説明

チタン酸アルミニウム型の多孔質構造体を製造するための粒子混合物

本発明は、少なくともチタン及びアルミニウムを含有する擬板チタン石型の酸化物相を主に含む又はこの酸化物相からなる粒子混合物に関連し、この混合物は、次の少なくとも二つの粒径部分、すなわちメジアン径d50が12μm超である粗大粒径部分、及びメジアン径d50が0.5〜3μmである微細粒径部分から得ることができ、粗大部分の、微細部分に対する質量比は、1.5以上20以下であり、且つ粗大部分の、微細部分に対するメジアン径の比は、12超である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子混合物、及びその混合物を用いて多孔質構造体、例えば触媒担体又は粒子フィルターを製造する方法に関する。そのフィルター部及び/又は活性部を構成する材料は、チタン酸アルミニウムに基づいている。本発明によるセラミックフィルター又はセラミック担体の主成分を形成するセラミック材料は、主にチタン酸アルミニウムAlTiO(擬板チタン石(Pseudobrookite))型の形態のAl元素及びTi元素の酸化物から、主に形成される。また、本発明は、そのような方法から得られるハニカム多孔質構造体、特に触媒担体又は粒子フィルター、特にディーゼル型内燃機関の排気ラインで用いられる触媒担体又は粒子フィルターに関する。これらの特性は改良されている。
【0002】
以下の記載では、ガソリン内燃機関又はディーゼル内燃機関からの排気ガスに含まれる汚染物質を除去するためのフィルター又は触媒担体の特定の分野(本発明が関連する分野)における用途及び利点が述べられる。現時点では、排気ガスを浄化する構造体は、全て一般的にハニカム構造を有する。
【背景技術】
【0003】
周知のように、粒子フィルターは、その使用中に、一連のろ過段階(ススの蓄積)と、再生段階(ススの除去)とにさらされる。ろ過段階の間に、エンジンから放出されるスス粒子は、フィルター内に保持され、そして堆積される。再生段階の間には、ろ過特性を回復させるために、スス粒子をフィルター内で燃焼させる。それゆえ、フィルターを構成する材料の低温と高温の両方の機械的強度特性が、この用途に関して最重要である。同様に、この材料は、特に再生段階が制御不十分な場合には、局所的に1000℃を優に超えて上昇することがある温度に、特に装備する車両の全耐用期間にわたって耐えるために、十分に安定且つ耐久性がある構造を有する必要がある。
【0004】
現時点では、フィルター及び担体は、多孔質セラミック材料、特に炭化ケイ素又はコージライトで主に作られる。炭化ケイ素フィルターは、例えば特許文献1〜5に記載されている。このようなフィルターは、優れた熱伝導性を有し、且つ内燃機関からのススをろ過する用途に関して理想的である気孔率特性(特に平均気孔径及び気孔径の分布)を有する化学的に不活性なフィルター構造を得ることを可能とする。しかし、この材料に特有のいくつかの欠点が、未だ存在している:第一の欠点は、大きな一体の(monolithic)フィルターを製造することを不可能にする、SiCのいくぶん高い熱膨張率(3×10−6−1超)に起因している。これは、フィルターを複数のハニカム部品に分けて、接着剤によって共に接合することを頻繁に必要とする(例えば、特許文献3に記載されている)。第二の欠点は、経済的な性質であり、典型的には2100℃超となる、極めて高い焼成温度に起因する。この焼結は、ハニカム構造体の十分な熱力学的強度を、特にフィルターの継続的な再生段階の間に保証する。そのような温度は、特別な装置の導入を必要とし、これは、最終的に得られるフィルターのコストをかなり増加させる。
【0005】
他の一観点から、コージライトフィルターが知られており、また、その低いコストにより、長い間用いられてきた。しかしながら、特にフィルターがコージライトの融点よりも高い温度に局所的にさらされる場合がある制御不十分な再生サイクルの間に、その構造体に問題が発生する場合があることが現在知られている。これらのホットスポット(hot spot)の結果は、フィルターの効率の一部のロスから、最も深刻な場合でその完全な破壊にまで至る場合がある。その上、コージライトの化学的不活性は、継続的な再生サイクルの間に達する温度で不十分であり、結果的に、フィルター段階の間に構造体中に蓄積した塩基及び他の金属と反応する傾向があり、且つこれらによって侵食される傾向がある。この現象は、その構造体の特性の急速な悪化の原因となる場合がある。
【0006】
例えば、そのような欠点は、特許文献6に記載されており、これは、それら欠点を改善するために、ムライト(10〜40wt%)によって補強された、チタン酸アルミニウム(60〜90wt%)に基づくフィルターを提案している。このフィルターの耐久性は、改良されている。
【0007】
しかし、出願人によって行われた実験は、自動車排気ライン中の触媒担体又は粒子フィルターとしての用途で直接的に有用とするのに適切な熱安定性、機械的強度特性、及び熱力学的強度特性を保証しながら、チタン酸アルミニウム型の多孔質材料に基づくそのような構造体の性能を保証すること、特に最終的に得られる多孔質フィルター材料の気孔率の水準を制御することが、現時点で難しいことを示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第816065号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1142619号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1455923号
【特許文献4】国際公開WO2004/090294号
【特許文献5】国際公開WO2004/065088号
【特許文献6】国際公開WO2004/01124号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、本発明の目的は、制御された気孔率を有し、且つフィルターのフィルター部又は触媒担体の活性部のための主材料として用いることが可能な材料、及びその製造方法を提供することである。
【0010】
その材料は、チタン酸アルミニウム型の酸化物材料を主に含み、又はこの酸化物材料からなる。そして、自動車の排気ラインで現在用いられている触媒担体又は粒子フィルター型のハニカム多孔質構造体の分野で、有利に用いられることが可能な上述したような特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
最も一般的な形態では、本発明は、少なくともチタン及びアルミニウムを含有する擬板チタン石型の酸化物相を主に含む粒子混合物、又はこの酸化物相からなる粒子混合物に関連する。この混合物は、次の少なくとも二つの粒径部分から得られる:
−メジアン径d50が12μm超である、粗大粒径部分;及び
−メジアン径d50が0.5〜3μmである、微細粒径部分。
ここで粗大部分の、微細部分に対する質量比は、1.5以上20以下であり、粗大部分のメジアン径の、微細部分のメジアン径に対する比は、12超である。
【0012】
例えば、その粒子混合物において、少なくともいくつかの粒子は、少なくともチタン及びアルミニウムを含有する擬板チタン石型の酸化物相からなる主相、並びに少なくとも一つの第二相(secondary phase)を有し、その第二相は、ガラス状相及び/又は酸化チタンTiOから本質的になる相である。
【0013】
その擬板チタン石型の酸化物相は、チタン酸アルミニウム型の相が次の式をおおよそ満たすような割合で、チタン、アルミニウム、並びに任意的にマグネシウム及び/又はジルコニウムを含有することができる:
(AlTiO(MgTi(MgTiZrO
(ここで、0.1≦x<1;0<y≦0.9;及びz=1−x−yである)。
【0014】
典型的には、この式において:0.70≦x<1、且つ0<y≦0.3、好ましくは0.80≦x<1、且つ0<y≦0.2である。
【0015】
一つの有利な実施態様によると、粗大粒径部分は、15μm超のメジアン径d50を有する。
【0016】
例えば、粗大粒径部分は、100μm未満、好ましくは80μm未満、さらに好ましくは50μm未満、さらには40μm未満、さらには38μm未満、さらには35μm未満のメジアン径d50を有する。
【0017】
好ましい実施態様によると、粗大部分の微細部分に対する質量比は、1.5〜5、特には1.5〜4である。
【0018】
粗大部分のメジアン径の、微細部分のメジアン径に対する比は、例えば15超である。特に、粗大部分のメジアン径の、微細部分のメジアン径に対する比が、50未満、またさらには45未満、またさらには40未満である場合に、良好な結果が得られた。例えば、この比は、20以上25以下とすることができる。
【0019】
本明細書が不必要に負担とならないように、上述したような、本発明による粒子部分及びその混合物を特徴とする様々な好ましい実施態様の間の、本発明による全ての可能な組み合わせは、報告しない。しかし、上述したような初期の、且つ/又は好ましい範囲及び値の全ての可能な組み合わせは想定することができ、且つ本明細書の文脈の範囲内に出願人によって記載されていると解釈されなければならないことが明らかである(特に2、3又はそれよりも多くの組み合わせ)。
【0020】
また、本発明は、触媒担体又はハニカム粒子フィルターを、上述したような粒子混合物から製造する方法にも関連し、これは次の主なステップを有する:
a)粗大部分及び微細部分を、共に混合するステップ;
b)その粒子混合物を、メチルセルロース型の有機バインダー及び任意的に気孔形成剤、並びにステップc)を実行するための可塑性を得るのに十分な量の水の存在下で、混合するステップ
c)ダイを通じて未焼成ハニカム構造体を押し出すステップ;及び
d)1300℃〜1800℃の温度で上記構造体を焼成するステップ。
【0021】
また、本発明は、上述したような方法によって得ることができ、少なくともチタン及びアルミニウムを含む擬板チタン石型の酸化物相を主に含む又はこの酸化物相からなる触媒担体に関する。
【0022】
最終的に、本発明は、上述したような方法により得られ、そのフィルター部が、少なくともチタン及びアルミニウムを含む擬板チタン石型の酸化物相を主に含む、又はこの酸化物相からなる粒子フィルター、又は触媒性粒子フィルターに関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第一の実施態様によると、その多孔質材料は、単純酸化物であるAl、TiO、及び擬板チタン石構造AlTiOを形成することができる他の元素の酸化物、例えば固溶体の形の酸化物から得られる。そのような材料は、典型的には酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化鉄、又は他の元素の酸化物である。この混合物を焼結する。すなわちAlTiO型の構造を有する少なくとも一つの主相を含む焼結された粒子を形成するようにして単純酸化物を反応させることができる温度に、この混合物を加熱する。
【0024】
あるいは、本発明によると、前記単純酸化物の代わりに、前記酸化物のあらゆる前駆体を、例えば炭酸塩、水酸化物、又は上記元素の他の有機金属の形態で使用することもできる。用語「前駆体」は、熱処理、すなわち典型的には1000℃未満、800℃未満、さらに500℃未満の加熱温度での熱処理のたいてい前の段階に対応する単純酸化物に分解する材料を意味すると理解される。上述したように、前駆体の混合物を焼結する。すなわち、AlTiO型の構造を有する少なくとも一つの主相を有する粒子を形成するように前駆体が反応できる温度に、この混合物を加熱する。
【0025】
本発明の他の一つの可能な実施態様によると、本発明による材料は、酸化物であるAl、TiO、及び任意的にMgO、ZrO、SiO又は他の酸化物(又はこれらの前駆体)の事前溶融により得られる粒子から合成される。
【0026】
例えば、本発明によると、粒子は、溶融キャスト法(fused casting method)によって得られ、これは、高い収率及び非常に良好な価格/性能比で大量生産を可能とする。
【0027】
粒子の製造のための連続的な溶融キャストステップは、例えば次の通りである:
a)開始分量を形成するために原料を混合するステップ;
b)溶融液を得るために開始分量を溶融するステップ;
c)溶融液を冷却して、それにより溶融液を完全に固化するステップ(この冷却は、例えば三分未満で素早く行うことができる);及び
d)任意的に、その固形体を、粒子混合物を得るために粉砕するステップ。
【0028】
もちろん、本発明の範囲から離れることなく、開始分量の組成が、本発明の粒子の組成に一致する組成を有する粒子を得ることを可能とするならば、溶融キャスト粒子を製造するための任意の他の従来の、又は公知の方法を、使用することができる。
【0029】
ステップb)において、電気アーク炉が好ましくは用いられるが、開始分量を完全に溶融するならば、任意の公知の炉、例えば誘導炉、プラズマ炉を想定することができる。焼成は、好ましくは不活性条件下、例えばアルゴン下、又は酸化条件下において、好ましくは大気圧で行われる。
【0030】
ステップc)において、冷却は、必要ではないが好ましくは、素早く、すなわち溶融液体が3分未満で完全に固化されるような方法で行う。好ましくは、冷却は、米国特許第3993119号に記載されたようなCSモールド中でのキャストから、又は急冷操作によって行われる。
【0031】
ステップd)において、固形体は、従来技術を用いて、本発明の粒子径が得られるまで粉砕される。
【0032】
本発明の初期粒子混合物から上記の構造体を製造する一つの方法は、一般的に次のとおりである:
第一に、上述したような焼結又は溶融キャストにより得られる粒子を混合する。本発明では、溶融キャスト粒子を、本発明の意味内において適切な粒径を有するように粉砕していた。本分野で周知の方法で、この製造方法は、典型的には、初期粒子混合物と、メチルセルロース型の有機バインダー、及び気孔形成剤(例えば、でんぷん、グラファイト、ポリエチレン、PMMA等)とを混合するステップ、並びにハニカム構造体を押し出すステップを可能とするのに必要な可塑性が得られるまで、水を段階的に添加するステップを含む。
【0033】
例えば、第一ステップの間に、粒子混同物を、所望の気孔径により選択される1〜30wt%の少なくとも一種の気孔形成剤と混合し、そして少なくとも一種の有機可塑剤、及び/又は有機バインダー、並びに水を添加する。
【0034】
混合は、ペーストの形態の均質生成物をもたらす。適切な形状のダイを通じてこの生成物を押し出すステップは、周知の技術を使用して、ハニカム形状のモノリス(monolith)を得ることを可能とする。例えば、この方法は、得られたモノリスを乾燥させるステップを含むことができる。乾燥ステップの間、得られた未焼成セラミックモノリスは、典型的には、マイクロ波乾燥、又は熱乾燥によって、化学的に結合していない水の含有量を1wt%未満とするのに十分な時間で乾燥させることができる。粒子フィルターを得ることを望む場合、この方法は、さらにモノリスの各端部で一つおきの流路を塞ぐステップをさらに含むことができる。
【0035】
フィルター部がチタン酸アルミニウムに基づくモノリスを焼成するステップは、原則的には、1300℃超であるが1800℃を超えない温度、好ましくは1750℃を超えない温度で実行される。この温度は、特に多孔質材料中に存在する他の相、及び/又は酸化物によって、調整される。通常は、焼成ステップの間に、モノリス構造体は、酸素又は不活性ガスを有する雰囲気で、1300℃〜1600℃の間の温度に加熱される。
【0036】
本発明の利点の一つは、SiCフィルター(上述したようなもの)とは異なり、分割の必要性がなく非常に大きなサイズのモノリス構造体を得る可能性にある。ただし、好ましくはないが、一つの実施態様では、この方法は、周知の技術、例えば欧州特許出願公開第816065号に記載された技術を用いて組み立てられるフィルター構造に、モノリスを組み立てるステップを任意的に含む場合がある。
【0037】
本発明によるフィルター構造、又は多孔質セラミック材料製の構造体は、好ましくはハニカム型のものである。これは、一般的に20〜65%、好ましくは30〜50%の適切な気孔率を有し、この平均気孔径は、理想的には10〜20μmである。
【0038】
このようなフィルター構造体は、典型的には、多孔質材料によって形成された壁によって隔てられた、相互に平行な軸を有する多くの隣接した導管又は流路を有する。
【0039】
粒子フィルターにおいて、導管は、流入面に開いた入口チャンバーを画定し、且つ流出面に開いた出口チャンバーを画定するように、その端部の一方又は他方で、栓によって閉じられ、このようにしてガスが多孔質の壁を通り抜けるようにされている。
【0040】
また、本発明は、上述したような構造体から、担持された又は好ましくは担持されない少なくとも一つの活性触媒相を堆積させること(好ましくは含浸させること)によって得られるフィルター又は触媒担体に関する。その活性触媒相は、典型的には、少なくとも一つの貴金属、例えばPt、Rh、及び/又はPd、並びに任意的に酸化物、例えばCeO、ZrO、CeO−ZrOを有する。触媒担体も、ハニカム構造を有するが、導管は、栓によって塞がれず、且つ触媒は、流路の気孔に堆積されている。
【0041】
本発明及びその利点は、次の非限定的な実施例を読むことでより一層理解されるであろう。この実施例において、言及されない限り、全てのパーセントは、重量%で与えられる。
【実施例】
【0042】
全ての実施例において、パーセントは、全てwt%で与えられる。試験片を、次の原料から調整した:
−99.5%超の純度、及び90μmのメジアン径d50を有する約40wt%のアルミナ(AR75(商標)、Pechiney社により販売されている);
−95wt%超のTiO及び約1%のジルコニアを含有し、且つ約120μmのメジアン径d50を有する、約50wt%のルチル形のTiO(Europe Minerals社により販売されている);
−99.5%超の純度、及び208μmのメジアン径d50を有する約5wt%のSiO(SIFRACO社により販売されている);及び
−98%超の純度を有し、且つ80%超の粒子が0.25〜1mmの直径を有する約4wt%のMgO(Nedmag社により販売されている)。
【0043】
初期反応性酸化物の混合物を、大気中で、酸化電気条件(oxidizing electrical condition)において、電気アーク炉で溶融した。溶融した混合物を、素早く冷却させるためにCSモールドにキャストした。その得られた生成体を、粉砕して、様々な粒径部分を有する粉体を得るために篩分けした。より正確には、粉砕及び篩分けを、4つの粒径部分、すなわち下記の粒径部分を最終的に得るための条件下で実行した:
−本発明において用語「粗大部分」で示される、約30μmのメジアン径d50によって特徴付けられる粒径部分;
−本発明において用語「粗大部分」で示される、約16μmのメジアン径d50によって特徴付けられる粒径部分;
−本発明において用語「微細部分」で示される、約1.5μmのメジアン径d50によって特徴付けられる粒径部分;及び
−本発明において用語「微細部分」で示される、約0.7μmのメジアン径d50によって特徴付けられる粒径部分。
【0044】
この記載の文脈の範囲で、メジアン径d50は、液相沈降法(セディグラフィ:sedigraphy)で測定された粒子の直径であって、これより小さい粒子が母集団の体積で50%存在する直径を意味する。
【0045】
マイクロプローブ解析は、そうして得られた溶融した相の全ての粒子が、酸化物の重量%で、次の組成を有していたことを示した。
【0046】
【表1】

【0047】
粒子内に存在する相の組成及び性質も解析し、その解析の結果を表2に示した。これらの結果に基づくと、各相の重量%を計算によって推算することが可能であった。得られたデータに基づくと、主相AMTZに関して、特に元素Mg及びZrを組み込むAlTiO型の固溶体の形態である、擬板チタン石(AlTiO(MgTi(MgTiZrO構造の一般式に対応するx及びyの値を決定することもできる。
【0048】
【表2】

【0049】
表2において:
1)耐火性生成物中に存在する結晶相を、X線回折によって特徴付けた。表2において、AMTZは、(AlTiO(MgTi(MgTiZrO型の固溶体を示し(ここで、Z=1−x−y)、P2は、二番目の副相に相当し、Psは、追加のケイ酸塩相の存在を示す。
2)酸化物に基づく重量%で示した、様々な相の化学的組成を、蛍光X線によって測定した。
【0050】
触媒担体及び/又は粒子フィルターとしての用途における、本発明の方法によって得られる材料に基づく多孔質構造体の特性及び利点を研究するために、またそれらを上述したもの、及び/又は本発明の基準を満たさないものと比較するために、様々な試験片を、得られた溶融粒子部分から調製した。
【0051】
多孔質セラミック材料の棒を、典型的には次の方法で得た:一以上の粒径部分を、4wt%のメチルセルロース型の有機バインダー、及び15wt%の気孔形成剤と混合した。水を、断面8mm×6mm及び長さ70mmの棒の形態で試験片を押し出すことを可能とする可塑性を有する均質ペーストが得られるまで、水を添加し、混合した。この棒を、その後4時間1450℃で焼結した。
【0052】
これらの試験片について、「粒子フィルター」用途における多孔質材料の値を推算するために、曲げ破壊係数MOR(modulus of rupture)、多孔質特性、及び焼結時の収縮を、そうして得られた多孔質の棒について測定した。
【0053】
典型的な気孔率の特性化(全体の開孔気孔率及びメジアン気孔径)は、9500ポロシメーター(Micromeritics社製)を用いて周知技術である高圧水銀圧入法(high−pressure mercury porosimetry)によって測定した。
【0054】
焼結時の収縮は、1450℃での焼結後の試験片の寸法変化を表す。より正確には、本発明において、用語「焼結時の収縮」は、低温まで、すなわち400℃未満の温度まで、特に室温まで持続する、材料の断面の2つの寸法のそれぞれに沿った、平均の減少を意味すると理解される。表4において示した収縮の値は、その各寸法に対して、焼結前の棒の初期寸法のパーセントとして表わされた、2つの寸法に対する平均の収縮に相当する。この特性は、多孔質構造体の製造方法の実現可能性を評価するために、極めて重要である。特に、大きな焼結時の収縮は、産業的なスケールアップ時に、特に許容可能な再現性で得ることに関して、この材料から形成されたハニカムが、大きな困難にさらされるであろうことを意味する。これは、特に自動車の排気ラインにおいて、それら材料をあらゆる困難がなく用いることを可能とするように十分な精密性を保証することができる寸法特性を持つ構造体では、特に困難となる。
【0055】
曲げ破壊係数(MOR)を、前もって得られた60mm×6mm×8mmの多孔質棒についての3点曲げ試験において、室温で測定した。
【0056】
得られた全ての結果を、表4に与える。
【0057】
また、粒径部分の同じ混合物を用いて、ダイを通じた押し出しによってハニカムのモノリスを得た。そのモノリスの寸法を、表3に与える。
【0058】
【表3】

【0059】
ハニカム押し出し構造体内の材料の分布の均一性をチェックする目的で、得られた未焼成モノリスを切断し、そして試験した。
【0060】
また、押し出しの容易性を、その材料の直径2mmのスパゲッティのダイを通す押し出しに必要とする流れ圧力を測定することによって評価した。
【0061】
上記二つのパラメーター(すなわち、ハニカム押し出し構造体内の材料の分布の均一性、及びスパゲッティを押し出すための流れ圧力)に依存して、粒子混合物を押し出すことの可能性(又は不可能性)を求めた。混合物の「押し出し性」解析の結果を、表4に与える。
【0062】
【表4】

【0063】
表4において、例1及び2は、比較のために与えた。これら二つの例では、材料を、粗大部分の初期混合物によってのみ与えた。そのような場合に、表4に示したように、多孔質ハニカム構造体を許容可能には押し出すことができなかった。さらに、その棒について得られたMOR値は低い。
【0064】
また比較のために与えた例7は、粗大部分及び微細部分の2つの部分を用いるが、その粗大部分と微細部分のメジアン径の比が12未満である場合には、形成の問題、そして特に押し出しの問題が起こることを示している。
【0065】
表3に与えた結果は、本発明による実施例3〜6が、排気ライン中の多孔質触媒構造体及び/又はフィルターとしての用途に関して、材料をそのような用途で使用困難に又は使用不能にさせない程度に、その本質的な特性のいずれもが劣化しない材料及び生成物をもたらすことを示す。
【0066】
例8は、3つの粒径部分を用いた実施態様を例証する(本発明による粗大部分及び微細部分に中間サイズ部分を添加したもの)。特に、表4は、請求項に定義されたような本発明による粒子混合物のみが、次の材料を得ることを可能とすることを示している:
1)上記用途向けに簡単に形成することができる材料、すなわちハニカム構造に簡単に押し出すことができる材料;及び
2)機械的強度、気孔率、及び上記用途に適合する安定性(収縮)特性を兼ね備えた材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともチタン及びアルミニウムを含有する擬板チタン石型の酸化物相を主に含む又は前記酸化物相からなる粒子混合物であって、次の少なくとも二つの粒径部分から得られる、粒子混合物:
−メジアン径d50が12μm超である、粗大粒径部分;及び
−メジアン径d50が0.5〜3μmである、微細粒径部分;
(ここで、前記粗大部分の、前記微細部分に対する質量比は、1.5以上20以下であり、且つ前記粗大部分のメジアン径の、前記微細部分のメジアン径に対する比は、12超である)。
【請求項2】
少なくともいくつかの前記粒子が、少なくともチタン及びアルミニウムを含有する前記擬板チタン石型の酸化物相からなる主相、並びに少なくとも一つの第二相を有し、前記第二相が、ガラス状相及び/又は酸化チタンTiOから本質的になる相である、請求項1に記載の粒子混合物。
【請求項3】
前記擬板チタン石型の酸化物相が、前記チタン酸アルミニウム型の相が次の式をおおよそ満たすような割合で、チタン、アルミニウム、並びに任意的にマグネシウム及び/又はジルコニウムを含有する、請求項1又は2に記載の粒子混合物:
(AlTiO(MgTi(MgTiZrO1−x−y
(ここで、0.1≦x<1;0<y≦0.9;及びz=1−x−yである)。
【請求項4】
前記粗大粒径部分が、15μm超のメジアン径d50を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子混合物。
【請求項5】
前記粗大粒径部分が、100μm未満、好ましくは80μm未満、さらに好ましくは50μm未満のメジアン径d50を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子混合物。
【請求項6】
前記粗大部分の、前記微細部分に対する質量比が、1.5〜5である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子混合物。
【請求項7】
前記粗大部分のメジアン径の、微細部分のメジアン径に対する比が、15超、好ましくは20以上25以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粒子混合物。
【請求項8】
触媒担体又はハニカム粒子フィルターを、請求項1〜7のいずれか一項に記載の粒子混合物から製造する方法であって、次の主なステップを含む方法:
a)前記粗大部分及び前記微細部分を、共に混合するステップ;
b)前記粒子混合物を、メチルセルロース型の有機バインダー及び任意的に気孔形成剤、並びにステップc)を実行するための可塑性を得るのに十分な量の水の存在下で混合するステップ
c)ダイを通じて未焼成ハニカム構造体を押し出すステップ;及び
d)1300℃〜1800℃の温度で前記構造体を焼成するステップ。
【請求項9】
少なくともチタン及びアルミニウムを含有する擬板チタン石型の酸化物相を主に含む又は前記酸化物相からなる、請求項8に記載の方法によって得ることができる触媒担体。
【請求項10】
フィルター部が、少なくともチタン及びアルミニウムを含有する擬板チタン石型の酸化物相を主に含む又は前記酸化物相からなる、請求項8に記載の方法によって得ることができる粒子フィルター、場合によっては触媒性粒子フィルター。

【公表番号】特表2011−526573(P2011−526573A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515575(P2011−515575)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051292
【国際公開番号】WO2010/001062
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(310009890)サン−ゴバン サントル ドゥ ルシェルシェ エ デトゥードゥ ユーロペン (24)
【Fターム(参考)】