ダイオードの非直線性を補償した基準電圧回路
【課題】ダイオードが持つ温度特性の非直線性を相殺可能とする基準電圧発生回路の提供。
【解決手段】
第1、第2の電流−電圧変換回路101、102と、第1、第2の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧が等しくなるように制御する制御手段(AP1)121と、第1、第2の電流−電圧変換回路に電流を供給する第1のカレントミラー回路111と、を備えた第1の基準電流回路1と、第3、第4の電流−電圧変換回路103、104と、第3及び第4の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧が等しくなるように制御する制御手段(AP2)122と、第3、第4の電流−電圧変換回路に電流を供給する線形な入出力特性を持つ第2のカレントミラー回路112と、を備えた第2の基準電流回路2と、前記第1の基準電流回路の出力電流I3と前記第2の基準電流回路2の出力電流I6の差電流を出力する手段130と、を有し、前記差電流から第5の電流−電圧変換回路105を介して出力電圧Vrefを得る。
【解決手段】
第1、第2の電流−電圧変換回路101、102と、第1、第2の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧が等しくなるように制御する制御手段(AP1)121と、第1、第2の電流−電圧変換回路に電流を供給する第1のカレントミラー回路111と、を備えた第1の基準電流回路1と、第3、第4の電流−電圧変換回路103、104と、第3及び第4の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧が等しくなるように制御する制御手段(AP2)122と、第3、第4の電流−電圧変換回路に電流を供給する線形な入出力特性を持つ第2のカレントミラー回路112と、を備えた第2の基準電流回路2と、前記第1の基準電流回路の出力電流I3と前記第2の基準電流回路2の出力電流I6の差電流を出力する手段130と、を有し、前記差電流から第5の電流−電圧変換回路105を介して出力電圧Vrefを得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMOS基準電圧回路に関し、特に半導体集積回路上に形成され、チップ面積が小さく、低電圧から動作し、ダイオードの非直線性を補償した温度特性の小さなCMOS基準電圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のダイオードの非直線性を補償した基準電圧回路はこれまでも時折見られたが、この分野の専門家を納得させ得る提案はなかった。しかし、最近になって、この分野の専門家も納得し得る提案が行われるようになってきている。
【0003】
第1の提案はこの分野の最長老Brokawの提案である。第2の提案はこの分野での登録特許数が最も多い本願発明者(木村)の提案である。これら第1、第2の提案回路の特徴は、いずれもダイオードの非直線性を補償し得る回路ブロックとしてダイオードと抵抗からなる回路網を利用している。第3の提案は、新興台湾の大学から発信されたKer et al.の提案回路である。
【0004】
はじめに、図6を参照して、第1の提案回路であるBrokawの回路を説明する(特許文献1)。特許文献1(US2005/0194957 A1)の明細書では、多くの式を記載して温度特性を説明しているが、ここでは図に示して説明するに止める。
【0005】
図6において、ダイオードD1、D2の順方向電圧をそれぞれVBE1、VBE2とする。誤差電圧増幅回路AP1は、p-チャネルMOSトタンジスタM1、M2のゲート電圧を制御して誤差電圧増幅回路AP1の差動入力端子電圧VA、VBが等しくなるように動作している。
【0006】
したがって、
VA=VB=VBE1 (1)
となる。
【0007】
ここで、抵抗R1、R2、R3の共通接続端子の電圧をV1とすると、抵抗R1に流れる電流IR1は、次式(2)で与えられる。
【0008】
IR1=(VBE1−V1)/R1=ΔV1/R1 (2)
【0009】
また、抵抗R2に流れる電流IR2は、次式(3)で与えられる。
【0010】
IR2=(V1−VBE2)/R2=ΔV2/R2 (3)
【0011】
抵抗R3に流れる電流IR3は、次式(4)で与えられる。
【0012】
IR3=V1/R3 (4)
ここで、電流について次式(5)が成り立つ。
【0013】
IR1=IR2+IR3 (5)
【0014】
式(5)と式(2)、(3)、(4)から次式(6)の関係が成り立つ。
【0015】
ΔV1/R1=ΔV2/R2+V1/R3 (6)
【0016】
ここで、温度特性を考慮すると、ダイオード1の順方向電圧VBE1は、良く知られているように、負の温度特性(温度係数の値がマイナス)を持つ。しかも、この温度特性は、低温になるほど、その傾きが小さくなり、ここで問題とされている非直線性の原因を作り出している。
【0017】
簡単のために、抵抗R1、R2、R3(、R4)の温度特性はないものとすると、トランジスタM3から供給される電流I3は、トランジスタM2から供給される電流I2に比例し、
I2=IR1(=ΔV1/R1)
である。
【0018】
VREF(=I3R4)が温度特性を持たないことより、抵抗R1、R2、R3の共通接続端子の電圧V1は、ダイオード1の順方向電圧VBE1から一定電圧値だけ小さくした電圧となり、図示すれば、VBE1を下に平行移動した曲線となる。
【0019】
一方、(6)式から、ダイオード2の順方向電圧VBE2は、V1の負の温度特性を相殺するように、更に大きな負の温度特性を持つことになる。すなわち、図7に示したような温度特性を持つ電圧とならないと、温度特性を相殺できないことがわかる。
【0020】
Brokawによる回路(図6参照)のSPICEシミュレーション値(出力電圧Vrefの温度特性)を、図8に示す。図8に示すように、-55℃〜135℃の190℃の温度範囲において±0.15%の温度偏差が得られている。
【0021】
次に、図9を参照して、木村の回路(特願2005-016902号;本願出願時未公開)について説明しておく。図9において、ダイオードD1、D2の順方向電圧をそれぞれVBE1、VBE2とする。誤差電圧増幅回路(差動増幅回路又はOP amp)AP1はトランジスタM1、M2のゲート電圧を制御して誤差電圧増幅回路AP1の差動入力端子電圧VA、VBが等しくなるように動作している。
【0022】
したがって、
VA=VB=V1 (7)
となる。
【0023】
ここで、抵抗R1に流れる電流IR1、抵抗R3に流れる電流IR3は、次式(8)、(9)とそれぞれ表される。
【0024】
IR1=(V1−VBE1)/R1=ΔV1/R1 (8)
【0025】
IR3=(V1−VBE2)/R3=ΔV2/R3 (9)
【0026】
ここで、簡単のために抵抗R1、R2、R3、R4(、R5)の温度特性はないものとし、IR1、IR3ともに温度特性を持たないものとすると、IR1=IR3の場合に、
ΔV1/R1=ΔV2/R3 (10)
となる。
【0027】
したがって、(10)式の両辺ともに温度特性を持たないためには、VBE1、VBE2ともにV1から一定電圧値だけ小さくした電圧となり、図示すればV1をそれぞれ下に平行移動した曲線となる。
【0028】
すなわち、図10に示したような温度特性を持つ電圧とならないと温度特性を相殺できないことがわかる。
【0029】
この回路のSPICEシミュレーション値が図11に示されている。電源電圧1.2Vの時に、R1=1.2kΩ、R2=70kΩ、R3=2.408kΩ、R4=38kΩ、R5=20kΩ、ダイオードD1を単位ダイオード、ダイオードD2は単位ダイオードを2個並列接続(X2)とし、トランジスタM1、M2、M3を等しくしてカレントミラー比を1:1:1とした場合である。-46℃で542.5mV、27℃で541.2mV、100℃で542.4mVが得られ、温度特性は、146℃の温度範囲で+0.185%となり、常温(27℃)で最小電圧となり、低温(-46℃)、高温で電圧が微小に上昇する微小ではあるが、お椀型の温度特性が得られた。
【0030】
SPICEシミュレーションでは、始めはお椀を伏せた型になったが、抵抗R3の値を変えることで直線化でき、たまたま上記の値の場合に直線を微妙に越えてしまい、お椀型の温度特性となった。
【0031】
次に、Ker et al.の回路について説明する。図12に示すKer et al.の回路(非特許文献1のFig.3参照)は、p-ch(pチャネル)とn-ch(nチャネル)の2つの番場の回路を用い、両者の出力電流を減算して、温度特性を相殺すると説明している。図13は、そのメカニズムを説明する図である(非特許文献1のFig.2、特許文献2(US2005/0264345 A1)のFig.7等参照)。
【0032】
図13(A)に示すように、ダイオード接続されたpnpトランジスタと、p-chトランジスタM1、M2から構成されたカレントミラー回路を含む番場の回路を、出力電流I1である第1の基準電流回路とし、ダイオード接続されたnpnトランジスタと、n-chトランジスタM3、M4から構成されたカレントミラー回路を含む番場の回路を出力電流I2である第2の基準電流回路とし、第2の基準電流回路の出力電流I2から第1の基準電流回路の出力電流I1を引き算して、
ΔI(=I2−I1)
を得ている。
【0033】
図13(B)、図13(D)に示すように、第1、第2の基準電流回路の出力電流I1、I2ともに温度特性はお椀型で示してあるが、番場の回路(特許文献3)を始め一般的なこの種の回路では、温度特性は、お椀型をひっくり返した形となることが報告されている。
【0034】
図13に示されたように、第1、第2の基準電流回路の出力電流I1、I2について、
I1<<I2
とするためには、第1の基準電流回路と第2の基準電流回路では並列接続されるダイオードの数や抵抗値を大きく異ならせる必要があることは言うまでもないが、pnpトランジスタ、p-chトランジスタとnpnトランジスタ、n-chトランジスタとの間のそれぞれの特性が一致する訳もなく、どの程度の相殺度が実現できるかに疑問が涌こう。
【0035】
番場の回路は、特許文献3(特開平11-45125号公報)あるいは特許文献4(米国特許明細書第6,160,391号)に示される。
【0036】
Banba et al.の論文(”A CMOS Band-Gap Reference Circuit with Sub 1V Operation,” 1998 IEEE Symposium on VLSI Circuits Digest of technical Papers 19.3 pp. 228-229.あるいは、そのfull paperであるIEEE Journal of Solid-State Circuits, Vol. 34, No. 5, pp. 670-674, May 1999.)が通常は参照されているが、図12に示される抵抗R1a、R1b、R2a、R2b(ただし、R2b_NPNとR1b_NPNは入れ違えになっている。)で分圧して誤差電圧増幅回路への入力電圧を、ダイオード電圧を分圧した電圧値に設定するやり方は、番場の特許明細書の図6(US PatentではFig. 8)そのものであるが、上述したBanba et al.の論文には記載されていないために、特開平11-45125以降、しかも、Banba et al.の論文発表以降の別の論文発表者の仕事として参照されることが広く行われている。この回路は古く、1997年7月29日の出願であり、発明はそれ以前になされている。
【0037】
図12に示した回路(非特許文献1のFig.3)は、極性の異なる2つの番場の回路を組み合わせた構成になっている。第1の基準電流回路では2つのダイオード接続されたpnpトランジスタ(Q1_PNP,Q2_PNP)の面積比を、nPNPとすると、電流I1は、次式(11)と表される。
【0038】
I1={VBE2_PNP+(R2_PNP /R3_PNP)VTln(nPNP)}/R2_PNP (11)
【0039】
(11)式において、
R1_PNP=R1a_PNP+R1b_PNP=R2_PNP=R2a_PNP+R2b_PNP
である。また(11)式において、VBE2_PNPは、Q2_PNPのベース・エミッタ間電圧、VTは熱電圧である。
【0040】
同様に第2の基準電流回路では2つのダイオード接続されたnpnトランジスタ(Q1_NPN,Q2_NPN)の面積比を、nNPNとすると、電流I2は、次式(12)と表される
【0041】
I2={VBE2_NPN+(R2_NPN /R3_NPN)VTln(nNPN)}/R2_NPN (12)
【0042】
(12)式において、
R1_NPN=R1a_NPN+R2b_NPN=R2_NPN=R2a_NPN+R1b_PNP
である。(12)式において、VBE2_NPNは、Q2_NPNのベース・エミッタ間電圧、VTは熱電圧である。なお、正しくはR1_NPN=R1a_NPN+R1b_NPN=R2_NPN=R2a_NPN+R2b_PNPである。誤記を訂正すれば、(11)式と(12)式とでは、PNP側とNPN側とでは同一となっている。
【0043】
ここで、{}内の式
{VBE2_NPN+(R2_NPN /R3_NPN)VTln(nNPN)}、あるいは
{VBE2_PNP+(R2_PNP /R3_PNP)VTln(nPNP)}
は従来から良く知られている、この種の基準電圧発生回路――所謂Dobkin et al.(米国特許明細書:US 3,617,859)の発明として知られ、共同発明者の名を冠して、”Widlar bandgap voltege reference”と呼び習わされている基準電圧発生回路――の回路解析式に示される式である。
【0044】
この種の基準電圧発生回路が筆頭(第1)発明者ではなく共同(第2)発明者の名を冠して呼ばれていることも奇妙ではあるが、それの原因となったのは、共同(第2)発明者単独の論文(R. J. Widlar, “New Developments in IC Voltage Regulators,” IEEE Journal of Solid-State Circuits, Vol. SC-6, No. 1, pp. 2-6, Feb. 1971. )によるが、実は、これら米国特許明細書(US Patent)と論文での回路解析式は、基準電圧発生電圧に直接関わるQ1(VBE1)とQ2(VBE2)との関係式ではなく、Q1とQ2を制御するQ3(VBE3)と基準電圧発生電圧に直接関わるQ2(VBE2)との関係式をVBE3の代わりに、VBE1を用いて表記したものであり、この分野の専門家には理解し難いものである。
【0045】
その後には、この種の基準電圧発生電圧には自己バイアス手法が用いられ、Q1とQ2に等しい電流を流すことで回路動作も誰もが理解できるものとなった。
【0046】
この種の基準電圧発生回路においては、出力される基準電圧は、いずれか一方のVBEと2つのVBEの差電圧(ΔVBE)の重み付け加算の式で示される。すなわち、(11)式と(12)式の{}内の式がそれに相当する。
【0047】
(11)式においては、
ΔVBE=VTln(nPNP) (13)
である。
【0048】
(12)式においては、
ΔVBE=VTln(nNPN) (14)
である。
【0049】
良く知られているように、ΔVBEは正の温度特性を持ち、VBEはおよそ−1.9mV/℃前後の負の温度特性(温度係数)を持つ。したがって、両者を重み付け加算することで、温度特性を相殺できることになる。その重み付けは、VBEを常温で600mVとすると、VTが常温で26mVであるから、21.9{=1.9mV/(26mV/300)}と求められる。
【0050】
すなわち、
(R2/R3)ln(n)=21.9 (15)
となる。
【0051】
この21.9を、抵抗比(R2/R3)とエミッタ面積比nの対数値ln(n)に分配することになる。
【0052】
1次近似としては、これで正しいのであるが、VBEの負の温度特性の2次的影響を考慮すると、完全には相殺できずに、基準電圧発生回路の出力電圧は、一般的には、常温から温度が上がっても、あるいは下がっても、いずれも場合にも、電圧が低下するお椀を伏せた特性となる。
【0053】
Ker et al.の回路においては、I2((12)式)からI1((11)式)を引き算する訳であるが、差分が現れるためには、当然、I2>I1に設定する必要がある。
【0054】
しかしながら、(11)式、(12)式では、R2は基準電圧を電流変換する抵抗であるが、元々は、基準電圧の温度特性を相殺するための重み付け加算用の抵抗である。したがって、出力電流をI2>I1に設定するためには、元々、エミッタ面積比nを、NPNとPNPとで大きく異ならせておく必要がある。
【0055】
すなわち、
R2_NPN<R2_PNP
であるから、簡単のために、
R3_NPN=R3_PNP
とすれば、
nNPN>>nPNP
に設定する必要がある。
【0056】
また、極性が異なるNPNとPNPとでは特性が一致することは考えられない。
【0057】
なお、本願発明者による特許文献5の図4には、PTATと逆PTAT回路を組み合わせて温度特性を持たないようにした基準電流回路が開示されているが、ダイオードの非直線性(温度特性の非線形性)の補償は行われていないことを付言しておく。
【0058】
【特許文献1】米国特許明細書 US2005/0194957 A1
【特許文献2】米国特許明細書 US2005/0264345 A1
【特許文献3】特開平11-45125号公報
【特許文献4】米国特許明細書 第6,160,391号
【特許文献5】特開平8-123568号公報
【非特許文献1】M.-D. Ker et al.,“New Curvature-Compensation Technique for CMOS Bandgap Reference with Sub-1-V Operation,” (IEEE ISCAS’05), 発行年月日 23-26, May 2005 Fig. 3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0059】
図6、図12、図13等を参照して説明した基準電圧回路は、下記記載の問題点を有している。
【0060】
第1の問題点は、バラツキが大きくなる、ということである。その理由は、ダイオード接続されるトランジスタの極性が異なるNPNとPNPとを用いているために、特性が一致しないためである。
【0061】
第2の問題点は、高精度化しずらい、ということである。その理由は、元々、温度特性の非線形性が小さな基準電流回路同士で相殺しようとしているために、高精度化することが困難であることによる。
【0062】
したがって、本発明は、上記問題点に鑑み、低電圧から動作し、温度特性の非直線性を高精度で相殺した小さな任意の基準電圧を出力する基準電圧回路の実現を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0063】
本願で開示される発明は、上記課題を解決するため、概略以下の構成とされる。
【0064】
本発明の基準電圧回路は、第1の基準電流回路と第2の基準電流回路と、前記第1の基準電流回路の出力電流と前記第2の基準電流回路の出力電流の差電流を出力する手段と、を備えている。第1の基準電流回路は、第1及び第2の電流−電圧変換回路と、前記第1の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第2の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧とが互いに等しくなるように制御する第1の制御手段と、前記第1の電流−電圧変換回路と前記第2の電流−電圧変換回路に電流をそれぞれ供給する第1のカレントミラー回路と、を備え、第2の基準電流回路は、第3及び第4の電流−電圧変換回路と、前記第3の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第4の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧とが互いに等しくなるように制御する第2の制御手段と、前記第3の電流−電圧変換回路と前記第4の電流−電圧変換回路に電流を供給する第2のカレントミラー回路と、を備えている。本発明は、前記第1の基準電流回路の出力電流と前記第2の基準電流回路の出力電流の前記差電流から、第5の電流−電圧変換回路を介して出力電圧を得る構成とされる。
【0065】
本発明において、好ましくは、前記第1及び第2のカレントミラー回路は、線形な入出力特性を持つ線形カレントミラー回路である。
【0066】
本発明において、前記2つの基準電流回路の出力電流の差電流を出力する手段が、前記第1のカレントミラー回路の出力電流に比例した電流を、それぞれ、前記第3と第4の電流−電圧変換回路に流し込む構成とされ、前記第2のカレントミラー回路の出力電流を受ける前記第5の電流−電圧変換回路を介して出力電圧を得るようにしてもよい。
【0067】
本発明において、前記第1及び第3の電流−電圧変換回路の各々は、ダイオードからなり、前記第2の電流−電圧変換回路は、1つのダイオード又は並列接続された複数のダイオードと、前記1つ又は複数のダイオードに直列に接続された第1の抵抗と、からなる直列回路に、第2の抵抗を並列に接続して構成され、前記第4の電流−電圧変換回路は、1つのダイオード又は並列接続された複数のダイオードと、前記1つ又は複数のダイオードに直列に接続された第3の抵抗とからなる直列回路に、第4の抵抗を並列に接続して構成され、前記第5の電流−電圧変換回路は、第5の抵抗からなる、構成としてもよい。
【0068】
本発明において、前記第1の制御手段は、前記第1の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第2の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧を差動入力し、出力電圧が前記第1のカレントミラー回路の共通ノードを制御する第1の差動増幅回路よりなり、前記第2の制御手段は、前記第3の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第4の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧を差動入力し、出力電圧が前記第2のカレントミラー回路の共通ノードを制御する第2の差動増幅回路よりなる。
【0069】
本発明において、前記第1の基準電流回路と前記第2の基準電流回路とは、ダイオードの個数が相違し、ダイオードの温度特性の非直線性を異ならせるようにしている。
本発明において、前記ダイオードの少なくとも1つは、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタで構成してもよい。
【0070】
本発明においては、ダイオード(又はダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)と抵抗を直列接続し、さらに抵抗を並列接続することで、ダイオード(又はダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)の持つ温度特性の非直線性を顕著にすることができ、2つの回路間で精度良く相殺することができる。
【発明の効果】
【0071】
本発明によれば、温度特性を小さくすることができる。その理由は、本発明においては、ダイオードの温度特性の非直線性が顕著に現れる2つの回路で相殺しているからである。本発明によれば、ダイオードの非直線な温度特性の影響を低減し高精度化可能としている。
【0072】
本発明によれば、低電圧で動作させることができる。その理由は、本発明においては、出力電圧が1.2V以下(具体的には1.0V以下)の任意の電圧値に設定できるからである。
【0073】
本発明によれば、高精度化を可能としている。その理由は、本発明においては、比較される2つの基準電流回路の回路トポロジを同一にしているからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明は、図1を参照すると、第1及び第2の電流−電圧変換回路(101、102)と、前記第1及び第2の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧(VA、VB)が等しくなるように制御する制御手段(121)と、第1及び第2の電流−電圧変換回路(101、102)に電流(I1、I2)をそれぞれ供給する第1のカレントミラー回路(111)と、を備えた第1の基準電流回路(1)と、第3及び第4の電流−電圧変換回路(103、104)と、第3及び第4の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧(VC、VD)が等しくなるように制御する制御手段(122)と、前記第3及び第4の電流−電圧変換回路(103、104)にそれぞれ電流(I4、I5)を供給する第2のカレントミラー回路(112)と、を備えた第2の基準電流回路(2)と、前第1の基準電流回路(1)の出力電流(I3)と第2の基準電流回路(2)の出力電流(I6)の差電流(Iref)を出力する手段(130)と、差電流(Iref)から出力電圧Vrefを得る第5の電流−電圧変換回路(105)を備えている。
【0075】
より詳しくは、本発明においては、第1の基準電流回路(1)は、第1及び第2の電流−電圧変換回路(101、102)と、ソース(第1端子)が電源(VDD)に共通接続されゲート(制御端子)が共通に接続され第1のカレントミラー回路(111)を構成する第1乃至第3のトランジスタ(M1、M2、M3)と、第1の電流−電圧変換回路(101)と第1のトランジスタ(M1)のドレイン(第2端子)との接続点と、第2の電流−電圧変換回路(102)と第2のトランジスタ(M2)のドレインとの接続点とに、反転入力端子と非反転入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が第1乃至第3のトランジスタの共通のゲートに接続された第1の差動増幅回路(121)と、を備えている。第2の基準電流回路(2)は、第3及び第4の電流−電圧変換回路(103、104)と、ソースが電源(VDD)に共通接続されゲートが共通に接続され第2のカレントミラー回路(112)を構成する第4乃至第6のトランジスタ(M4、M5、M6)と、第3の電流−電圧変換回路(103)と第4のトランジスタ(M4)のドレインとの接続点と、第4の電流−電圧変換回路(104)と第5のトランジスタ(M5)のドレインとの接続点とに、反転入力端子と非反転入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が第4乃至第6のトランジスタの共通のゲートに接続された第2の差動増幅回路(122)と、を備えている。第3のトランジスタ(M3)のドレインからの出力電流(I3)と、第6のトランジスタ(M6)のドレインからの出力電流(I6)との差電流(Iref)を得る減算回路(130)を備え、第5の電流−電圧変換回路(105)は、減算回路(130)からの差電流(Iref)を電圧に変換し出力電圧(Vref)として取り出される。第1及び第3の電流−電圧変換回路(101、103)は、カソード端子が接地されたダイオード(D1)よりなり、第2及び第4の電流−電圧変換回路(102、104)の各々は、カソード端子が接地された、1つ又は、複数並列に接続されたダイオードと、抵抗との直列回路に、別の抵抗を並列接続した構成とされ、第5の電流−電圧変換回路(105)は、一端が接地された抵抗よりなる。本発明において、第2及び第4の電流−電圧変換回路(102、104)等において、ダイオードの個数等、それぞれの回路トポロジ及び/又は素子値が異なるようにしてもよい。
【0076】
あるいは、第1の基準電流回路は、図3を参照すると、ダイオード(D1)よりなる第1の電流−電圧変換回路と、一端が接地され複数並列に接続されたダイオード(D2)と、抵抗(R1)との直列回路に、別の抵抗(R2)を並列接続した構成の第2の電流−電圧変換回路と、ソース(第1端子)が電源(VDD)に共通接続されゲート(制御端子)が共通に接続され第1のカレントミラー回路を構成する第1乃至第4のトランジスタ(M1、M2、M3、M4)と、第1の電流−電圧変換回路(D1)と第1のトランジスタ(M1)のドレイン(第1端子)との接続点(VA)と、第2の電流−電圧変換回路(D2,R1,R2)と第2のトランジスタ(M2)のドレインとの接続点(VB)とに、反転入力端子と非反転入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が第1乃至第4トランジスタ(M1、M2、M3、M4)の共通のゲートに接続された第1の差動増幅回路(AP1)と、を備える。第2の基準電流回路は、ダイオード(D3)よりなる第3の電流−電圧変換回路と、一端が接地され複数並列に接続されたダイオード(D4)と、抵抗(R3)との直列回路に、別の抵抗(R4)を並列接続した構成の第4の電流−電圧変換回路と、ソースが電源(VDD)に接続されゲートが共通に接続され第2のカレントミラー回路を構成する第5乃至第7のトランジスタ(M5、M6、M7)と、第3の電流−電圧変換回路(D3)と第5のトランジスタ(M5)のドレインとの接続点(VC)と、第4の電流−電圧変換回路(D4,R3,R4)と第6のトランジスタ(M6)のドレインとの接続点(VD)とに、反転入力端子と非反転入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が第5乃至第7トランジスタ(M5、M6、M7)の共通のゲートに接続されている第2の差動増幅回路(AP2)と、を備え、第3のトランジスタ(M3)のドレインは、第4の電流−電圧変換回路(D4,R3,R4)と第6のトランジスタ(M6)のドレインと第2の差動増幅回路(AP2)の非反転入力端子(+)との接続点に接続され、第4のトランジスタ(M4)のドレインは第3の電流−電圧変換回路(D3)と第5のトランジスタ(M5)のドレインと第2の差動増幅回路(AP2)の反転入力端子(−)との接続点に接続される。第7のトランジスタ(M7)のドレインに一端が接続され他端がGNDに接続された抵抗R5よりなり、第7のトランジスタ(M7)の電流(I7)を電圧に変換し出力電圧(Vref)として取り出される第5の電流−電圧変換回路とを備えている。本発明においては、第1及び第2の基準電流回路において、第2及び第4の電流−電圧変換回路のそれぞれの前記ダイオードの個数が相違し(D2の個数とD4の個数が相違する)、ダイオードの温度特性の非直線性を異ならせるようにして、出力電圧の温度特性を補償する。第2及び第4の電流−電圧変換回路の抵抗(R1)と抵抗(R3)の抵抗値が異なる値とされ、前記第1及び第2の基準電流回路における出力電流の値を異ならせるようにしてもよい。
【0077】
あるいは、第1の基準電流回路は、図5を参照すると、ダイオードD1よりなる第1の電流−電圧変換回路と、一端が接地され複数並列に接続されたダイオードD2と、抵抗R1との直列回路に、別の抵抗R2を並列接続した構成の第2の電流−電圧変換回路と、ソース(第1端子)が電源(VDD)に共通接続されゲート(制御端子)が共通に接続され第1のカレントミラー回路を構成する第1乃至第3のトランジスタ(M1、M2、M3)と、第1の電流−電圧変換回路(D1)と第1のトランジスタ(M1)のドレイン(第2端子)との接続点と、第2の電流−電圧変換回路(D2,R1,R2)と第2のトランジスタ(M2)のドレインとの接続点とに、反転入力端子と非反転入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が第1乃至第3トランジスタ(M1、M2、M3)の共通のゲートに接続された第1の差動増幅回路(AP1)と、を備えている。第2の基準電流回路は、一端が接地され複数並列に接続されたダイオード(D3)と、抵抗(R3)との直列回路に、別の抵抗(R4)を並列接続した構成の第3の電流−電圧変換回路と、ソースが電源に接続されゲートが共通に接続され第2のカレントミラー回路を構成する第4及び第5のトランジスタ(M4、M5)と、第1の電流−電圧変換回路(D1)と第1のトランジスタ(M1)のドレインとの接続点(VA)と、第3の電流−電圧変換回路(D3、R3、R4)と第4のトランジスタ(M4)のドレインとの接続点(VC)とに、反転入力端子、非反転入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が第4及び第5のトランジスタ(M4、M5)の共通のゲートに接続された第2の差動増幅回路(AP2)と、を備えている。第3のトランジスタ(M3)のドレインは第4のトランジスタ(M4)のドレインと共通接続され、第2の差動増幅回路(AP2)の非反転入力端子(+)に接続されている。第5のトランジスタ(M5)のドレインに一端が接続され、他端がGNDに接続され、第5のトランジスタ(M5)のドレイン電流を受け電圧(Vref)に変換する電流−電圧変換回路をなす抵抗(R5)とを備えている。本発明においては、第1及び第2の基準電流回路において、第2及び第3の電流−電圧変換回路のそれぞれの前記ダイオードの個数が相違し(D2の個数とD3の個数が相違する)、ダイオードの温度特性の非直線性を異ならせるようにして、出力電圧の温度特性を補償する。本発明によれば、ダイオードの温度特性の非直線性が顕著に現れる2つの回路で相殺しているからである。本発明によれば、ダイオードの非直線な温度特性の影響を低減し高精度化可能としている。
【0078】
本発明によれば、1V以上、あるいは1V以下の任意の出力電圧が得られ、特性・性能向上を図ることができる。出力電圧を1V以下にすることで1.2V程度の電圧から動作可とし低電圧化を可能としている。以下、本発明の回路構成、動作についてその詳細を説明する。
【0079】
図1は、本発明(請求項1)の実施形態に記載されたCMOS基準電圧回路の一実施例の回路構成を示す図である。
【0080】
図12及び図13を参照して説明した、Ker et al.の回路においては、pnpトランジスタ、p-chトランジスタとnpnトランジスタ、n-chトランジスタを用いて、両者間で、出力電流を減算することで温度特性を相殺していた。2つの基準電流回路を同一の回路トポロジとして、温度特性を相殺すべき重要なダイオードやカレントミラー回路をpnpトランジスタかnpnトランジスタ、あるいはp-chトランジスタかn-chトランジスタのいずれか一方のみにすれば、特性を揃えられ、温度特性をより正確に相殺できるようになることは想像に難くない。
【0081】
図1を参照すると、本発明の実施形態においては、第1の電流−電圧変換回路101及び第2の電流−電圧変換回路102には、それぞれ、第1のカレントミラー回路111を介して、電流I1、I2が供給され、電圧に変換され、それぞれの端子電圧(VA,VB)が、第1の誤差電圧増幅回路(差動増幅回路あるいはOP amp)121の逆正相及び正相入力電圧となっている。
【0082】
第1の誤差電圧増幅回路121の出力電圧は、第1のカレントミラー回路111を制御し、第1の電流−電圧変換回路101、及び第2の電流−電圧変換回路102の端子電圧が等しくなるように動作している。より詳細には、第1の誤差電圧増幅回路121の出力端子は、ソースが電源VDDに共通接続され、ゲートが共通接続され第1のカレントミラー回路111を構成するpチャネルMOSトランジスタM1、M2、M3の共通接続されたゲートに接続され、pチャネルMOSトランジスタM1と第1の電流−電圧変換回路101との接続点、pチャネルMOSトランジスタM2と第2の電流−電圧変換回路102との接続点は第1の誤差電圧増幅回路121の反転入力端子(−)、非反転入力端子(+)にそれぞれ接続されている。
【0083】
また、第1のカレントミラー回路111のpチャネルMOSトランジスタM3のドレインを介して電流I1、I2に比例した電流I3が出力される。第1、第2の電流−電圧変換回路101、102、第1のカレントミラー111回路、第1の誤差電圧増幅回路(AP1)121により、第1の基準電流回路1が構成されている。
【0084】
次に、第3の電流−電圧変換回路103、及び第4の電流−電圧変換回路104には、それぞれ第2のカレントミラー回路112を介して電流I4、I5が供給され、電圧に変換され、それぞれの端子電圧が、第2の誤差電圧増幅回路122の逆相及び正相入力電圧となっている。
【0085】
第2の誤差電圧増幅回路122の出力電圧は、第2のカレントミラー回路112を制御し、第3の電流−電圧変換回路103、及び第4の電流−電圧変換回路104の端子電圧が等しくなるように動作している。より詳細には、第2の誤差電圧増幅回路122の出力端子は、ソースが電源VDDに共通接続され、ゲートが共通接続され第2のカレントミラー112を構成するpチャネルMOSトランジスタM4、M5、M6の共通接続されたゲートに接続され、pチャネルMOSトランジスタM4と第3の電流−電圧変換回路103との接続点、pチャネルMOSトランジスタM5と第4の電流−電圧変換回路104との接続点は第2の誤差電圧増幅回路122の反転入力端子(−)、非反転入力端子(+)にそれぞれ接続されている。
【0086】
また、第2のカレントミラー回路112のpチャネルMOSトランジスタM6のドレインから電流I4、I5に比例した電流I6が出力される。
【0087】
第3、第4の電流−電圧変換回路103、104、第2のカレントミラー回路112、第2の誤差電圧増幅回路(AP2)122により、第2の基準電流回路2が構成されている。
【0088】
さらに、第2のカレントミラー回路112を介して出力される電流I6は、減算回路130に入力され、第1のカレントミラー回路111を介して出力される電流I3が減じられて出力電流Irefとして、第5の電流−電圧変換回路105に供給されて端子電圧Vrefを供給している。
【0089】
ここで、図2に示すように、第1のカレントミラー回路111を介して出力される電流I3の温度特性の非直線性の方が大きく、第2のカレントミラー回路112を介して出力される電流I6の温度特性の非直線性の方が小さいものとする。
Iref(=I6−I3)
の値を正の値とした場合に温度特性の非直線性が相殺され得る電流値I6、I3が存在し得る。
【実施例1】
【0090】
さらに付け加えると、番場の回路のように、元々、ダイオード接続されたトランジスタの温度特性の非直線性が僅かにしか現れない回路同士で相殺するよりも、ダイオード接続されたトランジスタの温度特性の非直線性が顕著に現れる回路同士で相殺する方が、温度特性は、精度良く相殺することができる。
【0091】
上記した第1乃至第5の電流−電圧変換回路の具体的な構成として、図3に示すような電流−電圧変換回路を適用した場合について説明する。一般に、こうした回路においては、図1の第1(3)の電流−電圧変換回路、及び第2(4)の電流−電圧変換回路を全く同一の回路構成とすると、動作点が無数となって、定まらない。
【0092】
そこで、本実施例では、図3に示すように、第1(3)の電流−電圧変換回路と、第2(4)の電流−電圧変換回路では、回路トポロジを同一とし、回路定数を変えている。
【0093】
具体的には、
第1の電流−電圧変換回路101は、1個のダイオードD1とし、
第3の電流−電圧変換回路103は、1個のダイオードD3とし、
第2の電流−電圧変換回路102では、抵抗R1がダイオードD2と直列に接続され、さらにこの抵抗R1とダイオードD2(2個並列)とは並列に抵抗R2が接続されている。
【0094】
さらに、第2の電流−電圧変換回路102と第4の電流−電圧変換回路104では、複数並列に接続されるダイオードD2の個数と、複数並列に接続されるダイオードD4の個数を、それぞれ、2個と4個として、第1の基準電流回路からの出力電流I3と、第2の基準電流回路からの出力電流I6の値が異なるようにし、さらにダイオードの温度特性の非直線性が異なるように意図している。以下、動作を説明する。
【0095】
図3において、ダイオード(又はダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D1、D2の順方向電圧をVF1、VF2とすると、OP amp(AP1)により、逆相、正相の2つの入力端子電圧が等しく(VA=VB)なるように制御される。
【0096】
したがって、
VA=VB=VF1 (16)
である。
【0097】
ここで、簡単のために、MOSトランジスタM1とM2の電流が等しいとすると、
I1=I2 (17)
となる。
【0098】
ただし、電流I1は、第1の電流−電圧変換回路を構成するダイオードD1に直接流れて電圧変換されるが、第2の電流−電圧変換回路については、電流I2は抵抗R1を介してダイオードD2に流れる電流と抵抗R2に流れる電流に2分される。
【0099】
I1=I2=(VF1―VF2)/R1+VF1/R2
={VF1+(R2/R1)ΔVF}/R2 (18)
となる。
【0100】
ここで、VF1はおよそ−1.9mV/℃の温度特性(温度係数)を持つ。また、VF2もおよそ−1.9mV/℃の温度特性(温度係数)を持つ。
【0101】
ここで、D1をいずれも単位ダイオード、D2を単位ダイオードのn倍であるとすると、ΔVF(=VF1―VF2)は、次式(19)と表わされる。
【0102】
ΔVF=VTln[n{I1/(I2−VF1/R2)}] (19)
【0103】
ここで、
I1=I2
であるから、常に、
I1>(I2−VF1/R2)
であり、
I1/(I2−VF1/R2)>1
が成り立つ。
【0104】
よって、(19)式のlnの項は、常に正(>0)であることが理解される。すなわち、ΔVFは良く知られているように、この回路においても、正の温度特性を持つようになる。
【0105】
したがって、この温度特性は、熱電圧VT(その温度特性は0.0853mV/℃)にほぼ比例する。
【0106】
すなわち、(18)式の{VF1+(R2/R1)ΔVF}の項の温度特性は、負の温度特性を持つVF1と、正の温度特性を持つΔVFに抵抗比(R2/R1)を設定し重み付け加算することで、ほぼ相殺することができる。
【0107】
さらに、詳しく見ると、
VF1はおよそ−1.9mV/℃の負の温度特性を持ち、
電流(VF1/R2)は負の温度特性を持つ。
【0108】
したがって、式(19)のn{I1/(I2−VF1/R2)}は、負の温度特性を持ち、その対数値ln[n{I1/(I2−VF1/R2)}]は、多少の負の温度特性を持つことになる。
【0109】
すなわち、(18)式において、
VF1の項は負の温度特性を持ち、
ΔVFの項は正の温度特性を持つのであるが、このΔVFの項は、正の温度特性を持つVTと、負の温度特性を持つln[n{I1/(I2−VF1/R2)}]の積で表される。
【0110】
ここで注目すべきは、電流(VF1/R2)の項である。この項(VF1/R2)には、ダイオードの順方向電圧VFの温度特性の非直線性が現れ、負の温度特性を持つVF1の項に現れるVFの温度特性の非直線性と、正の温度特性を持つΔVFの項に現れるVFの温度特性の非直線性が重畳されて現れる。
【0111】
したがって、基準電流回路の出力電流I3には、従来回路で詳しく説明した番場の回路よりも、VFの温度特性の非直線性が顕著に現れることになる。しかも、抵抗R2により、その影響を可変設定できるのである。
【0112】
さらに、電流I1、I2に比例した第1の基準電流回路の出力電流I3、I4は、それぞれ、ダイオードD3からなる第3の電流−電圧変換回路と、ダイオードD4と抵抗R3、R4からなる第4の電流−電圧変換回路に供給されている。
【0113】
同様に、ダイオード(又はダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D3、D4の順方向電圧を、VF3、VF4とすると、OP amp(AP2)により、逆相、正相の2つの入力端子電圧が等しく(VC=VD)なるように制御される。
【0114】
したがって、
VC=VD=VF3 (20)
である。
【0115】
ここで、簡単のために、MOSトランジスタM5とM6の電流が等しいとすると、
【0116】
I5=I6 (21)
となる。
【0117】
ただし、電流I5は第3の電流−電圧変換回路を構成するダイオードD3に直接流れて電圧変換されるが、第4の電流−電圧変換回路については、電流I6は抵抗R3を介してダイオードD4に流れる電流と抵抗R4に流れる電流に2分される。
【0118】
I4+I5=I3+I6
=(VF3―VF4)/R3+VF3/R4
={VF3+(R4/R3)ΔVF^}/R4 (22)
となる。
【0119】
ここで、VF3はおよそ−1.9mV/℃の温度特性(温度係数)を持つ。また、VF4もおよそ−1.9mV/℃の温度特性(温度係数)を持つ。
【0120】
ここで、D3をいずれも単位ダイオード、D4を単位ダイオードのn^倍であるとすると、
ΔVF^=VTln[n^{(I4+I5)/(I3+I6−VF3/R4)}] (23)
と表わされる。
【0121】
ここで、
I3=I4、I5=I6
であるから、
I3+I4=I3+I6
である。
【0122】
よって、常に、
(I4+I5)>(I3+I6−VF3/R4)
であり、
(I4+I5)/(I3+I6−VF3/R4)>1
が成り立つ。
【0123】
したがって、(23)式のlnの項は常に正(>0)であることが理解される。すなわち、ΔVF^は、良く知られているように、この回路においても、正の温度特性を持つようになる。したがって、この温度特性は、熱電圧VT(その温度特性は0.0853mV/℃)にほぼ比例する。
【0124】
すなわち、(22)式の{VF3+(R4/R3)ΔVF^}の項の温度特性は、負の温度特性を持つVF3と、正の温度特性を持つΔVF^に抵抗比(R4/R3)を掛け重み付け加算することで、ほぼ相殺することができる。
【0125】
さらに、詳しく見ると、VF3はおよそ−1.9mV/℃の負の温度特性を持ち、電流(VF3/R4)は負の温度特性を持つ。
【0126】
したがって、
n^{(I4+I5)/(I3+I6−VF3/R4)}
は負の温度特性を持ち、その対数値
ln[n^{(I4+I5)/(I3+I6−VF3/R4)}]
は、多少の負の温度特性を持つことになる。
【0127】
すなわち、(22)式において、
VF3の項は、負の温度特性を持ち、
ΔVF^の項は、正の温度特性を持つのであるが、ΔVF^の項は、正の温度特性を持つVTと、負の温度特性を持つln[n^{(I4+I5)/(I3+I6−VF3/R4)}]の積で表されることになる。
【0128】
ここで、注目すべきは、電流(VF3/R4)の項である。この項(VF3/R4)には、VFの温度特性の非直線性が現れ、負の温度特性を持つVF3の項に現れるVFの温度特性の非直線性と正の温度特性を持つΔVF^の項に現れるVFの温度特性の非直線性が重畳されて現れる。
【0129】
したがって、この基準電流回路の内部の駆動電流(I4+I5)、(I3+I6)には、従来回路で詳しく説明した番場の回路よりも、VFの温度特性の非直線性が顕著に現れることになる。しかも、抵抗R4によりその影響を可変設定できるのである。
【0130】
一方、第2の基準電流回路の出力電流I7は、電流I5、I6に比例する電流である。第2の基準電流回路の内部の駆動電流(I4+I5)、(I3+I6)には、第1の基準電流回路の出力電流I3、I4が供給されているから、
第1の基準電流回路でnを小さな値にし、
第2の基準電流回路でn^を大きな値に設定し、
R1<R3
とすることで、第1の基準電流回路の内部の駆動電流I1、I2に、VFの温度特性の非直線性が顕著に現れるように設定する。
【0131】
逆に、第2の基準電流回路の内部の駆動電流(I4+I5)、(I3+I6)に、VFの温度特性の非直線性がそれほど顕著には現れないように設定すると、第2の基準電流回路の内部の駆動電流(I4+I5)、(I3+I6)に現れるVFの温度特性の非直線性が、第1の基準電流回路から供給される出力電流I3、I4が持つVFの温度特性の非直線性と同一になるように設定することも可能になる。
【0132】
したがって、第2の基準電流回路の出力電流I7は、VFの温度特性の非直線性が除かれた電流に設定できる。すなわち、第2の基準電流回路の出力電流I7は、温度特性が十二分に相殺された一定電流に設定できる。
【0133】
上述した詳しい動作説明から、第1の基準電流回路の出力電流I4、I3を、それぞれ、ダイオードD3からなる第3の電流−電圧変換回路と、ダイオードD4と抵抗R3、R4からなる第4の電流−電圧変換回路に供給することで、第2の基準電流回路の内部の駆動電流から第1の基準電流回路の出力電流I3、I4を減算する機能が実現されていることがわかる。
【0134】
[シミュレーション結果の例]
SPICEシミュレーションの例として、VDD=1.2V、R1=3.74KΩ、R2=200KΩ、R3=8KΩ、R4=200KΩ、R5=100KΩ、D1、D3を単位ダイオード(X1)、D2を単位ダイオードの2倍(X2)、D4を単位ダイオードの4倍(X4)、第1のカレントミラー回路の電流比をM1:M2:M3:M4: =2:2:1.2:1.2、第1のカレントミラー回路の電流比をM5:M6:M7=2:2:2に設定した場合に、図4に示すシミュレーション結果が得られた。
【0135】
VREFの値は、常温で最大電圧となり、低温、高温で電圧が極々微小に減少する極々微小ではあるがお椀を伏せた型の温度特性が得られ、−53℃で291.3128 mV、27℃で291.3697 mV、107℃で291.3119 mVが得られた。温度特性は160℃の変化で−0.020146%(-60μV)と極々微小である。
【実施例2】
【0136】
第1の基準電流回路の出力を1つにして、図5のように変更しても良い。図5において、MOSトランジスタM1とM2とM3は第1のカレントミラー回路を構成し、共通ゲート電圧はOP amp(AP1)により、OP ampの逆相、正相の2つの入力端子電圧が等しくなるように制御され、それにより第1のカレントミラー回路に流れる電流が決定される第1の基準電流回路を構成している。
【0137】
OP amp(AP1)の逆相、正相の2つの入力端子はそれぞれダイオードD1からなる第1の電流−電圧変換回路とダイオードD2と抵抗R1が直列接続され、さらにそれらにR2が並列接続されてなる第2の電流−電圧変換回路に接続されている。
【0138】
また、MOSトランジスタM4とM5は第2のカレントミラー回路を構成し、共通ゲート電圧はOP amp(AP2)により、OP ampの逆相、正相の2つの入力端子電圧が等しくなるように制御され、それにより第2のカレントミラー回路に流れる電流が決定される第2の基準電流回路を構成している。
【0139】
OP amp(AP2)の2つの入力端子はそれぞれダイオードD1からなる第1の電流−電圧変換回路とダイオードD3と抵抗R3が直列接続され、さらにそれらにR4が並列接続されてなる第3の電流−電圧変換回路に接続されている。
【0140】
本実施例において、図3の実施例1からの変更は、ダイオードD1からなる第1の電流−電圧変換回路を、第1の基準電流回路と第2の基準電流回路とで共有し、第1の基準電流回路からの出力を1つに減らしたことである。第1の基準電流回路は、ダイオードD1からなる第1の電流−電圧変換回路とダイオードD2と抵抗R1とR2からなる第2の電流−電圧変換回路よりなる。第2の基準電流回路は、第1の基準電流回路と共用する第1の電流−電圧変換回路とダイオードD3と抵抗R3とR4からなる第3の電流−電圧変換回路よりなる。
【0141】
ダイオードD3と抵抗R3とR4からなる第3の電流−電圧変換回路には、第1の基準電流回路から第1のカレントミラー回路を介して出力される電流I3と、第2のカレントミラー回路から供給される電流I4とが同時に供給されている。
【0142】
図5において、ダイオード(又はダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D1、D2の順方向電圧をVF1、VF2とすると、OP amp(AP1)により逆相、正相の2つの入力端子電圧が等しく(VA=VB)なるように制御される。
【0143】
したがって、
VA=VB=VF1 (24)
である。
【0144】
ここで、簡単のために、MOSトランジスタM1とM2の電流が等しいとすると、
I1=I2 (25)
となる。
【0145】
ただし、電流I1は第1の電流−電圧変換回路を構成するダイオードD1に直接流れて電圧変換されるが、第2の電流−電圧変換回路については、電流I2は抵抗R1を介してダイオードD2に流れる電流と抵抗R2に流れる電流に2分される。
【0146】
I1=I2=(VF1―VF2)/R1+VF1/R2
={VF1+(R2/R1)ΔVF}/R2 (26)
となる。
【0147】
ここで、VF1はおよそ−1.9mV/℃の温度特性(温度係数)を持つ。また、VF2もおよそ−1.9mV/℃の温度特性(温度係数)を持つ。
【0148】
D1をいずれも単位ダイオード、D2を単位ダイオードのn倍であるとすると、
ΔVF=VTln[n{I1/(I2−VF1/R2)}] (27)
と表わされる。
【0149】
ここで、
I1=I2
であるから、常に、
I1>(I2−VF1/R2)
であり、
I1/(I2−VF1/R2)>1
が成り立つ。よって、(27)式のlnの項は常に正(>0)であることが理解される。
【0150】
すなわち、ΔVFは良く知られているように、この回路においても、正の温度特性を持つようになる。したがって、この温度特性は熱電圧VT(その温度特性は0.0853mV/℃)にほぼ比例する。
【0151】
すなわち、(26)式の{VF1+(R2/R1)ΔVF}の項の温度特性は、負の温度特性を持つVF1と正の温度特性を持つΔVFを、抵抗比(R2/R1)を設定して重み付け加算することでほぼ相殺することができる。
【0152】
さらに、詳しく見ると、VF1はおよそ−1.9mV/℃の負の温度特性を持ち、電流(VF1/R2)は負の温度特性を持つ。
【0153】
したがって、n{I1/(I2−VF1/R2)}は、負の温度特性を持ち、その対数値ln[n{I1/(I2−VF1/R2)}]は多少の負の温度特性を持つことになる。
【0154】
すなわち、(26)式において、
VF1の項は負の温度特性を持ち、
ΔVFの項は正の温度特性を持つのであるが、ΔVFの項は正の温度特性を持つVTと負の温度特性を持つln[n{I1/(I2−VF1/R2)}]の積で表されることになる。
【0155】
ここで注目すべきは電流(VF1/R2)の項である。この項(VF1/R2)には、VFの温度特性の非直線性が現れ、負の温度特性を持つVF1の項に現れるVFの温度特性の非直線性と正の温度特性を持つΔVFの項に現れるVFの温度特性の非直線性が重畳されて現れる。
【0156】
したがって、この基準電流回路の出力電流I3には、従来回路で詳しく説明した番場の回路よりもVFの温度特性の非直線性が顕著に現れることになる。しかも、抵抗R2によりその影響を可変設定できるのである。
【0157】
さらに、電流I1、I2に比例した第1の基準電流回路の出力電流I3は、ダイオードD3と抵抗R3、R4からなる第3の電流−電圧変換回路に供給されている。
【0158】
同様に、ダイオード(又はダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D3の順方向電圧をVF3とすると、OP amp(AP2)により逆相、正相の2つの入力端子電圧が等しく(VC=VA)なるように制御される。
【0159】
したがって、
VA=VC=VF1 (28)
である。
【0160】
ここで、簡単のために、MOSトランジスタM1とM2の電流I1、I2と、M3、M4の電流の和I3+I4が等しいとすると、
I1=I2=I3+I4 (29)
となる。
【0161】
ただし、第3の電流−電圧変換回路に供給される電流(I3+I4)は、抵抗R3を介してダイオードD3に流れる電流と抵抗R4に流れる電流に2分される。
【0162】
I3+I4=(VF1―VF3)/R3+VF1/R4
={VF1+(R4/R3)ΔVF^}/R4 (30)
となる。
【0163】
ここで上述したように、VF1はおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。また、VF3もおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。
【0164】
D3を単位ダイオードのn^倍であるとすると、ΔVF^(=VF1-VF3)は、
ΔVF^=VTln[n^{I1/(I3+I4−VF1/R4)}] (31)
と表わされる。
【0165】
ここで、
I3+I4=I1
である。よって、常に、
I1>(I3+I4−VF1/R4)
であり、
I1/(I3+I4−VF1/R4) >1
が成り立つ。したがって、(31)式のlnの項は常に正(>0)であることが理解される。
【0166】
すなわち、ΔVF^は良く知られているように、この回路においても正の温度特性を持つようになる。したがって、この温度特性は熱電圧VT(その温度特性は0.0853mV/℃)にほぼ比例する。
【0167】
すなわち、(30)式の{VF1+(R4/R3)ΔVF^}の項の温度特性は、負の温度特性を持つVF1と、正の温度特性を持つΔVF^を、抵抗比(R4/R3)を設定して重み付け加算することでほぼ相殺することができる。
【0168】
さらに、詳しく見ると、VF1はおよそ−1.9mV/℃の負の温度特性を持ち、電流(VF3/R4)は負の温度特性を持つ。
【0169】
したがって、n^{I1/(I3+I4−VF1/R4)}は、負の温度特性を持ち、その対数値ln[n^{I1/(I3+I4−VF1/R4)}]は多少の負の温度特性を持つことになる。
【0170】
すなわち、(30)式において、
VF1の項は負の温度特性を持ち、
ΔVF^の項は正の温度特性を持つのであるが、ΔVF^の項は正の温度特性を持つVTと負の温度特性を持つln[n^{I1/(I3+I4−VF1/R4)}]の積で表されることになる。
【0171】
ここで注目すべきは、電流(VF3/R4)の項である。この項(VF3/R4)には、VFの温度特性の非直線性が現れ、負の温度特性を持つVF1の項に現れるVFの温度特性の非直線性と正の温度特性を持つΔVF^の項に現れるVFの温度特性の非直線性が重畳されて現れる。
【0172】
したがって、この基準電流回路の内部の駆動電流(I3+I4)には、従来回路で詳しく説明した番場の回路よりもVFの温度特性の非直線性が顕著に現れることになる。しかも抵抗R4によりその影響を可変設定できるのである。
【0173】
一方、第2の基準電流回路の出力電流I5は電流I4に比例する電流である。第2の基準電流回路の内部の駆動電流(I3+I4)には、第1の基準電流回路の出力電流I3が供給されているから、
第1の基準電流回路でn(D2はD1のn倍)を小さな値にし、
第2の基準電流回路でn^(D3はD1のn^倍)を大きな値に設定し、
R1<R3
とすることで、第1の基準電流回路の内部の駆動電流I1、I2に、VFの温度特性の非直線性が顕著に現れるように設定する。逆に、第2の基準電流回路の内部の駆動電流(I3+I4)に、VFの温度特性の非直線性がそれほど顕著には現れないように設定すると、第2の基準電流回路の内部の駆動電流(I3+I4)に現れるVFの温度特性の非直線性が、第1の基準電流回路から供給される出力電流I3が持つVFの温度特性の非直線性と同一になるように設定することも可能になる。
【0174】
したがって、第2の基準電流回路の出力電流I5は、VFの温度特性の非直線性が除かれた電流に設定できる。すなわち、第2の基準電流回路の出力電流I5は、温度特性が十二分に相殺された一定電流に設定できる。
【0175】
上述した詳しい動作説明から、第1の基準電流回路の出力電流I3をダイオードD3と抵抗R3、R4からなる第3の電流−電圧変換回路に供給することで、第2の基準電流回路の内部の駆動電流から第1の基準電流回路の出力電流I3を減算する機能が実現されていることがわかる。
【0176】
本発明の活用例として、LSI上に集積される各種基準電圧回路が挙げられる。特に、最近の集積回路プロセスの超々微細化の進展に伴い、LSIへの供給電源電圧が低下してきており、このため、電源電圧が1V前後でも動作する温度変動がない安定した基準電圧回路が必要になってきている。本発明は、そうした要望に答えることができる。
【0177】
以上、本発明を上記実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明の実施形態の回路構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の特性を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施例の回路構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施例の特性(シミュレーション結果)を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例の回路構成を示す図である。
【図6】Brokawが提案した従来の基準電圧回路の構成を示す図である。
【図7】Brokawが提案した従来の基準電圧回路の動作を説明する図である。
【図8】Brokawが提案した従来の基準電圧回路で得られた特性を示す図である(シミュレーション)。
【図9】木村が提案した基準電圧回路(本願出願時未公開)の一例を示す図である。
【図10】木村が提案した基準電圧回路の動作を説明する図である。
【図11】木村が提案した基準電圧回路で得られた特性図(シミュレーション結果)である。
【図12】Ker et al.が提案した従来の基準電圧回路の構成を示す図である。
【図13】Ker et al.が提案した従来の基準電圧回路の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0179】
101 第1の電流電圧変換回路(I-V1)
102 第2の電流電圧変換回路(I-V2)
103 第3の電流電圧変換回路(I-V3)
104 第4の電流電圧変換回路(I-V4)
105 第5の電流電圧変換回路(I-V5)
111 第1のカレントミラー回路
112 第2のカレントミラー回路
121 第1の誤差電圧増幅回路(AP1)
122 第2の誤差電圧増幅回路(AP2)
130 減算回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMOS基準電圧回路に関し、特に半導体集積回路上に形成され、チップ面積が小さく、低電圧から動作し、ダイオードの非直線性を補償した温度特性の小さなCMOS基準電圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のダイオードの非直線性を補償した基準電圧回路はこれまでも時折見られたが、この分野の専門家を納得させ得る提案はなかった。しかし、最近になって、この分野の専門家も納得し得る提案が行われるようになってきている。
【0003】
第1の提案はこの分野の最長老Brokawの提案である。第2の提案はこの分野での登録特許数が最も多い本願発明者(木村)の提案である。これら第1、第2の提案回路の特徴は、いずれもダイオードの非直線性を補償し得る回路ブロックとしてダイオードと抵抗からなる回路網を利用している。第3の提案は、新興台湾の大学から発信されたKer et al.の提案回路である。
【0004】
はじめに、図6を参照して、第1の提案回路であるBrokawの回路を説明する(特許文献1)。特許文献1(US2005/0194957 A1)の明細書では、多くの式を記載して温度特性を説明しているが、ここでは図に示して説明するに止める。
【0005】
図6において、ダイオードD1、D2の順方向電圧をそれぞれVBE1、VBE2とする。誤差電圧増幅回路AP1は、p-チャネルMOSトタンジスタM1、M2のゲート電圧を制御して誤差電圧増幅回路AP1の差動入力端子電圧VA、VBが等しくなるように動作している。
【0006】
したがって、
VA=VB=VBE1 (1)
となる。
【0007】
ここで、抵抗R1、R2、R3の共通接続端子の電圧をV1とすると、抵抗R1に流れる電流IR1は、次式(2)で与えられる。
【0008】
IR1=(VBE1−V1)/R1=ΔV1/R1 (2)
【0009】
また、抵抗R2に流れる電流IR2は、次式(3)で与えられる。
【0010】
IR2=(V1−VBE2)/R2=ΔV2/R2 (3)
【0011】
抵抗R3に流れる電流IR3は、次式(4)で与えられる。
【0012】
IR3=V1/R3 (4)
ここで、電流について次式(5)が成り立つ。
【0013】
IR1=IR2+IR3 (5)
【0014】
式(5)と式(2)、(3)、(4)から次式(6)の関係が成り立つ。
【0015】
ΔV1/R1=ΔV2/R2+V1/R3 (6)
【0016】
ここで、温度特性を考慮すると、ダイオード1の順方向電圧VBE1は、良く知られているように、負の温度特性(温度係数の値がマイナス)を持つ。しかも、この温度特性は、低温になるほど、その傾きが小さくなり、ここで問題とされている非直線性の原因を作り出している。
【0017】
簡単のために、抵抗R1、R2、R3(、R4)の温度特性はないものとすると、トランジスタM3から供給される電流I3は、トランジスタM2から供給される電流I2に比例し、
I2=IR1(=ΔV1/R1)
である。
【0018】
VREF(=I3R4)が温度特性を持たないことより、抵抗R1、R2、R3の共通接続端子の電圧V1は、ダイオード1の順方向電圧VBE1から一定電圧値だけ小さくした電圧となり、図示すれば、VBE1を下に平行移動した曲線となる。
【0019】
一方、(6)式から、ダイオード2の順方向電圧VBE2は、V1の負の温度特性を相殺するように、更に大きな負の温度特性を持つことになる。すなわち、図7に示したような温度特性を持つ電圧とならないと、温度特性を相殺できないことがわかる。
【0020】
Brokawによる回路(図6参照)のSPICEシミュレーション値(出力電圧Vrefの温度特性)を、図8に示す。図8に示すように、-55℃〜135℃の190℃の温度範囲において±0.15%の温度偏差が得られている。
【0021】
次に、図9を参照して、木村の回路(特願2005-016902号;本願出願時未公開)について説明しておく。図9において、ダイオードD1、D2の順方向電圧をそれぞれVBE1、VBE2とする。誤差電圧増幅回路(差動増幅回路又はOP amp)AP1はトランジスタM1、M2のゲート電圧を制御して誤差電圧増幅回路AP1の差動入力端子電圧VA、VBが等しくなるように動作している。
【0022】
したがって、
VA=VB=V1 (7)
となる。
【0023】
ここで、抵抗R1に流れる電流IR1、抵抗R3に流れる電流IR3は、次式(8)、(9)とそれぞれ表される。
【0024】
IR1=(V1−VBE1)/R1=ΔV1/R1 (8)
【0025】
IR3=(V1−VBE2)/R3=ΔV2/R3 (9)
【0026】
ここで、簡単のために抵抗R1、R2、R3、R4(、R5)の温度特性はないものとし、IR1、IR3ともに温度特性を持たないものとすると、IR1=IR3の場合に、
ΔV1/R1=ΔV2/R3 (10)
となる。
【0027】
したがって、(10)式の両辺ともに温度特性を持たないためには、VBE1、VBE2ともにV1から一定電圧値だけ小さくした電圧となり、図示すればV1をそれぞれ下に平行移動した曲線となる。
【0028】
すなわち、図10に示したような温度特性を持つ電圧とならないと温度特性を相殺できないことがわかる。
【0029】
この回路のSPICEシミュレーション値が図11に示されている。電源電圧1.2Vの時に、R1=1.2kΩ、R2=70kΩ、R3=2.408kΩ、R4=38kΩ、R5=20kΩ、ダイオードD1を単位ダイオード、ダイオードD2は単位ダイオードを2個並列接続(X2)とし、トランジスタM1、M2、M3を等しくしてカレントミラー比を1:1:1とした場合である。-46℃で542.5mV、27℃で541.2mV、100℃で542.4mVが得られ、温度特性は、146℃の温度範囲で+0.185%となり、常温(27℃)で最小電圧となり、低温(-46℃)、高温で電圧が微小に上昇する微小ではあるが、お椀型の温度特性が得られた。
【0030】
SPICEシミュレーションでは、始めはお椀を伏せた型になったが、抵抗R3の値を変えることで直線化でき、たまたま上記の値の場合に直線を微妙に越えてしまい、お椀型の温度特性となった。
【0031】
次に、Ker et al.の回路について説明する。図12に示すKer et al.の回路(非特許文献1のFig.3参照)は、p-ch(pチャネル)とn-ch(nチャネル)の2つの番場の回路を用い、両者の出力電流を減算して、温度特性を相殺すると説明している。図13は、そのメカニズムを説明する図である(非特許文献1のFig.2、特許文献2(US2005/0264345 A1)のFig.7等参照)。
【0032】
図13(A)に示すように、ダイオード接続されたpnpトランジスタと、p-chトランジスタM1、M2から構成されたカレントミラー回路を含む番場の回路を、出力電流I1である第1の基準電流回路とし、ダイオード接続されたnpnトランジスタと、n-chトランジスタM3、M4から構成されたカレントミラー回路を含む番場の回路を出力電流I2である第2の基準電流回路とし、第2の基準電流回路の出力電流I2から第1の基準電流回路の出力電流I1を引き算して、
ΔI(=I2−I1)
を得ている。
【0033】
図13(B)、図13(D)に示すように、第1、第2の基準電流回路の出力電流I1、I2ともに温度特性はお椀型で示してあるが、番場の回路(特許文献3)を始め一般的なこの種の回路では、温度特性は、お椀型をひっくり返した形となることが報告されている。
【0034】
図13に示されたように、第1、第2の基準電流回路の出力電流I1、I2について、
I1<<I2
とするためには、第1の基準電流回路と第2の基準電流回路では並列接続されるダイオードの数や抵抗値を大きく異ならせる必要があることは言うまでもないが、pnpトランジスタ、p-chトランジスタとnpnトランジスタ、n-chトランジスタとの間のそれぞれの特性が一致する訳もなく、どの程度の相殺度が実現できるかに疑問が涌こう。
【0035】
番場の回路は、特許文献3(特開平11-45125号公報)あるいは特許文献4(米国特許明細書第6,160,391号)に示される。
【0036】
Banba et al.の論文(”A CMOS Band-Gap Reference Circuit with Sub 1V Operation,” 1998 IEEE Symposium on VLSI Circuits Digest of technical Papers 19.3 pp. 228-229.あるいは、そのfull paperであるIEEE Journal of Solid-State Circuits, Vol. 34, No. 5, pp. 670-674, May 1999.)が通常は参照されているが、図12に示される抵抗R1a、R1b、R2a、R2b(ただし、R2b_NPNとR1b_NPNは入れ違えになっている。)で分圧して誤差電圧増幅回路への入力電圧を、ダイオード電圧を分圧した電圧値に設定するやり方は、番場の特許明細書の図6(US PatentではFig. 8)そのものであるが、上述したBanba et al.の論文には記載されていないために、特開平11-45125以降、しかも、Banba et al.の論文発表以降の別の論文発表者の仕事として参照されることが広く行われている。この回路は古く、1997年7月29日の出願であり、発明はそれ以前になされている。
【0037】
図12に示した回路(非特許文献1のFig.3)は、極性の異なる2つの番場の回路を組み合わせた構成になっている。第1の基準電流回路では2つのダイオード接続されたpnpトランジスタ(Q1_PNP,Q2_PNP)の面積比を、nPNPとすると、電流I1は、次式(11)と表される。
【0038】
I1={VBE2_PNP+(R2_PNP /R3_PNP)VTln(nPNP)}/R2_PNP (11)
【0039】
(11)式において、
R1_PNP=R1a_PNP+R1b_PNP=R2_PNP=R2a_PNP+R2b_PNP
である。また(11)式において、VBE2_PNPは、Q2_PNPのベース・エミッタ間電圧、VTは熱電圧である。
【0040】
同様に第2の基準電流回路では2つのダイオード接続されたnpnトランジスタ(Q1_NPN,Q2_NPN)の面積比を、nNPNとすると、電流I2は、次式(12)と表される
【0041】
I2={VBE2_NPN+(R2_NPN /R3_NPN)VTln(nNPN)}/R2_NPN (12)
【0042】
(12)式において、
R1_NPN=R1a_NPN+R2b_NPN=R2_NPN=R2a_NPN+R1b_PNP
である。(12)式において、VBE2_NPNは、Q2_NPNのベース・エミッタ間電圧、VTは熱電圧である。なお、正しくはR1_NPN=R1a_NPN+R1b_NPN=R2_NPN=R2a_NPN+R2b_PNPである。誤記を訂正すれば、(11)式と(12)式とでは、PNP側とNPN側とでは同一となっている。
【0043】
ここで、{}内の式
{VBE2_NPN+(R2_NPN /R3_NPN)VTln(nNPN)}、あるいは
{VBE2_PNP+(R2_PNP /R3_PNP)VTln(nPNP)}
は従来から良く知られている、この種の基準電圧発生回路――所謂Dobkin et al.(米国特許明細書:US 3,617,859)の発明として知られ、共同発明者の名を冠して、”Widlar bandgap voltege reference”と呼び習わされている基準電圧発生回路――の回路解析式に示される式である。
【0044】
この種の基準電圧発生回路が筆頭(第1)発明者ではなく共同(第2)発明者の名を冠して呼ばれていることも奇妙ではあるが、それの原因となったのは、共同(第2)発明者単独の論文(R. J. Widlar, “New Developments in IC Voltage Regulators,” IEEE Journal of Solid-State Circuits, Vol. SC-6, No. 1, pp. 2-6, Feb. 1971. )によるが、実は、これら米国特許明細書(US Patent)と論文での回路解析式は、基準電圧発生電圧に直接関わるQ1(VBE1)とQ2(VBE2)との関係式ではなく、Q1とQ2を制御するQ3(VBE3)と基準電圧発生電圧に直接関わるQ2(VBE2)との関係式をVBE3の代わりに、VBE1を用いて表記したものであり、この分野の専門家には理解し難いものである。
【0045】
その後には、この種の基準電圧発生電圧には自己バイアス手法が用いられ、Q1とQ2に等しい電流を流すことで回路動作も誰もが理解できるものとなった。
【0046】
この種の基準電圧発生回路においては、出力される基準電圧は、いずれか一方のVBEと2つのVBEの差電圧(ΔVBE)の重み付け加算の式で示される。すなわち、(11)式と(12)式の{}内の式がそれに相当する。
【0047】
(11)式においては、
ΔVBE=VTln(nPNP) (13)
である。
【0048】
(12)式においては、
ΔVBE=VTln(nNPN) (14)
である。
【0049】
良く知られているように、ΔVBEは正の温度特性を持ち、VBEはおよそ−1.9mV/℃前後の負の温度特性(温度係数)を持つ。したがって、両者を重み付け加算することで、温度特性を相殺できることになる。その重み付けは、VBEを常温で600mVとすると、VTが常温で26mVであるから、21.9{=1.9mV/(26mV/300)}と求められる。
【0050】
すなわち、
(R2/R3)ln(n)=21.9 (15)
となる。
【0051】
この21.9を、抵抗比(R2/R3)とエミッタ面積比nの対数値ln(n)に分配することになる。
【0052】
1次近似としては、これで正しいのであるが、VBEの負の温度特性の2次的影響を考慮すると、完全には相殺できずに、基準電圧発生回路の出力電圧は、一般的には、常温から温度が上がっても、あるいは下がっても、いずれも場合にも、電圧が低下するお椀を伏せた特性となる。
【0053】
Ker et al.の回路においては、I2((12)式)からI1((11)式)を引き算する訳であるが、差分が現れるためには、当然、I2>I1に設定する必要がある。
【0054】
しかしながら、(11)式、(12)式では、R2は基準電圧を電流変換する抵抗であるが、元々は、基準電圧の温度特性を相殺するための重み付け加算用の抵抗である。したがって、出力電流をI2>I1に設定するためには、元々、エミッタ面積比nを、NPNとPNPとで大きく異ならせておく必要がある。
【0055】
すなわち、
R2_NPN<R2_PNP
であるから、簡単のために、
R3_NPN=R3_PNP
とすれば、
nNPN>>nPNP
に設定する必要がある。
【0056】
また、極性が異なるNPNとPNPとでは特性が一致することは考えられない。
【0057】
なお、本願発明者による特許文献5の図4には、PTATと逆PTAT回路を組み合わせて温度特性を持たないようにした基準電流回路が開示されているが、ダイオードの非直線性(温度特性の非線形性)の補償は行われていないことを付言しておく。
【0058】
【特許文献1】米国特許明細書 US2005/0194957 A1
【特許文献2】米国特許明細書 US2005/0264345 A1
【特許文献3】特開平11-45125号公報
【特許文献4】米国特許明細書 第6,160,391号
【特許文献5】特開平8-123568号公報
【非特許文献1】M.-D. Ker et al.,“New Curvature-Compensation Technique for CMOS Bandgap Reference with Sub-1-V Operation,” (IEEE ISCAS’05), 発行年月日 23-26, May 2005 Fig. 3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0059】
図6、図12、図13等を参照して説明した基準電圧回路は、下記記載の問題点を有している。
【0060】
第1の問題点は、バラツキが大きくなる、ということである。その理由は、ダイオード接続されるトランジスタの極性が異なるNPNとPNPとを用いているために、特性が一致しないためである。
【0061】
第2の問題点は、高精度化しずらい、ということである。その理由は、元々、温度特性の非線形性が小さな基準電流回路同士で相殺しようとしているために、高精度化することが困難であることによる。
【0062】
したがって、本発明は、上記問題点に鑑み、低電圧から動作し、温度特性の非直線性を高精度で相殺した小さな任意の基準電圧を出力する基準電圧回路の実現を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0063】
本願で開示される発明は、上記課題を解決するため、概略以下の構成とされる。
【0064】
本発明の基準電圧回路は、第1の基準電流回路と第2の基準電流回路と、前記第1の基準電流回路の出力電流と前記第2の基準電流回路の出力電流の差電流を出力する手段と、を備えている。第1の基準電流回路は、第1及び第2の電流−電圧変換回路と、前記第1の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第2の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧とが互いに等しくなるように制御する第1の制御手段と、前記第1の電流−電圧変換回路と前記第2の電流−電圧変換回路に電流をそれぞれ供給する第1のカレントミラー回路と、を備え、第2の基準電流回路は、第3及び第4の電流−電圧変換回路と、前記第3の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第4の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧とが互いに等しくなるように制御する第2の制御手段と、前記第3の電流−電圧変換回路と前記第4の電流−電圧変換回路に電流を供給する第2のカレントミラー回路と、を備えている。本発明は、前記第1の基準電流回路の出力電流と前記第2の基準電流回路の出力電流の前記差電流から、第5の電流−電圧変換回路を介して出力電圧を得る構成とされる。
【0065】
本発明において、好ましくは、前記第1及び第2のカレントミラー回路は、線形な入出力特性を持つ線形カレントミラー回路である。
【0066】
本発明において、前記2つの基準電流回路の出力電流の差電流を出力する手段が、前記第1のカレントミラー回路の出力電流に比例した電流を、それぞれ、前記第3と第4の電流−電圧変換回路に流し込む構成とされ、前記第2のカレントミラー回路の出力電流を受ける前記第5の電流−電圧変換回路を介して出力電圧を得るようにしてもよい。
【0067】
本発明において、前記第1及び第3の電流−電圧変換回路の各々は、ダイオードからなり、前記第2の電流−電圧変換回路は、1つのダイオード又は並列接続された複数のダイオードと、前記1つ又は複数のダイオードに直列に接続された第1の抵抗と、からなる直列回路に、第2の抵抗を並列に接続して構成され、前記第4の電流−電圧変換回路は、1つのダイオード又は並列接続された複数のダイオードと、前記1つ又は複数のダイオードに直列に接続された第3の抵抗とからなる直列回路に、第4の抵抗を並列に接続して構成され、前記第5の電流−電圧変換回路は、第5の抵抗からなる、構成としてもよい。
【0068】
本発明において、前記第1の制御手段は、前記第1の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第2の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧を差動入力し、出力電圧が前記第1のカレントミラー回路の共通ノードを制御する第1の差動増幅回路よりなり、前記第2の制御手段は、前記第3の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第4の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧を差動入力し、出力電圧が前記第2のカレントミラー回路の共通ノードを制御する第2の差動増幅回路よりなる。
【0069】
本発明において、前記第1の基準電流回路と前記第2の基準電流回路とは、ダイオードの個数が相違し、ダイオードの温度特性の非直線性を異ならせるようにしている。
本発明において、前記ダイオードの少なくとも1つは、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタで構成してもよい。
【0070】
本発明においては、ダイオード(又はダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)と抵抗を直列接続し、さらに抵抗を並列接続することで、ダイオード(又はダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)の持つ温度特性の非直線性を顕著にすることができ、2つの回路間で精度良く相殺することができる。
【発明の効果】
【0071】
本発明によれば、温度特性を小さくすることができる。その理由は、本発明においては、ダイオードの温度特性の非直線性が顕著に現れる2つの回路で相殺しているからである。本発明によれば、ダイオードの非直線な温度特性の影響を低減し高精度化可能としている。
【0072】
本発明によれば、低電圧で動作させることができる。その理由は、本発明においては、出力電圧が1.2V以下(具体的には1.0V以下)の任意の電圧値に設定できるからである。
【0073】
本発明によれば、高精度化を可能としている。その理由は、本発明においては、比較される2つの基準電流回路の回路トポロジを同一にしているからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明は、図1を参照すると、第1及び第2の電流−電圧変換回路(101、102)と、前記第1及び第2の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧(VA、VB)が等しくなるように制御する制御手段(121)と、第1及び第2の電流−電圧変換回路(101、102)に電流(I1、I2)をそれぞれ供給する第1のカレントミラー回路(111)と、を備えた第1の基準電流回路(1)と、第3及び第4の電流−電圧変換回路(103、104)と、第3及び第4の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧(VC、VD)が等しくなるように制御する制御手段(122)と、前記第3及び第4の電流−電圧変換回路(103、104)にそれぞれ電流(I4、I5)を供給する第2のカレントミラー回路(112)と、を備えた第2の基準電流回路(2)と、前第1の基準電流回路(1)の出力電流(I3)と第2の基準電流回路(2)の出力電流(I6)の差電流(Iref)を出力する手段(130)と、差電流(Iref)から出力電圧Vrefを得る第5の電流−電圧変換回路(105)を備えている。
【0075】
より詳しくは、本発明においては、第1の基準電流回路(1)は、第1及び第2の電流−電圧変換回路(101、102)と、ソース(第1端子)が電源(VDD)に共通接続されゲート(制御端子)が共通に接続され第1のカレントミラー回路(111)を構成する第1乃至第3のトランジスタ(M1、M2、M3)と、第1の電流−電圧変換回路(101)と第1のトランジスタ(M1)のドレイン(第2端子)との接続点と、第2の電流−電圧変換回路(102)と第2のトランジスタ(M2)のドレインとの接続点とに、反転入力端子と非反転入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が第1乃至第3のトランジスタの共通のゲートに接続された第1の差動増幅回路(121)と、を備えている。第2の基準電流回路(2)は、第3及び第4の電流−電圧変換回路(103、104)と、ソースが電源(VDD)に共通接続されゲートが共通に接続され第2のカレントミラー回路(112)を構成する第4乃至第6のトランジスタ(M4、M5、M6)と、第3の電流−電圧変換回路(103)と第4のトランジスタ(M4)のドレインとの接続点と、第4の電流−電圧変換回路(104)と第5のトランジスタ(M5)のドレインとの接続点とに、反転入力端子と非反転入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が第4乃至第6のトランジスタの共通のゲートに接続された第2の差動増幅回路(122)と、を備えている。第3のトランジスタ(M3)のドレインからの出力電流(I3)と、第6のトランジスタ(M6)のドレインからの出力電流(I6)との差電流(Iref)を得る減算回路(130)を備え、第5の電流−電圧変換回路(105)は、減算回路(130)からの差電流(Iref)を電圧に変換し出力電圧(Vref)として取り出される。第1及び第3の電流−電圧変換回路(101、103)は、カソード端子が接地されたダイオード(D1)よりなり、第2及び第4の電流−電圧変換回路(102、104)の各々は、カソード端子が接地された、1つ又は、複数並列に接続されたダイオードと、抵抗との直列回路に、別の抵抗を並列接続した構成とされ、第5の電流−電圧変換回路(105)は、一端が接地された抵抗よりなる。本発明において、第2及び第4の電流−電圧変換回路(102、104)等において、ダイオードの個数等、それぞれの回路トポロジ及び/又は素子値が異なるようにしてもよい。
【0076】
あるいは、第1の基準電流回路は、図3を参照すると、ダイオード(D1)よりなる第1の電流−電圧変換回路と、一端が接地され複数並列に接続されたダイオード(D2)と、抵抗(R1)との直列回路に、別の抵抗(R2)を並列接続した構成の第2の電流−電圧変換回路と、ソース(第1端子)が電源(VDD)に共通接続されゲート(制御端子)が共通に接続され第1のカレントミラー回路を構成する第1乃至第4のトランジスタ(M1、M2、M3、M4)と、第1の電流−電圧変換回路(D1)と第1のトランジスタ(M1)のドレイン(第1端子)との接続点(VA)と、第2の電流−電圧変換回路(D2,R1,R2)と第2のトランジスタ(M2)のドレインとの接続点(VB)とに、反転入力端子と非反転入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が第1乃至第4トランジスタ(M1、M2、M3、M4)の共通のゲートに接続された第1の差動増幅回路(AP1)と、を備える。第2の基準電流回路は、ダイオード(D3)よりなる第3の電流−電圧変換回路と、一端が接地され複数並列に接続されたダイオード(D4)と、抵抗(R3)との直列回路に、別の抵抗(R4)を並列接続した構成の第4の電流−電圧変換回路と、ソースが電源(VDD)に接続されゲートが共通に接続され第2のカレントミラー回路を構成する第5乃至第7のトランジスタ(M5、M6、M7)と、第3の電流−電圧変換回路(D3)と第5のトランジスタ(M5)のドレインとの接続点(VC)と、第4の電流−電圧変換回路(D4,R3,R4)と第6のトランジスタ(M6)のドレインとの接続点(VD)とに、反転入力端子と非反転入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が第5乃至第7トランジスタ(M5、M6、M7)の共通のゲートに接続されている第2の差動増幅回路(AP2)と、を備え、第3のトランジスタ(M3)のドレインは、第4の電流−電圧変換回路(D4,R3,R4)と第6のトランジスタ(M6)のドレインと第2の差動増幅回路(AP2)の非反転入力端子(+)との接続点に接続され、第4のトランジスタ(M4)のドレインは第3の電流−電圧変換回路(D3)と第5のトランジスタ(M5)のドレインと第2の差動増幅回路(AP2)の反転入力端子(−)との接続点に接続される。第7のトランジスタ(M7)のドレインに一端が接続され他端がGNDに接続された抵抗R5よりなり、第7のトランジスタ(M7)の電流(I7)を電圧に変換し出力電圧(Vref)として取り出される第5の電流−電圧変換回路とを備えている。本発明においては、第1及び第2の基準電流回路において、第2及び第4の電流−電圧変換回路のそれぞれの前記ダイオードの個数が相違し(D2の個数とD4の個数が相違する)、ダイオードの温度特性の非直線性を異ならせるようにして、出力電圧の温度特性を補償する。第2及び第4の電流−電圧変換回路の抵抗(R1)と抵抗(R3)の抵抗値が異なる値とされ、前記第1及び第2の基準電流回路における出力電流の値を異ならせるようにしてもよい。
【0077】
あるいは、第1の基準電流回路は、図5を参照すると、ダイオードD1よりなる第1の電流−電圧変換回路と、一端が接地され複数並列に接続されたダイオードD2と、抵抗R1との直列回路に、別の抵抗R2を並列接続した構成の第2の電流−電圧変換回路と、ソース(第1端子)が電源(VDD)に共通接続されゲート(制御端子)が共通に接続され第1のカレントミラー回路を構成する第1乃至第3のトランジスタ(M1、M2、M3)と、第1の電流−電圧変換回路(D1)と第1のトランジスタ(M1)のドレイン(第2端子)との接続点と、第2の電流−電圧変換回路(D2,R1,R2)と第2のトランジスタ(M2)のドレインとの接続点とに、反転入力端子と非反転入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が第1乃至第3トランジスタ(M1、M2、M3)の共通のゲートに接続された第1の差動増幅回路(AP1)と、を備えている。第2の基準電流回路は、一端が接地され複数並列に接続されたダイオード(D3)と、抵抗(R3)との直列回路に、別の抵抗(R4)を並列接続した構成の第3の電流−電圧変換回路と、ソースが電源に接続されゲートが共通に接続され第2のカレントミラー回路を構成する第4及び第5のトランジスタ(M4、M5)と、第1の電流−電圧変換回路(D1)と第1のトランジスタ(M1)のドレインとの接続点(VA)と、第3の電流−電圧変換回路(D3、R3、R4)と第4のトランジスタ(M4)のドレインとの接続点(VC)とに、反転入力端子、非反転入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が第4及び第5のトランジスタ(M4、M5)の共通のゲートに接続された第2の差動増幅回路(AP2)と、を備えている。第3のトランジスタ(M3)のドレインは第4のトランジスタ(M4)のドレインと共通接続され、第2の差動増幅回路(AP2)の非反転入力端子(+)に接続されている。第5のトランジスタ(M5)のドレインに一端が接続され、他端がGNDに接続され、第5のトランジスタ(M5)のドレイン電流を受け電圧(Vref)に変換する電流−電圧変換回路をなす抵抗(R5)とを備えている。本発明においては、第1及び第2の基準電流回路において、第2及び第3の電流−電圧変換回路のそれぞれの前記ダイオードの個数が相違し(D2の個数とD3の個数が相違する)、ダイオードの温度特性の非直線性を異ならせるようにして、出力電圧の温度特性を補償する。本発明によれば、ダイオードの温度特性の非直線性が顕著に現れる2つの回路で相殺しているからである。本発明によれば、ダイオードの非直線な温度特性の影響を低減し高精度化可能としている。
【0078】
本発明によれば、1V以上、あるいは1V以下の任意の出力電圧が得られ、特性・性能向上を図ることができる。出力電圧を1V以下にすることで1.2V程度の電圧から動作可とし低電圧化を可能としている。以下、本発明の回路構成、動作についてその詳細を説明する。
【0079】
図1は、本発明(請求項1)の実施形態に記載されたCMOS基準電圧回路の一実施例の回路構成を示す図である。
【0080】
図12及び図13を参照して説明した、Ker et al.の回路においては、pnpトランジスタ、p-chトランジスタとnpnトランジスタ、n-chトランジスタを用いて、両者間で、出力電流を減算することで温度特性を相殺していた。2つの基準電流回路を同一の回路トポロジとして、温度特性を相殺すべき重要なダイオードやカレントミラー回路をpnpトランジスタかnpnトランジスタ、あるいはp-chトランジスタかn-chトランジスタのいずれか一方のみにすれば、特性を揃えられ、温度特性をより正確に相殺できるようになることは想像に難くない。
【0081】
図1を参照すると、本発明の実施形態においては、第1の電流−電圧変換回路101及び第2の電流−電圧変換回路102には、それぞれ、第1のカレントミラー回路111を介して、電流I1、I2が供給され、電圧に変換され、それぞれの端子電圧(VA,VB)が、第1の誤差電圧増幅回路(差動増幅回路あるいはOP amp)121の逆正相及び正相入力電圧となっている。
【0082】
第1の誤差電圧増幅回路121の出力電圧は、第1のカレントミラー回路111を制御し、第1の電流−電圧変換回路101、及び第2の電流−電圧変換回路102の端子電圧が等しくなるように動作している。より詳細には、第1の誤差電圧増幅回路121の出力端子は、ソースが電源VDDに共通接続され、ゲートが共通接続され第1のカレントミラー回路111を構成するpチャネルMOSトランジスタM1、M2、M3の共通接続されたゲートに接続され、pチャネルMOSトランジスタM1と第1の電流−電圧変換回路101との接続点、pチャネルMOSトランジスタM2と第2の電流−電圧変換回路102との接続点は第1の誤差電圧増幅回路121の反転入力端子(−)、非反転入力端子(+)にそれぞれ接続されている。
【0083】
また、第1のカレントミラー回路111のpチャネルMOSトランジスタM3のドレインを介して電流I1、I2に比例した電流I3が出力される。第1、第2の電流−電圧変換回路101、102、第1のカレントミラー111回路、第1の誤差電圧増幅回路(AP1)121により、第1の基準電流回路1が構成されている。
【0084】
次に、第3の電流−電圧変換回路103、及び第4の電流−電圧変換回路104には、それぞれ第2のカレントミラー回路112を介して電流I4、I5が供給され、電圧に変換され、それぞれの端子電圧が、第2の誤差電圧増幅回路122の逆相及び正相入力電圧となっている。
【0085】
第2の誤差電圧増幅回路122の出力電圧は、第2のカレントミラー回路112を制御し、第3の電流−電圧変換回路103、及び第4の電流−電圧変換回路104の端子電圧が等しくなるように動作している。より詳細には、第2の誤差電圧増幅回路122の出力端子は、ソースが電源VDDに共通接続され、ゲートが共通接続され第2のカレントミラー112を構成するpチャネルMOSトランジスタM4、M5、M6の共通接続されたゲートに接続され、pチャネルMOSトランジスタM4と第3の電流−電圧変換回路103との接続点、pチャネルMOSトランジスタM5と第4の電流−電圧変換回路104との接続点は第2の誤差電圧増幅回路122の反転入力端子(−)、非反転入力端子(+)にそれぞれ接続されている。
【0086】
また、第2のカレントミラー回路112のpチャネルMOSトランジスタM6のドレインから電流I4、I5に比例した電流I6が出力される。
【0087】
第3、第4の電流−電圧変換回路103、104、第2のカレントミラー回路112、第2の誤差電圧増幅回路(AP2)122により、第2の基準電流回路2が構成されている。
【0088】
さらに、第2のカレントミラー回路112を介して出力される電流I6は、減算回路130に入力され、第1のカレントミラー回路111を介して出力される電流I3が減じられて出力電流Irefとして、第5の電流−電圧変換回路105に供給されて端子電圧Vrefを供給している。
【0089】
ここで、図2に示すように、第1のカレントミラー回路111を介して出力される電流I3の温度特性の非直線性の方が大きく、第2のカレントミラー回路112を介して出力される電流I6の温度特性の非直線性の方が小さいものとする。
Iref(=I6−I3)
の値を正の値とした場合に温度特性の非直線性が相殺され得る電流値I6、I3が存在し得る。
【実施例1】
【0090】
さらに付け加えると、番場の回路のように、元々、ダイオード接続されたトランジスタの温度特性の非直線性が僅かにしか現れない回路同士で相殺するよりも、ダイオード接続されたトランジスタの温度特性の非直線性が顕著に現れる回路同士で相殺する方が、温度特性は、精度良く相殺することができる。
【0091】
上記した第1乃至第5の電流−電圧変換回路の具体的な構成として、図3に示すような電流−電圧変換回路を適用した場合について説明する。一般に、こうした回路においては、図1の第1(3)の電流−電圧変換回路、及び第2(4)の電流−電圧変換回路を全く同一の回路構成とすると、動作点が無数となって、定まらない。
【0092】
そこで、本実施例では、図3に示すように、第1(3)の電流−電圧変換回路と、第2(4)の電流−電圧変換回路では、回路トポロジを同一とし、回路定数を変えている。
【0093】
具体的には、
第1の電流−電圧変換回路101は、1個のダイオードD1とし、
第3の電流−電圧変換回路103は、1個のダイオードD3とし、
第2の電流−電圧変換回路102では、抵抗R1がダイオードD2と直列に接続され、さらにこの抵抗R1とダイオードD2(2個並列)とは並列に抵抗R2が接続されている。
【0094】
さらに、第2の電流−電圧変換回路102と第4の電流−電圧変換回路104では、複数並列に接続されるダイオードD2の個数と、複数並列に接続されるダイオードD4の個数を、それぞれ、2個と4個として、第1の基準電流回路からの出力電流I3と、第2の基準電流回路からの出力電流I6の値が異なるようにし、さらにダイオードの温度特性の非直線性が異なるように意図している。以下、動作を説明する。
【0095】
図3において、ダイオード(又はダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D1、D2の順方向電圧をVF1、VF2とすると、OP amp(AP1)により、逆相、正相の2つの入力端子電圧が等しく(VA=VB)なるように制御される。
【0096】
したがって、
VA=VB=VF1 (16)
である。
【0097】
ここで、簡単のために、MOSトランジスタM1とM2の電流が等しいとすると、
I1=I2 (17)
となる。
【0098】
ただし、電流I1は、第1の電流−電圧変換回路を構成するダイオードD1に直接流れて電圧変換されるが、第2の電流−電圧変換回路については、電流I2は抵抗R1を介してダイオードD2に流れる電流と抵抗R2に流れる電流に2分される。
【0099】
I1=I2=(VF1―VF2)/R1+VF1/R2
={VF1+(R2/R1)ΔVF}/R2 (18)
となる。
【0100】
ここで、VF1はおよそ−1.9mV/℃の温度特性(温度係数)を持つ。また、VF2もおよそ−1.9mV/℃の温度特性(温度係数)を持つ。
【0101】
ここで、D1をいずれも単位ダイオード、D2を単位ダイオードのn倍であるとすると、ΔVF(=VF1―VF2)は、次式(19)と表わされる。
【0102】
ΔVF=VTln[n{I1/(I2−VF1/R2)}] (19)
【0103】
ここで、
I1=I2
であるから、常に、
I1>(I2−VF1/R2)
であり、
I1/(I2−VF1/R2)>1
が成り立つ。
【0104】
よって、(19)式のlnの項は、常に正(>0)であることが理解される。すなわち、ΔVFは良く知られているように、この回路においても、正の温度特性を持つようになる。
【0105】
したがって、この温度特性は、熱電圧VT(その温度特性は0.0853mV/℃)にほぼ比例する。
【0106】
すなわち、(18)式の{VF1+(R2/R1)ΔVF}の項の温度特性は、負の温度特性を持つVF1と、正の温度特性を持つΔVFに抵抗比(R2/R1)を設定し重み付け加算することで、ほぼ相殺することができる。
【0107】
さらに、詳しく見ると、
VF1はおよそ−1.9mV/℃の負の温度特性を持ち、
電流(VF1/R2)は負の温度特性を持つ。
【0108】
したがって、式(19)のn{I1/(I2−VF1/R2)}は、負の温度特性を持ち、その対数値ln[n{I1/(I2−VF1/R2)}]は、多少の負の温度特性を持つことになる。
【0109】
すなわち、(18)式において、
VF1の項は負の温度特性を持ち、
ΔVFの項は正の温度特性を持つのであるが、このΔVFの項は、正の温度特性を持つVTと、負の温度特性を持つln[n{I1/(I2−VF1/R2)}]の積で表される。
【0110】
ここで注目すべきは、電流(VF1/R2)の項である。この項(VF1/R2)には、ダイオードの順方向電圧VFの温度特性の非直線性が現れ、負の温度特性を持つVF1の項に現れるVFの温度特性の非直線性と、正の温度特性を持つΔVFの項に現れるVFの温度特性の非直線性が重畳されて現れる。
【0111】
したがって、基準電流回路の出力電流I3には、従来回路で詳しく説明した番場の回路よりも、VFの温度特性の非直線性が顕著に現れることになる。しかも、抵抗R2により、その影響を可変設定できるのである。
【0112】
さらに、電流I1、I2に比例した第1の基準電流回路の出力電流I3、I4は、それぞれ、ダイオードD3からなる第3の電流−電圧変換回路と、ダイオードD4と抵抗R3、R4からなる第4の電流−電圧変換回路に供給されている。
【0113】
同様に、ダイオード(又はダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D3、D4の順方向電圧を、VF3、VF4とすると、OP amp(AP2)により、逆相、正相の2つの入力端子電圧が等しく(VC=VD)なるように制御される。
【0114】
したがって、
VC=VD=VF3 (20)
である。
【0115】
ここで、簡単のために、MOSトランジスタM5とM6の電流が等しいとすると、
【0116】
I5=I6 (21)
となる。
【0117】
ただし、電流I5は第3の電流−電圧変換回路を構成するダイオードD3に直接流れて電圧変換されるが、第4の電流−電圧変換回路については、電流I6は抵抗R3を介してダイオードD4に流れる電流と抵抗R4に流れる電流に2分される。
【0118】
I4+I5=I3+I6
=(VF3―VF4)/R3+VF3/R4
={VF3+(R4/R3)ΔVF^}/R4 (22)
となる。
【0119】
ここで、VF3はおよそ−1.9mV/℃の温度特性(温度係数)を持つ。また、VF4もおよそ−1.9mV/℃の温度特性(温度係数)を持つ。
【0120】
ここで、D3をいずれも単位ダイオード、D4を単位ダイオードのn^倍であるとすると、
ΔVF^=VTln[n^{(I4+I5)/(I3+I6−VF3/R4)}] (23)
と表わされる。
【0121】
ここで、
I3=I4、I5=I6
であるから、
I3+I4=I3+I6
である。
【0122】
よって、常に、
(I4+I5)>(I3+I6−VF3/R4)
であり、
(I4+I5)/(I3+I6−VF3/R4)>1
が成り立つ。
【0123】
したがって、(23)式のlnの項は常に正(>0)であることが理解される。すなわち、ΔVF^は、良く知られているように、この回路においても、正の温度特性を持つようになる。したがって、この温度特性は、熱電圧VT(その温度特性は0.0853mV/℃)にほぼ比例する。
【0124】
すなわち、(22)式の{VF3+(R4/R3)ΔVF^}の項の温度特性は、負の温度特性を持つVF3と、正の温度特性を持つΔVF^に抵抗比(R4/R3)を掛け重み付け加算することで、ほぼ相殺することができる。
【0125】
さらに、詳しく見ると、VF3はおよそ−1.9mV/℃の負の温度特性を持ち、電流(VF3/R4)は負の温度特性を持つ。
【0126】
したがって、
n^{(I4+I5)/(I3+I6−VF3/R4)}
は負の温度特性を持ち、その対数値
ln[n^{(I4+I5)/(I3+I6−VF3/R4)}]
は、多少の負の温度特性を持つことになる。
【0127】
すなわち、(22)式において、
VF3の項は、負の温度特性を持ち、
ΔVF^の項は、正の温度特性を持つのであるが、ΔVF^の項は、正の温度特性を持つVTと、負の温度特性を持つln[n^{(I4+I5)/(I3+I6−VF3/R4)}]の積で表されることになる。
【0128】
ここで、注目すべきは、電流(VF3/R4)の項である。この項(VF3/R4)には、VFの温度特性の非直線性が現れ、負の温度特性を持つVF3の項に現れるVFの温度特性の非直線性と正の温度特性を持つΔVF^の項に現れるVFの温度特性の非直線性が重畳されて現れる。
【0129】
したがって、この基準電流回路の内部の駆動電流(I4+I5)、(I3+I6)には、従来回路で詳しく説明した番場の回路よりも、VFの温度特性の非直線性が顕著に現れることになる。しかも、抵抗R4によりその影響を可変設定できるのである。
【0130】
一方、第2の基準電流回路の出力電流I7は、電流I5、I6に比例する電流である。第2の基準電流回路の内部の駆動電流(I4+I5)、(I3+I6)には、第1の基準電流回路の出力電流I3、I4が供給されているから、
第1の基準電流回路でnを小さな値にし、
第2の基準電流回路でn^を大きな値に設定し、
R1<R3
とすることで、第1の基準電流回路の内部の駆動電流I1、I2に、VFの温度特性の非直線性が顕著に現れるように設定する。
【0131】
逆に、第2の基準電流回路の内部の駆動電流(I4+I5)、(I3+I6)に、VFの温度特性の非直線性がそれほど顕著には現れないように設定すると、第2の基準電流回路の内部の駆動電流(I4+I5)、(I3+I6)に現れるVFの温度特性の非直線性が、第1の基準電流回路から供給される出力電流I3、I4が持つVFの温度特性の非直線性と同一になるように設定することも可能になる。
【0132】
したがって、第2の基準電流回路の出力電流I7は、VFの温度特性の非直線性が除かれた電流に設定できる。すなわち、第2の基準電流回路の出力電流I7は、温度特性が十二分に相殺された一定電流に設定できる。
【0133】
上述した詳しい動作説明から、第1の基準電流回路の出力電流I4、I3を、それぞれ、ダイオードD3からなる第3の電流−電圧変換回路と、ダイオードD4と抵抗R3、R4からなる第4の電流−電圧変換回路に供給することで、第2の基準電流回路の内部の駆動電流から第1の基準電流回路の出力電流I3、I4を減算する機能が実現されていることがわかる。
【0134】
[シミュレーション結果の例]
SPICEシミュレーションの例として、VDD=1.2V、R1=3.74KΩ、R2=200KΩ、R3=8KΩ、R4=200KΩ、R5=100KΩ、D1、D3を単位ダイオード(X1)、D2を単位ダイオードの2倍(X2)、D4を単位ダイオードの4倍(X4)、第1のカレントミラー回路の電流比をM1:M2:M3:M4: =2:2:1.2:1.2、第1のカレントミラー回路の電流比をM5:M6:M7=2:2:2に設定した場合に、図4に示すシミュレーション結果が得られた。
【0135】
VREFの値は、常温で最大電圧となり、低温、高温で電圧が極々微小に減少する極々微小ではあるがお椀を伏せた型の温度特性が得られ、−53℃で291.3128 mV、27℃で291.3697 mV、107℃で291.3119 mVが得られた。温度特性は160℃の変化で−0.020146%(-60μV)と極々微小である。
【実施例2】
【0136】
第1の基準電流回路の出力を1つにして、図5のように変更しても良い。図5において、MOSトランジスタM1とM2とM3は第1のカレントミラー回路を構成し、共通ゲート電圧はOP amp(AP1)により、OP ampの逆相、正相の2つの入力端子電圧が等しくなるように制御され、それにより第1のカレントミラー回路に流れる電流が決定される第1の基準電流回路を構成している。
【0137】
OP amp(AP1)の逆相、正相の2つの入力端子はそれぞれダイオードD1からなる第1の電流−電圧変換回路とダイオードD2と抵抗R1が直列接続され、さらにそれらにR2が並列接続されてなる第2の電流−電圧変換回路に接続されている。
【0138】
また、MOSトランジスタM4とM5は第2のカレントミラー回路を構成し、共通ゲート電圧はOP amp(AP2)により、OP ampの逆相、正相の2つの入力端子電圧が等しくなるように制御され、それにより第2のカレントミラー回路に流れる電流が決定される第2の基準電流回路を構成している。
【0139】
OP amp(AP2)の2つの入力端子はそれぞれダイオードD1からなる第1の電流−電圧変換回路とダイオードD3と抵抗R3が直列接続され、さらにそれらにR4が並列接続されてなる第3の電流−電圧変換回路に接続されている。
【0140】
本実施例において、図3の実施例1からの変更は、ダイオードD1からなる第1の電流−電圧変換回路を、第1の基準電流回路と第2の基準電流回路とで共有し、第1の基準電流回路からの出力を1つに減らしたことである。第1の基準電流回路は、ダイオードD1からなる第1の電流−電圧変換回路とダイオードD2と抵抗R1とR2からなる第2の電流−電圧変換回路よりなる。第2の基準電流回路は、第1の基準電流回路と共用する第1の電流−電圧変換回路とダイオードD3と抵抗R3とR4からなる第3の電流−電圧変換回路よりなる。
【0141】
ダイオードD3と抵抗R3とR4からなる第3の電流−電圧変換回路には、第1の基準電流回路から第1のカレントミラー回路を介して出力される電流I3と、第2のカレントミラー回路から供給される電流I4とが同時に供給されている。
【0142】
図5において、ダイオード(又はダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D1、D2の順方向電圧をVF1、VF2とすると、OP amp(AP1)により逆相、正相の2つの入力端子電圧が等しく(VA=VB)なるように制御される。
【0143】
したがって、
VA=VB=VF1 (24)
である。
【0144】
ここで、簡単のために、MOSトランジスタM1とM2の電流が等しいとすると、
I1=I2 (25)
となる。
【0145】
ただし、電流I1は第1の電流−電圧変換回路を構成するダイオードD1に直接流れて電圧変換されるが、第2の電流−電圧変換回路については、電流I2は抵抗R1を介してダイオードD2に流れる電流と抵抗R2に流れる電流に2分される。
【0146】
I1=I2=(VF1―VF2)/R1+VF1/R2
={VF1+(R2/R1)ΔVF}/R2 (26)
となる。
【0147】
ここで、VF1はおよそ−1.9mV/℃の温度特性(温度係数)を持つ。また、VF2もおよそ−1.9mV/℃の温度特性(温度係数)を持つ。
【0148】
D1をいずれも単位ダイオード、D2を単位ダイオードのn倍であるとすると、
ΔVF=VTln[n{I1/(I2−VF1/R2)}] (27)
と表わされる。
【0149】
ここで、
I1=I2
であるから、常に、
I1>(I2−VF1/R2)
であり、
I1/(I2−VF1/R2)>1
が成り立つ。よって、(27)式のlnの項は常に正(>0)であることが理解される。
【0150】
すなわち、ΔVFは良く知られているように、この回路においても、正の温度特性を持つようになる。したがって、この温度特性は熱電圧VT(その温度特性は0.0853mV/℃)にほぼ比例する。
【0151】
すなわち、(26)式の{VF1+(R2/R1)ΔVF}の項の温度特性は、負の温度特性を持つVF1と正の温度特性を持つΔVFを、抵抗比(R2/R1)を設定して重み付け加算することでほぼ相殺することができる。
【0152】
さらに、詳しく見ると、VF1はおよそ−1.9mV/℃の負の温度特性を持ち、電流(VF1/R2)は負の温度特性を持つ。
【0153】
したがって、n{I1/(I2−VF1/R2)}は、負の温度特性を持ち、その対数値ln[n{I1/(I2−VF1/R2)}]は多少の負の温度特性を持つことになる。
【0154】
すなわち、(26)式において、
VF1の項は負の温度特性を持ち、
ΔVFの項は正の温度特性を持つのであるが、ΔVFの項は正の温度特性を持つVTと負の温度特性を持つln[n{I1/(I2−VF1/R2)}]の積で表されることになる。
【0155】
ここで注目すべきは電流(VF1/R2)の項である。この項(VF1/R2)には、VFの温度特性の非直線性が現れ、負の温度特性を持つVF1の項に現れるVFの温度特性の非直線性と正の温度特性を持つΔVFの項に現れるVFの温度特性の非直線性が重畳されて現れる。
【0156】
したがって、この基準電流回路の出力電流I3には、従来回路で詳しく説明した番場の回路よりもVFの温度特性の非直線性が顕著に現れることになる。しかも、抵抗R2によりその影響を可変設定できるのである。
【0157】
さらに、電流I1、I2に比例した第1の基準電流回路の出力電流I3は、ダイオードD3と抵抗R3、R4からなる第3の電流−電圧変換回路に供給されている。
【0158】
同様に、ダイオード(又はダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D3の順方向電圧をVF3とすると、OP amp(AP2)により逆相、正相の2つの入力端子電圧が等しく(VC=VA)なるように制御される。
【0159】
したがって、
VA=VC=VF1 (28)
である。
【0160】
ここで、簡単のために、MOSトランジスタM1とM2の電流I1、I2と、M3、M4の電流の和I3+I4が等しいとすると、
I1=I2=I3+I4 (29)
となる。
【0161】
ただし、第3の電流−電圧変換回路に供給される電流(I3+I4)は、抵抗R3を介してダイオードD3に流れる電流と抵抗R4に流れる電流に2分される。
【0162】
I3+I4=(VF1―VF3)/R3+VF1/R4
={VF1+(R4/R3)ΔVF^}/R4 (30)
となる。
【0163】
ここで上述したように、VF1はおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。また、VF3もおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。
【0164】
D3を単位ダイオードのn^倍であるとすると、ΔVF^(=VF1-VF3)は、
ΔVF^=VTln[n^{I1/(I3+I4−VF1/R4)}] (31)
と表わされる。
【0165】
ここで、
I3+I4=I1
である。よって、常に、
I1>(I3+I4−VF1/R4)
であり、
I1/(I3+I4−VF1/R4) >1
が成り立つ。したがって、(31)式のlnの項は常に正(>0)であることが理解される。
【0166】
すなわち、ΔVF^は良く知られているように、この回路においても正の温度特性を持つようになる。したがって、この温度特性は熱電圧VT(その温度特性は0.0853mV/℃)にほぼ比例する。
【0167】
すなわち、(30)式の{VF1+(R4/R3)ΔVF^}の項の温度特性は、負の温度特性を持つVF1と、正の温度特性を持つΔVF^を、抵抗比(R4/R3)を設定して重み付け加算することでほぼ相殺することができる。
【0168】
さらに、詳しく見ると、VF1はおよそ−1.9mV/℃の負の温度特性を持ち、電流(VF3/R4)は負の温度特性を持つ。
【0169】
したがって、n^{I1/(I3+I4−VF1/R4)}は、負の温度特性を持ち、その対数値ln[n^{I1/(I3+I4−VF1/R4)}]は多少の負の温度特性を持つことになる。
【0170】
すなわち、(30)式において、
VF1の項は負の温度特性を持ち、
ΔVF^の項は正の温度特性を持つのであるが、ΔVF^の項は正の温度特性を持つVTと負の温度特性を持つln[n^{I1/(I3+I4−VF1/R4)}]の積で表されることになる。
【0171】
ここで注目すべきは、電流(VF3/R4)の項である。この項(VF3/R4)には、VFの温度特性の非直線性が現れ、負の温度特性を持つVF1の項に現れるVFの温度特性の非直線性と正の温度特性を持つΔVF^の項に現れるVFの温度特性の非直線性が重畳されて現れる。
【0172】
したがって、この基準電流回路の内部の駆動電流(I3+I4)には、従来回路で詳しく説明した番場の回路よりもVFの温度特性の非直線性が顕著に現れることになる。しかも抵抗R4によりその影響を可変設定できるのである。
【0173】
一方、第2の基準電流回路の出力電流I5は電流I4に比例する電流である。第2の基準電流回路の内部の駆動電流(I3+I4)には、第1の基準電流回路の出力電流I3が供給されているから、
第1の基準電流回路でn(D2はD1のn倍)を小さな値にし、
第2の基準電流回路でn^(D3はD1のn^倍)を大きな値に設定し、
R1<R3
とすることで、第1の基準電流回路の内部の駆動電流I1、I2に、VFの温度特性の非直線性が顕著に現れるように設定する。逆に、第2の基準電流回路の内部の駆動電流(I3+I4)に、VFの温度特性の非直線性がそれほど顕著には現れないように設定すると、第2の基準電流回路の内部の駆動電流(I3+I4)に現れるVFの温度特性の非直線性が、第1の基準電流回路から供給される出力電流I3が持つVFの温度特性の非直線性と同一になるように設定することも可能になる。
【0174】
したがって、第2の基準電流回路の出力電流I5は、VFの温度特性の非直線性が除かれた電流に設定できる。すなわち、第2の基準電流回路の出力電流I5は、温度特性が十二分に相殺された一定電流に設定できる。
【0175】
上述した詳しい動作説明から、第1の基準電流回路の出力電流I3をダイオードD3と抵抗R3、R4からなる第3の電流−電圧変換回路に供給することで、第2の基準電流回路の内部の駆動電流から第1の基準電流回路の出力電流I3を減算する機能が実現されていることがわかる。
【0176】
本発明の活用例として、LSI上に集積される各種基準電圧回路が挙げられる。特に、最近の集積回路プロセスの超々微細化の進展に伴い、LSIへの供給電源電圧が低下してきており、このため、電源電圧が1V前後でも動作する温度変動がない安定した基準電圧回路が必要になってきている。本発明は、そうした要望に答えることができる。
【0177】
以上、本発明を上記実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明の実施形態の回路構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の特性を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施例の回路構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施例の特性(シミュレーション結果)を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例の回路構成を示す図である。
【図6】Brokawが提案した従来の基準電圧回路の構成を示す図である。
【図7】Brokawが提案した従来の基準電圧回路の動作を説明する図である。
【図8】Brokawが提案した従来の基準電圧回路で得られた特性を示す図である(シミュレーション)。
【図9】木村が提案した基準電圧回路(本願出願時未公開)の一例を示す図である。
【図10】木村が提案した基準電圧回路の動作を説明する図である。
【図11】木村が提案した基準電圧回路で得られた特性図(シミュレーション結果)である。
【図12】Ker et al.が提案した従来の基準電圧回路の構成を示す図である。
【図13】Ker et al.が提案した従来の基準電圧回路の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0179】
101 第1の電流電圧変換回路(I-V1)
102 第2の電流電圧変換回路(I-V2)
103 第3の電流電圧変換回路(I-V3)
104 第4の電流電圧変換回路(I-V4)
105 第5の電流電圧変換回路(I-V5)
111 第1のカレントミラー回路
112 第2のカレントミラー回路
121 第1の誤差電圧増幅回路(AP1)
122 第2の誤差電圧増幅回路(AP2)
130 減算回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の電流−電圧変換回路と、
前記第1の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第2の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧とが互いに等しくなるように制御する第1の制御手段と、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第2の電流−電圧変換回路に電流をそれぞれ供給する第1のカレントミラー回路と、
を備えた第1の基準電流回路と、
第3及び第4の電流−電圧変換回路と、
前記第3の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第4の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧とが互いに等しくなるように制御する第2の制御手段と、
前記第3の電流−電圧変換回路と前記第4の電流−電圧変換回路に電流をそれぞれ供給する第2のカレントミラー回路と、
を備えた第2の基準電流回路と、
前記第1の基準電流回路の出力電流と前記第2の基準電流回路の出力電流の差電流を出力する手段と、
前記差電流を電圧に変換して出力電圧を得る第5の電流−電圧変換回路と、
を有する、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項2】
前記第1及び第2のカレントミラー回路が、いずれも、線形な入出力特性を持つ線形カレントミラー回路である、ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧回路。
【請求項3】
前記2つの基準電流回路の出力電流の差電流を出力する手段が、前記第1のカレントミラー回路の出力電流に比例した電流を、それぞれ、前記第3と第4の電流−電圧変換回路に流し込む構成とされ、
前記第2のカレントミラー回路の出力電流を受ける前記第5の電流−電圧変換回路を介して出力電圧を得る、ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧回路。
【請求項4】
前記第1及び第3の電流−電圧変換回路の各々は、ダイオードからなり、
前記第2の電流−電圧変換回路は、1つのダイオード又は並列接続された複数のダイオードと、前記1つ又は複数のダイオードに直列に接続された第1の抵抗と、からなる直列回路に、第2の抵抗を並列に接続して構成され、
前記第4の電流−電圧変換回路は、1つのダイオード又は並列接続された複数のダイオードと、前記1つ又は複数のダイオードに直列に接続された第3の抵抗とからなる直列回路に、第4の抵抗を並列に接続して構成され、
前記第5の電流−電圧変換回路は、第5の抵抗からなる、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基準電圧回路。
【請求項5】
前記第1の制御手段は、前記第1の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第2の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧を差動入力し、出力端子の電圧が前記第1のカレントミラー回路の共通ノードを制御する第1の差動増幅回路を備え、
前記第2の制御手段は、前記第3の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第4の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧を差動入力し、出力端子の電圧が前記第2のカレントミラー回路の共通ノードを制御する第2の差動増幅回路を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧回路。
【請求項6】
少なくとも前記第2及び第4の電流−電圧変換回路において、それぞれの回路トポロジ及び/又は素子値が異なる、ことを特徴とする請求項4に記載の基準電圧回路。
【請求項7】
前記第2及び第4の電流−電圧変換回路では、ダイオードの個数が相違し、前記第1及び第2の基準電流回路におけるダイオードの温度特性の非直線性を異ならせるようにしている、ことを特徴とする請求項6に記載の基準電圧回路。
【請求項8】
前記第2及び第4の電流−電圧変換回路では、前記第1の抵抗と前記第3の抵抗の抵抗値が互いに異なる値とされ、前記第1及び第2の基準電流回路における出力電流値を異ならせる、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の基準電圧回路。
【請求項9】
前記ダイオードの少なくとも1つは、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタよりなる、ことを特徴とする請求項4に記載の基準電圧回路。
【請求項10】
前記第1のカレントミラー回路は、
第1端子が第1電源に共通に接続され制御端子が共通に接続された第1乃至第3のトランジスタを備え、
前記第1の制御手段は、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第1のトランジスタの第2端子との接続点と、前記第2の電流−電圧変換回路と前記第2のトランジスタの第2端子との接続点とに、差動入力をなす第1、第2の入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が前記第1乃至第3のトランジスタの共通の制御端子に接続された第1の差動増幅回路を備え、
前記第2のカレントミラー回路は、
第1端子が前記第1電源に共通に接続され制御端子が共通に接続された第4乃至第6のトランジスタを備え、
前記第2の制御手段は、
前記第3の電流−電圧変換回路と前記第4のトランジスタの第2端子との接続点と、前記第4の電流−電圧変換回路と前記第5のトランジスタの第2端子との接続点とに、差動入力をなす第1、第2の入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が前記第4乃至第6のトランジスタの共通の制御端子に接続された第2の差動増幅回路を備え、
前記第1及び第3の電流−電圧変換回路の各々は、
一端が前記第2電源に接続されたダイオードよりなり、
前記第2及び第4の電流−電圧変換回路の各々は、
一端が前記第2電源に接続された1つ又は、複数並列に接続されたダイオードと、抵抗との直列回路に、別の抵抗を並列接続した構成とされ、
前記第5の電流−電圧変換回路は、
一端が前記第2電源に接続された抵抗よりなる、
ことを特徴とする請求項1記載の基準電圧回路。
【請求項11】
第1及び第2の電流−電圧変換回路と、
第1端子が第1電源に共通に接続され制御端子が共通に接続され第1のカレントミラー回路を構成する第1乃至第4のトランジスタと、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第1のトランジスタの第2端子との接続点と、前記第2の電流−電圧変換回路と前記第2のトランジスタの第2端子との接続点とに、差動入力をなす第1及び第2の入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が、前記第1乃至第4トランジスタの共通の制御端子に接続された第1の差動増幅回路と、
を備えた第1の基準電流回路と、
第3及び第4の電流−電圧変換回路と、
第1端子が前記第1電源に共通に接続され制御端子が共通に接続され第2のカレントミラー回路を構成する第5乃至第7のトランジスタと、
前記第3の電流−電圧変換回路と前記第5のトランジスタの第2端子との接続点と、前記第4の電流−電圧変換回路と前記第6のトランジスタの第2端子との接続点とに、差動入力をなす第1及び第2の入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が、前記第5乃至第7トランジスタの共通の制御端子に接続された第2の差動増幅回路と、
を備えた第2の基準電流回路と、
を有し、
前記第3のトランジスタの第2端子は、前記第4の電流−電圧変換回路と前記第6のトランジスタの第2端子と前記第2の差動増幅回路の前記第2の入力端子との接続点に接続され、
前記第4のトランジスタの第2端子は、前記第3の電流−電圧変換回路と前記第5のトランジスタの第2端子と前記第2の差動増幅回路の前記第1の入力端子との接続点に接続され、
前記第1及び第3の電流−電圧変換回路の各々は、一端が第2電源に接続されたダイオードよりなり、
前記第2及び第4の電流−電圧変換回路の各々は、一端が前記第2電源に接続された1つ又は複数のダイオードと、抵抗との直列回路に、別の抵抗を並列接続した構成とされ、
前記第7のトランジスタの第2端子に一端が接続され、他端が前記第2電源に接続された抵抗を備えた第5の電流−電圧変換回路を有する、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項12】
前記第1及び第2の基準電流回路において、前記第2及び第4の電流−電圧変換回路のそれぞれの前記ダイオードの個数が相違し、ダイオードの温度特性の非直線性を異ならせるようにして、出力電圧の温度特性を補償する、ことを特徴とする請求項11記載の基準電圧回路。
【請求項13】
前記第2及び第4の電流−電圧変換回路とでは、前記別の抵抗の抵抗値が互いに異なる値とされ、前記第1及び第2の基準電流回路における出力電流値を異ならせる、ことを特徴とする請求項12記載の基準電圧回路。
【請求項14】
第1及び第2の電流−電圧変換回路と、
第1端子が第1電源に共通に接続され制御端子が共通に接続され第1のカレントミラー回路を構成する第1乃至第3のトランジスタと、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第1のトランジスタの第2端子との接続点と、前記第2の電流−電圧変換回路と前記第2のトランジスタの第2端子との接続点とに、差動入力をなす第1及び第2の入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が、前記第1乃至第3トランジスタの共通の制御端子に接続された第1の差動増幅回路と、
を備えた第1の基準電流回路と、
第3の電流−電圧変換回路と、
第1端子が電源に接続され制御端子が共通に接続され第2のカレントミラー回路を構成する第4及び第5のトランジスタと、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第1のトランジスタの第2端子との接続点と、前記第3の電流−電圧変換回路と前記第4のトランジスタの第2端子との接続点とに、差動入力をなす第1及び第2の入力端子がそれぞれ接続され、出力が前記第4及び第5のトランジスタの共通の制御端子に接続された第2の差動増幅回路と、
を備えた第2の基準電流回路と、
を備え、
前記第3のトランジスタの第2端子は、前記第3の電流−電圧変換回路と前記第4のトランジスタの第2端子と、前記第2の差動増幅回路の前記第2の入力端子との接続点に接続され、
前記第1の電流−電圧変換回路は、一端が第2電源に接続されたダイオードよりなり、
前記第2及び第3の電流−電圧変換回路の各々は、一端が前記第2電源に接続された1つ又は、複数並列に接続されたダイオードと、抵抗との直列回路に、別の抵抗を並列接続した構成とされ、
前記第5のトランジスタの第2端子に一端が接続され、他端が前記第2電源に接続された抵抗を備えた第4の電流−電圧変換回路を有する、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項15】
前記第1及び第2の基準電流回路において、前記第2及び第3の電流−電圧変換回路のそれぞれの前記ダイオードの個数が相違し、ダイオードの温度特性の非直線性を異ならせるようにして、出力電圧の温度特性を補償する、ことを特徴とする請求項14記載の基準電圧回路。
【請求項16】
前記第2及び第3の電流−電圧変換回路とでは、それぞれの前記別の抵抗の抵抗値が互いに異なる値とされ、前記第1及び第2の基準電流回路における出力電流値を異ならせる、ことを特徴とする請求項15記載の基準電圧回路。
【請求項17】
前記ダイオードの少なくとも1つは、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタよりなる、ことを特徴とする請求項10、11、14のいずれか一に記載の基準電圧回路。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか一に記載の基準電圧回路を備えた半導体集積回路。
【請求項1】
第1及び第2の電流−電圧変換回路と、
前記第1の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第2の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧とが互いに等しくなるように制御する第1の制御手段と、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第2の電流−電圧変換回路に電流をそれぞれ供給する第1のカレントミラー回路と、
を備えた第1の基準電流回路と、
第3及び第4の電流−電圧変換回路と、
前記第3の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第4の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧とが互いに等しくなるように制御する第2の制御手段と、
前記第3の電流−電圧変換回路と前記第4の電流−電圧変換回路に電流をそれぞれ供給する第2のカレントミラー回路と、
を備えた第2の基準電流回路と、
前記第1の基準電流回路の出力電流と前記第2の基準電流回路の出力電流の差電流を出力する手段と、
前記差電流を電圧に変換して出力電圧を得る第5の電流−電圧変換回路と、
を有する、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項2】
前記第1及び第2のカレントミラー回路が、いずれも、線形な入出力特性を持つ線形カレントミラー回路である、ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧回路。
【請求項3】
前記2つの基準電流回路の出力電流の差電流を出力する手段が、前記第1のカレントミラー回路の出力電流に比例した電流を、それぞれ、前記第3と第4の電流−電圧変換回路に流し込む構成とされ、
前記第2のカレントミラー回路の出力電流を受ける前記第5の電流−電圧変換回路を介して出力電圧を得る、ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧回路。
【請求項4】
前記第1及び第3の電流−電圧変換回路の各々は、ダイオードからなり、
前記第2の電流−電圧変換回路は、1つのダイオード又は並列接続された複数のダイオードと、前記1つ又は複数のダイオードに直列に接続された第1の抵抗と、からなる直列回路に、第2の抵抗を並列に接続して構成され、
前記第4の電流−電圧変換回路は、1つのダイオード又は並列接続された複数のダイオードと、前記1つ又は複数のダイオードに直列に接続された第3の抵抗とからなる直列回路に、第4の抵抗を並列に接続して構成され、
前記第5の電流−電圧変換回路は、第5の抵抗からなる、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基準電圧回路。
【請求項5】
前記第1の制御手段は、前記第1の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第2の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧を差動入力し、出力端子の電圧が前記第1のカレントミラー回路の共通ノードを制御する第1の差動増幅回路を備え、
前記第2の制御手段は、前記第3の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧と、前記第4の電流−電圧変換回路の所定の出力電圧を差動入力し、出力端子の電圧が前記第2のカレントミラー回路の共通ノードを制御する第2の差動増幅回路を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧回路。
【請求項6】
少なくとも前記第2及び第4の電流−電圧変換回路において、それぞれの回路トポロジ及び/又は素子値が異なる、ことを特徴とする請求項4に記載の基準電圧回路。
【請求項7】
前記第2及び第4の電流−電圧変換回路では、ダイオードの個数が相違し、前記第1及び第2の基準電流回路におけるダイオードの温度特性の非直線性を異ならせるようにしている、ことを特徴とする請求項6に記載の基準電圧回路。
【請求項8】
前記第2及び第4の電流−電圧変換回路では、前記第1の抵抗と前記第3の抵抗の抵抗値が互いに異なる値とされ、前記第1及び第2の基準電流回路における出力電流値を異ならせる、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の基準電圧回路。
【請求項9】
前記ダイオードの少なくとも1つは、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタよりなる、ことを特徴とする請求項4に記載の基準電圧回路。
【請求項10】
前記第1のカレントミラー回路は、
第1端子が第1電源に共通に接続され制御端子が共通に接続された第1乃至第3のトランジスタを備え、
前記第1の制御手段は、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第1のトランジスタの第2端子との接続点と、前記第2の電流−電圧変換回路と前記第2のトランジスタの第2端子との接続点とに、差動入力をなす第1、第2の入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が前記第1乃至第3のトランジスタの共通の制御端子に接続された第1の差動増幅回路を備え、
前記第2のカレントミラー回路は、
第1端子が前記第1電源に共通に接続され制御端子が共通に接続された第4乃至第6のトランジスタを備え、
前記第2の制御手段は、
前記第3の電流−電圧変換回路と前記第4のトランジスタの第2端子との接続点と、前記第4の電流−電圧変換回路と前記第5のトランジスタの第2端子との接続点とに、差動入力をなす第1、第2の入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が前記第4乃至第6のトランジスタの共通の制御端子に接続された第2の差動増幅回路を備え、
前記第1及び第3の電流−電圧変換回路の各々は、
一端が前記第2電源に接続されたダイオードよりなり、
前記第2及び第4の電流−電圧変換回路の各々は、
一端が前記第2電源に接続された1つ又は、複数並列に接続されたダイオードと、抵抗との直列回路に、別の抵抗を並列接続した構成とされ、
前記第5の電流−電圧変換回路は、
一端が前記第2電源に接続された抵抗よりなる、
ことを特徴とする請求項1記載の基準電圧回路。
【請求項11】
第1及び第2の電流−電圧変換回路と、
第1端子が第1電源に共通に接続され制御端子が共通に接続され第1のカレントミラー回路を構成する第1乃至第4のトランジスタと、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第1のトランジスタの第2端子との接続点と、前記第2の電流−電圧変換回路と前記第2のトランジスタの第2端子との接続点とに、差動入力をなす第1及び第2の入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が、前記第1乃至第4トランジスタの共通の制御端子に接続された第1の差動増幅回路と、
を備えた第1の基準電流回路と、
第3及び第4の電流−電圧変換回路と、
第1端子が前記第1電源に共通に接続され制御端子が共通に接続され第2のカレントミラー回路を構成する第5乃至第7のトランジスタと、
前記第3の電流−電圧変換回路と前記第5のトランジスタの第2端子との接続点と、前記第4の電流−電圧変換回路と前記第6のトランジスタの第2端子との接続点とに、差動入力をなす第1及び第2の入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が、前記第5乃至第7トランジスタの共通の制御端子に接続された第2の差動増幅回路と、
を備えた第2の基準電流回路と、
を有し、
前記第3のトランジスタの第2端子は、前記第4の電流−電圧変換回路と前記第6のトランジスタの第2端子と前記第2の差動増幅回路の前記第2の入力端子との接続点に接続され、
前記第4のトランジスタの第2端子は、前記第3の電流−電圧変換回路と前記第5のトランジスタの第2端子と前記第2の差動増幅回路の前記第1の入力端子との接続点に接続され、
前記第1及び第3の電流−電圧変換回路の各々は、一端が第2電源に接続されたダイオードよりなり、
前記第2及び第4の電流−電圧変換回路の各々は、一端が前記第2電源に接続された1つ又は複数のダイオードと、抵抗との直列回路に、別の抵抗を並列接続した構成とされ、
前記第7のトランジスタの第2端子に一端が接続され、他端が前記第2電源に接続された抵抗を備えた第5の電流−電圧変換回路を有する、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項12】
前記第1及び第2の基準電流回路において、前記第2及び第4の電流−電圧変換回路のそれぞれの前記ダイオードの個数が相違し、ダイオードの温度特性の非直線性を異ならせるようにして、出力電圧の温度特性を補償する、ことを特徴とする請求項11記載の基準電圧回路。
【請求項13】
前記第2及び第4の電流−電圧変換回路とでは、前記別の抵抗の抵抗値が互いに異なる値とされ、前記第1及び第2の基準電流回路における出力電流値を異ならせる、ことを特徴とする請求項12記載の基準電圧回路。
【請求項14】
第1及び第2の電流−電圧変換回路と、
第1端子が第1電源に共通に接続され制御端子が共通に接続され第1のカレントミラー回路を構成する第1乃至第3のトランジスタと、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第1のトランジスタの第2端子との接続点と、前記第2の電流−電圧変換回路と前記第2のトランジスタの第2端子との接続点とに、差動入力をなす第1及び第2の入力端子がそれぞれ接続され、出力端子が、前記第1乃至第3トランジスタの共通の制御端子に接続された第1の差動増幅回路と、
を備えた第1の基準電流回路と、
第3の電流−電圧変換回路と、
第1端子が電源に接続され制御端子が共通に接続され第2のカレントミラー回路を構成する第4及び第5のトランジスタと、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第1のトランジスタの第2端子との接続点と、前記第3の電流−電圧変換回路と前記第4のトランジスタの第2端子との接続点とに、差動入力をなす第1及び第2の入力端子がそれぞれ接続され、出力が前記第4及び第5のトランジスタの共通の制御端子に接続された第2の差動増幅回路と、
を備えた第2の基準電流回路と、
を備え、
前記第3のトランジスタの第2端子は、前記第3の電流−電圧変換回路と前記第4のトランジスタの第2端子と、前記第2の差動増幅回路の前記第2の入力端子との接続点に接続され、
前記第1の電流−電圧変換回路は、一端が第2電源に接続されたダイオードよりなり、
前記第2及び第3の電流−電圧変換回路の各々は、一端が前記第2電源に接続された1つ又は、複数並列に接続されたダイオードと、抵抗との直列回路に、別の抵抗を並列接続した構成とされ、
前記第5のトランジスタの第2端子に一端が接続され、他端が前記第2電源に接続された抵抗を備えた第4の電流−電圧変換回路を有する、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項15】
前記第1及び第2の基準電流回路において、前記第2及び第3の電流−電圧変換回路のそれぞれの前記ダイオードの個数が相違し、ダイオードの温度特性の非直線性を異ならせるようにして、出力電圧の温度特性を補償する、ことを特徴とする請求項14記載の基準電圧回路。
【請求項16】
前記第2及び第3の電流−電圧変換回路とでは、それぞれの前記別の抵抗の抵抗値が互いに異なる値とされ、前記第1及び第2の基準電流回路における出力電流値を異ならせる、ことを特徴とする請求項15記載の基準電圧回路。
【請求項17】
前記ダイオードの少なくとも1つは、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタよりなる、ことを特徴とする請求項10、11、14のいずれか一に記載の基準電圧回路。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか一に記載の基準電圧回路を備えた半導体集積回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−200233(P2007−200233A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20994(P2006−20994)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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