説明

ダストの処理方法及びその装置

【課題】電気炉から排出される排ガスに含まれるダストを、衛生的に、かつ、当該ダストに含まれる有用金属を効率よく有効利用しながら処理できるようにしたダストの処理方法及びその装置を提供すること。
【解決手段】電気炉Xから排出される排ガスを集塵機Sで濾過することにより該集塵機Sから排出されるダストを、造粒機Pによってダストペレットに成形し、このダストペレットを気体輸送で電気炉設備に戻して電気炉Xで処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダストの処理方法及びその装置に関し、特に、電気炉から排出される排ガスに含まれるダストの処理方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気炉から排出される排ガスに含まれるダストの処理方法として、例えば、図6に示すフローによる方法が採用されている。
この従来のダストの処理方法は、電気炉Xから排出されるダストを含む排ガスが、吸引ファンFによって吸引されると、ガスクーラB(燃焼塔を用いる場合もある。)を介し、集塵機S(例えば、バグ式集塵機など)に導入し、集塵機Sから排出されるダストをコンベアなどからなる搬送装置C1によって貯留ホッパH1に搬送し、貯留ホッパH1から所定量を搬送装置C2によって造粒機Pに搬送し、造粒機Pでペレット化した後に、ペレットホッパH2に貯留し、その後、ダストペレット回収業者に費用を支払って、処理施設外に運搬車Cによって搬出するようにしている。
この際、電気炉Xの周辺に浮遊する排ガスは、集塵フードDによって捕集し、ガスクーラBを経た排ガスに合流させて集塵機Sに送るように構成する。
【0003】
しかしながら、上記従来のダストの処理方法は、ダストに含有されている鉄等の有用金属がそのまま廃棄されるという問題があり、また、ペレット化したダストの処理は、処理業者に有料で引き取りを依頼することになるため、処理コストの点等でも問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来のダストの処理方法及びその装置の有する問題点に鑑み、電気炉から排出される排ガスに含まれるダストを、衛生的に、かつ、当該ダストに含まれる有用金属を効率よく有効利用しながら処理できるようにしたダストの処理方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のダストの処理方法は、電気炉から排出される排ガスを集塵機で濾過することにより該集塵機から排出されるダストを、造粒機によってダストペレットに成形し、該ダストペレットを気体輸送で電気炉設備に戻して電気炉で処理することを特徴とする。
【0006】
この場合において、集塵機から排出されるダストを造粒機によってダストペレットに成形するに際し、ダストに製鋼用添加剤を添加してダストペレットに成形することができる。
【0007】
また、上記本発明のダストの処理方法を実施するために用いられる本発明のダストの処理装置は、電気炉から排出される排ガスを濾過する集塵機と、該集塵機から排出されるダストをペレット状に造粒する造粒機と、該造粒機から排出されるダストペレットを電気炉設備に搬送する気体輸送装置とからなることを特徴とする。
【0008】
この場合において、気体輸送装置の配管に、ブースタノズルを複数配設することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のダストの処理方法及びその装置によれば、電気炉から排出される排ガスを集塵機で濾過することにより該集塵機から排出されるダストを、造粒機を用いてダストペレットに成形し、該ダストペレットを気体輸送で電気炉設備に戻して電気炉で処理することにより、電気炉から排出される排ガスに含まれるダストを、衛生的に、かつ、効率よく有効利用しながら処理、具体的には、ダストに含有されている鉄等の金属成分を金属として、また、非金属成分をスラグとして再生し、有料処理依頼物として処理業者に引き渡すダストの排出量を削減することにより、処理コストを低減することができる。
【0010】
また、集塵機から排出されるダストを造粒機によってダストペレットに成形するに際し、ダストに製鋼用添加剤を添加してダストペレットに成形することにより、別途、粉体の製鋼用添加剤を電気炉に装入する場合に比べて、製鋼用添加剤の飛散量を低減することができ、コストをかけることなく製鋼用添加剤の効率的な装入を実現することができる。
【0011】
また、気体輸送装置の配管に、ブースタノズルを複数配設することにより、ダストペレットの粒径が比較的大きくなっても配管内で詰まることなく電気炉設備まで確実に気体輸送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のダストの処理方法及びその装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に、本発明のダストの処理方法及びその装置の第1実施例を示す。
このダストの処理方法及びその装置は、図6に示す従来のダストの処理方法及びその装置と同様(本実施例のダストの処理方法及びその装置の基本的な構成は、図6に示す従来のダストの処理方法及びその装置と同様である。)、電気炉Xから排出されるダストを含む排ガスを集塵機Sで濾過することにより該集塵機Sから排出されるダストを、造粒機Pを用いてダストペレットに造粒するようにしている。
【0014】
ここで、ダストペレットの粒径は、特に限定されるものではないが、通常、1〜20mm程度、より好ましくは、5〜20mm程度となるようにする。
ダストペレットの粒径が、1mm未満の場合、電気炉に装入した際に飛散しやすく、そのまま集塵機に集塵されてしまう割合が多くなり、効率的でない。また、20mmを越える場合、気体輸送装置2の能力を高める必要があり、設備コストが上昇する。
【0015】
この場合において、ダストの処理装置1は、電気炉Xから排出される排ガスを濾過する集塵機Sと、該集塵機Sから排出されるダストをペレット状に造粒する造粒機Pと、該造粒機Pから排出されるダストペレットを電気炉X等からなる電気炉設備に搬送する気体輸送装置2とから構成されている。
【0016】
気体輸送装置2は、造粒機Pから排出されるダストペレットを一時的に貯留するバッファタンク20と、該バッファタンク20からダストペレットを配管22に切り出すバルブ21と、配管22内に送られたダストペレットを電気炉X等からなる電気炉設備まで搬送するための気体を供給するブロワ24とからなり、配管22には一定間隔をあけてブースタノズル23を複数配設するようにしている。
なお、造粒機Pとバッファタンク20との間に、必要に応じて、ダストペレットの貯留タンクやダストペレットの輸送手段等の任意の付帯設備(図示省略)を配設したり、介在することができる。
【0017】
バルブ21は、特にその構造を限定されるものではないが、例えば、ロータリバルブ、ダブルフラップダンパ等、配管22内の圧力をバッファタンク20側へ漏らすことのない構造のものを採用することができ、バッファタンク20内のダストペレットを連続的に配管22へ送り出すようにしている。
【0018】
そして、この気体輸送装置2は、ブロワ24から供給される気体により、例えば、配管22内の圧力を0.01〜0.1MPa程度に設定することによって、低圧でダストペレットを搬送することができるから、造粒機Pで造粒されるダストペレットの形状が小径で硬度の低い比較的崩れやすいダストペレットであっても、その形状を崩すことなく電気炉X等からなる電気炉設備に搬送することができる。
【0019】
また、ダストをペレット状に造粒した上で電気炉X等からなる電気炉設備に搬送し、電気炉Xに装入することにより、ダストが飛散することなく、ダストを衛生的に、かつ、効率よく処理することができる。
【0020】
この場合、ダストペレットは、気体輸送装置2によって、電気炉Xに直接搬送するほか、電気炉X関連の電気炉設備まで搬送し、その電気炉設備から電気炉Xに装入するようにすることができる。
より具体的には、ダストペレットを気体輸送装置2によって搬送する電気炉設備としては、図2の装入経路E1で示すスクラップ装入用ホッパ31、装入経路E2で示すスクラップ装入用コンベア32、装入経路E3で示す副原料貯留用ホッパ33(この場合、ダストペレット専用の貯留用ホッパを設けることもできる。)、装入経路E4で示す副原料装入用コンベア34、装入経路E5で示す副原料装入用ホッパ35等があり、搬送されたダストペレットは、スクラップ装入口X1又は副原料装入口X2を介して、電気炉Xに装入することができる。
また、ダストペレットを気体輸送装置2によって搬送する電気炉設備としては、このほか、図3の装入経路E6で示すスクラップ装入用バケット36もあり、搬送されたダストペレットは、スクラップと共に、電気炉Xに装入することができる。
【実施例2】
【0021】
図4に、本発明のダストの処理方法及びその装置の第2実施例を示す。
このダストの処理装置1は、気体輸送装置2として、所謂コンプレッサエア方式のものを採用したもので、造粒機Pからバッファタンク20内にダストペレットを一定量送り込んだ後に、ゲートバルブ26を閉め、バッファタンク20内にエアレシーバ25内の圧縮空気をトップエアノズル27を介して送り込むことによって、ダストペレットを配管22内に送り、電気炉X等からなる電気炉設備まで搬送するようにしたものである。
【0022】
この場合、バッファタンク20の出口にバルブを配設し、バッファタンク20の圧力を所定の圧力に昇圧した後に該バルブを開放し、ダストペレットを一気に配管22内に送り込むようにしてもよい。
また、実施例1と同様に、配管22には一定間隔をあけてブースタノズル23を配設するようにしてもよい。
【0023】
そして、この気体輸送装置2は、トップエアノズル27から供給される圧縮空気により、例えば、配管22内の圧力を0.2〜1.0MPa程度に設定することによって、ダストペレットを高圧で一気に搬送することができるから、造粒機Pで造粒する粒径が比較的大きく、硬度の高いダストペレットを効率よく電気炉X等からなる電気炉設備に搬送することができる。
【0024】
なお、本実施例のダストの処理方法及びその装置のその他の構成及び作用は、上記第1実施例のものと同様である。
【実施例3】
【0025】
図5に、本発明のダストの処理方法及びその装置の第3実施例を示す。
このダストの処理方法は、集塵機Sから排出されるダストを造粒機Pによってダストペレットに成形するに際し、ダストに製鋼用添加剤を添加してダストペレットに成形するようにしたものである。
【0026】
ダストに添加する製鋼用添加剤としては、電気炉の操業のために必要とされる任意の添加剤を加えることができる。より具体的には、コークス粉のほか、脱酸、脱硫、造滓、スラグ中の酸化鉄の還元、スラグの流動性向上のための添加剤である、金属アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等、さらには、Mn、Mg、Ti、Mg、Ca等を挙げることができる。
【0027】
そして、ダストに製鋼用添加剤を添加してダストペレットに成形することができるように、図5に示すように、ダストの処理装置1は、集塵機Sから排出されるダストをコンベアなどからなる搬送装置C1によって貯留ホッパH1に搬送し、貯留ホッパH1から所定量を搬送装置C2によって造粒機Pに搬送するに際し、添加剤ホッパAD1、AD2、AD3、・・・、ADnから必要とされる任意の添加剤を添加、混合し、造粒機Pでペレット化した後に、造粒機Pから排出されるダストペレットをバッファタンク20に貯留するようにしている。
【0028】
このように、集塵機Sから排出されるダストを造粒機Pによってダストペレットに成形するに際し、ダストに製鋼用添加剤を添加してダストペレットに成形することにより、別途、粉体の製鋼用添加剤を電気炉に装入する場合に比べて、製鋼用添加剤の飛散量を低減することができ、コストをかけることなく製鋼用添加剤の効率的な装入を実現することができる。
【0029】
なお、本実施例のダストの処理方法及びその装置のその他の構成及び作用は、上記第1実施例のものと同様である。
【0030】
以上、本発明のダストの処理方法及びその装置について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のダストの処理方法及びその装置は、電気炉から排出される排ガスに含まれるダストを、衛生的に、かつ、当該ダストに含まれる有用金属を効率よく有効利用しながら処理できることから、新設の電気炉設備を有する施設に用いることができるほか、既設の電気炉設備を有する施設にも、気体輸送装置を設置することによって好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のダストの処理方法及びその装置の第1実施例を示すフロー図である。
【図2】ダストペレットを気体輸送装置によって搬送する電気炉設備の一例を示す説明図である。
【図3】ダストペレットを気体輸送装置によって搬送する電気炉設備の一例を示す説明図である。
【図4】本発明のダストの処理方法及びその装置の第2実施例を示すフロー図である。
【図5】本発明のダストの処理方法及びその装置の第3実施例を示すフロー図である。
【図6】従来のダストの処理方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ダストの処理装置
2 気体輸送装置
21 バルブ
22 配管
23 ブースタノズル
26 ゲートバルブ
P 造粒機
S 集塵機
X 電気炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気炉から排出される排ガスを集塵機で濾過することにより該集塵機から排出されるダストを、造粒機によってダストペレットに成形し、該ダストペレットを気体輸送で電気炉設備に戻して電気炉で処理することを特徴とするダストの処理方法。
【請求項2】
集塵機から排出されるダストを造粒機によってダストペレットに成形するに際し、ダストに製鋼用添加剤を添加してダストペレットに成形することを特徴とする請求項1記載のダストの処理方法。
【請求項3】
電気炉から排出される排ガスを濾過する集塵機と、該集塵機から排出されるダストをペレット状に造粒する造粒機と、該造粒機から排出されるダストペレットを電気炉設備に搬送する気体輸送装置とからなることを特徴とするダストの処理装置。
【請求項4】
気体輸送装置の配管に、ブースタノズルを複数配設したことを特徴とする請求項3記載のダストの処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−86845(P2008−86845A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267193(P2006−267193)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】