説明

チロシナーゼ阻害剤及びそれを用いた飲食品

【課題】一次利用後の廃棄物からでも得ることができ、低濃度で高い効果を有し、安全且つ風味良好で、連用摂取しやすく、特に水溶性の場合には様々な剤形に応用可能な新規なチロシナーゼ阻害剤及びそれを用いた飲食品を提供する。
【解決手段】焼成栗皮抽出物を含有することを特徴とするチロシナーゼ阻害剤及び上記チロシナーゼ阻害剤を含有する飲食品によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミやソバカスの原因となるメラニンの生成に関与するチロシナーゼの働きを阻害するチロシナーゼ阻害剤及びそれを用いた飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、肌に生じるシミやソバカスは、ホルモンバランスの異常や紫外線照射により、表皮細胞内で活性化されたチロシナーゼ酵素が、チロシンやドーパに作用してメラニンを生成し、この生成されたメラニンが皮膚組織に定着するために発生するといわれている。近年、このチロシナーゼを阻害してメラニン生成を制御することで、美白作用を誘因するチロシナーゼ阻害剤の探索研究が進められている。
【0003】
従来のチロシナーゼ阻害剤としては、例えば、松樹皮抽出物を含有するチロシナーゼ阻害剤(例えば、特許文献1参照。)、栗の葉、栗のいがの溶媒抽出物を含むチロシナーゼ阻害剤(例えば、特許文献2参照。)等が知られている。
しかしながら、特許文献1及び2は、いずれも化粧料等の皮膚外用剤としての利用が目的であるので、飲食品におけるその効果は検証されておらず不明であった。また、栽培で農薬を多用するので、特に松樹皮、栗の葉、栗のイガのような表面組織には農薬が残留する危険性があり、飲食品等の経口摂取用としては人体への影響が懸念される。仮に、低農薬、有機栽培とした場合には、生産規模が小さく、廃棄物利用のメリットが小さい。
【0004】
また、上記の他にチロシナーゼ活性阻害剤として、栗皮抽出物を含有する化粧料組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。これは栗の心皮から分離、精製した抽出物を含有する化粧料組成物によって、皮膚改善効果を有するものである。
しかしながら、特許文献3もまた、化粧料への利用目的であるため、経口摂取品、特に飲食品におけるその効果は検証されておらず不明であった。また、チロシナーゼ阻害成分の抽出方法に、経口摂取品、特に飲食品への利用のための汎用性は考慮されていない。また、原料の栗の心皮に関しては、詳細な部位は不明であるが、収穫した栗の栗果実から分離した部位を天日に干した後は、すぐに抽出工程に入るため、経口摂取品、特に飲食品に添加した場合、エグミ・渋味を生じたり、抽出方法によっては、含有させる飲食品への溶解性が悪いため、沈殿したりする可能性があり、その利用性は妥当ではない。
【0005】
一方で、本発明者らは、甘栗の製造工程中に発生する廃棄物である栗の鬼皮及び渋皮の利用用途について、抗酸化作用、α−グルコシダーゼ阻害作用、アンジオテンシン変換酵素阻害作用及びリパーゼ阻害作用を有することを突き止めており、既に出願している(例えば、特許文献4、5、6及び7参照。)。しかしながら、これら出願時には、焼成栗皮抽出物にチロシナーゼを阻害する作用があることは見出されていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−238425号公報
【特許文献2】特開平8−217687号公報
【特許文献3】特開平10−226633号公報
【特許文献4】特開2004−189956号公報
【特許文献5】特願2004−179010号
【特許文献6】特願2005−232921号
【特許文献7】特願2005−232922号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、一次利用後の廃棄物からでも得ることができ、低濃度で高い効果を有し、安全且つ風味良好で、連用摂取しやすく、特に水溶性の場合には様々な剤形に応用可能な新規なチロシナーゼ阻害剤及びそれを用いた飲食品を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における上記目的は、焼成栗皮抽出物を含有することを特徴とするチロシナーゼ阻害剤で達成される。
【0009】
好ましくは、焼成栗皮抽出物が、親水性溶媒を含有する抽出溶媒により抽出された抽出物である。より好ましくは、焼成栗皮抽出物が、焼成栗皮由来のタンニンを含有してなる。更に好ましくは、焼成栗皮抽出物が、焼成栗皮由来のプロアントシアニジンを含有することが望ましい。
また、上記チロシナーゼ阻害剤は、飲食品に含有させてもよく、その飲食品に、メラニンの生成に関与するチロシナーゼを阻害する旨を表示してもよい。
【0010】
すなわち、本発明者らは、シミ、ソバカスの要因となるメラニン生成反応系のアプローチの中でも、表皮組織のチロシナーゼ活性を阻害することで、メラニン生成を防止し得る新たなチロシナーゼ阻害剤を得るため鋭意検討した。
そこで、従来、チロシナーゼ阻害に効果があると知られているプロアントシアニジンに着目し、一次利用後の廃棄物等をリサイクルでき、チロシナーゼ阻害効果を有すると共に、食品に添加しても食品本来の風味に対する影響の少ない各種飲食品原料について探索した。
その結果、驚くべきことに、各種栗製品の製造の際に廃棄物として大量廃棄されてきた栗の皮の中でも焼成栗皮、特に焼成した鬼皮と渋皮を用いた抽出物が、チロシナーゼ阻害能を有することを今回初めて見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来のチロシナーゼ阻害剤よりも、風味に癖がなく、継続しての連用摂取がしやすい。
また、強力なチロシナーゼ阻害作用が得られるため、他の美白誘因剤を併用する必要がなく、バリエーション豊富な風味展開が可能である。
更には、本発明で得られるチロシナーゼ阻害剤の形態や、これを用いた飲食品の形態等を限定しない為、食事と共に摂取可能で、汎用性が高い。
また、本発明のチロシナーゼ阻害剤は、特に水溶性とした場合には、これを用いた飲食品への混合及び溶解が容易で、飲食品への応用性が高い。
また、甘栗や焼き栗等の栗菓子を製造する際に大量廃棄されていた焼成栗の鬼皮及び渋皮を有効利用できるので、原料を特段に栽培する必要がなく、安価で、安全、安定した原料供給が可能であり、しかも廃棄物の排出量の低減に役立ち、地球環境への影響を配慮したものである。
更には、焼成栗皮を用いることにより、煩雑な工程を設けることなく、抽出工程のみでもチロシナーゼ阻害作用を有する抽出物を得ることができるので、短時間で効率良く簡単にチロシナーゼ阻害剤を得ることができる。また、風味では香ばしさを、外見では深い琥珀色の色調を有し、食品に添加すると、風味増強を助長するため連食性を促す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を詳しく説明する。
【0013】
まず、本発明のチロシナーゼ阻害剤とは、皮膚表層に存在するメラニン生成細胞(メラノサイト)内において、無色でメラニン前駆体のチロシンやドーパに作用し、黒色色素で
あるメラニンを生成する反応系を触媒するチロシナーゼ活性の阻害剤である。なお、上記メラニンが蓄積し定着すると、肌に生じるシミやソバカスの原因となるのである。
【0014】
本発明のチロシナーゼ阻害剤は、焼成栗皮抽出物を含有する。
本発明の原料となる栗の品種や大きさは、特に限定するものではなく、一般に用いられるものから適宜選択して用いればよい。例えば、栗の品種としては、日本栗、欧州栗、中国栗、アメリカ栗等が挙げられる。
【0015】
また、本発明のチロシナーゼ活性阻害剤に用いる焼成栗皮は、栗のイガを取り除いた種実のうち、果肉部分を除いた栗の渋皮、最外皮の鬼皮を使用し、これらは単独もしくは組合せて適宜選択して用いればよい。
上記焼成栗皮は、一次利用後の廃棄物であっても、果肉付きの生栗から専用に剥皮した後、栗皮のみを焼成してもよく、特に限定するものではないが、一次利用後の廃棄物を用いる方が、特に焼成栗の一次利用後の廃棄物を用いる方が、安価で、安全、安定した原料供給が可能であると共に、廃棄物の排出量を低減させることができる点や焼成工程を省略するため効率の点で好適である。
【0016】
上記焼成栗皮は、焼成処理が施されており、有効量添加しても食品本来の風味を損なわずにチロシナーゼ阻害効果を発揮し、且つ、大量に添加した際には香ばしく美味な風味を付与することができるため、コーヒー及び麦茶等の焙煎系飲食品に好適に用いられ、更には琥珀色の色調を付与する点で好ましい。焼成栗皮の焼成条件は、例えば、剥き栗用生栗の場合、熱風ロースト等により250〜400℃、5〜10分程度が挙げられるが、必ずしも、上記条件に限定されるものではない。
【0017】
本発明の焼成栗皮抽出物は、上記焼成栗皮から適宜の抽出方法により抽出されたものを指す。好ましくは、タンニンが抽出されていることが、チロシナーゼ阻害活性の点で好適である。
【0018】
上記タンニンとは、フェノール性水酸基を多数持ち、獣皮をなめす性質を示す植物由来の化合物の総称であり、加水分解型タンニンと縮合型タンニンとに大別される。
加水分解型タンニンとは、一般に分子内のポリフェノール部分としてgalloyl基、hexahydroxydiphenoyl基及びその酸化体等があり、これらが分子内の糖または環状ポリアルコールとエステル結合した構造をもつ。
一方、縮合型タンニンは、カテキン等のフラバン類が、互いに分子間でC4〜C8位又はC4〜C6位等でC−C結合により結ばれて、2量体以上の重合体を形成したものであり、モノマーのフラボノイド類とは分類上異なる。縮合型タンニンの中でも、C−C結合の開裂によりアントシアニジンを生成するものを、プロアントシアニジンと呼ぶ。
【0019】
本発明に係る焼成栗皮抽出物には、上述のように、タンニンが含有されていることが好ましいが、該タンニンの中でも、特に縮合型タンニン、更に好ましくはプロアントシアニジンが含まれていることが、チロシナーゼ阻害活性の点で好適である。
【0020】
本発明におけるチロシナーゼ阻害剤は、上記焼成栗皮抽出物を有効成分として含有する。有効成分とは、目的とする機能が発揮される程度に該抽出物を含むことを示す。具体的には、チロシナーゼ阻害剤全体重量中、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは80重量%以上の焼成栗皮抽出物を含有することが、より好適にはチロシナーゼ阻害剤全体が焼成栗皮抽出物のみから成ることが、チロシナーゼ阻害活性を十分に得ることが出来る点で望ましい。
【0021】
本発明のチロシナーゼ阻害剤は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択した副原料
を含有してもよい。副原料としては、例えば糖質甘味料(果糖、ブドウ糖、タガトース、アラビノース等の単糖類、乳糖、オリゴ糖、麦芽糖、トレハロース等の少糖類、粉末水あめ、デキストリン、糖アルコール等)、高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムK、ステビア等)、でん粉等の多糖類、油脂類、乳製品、安定剤、乳化剤、香料、色素、酸味料、風味原料(卵、コーヒー、茶類、ココア、果汁果肉、ヨーグルト、酒類等)、蛋白質、アミノ酸、食物繊維、ビタミン類、ミネラル、グルコサミン、酵母、卵殻膜、リコピン、アスタキサンチン、その他カロテノイド、シルク、コンドロイチン、セラミド、プラセンタエキス、フカヒレエキス、深海鮫エキス、スクワレン、γ−アミノ酪酸、生栗皮抽出物、栗の葉抽出物、栗のいが抽出物、栗果肉抽出物、栗樹皮抽出物、キャベツ発酵エキス、バラの花びら抽出物、ブドウ葉抽出物、ブドウ種子抽出物、りんごポリフェノール、カミツレエキス、ライチ種子エキス、ゴツコラエキス、月桃葉エキス、ハス胚芽エキス、スターフルーツ葉エキス、桑葉抽出物、グァバ茶抽出物、カテキン、ラズベリーケトン、低分子アルギン酸、イチョウ葉抽出物、松樹皮抽出物、キトサン、ヒアルロン酸、メチルスルフォニルメタン、コウジ酸、エラグ酸、アルブチン、ルシノール、マグノリグナン、リン酸L−アスコルビン酸マグネシウム等が挙げられる。
なお、以上の副原料は、単独でも、複数組合せて使用してもよい。
【0022】
本発明のチロシナーゼ阻害剤の形態は、特に限定するものではなく、例えば液状、粉体、顆粒状、ペースト状等種々の形態が挙げられる。この中でも、粉体もしくは顆粒状は、チロシナーゼ阻害活性効果が長期間安定に保たれる点で好ましい。
【0023】
次に、一次利用後の廃棄物である焼成栗皮を用いて本発明のチロシナーゼ阻害剤は、例えば次のようにして製造される。
すなわち、まず、一次利用後の廃棄物である焼成栗皮を準備する。このとき、焼成栗皮を細かく粉砕すると、効率的に抽出物が抽出できる点で好適である。なお、本発明のチロシナーゼ阻害剤を調製する段で、生栗皮を焼成する場合は、焼成処理と粉砕処理とをどちらを先に行ってもよいが、焼成処理を施してから粉砕するほうが、効率性の点で好適である。また、焼成栗皮を水で洗う、水に浸漬して濾別するなどの処理を施して、予め親水性画分を除去するようにしてもよい。
【0024】
他方で、焼成栗皮を抽出する抽出溶媒を準備する。
上記抽出溶媒としては、親水性溶媒、多価アルコール、超臨界二酸化炭素等が挙げられ、単独もしくは複数組合せて用いればよいが、少なくとも親水性溶媒を含むことが、抽出効率、飲食品への汎用性及び加工適性に優れた水溶性のチロシナーゼ阻害剤を得る点で好適である。
上記親水性溶媒としては、例えば、水、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、ブタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
また、上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。
これらは、単独又は複数組合せて混合した水溶液や分散液でもよい。
この中でも、好ましくはエタノールを用いることが、更に好ましくは20〜80重量%エタノール水溶液を用いることが、チロシナーゼ阻害活性に優れ、水溶性のチロシナーゼ阻害剤を効率良く抽出し得る点で好適である。
【0025】
次に、上記のように準備した焼成栗皮と抽出溶媒とを用いて、焼成栗皮抽出物を抽出する。
抽出方法は、還流操作、常温浸漬等が挙げられる。この中でも、好ましくは還流操作により抽出することが、短時間でチロシナーゼ阻害活性に優れた抽出物を効率良く得る点で好適である。
エタノールを用いて還流操作にて抽出する場合は、上記焼成栗皮と抽出溶媒を接触させ抽出させる際の抽出溶媒の温度を50℃以上に設定すると、チロシナーゼ阻害活性に更に優れた抽出物を効率良く得る点で好適である。
【0026】
上記のように得られた抽出物は、必要に応じて更にカラム等を用いて精製処理を適宜組合せてもよい。好ましくは、抽出物固形分換算で、プロアントシアニジンが30重量%以上抽出されるような組合せとすることが、チロシナーゼ阻害活性に優れた抽出物を得る点で好適である。
【0027】
次いで、上記抽出物に、必要に応じで副原料等を添加し、凍結乾燥、減圧濃縮、スプレードライなどの定法によって、適宜所望の形態とすることで、本発明のチロシナーゼ阻害剤が得られる。なお、粉体もしくは顆粒状に成形する際には、バインダーとしてデキストリン等を用いてもよい。
【0028】
このようにして得られたチロシナーゼ阻害剤は、各種飲食品はもちろん、医薬品等の経口摂取品や、化粧料又は洗髪料等の一般工業品にも応用することが可能である。中でも、好ましくは経口摂取品、特に好ましくは飲食品に用いると、手軽に美味しく喫食でき、効率良く簡単にチロシナーゼ阻害作用を得ることができる点で好適である。また、上記チロシナーゼ阻害剤が水溶性である場合には、特に応用する飲食品、医薬品や一般工業品の剤形を問わない。
【0029】
上記飲食品とは、上述のチロシナーゼ阻害剤を含有できるものであれば、特に限定するものではなく、例えば、菓子類(チューインガム、キャンディ、タブレット、チョコレート、ゼリー等)や、冷菓や、麺類を始めとする澱粉系食品や、粉末食品や、飲料(スープ、コーヒー、茶類、ジュース、ココア、アルコール飲料、ゼリー状ドリンク等)や、ベーカリー食品(パン、ビスケット等)や、油脂食品(マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド等)や、高塩分含有食品(味噌、醤油、漬物、佃煮、塩辛、ハム等)等が挙げられる。
なお、本発明の飲食品への上記チロシナーゼ阻害剤の添加時期は、各飲食品の特性、目的に応じ、製造工程の段階で適宜選択して添加すればよい。
【0030】
上記飲食品におけるチロシナーゼ阻害剤の含有量は、各飲食品の種類や目的などに応じて異なるが、焼成栗皮抽出物固形分換算で、飲食品全体重量中、好ましくは0.001重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上であることが、チロシナーゼ阻害活性の点で望ましい。
【0031】
本発明の飲食品には、上記チロシナーゼ阻害剤の他に、本来の目的を損なわない範囲で、上記副原料を適宜選択して含有してもよい。
【0032】
次に、本発明の飲食品の一例として、茶飲料は例えば次のようにして製造される。すなわち、まず上述したようにチロシナーゼ阻害剤を調製しておく。他方で、麦茶等の茶葉を煮出して茶を作っておく。そして、この茶に、上記チロシナーゼ阻害剤及び必要に応じて副原料を添加混合すれば、本発明のチロシナーゼ阻害剤含有茶飲料が得られる。
【0033】
このようにして得られたチロシナーゼ阻害剤含有茶飲料のみならず、本発明のチロシナーゼ阻害剤含有飲食品には、メラニンの生成に関与するチロシナーゼを阻害する旨の表示を設けてもよい。その表示例としては、「お肌を白く保ちたい方に」、「お肌のシミが気になる方に」、「メラニンの生成に関与するチロシナーゼを阻害する」、「メラニンの生成を阻害する」、「貴方の白い肌を応援する」、「夏の日差しが気になる方に」、「肝斑が気になる方に」、「日焼けの予防に」、「紫外線が気になる方に」、「紫外線と闘う」
、「美白機能食品」、「お肌のくすみが気になる方に」、「顔色を明るくしたい方に」等が挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例を用いて例示する。
【0035】
≪チロシナーゼ阻害剤の調製≫
<実施例1> (焼成栗皮未精製又は未分画)
中国河北省産の栗を熱風ローストで300℃7分焼成し、栗皮(鬼皮及び渋皮)を剥いた後、剥き栗のみを製菓原料として用い、焼成栗皮を回収した。
そして、上記のように回収した焼成栗皮をコーヒーミルで粉砕した。この焼成栗皮粉砕物をフラスコに入れ、引き続き50重量%エタノール水溶液を注ぎ、湯せんにて70℃4時間加熱した。この時、エタノールの蒸発を防止するために、フラスコ上部にリービッヒ冷却管を設け、それに冷水を流すことにより還流操作を行った。得られた抽出液を濾過し、濾液と残渣に分けた。上記濾液を濃縮後、凍結乾燥を施し、焼成栗皮抽出物粉末を得た。
このようにして得られた焼成栗皮抽出物粉末の総タンニン含有量は、該粉末全体重量中47重量%であった。また、総プロアントシアニジン含有量は、該粉末全体重量中44重量%であった(バニリン塩酸法によって算出)。
上記総タンニン含有量は、バニリン塩酸法、Wilsonらの方法((1990)J.Agric.Food.Chem38、1678-1683)、Inoueらの方法(1988)Analytical Biochemistry169、363−369)の合算により算出した。
【0036】
<実施例2> (焼成栗皮残渣高分子画分)
栗皮粉砕物を50重量%エタノール水溶液で湯せんする前に、フラスコに焼成栗皮粉砕物及び蒸留水(20℃)を入れ、一晩常温で静置した後、水を除去する他は、実施例1と同様に焼成栗皮抽出物粉末を得た。
このようにして得られた焼成栗皮抽出物粉末の総タンニン含有量は、該粉末全体重量中54重量%であった(実施例1と同様に測定)。また、総プロアントシアニジン含有量は、該粉末全体重量中51重量%であった(実施例1と同様に測定)。
【0037】
≪チロシナーゼ阻害率の測定≫
上記のようにして調製した実施例1及び2の焼成栗皮抽出物粉末(水溶性)について、下記の方法でチロシナーゼ阻害率を測定し、チロシナーゼ阻害効果を評価した。
【0038】
酵素としてチロシナーゼ、基質としてL−ドーパ(L-DOPA)用い、実施例1及び2の焼成栗皮抽出物粉末溶液共存の下で、L−ドーパの酸化によって生成された褐色物質を、吸光度計を用いて測定した。
(1)酵素溶液の調製
チロシナーゼ(シグマ製)を、1.18mg/10mlとなるように0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(pH6.8)に溶解し調製した。
(2)基質溶液の調製
L−ドーパを8mg/20mlとなるように、0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(pH6.8)に溶解し調製した。
(3)焼成栗皮抽出物溶液の調製
実施例1及び2の焼成栗皮抽出物粉末を、図1に記載の各濃度になるように0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(pH6.8)に溶解し調製した。
(4)測定手順
1.表1に記載の各溶液を、それぞれ96穴マイクロプレートのウエルに入れて混合し、37℃で15分間反応させた。
2.上記1で得られた反応溶液について、492nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(MTP−800AFC、コロナ電気(株)製)にて測定した。
【0039】
【表1】

【0040】
(5)チロシナーゼ阻害率の算出
以上より求めた上記反応溶液の吸光度を、以下の式に代入し、各焼成栗皮抽出物におけるチロシナーゼ阻害率を求めた。
阻害率(%)=(A−B)÷A×100
A=吸光度(コントロール)−吸光度(ベース)
B=吸光度(サンプル)−吸光度(ブランク)
上記A及びBの吸光度は、基質の分解生成物のみの吸光度を表わしている。
【0041】
<比較例1〜3>
同時に、従来知られているチロシナーゼ阻害効果をもつ物質として比較例1:ブドウ種子抽出物(商品名グラヴィノール、キッコーマン(株)製)、比較例2:バラの花びら抽出物、比較例3:エピガロカテキンガレート(EGCG)のそれぞれについて、チロシナーゼ阻害率を算出した。測定方法は、実施例1の測定と同様の方法で行い、上記算出式にてチロシナーゼ阻害率を求めた。
【0042】
上記のようにして求めた実施例1、2及び比較例1〜3のチロシナーゼ阻害率を、図1に示す。
【0043】
図1の結果より、実施例1及び2は、互いにほぼ同等に高いチロシナーゼ阻害率を示した。また実施例1及び2は、比較例2よりチロシナーゼ阻害率が明らかに高く、含有濃度2mg/mlの高濃度領域では比較例1と同等のチロシナーゼ阻害率を、また、1mg/ml以下の低濃度領域では比較例3と同等のチロシナーゼ阻害率をそれぞれ示した。
【0044】
≪活性酸素消去能の測定≫
引き続き、実施例1及び2の焼成栗皮抽出物粉末について、活性酸素消去能を測定した。測定には、SODテストワコー(和光純薬(株)製)キットを使用し、O2-・(スーパーオキシドアニオン)の消去能を測定した。
【0045】
<比較例4、5>
同時に、従来知られている活性酸素消去能をもつ物質として比較例4:緑茶エキス粉末、比較例5:ブドウ葉エキス粉末について、活性酸素消去能を測定した。測定方法は、実施例1、2の測定と同様の方法で行った。
【0046】
上記のようにして求めた実施例1、2及び比較例4、5の活性酸素消去能測定結果を、図2に示す。
【0047】
図2の結果より、実施例1及び2は両者とも、高い活性酸素消化能を示し、特に実施例2は比較例4及び5よりも明らかに高い値を示した。すなわち、好ましくは、焼成栗皮を水洗する等してタンニンの含有率を高めたほうが、活性酸素消去能を効果的に発揮できることが理解できる。
【0048】
≪飲料の調製≫
<実施例3、4>
常法に従い、PET入り麦茶を製造した。この麦茶を分割して、実施例1及び2の各焼成栗皮抽出物粉末を0.2重量%になるよう添加し、焼成栗皮抽出物粉末含有麦茶を調製した(実施例1品含有麦茶を実施例3、実施例2品含有麦茶を実施例4とする)。また、コントロールとして、焼成栗皮抽出物粉末を添加しないものを調製した。
【0049】
<比較例6、7>
次に、比較例6として、EGCGを0.2重量%になるよう添加後、完全に溶解し、EGCG含有麦茶を調製した。
比較例7として、生栗皮を用いて実施例1と同様に調製した生栗皮抽出物粉末を、0.2重量%になるように添加後、完全に溶解し、生栗皮抽出物粉末含有麦茶を調製した。
【0050】
上記実施例3、4、比較例6、7及びコントロールの麦茶飲料を、専門パネラー20名が1週間、毎食後200ml飲用した結果、コントロールに対し、実施例3、4品は、風味的に殆ど遜色が無く、むしろ深い琥珀色の色調となり、香ばしくて薫り高い麦茶飲料で、連用しやすいものであった。また、栗皮抽出物粉末は、麦茶中での溶解性に優れ、濁り・沈殿もなく、透明で外観も良好であった。
一方、比較例6は、本来の麦茶の風味に苦味や渋みが強烈に加わったために、連用し難いものであった。また、比較例7は、風味及び色調が、実施例3、4品ほど良好とはならず、エグミが感じられるものであり、実施例3、4品に比べて連用しにくいものであった。
【0051】
以上の実施例及び比較例から、実施例1及び2品は、優れたチロシナーゼ阻害効果を有すると共に、優れた活性酸素消去能を有するものであることから、シミやソバカスの発生を抑制し、高い美白効果が得られるものであることが理解できる。また、実施例1及び2品を飲料に含有させた場合には、従来のチロシナーゼ阻害剤含有飲料及び生栗皮抽出物粉末を含有した飲料と比べ、顕著に風味及び色調が良好であり、連用性に優れたものであった。また、焼成栗皮粉末は、麦茶中での溶解性に優れ、均一に分散し、透明のPETボトルに入れても沈殿がなく、外観的に良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】各種チロシナーゼ阻害剤の所定濃度におけるチロシナーゼ阻害率を示した図
【図2】各種物質の活性酸素消去能を示した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成栗皮抽出物を含有することを特徴とするチロシナーゼ阻害剤。
【請求項2】
焼成栗皮抽出物が、親水性溶媒を含有する抽出溶媒により抽出された抽出物である請求項1記載のチロシナーゼ阻害剤。
【請求項3】
焼成栗皮抽出物が、焼成栗皮由来のタンニンを含有する請求項1又は2に記載のチロシナーゼ阻害剤。
【請求項4】
焼成栗皮抽出物が、焼成栗皮由来のプロアントシアニジンを含有する請求項1乃至3の何れか1項に記載のチロシナーゼ阻害剤。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のチロシナーゼ阻害剤を含有する飲食品。
【請求項6】
メラニンの生成に関与するチロシナーゼを阻害する旨を表示した、請求項5記載の飲食品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−126406(P2007−126406A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321171(P2005−321171)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(393029974)カネボウフーズ株式会社 (64)
【Fターム(参考)】