説明

チミジンキナーゼ

チミジンキナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、スプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられ、かつスプライスアクセプター部位のヌクレオチドは変化していない、上記ポリヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は、実質的にスプライシングされないチミジンキナーゼ遺伝子をコードする核酸および治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
遺伝子治療における代謝性自殺遺伝子の使用は大変注目されている。多数の自殺遺伝子が文献に記載されており、それは、例えば、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼまたはチミジンキナーゼをコードする遺伝子である。これらの遺伝子のうち、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV−tk)をコードする遺伝子は治療的観点から特に有利である。HSV−tk遺伝子は酵素を発現し、それがヌクレオシドアナログであるガンシクロビルと組み合わせて使用されると、分裂細胞を特異的に排除することができる。特に重要なのは、HSV−tk/ガンシクロビルの使用に伴って、伝播性の毒性効果(「巻き添え(bystander)」作用)が存在することである。この効果は、チミジンキナーゼ(tk)遺伝子が組み込まれている細胞だけでなく、隣接細胞もまた破壊される現象として現れる。
【0003】
HSV−tk/ガンシクロビル系の作用機序の概略は下記の通りであろう:TK酵素を発現するように改変された哺乳動物細胞がガンシクロビルのリン酸化の第一段階を実行し、ガンシクロビル一リン酸を生成させる。その後、細胞のキナーゼによって前記ガンシクロビル一リン酸から二リン酸、次いで三リン酸への連続的な代謝が可能になる。前記のように生成されたガンシクロビル三リン酸は次いでDNAに組み込まれることによって有毒作用を生じ、細胞のDNAポリメラーゼαを部分的に阻害し、それによってDNA合成の停止を誘発し、ゆえに細胞死を招く(Moolten, 1986; Mullen, 1994)。
【0004】
HSV−tk/ガンシクロビル系は多数の治療的用途で使用することができ、過去十年間に多数の臨床試験が実施されている。遺伝子治療でHSV−tk遺伝子を使用する方法は、例えば、WO90/07936、US5,837,510、US5,861,290、WO98/04290、WO97/37542およびUS5,631,236に開示されている。
【0005】
HSV−tk/ガンシクロビル系の興味深い用途の1つは移植片対宿主病(GvHD)の予防における用途である。この疾患は、同種間骨髄移植の転帰、多数の血液学的悪性腫瘍に関して選択される処置を妨害しうる症状である。GvHDが生じるのは、移植された幹細胞移植物中のT細胞がレシピエントの身体に対して攻撃を開始した場合である。移植物からT細胞を除去すると、GvHDが妨げられる場合があるが、同時に疾患再発および移植物拒絶を促進する。これらの影響に対抗するために、同種間骨髄移植後、一定の間隔をおいてドナーTリンパ球を導入することによって、同種間骨髄移植患者を治療することができる。HSV−tk遺伝子をドナーTリンパ球へ移入することによって、GvHDが発生した場合にガンシクロビル投与後のそれらの細胞の除去が可能となる。ある試みでは、患者は、HSV−tk遺伝子を形質導入されている高用量のドナーリンパ球とともにT細胞枯渇骨髄移植を受けた(Tiberghienら, 2001)。全患者において、移植後の長期にわたって、循環性のHSV−tk発現細胞を検出することができた。12患者のうち6患者はGvHDを発症し、ガンシクロビル投与を受け、循環性改変細胞の数が実質的に減少した(絶対数で85%の平均減少)。
【0006】
HSV−tk遺伝子の突然変異体であって、その生物学的活性を増大させる突然変異体が作成されている。そのような突然変異体HSV−tk遺伝子の例は、例えば、Kokorisら(1999)、WO95/30007、US5,877,010、WO99/19466およびWO95/14102に記載されている。しかし、チミジンキナーゼ/ガンシクロビル系に関連する深刻な問題はHSV−tk形質導入細胞におけるガンシクロビル耐性の発生である。治療経過中に、ガンシクロビルに耐性である細胞の相対的割合が急速に増加する可能性があるため、このことは特に重要である。
【0007】
HSV−tk遺伝子を含有するレトロウイルスベクターで形質導入されたリンパ芽球様ヒトT細胞株におけるガンシクロビル耐性の存在は、HSV−tk遺伝子の227塩基対の欠失と関連していることが見出された(Fillatら, 2003)。また、そのベクターで形質導入されたヒト初代T細胞にも、形質導入ドナーT細胞を投与された12人の患者にも同欠失が存在した(Garinら, 2001)。WO01/79502では、その欠失の原因が、異常型の遺伝子を保持する一定の割合のウイルス粒子の生産を誘発するためにスプライス部位として働くヌクレオチド配列がHSV−tk mRNA中に存在するせいであると考えられることが開示されている。この場合、その残りは完全長遺伝子を保持する。チミジンキナーゼ遺伝子の突然変異体はWO01/79502およびChalmers 2001, Molecular Therapy 4:146-148に開示されている。その突然変異体では、スプライス部位が除去されていて、異常型のチミジンキナーゼ遺伝子の生産が減少している。しかし、この突然変異体は依然として有害な量の遺伝子スプライシングと関連している。Rettigら, 2003にはCD34−tk融合構築物が開示されている。これらの融合構築物は改変HSV−tk遺伝子を含有する。しかし、その改変遺伝子がHSV−tk mRNAのスプライシングを減少させることは実証されていない。
【特許文献1】WO90/07936
【特許文献2】US5,837,510
【特許文献3】US5,861,290
【特許文献4】WO98/04290
【特許文献5】WO97/37542
【特許文献6】US5,631,236
【特許文献7】WO95/30007
【特許文献8】US5,877,010
【特許文献9】WO99/19466
【特許文献10】WO95/14102
【特許文献11】WO01/79502
【非特許文献1】Moolten, Cancer Res. 46, p5276 (1986)
【非特許文献2】Mullen, Pharmac. Ther. 63, p199 (1994)
【非特許文献3】Tiberghienら, Blood 97, p63 (2001)
【非特許文献4】Kokorisら, Gene Terapy 6, p1415-1426 (1999)
【非特許文献5】Fillatら, Current. Gene Therapy 3, p13 2003
【非特許文献6】Garinら, Blood 97, p122 (2001)
【非特許文献7】Chalmers, Molecular Therapy 4 p146 (2001)
【非特許文献8】Rettigら, Molecular Therapy 8, p29 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ゆえに、遺伝子スプライシングに感受性ではなく、また、ガンシクロビル耐性に関連する問題に対処する改変チミジンキナーゼ遺伝子に関する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、既に開示されているHSV−tk遺伝子と比べて高い割合のスプライスされない(unspliced)mRNAを発現するHSV−tk遺伝子を提供することによって上述の問題を克服する。本発明者らは、既に特定されているアクセプター部位の14塩基対上流にスプライスアクセプター部位を特定した。本発明者らは、既に特定されているドナー部位およびアクセプター部位を改変することによってスプライシングを阻害する先行する試みによって、本アクセプター部位およびその後の遺伝子スプライシングを活性化することができることを示す。驚くべきことに、HSV−tk遺伝子をある特定のヌクレオチド位置で改変すると、実質的にスプライスされないmRNAを発現する能力を有するHSV−tk遺伝子が得られることを本発明者らは実証する。特に、本発明者らは、スプライスドナー部位のヌクレオチドのうち少なくとも1つを突然変異させることによってスプライシングを実質的に妨げることができることを示す。
【0010】
発明の提示
本発明の第1の態様では、チミジンキナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、スプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられ、かつスプライスアクセプター部位のヌクレオチドは変化していないポリヌクレオチドを提供する。
【0011】
好ましくは、図1に示す野生型配列(Tk wt)の329位および330位にあるスプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられ、かつスプライスアクセプター部位のヌクレオチドは変化していない。
【0012】
一実施形態では、330位のヌクレオチドがTからCに換わっている。
【0013】
本発明の第2の態様では、チミジンキナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、図1に示す野生型配列(Tk wt)の329位および330位にあるスプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられ、かつスプライスアクセプター部位のヌクレオチドは変化していないポリヌクレオチドを提供する。
【0014】
一実施形態では、図1に示す野生型配列の329位および330位にあるスプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられている。
【0015】
一実施形態では、330位のヌクレオチドがTからCに換わっている。
【0016】
本発明の第3の態様では、チミジンキナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、図1に示す野生型配列(Tk wt)の329位および330位にあるスプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられ、かつ図1に示す野生型配列の554位および555位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つ、ならびに662位および663位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つは変化していないポリヌクレオチドを提供する。
【0017】
好ましくは、554位および555位に対応するヌクレオチドがいずれも変化していない。
【0018】
好ましくは、662位および663位に対応するヌクレオチドがいずれも変化していない。
【0019】
一実施形態では、図1に示す野生型配列の329位および330位にあるスプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられている。
【0020】
一実施形態では、330位のヌクレオチドがTからCに換わっている。
【0021】
本発明の第4の態様では、図1に示すTkMut2配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0022】
本発明の第5の態様では、チミジンキナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、図1に示す野生型配列(Tk wt)の329位および330位にあるヌクレオチド(群)に対応するスプライスアクセプターヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられ、かつ図1に示す野生型配列の541位および542位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられているポリヌクレオチドを提供する。
【0023】
一実施形態では、図1に示す野生型配列の329位および330位にあるスプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられている。
【0024】
一実施形態では、330位に対応するヌクレオチドがTからCに換わっている。
【0025】
別の実施形態では、図1に示す野生型配列の541位および542位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられている。
【0026】
別の実施形態では、541位のヌクレオチドに対応するヌクレオチドがAからTに換わっている。
【0027】
別の実施形態では、542位のヌクレオチドに対応するヌクレオチドがGからCに換わっている。
【0028】
別の実施形態では、図1に示す野生型配列の554位および555位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つもまた別のヌクレオチドに置き換えられ、それによりスプライス部位が存在しないこととなっている。
【0029】
一実施形態では、図1に示す野生型配列の541位および542位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられ、それによりスプライス部位が存在しないこととなっている。
【0030】
別の実施形態では、555位のヌクレオチドに対応するヌクレオチドがGからAに換わっている。
【0031】
本発明の第6の態様では、図1に示すTkMut23配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0032】
本発明の第7の態様では、図1に示すTkMut234配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0033】
本発明の第8の態様では、チミジンキナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、図1に示す野生型配列(Tk wt)の329位および330位にあるヌクレオチド(群)に対応するスプライスアクセプター部位ヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられ、かつ図1に示す野生型配列の554位および555位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドが別のヌクレオチドに置き換えられているポリヌクレオチドを提供する。
【0034】
一実施形態では、図1に示す野生型配列の329位および330位にあるスプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられている。
【0035】
別の実施形態では、図1に示す野生型配列の554位および555位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられている。
【0036】
好ましくは、330位のヌクレオチドに対応するヌクレオチドがTからCに換わっている。
【0037】
好ましくは、555位のヌクレオチドに対応するヌクレオチドがGからAに換わっている。
【0038】
本発明の第9の態様では、図1に示すTkMut24配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0039】
本発明の第10の態様では、チミジンキナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、図1に示す野生型配列(Tk wt)の554位および555位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられているポリヌクレオチドを提供する。
【0040】
一実施形態では、図1に示す野生型配列の554位および555位にあるスプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられている。
【0041】
一実施形態では、555位のヌクレオチドに対応するヌクレオチドがGからAに換わっている。
【0042】
一実施形態では、図1に示す野生型配列の541位および542位にあるヌクレオチドに対応するスプライスアクセプター部位ヌクレオチドのうち少なくとも1つもまた別のヌクレオチドに置き換えられ、それによりスプライス部位が存在しないこととなっている。
【0043】
別の実施形態では、図1に示す野生型配列の541位および542位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのいずれもがまた別のヌクレオチドに置き換えられ、それによりスプライス部位が存在しないこととなっている。
【0044】
別の実施形態では、541位のヌクレオチドに対応するヌクレオチドがAからTに換わっている。
【0045】
別の実施形態では、542位のヌクレオチドに対応するヌクレオチドがGからCに換わっている。
【0046】
本発明の第11の態様では、図1に示すTkMut4配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0047】
本発明の第12の態様では、図1に示すTkMut34配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0048】
好ましくは、ヌクレオチド置換は前記ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドの配列を変化させない。
【0049】
本発明の第13の態様では、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0050】
好ましくは、前記ベクターは発現ベクターである。
【0051】
本発明の第14の態様では、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0052】
本発明の第15の態様では、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞と、製薬上許容される担体とを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0053】
本発明の第16の態様では、
(i)本発明のポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞または医薬組成物;および
(i)チミジンキナーゼによって毒性薬剤(物質)に変換される、実質的に無毒な薬剤
を含んでなるキットを提供する。
【0054】
本発明の第17の態様では、医療における使用のための、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞または医薬組成物を提供する。
【0055】
本発明の第18の態様では、破壊の必要がある細胞を有する患者の治療(処置)における同時の、分離した、もしくは連続的な使用のための、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞または医薬組成物と、実質的に無毒な薬剤とを含む製品であって、該実質的に無毒な薬剤はチミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換されるものである製品を提供する。
【0056】
本発明の第19の態様では、細胞を破壊する方法であって、下記ステップを含む方法を提供する:
(i) 本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを該細胞に導入するステップ;および
(ii)該細胞を、チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤と、同時に、分離して、または連続的に接触させるステップ。
【0057】
本発明の第20の態様では、細胞を破壊する方法であって、下記ステップを含む方法を提供する:
(i) 本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを該細胞に導入するステップ;
(ii)該細胞にチミジンキナーゼを発現させるステップ;および
(ii)該細胞を、チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤と接触させるステップ。
【0058】
本発明の第21の態様では、破壊の必要がある細胞を有する患者を治療する方法であって、下記ステップを含む方法を提供する:
(i) 本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは医薬組成物を患者に導入するステップ;
(ii)チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤を、同時に、分離して、または連続的に該患者に導入するステップ。
【0059】
本発明の第22の態様では、破壊の必要がある細胞を有する患者を治療する方法であって、下記ステップを含む方法を提供する:
(i) 本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは医薬組成物を患者に導入するステップ;
(ii) 該ポリヌクレオチドまたはベクターを該細胞に取り込ませるステップ;
(iii)該細胞にチミジンキナーゼを発現させるステップ;および
(iv) チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤を該患者に導入するステップ。
【0060】
本発明の第23の態様では、破壊の必要がある細胞を有する患者を治療する方法であって、下記ステップを含む方法を提供する:
(i) 患者由来の細胞またはドナー細胞を取り出すステップ;
(ii) 本発明のポリヌクレオチドまたはベクターをex vivoで該細胞に導入するステップ;
(iii)該改変細胞を該患者に導入するステップ;
(iv) 該細胞にチミジンキナーゼを発現させるステップ;および
(v) チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤を該患者に投与するステップ。
【0061】
本発明の第24の態様では、患者での移植片対宿主病を予防する方法であって、下記ステップを含む方法を提供する:
(i) 本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターを含むように遺伝子操作されたT細胞を宿主に投与するステップ;および
(ii)実質的に無毒な薬剤とチミジンキナーゼとの相互作用により該遺伝子操作されたT細胞を死滅させるのに有効な量の該薬剤を、移植片対宿主病が発生する前に該宿主に投与するステップ。
【0062】
好ましくは、本発明で使用される実質的に無毒な薬剤は、ガンシクロビル、アシクロビル、トリフルオロチミジン(triflurothymidine)、1−[2−デオキシ,2−フルオロ,β−D−アラビノフラノシル]−5−ヨードウラシル、ara−A、ara1、1−β−Dアラビノフラノシルチミン、5−エチル−2’デオキシウリジン(5-ethyl-2'deoxyurine)、5−ヨード−5’−アミノ−2,5’−ジデオキシウリジン、イドクスウリジン、AZT、AIV、ジデオキシシチジン、AraCおよびブロモビニルデオキシウリジン(BVDU)のうちいずれか1つである。
【0063】
本発明の第25の態様では、患者における細胞の破壊のための医薬の調製における、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞の使用を提供する。
【0064】
本発明の第26の態様では、癌の治療のための医薬の調製における、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
詳細な説明
以下、本発明の種々の好ましい特徴および実施形態を非限定的な例として記載する。
【0066】
本発明の実施では、特に指定しない限り、通常の当業者の能力の範囲内である慣用の化学、分子生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の技術を使用する。前記技術は文献で説明されている。例えば、J. Sambrook, E. F. Fritsch, and T. Maniatis, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Books 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F. M.ら (1995および定期的な補遺; Current Protocols in Molecular Biology, 第 9, 13, および16章, John Wiley & Sons, New York, N.Y.); B. Roe, J. Crabtree, and A. Kahn, 1996, DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons; J. M. Polak and James O'D. McGee, 1990, In Situ Hybridization: Principles and Practice; Oxford University Press; M. J. Gait (編), 1984, Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, Irl Press; D. M. J. Lilley and J. E. Dahlberg, 1992, Methods of Enzymology: DNA Structure Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology, Academic Press; and E. M. Shevach and W. Strober, 1992および定期的な補遺, Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York, NYを参照のこと。これらの一般的な教科書は参照により本明細書中に組み入れられる。
【0067】
HSV−tk遺伝子
本明細書中で使用される用語「変化していない」とは、野生型配列(Tk wt)から変化していないことを意味する。
【0068】
本明細書中で使用される用語「別のヌクレオチドに置き換えられている」とは、野生型配列(Tk wt)とは異なるヌクレオチドに置き換えられていることを意味する。前記置換を施すと、対応するスプライスドナー部位またはスプライスアクセプター部位が除去されることとなる。
【0069】
本発明のチミジンキナーゼ突然変異体は多種多様なチミジンキナーゼから作製してよい。好ましくは、前記チミジンキナーゼ突然変異体はヘルペスウイルス科(Herpesviridae)のチミジンキナーゼ由来であり、例えば、霊長類ヘルペスウイルス、および非霊長類ヘルペスウイルス(例えばトリヘルペスウイルス)の両者が含まれる。適切なヘルペスウイルスの代表例には、単純ヘルペスウイルス1型(McKnightら, 1980)、単純ヘルペスウイルス2型(Swain and Galloway, 1983)、水痘帯状疱疹ウイルス(Davidson and Scott, 1986)、マーモセットヘルペスウイルス(Otsuka and Kit, 1984)、ネコヘルペスウイルス1型(Nunbergら,, 1989)、偽性狂犬病ウイルス(Kit and Kit, 米国特許第4,514,497号, 1985)、ウマヘルペスウイルス1型(Robertson and Whalley, 1988)、ウシヘルペスウイルス1型(Mittal and Field, 1989)、シチメンチョウヘルペスウイルス(Martinら, 1989)、マレック病ウイルス(Scottら, 1989)、リスザルヘルペスウイルス(herpesvirus saimiri)(Honessら, 1989)およびエプスタイン・バーウイルス(Baerら, 1984)が含まれる。
【0070】
前記ヘルペスウイルスは、American Type Culture Collection(「ATCC」, Rockville, Maryland)等の商業的な供給元から容易に取得することができる。特定の上記指定ヘルペスウイルスの寄託物はATCCから容易に取得することができる。その寄託物は、例えば:ATCC No.VR−539(単純ヘルペス1型);ATCC No.VR−734およびVR−540(単純ヘルペス2型);ATCC NO.VR−586(水痘帯状疱疹ウイルス);ATCC No.VR−783(感染性喉頭気管炎(Infectious laryngothracheitis));ATCC No.VR−624,VR−987,VR−2103,VR−2001,VR−2002,VR−2175,VR−585(マレック病ウイルス);ATCC No.VR−584BおよびVR−584B(シチメンチョウヘルペスウイルス);ATCC No.VR−631およびVR−842(ウシヘルペスウイルス1型);およびATCC No.VR−2003,VR−2229およびVR−700(ウマヘルペスウイルス1型)である。また、ヘルペスウイルスは天然に存在する供給源から(例えば、感染動物から)容易に単離および同定することができる。
【0071】
チミジンキナーゼ遺伝子を容易に単離し、下記のように突然変異させることができる。その突然変異の目的は、突然変異していないチミジンキナーゼと比較して、その遺伝子のスプライシングを実質的に減少させる1つまたはそれ以上の突然変異を含むチミジンキナーゼ遺伝子をコードする核酸分子を構築することである。本明細書中で使用される場合、「突然変異していないチミジンキナーゼ」とは、McKnightら(Nucl. Acids Res. 8:5949-5964, 1980)に記載のチミジンキナーゼ等のネイティブまたは野生型チミジンキナーゼを表すことが理解されよう。
【0072】
注意すべきは、本出願におけるヌクレオチド位置が、図1に示す位置を参照することによって表されることである。しかし、前記参照が行われる場合でも、本発明は、その図に記載される厳密な配列に限定されるものではなく、その変異体および誘導体を含むことが理解される。ゆえに、他のチミジンキナーゼ配列におけるヌクレオチド位置(すなわち、当業者であれば、図1で特定される位置に対応するとみなす位置のヌクレオチド)の特定が意図される。当業者は、容易に、類似配列をアライメントし、同一のヌクレオチド位置を特定することができる。
【0073】
HSV−tk突然変異体の構築
本発明のチミジンキナーゼ突然変異体は種々の技術を使用して構築することができる。例えば、突然変異配列を含有するオリゴヌクレオチドを合成することによって特定の遺伝子座に突然変異を導入することができる。その変異配列に制限部位を隣接させて、それによりネイティブ配列の断片にライゲーションすることを可能とすることができる。ライゲーション後に得られる再構築配列は所望のアミノ酸挿入、置換、または欠失を有する誘導体をコードする。
【0074】
あるいは、オリゴヌクレオチドを標的にする部位特異的(またはセグメント特異的)突然変異誘発法を使用して、必要な置換、欠失、または挿入に応じて改変された特定のコドンを有する改変遺伝子を提供することができる。チミジンキナーゼ突然変異体の欠失または切断(truncation)誘導体は、所望の欠失に隣接する好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位を利用して構築してもよい。制限切断の次に、突出配列を埋めて、DNAを再度ライゲーションすることができる。上記改変を施す典型的な方法はSambrookら(Molecular cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に開示されている。
【0075】
チミジンキナーゼ突然変異体は、PCR突然変異誘発、化学的突然変異誘発、化学的突然変異誘発(Drinkwater and Klinedinst, 1986)、強制ヌクレオチド誤取り込み(forced nucleotide misincorporation)(例えば、Liao and Wise, 1990)によるか、あるいはランダムに突然変異誘発されたオリゴヌクレオチドの使用(Horwitzら, 1989)による技術を利用して構築してもよい。
【0076】
本発明の好ましい実施形態では、コドンが、同一アミノ酸残基をコードする縮重コドンに変化するように遺伝暗号に留意してヌクレオチドを改変する。この方法で、野生型タンパク質をコードするが、機能的スプライス部位を含有しない目的のタンパク質のコード領域を作成することが可能である。
【0077】
スプライス部位
スプライシング中に除去(または「スプライスアウト」)されるRNAの一部分は通常はイントロンと称され、スプライシングによって連結されるイントロンの両側の2片のRNAは通常はエキソンと称される(図2)。
【0078】
スプライスドナー部位とは、スプライシングプロセス中に除去されるRNAの5’側にあるRNA中の部位であり、切断されてスプライスアクセプター部位内のヌクレオチド残基に再連結される部位を含有する。ゆえに、スプライスドナー部位はエキソンの終点とイントロンの始点の接合部であり、典型的にジヌクレオチドGUで終結する。本発明の好ましい実施形態では、スプライスドナー部位の末端GUジヌクレオチド(または対応するDNA配列中のGTジヌクレオチド)の一方または両方を改変してスプライス部位を除去する。
【0079】
スプライスアクセプター部位とは、スプライシングプロセス中に除去されるRNAの3’側にあるRNA中の部位であり、切断されてスプライスドナー部位内のヌクレオチド残基に再連結される部位を含有する。ゆえに、スプライスアクセプター部位はイントロンの終点(典型的にジヌクレオチドAGで終結する)と下流エキソンの始点の接合部である。本発明の好ましい実施形態では、スプライスアクセプター部位の末端AGジヌクレオチドの一方または両方を改変してスプライス部位を除去する。
【0080】
ポリヌクレオチド
本発明で使用されるポリヌクレオチドはDNAまたはRNAを含む。それらは一本鎖または二本鎖であってよい。当業者には、遺伝暗号の縮重の結果として、多数の異なるポリヌクレオチドが同一ポリペプチドをコードしうることが理解される。さらに、当業者は、通常の技術を使用して、本発明で使用されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響しないヌクレオチド置換を施し、前記ポリペプチドが発現される任意の特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映することができることが理解されよう。当技術分野で利用可能な任意の方法によってポリヌクレオチドを改変してよい。本発明のポリヌクレオチドのin vivo活性または寿命を向上させるためにかかる改変を実行することができる。
【0081】
本発明で使用されるポリヌクレオチドは、例えば、発現ポリペプチドの細胞性分泌を支援するために融合タンパク質をコードすることができる。例えば、HSV−tkポリペプチドを細胞から発現させたい場合、該タンパク質を特定の細胞区画または分泌経路に向けるターゲティング配列を付加することが望ましいであろう。前記ターゲティング配列は当技術分野において詳しく明らかにされている。
【0082】
ポリヌクレオチド、例えばDNAポリヌクレオチドは、組換え、合成、または当業者が利用可能な任意の手段によって作製することができる。また標準的技術によってそれらをクローニングしてよい。
【0083】
長いポリヌクレオチドは、一般的に、組換え手段を使用して、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術を使用して作製される。これには以下が含まれる:クローニングしたい脂質ターゲティング配列の領域をつなげたプライマー(例えば約15〜30ヌクレオチド)のペアを作製し、動物またはヒト細胞から取得されたmRNAまたはcDNAに前記プライマーを接触させ、所望の領域の増幅を生じさせる条件下でポリメラーゼ連鎖反応を実施し、増幅された断片を(例えばアガロースゲルで反応混合物を精製することによって)単離し、増幅されたDNAを回収する。プライマーは、適切な制限酵素認識部位を含有し、増幅されたDNAを適切なクローニングベクターにクローニングすることができるように設計してよい。
【0084】
本発明のポリヌクレオチドは突然変異体チミジンキナーゼのコード領域のみを含有してよいことが理解される。しかし、ポリヌクレオチドが、作動可能な連結により、標的細胞中でコード配列の効率的な翻訳を可能にする核酸の部分をさらに含むのであれば好ましい。ポリヌクレオチドが(DNA形態である場合)、コード領域および、標的細胞中でのコード領域の効率的な翻訳を可能にする核酸の部分の転写を可能にする、作動可能に連結されたプロモーターをさらに含むのであればさらに好ましい。
【0085】
タンパク質
本明細書中で使用される用語「タンパク質」には、一本鎖ポリペプチド分子ならびに複数ポリペプチドの複合体が含まれる。その複合体では、個々の成分であるポリペプチドが共有結合または非共有結合によって連結されている。本明細書中で使用される用語「ポリペプチド」および「ペプチド」とは、モノマーがアミノ酸であり、それらがペプチド結合またはジスルフィド結合によって連結されているポリマーを表す。サブユニットおよびドメインという用語もまた、生物学的機能を有するポリペプチドならびにペプチドを表す場合がある。
【0086】
変異体、誘導体、アナログ、ホモログおよび断片
本明細書中で記載される具体的なタンパク質およびヌクレオチドに加えて、本発明はその変異体、誘導体、アナログ、ホモログおよび断片の使用をも包含する。
【0087】
本発明との関連では、任意の所与の配列の変異体(variant)とは、(アミノ酸残基であろうと核酸残基であろうと)その具体的な残基の配列が、対象となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドが少なくとも1つのその固有の機能を保持する様式で改変されている配列である。変異体配列は、天然に存在するタンパク質中に存在する少なくとも1個の残基についての付加、欠失、置換改変置き換え(substitution modification replacement)および/または変異(variation)を施すことによって得ることができる。
【0088】
本発明のタンパク質またはポリペプチドに関して、本明細書中で使用される用語「誘導体」は、その配列からの、あるいはその配列への1個(またはそれ以上)のアミノ酸残基の置換、変異、改変、置き換え、欠失および/または付加を含み、ただし、結果として生じるタンパク質またはポリペプチドが少なくとも1つのその固有の機能を保持するものである。
【0089】
ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関して、本明細書中で使用される用語「アナログ」は、任意のミメティック、すなわち、それが模倣するポリペプチドまたはポリヌクレオチドの少なくとも1つの固有の機能を有する化合物を含む。
【0090】
典型的に、アミノ酸置換、例えば1、2または3〜10または20個の置換を施してよく、ただし、改変された配列が必要な活性または能力を保持することを条件とする。アミノ酸置換とは、天然に存在しないアナログの使用を含むことができる。
【0091】
本発明で使用するタンパク質は、サイレントな変化を引き起こし、機能上等価なタンパク質を生じさせるアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有することもできる。輸送またはモジュレーション機能が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質の類似性に基づいて、意図的なアミノ酸置換を施してよい。例えば、負荷電アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ;正荷電アミノ酸には、リシンおよびアルギニンが含まれ;ならびに、同等の親水性値を有する非荷電極性頭部基(head groups)を有するアミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンが含まれる。
【0092】
例えば下記の表にしたがって保存的置換を施すことができる。第2欄の同一ブロックおよび好ましくは第3欄の同一行のアミノ酸を互いに置換することができる:
【表1】

【0093】
「断片」もまた変異体であり、この用語は、典型的に、機能上あるいは、例えばアッセイにおいて関心の持たれる、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの選択された領域を表す。ゆえに「断片」とは、完全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部分であるアミノ酸または核酸配列を表す。
【0094】
前記変異体は、標準的組換えDNA技術、例えば部位特異的突然変異誘発を使用して作製することができる。挿入が施される場合、挿入部位の両側にある天然に存在する配列に対応する5’および3’隣接領域とともにその挿入物をコードする合成DNAを使用する。前記隣接領域は、天然に存在する配列中の部位に対応する好都合な制限部位を含有し、それにより、その配列を適切な酵素(群)で切断して、前記合成DNAをその切断物にライゲーションすることができる。次いで本発明にしたがってそのDNAを発現させ、コードされたタンパク質を生成させる。これらの方法は、単に、DNA配列の操作に関する当技術分野において公知の多数の標準的技術を説明するためのものであり、他の公知の技術を使用してもよい。
【0095】
ポリヌクレオチド変異体は好ましくはコドン最適化配列を含む。コドン最適化は、RNAの安定性を向上させ、したがって遺伝子発現を向上させる方法として当技術分野において公知である。遺伝暗号の重複とは、複数の異なるコドンが同一アミノ酸をコードしうることを意味する。例えば、ロイシン、アルギニンおよびセリンはそれぞれ6種の異なるコドンによってコードされる。異なる生物では、異なるコドンの使用が優先される。HIV等のウイルスは、例えば、多数の稀なコドンを使用する。稀なコドンがそれに対応する哺乳動物で一般に使用されるコドンに置き換えられるようにヌクレオチド配列を変化させることによって、哺乳動物標的細胞中でのその配列の発現を増加させることができる。哺乳動物細胞ならびに種々の他の生物に関するコドンの使用表は当技術分野において公知である。好ましくは、配列の少なくとも一部分においてコドンを最適化する。さらにより好ましくは、配列全体にわたってコドンを最適化する。
【0096】
ベクター
当技術分野において周知であるように、ベクターはある環境から別の環境への物質の移動を可能にするかまたは促進するツールである。本発明にしたがって、かつ一例として、組換えDNA技術で使用されるいくつかのベクターは、物質、例えばDNAのセグメント(例えば異種DNAセグメント、例えば異種cDNAセグメント)を宿主および/または標的細胞に移動することを可能にする。その目的は、本発明で使用されるヌクレオチド配列を含むベクターを複製させること、および/または本発明で使用されるタンパク質を発現させることである。組換えDNA技術で使用されるベクターの例には、非限定的に、プラスミド、染色体、人工染色体またはウイルスが含まれる。
【0097】
好ましくは、本発明で使用されるポリヌクレオチドをベクターに組み入れる。好ましくは、本発明で使用するためのベクター中のポリヌクレオチドは、宿主細胞によるそのコード配列の発現をもたらすことが可能な制御配列に作動可能に連結される。すなわち、そのベクターは発現ベクターである。用語「作動可能に連結」とは、記載される構成要素が、それらがその意図される様式で機能することを可能にする関係にあることを意味する。コード配列に「作動可能に連結」されている調節配列は、その制御配列と適合する条件下でそのコード配列の発現が達成されるように連結されている。
【0098】
制御配列は、例えば、その制御配列によって主導される転写のレベルが転写調節因子にさらに応答性となるようにする別の転写調節エレメントを付加することによって改変することができる。
【0099】
ベクターを適切な宿主に形質転換またはトランスフェクトして、tk遺伝子産物の発現を提供してよい。そのプロセスは、ベクターによる、タンパク質をコードするコード配列の発現をもたらす条件下で、上記発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養するステップ、および場合により発現されたタンパク質を回収するステップを含んでよい。
【0100】
本発明で使用されるベクターは、例えば、複製開始点、場合によりポリヌクレオチドの発現用のプロモーターおよび場合によりそのプロモーターのレギュレーターを備えたプラスミドまたはウイルスベクターであってよい。前記ベクターは、1つまたはそれ以上の選択可能なマーカー遺伝子、および/または追跡可能なマーカー、例えばGFPを含有してよい。ベクターを使用して、例えば、宿主細胞をトランスフェクトまたは形質転換してよい。
【0101】
本発明で使用するためのタンパク質をコードする配列に作動可能に連結されている制御配列には、プロモーター/エンハンサーおよび他の発現調節シグナルが含まれる。これらの制御配列は、発現ベクターがそこで使用されるように設計されている対象の宿主細胞と適合性であるように選択することができる。用語「プロモーター」は当技術分野において周知であり、最小プロモーターから、上流エレメントおよびエンハンサーを含むプロモーターまでにわたるサイズおよび複雑さの核酸領域を包含する。
【0102】
プロモーターは、典型的に、哺乳動物細胞において機能性であるプロモーターから選択されるが、原核生物のプロモーターおよび他の真核細胞において機能性のプロモーターを使用してよい。プロモーターは、典型的に、ウイルスまたは真核生物の遺伝子のプロモーター配列由来である。例えば、発現が生じる場である細胞のゲノム由来のプロモーターであってよい。真核生物のプロモーターに関して、それらは、ユビキタスな様式(例えばa−アクチン、b−アクチン、チュブリンのプロモーター)で、あるいは組織特異的様式(例えばピルビン酸キナーゼに関する遺伝子のプロモーター)で機能するプロモーターであってよい。ウイルスのプロモーター、例えばモロニーマウス白血病ウイルス末端反復配列(MMLV LTR)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーターまたはヒトサイトメガロウイルス(CMV)IEプロモーターを使用してもよい。
【0103】
また、プロモーターが誘導性であり、それにより、細胞の寿命の期間、異種遺伝子の発現レベルを調節できることも有利である場合がある。誘導性とは、プロモーターを使用して得られる発現のレベルが調節できることを意味する。
【0104】
さらに、別の調節配列、例えばエンハンサー配列を付加することによって任意の前記プロモーターを改変することができる。上記2種またはそれ以上の異なるプロモーター由来の配列エレメントを含むキメラプロモーターを使用してもよい。
【0105】
好ましくは、ウイルスベクターは特定の細胞タイプまたは細胞タイプ群に優先的に形質導入されるものである。
【0106】
レトロウイルスベクター
一実施形態では、本発明で使用されるベクターは、ウイルスが標的細胞に侵入した後、複製できず、子孫の感染性ウイルス粒子を産生できないように遺伝子操作されているレトロウイルスに基づくベクターである。組織培養条件および生存生物中の両方における遺伝子の送達に広く使用される多数のレトロウイルスが存在する。その例には、マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、フジナミ肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo−MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo−MSV)、アベルソンマウス白血病ウイルス(A−MLV)、トリ骨髄球腫症ウイルス−29(MC29)、およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)およびレンチウイルスをはじめとするすべての他のレトロウイルス科が含まれるが、それらに限定されない。レトロウイルスの詳細なリストはCoffinら, 1997, "retroviruses", Cold Spring Harbour Laboratory Press, JM Coffin, SM Hughes, HE Varmus(編) pp 758-763に見出すことができる。
【0107】
レトロウイルスゲノムの基本構造は5’LTRおよび3’LTRであり、その間またはその範囲内に、そのゲノムのパッケージングを可能にするパッケージングシグナル、プライマー結合部位、宿主細胞ゲノムへの組込みを可能にする組込み部位およびパッケージング構成要素をコードするgag、polおよびenv遺伝子(これらはウイルス粒子の組立てに必要なポリペプチドである)が位置する。さらに複雑なレトロウイルスは追加の特徴を有し、その追加の特徴は、例えばHIVのrevおよびRRE配列である。これらは組込まれたプロウイルスのRNA転写産物を感染した標的細胞の核から細胞質へ効率的に運ぶことを可能にする。
【0108】
プロウイルスでは、これらの遺伝子には、末端反復配列(LTR)と称される領域がその両端につながっている。LTRはプロウイルスの組込み、および転写を担う。LTRはエンハンサー−プロモーター配列としても働き、ウイルス遺伝子の発現を制御することができる。レトロウイルスRNAのキャプシド形成は、ウイルスゲノムの5’末端に位置するpsi配列により引き起こされる。
【0109】
LTR自体は一致する配列であり、それはU3、RおよびU5と称される3つのエレメントに分けることができる。U3はRNAの3’末端に特有の配列由来である。RはRNAの両端で反復される配列由来であり、U5はRNAの5’末端に特有の配列由来である。前記3つのエレメントのサイズは種々のレトロウイルス間でかなり変動しうる。
【0110】
欠損レトロウイルスベクターゲノムでは、gag、polおよびenvは存在しないか、あるいは機能性でなくてよい。そのRNAの両端のR領域は反復配列である。U5およびU3はそれぞれRNAゲノムの5’および3’末端に特有の配列である。
【0111】
より好ましくは、ウイルスベクターは標的化ベクターであり、すなわち、それはネイティブのウイルスと比較して改変された組織親和性を有し、それによりそのベクターは特定の細胞を標的にするようになっている。その標的化はレトロウイルスのEnvタンパク質を改変することによって達成することができる。好ましくは、エンベロープタンパク質は、無毒なエンベロープまたは一次標的細胞内で無毒な量で産生されるであろうエンベロープ、例えばMMLV広宿主性エンベロープまたは改変型広宿主性エンベロープである。
【0112】
好ましくは、エンベロープはヒト細胞への形質導入を可能にするエンベロープである。適切なenv遺伝子の例には、非限定的に、VSV−G、MLV広宿主性env、例えば4070A env、RD114ネコ白血病ウイルスenvまたはインフルエンザウイルス由来の赤血球凝集素(HA)が含まれる。Envタンパク質は、限られた数のヒト細胞タイプの受容体に結合する能力を有するEnvタンパク質であってよく、また、ターゲティング部分を含有する操作されたエンベロープであってよい。envおよびgag−polコード配列は、選択されたパッケージング細胞株において活性なプロモーターおよび場合によりエンハンサーから転写され、その転写ユニットはポリアデニル化シグナルによって終結する。例えば、パッケージング細胞がヒト細胞である場合、適切なプロモーター−エンハンサーの組み合わせはヒトサイトメガロウイルス主要前初期(hCMV−MIE)遺伝子由来のものであり、また、SV40ウイルス由来のポリアデニル化シグナルを使用してよい。他の適切なプロモーターおよびポリアデニル化シグナルは当技術分野において公知である。
【0113】
MLV
好ましくは、本発明で使用されるレトロウイルスベクターはマウス白血病ウイルス(MLV)ベクターである。広宿主性モロニーマウス白血病ウイルス(MLV−A)由来のレトロウイルスベクターは世界中の臨床プロトコルで一般に使用される。これらのウイルスは細胞表面リン酸輸送体受容体を侵入に使用し、次いで増殖性細胞の染色体に恒久的に組込まれる。その後、前記遺伝子は細胞の寿命期間にわたって維持される。MLVに基づく構築物上の遺伝子活性は制御が容易であり、長期間にわたって有効でありうる。これらMLVに基づく系を用いて行われる臨床試験では、その耐容性が良好であり、有害な副作用がないことが示されている。
【0114】
本発明で使用するためのMLVベクターの一例はSFCMM−3由来のベクターである。このベクターは自殺遺伝子HSV−tkおよびマーカー遺伝子ΔLNGFRの両者を保持する(Verzeletti 98, Human Gene Therapy 9:2243)。SFCMM−3の作製に使用される元のベクターはLXSNである(Millerら Improved retroviral vectors for gene transfer and expression. BioTechniques 7:980-990, 1989)(Genebank登録番号#28248)。LXSNベクターの改変は、唯一のHpa I部位(「平滑末端切断」)にHSV−tk遺伝子を挿入し、Hind IIIおよびNae Iで消化することによってneo遺伝子を除去し、その部位にΔLNGFRをコードするcDNAを挿入することによって行った。
【0115】
レンチウイルスベクター
一実施形態では、本発明のベクターはレンチウイルスベクターである。レンチウイルスベクターはレトロウイルスベクターの大きな群の一部分である。レンチウイルスの詳細なリストはCoffinら("Retroviruses" 1997 Cold Spring Harbour Laboratory Press, JM Coffin, SM Hughes, HE Varmus (編) pp 758-763)に見出すことができる。簡単には、レンチウイルスは霊長類群および非霊長類群に分類することができる。霊長類レンチウイルスの例には、非限定的に:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因物質、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれる。非霊長類レンチウイルス群には、原型「スローウイルス」ビスナ/マエディウイルス(VMV)、ならびに関連するヤギ関節炎−脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)およびさらに最近報告されたネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびウシ免疫不全ウイルス(BIV)が含まれる。
【0116】
レンチウイルスファミリーと他の種類のレトロウイルスの相違は、レンチウイルスが分裂および非分裂細胞の両者に感染する能力を有することである(Lewis, 1992; Lewis and Emerman, 1994)。対照的に、他のレトロウイルス、例えばMLVは、非分裂性または緩やかに分裂する細胞、例えば、筋肉、脳、肺および肝臓組織を構成する細胞等には感染することができない。レンチウイルスは最終分化細胞/初代(primary)細胞に形質導入することができるので、レンチウイルスによるスクリーニングストラテジーの使用により、主要な標的である非分裂性または緩やかに分裂する宿主細胞でのライブラリーの選択が可能にされる。
【0117】
アデノウイルスベクター
別の実施形態では、本発明のベクターはアデノウイルスベクターである。アデノウイルスは二本鎖の直線状DNAウイルスであり、RNA中間体を経由しない。50種を超える種々のヒト血清型のアデノウイルスが存在し、遺伝子配列のホモロジーに基づいて6亜群に分類される。アデノウイルスの天然の標的は呼吸上皮および胃腸上皮であり、一般に軽度の症状しか生じさせない。アデノウイルスベクター系では、血清型2型および5型(95%の配列ホモロジーを有するもの)が最も一般に使用され、通常それらは若年者の上気道感染症に関連する。
【0118】
アデノウイルスはエンベロープを有さず、正二十面体(icosohedrons)である。典型的なアデノウイルスは140nmのキャプシドに包まれたDNAウイルスを含む。二十面体の対称性のウイルスは152個のキャプソメア:240個のヘキソンおよび12個のペントンから構成される。粒子のコアは36kb直線状二重鎖DNAを含有し、それは5’末端で末端タンパク質(TP)と共有結合していて、DNA複製用のプライマーとして働く。前記DNAは逆方向末端反復配列(ITR)を有し、それらの長さは血清型によって異なる。
【0119】
アデノウイルスはエンベロープを有さない二本鎖DNAのウイルスであり、広い範囲のヒトおよび非ヒト起源の細胞タイプへのin vivoおよびin vitro形質導入が可能である。これらの細胞には、呼吸気道上皮細胞、肝細胞、筋細胞、心筋細胞、滑膜細胞、初代乳房上皮細胞および分裂後の最終分化細胞、例えば神経細胞が含まれる。
【0120】
またアデノウイルスベクターは非分裂細胞に形質導入する能力を有する。このことは、肺上皮中の罹患細胞が緩やかなターンオーバー率を有する疾患、例えば嚢胞性線維症に関して非常に重要である。実際、アデノウイルスの媒介により、嚢胞性線維症に罹患している成人患者の肺に嚢胞性線維症輸送体(CFTR)を導入することを利用する複数の試みが進行中である。
【0121】
アデノウイルスは遺伝子治療および異種遺伝子の発現用のベクターとして使用されている。その大きな(36キロベースの)ゲノムは8kbまでの外来性挿入DNAを収容することができ、補完細胞株で効率的に複製して、1012までの非常に高い力価を得ることができる。ゆえにアデノウイルスは初代非複製細胞で遺伝子の発現を研究するのに最良な系の1つである。
【0122】
アデノウイルスゲノムからのウイルス遺伝子または外来遺伝子の発現は複製中の細胞を必要としない。アデノウイルスベクターは受容体媒介性のエンドサイトーシスによって細胞に侵入する。細胞の内側に入った後、アデノウイルスベクターが宿主染色体に組込まれることはめったにない。その代わりに、エピソームとして(宿主ゲノムから独立して)、宿主の核中の直線状ゲノムとして機能する。ゆえに、組換えアデノウイルスを使用すると、宿主ゲノムへのランダムな組込みに関連する問題が軽減される。
【0123】
ポックスウイルスベクター
本発明にしたがってポックスウイルスベクターを使用してよい。その理由は、そのゲノムに大きいDNA断片を容易にクローニングすることができるからである。また、組換え弱毒化ワクシニア変異体が報告されている(Meyerら, 1991; Smith and Moss, 1983)。
【0124】
ポックスウイルスベクターの例には、非限定的にレポリポックスウイルス:Uptonら, 1986,(ショープ線維腫ウイルス);カプリポックスウイルス:Gershonら, 1989,(ケニアヒツジ−1);オルソポックスウイルス:Weirら, 1983,(ワクシニア);Espositoら,1984,(サル痘および天然痘ウイルス);Hrubyら, 1983,(ワクシニア);Kilpatrickら, 1985,(ヤバサル腫瘍ウイルス);アビポックスウイルス:Binnsら,(1988)(鶏痘);Boyleら, 1987,(鶏痘);Schnitzleinら, 1988,(鶏痘,ウズラ痘);エントモポックス(Lytvynら, 1992が含まれる。
【0125】
ポックスウイルスベクターは真核細胞での目的の遺伝子に関する発現運搬体として広く使用される。種々の宿主細胞でのそのクローニングおよび増殖の容易さにより、特に、外来タンパク質の発現用に、ならびにワクチン抗原の送達運搬体としてポックスウイルスベクターが広く使用されている(Moss, 1991)。
【0126】
ワクシニアウイルスベクター
本発明のベクターはワクシニアウイルスベクター、例えばMVAまたはNYVACであってよい。最も好ましいのは、ワクシニア株の改変型ウイルスであるアンカラ(MVA)またはその派生株である。ワクシニアベクターの代替物には、アビポックスベクター、例えば鶏痘またはALVACとして公知のカナリア痘およびその派生株が含まれ、それらはヒト細胞に感染し、組換えタンパク質を発現することができるが、複製することができない。
【0127】
送達系
本発明は、本発明の突然変異体tkポリヌクレオチドに関する送達系をさらに提供する。
【0128】
本発明の送達系はウイルス性または非ウイルス性送達系であってよい。非ウイルス性送達機構には、非限定的に脂質媒介性のトランスフェクション、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、カチオン性表面両親媒性物質(cationic facial amphiphiles)(CFA)およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0129】
任意の適切な遺伝子送達運搬体(GDV)によって標的細胞集団にポリヌクレオチドを送達することができる。GDVには、脂質またはタンパク質複合体中で製剤化されるか、あるいは裸のDNAとしてインジェクションまたは微粒子銃送達によって投与されるDNA、ウイルス、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、マウス白血病ウイルス、セムリキ森林ウイルスおよびバキュロウイルスが含まれるが、それらに制限されない。別法では、細胞、例えば単球、マクロファージ、リンパ球または造血幹細胞によってポリヌクレオチドが送達される。特に、細胞依存的送達系が使用される。この系では、TKタンパク質をコードするポリヌクレオチドが1種またはそれ以上の細胞にex vivoで導入され、次いで患者に導入される。
【0130】
本発明の薬剤は単独で投与してよいが、一般には医薬組成物として投与される。
【0131】
宿主細胞
本発明のベクターおよびポリヌクレオチドは、そのベクター/ポリヌクレオチドを複製し、ならびに/あるいは本発明のポリヌクレオチドによってコードされるTKを発現する目的で宿主細胞に導入することができる。宿主細胞は、細菌細胞または真核細胞、例えば酵母、昆虫または哺乳動物細胞であってよい。
【0132】
宿主細胞はウイルスのパッケージングおよび増殖のための細胞、例えば当技術分野において周知のレトロウイルスのパッケージング細胞株であってよい。
【0133】
宿主細胞は、動物または(ヒトであろうと動物であろうと)患者の、破壊することが望まれる細胞であってよい。本発明のポリヌクレオチドおよびベクターは破壊対象の細胞を標的にするのに有用である。TKを発現する細胞を、TKによって毒性形態に変換される実質的に無毒な薬剤と接触させてよい。
【0134】
細胞を破壊する方法
本発明の一態様では、細胞を破壊する方法であって、下記ステップを含む方法を提供する:
(i) 本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを該細胞に導入するステップ;
(ii)該細胞にチミジンキナーゼを発現させるステップ;および
該細胞を、チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤と接触させるステップ。
【0135】
ポリヌクレオチドまたはベクターを細胞に導入するステップ、および細胞を実質的に無毒な薬剤と接触させるステップは、任意の順序であってよい。破壊対象の細胞は、in vitro、例えば培養中で生育している細胞であってよく、あるいはそれらは動物の一部分である細胞であってよい。破壊することが望まれる細胞の代表例は、T細胞、自己免疫性細胞、腫瘍細胞、特定の遺伝子を発現しないか、あるいは不適切に発現する細胞、および細菌、ウイルス、または他の細胞内寄生虫が感染している細胞である。
【0136】
治療
本明細書中のすべての、治療への言及には、治癒的、緩和的および予防的治療が含まれることが理解されよう。哺乳動物の治療が特に好ましい。ヒトおよび動物の治療はともに本発明の範囲内である。
【0137】
本発明の一態様では、破壊の必要がある細胞を有する患者を治療する方法であって、下記ステップを含む方法を提供する:
(i) 本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは医薬組成物を患者に導入するステップ;
(ii) 該ポリヌクレオチドまたは発現ベクターを該細胞に取り込ませるステップ;
(iii)該細胞にチミジンキナーゼを発現させるステップ;および
(iv) チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤を該患者に導入するステップ。
【0138】
本発明の別の態様では、破壊の必要がある細胞を有する患者を治療する方法であって、下記ステップを含む方法を提供する:
(i) 患者由来の細胞またはドナー細胞を取り出すステップ;
(ii) 本発明のポリヌクレオチドまたは発現ベクターをex vivoで該細胞に導入するステップ;
(iii)該改変細胞を該患者に導入するステップ;
(iv) 該細胞にチミジンキナーゼを発現させるステップ;および
チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤を該患者に投与するステップ。
【0139】
本発明のポリヌクレオチド、ベクターおよび方法によって治療することができる疾患の代表例には、癌、角質増殖、前立腺肥大、甲状腺機能亢進症、多種多様な内分泌疾患、自己免疫疾患、アレルギー、再狭窄、多種多様なウイルス性疾患、例えばHIVおよびAIDS、肝炎および細胞内寄生虫症等の疾患が含まれる。
【0140】
本発明のポリヌクレオチド、ベクターおよび方法は、同種間骨髄移植後の治療経過において使用してよい。同種間骨髄移植は、多数の血液学的悪性腫瘍、例えば白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫に関して選択される治療である。同種間骨髄移植では、特に高用量の化学放射線療法とともに使用すると、自己または同系移植と比較して優れた結果が得られることが示されている。
【0141】
同種間骨髄移植を実施する場合、移植物からアロ反応性Tリンパ球を除去して、移植片対宿主病(GvHD)を予防してよい。GvHDが生じるのは、移植された幹細胞移植物中のT細胞がレシピエントの身体に対して攻撃を開始する場合である。しかし、このような細胞の除去により、疾患再発、移植物拒絶およびウイルス感染の再活性化の発生率が増加しうる。これらの影響に対抗するために、同種間骨髄移植後、一定の間隔をおいてドナーTリンパ球を導入することによって、同種間骨髄移植患者を治療することができる。しかし、同種間骨髄移植後にドナーTリンパ球を遅延導入することについての治療上の見込みは、その治療の頻繁に起りうる潜在的に致死の合併症であるGvHDによって制限される。この問題は、「自殺遺伝子」をコードするポリヌクレオチドを含むように遺伝子操作されたT細胞を患者に投与することによって対処されている。突然変異体TKをコードする本発明のポリヌクレオチドおよびベクターをこの関連で使用してよい。
【0142】
ゆえに本発明の一態様では、患者での移植片対宿主病を予防する方法であって、下記ステップを含む方法を提供する:
(i) 本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含むように遺伝子操作されたT細胞を宿主に投与するステップ;および
(ii)実質的に無毒な薬剤とチミジンキナーゼとの相互作用により、該患者において移植片対宿主効果をもたらす能力を有する遺伝子操作されたT細胞を死滅させるのに有効な量の該薬剤を、移植片対宿主病が発生する前に該宿主に投与するステップ。
【0143】
突然変異体tk遺伝子をコードするポリヌクレオチドまたはベクターを含む細胞は、好ましくは、突然変異体tk遺伝子の存在をモニターするために使用してよいマーカー遺伝子を含む。好ましくは、そのマーカー遺伝子は本発明のポリヌクレオチドまたは発現ベクターによってコードされる。前記マーカー遺伝子の一例は改変型低親和性神経成長因子受容体(ΔLNGFR)である。改変型LNGFRは、形質導入された細胞の表面で発現されると、そのリガンドに関して、対応する改変されていないNGF受容体の結合特性を保持するが、リガンド結合の結果としてのシグナル伝達を達成することができない。具体的なLNGFRの改変例は米国特許出願第08/602,791号に記載されている。
【0144】
医薬組成物
医薬組成物は、治療上有効量の製薬上活性な薬剤を含むか、あるいはそれからなる組成物である。医薬組成物は、好ましくは、製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤(それらの組み合わせを含む)を含む。治療用途に関して許容される担体または希釈剤は製薬分野において周知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co.(A. R. Gennaro 編 1985)に記載されている。製薬用担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図される投与経路および標準の製薬上の実務に鑑みて選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤または希釈剤として、あるいはそれに加えて、任意の適切な結合剤(群)、滑沢剤(群)、懸濁化剤(群)、コーティング剤(群)、可溶化剤(群)を含んでよい。
【0145】
製薬上許容される担体の例には、例えば、水、塩溶液、アルコール、シリコン、ワックス、黄色ワセリン(petroleum jelly)、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘性パラフィン(viscous paraffin)、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、石油(petroethral)脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、等が含まれる。
【0146】
適切であれば、医薬組成物の投与は下記の任意の1つ以上の様式によって行うことができる:吸入、坐剤または膣坐剤の剤形で、ローション剤、溶液剤、クリーム剤、軟膏剤または散布粉剤の剤形で局所的に、皮膚パッチの使用により、賦形剤、例えばデンプンまたはラクトースを含有する錠剤の剤形で、あるいは単独または賦形剤との混合物中のカプセルまたは卵形剤(ovules)中で、あるいは香味剤または着色剤を含有するエリキシル剤、溶液剤または懸濁液剤の剤形で経口的に投与するか、あるいは例えば空洞内(intracavernosally)、静脈内、筋肉内または皮下に非経口的に注射することができる。非経口投与では、滅菌水溶液の剤形で組成物を最良に使用することができる。滅菌水溶液には、他の物質、例えば十分な塩または単糖を含有させて、該溶液を血液と等張にすることができる。頬腔または舌下投与では、錠剤またはロゼンジ剤の剤形で組成物を投与してよい。錠剤またはロゼンジ剤は慣用の様式で製剤化することができる。
【0147】
異なる送達系では組成物/製剤についての異なる必要条件が存在するであろう。一例として、本発明の医薬組成物は、ミニポンプを使用して、あるいは粘膜経路によって、例えば鼻内スプレーまたは吸入用のエアロゾルまたは内服液として、あるいは非経口的に送達する目的で製剤化してよい。非経口の場合、組成物は、例えば静脈内、筋肉内または皮下経路による送達のための注射可能な剤形によって製剤化される。あるいは、両経路によって送達されるように製剤を設計してよい。
【0148】
以下、本発明の別の好ましい特徴および実施形態を、非限定的な例として、添付の図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0149】
SFCMM−3#35上清および形質導入された細胞中のスプライス型のHSV−tkの相対出現頻度
TaqMan 7700システムを使用して、HSV−tkのそれぞれの型に特異的な2種類の定量的リアルタイムRT−PCR(上清由来のRNA)またはPCR(形質導入されたリンパ球由来のDNA)によって、スプライス型の相対出現頻度(スプライス型/スプライス型+非スプライス型(%))を評価した。
【0150】
材料および方法
SFCMM−3レトロウイルスベクター
GP+envAm12(Am12)から誘導した産生細胞株であるSFCMM−3クローン35(Am12/SFCMM−3#35)を、2mMグルタミンおよび10%の放射線照射済みFBS(Hyclone)を含有するDMEM(Cambrex)培地中で5日間増殖させた。2mMグルタミンを添加したX−VIVO 15培地(Cambrex)中でコンフルエントになったフラスコからレトロウイルス上清を回収した。回収は、細胞を33℃で24時間インキュベートした後に行った。ウイルス含有上清をろ過し、次に使用するまで−80℃で保存した。
【0151】
T細胞の形質導入
健康なドナーから末梢血単核細胞を収集し、Lymphoprep(Nycomed)で遠心分離することによって単離した。
【0152】
末梢血リンパ球(PBL)をOKT3(30ng/ml)(Orthoclone)で刺激し、3%の自家(autologus)血漿、2mMグルタミンを含有し、600IU/mlの組換えヒトインターロイキン2(Proleukin)を添加したRPMI(Hyclone)中で培養した。OKT3で刺激されたPBL上でレトロウイルスベクター粒子(Am12/SFCMM−3#35由来の上清)を遠心することによってPBLの形質導入を実施した。OKT3で刺激した後2日目および3日目に2回の遠心サイクルを実施した。
【0153】
形質導入段階の後、リンパ球を収集し、実際に形質導入された細胞のパーセンテージをFACS分析によって評価した。その分析は、細胞表面マーカーとしてΔLNGFR分子を用いて行った。次いで、磁気ビーズ(Dynabeads)にコンジュゲートされた抗体によって、形質導入された細胞を選別し、数日間培養して増殖させ、全10日間の培養の後に凍結した。
【0154】
サンプル調製
QIAamp DNA Mini kit(Qiagen)を製造元のプロトコルにしたがって使用して1〜2×10個の細胞からDNAを精製し、OD260を測定することによって収量を決定した。QIAamp Viral RNA Mini Kit(Qiagen)を製造元のプロトコルにしたがって使用して140μlの上清からRNAを精製した。13.5μlの精製RNAをまず25℃で20分間のDNアーゼ処理に付し、95℃で5分間、DNアーゼを失活させた。次いでDNアーゼ処理RNAの半分を42℃で1時間逆転写した。その逆転写では、M−MLV逆転写酵素(Invitrogen)およびオリゴdTを使用した。合成されたcDNAを5倍希釈してから、リアルタイムPCRで使用した。
【0155】
リアルタイムPCRによるスプライス型の定量
非スプライス型および切断型のHSV−tkをpCR2.1 TOPOベクター(Invitrogen)にサブクローニングすることによってDNAの標準曲線を作成した。Primer ExpressTM 1.5ソフトウェア(PE Applied Biosystems)を使用して、非スプライス型およびスプライス型のHSV−tkを選択的に増幅して検出できるように、2つの異なる組のプライマーおよびプローブを設計した。TaqMan/ABI PRISM 7700配列検出システムを使用して、HSV−tkのそれぞれの型に特異的な2種類の定量的リアルタイムPCRを準備した。
【0156】
HSV−tkの非スプライス型に特異的な定量的リアルタイムPCRを準備するために、HSV−tk遺伝子のスプライシングされる領域中にプライマーおよびプローブを設計した。上記のように調製された100〜500ngのゲノムDNAまたは10μlのcDNA、1×TaqManユニバーサルPCRマスターミックス(PE Applied Biosystems)、各300nMの2種類のプライマーTKwtfor(5’−CGG CGG TGG TAA TGA CAA G−3’)およびTkwtrev(5’−GCG TCG GTC ACG GCA TA−3’)および200nMのTKwt MGBプローブ(5’−FAM CCA GAT AAC AAT GGG C−3’)を含有する25μl反応混合物中で、非スプライス型についてリアルタイムPCRを実施した。
【0157】
HSV−tkのスプライス型を選択的に検出するようにスプライス接合部を包含するTaqManプローブを設計した。上記のように調製された100〜500ngのゲノムDNAまたは10μlのcDNA、1×マスターミックス(PE Applied Biosystems)、各300nMの2種類のプライマーTKSP18(5’−GGA TGA GGG CCA CGA A−3’)およびTKSP16(5’−CGA ACA TCT ACA CCA CAC AAC A−3’)および200nMのTaq ManプローブPSP10(5’FAM−CCA GCA CGG CCC TGG TCG−TAMRA 3’)を含有する25μl反応混合物中で、TKのスプライス(切断)型に特異的な定量的リアルタイムPCRを実施した。サーマルサイクルの条件は下記の通りとした:50℃で2分間のUNGの初期活性化、次いで95℃で15分間のTaq Goldの活性化およびUNGの不活性化。その後、95℃で15秒間および60℃で1分間、40サイクルの増幅を実施した。ABI Prism 7700配列検出システム(Applied Biosystems)を使用し、MicroAmp光学用96ウェル反応プレート(Applied Biosystems)中で両方のPCRを並行して実施した。PCRサイクル3〜15から平均のベースライン蛍光を計算し、Ctを、レポーター色素の標準化蛍光強度が0.05に等しいPCRサイクルとして規定した。各TaqManアッセイにおいて、最初に投入したDNA量の対数に対してCt値をプロットすることによって、既知のコピー数(10〜4コピー/反応)を有する2種類の標準曲線を作成した。標準希釈物およびcDNAサンプルをそれぞれ2および3回分析した。両方のPCRを検証したところ、拡大したダイナミックレンジ(6対数)、高感度(<10コピー/反応)、良好な再現性(CV<5%)および繰り返し精度(CV<5%)が示された。
【0158】
結果
結果は表1に示される通りである。6種類の臨床用グレードのロットのSFCMM−3ベクターの上清、ならびに形質導入されたリンパ球の9種類の調製物について分析した。
【0159】
スプライス型の相対出現頻度は、6種類の臨床用グレードのロットのSFCMM−3上清のすべてにおいて5%未満であり(1.12+/−0.75、範囲0.65〜2.60)、SFCMM−3上清で形質導入されたTリンパ球の9種類の調製物でも同様であった(1.89+/−1.22、範囲0.84〜4.00)。
【実施例2】
【0160】
scSFCMM−3上清および形質導入された細胞中のスプライスされたTKの変異体
材料および方法
scSFCMM−3レトロウイルスベクターおよび産生細胞株
ベクターDNA TK3(TK3(Molmed)およびTK3は同一プラスミドscSFCMM−3の異なる調製物であり、Chalmers 2001, Molecular Therapy 4:146-148に記載されている)を、リン酸カルシウム共沈によって、エコトロピックパッケージング細胞株GP+ E−86(E86)にトランスフェクトした。E86細胞の一時的トランスフェクションから得られた上清をろ過し、それを使用してAm12細胞株を感染させた。免疫磁気選択を使用することによってTK3を含有する細胞のフラクションを単離し、得られたAm12/TK3バルク培養を増殖させた。Am12/TK3バルク培養を限界希釈した後、高い増殖能力およびTリンパ球に対する形質導入効率に基づいて、クローン#53、#71、および#80を選択した。
【0161】
2mMグルタミンおよび10%放射線照射済みFBS(Hyclone)を含有するDMEM(Cambrex)中でAm12/TK3クローンを増殖させた。2mMグルタミンを添加したX−VIVO 15培地(Cambrex)中でレトロウイルス上清を回収した。回収は、細胞を33℃で24時間インキュベートした後に行った。0.22μmフィルターでウイルス含有上清をろ過し、次に使用するまで−80℃で保存した。
【0162】
T細胞の形質導入
複数の健康なドナーから末梢血単核細胞を収集し、Lymphoprep(Nycomed)で遠心分離することによって単離した。
【0163】
末梢血リンパ球(PBL)をOKT3(30ng/ml)(Orthoclone)で刺激し、3%の自家血漿、2mMグルタミンを含有し、600IU/mlの組換えヒトインターロイキン2(Proleukin)を添加したRPMI(Hyclone)中で培養した。OKT3で刺激されたPBL上にレトロウイルスベクター粒子を遠心することによってPBLの形質導入を実施した。OKT3で刺激した後2日目および3日目に2回の遠心サイクルを実施した。
【0164】
形質導入段階の後、PBLを収集し、実際に形質導入された細胞のパーセンテージをFACS分析によって評価した。その分析は、細胞表面マーカーとしてΔLNGFR分子を用いて行った。次いで、磁気ビーズ(Dynabeads)にコンジュゲートされた抗体によって、形質導入された細胞を選別し、数日間培養して増殖させ、PCR分析のためにペレットを調製した。
【0165】
ポリメラーゼ連鎖反応
バルクの産生細胞株(Am12/TK3bulk2)ならびに限界希釈によって得られた単一産生細胞クローン(Am12/TK3#53、#71および#80)を分析した。感染性ウイルス粒子を含有する培養上清からRNAを抽出した。
【0166】
HTK4+プライマー(5’−TTC TCT AGG CGC CGG AAT TCG TT−3’)およびHTK2−プライマー(5’−ATC CAG GAT AAA GAC GTG CAT GG−3’)またはTKA1プライマー(5’−CGT ACC CGA GCC GAT GAC TT−3’)およびTKB1プライマー(5’−TGT GTC TGT CCT CCG GAA GG−3’)を用いてRT−PCRを実施した。10μlのDNアーゼ処理RNA、1.5mMのMgClを含む1×RT−PCRバッファー(PE Applied Biosystems)、各200μMのデオキシヌクレオチド(dNTP)、各200nMのプライマー、5mMのジチオトレイトール(DTT)、20UのRNアーゼ阻害剤、1μlのTitan Enzyme mixを含有する50μl反応混合物中で、Titan One tube RT−PCR System(Roche)を使用して、RT PCRを実施した。
【0167】
Am12/SFCMM−3#35由来の上清およびSFCMM−3で形質導入されたリンパ球由来のDNAを対照として使用した。RT(−)対照も並行して分析した。
【0168】
RT−PCRサイクルのプロファイルは、50℃で30分間の最初の逆転写ステップ、94℃で2分間の変性ステップ、次いで95℃で30秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリングおよび68℃で1分30秒間の伸長の40サイクル、ならびに68℃で10分間の1回の最終伸長ステップからなるものとした。10マイクロリットルの増幅産物をアガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0169】
SFCMM−3またはTK3ベクターで形質導入された複数のドナーのPBLからゲノムDNAを抽出した。100〜500ngのゲノムDNA、1.5mMのMgClを含む1×PCRバッファー(Applied Biosystems)、各200μMのdNTP、各1600nMのプライマーTK2S(5’−CCA TAG CAA CCG ACG TAC G−3’)およびTKAS(5’−GAA TCG CGG CCA GCA TAG C−3’)を含有する25μl反応混合物中でPCRを実施した。
【0170】
PCRサイクルのプロファイルは、94℃で15分間の最初の変性ステップ、次いで95℃で1分間の変性、65℃で30秒間のアニーリングおよび72℃で1分間の伸長の38サイクル、ならびに72℃で10分間の1回の最終伸長ステップからなるものとした。10マイクロリットルの増幅産物をアガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0171】
同一サンプルに対して、100〜500ngのゲノムDNA、1.5mMのMgClを含む1×PCRバッファー(Applied Biosystems)、各200μMのdNTP、各300nMのプライマーHTK4+(5’−TTC TCT AGG CGC CGG AAT TCG TT−3’)およびHTK2−(5’−ATC CAG GAT AAA GAC GTG CAT GG−3’)、1.25UのAmpliTaq Gold(Applied Biosystems)を含有する25μl反応混合物中でPCRを実施した。PCRサイクルのプロファイルは、94℃で15分間の最初の変性ステップ、次いで95℃で30秒間の変性、60℃で50秒間のアニーリングおよび72℃で1分間の伸長の40サイクル、ならびに72℃で10分間の1回の最終伸長ステップからなるものとした。10マイクロリットルの増幅産物をアガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0172】
TK3のスプライス型のcDNA配列解析
自動蛍光DNAシーケンス装置を使用して、Am12/TK3#53上清からHTK4+/HTK2−プライマーで増幅された産物の下側のバンドをシーケンシングした。シーケンシングはPRIMM(Milan, Italy)によって行われた。
【0173】
結果
培養上清のRNAからのHSV−tk RT−PCR
Am12およびE86パッケージング細胞株によって産生されたSFCMM−3ならびにTK3ベクター由来のRNAを分析すると2種類のPCR産物が検出された(図3)。TK3ベクターは、報告されているscSFCMM−3ベクター(Chalmers, 2001)と一致する。主要な産物(上側のバンド)は、すべてのサンプル中で非スプライス型のHSV−tk(HTK4+/HTK2−プライマーの場合は1020塩基対(bp);TKA1/TKB1プライマーの場合は401 bp)に相当する。SFCMM−3サンプル中の少ない方の産物(下側のバンド)のサイズは、227 bpが欠失している報告されているスプライス型に相当する(Garin 2001, Blood 97:122-129)。
【0174】
一方、TK3サンプル中の少ない方の産物のサイズはわずかに大きく、別のスプライス型の存在を示唆する。その型では、より小さい断片が欠失している;SFCMM−3とTK3サンプル間のその差異はTK2S/TKASプライマーの場合に特にはっきりわかる。HTK4+/HTK2−プライマーの場合にのみ観察される追加の中間産物は、起こりうるPCRのアーチファクトであると考えられる。
【0175】
形質導入されたリンパ球由来のDNAに対するHSV−tk PCR
SFCMM−3ならびにTK3で形質導入されたPBL由来のDNAを分析すると2種類のPCR産物が検出された(図4)。主要な産物(上側のバンド)は、非スプライス型のHSV−tk(TK2S/TKASプライマーの場合は644 bp;HTK4+/HTK2−プライマーの場合は1020 bp)に相当する。SFCMM−3サンプルでの下側のバンド(報告されているスプライス型に相当する)のサイズは、TK2S/TKASプライマーの場合は417 bpであり、HTK4+/HTK2−プライマーの場合は793 bpである。
【0176】
SFCMM−3とTK3におけるHSV−tk遺伝子の重要部分の配列
SFCMM−3とTK3におけるHSV−tk遺伝子の重要部分の配列は図5に示される通りである。スプライス型のSFCMM−3およびTK3で欠失する遺伝子セグメントは斜体で示される。対応するスプライシングドナー部位およびアクセプター部位には下線が付してある。
【0177】
配列データから、SFCMM−3(227 bp欠失)およびTK3(214 bp欠失)サンプルにおいて、別のスプライス型が生成されることが確認される。両事例で予測される通り、欠失対象の配列の5’および3’境界にそれぞれGUおよびAGジヌクレオチドが存在する。
【実施例3】
【0178】
部位特異的突然変異誘発(site direct mutagenesis)によるスプライシングの排除
材料および方法
野生型SFCMM−3ベクターから出発して、HSV−tk遺伝子中に種々の突然変異を有する組換えプラスミドを部位特異的突然変異誘発によって作製した(図6)。3番目の塩基の縮重変化を導入したが、すべての事例でHSV−tk酵素の野生型アミノ酸配列が保存された。
【0179】
部位特異的突然変異誘発
pcDNA3.1−tkプラスミドを作製するために、SFCMM−3プラスミドをEcoRIおよびXhoIで消化し、EcoRI/XhoIで消化したpcDNA3.1(Invitrogen)にそのEcoRI/XhoI断片をライゲーションした。
【0180】
pcDNA3.1−tkプラスミドから、QuickChange Site−Directed Mutagenesis kit(Stratagene)を使用して部位特異的突然変異誘発によってすべてのHSV−tk突然変異体を作製した。所望の突然変異の導入に使用したオリゴヌクレオチドプライマーは前記ベクターの反対の鎖にそれぞれ相補的なものとした。センスプライマーの配列は下記の表に報告される通りである:
【表2】

【0181】
得られたベクターをシーケンシングして、適正なヌクレオチド置換を確認した。次いでHSV−tk突然変異断片をEcoRIおよびXhoIで消化することによってpcDNA3.1から切り出して、SFCMM−3プラスミドにクローニングし、SFCMM−3 HSV−tk突然変異体を得た。
【0182】
SFCMM−3 HSV−tk突然変異体の配列(図1)を確認した後、各種類について1種類のプラスミドクローンを使用して、E86細胞を一時的にトランスフェクトした。SFCMM−3およびTK3プラスミドを対照として使用した。E86培養物から上清を収集し、それを使用して、実施例2の材料および方法の項に記載のようにアンホトロピックパッケージング細胞株Am12に安定的に形質導入した。得られた細胞集団をΔLNGFR発現に関して選択した。
【0183】
感染性レトロウイルス粒子を含有するE86ならびにAm12培養上清からRNAを抽出した。E86およびAm12上清由来のRNAに対して、TKA1およびTKB1プライマーを使用してRT−PCR反応を実行した。その際、実施例2の材料および方法の項に記載のプロトコルにしたがった。
【0184】
CEM A301細胞株およびPBLの形質導入およびPCR分析
10% FBS(Hyclone)および2mMグルタミンを添加したRPMI 1640(Hyclone)中でCEM A301細胞を培養した。SFCMM−3 HSV−tk突然変異体2および234を含有するAm12培養上清でCEM A301細胞を感染させた。形質導入前日に5×10細胞/mlで培養した。次いで細胞上にレトロウイルスベクター粒子の1回の遠心サイクルを施すことによって形質導入を実施した。形質導入段階の後、細胞を収集し、実際に形質導入された細胞のパーセンテージをFACS分析によって評価した。3つの異なるドナー由来のPBLに対して、SFCMM−3 HSV−tk突然変異体2ならびにSFCMM−3を含有するAm12上清で(実施例2の材料および方法の項に記載の通り)形質導入を行った。
【0185】
次いで、形質導入された細胞をΔLNGFR発現に関して選別し、数日間培養して増殖させた。
【0186】
実施例2の材料および方法の項に記載の通りに、形質導入された非選択細胞ならびに形質導入された選択細胞から、PCR分析用に1つのペレットを調製した。ペレット細胞からゲノムDNAを抽出し、100〜500ngのゲノムDNA、1.5mMのMgClを含む1×PCRバッファー(Applied Biosystems)、各200nMのdNTP、各300nMのプライマー、1.25単位のAmpliTaq Gold(Applied Biosystems)を含有する25μl反応混合物中で、(下記の表で指定される)TKA1およびTKB1またはTKY1およびTKY2またはTKZ1およびTKZ2プライマーを用いてPCR反応を実行した。PCRサイクルのプロファイルは、94℃で15分間の最初の変性ステップ、次いで94℃で30秒間の変性、60℃で50秒間のアニーリングおよび72℃で1分間の伸長の40サイクル、ならびに72℃で10分間の1回の最終伸長ステップからなるものとした。10マイクロリットルの増幅産物をアガロースゲル電気泳動によって分析した。
【表3】

【0187】
結果
E86上清中のHSV−tk突然変異体のスプライシング特性
非スプライス型のHSV−tk(401 bp)に相当する主要な産物(上側のバンド)は、陰性対照(トランスフェクトされていないE86細胞、E86 C−由来の上清)を除くすべてのサンプル中で検出される(図7)。
【0188】
E86パッケージング細胞株によって産生されるすべての突然変異体ベクター由来のRNAでは、SFCMM−3およびTK3ベクターと比べて、少ない方の産物(下側のバンド)の量が少ない。
【0189】
A12上清中のHSV−tk突然変異体のスプライシング特性
陰性対照(非感染細胞、Am12 C−由来の上清およびHO)を除くすべてのサンプル中で、非スプライス型のHSV−tkが検出される(図8)。TkMut4(突然変異4)およびTkMut34(突然変異3+4)突然変異体では下側のバンドが検出され、それぞれ、TK3およびSFCMM−3サンプルの下側のバンドに相当する。臭化エチジウムシグナルの強度はTK3およびSFCMM−3と比較して弱く、その突然変異体ではスプライスされた産物が目立たないことが示される。TkMut2(突然変異2)、TkMut234(突然変異2+3+4)およびTkMut24(突然変異2+4)突然変異体では、このバンドは検出されない。実際には、TkMut2、TkMut234およびTkMut24突然変異体では、約100および200 bpの2つの非常に弱いバンドが検出される。
【0190】
形質導入されたCEM A301細胞およびPBL中のHSV−tk突然変異体のスプライシング特性
TkMut2およびTkMut234突然変異体ならびにSFCMM−3およびTK3上清で形質導入されたCEM A301由来のゲノムDNAを、TKA1/TKB1プライマーを使用してPCRによって分析した。陰性対照(形質導入されていない細胞、CEM NT、およびHO)を除くすべてのサンプル中で、非スプライス型のHSV−tk(401 bp)が検出される(図9)。TK3およびSFCMM−3の選択前および選択後サンプルでは下側のバンドが検出され、それらはスプライス型のHSV−tk遺伝子に相当する。TkMut2およびTkMut234突然変異体で形質導入されたCEMでは、選択前も選択後も、下側のバンドが観察されない。
【0191】
HSV−tk遺伝子の別の領域で生じるオルタナティブスプライシング事象の可能性を除外するために、TKY1/TKY2およびTKZ1/TKZ2プライマーを使用して、TkMut2ならびにSFCMM−3上清で形質導入されたCEM A301についてのさらに詳細な分析を行った。
【0192】
すべてのサンプル中で、非スプライス型のHSV−tk(それぞれ542 bpおよび1149 bp)が検出される(図10)。SFCMM−3の選択前および選択後サンプルでは下側のバンドが検出され、それらはスプライス型のHSV−tk遺伝子に相当する。TkMut2で形質導入されたCEMでは、PCRプライマーTKY1/TKY2を用いても、TKZ1/TKZ2を用いても、下側のバンドが観察されない。
【0193】
SFCMM−3および/またはTkMut2上清で形質導入された3人の異なるドナー(Don1、Don2、Don3)のPBL由来のゲノムDNAを、TKA1/TKB1プライマーを使用してPCRによって分析した。すべてのサンプル中で、非スプライス型のHSV−tk(401 bp)が検出される(図11)。SFCMM−3サンプルでは下側のバンドが検出され、それはスプライス型のHSV−tk遺伝子に相当する。TkMut2で形質導入されたPBLでは下側のバンドが観察されない。TKZ1/TKZ2プライマーを使用して同一の結果が得られ(図12)、この場合、完全長HSV−tk遺伝子(1149 bp)が包含されるので、導入された突然変異によって別のスプライシング変異体が生じうる可能性が除外された。
【0194】
全体として、これらの知見は、導入された突然変異によって、形質導入されたCEMおよび形質導入されたリンパ球中の、HSV−tk遺伝子のいずれのスプライス型も消失するか、または少なくとも非常に顕著に減少することを示す。
【表4】

【0195】
上記明細書中に記載のすべての刊行物は参照により本明細書中に組み入れられる。本発明の上記方法および系についての種々の改変およびバリエーションは、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明らかである。本発明は具体的な好ましい実施形態に関連して説明されてきたが、特許を受けようとする発明はその具体的な実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されよう。事実、生化学およびバイオテクノロジーまたは関連分野の当業者には明らかな、本発明を実行するための上記様式についての種々の改変は特許請求の範囲内であるものとする。
【0196】
参照文献

【0197】

【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1−1】HSV−1チミジンキナーゼ遺伝子(HSV−tk)突然変異体(TkMut2(配列番号2)、TkMut23(配列番号3)、TkMut24(配列番号4)、TkMut34(配列番号5)、TkMut4(配列番号6)およびTkMut234(配列番号7)のヌクレオチド配列のマルチプルアライメントを示す。塩基は野生型HSV−tk配列のATG開始コドンから番号付けされている。配列はTK wt配列(TK wt、配列番号1)に対してアライメントされている。突然変異の位置はアライメントの上部の番号によって示されている。位置(330)、(541および542)、および(555)の突然変異はそれぞれ番号2、3および4によって表される。
【図1−2】HSV−1チミジンキナーゼ遺伝子(HSV−tk)突然変異体(TkMut2(配列番号2)、TkMut23(配列番号3)、TkMut24(配列番号4)、TkMut34(配列番号5)、TkMut4(配列番号6)およびTkMut234(配列番号7)のヌクレオチド配列のマルチプルアライメントを示す。
【図1−3】HSV−1チミジンキナーゼ遺伝子(HSV−tk)突然変異体(TkMut2(配列番号2)、TkMut23(配列番号3)、TkMut24(配列番号4)、TkMut34(配列番号5)、TkMut4(配列番号6)およびTkMut234(配列番号7)のヌクレオチド配列のマルチプルアライメントを示す。
【図2】スプライシングコンセンサス配列を示す。
【図3】SFCMM−3(Verzelletti, 1998, Human Gene Therapy 9:2243-2251)および/またはTK3(scSFCMM−3)(Chalmers, 2001)ベクターでトランスフェクトされたエコトロピックパッケージング細胞株GP+ E86の上清およびアンホトロピックパッケージング細胞株gp+ env Am12(Am12)から調製されたcDNAのHSV−tk PCR産物を示す。
【図4】SFCMM−3および/またはTK3(scSFCMM−3)ベクターで形質導入された末梢血リンパ球(PBL)でのPCR増幅されたHSV−tkを示す。
【図5】SFCMM−3とTK3(scSFCMM−3)でのHSV−tk遺伝子の重要部分の配列を示す。SFCMM−3とTK3(scSFCMM−3)ベクター間で異なるヌクレオチド位置は四角で縁取られている。スプライス型のSFCMM−3およびTK3で欠失している遺伝子セグメントは斜体で示されている。対応するスプライシングドナー部位およびアクセプター部位が示されている。
【図6】SFCMM−3ベクターに導入された突然変異の模式的概要を示す。
【図7】図1に示されるHSV−tk突然変異体を含むSFCMM−3由来の組換えプラスミドで一時的にトランスフェクトされたE86細胞の上清由来のcDNAのHSV−tk PCR産物を示す。
【図8】図7に記載のE86培養から収集された上清で形質導入されたAm12培養の上清由来のcDNAのHSV−tk PCR産物を示す。
【図9】図8に記載のAm12培養から収集された上清で形質導入されたCEM A301細胞由来のDNAのTKA1/TKB1 HSV−tk PCR産物を示す。
【図10】図8に記載のAm12培養物から収集された上清で形質導入されたCEM A301細胞由来のDNAのTKY1/TKY2およびTKZ1/TKZ2 HSV−tk PCR産物を示す。
【図11】図8に記載のAm12培養物から収集された上清で形質導入されたPBL由来のDNAのTKA1/TKB1 HSV−tk PCR産物を示す。
【図12】図8に記載のAm12培養物から収集された上清で形質導入されたPBL由来のDNAのTKZ1/TKZ2 HSV−tk PCR産物を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チミジンキナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、スプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられ、かつスプライスアクセプター部位のヌクレオチドは変化していない、上記ポリヌクレオチド。
【請求項2】
図1に示す野生型配列(Tk wt)の329位および330位にあるスプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられている、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
図1に示す野生型配列の329位および330位にあるスプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられている、請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
330位に対応するヌクレオチドがTからCに換わっている、請求項2または3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
チミジンキナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、図1に示す野生型配列(Tk wt)の329位および330位にあるスプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられ、かつスプライスアクセプター部位のヌクレオチドは変化していない、上記ポリヌクレオチド。
【請求項6】
329位および330位に対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられている、請求項5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
330位に対応するヌクレオチドがTからCに換わっている、請求項5または6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
チミジンキナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、図1に示す野生型配列(Tk wt)の329位および330位にあるスプライスドナー部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられ、かつ図1に示す野生型配列の554位および555位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つ、ならびに662位および663位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つは変化していない、上記ポリヌクレオチド。
【請求項9】
554位および555位に対応するヌクレオチドがいずれも変化していない、請求項8に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
662位および663位に対応するヌクレオチドがいずれも変化していない、請求項8または9に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
329位および330位に対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられている、請求項8〜10のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
330位に対応するヌクレオチドがTからCに換わっている、請求項8〜11のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
図1に示すTkMut2配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項14】
チミジンキナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、図1に示す野生型配列(Tk wt)の329位および330位にあるヌクレオチドに対応するスプライスアクセプター部位ヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられ、かつ図1に示す野生型配列の541位および542位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられている、上記ポリヌクレオチド。
【請求項15】
541位および542位に対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられている、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
329位および330位に対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられている、請求項14または15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
330位に対応するヌクレオチドがTからCに換わっている、請求項14〜16のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
541位に対応するヌクレオチドがAからTに換わっている、請求項14〜17のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
542位に対応するヌクレオチドがGからCに換わっている、請求項14〜18のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
図1に示す野生型配列の554位および555位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つもまた別のヌクレオチドに置き換えられ、それによりスプライス部位が存在しないこととなっている、請求項14〜19のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
555位に対応するヌクレオチドがGからAに換わっている、請求項20に記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
図1に示すTkMut23配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項23】
図1に示すTkMut234配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項24】
チミジンキナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、図1に示す野生型配列(Tk wt)の329位および330位にあるヌクレオチドに対応するスプライスアクセプター部位ヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられ、かつ図1に示す野生型配列の554位および555位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられている、上記ポリヌクレオチド。
【請求項25】
図1に示す野生型配列(Tk wt)の329位および330位に対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられている、請求項24に記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
330位に対応するヌクレオチドがTからCに換わっている、請求項24または25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
555位に対応するヌクレオチドがGからAに換わっている、請求項24〜26のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項28】
図1に示すTkMut24配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項29】
チミジンキナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、図1に示す野生型配列(Tk wt)の554位および555位にあるスプライスアクセプター部位ヌクレオチドに対応するヌクレオチドのうち少なくとも1つが別のヌクレオチドに置き換えられている、上記ポリヌクレオチド。
【請求項30】
555位に対応するヌクレオチドがGからAに換わっている、請求項29に記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
図1に示す野生型配列の541位および542位にあるヌクレオチドに対応するスプライスアクセプター部位ヌクレオチドのうち少なくとも1つもまた別のヌクレオチドに置き換えられている、請求項29または30に記載のポリヌクレオチド。
【請求項32】
541位および542位に対応するヌクレオチドのいずれもが別のヌクレオチドに置き換えられ、それによりスプライス部位が存在しないこととなっている、請求項31に記載のポリヌクレオチド。
【請求項33】
541位に対応するヌクレオチドがAからTに換わっている、請求項31または32に記載のポリヌクレオチド。
【請求項34】
542位に対応するヌクレオチドがGからCに換わっている、請求項31〜33のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項35】
図1に示すTkMut4配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項36】
図1に示すTkMut34配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項37】
ヌクレオチド置換が前記ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドの配列を変化させない、請求項1〜36のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
【請求項39】
請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、または請求項38に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項40】
請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項38に記載のベクター、または請求項39に記載の宿主細胞と、製薬上許容される担体とを含んでなる医薬組成物。
【請求項41】
(i) 請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、または請求項38に記載のベクター、または請求項39に記載の宿主細胞、または請求項40に記載の医薬組成物、および
(iii)チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される、実質的に無毒な薬剤
を含んでなるキット。
【請求項42】
医療における使用のための、請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項38に記載のベクター、請求項39に記載の宿主細胞、または請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項43】
破壊の必要がある細胞を有する患者の治療における同時の、分離した、もしくは連続的な使用のための、請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項38に記載のベクター、請求項39に記載の宿主細胞、または請求項40に記載の医薬組成物と、実質的に無毒な薬剤とを含む製品であって、該実質的に無毒な薬剤はチミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換されるものである、上記製品。
【請求項44】
(ii) 請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、または請求項38に記載のベクターを細胞に導入するステップ、および
(ii) 該細胞を、チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤と、同時に、分離して、または連続的に接触させるステップ
を含む、細胞を破壊する方法。
【請求項45】
(i) 請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、または請求項38に記載のベクターを細胞に導入するステップ、
(ii) 該細胞にチミジンキナーゼを発現させるステップ、および
(iii)該細胞を、チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤と接触させるステップ
を含む、細胞を破壊する方法。
【請求項46】
(i) 請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項38に記載のベクター、または請求項40に記載の医薬組成物を患者に導入するステップ、および
(ii) チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤を、同時に、分離して、または連続的に該患者に導入するステップ
を含む、破壊の必要がある細胞を有する患者を治療する方法。
【請求項47】
(i) 請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項38に記載のベクター、または請求項40に記載の医薬組成物を患者に導入するステップ、
(ii) 該ポリヌクレオチドまたはベクターを細胞に取り込ませるステップ、
(iii)該細胞にチミジンキナーゼを発現させるステップ、および
(iv) チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤を該患者に導入するステップ
を含む、破壊の必要がある細胞を有する患者を治療する方法。
【請求項48】
(i) 患者由来の細胞またはドナー細胞を取り出すステップ、
(ii) 請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項38に記載のベクターをex vivoで該細胞に導入するステップ、
(iii)該改変細胞を該患者に導入するステップ、
(iv) 該細胞にチミジンキナーゼを発現させるステップ、および
(v) チミジンキナーゼによって毒性薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤を該患者に投与するステップ
を含む、破壊の必要がある細胞を有する患者を治療する方法。
【請求項49】
(i) 請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項38に記載のベクターを含むように遺伝子操作されたT細胞を宿主に投与するステップ、および
(ii) 実質的に無毒な薬剤とチミジンキナーゼとの相互作用により該遺伝子操作されたT細胞を死滅させるのに十分な量の該薬剤を、移植片対宿主病が発生する前に該宿主に投与するステップ
を含む、患者での移植片対宿主病を予防する方法。
【請求項50】
前記実質的に無毒な薬剤が、ガンシクロビル、アシクロビル、トリフルオロチミジン、1−[2−デオキシ,2−フルオロ,β−D−アラビノフラノシル]−5−ヨードウラシル、ara−A、ara1、1−β−Dアラビノフラノシルチミン、5−エチル−2’デオキシウリジン、5−ヨード−5’−アミノ−2,5’−ジデオキシウリジン、イドクスウリジン、AZT、AIV、ジデオキシシチジン、AraC、およびブロモビニルデオキシウリジン(BVDU)のうちいずれか1つである、請求項43に記載の製品または請求項44〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
患者における細胞の破壊のための医薬の調製における、請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項38に記載のベクター、または請求項39に記載の宿主細胞の使用。
【請求項52】
癌の治療のための医薬の調製における、請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項38に記載のベクター、または請求項39に記載の宿主細胞の使用。
【請求項53】
移植片対宿主病の予防のための医薬の調製における、請求項1〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項38に記載のベクター、または請求項39に記載の宿主細胞の使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−502342(P2008−502342A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516075(P2007−516075)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002358
【国際公開番号】WO2005/123912
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506368992)
【Fターム(参考)】