説明

ダイレクトモータ構造

【課題】本発明は、ステータポールのステータポール鍔部の鍔厚を厚くしてトルクムラを少なくすることを目的とする。
【解決手段】本発明によるダイレクトモータ構造は、プリント基板(1)上に設けた各ステータポール(3)のステータポール鍔部(7)の鍔厚(L2)をポール幅(W)の1/2から1/3とし、ロータ(5)回転時の磁束変化量を小さくする構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクトモータ構造に関し、特に、ステータポールのステータポール鍔部の鍔厚を従来よりも厚くし、磁束変化量を均一化し、各ステータポール間でのトルクムラを軽減させるための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のダイレクトモータ構造におけるステータポール構造としては、特に、社内技術のみで特許出願を行っていないため、特許文献等を開示していないが、図6で示される構成が採用されていた。
【0003】
すなわち、図6において符号1で示されるものはプリント基板であり、このプリント基板1上には、ステータコイル2を有し棒状をなす複数のステータポール3が輪状に配設されている。
前記ステータポール3の上方位置には、所定の間隔4を介してロータ5の各ロータマグネット6が水平方向に回転自在で、かつ、上下方向に対向自在に配設されている。
【0004】
また、前述の図6の構成を改良した構成として、図7に示される構成が採用されている。
すなわち、前記ステータポール3の上部に平板状のステータポール鍔部7が一体に形成され、このステータポール鍔部7を介してロータマグネット6との磁気作用が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のダイレクトモータ構造のステータポールは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図6の従来構成のステータポールの場合、その上部まで同じポール幅Wであるため、この磁束変化量は、ステータポールのポール幅Wの範囲内のみとなり、その変化が大きく、回転時のトルク変動(コギング現象)が大きくなっていた。
【0006】
前述の課題を改善するために、図7で示させる断面T字型のステータポールが開発され、その磁束変化量は、図6の従来構成よりも改善されているが、ステータポールよりも広い平面積のステータポール鍔の肉厚が0.5ミリと薄く形成されているため、断面Aが小さい状態であり、図7の領域Bを水平方向に大きくしても、図7の磁束変化量から大きく変わることは難しく、実質的に図6のステータポールを用いた特性とは大差がなかった。
すなわち、図7における断面Aを通じて伝達可能な磁束量は、断面積×最大磁束密度で制限されているためである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるダイレクトモータ構造は、基台上のプリント基板と、前記プリント基板上に輪状に配設され断面T字型をなす複数のステータポールと、前記ステータポールの上部に形成され扇形の下部を除去した形状をなすステータポール鍔部と、前記各ステータポールに設けられたステータコイルと、前記基台に回転自在に支持されたロータと、前記ロータの内面に設けられ前記各ステータポールのステータポール鍔部と対向配置の複数のロータマグネットと、を備え、前記各ステータコイルを励磁することにより、前記ロータを回転するようにしたダイレクトモータ構造において、前記ステータポール鍔部の鍔厚は、前記ステータポールのポール幅の1/3から1/2である構成であり、また、前記ステータコイルは、前記プリント基板の面上に直接設けられている構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるダイレクトモータ構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ステータポールの上部に設けられたステータポール鍔部の鍔厚を、ステータポールのポール幅の1/3から1/2としたため、ステータポール鍔部の断面の面積が従来よりも大幅に大きくなり、磁束の変化量が均一化され、各ステータポール間におけるトルクムラを軽減させ、円滑な回転を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ステータポールのステータポール鍔部の鍔厚を従来よりも厚くし、磁束変化量を均一化し、各ステータポール間でのトルクムラを軽減させるようにしたダイレクトモータ構造を提供することを目的とする。
【実施例】
【0010】
以下、図面と共に本発明によるダイレクトモータ構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を用いて説明する。
図1において符号1で示されるものは、基台10上に設けられたプリント基板であり、このプリント基板1は円板状に形成されて前記基台10の軸心に形成された筒状の保持部11の外周に嵌め込み式に設けられている。
【0011】
前記プリント基板1上の最も内周縁側には、複数の磁性コアからなる断面T字型のステータポール3が輪状となるように所定の間隔で植設されている。
前記各ステータポール3の上部には、このステータポール3と一体に平板状のステータポール鍔部7が形成され、このステータポール鍔部7は、平面形状として、図2及び図5で示されるように、扇形状7Aの下部7Bを除去してなる形状で構成されている。
【0012】
前記基台10の保持部11内に回転自在に設けられた回転軸20の上部には、各ロータマグネット6を下面に有するロータ5が設けられており、この各ロータマグネット6は、前記各ステータポール3のステータポール鍔部7に対応して対向配置されている。
従って、図1の点線丸印で示されるA部を拡大して示すと、図3で示される通りである。
【0013】
前記ステータポール3のステータポール鍔部7の鍔厚L2は、図4の拡大図にも示されるように、鍔部半幅L1にわたって2ミリに設定され、ステータポール3のポール幅Wが6ミリの場合、前記鍔厚L2はポール幅Wの約1/3に設定されている。
また、前記鍔厚L2をポール幅Wの約1/2である3ミリに設定することもでき、前述の2ミリから3ミリ、すなわち、ポール幅Wの約1/2から1/3とした場合に、前述の磁束変化量を均一化させ、各ステータポール3間でのトルクムラ(すなわち、コギングトルク)を軽減できることが実験の結果、判明した。尚、この場合、ステータポール鍔部7の全幅Waは図3に示すように18ミリである。
また、前述のように、前記ステータポール鍔部7の鍔厚L2を設定しているため、実際の回転、停止制御における静止精度を従来よりも正確に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるダイレクトモータ構造を示す断面図である。
【図2】図1のステータポール鍔部及びプリント基板を示す平面図である。
【図3】図1のA部を示す拡大断面図である。
【図4】図3のB部の拡大図である。
【図5】図2のステータポール鍔部の拡大図である。
【図6】従来のダイレクトモータ構造のステータポールを示す断面図である。
【図7】図6の他の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 プリント基板
2 ステータコイル
3 ステータポール
5 ロータ
6 ロータマグネット
10 基台
11 保持部
20 回転軸
W ポール幅
Wa 全幅
L2 鍔厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台(10)上のプリント基板(1)と、前記プリント基板(1)上に輪状に配設され断面T字型をなす複数のステータポール(3)と、前記ステータポール(3)の上部に形成され扇形の下部を除去した形状をなすステータポール鍔部(7)と、前記各ステータポール(3)に設けられたステータコイル(2)と、前記基台(10)に回転自在に支持されたロータ(5)と、前記ロータ(5)の内面に設けられ前記各ステータポール(3)のステータポール鍔部(7)と対向配置の複数のロータマグネット(6)と、を備え、
前記各ステータコイル(2)を励磁することにより、前記ロータ(5)を回転するようにしたダイレクトモータ構造において、
前記ステータポール鍔部(7)の鍔厚(L2)は、前記ステータポール(3)のポール幅(W)の1/3から1/2であることを特徴とするダイレクトモータ構造。
【請求項2】
前記ステータコイル(2)は、前記プリント基板(1)の面上に直接設けられていることを特徴とする請求項1記載のダイレクトモータ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−220082(P2008−220082A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55863(P2007−55863)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】