説明

チオモルホリン化合物及びその製法

【課題】優れたタキキニン受容体拮抗活性を有するチオモルホリン化合物を提供する。
【解決手段】一般式〔I〕



(式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
は水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表す。
は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
3a及びR3bは、同一または異なって、水素原子もしくは置換基を有していてもよいアルキル基を表すか、または末端で結合してアルキレン基を形成する基を表す。
nは1または2の整数を表す。)
で示されるチオモルホリン化合物またはその薬理的に許容しうる塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたタキキニン受容体拮抗活性を有する新規チオモルホリン化合物及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
タキキニンとは、一群の神経ペプチドの総称であり、哺乳類ではサブスタンスP(以下、SP)、ニューロキニンA、ニューロキニンBが知られており、これらのペプチドは生体内に存在するそれぞれの受容体(ニューロキニン1、ニューロキニン2、ニューロキニン3)に結合することによって、様々な生物活性を発揮することが知られている。その中で、SPは神経ペプチドの中でももっとも歴史が長く詳細に研究されているものの1つであり、1931年にウマ腸管抽出物中に存在が確認され、1971年に構造決定されたアミノ酸11個からなるペプチドである。
【0003】
SPは中枢および末梢の神経系に広く分布しており、一次知覚ニューロンの伝達物質としての機能の他、血管拡張作用、血管透過性亢進作用、平滑筋収縮作用、神経細胞興奮作用、唾液分泌作用、利尿亢進作用、免疫作用などの生理活性を有する。特に、痛みインパルスにより脊髄後角の終末から遊離されたSPが2次ニューロンに痛み情報を伝えること、末梢終末より遊離されたSPがその受容体に炎症反応を惹起することが知られている。このようなことから、SPは種々の病態(例えば、痛み、炎症、アレルギー、頻尿、尿失禁、気道疾患、精神病、うつ病、不安、嘔吐など)に関与していると考えられており、またSPはアルツハイマー型痴呆にも関与していると考えられている〔総説:フィジオロジカル・レビューズ(Physiological Reviews)、73巻、229−308頁(1993年)(非特許文献1)、ジャーナル・オブ・オートノミック・ファーマコロジー(Journal of Autonomic Pharmacology)、13巻、23−93頁(1993年)(非特許文献2)〕。
【0004】
現在、タキキニン受容体拮抗活性を有する化合物として、特許文献1には、
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、Rは、水素又はフルオロである)
で示される化合物、及びその薬理的に許容されうる酸付加塩が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、
【0008】
【化2】

【0009】
[式中、Rはハロゲン原子またはC1−4アルキル基を表す;
はC1−4アルキル基を表す;
は水素またはC1−4アルキル基を表す;
は水素またはC1−4アルキル基を表す;
はトリフルオロメチル基を表す;
は水素、C1−4アルキル基またはC(O)Rを表す;
はC1−4アルキル、C3−7シクロアルキル、NH(C1−4アルキル)またはN(C1−4アルキル)を表す;
mは0または1から3の整数である;
nは1から3の整数である]で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和化合物、特許文献3には、
【0010】
【化3】

【0011】
[式中:
RはハロゲンまたはC1−4アルキルであり;
は水素またはC1−4アルキルであり;
は水素、C1−4アルキルであるか、またはRはRと一緒になってC3−7シクロアルキルを示し;
は水素、C1−4アルキル、C3−7シクロアルキルまたはC3−6アルケニルであるか;またはRとRはそれらが各々結合する窒素および炭素原子と一緒になって5ないし6員の複素環基を示し;
はトリフルオロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメトキシまたはハロゲンであり;
は水素であって、RはNRであるか、またはRはNRであって、Rは水素であり;
は水素またはC1−4アルキルであるか、またはRとRはそれらが結合する窒素と一緒になって酸素含有の飽和した5ないし7員の複素環基を示し;
は水素、フェニル、C3−7シクロアルキル、(CH)pC(O)NR1011、酸素、硫黄および窒素から選択される1ないし3個のヘテロ原子含有の飽和した5ないし7員の複素環基(C1−4アルキル、S(O)1−4アルキルまたはC(O)C1−4アルキルで置換されていてもよい)、酸素、硫黄および窒素から選択される1ないし3個のヘテロ原子を含有する5員のヘテロアリール基(C1−4アルキルS(O)1−4アルキルまたはC(O)C1−4アルキルで置換されていてもよい)であるか、またはRは1ないし3個の窒素原子含有の6員のヘテロアリール基(C1−4アルキル、S(O)1−4アルキルまたはC(O)C1−4アルキルで置換されていてもよい)であるか;またはRはフッ素、フェニル(C1−4アルキル、C(O)C1−4アルキルまたはハロゲンで置換されていてもよい)、=O、C3−7シクロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ジメチルアミノ、アミノカルボニル、C1−4アルコキシまたはトリフルオロメチルから選択される1または2個の基で置換されていてもよいC1−6アルキル基であり;
は水素、C1−4アルキルであるか、またはRとRはそれらが結合する窒素と一緒になって酸素、硫黄および窒素から選択されるもう一つ別のヘテロ原子を含有していてもよく、C1−4アルキル、=O、S(O)1−4アルキル、C(O)C3−7シクロアルキルまたはC(O)C1−4アルキルから選択される1または2個の基により置換されていてもよい5ないし7員の複素環基であり;
10およびR11は、独立して、水素またはC1−4アルキル基であり;
Xは窒素原子であって、YはCHであるか、またはXはCHであって、Yは窒素であり;
mは0または1ないし3の整数であり;
nは1ないし3の整数であり;
pは0、1または2である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩および溶媒和物が記載されている。
【0012】
さらに、特許文献4には、
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有しているチオール基、置換基を有しているカルボニル基、置換基を有しているスルフィニル基、置換基を有しているスルホニル基、または式:
【0015】
【化5】

【0016】
で示される基であり、
11およびR12は同一または異なって、水素原子、置換基を有しているカルボニル基、置換基を有しているスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個含有する複素環式基であって、当該複素環式基は置換基を有していてもよく、さらに当該複素環式基に含まれる窒素原子は酸化されていてもよいか、あるいは互いに末端で結合して隣接する窒素原子とともに、ピペリジノ基、アザシクロへプチル基、ピロリジノ基、イミダソリジニル基、ヘキサヒドロピリミジニル基、チアゾリジル基、モルホリノ基、トリアゾリル基、テトラゾリル基およびプリニル基から選ばれる複素環式基を形成していることを表し、当該複素環式基は置換基を有していてもよく、さらに当該複素環式基に含まれる窒素原子は酸化されていてもよく、Rは水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表し、Zは酸素原子又は−N(R)−で示される基を表し、Rは水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Rは水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)
で示されるピペリジン誘導体またはその薬理的に許容しうる塩が記載されている。
【0017】
【非特許文献1】フィジオロジカル・レビューズ(Physiological Reviews)、73巻、229−308頁(1993年)。
【0018】
【非特許文献2】ジャーナル・オブ・オートノミック・ファーマコロジー(Journal of Autonomic Pharmacology)、13巻、23−93頁(1993年)。
【0019】
【特許文献1】国際公開第2003/011860パンフレット
【特許文献2】国際公開第2002/032867パンフレット
【特許文献3】国際公開第2003/066589パンフレット
【特許文献4】国際公開第2003/099787パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
現在、前記種々病態(特に嘔吐、うつ病または排尿異常など)の治療薬として、優れたタキキニン受容体拮抗作用(特にSP受容体拮抗作用)を有し、かつ安全性、持続性(代謝、体内動態、吸収性)などの点から十分に満足できる化合物は未だ見出されていない。そこで、優れたタキキニン受容体拮抗作用を有し、該病態の治療薬として臨床上の効果が十分に満足できる化合物の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、一般式〔I〕
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
は水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表す。
は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
3a及びR3bは、同一または異なって、水素原子もしくは置換基を有していてもよいアルキル基を表すか、または末端で結合してアルキレン基を形成する基を表す。
nは1または2の整数を表す。)
で示されるチオモルホリン化合物またはその薬理的に許容しうる塩に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、優れたタキキニン受容体拮抗作用を有し、かつ安全性、持続性(代謝、体内動態、吸収性)などの点から臨床上十分に満足できる化合物を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明において、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、ベンゼン環の置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、保護されていてもよい水酸基またはアルコキシ基が挙げられる。環Aはこれら置換基を同一または異なって1〜3個有していてもよい。
【0026】
本発明において、環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、ベンゼン環の置換基としては、トリハロゲノアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個含有する複素環式基、アルキル基、保護されていてもよい水酸基またはアルコキシ基が挙げられる。環Bはこれら置換基を同一または異なって1〜3個有していてもよい。
【0027】
本発明の化合物における環A及び環Bの好ましい例としては、例えば、環Aが、式:
【0028】
【化7】

【0029】
で示されるベンゼン環であり、環Bが、式:
【0030】
【化8】

【0031】
で示されるベンゼン環であり、A、AおよびAは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護されていてもよい水酸基またはアルコキシ基であり、B、BおよびBは、同一または異なって、水素原子、トリハロゲノアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個含有する複素環式基、アルキル基、保護されていてもよい水酸基またはアルコキシ基である化合物が挙げられる。トリハロゲノアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基またはトリクロロメチル等が挙げられる。ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個含有する複素環式基としては、例えば、テトラゾリル基が挙げられる。
【0032】
本発明において、保護されていてもよい水酸基の保護基としては、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいシリル基、アシル基等の慣用の保護基が挙げられる。このうち好ましいものとしては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のアリールアルキル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等の置換基を有しているシリル基、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、マロニル基、アクリロイル基、ベンゾイル基等のアシル基が挙げられる。
【0033】
本発明において、Rとしては、水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表す。
【0034】
本発明において、Rの置換基を有していてもよい水酸基の置換基としては、アルキル基が挙げられる。
【0035】
本発明において、Rの置換基を有していてもよいアミノ基の置換基としては、アルキル基が挙げられる。
【0036】
本発明において、Rの置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、アルコキシ基が挙げられる。
【0037】
本発明において、Rの置換基を有しているカルボニル基の置換基としては、水酸基、アルコキシ基またはアルキルアミノ基が挙げられる。
【0038】
本発明において、Rとしては、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基が挙げられる。Rの置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、水酸基、アルカノイル基、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアルキルアミノ基が挙げられる。
【0039】
本発明において、R3a及びR3bとしては、同一または異なって、水素原子もしくは置換基を有していてもよいアルキル基を表すか、または末端で結合してアルキレン基を形成する基が挙げられる。置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、水酸基などが挙げられる。
【0040】
本発明において、nとしては、1または2の整数が挙げられる。
【0041】
本発明の化合物〔I〕としては、環Aが、式:
【0042】
【化9】

【0043】
で示されるベンゼン環であり、Aがアルキル基を表し、Aがハロゲン原子を表し、環Bが、式:
【0044】
【化10】

【0045】
で示されるベンゼン環であり、Bがトリハロゲノアルキル基を表し、Bがトリハロゲノアルキル基を表し、Rが水素原子を表し、Rがアルキル基を表し、R3a及びR3bが、同一または異なって、水素原子もしくはアルキル基である化合物が好ましい。また、本発明の化合物〔I〕としては、nが2である化合物が好ましい。
【0046】
また、本発明の化合物において、好ましい化合物としては、以下の(a)〜(g)の中から選ばれる化合物またはその薬理的に許容し得る塩である。
(a)1,1−ジオキソ−4−(S)−〔1−[N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン、
(b)1,1−ジオキソ−4−(R)−〔1−[N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン、
(c)1,1−ジオキソ−4−(S)−〔1−[N−{1−(S)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン、
(d)1,1−ジオキソ−4−(R)−〔1−[N−{1−(S)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン、
(e)1,1−ジオキソ−4−(S)−〔1−{N−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)メチル−N−メチル}−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン、
(f)1,1−ジオキソ−4−(R)−〔1−{N−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)メチル−N−メチル}−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリンおよび
(g)4−(S)−〔1−[N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕−1−オキソチオモルホリン。
【0047】
本発明の化合物〔I〕は、遊離の形でも、また薬理的に許容し得る塩の形でも医薬用途に使用することができる。
【0048】
本発明の化合物〔I〕の薬理的に許容し得る塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩の如き無機酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トシル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩の如き有機酸塩等が挙げられる。
【0049】
また、本発明の化合物〔I〕またはその薬理的に許容しうる塩とは、その分子内塩やそれらの溶媒和物あるいは水和物等をいずれも含む。
【0050】
本発明の化合物〔I〕は、不斉原子に基づく光学異性体として存在しうるが、本発明はこれらの光学異性体及びその混合物のいずれも含むものである。本発明においては、これら光学異性体の中でも、ピペリジン環の2位(環Aの接続位)がRの化合物が好ましい。
【0051】
本発明の化合物〔I〕またはその薬理的に許容し得る塩は、優れたタキキニン受容体拮抗作用、特にSP受容体拮抗作用を有し、哺乳動物(例えば、マウス、モルモット、スナネズミ、フェレット、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒトなど)に対する、炎症もしくはアレルギー性疾患(例えば、アトピー、皮膚炎、ヘルペス、乾癬、喘息、気管支炎、喀痰、鼻炎、リューマチ関節炎、変形性関節炎、骨粗鬆症、多発性硬化症、結膜炎、眼炎、膀胱炎など)、疼痛、偏頭痛、神経痛、掻痒、咳、さらに中枢神経系の疾患〔例えば、精神分裂症、パーキンソン病、うつ病、不安、心身症、モルヒネ依存症、痴呆(例えば、アルツハイマー病など)など〕、消化器疾患[例えば、過敏性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、ウレアーゼ陽性のラセン状グラム陰性菌(例えば、ヘリコバクター・ピロリなど)に起因する異常(例えば、胃炎、胃潰瘍など)など]、悪心、嘔吐、排尿異常(例えば、頻尿、尿失禁など)、循環器疾患(例えば、狭心症、高血圧、心不全、血栓症など)および免疫異常などの安全な予防、治療薬として有用である。とりわけ、本発明の有効成分である化合物〔I〕またはその薬理的に許容し得る塩は、脳内移行性が高く、且つ毒性発現に繋がる可能性が低く(安全性が高く)で、副作用を殆ど示さないため、嘔吐、うつ病などの中枢神経系疾患、頻尿などの排尿異常の予防、治療薬として有用である。
【0052】
本発明の化合物またはその薬理的に許容し得る塩は、例えば、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(European Journal of Pharmacology)254巻、221−227頁(1994年)記載の方法に準じて、ニューロキニン−1受容体結合作用を測定することができ、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(European Journal of Pharmacology)265巻、179−183頁(1994年)記載の方法に準じて、ニューロキニン−1受容体作動薬誘発行動に対する作用を測定することができ、また、ジャーナル・オブ・ウロロジー(Journal of Urology)、155巻、1号、355−360頁(1996年)記載の方法に準じて、頻尿抑制作用を測定することができる。
【0053】
本発明の化合物〔I〕およびその薬理的に許容しうる塩は、経口的にも非経口的にも投与することができ、経口もしくは非経口投与に通常用いられる医薬担体を用いて、適当な製剤とすることができる。かかる医薬担体としては、例えば、結合剤(シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビット、トラガント、ポリビニルピロリドン等)、賦形剤(乳糖、砂糖、コーンスターチ、リン酸カリウム、ソルビット、グリシン等)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ等)、崩壊剤(バレイショデンプン等)および湿潤剤(ラウリル無水硫酸ナトリウム等)等をあげることができる。また、これら医薬製剤は、経口投与する場合には、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤の如き固形製剤であってもよく、溶液、懸濁液、乳液の如き液体製剤であってもよい。一方、非経口投与する場合には、例えば、注射用蒸留水、生理的食塩水、ブドウ糖水溶液等を用いて注射剤や点滴剤として、あるいは坐剤等とすることができる。
【0054】
本発明の化合物〔I〕またはその薬理的に許容しうる塩の投与量は、投与方法、患者の年齢、体重、状態あるいは疾患の程度によって異なるものの、通常、1日あたりの投与量は、経口投与の場合には、0.01〜20mg/kg、とりわけ0.01〜10mg/kg、非経口投与の場合には、0.01〜10mg/kg、とりわけ0.01〜1mg/kgであるのが好ましい。
【0055】
〔A法〕
本発明の目的化合物〔I〕は、例えば、一般式〔II〕
【0056】
【化11】

【0057】
(式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
は水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表す。
は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
3a及びR3bは、同一または異なって、水素原子もしくは置換基を有していてもよいアルキル基を表すか、または末端で結合してアルキレン基を形成する基を表す。)
で示される化合物を酸化剤の存在下反応させることにより製することができる。
【0058】
〔B法〕
本発明の目的化合物〔I〕は、例えば、一般式〔III〕
【0059】
【化12】

【0060】
(式中、環AおよびRは前記と同一意味を有する。)
で示される化合物と一般式〔IV〕
【0061】
【化13】

【0062】
(式中、環B、R、R3aおよびR3bは前記と同一意味を有する。)
で示される化合物とをウレア化剤の存在下反応させることにより製することができる。
【0063】
〔C法〕
本発明の目的化合物〔I〕は、例えば、一般式〔V〕
【0064】
【化14】

【0065】
(式中、環A、環B、R、R、R3aおよびR3bは前記と同一意味を有する。)
で示される化合物またはその塩と一般式〔VI〕
【0066】
【化15】

【0067】
(式中、nは前記と同一意味を有する。)
で示される化合物とを塩基の存在下反応させることにより製することができる。
【0068】
これら〔A法〕〜〔C法〕は、以下のようにして実施することができる。
【0069】
〔A法〕
本製法は、化合物〔II〕を酸化剤の存在下、適当な溶媒中で実施することができる。酸化剤としては、例えば、3−クロロ過安息香酸、過酢酸、過ヨウ素酸ナトリウム、オキソン等が挙げられる。また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、水等を適宜用いることができる。本反応は、例えば、−80℃〜150℃、好ましくは、0℃〜50℃で実施することができる。
【0070】
〔B法〕
化合物〔III〕と化合物〔IV〕との反応は、ウレア化剤の存在下、適当な溶媒中で実施することができる。ウレア化剤としては、式:
【0071】
【化16】

【0072】
(式中、WおよびWは、同一または異なって脱離基を表す。)
で示されるようなものが挙げられる。WおよびWとしては、同一または異なってイミダゾリル基、ハロゲン原子またはフェノキシ基のようなものが挙げられる。具体的には、1,1’−カルボニルジイミダゾール、ホスゲンのようなものが好ましく、例えば、1,1’−カルボニルジイミダゾール、トリホスゲンまたはホスゲン等のカルボニルジハライドを用いることができる。また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を適宜用いることができる。本反応は、例えば、0℃〜80℃、好ましくは、0℃〜50℃で実施することができる。
【0073】
さらに、本反応は、化合物〔III〕とウレア化剤、式
【0074】
【化17】

【0075】
(式中、WおよびWは、前記と同一意味を有する。)
を反応させ、一般式〔VII〕
【0076】
【化18】

【0077】
(式中、環A、RおよびWは前記と同一意味を有する。)
とした後、次いで、化合物〔VII〕をその反応性誘導体へ導き、化合物〔IV〕と反応させるか、または、化合物〔IV〕とウレア化剤、式
【0078】
【化19】

【0079】
(式中、WおよびWは前記と同一意味を有する)
を反応させ、一般式〔VIII〕
【0080】
【化20】

【0081】
(式中、環B、R、R3a、R3bおよびWは前記と同一意味を有する。)
とした後、次いで、化合物〔VIII〕をその反応性誘導体へ導き、化合物〔III〕と反応させることにより、化合物〔I〕を製することもできる。
【0082】
反応性誘導体としては、例えば、化合物〔VII〕または化合物〔VIII〕において、Wを、式
【0083】
【化21】

【0084】
で示されるような基に誘導した化合物が挙げられる。
【0085】
化合物〔III〕または化合物〔IV〕とウレア化剤の反応は、例えば、0℃〜80℃、好ましくは、0℃〜50℃で実施することができる。また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を適宜用いることができる。
【0086】
化合物〔VII〕または化合物〔VIII〕をその反応性誘導体へ導く反応は、ヨウ化メチルのような反応性誘導化剤を用いて、例えば、0℃〜80℃、好ましくは、0℃〜50℃で実施することができる。また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を適宜用いることができる。
【0087】
それぞれの反応性誘導体と化合物〔III〕または化合物〔IV〕との反応は、塩基の存在下、例えば、0℃〜80℃、好ましくは、0℃〜50℃で実施することができる。また、塩基としては、例えば、トリエチルアミンなどを用いることができ、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、トルエン、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を適宜用いることができる。
【0088】
〔C法〕
本製法は、化合物〔V〕またはその塩と化合物〔VI〕との反応は、塩基の存在下、適当な溶媒中で実施することができる。塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エンなどの有機塩基または炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリムメトキシド、カリウム tert−ブトキシドなどの無機塩基等が挙げられる。また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエンなどの溶媒、もしくはこれらの混合溶媒、またはこれらの溶媒と水との混合溶媒等を適宜用いることができる。化合物〔V〕の塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、などの無機酸塩またはメタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、トリフルオロ酢酸塩などの有機酸塩を適宜用いることができる。本反応は、例えば、10℃〜加熱還流下、好ましくは、50℃〜120℃で実施することができる。
【0089】
なお、一般式〔IX〕:

【0090】
(式中、環A、環B、R、R、R3aおよびR3bは前記と同一意味を有する。)
で示される化合物またはその光学異性体は、国際公開第2003/099787パンフレット記載の方法に準じて、反応することにより製することができる。
【0091】
化合物〔II〕は、化合物〔IX〕またはその塩とチオモルホリンとを適当な溶媒中、還元的アミノ化反応に付すことにより実施することができる。本還元的アミノ化反応は、酸性条件下、水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム等の還元剤またはパラジウム等の還元触媒と共に水素添加により実施することができる。溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、ジクロロメタン、酢酸、エタノール、メタノール等を適宜用いることができる。化合物〔IX〕の塩としては、塩酸塩、酢酸塩等を適宜用いることができる。本反応は、例えば、−10℃〜80℃、好ましくは、0℃〜30℃で実施することができる。
【0092】
また、一般式〔X〕:

【0093】
(式中、Rは水素原子またはアミノ基の保護基を表し、環AおよびRは前記と同一意味を有する。)
で示される化合物またはその光学異性体は、国際公開第2002/032867パンフレット記載の方法に準じて、反応することにより製することができる。
【0094】
のアミノ基の保護基としては、tert−ブトキシカルボニル基の如きアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等の如きアリールアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0095】
化合物〔III〕は、化合物〔X〕またはその塩とチオモルホリンとを適当な溶媒中、還元的アミノ化反応に付し、Rがアミノ基の保護基の場合は、次いで当該保護基を除去することにより実施することができる。本還元的アミノ化反応は、酸性条件下、水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム等の還元剤またはパラジウム等の還元触媒と共に水素添加により実施することができる。溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、ジクロロメタン、酢酸、エタノール、メタノール等を適宜用いることができる。化合物〔X〕の塩としては、塩酸塩、酢酸塩等を適宜用いることができる。本反応は、例えば、−10℃〜80℃、好ましくは、0℃〜30℃で実施することができる。また、アミノ基の保護基の除去は、常法により実施することができる。
【0096】
またさらに、一般式〔XI〕:

【0097】
(式中、環A、環B、R、R、R3aおよびR3bは前記と同一意味を有する。)
で示される化合物またはその光学異性体は、国際公開第2003/099787パンフレット記載の方法に準じて、反応することにより製することができる。
【0098】
また、一般式〔XII〕:

【0099】
(式中、環A、環B、R、R、R3aおよびR3bは前記と同一意味を有する。)
で示される化合物またはその光学異性体は、国際公開第2003/099787パンフレット記載の方法に準じて、反応することにより製することができる。
【0100】
またさらに、化合物〔III〕は上記〔C法〕記載の方法に準じて、例えば、一般式〔XIII〕:
【0101】
【化22】

【0102】
(式中、環A、RおよびRは前記と同一意味を有する。)
で示される化合物またはその塩と一般式〔VI〕
【0103】
【化23】

【0104】
(式中、nは前記と同一意味を有する。)
で示される化合物とを塩基の存在下反応させることにより製することができる。
【0105】
さらに、本発明の目的化合物および原料化合物の製造に際し、原料化合物ないし各中間体化合物が官能基を有する場合、上記で示した以外にも合成化学の常法により各官能基に適切な保護基を導入し、また、必要がなければ、それら保護基を、適宜、除去してもよい。
【0106】
本明細書において、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基等、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味し、好ましくは炭素数1〜4のものを意味する。アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリール基、プロペニル基、イソプロペニル基等、炭素数2〜7の直鎖または分岐鎖のアルケニル基を意味し、好ましくは炭素数2〜5のものを意味する。アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基を意味し、好ましくは炭素数1〜4のものを意味し、アルカノイル基とは、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、tert−ブチルカルボニル基等、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルカノイル基を意味し、好ましくは炭素数1〜4のものを意味する。シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等、炭素数3〜8のシクロアルキル基を意味し、好ましくは炭素数3〜6のものを意味する。さらに、ハロゲン原子としては、塩素、臭素、フッ素またはヨウ素が挙げられる。
【実施例】
【0107】
実施例1
4−(S)−〔1−[N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン90mgのジクロロメタン2ml溶液にメタンスルホン酸0.02ml、およびメタクロロ過安息香酸105mgを加えて室温で3時間攪拌した。反応液にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、室温で30分間攪拌した。水、およびクロロホルムを加えて分液、水層から再度クロロホルムで抽出した。併せた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮した。得られた残渣を塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)、続いてシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:酢酸エチル=3:1)で精製することにより、下記第1表記載の1,1−ジオキソ−4−(S)−〔1−[N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン44mgを得た。
【0108】
実施例2−6
対応原料化合物を用いて、実施例1と同様に処理することにより、下記第1表および第2表記載の化合物を得た。
【0109】
実施例7
4−(S)−〔1−[N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン80mgのジクロロメタン溶液5mlに4M塩酸(1,4−ジオキサン溶液)0.034mlを滴下し、次いでメタクロロ過安息香酸(70%)33mgを−10℃で加え1時間攪拌した。反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液とジクロロメタンを加えた後、分液した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=19:1)で精製した。これをtert−ブタノールで凍結乾燥することより、下記第2表記載の4−(S)−〔1−[N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕−1−オキソチオモルホリン50mgを得た。
【0110】
実施例8
(2R,4S)−1−〔N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル〕アミノカルボニル−4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン11.3gの1,4−ジオキサン15ml溶液に、4M塩酸(1,4−ジオキサン溶液)45mlを加え、室温で2時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮した後、さらに真空にて乾燥した。残渣のエタノール50ml溶液に、ジビニルスルホン3gとトリエチルアミン5.1gを加え、加熱還流下で2時間攪拌した。反応溶液を濃縮後、ジイソプロピルエーテルで結晶化することにより、上記実施例1記載と同じ化合物10.3gを得た。
【0111】
参考例1
N−{1−(S)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチルアミン3.91gのテトラヒドロフラン溶液60mlに1,1’−カルボニルジイミダゾール2.34gを加え、40℃にて終夜攪拌した。反応液から溶媒を留去した後、酢酸エチルを加え、全有機層を水、飽和食塩水で洗浄、乾燥した後、溶媒を留去した。得られた残渣をジイソプロピルエーテルにて結晶化して、濾取した。得られた白色結晶をアセトニトリル60mlに溶解し、ヨウ化メチル3.4mlを加えて60℃にて2時間反応した後、溶媒を留去した。残渣をジクロロメタン40mlに溶解し、氷冷下、2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4,4−ジメトキシピペリジン3.47g、トリエチルアミン3.82mlを加えて室温下終夜攪拌した。反応液を水にあけ、分液し、水層をジクロロメタンにて抽出した。全有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、乾燥、留去した。残渣をテトラヒドロフラン90mlに溶解し、氷冷下、1M硫酸水溶液30mlを加え、室温下5時間攪拌した。1M水酸化ナトリウム水溶液にてpHを8〜9に調整後、テトラヒドロフランを留去、残渣に水と酢酸エチルを加えて分液し、水層を酢酸エチルにて抽出した。全有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、乾燥、留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製することにより、下記第3表記載の(2R)−1−〔N−{1−(S)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル〕アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−オキソピペリジン2.12gを得た。
【0112】
参考例2−3
対応の原料化合物を用いて、参考例1と同様に処理することにより、下記第3表記載の化合物を得た。
【0113】
参考例4
(2R)−1−〔N−{1−(S)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル〕アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−オキソピペリジン504mg、チオモルホリン155mg、および酢酸0.057mlのジクロロメタン15ml溶液にナトリウムトリアセトキシボロヒドリド446mgを加えて室温で16時間攪拌した。反応液にチオモルホリン52mg、およびナトリウムトリアセトキシボロヒドリド112mgを加えてさらに室温で3時間攪拌した。水、およびクロロホルムを加えて分液、水層から再度クロロホルムで抽出した。併せた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮した。得られた残渣を塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)、続いてシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:酢酸エチル=3:1)で精製することにより、下記第3表記載の(a)4−(S)−〔2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−[N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン92mgおよび(b)4−(R)−〔2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−[N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン164mgを得た。
【0114】
参考例5−6
対応原料化合物を用いて、参考例4と同様に処理することにより、下記第4表記載の化合物を得た。
【0115】
参考例7
(2R,4R)−1−〔N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル〕アミノカルボニル−4−ブロモ−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン280mgのN,N−ジメチルホルムアミド溶液にチオモルホリン0.2mlを加え90℃で16時間攪拌した。反応液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:3)で精製することにより、上記参考例4(a)記載と同じ化合物80mgを得た。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の化合物は、優れたタキキニン受容体拮抗作用を有する。また、本発明の化合物は、安全性が高く、また吸収性、脳内移行性、代謝安定性、血中濃度、持続性等の点で優れ、このため優れた薬効を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式〔I〕
【化1】

(式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
は水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表す。
は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
3a及びR3bは、同一または異なって、水素原子もしくは置換基を有していてもよいアルキル基を表すか、または末端で結合してアルキレン基を形成する基を表す。
nは1または2の整数を表す。)
で示されるチオモルホリン化合物またはその薬理的に許容しうる塩。
【請求項2】
環Aが、式:
【化2】

で示されるベンゼン環であり、Aがアルキル基を表し、Aがハロゲン原子を表し、環Bが、式:
【化3】

で示されるベンゼン環であり、Bがトリハロゲノアルキル基を表し、Bがトリハロゲノアルキル基を表し、Rが水素原子を表し、Rがアルキル基を表し、R3a及びR3bが、同一または異なって、水素原子もしくはアルキル基である請求項1記載の化合物またはその薬理的に許容しうる塩。
【請求項3】
以下の(a)〜(g)の中から選ばれる化合物またはその薬理的に許容しうる塩。
(a)1,1−ジオキソ−4−(S)−〔1−[N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン、
(b)1,1−ジオキソ−4−(R)−〔1−[N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン、
(c)1,1−ジオキソ−4−(S)−〔1−[N−{1−(S)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン、
(d)1,1−ジオキソ−4−(R)−〔1−[N−{1−(S)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン、
(e)1,1−ジオキソ−4−(S)−〔1−{N−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)メチル−N−メチル}−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリン、
(f)1,1−ジオキソ−4−(R)−〔1−{N−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)メチル−N−メチル}−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕チオモルホリンおよび
(g)4−(S)−〔1−[N−{1−(R)−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)エチル}−N−メチル]−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)アミノカルボニルピペリジン−4−イル〕−1−オキソチオモルホリン。
【請求項4】
一般式〔II〕
【化4】

(式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
は水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表す。
は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
3a及びR3bは、同一または異なって、水素原子もしくは置換基を有していてもよいアルキル基を表すか、または末端で結合してアルキレン基を形成する基を表す。)
で示される化合物を酸化剤の存在下反応させ、次いで所望により薬理的に許容し得る塩とすることを特徴とする一般式〔I〕
【化5】

(式中、nは1または2の整数を表す。環A、環B、R、R、R3aおよびR3bは前記と同一意味を有する。)
で示されるチオモルホリン化合物またはその薬理的に許容し得る塩の製法。
【請求項5】
一般式〔III〕
【化6】

(式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
は水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表す。
nは1または2の整数を表す。)
で示される化合物と一般式〔IV〕
【化7】

(式中、環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
3a及びR3bは、同一または異なって、水素原子もしくは置換基を有していてもよいアルキル基を表すか、または末端で結合してアルキレン基を形成する基を表す。)
で示される化合物とをウレア化剤の存在下反応させ、次いで所望により薬理的に許容し得る塩とすることを特徴とする一般式〔I〕
【化8】

(式中、環A、環B、R、R、R3a、R3bおよびnは前記と同一意味を有する。)
で示されるチオモルホリン化合物またはその薬理的に許容し得る塩の製法。
【請求項6】
一般式〔III〕
【化9】

(式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表す。
は水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表す。
は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
3a及びR3bは、同一または異なって、水素原子もしくは置換基を有していてもよいアルキル基を表すか、または末端で結合してアルキレン基を形成する基を表す。)
で示される化合物またはその塩と一般式〔IV〕
【化10】

(式中、nは1または2の整数を表す。)
で示される化合物とを塩基の存在下反応させ、次いで所望により薬理的に許容し得る塩とすることを特徴とする一般式〔I〕
【化11】

(式中、環A、環B、R、R、R3a、R3bおよびnは前記と同一意味を有する。)
で示されるチオモルホリン化合物またはその薬理的に許容し得る塩の製法。

【公開番号】特開2007−91732(P2007−91732A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234808(P2006−234808)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000002956)田辺製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】