説明

チューブ容器の製造方法

【課題】スリーブ部分の所望の位置に凹状の溝を形成することによって意匠性を向上させたチューブ容器を容易に製造する。
【解決手段】外周所定位置に凹状の成形溝12を形成し底部にスリット状の吸引孔13を形成したマンドレル10と、マンドレル10の中心軸10aに沿って移動可能に構成された離型部材20とを有する成形型Bを用い、成形型Bにチューブ容器Aを差し込んでスリーブ2の溝3に対応する部位に熱風を吹き付けて軟化させた後、吸引孔13から吸引して軟化部分を吸着して成形する。その後、離型部材20をマンドレル10から突出させてスリーブを離脱させ、マンドレル10と離型部材20との隙間25に圧縮空気を供給してチューブ容器Aを成形型Bから離型させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口部とスリーブとが一体化され且つスリーブに凹状の溝を形成して意匠性を向上させたチューブ容器を製造するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口部と該口部と一体化されたスリーブとを有し、スリーブの一端をシールして構成されたチューブ容器は、スリーブを押圧することで、内容物を押し出し或いは絞り出して使用する。このようなチューブ容器では、スリーブは可撓性を持った、アルミニウムのような金属、熱可塑性樹脂、金属や合成樹脂或いは紙の積層材等を材料として構成されるのが一般的である。
【0003】
チューブ容器ではスリーブは円筒状に形成されることから、端部を封止したときのチューブ容器の外形形状は単純であり、意匠的な有意性を発揮することが困難である。このような問題を克服して意匠性を向上させるために、合成樹脂製のスリーブに熱成形によって膨出部を形成することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1の技術では、チューブ容器の半製品を芯金へ嵌合させ、この状態で芯金を回転させつつ、或いは芯金を固定した状態で熱源によって所定部分を加熱し、その後、半製品を分割可能な金型に挿入すると共に半製品の内部に圧縮空気を吹き込み、或いは金型側から空気を吸引することによってチューブを膨出させ、その後、金型を分割して半製品を芯金から取り出すことで、所定部分が外側に膨出したチューブ容器を製造するものである。この技術では、チューブの一部を膨出させることによって、意匠性を発揮させることが出来る。
【0005】
【特許文献1】特公昭56−20970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、チューブを分割可能な金型に挿入して空気を噴射或いは吸引させて膨出部を形成している。このため、金型を分割することによって、一部が膨出した半製品であっても芯金から容易に取り出すことが出来る。しかし、チューブに凹状の溝を形成しようとした場合、チューブに内挿する金型を分割型とすることとなり、金型の構造が複雑となり、また成形動作も複雑になるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、スリーブ部分の所望の位置に凹状の溝を形成することによって意匠性を向上させたチューブ容器を容易に製造するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係るチューブ容器の製造方法は、スリーブに凹状の溝を形成したチューブ容器を製造するための方法であって、凹状の溝を形成すべきスリーブの内径に対応した外径を有し外周所定位置に凹状の溝を形成すると共に該凹状の溝の底部にスリット状の吸引孔を形成したマンドレルと、前記マンドレルと同心に配置され且つ該マンドレルの軸心に沿って出没可能に構成された離型部材と、からなる成形型を用い、前記離型部材をマンドレルに対し没入させた成形型にチューブ容器を差し込んだ後、該チューブ容器を構成するスリーブの前記成形型に形成された凹状の溝に対向する部位に熱風を吹き付けて軟化させ、スリーブが軟化した後、前記スリット状の吸引孔から吸引してスリーブの軟化部分を凹状の溝に吸着して成形し、スリーブに対する前記成形が終了した後、前記離型部材をマンドレルから突出させてスリーブをマンドレルから離脱させ、更に、前記マンドレルと離型部材との隙間に圧縮空気を供給してチューブ容器を成形型から離型させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
上記チューブ容器の製造方法では、マンドレルに差し込んだスリーブの外周所定位置に熱風を吹き付けて軟化させ、マンドレルに形成したスリット状の吸引孔から吸引することで、スリーブの軟化した部分をマンドレルに形成した凹状の溝に吸引して成形することが出来る。このとき、吸引孔が凹状の溝の底部にスリット状に形成されているため、スリーブの内面側を一様に吸引することが出来る。従って、スリーブにはマンドレルに形成された凹状の溝に一致した溝が形成され、意匠性を向上することが出来る。
【0010】
スリーブがマンドレルに形成された凹状の溝に吸引されて成形された後、離型部材を駆動すると、該離型部材はマンドレルの軸心に沿ってマンドレルから離隔する方向に移動し、この移動に伴ってチューブ容器をマンドレルから離脱させる。更に、離型部材とマンドレルとの間に圧縮空気を供給することで、チューブ容器を成形型から離型させることが出来る。
【0011】
上記の如く、スリーブに内径側への凹状の溝を形成し、この凹状の溝がマンドレルの溝との嵌合状態にある場合であっても、離型部材のマンドレルの軸心に沿った該マンドレルから離隔する方向への移動と、離型部材とマンドレルとの間に形成された隙間に圧縮空気を供給することで、成形されたチューブ容器を容易に成形型から離型することが出来る。このため、外周所定位置に凹状の溝を形成して意匠性を向上させたチューブ容器を容易に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るチューブ容器の製造方法の最も好ましい実施形態について説明する。本発明は、口部とスリーブとが一体化されており、スリーブを押圧することで口部から内容物を抽出し得るように構成され、スリーブの外周所定位置に凹状の溝を形成して意匠性を向上させたチューブ容器を製造する方法に関するものである。
【0013】
本発明に於いて、チューブ容器を構成するスリーブは熱可塑性樹脂によって形成されており、該スリーブの径や長さを限定するものではない。またスリーブが口部に対し如何なる構造で一体化されているかは何ら限定するものではなく、一般的に利用されているチューブ容器であって、スリーブが熱可塑性樹脂によって形成されているものであれば利用することが可能である。
【0014】
スリーブに凹状の溝を成形するに際し、スリーブの外周面であって成形すべき部位に熱風を吹き付けることで部分的に軟化させた後、マンドレルに形成した溝から吸引する場合、吸引を独立した孔によって行うと、成形されたスリーブが該孔を閉塞して円滑な吸引を行えないという問題が生じる。本発明では、この問題をマンドレルに形成した溝の底部にスリット状の吸引孔を形成することで解決している。
【0015】
即ち、マンドレルに形成した溝(成形用の溝)の底部にスリット状の吸引孔を形成することによって、該スリット状の吸引孔から負圧を作用させて軟化したスリーブを吸引したとき、吸引されたスリーブによってスリット状の吸引孔の一部が閉塞された場合であっても、負圧はスリット状の吸引孔の全ての部位から溝に対して作用するため、スリーブの他の部分にも一様に負圧が作用して良好な成形状態を確保することが可能である。
【0016】
従って、上記スリット状の吸引孔の幅寸法は特に限定するものではなく、スリーブを吸引して成形する際に大きな抵抗となることがなく、且つスリーブがマンドレルに形成された溝に密着したときにスリーブの成形形状に悪影響を及ぼすことのない寸法であれば良い。
【0017】
またチューブ容器のスリーブが成形型を構成するマンドレルの溝に嵌入して成形されたとき、該溝に嵌入したスリーブがアンダーカットと同様の係止機能を発揮して離型が円滑に行えないという問題が生じる。この問題を、マンドレルに該マンドレルの軸に沿って移動する離型部材を配置すると共に、離型部材の移動に伴って離型部材とマンドレルとの間に形成された隙間に圧縮空気を供給することで解決している。
【0018】
即ち、離型部材をマンドレルの軸心に沿って往復移動させ、該マンドレルから突出させたときにスリーブに形成した凹状の溝をマンドレルに形成した凹状の溝がら離脱させ、マンドレルに対して没入させたときに初期の位置にあるようにすることで、成形されたチューブ容器を成形型から円滑に離型させることが可能である。
【0019】
離型部材は、口部を構成する部位に接触して力を作用させるように構成することが好ましい。例えば、口部に於けるスリーブとの一体化部分である肩部に面接触させておき、この肩部に力を作用させてチューブ容器を成形型から離型させることで、一部に過大な力を及ぼすことなく、円滑な離型を実現することが可能である。
【0020】
離型部材を駆動する機構は特に限定するものではない。即ち、離型部材をエアシリンダーやクランクのような往復直線駆動機構によって駆動しても良く、また電気的に作動するソレノイドのような一方向直線駆動機構によって駆動しても良い。例えば離型部材を往復直線駆動機構によって駆動した場合、該駆動機構を制御することで離型部材を往復移動させることが可能であり、一方向直線駆動機構によって駆動した場合、離型部材を所定の退避状態に保持する保持機構が必要となる。
【0021】
また離型部材の突出動作と同期させて、該離型部材とスリーブとの間に形成される隙間に圧縮空気を供給することで、チューブ容器を離型部材から離脱させることが可能である。このため、離型部材の肩部に対する接触面は、該肩部の全面にわたることなく、圧縮空気が作用する面を残しておくことが好ましい。このように構成することで、供給された圧縮空気は、チューブ容器の肩部とスリーブとに作用し、肩部に作用した圧縮空気によってチューブ容器には離型部材から更に離型する方向への力が作用することとなる。
【0022】
従って、スリーブに凹状の溝が形成されたチューブ容器は、離型部材の突出に伴って成形された凹状の溝がマンドレルの溝から離脱し、且つ供給された圧縮空気によって離型部材から離脱することで、成形型から離型される。
【実施例1】
【0023】
次に、本発明の実施例に係る成形方法の手順について図を用いて説明する。図1は成形型にチューブ容器の嵌合させる際の展開図である。図2は成形型にチューブ容器を装着した状態を説明する図である。図3はスリーブを成形する際の状態を説明する図である。図4は成形されたチューブ容器を成形型から離型させる状態を説明する図である。図5は本実施例に係る成形型を用いて成形されたチューブ容器を説明する斜視図である。
【0024】
先ず、本実施例に係る成形方法の説明に先立って、本発明を実施することで製造されたチューブ容器Aの構成について図5により簡単に説明する。図に於いて、チューブ容器Aは、口部1と、口部1に一体化されたスリーブ2とを有して構成されている。
【0025】
チューブ容器Aの口部1は、フランジ状に形成された肩部1aと、該肩部1aの中心に突出して形成された口1bとによって構成されている。本実施例に於いて、口1bの外周には図示しないキャップを螺合するためのネジ部1cが形成されており、口1bの中心に抽出口1dが形成されている。抽出口1dを閉塞する場合、必ずしもネジキャップである必要はなく、ヒンジタイプのキャップであっても良い、この場合、口1bにはネジ部1cが形成されることなく、平滑は円筒面として形成される。
【0026】
スリーブ2は予め設定された径を有する筒体によって形成されており、口部1と一体化して構成されている。スリーブ2を口部1に対して一体化する方法は特に限定するものではないが、本実施例では、口部1を射出成形する際にインサート成形して一体化されている。
【0027】
スリーブ2の所定位置、本実施例では口部1に接近した位置には、全周にわたって一条の凹状の溝3が形成されている。この溝3が形成されることによって、チューブ容器Aには大きなアクセントが加えられることになり、意匠性の向上をはかることが可能となる。
【0028】
次に、図1,図4によって成形型Bの構成について具体的に説明する。成形型Bは、マンドレル10と、該マンドレル10の軸心10aに一致して配置され且つ該軸心に沿って往復移動可能な離型部材20と、チューブ容器Aのスリーブ2を加熱する加熱部材30と、を有して構成されている。また成形型Bは製造装置のフレーム40に設置されている。
【0029】
マンドレル10は、チューブ容器Aを構成するスリーブ2の内径よりも僅かに小さい外径を持った筒状の本体11を有しており、該本体11の外周面の所定位置に凹状の成形溝12が形成されている。成形溝12は、チューブ容器Aに形成すべき溝3の位置と形状に対応して形成されており、底部にスリット状の吸引孔13が該成形溝12の全長にわたって形成されている。例えば、成形溝12がチューブ容器Aのスリーブ2の全周にわたるリング状の溝3を形成するものである場合、吸引孔13は成形溝12の全周にわたって形成される。
【0030】
本体11は、更に本体部材11aと、上部部材11bと、ベース部材11cとを有して構成されている。本体部材11aとベース部材11cは一体的に形成されており、上部部材11bは本体部材11aの上部にネジ11dによって締結することで取り付けられている。尚、ベース部材11cがフレーム40に固定されることで、成形型Bが所定の位置を保持し得るように構成されている。
【0031】
そして、上部部材11bを本体部材11aに締結したとき、両部材11a,11bの間であって外周面に成形溝12とスリット状の吸引孔13が形成され、軸心10aに一致して離型部材20のガイド部21c及びロッド21dを嵌入させる孔11eが形成されると共に、該孔11eの端部には離型部材20を付勢する付勢部材22を収容する室11fが形成されている。
【0032】
本体11に形成された孔11e,室11fは、成形されたチューブ容器Aを離型させる際に圧縮空気を流通させる機能をも有するものである。このため、本体11のベース部材11cには室11fと連通する開口11gが形成されている。従って、開口11gに図示しない圧縮空気の供給源を接続しておくことで、室11fに圧縮空気を供給することが可能である。
【0033】
また本体部材11aの内部には、一端が吸引孔13に開口(開口14a)し、他端がベース11cの側面に開口(開口14b)する吸引路14が形成されている。このため、開口14bに図示しない真空ポンプ等の真空発生手段を接続し、該真空発生手段を作動させることで、開口14aを介して吸引孔13に真空圧を作用させることが可能である。吸引孔13に対し一様に真空圧を作用させるためには、吸引路14の数は1本に限定するものではなく、吸引孔13の長さに応じて適宜の数形成しておくことが好ましい。
【0034】
成形に際し真空圧のリークを防止するために、本体部材11aと上部部材11bとの接触部位にはOリング15が配置され、本体部材11aの外周面であってチューブ容器Aのスリーブ2と対向する位置にもOリング15が配置されている。
【0035】
離型部材20は、マンドレル10の軸心に沿って往復移動する移動部材21と、移動部材21をマンドレル10側に付勢する付勢部材22と、移動部材21をマンドレル10から離脱させる方向に付勢するバー23とを有して構成されている。
【0036】
移動部材21は、上端部に形成されチューブ容器Aの口部1を構成する肩部1aと当接するフランジ状の当接部(フランジ部)21aと、該フランジ部21aの中心に形成されチューブ容器Aの抽出口1dと嵌合する突起21bと、フランジ部21aと連続して所定長さ部分に形成されたガイド部21cと、ガイド部21cと連続して形成され該ガイド部21cよりも径の細いロッド21dと、下端部に形成されたネジ部21eと、を有して構成されている。
【0037】
移動部材21の当接部21aは、径が口部1を構成する肩部1aの内径よりも小さい径を有しており、当接部21aが肩部1aに当接したとき、該当接部21aの外側に肩部1aがリング状に露出する。従って、肩部1bの前記露出部分に空気圧が作用して口部1を移動部材21から離脱させる方向の力が生じ、これにより、チューブ容器Aが離型部材20(成形型B)から離脱する。
【0038】
ガイド部21cはマンドレル10の軸心10aに形成された孔11eの内径よりも僅かに小さい径を有しており、移動部材21が往復直線移動する際の移動方向を案内する機能を有している。このガイド部21cは、移動部材21がマンドレル10の本体11側に付勢された退避位置にあるとき、上部部材11bの内面所定位置に設けたOリング16と接触し、室11fに供給された圧縮空気が移動部材21のフランジ部21aと本体11の上部部材11bとの間にリークすることがないように構成されている。
【0039】
更に、ガイド部21cの長さ及びOリング16の位置は、移動部材21が上部部材11bから離脱する方向に移動(突出)して両部材21,11bの間隔が所定寸法になったとき、ガイド部21cのOリング16に対する接触が解除されて室11fに供給され圧縮空気が両部材21,11bの間に形成された隙間25(図4参照)に供給されるように設定されている。従って、ガイド部21cの長さ及びOリング16の位置を調整することによって、前記隙間25に対する圧縮空気の供給タイミングを適宜設定することが可能である。
【0040】
ロッド21dはマンドレル10の軸心10aに形成された孔11eの径よりも小さい径を持って形成されており、孔11eとの間に圧縮空気が流通する通路を形成し得るように構成されている。またロッド21dの端部及びネジ部21eは本体11の下端側に形成された室11fに露出しており、この露出部分にバネからなる付勢部材22を装着すると共にネジ部21eにナット24を締結することで、移動部材21は本体11側に適度な力で付勢されている。
【0041】
バー23は図示しないエアシリンダーやクランク等の往復駆動機構に接続されており、これらの駆動機構を作動させることによって、移動部材21のネジ部21eの端面と当接して上方(移動部材21を本体11から離脱させる方向)に移動させるものである。従って、駆動機構を作動させてバー23を下降限に位置させたとき、移動部材21は付勢部材22に付勢されて本体11に当接する退避位置に位置する。
【0042】
バー23は、マンドレル10の軸心10aと一致して且つフレーム40を貫通して配置され、端部が室11fに露出している。またバー23はフレーム40に設けたOリング15と接触しており、これにより室11fに供給された圧縮空気のフレーム40からのリークを防止し得るように構成されている。
【0043】
加熱部材30は成形型Bのマンドレル10に嵌挿させたスリーブ2に於ける溝3を成形すべき部位を加熱して軟化させる機能を有するものであり、成形すべき溝3の形状や長さに対応した形状を有している。本実施例では、スリーブ2に形成される溝3が該スリーブ2の全周にわたるものであるため、マンドレル10の外径よりも大きい内径を持ったリング状に形成されている。
【0044】
加熱部材30はヒーター31と熱風の供給路32a及び噴出口32bとを有して構成されており、図示しない制御部によって熱風の噴出時間を調整し得るように構成されている。
【0045】
尚、図に於いて、41は抑え部材であり、成形型Bにチューブ容器Aを供給してスリーブ2をマンドレル10に嵌挿する際に、口部1と当接して付勢するものである。
【0046】
次に、図1〜図4により、本発明の成形方法について説明する。成形型Bは、離型部材20を構成する移動部材21がマンドレル10を構成する本体11の上部部材11bに圧接した初期の状態を保持している。
【0047】
先ず、図1に示すように、成形型Bにチューブ容器Aを取り付ける。即ち、スリーブ2の下端側の開放部分をマンドレル10,離型部材20に嵌挿し、口部1を抑え部材41によって押圧することで、肩部1aを移動部材21のフランジ部21aに接触させると共に抽出口1dに突起21bを嵌入させて、チューブ容器Aを取り付ける。
【0048】
次いで、図3(a)に示すように、マンドレル10に形成された成形溝12と対向する位置に配置された加熱部材30によって、チューブ容器Aのスリーブ2を加熱して軟化させる。即ち、加熱部材30のヒーター31を作動させると共に供給路32aに空気を供給して熱風とし、この熱風を噴出口32bから噴出することで、スリーブ2に於ける溝3の成形予定位置を加熱して軟化させる。
【0049】
スリーブ2が軟化した後、同図(b),図2に示すように、熱風の噴出を停止させると共に吸引孔13に負圧を作用させて軟化したスリーブ2をマンドレル10の成形溝12側に吸引する。この吸引に伴って、スリーブ2の軟化部分が成形溝12の表面に密着し、該成形溝12の形状に応じた溝3が成形される。
【0050】
次いで、図4に示すように、バー23が駆動され、該バー23によって離型部材20を構成する移動部材21がマンドレル10の本体11を構成する上部部材11bから離隔する。この移動部材21の移動により、フランジ部21aがチューブ容器Aの肩部1aを上方に押し上げ、これに伴って、スリーブ2に成形された溝3がマンドレル10の成形溝12から離脱する。
【0051】
バー23の上昇に伴って、移動部材21のフランジ部21aと本体11の上部部材11bとの間に隙間25が形成される。バー23の更なる上昇に伴って、移動部材21のガイド部21cとOリング16との接触が解除され、前記隙間25と本体11に設けた孔11e,室11fとが連通し、これにより、室11fに供給された圧縮空気が隙間25に供給される。
【0052】
チューブ容器Aがマンドレル10から離脱していない状態では、該チューブ容器Aの口部1,スリーブ2と、マンドレル10の本体11及び離型部材20の移動部材21とによって隙間25は密閉された空間となる。このため、隙間25に供給された圧縮空気の圧力は、チューブ容器Aの口部1,スリーブ2に対し一様に作用することになり、特に、口部1の肩部1aに作用する圧力によって、チューブ容器Aにはマンドレル10の軸心10aに沿って該マンドレル10から離脱する方向への力が作用する。
【0053】
従って、チューブ容器Aは肩部1aのフランジ部21aに対する当接(突起21bの抽出口1dに対する嵌挿)が解除され、これにより、チューブ容器Aは成形型Bから離型されて、スリーブ2の所定位置に凹状の溝3が形成されたチューブ容器Aが製造される。
【0054】
次に、前述のチューブ容器Aとは異なる溝を形成した例について図6,図7により説明する。尚、図に於いて、前述の実施例と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
図6に示すチューブ容器Cは、スリーブ2に2条の溝2を形成したものである。このように、スリーブ2に複数条の溝3を形成する場合、マンドレル10には溝3の数に応じた数の成形溝12を形成しておくことが必要となる。この場合、マンドレル10の本体11を本体部材11aと上部部材11bとによって構成し、本体部材11aの寸法を下側の溝3の位置に対応させた寸法で形成すると共に、該本体部材11aに対し上下に溝12の片側の形状を形成したリングを嵌め込み、更に、上部部材11bを締結することで構成することが可能である。
【0056】
上記の如く構成された成形型であっても、2条の溝の底部にはスリット条の吸引孔を形成することが可能となる。尚、この場合、各吸引孔に独立した吸引路を設けても良く、1の吸引路を各吸引孔に連続されても良い。
【0057】
図7に示すチューブ容器Dは、スリーブ2の外周の略半周にわたって溝4を形成すると共に、該溝4の所定位置から縦方向に溝5を形成したものである。スリーブ2にこのような溝4,5を形成する場合、マンドレル10には前記溝4,5に対応させた成形溝12が形成される。このような成形溝12は、図2の成形溝12に縦方向の溝を付加することで良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る成形方法では、円筒状のスリーブを有するチューブ容器のスリーブに所望の凹状の溝を形成することが可能であり、チューブ容器の意匠性を向上させることが可能となって有利である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】成形型にチューブ容器の嵌合させる際の展開図である。
【図2】成形型にチューブ容器を装着した状態を説明する図である。
【図3】スリーブを成形する際の状態を説明する図である。
【図4】成形されたチューブ容器を成形型から離型させる状態を説明する図である。
【図5】本実施例に係る成形型を用いて成形されたチューブ容器を説明する斜視図である。
【図6】異なる溝を持ったチューブ容器の例を示す斜視図である。
【図7】異なる溝を持ったチューブ容器の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
A,C,D チューブ容器
B 成形型
1 口部
1a 肩部
1b 口
1c ネジ部
1d 抽出口
2 スリーブ
3〜5 溝
10 マンドレル
10a 軸心
11 本体
11a 本体部材
11b 上部部材
11c ベース部材
11d ネジ
11e 孔
11f 室
11g 開口
12 成形溝
13 吸引孔
14 吸引路
14a,14b 開口
15,16 Oリング
20 離型部材
21 移動部材
21a フランジ部
21b 突起
21c ガイド部
21d ロッド
21e ネジ部
22 付勢部材
23 バー
24 ナット
25 隙間
30 加熱部材
31 ヒーター
32a 供給路
32b 噴出口
40 フレーム
41 抑え部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリーブに凹状の溝を形成したチューブ容器を製造するための方法であって、凹状の溝を形成すべきスリーブの内径に対応した外径を有し外周所定位置に凹状の溝を形成すると共に該凹状の溝の底部にスリット状の吸引孔を形成したマンドレルと、前記マンドレルと同心に配置され且つ該マンドレルの軸心に沿って出没可能に構成された離型部材と、からなる成形型を用い、前記離型部材をマンドレルに対し没入させた成形型にチューブ容器を差し込んだ後、該チューブ容器を構成するスリーブの前記成形型に形成された凹状の溝に対向する部位に熱風を吹き付けて軟化させ、スリーブが軟化した後、前記スリット状の吸引孔から吸引してスリーブの軟化部分を凹状の溝に吸着して成形し、スリーブに対する前記成形が終了した後、前記離型部材をマンドレルから突出させてスリーブをマンドレルから離脱させ、更に、前記マンドレルと離型部材との隙間に圧縮空気を供給してチューブ容器を成形型から離型させることを特徴とするチューブ容器の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−43932(P2006−43932A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225235(P2004−225235)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】