説明

ダイヤフラムポンプ

【課題】 液漏れの生じる可能性の少ない4バルブダイヤフラムポンプを得る。
【解決手段】 順に積層したアッパハウジング、ポンプ室プレート、ダイヤフラム、及びロアハウジングを備え、ロアハウジングには、該ロアハウジング単体に、ダイヤフラムと対向して一方のポンプ室を形成するポンプ室形成凹部と、このポンプ室形成凹部にそれぞれ連通する第一の吸入側逆止弁を有する吸入ポートと第一の吐出側逆止弁を有する吐出ポートとが形成され、ポンプ室プレートには、ダイヤフラムと対向して他方のポンプ室を形成するポンプ室形成凹部と、第二の吸入側逆止弁と第二の吐出側逆止弁とが設けられ、アッパハウジングとポンプ室プレートとの間に、上記ロアハウジングの吸入ポートと吐出ポートから分岐して上記第二の吸入側逆止弁と第二の吐出側逆止弁に連なる板間吸入側流路と板間吐出側流路を形成したダイヤフラムポンプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤフラムポンプは、ダイヤフラムによってポンプ室(可変容積室)を形成し、このポンプ室に連なる一対の流路に、流れ方向の異なる一対の逆止弁(ポンプ室への流体流を許す吸入側逆止弁とポンプ室からの流体流を許す吐出側逆止弁)を設けている。ダイヤフラムを振動させるとポンプ室の容積が変化し、容積が拡大する行程では吸入側逆止弁が開き、容積が縮小する行程では吐出側逆止弁が開く動作を繰り返すことから、ポンプ作用が得られる。ダイヤフラムは、ゴム、圧電振動子等の弾性(振動)可能な材料から構成される。
【特許文献1】特開2001-193656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このダイヤフラムポンプは、上述したように、ポンプ室の容積が拡大する行程では吸入側逆止弁が開き、容積が縮小する行程では吐出側逆止弁が開く動作を繰り返すことから、吐出ポートでは脈動が避けられない。
【0004】
本出願人は、この吐出ポートでの脈動を問題とし、該脈動の周期を半分としたダイヤフラムポンプを提案した(特願2004-154991号)。このダイヤフラムポンプは、ダイヤフラムによって該ダイヤフラムの上下にそれぞれポンプ室を形成する一方、単一の吸入ポートと、単一の吐出ポートを設け、一対のポンプ室と吸入ポートとの間にそれぞれ該吸入ポートから該一対のポンプ室への流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない第一、第二の吸入側逆止弁を設け、一対のポンプ室と吐出ポートとの間にそれぞれ該一対のポンプ室から吐出ポートへの流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない第一、第二の吐出側逆止弁を設けたものである(4バルブダイヤフラムポンプ)。
【0005】
また、この特願2004-154991号では、4バルブダイヤフラムポンプの一層の薄型化を図ることができるポンプ構造を提案した。しかし、実施例のポンプ構造は、上下のハウジングにそれぞれ形成した吸入ポートと吐出ポートにアンブレラを装着後、流路を形成すべ別体の蓋体を接着する構造であった。接着には、例えば信頼性の高いレーザ溶着を用いることができるが、液体を扱うポンプでは、長期の使用による経時変化等により液漏れが生じる可能性があり、完璧な信頼性を得ることが困難なことが判明した。
【0006】
本発明は従って、液漏れの生じる可能性の少ない4バルブダイヤフラムポンプを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、振動が与えられるダイヤフラムによって該ダイヤフラムの上下にそれぞれポンプ室を形成し、この一対のポンプ室と単一の吸入ポートとの間にそれぞれ該吸入ポートから該一対のポンプ室への流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない第一、第二の吸入側逆止弁を設け、該一対のポンプ室と単一の吐出ポートとの間にそれぞれ該一対のポンプ室から吐出ポートへの流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない第一、第二の吐出側逆止弁を設けたダイヤフラムポンプであって、順に積層したアッパハウジング、ポンプ室プレート、ダイヤフラム、及びロアハウジングを備え、ロアハウジングには、該ロアハウジング単体に、ダイヤフラムと対向して一方のポンプ室を形成するポンプ室形成凹部と、このポンプ室形成凹部にそれぞれ連通する第一の吸入側逆止弁を有する吸入ポートと第一の吐出側逆止弁を有する吐出ポートとが形成され、ポンプ室プレートには、ダイヤフラムと対向して他方のポンプ室を形成するポンプ室形成凹部と、第二の吸入側逆止弁と第二の吐出側逆止弁とが設けられ、アッパハウジングとポンプ室プレートとの間に、アッパハウジング吸入ポートと吐出ポートから分岐して上記第二の吸入側逆止弁と第二の吐出側逆止弁に連なる板間吸入側流路と板間吐出側流路を形成したことを特徴としている。
【0008】
この板間吸入側流路と板間吐出側流路は、ポンプ室プレートとアッパハウジングの間に、シールリングを介して液密に形成することが好ましい。
【0009】
そして、この板間吸入側流路と板間吐出側流路の一端部はそれぞれ、ポンプ室プレートに形成した第二の吸入側逆止弁と第二の吐出側逆止弁に連通させ、他端部はそれぞれ、ロアハウジングに開口する吸入ポートと吐出ポートからのそれぞれの分岐流路に連通させることが好ましい。
【0010】
シールリングは例えば長円状とすると、流路の形成が容易である。
【0011】
ロアハウジングの第一の吸入側逆止弁と第一の吐出側逆止弁は、該ロアハウジングとは別体の吸入側と吐出側の逆止弁ユニットとして形成し、該吸入側と吐出側の逆止弁ユニットを吸入ポートと吐出ポートのポンプ室側開口端に接合することが望ましい。この第一の吸入側逆止弁ユニットと第一の吐出側逆止弁ユニットは同一の基板上に設けることも可能である。
【0012】
ロアハウジングの吸入ポートと吐出ポートは、ダイヤフラムの自由状態における平面方向と平行な方向に、かつ互いに平行に突出形成すると、ダイヤフラムポンプの薄型化に好適である。
【0013】
いずれの態様でも、逆止弁はアンブレラから構成することが望ましい。また、ダイヤフラムは圧電振動子または電歪振動子から構成するのが実際的である。特にバイモルフ型圧電振動子が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液漏れの生じる可能性の少ない4バルブダイヤフラムポンプを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
最初に、図11について、4バルブダイヤフラムポンプの動作原理を説明する。このダイヤフラムポンプは、アッパハウジング10、ロアハウジング20、圧電振動子(ダイヤフラム)30、及び4つのアンブレラ(逆止弁)11、12、21、22を基本的な構成要素としている。アッパハウジング10と圧電振動子30の間、及びロアハウジング20と圧電振動子30の間にはそれぞれ、ポンプ室(可変容積室)13とポンプ室(可変容積室)23が形成されている。単一の吸入ポート31は、吸入側流路14Hと24Hに連通しており、吸入側流路14Hは吸入側アンブレラ11を介してポンプ室13に連通し、吸入側流路24Hは吸入側アンブレラ21を介してポンプ室23に連通している。また、単一の吐出ポート32は、吐出側流路15Dと25Dに連通しており、吐出側流路15Dは吐出側アンブレラ12を介してポンプ室13に連通し、吐出側流路25Dは吐出側アンブレラ22を介してポンプ室23に連通している。
【0016】
この4バルブダイヤフラムポンプは、圧電振動子30が正逆に弾性変形(振動)すると、ポンプ室13と23のいずれか一方の容積が増大し他方の容積が減少する。ポンプ室13の容積が増大する行程はポンプ室23の容積が減少する行程であり、ポンプ室13の容積が増大するから吸入側アンブレラ(吸入側逆止弁)11が開いて吸入ポート31からポンプ室13内に流体が流入し、ポンプ室23の容積が減少するからポンプ室23内の流体が吐出側アンブレラ(吐出側逆止弁)22を開いて吐出ポート32に流出する。逆にポンプ室13の容積が減少する行程はポンプ室23の容積が増大する行程であり、ポンプ室23の容積が増大するから吸入側アンブレラ(吸入側逆止弁)21が開いて吸入ポート31からポンプ室23内に流体が流入し、ポンプ室13の容積が減少するからポンプ室13内の流体が吐出側アンブレラ(吐出側逆止弁)12を開いて吐出ポート32に流出する。従って、吐出ポート32における脈動の周期を短くする(圧電振動子30の上下の一方のみにポンプ室が形成される場合に比して半分にする)ことができる。
【0017】
本実施形態は、以上の動作原理の4バルブダイヤフラムポンプを液漏れのおそれのない液漏れ防止構造で実現するものであり、図1ないし図7についてその一実施形態を説明する。本ダイヤフラムポンプは、アッパハウジング10、ロアハウジング20及び圧電振動子30に加えて、アッパハウジング10と圧電振動子30の間に挟着されるポンプ室プレート40を有しており、全体として扁平な直方体形状をしている。アッパハウジング10、ロアハウジング20及びポンプ室プレート40はいずれも樹脂材料の成形品から構成されている。
【0018】
ロアハウジング20は、これらの成形品のうちで、最も大型で複雑な形状の扁平な直方体状部材であり、圧電振動子30と対向する面に開かれたポンプ室形成凹部20aが形成され、その扁平な周囲四面のうちの一面から、一体に成形した互いに平行をなす吸入ポート31と吐出ポート32が突出成形されている(図1ないし図5参照)。ロアハウジング20には、この吸入ポート31に連通する吸入側流路24Hと、吐出ポート32に連通する吐出側流路25Dとが形成されており、この吸入側流路24Hと吐出側流路25Dの内端部には、ポンプ室形成凹部20aに連通する流路拡張部24Haと25Daが形成されている。この流路拡張部24Haと25Daのポンプ室形成凹部20a側端部には、弁受け凹部24Hbと25Dbとが形成されている。
【0019】
この弁受け凹部24Hbと25Dbにはそれぞれ、吸込側アンブレラユニット(吸入側逆止弁ユニット)21Uと吐出側アンブレラユニット(吐出側逆止弁ユニット)22Uが接着固定されている。吸込側アンブレラユニット21Uと吐出側アンブレラユニット22Uは装着方向が異なるだけで同一構造であり、周縁部を弁受け凹部24Hb(弁受け凹部25Db)との接着部21b(接着部22b)としたユニットプレート21a(ユニットプレート22a)の中心部に、アンブレラ装着穴21c(アンブレラ装着穴22c)を形成し、このアンブレラ装着穴21c(アンブレラ装着穴22c)の周縁に複数の流路穴21d(流路穴22d)を形成してなっている。アンブレラ装着穴21c(アンブレラ装着穴22c)に中心軸21e(中心軸22e)を装着したアンブレラ21f(アンブレラ22f)の傘部21g(傘部22g)が常時は流路穴21d(流路穴22d)を塞ぎ、傘部21g(傘部22g)に流路穴21d(流路穴22d)側から規定値以上の圧力が加わると、傘部21g(傘部22g)が弾性変形して流路穴21d(流路穴22d)を開く。吸込側アンブレラユニット21Uと吐出側アンブレラユニット22Uは、その表裏を逆にしてその接着部21b(接着部22b)が弁受け凹部24Hbと25Dbに接着固定され、吸込側アンブレラユニット21Uは、吸入ポート31からポンプ室形成凹部20a(ポンプ室23)への流体流を許してその逆の流体流を許さず、吐出側アンブレラユニット22Uは、ポンプ室形成凹部20a(ポンプ室23)から吐出ポート32への流体流を許してその逆の流体流を許さない。吸込側と吐出側のアンブレラユニット21Uと22Uのユニットプレート21aと22aは、一枚の基板としてもよい。
【0020】
以上のロアハウジング20には、別体としての蓋体を要することなく、ロアハウジング20単体で、吸入ポート31とポンプ室形成凹部20aとの間、及び吐出ポート32とポンプ室形成凹部20aとの間の閉じられた吸入側流路24Hと吐出側流路25Dが形成されている。ロアハウジング20にはまた、ポンプ室形成凹部20aの周囲に位置させてシールリング溝20bが形成されている。このシールリング溝20bは、半円を超える円の一部からなる大円弧部分20b1と、該大円弧部分20b1の両端部を直線で結んだ直線部分20b2とを有する変形D型形状をなしている。
【0021】
吸込側アンブレラユニット21Uと吐出側アンブレラユニット22U、すなわち弁受け凹部24Hbと25Db(傘部21gと22g)は、圧電振動子30の平面に対して傾斜している(非平行である)。この傾斜の方向は、吸入ポート31(吐出ポート32)の軸線を含み圧電振動子30と直交する平面を考えたとき、該平面内において、吸入ポート31(吐出ポート32)の奥部程、圧電振動子30から離間し、手前程接近する方向である。このように吸込側アンブレラユニット21Uと吐出側アンブレラユニット22Uを傾斜させると、吸入ポート31と吐出ポート32の流路断面積を犠牲にすることなく、ロアハウジング20の薄型化を図ることができる。
【0022】
すなわち、図4に示すように、弁受け凹部24Hbの表面(吸込側アンブレラユニット21Uのユニットプレート21a(傘部21g))と圧電振動子30の自由状態における平面とは、非平行であって、角度αをなしている。つまり、吸入側逆止弁21での流路は圧電振動子30と直交していない。一方、吸入ポート31(吸入側流路24H)の軸線は、圧電振動子30の平面と平行である。そしてこの角度αの方向は、吸込側アンブレラユニット21Uのユニットプレート21a(傘部21g)が、吸入ポート31(吸入側流路24H)の奥部ほど圧電振動子30から離れ、手前ほど圧電振動子30に接近する方向である。
【0023】
同様に、図5に示すように、弁受け凹部25Dbの表面(吐出側アンブレラユニット22Uのユニットプレート22a(傘部22g))と圧電振動子30の自由状態における平面とは、非平行であって、角度αをなしている。つまり、吐出側逆止弁22での流路は圧電振動子30と直交していない。一方、吐出ポート32(吐出側流路25D)の軸線は、圧電振動子30の平面と平行である。そしてこの角度αの方向は、吐出側アンブレラユニット22Uのユニットプレート22a(傘部22g)が、吐出ポート32(吐出側流路25D)の奥部ほど圧電振動子30から離れ、手前ほど圧電振動子30に接近する方向である。
【0024】
ロアハウジング20にはまた、吸入側流路24Hと吐出側流路25Dから分岐してポンプ室プレート40側に開口する分岐流路24Hdと25Ddとが形成されている。ポンプ室プレート40には、この分岐流路24Hdと25Ddに連通する連通穴41と42が形成されており、アッパハウジング10とポンプ室プレート40の間には、この連通穴41と42に連通する板間吸入側流路14Hと板間吐出側流路15Dが形成されている。すなわち、ポンプ室プレート40には、分岐流路24Hdと25Ddに嵌まる凸部41aと42aが形成されており、この凸部41aと42aの中心に、連通穴41と42が形成されている。41b、42bは、分岐流路24Hd、25Ddと、凸部41a、42a(連通穴41、42)との間の液密を保持するOリングである。
【0025】
ポンプ室プレート40は、圧電振動子30との対向面をポンプ室形成凹部40a(図2、図4、図5)としたもので、そのほぼ中心部に、吸込側アンブレラユニット21U、吐出側アンブレラユニット22Uに対応する吸込側アンブレラ11と吐出側アンブレラ12が装着されている。図2には吸込側アンブレラ11と吐出側アンブレラ12を描いていない。すなわち、ポンプ室プレート40には、吸込側アンブレラユニット21Uと吐出側アンブレラユニット22Uに対応する上下位置に、アンブレラ装着穴11aと12aが形成され、このアンブレラ装着穴11aと12aの周縁に複数の流路穴11bと12bが形成されている。吸込側アンブレラ11と吐出側アンブレラ12は、アンブレラ装着穴11a(アンブレラ装着穴12a)に装着される中心軸11c(中心軸12c)と、常時は流路穴11b(流路穴12b)を塞ぐ傘部11d(傘部12d)を有しており、傘部11d(傘部12d)に流路穴11b(流路穴12b)側から規定値以上の圧力が加わると、傘部11d(傘部12d)が弾性変形して流路穴11b(流路穴12b)を開く。吸込側アンブレラ11は、アッパハウジング10側からポンプ室形成凹部40a(ポンプ室13)への流体流を許してその逆の流体流を許さず、吐出側アンブレラ12は、ポンプ室形成凹部40a(ポンプ室13)からアッパハウジング10側への流体流を許してその逆の流体流を許さない。
【0026】
アッパハウジング10は、ロアハウジング20に重ね合わすように、該ロアハウジング20と実質的に同一の平面形状を有している。このアッパハウジング10には、ポンプ室プレート40との間に、連通穴41と吸込側アンブレラ11とを連通させる板間吸入側流路14Hを形成する凹部14Haと、連通穴42と吐出側アンブレラ12とを連通させる板間吐出側流路15Dを形成するための凹部15Daとが形成されている(図2、図4ないし図6参照)。この凹部14Haと15Daの周囲には、長円状Oリング(シールリング)14Hbと15Dbを嵌めるシールリング溝14Hcと15Dcが形成されている。アッパハウジング10にはまた、ポンプ室プレート40を嵌入させる凹部10a(図2、図6)が形成されている。
【0027】
ポンプ室プレート40とアッパハウジング10にはそれぞれ、凹部14Haと15Daに長円状Oリング14Hbと15Dbを嵌めた状態で互いに嵌合される位置決め嵌合突起40cと嵌合穴10c(図1)が形成されており、これらを嵌合後接着することで、連通穴41から吸込側アンブレラ11への液密の板間吸入側流路14H、吐出側アンブレラ12から連通穴42への液密の板間吐出側流路15Dが形成される。すなわち、アッパハウジング10とポンプ室プレート40は凹部10a内に該プレート40を嵌めて予め一体化され、両者の間に閉じられた板間吸入側流路14Hと板間吐出側流路15Dを形成する。別言すると、板間吸入側流路14Hと板間吐出側流路15Dを形成するために、アッパハウジング10とポンプ室プレート40以外の蓋部材を必要としない。
【0028】
ポンプ室プレート40には、図7に特に明らかなように、圧電振動子30と対向するポンプ室形成凹部40aの周囲に、ロアハウジング20のシールリング溝20bに対応する(平面的に同一形状の)シールリング溝40bが形成されている。このシールリング溝40bは、半円を超える円の一部からなる大円弧部分40b1と、該大円弧部分40b1の両端部を直線で結んだ直線部分40b2とを有する変形D型形状をなしている。
【0029】
圧電振動子30は、ユニモルフ型、バイモルフ型のいずれも使用可能である。図8ないし図10は本出願人が特願2004-192483号で提案したバイモルフ型の一実施例の模式図であり、中心部の円形のシム111と、その表裏に積層形成した圧電体112とを備えている。シム111は、導電性の金属薄板材料、例えば厚さ0.2mm程度のステンレス薄板から構成する。圧電体112は、例えば厚さ0.3mm程度のPZT(Pb(Zr、Ti)O3)から構成されるもので、その表裏方向に分極処理が施されている。この分極処理は、シム111の表裏に位置する一対の圧電体112において互いに同一方向である。つまり、図8において、一対の圧電体112の分極方向を矢印aまたはbで表すと、シム111の厚さ方向に同一方向の分極処理が施されている。別言すると、シム111に接触する表裏の一対の圧電体112の分極特性がそれぞれ異極となり、一対の圧電体112の露出面がそれぞれ異極となっている。このように表裏の圧電体112の分極特性を同一方向にすると、シム111と、シム111表裏の一対の圧電体112の露出面との間に交互に正負電圧を与えたとき、シム111の変位量を増大させることができる。
【0030】
一対の圧電体112のシム111側の面は、該シム111と全面的に導通するように接着され、シム111側と反対の露出面には、全面的に膜状電極113が形成されている。この膜状電極113は、例えば導電ペースト(銀ペースト)を印刷(スクリーン焼成)することで形成されている。
【0031】
給電端子180は、一対の接触子1811と、この接触子1811間を接続する接続縁1812と、配線接続部1813とを有しており、一対の接触子1811と接続縁1812とはコ字状断面をなしている。一対の接触子1811は、圧電振動子30の外側に位置する配線接続部1813側が幅広で、圧電振動子30の中心部に向かって徐々に幅を狭くする平面略三角形状部を有する同一形状をなしている。つまり、接触子1811は、圧電振動子30の膜状電極113との半田付け部1131の幅が最も狭く、圧電振動子30の外方に向かって幅を広げている。
【0032】
圧電振動子30のシム111に形成された径方向に突出する配線接続突起114は、この一対の接触子1811の間に延びている。この配線接続突起114には、一対の接触子1811を接続する接続縁1812との間に隙間を確保する絶縁用凹部1141が形成されている。
【0033】
円形をなすシム111の上下には、環状をなすスペーサ絶縁リング115が位置し、この上下一対のスペーサ絶縁リング115から、一対の接触子1811と配線接続突起114との間にストリップ状絶縁板材1151が延びていて、シム111と給電端子180との短絡を防止している。ストリップ状絶縁板材1151は同時に、給電端子180の接続縁1812が、シム111の絶縁用凹部1141側に移動するのを防止し、絶縁を確実にする。
【0034】
シム111の配線接続突起114には、絶縁用凹部1141よりも圧電振動子30の外方に位置させて、配線接続突起114の幅方向の両側に対称に、一対のリード線掛止凹部1143と1144が形成されており、一方のリード線掛止凹部1143より内方に、半田付け用貫通孔1145が形成されている。
【0035】
給電端子180の配線接続部1813には、配線接続突起114の半田付け用貫通孔1145に対応させて、半田付け用貫通孔1814が形成されている。この半田付け用貫通孔1145と1814は平面位置が異なっており、それぞれ、リード線211と221が半田付けされている。半田付け用貫通孔1145と1814は半田付け強度を高め、その平面位置を異ならせることで全体の薄型化を図ることができる。またリード線211と221は、リード線掛止凹部1143と1144に掛け止められ、リード線211と221の抜止抵抗を高めている。
【0036】
圧電振動子30の表面には、PPSフィルム(絶縁性フィルム)241(図8)が接着されている。このPPSフィルム241は給電端子180上に延びる径方向舌片241aを有しており、接触子1811と圧電振動子30の膜状電極113との離脱を防止している。
【0037】
以上のシム111の配線接続突起114及び給電端子180回りの配線構造によれば、圧電振動子30の動きを妨げることがなく、確実にシム111及び膜状電極113へ配線することができる。
【0038】
そして、以上のように平面円形を基本形状とする圧電振動子30は、ロアハウジング20のポンプ室形成凹部20aと、ポンプ室プレート40のポンプ室形成凹部40aとの間に挟着され、その周囲上下がシールリング16と26によってシールされてポンプ室13と23を形成する。シールリング16と26は、ロアハウジング20のシールリング溝20bとポンプ室プレート40のシールリング溝40bと同一形状であり、大円弧部分16a(大円弧部分26a)と、直線部分16b(直線部分26b)を有している。そして、圧電振動子30の給電端子180は、これらのシールリング16と26の外側に、つまり直線部分16b(直線部分26b)の外側に位置している。このように配置すると、圧電振動子30の圧電体112に対する給電端子180をシールリング16と26と交差させずにすみ、シールリング16と26を局部的に変形させることがないので、その耐久性を向上させることができる。
【0039】
また、ロアハウジング20と、予めポンプ室プレート40に一体にされているアッパハウジング10とは、両者の間に以上のように圧電振動子30を挟着した状態で締結具(例えばボルトナット)によって結合され一体にされる。勿論付加的に接着剤を用いることができる。
【0040】
上記構成の本ダイヤフラムポンプの基本動作は、図11で説明した動作と異なるところがない。圧電振動子30の給電端子180とシム111(配線接続突起114)との間に交番電界を与えて正逆に弾性変形(振動)させると、ポンプ室13と23のいずれか一方の容積が増大し他方の容積が減少する。ポンプ室13の容積が増大する行程では、吸入側アンブレラ11が開いて吸入ポート31からポンプ室13内に流体が流入し、同時にポンプ室23の容積が減少するからポンプ室23内の流体が吐出側アンブレラ(ユニット)22を開いて吐出ポート32に流出する。逆にポンプ室13の容積が減少する行程では、吸入側アンブレラ(ユニット)21が開いて吸入ポート31からポンプ室23内に流体が流入し、ポンプ室13の容積が減少するからポンプ室13内の流体が吐出側アンブレラ12を開いて吐出ポート32に流出する。
【0041】
上記実施形態のシールリング16と26は、非円形であるが、円形のシールリング(Oリング)を使用してもよい。また、逆止弁としてアンブレラを例示したが、アンブレラ以外の逆止弁を用いることも可能である。以上の実施形態ではダイヤフラムとして圧電振動子を用いたが、圧電振動子に代えて電歪振動子を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明によるダイヤフラムポンプの一実施形態を示す分解状態の斜視図である。
【図2】同分解状態の断面図である。
【図3】ロアハウジングの平面図である。
【図4】図3のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5】図3のV-V線に沿う断面図である。
【図6】アッパハウジングのポンプ室プレート側の平面図である。
【図7】ポンプ室プレートのポンプ室形成凹部側の平面図である。
【図8】バイモルフ型圧電振動子の分解斜視図である。
【図9】同バイモルフ型圧電振動子と変形D型シールリングの関係を示す斜視図である。
【図10】同要部の平面図である。
【図11】本発明を適用する4バルブダイヤフラムポンプの概念図である。
【符号の説明】
【0043】
10 アッパハウジング
10c 嵌合穴
11 吸入側アンブレラ(吸入側逆止弁)
11a 12a アンブレラ装着穴
11b 12b 流路穴
11c 12c 中心軸
11d 12d 傘部
12 吐出側アンブレラ(吐出側逆止弁)
13 ポンプ室(可変容積室)
14H 板間吸入側流路
14Ha 凹部
14Hb 長円状Oリング(シールリング)
14Hc シールリング溝
15D 板間吐出側流路
15Da 凹部
15Db 長円状Oリング
15Dc シールリング溝
16 シールリング
16a 大円弧部分
16b 直線部分
20 ロアハウジング
20a ポンプ室形成凹部
20b シールリング溝
20b1 大円弧部分
20b2 直線部分
21 吸入側アンブレラ(吸入側逆止弁)
21U 吸込側アンブレラユニット(吸入側逆止弁ユニット)
21a 22a ユニットプレート
21b 22b 接着部
21c 22c アンブレラ装着穴
21d 22d 流路穴
21e 22e 中心軸
21f 22f アンブレラ
21g 22g 傘部
22 吐出側アンブレラ(吐出側逆止弁)
22U 吐出側アンブレラユニット(吐出側逆止弁ユニット)
23 ポンプ室(可変容積室)
24H 吸入側流路
24Ha 流路拡張部
24Hb 弁受け凹部
24Hd 分岐流路
25D 吐出側流路
25Da 流路拡張部
25Db 弁受け凹部
25Dd 分岐流路
26 シールリング
26a 大円弧部分
26b 直線部分
30 圧電振動子(ダイヤフラム)
31 吸入ポート
32 吐出ポート
40 ポンプ室プレート
40a ポンプ室形成凹部
40b シールリング溝
40b1 大円弧部分
40b2 直線部分
40c 位置決め嵌合突起
41 42 連通穴
41a 42a 凸部
41b 42b Oリング
111 シム
112 圧電体
180 給電端子
211 221 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動が与えられるダイヤフラムによって該ダイヤフラムの上下にそれぞれポンプ室を形成し、この一対のポンプ室と単一の吸入ポートとの間にそれぞれ該吸入ポートから該一対のポンプ室への流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない第一、第二の吸入側逆止弁を設け、該一対のポンプ室と単一の吐出ポートとの間にそれぞれ該一対のポンプ室から吐出ポートへの流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない第一、第二の吐出側逆止弁を設けたダイヤフラムポンプであって、
順に積層したアッパハウジング、ポンプ室プレート、ダイヤフラム、及びロアハウジングを備え、
ロアハウジングには、該ロアハウジング単体に、ダイヤフラムと対向して一方のポンプ室を形成するポンプ室形成凹部と、このポンプ室形成凹部にそれぞれ連通する第一の吸入側逆止弁を有する吸入ポートと第一の吐出側逆止弁を有する吐出ポートとが形成され、
上記ポンプ室プレートには、ダイヤフラムと対向して他方のポンプ室を形成するポンプ室形成凹部と、第二の吸入側逆止弁と第二の吐出側逆止弁とが設けられ、
上記アッパハウジングとポンプ室プレートとの間に、上記ロアハウジングの吸入ポートと吐出ポートから分岐して上記第二の吸入側逆止弁と第二の吐出側逆止弁に連なる板間吸入側流路と板間吐出側流路を形成したことを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
請求項1記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記板間吸入側流路と板間吐出側流路は、ポンプ室プレートとアッパハウジングの間に介在させたシールリングを介して液密に形成されているダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
請求項2記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記板間吸入側流路と板間吐出側流路の一端部はそれぞれ、ポンプ室プレートに形成した第二の吸入側逆止弁と第二の吐出側逆止弁に連通し、他端部はそれぞれ、ロアハウジングに開口する吸入ポートと吐出ポートからのそれぞれの分岐流路に連通しているダイヤフラムポンプ。
【請求項4】
請求項2または3記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記シールリングは長円状をなしているダイヤフラムポンプ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載のダイヤフラムポンプにおいて、ロアハウジングに設けた第一の吸入側逆止弁と第一の吐出側逆止弁は、該ロアハウジングとは別体の第一の吸入側逆止弁ユニット及び第一の逆止弁ユニットとして形成され、該第一の吸入側逆止弁ユニットと第一の吐出側逆止弁ユニットが吸入ポートと吐出ポートのポンプ室側開口端にそれぞれ接合されているダイヤフラムポンプ。
【請求項6】
請求項5記載のダイヤフラムポンプにおいて、第一の吸入側逆止弁ユニットと第一の吐出側逆止弁ユニットは同一の基板上に設けられているダイヤフラムポンプ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記ロアハウジングの吸入ポートと吐出ポートは、ダイヤフラムの自由状態における平面方向と平行な方向に、かつ互いに平行に突出形成されているダイヤフラムポンプ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記逆止弁はアンブレラであるダイヤフラムポンプ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記ダイヤフラムは圧電振動子または電歪振動子であるダイヤフラムポンプ。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか1項記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記ダイヤフラムはバイモルフ型圧電振動子であるダイヤフラムポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−71070(P2007−71070A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257376(P2005−257376)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】