説明

チャージポンプ回路

【課題】 チャージポンプ回路の出力電圧と所望の電圧との差を小さくすることにより、回路の電力効率を向上させる。
【解決手段】 このチャージポンプ回路は、第1のクロックドライバーCDV1の電源電圧を入力端子に印加される入力電圧VIN1と異なる電圧VIN2とし、第2のクロックドライバーCDV2の電源電圧を入力電圧VIN1と異なる電圧VIN3としたことを特徴としている。ここで、VIN1、VIN2、VIN3はいずれも接地電圧GNDを基準として正の電圧である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャージポンプ回路に関し、特にコンデンサとスイッチング素子を用いたチャージポンプ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
チャージポンプ回路はコンデンサとスイッチング素子を用いて入力電圧を昇圧する回路であり、特に、携帯電話やPDA等の携帯用電子機器の電源回路として利用されている。
図4は2段のチャージポンプ回路を示す回路図である。入力端子1と出力端子2との間に3つのスイッチング素子SW1,SW2,SW3が直列接続されている。SW1とSW2の接続ノードN1には第1のコンデンサC1の一方の端子が接続され、SW2とSW3の接続ノードN2には第2のコンデンサC2の一方の端子が接続されている。入力端子1には電圧源から入力電圧VINが印加されている。
【0003】
第1のコンデンサC1の他方の端子には第1のクロックドライバーCDV1の出力が印加され、第2のコンデンサC2の他方の端子には第2のクロックドライバーCDV2の出力が印加されている。第1のクロックドライバーCDV1は電源電圧(=入力電圧VIN)と接地電圧GND(=0V)との間に、スイッチング素子SW4,SW5が直列に接続されて構成されている。第2のクロックドライバーCDV2は同様に、電源電圧(=入力電圧VIN)と接地電圧GND(=0V)との間に、スイッチング素子SW6,SW7が直列に接続されて構成されている。
【0004】
第1のクロックドライバーCDV1のスイッチング素子SW4,SW5は相補的にスイッチングするので、第1のクロックドライバーCDV1からは所定周期のクロックパルスが出力される。また、第1のクロックドライバーCDV1のスイッチング素子SW6,SW7も相補的にスイッチングするが、スイッチング素子SW4,SW5とは逆にスイッチングするので、第2のクロックドライバーCDV2からは第1のクロックドライバーCDV1のクロックパルスとは逆相のクロックパルスが出力される。
【0005】
また、出力端子2には、出力容量Coutが接続され、さらに、このチャージポンプ回路の出力電圧を所望の電圧に制御するためのレギュレータ10が接続されている。次に、このチャージポンプ回路の動作を説明する。図4(a)に示す第1の状態では、SW1及びSW3はオン、SW2はオフに設定される。第1のクロックドライバーCDV1のSW4はオフ、SW5はオン、第2のクロックドライバーCDV1のSW6はオン、SW7はオフに設定される。
【0006】
これにより、第1のコンデンサC1は入力電圧VINと接地電圧GNDの間に接続されて充電され、接続ノードN1の電圧は入力電圧VINとなる。第2のコンデンサC2にはSW6を通して入力電圧VINが印加されて放電される。後述する図4(b)の第2の状態で、接続ノードN2の電圧は2VINとなっているので、第2のコンデンサC2にはSW6を通して入力電圧VINが印加されることにより、接続ノードN2の電圧は2VINから3VINに変化する。SW3はオンしているので、出力端子2の電圧は3VINとなる。
【0007】
一方、図4(b)に示す第2の状態では、第1の状態とは反対に、SW1及びSW3はオフ、SW2はオンに設定される。第1のクロックドライバーCDV1のSW4はオン、SW5はオフ、第2のクロックドライバーCDV1のSW6はオフ、SW7はオンに設定される。これにより、第1のコンデンサC1はSW4を通してVINが印加されることにより放電され、接続ノードN1の電圧はVINから2VINに変化する。SW2はオンしているので、第2のコンデンサC2は充電されて接続ノードN2の電圧は2VINとなる。
【0008】
上記の第1の状態と第2の状態を交互に繰り返すことにより、チャージポンプ回路の出力端子2には3VINという入力電圧VINの3倍の昇圧電圧が得られる。そして、この昇圧電圧3VINをレギュレータ10によってドロップさせて所望の出力電圧Voutを得ていた。一般に、このチャージポンプ回路ではチャージポンプの段数を(n−1)とすると、nVINというn倍の昇圧電圧を得ることができる。
【0009】
なお、先行技術文献として以下の特許文献1、非特許文献1がある。
【特許文献1】特開2001−211637号公報
【非特許文献1】「改良された電圧増幅回路技術を用いたNMOS集積回路におけるオンチップ高電圧の発生」“On-chip High-Voltage Generation in NMOS Integrated Circuits Using an Improved Voltage Multiplier Technique” アイ・イー・イー・イー ジャーナル・オブ・ソリッドステート サーキット SC−11巻 NO.3 374−378頁 1976年6月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したチャージポンプ回路では、チャージポンプの段数を(n−1)とすると、nVINというn倍の昇圧電圧を得ることができる。しかしながら、レギュレータ10によって、nVINを降圧して所望の電圧Voutを出力させるとき、VoutとnVINの差が大きい程、電圧ロスが生じて回路の電力効率が低下してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明は、入力端子と出力端子の間に直列接続された複数のスイッチング素子と、前記入力端子に入力電圧を供給する電圧源と、前記複数のスイッチング素子の接続点に一端が接続されたコンデンサと、前記コンデンサの他端にクロックパルスを供給するクロックドライバーと、を具備し、前記出力端子から正の昇圧電圧を出力するチャージポンプ回路であって、前記入力電圧と前記クロックドライバーに供給される電源電圧が異なる電圧であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、チャージポンプ回路の出力電圧と所望の電圧との差を小さくすることができるので、回路の電力効率を向上させることが可能になる。また、同一の回路により、幅広い出力電圧の仕様をカバーすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明の第1の実施形態に係るチャージポンプ回路について、図面を参照しながら説明する。図1はこのチャージポンプ回路の回路図である。図1において、図4と同一の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0014】
このチャージポンプ回路は、第1のクロックドライバーCDV1の電源電圧を入力端子に印加される入力電圧VIN1と異なる電圧VIN2とし、第2のクロックドライバーCDV2の電源電圧を入力電圧VIN1と異なる電圧VIN3としたことを特徴としている。ここで、VIN1、VIN2、VIN3はいずれも接地電圧GNDを基準として正の電圧である。
【0015】
以下で、このチャージポンプ回路の動作を説明する。図1(a)に示す第1の状態では、SW1及びSW3はオン、SW2はオフに設定される。第1のクロックドライバーCDV1のSW4はオフ、SW5はオン、第2のクロックドライバーCDV1のSW6はオン、SW7はオフに設定される。これにより、第1のコンデンサC1は入力電圧VIN1と接地電圧GNDの間に接続されて充電され、接続ノードN1の電圧は入力電圧VIN1となる。
【0016】
第2のコンデンサC2にはSW6を通してVIN3が印加されて放電される。後述する図1(b)の第2の状態において、接続ノードN2の電圧はVIN1+VIN2となっているので、第2のコンデンサC2にVIN3が印加されることにより、接続ノードN2の電圧はVIN1+VIN2+VIN3に変化する。SW3はオンしているので、出力端子2の電圧はVIN1+VIN2+VIN3となる。
【0017】
一方、図1(b)に示す第2の状態では、第1の状態とは反対に、SW1及びSW3はオフ、SW2はオンに設定される。第1のクロックドライバーCDV1のSW4はオン、SW5はオフ、第2のクロックドライバーCDV1のSW6はオフ、SW7はオンに設定される。これにより、第1のコンデンサC1にはSW4を通してVIN2が印加され放電され、接続ノードN1の電圧はVIN1からVIN1+VIN2に変化する。SW2はオンしているので、接続ノードN2の電圧はVIN1+VIN2となる。
【0018】
上記の第1の状態と第2の状態を交互に繰り返すことにより、チャージポンプ回路の出力端子2にはVIN1+VIN2+VIN3という正の昇圧電圧が得られる。即ち、このチャージポンプ回路は正の昇圧電圧を出力し、その昇圧電圧は、入力電圧VIN1と第1のクロックドライバーCDV1の電源電圧VIN1と第2のクロックドライバーCDV1の電源電圧VIN2との和になる。
【0019】
そして、この昇圧電圧VIN1+VIN2+VIN3をレギュレータ10によってドロップさせて所望の出力電圧Voutを得ている。したがって、VIN2とVIN3を所望の出力電圧Voutに応じて適切に設定することにより、所望の出力電圧Voutと昇圧電圧VIN1+VIN2+VIN3との差を従来例に比して小さくすることができるので、レギュレータ10による電圧ロスを小さくし、回路の電力効率を向上させることが可能になる。なお、VIN2とVIN3は異なる電圧でも同じ電圧でもよい。また、チャージポンプ回路の段数は必要に応じて適宜増加することができる。
【0020】
次に、本発明の第2の実施形態に係るチャージポンプ回路について、図面を参照しながら説明する。図2はこのチャージポンプ回路の回路図である。図2において、図4と同一の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。第1の実施形態は、正の昇圧電圧を出力するチャージポンプ回路に関するであるが、この実施形態は負の昇圧電圧を出力するチャージポンプ回路である。このチャージポンプ回路では、入力端子1には接地電圧GND(=0V)が印加されている。
【0021】
また、第1のクロックドライバーCDV1の電源電圧はVIN1であり、第2のクロックドライバーCDV2の電源電圧はVIN1と異なる電圧VIN2である。VIN1、VIN2はいずれも接地電圧GNDを基準として正の電圧である。
【0022】
以下で、このチャージポンプ回路の動作を説明する。図2(a)に示す第1の状態では、SW1及びSW3はオン、SW2はオフに設定される。第1のクロックドライバーCDV1のSW4はオン、SW5はオフ、第2のクロックドライバーCDV1のSW6はオフ、SW7はオンに設定される。これにより、第1のコンデンサC1はVIN1と接地電圧GNDの間に接続されて充電され、接続ノードN1の電圧は入力電圧0Vとなる。
【0023】
第2のコンデンサC2は接地電位GNDに接続されて放電される。後述する図2(b)の第2の状態において、接続ノードN2の電圧は−VIN1となっているので、第2のコンデンサC2にSW7を通して接地電位GNDが印加されることにより、接続ノードN2の電圧は−VIN1−VIN2に変化する。SW3はオンしているので、出力端子2の電圧は−VIN1−VIN2となる。
【0024】
一方、図2(b)に示す第2の状態では、第1の状態とは反対に、SW1及びSW3はオフ、SW2はオンに設定される。第1のクロックドライバーCDV1のSW4はオフ、SW5はオン、第2のクロックドライバーCDV1のSW6はオン、SW7はオフに設定される。これにより、第1のコンデンサC1にはSW5を通して接地電位GNDが印加されて放電され、接続ノードN1の電圧は0Vから−VIN1に変化する。SW2はオンしているので、接続ノードN2の電圧は−VIN1となる。
【0025】
上記の第1の状態と第2の状態を交互に繰り返すことにより、チャージポンプ回路の出力端子2には−VIN1−VIN2という負の昇圧電圧が得られる。即ち、このチャージポンプ回路は負の昇圧電圧を出力し、その昇圧電圧は、第1のクロックドライバーCDV1の電源電圧VIN1と第2のクロックドライバーCDV1の電源電圧VIN2との和のVIN1+VIN2を反転した電圧になる。
【0026】
そして、この昇圧電圧−VIN1−VIN2をレギュレータ10によって調整して所望の負の出力電圧Voutを得ている。ここで、第1のクロックドライバーCDV1と第2のクロックドライバーCDV2の電源電圧(=VDD)が等しい場合(従来例)には、このチャージポンプ回路の昇圧電圧は−2VDDとなる。
【0027】
本実施形態ではVIN1とVIN2を所望の出力電圧Voutに応じて適切に設定することにより、所望の出力電圧Voutと昇圧電圧−VIN1−VIN2との差を従来例(昇圧電圧=−2VDD)に比して小さくすることができるので、レギュレータ10による電圧ロスを小さくし、回路の電力効率を向上させることが可能になる。また、本実施形態においてもチャージポンプ回路の段数は必要に応じて適宜増加することができる。
【0028】
次に、本発明の第3の実施形態に係るチャージポンプ回路について、図面を参照しながら説明する。図3はこのチャージポンプ回路の回路図である。このチャージポンプ回路は1段構成で負の昇圧電圧を発生する回路である。入力端子11には電圧源から正の入力電圧Vaが印加され、入力端子11と出力端子12の間にスイッチング素子SW11,SW12が直列接続されている。SW11とSW12の接続ノードN1にはコンデンサC11の一方の端子が接続されている。
【0029】
コンデンサC11の他方の端子にはクロックドライバーCDVの出力が印加されている。クロックドライバーCDVは電源電圧(=入力電圧VIN)と接地電圧GND(=0V)との間に、スイッチング素子SW13,SW14が直列に接続されて構成されている。クロックドライバーCDVのスイッチング素子SW13,SW14は相補的にスイッチングするので、クロックドライバーCDVからは所定周期のクロックパルスが出力される。
【0030】
以下で、このチャージポンプ回路の動作を説明する。図3(a)に示す第1の状態では、SW11はオン、SW12はオフに設定される。また、クロックドライバーCDVのSW13はオンし、SW14はオフする。これにより、コンデンサC11はVaとVINの間に接続されて充電され、ノードN1の電圧は入力電圧Vaとなる。
【0031】
図3(b)に示す第2の状態では、SW11はオフ、SW12はオンに設定される。また、クロックドライバーCDVのSW13はオフし、SW14はオンする。これにより、コンデンサC11にはSW14を通して接地電圧GNDが印加されて放電され、接続ノードN1の電圧はVaから−VIN+Vaに変化する。スイッチング素子SW12はオンしているので、出力端子12の電圧も−VIN+Vaになる。
【0032】
そして、この昇圧電圧−VIN+Vaをレギュレータ10によって調整して所望の負の出力電圧Voutを得ている。ここで、入力電圧Vaが接地電圧(=0V)の場合(従来例)には、このチャージポンプ回路の昇圧電圧は−VINとなる。本実施形態では入力電圧Vaを所望の出力電圧Voutに応じて適切に設定することにより、所望の出力電圧Voutと昇圧電圧−VIN+Vaとの差を従来例(昇圧電圧=−VIN)に比して小さくすることができるので、レギュレータ10による電圧ロスを小さくし、回路の電力効率を向上させることが可能になる。
【0033】
なお、第1、第2、第3の実施形態において、スイッチング素子はMOSトランジスタやバイポーラトランジスタで構成することができる。また、第1、第2、第3の実施形態において、チャージポンプ回路の出力電圧と所望の電圧が等しいか、非常に近い場合には、レギュレータ10を使わなくてもよい。また、第1、第2、第3の実施形態において、スイッチング素子を他の方法で制御して所望の昇圧電圧を得ることも本発明の範囲である。そのような制御方法にはスイッチング素子のオン抵抗の制御、スイッチング素子のオンオフのPWM(デューティー)制御、PFM(周波数)制御などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るチャージポンプ回路の回路図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るチャージポンプ回路の回路図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るチャージポンプ回路の回路図である。
【図4】従来例にチャージポンプ回路の回路図である。
【符号の説明】
【0035】
SW1,SW2,SW3 スイッチング素子
CDV1 第1のクロックドライバー
CDV2 第2のクロックドライバー
10 レギュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子の間に直列接続された複数のスイッチング素子と、
前記入力端子に入力電圧を供給する電圧源と、
前記複数のスイッチング素子の接続点に一端が接続されたコンデンサと、
前記コンデンサの他端にクロックパルスを供給するクロックドライバーと、を具備し、前記出力端子から正の昇圧電圧を出力するチャージポンプ回路であって、
前記入力電圧と前記クロックドライバーに供給される電源電圧が異なる電圧であることを特徴とするチャージポンプ回路。
【請求項2】
接地された入力端子と、出力端子の間に直列接続された複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子の接続点に一端が接続されたコンデンサと、
前記コンデンサの他端にクロックパルスを供給するクロックドライバーと、を具備し、前記出力端子から負の昇圧電圧を出力するチャージポンプ回路であって、
前記複数のクロックドライバーに供給される電源電圧が互いに異なる電圧であることを特徴とするチャージポンプ回路。
【請求項3】
入力端子と出力端子の間に直列接続され、相補的にスイッチングする第1及び第2のスイッチング素子と、
前記入力端子に正の入力電圧を供給する電圧源と、
前記第1及び第2のスイッチング素子の接続点に一端が接続されたコンデンサと、
前記コンデンサの他端に、前記第1のスイッチング素子がオンの時に電源電圧を供給し、第1のスイッチング素子がオフの時に接地電圧を供給するクロックドライバーと、を具備し、前記出力端子から負の電圧を出力することを特徴とするチャージポンプ回路。
【請求項4】
前記出力端子にレギュレータを接続したことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3のいずれか1項に記載のチャージポンプ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−280160(P2006−280160A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98882(P2005−98882)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】