説明

ダンパ、携帯電子機器、および、ダンパの製造方法

【課題】電子機器が組み込まれたダンパを容易に筐体へ収容できるダンパとその製造方法を提供する。
【解決手段】電子機器を保持するダンパ10は、ハードディスク20を保持する高分子弾性体製である。ダンパ10は、筐体30内に支持され筐体30の内面31に支持される壁面11aを有す。壁面11aには球状のガラスビーズ15が突出している。壁面11aのガラスビーズ15と筐体30の壁面31とが点接触するため、ダンパ10の筐体30への収納が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はダンパ、携帯電子機器、および、ダンパの製造方法に関し、特に、筐体への挿入性に優れた、ダンパ、携帯電子機器、および、ダンパの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ハードディスクを搭載した携帯電子機器が知られている。ハードディスクは特に衝撃や振動に弱いため、その耐衝撃性を高めるための構成が、たとえば特開2008−171515号公報(特許文献1)に開示されている。図5および図6は特許文献1に開示された電子機器用のダンパ(緩衝部材)を示す図である。
【0003】
ここでは、ダンパはそれぞれ断面が「コ」の字状の長手部材であり、これがハードディスクの対向する二つの長手方向の側部を保持している。図5はこのダンパの斜視図であり、図6(A)はダンパ100でハードディスクを保持した場合の平面図であり、図6(B)は図6(A)において矢印VIB-VIBで示す部分の断面図である。
【0004】
図5および図6を参照して、ダンパ100は長手部101と長手部101の両端部において長手部101に対して直交する側に折り曲げられた折り曲げ部102a,102bとを有し、長手部101の折り曲げ部102a,102bが形成された側には、ハードディスク110の長手方向の側部を収容するための溝103が設けられている。したがって、ダンパ100の長手方向に直交する断面は「コ」の字状になっている。
【0005】
このダンパ100を2つ用いてハードディスク110の対向する長手の二辺を保持した状態を図6に示す。図6に示すように、折り曲げ部102a,102bがハードディスク110のダンパ100で保持されない側の端部を保持している。なお、ここでは、ダンパ100は、軟質部106と導通部107とを有し、軟質部106はゴム状弾性体で形成されている。
【0006】
また、このようなダンパ100を携帯電子機器とするためにハードディスク110を保持したダンパ100を筐体108に収容する必要があるが、ダンパ100が高分子弾性体で構成されているため、ダンパ100を筐体に収容するときに筐体に付着したりして、困難な場合がある。このような場合の対策として、従来、タルクや澱粉粉などをダンパにまぶしたり、揮発性溶液にフッ素樹脂の粉末を溶かしてダンパに塗布したり、ダンパにフッ素樹脂系の塗料を塗布するといったことが行なわれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−171515号公報(要約、図1〜3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の携帯電子機器のハードディスクを支持するダンパは上記のように構成されていた。また、ダンパを筐体に組立てるときは、上記のような対策がとられていた。特許文献1に示されたダンパは、軟質部にハードディスクと筐体のような格納部とに接触して両者を電気的に接続する導通部を設けて、ハードディスクに帯電する静電気を除去する構成を有していたが、ダンパと筐体との接触部については特に何らの考慮もされていなかったため、ダンパを筐体へ収納する際に、その作業が困難であるという問題があった。
【0009】
また、他の上記の対策では、粉末を塗布する方法では乾燥後に脱落や、飛散するという問題があった。また、後処理となるため、工程が増えコストがかかるという問題もあった。さらに、フッ素樹脂を用いる場合は溶液自体が高価であり、コストアップになるという問題もあった。
【0010】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、コストをかけることなく、ハードディスクのような電子機器が組み込まれたダンパを容易に筐体へ収容できる、ダンパ、携帯電子機器、および、ダンパの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る、高分子弾性体製のダンパは、電子機器を保持する高分子弾性体製のダンパである。ダンパは所定の筐体内に支持され、筐体に支持される壁面を有し、壁面には球状の粒子が突出している。
【0012】
好ましくは、球状の粒子はガラスビーズである。ガラスビーズは安価であるため安価にダンパを製造できる。
【0013】
さらに好ましくは、ダンパは長手方向に延在し、長手方向に延在するダンパの、長手方向に交わる断面はコの字状であり、壁面は、コの字を構成する対向する二辺に挟まれた辺の外周部に設けられる。
【0014】
ダンパのコの字を構成する対向する二辺間に電子機器が保持されるのが好ましい。
【0015】
この発明の他の局面においては、携帯用電子機器は、筐体と、筐体内に支持された高分子弾性体製のダンパと、ダンパによって保持されたハードディスクとを含み、ダンパの筐体に支持される面には、球状の粒子が突出している。
【0016】
この発明のさらに他の局面においては、電子機器を保持する高分子弾性体製のダンパの製造方法は、下金型の底面部に複数の球状粒子を並べ、球状粒子の上から未加硫の高分子弾性体を加え、上金型で下金型を閉じた状態で未加硫の高分子弾性体を加硫する。
【0017】
好ましくは、下金型の底面部は球状粒子を収容する複数の凹部を有する。
【発明の効果】
【0018】
この発明においては、ダンパの筐体に支持される壁面には球状の粒子が突出しているため、筐体への収容時に球状の粒子が筐体と点接触する。
【0019】
その結果、従来の問題が生じず、且つ、コストをかけることなくハードディスクのような電子機器が組み込まれたダンパを容易に筐体に収容できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施の形態に係る、携帯電子機器を保持するためのダンパを示す図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係る、携帯電子機器を保持したダンパを筐体に支持した状態を示す図である。
【図3】この発明の一実施の形態に係る、ダンパの製造工程を示す図である。
【図4】この発明の一実施の形態に係る、ダンパの製造工程を示す図である。
【図5】従来のダンパを示す斜視図である。
【図6】従来のダンパを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。図1はこの発明の一実施の形態に係るダンパの斜視図(図1(A))、そのダンパで携帯電子機器を保持した状態を示す平面図(図1(B))、および、図1(B)において矢印IC-ICで示す断面図(図1(C))であり、従来の図5および図6に対応する。
【0022】
図1(A)〜(C)を参照して、携帯電子機器の一例としてのハードディスク20は、左右に設けられた2つのゴム製のダンパ10に保持されて、図示のない筐体に内蔵される。高分子弾性体製のダンパ10は、たとえば、ゴムのような弾性を有する単一材料によって形成されている。ここで、ダンパ10は長手部11と長手部11の両端部において長手部11に対して直交する側に折り曲げられた折り曲げ部12a,12bとを有し、長手部11の折り曲げ部12a,12bが形成された側には、ハードディスク20の長手の一方側側面を収容するための凹部13が設けられている。したがって、ダンパ10の長手方向に直交する断面は図1(C)に示すうように「コ」の字状になっている。
【0023】
ダンパ10のコの字を構成する対向する二辺14a,14bに挟まれた辺の外周部の壁面、すなわち、長手部11の凹部13が形成されない側の壁面11aには、多数のガラスビーズ15が埋め込まれている。ガラスビーズ15は基本的に球状であり、その約半分がゴムで構成された壁面に埋め込まれている。したがって、ダンパ10の外周部の壁面にはガラスビーズの半球状の部分が突出している。ここで、ガラスビーズの径としては、0.1mm〜1.0mmが好ましく、さらに好ましくは、0.5mmである。
【0024】
また、図1(C)に示すように、ダンパ10のコの字を構成する対向する二辺14a,14b間にハードディスク20が保持される。なお、ダンパ10はゴムに限らず、他の高分子弾性体製であってもよい。
【0025】
図2は、図1に示した2つのダンパ10で保持されたハードディスク20をこの状態で外部の筐体30に図中矢印方向から収納する状態を示す図である。ここでは、筐体30は上部に開口を有する断面「コの字」状として示しており、底面32と底面32の両端部に設けられた壁面31とを含む。
【0026】
図2を参照して、ダンパ10の凹部13が形成されない側の壁面11aには多数の半球状のガラスビーズ15が埋め込まれているため、ダンパ10を筐体30の内部壁面31へ挿入する場合に、ダンパ10の外周部の壁面11aと筐体30の壁面31とが点接触するため、容易に筐体30内へ収納可能である。また、ガラスビーズが摩擦係数の小さいものなので、容易に筐体30内へ収納可能である。
【0027】
次に、このガラスビーズ15が埋め込まれたダンパ10の製造方法について説明する。図3および図4はガラスビーズ15が埋め込まれたダンパ10の製造工程をステップごとに示す図である。図3は形成されるダンパ10の長手部11に直交する方向の断面を示す図であり、図4はダンパ10の長手部11に沿った方向の断面を示す図である。なお、図3および図4における(A)〜(D)はそれぞれ対応している。また、図3においては、ダンパ10の長手部11両端部における図示は省略している。
【0028】
まず、図3(A)および図4(A)に示すように、平面状の底面41を有し、その底面41に多数の半球状の凹部43を有する下金型40と、下金型40に上から重ねられるT字状の上金型35とを準備する。ここで、上金型35、下金型40はそれぞれ断面を示し、これらの金型は図面に直交する長手方向に延在している。また、半球状の凹部43は球状のガラスビーズを収容可能な寸法である。
【0029】
下金型40は図3(A)に示すように断面凹型であり、底面41の両側部から立ち上がる下型側壁面44a,44bを有し、下型側壁面44a,44bの上端部には下型側壁面44a,44bに直交する平面を有する肩部45a,45bが設けられている。なお、このように下型の両端部において壁面や肩部を設けるという点は図4に示した長手方向においても同様である。
【0030】
なお、図3に示すように、突出部37aの幅方向寸法W1は下金型40の底面41の幅方向寸法W2より小さく、上金型35と下金型40とは、上金型35の突出部37aが底面41の中央部に位置するように位置決めされるため、両端に壁51を有する断面コの字状のダンパが形成される。なお、位置決めのために上金型と下金型とを位置決めするための凹部と凸部とからなる位置決め部をそれぞれの型に設けてある。
【0031】
次に、図3(B)および図4(B)に示すように、多数のガラスビーズ15を下型40内に投入して半球状の凹部43に収容する。そしてその上からゴムの原料50を投入し、ガラスビーズ15と一体化させて、下金型40の上部から上金型35を重ねる。
【0032】
図3(B)に示すように上金型35はT字状であり、平坦部36と、平坦部36の中央部において下方向に突出した突出部37aと、突出部37aの両側に設けられた突出しない平面部37b,37cとを有する。平面部37b,37cは平面状の肩部45a,45bと面接触し、上金型35と下金型40とで囲まれた空間内でゴムの原料が約160℃で加硫され、ゴムとガラスビーズ15とが一体化される(図3(C))。
【0033】
なお、図4(B)および(C)に示すように、上型35は長手方向においてもT字状であり、T字状の上端部の平坦部を構成する上端部35aと、その中央部において下方向に突出した突出部35bとを含み、突出部35bは、図3で示す平坦部36、突出部37a、平面部37bを含む。
【0034】
また、図4(B)および(C)に示すように、上型35は長手方向においても下型40の長手方向の中央部に位置決めされ、それによってダンパ10の折り曲げ部12a,12bが形成される(図4(D))。
【0035】
上記の金型構造でダンパを製造することで、ゴムとガラスビーズが容易に一体化できる。さらに、下金型に凹部43を有するため、ガラスビーズが均一に分散、配置できる。
【0036】
次に上金型35と下金型40とを外して、壁面にガラスビーズ15が埋め込まれ、両側部に壁51を有する断面がコの字状のダンパ10を取出す(図3(D))。
【0037】
上記実施の形態においては、球状の粒子としてガラスビーズを用いた場合について説明したが、これに限らず、同様の形状であれば金属球や、樹脂製の球等、任意のものが使用可能である。
【0038】
図面を参照してこの発明の一実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明に係るダンパ、携帯電子機器、およびダンパの製造方法は、コストが安く、かつ、携帯電子機器への組込み作業が容易であるため、ダンパおよび携帯電子機器として、有利に利用されうる。
【符号の説明】
【0040】
10 ダンパ、11 長手部、12 折り曲げ部、13 凹部、20 ハードディスク、30 筐体、35 上金型、40 下金型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を保持する高分子弾性体製のダンパであって、
前記ダンパは所定の筐体内に支持され、
前記ダンパは、前記筐体に支持される壁面を有し、
前記壁面には球状の粒子が突出している、高分子弾性体製のダンパ。
【請求項2】
前記球状の粒子はガラスビーズである、請求項1に記載の高分子弾性体製のダンパ。
【請求項3】
前記ダンパは長手方向に延在し、
長手方向に延在する前記ダンパの、前記長手方向に交わる断面はコの字状であり、
前記壁面は、前記コの字を構成する対向する二辺に挟まれた辺の外周部に設けられる、請求項1または2に記載の高分子弾性体製のダンパ。
【請求項4】
前記ダンパのコの字を構成する対向する二辺間に電子機器が保持される、請求項3に記載の高分子弾性体製のダンパ。
【請求項5】
筐体と、
前記筐体内に支持された高分子弾性体製のダンパと、
前記ダンパによって保持されたハードディスクとを含み、
前記ダンパの前記筐体に支持される面には、球状の粒子が突出している、携帯電子機器。
【請求項6】
電子機器を保持する高分子弾性体製のダンパを製造する方法であって、
下金型の底面部に複数の球状粒子を並べ、
球状粒子の上から未加硫の高分子弾性体を加え、
上金型で下金型を閉じた状態で未加硫の高分子弾性体を加硫する、ダンパの製造方法。
【請求項7】
前記下金型の底面部は前記球状粒子を収容する複数の凹部を有する、請求項6に記載のダンパの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−192029(P2010−192029A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34416(P2009−34416)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】