説明

ダイピックアップ装置

【課題】ダイシングシートに貼着されたダイのシート剥離に要する時間を短くしてタクトタイムを短縮できるようにする。
【解決手段】剥離ステージ18のシート吸引孔40は、今回ピックアップするダイ21の貼着部分を該ダイ21がピックアップ可能となるようにシート剥離する第1吸引孔41と、次にピックアップするダイ21の貼着部分の一部を予備的にシート剥離する第2吸引孔42とから構成され、シート剥離したダイ21を吸着ノズル30でピックアップする毎に、剥離ステージ18を次にピックアップするダイ21の貼着部分の手前側へ移動させて、該剥離ステージ18を該ダイ21の貼着部分の真下へスライドさせて第1吸引孔41で該ダイ21の貼着部分を該ダイ21がピックアップ可能となるようにシート剥離すると共に、第2吸引孔42で該ダイ21の次にピックアップするダイ21の貼着部分の一部を予備的にシート剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングシートに貼着されたダイを吸着ノズルでピックアップする際に、吸着ノズルでピックアップするダイの貼着部分をダイシングシートの下面側から吸引して該ダイの貼着部分をシート剥離するダイピックアップ装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ダイシングシートに貼着されたダイを剥離する方式には、突き上げ剥離方式とスライド剥離方式とがある。突き上げ剥離方式では、特許文献1(特開2010−129949号公報)に記載されているように、碁盤目状にダイシングされたウエハが貼着された伸縮可能なダイシングシート上のウエハから分割したダイを吸着ノズルで吸着してピックアップする際に、ダイシングシートのうちの吸着しようとするダイの貼着部分をその真下から突き上げポットで突き上げて該ダイの貼着部分をダイシングシートから部分的に剥離させながら、吸着ノズルで該ダイを吸着してダイシングシートからピックアップするようにしている。
【0003】
しかし、ダイが薄くて割れやすいダイの場合は、上記突き上げ剥離方式ではダイが割れてしまう可能性があるため、スライド剥離方式が用いられる。スライド剥離方式では、特許文献2(特許第3209736号公報)に記載されているように、多数のダイが貼着されたダイシングシート上のダイをピックアップする吸着ノズル(コレット)と、シート吸引孔を有する剥離ステージとを備え、吸着ノズルでダイシングシート上のダイを吸着保持しながら、該ダイの貼着部分の手前側から剥離ステージのシート吸引孔を該ダイの貼着部分の真下へスライドさせることで、該ダイの貼着部分を徐々にシート剥離するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−129949号公報
【特許文献2】特許第3209736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイピックアップ装置のタクトタイムを短縮するには、シート剥離速度を速くしてシート剥離に要する時間を短くすることが効果的であるが、上記特許文献2のようなスライド剥離方式では、薄くて割れやすいダイをシート剥離するため、剥離ステージのスライド速度を速くすると、薄いダイが割れてしまったり、シート剥離に失敗する可能性がある。このシート剥離の失敗を防ぐには、吸引力を大きくすれば良いが、吸引力を大きくすると、薄いダイが割れやすくなるため、吸引力を大きくできない。このため、剥離ステージのスライド速度を速くすることができず、シート剥離に要する時間が長くなってダイピックアップ装置のタクトタイムが長くなるという欠点があった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、シート剥離に要する時間を短くしてタクトタイムを短縮できるダイピックアップ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ウエハを碁盤目状にダイシングして形成した多数のダイが貼着されたダイシングシート上のダイをピックアップする吸着ノズルと、前記吸着ノズルでピックアップするダイの貼着部分を前記ダイシングシートの下面側から吸引して該ダイの貼着部分をシート剥離する剥離ステージと、前記剥離ステージを駆動する剥離ステージ駆動手段とを備え、前記剥離ステージは、前記ダイシングシートを吸引するシート吸引孔を有し、前記吸着ノズルで前記ダイシングシート上のダイを吸着保持しながら、該ダイの貼着部分の手前側から前記剥離ステージを該ダイの貼着部分の真下へスライドさせることで該ダイの貼着部分を前記シート吸引孔で徐々にシート剥離するダイピックアップ装置において、前記シート吸引孔は、今回ピックアップするダイの貼着部分を該ダイがピックアップ可能となるようにシート剥離する第1吸引孔と、次にピックアップするダイの貼着部分の一部を予備的にシート剥離する第2吸引孔とからなり、前記剥離ステージ駆動手段は、シート剥離したダイを前記吸着ノズルでピックアップする毎に、前記剥離ステージを次にピックアップするダイの貼着部分の手前側へ移動させて該剥離ステージを該ダイの貼着部分の真下へスライドさせて前記第1吸引孔で該ダイの貼着部分を該ダイがピックアップ可能となるようにシート剥離すると共に、前記第2吸引孔で該ダイの次にピックアップするダイの貼着部分の一部を予備的にシート剥離するようにしたものである。
【0008】
この構成では、剥離ステージのシート吸引孔は、今回ピックアップするダイの貼着部分をシート剥離する第1吸引孔の他に、次にピックアップするダイの貼着部分の一部を予備的にシート剥離する第2吸引孔を有するため、今回ピックアップするダイの貼着部分を第1吸引孔でシート剥離する際に、同時に次にピックアップするダイの貼着部分の一部を第2吸引孔で予備的にシート剥離することが可能となる。これにより、各ダイの貼着部分に対してそれぞれ2回のシート剥離動作が行われるため、従来のように各ダイの貼着部分を1回のシート剥離動作でシート剥離する場合と比較して、剥離ステージのスライド速度を速くしても、シート剥離性能を確保できると共に、ダイが割れないように吸引力を比較的小さく設定することができる。これにより、シート剥離に要する時間を短くしてタクトタイムを短縮することができる。
【0009】
本発明は、剥離ステージをダイの貼着部分の手前側から該ダイの貼着部分の真下へスライドさせる速度を一定速度としても良いが、今回ピックアップするダイの貼着部分は、前回のシート剥離動作で予備的にシート剥離されているため、請求項2のように、剥離ステージをダイの貼着部分の手前側からスライドさせる際に、前回のシート剥離動作で予備的にシート剥離された部分については未剥離部分よりもスライド速度を速くするようにすると良い。このようにすれば、前回のシート剥離動作で予備的にシート剥離されなかった未剥離部分についてのみ剥離ステージのスライド速度を遅くして、ゆっくりとシート剥離することができるため、シート剥離に要する時間を効果的に短くしてタクトタイムを短縮することができる。
【0010】
本発明は、第2吸引孔による予備的なシート剥離を1つのダイの貼着部分についてのみ行うようにしても良いし、或は、請求項3のように、第2吸引孔は、複数のダイの貼着部分の一部をそれぞれ予備的にシート剥離する共に、ピックアップ順序が後の方がシート剥離面積が小さくなるように形成しても良い。このようにすれば、シート剥離性能を高めることができる。
【0011】
また、請求項4のように、第1吸引孔及び第2吸引孔には、それぞれスライド方向側の縁部に凸部を設けるようにしても良い。このようにすれば、シート剥離するダイの貼着部分を凸部で浮かせながらシート剥離することができ、シート剥離性能を高めることができる。
【0012】
本発明は、第1吸引孔と第2吸引孔をそれぞれ1個の孔で形成しても良いし、複数の孔で形成しても良い。第1吸引孔と第2吸引孔をそれぞれ1個の孔で形成する場合は、請求項5のように、第1吸引孔及び第2吸引孔をL字状に連なるように形成し、該第1吸引孔を該第2吸引孔よりもスライド方向に突出させるようにすると良い。この場合、第1吸引孔のスライド方向側端部の位置と第2吸引孔のスライド方向側端部の位置とのずれ量によって第2吸引孔で予備的にシート剥離する面積が決まり、例えば、第1吸引孔のスライド方向側端部の位置を第2吸引孔のスライド方向側端部の位置よりもダイのスライド方向長さの1/2の寸法だけずらした場合は、予備的にシート剥離する面積はダイの貼着面積のほぼ1/2となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の実施例1におけるダイピックアップ装置の斜視図である。
【図2】図2は実施例1のダイピックアップ装置をセットした部品実装機の斜視図である。
【図3】図3は実施例1のダイのシート剥離のスライド動作開始時の状態(ダイシングシートの図示を省略)を示す斜視図である。
【図4】図4は実施例1のダイのシート剥離のスライド動作終了時の状態(ダイシングシートの図示を省略)を示す斜視図である。
【図5】図5は実施例1のダイシングシート上の各ダイと剥離ステージの第1吸引孔と第2吸引孔との位置関係を説明する平面図である。
【図6】図6は実施例1のダイのシート剥離のスライド動作の途中の状態を示す部分拡大断面図である。
【図7】図7は実施例2におけるダイシングシート上の各ダイと剥離ステージの第1吸引孔と第2吸引孔との位置関係を説明する平面図である。
【図8】図8は実施例3におけるダイシングシート上の各ダイと剥離ステージの第1吸引孔と第2吸引孔との位置関係を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した3つの実施例1〜3を説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1を図1乃至図6を用いて説明する。
図1に示すように、本実施例のダイピックアップ装置11は、マガジン保持部12(トレイタワー)、パレット引き出しテーブル13、パレット引き出し機構14、サブロボット15、シャトル機構16、反転機構17、剥離ステージ18(図3〜図6参照)、NGコンベア19、ノズルチェンジャー20等を備えた構成となっている。このダイピックアップ装置11は、図2に示すように、部品実装機25のフィーダセット用スロットにパレット引き出しテーブル13を差し込んだ状態にセットされる。
【0016】
ダイピックアップ装置11のマガジン保持部12内に上下動可能に収納されたマガジンには、ダイ21を載せたウエハパレット22と、トレイ部品を載せたトレイパレット(図示せず)とを多段に混載できるようになっている。ウエハパレット22は、碁盤目状にダイシングされたウエハ(多数のダイ21)を貼着した伸縮可能なダイシングシート29(図6参照)を、円形の開口部を有するウエハ装着板23にエキスパンドした状態で装着し、該ウエハ装着板23をパレット本体28にねじ止め等により取り付けた構成となっている。尚、ダイシングシート29のエキスパンドは、どのような方法で行っても良く、例えば、ダイシングシート29を下方から円形リングで押し上げた状態でウエハ装着板23に装着すれば良い。
【0017】
パレット引き出し機構14は、ウエハパレット22、トレイパレットのいずれかのパレットをマガジン保持部12内のマガジンからパレット引き出しテーブル13上に引き出すものであり、パレット上の部品やダイを部品実装機25(図2参照)の吸着ノズル(図示せず)でピックアップする位置(以下「部品実装機用引き出し位置」という)と、マガジンに近い引き出し位置(以下「サブロボット用引き出し位置」という)とのいずれの位置にもパレットを引き出し可能に構成されている。部品実装機用引き出し位置は、パレット引き出しテーブル13の前端の位置(マガジンから最も離れた位置)であり、サブロボット用引き出し位置は、サブロボット15の吸着ノズル30(図3参照)でウエハパレット22のダイシングシート29上のダイ21を吸着可能な位置である。
【0018】
サブロボット15は、マガジン保持部12の背面部(サブロボット用引き出し位置側の面)のうちのパレット引き出しテーブル13の上方に位置して設けられ、XZ方向(パレット引き出しテーブル13の幅方向及び垂直方向)に移動するように構成されている。尚、サブロボット15の移動方向をX方向のみとし、ウエハパレット22に対するサブロボット15のY方向(パレット引き出し方向)の相対的位置は、パレット引き出し機構14によってウエハパレット22をY方向に徐々に引き出すことで制御している。
【0019】
このサブロボット15には、複数本の吸着ノズル30(図3参照)が下向きに設けられ、ピックアップするダイ21のサイズに応じてノズルチェンジャー20で吸着ノズル30を交換できるようになっている。吸着ノズル30の下端部には、ピックアップするダイ21とほぼ同一のサイズ又はそれより少し小さいサイズのパッド部30aが設けられている。サブロボット15には、カメラ24が設けられ、このカメラ24の撮像画像に基づいて、ピックアップ対象となるダイ21の位置又はダイ21の吸着姿勢を確認できるようになっている。
【0020】
シャトル機構16は、サブロボット15の吸着ノズル30でピックアップされた部品をシャトルノズル26で受け取って部品実装機25の吸着ノズルでピックアップ可能な位置まで移送する。
【0021】
反転機構17は、サブロボット15から受け取るダイ21を必要に応じて上下反転させるものである。ダイ21の種類によっては、ウエハパレット22のダイシングシート29に上下反対に貼着されたダイ(例えばフリップチップ等)が存在するためである。
【0022】
剥離ステージ18(図3参照)は、パレット引き出しテーブル13の下側に配置され、剥離ステージ駆動手段であるXYロボット(図示せず)によってウエハパレット22のダイシングシート29の下面に沿ってXY方向(パレット引き出しテーブル13の幅方向及びその直角方向)に移動すると共に、ウエハパレット22のダイシングシート29の高さ位置に応じて剥離ステージ18の高さ位置を上下動させる機能を備えている。そして、部品実装機用引き出し位置とサブロボット用引き出し位置のいずれの位置にウエハパレット22を引き出した場合でも、部品実装機25又はサブロボット15の吸着ノズル30で吸着ノズル30上のダイ21をピックアップする際に、該吸着ノズル30のパッド部30aでダイシングシート29上のダイ21を吸着保持しながら、該ダイ21の貼着部分の手前側から剥離ステージ18を該ダイ21の貼着部分の真下へスライドさせることで該ダイ21の貼着部分を徐々にシート剥離する。剥離ステージ18の構成とシート剥離方法については、後で詳しく説明する。尚、NGコンベア19は、不良部品や吸着不良のダイ21を排出するコンベアである。
【0023】
以上のように構成したダイピックアップ装置11の制御装置32は、キーボード、マウス等の入力装置33と、液晶ディスプレイ等の表示装置34等の周辺装置を備えたコンピュータにより構成され、部品実装機25に供給する部品の種類に応じてパレットの引き出し位置と部品のピックアップ方法を選択すると共に、その選択結果に応じてパレット引き出し機構14、サブロボット15及びシャトル機構16、反転機構17、剥離ステージ18等の動作を次のように制御する。
【0024】
(1)小さいダイ21の場合
小さいダイ21の場合は、サブロボット15→シャトルノズル26→部品実装機25の吸着ノズルへのダイ21のつかみ替えが困難であるので、マガジン保持部12からウエハパレット22を部品実装機用引き出し位置に引き出して、当該ウエハパレット22のダイシングシート29上のダイ21を部品実装機25の吸着ノズルで直接ピックアップする。
【0025】
(2)上記以外のサイズのダイ21の場合
ダイ21のつかみ替えが可能なサイズのダイ21の場合は、実装時間を短縮することを目的として、マガジン保持部12内のマガジンからウエハパレット22をサブロボット用引き出し位置に引き出して、サブロボット15の吸着ノズル30で当該ウエハパレット22のダイシングシート29上のダイ21をピックアップし、当該ダイ21をシャトル機構16のシャトルノズル26で受け取って所定のピックアップ位置まで移送し、このピックアップ位置で、シャトル機構16のシャトルノズル26からダイ21を部品実装機25の吸着ノズルでピックアップする。
【0026】
(3)トレイ部品の場合
トレイ部品の場合は、マガジン保持部12内のマガジンからトレイパレットを部品実装機用引き出し位置に引き出して、当該トレイパレット上のトレイ部品を部品実装機25の吸着ノズルで直接ピックアップする。
【0027】
次に、剥離ステージ18の構成とシート剥離方法を図3〜図6を用いて説明する。尚、図3及び図4では、ダイシングシート29の図示を省略し、ダイ21と剥離ステージ18と吸着ノズル30のみを図示している。
【0028】
剥離ステージ18は、パレット引き出しテーブル13の下側に配置され、剥離ステージ駆動手段であるXYロボット(図示せず)によってウエハパレット22のダイシングシート29の下面に沿ってXY方向に移動する。剥離ステージ18には、ダイシングシート29をその下面側から吸引するシート吸引孔40が上向きに形成され、該シート吸引孔40には、ダイ21のシート剥離に適した圧力に調整された負圧が供給されるように構成されている。シート吸引孔40は、今回ピックアップするダイ21の貼着部分を該ダイ21がピックアップ可能となるようにシート剥離する第1吸引孔41と、次にピックアップするダイ21の貼着部分の一部を予備的にシート剥離する第2吸引孔42とから構成されている。
【0029】
本実施例1では、第1吸引孔41と第2吸引孔42がL字状に連なるように形成され、該第1吸引孔41が該第2吸引孔42よりもスライド方向に突出した開口形状となっている。この場合、第1吸引孔41のスライド方向側端部の位置と第2吸引孔42のスライド方向側端部の位置とのずれ量によって第2吸引孔42で予備的にシート剥離する面積が決まり、例えば、第1吸引孔41のスライド方向側端部の位置を第2吸引孔42のスライド方向側端部の位置よりもダイ21のスライド方向長さの1/2の寸法だけずらした場合は、予備的にシート剥離する面積はダイ21の貼着面積のほぼ1/2となる。第1吸引孔41と第2吸引孔42とのスライド方向側端部の位置のずれ量は、ダイ21のスライド方向長さの1/4〜3/4、好ましくは、1/3〜2/3の範囲内で設定すれば良い。
【0030】
第1吸引孔41と第2吸引孔42には、それぞれスライド方向側の縁部に凸部43,44が形成され、シート剥離するダイ21の貼着部分を凸部43,44で浮かせながらシート剥離するようになっている(図6参照)。尚、凸部43,44は、必ずしも各吸引孔41,42のスライド方向側の縁部全体に沿って一直線状に形成する必要はなく、当該縁部の一部に1個又は複数個の凸部を形成するだけでも良く、また、各吸引孔41,42のスライド方向とは異なる方向の縁部にも凸部を形成しても良い。
【0031】
剥離ステージ18を駆動するXYロボットは、シート剥離したダイ21を吸着ノズル30でピックアップする毎に、図3に示すように、剥離ステージ18を次にピックアップするダイ21の貼着部分の手前側へ移動させて、図4に示すように、該剥離ステージ18を該ダイ21の貼着部分の真下へスライドさせて第1吸引孔41で該ダイ21の貼着部分を該ダイ21がピックアップ可能となるようにシート剥離すると共に、第2吸引孔42で該ダイ21の次にピックアップするダイ21の貼着部分の一部を予備的にシート剥離するという動作を繰り返して、ダイシングシート29に貼着されたダイ21を順番にピックアップする。
【0032】
このようにすれば、各ダイ21の貼着部分に対してそれぞれ2回のシート剥離動作が行われるため、従来のように各ダイ21の貼着部分を1回のシート剥離動作でシート剥離する場合と比較して、剥離ステージ18のスライド速度を速くしても、シート剥離性能を確保できると共に、ダイ21が割れないように吸引力(負圧)を比較的小さく設定することができる。これにより、シート剥離に要する時間を短くしてタクトタイムを短縮することができる。
【0033】
本発明は、剥離ステージ18をダイ21の貼着部分の手前側から該ダイ21の貼着部分の真下へスライドさせる速度を一定速度としても良いが、今回ピックアップするダイ21の貼着部分は、前回のシート剥離動作で予備的にシート剥離されているため、本実施例1では、剥離ステージ18をダイ21の貼着部分の手前側からスライドさせる際に、前回のシート剥離動作で予備的にシート剥離された部分については未剥離部分よりもスライド速度を速くするようにしている。このようにすれば、前回のシート剥離動作で予備的にシート剥離されなかった未剥離部分についてのみ剥離ステージ18のスライド速度を遅くして、ゆっくりとシート剥離することができるため、シート剥離に要する時間を効果的に短くしてタクトタイムを短縮することができる。
【0034】
[その他の実施例]
上記実施例1では、第2吸引孔42による予備的なシート剥離を1つのダイ21の貼着部分についてのみ行うようにしたが、図7及び図9に示す実施例2,3では、予備的なシート剥離を行う第2吸引孔42a,42bを、2つのダイ21の貼着部分に跨がるように形成し、該第2吸引孔42a,42bで2つのダイ21の貼着部分の一部をそれぞれ予備的にシート剥離する共に、ピックアップ順序が後の方がシート剥離面積が小さくなるように形成している。
【0035】
図7に示す実施例2では、第2吸引孔42a,42bを階段状に形成し、そのスライド方向側の縁部に凸部44a,44bを形成している。また、図8に示す実施例3では、第2吸引孔42a,42bのスライド方向側の縁部をスライド方向とは逆方向に傾斜させてそれらが一直線に連続するように形成し、そのスライド方向側の縁部に凸部44a,44bを形成している。図7、図8のいずれの実施例でも、各ダイ21の貼着部分に対してそれぞれ3回のシート剥離動作が行われるため、シート剥離性能を高めることができる。
【0036】
尚、予備的なシート剥離を行う第2吸引孔を3つ以上のダイ21の貼着部分に跨がるように形成し、該第2吸引孔で3つ以上のダイ21の貼着部分の一部をそれぞれ予備的にシート剥離するようにしても良い。
【0037】
また、上記各実施例1〜3では、第1吸引孔と第2吸引孔を連続して形成したが、第1吸引孔と第2吸引孔を分離して形成しても良く、また、第1吸引孔及び/又は第2吸引孔を、分離した複数の孔で構成しても良く、また、孔の形状も四角形に限定されず、円、楕円、長円、五角形以上の多角形等であっても良い。要は、ダイ21の貼着部分にその下面側から吸引力(負圧)を作用させるように第1吸引孔と第2吸引孔を形成すれば良い。
【0038】
その他、本発明は、ダイピックアップ装置11の構成を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
11…ダイピックアップ装置、12…マガジン保持部、13…パレット引き出しテーブル、14…パレット引き出し機構、15…サブロボット、16…シャトル機構、17…反転機構、18…剥離ステージ、19…NGコンベア、20…ノズルチェンジャー、21…ダイ、22…ウエハパレット、23…ウエハ装着板、24…カメラ、25…部品実装機、26…シャトルノズル、28…パレット本体、29…ダイシングシート、30…吸着ノズル、30a…パッド部、32…制御装置、40…シート吸引孔、41…第1吸引孔、42,42a,42b…第2吸引孔、43,44,44a,44b…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを碁盤目状にダイシングして形成した多数のダイが貼着されたダイシングシート上のダイをピックアップする吸着ノズルと、前記吸着ノズルでピックアップするダイの貼着部分を前記ダイシングシートの下面側から吸引して該ダイの貼着部分をシート剥離する剥離ステージと、前記剥離ステージを駆動する剥離ステージ駆動手段とを備え、前記剥離ステージは、前記ダイシングシートを吸引するシート吸引孔を有し、前記吸着ノズルで前記ダイシングシート上のダイを吸着保持しながら、該ダイの貼着部分の手前側から前記剥離ステージを該ダイの貼着部分の真下へスライドさせることで該ダイの貼着部分を前記シート吸引孔で徐々にシート剥離するダイピックアップ装置において、
前記シート吸引孔は、今回ピックアップするダイの貼着部分を該ダイがピックアップ可能となるようにシート剥離する第1吸引孔と、次にピックアップするダイの貼着部分の一部を予備的にシート剥離する第2吸引孔とからなり、
前記剥離ステージ駆動手段は、前記吸着ノズルで前記ダイシングシート上のダイをピックアップする毎に、前記剥離ステージを次にピックアップするダイの貼着部分の手前側へ移動させて該剥離ステージを該ダイの貼着部分の真下へスライドさせて前記第1吸引孔で該ダイの貼着部分を該ダイがピックアップ可能となるようにシート剥離すると共に、前記第2吸引孔で該ダイの次にピックアップするダイの貼着部分の一部を予備的にシート剥離することを特徴とするダイピックアップ装置。
【請求項2】
前記剥離ステージ駆動手段は、前記剥離ステージをダイの貼着部分の手前側からスライドさせる際に、前回のシート剥離動作で予備的にシート剥離された部分については未剥離部分よりもスライド速度を速くすることを特徴とする請求項1に記載のダイピックアップ装置。
【請求項3】
前記第2吸引孔は、複数のダイの貼着部分の一部をそれぞれ予備的にシート剥離する共に、ピックアップ順序が後の方がシート剥離面積が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイピックアップ装置。
【請求項4】
前記第1吸引孔及び前記第2吸引孔には、それぞれスライド方向側の縁部に凸部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のダイピックアップ装置。
【請求項5】
前記第1吸引孔及び前記第2吸引孔は、L字状に連なるように形成され、該第1吸引孔が該第2吸引孔よりもスライド方向に突出していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のダイピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−169399(P2012−169399A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28196(P2011−28196)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】