説明

ダクト一体型フロア嵩上げ材の製造方法

【課題】ダクトの性能あるいは品質を維持しながら、軽量化を確保しつつ効率的に製造可能なダクト一体型フロア嵩上げ材の製造方法を提供する。
【解決手段】上面壁と裏面壁との間の高さがフロアの嵩上げに利用される中空二重壁構造であって、上面壁において、中空部18に相当する第1密閉空間および捨て袋118を形成する段階と、第1密閉空間および捨て袋118に相当する筒状パリソンPの部分の外表面に対して、ブローピン126を突き刺して加圧流体を吹き込んで、溶融状態の筒状パリソンを膨張させて、対応する分型金型のキャビティの表面に向かって押し付けることにより、筒状パリソンPを賦形して、中空部18およびダクト部22を成形する段階と、捨て袋118を切断して、ダクト部22に吸気口あるいは排気口を形成する段階と、を有することを特徴とするダクト一体型フロア嵩上げ材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト一体型フロア嵩上げ材の製造方法に関し、より詳細には、ダクトの性能あるいは品質を維持しながら、軽量化を確保しつつ効率的に製造可能なダクト一体型フロア嵩上げ材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のフロア面の高さを調整するのに樹脂製車両用フロア嵩上げ材が利用されている。
樹脂製車両フロア嵩上げ材は、仕様に応じて所定厚み(高さ)を備えた略矩形状のパネル状であり、軽量化が要求されるとともに、自動車のフロアパン、主に運転席の足元に設置され、上面に運転主の足が載置される点で、剛性、特に圧縮剛性が要求されることから、上面壁と裏面壁との間を延びて、両壁を連結するリブを内部に設けた一体中空構造体が採用されている。
【0003】
このようなフロア嵩上げ材は、樹脂製一体中空構造体であることから、その成形方法は、射出成形よりもブロー成形の方が、技術的に有利であり、たとえば特許文献1は、ブロー成形による自動車用フロア嵩上げ材の製造方法を開示する。
この自動車用フロア嵩上げ材の製造方法は、分割金型内の溶融パリソンをブロー成形するものであり、分割金型の型開き段階と、溶融パリソンを型開きした分割金型の間に垂下する段階と、分割金型を型締めして、溶融パリソン内に加圧流体を吹き込む段階とから概略構成される。
【0004】
より詳細には、間隔をおいて対向する表壁と裏壁とを有する中空二重壁構造の自動車用フロア嵩上げ材の製造方法であって、自動車用フロア嵩上げ材の表壁側に溝状に凹んだ複数の溝状リブを形成するための板状に突出したリブ形成部を有する一方の金型と、自動車用フロア嵩上げ材の裏壁側に略円錐状に窪んだ複数の円錐状リブを形成するための略円錐状に突出したリブ形成部を有する他方の金型とを備えた分割金型を型開きし、分割金型間に溶融したパリソンを垂下させ、一方の金型のリブ形成部の先端部と他方の金型のリブ形成部の先端部が対向して近接するように型締めし、パリソン内に加圧流体を吹き込むことにより、分割金型のキャビティに沿ってパリソンを膨張させるとともに、溝状リブと円錐状リブとを一体に溶着して、表壁には裏壁に向かって溝状に凹んだ複数の溝状リブが略平行に形成され、かつ裏壁には溝状リブに対向する部位に表壁側に向かって略円錐状に窪んだ円錐状リブが形成されていて、各円錐状リブの頂壁と溝状リブの先端部とが溶着部をなして一体化された自動車用フロア嵩上げ材をブロー成形するものである。
【0005】
ところで、運転席の足元近傍には、通常、自動車の前部に設置されるエアコンからの空調エアを自動車の後部の座席に流すために、エアダクトが運転席の足元に配置される樹脂製車両フロア嵩上げ材の隣接する縁部、あるいは対向する縁部を横切る形態で車両前後方向に延びる。
この点で、エアダクトとフロア嵩上げ材を一体モジュール化して、部品点数を減らしたダクト一体型フロア嵩上げ材が、たとえば特許文献2において、開示されている。このダクト一体型フロア嵩上げ材は、樹脂製であり、上面壁および裏面壁からなる中空二重壁構造を有し、裏面壁から中空部側へ突出させた第1の凹溝および第2の凹溝を上面壁に対して溶着部で一体化させて、第1の凹溝および第2の凹溝の間にフロア嵩上げ材の中空部から隔離されたエア流路を有するダクト部を設けている。
【0006】
このようなダクト一体型フロア嵩上げ材を、特許文献1のように、ブロー成形により一体成形するとすれば、溶融パリソン内にブローピンを突き刺して、吹き込み圧をかけなければならないことに起因して、以下のような技術的問題が引き起こされる。
【0007】
第1に、ブローピンを突き刺す位置によっては、不良製品となってしまう点である。
より詳細には、上述のように、ダクトがダクト一体型フロア嵩上げ材の隣接する縁部、あるいは対向する縁部を横切る形態で車両前後方向に延びることから、ダクト一体型フロア嵩上げ材には、互いに仕切られた中空部が3つ形成され、ダクト一体型フロア嵩上げ材は通常ダクトにより不均等に分割されることから、1つが大中空部、1つが小中空部となり、エア流路を構成するダクトは、大中空部と小中空部との間に形成される。
【0008】
この場合、ダクト以外の大中空部および小中空部には、ブローピンの痕(孔)が残り、密閉性が確保されないとしても、もともとダクト一体型フロア嵩上げ材は、上面にカーペットが敷かれ、外観上の美観が要求されないとともに、中空部の高さ、すなわちフロア嵩上げ材の厚みが確保され、所定の剛性が維持される限り、厳密な密閉性は要求されない。
しかしながら、ダクト部は空調用エアの流路となることから、ブローピンの痕(孔)が残ると、そこからエアが漏れて通風効率の低下を引き起こすとともに、エアが漏れる際、フロア面から異音が発生することがある。
【0009】
このようなダクトの性能あるいは品質を維持するために、ダクト部だけ別途成形(たとえば、ブロー成形)して成形品として準備しておき、フロア嵩上げ材として、ダクト部抜きでブロー成形して、後からダクト部を組み込むとすれば、フロア嵩上げ材の製造効率が低下する。
【0010】
第2に、軽量化を損なわずに、成形効率を確保するのが困難な点である。
より詳細には、大中空部、小中空部およびダクト部それぞれについて、ブローピンを突き刺してブロー成形により成形するとすれば、それぞれに中空部を形成することにより軽量化を達成することは可能であるものの、成形効率を確保するのが困難である。この場合、ダクト部についてはエア流路としての中空部が必須であるものの、大中空部あるいは小中空部については、中空部が必須でないとしてブロー成形をせずに全体中実状にするとすれば、中空部の高さがフロアの嵩上げに利用されることから、著しく軽量化に反することになる。
【特許文献1】特許第4462924号公報
【特許文献2】特開2010−30553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、ダクトの性能あるいは品質を維持しながら、軽量化を確保しつつ効率的に製造可能なダクト一体型フロア嵩上げ材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係るダクト一体型フロア嵩上げ材の製造方法は、
上面壁と裏面壁との間の高さがフロアの嵩上げに利用される中空二重壁構造であって、互いに仕切られた中空部およびダクト部が設けられ、ダクト部の中空部と反対側には、上面壁において、中空部と略同一レベルを構成する中実波形部が設けられるダクト一体型フロア嵩上げ材の製造方法であって、
それぞれキャビティのまわりにピンチオフ部が設けられ、互いのキャビティを対向させて配置され、型締め位置と開放位置との間で相対移動可能な一対の分割金型を準備する段階を有し、
少なくともいずれかの分割金型のキャビティには、裏面壁上に、内部に向かって突出し中空部とダクト部との間を仕切る第1長溝を形成するための第1突出部と、内部に向かって突出し該ダクト部を密閉する第2長溝を形成するための第2突出部とが、ピンチオフ部の間に設けられるとともに、一対の分割金型それぞれには、該ダクト部の該中空部と反対側に該中実波形部を形成するための、該第2突出部を1つの凸部とし互い違いに相補形状となる凸部が設けられ、さらに少なくともいずれかの金型のキャビティには、ダクト部の端部に相当するキャビティの部位の外方に、ダクト部に連通する捨て袋を形成するための凹部が設けられ、
さらに、溶融状態の筒状パリソンを開放位置の一対の分割金型の間に配置する段階と、
開放位置にある一対の分割金型を型締め位置まで相対的に近接させることにより、一方の金型の前記第1突出部の先端部と、他方の金型のキャビティとが対向して所定距離まで近接するように、前記一対の分割金型を型締め位置まで移動させ、溶融状態の筒状パリソンを偏平に押し潰してピンチオフ部からはみ出す形態とし、溶融状態の筒状パリソンの一対の金型のピンチオフ部に対応する部分を溶着しつつ、前記一対の分割金型による溶融状態の筒状パリソンの挟み込みにより、該中実波形部において実質的に中空部とならないように筒状パリソンの2枚分の壁面同士を溶着一体化するとともに、中空部に相当する第1密閉空間および捨て袋を形成する段階と、
第1密閉空間および捨て袋それぞれに相当する筒状パリソンの部分の外表面に対して、ブローピンを突き刺して加圧流体を吹き込んで、溶融状態の筒状パリソンを膨張させて、対応する分型金型のキャビティの表面に向かって押し付けることにより、筒状パリソンを賦形して、中空部およびダクト部を成形する段階と、
捨て袋を切断して、ダクト部に吸気口あるいは排気口を形成する段階と、を有する構成としている。
【0013】
本発明は、ダクト一体型フロア嵩上げ材が、その機能上の要求から、嵩上げ材が載置されるフロアパンの上面から床面を構成する所定の厚み(高さ)を備えた略矩形パネル状であり、一方車両前部に設置されるエアコンからのエアを車両後部に送り込むエアダクトは、フロア嵩上げ材の縁部を横切る形態でフロア嵩上げ材上を車両の前後方向に延びることを利用して、ダクトを形成するための吹き込み圧を作用するブローピンの突き刺す態様を工夫することにより、ダクト一体型フロア嵩上げ材を製造するものである。
【0014】
より詳細には、以上の構成を有するダクト一体型フロア嵩上げ材の製造方法によれば、大中空部については、大中空部に相当する筒状パリソンの外表面にブローピンを突き刺して、内部に吹き込み圧をかけて賦形する一方、ダクト部については、ダクト端部(エア吸気口側あるいはエア排気口側)に捨て袋を形成し、この捨て袋に対してブローピンを突き刺して、内部に吹き込み圧をかけて賦形することにより、ダクト部を成形し、分割金型内あるいは成形品取り出し後に、捨て袋をバリのようにカットして、エア吸気口あるいはエア排気口を形成することにより、エア流路を形成する部分にはブローピンの痕(孔)を残さず、それにより通風効率の低下を防止するとともに、ブローピンの痕からの異音の発生も防止することが可能であり、さらに従来小中空部であった部分は、嵩上げ材全体に占める中空部の割合への影響度が小さいことから、この従来小中空部であった部分については、大中空部およびダクト部をブロー成形するために分割金型を型締めする際のコンプレッションを利用して、その際に、フロアの嵩上げ機能を奏する波形高さを形成するように実質的に中空部とならないように筒状パリソンの2枚分の壁面同士を溶着一体化することで、中実波形部として完成することが可能であり、以てダクトの性能あるいは品質を維持しながら、軽量化を確保しつつ効率的に製造可能である。
【0015】
また、前記ダクト部の各端部に、捨て袋を形成し、
各捨て袋に対して、ブローピンを突き刺すことにより、ダクト部に相当する前記第3密閉空間内に加圧流体を吹き込むのが好ましい。
さらに、前記一体の分割金型が型締めされた際、前記捨て袋において、前記ピンチオフ部に相当する部位にブローピンを突き刺すのがよい。
【0016】
さらにまた、前記ダクト一体型嵩上げ材は、上面壁と裏面壁と、上面壁と裏面壁との間の周側壁とを有し、周側壁の高さがフロアの嵩上げに利用されるブロー成形による一体中空二重壁構造であって、
上面壁あるいは裏面壁には、それぞれ上面壁あるいは裏面壁から内方へ突出し、隣接あるいは対向する周側壁間を互いに所定間隔を隔てて延びる前記第1長溝および前記第2長溝が設けられ、
前記第1長溝および前記第2長溝はそれぞれ、内部へ突出する対向する側壁と、対向する側壁の下縁同士の間に形成される底壁とを有し、
前記第1長溝および前記第2長溝それぞれの該底壁が、前記裏面壁あるいは上面壁の内面に溶着することにより、前記第1長溝の対向する側壁の一方、該側壁の一方に隣接する側の前記第2長溝の対向する側壁の一方、前記上面壁および前記裏面壁により内部にエア流路を形成するダクト部と、該第1長溝の対向する側壁の他方、前記上面壁、前記裏面壁および前記周側壁により構成される中空部とが、互いに仕切られる態様で形成されるのがよい。
【0017】
加えて、前記少なくともいずれかの分割金型と対向する分型金型のキャビティには、前記上面壁上に、前記上面壁から中空部側へ突出する溝状リブを形成するための第3突出部が設けられ、
前記第1長溝および第2長溝それぞれの前記底壁が、前記溝状リブの底部の内面と溶着するのがよい。
さらに、前記溶融状態のパリソンの配置段階は、一対の分割金型の上方に配置された押出スリットから溶融状態のパリソンを押し出して垂下させる段階を有し、
前記第1突出部および前記第2突出部それぞれは、前記少なくともいずれかの分割金型のキャビティにおいて、前記ピンチオフ部を略上下方向に横断するように設けられ、それにより、前記ダクト部は、略上下方向の向きに成形され、
下の前記捨て袋に対するブローピンは、上方に向かって突き刺し、上の前記捨て袋に対するブローピンは、水平方向に突き刺すのが好ましい。
【0018】
さらにまた、前記ダクト部の供給口および排気口は、前記周側壁から外方に突出した位置に設けられるのがよい。
加えて、前記裏面壁には、前記裏面壁が載置されるフロアパンの凹凸に応じて、それを吸収するための凹凸部が形成されるとともに、前記中実波形部の波形高さは、前記中実波形部の前記裏面壁側が載置されるフロアパンの凹凸に応じて、変動し、前記上面壁および前記中実波形部の前記上面壁側は、平面状に形成されるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係るダクト一体型フロア嵩上げ材10の製造方法の実施形態を図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。以下では、自動車の運転席の足元に設置されるダクト一体型フロア嵩上げ材10を例として、説明する。
【0020】
図1に示すように、ダクト一体型フロア嵩上げ材10は、自動車Vの運転席Sの足元において、フロアパンFとカーペットCとの間に設置され、フロアパンFの凹凸に係わらず、カーペットCのフロア面が要求されるレベルを満足するように、ダクト一体型フロア嵩上げ材10の厚みが定められる。
より具体的には、ダクト一体型フロア嵩上げ材10は、自動車Vのダッシュボードの下方の前方壁面とそれに連なるフロア面の凹部とにわたって配置して使用するものであり、フロア面の凹部に対応する嵩上げ部2とダッシュボードの下方の前方壁面に対応するフットレスト部3とを有して一体に構成されている。
【0021】
ダクト一体型フロア嵩上げ材10は、たとえば、モデルチェンジの際、旧モデルのフロア躯体をそのまま利用可能とするための部材であり、軽量化が要求されるとともに、自動車VのフロアパンF、主に運転席Sの足元に設置され、上面に運転主の足が載置される点で、剛性、特に圧縮剛性が要求される。
【0022】
図2に示すように、ダクト一体型フロア嵩上げ材10は、嵩上げ材が載置されるフロアパンFの上面からフロア面を構成する略矩形状のパネル状であり、上面壁12と裏面壁14と、上面壁12と裏面壁14との間の周側壁16とを有し、周側壁16の高さがフロアの嵩上げに利用される中空二重壁構造を有する。裏面壁14には、裏面壁14が載置されるフロアパンFの凹凸に応じて、それを吸収するための凹凸部が形成され、上面壁12は、略平面状に形成される。
ダクト一体型フロア嵩上げ材10は、ABS樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂で構成され、後に説明するように、ブロー成形によって一体的に形成される。
【0023】
ダクト一体型フロア嵩上げ材10の広さ、すなわち上面壁12あるいは裏面壁14の大きさは、嵩上げ材10が設置される場所に応じて、適宜に定められ、上面壁12、裏面壁14および周側壁16それぞれの厚みは、嵩上げ材10の軽量化と、要求される剛性、特に圧縮剛性との関係で定められ、後に説明するブロー成形の際の吹き込み圧、ブロー比等を考慮して、成形材料である溶融状態の筒状パリソンの厚みを決定することにより、最終的な成形品である嵩上げ材10の厚みが決められる。
ダクト一体型フロア嵩上げ材10には、大中空部18、大中空部18と後に説明する中実波形部20との間に配置されるダクト部22が、互いに仕切られて設けられる。
より詳細には、図3に示すように、裏面壁14には、それぞれ裏面壁14から内方へ突出し、隣接する周側壁16間を互いに所定間隔を隔てて延びる第1長溝23および第2長溝24が設けられ、第1長溝23および第2長溝24はそれぞれ、内部へ突出する対向する側壁26と、対向する側壁26の下縁28同士の間に形成される底壁30とを有する。第1長溝23および第2長溝24それぞれは、所定テーパ角度αで内部に向かって先細の形状を有し、所定テーパ角度αは、第1長溝23または第2長溝24の底部におけるブロー比に応じて定められる。第1長溝23と第2長溝24との所定間隔は、後に説明するダクト部22の幅に応じて決定される。
【0024】
第1長溝23および第2長溝24それぞれの底壁30が、上面壁12の内面32に溶着することにより、第1長溝23の対向する側壁26の一方26a、側壁26の一方26aに隣接する側の第2長溝24の対向する側壁26の一方26a、上面壁12および裏面壁14により内部にエア流路27を形成するダクト部22と、第2長溝24の対向する側壁26の他方26b、上面壁12、裏面壁14および周側壁16により構成される大中空部18とが、互いに仕切られる態様で形成される。
上面壁12には、第1長溝23および第2長溝24に対応する凹溝34がそれぞれ形成されていて、凹溝34の深さは10mm以下であり、かつ凹溝34は開口部の幅が10mm以下であり、第1長溝23および第2長溝24それぞれの底壁30が、凹溝34の底部の内面と溶着するようにしている。特に、上面壁12に設ける凹溝34について、嵩上げ材10の高さが低く、ブロー成形によるブロー比があまり高くならず、上面壁12および裏面壁14の薄肉化が生じない場合には、凹溝34を省略し、第1長溝23および第2長溝24それぞれを上面壁12の内面32まで延ばし、上面壁12と裏面壁14との間を連結するリブ状に形成してもよく、それによりカーペットCを通じて触感される上面壁12の凹凸を低減することが可能である。
【0025】
図2に示すように、大中空部18は、嵩上げ部2とダッシュボードの下方の前方壁面に対応するフットレスト部3とを有し、対応する上面壁12には、凹溝34が設けられ、上面壁12を補強している。場合により凹溝34を裏面壁14の内面まで延ばすことにより、上面壁12と裏面壁14とを連結するリブとして構成してもよい。
図4を参照して、中実波形部20について説明すれば、この領域は、従来大中空部18より狭い中空部として形成されていた部分であり、中空部とする代わりに、波形部として形成している。波の形および波長は、後に説明する成形のしやすさから、適宜に定めればよく、図4に示すように、山形あるいは曲線状でもよく、波長を短くして波数を増やすことにより高剛性化してもよい。
波高さについて、中実波形部20の上面壁12側は、上面壁12の上面と略同一レベルとなるようにして、嵩上げ機能を奏するようにしている。一方、中実波形部20の裏面壁14側は、フロアパンFの凹凸に応じて、それを吸収するように、相補形状となるように波高さを決定すればよい。
中実波形部20は、大中空部18およびダクト部22と異なり、実質的に中実状であるが、後に説明するように、一対の分割金型106による溶融状態の筒状パリソンPの挟み込みにより、筒状パリソンPの2枚分の壁面同士を溶着一体化することにより成形するため、筒状パリソンPの筒内部の空間が微細な中空部として残存することもある。
【0026】
ダクト部22は、隣接する周側壁16を横切る形態で車両の前後方向に延び、ダクト一体型フロア嵩上げ材10のわきに位置する水平直線部36と、水平直線部36に接続される鉛直部38と、鉛直部38に接続され、ダクト一体型フロア嵩上げ材10上を延びる水平湾曲部40とを有する。水平直線部36の一端には、吸気口42が周側壁16から外方に突出した位置に設けられ、水平湾曲部40の一端には、排気口44が周側壁16から外方に突出した位置に設けられ、水平直線部36、鉛直部38および水平湾曲部40により内部にエア流路27が構成され、エアコンユニットの空調エアを排気口44から後部座席へ送るようにしている。図2に示すように、排気口44は、コンプレッション部46を設けることにより、流路が2分割されている。
【0027】
エア流路27の流路断面積は、通気エアの流量、発生するエアの通過音等の関係で適宜定めればよいが、エア流路27の高さ、すなわちダクト部22の高さは、ダクト部22の各側に隣接して設置される大中空部18および中実波形部20の上面の高さより低く設定するのが好ましく、ダクト部22の上面が大中空部18および中実波形部20の上面より突出しないようにして、ダクト部22が、たとえば運転手Dにより直接踏まれないようにするとともに、大中空部18および中実波形部20によりダクト部22を保護するようにしている。
なお、ダクト部22のエア流路27を構成する上面壁12の部分には、大中空部18と同様に、凹溝34が形成されている。
【0028】
図5に示すように、ダクト一体型フロア嵩上げ材10の成形装置100は、溶融樹脂の押出装置102と、押出装置102の下方に配置された、金型の型締装置104とを有し、押出装置102から押出された溶融状態の熱可塑性樹脂の筒状パリソンPを型締装置104に送り、型締装置104により溶融状態の筒状パリソンPをブロー成形するようにしている。なお、図5ないし図7は、図2に示すダクト一体型フロア嵩上げ材10の線B−Bに沿う断面を基準に成形装置を図示しており、図2に示す点線の部分を省略している。
押出装置102は、従来既知であり、その詳しい説明は省略するが、溶融状態の筒状パリソンPを下方に押し出して、型締装置104の分割金型106A,Bの間に垂下するようにしている。
【0029】
型締装置104は、一対の分割形式の金型106A,Bと、金型駆動装置(図示せず)とを有する。
2つの分割形式の金型106A,Bは、キャビティ108を対向させた状態で配置され、それぞれキャビティ108が略鉛直方向に沿うように配置される。
【0030】
2つの分割形式の金型106A,Bそれぞれにおいて、キャビティ108のまわりには、ピンチオフ部114が形成され、このピンチオフ部114は、キャビティ108のまわりに環状に形成され、対向する金型106A,Bに向かって突出する。これにより、2つの分割形式の金型106A,Bを型締する際、それぞれのピンチオフ部114の先端部が当接し、筒状パリソンPは、その周縁にパーティングラインPLが形成されるように溶着され、内部に中空部が形成される。
一方のキャビティ108Aの表面は、上面壁12の表面に成形すべき形状に応じて、それと相補形状とされる。他方のキャビティ108Bの表面は、裏面壁14の表面に成形すべき形状に応じて、それと相補形状とされる。
より具体的には、一方の分割金型106Bのキャビティ108Bには、フロア嵩上げ材10の裏面壁14上に、内部に向かって突出し中実波形部20とダクト部22との間を仕切る第1長溝23を形成するための第1突出部110(図示せず)と、フロア嵩上げ材10の裏面壁14上に、内部に向かって突出し大中空部18とダクト部22との間を仕切る第2長溝24を形成するための第2突出部112とが、環状のピンチオフ部114Bを略横切る態様で設けられ、これにより、後に説明するように、ブロー成形の際、一方の分割金型106Bの型締めにより環状のピンチオフ部114A,B内により形成される密閉空間が、第2突出部112により、2つ(大中空部18およびダクト部22)に分けられるようにしている。
【0031】
一方の分割金型106Bと対向する分型金型106Aのキャビティ108Aには、さらに、上面壁12上に、上面壁12から中空部側へ突出する溝状リブを形成するための第3突出部116が設けられ、第1長溝23および第2長溝24それぞれの底壁30が、溝状リブの底部の内面と溶着するようにしている。
分割金型106A,Bのキャビティ108A,Bそれぞれには、ダクト部22の端部に相当するキャビティ108の部位の外方で、ピンチオフ部114近傍に、ダクト部22に連通する捨て袋118を形成するための凹部120A,Bが設けられる。
また、図8に示すように、一対の分割金型106A,Bのキャビティ108A,Bそれぞれには、ダクト部22の中空部と反対側に中実波形部20を形成するための、第2突出部112を1つの凸部とし互い違いに相補形状となる凸部125が複数設けられる。換言すれば、キャビティ108A,Bそれぞれに設けられる凸部125は、上下方向にオフセット配置される。
凸部125の形状は、中実波形部20の波形が山形の場合には、それに応じて山形である。これにより、後に説明するように、一対の分割金型106A,Bの型締めの際、一対の分割金型106A,Bそれぞれの凸部125が所定距離まで近接することにより、一方のキャビティ108の凸部125の傾斜面127と、それに上下方向に隣接する他方の一方のキャビティ108の凸部125の傾斜面127と、凸部125の頂部とそれに対向するキャビティ108の表面とにより、波形のスペースを形成するようにしている。
さらにまた、一方の分割金型106Bのキャビティ108Bには、フロア嵩上げ材10の裏面壁14上に、内部に向かって突出する凹溝34を形成するための突起部122がさらに設けられ、それに対して、他方の分割金型106Aのキャビティ108Aには、この突起部122に対応する位置に、上面壁12上に、内部に向かって突出する凹溝36を形成するための突起部117が設けられ、それにより、大中空部18内には、裏面壁14と上面壁12とを連結するリブが形成されるようにしている。
【0032】
金型駆動装置(図示せず)については、従来と同様のものであり、その説明は省略するが、2つの分割形式の金型106A,Bはそれぞれ、金型駆動装置(図示せず)により駆動され、開位置において、2つの分割金型106A,Bの間に、溶融状態の筒状パリソンPが垂下可能なようにされ、一方閉位置において、2つの分割金型106A,Bのピンチオフ部114が当接し、環状のピンチオフ部114が互いに当接することにより、2つの分割金型106A,B内に密閉空間が形成されるようにしている。
分割金型106A,Bには、金型106A,Bを型締したときに両金型106A,Bにより形成される密閉空間内に吹き込み圧をかけることが可能なように、従来既知のブローピン126が設置され、たとえばピストンーシリンダ機構によりブローピン126が突き刺し位置と、待機位置との間を往復直線運動可能なように構成している。
ブローピン126は、互いに仕切られる大中空部18およびダクト部22それぞれに応じて設けられ、特にダクト部22については、エア流路27を構成する本体部でなく、本体部の両端に形成する捨て袋118に対して設けられる。なお、図6において、大中空部18および下の捨て袋118それぞれに対するブローピン126のみが図示されている。
ブローピン126の設置数、および突き刺す方向について、大中空部18については、金型106A,Bのキャビティ108に対して略直交する向きに水平方向であり、一方ダクト部22については、上の捨て袋118については、金型106A,Bのキャビティ108に対して略直交する向きに水平方向(図6において、図面上、裏から表あるいは表から裏の方向)、一方下の捨て袋118については、上方に向かう方向としている。
これにより、筒状パリソンPを分割金型106A,Bの間に垂下した状態で、円滑にブローピン126の突き刺しを可能としている。
【0033】
この自動車用フロア嵩上げ材10の製造方法は、分割金型106A,B内の溶融パリソンPをブロー成形するものであり、分割金型106A,Bの型開き段階と、溶融パリソンPを型開きした分割金型106A,Bの間に垂下する段階と、分割金型106A,Bを型締めして、溶融パリソンP内に加圧流体を吹き込む段階とから概略構成される。
より詳細には、図5に示すように、まず、溶融状態の筒状パリソンPを開放位置の一対の分割金型106A,Bの間に配置する。具体的には、一対の分割金型106A,Bの上方に配置された押出装置102から溶融状態のパリソンPを押し出して垂下させる。筒状パリソンPの径および厚みは、ブロー成形後の自動車用フロア嵩上げ材10に要求される厚みを基に、特にブロー成形の際のブロー比を考慮して、決定すればよい。
【0034】
次いで、図6に示すように、開放位置にある一対の分割金型106A,Bを型締め位置まで相対的に近接させることにより、一方の金型106Bの第1突出部110および第2突出部112それぞれの先端部と、他方の金型106Aのキャビティ108Aとが対向して所定距離まで近接するように、一対の分割金型106A,Bを型締め位置まで移動させ、溶融状態の筒状パリソンPを偏平に押し潰してピンチオフ部114からはみ出す形態とし、一方の金型106A,Bの第1突出部110および第2突出部112それぞれの先端部と、他方の金型106A,Bのキャビティ108の第3突出部116の先端部とが対向して所定距離まで近接するように、一対の分割金型106A,Bを型締め位置まで移動する。
【0035】
この所定距離は、型締めした際、第1突出部110および第2突出部112それぞれの先端部、並びに第3突出部116の先端部により、溶融状態の筒状パリソンPには、第1長溝23、第2長溝24および凹溝34それぞれの基礎となる溝が形成されて、互いの溝の底部同士が溶着されるとともに、それぞれのキャビティ108A,Bの凸部125により、キャビティ108A,B間に波形スペースが形成され、溶融状態の筒状パリソンPがこの波形スペースに成形されるところ、このような溶着および成形が確実に行われるように設定する。
すなわち、第1突出部110および第2突出部112それぞれの対向する先端部と、対応する第3突出部116の先端部との間には、溶融パリソンPの厚みの2倍に相当する溶融樹脂が存在するが、所定距離が小さすぎると、溶着は可能であるものの、溶融状態の筒状パリソンPがつぶされて、筒状パリソンPが各先端部からはみ出し、一方所定距離が大きすぎると、溶着不十分となる。同様に、それぞれのキャビティ108A,Bの凸部125同士の間隔によっては、キャビティ108A,Bの凸部125により、実質的に中空部とならないように波形スペース内で筒状パリソンPの2枚分の壁面同士を溶着一体化することが困難となる。
【0036】
また、このような分割金型106A,Bの型締めにより、溶融状態の筒状パリソンPの一対の金型106A,Bのピンチオフ部114に対応する部分が溶着することにより、周側壁16が形成され、筒状パリソンPの内部に密閉中空部が形成され、第1長溝23、第2長溝24および凹溝34それぞれの基礎となる溝が形成されることと相まって、大中空部18に相当する第1密閉空間、ダクト部22に相当する第3密閉空間、および捨て袋118が形成される。
【0037】
この場合、第1突出部110および第2突出部112それぞれは、一方の分割金型106A,Bのキャビティ108において、ピンチオフ部114を略上下方向に横断するように設けられるので、それにより、ダクト部22は、略上下方向の向きに成形される。
次いで、図6に示すように、第1密閉空間および捨て袋118それぞれに相当する筒状パリソンPの部分の外表面に対して、ブローピン126を突き刺して加圧流体を吹き込んで、溶融状態の筒状パリソンPを膨張させて、対応する分型金型106A,Bのキャビティ108の表面に向かって押し付けることにより、筒状パリソンPを賦形して、大中空部18およびダクト部22それぞれを成形する。
【0038】
より具体的には、ダクト部22の各端部に、捨て袋118を形成し、各捨て袋118に対して、ブローピン126を突き刺すことにより、ダクト部22に相当する第3密閉空間内に加圧流体を吹き込む。この場合、一体の分割金型106A,Bが型締めされた際、各捨て袋118において、ピンチオフ部114に相当する部位にブローピン126を突き刺す。これにより、ピンチオフ部114に相当する部位は、一対の金型106A,Bにより強固に挟み付けられているので、たとえば突き刺されるパリソンPの部分が突き刺し方向に逃げたりすることなく、ブローピン126を確実に突き刺すことが可能である。
【0039】
図6に示すように、下の捨て袋118に対するブローピン126は、上方に向かって突き刺し、上の捨て袋118に対するブローピン126は、水平方向(図面上、裏から表、あるいは表から裏に向かう方向)に突き刺す。一方、大中空部18に対するブローピン126は、キャビティ108の表面に略直交する向きに、対応する金型106A,Bの内部から水平方向に突き刺す。
【0040】
これにより、ブローピン126の円滑な突き刺しにより成形効率を低下させることなく、空調用エアの流路を構成するダクト部22の本体には、ブローピン126の痕(孔)を残すことなしに、エアの漏れによる通風効率の低下を抑制するとともに、フロア面からの異音の発生も防止することが可能である。
【0041】
次いで、捨て袋118を切断して、ダクト部22の一端に吸気口42、他端に排気口44を形成する。吸気口42および排気口44をパーティングラインPL(図2参照)が形成される周側壁16から外方に突出した位置に形成することにより、吸気口42および排気口44それぞれに対して容易に外部ダクトを接続することが可能である。
次いで、図7に示すように、一対の分割金型106A,Bを型開きし、成形したダクト一体型フロア嵩上げ材10を一対の分割金型106A,Bから取り出して、バリを除去することにより、ダクト一体型フロア嵩上げ材10が完成する。
【0042】
以上の構成を有するダクト一体型フロア嵩上げ材10の製造方法によれば、大中空部18については、大中空部18に相当する筒状パリソンPの外表面にブローピン126を突き刺して、内部に吹き込み圧をかけて賦形する一方、ダクト部22については、ダクト端部(エア吸気口側あるいはエア排気口側)に捨て袋118を形成し、この捨て袋118に対してブローピン126を突き刺して、内部に吹き込み圧をかけて賦形することにより、ダクト部22を成形し、分割金型106内あるいは成形品取り出し後に、捨て袋118をバリのようにカットして、エア吸気口42あるいはエア排気口44を形成することにより、エア流路27を形成する部分にはブローピン126の痕(孔)を残さず、それにより通風効率の低下を防止するとともに、ブローピン126の痕からの異音の発生も防止することが可能であり、さらに従来小中空部であった部分は、嵩上げ材10全体に占める中空部の割合への影響度が小さいことから、この従来小中空部であった部分については、大中空部18およびダクト部22をブロー成形するために分割金型106を型締めする際のコンプレッションを利用して、その際に、フロアの嵩上げ機能を奏する波形高さを形成するように実質的に中空部とならないように筒状パリソンPの2枚分を壁面同士を溶着一体化することで、中実波形部20として完成することが可能であり、以てダクトの性能あるいは品質を維持しながら、軽量化を確保しつつ効率的に製造可能である。
【0043】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、ダクト一体型フロア嵩上げ材10として、自動車Vの運転席Sの足元に設置される場合を説明したが、それに限定されることなく、フロア面の高さ調整に利用される限り、自動車Vの補助席あるいは後部座席の足元に設置される場合でもよい。
また、本実施形態において、ダクト一体型フロア嵩上げ材10として、ダクト部22が嵩上げ材10の隣接する側面を車両の前後方向に横切る場合として説明したが、それに限定されることなく、ダクト部22のルートがフロア嵩上げ材10の設置位置に重なり、ダクト部22を一体で成形する限り、たとえばダクト部22が嵩上げ材10の対向する側面を車両の前後方向に横切る場合でもよい。
【0044】
さらに、本実施形態において、ダクト一体型フロア嵩上げ材10において、ダクト部22と中空部とを仕切る第1長溝23および第2長溝24について、裏面壁14から内方に突出し、上面壁12から内方向に突出する凹溝34と、嵩上げ材10の内部で互いの先端部同士が溶着される場合を説明したが、それに限定されることなく、第1長溝23および第2長溝24を上面壁12側に設け、一方凹溝34を裏面壁14側に設けてもよい。また、フロア嵩上げ材10の嵩上げに必要な高さがあまり高くなく、それによりブロー成形の際、上面壁12および裏面壁14のブロー比があまり高くならず、両壁の厚みの薄肉化が問題とならない場合には、凹溝34を省略し、裏面壁14あるいは上面壁12に設ける第1長溝23あるいは第2長溝24の先端が上面壁12あるいは裏面壁14の内面32に直接溶着されるように構成してもよい。
加えて、本実施形態において、分割金型106の型開き前に捨て袋を切断する場合を説明したが、場合により、型開き後に切断してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係るダクト一体型嵩上げ部材が自動車Vの運手席の足元に設置される状況を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るダクト一体型嵩上げ部材の斜視図である。
【図3】図2の線A−Aに沿う断面図である。
【図4】図2の線B−Bに沿う断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るダクト一体型嵩上げ部材の成形装置100において、筒状パリソンPが一対の分割金型106A,Bの間に配置される状況を示す概略図である。
【図6】本発明の実施形態に係るダクト一体型嵩上げ部材の成形装置100において、一対の分割金型106A,Bが型締された状況を示す概略図である。
【図7】本発明の実施形態に係るダクト一体型嵩上げ部材の成形装置100において、一対の分割金型106A,Bが型開きされた状況を示す概略図である。
【図8】本発明の実施形態に係るダクト一体型嵩上げ部材の成形装置100において、ダクト一体型嵩上げ部材の中実波形部を成形するキャビティまわりを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0046】
V 自動車
C カーペット
F フロアパン
S 運転席
D 運転者
P 筒状パリソン
PL パーティングライン
10 ダクト一体型嵩上げ部材
12 上面壁
14 裏面壁
16 周側壁
18 大中空部
20 中実波形部
22 ダクト部
22 第1長溝
24 第2長溝
26 対向する側壁
28 下縁
30 底壁
32 内面
34 凹溝
36 水平直線部
38 鉛直部
40 水平湾曲部
42 吸気口
44 排気口
100 成形装置
102 押出装置
104 型締装置
106 分割金型
108 キャビティ
110 第1突出部
112 第2突出部
114 ピンチオフ部
116 第3突出部
117 突起部
118 捨て袋
120 凹部
122 突起部
126 ブローピン




【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面壁と裏面壁との間の高さがフロアの嵩上げに利用される中空二重壁構造であって、互いに仕切られた中空部およびダクト部が設けられ、ダクト部の中空部と反対側には、上面壁において、中空部と略同一レベルを構成する中実波形部が設けられるダクト一体型フロア嵩上げ材の製造方法であって、
それぞれキャビティのまわりにピンチオフ部が設けられ、互いのキャビティを対向させて配置され、型締め位置と開放位置との間で相対移動可能な一対の分割金型を準備する段階を有し、
少なくともいずれかの分割金型のキャビティには、裏面壁上に、内部に向かって突出し中空部とダクト部との間を仕切る第1長溝を形成するための第1突出部と、内部に向かって突出し該ダクト部を密閉する第2長溝を形成するための第2突出部とが、ピンチオフ部の間に設けられるとともに、一対の分割金型それぞれには、該ダクト部の該中空部と反対側に該中実波形部を形成するための、該第2突出部を1つの凸部とし互い違いに相補形状となる凸部が設けられ、さらに少なくともいずれかの金型のキャビティには、ダクト部の端部に相当するキャビティの部位の外方に、ダクト部に連通する捨て袋を形成するための凹部が設けられ、
さらに、溶融状態の筒状パリソンを開放位置の一対の分割金型の間に配置する段階と、
開放位置にある一対の分割金型を型締め位置まで相対的に近接させることにより、一方の金型の前記第1突出部の先端部と、他方の金型のキャビティとが対向して所定距離まで近接するように、前記一対の分割金型を型締め位置まで移動させ、溶融状態の筒状パリソンを偏平に押し潰してピンチオフ部からはみ出す形態とし、溶融状態の筒状パリソンの一対の金型のピンチオフ部に対応する部分を溶着しつつ、前記一対の分割金型による溶融状態の筒状パリソンの挟み込みにより、該中実波形部において実質的に中空部とならないように筒状パリソンの2枚分の壁面同士を溶着一体化するとともに、中空部に相当する第1密閉空間および捨て袋を形成する段階と、
第1密閉空間および捨て袋それぞれに相当する筒状パリソンの部分の外表面に対して、ブローピンを突き刺して加圧流体を吹き込んで、溶融状態の筒状パリソンを膨張させて、対応する分型金型のキャビティの表面に向かって押し付けることにより、筒状パリソンを賦形して、中空部およびダクト部を成形する段階と、
捨て袋を切断して、ダクト部に吸気口あるいは排気口を形成する段階と、を有することを特徴とするダクト一体型フロア嵩上げ材の製造方法。
【請求項2】
前記ダクト部の各端部に、捨て袋を形成し、
各捨て袋に対して、ブローピンを突き刺すことにより、ダクト部に相当する前記第3密閉空間内に加圧流体を吹き込む、請求項1に記載のダクト一体型嵩上げ材の製造方法。
【請求項3】
前記一体の分割金型が型締めされた際、前記捨て袋において、前記ピンチオフ部に相当する部位にブローピンを突き刺す、請求項1または請求項2に記載のダクト一体型嵩上げ材の製造方法。
【請求項4】
前記ダクト一体型嵩上げ材は、上面壁と裏面壁と、上面壁と裏面壁との間の周側壁とを有し、周側壁の高さがフロアの嵩上げに利用されるブロー成形による一体中空二重壁構造であって、
上面壁あるいは裏面壁には、それぞれ上面壁あるいは裏面壁から内方へ突出し、隣接あるいは対向する周側壁間を互いに所定間隔を隔てて延びる前記第1長溝および前記第2長溝が設けられ、
前記第1長溝および前記第2長溝はそれぞれ、内部へ突出する対向する側壁と、対向する側壁の下縁同士の間に形成される底壁とを有し、
前記第1長溝および前記第2長溝それぞれの該底壁が、前記裏面壁あるいは上面壁の内面に溶着することにより、前記第1長溝の対向する側壁の一方、該側壁の一方に隣接する側の前記第2長溝の対向する側壁の一方、前記上面壁および前記裏面壁により内部にエア流路を形成するダクト部と、該第1長溝の対向する側壁の他方、前記上面壁、前記裏面壁および前記周側壁により構成される中空部とが、互いに仕切られる態様で形成される、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のダクト一体型嵩上げ材の製造方法。
【請求項5】
前記少なくともいずれかの分割金型と対向する分型金型のキャビティには、前記上面壁上に、前記上面壁から中空部側へ突出する溝状リブを形成するための第3突出部が設けられ、
前記第1長溝および第2長溝それぞれの前記底壁が、前記溝状リブの底部の内面と溶着する、請求項1に記載のダクト一体型フロア嵩上げ材。
【請求項6】
前記溶融状態のパリソンの配置段階は、一対の分割金型の上方に配置された押出スリットから溶融状態のパリソンを押し出して垂下させる段階を有し、
前記第1突出部および前記第2突出部それぞれは、前記少なくともいずれかの分割金型のキャビティにおいて、前記ピンチオフ部を略上下方向に横断するように設けられ、それにより、前記ダクト部は、略上下方向の向きに成形され、
下の前記捨て袋に対するブローピンは、上方に向かってあるいは水平方向に突き刺し、上の前記捨て袋に対するブローピンは、水平方向に突き刺す、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のダクト一体型嵩上げ材の製造方法。
【請求項7】
前記ダクト部の供給口および排気口は、前記周側壁から外方に突出した位置に設けられる、請求項1に記載のダクト一体型嵩上げ材の製造方法。
【請求項8】
前記裏面壁には、前記裏面壁が載置されるフロアパンの凹凸に応じて、それを吸収するための凹凸部が形成されるとともに、前記中実波形部の波形高さは、前記中実波形部の前記裏面壁側が載置されるフロアパンの凹凸に応じて、変動し、前記上面壁および前記中実波形部の前記上面壁側は、平面状に形成される、請求項1に記載のダクト一体型嵩上げ材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−14007(P2013−14007A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146185(P2011−146185)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】