説明

チップ型エネルギーデバイス

【課題】高出力、かつ低内部抵抗のチップ型エネルギーデバイスを提供する。
【解決手段】正負極の活物質電極10,12と正負極の引き出し電極32a,32bとが一体に形成された電極の活物質電極部分にセパレータ30を介在させながら、引き出し電極部分が露出するように、かつ電極の正電極と負電極とが交互に積層されるように積層した2層以上の積層体80と、積層体を収容し、引き出し電極に接続された端子電極50,52を外部に引き出すための貫通孔63,64を形成した枠材60と、枠材の上面を封止する蓋70と、枠材の下面と貫通孔とを封止して積層体の積層部分に電解質を含有させる封止部72とを備える。前記蓋70を前記枠材60の内側に凹ませて積層体80を押さえ込むように形成する。樹脂モールドで外装を被覆して、樹脂モールド82と蓋70aの凹部との間に空間部71を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型エネルギーデバイスに関する。より具体的には、バックアップ用電源、マイクロエナジー用蓄電素子、カップリング用コンデンサ、平滑用コンデンサなどに有用なチップ型エネルギーデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
チップ型エネルギーデバイスの1つとして従来のチップ型蓄電デバイスは、1対のバルク状の正負極の活物質電極にセパレータを挿入した電極構造体を、セラミック構造体のパッケージに収容して封止するという単純な構造を有していた。しかしながら、比較的厚い(比表面積の高い)活物質電極を用いていたので、内部抵抗が高いという問題を抱えていた。
【0003】
また、小型のチップ型蓄電デバイスとしては、コイン型電池やボタン型電池のような円形のチップ型蓄電デバイスが知られているが、同様に電極構造体として1対(又は電圧を上げるために2対)の比較的厚い(比表面積の高い)活物質電極をかしめるので、やはり内部抵抗が高いという問題を抱えていた。
【0004】
また、コイン型電池やボタン型電池のようなチップ型蓄電デバイスは、円形状であるので、角型形状のものに比べて実装面積が小さく、小型化に限界があった。
【0005】
更に、従来のチップ型蓄電デバイスは、電極構造体を先に電解液に含侵されせからパッケージに収容するので、特にチップ型の場合に有機系シール材を用いて封止する際に、電解液に溶出してしまい、特性が劣化する恐れがあった。
【0006】
これらに関連して、例えば、コイン型やボタン型のような円形の非水電解質電池および電気二重層キャパシタにおいて、接続端子を収納容器と一体化し、容器下部に配置することにより、基板上のスペースを削減することを可能にした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
一方、凹部の底面から開口縁部にかけて導電膜を形成することにより、集電体と外部電極との接続を簡単かつ低コストで行うことができ、更に、リードフレームやビア等を使用しないので、容器の密閉性を確保することができる電気化学セルを提供する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、分極性電極の水分を十分除去し、且つ集電体との接合を強固に維持することにより、充放電の繰り返しや高電圧によるフローティング充電による内部抵抗の増加が小さく、長期的な信頼性の高い電気二重層キャパシタを提供する技術が開示されている。(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
更に、熱可塑性樹脂で、且つ素材成形品から樹脂の融点以下で熱圧縮成形したガスケットを使用したコイン型電気二重層キャパシタを作製することで、リフローはんだ付けにおいて耐漏液性の高く信頼性の高いコイン型電気二重層キャパシタを提供する技術も開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−216952号公報
【特許文献2】特開2010−192874号公報
【特許文献3】特開2008−211116号公報
【特許文献4】特開2002−050551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、チップ型エネルギーデバイスにおいても、高出力を得ることができ、内部抵抗を下げることができるチップ型エネルギーデバイスを提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、密着性を高めることができ、例えば劣化等の電解液への影響を抑えることができ、高い強度を有するパッケージに封止されたチップ型エネルギーデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、(a)正負極の活物質電極と正負極の引き出し電極とが一体に形成された電極の前記活物質電極部分にセパレータを介在させながら、前記引き出し電極部分が露出するように、かつ前記電極の正電極と負電極とが交互に積層されるように積層した2層以上の積層体と、(b)前記積層体を収容し、前記引き出し電極に接続された端子電極を外部に引き出すための貫通孔を形成した枠材と、(c)前記枠材の上面を封止する蓋と、(d)前記枠材の下面と前記貫通孔とを封止して前記積層体の積層部分に電解質を含有させる封止部とを備えるチップ型エネルギーデバイスが提供される。
【0014】
他の態様によれば、(a)正負極の活物質電極と正負極の引き出し電極とが一体に形成された電極の前記活物質電極部分にセパレータを介在させながら、前記引き出し電極部分が露出するように、かつ前記電極の正電極と負電極とが交互に積層されるように積層した2層以上の積層体と、(b)前記引き出し電極に接続された端子電極を外部に引き出し、かつ前記電解質を含む電解液を注入するための注入孔を兼ねる貫通孔を形成した、前記積層体を載置する台と、(c)前記台に載置された前記積層体を収容する枠材と、(d)前記枠材の上面を封止する蓋とを備えるチップ型エネルギーデバイスが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、チップ型エネルギーデバイスにおいても、高出力を得ることができ、内部抵抗を下げることができるチップ型エネルギーデバイスを提供することができる。
【0016】
また、本発明によれば、密着性を高めることができ、例えば劣化等の電解液への影響を抑えることができ、高い強度を有するパッケージに封止されたチップ型エネルギーデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイスに用いられる活物質電極および引き出し電極の材料を例示する図であって、(a)活物質電極として用いる部分のみに活物質を塗布したアルミ箔の斜視図、(b)図1(a)に示したアルミ箔を短冊状に切断した様子を示す斜視図。
【図2】図1(b)に示した部分的に活物質を塗布したアルミ箔にセパレータを挿入しながら、活物質を塗っていない部分が引き出し電極として露出するように、正負交互に積層した積層体を例示する図であって、(a)積層構造体の上面図、(b)図2(a)のI−I線に沿った断面図。
【図3】図2に示した積層体の引き出し電極にタブ電極を溶接した内部電極構造体を例示する断面図。
【図4】(a)図3に示した内部電極構造体を収容するための収納凹部を有するセラミック枠材を例示する上面図、(b)図3(a)のII−II線に沿った断面図であって、セラミックパッケージの収納凹部に内部電極構造体を収容した例をす断面図。
【図5】図4に示したチップの上面に金属の蓋をし、底面をセラミック接着剤でふさいで作製したチップの例を示す断面図。
【図6】図5に示したチップの上面及び下面にプレス機を設置した例を示す断面図。
【図7】図6に示したプレス機で上下からチップに圧をかけた例を示す断面図。
【図8】図7に示した圧をかけられたチップからプレス機を取り外した図であって、(a)プレス機を取り外したチップを例示する斜視図、(b)図8(a)のIII−III線に沿った断面図。
【図9】図8に示したチップの底面からセラミックス接着剤を剥がした例を示す断面図。
【図10】図9に示したチップを電解液浴槽に浸けた例を示す断面図。
【図11】図10に示した電解液浴槽から引き揚げたチップの底面を接着剤でふさぎ、外装をモールドして、完成させたチップ型エネルギーデバイスの例を示す断面図。
【図12】第2の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイスに用いられる内部電極構造体を例示する図であって、(a)図3に例示した内部電極構造体の底面にセラミック台を接着させた例を示す断面図、(b)図12(a)のIV−IV線に沿った断面図。
【図13】図12に示した内部電極構造をセラミック枠材の凹部に収容し、セラミックパッケージの上面に金属の蓋をして作製したチップの図。
【図14】図13に示したチップの上面及び下面にプレス機を設置した例を示す断面図。
【図15】図14に示したプレス機で上下からチップに圧をかけた例を示す断面図。
【図16】図15に示した圧をかけられたチップからプレス機を取り外した例を示す断面図。
【図17】図16に示したチップを電解液浴槽に浸けた例を示す断面図。
【図18】図17に示した電解液浴槽から引き揚げたチップの外装をモールドして、完成させたチップ型エネルギーデバイスの例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0019】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0020】
[第1の実施の形態]
(チップ型エネルギーデバイスの基本構造)
図1〜図11に示すように、第1の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイスは、正負極の活物質電極10,12と正負極の引き出し電極32a,32bとが一体に形成された電極の活物質電極部分10,12にセパレータ30を介在させながら、引き出し電極32a,32b部分が露出するように、かつ電極の正電極と負電極とが交互に積層されるように積層した2層以上の積層体80と、積層体80を収容し、引き出し電極32a,32bに接続された端子電極を外部に引き出すための貫通孔63,64を形成した枠材60と、枠材60の上面を封止する蓋70と、枠材60の下面と貫通孔63,64とを封止して積層体80の積層部分に電解質を含有させる封止部72とを備える。
【0021】
第1の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイスは、端子電極50,52を通すための貫通孔63,64と内部電極構造体80を収納するための収納凹部とを設けた(例えば、セラミック製の)枠材60内に、内部電極構造体80を収納して構成される。
【0022】
内部電極構造体(例えば蓄電素子)80は、図2に例示するように、少なくとも2層以上の活物質電極10,12に、電解液のイオンのみが通過するセパレータ30を介在させながら、引き出し電極32(32a,32b)が露出するように、かつ正電極10と負電極12とが交互になるように積層した積層体で構成される。活物質電極10,12及び引き出し電極は、図1(a)に例示するように、電極板(例えばアルミ箔)上面のうち、例えば活性炭からなる活物質を塗布した部分が活物質電極10,12(正極側の活物質電極12、負極側の活物質電極12)として用いられ、電極板上面のうち活物質(活性炭)を塗布していない部分が引き出し電極32(正極側の引き出し電極32b、負極側の引き出し電極32a)として用いられることになる。更に、図1(b)に例示するように、このアルミ箔は短冊状に切断される。短冊状に切断された各々の電極板は、活物質電極10,12および引き出し電極32とを含む電極としてそれぞれ用いられる。電極板の材料として高出力アルミニウム電極シートを用いることで、チップ型のエネルギーデバイスでも高出力が得られる。
【0023】
セパレータ30は、図2(a)に例示するように、活物質電極10,12全体を覆うように、活物質電極10,12よりも大きいもの(面積の広いもの)を用い、更に、図2(b)に例示するように、積層体の最上部(及び最下部)には、電極ではなく、セパレータ30が積層されるように積層する。セパレータ30は、エネルギーデバイスの種類には原理的に依存しないが、特にリフロー対応が必要とされる場合には、耐熱性が要求される。耐熱性が必要ない場合にはポリプロピレン等を、耐熱性が必要な場合にはセルロース系のものを用いることができる。
【0024】
積層体から露出されている引き出し電極32a,32bは、図3に例示するように、タブ電極34a,34bに直接溶接される。そして、図4に例示するように、タブ電極34a,34bから延伸する端子電極50,52は、貫通孔63,64を通して、枠材60の外部に引き出すことができるので、内部電極構造体80に端子電極50,52を直接接続できる。これにより、チップ内の電極構造体80の内部抵抗を低減することが容易になる。枠材60には、電解液42を含侵させるための注入孔を設ける必要があるが、電解液42を含侵させるための注入孔を、端子電極50,52を通すための貫通孔63,64により兼用させることもできる。各貫通孔63,64と引き出された端子電極50,52との間には、少なくとも電解液42を通すのに最低限必要な間隙がそれぞれ設けられている。更に、枠材60は、内部電極構造体80を収納するための収納凹部を具備している。
【0025】
枠材60の上面には、図5に例示するように、金属製の蓋70が、(例えば、耐薬品性のセラミックの)接着剤68により接着載置される。そして、図6〜図9に例示するように、内部電極構造体80の密着を図るために、枠材60の上面に設置された金属製の蓋70をプレス機70a,70bにより機械的に押圧して乾燥させることで、金属製の蓋70は内側に凹状に凹む。凹状に凹んだ金属製の蓋70aは、過電圧が印加された際に発生する気体(ガス)によってチップ内圧が上昇した場合でも、内部電極構造体80等が破壊されることを防止する。更に、この凹状構造により、チップ内に収容されている内部電極構造体80を押さえ込み、内部電極構造体80の内部抵抗の低減を実現する。
【0026】
図10に例示するように、蓋70aを凹状に凹まされたチップは、電解液42を含侵させるために、電解液42が入った電解液浴槽40に浸けられる。チップ内に含侵された電解液42が触れる封止部(すなわち、電解液42が漏れないようにするための封止部)には、図11に例示するように、(例えば、耐薬品性のセラミックの)接着剤72を用い、それにより電解液42の劣化等の影響を抑える。また、電解液42を含侵させた貫通孔63,64も、耐薬品性のセラミックの接着剤72で再度封止される。更に、接着剤72(及び接着剤68)による封止部は、機械的に弱い特性があるので、封止部を補強させるために、図11に例示するように、樹脂モールド82でチップの外装を被覆し、接着剤72と樹脂モールド82との2層による封止構造を有するパッケージとする。
【0027】
尚、チップの外装を樹脂モールド82で被覆する際には、内側に凹んだ蓋70aの凹部と樹脂モールド82との間に、図11に例示するような所定の空間部71が生じるように被覆する封止構造とする。つまり、蓋70aの凹部の空間部71を樹脂モールド82によって詰めてしまわないように、チップの外装を被覆する。これにより、過電圧が印加された際に発生する気体(ガス)によってチップ内圧が上昇した場合でも、凹状の蓋70aが上方向に膨らむ余裕(すなわち、蓋70aの凹んだ部分が凹む前の状態に復元するだけの余裕)があるので、内部電極構造体80等が破壊されることを防止できる。
【0028】
(チップ型エネルギーデバイスの製造方法)
図1〜図11を参照して、第1の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイスの製造方法を説明する。
【0029】
(a)まず、図1(a)に例示するように、例えばアルミ箔からなる電極板を用意する。電極板の材料としては、例えば高出力アルミニウム電極シートを用いる。電極板(例えばアルミ箔)上面のうち活物質(活性炭)を塗布した部分が活物質電極10,12(正電極10、負電極12)になり、電極板上面のうち活物質(活性炭)を塗布していない部分が引き出し電極32になる。更に、図1(b)に例示するように、この電極板を短冊状に切断する。短冊状に切断された各々の電極板は、活物質電極10,12(正電極10、負電極12)および引き出し電極32とを含む電極としてそれぞれ用いられる。
【0030】
(b)次に、図2に例示するように、少なくとも2層以上の活物質電極10,12を、正電極10、負電極12が交互になるように積層した積層体である内部電極構造体(例えば蓄電素子)80を構成する。このとき、活物質を塗布していない引き出し電極32a,32bが、内部電極構造体80からそれぞれ露出するように積層していく。また、各活物質電極10,12の層間には、セパレータ30をそれぞれ介在させながら積層していく。また、ショートを防ぐために、図2(a)に例示するように、セパレータ30は、活物質電極10,12全体を覆うように、活物質電極10,12よりも大きいもの(面積の広いもの)を用い、更に、図2(b)に例示するように、少なくとも積層体の最上部には、電極ではなく、セパレータ30が積層されているように積層していく。
【0031】
(c)次に、図3に例示するように、積層体から露出している引き出し電極32a,32bとタブ電極34a,34bとを、封止材36a,36bを用いて溶接孔20a,20bにおいて電極付けを行う。このような電極付けの溶接には、例えば、超音波溶接、半田付けなどが用いられる。タブ電極34a,34bは、例えば、Al、Niなどで形成することができる。
【0032】
(d)次に、図4に例示するように、枠材60内に、図3に示した内部電極構造体80及び溶接された端子電極50,52等を収納する。枠材60は、例えば、セラミックにより形成されている。図4(a)に例示するように、枠材60には、端子電極50,52を通すための貫通孔63,64と、内部電極構造体80を収納するための収納凹部とが設けられている。そして、図4(b)に例示するように、タブ電極34a,34bから延伸する端子電極50,52は、貫通孔63,64を通して、枠材60の外部に引き出すことができる。尚、内部電極構造体80は、枠材60内の台66上に接着載置される。
【0033】
(e)次に、図5に例示するように、枠材60の上面に接着剤68により金属製の蓋70を接着載置し、枠材60の上面を封止してチップを作製する。蓋70としては、例えば、Alなどの比較的柔らかい金属板を用いる。接着剤68としては、例えばセラミック接着剤を用いる。また、枠材60の底面及び枠材60に設けられた貫通孔63,64も、接着剤72によって封止する。接着剤72は、接着剤68と同じ材質のものを用いることもでき、例えば、耐薬品性のセラミック接着剤を用いる。
【0034】
(f)次に、図6に例示するように、枠材60(チップ)の上面と下面とに、プレス機70a,70bを挟み込むように取り付ける。具体的には、枠材60の蓋70の上面にプレス機の一方(70a)を取り付け、接着剤72による封止部の下面にプレス機の他方(70b)を取り付ける。
【0035】
(g)次に、図7に例示するように、プレス機70a,70bによってチップを上下から押圧し、その状態で乾燥させる。乾燥が始まると、枠材60内部の内圧が下がり、それとともに、比較的柔らかい金属板で形成されている蓋70は、内側に凹む(図7に例示する蓋70aの状態になる)。尚、プレス機70a,70bによって押圧する前に、プレス機70a,70bを予め温めておいて、押圧後の乾燥中に冷やすと、蓋70aの凹状に凹む効果がより大きくなる。図8は、蓋70aを凹状に凹ませた後、チップからプレス機70a,70bを撤去した様子を例示している。
【0036】
(h)次に、図9に例示するように、枠材60から接着剤72を剥離する。接着剤72を剥離する理由は、セラミック接着剤が強度的に弱いことと、接着剤72を剥がした後に枠材60(チップ)に生じる貫通孔63,64から、次の工程において電解液42を含侵させることによる。尚、枠材60から接着剤72を剥離する際に、接着剤68で接着載置されている蓋70aが枠材60から剥がれないように留意すべきである。
【0037】
(i)次に、図10に例示するように、電解液42が入った電解液浴槽40にチップを浸して、貫通孔63,64からチップ内に電解液42を含侵させ、積層された活物質電極10,12間に電解質を含有させる。このとき、通電エージングも同時に行い、デガス処理を行う。
【0038】
(j)その後、図11に例示するように、電解液浴槽40から引き揚げたチップの貫通孔63,64を接着剤72で再度封止する。チップ内に含侵された電解液42が触れる封止部(すなわち、電解液42が漏れないようにするための封止部)には、例えば、耐薬品性のセラミックの接着剤72を用いて電解液42への劣化等の影響を抑える。また、電解液42を含侵させる貫通孔63,64も耐薬品性のセラミックの接着剤72で封止される。
【0039】
(k)更に、接着剤72(及び接着剤68)による封止部は、機械的に弱い特性があるので、封止部を補強させるために、図11に例示するように、樹脂モールド82でチップの外装を被覆し、接着剤72と樹脂モールド82との2層による封止構造を有するパッケージとする。尚、チップの外装を樹脂モールド82で被覆する際には、内側に凹んだ蓋70aの凹部と樹脂モールド82との間に、図11に例示するような所定の空間部71が生じるように被覆する封止構造とする。この状態で乾燥させると、第1の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイスが完成する。
【0040】
以上、説明したように、第1の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイス及びその製造方法によれば、内部電極構造体80は、少なくとも2層以上の活物質電極10,12に、セパレータ30を介在させながら、引き出し電極32(32a,32b)が露出するように、かつ正電極10と負電極12とが交互になるように積層した積層体で構成される。この活物質電極10,12及び引き出し電極32(32a,32b)を形成するための電極板の材料として、高出力アルミニウム電極シートを用いることで、チップ型のエネルギーデバイスでも高出力が得られる。
【0041】
また、枠材60には、端子電極50,52を通すための貫通孔63,64が設けられているので、貫通孔63,64を通して、端子電極50,52を枠材60の外部に引き出すことができる。これにより、内部電極構造体80に端子電極50,52を直接接続でき、チップ内の電極構造体80の内部抵抗を低減することが容易になる。電解液42を含侵させるための注入孔を、端子電極50,52を通すための貫通孔63,64により兼用させることもできる。
【0042】
また、接着剤72(及び接着剤68)による封止部を、樹脂モールド82でチップの外装を被覆し、接着剤72と樹脂モールド82との2層による封止構造を有するパッケージとしている。接着剤72には、例えば、耐薬品性のセラミックの接着剤を用い、それにより電解液42の劣化等の影響を抑えることができる。更に、電解液42を含侵させる貫通孔63,64も、耐薬品性のセラミックの接着剤72で再度封止される。また、凹状に凹ませた金属製の蓋70aと樹脂モールド82との間に生じた空間部71により、過電圧が印加された際に発生する気体(ガス)によってチップ内圧が上昇した場合でも、内部電極構造体80等が破壊されることを防止する。更に、この凹状構造により、チップ内に収容されている内部電極構造体80を押さえ込み、内部電極構造体80の内部抵抗の低減を実現できる。
【0043】
また、接着剤72と樹脂モールド82との2層による封止構造により、高い気密性が保たれ、高い封止性を得ることができるので、チップ内に含有された電解液などがチップから漏れ出したり、逆に水分等がチップ内に侵入したりすることを防止できる。
【0044】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイスは、第1の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイスと比較して、以下の点で異なる。
【0045】
すなわち、第1の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイスでは、図6及び図11に例示したように、チップの貫通孔63,64を、例えば、耐薬品性のセラミックの接着剤72(及び接着剤68)により封止し、更に樹脂モールド82でチップの外装を被覆し、接着剤72と樹脂モールド82との2層による封止構造を有するパッケージとしていた。
【0046】
それに対して、第2の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイスにおいては、図12〜図16に例示するように、内部電極構造体80が接着載置される台66に端子電極50,52を引き出すための貫通孔を形成する。台66は、例えば、耐薬品性のセラミック素材で形成される。台66に形成された貫通孔は、端子電極50,52をチップの外部に引き出すだけでなく、貫通孔からチップ内に電解液42を含侵させるという目的も有している。そのために、図12(a)に例示するように、各貫通孔と引き出された端子電極50,52との間には、少なくとも電解液42を通すのに最低限必要な間隙がそれぞれ設けられている。尚、この貫通孔は、台66に形成せずに、第1の実施の形態と同様に枠材60に形成しても良いし、台66と枠材60との両方に形成して、台66と枠材60とを組み合わせて当該貫通孔になるようにしても良い。
【0047】
また、端子電極50,52は、内部電極構造体80とほぼ同じ高さから平行方向に貫通孔から外部に引き出される。
【0048】
内部電極構造体80を台66に載置して端子電極50,52を引き出した後、図13に例示するように、枠材60内に収納する。そして、第1の実施の形態と同様に、枠材60の上面に接着剤68(例えば、耐薬品性のセラミック接着剤)により比較的柔らかい例えばAl等の金属板で形成されている蓋70を接着載置し、枠材60の上面を封止する。
【0049】
次に、図14に例示するように、枠材60(チップ)の上面と下面とに、プレス機70a,70bを挟み込むように取り付ける。具体的には、枠材60の蓋70の上面にプレス機の一方(70a)を取り付け、台66の下面にプレス機の他方(70b)を取り付ける。
【0050】
次に、図15に例示するように、プレス機70a,70bによってチップを上下から押圧し、その状態で乾燥させる。乾燥が始まると、枠材60内部の内圧が下がり、それとともに、比較的柔らかい金属板で形成されている蓋70aは内側に凹む。図16は、蓋70aを凹状に凹ませた後、チップからプレス機70a,70bを撤去した様子を例示している。
【0051】
第2の実施の形態においては、第1の実施の形態とは異なり、枠材60下部の封止部としてセラミック接着剤72を用いていない。従って、第1の実施の形態のように、蓋70aが枠材60から剥がれないように留意しながら、接着剤72を剥離する工程(第1の実施の形態における工程(h))は不要になる。更に、第2の実施の形態においては、電解液浴槽40から引き揚げたチップの貫通孔63,64を接着剤72で再度封止する工程(第1の実施の形態における工程(j))も不要となる。
【0052】
次に、第1の実施の形態と同様、図17に例示するように、電解液42が入った電解液浴槽40にチップを浸して、貫通孔(63,64)からチップ内に電解液42を含侵させ、積層された活物質電極10,12間に電解質を含有させる。このとき、通電エージングも同時に行い、デガス処理を行う。
【0053】
最後に、電解液浴槽40から引き揚げたチップを、図18に例示するように、樹脂モールド82でチップの外装を被覆し、セラミック台66と樹脂モールド82との2層構造によるパッケージとする。尚、チップの外装を樹脂モールド82で被覆する際には、内側に凹んだ蓋70aの凹部と樹脂モールド82との間に、図18に例示するような所定の空間部71が生じるように被覆する封止構造とする。この状態で乾燥させると、第2の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイスが完成する。
【0054】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイスと同等の性能や気密性を維持しながら、第1の実施の形態に係る製造工程よりも簡略化された工程による、チップ型エネルギーデバイスの製造方法を実現することができる。
【0055】
更に、第2の実施の形態によれば、端子電極50,52は、内部電極構造体80とほぼ同じ高さから平行方向に貫通孔から外部に引き出されるので、第1の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイスと同等の性能や気密性を維持しながら、より小型の(高さの低い)チップ型エネルギーデバイスを提供することができる。
【0056】
第1乃至第2の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイス及びその製造方法によれば、チップ型エネルギーデバイスにおいても、高出力を得ることができ、内部抵抗を下げることができるチップ型エネルギーデバイス及びその製造方法を提供することができる。
【0057】
また、第1乃至第2の実施の形態に係るチップ型エネルギーデバイス及びその製造方法によれば、密着性を高めることができ、例えば劣化等の電解液への影響を抑えることができ、高い強度を有するパッケージに封止されたチップ型エネルギーデバイスを提供することができる。
【0058】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は第1〜第2の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0059】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るチップ型エネルギーデバイスは、LSI、時計、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、パソコン、携帯電話、玩具等のバックアップ用電源として、太陽光発電、ダイナモ発電、振動発電、熱電素子や発電等からの低出力エネルギーを蓄えるマイクロエナジー用蓄電素子として、カップリング用コンデンサとして、または平滑用コンデンサなどとして適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
10,12…活物質電極
20a,20b…溶接孔
30…セパレータ
32(32a,32b)…引き出し電極
34a,34b…タブ電極
36a,36b…封止材
40…電解液浴槽
42…電解液
50,52…端子電極
60…枠材
63,64…貫通孔(兼電解液注入孔)
62…台(第1の実施の形態)
66…台(第2の実施の形態)
68、72…接着剤(封止部)
70、70a…蓋
71…空間部
74a,74b…プレス機
80…積層体(内部電極構造体)
82…樹脂モールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正負極の活物質電極と正負極の引き出し電極とが一体に形成された電極の前記活物質電極部分にセパレータを介在させながら、前記引き出し電極部分が露出するように、かつ前記電極の正電極と負電極とが交互に積層されるように積層した2層以上の積層体と、
前記積層体を収容し、前記引き出し電極に接続された端子電極を外部に引き出すための貫通孔を形成した枠材と、
前記枠材の上面を封止する蓋と、
前記枠材の下面と前記貫通孔とを封止して前記積層体の積層部分に電解質を含有させる封止部と
を備えることを特徴とするチップ型エネルギーデバイス。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記電解質を含む電解液を注入するための注入孔を兼ねることを特徴とする請求項1に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項3】
前記貫通孔と前記貫通孔を通る前記端子電極との間には、少なくとも前記電解液を通すための間隙が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項4】
前記蓋の上面と前記封止部の下面とを挟み込むように押圧して、前記蓋を前記枠材の内側に凹ませた凹部を前記蓋に形成したことを特徴とする請求項1に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項5】
凹状に凹んだ前記蓋により、前記枠材の内の前記積層体を押さえ込むことを特徴とする請求項4に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項6】
前記蓋は、Alからなる金属板により形成されることを特徴とする請求項4または5に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項7】
前記電極は、金属シートの上面の一部に活物質を塗布して短冊状に切断して形成され、前記切断された各々の金属シートの前記活物質を塗布した部分を活物質電極として用い、前記活物質を塗布していない部分を前記引き出し電極として用いたことを特徴とする請求項1に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項8】
前記金属シートは、高出力アルミニウム電極シートであることを特徴とする請求項7に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項9】
前記積層体の最上部には、前記電極ではなく、前記セパレータが積層されるように前記積層体を積層したことを特徴とする請求項1に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項10】
前記蓋は、耐薬品性のセラミック接着剤により前記枠材の上面に接着載置されたことを特徴とする請求項1に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項11】
前記封止部は、耐薬品性のセラミック接着剤により前記枠材の下面を接着載置したことを特徴とする請求項1に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項12】
前記チップ型エネルギーデバイスの外装を樹脂モールドで被覆したことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項13】
前記樹脂モールドと前記内側に凹んだ蓋の凹部との間に、所定の空間部が生じるように前記樹脂モールドで被覆したことを特徴とする請求項2に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項14】
正負極の活物質電極と正負極の引き出し電極とが一体に形成された電極の前記活物質電極部分にセパレータを介在させながら、前記引き出し電極部分が露出するように、かつ前記電極の正電極と負電極とが交互に積層されるように積層した2層以上の積層体と、
前記引き出し電極に接続された端子電極を外部に引き出し、かつ前記電解質を含む電解液を注入するための注入孔を兼ねる貫通孔を形成した、前記積層体を載置する台と、
前記台に載置された前記積層体を収容する枠材と、
前記枠材の上面を封止する蓋と
を備えることを特徴とするチップ型エネルギーデバイス。
【請求項15】
前記蓋の上面と前記台の下面とを挟み込むように押圧して、前記蓋を前記枠材の内側に凹ませた凹部を前記蓋に形成したことを特徴とする請求項14に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項16】
前記チップ型エネルギーデバイスの外装を樹脂モールドで被覆したことを特徴とする請求項14または15に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項17】
前記樹脂モールドと前記内側に凹んだ蓋の凹部との間に、所定の空間部が生じるように前記樹脂モールドで被覆したことを特徴とする請求項16に記載のチップ型エネルギーデバイス。
【請求項18】
前記端子電極は、前記構造体と略同一の高さから平行方向に貫通孔から外部に引き出されることを特徴とする請求項14に記載のチップ型エネルギーデバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−221590(P2012−221590A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83015(P2011−83015)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】