説明

ティッシュペーパーを処理するための改良されたローション組成物

【課題】柔らかくて、なめらかな感触をティッシュペーパーに与えるためのローション組成物を提供。
【解決手段】約5〜約15重量%の量をティッシュペーパーに加えたとき、この感触を与えるためのローション組成物、及びこのような組成物で処理されたティッシュペーパーを開示する。ローション組成物は、ペトロラタムのような塑性状又は流動状の皮膚軟化剤、或いはアルキルエトキシレート皮膚軟化剤を含んだペトロラタムの混合物と、ティッシュペーパーウェブ1の上に皮膚軟化剤を固定化する、脂肪アルコール又は脂肪酸のような固定化剤と、ティッシュペーパーに加えたときに湿潤性を向上させる、任意的な親水性界面活性剤とを備えている。所望の柔らかさ、ローション状の感触を与えるのに少量のローションで足りるので、ローション付きペーパーの引張強度と厚さに関する有害な影響が最小にされ或いは回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、柔らかくて、なめらかな感触をティッシュペーパーに与えるためのローション組成物に関する。本出願は更に、このようなローション組成物で処理されたティッシュペーパーに関する。
【発明の背景】
【0002】
皮膚を清浄にすることは、容易に解決されるとは限らない個人の衛生上の問題である。もちろん、皮膚を石鹸や水で洗浄する普通の方法は良好に機能するが、有効でなかったり不便であったりすることがある。例えば、排便後の肛門周囲領域を清浄にするのに石鹸と水が使用されるが、このようなやり方は、非常に煩わしい。従って、乾燥したティッシュ製品が、排便後に使用される最も普通の清浄製品である。これらの乾燥したティッシュ製品は通常、“トイレットティッシュ”又は“トイレットペーパー”と呼ばれる。
【0003】
肛門周囲の皮膚は、微細な皺や襞の存在および毛包によって特徴付けられており、これらは両方とも、肛門周囲領域を、清浄にするのが困難な解剖的領域の1つとしている。排便の際、糞便は肛門から排泄され、硬くなって堆積され、毛の生え際や皮膚の表面のような所に到達する。糞便は、空気に曝されたり或いはティッシュペーパーのような吸収性清浄品と接触すると脱水されるので、皮膚や毛に一層しっかりとくっつき、残りの脱水された汚物を引き続き除去するのを、一層困難にする。
【0004】
肛門領域から糞便を除去し損なうと、衛生上悪影響を及ぼすこととなる。排便後の清浄化の後に皮膚に残った糞便には、多くの細菌やウィルスが含まれており、悪臭があり、一般には脱水状態となっている。これらの特徴は、肛門周囲の疾患の可能性を増大させ、不快感(例えば、痒み、炎症、痛み等)を与える。更に、残った糞便が下着を汚し、悪臭の原因となる。かくして、不完全な肛門周囲の清浄化の結果、明らかに不快な状態となる。
【0005】
痒み、痔等のような肛門の疾患を患っている人にとって、肛門周囲の完全な清浄化は、非常に重要である。肛門周囲の疾患は通常、残った糞便中の細菌やウィルスが容易に侵入する皮膚の開口によって、特徴付けられる。従って、肛門周囲の疾患に悩まされている人は、皮膚に残った細菌やウィルスによって疾患が悪化する可能性のある、排便後の肛門周囲の清浄を非常に丁寧に行わなければならない。
【0006】
肛門疾患が、不十分な排便後の清掃から生ずる非常に厳しい事態を被ると同時に、良好な除染レベルを達成するのを非常に困難にする。肛門疾患は一般に、肛門周囲の領域を極めて敏感にし、通常の拭き取り圧でさえ痛みを生じさせ皮膚を一層刺激する拭き取りによって、肛門領域からの糞便の除去を試みる。拭き取り圧を増加させて汚物の除去を高めようとすると、激しい痛みが生ずることがある。一方、拭き取り圧を減少させて不快感を最小にしようとすると、皮膚に残る糞便の量が多くなる。
【0007】
肛門の清掃に使用される普通のトイレットティッシュ製品は、実質的に乾燥した高密度のティッシュペーパーであり、このようなティッシュペーパーは、肛門周囲の皮膚から糞便を除去するのに、専ら機械的な処理によっている。これらの普通の製品は、典型的には約1psi(7キロパスカル)の圧力で肛門周囲の皮膚に擦りつけられ、基本的には、皮膚から糞便を削り或いはこすり取る。最初に数度拭き取った後、汚物層の上部が取り除かれる。何故ならば、拭き取り処理が、糞便内に存在する汚物と汚物の粘着力を打ち負かすからである。これにより、汚物層自体に裂け目が形成され、糞便層の上部が取り除かれ、汚物層の下部が肛門周囲の皮膚に付いた状態で残る。
【0008】
普通のティッシュペーパー製品は吸収性であり、連続して拭き取ると、糞便はますます脱水状態になり、肛門周囲の皮膚および毛に強固にくっつき、取り除くのが非常に困難になる。ティッシュペーパーを力を入れて肛門周囲の皮膚に押しつけると、多くの糞便が取り除かれるが、肛門疾患を患っている人にとっては激しい痛みを伴い、通常の肛門周囲の皮膚でさえ擦りむけ、炎症、痛み、出血、感染を引き起こすことがある。
【0009】
ティッシュ製品の使用によって引き起こされる炎症は、トイレットティッシュに限定されない。風邪、インフルエンザ、アレルギーと関連した鼻の排出物を拭き取り、取り除くのに使用される化粧紙も、このような問題を引き起こす。これらの疾患に冒された人は、呼吸をし観察し話をするのが困難であることに加えて、鼻がヒリヒリし痛むことがしばしばある。鼻、並びに、周囲の組織(例えば、上唇領域)はしばしば赤くなり、極端な場合には痛みを生ずる程に炎症する。
【0010】
炎症したり赤くなるのは、幾つかの原因がある。もちろん、主要な原因は、鼻をかんでティッシュに出したり、鼻と周囲領域から鼻排出物を拭き取ることによる剪断である。このような鼻かみと拭き取りによって生ずる炎症の度合いは、(1)使用したティッシュの表面粗度、及び(2)鼻と周囲領域がティッシュと接触する回数、に正比例する。比較的弱く、或いは比較的非吸収性のティッシュは、多量の鼻排出物を収容することができる丈夫でより吸収性のティッシュよりも、顔面との多くの接触回数を必要としている。
【0011】
トイレット用ティッシュの摩擦作用を減少させ、柔らかな感触を増大させる多くの試みがなされてきた。或る普通の解決策は、機械的処理によるものである。製紙の際に特定の処理工程を使用することによって、トイレット用ティッシュ製品を軟らかくし刺激を少なくすることができる。軟らかくするように機械的に処理されたティッシュ製品の例が、1981年11月17日にカルステンに付与された米国特許第4,300,981号、並びに、本明細書に記載されている種々の特許に示されている。
【0012】
機械的処理の他に、皮膚の清浄化を向上させ、並びに、刺激と炎症を減少させるため、皮膚軟化剤、塗剤、清浄剤等をティッシュ製品に加える解決策がある。刺激と炎症の減少は典型的には、ティッシュに加えられる物質の潤滑度、或いは物質自体の治療作用によって達成される。この解決策は、特にトイレット用ティッシュに関連して、1978年9月5日にデイク等に付与された米国特許第4,112,167号に示されている。また、1975年7月29日にブシャルターに付与された米国特許第3,896,807号、及び1974年6月4日にワイス等に付与された同第3,814,096号を参照されたい。
【0013】
なめらかさを与えるため、ティッシュ製品にローションとして加えられる1つの物質は、鉱油である。(液体ペトロラタムとしても知られる)鉱油は、石油中の高沸騰(即ち、300〜390℃)留分を希釈することによって得られる種々の液体炭化水素の混合物である。鉱油は、周囲温度(例えば、20〜25℃)では液体である。その結果、鉱油は、ティッシュ製品に加えたときでさえも、比較的流動体である。
【0014】
鉱油が周囲温度で流動体であるので、鉱油は、ティッシュの表面にとどまろうとはせず、ティッシュ全体にわたって移動しようとする。従って、所望の柔らかさ及びローション状の感触を得るには、比較的多量の鉱油をティッシュに加える必要がある。このような量は、ティッシュ製品の約22〜25重量%である。これにより、これらのローション付きティッシュ製品のコストが増加するばかりでなく、他の有害な作用も生ずる。
【0015】
これらの有害な作用の1つは、ティッシュ製品の引張強度の減少である。鉱油がティッシュの内部に移動するので、鉱油は、剥離剤として作用する傾向があり、かくして、ティッシュ製品の引張強度を減少させる。この剥離作用は、加えられる鉱油の量が増大するにつれて、顕著になる。加えられる鉱油の量が増大すると、ティッシュ製品の厚さに悪影響を及ぼすことがある。
【0016】
鉱油の量を増大させなくとも、加えられた鉱油の移動する傾向は、他の有害な影響を有している。例えば、加えられた鉱油が、ローション付きティッシュペーパー製品の包装材料に浸透することがある。これにより、ティッシュペーパー製品から鉱油が漏れないようにするため、遮蔽型の包装又はフィルムが必要となる。
【0017】
従って、(1)所望のなめらかな感触を有し、(2)比較的多量の鉱油を必要とせず、(3)製品の引張強度と厚さに悪影響を与えず、(4)特別な包装用の材料を必要としない、ローション付きティッシュ製品を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、周囲温度(即ち、20℃)において半固体又は固体であり、ティッシュペーパーに加えたとき、柔らかく、なめらかなローション状の感触を与える、ローション組成物に関する。
【0019】
このローション組成物は、
(A)20℃で塑性又は流動性コンシステンシーを有する、約20〜約95%の実質的に無水の皮膚軟化剤を備え、該皮膚軟化剤が、石油に基づく皮膚軟化剤、脂肪酸エステル皮膚軟化剤、アルキルエトキシレート皮膚軟化剤、脂肪酸エステルエトキシレート、脂肪アルコール皮膚軟化剤、及びこれらの混合物から選定された部材を含み、
(B)ローション組成物で処理されたティッシュペーパーの表面に皮膚軟化剤を固定化することができる約5〜約80%の固定化剤を備え、該固定化剤が、少なくとも約35℃の融点を有し、C14−C22脂肪アルコール、C12−C22脂肪酸、及びC12−C22脂肪アルコールエトキシレートによって構成される基から選定された部材を含み、
(C)少なくとも約4のHLB値を有する、約1〜約50%の任意的な親水性界面活性剤を備えている。
【0020】
本発明は更に、乾燥したティッシュペーパーの重量の約2〜約20%の量、ローション組成物がティッシュペーパーの表面の少なくとも一方に加えられた、ローション付きティッシュペーパーに関する。本発明によるローション付きティッシュペーパーは、所望のなめらかでローション状の感触を有する。皮膚軟化剤がティッシュペーパーの表面に実質的に固定化されるので、所望のなめらかでローション状の感触を与えるには、少量のローション組成物で足りる。その結果、従来の鉱油含有ローションによって生ずるティッシュペーパーの引張強度と厚さに関する有害な影響を回避することができる。更に、本発明のローション付きティッシュペーパー製品を包装する際、特別な遮蔽又は包装材料は不要である。
【発明の詳細な説明】
【0021】
ここで使用される語“備えている”は、本発明の実施において種々の構成要素又は段階を共同で使用することを意味している。従って、語“備えている”は、より限定的な語“実質的に構成される”又は“構成される”を包含している。
【0022】
ここで使用されるあらゆるパーセンテージ、比率、又は割合は、特記なき限り、重量に関連したものである。
【0023】
A.ティッシュペーパー
本発明は、限定するわけではないが、普通のフェルトプレスされたティッシュペーパー、高凝集パターンの稠密化されたティッシュペーパー、又は高凝集の押し固められていないティッシュペーパーを含む、ティッシュペーパーに有用である。ティッシュペーパーは、均質構造或いは多層構造のものであり、これらから形成されるティッシュペーパー製品は、単一プライ構造或いは多プライ構造を有している。ティッシュペーパーは好ましくは、坪量が約10〜約65g/m2 、密度が約0.6g/cc以下である。より好ましくは、坪量は約65g/m2 以下、密度は約0.3g/cc以下である。最も好ましくは、密度は約0.04〜約0.2g/ccである。ティッシュペーパーの密度の測定方法を記載している、1991年10月22日に付与された米国特許第5,059,282号(アムパルスキ等)のコラム13、61〜67行を参照されたい(特記なき限り、ティッシュペーパーに対する量と重量は全て、乾燥坪量に基づく)。
【0024】
普通のプレスされたティッシュペーパー及びこのようなティッシュペーパーを作るための方法は、周知である。このようなティッシュペーパーは典型的には、長網抄紙機ワイヤとしばしば呼ばれる、有孔成形ワイヤ上に製紙組成物を堆積させることによって形成される。製紙組成物が成形ワイヤ上に堆積されると、ウェブと呼ばれる。ウェブは、圧縮し高温で乾燥させることによって、脱水される。このような方法によってウェブを作るための特定の技術および典型的な設備は、周知である。典型的な方法では、低コンシステンシーのパルプ組成物が、加圧されたヘッドボックスから供給される。ヘッドボックスは、パルプ組成物の薄い堆積物を長網抄紙機ワイヤに差し向けて湿ったウェブを形成するための開口を有している。次いで、ウェブは典型的には、真空脱水することによって(全ウェブ重量を基準として)約7%〜約25%の繊維コンシステンシーまで脱水され、ウェブが例えば円筒形ロール等の対向した機械的部材によって発生される圧力を受けるプレス作業によって更に乾燥される。次いで、脱水されたウェブは更に圧縮され、ヤンキードライヤーとして知られたスチームドラム装置によって乾燥される。圧力は、ヤンキードライヤーのところで、ウェブに密着している対向した円筒形ドラムのような機械的手段によって発生される。複数のヤンキードライヤーのドラムを使用することができ、これによりドラム間に付加的な圧力が加えられる。形成されるティッシュペーパー構造体は、これ以降、普通のプレスされたティッシュペーパー構造体と呼ばれる。このようなシートは、押し固められた状態であると見なされる。何故ならば、ウェブ全体が、繊維の湿潤状態でかなりの機械的圧縮力を受け、次いで圧縮状態において乾燥されるからである。
【0025】
パターン稠密化したティッシュペーパーは、比較的低繊維密度の比較的高凝集部分と、比較的高繊維密度の稠密化帯域の列とによって特徴付けられる。高凝集部分は、ピロー領域の部分としても特徴付けられる。稠密化帯域は、ナックル領域とも呼ばれる。稠密化帯域は、高凝集部分内に別々に間隔を隔てていてもよく、或いは、高凝集部分の全体に或いは一部に相互に連結されていてもよい。パターンは、非装飾的に形成してもよく、或いは、ティッシュペーパーに装飾デザインを提供するように形成してもよい。パターン稠密化したティッシュペーパーを製造するための好ましい方法が、1967年1月31日にサンフォールド等に付与された米国特許第3,301,746号、1976年8月10日にエイアーズに付与された同第3,974,025号、1980年3月4日にトロクハンに付与された同第4,191,609号、および1987年1月20日にトロクハンに付与された同第4,637,859号に開示されており、これらの特許を参考文献としてここに含める。
【0026】
一般に、パターン稠密化したティッシュペーパーは、長網抄紙機ワイヤのような有孔形成ワイヤ上に製紙組成物を堆積させて湿ったウェブを形成し、次いでウェブを支持体の列に並置することによって調製される。ウェブは、支持体の列に押しつけられ、これにより支持体の列と湿ったウェブとの接触する箇所に対応する位置が稠密化帯域になる。この作業の際、圧縮されないウェブの残部は、高凝集部分と呼ばれる。この高凝集部分は、真空型装置やブロースルー・ドライヤー等で流体圧を加えることによって、或いはウェブを支持体の列に機械的に押しつけることによって、更に非稠密化される。ウェブは脱水され、任意には、高凝集部分の圧縮を実質的に回避するようなやり方で予備乾燥される。これは好ましくは、真空型装置やブロースルー・ドライヤー等で流体圧を加えることによって、或いは高凝集部分が圧縮されていない支持体の列にウェブを機械的に押しつけることによって、達成される。稠密化帯域の脱水、任意的な予備乾燥、および成形の作業は、実施される処理工程の全体数を減少させるため、統合され或いは部分的に統合される。稠密化帯域の形成、脱水、および任意的な予備乾燥に引き続いて、ウェブは、好ましくは機械的なプレスを回避するように、完全に乾燥される。好ましくは、ティッシュペーパー表面の約8%〜約55%が、高凝集部分の密度の少なくとも125%の相対密度を有する稠密化ナックルを含んでいる。
【0027】
支持体の列は好ましくは、圧力付加時に稠密化帯域の形成を容易にする支持体の列として作動する、ナックルのパターン化された変位を有するインプリンティングキャリア繊維である。ナックルのパターンは、上述の支持体の列を構成する。適当なインプリンティングキャリア繊維が、1967年1月31日にサンフォード等に付与された米国特許第3,301,746号、1974年5月21日にサルバッキ等に付与された同第3,821,068号、1976年8月10日にエイアーに付与された同第3,974,025号、1971年3月30日にフライドバーグに付与された同第3,573,164号、1969年10月21日にアムニュースに付与された同第3,473,576号、1980年12月16日にトロクハンに付与された同第4,239,065号、および1985年7月9日にトロクハンに付与された同第4,528,239号に開示されており、これらの特許を参考文献としてここに含める。
【0028】
好ましくは、組成物はまず、長網抄紙機ワイヤのような有孔成形キャリアの湿ったウェブに形成される。ウェブは脱水され、インプリンティング繊維に搬送される。或いは、組成物はまず、インプリンティング繊維としても作動する有孔支持キャリアに堆積される。一旦形成されると、湿ったウェブは脱水され、好ましくは、約40%〜約80%の所定の繊維コンシステンシーまで予備乾燥される。脱水は好ましくは、吸引ボックス又は他の真空装置又はブロースルードライアーで行われる。インプリンティング繊維のナックルインプリントが、ウェブの乾燥の終了前に、上述のようにウェブにインプリントされる。これを達成する1つの方法は、機械的圧力の付加である。これは、例えば、インプリンティング繊維を支持するニップロールを、ヤンキードライアーのような乾燥ドラムの面に押しつけることによって行われ、ウェブは、ニップロールと乾燥ドラムとの間に配置される。また、好ましくは、サクションボックスのような真空装置によって或いはブロースルードライアーによる流体圧力の付加によって、乾燥の終了前に、インプリンティング繊維に向かって成形される。最初の脱水の際、別個の引き続く処理工程において或いはその組み合わせにおいて、稠密化帯域のインプレッションを引き起こすように流体圧力が加えられる。
【0029】
押し固められていない、非パターン稠密化ティッシュペーパー構造体は、1974年5月21日にサルバッキ等に付与された米国特許第3,812,000号および1980年6月17日にベッカー等に付与された同第4,208,459号に記載されており、これらの特許を参考文献としてここに含める。一般に、押し固められていない、非パターン稠密化ティッシュペーパー構造体は、長網抄紙機ワイヤのような有孔成形ワイヤ上に製紙組成物を堆積させて湿ったウェブを形成し、ウェブが少なくとも約80%の繊維コンシステンシーを有するまで機械的に圧縮することなしに、ウェブを排水し付加的な水分を除去し、ウェブをクレープすることによって調製される。真空脱水および熱乾燥によって、ウェブから水分が除去される。その結果得られる構造体は柔らかいが弱く、比較的押し固められていない繊維の高凝集シートである。好ましくは、クレーピングの前に、ウェブの部分に結合材料が加えられる。
【0030】
押し固められた、非パターン稠密化ティッシュペーパー構造体は、普通のティッシュ構造体として通常知られている。一般に、押し固められた、非パターン稠密化ティッシュペーパー構造体は、長網抄紙機ワイヤのような有孔成形ワイヤ上に製紙組成物を堆積させて湿ったウェブを形成し、ウェブが少なくとも25〜 50%のコンシステンシーを有するまで均一な機械的押し固め(プレス)によって、ウェブを排水し付加的な水分を除去し、ウェブをヤンキードライヤーのような熱乾燥器に移送し、ウェブをクレープすることによって調製される。真空脱水、機械的プレス、及び熱手段によって、ウェブから水分が除去される。その結果得られる構造体は、丈夫で一般に単一の密度を有しているが、容積、吸収性及び柔度が非常に小さい。
【0031】
本発明に使用される製紙用繊維は通常、木パルプから得られる繊維を含む。コットンリンター、バガス等のような他のセルロース繊維質のパルプ繊維を利用してもよく、これらも本発明の範囲内に含まれる。レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン繊維のような合成繊維を、天然セルロース繊維と組み合わせて使用してもよい。使用される典型的なポリエチレン繊維は、ヘルキュール社(米国デラウェエ州ウィルミントン)から入手できるパルペックス(Pulpex)である。 利用できる木パルプには、クラフト、亜硫酸塩パルプ、硫酸塩パルプのような化学パルプ、並びに、木材パルプ用おがくず、熱機械パルプ、化学的に改質された熱機械パルプ等のような機械パルプが含まれる。しかしながら、化学パルプで作られたティッシュシートでは優れた柔らかい触感で得られるので、化学パルプが好ましい。落葉樹(以下「硬木」ともいう)および針葉樹(以下「軟木」ともいう)から得られるパルプを利用してもよい。また、本発明では、上述のカテゴリーのいずれか或いは全て、並びに、元の製紙を容易にするのに使用されたフィラー、接着剤のような他の非繊維材料を含む、再生紙から得られる繊維も有用である。
【0032】
製紙用繊維に加えて、ティッシュペーパー構造体を作るのに使用される製紙組成物には、公知の他の構成要素又は材料を加えてもよい。望ましい混合剤の種類は、意図したティッシュシートの特定の最終用途で決まる。例えば、トイレットペーパー、ペーパータオル、化粧ティッシュ等のような製品では、高湿潤強度が望ましい特性である。かくして、“湿潤強度”樹脂として知られた製紙組成物用の化学物質を加えることがしばしば望ましい。
【0033】
製紙分野で利用される湿潤強度樹脂の種類に関する論文が、『紙および板紙における湿潤強度』(TAPPIモノグラフシリーズNo.29、パルプ及び製紙工業技術協会、1965年、ニューヨーク)に記載されている。最も有用な湿潤強度樹脂は一般に、性質が陽イオンである。恒久的な湿潤強度の発生については、陽イオン湿潤強度樹脂であるポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂が、特別の有用性を有していることが分かっている。適当な種類のこのような樹脂が、1972年10月24日にケイムに付与された米国特許第3,700,623号、1973年11月13日にケイムに付与された同第3,772,076号に記載されており、これらの特許を参考文献としてここに含める。有用なポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂は、ヘルキュール社(米国デラウェア州ウィルミントン)からケイメン(Kymene)557Hとして市販されている。
【0034】
ポリアクリルアミド樹脂も、湿潤強度樹脂として有用であることが分かっている。これらの樹脂は、1971年1月19日にコスシィア等に付与された米国特許第3,556,932号、1971年1月19日にウィリアムス等に付与された同第3,556,933号に記載されており、これらの特許を参考文献としてここに含める。有用なポリアクリルアミド樹脂は、アメリカンサイアナミド社(米国コネチカット州スタンフォード)からパレツ(Parez)631NCとして市販されている。
【0035】
本発明に有用な他の水溶性陽イオン樹脂は、ユリアホルムアルデヒド樹脂およびメラミンホルムアルデヒド樹脂である。これらの多機能性樹脂のより普通の機能群は、窒素に付けられたアミノ群、メチロール群のような窒素含有群である。ポリエチレンイミン型樹脂も、本発明に有用であることが分かっている。更に、(日本国のカルリット社によって製造されている)カルダス10、(ナショナルスターチアンドケミカル社によって製造されている)コボンド1000のような一時的な湿潤強度樹脂も、本発明に使用することができる。上述のような湿潤強度樹脂および一時的な湿潤強度樹脂のような化学配合物のパルプ組成物への添加は任意的なものであり、本発明の実施に必須ではないことを理解すべきである。
【0036】
湿潤強度添加剤に加えて、公知の或る乾燥強度およびリント制御添加剤を、製紙用繊維に加えることが望ましい。この点に関して、スターチバインダが、特に適当であることが分かっている。最終ティッシュペーパー製品のリンティングを減少させることに加えて、少量のスターチバインダは、多量のスターチの添加から得られる剛性を与えることなしに、乾燥引張強度の適度の改良を与える。スターチバインダは典型的には、ティッシュペーパーの重量の約0.01〜約2%(好ましくは0.01〜約1%)保持されるような量含まれる。
【0037】
一般に、本発明にとって適当なバインダは、水溶性と親水性によって特徴付けられる。適当なスターチバインダの範囲の限定を意図しているわけではないが、典型的なスターチバインダには、コーンスターチ、ポテトスターチが含まれ、アミオカスターチとして工業的に知られた蝋質のコーンスターチが特に好ましい。アミオカスターチは、アミロペクチンとアミロースの両方を含む普通のコーンスターチに対しアミロペクチンのみを含む点で、普通のコーンスターチと相違する。アミオカスターチに関する種々の特有の特徴が、『アミオカ−蝋質コーンからのスターチ』(ショップメイヤー著、フードインダストリー、1945年12月、106〜108頁、(Vol.1476〜1478頁))に更に記載されている。
【0038】
スターチバインダは、粒状形態或いは分散形態であるが、粒状形態が特に好ましい。スターチバインダは好ましくは、粒を膨潤させるように十分に調製されている。より詳細には、スターチ粒は、調製等によって、スターチ粒の分散の直前の時点まで膨潤させる。このように膨潤されたスターチ粒は、“完全調製”と呼ばれる。分散の状態は一般に、スターチ粒の寸法、スターチ粒の結晶度、存在するアミロースの量で決まる。完全調製されたアミオカスターチは例えば、約30〜約40分間、約190°F(約88℃)で約4%のコンシステンシーのスターチ粒の水性スラリーを加熱することによって、得られる。使用することができる他の典型的なスターチバインダには、窒素に付けられたアミノ群およびメチロール群を含む、窒素含有群を有するように改質された改質陽イオンスターチが含まれ、これらは、ナショナルスターチアンドケミカル社(米国ニュージャージー州ブリッジウォーター)から入手でき、湿潤及び/又は乾燥強度を増大させるパルプ組成物添加剤としても使用されている。
【0039】
B.ローション組成物
本発明のローション組成物は、20℃(即ち、周囲温度)で固体であり、或いは半固定であることもある。ここで“半固体”とは、擬似プラスチック即ちプラスチック流動体を表すレオロジーを有することを意味する。ローション組成物は、剪断が加えられないと、半固定の外観を呈しているが、剪断速度が増大すると、流動する。これは、ローション組成物が主要な固体成分を含んでいるが、少量の液体成分をも含んでいるという事実のためである。
【0040】
これらのローション組成物は、周囲温度で固体又は半固体であることによって、ティッシュペーパーのウェブの内部に流動し移動する傾向を有しない。これは、柔らかでローション状の感触を得るのに少量のローションで足りることを意味している。
【0041】
本発明のローション組成物は、ティッシュペーパーに加えると、柔らかく、つるつるしたローション状の感触をティッシュペーパーの使用者に与える。この特有の感触は、“絹のような”、“つるつるした”、“滑らかな”ものとしても特徴付けられる。このような、つるつるしたローション状の感触は、皮膚の乾燥や痔のような慢性病の状態、或いは風邪やアレルギーのような一過性の状態のため、皮膚が敏感になっている場合に特に有利である。
【0042】
本発明のローション組成物は、(1)皮膚軟化剤と、(2)皮膚軟化剤用の固定化剤と、(3)任意的な親水性界面活性剤と、(4)任意的な他の構成要素とを備えている。
【0043】
1.皮膚軟化剤
これらのローション組成物の重要な活性成分は、1以上の皮膚軟化剤である。ここで使用される“皮膚軟化剤”は、皮膚を柔らかくし、慰撫し、しなやかにし、被覆し、なめらかにし、湿気を与え、清浄にする物質である。皮膚軟化剤は典型的には、皮膚を慰撫し、湿気を与え、なめらかにする等の幾つかの目的を達成する。本発明の目的のため、これらの皮膚軟化剤は、20℃(即ち、周囲温度)で塑性状又は流動状のコンシステンシーを有している。この特有の皮膚軟化剤のコンシステンシーが、ローション組成物に、柔らかく、なめらかなローション状の感触を与える。
【0044】
本発明に有用な皮膚軟化剤は又、実質的に無水である。“実質的に無水”とは、皮膚軟化剤に水が意図的に加えられていないことを意味する。本発明のローション組成物の調製又は使用に際して、水の皮膚軟化剤への添加は不要であり、付加的な乾燥工程を必要としている。しかしながら、例えば周囲湿度から拾得された皮膚軟化剤の微量な水分は、悪影響を与えることなしに許容される。本発明に使用される皮膚軟化剤は典型的には、約5%以下(好ましくは、約1%以下、最も好ましくは約0.5%以下)の水分を含んでいる。
【0045】
本発明に有用な皮膚軟化剤は、石油に基づく脂肪酸エステル型、アルキルエトキシレート型、脂肪酸エステルエトキシレート型、脂肪アルコール型、或いはこれらの混合物である。適当な石油に基づく皮膚軟化剤には、16〜32の炭素原子の連鎖長を有する炭化水素、或いは炭化水素の混合物が含まれる。これらの連鎖長を有する石油に基づく炭化水素には、(液体石油としても知られる)鉱油、(“鉱蝋”、“ペトロリアムゼリー”、“ミネラルゼリー”としても知られる)ペトロラタムが含まれる。鉱油は通常、16〜20の炭素原子を有する炭化水素の低粘性混合物のことを言う。ペトロラタムは通常、16〜32の炭素原子を有する炭化水素の高粘性混合物のことを言う。ペトロラタムは、本発明のローション組成物にとって特に好ましい皮膚軟化剤である。
【0046】
適当な脂肪酸エステル型皮膚軟化剤には、C12−C28脂肪酸、好ましくは、 C16−C22の飽和脂肪酸と、短鎖(C1 −C8 、好ましくはC1 −C3 )の一価アルコールから得られる皮膚軟化剤が含まれる。このようなエステルの典型的な例には、メチルパルミテート、メチルステアレート、イソプロピルラウレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、エチルヘキシルパルミテート、及びこれらの混合物が含まれる。適当な脂肪酸エステル型皮膚軟化剤には、長鎖脂肪アルコール(C12−C28、好ましくはC12−C16)、短鎖脂肪酸 (例えば、ラウリルラクテート、セチルラクテートのような乳酸)のエステルから得られる皮膚軟化剤が含まれる。
【0047】
適当なアルキルエトキシレート型皮膚軟化剤には、約2〜約30の平均エトキシレーション率を有するC12−C22脂肪アルコールエトキシレートが含まれる。好ましくは、脂肪アルコールエトキシレートの皮膚軟化剤は、約2〜約23の平均エトキシレーション率を有する、ラウリル、セチル、ステアリルエトキシレートによって構成される群から選定される。このようなアルキルエトキシレートの典型的な例には、ラウレス−3(平均エトキシレーション率が3のラウリルエトキシレート)、ラウレス−23(平均エトキシレーション率が23のラウリルエトキシレート)、セテス−10(平均エトキシレーション率が10のセチルアルコールエトキシレート)、ステアレス−10(平均エトキシレーション率が10のステアリルアルコールエトキシレート)が含まれる。これらのアルキルエトキシレート皮膚軟化剤は典型的には、ペトロラタムのような石油に基づく皮膚軟化剤と組み合わせて(アルキルエトキシレート皮膚軟化剤と石油に基づく皮膚軟化剤が約1:1、好ましくは約1:2〜約1:4の重量比で)使用される。
【0048】
適当な脂肪アルコール型皮膚軟化剤には、C12−C22脂肪アルコール、好ましくはC16−C18脂肪アルコールが含まれる。典型的な例には、セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びその混合物が含まれる。これらの脂肪アルコールの皮膚軟化剤は典型的には、ペトロラタムのような石油に基づく皮膚軟化剤と組み合わせて(脂肪アルコール皮膚軟化剤と石油に基づく皮膚軟化剤が約1:1〜約1:5、好ましくは約1:1〜約1:2の重量比で)使用される。
【0049】
石油に基づく皮膚軟化剤、脂肪酸エステル皮膚軟化剤、脂肪酸エステルエトキシレート、アルキルエトキシレート皮膚軟化剤、及び脂肪アルコール皮膚軟化剤に加えて、本発明に有用な皮膚軟化剤は、微量(例えば、皮膚軟化剤の全体量の約10%まで)の他の普通の皮膚軟化剤を含んでもよい。これらの他の普通の皮膚軟化剤には、プロピレングリコール、グリセリン、トリエチレングリコール、鯨蝋又は他の蝋、脂肪酸、及び、ステアリン酸、プロポキシレート脂肪アルコール、グリセリド、アセトグリセリド、C12−C28脂肪酸のエトキシレート化グリセリド、ポリヒドロキシアルコールの他の脂肪エステル、ラノリン及びその誘導体、シリコンポリエーテルコポリマー、1991年10月22日にアンプルスキ等に付与された米国特許第5,059,282号に開示されているような20℃での粘度が約5〜約2000のポリシロキサンのような、脂肪連鎖の12〜28の炭素原子を有する脂肪アルコールエステルが含まれる。これらの他の皮膚軟化剤は、ローション組成物の固体又は半固体特性が維持されるような方法で含まれるべきである。
【0050】
ローション組成物に含めることができる皮膚軟化剤の量は、含有する特定の皮膚軟化剤、所望のローション状の利益、ローション組成物の他の成分等のような種々の因子で決まる。ローション組成物は、約20〜約95%までの皮膚軟化剤をで含むことができる。好ましくは、ローション組成物は、約30〜約80%(最も好ましくは、約40〜約75%)までの皮膚軟化剤を含む。
【0051】
2.固定化剤
本発明のローション組成物の特に重要な成分は、ローション組成物が加えられるペーパーの表面に皮膚軟化剤を固定化することができる薬剤である。ローション組成物中の皮膚軟化剤が20℃で塑性状又は流動状コンシステンシーを有しているので、適度な剪断を受けたときでさえも、皮膚軟化剤は、流動し或いは移動する傾向がある。特に溶解状態でティッシュペーパーのウェブに加えられたとき、皮膚軟化剤は、主としてティッシュペーパーの上にはとどまらない。その代わり、皮膚軟化剤は、ティッシュペーパーのウェブの内部に移動し流入する傾向がある。
【0052】
皮膚軟化剤のウェブの内部への移動により、紙繊維の間に発生する通常の水素結合を妨げることによって、ペーパーの好ましくない剥離が生ずる。これにより、通常、ペーパーの引張強度が減少する。また、このことは、所望のなめらかなローション状の感触を得るには、より多くの皮膚軟化剤をウェブに加えなければならないことを意味している。皮膚軟化剤の量を増加させると、コストが増大するばかりでなく、ペーパーの剥離の問題を悪化させることとなる。
【0053】
固定化剤は、皮膚軟化剤をローション組成物が加えられるティッシュペーパーのウェブの表面に主として集中させることによって、皮膚軟化剤が移動し或いは流動する傾向を打ち消す。これは、固定化剤がティッシュペーパーのウェブとの水素結合を形成するという事実に一部よるものと考えられる。この水素結合により、固定化剤はティッシュペーパーの表面に集中する。固定化剤が皮膚軟化剤と混和できる(或いは、適当な乳化剤によって皮膚軟化剤中に可溶性にされる)ので、固定化剤は皮膚軟化剤をペーパーの表面に取り込む。
【0054】
また、固定化剤をペーパーの表面に“係止する”のが好都合である。これは、ペーパーの表面のところに迅速に結晶化する(即ち、凝固する)固定化剤を使用することによって、達成される。更に、処理されたペーパーをブロワ、ファン等で外側から冷却すると、固定化剤の結晶化が促進される。
【0055】
皮膚軟化剤との混和(即ち、皮膚軟化剤中に可溶させる)に加えて、固定化剤は、少なくとも約35℃の融点を有することが必要である。これは、固定化剤自体が移動し或いは流動する傾向を有しないようなものである。好ましい固定化剤は、少なくとも約40℃の融点を有している。固定化剤は典型的には、約50℃〜約150℃の融点を有している。
【0056】
固定化剤の粘度は、ローションがペーパーの内部に流れ込まないように、出来るだけ大きくすべきである。あいにく、粘度を大きくすると、処理上の問題なしにローション組成物を加えることが困難になる。従って、粘度が、ペーパーの表面に固定化剤を集める程に大きいが、処理上の問題を生じさせる程には大きくないように、バランスを取らなければならない。固定化剤についての適当な粘度は典型的には、60℃で測定して、約5〜約200センチポアズ、好ましくは約15〜約100センチポアズである。
【0057】
本発明についての適当な固定化剤は、C14−C22脂肪アルコール、C12−C22脂肪酸、約2〜約30の平均エトキシレーション率を有するC12−C22脂肪アルコールエトキシレート、及びこれらの混合物によって構成される群から選定された部材を備えている。好ましい固定化剤には、最も好ましくはセチルアルコール、ステアリルアルコール、及びこれらの混合物によって構成される群から選定されたC16−C18脂肪アルコールが含まれる。セチルアルコールとステアリルアルコールの混合物が特に好ましい。他の好ましい固定化剤には、最も好ましくはセチルアルコール、ステアリルアルコール、及びこれらの混合物によって構成される群から選定されたC16−C18脂肪酸が含まれる。セチル酸とステアリル酸の混合物が特に好ましい。他の好ましい固定化剤には、約5〜約20の平均エトキシレーション率を有するC16−C18脂肪アルコールエトキシレートが含まれる。好ましくは、脂肪アルコール、脂肪酸、及び脂肪アルコールエトキシレートは、線形のものである。
【0058】
重要なことは、C16−C18脂肪アルコールのようなこれらの好ましい固定化剤が、ローションの結晶化速度を増大させ、ローションを基体の表面に迅速に結晶化させる。従って、少量のローションを利用することができ、或いは、優れたローション感触を得ることができる。伝統的には、ペーパー支持体にローションが流れ込むので、柔らかさを得るには、多量のローションが必要であった。
【0059】
任意的ではあるが、他の種類の固定化剤を、上述の脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪アルコールエトキシレートと組み合わせて使用することができる。これらの他の種類の固定化剤は典型的には、ほんの少量(即ち、全固定化剤の約10%)使用されるであろう。これらの他の種類の固定化剤の例として、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、及びこれらの混合物がある。固定化剤として使用するには、エステル又はアミドのポリヒドロキシ成分は、少なくとも1つの自由ヒドロキシ基を有するべきである。これらの自由ヒドロキシ基は、水素による共通架橋がローション組成物が加えられるティッシュペーパーのウェブのセルロース繊維と結合し、水素による同種架橋がアルコール、酸、エステル又はアミドのヒドロキシ基を結合させる基であると考えられており、かくして他を成分をローションマトリックス中に取り込み固定する。
【0060】
長鎖脂肪アルコールのような分子が整列し互いに相互作用してラメラ構造を形成するものと考えられる。このラメラ構造では、ヒドロキシ基と隣接するアルコール分子のアルキル鎖が整列し互いに相互作用して組織的な構造を形成する。この“充填配列”では、アルコールのヒドロキシ基は、セルロース極性官能価(例えば、ヒドロキシ又はカルボニル)との水素結合を形成し、ペーパーの表面にアルコールを“固定化”する。アルコールが好ましい皮膚軟化剤と混和されているので、皮膚軟化剤の定着および/又は固定化が生ずる。
【0061】
好ましいエステルとアミドは、ポリヒドロキシ成分に3以上の自由ヒドロキシ基を有しており、典型的には非イオン性の性質を有する。ローション組成物が加えられるペーパー製品の皮膚過敏性のため、これらのエステルとアミドは又、皮膚に比較的優しく刺激しないものとすべきである。
【0062】
本発明に使用される適当なポリヒドロキシ脂肪酸エステルは、以下の式を有する。
【化1】

ここで、Rは、C5 −C31ヒドロキシ基、好ましくは直鎖C7 −C19アルキル又はアルケニル、より好ましくは直鎖C9 −C17アルキル又はアルケニル、最も好ましくは直鎖C11−C17アルキル又はアルケニル、或いはこれらの混合物である。またYは、少なくとも2自由ヒドロキシルが直接連結されたヒドロカルビル鎖を有するポリヒドロキシヒドロカルビル成分であり、nは、少なくとも1である。適当なYの基は、グリセロールのようなポリオール;ペンタエリトリトール;ラフィノール、マルトデクストロース、ガラクトース、スクロース、グルコース、キシロース、フルクトース、マルトース、ラクトース、マンノース、エリトロースのような砂糖;エリトリトール、キシリトール、マリトール、マニトール、ソルビトールのような砂糖アルコール;及びソルビタンのような砂糖アルコールの無水物から得られる。
【0063】
本発明に使用される適当なポリヒドロキシ脂肪酸エステルの1つの級は、一定のソルビタンエステル、好ましくはC16−C22飽和脂肪酸ソルビタンエステルを備えている。典型的な製造方法のため、これらのソルビタンエステルは通常、モノ、ジ、トリ等のエステルの混合物を備えている。適当なソルビタンエステルの代表例には、ソルビタンパルミテート(例えば、SPAN40)、ソルビタンステアレート(例えば、SPAN60)、ソルビタンベヘネートが含まれ、これらは、これらのソルビタンエステルの1又はそれ以上のモノ、ジ、及びトリ・エステル変種(例えば、ソルビタン・モノ、ジ、及びトリ・パルミネート、ソルビタン・モノ、ジ、及びトリ・ステアレート、ソルビタン・モノ、ジ、及びトリ・ベヘネート)、並びに、混合硬脂脂肪酸ソルビタン・モノ、ジ、及びトリ・エステルを備えている。ソルビタンステアレートを含むソルビタンパルミテートのような、異なるソルビタンエステルの混合物を使用してもよい。特に好ましいソルビタンエステルは、典型的にはSPAN60等のモノ、ジ、及びトリ・エステル(及び僅かなテトラ・エステル)、及びロンツァ社から商標名GLYCOMUL−Sとして販売されているソルビタンステアレートのような、ソルビタンステアレートである。これらのソルビタンエステルは典型的には、モノ、ジ、及びトリ・エステル(及び僅かなテトラ・エステル)の一定の混合物を含んでいるが、モノ及びジ・エステルがこれらの混合物の主成分である。
【0064】
本発明に使用される別の級の適当なポリヒドロキシ脂肪酸エステルは、一定のグリセリルモノエステル、好ましくは、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノパルミテート、グリセリルモノベヘネートのような、C16−C22飽和脂肪酸グリセリルモノエステルを備えている。また、ソルビタンエステルのように、グリセリルモノエステル混合物は典型的には、僅かなジ及びトリ・エステルを含んでいる。しかしながら、このような混合物は、本発明に有用であるように、主としてグリセリルモノエステル成分を含んでいるべきである。
【0065】
本発明に使用される別の級の適当なポリヒドロキシ脂肪酸エステルは、一定のスクロース脂肪酸エステル、好ましくは、スクロースのC12−C22飽和脂肪酸エステルを備えている。スクロースモノエステルが特に好ましく、スクロースモノステアレートとスクロースモノラウレートも含まれる。
【0066】
本発明に使用される適当なポリヒドロキシ脂肪酸アミドは、以下の式を有する。
【化2】

ここで、R1 は、H、C1 −C4 ヒドロカルビル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、メトキシエチル、メトキシプロピル、より好ましくは、C1 又はC2 アルキル或いはメトキシプロピル、最も好ましくは、C1 アルキル(即ち、メチル)或いはメトキシプロピルであり;R2 は、C5 −C31ヒドロカルビル基、好ましくは、直鎖C7 −C19アルキル又はアルケニル、より好ましくは、C9 −C17アルキル又はアルケニル、最も好ましくは、直鎖C11−C17アルキル又はアルケニル、或いはこれらの混合物であり;Zは、少なくとも3ヒドロキシルが直接連結された線形ヒドロカルビル鎖を有するポリヒドロキシヒドロカルビル成分である。これらのポリヒドロキシ脂肪酸アミド、並びに、これらの製法を開示している、1992年12月29日にホンサに付与された米国特許第5,174,927号を参照されたい(この特許を参考文献としてここに含める)。
【0067】
Z成分は、好ましくは還元アミノ化反応において還元砂糖から得られ、最も好ましくはグリシチルである。適当な還元砂糖には、グルコース、フラクトース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンノース、及びキシロースが含まれる。高ブドウ糖コーンシロップ、高フラクトースコーンシロップ、高マルトースコーンシロップ、並びに、上述の個々の砂糖を利用してもよい。これらのコーンシロップは、Z成分のために砂糖成分の混合物を与える。
【0068】
Z成分は好ましくは、−CH2 −(CHOH)n −CH2 OH、−CH(CH2 OH)−〔(CHOH)n-1 〕−CH2 OH、−CH2 OH−CH2 −(CHOH)2 (CHOR3 )(CHOH)−CH2 OHによって構成される群から選定される。ここで、nは、3〜5の整数、R3 は、H又は環状又は脂肪族単糖類である。最も好ましいのは、nが4、特に−CH2 −(CHOH)4 −CH2 OHのグリシチルである。
【0069】
上式において、R1 は、例えばN−メチル、N−エチル、N−プロピル、N−イソプロピル、N−ブチル、N−2−ヒドロキシエチル、N−メトキシプロピル、或いはN−2−ヒドロキシプロピルである。R2 は、例えばコカミド、ステアラミド、オレアミド、ラウラミド、ミリスタミド、カプリカミド、パルミタミド、タロワミド等を提供するように選定される。Z成分は、1−デオキシグリシチル、2−デオキシフルクチル、1デオキシマルテチル、1−デオキシラクテチル、1−デオキシマンニチル、1−デオキシマルトトリオテチル等である。
【0070】
最も好ましいポリヒドロキシ脂肪酸アミドは、以下の一般式を有する。
【化3】

ここで、R1 は、メチル又はメトキシプロピル;R2 は、C11−C17直鎖アルキル又はアルケニル基である。これらには、N−ラウリル−N−メチル グルカミド、N−ラウリル−N−メトキシプロピル グルカミド、N−ココイル−N−メチル グルカミド、N−ココイル−N−メトキシプロピル グルカミド、或いはN−タロイル−N−メトキシプロピル グルカミドが含まれる。
【0071】
上述のように、幾つかの固定化剤は、皮膚軟化剤中に可溶化させるため、乳化剤を必要としている。これは特に、少なくとも約7のHLB値を有するN−アルキル−N−メトキシプロピル グルカミドのような一定のグルカミドの場合に当てはまる。適当な乳化剤は典型的には、約7以下のHLB値を有するものである。これに関して、約4.9以下のHLB値を有するソルビタンステアレートのような、上述のソルビタンエステルが、これらのグルカミド固定化剤をペトロラタム中に可溶化させるのに有用である。他の適当な乳化剤には、ステアレス−2(式CH3 (CH2 17(OCH2 CH2 n OH(ここで、nは平均値2を有する)に適合するステアリルアルコールのポリエチレングリコールエステル)、ソルビタントリステアレート、イソソルビドラウレート、グリセリルモノステアレートが含まれる。乳化剤は、実質的に均一な混合物が得られるように、乳化剤中に固定化剤を可溶化させるのに十分な量含まれる。例えば、N−ココイル−N−メチル グルカミドとペトロラタムの略1:1の混合物は、乳化剤としてステアレス−2とソルビタントリステアレートの1:1の混合物を20%加えると、溶解して単一相混合物になる。
【0072】
ローション組成物に含まれるべき固定化剤の量は、含まれる特定の皮膚軟化剤、含まれる特定の固定化剤、皮膚軟化剤中に固定化剤を可溶化させるのに乳化剤が必要か否か、ローション組成物の他の成分等を含む、種々の因子で決まる。ローション組成物は、固定化剤の約5〜約80%含んでいる。ローション組成物は、好ましくは固定化剤の約5〜約50%、最も好ましくは固定化剤の約10〜約40%含んでいる。
【0073】
3.任意的な親水性界面活性剤
多くの場合において、本発明によるローション組成物は、トイレットティッシュとして使用されるティッシュペーパーウェブに加えられる。このような場合、ローション組成物で処理したティッシュペーパーウェブを十分に湿らせるのが非常に望ましい。本発明のローション組成物に使用される特定の固定化剤に応じて、湿潤性を向上させるため、付加的な親水性界面活性剤が必要とされたり必要とされなかったりする。例えば、N−ココイル−N−メチル グルカミドのような幾つかの固定化剤は、少なくとも約7のHLB値を有しており、親水性界面界面活性剤を加えなくとも十分に湿潤である。約7以下のHLB値を有するC16−C18脂肪アルコールのような他の固定化剤は、トイレットティッシュとして使用されるティッシュペーパーウェブにローション組成物を加える場合に、湿潤性を向上させるのに十分な親水性界面活性剤を必要とする。同様に、ペトロラタムのような疎水性皮膚軟化剤では、親水性界面活性剤の付加が必要である。
【0074】
適当な親水性界面活性剤が、均一な混合物を形成するように、皮膚軟化剤および固定化剤と混和される。ローション組成物が加えられるペーパー製品の使用に関する皮膚の感受性のため、これらの界面活性剤も、皮膚に対して比較的なめらかで刺激しないものでなければならない。これらの親水性界面活性剤は、皮膚を刺激しないばかりでなく、ティッシュペーパーへの他の望ましくない影響(例えば、引張強度の減少)を与えないように、非イオン性のものである。
【0075】
適当な非イオン性界面活性剤は、ティッシュペーパーウェブにローション組成物を加えた後は、実質的に無移行性であり、典型的には、約4〜約20(好ましくは、約7〜約20)のHLB値を有する。無移行性であるために、これらの非イオン性界面活性剤は典型的には、保管、輸送、販売、及び製品の使用の際に通常遭遇する温度以上の融点(例えば、少なくとも約30℃)を有している。この点に関して、これらの非イオン性界面活性剤は好ましくは、上述の固定化剤の融点と同様な融点を有している。
【0076】
本発明のローション組成物に使用するのに適当な非イオン界面活性剤には、アルキルグリコシド;1977年3月8日にラングドン等に付与された米国特許第4,011,389号に記載されているようなアルキルグリコシドエーテル;(米国ニュージャージー州フェアローンのロンツァ社から入手できる)Pego sperse 1000MS、TWEEN60(約20の平均エトキシレーション率を有するステアリン酸ソルビタンエステル)、TWEEN61(約4の平均エトキシレーション率を有するステアリン酸ソルビタンエステル)のような、約2〜約20(好ましくは、約2〜約10)の平均エトキシレーション率を有するC12−C18脂肪酸のエトキシレートソルビタン・モノ−、ジ−及び/又はトリ−エステル、及び約1〜約54モルのエチレンオキシドを有する脂肪族アルコールの縮合物が含まれる。脂肪族アルコールのアルキル鎖は典型的には、直鎖形体(線形)であり、約8〜約22の炭素原子を含んでいる。アルコールのモル当たり約2〜約30モルのエチレンオキシドを備えた約11〜約22の炭素原子を含むアルキル基を有するアルコールの縮合物が、特に好ましい。このようなエトシキレート化アルコールの例には、アルコールのモル当たり7モルのエチレンオキシドを備えたミリスチルアルコールの縮合物、約6モルのエチレンオキシドを備えたココナッツアルコールの縮合物(10〜14の炭素原子を含む、長さの変化するアルキル鎖を有する脂肪アルコールの混合物)が含まれる。ユニオン・カーバイド社から販売されているTERGITOL 15−S−9(9モルのエチレンオキシドを備えたC11−C15線形アルコールの縮合物)、P&G社から販売されているKYRO EOB(9モルのエチレンオキシドを備えたC13−C15線形アルコールの縮合物)、シェルケミカル社によって販売されている商標名NEO DOL界面活性剤(特に、NEODOL25−12(12モルのエチレンオキシドを備えたC12−C15線形アルコールの縮合物)、NEODOL23−6.5T(希釈され一定の不純物を除去した6.5モルのエチレンオキシドを備えたC12−C13線形アルコールの縮合物))、及びBASF社によって販売されている商標名PLURAFAC界面活性剤(特に、PLURAFAC A−38(27モルのエチレンオキシドを備えたC18直鎖アルコールの縮合物))を含む、多くの適当なエトキシレートアルコールが市販されている。(一定の親水性界面活性剤(特に、NEODOL25−12のようなエトキシレート化アルコール)は、アルキルエトキシレート皮膚軟化剤としても機能する。)好ましいエトキシレート化アルコール界面活性剤の一例として、Brij界面活性剤のICIクラス及びその混合物があり、Brij76(即ち、ステアレス−10)、Brij56(即ち、セチル−10)が特に好ましい。約10〜約20の平均エトキシレーション率までエトキシレートされたセチルアルコールとステアリルアルコールの混合物も、親水性界面活性剤として使用することができる。
【0077】
本発明に使用するのに適した別の種類の界面活性剤には、アメリカン・サイアナミド社によって販売されているAerosol OT(硫化琥珀酸ナトリウムのジオクチルエステル)がある。
【0078】
本発明に使用するのに適した更に別の種類の界面活性剤には、GEのSF1188(ポリジメチルシロキサンとポリオキシアルキレンエーテルのコポリマー)、GEのSF1288(シリコンポリエーテルのコポリマー)のようなシリコンコポリマーがある。これらのシリコン界面活性剤は、エトキシレート化アルコールのような、上述の親水性界面活性剤の他の種類と組み合わせて使用される。これらのシリコン界面活性剤は、ローション組成物の重量の0.1%(より好ましくは、0.25%〜約1.0%)の濃度が効果的であることが分かっている。
【0079】
ローション組成物の湿潤度を所望レベルまで増加させるのに必要な親水性界面活性剤の量は、HLB値、使用される固定化剤の量、使用される界面活性剤のHLB値、及び同様な因子で決まる。ローション組成物は、その湿潤性を増大させる必要があるとき、親水性界面活性剤の約1〜約50%を含んでいる。ローション組成物は好ましくは、その湿潤性を増大させる必要があるとき、親水性界面活性剤の約1〜約25%(最も好ましくは、約10〜約20%)を含んでいる。
【0080】
4.他の任意的な成分
ローション組成物は、皮膚軟化剤、クリーム、及びこの種のローションに典型的に存在する、他の任意的な成分を備えてもよい。これらの任意的な成分には、水、粘度調整剤、香水、消毒抗菌剤、薬剤、被膜形成剤、消臭剤、乳白剤、収斂剤、溶剤等が含まれる。更に、ローション組成物の保存寿命を向上させるため、セルロース誘導体、プロテイン、レシチンのような安定化剤を加えてもよい。これらの物質は全て、このような配合物の添加剤として周知であり、本発明のローション組成物に適量使用することができる。
【0081】
C.ローション組成物によるティッシュペーパーの処理
本発明によるローション付きペーパー製品を調製する際、ローション組成物は、ティッシュペーパーウェブの少なくとも一方の表面に加えられる。溶融又は液状コンシステンシーを有する潤滑物質を均一に分布させる種々の付加方法を使用することができる。適当な方法には、スプレー、印刷(例えば、フレキソ印刷)、塗布(例えば、グラビア塗布)、押出、及びこれらの付加技術の組合せ(例えば、カレンダーロールのような回転表面にローション組成物をスプレーし、次いでローション組成物をペーパーウェブの表面に移送する)が含まれる。ローション組成物は、ティッシュペーパーウェブの一方の表面、或いは両方の表面のいずれかに加えられる。ローション組成物は好ましくは、ティッシュペーパーウェブの両方の表面に加えられる。
【0082】
ローション組成物のティッシュペーパーウェブへの付加は、ウェブがローション組成物で飽和状態にならないようにすべきである。ティッシュペーパーウェブがローション組成物で飽和状態になった場合には、ペーパーの剥離が生じてペーパーの引張強度が減少する可能性が大きくなる。ペーパーウェブの飽和は、本発明のローション組成物から柔らかいローション状の感触を得るのに必要でない。特に適当な付加方法は、ローション組成物を、主としてペーパーウェブの表面に付加するであろう。
【0083】
ローション組成物は、ティッシュペーパーウェブを乾燥した後、ティッシュペーパーウェブに付加される(即ち、“乾燥ウェブ”付加方法)。ローション組成物は、ティッシュペーパーウェブの重量の約2〜約30%の量加えられる。ローション組成物は好ましくは、ティッシュペーパーウェブの重量の約5〜約20%(最も好ましくは、約10〜約16%)の量加えられる。ローション組成物のこのような比較的少ない量は、ティッシュペーパーに柔らかさとローション状の感触を与えるのに十分であるが、吸収度、湿潤度、及び特に強度が実質的に影響を及ぼされる程度まで、ティッシュペーパーウェブを飽和させない。
【0084】
ローション組成物は又、ティッシュペーパーウェブの表面に不均一に付加してもよい。ここで“不均一”とは、ローション組成物の量、分布パターン等がティッシュペーパー表面上で変動することを意味している。例えば、ティッシュペーパーウェブの表面の或る部分のローション組成物の量が、多かったり或いは少なかったり(ローション組成物が全く付加されてい場合も含む)してもよい。
【0085】
ローション組成物は、乾燥後に、ティッシュペーパーウェブの任意の箇所に付加される。例えば、ローション組成物は、ヤンキードライヤーからクレープされた後であってカレンダリングの前に(即ち、カレンダーロールの通過前に)、ティッシュペーパーウェブに付加してもよい。ローション組成物は、カレンダーロールの通過後であってペアレントロールに巻かれる前に、ティッシュペーパーウェブに付加してもよい。通常、ペアレントロールから解かれ、仕上げ用の小さなペーパー製品ロールに巻かれる前に、ローション組成物をティッシュペーパーウェブに付加するのが好ましい。
【0086】
ローション組成物は典型的には、その溶融体からティッシュペーパーウェブに加えられる。ローション組成物が周囲温度よりも著しく高い温度で溶融するので、ティッシュペーパーウェブに加熱されたコーティングとして加えるのが普通である。ローション組成物は典型的には、ティッシュペーパーウェブに加えられる前に、約35℃〜約100℃(好ましくは、約40℃〜約90℃)まで加熱される。溶融したローション組成物がティッシュペーパーウェブに加えられると、冷却し凝固させて、ティッシュペーパーウェブの表面に凝固したコーティング又はフィルムを形成する。
【0087】
本発明のローション組成物をティッシュペーパーウェブに加える際、グラビア被覆法および押出被覆法が好ましい。第1図は、グラビア被覆に伴う、1つの好ましい方法を示している。第1図を参照すると、乾燥したティッシュペーパーウェブ1が、(矢印2aで示される方向に回転する)ティッシュ用ペアレントロール2から巻き出され、変向ロール4に進められる。ティッシュペーパーウェブ1は、変向ロール4から、オフセットグラビア被覆ステーション6に進められ、オフセットグラビア被覆ステーション6において、ティッシュペーパーウェブ1の両面にローション組成物が加えられる。オフセットグラビア被覆ステーション6を出た後、ティッシュペーパーウェブ1は、参照符号3で示されるローション付きウェブになる。次いで、ローション付きウェブ3は変向ロール8に進められ、次いで(矢印10aで示される方向に回転する)ローション付きティッシュ用ペアレントロール10に巻き付けられる。
【0088】
オフセットグラビア被覆ステーション6は、一対のリンク式オフセットグラビアプレス12、14を備えている。プレス12は、下部グラビアシリンダ16と、上部オフセットシリンダ18とによって構成されている。また、プレス14は、下部グラビアシリンダ20と、上部オフセットシリンダ22とによって構成されている。グラビアシリンダ16、20は各々、特定の蝕刻されたセルパターンと寸法を有し、クロムめっきされた表面を有しており、オフセットシリンダ18、22は各々、平滑なポリウレタンゴムの表面を有している。グラビアロールのセル容積の寸法は、所望の被覆重量、ライン速度、及びローションの粘度で決まる。グラビアシリンダとオフセットシリンダは両方とも、ローションを溶融させるように加熱される。これらのグラビアシリンダとオフセットシリンダは、矢印16a、18aと矢印20a、22aによってそれぞれ示される方向に回転する。第1図に示されるように、オフセットシリンダ18、22は、直接対向し互いに平行であり、ウェブ1が通過するニップ領域23を提供する。
【0089】
インキ溜めトレイ24、26が、グラビアシリンダ16、20の下にそれぞれ配置されている。溶融した熱い(例えば、65℃)ローション組成物が、これらの加熱されたトレイ24、26の各々に圧送され、矢印30、32でそれぞれ示されるように、溶融したローション組成物のリザーバとなる。グラビアシリンダ16、20が、リザーバ30、32内で、矢印16a、20aで示された方向に回転すると、グラビアシリンダ16、20は、一定量の溶融ローション組成物を取り上げる。次いで、グラビアシリンダ16、20の各々の過剰なローションは、ドクターブレード34、36によってそれぞれ取り除かれる。
【0090】
次いで、加熱されたグラビアシリンダのセル16、20に残ったローション組成物は、シリンダの各対間のニップ領域38、40のところで、(矢印18a、22aで示されるように反対方向に回転する)加熱されたオフセットシリンダ18、22に移される。次いで、オフセットシリンダ18、22に移されたローション組成物は、ウェブ1の両面に同時に移される。ウェブ1に移されるローション組成物の量は、(1)オフセットシリンダ18、22間のニップ領域23の幅の調整、及び/又は、(2)グラビア/オフセットシリンダ対16/18、20/22間のニップ領域38、40の幅の調整によって制御される。
【0091】
第2図は、スロット押出被覆に伴う、別の好ましい方法を示している。第2図を参照すると、乾燥したティッシュペーパーウェブ101が、(矢印102aによって示される方向に回転する)ティッシュ用ペアレントロール102から巻き出され、次いで変向ロール104に進められる。ティッシュペーパーウェブ101は、変向ロール104から、スロット押出被覆ステーション106に進められ、スロット押出被覆ステーション106において、ウェブの両面にローション組成物が加えられる。ステーション106を出た後、ウェブ101は、参照符号103で示されるローション付きウェブになる。次いで、ローション付きウェブは、(矢印110aで示される方向に回転する)ローション付きティッシュ用ペアレントロール110に巻き付けられる。
【0092】
ステーション106は、一対の間隔を隔てたスロット押出機112、114を備えている。押出機112は、細長いスロット116と、ウェブ接触表面118とを備えている。また、押出機114は、細長いスロット120と、ウェブ接触表面122とを備えている。第2図に示されるように、スロット押出機112、114は、表面118がウェブ101の一方の側と接触し、表面122がウェブ101の他方の側と接触するように、配向されている。溶融した熱い(例えば、65℃)のローション組成物は、各スロット押出機112、114に圧送され、次いで、スロット116、120からそれぞれ押し出される。
【0093】
ウェブ101が押出機112の加熱された表面118を通過してスロット
116に到達すると、スロット116から押し出された溶融ローション組成物
は、表面118と接触しているウェブ101の側に加えられる。同様に、ウェブ101が押出機114の加熱された表面122を通過してスロット120に到達すると、スロット120から押し出された溶融ローション組成物は、表面122と接触しているウェブ101の側に加えられる。ウェブ101に移されるローション組成物の量は、(1)溶融ローション組成物がスロット116、122から押し出される速度、及び/又は、(2)ウェブ101が表面118、122と接触状態で移動する速度によって制御される。
【0094】
本発明によるローション付きティッシュペーパーの製造に関する実例
本発明によるローション組成物でのティッシュペーパーの処理に関する実例について、以下に説明する。
【0095】
例1 A.ローション組成物の調製
2つの無水ローション組成物(ローションAとローションB)を、以下の溶融された(即ち、液体)成分、即ち、White Protopet1S(ウィットコ社製の白色ペトロラタム)、セテアリルアルコール(P&G社製、商品名TA−1618の混合線形C16−C18主アルコール)、ステアレス−10(ICIアメリカ社製:Brij76、平均エトキシレーション度10のC18線形アルコールエトキシレート)、アロエ(ドクター・マディス研究所製、鉱油)を互いに混合することによって作る。これらの成分の重量パーセントは、第1表の通りである。
第1表
成 分 ローションA ローションB
White Protopet 1S 49重量% 39重量%
セテアリルアルコール 35 〃 40 〃
ステアレス−10 15 〃 20 〃
アロエ 1 〃 1 〃
【0096】
B.ホットメルトスプレーによるローション付きティッシュペーパーの調製
ローションA又はBを、90℃で作動するPAM600Sスプレーマチックホットメルトスプレーガン(PAMファスニング・テクノロジー社製)内に置く。12インチ×12インチのティッシュペーパー支持体シートの両側に、所望量のローションをスプレー被覆する。次いで、揮発成分を除去し且つペーパー繊維上にローションの均一な被膜を塗布するように両側にスプレーした後、ローション付きティッシュペーパーを70℃の熱対流炉内に30秒間置く。
【0097】
例2 A.ローション組成物の調製
無水ローション組成物(ローションC)を、重量パーセントで第2表に示した溶融された(即ち、液体)成分を互いに混交することによって、作る。成分を、1カートのプラスチックコンテナ内で室温で結合する。コンテナを密封し、全ての成分が溶融するまで、70℃のオーブン内に置く。この溶融された塊は、均一な混合物を形成するように、十分に混合/シェイクされる。このようにして得られたローション組成物を、使用の準備ができるまで、60℃のオーブン内に置く。
第2表
成 分 重量%
White Protopet 1S 48重量%
セテアリルアルコール 35 〃
ステアレス−10 15 〃
GE SF1188(*) 1 〃
アロエ 1 〃
(*)GE製のシリコンポリエーテルコポリマー
【0098】
B.ホットメルトスプレーによるローション付きティッシュペーパーの調製
ローションCBを、90℃で作動するPAM600Sスプレーマチックホットメルトスプレーガン内に置く。12インチ×12インチのティッシュペーパー支持体シートの両側に、所望量のローションをスプレー被覆する。次いで、揮発成分を除去し且つペーパー繊維上にローションの均一な被膜を塗布するように両側にスプレーした後、ローション付きティッシュペーパーを70℃の熱対流炉内に30秒間置く。
【0099】
例3 A.ローション組成物の調製
無水ローション組成物(ローションD)を、例2の手順に従って、第3表に示される溶融された(即ち、液体)成分を互いに混合することによって作る。
第3表
成 分 重量%
White Protopet 1S 48重量%
セテアリルアルコール 35 〃
ステアレス−10 15 〃
アエルゾルOT−100(*) 1 〃
アロエ 1 〃
(*)アメリカン・サイアナミド社製の硫化琥珀酸のジオクチルエステル
【0100】
B.ホットメルトスプレーによるローション付きティッシュペーパーの調製
ローションDを、例2の手順に従って、ティッシュペーパー支持体シートの両側に、所望量スプレー被覆する。次いで、揮発成分を除去し且つペーパー繊維上にローションの均一な被膜を塗布するように両側にスプレーした後、ローション付きティッシュペーパーを70℃の熱対流炉内に30秒間置く。
【0101】
例4 A.ローション組成物の調製
無水ローション組成物(ローションE)を、例2の手順に従って、第4表に示される成分を互いに混合することによって作る。
第4表
成 分 重量%
ペトロラタム(*) 57重量%
ステアリン酸 23 〃
ステアレス−10 18 〃
GE SF1228 1 〃
アロエ 1 〃
(*)ウィットコ社製のWhite Protopet 1S
【0102】
B.ホットメルトスプレーによるローション付きティッシュペーパーの調製
ローションEを、例2の手順に従って、ティッシュペーパー支持体シートの両側に、所望量スプレー被覆する。次いで、揮発成分を除去し且つペーパー繊維上にローションの均一な被膜を塗布するように両側にスプレーした後、ローション付きティッシュペーパーを55℃の熱対流炉内に15秒間置く。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明のローション組成物をティッシュペーパーに加えるための好ましい方法を示した概略図である。
【図2】本発明のローション組成物をティッシュペーパーに加えるための別の好ましい方法を示した概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃において半固体又は固体である、ティッシュペーパーを処理するためのローション組成物において、
(A)20℃で塑性又は流動性コンシステンシーを有する、20〜95%、好ましくは5〜85%の実質的に無水の皮膚軟化剤を備え、該皮膚軟化剤が、石油に基づく皮膚軟化剤、脂肪酸エステル皮膚軟化剤、アルキルエトキシレート皮膚軟化剤、脂肪酸エステルエトキシレート、脂肪アルコール皮膚軟化剤、及びこれらの混合物から選定された部材を含み、
(B)ローション組成物で処理されたティッシュペーパーの表面に皮膚軟化剤を固定化することができる5〜80%、好ましくは5〜50%の固定化剤を備え、該固定化剤が、少なくとも35℃、好ましくは少なくとも40℃の融点を有し、C14−C22脂肪アルコール、C12−C22脂肪酸、及びC12−C22脂肪アルコールエトキシレートによって構成される基から選定された部材を含み、
(C)少なくとも4、好ましくは4〜20のHLB値を有する、1〜50%、好ましくは1〜25%の任意的な親水性界面活性剤を備えている、ことを特徴とするローション組成物。
【請求項2】
前記皮膚軟化剤が、5%以下の水を含み、鉱油、ペトロラタム、及びこれらの混合物、好ましくはペトロラタムを含んでいることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のローション組成物。
【請求項3】
前記皮膚軟化剤が、メチルパルミテート、メチルステアレート、イソプロピルラウレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、エチルヘキシルパルミテート、ラウリルラクテート、セチルラクテート、及びこれらの混合物から選定された脂肪酸エステル皮膚軟化剤を含んでいることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のローション組成物。
【請求項4】
前記皮膚軟化剤が、2〜30の平均エトキシレーション率を有するC12−C22脂肪アルコールエトキシレートから選定されたアルキルエトキシレート皮膚軟化剤を含んでいることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のローション組成物。
【請求項5】
前記脂肪アルコールエトキシレート皮膚軟化剤が、2〜23の平均エトキシレーション率を有する、ラウリル、セチル、及びステアリルエトキシレートから選定されることを特徴とする請求の範囲第4項に記載のローション組成物。
【請求項6】
前記固定化剤が、C16−C22脂肪アルコール、好ましくはC16−C18脂肪アルコール、より好ましくはセチルアルコール、ステアリルアルコール、及びこれらの混合物から選定されたC16−C18脂肪アルコールを含んでいることを特徴とする請求の範囲第1項〜第5項のいずれか1項に記載のローション組成物。
【請求項7】
前記固定化剤が、C16−C18脂肪酸、セチル酸、ステアリン酸、及びこれらの混合物から選定されたC16−C18脂肪酸を含んでいることを特徴とする請求の範囲第1項〜第5項のいずれか1項に記載のローション組成物。
【請求項8】
前記親水性界面活性剤が、8〜22の炭素原子のアルキル鎖、好ましくは11〜22の炭素原子のアルキル鎖を有し、かつ、1〜54の平均エトキシレーション率、好ましくは2〜30の平均エトキシレーション率を有する、エトキシレート化アルコールを含んでいることを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれか1項に記載のローション組成物。
【請求項9】
前記親水性界面活性剤が、2〜20の平均エトキシレーション率、好ましくは2〜10の平均エトキシレーション率を有する、C12−C18脂肪酸のエトキシレート化ソルビタンエステルを含んでいることを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれか1項に記載のローション組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−7350(P2009−7350A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145962(P2008−145962)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【分割の表示】特願平8−502187の分割
【原出願日】平成7年5月23日(1995.5.23)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】