス電極のパルスに変化があったときにマイコンを復帰するように構成する。
マイコンの復帰時には、パルス電極が接続された入力ポートにあった場合に、微小な一定時間周期でそのポートをスキャンして、その状態が複数回一致した場合にマイコンの処理を開始するように構成する。
【発明の効果】
【0007】
パルス電極を押圧接点により開閉する構成とすることにより、電極の磨耗がほとんどなく、耐用回転数が飛躍的に伸びるという効果を有する。
位相差を有するパルス電極を3個以上設け、このパルス電極が発生するパルスは1つのパルスの一部が他のパルスの一部と重畳するように構成することにより、いずれのパルス電極に変化が発生しても、変化が発生した時点でダイアルの回転方向を判定できるという効果を有する。
【0008】
パルス電極が発生するパルスに規定の時間だけ変化がない場合にマイコンをスリープし、いずれかのパルス電極のパルスに変化があったときにマイコンを復帰するように構成することにより消費電力可及的に減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
パルスを発生するためのパルス電極をプリント基板の同一円周上に位相差を設定して少なくとも3対配置し、このパルス電極の位置にパルス電極に接離して開閉する押圧接点を設け、ダイアルの裏側の外周帯部にこの押圧接点を押圧する複数の突片を設けてなり、パルス電極が発生する位相差を有する3個のパルスは1つのパルスの一部が他のパルスの一部と重畳するように構成し、押圧接点は、ゴム製シートに一体に形成された導電ゴムからなり、ダイアルに設けられた突片との間を押圧体を介して押圧するように構成する。
マイコンによるパルスの判定は、位相差を有する3個のパルスのオンオフの順序によりその回転方向を判定し、パルスの数により回転量を判定し、パルス電極が発生するパルスに規定の時間だけ変化がない場合にマイコンをスリープし、いずれかのパルス電極のパルスに変化があったときにマイコンを復帰する。マイコンの復帰時には、パルス電極が接続された入力ポートにあった場合に、微小な一定時間周期でそのポートをスキャンして、その状態が複数回一致した場合にマイコンの処理を開始する。
【実施例1】
【0010】
次に本発明によるダイアル式入力装置の実施例を図1〜図8に基づき説明する。
図1は、ダイアル式入力装置の分解斜視図であり、1は配線パターンおよび各電極が印刷されたプリント基盤(但し、配線パターンは省略)、2は前記プリント基板1の各電極に位置する部分に導電性ゴム等による接点と押圧用の突起等が一体に形成されたゴム製シート、3はダイアルやボタンの操作に従って前記ゴム製シート2の接点や突起を押圧するための押圧機構を備えたケースである。さらに、ケース3の中央には、回転自在なダイアル4が嵌合されている。
【0011】
前記プリント基板1には、図2に示すように、ダイアル4やボタン等の操作により開閉される電極が設けられており、A〜Cはダイアル4の回転によりパルス波を発生するためのパルス電極、11はダイアル4の上下左右を押下することにより開閉するダイアルボタン電極、13はダイアル4の中央に設けられたボタンを押圧することにより開閉する中央ボタン電極である。前記ダイアルボタン電極11と中央ボタン電極13上には、ばね性を有する浅いドーム状の金属薄板からなるスナップ接点12が設けられている。
【0012】
図6に示すように、これらのパルス電極A〜Cおよびボタン電極11、13の一方側は、マイコン5の信号入力ポートに接続され、他方側はHIGH状態にプルアップされたマイコン5のWAKEUP端子に接続される。パルス電極A〜Cが接続されているポートは、以後の説明のためにa〜cとする。
【0013】
前記パルス電極A〜Cの配置は、いずれか1個のパルス電極を基準として、360度/分解能の均等な位相差ではなく、若干のズレを持つように配置される。ここで、分解能は、後述するダイアル4に設けられたパルス電極押圧用の突片の数×パルス電極の数である。本実施例の場合は、突片の数8×パルス電極の数3=24の分解能であって、前記位相差のズレは、±1.5度としている。すなわち、この実施例では、パルス電極A、B、Cは15度(=360度/24)±1.5度の位相差を持つように配置されている。
【0014】
図2に基づき具体的に説明すると、図面上、右斜め下45度に配置されたパルス電極Bを基準として、突片の数を8とすれば45度(=360度/8)×nの位置が位相差0度となり、分解能24を均等に分割すると15度(=45度/3)である。ここで、±1.5度のズレを持たせるために、パルス電極Aは位相差が−13.5度(−15度+1.5度)となる−103.5度の位置に配置され、パルス電極Cは、位相差が+13.5度(15度−1.5度)となる+103.5度の位置に配置されている。したがって、パルス電極AとBとの位相差は18度となる。
【0015】
前記ダイアルボタン電極11は、ダイアル4の押圧円周6上に位置する上下左右の90度ごとに配置されている。
【0016】
ゴム製シート2は、図3に示すように、前記プリント基板1のダイアルボタン電極11および中央ボタン電極13の位置にはスナップ接点12を押圧するためのボス14が設けられ、このボス14はダイアル4の押下によりスナップ接点12を確実に押圧できるように、むくに形成されている。前記パルス電極A〜Cの位置にはプリント基板1側に配置された導電ゴム製の押圧接点15とボス16が設けられ、このボス16は後述するダイアル4に設けられた突片によって押圧されるために、ダイアル4の回転操作に対して必要以上の抵抗とならないように中空状に形成されている。
【0017】
前記ケース3には、ダイアル4が回転自在に遊嵌され、図4に示すようにダイアル4の裏側の周縁部17であって、前記プリント基盤1のダイアルボタン電極11の位置には、ダイヤル4の押下を前記ゴムシートの2のボス14に伝導する押圧体18が上下動自在に遊嵌されている。パルス電極A〜Cの位置には、図5に示すようにダイアル4側がかまぼこ状でゴムシート2側が広く形成された押圧体20が上下動自在に遊嵌されている。
前記ダイアル4の裏側の外周帯部18には、図6に示すように、断面が半円形またはかまぼこ型であって、放射方向に平行な突片21が45度の等間隔に8個設けられている。
【0018】
次に以上のような構成によるダイアル式入力装置が発生するパルス信号と、このパルス信号のマイコン5による処理について説明する。
【0019】
まず、基本的な動作として、ダイアル4を右回りに操作すると、図8に示すように、パルス電極A〜Cのそれぞれは45度間隔でパルスを発生し、接点A→B→C→A→Bの順に13.5度→13.5度→18度→13.5度の位相差でパルスが発生する。また、ダイアルを左回転させると逆になる。
このパルス電極A〜Cのパルス出力は、マイコン5の信号入力ポートa〜cに入力され、マイコン5は、ダイアル4の回転や回転停止及び停止位置による電極A〜Cのオン、オフの状態を解析および処理して該当するコードを被操作機器に送信する。
以下、マイコン5による各パルス電極A、B、Cのオンオフによる判定について説明する。
【0020】
(1)上述のように、最も基本的な動作として、A→B→C→Aの順でパルスが発生すれば右回転と判定し、逆にC→B→A→Cの順でパルスが発生すれば左回転と判定して、回転方向とパルス数に比例したコードを出力する。
【0021】
(2)ダイアル4の回転が停止して、いずれか1つまたは2つのパルス電極のオン状態が一定時間(例えば、3秒)以上継続した場合、マイコン5はオンしているパルス電極を記憶するとともに、オンしているポートをLowに設定してマイコン5自体をスリープ(SLEEP)とする。
【0022】
(3)前述のスリープ状態において、いずれかのパルス接点A〜Cに変化が発生するとマイコンは復帰(WAKEUP)して、(2)で記憶した接点と復帰の原因となった接点から回転方向を決定して回転方向に応じたコードを出力する。
【0023】
具体的には、電極Bがオン状態でマイコン5がスリープとなり、電極Aのオンにより復帰した場合は左回転と判定して左回転のコードを被操作機器に送信する。逆に電極Cのオンにより復帰した場合は右回転と判定して右回転のコードを被操作機器に送信する。
同様に、電極Aがオン状態でスリープとなり電極Cのオンで復帰、および、電極Cがオン状態でスリープとなり電極Bのオンで復帰した場合は左回転と判定し、電極Aがオン状態でスリープとなり電極Bのオンで復帰、および、電極Cがオン状態でスリープとなり電極Aのオンで復帰した場合は右回転と判定する。
【0024】
電極AとBがオン状態でマイコン5がスリープとなり、電極Bのオフにより復帰した場合は左回転と判定して左回転のコードを被操作機器に送信する。逆に電極Aのオフにより復帰した場合は右回転と判定して右回転のコードを被操作機器に送信する。
同様に、電極AとCがオン状態でスリープとなり電極Aのオフで復帰、および、電極BとCがオン状態でスリープとなり電極Cのオフで復帰した場合は左回転と判定し、電極AとCがオン状態でスリープとなり電極Cのオフで復帰、および、電極BとCがオン状態でスリープとなり電極Bのオフで復帰した場合は右回転と判定する。
【0025】
前述のように、マイコン5は、いずれかのパルス電極A〜Cのオンまたはオフにより復帰するが、ノイズによる誤動作を防止するために以下のような判定を行う。
いずれかのパルス電極A〜Cに変化があった場合、マイコン5のポートa〜cの入力状態を微小な一定時間(例えば、280μs)周期でスキャンして、その状態が3回一致(840μs)することにより正常な入力として処理を開始する。もし、3回一致しなければ、ノイズと判定して再びスリープとする。
【0026】
以上の実施例では、各電極の他方側をHIGH状態にプルアップされたWAKEUP端子に接続したものとして説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、マイコン5のWAKEUP端子はコモン端子等に接続してLOW状態とするようにしても良い。この場合、各電極のオフ状態でのマイコン5の各ポートの状態等は、HIGHに設定する必要がある。
以上の実施例では、位相差を有する3個のパルスは1つのパルスの一部が他のパルスの一部と重畳するように構成したが、本発明はこれに限られるものではなく、重畳しないように構成しても消費電力を可及的に減らすことができるという効果には影響はない。
【0027】
以上の実施例では、ダイアル式入力装置単体をケース3に収納したのもであるが、一般には、リモコン装置や携帯電話等に組み込まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による回転入力装置の分解斜視図である。
【図2】本発明による回転入力装置のプリント基板を示す平面図である。
【図3】本発明による回転入力装置のゴムシートを示すもので、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【図4】本発明による回転入力装置のダイアルボタン電極部分の断面図である。
【図5】本発明による回転入力装置のパルス接点部分を示す断面図である。
【図6】本発明による回転入力装置のダイアルの底面図である。
【図7】本発明による回転入力装置の回路図である。
【図8】本発明による回転入力装置のパルス波形図である。
【図9】従来例の回転入力装置のロータリーエンコーダを示す平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…プリント基板、2…ゴム製シート、3…ケース、4…ダイアル、5…マイコン、11…ダイアルボタン電極、12…スナップ接点、13…中央ボタン電極、14…ボス、15…押圧接点、16…ボス、17…ダイアルの周縁部、18…外周帯部、20…押圧体、21…突片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアルの回転にしたがって位相差を有する複数の電気的パルスを発生し、この発生したパルスをマイコンで判定して回転方向および回転量を被制御機器へ出力するダイアル式入力装置において、パルスを発生するためのパルス電極をプリント基板の同一円周上に位相差を設定して少なくとも3対配置し、このパルス電極の位置にパルス電極に接離して開閉する押圧接点を設け、ダイアルの裏側の外周帯部にこの押圧接点を押圧する複数の突片を設けてなることを特徴とするダイアル式入力装置。
【請求項2】
パルス電極が発生する位相差を有する3個のパルスは1つのパルスの一部が他のパルスの一部と重畳するように、前記突片による押圧接点の押圧は、突片に押圧される面がパルス幅に対応した幅を有する押圧体を介して行うように構成したことを特徴とする請求項1記載のダイアル式入力装置。
【請求項3】
押圧接点は、ゴム製シートに一体に形成された導電ゴムからなり、ダイアルに設けられた突片との間を押圧体を介して押圧するように構成したことを特徴とする請求項1記載のダイアル式入力装置。
【請求項4】
マイコンによるパルスの判定は、位相差を有する3個のパルスのオンオフの順序によりその回転方向を判定し、パルスの数により回転量を判定することを特徴とする請求項1
記載のダイアル式入力装置。
【請求項5】
パルス電極が発生するパルスに規定の時間だけ変化がない場合にマイコンをスリープし、いずれかのパルス電極のパルスに変化があったときにマイコンを復帰することを特徴とする請求項4記載のダイアル式入力装置。
【請求項6】
マイコンの復帰時には、パルス電極が接続された入力ポートにあった場合に、微小な一定時間周期でそのポートをスキャンして、その状態が複数回一致した場合にマイコンの処理を開始することを特徴とする請求項5記載のダイアル式入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−287400(P2007−287400A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111262(P2006−111262)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】