説明

チューブ配管の取付構造

【課題】本発明は、ケース部の外周部に沿って取付けられる金属製のチューブ配管の取付構造である。
【解決手段】 本チューブ配管の取付構造において前記チューブ配管の固定端の軸方向とブラケットの軸方向とは位相が異なり、前記ブラケットが前記チューブ配管に固着される第一ブラケットと、前記ケース部に固定支持される第二ブラケットで分割構成され、該第一ブラケットと第二ブラケットとは互いにラップする重ね面を有し、該重ね面には両者の仮支持手段と回り止め手段とを有する締結部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機等のケース部の外周部に沿って取り付けられるチューブ配管の破損等を防止し得る可能なチューブ配管の取付構造に関し、特にチューブ配管とケース部とを取り付けるためのブラケットで応力を吸収させることでチューブ配管の破損等を防止し得るチューブ配管に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機等のケース部の外周部にはオイルクーラで冷やされた油を戻すための接続口が設けられ、この接続口にオイルクーラの出口部と接続された金属製のチューブ配管が接続されている。例えば特開2001−99274号公報にはチューブ配管の一例として、自動変速機のケース部に取付けられる単一経路のオイルクーラーチューブが開示されており、このオイルクーラーチューブはそのインレット部あるいはアウトレット部の取付け軸と同方向にリテーナを介してボルト締結により取付けられている。
【0003】
このオイルクーラーチューブは概ね二次元平面内で曲げられており、両端の取付け位置のずれの吸収はケース部に取付けるためのブラケットに拡大穴(長穴)を設けること等で対応している。
【0004】
一方、図5及び図6では自動変速機100とオイルクーラー102とを接続する多連経路のオイルクーラーチューブ104(この場合、インレット部側のチューブとアウトレット部側のチューブの2本で形成される)とオイルクーラーホース106とが示されている。一般的にオイルクーラーチューブ104の一方端の自動変速機100との連通部の位置は自動変速機100の内部構造に対応して設定されるものであり、他方端はオイルクーラーホース106との接続作業を容易にすることを配慮して位置決めされるものである。また、オイルクーラーチューブ104を自動変速機100の外周面で締結する位置と方向とは、自動変速機100の外周面での他の物品との干渉や組付け作業性で選択されるものである。
【0005】
それゆえ図5のように、オイルクーラーチューブ104のユニオンボルト(図示せず)の締結軸方向と、ケース部外周部に取付けるブラケット(図示せず)の締結方向が位相ずれを起こす場合がある。この位相ずれは一般的にブラケットの三次元的な位置ずれを招くためブラケットに拡大穴等を設ける程度の対策(上述)では足りず、取付時にチューブ本体に過大な初期応力が発生することがある。このことはオイルクーラーチューブの破損・劣化を招く原因となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−99274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の事情に鑑みて創作されたものであり、自動変速機等のケース部の外周部に取付けるオイルクーラーチューブ等のチューブ配管において上述するような三次元的な位相ずれを起こしている場合にチューブ配管の破損等を防止し得るチューブ配管の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明では、ケース部の外周部に沿って取付けられる金属製のチューブ配管の取付構造を提供する。このチューブ配管は、一方端の接続口で前記ケース部の内部に接続固定され(固定端とを形成する)、他方端の接続口で前記ケース部と別部品と接続可能に開放され(開放端を形成する)、該両端の中間部でブラケットにより前記ケース部と固定支持される構成を有する。また、前記ケース部の内部に接続固定される一方端の接続口での接続に使用する締結部材の軸方向と、前記ブラケットと前記ケース部との締結部材の軸方向との位相が異なる。また、前記ブラケットは、前記チューブ配管に固着される第一ブラケットと、前記ケース部に固定支持される第二ブラケットとで分割構成され、該第一ブラケットと第二ブラケットとは互いにラップする重ね面を有し、該重ね面には両者の仮支持手段と回り止め手段とを有する締結部とを備えている。
【0009】
本発明のチューブ配管の取付構造によれば、オイルクーラーチューブ等のチューブ配管10(例えば図3に示す実施形態を参照する(以下、同様))とケース部1の内部と固定接続する接続口12bの軸方向Aと、オイルクーラー等への接続口14までの中間部でチューブ配管10とケース部1とを固定するブラケット16の軸方向Bと、が大きく位相が異なる場合であっても、取付時に生じる初期応力がチューブ配管10ではなくブラケット16が吸収するためチューブ配管10の破損・劣化を解消することができる。また、前記位相が異なる場合でもまずケース部1の内部と固定接続する方のチューブ配管端部12(固定端)をしっかりと締結してからブラケット16をケース部1の外周部に固定支持することができる。
【0010】
したがって、通常の取付工程のように固定端12とブラケット16とを少しずつケース部1に締結していく必要がなく、一気に固定端12を固く締結することができる。その結果、取付工数が減少できると同時にケース部1の内部とチューブ配管との接続のシール性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明のチューブ配管の取付構造において、前記ケース部は自動変速機であり、前記チューブ配管はオイルクーラである前記別部材に接続可能なオイルクーラーチューブであっても良い。
【0012】
本発明をチューブ配管の取付構造は、自動変速機のオイルクーラーチューブとして使用することが好適であり、本発明により自動変速機に対するインレット・アウトレット位置やホースの取付位置の自由度が拡大する。これによりオイルクーラーチューブの自動変速機への組付け性が大幅に向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のチューブ配管の取付構造によれば、自動変速機等のケース部の外周部に取付けるオイルクーラーチューブ等のチューブ配管の接続口での締結部材の軸方向とブラケットの軸方向との位相が異なる場合でも、ブラケットを分割構造にすることでチューブ配管本体に初期応力が残存しないようにして取付けることができる。したがって、チューブ配管の破損を防止し、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】オイルクーラーチューブを自動変速機に取り付けた状態を示す側面図である。
【図2】本発明におけるチューブ配管の一例としてのオイルクーラーチューブの斜視図である。
【図3】本発明におけるチューブ配管(オイルクーラーチューブ)の固定端とケース部との固定接続の例の略断面図である。
【図4】図2のオイルクーラーチューブのブラケットの略拡大図である。
【図5】自動変速機のオイルクーラーチューブとオイルクーラーホースとオイルクーラーとの取付状態を示す組立図である。
【図6】図5に示す自動変速機、オイルクーラーチューブ、オイルクーラーホース、オイルクーラー及びブラケットの接続関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、本発明の一実施形態にチューブ配管の取付構造について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態ではチューブ配管を取付けるケース部として自動変速機に取付けるオイルクーラーチューブで例示して説明する。
【0016】
図1は自動変速機1の外周表にオイルクーラーチューブ10が取付けられた状態を示す自動変速機1の側面図である。通常、オイルクーラーチューブは二点鎖線で示す参照番号10´のような形状を有する場合が多いが、ここでは両端の距離が長いオイルクーラーチューブ10を例示する。このオイルクーラーチューブ10は、その一方端が自動変速機1のケース部内にシールされた状態で固定接続する固定端12であり、他方端がオイルクーラ側(図示せず)に接続可能な開放端14になっている。
【0017】
このオイルクーラーチューブ10は図2に示されている。オイルクーラーチューブ10は自動変速機1のケース部内に接続固定する固定端12と、オイルクーラ(図示せず)に接続可能な開放端14と、の間で延びる金属製の薄肉チューブである。この固定端12と開放端14との中間部にブラケット16が存在する。固定端12は、ケース部への締結用のアイボルトを挿入し得る穴12aが空いた環形状で構成されている。また、固定端12の穴12aは接続口12bを介してチューブ内と連通している。
【0018】
図3は固定端12でのケース部1への締結例の断面模式図である。図3(a)は図2に示す固定端12が表されており、ケース部1に対してボルト13で固定端12を締結していることがわかる。ボルト13と固定端12との間、固定端12とケース部1との間、にはガスケット15が挿入されており、このガスケット15はオイルクーラーチューブ10とケース部との間のシール目的の部材である。
【0019】
また、図2、図3(a)では環状の固定端12をボルト締結することでケース部1に固定接続する方法が示されている。その他、例えば自動変速機1やエンジンの外部配管11としてケース部1との固定接続は図3(b)に示す方法も考えられる。具体的にはケース部1に外部配管11のケース部側の接続口12bを挿入し、外部配管11の周囲に回動自在に設けられたブラケット17をケース部1にボルト13´で締結する。また、ケース部1の穴の内壁と外部配管11の外壁の間にはO-リング18が介挿されており、ケース部1と外部配管11との間のシールが形成される。
【0020】
再び図2に戻ると、オイルクーラーチューブ10の固定端12の反対側は開放端になっており、接続口14に接続されたホース等を介してオールクーラ(図示せず)に接続する。また、固定端12と開放端14との中間部にはブラケット16が取付けられている。このブラケット16は、オイルクーラーチューブ10をケース部1に固定するものであり、チューブ外壁に蝋付けや溶接で固着され(図2の符号16a参照)、ケース部1には締結穴16bを介してボルト締結されている(図示せず)。
【0021】
このとき固定端12のボルトの軸方向A(締結部材の軸方向:図2の紙面方向)とブラケット16のボルトの軸方向B(締結部材の軸方向)との三次元的な位相が大きく異なっている。これはオイルクーラーチューブ10の長さやケース部の形状に基づく必然的なものである。なお、図2のオイルクーラーチューブ10では、固定端12のボルトの軸方向A(締結部材の軸方向:図2の紙面方向)と開放端14の接続口の軸方向Cとの三次元的な位相も大きく異なっている。
【0022】
ここでオイルクーラーチューブ10をケース部1に取付ける工程を考えてみる。まず最初に、オイルクーラーチューブ10は固定端12においてケース部1に固定接続される。次に、ブラケット16をケース部表面に取付ける。この順番は固定端12での接続の方がその固定硬さ及びシール性確保が重要だからである。このとき固定端12側を中心に位置決めしていくとブラケット16側は3次元的な位置ずれが大きくなり、オイルクーラーチューブ10やブラケット16を撓ませながらブラケット16をケース部に締結していくことになる。なお、一気に固定端12側を固定した後にブラケット16側を固定するとオイルクーラーチューブ10が取付時点で破断してしまう可能性があるため、実際には固定端12側を中心に少しづつ固定しながらその都度ブラケット16側を固定していく工程を採用する。その意味ではオイルクーラーチューブ10の実際に取付工程は複数工程が必要で煩雑なものと言える。とりわけ図2のオイルクーラーチューブ10のように軸方向の位相差(軸方向AとBの位相差)が大きい場合、顕著である。
【0023】
このため本実施形態ではブラケット16を分割し、2部材で構成する構造を採用している。このブラケット16は金属板であり、オイルクーラーチューブ10側の第一ブラケット16c、ケース部側の第二ブラケット16dと、での2部材で構成される。この第一ブラケット16cと第二ブラケット16dとは互いに板厚方向にラップ(重複)して形成される。詳細には図2中の点線部分の領域を拡大した概略図が図4に参照される。
【0024】
図4(a)は図2の点線領域をブラケット16の側方から見た略示図であり、図4(b)は図4(a)を紙面上方から見た略示図(図2の点線領域をブラケット16の上方から見た略示図)である。第一ブラケット16cはオイルクーラーチューブ10側で板厚方向に貫通する穴16eが設けられている。この穴16eはブラケッ16の剛性を下げる目的のものであり、ブラケット16をケース部1に取付けるときの初期応力がオイルクーラーチューブ10に発生することを防止するために設けられるものである。つまり、ブラケット16を撓ませることでオイルクーラーチューブ10への応力集中を緩和する。その意味では図4(b)では比較的大きな穴16eが1つ示されているが、この穴16eは複数個で形成されるものであっても良い。また、穴16eの替わりに第一ブラケット16cの板厚を薄くすることや、第一ブラケット16cと第二ブラケット16dとのラップ部分の面積を小さくすることで剛性を下げても良い。
【0025】
また、第一ブラケット16cは第二ブラケット16d側の先端16hは、板厚方向では下方に曲げられており(図4(a)参照(逆S字形状が例示))、幅方向では先細りになっている(図4(b)参照)。この第一ブラケット16dの先端16gが引っ掛けられるようにブラケット16dには板厚方向に貫通する係り穴16gが設けられている。この係り穴16gを先端16hに引っ掛けて第一及び第二ブラケット16c、16dをラップさせた状態でブラケット16はケース部1にボルト締結される。この時点ではオイルクーラーチューブ10とケース部1との取付時の初期応力は先端16hと係り穴16gとの隙間で逃がした状態となる。
【0026】
先端16hを係り穴16gに引っ掛けた後、第一ブラケット16cと第二ブラケット16dとはボルト締結される。具体的には特に図4(b)に示すように第一ブラケット側のボルト穴16fと第二ブラケット側のボルト穴16iとが板厚方向に貫通して設けられている。このボルト穴16f、16iは前述の先端16h、係り穴16gよりもオイルクーラーチューブ側(紙面下側)に設けられ、先端16hを係り穴16gに引っ掛けた状態でボルト18とナット20とを締結する。なお、図4(a)に示すようにボルト18の頭部と第一ブラケット16cとの間にはワッシャ19が介挿されている。なお、他の実施形態として、第一ブラケット16cと第二ブラケット16dとの間には振動を吸収する防振ゴムを介挿してもよい。
【0027】
このように先端16hを係り穴16gに引っ掛けたただけ緩い接続状態からボルト18とナット20とを締結していくにつれて第一ブラケット16cと第二ブラケット16dとが固く接続されていくことになる。したがって、ブラケット16をケース部1に固定する際、固定端12の軸方向Aとブラケットの軸方向Bとが異なる位相であっても位置決めが容易であり、取付時における初期応力は第一ブラケット16の穴16eで吸収されることとなる。
【0028】
以上、本発明のチューブ配管の取付構造についての実施形態およびその概念について説明してきたが本発明はこれに限定されるものではなく特許請求の範囲および明細書等に記載の精神や教示を逸脱しない範囲で他の変形例、改良例が得られることが当業者は理解できるであろう。例えば上述する実施の形態ではチューブ配管として単経路のオイルクーラーチューブの場合が例示されたが、本発明は多連経路のオイルクーラーチューブでも適用される。
【符号の説明】
【0029】
1 自動変速機(ケース部)
10 オイルクーラーチューブ(チューブ配管)
11 外部配管(チューブ配管)
12 固定端
12a 穴
12b 接続口
14 開放端(接続口)
16 ブラケット
16a 蝋付け(溶接付け)
16b 締結部
16c 第一ブラケット
16d 第二ブラケット
16e 穴
16f ボルト穴
16g 係り穴
16h 先端
16i ボルト穴
17 ブラケット
19 ワッシャ
20 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部の外周部に沿って取付けられる金属製のチューブ配管の取付構造であって、
前記チューブ配管は、一方端の接続口で前記ケース部の内部に接続固定され、他方端の接続口で前記ケース部と別部品と接続可能に開放され、該両端の中間部でブラケットにより前記ケース部と固定支持される構成を有し、
前記ケース部の内部に接続固定される一方端の接続口での接続に使用する締結部材の軸方向と、前記ブラケットと前記ケース部との締結部材の軸方向との位相が異なり、
前記ブラケットは、前記チューブ配管に固着される第一ブラケットと、前記ケース部に固定支持される第二ブラケットとで分割構成され、
該第一ブラケットと第二ブラケットとは互いにラップする重ね面を有し、該重ね面には両者の仮支持手段と回り止め手段とを有する締結部とを備える、チューブ配管の取付構造。
【請求項2】
前記ケース部は自動変速機であり、前記チューブ配管はオイルクーラである前記別部材に接続可能なオイルクーラーチューブである、請求項1に記載のチューブ配管の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−141026(P2012−141026A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294607(P2010−294607)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】