説明

ダイボンディング用樹脂ペースト、半導体装置の製造方法及び半導体装置

【課題】 低タック、低弾性率及び接着強度のすべてを高水準で満足することができるダイボンディング層を印刷法によって形成することができるダイボンディング用樹脂ペースト、並びに、それを用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供すること。
【解決手段】 ダイボンディング用樹脂ペーストは、ブタジエン樹脂(A)、熱硬化性成分(B)、フィラー(C)、ゴム状フィラー(D)、並びに、25℃、50%RHの雰囲気下で1時間経過したときの吸湿率が1%未満である溶剤(E)を含み、ゴム状フィラー(D)の含有量が、(A)成分、(B)成分及び(D)成分の総量を基準として5〜28質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイボンディング用樹脂ペーストに関し、より詳細にはIC、LSI等の半導体素子とリードフレームや絶縁性支持基板等の支持部材との接合材料(ダイボンディング材)として用いられるダイボンディング用樹脂ペースト、並びに、ダイボンディング用樹脂ペーストを用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の半導体素子とリードフレームや絶縁性支持基板等の支持部材との接合材料としては、従来から、Au−Si共晶合金、半田、銀ペースト等が知られている。Au−Si共晶合金は、耐熱性及び耐湿性は高いが、弾性率が大きいために、大型チップに適用した場合に割れやすく、高価であるという難点がある。また、半田は、安価であるものの、耐熱性に劣り、その弾性率はAu−Si共晶合金と同様に高く、大型チップへの適用は難しい。銀ペーストは、安価で、耐湿性が高く、弾性率はこれらの中では最も低く、350℃の熱圧着型ワイヤボンダーに適用できる耐熱性を有しているので、現在もダイボンディング材として広く用いられている。しかし、ICやLSIの高集積化が進み、それに伴ってチップが大型化していくなかでは、銀ペーストをチップ全面に広げて塗布することは困難であり、また効率的であるとはいえない。
【0003】
上記以外のダイボンディング材としては、ダイボンディング用接着フィルムがある。例えば、下記特許文献1〜3には、特定のポリイミド樹脂を用いた接着フィルム、特定のポリイミド樹脂に導電性フィラーや無機フィラーを加えたダイボンディング用接着フィルムなどが提案されている。これらのダイボンディング用接着フィルムは、支持基板上に比較的容易にダイボンディング層を形成することができ、特に、42アロイリードフレームに対して好適に使用できる、比較的低温で接着できる、及び熱時接着力に優れているなどの利点を有している。
【0004】
しかし、接着フィルムを用いて半導体装置を製造する場合、予めチップサイズに切り出した(又は打ち抜いた)接着フィルムを支持基板などに貼り付けるための貼付装置が必要となる。また、接着フィルムは、切り出しや打ち抜きの際に無駄が生じやすい。さらに、支持基板の大部分は、基板内部に内層配線が形成されているため、接着フィルムを貼り付ける表面には凹凸が多く、接着フィルム貼付時に空隙が生じて、信頼性が低下しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−228697号公報
【特許文献2】特開平06−145639号公報
【特許文献3】特開平06−264035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近では、製造コストのさらなる低減を目的として、ダイボンディング材を量産性の高い印刷法で供給する方法が注目されている。具体的には、例えば、ダイボンディング用樹脂ペーストを印刷法によって支持基板上に塗布してダイボンディング層を形成する方法がある。
【0007】
形成されるダイボンディング層は、運搬や接触によるダイボンディング層表面の破損を防止する観点や作業性の観点から低タックであることが望ましく、また大型チップへの適用や信頼性の観点から、低弾性率であり、かつ十分な接着強度が得られることが必要である。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低タック、低弾性率及び接着強度のすべてを高水準で満足することができるダイボンディング層を印刷法によって形成することができるダイボンディング用樹脂ペースト、並びに、それを用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、ブタジエン樹脂(A)、熱硬化性成分(B)、フィラー(C)、ゴム状フィラー(D)、並びに、25℃、50%RHの雰囲気下で1時間経過したときの吸湿率が1%未満である溶剤(E)を含み、ゴム状フィラー(D)の含有量が、(A)成分、(B)成分及び(D)成分の総量を基準として5〜28質量%である第1のダイボンディング用樹脂ペーストを提供する。
【0010】
本発明のダイボンディング用樹脂ペーストによれば、印刷法によってダイボンディング層を形成する場合であっても、低タック、低弾性率及び接着強度のすべてを高水準で満足することができる。このような効果が得られる理由としては、上記(A)〜(E)成分を必須成分とする樹脂ペーストに低弾性であるゴム状フィラーを上記特定の割合で配合することにより、Bステージ化後のタックを十分低下させながら、ダイボンディング層の高弾性化、ダイアタッチ温度の上昇、硬化後のひび割れ、高温高湿環境下での接着強度の低下等の問題を十分抑制することができたためと考えられる。また、本発明のダイボンディング用樹脂ペーストが上記特定の溶剤を含有することにより、連続印刷を行う場合であっても大気中の水分の影響で樹脂成分が分離することを十分防止することができることも、上記の効果が得られる一因であると考えられる。
【0011】
本発明のダイボンディング用樹脂ペーストは、樹脂との相溶性、低吸湿性及び低揮発性の観点から、上記溶剤(E)として、カルビトールアセテートを含むことが好ましい。
【0012】
本発明は、ブタジエン樹脂(A)、熱硬化性成分(B)、フィラー(C)、ゴム状フィラー(D)、並びに、カルビトールアセテートを含み、ゴム状フィラー(D)の含有量が、(A)成分、(B)成分及び(D)成分の総量を基準として5〜28質量%である第2のダイボンディング用樹脂ペーストを提供する。
【0013】
本発明の第1及び第2のダイボンディング用樹脂ペーストにおいて、増粘による希釈率増加に伴って生じるペースト中の不揮発性分量の低下やシリカフィラーや金属フィラーの添加に伴い生じるガラス転移点Tgの高温化を防止する観点から、上記ゴム状フィラー(D)として、シリコーンゴム粒子を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の第1及び第2のダイボンディング用樹脂ペーストは、印刷法によって被着体上に塗布される印刷用とすることができる。
【0015】
本発明はまた、支持基板上に、上記本発明の第1又は第2のダイボンディング用樹脂ペーストを塗布する工程と、塗布された樹脂ペーストを乾燥してBステージ化する工程と、Bステージ化した樹脂ペースト上に半導体素子を搭載する工程と、半導体素子が搭載された樹脂ペーストを硬化する工程とを含む半導体装置の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、本発明に係るダイボンディング用樹脂ペーストを用いることにより、低タック、低弾性率及び接着強度のすべてを高水準で満足することができるダイボンディング層を形成することができ、これにより、信頼性に優れた半導体装置を効率よく製造することが可能となる。
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法においては、支持基板上に、上記ダイボンディング用樹脂ペーストを印刷法によって塗布することができる。この場合も、低タック、低弾性率及び接着強度のすべてを高水準で満足することができるダイボンディング層を形成することができ、信頼性に優れた半導体装置を一層効率よく製造することが可能となる。
【0018】
本発明はまた、上記本発明の半導体装置の製造方法によって得られる半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低タック、低弾性率及び接着強度のすべてを高水準で満足することができるダイボンディング層を印刷法によって形成することができるダイボンディング用樹脂ペースト、並びに、それを用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することができる。本発明によれば、連続印刷によっても優れた特性を有するダイボンディング層を形成することができ、半導体装置の製造コストの低減が実現可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る第1実施形態のダイボンディング用樹脂ペーストは、ブタジエン樹脂(A)、熱硬化性成分(B)、フィラー(C)、ゴム状フィラー(D)、並びに、25℃、50%RH(Relative Humidity)の雰囲気下で1時間経過したときの吸湿率が1%未満である溶剤(E)を含み、ゴム状フィラー(D)の含有量が、(A)成分、(B)成分及び(D)成分の総量を基準として5〜28質量%である。
【0021】
また、本発明に係る第2実施形態のダイボンディング用樹脂ペーストは、ブタジエン樹脂(A)、熱硬化性成分(B)、フィラー(C)、ゴム状フィラー(D)、並びに、カルビトールアセテートを含み、を含み、ゴム状フィラー(D)の含有量が、(A)成分、(B)成分及び(D)成分の総量を基準として5〜28質量%である。
【0022】
(A)ブタジエン樹脂としては、例えば、ポリブタジエン、ブタジエンとブタジエン以外のモノマー成分との共重合ポリマー、これらの変性ポリマーが挙げられる。上記ブタジエン以外のモノマー成分としては、アクリロニトリル、スチレンが挙げられる。変性ポリマーとしては、例えば末端をカルボキシル化したブタジエン・アクリルニトリル共重合体(PTI Japan社製、商品名:CTBN)、アミン化したブタジエン・アクリルニトリル共重合体(PTI Japan社製、商品名:ATBN)、ビニル化したブタジエン・アクリルニトリル共重合体(PTI Japan社製、商品名:VTBN)などが挙げられる。
【0023】
本実施形態においては、主鎖にアクリロニトリルを導入した低分子量液状ポリブタジエンであり末端にカルボン酸を有するポリマーや、カルボン酸基を有する低分子量液状ポリブタジエンが好適に使用できる。前者のポリブタジエンとしては、Hycer CTB−2000×162、CTBN−1300×31、CTBN−1300×8、CTBN−1300×13、CTBNX−1300×9、CTBN−1009−SP(いずれもPTI Japan社製)などの市販品を用いることができる。後者のポリブタジエンとしては、NISSO−PB−C−2000(日本曹達(株)製)などの市販品を用いることができる。
【0024】
ブタジエン樹脂の分子量は、400〜5000g/molが好ましく、1500〜4000g/molがより好ましく、2500〜3500g/molが更に好ましい。ブタジエン樹脂の分子量は、重量平均分子量を意味する。
【0025】
上記のブタジエン樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
ダイボンディング用樹脂ペーストにおける(A)成分の含有量は、硬化物の低弾性率化の観点から、ペースト中の固形成分全量を基準として、35質量%以下が好ましく、25〜30質量%がより好ましく、27.5〜30質量%が更に好ましい。
【0027】
(B)熱硬化性成分としては、加熱によって架橋反応を起こす反応性化合物からなる成分であれば特に限定されることはなく使用でき、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂(シアン酸エステル樹脂)、マレイミド樹脂、アリルナジイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、高温での優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、及びアリルナジイミド樹脂が好ましい。これらの樹脂は、特にポリイミド樹脂との組み合せにおいて高温での優れた接着力を発現することができる。熱硬化性樹脂は、単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものが好ましく、熱圧着性や硬化性、硬化物特性の点から、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂がより好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
また、エポキシ樹脂としては、不純物イオンである、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特に塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。
【0030】
エポキシ樹脂を用いる場合の配合量は、ペーストの保管安定性を維持しつつ硬化後の接着強度を向上させる観点から、上記(A)成分100質量部に対し、1〜300質量部であることが好ましく、30〜200質量部であることがより好ましい。
【0031】
また、上記フェノール樹脂は、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
本実施形態においては、エポキシ樹脂とフェノール樹脂又は分子中にフェノール性水酸基を有する化合物とを併用して配合することが好ましい。この場合、フェノール樹脂又は分子中にフェノール性水酸基を有する化合物の配合量は、硬化性を十分確保しつつ硬化後の接着強度を向上させる観点から、エポキシ樹脂100質量部に対し、10〜150質量部であることが好ましく、25〜120質量部であることがより好ましい。
【0033】
(B)熱硬化性成分として用いる熱硬化性樹脂は、5%質量減少温度が150℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが更により好ましい。ここで、5%質量減少温度とは、熱硬化性樹脂を示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの5%質量減少温度である。5%質量減少温度が高い熱硬化性樹脂を適用することで、熱圧着又は熱硬化時に揮発することを抑制できる。このような耐熱性を有する熱硬化性樹脂としては、分子内に芳香族基を有するエポキシ樹脂が挙げられ、接着性、耐熱性の観点から特に3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテルが好ましく用いられる。
【0034】
本実施形態においては(B)熱硬化性成分が硬化促進剤を更に含有することができる。(B)熱硬化性成分がエポキシ樹脂を含む場合、硬化促進剤は、エポキシ樹脂を硬化させるために用いられるものであればよく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の配合量は、ペーストの保管安定性を維持しつつ硬化後の接着強度を向上させる観点から、エポキシ樹脂100質量部に対し、0〜50質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましい。
【0035】
また、(B)熱硬化性成分が、下記の一般式(I)又は(II)で表されるイミド化合物を含有することが好ましい。
【0036】
【化1】



[式中、X及びYは、O、CH、CF、SO、S、CO、C(CH又はC(CFを示し、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フッ素、塩素又は臭素を示し、Dはエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。]
【0037】
上記一般式(I)で表されるイミド化合物としては、例えば、4,4−ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4−ビスマレイミドジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミド−3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルホン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルフィド、4,4−ビスマレイミドジフェニルケトン、2,2’−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン、4,4−ビスマレイミドジフェニルフルオロメタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0038】
また、上記一般式(II)で表されるイミド化合物としては、例えば、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕フルオロメタン、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕ケトン、2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。
【0039】
上記イミド化合物を用いる場合の配合量は、ペーストの保管安定性を維持しつつ硬化後の接着強度を向上させる観点から、上記(A)成分100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、50〜100質量部であることがより好ましい。
【0040】
また、上記イミド化合物の硬化を促進するため、ラジカル重合開始剤を使用してもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。ラジカル重合開始剤の使用量は、上記イミド化合物100質量部に対して、0.01〜1.0質量部が好ましく、0.5〜1.0質量部がより好ましい。
【0041】
(C)フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉等の導電性(金属)フィラー、シリカ、アルミナ、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機物質フィラー等が挙げられる。これらフィラーのうち、銀粉、金粉、銅粉等の導電性(金属)フィラーは、接着剤に導電性、伝熱性又はチキソトロピー性を付与する目的で添加され、シリカ、アルミナ、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機物質フィラーは、接着剤に低熱膨張性、低吸湿率、チキソトロピー性を付与する目的で添加される。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、上記無機物質フィラーとして、半導体装置の電気的信頼性を向上させる目的で、無機イオン交換体を用いてもよい。無機イオン交換体としては、樹脂ペースト硬化物を熱水中で抽出したとき、水溶液中に抽出されるイオン、例えば、Na、K、Cl-、F-、RCOO-、Br-等のイオン捕捉作用が認められるものが有効である。このようなイオン交換体としては、天然に産出されるゼオライト、沸石類、酸性白土、白雲石、ハイドロタルサイト類等の天然鉱物、人工的に合成された合成ゼオライトなどが挙げられる。
【0043】
上記の導電性フィラー又は無機物質フィラーは、1種を単独で用いてもよく、それぞれ2種以上を混合して用いることもできる。また、物性を損なわない範囲で、導電性フィラーの1種以上と無機物質フィラーの1種以上とを混合して用いてもよい。
【0044】
上記フィラーの平均粒径は、フィラーアタック回避の観点から、25μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0045】
上記フィラーの配合量は、上記(A)成分100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましい。フィラーの配合量を1質量部以上とすることにより、ペーストに十分なチキソトロピー性(チキソトロピー指数:1.5以上)を付与することができる。また、フィラーの配合量を100質量部以下とすることにより、接着性が損なわれず、また硬化物の弾性率が高くなり、その結果ダイボンディング層の応力緩和能が低くなることで半導体装置の実装信頼性が低下することを十分抑制することができる。
【0046】
上記フィラーのダイボンディング用樹脂ペースト中への混合・混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0047】
(D)ゴム状フィラーとしては、例えば、シリコーン微粒子や、ゴム粒子にシリコーン樹脂が被覆した構造を有するシリコーンゴム粒子が挙げられる。なかでも、シリコーンゴム粒子が好ましい。このようなシリコーンゴム粒子としては、例えば、ジメチルシロキサンを架橋したゴム粉末にシロキサン結合をもつレジンで三次元架橋させたものなどが挙げられ、KMP−590、KMP−600、KMP−601、KMP−602、KMP−605、X−52−7030(いずれも信越化学工業(株)製)などの市販品を用いることができる。ゴム状フィラーは、1種を単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0048】
また、ゴム状フィラーは、耐熱性を有し、低吸湿でかつ低応力・低弾性であるものが好ましい。このようなゴム状フィラーを配合することにより、低応力性、低弾性を維持しつつBステージ後のタックを低減させることができる。
【0049】
ゴム状フィラーは、平均粒径が1μm以上10μm未満かつ最大粒径が25μm以下が好ましく、平均粒径が1μm以上5μm未満かつ最大粒径が5μm以下がより好ましい。ゴム状フィラーの平均粒径が10μm以上である或いは最大粒径が25μmを超えるとフィラーアタックを生じることがある。また、ゴム状フィラーの平均粒径が1μmを下回ると増粘やチキソトロピー変化が生じる。
【0050】
ゴム状フィラーの含有量は、低タック、低弾性率及び接着強度のすべてを高水準で満足させる観点から、(A)成分、(B)成分及び(D)成分の総量を基準として5〜28質量%であることが必要である。この含有量が、28質量%を超えると、硬化後のダイボンディング層が高温高湿環境下に置かれたとき(例えば、85℃、85%RH、24時間の吸湿試験後)に接着強度が低下する傾向があり、信頼性が低下する恐れがある。一方、上記含有量が5質量%未満であると、Bステージ化後にタックが残り、作業性が低下する傾向がある。
【0051】
タック低減の方法として、フィラーや熱硬化性樹脂を過剰に配合した組成にする方法が考えられる。しかし、無機フィラーやエポキシ樹脂を過剰に加えるとダイボンディング材が高弾性化し、ダイアタッチ温度の上昇、硬化後のひび割れ、基板そり等の問題を生じる。これに対して、本実施形態に係るダイボンディング用樹脂ペーストでは、無機フィラーに比べて低弾性であるゴム状フィラーを上記特定の割合で含有させることにより、高弾性化することなく、タックを十分低減させることができる。
【0052】
信頼性の観点から、ゴム状フィラーの含有量は、5〜28質量%であることが好ましく、15〜25質量%であることがより好ましく、20〜25質量%であることが更に好ましい。
【0053】
(E)成分である溶剤は、25℃、50%RHの雰囲気下で1時間経過したときの吸湿率が1%未満である。
【0054】
吸湿率の値は、2回測定した平均値を採用することができ、当該吸湿率は以下の測定方法によって求められる。まず、金属シャーレに溶剤を5g量り取り、乾燥機に入れ、50℃で1時間乾燥する。その後、25℃、50%RHの恒温恒湿槽内で1時間の吸湿処理を行う。乾燥後のサンプル及び吸湿処理後のサンプルの重量測定を行い、これらの値から下記式に従って各処理における吸湿率を算出し、2回測定した値の平均値を求める。なお、サンプルの重量測定は、乾燥機或いは恒温恒湿槽から取り出して60秒後に行う。
吸湿率(%)=[(吸湿処理後のサンプルの質量)−(乾燥後のサンプルの質量)]/(乾燥後のサンプルの質量)×100
【0055】
溶剤の吸湿率の平均値が上記範囲にあると、溶剤の吸湿が十分抑制されるため、ダイボンディング用樹脂ペーストを大気中に放置しても樹脂成分が分離しにくく、連続印刷が可能となる。
【0056】
更に、本実施形態で用いる溶剤は、上記吸湿率の平均値が0.5%未満であることが好ましい。また、溶剤は、フィラーを均一に混練又は分散できるものが好ましい。更に、溶剤は、印刷時の溶剤の揮散防止の観点から、沸点が100℃以上であることが好ましい。
【0057】
また、溶剤は印刷用のものが好ましい。ここで印刷用とは、ダイボンディング用樹脂ペーストを印刷法によって支持基板上に塗布してダイボンディング層を形成するためのものを意味する。低吸湿率で、なおかつ中・高沸点の溶剤が好ましい。
【0058】
溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライムともいう)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライムともいう)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、γ−ブチロラクトン、イソホロン、カルビトール、カルビトールアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、アニソール、印刷用インキの溶剤として使われる石油蒸留物を主体とした溶剤などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。石油蒸留物を主体とした溶剤としては、具体的には、カルビトールアセテートが挙げられる。
【0059】
本実施形態においては、樹脂との相溶性、低吸湿性、低揮発性の観点から、カルビトールアセテートが特に好ましい。
【0060】
(E)溶剤の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましい。低温、短時間でBステージ化させる観点から、溶剤の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、作業環境汚染回避の観点から1〜10質量部がより好ましい。
【0061】
本実施形態のダイボンディング用樹脂ペーストを印刷したときに、泡、ボイドの発生が目立つ場合は、上記溶剤中に脱泡剤、破泡剤、抑泡剤等を添加することが効果的である。これらの添加量は、抑泡効果を発揮させる観点から、溶剤中に0.01質量%以上添加することが好ましく、樹脂ペーストの粘度安定性や接着性の観点から、溶剤中に10質量%以下の割合で含まれるように添加することが好ましい。
【0062】
本実施形態のダイボンディング用樹脂ペーストには、接着力を向上させるため、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系添加剤等を適宜加えてもよい。
【0063】
本実施形態のダイボンディング用樹脂ペーストは、樹脂ペースト乾燥後の体積減少に起因する形状変化を抑制すること、及び樹脂ペーストの流動性及び印刷作業性を向上させることの点から、固形分が40〜90質量%であることが好ましく、70〜90質量%であることがより好ましい。
【0064】
本実施形態のダイボンディング用樹脂ペーストのチキソトロピー指数は、1.5〜8.0であることが好ましい。印刷性の観点から、チキソトロピー指数は2.0〜6.0であることがより好ましい。ペーストのチキソトロピー指数が1.5以上であると、印刷法によって供給・塗布された樹脂ペーストのダレ等の発生を抑制して、印刷形状を良好に保ち易く、また、チキソトロピー指数が8.0以下であると、印刷法によって供給・塗布された樹脂ペーストの「欠け」やカスレ等の発生を抑制し易くなる。
【0065】
なお、チキソトロピー指数は、ブルックフィールド型粘度計で25℃、回転数0.5rpmで測定したときの値と、回転数5.0rpmで測定したときの値との比、すなわち、チキソトロピー指数=0.5rpm粘度/5.0rpm粘度で定義される。
【0066】
また、本実施形態のダイボンディング用樹脂ペーストの25℃における粘度は、印刷作業性の観点から、5〜1000Pa・sであることが好ましい。また、樹脂ペーストの粘度は、印刷法の種類により適宜調整することが好ましい。例えば、スクリーンメッシュ版等のようにマスク開口部にメッシュ等が張ってある場合は、メッシュ部の抜け性を考慮して5〜100Pa・sの範囲に調整することが好ましく、ステンシル版などの場合は20〜500Pa・sの範囲に調整することが好ましい。また、乾燥後の樹脂ペーストに残存するボイドが多く見られる場合は、150Pa・s以下の粘度に調整することが有効である。なお、上記粘度は、ブルックフィールド型粘度計を用いて、25℃、回転数0.5rpmで測定したときの値である。
【0067】
次に、本実施形態のダイボンディング用樹脂ペーストを用いる半導体装置の製造方法について説明する。
【0068】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、支持基板上に、上記本実施形態のダイボンディング用樹脂ペーストを塗布する工程と、塗布された樹脂ペーストを乾燥してBステージ化する工程と、Bステージ化した樹脂ペースト上に半導体素子を搭載する工程と、半導体素子が搭載された樹脂ペーストを硬化する工程とを含む。
【0069】
上記支持基板としては、特に限定されないが、例えば、42アロイリードフレーム、銅リードフレーム等のリードフレーム、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂等のプラスチックフィルム、ガラス不織布等の基材にポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂等を含む樹脂組成物を含浸・硬化させたもの(プリプレグ)、若しくはアルミナ等のセラミックス製の支持部材などが挙げられる。
【0070】
支持基板上にダイボンディング用樹脂ペーストを供給し塗布する方法としては、印刷法が好ましい。印刷法としては、例えば、スクリーン印刷法が挙げられる。
【0071】
樹脂ペーストの塗布量については、マスクのパターン形状にもよるが、例えば8mm×10mmマスクであれば、膜厚が50〜300μmとなる量が好ましい。
【0072】
塗布された樹脂ペーストを乾燥してBステージ化する方法としては、加熱が挙げられる。本実施形態のダイボンディング用樹脂ペーストは特定の溶剤を含有しているが、その大部分はBステージ化により揮発する。そして、Bステージ化により、支持基板上に、ボイドが十分少なく、かつ、低タック或いはタックフリーのダイボンディング層が形成される。
【0073】
半導体素子(チップ)としては、IC、LSI等が挙げられる。半導体素子の搭載は、例えば、DRAMやSRAM、フラッシュメモリ等が挙げられる。このとき、加熱条件下で荷重をかけて仮接着してもよく、或いは、更に加熱することで樹脂ペーストの硬化まで行ってもよい。
【0074】
本実施形態においては、半導体素子が搭載された樹脂ペースト(ダイボンディング層)を後硬化することが好ましい。この樹脂ペースト層の後硬化は、実装組立工程での問題がない場合は、封止材の後硬化工程の際に併せて行うことができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
<樹脂ペーストの調製>
(実施例1〜7、比較例1〜6)
下記表1に示す割合で、まず、(B)成分1としてのYDCN700−7及びTrisP−PA−MFと、(E)成分1としてのCAを、オイルバスに設置した4つ口セパラブルフラスコにて、窒素雰囲気下で60℃に加熱しながら攪拌し、溶解させた。次に、表1に示す割合となるように、(A)成分、(B)成分2、(C)成分、(D)成分及び(E)成分2の各成分をらいかい機に入れ、混練した後、5Torr以下で1時間脱泡混練を行い、ダイボンディング用樹脂ペーストを得た。なお、比較例6では、(E)成分1及び(E)成分2に代えて、他の溶剤1としてのNMP及び他の溶剤2としてのNMPを用いた。
【0077】
【表1】



【0078】
【表2】



【0079】
各組成の配合量の単位は全て質量部を示す。また、表1及び2における略号は次の通りである。
CTBNX−1009−SP:宇部興産(株)製、商品名、カルボン酸末端液状ポリブタジエン、重量平均分子量Mw:3500g/mol
YDCN700−7:東都化成(株)、2−メチルフェノール・ホルムアルデヒド重縮合ポリグリシジルエーテル
TrisP−PA−MF:本州化学(株)、4,4’−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン)−ビスフェノール
CA:カルビトールアセテート(和光純薬工業(株))(吸湿率0.24%)
NMP:N−メチル2−ピロリドン(三菱化学(株))(吸湿率2.70%)
TPPK:東京化成工業(株)製、商品名、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラート
IXE−100:東亞合成、リン酸ジルコニウム
IXE−700F:東亞合成、マグネシウム/アルミニウム
Aerosil50:日本アエロジル(株)製
Aerosil380:日本アエロジル(株)製
KMP−600:信越化学工業(株)製
KMP−605:信越化学工業(株)製
【0080】
<溶剤の吸湿率>
まず、金属シャーレに溶剤を5g量り取り、乾燥機に入れ、50℃で1時間乾燥した。その後、25℃、50%RHの恒温恒湿槽内で1時間の吸湿処理を行った。乾燥後のサンプル及び吸湿処理後のサンプルの重量測定を行い、これらの値から下記式に従って各処理における吸湿率を算出した。この測定を2回行い、それらの平均値を求めた。なお、サンプルの重量測定は、乾燥機或いは恒温恒湿槽から取り出して60秒後に行った。
吸湿率(%)=[(吸湿処理後のサンプルの質量)−(乾燥後のサンプルの質量)]/(乾燥後のサンプルの質量)×100
【0081】
<タックの評価>
AUS−308(太陽インキ社製、商品名)を塗布したMCL−E−679F(日立化成社製、商品名)に厚さ100μmメタルマスクを用いて印刷塗布によりダイボンディング用樹脂ペースト層を8mm×10mm×厚さ75〜80μmで形成し、90℃で60分間乾燥させてBステージ化した。この上に、5mm×5mm×厚さ0.4mmのSiチップを5mm角のコレットを用いて、30℃、30N、1秒の条件で圧着した。こうして得られた試験片を、自動接着力試験機(デイジ社製)により25℃におけるせん断強さを測定した。なお、せん断強さが300kPa以下の場合を低タックと判断できる。
【0082】
<弾性率(E’)>
ダイボンディング用樹脂ペーストをテフロン(登録商標)シート上に、スペーサーとスキージを用いて厚さ300μmのダイボンディング用樹脂ペースト層を形成し、90℃のオーブンで60分間乾燥させてBステージ化した。Bステージ化後、180℃のオーブンで60分間硬化を行い、硬化物を作製した。これを、RSA−II(レオメトリック社製)を用いて周波数1.0Hz、温度範囲−70〜300℃、昇温度速度5.0℃/minで動的粘弾性測定を行い、25℃、50℃、150℃のE’を各温度における弾性率として求めた。
【0083】
<Tg>
弾性率測定により測定したE’およびE’’から算出したtanδをTgとした。
【0084】
<接着強度>
ソルダーレジスト(太陽インキ製、商品名Aus−308)を塗布した基板(以下Aus−308/MCL−E−679F)(日立化成社製、商品名MCL−E−679F基板)に、8mm×10mm×厚み0.1mmのマスクとスキージを用いてダイボンディング用樹脂ペーストを印刷した。90℃で60分間Bステージ化した後、5mm×5mm×厚さ0.4mmのSiチップを、5mm角のコレットを用いて、90℃、30N、1秒間の条件で圧着した。こうして得られた試験片を180℃のオーブンで60分間加熱して後硬化を行った後、自動接着力試験機(デイジ社製)により250℃で20秒間保持後のせん断強さ測定を行った。他方で、後硬化を行った上記試験片を、85℃、85%RHの雰囲気下に24時間保管する吸湿試験を行った後、上記と同様にせん断強さ測定を行った。
【0085】
<チキソトロピー指数>
ダイボンディング用樹脂ペーストのチキソトロピー指数を以下の方法により測定した。ブルックフィールド型粘度計HADV−III U CP(Brookfield Engineering Laboratories製)を用い、ペースト0.5mL、温度25℃、所定の回転数(0.5rpmおよび5.0rpm)で3分間回転後の値をペーストの粘度とし、次式によりチキソトロピー指数を算出した。
チキソトロピー指数=0.5rpm粘度/5.0rpm粘度
【0086】
<室温でのチキソトロピー指数変化率>
上記でチキソトロピー指数を測定したダイボンディング樹脂ペースト20gを、30g軟膏瓶に量り取り、25℃/50%RHにて開放系で保管(吸湿処理)し、1時間後のチキソトロピー指数を上記と同様の方法で測定し、下記式によりチキソトロピー指数変化率を算出した。
チキソトロピー指数変化率(%)=[(吸湿処理後のチキソトロピー指数)−(吸湿処理前のチキソトロピー指数)]/(吸湿処理前のチキソトロピー指数)×100
【0087】
表に示されるように、実施例のダイボンディング用樹脂ペーストは、せん断強さが300kPa以下であり低タック性であることが分かった。また、弾性率、Tgは、ゴム状フィラー含有量に関わらずほぼ同等であった。接着強度は、2.0MPa以上であり、吸湿試験後の接着強度低下率は全て10%以下であった。
【0088】
一方、比較例のダイボンディング用樹脂ペーストは、比較例1〜比較例3で吸湿試験後の接着強度低下率が10%以上となり、信頼性の低下が懸念される。また、比較例4〜比較例5においては、せん断強さが300kPa以上でタック性を有するため、作業性が低下してしまう。さらに、25℃、50%RHの雰囲気下で1時間経過したときの吸湿率が2.7%の溶剤であるNMPを用いた比較例6のダイボンディング用樹脂ペーストは、室温でのチキソトロピー指数変化率が11.9%と、開放系での保管安定性が悪く、実際に使用した際に樹脂の分離や増粘、印刷性の変化などの問題が発生すると考えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタジエン樹脂(A)、熱硬化性成分(B)、フィラー(C)、ゴム状フィラー(D)、並びに、25℃、50%RHの雰囲気下で1時間経過したときの吸湿率が1%未満である溶剤(E)を含み、
前記ゴム状フィラー(D)の含有量が、前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(D)成分の総量を基準として5〜28質量%である、ダイボンディング用樹脂ペースト。
【請求項2】
前記溶剤(E)として、カルビトールアセテートを含む、請求項1に記載のダイボンディング用樹脂ペースト。
【請求項3】
前記ゴム状フィラー(D)として、シリコーンゴム粒子を含む、請求項1又は2に記載のダイボンディング用樹脂ペースト。
【請求項4】
印刷法によって被着体上に塗布される印刷用である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイボンディング用樹脂ペースト。
【請求項5】
ブタジエン樹脂(A)、熱硬化性成分(B)、フィラー(C)、ゴム状フィラー(D)、並びに、カルビトールアセテートを含み、
前記ゴム状フィラー(D)の含有量が、前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(D)成分の総量を基準として5〜28質量%である、ダイボンディング用樹脂ペースト。
【請求項6】
前記ゴム状フィラー(D)として、シリコーンゴム粒子を含む、請求項5に記載のダイボンディング用樹脂ペースト。
【請求項7】
印刷法によって被着体上に塗布される印刷用である、請求項5又は6に記載のダイボンディング用樹脂ペースト。
【請求項8】
支持基板上に、請求項1〜7のいずれか一項に記載のダイボンディング用樹脂ペーストを塗布する工程と、
塗布された前記樹脂ペーストを乾燥してBステージ化する工程と、
Bステージ化した前記樹脂ペースト上に半導体素子を搭載する工程と、
半導体素子が搭載された前記樹脂ペーストを硬化する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記支持基板上に、前記ダイボンディング用樹脂ペーストを印刷法によって塗布する、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の半導体装置の製造方法によって得られる、半導体装置。



【公開番号】特開2013−93564(P2013−93564A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−214190(P2012−214190)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】