説明

チューブ容器の加飾方法及びチューブ容器

【課題】模様の自由度を高く保ちつつ、手間をかけずに、チューブ容器に加飾を施すこと。
【解決手段】チューブ容器1の加飾部2に対して加飾を施すチューブ容器の加飾方法であって、加飾部2の内部に凹凸模様11を有する金型10を配設し、加飾部2の外部の金型10と対向する箇所に弾性部材20を配設し、弾性部材20に当接して弾性部材20を加熱する加熱手段30を配設する準備段階と、加熱手段30により弾性部材20を加熱しつつ、弾性部材20を金型10に対して押圧して加飾部2を変形させる加熱変形段階と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ容器の加飾方法及び当該加飾方法により加飾されたチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チューブ容器の側面に型を用いて加飾をする方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1においては、チューブ容器の製造工程において、チューブ容器の底部となる部分が開口している。この状態で開口から、容器内部側面に嵌入する径のマンドレルを挿入する。この状態を図6を用いて説明する。図6は従来例を説明するための説明図である。
【0004】
図6に示すように、マンドレル101の側面には模様101aが彫られており、模様101aの形成された部分の一部には、マンドレル101の内部に吸引するための細貫通孔102が形成される。また、細貫通孔102からマンドレル101内部へ吸引するため、細貫通孔102から連続した吸気孔103がマンドレル101内部に形成される。一方、チューブ容器100を挟んで模様101aに対向する位置には、押型110を付帯したプレス盤111が配置される。
【0005】
この構成により、まず、模様101aに隣接するチューブ容器100の一部を加熱により軟化させる。次に、図6に示すチューブ容器100の内部に挿入されたマンドレル101の吸気孔103から、不図示の真空ポンプによって吸気すると、チューブ容器100に隣接する細貫通孔102から吸気がされる。これに加えて、プレス盤111をチューブ容器100方向に押圧することで、チューブ容器100が模様101aに倣って変形する。最後に、変形部分を冷却した後、マンドレル101をチューブ容器100の開口から抜き取る。
【0006】
【特許文献1】特開2004−249706
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来例には次のような問題があった。
【0008】
真空ポンプで吸気をする都合上、マンドレルはチューブ容器の内部に対して嵌入させる必要がある。また、模様の加飾を施した後は、マンドレルをチューブ容器から抜かなければならない。ここで、マンドレルの模様をチューブ容器の径よりも大きく形成すると、マンドレルを挿抜する際の妨げとなってしまう。このため、マンドレルに形成される模様はチューブ容器の径よりも小さくならざるをえず、マンドレルに形成される模様は凹状に限定される。このため、最終的にチューブ容器に形成される模様の種類が限定されてしまい、模様の自由度が制限されるという問題があった。
【0009】
また、上述のように、模様の加飾を施して冷却した後は、マンドレルをチューブ容器から抜く。この際、チューブ容器は冷却されて固まっているため、マンドレルを抜くためには、図6の拡大図に示すように、チューブ容器100の側面が抜ける方向に向かって、マンドレルの模様に傾斜を付ける必要がある。このように傾斜をつけると、チューブ容器に形成される模様の端部を鋭利に仕上げることが難しくなり、この結果、形成された模様の端部にシャープな質感を与えることが困難となる。このため、端部が滑らかな質感のみとなり、模様の柄が限られてしまい、模様の自由度が制限されるという問題があった。
【0010】
更に、真空ポンプで吸引する構成とすると、製造工程が多くなり、手間がかかるという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、模様の自由度を高く保ちつつ、手間をかけずに、チューブ容器に加飾を施すことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための、本発明の第1のチューブ容器の加飾方法は、チューブ容器の加飾部に対して加飾を施すチューブ容器の加飾方法であって、前記加飾部の内部に凹凸模様を有する金型を配設し、前記加飾部の外部の前記金型と対向する箇所に弾性部材を配設し、前記弾性部材に当接して前記弾性部材を加熱する加熱手段を配設する準備段階と、前記加熱手段により前記弾性部材を加熱しつつ、前記弾性部材を前記金型に対して押圧して前記加飾部を変形させる加熱変形段階と、を有することを特徴とするチューブ容器の加飾方法である。
【0013】
本発明の第2のチューブ容器の加飾方法は、チューブ容器の加飾部に対して加飾を施すチューブ容器の加飾方法であって、前記加飾部の内部に弾性部材を配設し、前記加飾部の外部の前記弾性部材と対向する箇所に凹凸模様を有する金型を配設し、前記金型に当接して前記金型を加熱する加熱手段を配設する準備段階と、前記加熱手段により前記金型を加熱しつつ、前記金型を前記弾性部材に対して押圧して前記加飾部を変形させる加熱変形段階と、を有することを特徴とするチューブ容器の加飾方法である。
【0014】
本発明のチューブ容器は、第1又は第2の加飾方法によって加飾されることを特徴とするチューブ容器である。
【発明の効果】
【0015】
上記加飾方法によって加飾すると、真空ポンプを用いないため、チューブ容器の内部に配置される金型又は弾性部材をチューブ容器内部に嵌入させる必要がない。このため、内部に配置される金型又は弾性部材の大きさを、従来の構成に比べて小さく構成することができる。これにより、内部に配置される金型又は弾性部材は、チューブ容器内部から抜けやすくなる。このように、内部に配置される金型又は弾性部材を抜けやすく構成することで、凹凸模様において抜け方向の傾斜が必要なくなる。抜け方向の傾斜がなくなると、凹凸模様の端部を鋭利に構成することができる。このため、凹凸模様の形状の自由度を高く保つことができる。
【0016】
また、真空ポンプ等の吸引手段を用いることなくチューブ容器の加飾ができるため、製造工程が少なくなり、手間がかからないという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図を用いて本発明の実施形態を説明する。まず、本発明のチューブ容器1を説明する。図1はチューブ容器に加飾を施した状態の説明図である。図1に示すように、チューブ容器1の側面には、凹凸模様の加飾が施された加飾部2が形成される。図1は加飾を施した直後の状態であるため、チューブ容器1の底部にはまだ開口3を有する状態である。この開口3から化粧料を入れて、開口3を閉じることで、チューブ容器が製品として完成する。
【0018】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態を図を用いて詳細に説明する。図2は第1実施形態の製造工程を説明するチューブ容器側面方向からみた断面図である。図3は第1実施形態の製造工程を説明するチューブ容器上面方向からみた断面図である。
【0019】
図2及び図3に示すように、第1実施形態のチューブ容器の加飾方法は、準備段階と、加熱変形段階とを有する。以下、詳細に説明する。
【0020】
(準備段階)
図2(a)及び図3(a)に示すように、本実施形態の加飾方法の準備段階においては、チューブ容器1の側面の加飾を施す対象の部分(加飾部2)を挟んで、加飾部2の内外に加飾を施す手段が配設される。
【0021】
具体的には、加飾部2の内部側には、加飾部2の内部に凹凸模様11を有する金型10が配設される。ここで、金型10の厚みはチューブ容器1の内径よりも小さいため、後述する加工のために十分な空間Sが形成される。尚、本実施形態の金型10は、平面状のマンドレルの側面の一部(加飾部2に対向する部分)に凹凸模様11を形成したものである。
【0022】
一方、加飾部2の外部側には、金型10と対向する箇所に弾性部材20が配設される。ここで、弾性部材20は、樹脂など耐熱性のラバーによって構成され、ホットスタンプ機などの加熱手段30と一体的に当接して構成されている。
【0023】
(加熱変形段階)
加熱変形段階においては、まず、加熱手段30が弾性部材20を加熱する。これにより、弾性部材20は、チューブ容器1の側面の加飾部2を容易に変形させるに足りるほどの熱を持つことになる。
【0024】
次に、図3(a)又は図2(b)に示すように、チューブ容器1の側面を金型10に近づけ、金型10と弾性部材20とが内外からチューブ容器1の加飾部2を挟持しやすいようにする。
【0025】
そして、図3(b)に示すように、加熱手段30と一体である弾性部材20を、金型10側に移動・当接させて、チューブ容器1の加飾部2を内外から押圧する。これにより、凹凸模様11は、加飾部2を挟持しつつ、弾性部材20に食い込む。また、弾性部材20による押圧に加え、加熱手段30から弾性部材20に与えられる熱により、加飾部2は、効率的に金型10の凹凸模様11の形に変形する。
【0026】
そして、図3(c)に示すように、弾性部材20及び加熱手段30をチューブ容器1から離間させ、押圧を解除すると、チューブ容器1の加飾部2には、金型10の凹凸模様11が転写される。
【0027】
最後に、図3(d)に示すように、金型10を開口3(図1参照)から引き抜くと、チューブ容器1の加飾部2に凹凸形状の模様が形成され、チューブ容器1に加飾が施される。この際、図2(a)のように空間Sがあるため、金型10はチューブ容器1の外部に容易に引き抜くことができる。
【0028】
以上のような加飾方法によって加飾すると、まず、真空ポンプ等の空気を吸引する手段を用いなくてよいため、チューブ容器1の内部に配置される金型10をチューブ容器1内部に嵌入させる必要がない。このため、内部に配置される金型10の大きさを、従来の構成に比べて小さく構成することができる。これにより、前述のように、内部に配置される金型10は、チューブ容器1内部から抜けやすくなる。
【0029】
このように、チューブ容器1の内部に空間Sがあり、金型10をチューブ容器1から抜けやすく構成することで、凹凸模様11において抜け方向の傾斜が必要なくなる。抜け方向の傾斜がなくなると、凹凸模様11の端部を鋭利に構成することもできるようになる。鋭利に構成することで、例えば、点字のように角が明確な凹凸模様を形成するなど、凹凸模様11の模様に制限がなくなり、凹凸模様11の形状の自由度を高く保つことができる。
【0030】
また、空間Sがあるため、金型10の凹凸模様11に突出した形状を形成することができる。
【0031】
即ち、従来の技術では、マンドレルがチューブ容器の内面に嵌入していたため、マンドレルに突出した形状を形成すると、チューブ容器に対して挿抜することが不可能となる。このため、模様をつけるためにマンドレル側面に凹凸形状を形成する際、もっぱらマンドレルの径よりも小さい形状の中で凹凸形状を形成することとなってしまい、容器の径よりも大きい模様、つまり容器から突出する模様を形成することができなかった。
【0032】
これに対して本実施形態によれば、マンドレルの標準幅(図2における高さH)よりも高く突出した凹凸模様11を形成することができる。これにより、チューブ容器1に形成される加飾部2には、チューブ容器1の幅より大きな、外部に突出した形状の模様を形成することができる。
【0033】
こうして、従来の凹形状を主体とした模様よりも、より自由度の高い模様を形成することができ、模様に多様性を与えることができる。
【0034】
また、真空ポンプ等の吸引手段を用いることなくチューブ容器1の加飾部2の加飾ができるため、製造工程が少なくなり、手間がかからないという効果もある。
【0035】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態を図を用いて詳細に説明する。図4は第2実施形態の製造工程を説明するチューブ容器側面方向からみた断面図である。図5は第2実施形態の製造工程を説明するチューブ容器上面方向からみた断面図である。尚、前述の実施形態と同様な構成においては、同符号を付すことで、説明を省略する。
【0036】
第2実施形態のチューブ容器の加飾方法は、前述と同様、準備段階と、加熱変形段階とを有するが、チューブ容器1の内部に弾性部材20を配設し、チューブ容器1の外部に加熱手段30と一体的な金型10を配設する点で異なる。以下、詳細に説明する。
【0037】
(準備段階)
図4(a)及び図5(a)に示すように、本実施形態の加飾方法の準備段階においては、加飾部2の内外に加飾を施す手段が配設される。本実施形態においては、加飾部2の内部側には、加飾部2の内部に平面状のマンドレル40の側面の一部(加飾部2に対向する部分)に弾性部材20が配設される。一方、加飾部2の外部側には、弾性部材20と対向する位置に金型10が配設される。
【0038】
(加熱変形段階)
加熱変形段階においては、まず、加熱手段30が金型10を加熱する。これにより、金型10は、チューブ容器1の側面の加飾部2を容易に変形させるに足りるほどの熱を持つことになる。
【0039】
次に、図5(a)又は図4(b)に示すように、チューブ容器1の側面を弾性部材20に近づけ、弾性部材20と金型10とが内外からチューブ容器1の加飾部2を挟持しやすいようにする。
【0040】
そして、図5(b)に示すように、加熱手段30と一体である金型10を、弾性部材20側に移動・当接させて、チューブ容器1の加飾部2を内外から押圧する。これにより、凹凸模様11は、加飾部2を挟持しつつ、弾性部材20に食い込む。また、弾性部材20による押圧に加え、加熱手段30から金型10に与えられる熱により、加飾部2は、効率的に金型10の凹凸模様11の形に変形する。
【0041】
そして、図5(c)に示すように、金型10及び加熱手段30をチューブ容器1から離間させ、押圧を解除すると、チューブ容器1の加飾部2には、金型10の凹凸模様11が転写される。
【0042】
最後に、図5(d)に示すように、弾性部材20を付帯したマンドレル40をチューブ容器1の開口3(図1参照)から引き抜くと、チューブ容器1の加飾部2に凹凸形状の模様が形成され、チューブ容器1に加飾が施される。この際、図4(a)のように空間Sがあるため、金型10はチューブ容器1の外部に容易に引き抜くことができる。
【0043】
以上のような方法によっても、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
〔他の実施形態〕
前述の実施形態においては、弾性部材を耐熱性のラバーとし、加熱手段をホットスタンプ機としたが、これに限るものではない。弾性部材は、金型の凹凸模様に沿って受けることができればよく、加熱手段は、弾性部材や金型のような一体になるものに対して熱量を与えることができれば、他の手段を用いてもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、チューブ容器の加飾方法及び当該加飾方法により加飾されたチューブ容器に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】チューブ容器に加飾を施した状態の説明図。
【図2】第1実施形態の製造工程を説明するチューブ容器側面方向からみた断面図。
【図3】第1実施形態の製造工程を説明するチューブ容器上面方向からみた断面図。
【図4】第2実施形態の製造工程を説明するチューブ容器側面方向からみた断面図。
【図5】第2実施形態の製造工程を説明するチューブ容器上面方向からみた断面図。
【図6】従来例を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0047】
S…空間、1…チューブ容器、10…金型、11…凹凸模様、2…加飾部、20…弾性部材、3…開口、30…加熱手段、40…マンドレル、100…チューブ容器、101…マンドレル、101a…凹状模様、102…細貫通孔、103…吸気孔、110…押型、111…プレス盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ容器の加飾部に対して加飾を施すチューブ容器の加飾方法であって、
前記加飾部の内部に凹凸模様を有する金型を配設し、前記加飾部の外部の前記金型と対向する箇所に弾性部材を配設し、前記弾性部材に当接して前記弾性部材を加熱する加熱手段を配設する準備段階と、
前記加熱手段により前記弾性部材を加熱しつつ、前記弾性部材を前記金型に対して押圧して前記加飾部を変形させる加熱変形段階と、
を有することを特徴とするチューブ容器の加飾方法。
【請求項2】
チューブ容器の加飾部に対して加飾を施すチューブ容器の加飾方法であって、
前記加飾部の内部に弾性部材を配設し、前記加飾部の外部の前記弾性部材と対向する箇所に凹凸模様を有する金型を配設し、前記金型に当接して前記金型を加熱する加熱手段を配設する準備段階と、
前記加熱手段により前記金型を加熱しつつ、前記金型を前記弾性部材に対して押圧して前記加飾部を変形させる加熱変形段階と、
を有することを特徴とするチューブ容器の加飾方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の加飾方法によって加飾されることを特徴とするチューブ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−6558(P2009−6558A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169255(P2007−169255)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】