説明

ダイヤモンド薄膜の生長装置

【課題】本発明は、ダイヤモンド薄膜の生長装置に関する。
【解決手段】本発明のダイヤモンド薄膜の生長装置は、入気口及び排気口を有する反応室と、前記排気口によって前記反応室に連接された真空装置と、前記入気口と対向して間隔を置いて前記反応室の中に設置された支持体と、前記入気口と前記支持体との間に設置されたホットフィラメントと、を含む。前記ホットフィラメントが少なくとも一つのカーボンナノチューブワイヤからなり、該カーボンナノチューブワイヤが複数のカーボンナノチューブからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド薄膜の生長装置に関し、特に熱フィラメント化学気相堆積法を利用して、ダイヤモンド薄膜を生長させる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、化学気相堆積法を利用して、ダイヤモンド薄膜を合成する方法として、主に、熱フィラメント化学気相堆積法、マイクロ波プラズマ化学気相堆積法及び直流アークプラズマ化学気相堆積法が挙げられる。
【0003】
前記ダイヤモンド薄膜を合成する方法において、マイクロ波プラズマ化学気相堆積法では、消耗が大きく、生長速度が遅く、生長されたダイヤモンド薄膜の均一性が良くない。直流アークプラズマ化学気相堆積法では、生長速度が速いが、生長されたダイヤモンド薄膜の面積が小さく、均一性が良くなく、ダイヤモンド薄膜を生長させることに用いられる基材の温度が制御しにくい欠点がある。
【0004】
前記熱フィラメント化学気相堆積法を利用してダイヤモンド薄膜を生長させる場合、生長装置が簡単で、コストが低く、大きい面積のダイヤモンド薄膜を生長できる優れた点を有するので、前記熱フィラメント化学気相堆積法は、ダイヤモンド薄膜を生長させることに広く応用されている。前記熱フィラメント化学気相堆積法を利用してダイヤモンド薄膜を生長させる装置は、ヒート室と該ヒート室に連接された真空装置とを含む。該ヒート室が、入気口と排気口を有する。前記ヒート室の中に支持体及びホットフィラメントが設置される。該ホットフィラメントは、前記支持体の上方に設置され、電圧を印加すると、放熱することができる。前記生長装置を利用してダイヤモンド薄膜を生長させる場合、前記基材を前記支持体の表面に設置し、電圧の作用の下で前記ホットフィラメントが2000℃の温度に加熱されるのと同時に、前記入気口によって水素とカーボンを含むガスとの混合ガスを導入すると、該カーボンを含むガスは、前記ホットフィラメントの周りで熱分解されるので、前記基材にダイヤモンド薄膜を生長させる。前記ホットフィラメントは一般的にタングステン、モリブデンなどの金属材料を採用する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、金属材料を採用する前記ホットフィラメントが高温で炭化され、変形及び脆化を起こしやすい。且つ、高温で金属原子が蒸発されるので、生長されたダイヤモンド薄膜は、金属不純物を含むという欠点がある。
【0007】
従って、本発明は、前記熱フィラメント化学気相堆積法を利用してダイヤモンド薄膜を生長させる装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ダイヤモンド薄膜の生長装置は、入気口及び排気口を有する反応室と、前記排気口によって前記反応室に連接された真空装置と、前記入気口と対向して間隔を置いて前記反応室の中に設置された支持体と、前記入気口と前記支持体との間に設置されたホットフィラメントと、を含む。前記ホットフィラメントが少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤからなり、該カーボンナノチューブワイヤが複数のカーボンナノチューブからなる。
【0009】
前記複数のカーボンナノチューブにおいて、隣接するカーボンナノチューブが、端と端で接続されている。
【発明の効果】
【0010】
従来のダイヤモンド薄膜の生長装置と比べると、本発明のダイヤモンド薄膜の生長装置には次の優れた点がある。第一に、本発明のダイヤモンド薄膜の生長装置において、ホットフィラメントが少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤからなり、該カーボンナノチューブワイヤが複数のカーボンナノチューブからなるので、該カーボンナノチューブワイヤの電熱変換効率が高く、昇温速度が速い。第二に、前記カーボンナノチューブワイヤは炭素だけを含むので、本発明のダイヤモンド薄膜の生長装置を利用してダイヤモンド薄膜を生長させる時、ダイヤモンド薄膜には、不純物が含まれない。第三に、前記基材に低い電圧を印加し、前記カーボンナノチューブワイヤの電位を前記基材の電位より高く形成させる場合、前記カーボンナノチューブワイヤの表面から電子を放出することができる。該電子は前記基材の表面に衝撃することにより、前記基材の周りにある前記反応ガスの分解を加速させるのと同時に、ダイヤモンドの核発生密度及び生長速度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係るダイヤモンド薄膜の生長装置の構造を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係るダイヤモンド薄膜の生長装置の作動状態を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係るドローン構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図4】図3中のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを引き出す見取り図である。
【図5】ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図6】本発明の実施例に係る非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図7】本発明の実施例に係るねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図8】カーボンナノチューブが該カーボンナノチューブワイヤの表面から突出する図である。
【図9】本発明の実施例に係るダイヤモンド薄膜の生長装置の、基材に電圧を印加する時の作動状態を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0013】
図1及び図2を参照すると、本発明の実施例のダイヤモンド薄膜の生長装置10は、反応室19、支持体199、真空装置18、ホットフィラメント(hot filament)195、第一電極192及び第二電極194を含む。前記反応室19は、入気口191と排気口193を有する。前記真空装置18は、前記排気口193によって前記反応室304に連接され、該反応室19の内部の空気を排出し、該反応室19の中を真空化する。前記ホットフィラメント195及び前記支持体199は、前記反応室19の中に設置される。前記支持体199は、前記入気口191と対向して間隔を置いて設置されている。該支持体199の中には、冷却装置(図示せず)が設置される。前記ホットフィラメント195は、前記入気口191と前記支持体199との間に設置される。前記第一電極192及び第二電極194は、前記反応室19の中に設置され、それぞれ前記ホットフィラメント195の両端と電気的に接続される。
【0014】
図2を参照すると、前記ダイヤモンド薄膜の生長装置10を使用する場合、ダイヤモンド薄膜を支持するための基材197を、前記支持体199に設置し、該基材197を前記ホットフィラメント195と対向させる。前記冷却装置によって、前記支持体199に設置された前記基材197の温度を制御することができる。前記第一電極192及び第二電極194によって前記ホットフィラメント195に電圧を印加し、熱フィラメント化学気相堆積法を利用してダイヤモンド薄膜を生長できる。
【0015】
前記反応室19は、ダイヤモンド薄膜を生長させることに用いられる密封空間である。本実施例において、前記反応室19は、石英パイプであり、入気口191と排気口193を有する。前記入気口191は、反応ガスを導入することに用いられる。該反応ガスはカーボンを含むガスと水素との混合ガスであり、該カーボンを含むガスは、例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素である。本実施例において、前記カーボンを含むガスはアセチレンである。前記排気口193は、前記真空装置18と連接される。前記真空装置18によって該反応室19の内部における空気を排出し、該反応室19を真空化させることができる。
【0016】
前記支持体199は、長方体状であり、前記入気口191と対向して間隔を置いて前記反応室19の中に設置される。
【0017】
前記ホットフィラメント195と前記支持体199との間の距離は、5ミリメートル〜15ミリメートルである。前記反応ガスが前記入気口191によって前記反応室19に導入される時、前記第一電極192及び第二電極194によって前記ホットフィラメント195に電圧を印加し、電流を該ホットフィラメント195に流し、該ホットフィラメント195を2000℃の温度に昇温させる。前記ホットフィラメント195の作用で、前記反応ガスにおけるカーボンを含むガスは、活性化又は分解されるので、前記支持体199に設置された前記基材197に、ダイヤモンド薄膜を生長させることができる。前記ホットフィラメント195の作用で、前記反応ガスにおける水素が水素原子に分解され、該水素原子がグラファイトをエッチングすることができるので、形成されたダイヤモンド薄膜におけるグラファイトを減少させることができる。
【0018】
前記基材197の材料は、耐高温の金属材料又は非金属材料である。該金属材料は、例えば、タングステンなどであり、該非金属材料は、例えば、シリコン、グラファイト、ガラス、石英などである。本実施例において、前記基材197は、タングステンからなり、その厚さが3ミリメートルである。
【0019】
前記第一電極192及び前記第二電極194は、棒状の電極であり、その材料が例えば銅などの金属である。前記第一電極192は、その一端が前記反応室19に固定され、他端が前記ホットフィラメント195の一端と電気的に接続される。前記第二電極194は、その一端が前記反応室19に固定され、他端が前記ホットフィラメント195の他端と電気的に接続される。外部電源を利用して、前記第一電極192及び前記第二電極194によって前記ホットフィラメント195に電圧を印加することができる。勿論、前記第一電極192及び前記第二電極194は、グラファイトなどの導電材料からなってもよい。
【0020】
前記ホットフィラメント195は、少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤからなる。該カーボンナノチューブワイヤは、複数のカーボンナノチューブからなる非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状カーボンナノチューブワイヤである。前記ホットフィラメント195が、複数のカーボンナノチューブワイヤからなる場合、該複数のカーボンナノチューブワイヤが直列接続又は並列接続することができる。
【0021】
前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの製造方法は、次のステップを含む。
【0022】
第一ステップでは、カーボンナノチューブアレイを提供する。該カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)であり、該超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。
【0023】
前記製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施例において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)を生長させることができる。
【0024】
前記カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直に生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0025】
本実施例において、前記カーボンを含むガスとしては、例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0026】
本実施例により提供されたカーボンナノチューブアレイは、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもよい。
【0027】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも一枚のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす。まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。例えば、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブ束からなる連続的なドローン構造カーボンナノチューブフィルム(図3を参照)を形成する。
【0028】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブ束が端と端で接続され、連続的なドローン構造カーボンナノチューブフィルムが形成される(図4を参照)。
【0029】
図3を参照すると、単一の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aは、自立構造を有したものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記複数のカーボンナノチューブの大部分は、前記カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に、カーボンナノチューブフィルムを引き出す方向に沿って、且つ、同じ方向に沿って配列されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で端と端が接続されている。
【0030】
微視的には、前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブ以外に、該同じ方向に沿っておらずランダムな方向を向いたカーボンナノチューブも存在している。ここで、該ランダムな方向を向いたカーボンナノチューブは、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブと比べて、割合は小さい。
【0031】
図5を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さは実質的に同じである。
【0032】
前記カーボンナノチューブフィルム143aを、有機溶剤で処理することにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aをカーボンナノチューブワイヤに形成させる。
【0033】
具体的には、有機溶剤を前記カーボンナノチューブフィルム143aの表面に滴下し、該有機溶剤を前記カーボンナノチューブフィルム143aに浸漬させる。前記有機溶剤は、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムなどの揮発性有機溶剤である。本実施例において、前記有機溶剤は、エタノールである。これにより、前記有機溶剤の表面張力によって、前記カーボンナノチューブフィルム143aにおける複数のカーボンナノチューブを縮ませて、該カーボンナノチューブワイヤが形成される。
【0034】
図6を参照すると、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、該カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列され、端と端が接続された複数のカーボンナノチューブからなる。該非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。各々の前記カーボンナノチューブセグメントは、該カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列され、端と端が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、直径が0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。
【0035】
前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、機械外力で前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aを処理して形成されたものである。具体的には、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aの両端を異なる方向に沿って絞る。該ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aが接着性を有するので、該カーボンナノチューブフィルム143aがねじれ状カーボンナノチューブワイヤに形成される。
【0036】
図7を参照すると、前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、該カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列された複数のカーボンナノチューブからなる。前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。各々の前記カーボンナノチューブセグメントは、分子間力で端と端が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、直径が0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。
【0037】
さらに、有機溶剤で前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを処理することができる。前記有機溶剤の表面張力によって、処理された前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤにおける隣接するカーボンナノチューブが分子間力で緊密に結合するので、該ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、直径及び比表面積が小さくなり、その密度及び強度が高くなる。
【0038】
前記カーボンナノチューブワイヤにおけるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブの一種又は多種である。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5ナノメートル〜50ナノメートルであり、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1.0ナノメートル〜50ナノメートルであり、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5ナノメートル〜50ナノメートルである。
【0039】
本実施例において、前記ホットフィラメント195は、一本の前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤからなる。
【0040】
前記カーボンナノチューブがほぼ理想的な黒体であるので、カーボンナノチューブは200℃〜450℃の温度に加熱されると、赤外線を放射することができる。前記カーボンナノチューブの熱放射が安定で、熱放射効率が高く、熱放射のエネルギーが強いので、前記カーボンナノチューブワイヤの電熱変換効率が優れ、その昇温速度が速い。従って、前記ホットフィラメント195は、電熱変換効率が優れ、昇温速度が速い。
【0041】
図8は、カーボンナノチューブ1953が該カーボンナノチューブワイヤの表面1950から突出することを示す図である。前記カーボンナノチューブワイヤの表面1950の一部のカーボンナノチューブ1953は、該カーボンナノチューブワイヤの表面1950から突出する。該突出したカーボンナノチューブ1953は、前記カーボンナノチューブワイヤの長手方向Xと所定の角度を成す。該所定の角度は、10°〜170°であり、30°〜150°であることが好ましい。前記カーボンナノチューブワイヤの表面1950から突出するカーボンナノチューブ1953と、前記カーボンナノチューブワイヤの長手方向と成す角度は、90°角度であることが好ましい。即ち、前記カーボンナノチューブが前記基材197に対向する。図9を参照すると、前記ダイヤモンド薄膜の生長装置10が作動する場合、前記基材197に低い電圧を印加し、前記カーボンナノチューブワイヤの電位を前記基材197の電位より高く形成させる。これによって、該カーボンナノチューブワイヤの表面1950から突出した前記カーボンナノチューブ1953の端部から、前記基材197に電子を放射でき、該電子が前記基材197の表面に衝撃する。これにより、前記基材197の周りにある前記反応ガスの分解を加速させるのと同時に、ダイヤモンドの核発生密度及び生長速度を高めることができる。
【0042】
本発明の実施例は、前記ダイヤモンド薄膜の生長装置10を利用して、ダイヤモンド薄膜を生長させる方法を提供する。該ダイヤモンド薄膜を生長させる方法は、下記のステップを含む。
【0043】
まず、基材197を提供する。
【0044】
本実施例において、前記基材197は、タングステンからなる丸いフィルムであり、その直径が90ミリメートルであり、その厚さが3ミリメートルである。反応を行う前に、前記基材197を洗浄する。具体的には、直径が0.5マイクロメートルであるダイヤモンドの粒子を利用して前記基材197を1時間〜2時間研磨した後、該基材197をアセトン溶液の中に入れて、10分間〜20分間超音波で処理する。前記基材197は、金属材料に制限されず、耐高温の非金属材料からなってもよい。
【0045】
次に、前記ダイヤモンド薄膜の生長装置10を提供し、前記基材197を前記ダイヤモンド薄膜の生長装置10の中に設置する。
【0046】
図1と図2を参照すると、前記ダイヤモンド薄膜の生長装置10は、反応室19、支持体199、真空装置18、ホットフィラメント195、第一電極192及び第二電極194を含む。
【0047】
前記反応室19は、入気口191と排気口193を有する。前記真空装置18は、前記排気口193によって前記反応室304に連接され、該反応室19の内部における空気を排出し、該反応室19を真空化する。前記ホットフィラメント195及び前記支持体199は、前記反応室19の中に設置される。前記支持体199は、前記入気口191と対向して間隔を置いて設置されている。該支持体199の中には、冷却装置(図示せず)が設置される。前記ホットフィラメント195は、前記入気口191と前記支持体199との間に設置される。前記第一電極192及び第二電極194は、前記反応室304に設置され、それぞれ前記ホットフィラメント195の両端と電気的に接続される。
【0048】
前記基材197を前記支持体199に設置し、該基材197を前記ホットフィラメント195に対向させる。前記支持体199の中に設置された冷却装置によって、前記支持体199に設置された基材197の温度を制御することができる。前記第一電極192及び前記第二電極194によって前記ホットフィラメント195に電圧を印加し、熱フィラメント化学気相堆積法を利用してダイヤモンドの薄膜を生長できる。
【0049】
最後に、熱フィラメント化学気相堆積法を利用して、前記基材197の表面にダイヤモンドの薄膜を生長させる。
【0050】
具体的には、(a)前記真空装置18によって、該反応室19の内部の空気を排出し、該反応室19を真空にする。(b)前記ホットフィラメント195に電圧を印加し、該ホットフィラメント195の温度を2200℃に昇温させる。(c)前記反応室19の前記入気口191によって、カーボンを含むガスと水素との混合ガスを導入し、前記冷却装置によって前記基材197の温度を800℃に制御し、該基材197の表面にダイヤモンドの薄膜を生長させる。
【0051】
前記ダイヤモンドの薄膜を生長させる過程において、前記反応室19の前記入気口191によって、カーボンを含むガスと水素との混合ガスを導入し続ける。該カーボンを含むガスは、例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択される。本実施例において、前記カーボンを含むガスはアセチレンである。前記混合ガスにおけるカーボンを含むガスの含有量が全体積流量の1%〜2.5%である。前記混合ガスは、前記入気口191によって前記反応室19に導入された後、前記ホットフィラメント195の周りで熱分解反応を行って、該ホットフィラメント195の下方に位置された基材197の表面にダイヤモンド薄膜を生長させる。
【0052】
本実施例におけるホットフィラメント195がカーボンナノチューブワイヤであり、該カーボンナノチューブワイヤが炭素だけを含むので、熱フィラメント化学気相堆積法を利用してダイヤモンド薄膜を生長させる時、前記ホットフィラメント195が炭素を除いて、ほかの原子が蒸発されたことはない。従って、ダイヤモンド薄膜の生長装置10を利用してダイヤモンド薄膜を生長させる時、不純物が含まれないので、生長されたダイヤモンド薄膜が不純物を含まず、純度が高い。
【0053】
勿論、本実施例におけるダイヤモンド薄膜の生長装置10は、一つの入気口191に制限されず、複数の入気口191を採用することができる。
【0054】
前記ダイヤモンド薄膜の生長装置10に複数の基材を設置することによって、複数の該基材にそれぞれ同時にダイヤモンド薄膜を生長させることができる。本実施例の方法を利用して、いろいろな形状を有するサンプルを前記基材に設置し、該サンプルの所定の位置にダイヤモンド薄膜を生長させることができる。
【0055】
本発明実施例のダイヤモンド薄膜の生長装置には次の優れた点がある。第一に、本発明実施例のダイヤモンド薄膜の生長装置において、ホットフィラメントが少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤからなり、該カーボンナノチューブワイヤが複数のカーボンナノチューブからなるので、該カーボンナノチューブワイヤの電熱変換効率が高く、昇温速度が速い。第二に、前記カーボンナノチューブワイヤは炭素だけを含むので、本発明のダイヤモンド薄膜の生長装置を利用してダイヤモンド薄膜を生長させる時、ダイヤモンド薄膜には、不純物が含まれない。第三に、一部のカーボンナノチューブが前記カーボンナノチューブワイヤの表面から突出する。従って、前記基材に低い電圧を印加し、前記カーボンナノチューブワイヤの電位を前記基材の電位より高く形成させる場合、前記カーボンナノチューブワイヤの表面から突出したカーボンナノチューブの端部から電子を放出することができる。該電子は前記基材の表面に衝撃することにより、前記基材の周りにある前記反応ガスの分解を加速させるのと同時に、ダイヤモンドの核発生密度及び生長速度を高めることができる。
【符号の説明】
【0056】
10 生長装置
19 反応室
199 支持体
18 真空装置
195 ホットフィラメント
192 第一電極
194 第二電極
191 入気口
193 排気口
197 基材
1950 カーボンナノチューブワイヤの表面
145、1953 カーボンナノチューブ
143a カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入気口及び排気口を有する反応室と、
前記排気口によって前記反応室に連接された真空装置と、
前記入気口と対向して間隔を置いて前記反応室の中に設置された支持体と、
前記入気口と前記支持体との間に設置されたホットフィラメントと、
を含むダイヤモンド薄膜の生長装置において、
前記ホットフィラメントが少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤからなり、該カーボンナノチューブワイヤが複数のカーボンナノチューブからなることを特徴とするダイヤモンド薄膜の生長装置。
【請求項2】
前記複数のカーボンナノチューブにおいて、隣接するカーボンナノチューブが、端と端で接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のダイヤモンド薄膜の生長装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−57544(P2011−57544A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198908(P2010−198908)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】