テンプレート調整方法および装置、欠陥分布分類方法および装置、上記テンプレート調整方法または欠陥分布分類方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、並びに上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
【課題】基板の表面上の欠陥分布を分類するために、分類の基準となる欠陥分布パターンの特徴が記述されたテンプレートを調整するテンプレート調整方法であって、人が設定したテンプレートを、実際の欠陥分布により正確に適合するように自動的に調整できるものを提供すること。
【解決手段】或る基板群の欠陥分布を分類するために設定されたテンプレート100と、基板群の欠陥分布がテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類して得られたデータ群101,102とを用意する。テンプレート100における欠陥分布パターンの特徴に変更を加えるとともに、データ群101,102を用いて変更後のテンプレート107の良否を評価する調整処理をコンピュータに実行させる。
【解決手段】或る基板群の欠陥分布を分類するために設定されたテンプレート100と、基板群の欠陥分布がテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類して得られたデータ群101,102とを用意する。テンプレート100における欠陥分布パターンの特徴に変更を加えるとともに、データ群101,102を用いて変更後のテンプレート107の良否を評価する調整処理をコンピュータに実行させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の表面上の欠陥分布を分類するために、分類の基準となる欠陥分布パターンの特徴が記述されたテンプレートを調整するテンプレート調整方法および装置に関する。
【0002】
また、この発明は、そのように調整されたテンプレートを用いて基板の表面上の欠陥分布を分類する欠陥分布分類方法および装置に関する。
【0003】
また、この発明は、上記テンプレート調整方法または欠陥分布分類方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【0004】
また、この発明は、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0005】
半導体ウェハ、半導体ディスプレイ、ハードディスク磁気ヘッドなどの薄膜デバイスの製造工程では、歩留まりの向上や安定化を目的として様々な検査が実施される。歩留まりが低下した場合、これらの検査の結果の調査や解析を行って迅速に原因を特定して対策を施すことで、歩留まり低下による損害を最小限に食い止めることができる。
【0006】
一般に、歩留まり低下の原因を解析する方法としては、解析担当者が光学顕微鏡や走査電子顕微鏡などを用いて欠陥の状態を観察する物理的な解析と、工程から収集された検査情報に対して統計的または経験的な処理を行う数値的な解析とがある。数値的な解析を効率的に行うために製造工程には検査情報や処理履歴を収集する仕組みが設置されることが多く、解析担当者はこの仕組みを通して不良が発生した薄膜デバイスの検査結果を閲覧したり、複数の薄膜デバイスの欠陥位置を重ね合わせて表示したりすることができる。特に、製造プロセスや製造装置に起因する異常では、欠陥がその異常に固有の特徴的な分布をなして薄膜デバイス上に現れることが多く、その調査に後者の機能が多用される。
【0007】
欠陥分布を把握するには製造工程内で検査された各々の薄膜デバイス上の欠陥の位置を確認する必要があるが、製造される薄膜デバイスの数は膨大であり、全てを担当者の人手によって確認することは難しい。そこで、発生した欠陥数が多い薄膜デバイスを複数ピックアップして欠陥の分布を確認したり、ある期間内に製造または検査された薄膜デバイスを重ね合わせて分布を確認したりという方法が取られる。しかしながら、前者の方法では欠陥数は多いが特徴的な欠陥分布が表れていない薄膜デバイスも確認する必要があるために作業に無駄が多く、欠陥数が少ないが特徴的な欠陥分布を持つ薄膜デバイスをチェックできないという問題がある。後者の方法では、特徴的な欠陥分布を持つ薄膜デバイスと特徴的な欠陥分布を持たない薄膜デバイスが混在してしまって問題となっている異常を判別しにくい。どちらの方法であっても、特徴的な欠陥分布が発生しているかどうかを判断するためには多くの作業が必要であり、その精度も担当者の製造に関する知識や経験に依存する。また、工程の異常の見過ごしや問題発覚の遅延が生じないためには、担当者が常に監視をし続けなければならない。これらの問題を解決するため、薄膜デバイスの欠陥分布が注目すべき特徴的なパターンを示すか否かを自動的に分類する手法が提案されている。
【0008】
そのような分類手法としては、例えば特許文献1(特開平11−45919号公報)の図9、図10、図11等に記載されているように、解析担当者が特徴的な欠陥分布パターンをテンプレートとして入力し、その欠陥分布パターンと実際の欠陥分布とを比較する方法が知られている。この特許文献1では、図25に示すように、解析担当者は、テンプレートを設定するために、半導体ウェハを格子状に分割した微小領域に対して、各領域に欠陥が分布しているか否かを入力する。このとき、欠陥が分布する領域には1、欠陥が分布しない領域には0を与える。入力された内容は、欠陥分布パターンを表す2値画像からなるテンプレートとして分類装置に記憶される。一方、半導体デバイスの検査結果については、上記微小領域に該当する領域に対して領域内の欠陥総数がある閾値を超えた場合は1、超えない場合は0が付与された2値画像データが作成され、作成された2値画像に対して膨張・縮小処理を施して欠陥が集中した領域を塊状に繋ぎ合わせる処理を行う。そして、上記テンプレートの欠陥分布パターンと半導体デバイスの検査結果を表す2値画像データとの間で画像マッチングが行われる。特許文献1の方法は欠陥分布パターンを担当者が決定するため、担当者の意図した欠陥分布を表現しやすく、分類結果を理解しやすいという利点がある。特許文献1では、半導体デバイスの分類結果が担当者の望む分類結果に対してどの程度正確であるかは、担当者が入力するテンプレートの内容、つまり欠陥分布パターンに依存する。しかしながら、人間は曖昧な欠陥分布であっても欠陥分布を分類することができるため、担当者は目的の欠陥分布を実際の欠陥分布よりも単純なパターンとして把握する傾向がある。また、欠陥分布は薄膜デバイス毎に少しずつ異なっているので、個々の薄膜デバイスの欠陥分布から担当者が実際の欠陥分布を正確に把握するのは困難である。
【0009】
そこで、例えば特許文献2(特開2003−59984号公報)の図9、図10等に記載されているように、人がテンプレートを与えずに、自動的にテンプレートを作成する手法も提案されている。特許文献2では、半導体ウェハを複数の部分領域に分割し、目的の欠陥分布パターンに該当する形状を表現するように部分領域を網羅的に組み合わせたテンプレートを作成する。しかしながら、特許文献2の手法では、このような手法でテンプレートとして生成できる欠陥分布パターンは環状の分布と塊状の分布に限定されている上に、生成されるテンプレート数が膨大になる。また、テンプレートは完全に自動的に生成されるので担当者の意図が入っておらず、分類結果を担当者が直感的に理解することが難しいという問題がある。
【特許文献1】特開平11−45919号公報
【特許文献2】特開2003−59984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明の課題は、人が設定したテンプレートを、実際の欠陥分布により正確に適合するように自動的に調整できるテンプレート調整方法および装置を提供することにある。
【0011】
また、この発明の課題は、そのように調整されたテンプレートを用いて基板の表面上の欠陥分布を自動的に分類する欠陥分布分類方法および装置を提供することにある。
【0012】
また、この発明の課題は、上記テンプレート調整方法または欠陥分布分類方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
【0013】
また、この発明の課題は、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、この発明のテンプレート調整方法は、
基板の表面上の欠陥分布を分類するために、分類の基準となる欠陥分布パターンの特徴が記述されたテンプレートを調整するテンプレート調整方法であって、
或る基板群の欠陥分布を分類するために設定されたテンプレートと、上記基板群の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類して得られたデータ群とを用意して、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を加えるとともに、上記データ群を用いて上記変更後のテンプレートの良否を評価する調整処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0015】
ここで「基板」とは、欠陥をもつ検査対象である薄膜デバイス、半導体ウェハなどを広く指す。
【0016】
この発明のテンプレート調整方法によれば、人が設定したテンプレートとデータ群とをコンピュータに入力して、上記調整処理をコンピュータに実行させることによって、上記テンプレートを実際の欠陥分布により正確に適合するように自動的に調整できる。しかも、元のテンプレートを人が設定することによって、調整処理後のテンプレートは、完全に自動的に生成されたものではなく、その人の意図を反映したものとなる。
【0017】
一実施形態のテンプレート調整方法では、
上記データ群は第1のデータ群と第2のデータ群を含み、
上記コンピュータは、上記調整処理として、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を施して新たなテンプレートを作成する第1ステップと、
上記変更後のテンプレートと上記第1のデータ群から分類の基準となるパラメータを導出する第2ステップと、
上記パラメータを用いて上記第2のデータ群を分類する第3ステップと、
上記第3ステップでの分類結果から上記第1ステップで作成した上記変更後のテンプレートの良否を評価する第4ステップと
を順次繰り返し行うことを特徴とする。
【0018】
この一実施形態のテンプレート調整方法によれば、良好に調整されたテンプレートが得られる。したがって、上記テンプレートを用いて基板の表面上の欠陥分布を分類することで、分類の正確さを高めることができる。
【0019】
この発明の欠陥分布分類方法は、上記発明のテンプレート調整方法によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かをコンピュータに分類させることを特徴とする。
【0020】
この発明の欠陥分布分類方法によれば、上記基板の表面上の欠陥分布を精度良く自動的に分類できる。
【0021】
別の局面では、この発明の欠陥分布分類方法は、上記一実施形態のテンプレート調整方法によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かをコンピュータに分類させる第5ステップを備え、
上記第3ステップでは計算量の少ない分類手法を用いる一方、上記第5ステップでは上記第3ステップよりも分類精度を向上させるように計算量が多い分類手法を用いることを特徴とする。
【0022】
この発明の欠陥分布分類方法によれば、上記基板の表面上の欠陥分布を精度良く自動的に分類できる。しかも、上記第3ステップでは計算量の少ない分類手法を用いるので、コンピュータの処理負荷を軽減することができる。
【0023】
この発明のテンプレート調整装置は、
基板の表面上の欠陥分布を分類するために、分類の基準となる欠陥分布パターンの特徴が記述されたテンプレートを調整するテンプレート調整装置であって、
或る基板群の欠陥分布を分類するために設定されたテンプレートと、上記基板群の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを人が分類して得られたデータ群とを入力する入力部と、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を加えるとともに、上記データ群を用いて上記変更後のテンプレートの良否を評価する調整処理部を備えたことを特徴とする。
【0024】
この発明のテンプレート調整装置によれば、入力部が上記テンプレートとデータ群とを入力して、上記調整処理部が、上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を加えるとともに、上記データ群を用いて上記変更後のテンプレートの良否を評価する。したがって、自動的にテンプレートを調整できる。
【0025】
一実施形態のテンプレート調整装置では、
上記データ群は第1のデータ群と第2のデータ群を含み、
上記調整処理部は、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を施して新たなテンプレートを作成する第1手段と、
上記変更後のテンプレートと上記第1のデータ群から分類の基準となるパラメータを導出する第2手段と、
上記パラメータを用いて上記第2のデータ群を分類する第3手段と、
上記第3手段での分類結果から上記第1手段で作成した上記変更後のテンプレートの良否を評価する第4手段と
を備え、上記第1乃至第4手段による処理を順次繰り返すようになっていることを特徴とする。
【0026】
この一実施形態のテンプレート調整装置によれば、良好に調整されたテンプレートが得られる。したがって、上記テンプレートを用いて基板の表面上の欠陥分布を分類することで、分類の正確さを高めることができる。
【0027】
この発明の欠陥分布分類装置は、
上記発明のテンプレート調整装置を含み、
上記テンプレート調整装置によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類する分類部を備えたことを特徴とする。
【0028】
この発明の欠陥分布分類装置によれば、上記基板の表面上の欠陥分布を精度良く分類できる。
【0029】
一実施形態のテンプレート調整方法は、上記コンピュータは、上記テンプレートを染色体に対応させて、上記第1乃至4ステップを実現するために遺伝的アルゴリズムを用いることを特徴とする。
【0030】
この一実施形態のテンプレート調整方法によれば、より効率良くテンプレートの調整を行うことができる。
【0031】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記遺伝的アルゴリズムは、上記テンプレートに対応する染色体をなす遺伝子に対して変更を施して新たな染色体を複数作成し、作成された複数の染色体を初期集団とすることを特徴とする。
【0032】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンの特徴は、基板の表面における1つまたは複数の部分領域を表すパラメータであることを特徴とする。
【0033】
このようなパラメータは、例えば上記各部分領域内の欠陥密度が互いに異なるような態様で、導出される。
【0034】
一実施形態のテンプレート調整方法は、
上記コンピュータは、遺伝的アルゴリズムを用いて上記第1乃至4ステップを実現するように、上記テンプレートを染色体に対応させるとともに、上記基板の表面を格子状に区切って設定された各小領域にそれぞれ上記染色体をなす遺伝子を対応させ、上記各遺伝子にそれぞれ、その遺伝子に対応する小領域が上記部分領域のいずれに属するかを表す値を持たせることを特徴とする。
【0035】
一実施形態のテンプレート調整方法では、二つの染色体の間の交叉は、上記基板の表面上に1つまたは複数の小領域を含む範囲を設定し、一方の染色体の上記範囲に対応する遺伝子の値と他方の染色体の上記範囲に対応する遺伝子の値とを、互いに対応付けて交換する操作で実現されることを特徴とする。
【0036】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記染色体の突然変異は、上記基板の表面上に設定された或る部分領域を、その部分領域内の或る小領域を定める境界の辺に沿って分割する操作で実現されることを特徴とする。
【0037】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記染色体の突然変異は、互いに異なる複数の部分領域を連結して1つの部分領域とする操作で実現されることを特徴とする。
【0038】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記染色体の突然変異は、上記基板の表面上の或る部分領域に属する或る小領域に対応する遺伝子の値と一致するように、その小領域の周辺の別の小領域に対応する遺伝子の値を変化させて、上記部分領域を拡張する操作で実現されることを特徴とする。
【0039】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記第1ステップにおいて上記テンプレートが変更される範囲を制限するように、上記テンプレートの変更可能範囲を上記コンピュータに入力することを特徴とする。
【0040】
この一実施形態のテンプレート調整方法によれば、人の認識を越えて上記テンプレートが変更されるのを制限することができる。
【0041】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記第3ステップでの分類結果および上記第4ステップでの上記変更後のテンプレートの良否の評価を上記コンピュータに表示させ、上記変更後のテンプレートの採否を上記コンピュータに入力することを特徴とする。
【0042】
この一実施形態のテンプレート調整方法によれば、人の認識を越えて上記テンプレートが変更されるのを制限することができる。
【0043】
一実施形態のテンプレート調整方法では、母集団の各染色体に対応するテンプレートによる上記第2のデータ群の分類結果を上記コンピュータに表示させ、どの染色体から新しい染色体を生成するかを上記コンピュータに入力することを特徴とする。
【0044】
この一実施形態のテンプレート調整方法によれば、人の認識を越えて上記テンプレートが変更されるのを制限することができる。
【0045】
一実施形態のテンプレート調整方法では、母集団の各染色体に対応するテンプレートによる上記第2のデータ群の分類結果を上記コンピュータに表示させ、各染色体を淘汰するか否かを上記コンピュータに入力することを特徴とする。
【0046】
この一実施形態のテンプレート調整方法によれば、人の認識を越えて上記テンプレートが変更されるのを制限することができる。
【0047】
この発明のテンプレート調整プログラムは、上記発明のテンプレート調整方法をコンピュータに実行させるためのテンプレート調整プログラムである。
【0048】
この発明の欠陥分布分類プログラムは、上記発明のテンプレート調整方法によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類する欠陥分布分類方法をコンピュータに実行させるための欠陥分布分類プログラムである。
【0049】
この発明の記録媒体は、上記テンプレート調整プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0050】
別の局面では、この発明の記録媒体は、上記欠陥分布分類プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0052】
図1は、本発明の一実施形態のテンプレート調整方法の概念を模式的に示している。このテンプレート調整方法は、基板としての薄膜デバイスの欠陥分布を分類するために用いられるテンプレートを調整するものである。
【0053】
本発明のテンプレート調整方法は、分類すべき欠陥分布の特徴について担当者が入力したテンプレート100と、図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した薄膜デバイスの欠陥分布についてテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するかどうかを担当者が分類して得られた第1のデータ群としてのサンプルデータ101と、同じく図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した薄膜デバイスの欠陥分布についてテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するかどうかを担当者が分類して得られた第2のデータ群としてのテストデータ102とを予め用意する。サンプルデータ101は、テンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するデータ群103と、それに該当しないデータ群104とを含む。テストデータ102も、テンプレート100に記述された欠陥分布に該当するデータ群105と、それに該当しないデータ群106とを含む。以下では、欠陥分布パターンに該当するデータ群を「該当データ」と呼び、欠陥分布パターンに該当しないデータ群を「非該当データ」と呼ぶ。
【0054】
ステップS101では、担当者が設定したテンプレート100に変更を施して、新たなテンプレート107を作成する。具体的な変更の方法はテンプレート100の内容によって様々な方法がありえるので、詳細は実施例として後述する。
【0055】
ステップS102では、新しく作成した(変更後の)テンプレート107とサンプルデータ101を用いて、サンプルデータ101を正確に分類する基準となるパラメータを導出する。
【0056】
このステップS102の処理について、図2を用いて具体的に説明する。
【0057】
図2中のステップS201では、サンプルデータ101内の個々の欠陥分布データ201と変更後のテンプレート107を用いて、欠陥データ201の特徴量ベクトル202を抽出する。特徴量ベクトルとは、該当データ103と非該当データ104を識別するために適当な値を欠陥分布から計算して得られた、1つまたは複数の要素からなるベクトルで表される。特徴量抽出処理S201および特徴量ベクトル202の内容は、分類すべき欠陥分布の形状およびサンプルデータ101に適した形で任意に設計され得る。
【0058】
ステップS202では、ステップS201によって取り出した各々の欠陥分布データ201の特徴量ベクトル202から、サンプルデータ101の該当データ103と非該当データ104をなるべく正確に分類できるように定めた境界線を表す識別関数を求める。
【0059】
識別関数について図3を用いて説明する。特徴量ベクトル202が「特徴量1」「特徴量2」の2成分を持つ2次元ベクトルで表され、図3中に示すように該当データ103の特徴量ベクトル(記号●で表す。)と非該当データ104の特徴量ベクトル(記号×で表す。)が2次元座標上に表されたとする。このとき、該当データ103と非該当データ104は、曲線301によって識別することができる。このように、該当データ103と非該当データ104の境界を表す関数を識別関数と言う。ステップS202によって得られた識別関数およびそれに関連する値を、ここでは「パラメータ」(符号203で表す。)と呼ぶ。
【0060】
図1中のステップS103では、ステップS102で導出したパラメータ203を用いて、テストデータ102を分類する。ステップS102と同様の特徴量抽出処理S201でテストデータに含まれる各データの特徴量ベクトル202を導出し、得られた特徴量ベクトル202に対してパラメータ203内に記述される識別関数を適用することで分類が実施される。
【0061】
ステップS103の分類処理について、図4を用いて説明する。曲線301は、パラメータ203で表される識別関数である。テストデータ102に含まれた或る欠陥分布データから特徴量ベクトル401および402が得られたとする。ここで、特徴量ベクトル401は識別関数301の上側に存在するので「該当データ」に分類され、特徴量ベクトル402は識別関数301の下側に存在するので「非該当データ」に分類される。
【0062】
なお、ステップS202の識別関数の導出およびステップS103の分類については、パターン認識の分野でk−NN法やニューラルネットワークによる識別法など様々な手法が提案されている。本発明ではいずれの手法を用いてもよいので、詳しい説明は省略する。
【0063】
図1中のステップS104では、ステップS103での分類結果から、変更後のテンプレート107の良否を評価する。テストデータ102に含まれるデータは、予め担当者によってテンプレート100に記述された欠陥分布パターンを用いて該当データ105と非該当データ106とに分類されている。従って、図4の特徴量ベクトル401の抽出元であるテストデータが該当データ105に含まれている場合は正確に分類されており、非該当データ106に含まれている場合は誤って分類されていると判断できる。したがって、変更後のテンプレート107から導出された識別関数301がどの程度正確にテストデータ102を分類するかを評価できる。このようにしてテストデータ102に含まれるデータのうち正しく分類された割合を計算することで、テンプレート107を用いて分類した場合の分類精度を評価することができる。
【0064】
ステップS105では、変更後のテンプレート107での分類精度と変更前のテンプレート100の分類精度とを比較する。図示していないが、1回目の変更の比較を行う際には、ステップS105での処理を行う前に、担当者が入力したテンプレート100に対してステップS102〜S104の処理を行って分類精度を算出しておく。
【0065】
変更後のテンプレート107が変更前のテンプレート100よりも分類精度が良かった場合、ステップS106によって変更後のテンプレート107が暫定的なテンプレートとして採用される。
【0066】
変更後のテンプレート107が変更前のテンプレート100よりも分類精度が悪かった場合、ステップS107によって変更後のテンプレート107は棄却され、変更前のテンプレート100が暫定的なテンプレートとして採用される。
【0067】
以上の処理を、ステップS108で所定の終了条件が満たされると判断されるまで繰り返し行うことで、調整後のテンプレート108を得ることができる。所定の終了条件とは、予め定められた回数だけ繰り返しを行ったか、あるいは、テンプレートの評価値が目標の値まで向上したかどうか、などが上げられる。調整後のテンプレート108は担当者が入力したテンプレート100、即ち担当者が認識している欠陥分布の特徴に対して、テストデータ102の分類精度を向上させるように変更を施して調整されたものである。従って、S101におけるテンプレートの変更の程度およびS108における終了条件を適切に設定することにより、担当者にとって容易に理解でき、且つ分類精度の高いテンプレートを作成することができる。
【0068】
図5に本発明によるテンプレート調整装置500の構成を示す。このテンプレート調整装置500は、入力部としてのデータ入力部502、テンプレート変更部506、パラメータ導出部507、テンプレート評価部508、評価結果比較部509、特徴量抽出部513、終了条件判定部510、テンプレート出力部511、サンプルデータ記憶部503、テストデータ記憶部504、および暫定テンプレート記憶部505で構成されている。テンプレート変更部506、パラメータ導出部507、テンプレート評価部508、評価結果比較部509および特徴量抽出部513が調整処理部520を構成している。このテンプレート調整装置500のデータ入力部502、テンプレート出力部511に対して、それぞれ入力装置501、出力装置512が接続されている。
【0069】
入力装置501は、例えばキーボードやマウスなどで構成される。この例では、入力装置501は、テンプレート調整装置500に対して、担当者が設定したテンプレート100の内容を表す情報を入力したり、図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した薄膜デバイスの欠陥分布についてテンプレート100で記述される欠陥分布パターンに該当するかどうかを担当者が分類して得られた第1のデータ群としてのサンプルデータ101、および同じく図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した薄膜デバイスの欠陥分布についてテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するかどうかを担当者が判断して得られた第2のデータ群としてのテストデータ102を入力するために用いられる。
【0070】
データ入力部502は、入力装置501からテンプレート調整装置500に送信された各種の情報を受け取って適切に振り分けるために働く。これにより、サンプルデータ101はサンプルデータ記憶部503に記憶され、テストデータ102はテストデータ記憶部504に記憶される。また、テンプレート100の内容を表す情報はパラメータ導出部507に渡される。
【0071】
サンプルデータ記憶部503は、入力装置501から入力されたサンプルデータ101、即ち各薄膜デバイスの欠陥分布の情報と、その薄膜デバイスがテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを表す情報とを組にして記憶する。
【0072】
テストデータ記憶部504は、入力装置501から入力されたテストデータ102、即ち各薄膜デバイスの欠陥分布の情報と、その薄膜デバイスがテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを表す情報とを組にして記憶する。
【0073】
暫定テンプレート記憶部505は、図1の処理においてその時点で採用されている暫定的なテンプレート(この例では、テンプレート107とする。)の内容を表す情報と、そのテンプレート107の評価値とを組にして記憶する。また、必要があれば、それらの情報と組にして、ステップS102で導出したパラメータ203などの、テンプレート107に関連するその他の情報を記憶しても良い。
【0074】
テンプレート変更部506は、暫定テンプレート記憶部505に記憶されたテンプレートの情報を取り出してステップS101の処理を行って新しいテンプレート107を作成し、パラメータ導出部507にテンプレート107を渡す。
【0075】
パラメータ導出部507は、テンプレート変更部506からテンプレート107を受け取り、サンプルデータ記憶部503からサンプルデータ101の情報を取り出す。これらの情報からステップS109の処理を行ってパラメータ203を導出し、テンプレート評価部508にテンプレート107と導出したパラメータ205を渡す。
【0076】
テンプレート評価部508は、パラメータ導出部507からテンプレート107と導出したパラメータ203を受け取り、テストデータ記憶部504からテストデータ102の情報を取り出す。これらの情報から、ステップS103の処理を行ってテストデータ102を分類し、更にステップS104の処理を行ってテンプレート107を評価して、テンプレート107とその評価値を評価結果比較部509に渡す。
【0077】
評価結果比較部509は、暫定テンプレート記憶部505から取り出した暫定テンプレートの評価値と、テンプレート評価部508から受け取ったテンプレート107の評価値に対してステップS105の比較処理を行う。テンプレート107の評価値の方が高かった場合、評価結果比較部509は暫定テンプレート記憶部505に記憶されているテンプレート情報と評価値をテンプレート107の内容を表す情報と評価値に置き換えるステップS106の処理を行う。テンプレート107の評価値の方が低かった場合には、テンプレート107に関する情報を破棄するステップS107の処理を行う。
【0078】
終了条件判定部510は、調整処理部520による一連の処理が終了する毎にステップS108の処理に従って終了条件が満たされたかどうかを判定し、終了条件が満たされていなければテンプレート変更部506を呼び出す。終了条件が満たされていればテンプレート出力部511を呼び出す。
【0079】
テンプレート出力部511は、調整処理部520による一連の処理が終了して終了条件が満たされた時点で、暫定テンプレート記憶部505に記憶されたテンプレート107(正確には、その内容を表す情報を指す。以下同様。)を調整後のテンプレート108として取り出し、テンプレート調整装置500に接続された出力装置512に対して送信する。
【0080】
出力装置512は、モニタや紙出力、あるいは磁気ディスクや携帯用半導体メモリなどを通して調整後のテンプレート108の結果を出力する。
【0081】
なお、入力装置501から入力されたテンプレート100は、前で説明したようにパラメータ導出部507に渡されて一連の処理が実行される。このとき、評価結果比較部509は、暫定テンプレート記憶部505の内容が空白であるので、テンプレート100の情報と評価値を暫定テンプレート記憶部505に記憶することで、後の処理を行うことができる。
【0082】
また、パラメータ導出部507およびテンプレート評価部508の処理では、テンプレート107に従ってサンプルデータ101またはテストデータ102から特徴量を抽出する共通の処理が存在する。そこで、図5の構成では、この処理をパラメータ導出部507およびテンプレート評価部508から切り離して特徴量抽出部513として構成し、パラメータ導出部507およびテンプレート評価部508から特徴量抽出部513を呼び出すようにしている。ただし、特徴量抽出処理は、パラメータ導出部507およびテンプレート評価部508の内部で行っても良い。
【0083】
また、入力装置501と出力装置512は同一の装置、例えば出力装置としての表示部に入力装置としてのペン入力タブレット部を重ねて一体に構成した装置としても良い。また、入力装置501と出力装置512は、テンプレート調整装置500内に含まれていても良い。
【0084】
また、テンプレート出力部511はステップS102でテンプレート108から導出したパラメータなどの情報をテンプレート108と共に出力装置512に送信し、出力装置512は送られたそれらの情報を出力しても良い。
【0085】
以上に述べたように、このテンプレート調整装置500によれば、上述のテンプレート調整方法を実施することができる。
【0086】
次に、上記テンプレート調整方法によって得られた調整後のテンプレート108を用いて、製造工程において薄膜デバイスに発生した欠陥分布を分類する欠陥分布分類方法について説明する。図6にその欠陥分布分類方法の概念を模式的に示す。
【0087】
この欠陥分布分類方法では、まず、担当者が入力したテンプレート100の内容を表す情報と、図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した薄膜デバイスの欠陥分布データ601と、同じく図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した薄膜デバイスの欠陥分布についてテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを担当者が分類して得られたデータ群としてのサンプルデータ602とを予め用意する。サンプルデータ602は、テンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するデータ群である該当データ603とそれに該当しないデータ群である非該当データ604とを含む。なお、サンプルデータ602は、サンプルデータ101と同一である必要はない。サンプルデータ101とサンプルデータ602の違いについては後述する。
【0088】
担当者が入力したテンプレート100は、図1中の一連のステップS101〜S108を含むテンプレート調整ステップS601によって調整される。これにより、調整後のテンプレート108を得る。
【0089】
ステップS602では、調整後のテンプレート108およびサンプルデータ602を用いてパラメータの導出処理を行う。ステップS602における導出処理の概念はステップS102における導出処理と同様であるが、導出に用いるアルゴリズムは異なっていても良い。ステップS102とステップS602の導出処理の違いについては後述する。
【0090】
ステップS602によって得られたパラメータ605で記述された識別関数を用いて、図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した欠陥分布データ601に対する分類処理S603を行い、分類結果606を得る。なお、パラメータ605はテンプレート作成時に一度計算すればよく、次回欠陥分布データ601の分類を行う際には最初に欠陥分布データを分類した際に計算したパラメータ605を再利用できる。
【0091】
ステップS102におけるパラメータの導出処理とステップS602におけるパラメータの導出処理の違いについて説明する。上で説明したように、ステップS102とステップS602の導出処理は双方とも図2に示した概念で行われるが、ステップS202で用いる導出アルゴリズムは互いに異なっていても良い。これは、以下の理由による。ステップS102は、テンプレートを調整する都度繰り返して実行される。一方、ステップS602は、最初に欠陥分布データ601を分類するまでに一度実行すればよい。また、ステップS102でのパラメータの導出はテンプレートの調整が目的であるので得られる識別関数によるテストデータ102の識別精度はそれほど高くなくても良いが、ステップS602でのパラメータの導出は欠陥分布データ601の分類が目的であり、得られる識別関数は高精度で欠陥分布データ601を分類できる必要がある。以上の目的の違いと実際の計算機での処理負荷を考慮すると、ステップS102では例えばk−NN法など得られる識別関数の精度はそれほど良くないが計算量が少ないアルゴリズムを用いてテンプレートの調整を行う一方、ステップS602では得られたテンプレート108に対して例えばニューラルネットワークによる識別法など計算量が多いアルゴリズムを用いてより精度の高い識別関数を導出することが、効率が良い。サンプルデータ101とサンプルデータ602を比較すると、同様の理由でサンプルデータ101はサンプルデータ602と比べてデータ数を少なくすることが、効率が良い。ただし、サンプルデータ101とサンプルデータ602の欠陥分布の傾向が異なると、調整されたテンプレート108がサンプルデータ602には適していない場合があるので、二つのサンプルデータの欠陥分布は互いに同じ傾向を持つ必要がある。なお、ステップS201の特徴量抽出処理は、ステップS102とステップS602で同一である。
【0092】
もし、計算機の性能や処理時間に十分余裕がある場合には、ステップS102とS602の識別アルゴリズム、およびサンプルデータ101とサンプルデータ602に同一のものを使用しても良い。この場合、ステップS602におけるパラメータの導出処理は省略でき、ステップS102で得られたパラメータ203をパラメータ605として取り扱って欠陥データの分類処理S603を行えばよい。
【0093】
次に、上記欠陥分布分類方法を実施する欠陥分布分類装置700の構成を図7に示す。この欠陥分布分類装置700は、入力部としてのデータ入力部703、テンプレート調整部704、パラメータ導出部705、パラメータ記憶部706、分類部としてのデータ分類部708、データ出力部709、データ通信部707、サンプルデータ記憶部703で構成されている。この欠陥分布分類装置700のデータ入力部703、データ出力部709、データ通信部707に対して、それぞれ入力装置501、出力装置512、検査装置710が接続されている。
【0094】
入力装置701は、例えばキーボードやマウスなどで構成される。この例では、入力装置701は、欠陥分布分類装置700に対して、担当者が設定したテンプレート100の内容を表す情報を入力したり、薄膜デバイス検査装置710から取得した薄膜デバイスの欠陥分布についてテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するかどうかを担当者が分類して得られた第1のデータ群としてのサンプルデータ101、第2のデータ群としてのテストデータ102、および第3のデータ群としてのサンプルデータ603を入力するために用いられる。
【0095】
データ入力部702は、入力装置701から欠陥分布分類装置700に送信された各種の情報を受け取って適切に振り分けるために働く。これにより、サンプルデータ602はサンプルデータ記憶部703に記憶され、その他の情報はテンプレート調整部705に渡される。
【0096】
サンプルデータ記憶部703は、入力装置701から入力されたサンプルデータ、即ち各薄膜デバイスの欠陥分布の情報と、その薄膜デバイスがテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを表す情報とを組にして記憶する。
【0097】
テンプレート調整部704は、入力装置701から入力されたテンプレート100の内容を表す情報、サンプルデータ101、およびテストデータ102を受け取って調整してテンプレート108を作成し、調整後のテンプレート108をパラメータ導出部705に渡す。テンプレート調整部704の内部構成はテンプレート調整装置500と同様である。
【0098】
パラメータ導出部705は、テンプレート調整部704から調整後のテンプレート108を受け取り、サンプルデータ記憶部703からサンプルデータ603の情報を取り出す。これらの情報からステップS607の処理を行ってパラメータ608を導出し、パラメータ記憶部706に記憶させる。
【0099】
データ通信部707は、薄膜デバイス検査装置710から分類すべき欠陥分布データ711を受け取って、データ分類部708に渡す。
【0100】
データ分類部708は、データ通信部707から欠陥分布データ711を受け取ると、パラメータ記憶部706からパラメータ605に記述された識別関数を取り出し、その識別関数を用いて欠陥分布データ711についての分類処理を行う。得られた分類結果は、欠陥分布データ711と共にデータ出力部709に送られる。
【0101】
データ出力部709は、欠陥分布データ711とその分類結果を出力装置712に送信する。
【0102】
出力装置712は、液晶ディスプレイなどの表示機器や紙出力、あるいは磁気ディスクや携帯用半導体メモリなどを通して欠陥分布データ711の分類結果を出力する。
【0103】
上記の通り、テンプレート調整部704の構成はテンプレート調整装置500と同様である。従って、図8に示すように、テンプレート調整部704をテンプレート調整装置500として欠陥分布分類装置700とは別に構成することも可能である。この図8に示す構成では、入力装置701はテンプレート調整装置500から調整後のテンプレート108を受け取って、調整後のテンプレート108およびサンプルデータ602を欠陥分布分類装置700に対して送信する。データ入力部703は、テンプレート108をパラメータ導出部705に渡す。
【0104】
以上に述べたように、この欠陥分布分類装置700によれば、上述の欠陥分布分類方法を実施することができる。
【0105】
なお、本発明のテンプレート調整方法および欠陥分布分類方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして構築しても良い。
【0106】
また、そのようなプログラムをCD−ROMなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して配布できるようにしても良い。上記プログラムを汎用コンピュータにインストールすることで、汎用コンピュータによって上記テンプレート調整方法及び欠陥分布分類方法を実行することが可能である。
【実施例1】
【0107】
次に、実施例1として、基板としてのウェハの表面上の欠陥分布を分類するために、分類の基準となるテンプレートを調整するテンプレート調整方法について具体的に説明する。この実施例1では、欠陥分布の特徴および特徴量は、欠陥分布を判断するためにウェハ上で注目すべき任意の1つまたは複数の部分領域と、それぞれの部分領域の欠陥数の傾向で表すものとする。
【0108】
図9に、実施例1のテンプレート調整方法の手順を模式的に示す。担当者は、分類すべき欠陥形状の特徴を記述するテンプレート900と、図示しないウェハ検査装置から取得したウェハの欠陥分布についてテンプレート900に記述された欠陥分布パターンに該当するかどうかを担当者が分類して得られたサンプルデータ901と、同じく図示しないウェハ検査装置から取得したウェハの欠陥分布についてテンプレート900に記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを担当者が分類して得られたテストデータ902とを予め用意する。この例では、テンプレート900には、ウェハの周辺に対応する領域に、欠陥分布を判断するために注目すべき2つの部分領域903,904が設定されている。サンプルデータ901およびテストデータ902における図示しないウェハ検査装置から取得したウェハの欠陥分布とは、各ウェハで検出された欠陥905の少なくとも座標に関する情報を含む情報である。担当者は、サンプルデータ901に含まれるウェハの欠陥分布に関して、部分領域903周辺に欠陥が集中しているウェハを該当データ906、部分領域903周辺に欠陥が集中していないウェハを非該当データ907として分類する。テストデータ902も、サンプルデータ901と同様に、該当データ908と非該当データ909に分類する。
【0109】
このように設定されたテンプレート900、サンプルデータ901およびテストデータ902に対して、図1中に示したのと同様の処理手順に従ってテンプレートの調整を行う。
【0110】
まず、ステップS101では、テンプレート900の変更処理を行う。ここでの変更とは、任意の部分領域の拡大縮小、部分領域の分割処理などである。図中では、テンプレート900の部分領域903が部分領域911および部分領域912に分割されて、新たなテンプレート910が作成されている。ステップS101においてテンプレート900に対して与える変更は、ランダムに選択しても良いし、例えば全欠陥の重心方向に拡大するなど、欠陥の分布情報から選択しても良い。
【0111】
次に、ステップS102で、新しく作成した(変更後の)テンプレート910とサンプルデータ901を用いて、サンプルデータ901を正確に分類する基準となるパラメータの導出を行う。実施例1における特徴量抽出処理S201を以下に説明する。テンプレート910がr個の部分領域{R1,…,Rr}で定義されているとする。このとき、欠陥分布データiの総欠陥数をD、テンプレート910の部分領域Rkに対応する領域に存在する欠陥数をDkとしたとき、特徴量ベクトルFiを次の(数1)のように定める。
【数1】
【0112】
特徴量ベクトルFiの計算方法について、図10の例で説明する。サンプルデータ901に含まれる欠陥分布データ1001において、部分領域1002はテンプレート910の部分領域903に、部分領域1003はテンプレート910の部分領域912に、部分領域1004はテンプレート910の部分領域904にそれぞれ対応する。図10より、欠陥分布データ1001の総欠陥数は15、部分領域1002に含まれる欠陥数は6、部分領域1003に含まれる欠陥数は0、部分領域1004に含まれる欠陥数は9であるので、この欠陥分布データ1001から抽出される特徴量ベクトルは(6/15,0/15,9/15)となる。サンプルデータ901に含まれる全ての欠陥分布データについて特徴量ベクトルを求めた後、識別関数導出処理S202でパラメータ203を導出する。
【0113】
次にステップS103でテストデータ902の分類を行う。ここで、テストデータ902に含まれる欠陥分布データからの特徴量ベクトルは、ステップS102と同様に(数1)により求める。
【0114】
次にステップS104でテンプレート910を評価する。テストデータ902のうち該当データ908に含まれるデータ数をNp、非該当データ909に含まれるテストデータの数Nnとし、該当データ908に含まれるデータのうちテンプレート910から導出された識別関数で正確に分類されたデータの数をNtp、非該当データ909に含まれるデータのうち正確に分類されたデータの数をNtnとすると、変更後のテンプレート910の評価値Eは例えば次の(数2)のように定義される。
【数2】
【0115】
この(数2)において、aおよびbは該当データ608の識別と非該当データ609の識別のどちらをより重視するかを調整する変数である。a>bであれば該当データの識別がより重視され、a<bであれば非該当データの識別がより重視される。
【0116】
この後、ステップS105からS108の処理を行うことでテンプレート900の調整を行い、調整後のテンプレート913を得ることができる。
【0117】
この実施例1では、基板としてのウェハの表面上の欠陥分布を判断するために、ウェハ上で注目すべき2つの複数の部分領域をテンプレートとして設定し、それぞれの部分領域の欠陥数の傾向を特徴量としたが、本発明はこのテンプレートおよび特徴量に限定されるものではない。例えば、テンプレートとして記述する欠陥分布の特徴を関数として表し、関数の係数を調整してもよい。
【実施例2】
【0118】
次に、実施例2として、欠陥分布の特徴に対する担当者の認識をよりテンプレート100に反映させるため、テンプレート100が変更される範囲を制限する方法について説明する。
【0119】
テンプレート100の変更範囲を制限する第1の方法は、テンプレート100作成時にテンプレートの変更可能範囲を含めてテンプレート100として設定しておき、ステップS101におけるテンプレートの変更ではその範囲内での変更のみ許可する方法である。
【0120】
例えば実施例1で説明した図9のテンプレート900について、図11Aに示すように、部分領域903上に、担当者が必ず単一の部分領域として確保したい制限領域1101を設定する。このとき、ステップS101において、図11Bに示すように制限領域1101を分割しない範囲で部分領域903を複数の部分領域1102,1103,1104に分割する変更(制限領域1101を部分領域1103が包含する)や、図11Cに示すように制限領域1101をすべて含むように部分領域903を拡大(部分領域1105に)する変更は許される。しかし、図11Dに示すように部分領域1106,1107を設けて制限領域1101を分割するような変更や、図11Eに示すように制限領域1101の一部を含まなくなるように部分領域903を縮小(部分領域1108に)する変更は許可されない。
【0121】
テンプレート100の変更範囲を制限する第2の方法は、変更後のテンプレート107の評価が変更前のテンプレートの評価よりも良かった場合、実際にその変更を暫定的なテンプレートに反映するかどうかの判断を担当者に委ねる方法である。図12は、図1の方法を基本としてそのような方法を採用した例を示している。ステップS105において、変更後のテンプレート107が変更前のテンプレートよりも評価が良かった場合、ステップS1201で担当者に対して変更後のテンプレートおよび評価値を提示する。ステップS1202で担当者はそれらから実際に変更を行うかどうか確認し、変更を了承した場合はステップS106によって変更が採用される。一方、担当者が変更を了承しなかった場合は、ステップS107にて変更前のテンプレートよりも評価が低かったときと同様に、変更後のテンプレート107は棄却され、変更前のテンプレートが採用される。
【0122】
図13は、この第2の方法を実施できるように図5の装置を変更してなるテンプレート調整装置の構成を示している。なお、この図13では図5から変更のない部分については省略している。評価結果比較部509にて変更後のテンプレート107が変更前のテンプレートよりも評価が良いと判断されると、テンプレート調整装置1300は、テンプレート出力部511を介して変更後のテンプレート107およびその評価値を出力装置512に送る。出力装置512は、液晶ディスプレイなどの表示機器によって変更後のテンプレート107およびその評価値を担当者に提示する。担当者は、テンプレート107の内容を確認した上で、変更後のテンプレート107を了承するかどうかを入力装置501に入力する。入力された内容はデータ入力部502を介して評価結果比較部509に送られて、テンプレート107を採用するかどうかが決定される。
【0123】
以上、2つの方法によって、テンプレートに対する変更可能範囲を制限して、欠陥分布の特徴に対する担当者の認識をより反映した調整を行うことができる。
【実施例3】
【0124】
次に、実施例3として、図1に示したテンプレート調整方法を遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm:GA)を用いて実現する方法について説明する。
【0125】
GAとは生物の進化過程を模して作られた、確率的探索手法の1つである。GAの基本的な処理の流れを図14に示す。GAでは問題の解(ここではテンプレート)は染色体と呼ばれる数字列で表現される。問題の解を染色体として表現する手法を決定することをコーディングと呼ぶ。
【0126】
ステップS1401はアルゴリズム開始時に複数の染色体をランダムに生成する。ステップS1401で生成され、以後の処理の母集団となる染色体群を初期集団と呼ぶ。
【0127】
ステップS1402では、母集団の各染色体が表現する解が目的の問題の解をどの程度満足するのかが評価される。この評価値を適応度と呼ぶ。
【0128】
ステップS1403は、アルゴリズムの終了条件の評価を行う。ステップS1403において、予め定めた終了条件を満たしていればアルゴリズムは終了となり、終了条件を満たしていない場合は以後の処理が実施される。
【0129】
ステップS1404では、母集団の中から適応度によって決定される確率で2つの染色体を選び出す。この操作を選択と呼ぶ。
【0130】
ステップS1405では、ステップS1404で選択された2つの染色体の一部を入れ換えて新たな2つの染色体を生成する。この操作を交叉と呼ぶ。
【0131】
ステップS1406では、ステップS1405で生成された染色体に対して、ある定められた確率で値を変化させる。この操作を突然変異と呼ぶ。
【0132】
ステップS1404からステップS1406の操作は遺伝的操作と呼ばれる。
【0133】
ステップS1407では、上記遺伝的操作を繰り返して所定の個体数を生成したかどうかを判断し、所定の個体数に達していない場合は遺伝的操作を繰り返して新たな染色体を生成する。所定の個体数に達していた場合、ステップS1408で母集団の染色体と新たな染色体を入れ換えて世代交代を行う。
【0134】
GAでは、以上の処理を繰り返すことで、染色体を遺伝的に変化させながらより良い解に近づけていくことができる。本発明では、上記の処理を図1に示した方法の各々のステップに対応させることでより効率よくテンプレートの調整を行う。
【0135】
次に、実施例1で説明した手順にGAを適用して本発明を実現する方法の例を説明する。
【0136】
図15に、分類すべき欠陥形状の特徴を記述するテンプレート1500をコーディングする仕方を模式的に示す。図15上段に示すように、テンプレート1500には、ウェハの周辺に対応する領域に、2つの部分領域1501,1502が設定されている。符号1503は、ウェハ内で部分領域1501,1502が設定されていない残りの領域を示している。このテンプレートのコーディングに際しては、まず図15中段に示すように、テンプレート1500の部分領域別のマップを作成する。このとき、ウェハ内で部分領域1501,1502が設定されていない残りの領域1503も1つの部分領域として考えてマップを作成する。すなわち、テンプレート1500では、ウェハ内の領域1501,1502,1503のそれぞれに対応した部分領域マップ1504,1505,1506を作成する。更に、図15下段に示すように、それぞれの部分領域マップを格子状の小領域に分割する。そして、これら小領域のそれぞれを染色体(これを染色体Aと呼ぶ。)の遺伝子に対応させて、それぞれの部分領域マップについてテンプレート1500で設定された部分領域に該当する遺伝子の値を1、該当しない遺伝子の値を0とし、ウェハの範囲外に存在する遺伝子の値を−1とする。これにより、テンプレート1500を(部分領域数×格子の縦方向の数×格子の横方向の数)次元の配列としてコーディングできる。即ち、テンプレートは、テンプレート上の部分領域の数をr、ウェハを分割する格子の縦方向の数をh、横方向の数をνとすると、染色体Aは次の(数3)を満たす(r×h×ν)の3次元配列構造をもつ数字列として表される。
【数3】
【0137】
ここで、gi,j,kは染色体Aにおいてi番目の部分領域の小領域(j,k)を表す遺伝子である。
【0138】
次に、図16を用いて、上述の初期集団の生成(図14中のステップS1401)について具体的に説明する。本発明は担当者が入力したテンプレート100の調整を目的としているため、初期集団を全くのランダムで作成するのではなくテンプレート100から生成する。まず、図16中のステップS1601では、担当者が入力したテンプレート900を(数3)で表される染色体にコーディングする。次に、ステップS1602では、この染色体に対して後に詳細を説明する突然変異を適用して、テンプレートに変更を施す。これらのステップが予め定められた初期集団の個体数に達するまで繰り返し(ステップS1603)、初期集団1604を生成する。
【0139】
次に、上述の染色体の評価方法(図14中のステップS1402)を具体的に説明する。母集団に含まれる個々の染色体の適応度は、図1におけるステップS102〜S104の手順でその染色体が表現するテンプレートを用いてテストデータを分類したときの分類精度とする。即ち、染色体mの適応度Fitnessmを、(数2)を用いて次の(数4)のように表す。
【数4】
【0140】
これにより、母集団中の染色体を、その適応度に従って順位付けすることができる。
【0141】
次に、上述の終了条件の評価(図14中のステップS1403)について具体的に説明する。GAでは、終了条件として様々な条件を定めることができる。本発明の終了条件としては、規定回数の世代交代が終了したかどうかといった条件や、母集団中の染色体が全て同じ値となったかどうかといった条件、最も適応度の高い染色体の分類精度が目標精度に達したかどうかなどが考えられる。いずれの終了条件を設定しても良く、複数の条件を組み合わせてもよい。
【0142】
次に、上述の選択の方法(図14中のステップS1404)について具体的に説明する。まず、各染色体に対して適応度に従った選択確率を設定する。選択確率の設定方法としては様々な手法が提案されており、いずれを採用しても良い。例えば、各染色体の選択確率として適応度の値に比例した確率を与える方法を採用する。そして、設定された選択確率に従って、母集団から2つの染色体を選択する。
【0143】
次に、上述の交叉の方法(図14中のステップS1405)について説明する。交叉の操作は染色体の構造や問題の性質によって異なる。この例では、交叉は、上述のステップS1404で選択された二つの染色体のうち、一方の染色体の或る範囲に対応する遺伝子の値と他方の染色体のその範囲に対応する遺伝子の値とを、互いに対応付けて交換することによって行う。
【0144】
例えば図15中に示した染色体Aと、図17下段に示す染色体Bとが、上述のステップS1404で選択されたものとする。図17上段に示すテンプレート1700には、注目しない部分領域1704も含めて4つの部分領域1701,1702,1703,1704が設定されている。これにより、図17下段に示すように、染色体Bは(4×h×ν)の配列で表現されている。染色体Aの次元数は(3×h×ν)であり、染色体Bの次元数は(4×h×ν)であるから、染色体Aの方が染色体Bよりも次元数が少ない例である。
【0145】
図18は、二つの染色体A,Bが選択された場合における交叉の手順を例示している。交叉のために二つの染色体A,Bが選択されると、まず、両者の配列の次元を揃えるため、配列が少ない方の染色体Aに対して、図18最上段の右端に示すように、ウェハの範囲内の遺伝子が全て0に設定された配列(「部分領域4」に対応)1801を追加して次元数を(4×h×ν)に揃える。次に、ウェハ上の(h×ν)の領域から、交叉の対象となる範囲をランダムに選択し、部分領域を表す各々の配列についてその範囲を設定する。図18の例では、交叉の対象となる範囲1802が、染色体Aおよび染色体Bのそれぞれの4つの部分領域について設定されている。最後に、一方の染色体Aの範囲1802に対応する遺伝子の値と他方の染色体Bの範囲1802に対応する遺伝子の値とを、互いに対応付けて交換する。なお、この操作の結果、ウェハ範囲内の遺伝子の値が全て0の部分領域を表す配列が作成された場合、その部分領域を表す配列は削除する。この交叉の手順を経て、図18の下半分に示すように染色体A’と染色体B’が生成される。なお、より効率の良い交叉を行うために、それぞれの部分領域を面積や位置で並び替えてから交叉させても良い。
【0146】
次に、上述の突然変異(図14中のステップS1406)について説明する。突然変異の操作は、交叉によって生成された遺伝子に対して或る確率で行われるが、交叉の操作と同様に染色体の構造や問題の性質によって実現方法が異なる。ここでは、突然変異の操作として、部分領域の拡張、部分領域の分割、および部分領域の結合の3種類を行う。
【0147】
部分領域の拡張は、ウェハ上の範囲内の或る部分領域に属する或る小領域をランダムに選択し、その小領域に対応する遺伝子の値と一致するように、各部分領域でその小領域の周辺の別の小領域に対応する遺伝子の値を変化させる(コピーする)操作である。例えば図19の上段左に示すように、或る小領域1901が選択されたとする。コピー数がn=4と設定されている場合、図19の上段右に示すように、小領域1901の遺伝子の値を、その上下左右に隣接する小領域の遺伝子の値としてコピーする。ただし、隣接する小領域がウェハの範囲外であるとき、即ち遺伝子の値が−1であるときは、コピーしない。コピー数がn=8と設定されている場合、図19の下段右に示すように、n=4の場合に加えて、小領域1901の遺伝子の値を、斜め方向に隣接する小領域の遺伝子の値としてもコピーする。nの値は、4、8、またはそれ以外の値のいずれでもよく、ウェハ上の格子の解像度などを考慮して決定する。図20に、上述の染色体A’に対してコピー数がn=4として拡張を行った例を示す。ウェハ上の領域2001が選択されると、各部分領域で領域2001に該当する遺伝子の値が、上下左右に隣接する小領域の遺伝子の値としてコピーされる。この例では、部分領域1および部分領域4は該当位置の遺伝子と4近傍の遺伝子が同じ値なので変化しないが、部分領域2は該当位置の上と左の遺伝子の値が変化して部分領域が大きくなっており、部分領域3は該当位置の上と左の遺伝子の値が変化して部分領域が小さくなっている。
【0148】
部分領域の分割は、或る部分領域の或る小領域をランダムに選択し、その部分領域を、その小領域を定める境界の辺に沿って分割する操作である。例えば図21の上段左に示すように、或る小領域2101が選択されたとする。このとき、その小領域2101に対してそれぞれ右上部分I、左上部分II、左下部分III、右下部分IVを分割する4通りの分割パターンから1つがランダムに選択される。そして、図21の右半分に示すように、その小領域2101が属する部分領域が、分割パターン毎にそれぞれ2つに分割される。図22は、染色体A’の部分領域2について小領域2201が選択され、図21中に示す分割パターンIIIで分割が行われた態様を示している。この結果、染色体A’の部分領域数は5に増加する。
【0149】
部分領域の結合は、染色体で表現された互いに異なる複数の部分領域を連結して1つの部分領域とする操作である。図23は、図18中に示した染色体A’の部分領域2と部分領域4との結合の様子を例示している。部分領域2,4の結合処理によって、染色体A’の部分領域の数は4から3に減少する。
【0150】
上記3つの突然変異は、単一の染色体に対して複数回実施しても良い。
【0151】
既述のように、ステップS1404からステップS1406の遺伝的操作を所定の数の染色体が生成されるまで繰り返し(ステップS1407)、母集団の染色体と入れ換えることで新しい世代の母集団を生成する(ステップS1408)。染色体を入れ換える手法はいくつか提案されており本発明ではいずれを用いても良い。例えば、前の世代の母集団で適応度の良い染色体を一定数残し、残りの染色体を新しい世代と入れ換えても良い。
【0152】
このようにして、図1に示したテンプレート調整方法を遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて実現することができる。これにより、担当者の入力したテンプレートに対してより効率よくテンプレートを調整することができる。なお、上記の説明は一例であって、染色体の表現や遺伝的操作はテンプレートとして定義される情報に合わせて、その他の方法で実現しても良い。例えば、テンプレートとして欠陥分布の特徴を関数として表している場合、染色体は上記説明のような構造ではなく関数の係数を羅列した配列で表現され、遺伝的操作も上記説明とは異なる方法で実現される。また、図1に示したテンプレート調整方法の場合であっても、異なる実装方法が可能である。例えば、染色体を図15に示した構造ではなく、図24に示すように(h×ν)の数列で表し、遺伝子の値を各々の部分領域に割り当てられた番号で表しても良い。問題の解や染色体の構造が変わると遺伝的操作も異なる手法で実装されるが、本発明はその内容を問わない。
【0153】
図1に示したテンプレート調整方法の流れと図14に示したGAの流れとを比較すると、テンプレートの変更S101は遺伝的操作S1404〜S1406に相当し、テストデータの分類S103およびテンプレートの評価S104は染色体の評価S1402に相当し、変更後のテンプレートを採用するか否かの判断S105は染色体の入れ換えS1408に相当する。
【実施例4】
【0154】
次に、実施例4として、GAを用いる場合にテンプレートが変更される範囲を制限する方法について説明する。
【0155】
GAを用いる場合にテンプレートが変更される範囲を制限する第1の方法は、染色体の入れ替えS1408において、前の世代の母集団の染色体のうち、いずれの染色体を新しい染色体と入れ替えるかを担当者が入力する方法である。
【0156】
GAを用いる場合にテンプレートが変更される範囲を制限する第2の方法は、選択S1404において、どの染色体を淘汰、つまり選択するかを担当者が入力する方法である。
【0157】
上記2つの方法のいずれを用いて実現しても良いし、両方の方法を併用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の一実施形態のテンプレート調整方法の概念を模式的に示す図である。
【図2】図1中のパラメータ導出処理S102を説明する図である。
【図3】識別関数の概念を示す図である。
【図4】データの分類処理を説明する図である。
【図5】本発明の一実施形態のテンプレート調整装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態の欠陥分布分類方法の概念を模式的に示す図である。
【図7】本発明の一実施形態の欠陥分布分類装置の構成を示す図である。
【図8】図7の欠陥分布分類装置の変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施例1のテンプレート調整方法を模式的に示す図である。
【図10】実施例1のテンプレート調整方法における特徴量ベクトルの計算方法を説明する図である。
【図11A】テンプレートに変更を制限するための制限領域を設定した例を説明する図である。
【図11B】図11A中の制限領域を設定した場合にテンプレートの変更が許される例を示す図である。
【図11C】図11A中の制限領域を設定した場合にテンプレートの変更が許される別の例を示す図である。
【図11D】図11A中の制限領域を設定した場合にテンプレートの変更が制限される例を示す図である。
【図11E】図11A中の制限領域を設定した場合にテンプレートの変更が制限される別の例を示す図である。
【図12】本発明の実施例2のテンプレート調整方法を模式的に示す図である。
【図13】実施例2のテンプレート調整方法を実施するためのテンプレート調整装置の構成を示す図である。
【図14】GAの基本的な流れを示す図である。
【図15】本発明の実施例3のテンプレート調整方法において、テンプレートを染色体にコーディングする方法を模式的に示す図である。
【図16】実施例3のテンプレート調整方法における初期集団を生成する方法を示す図である。
【図17】実施例3のテンプレート調整方法における染色体の1例を表す図である。
【図18】実施例3のテンプレート調整方法における交叉を説明する図である。
【図19】実施例3のテンプレート調整方法における突然変異の1つである部分領域の拡張の概念を模式的に示す図である。
【図20】実施例3のテンプレート調整方法における突然変異の1つである部分領域の拡張の態様を模式的に示す図である。
【図21】実施例3のテンプレート調整方法における突然変異の1つである部分領域の分割の概念を模式的に示す図である。
【図22】実施例3のテンプレート調整方法における突然変異の1つである部分領域の分割を模式的に説明する図である。
【図23】実施例3のテンプレート調整方法における突然変異の1つである部分領域の結合を説明する図である。
【図24】実施例3のテンプレート調整方法において、テンプレートを染色体にコーディングする図15とは別の方法を模式的に示す図である。
【図25】従来例の欠陥分布分類方法を模式的に説明する図である。
【符号の説明】
【0159】
100 担当者が入力したテンプレート
101 サンプルデータ
102 テストデータ
103 サンプルデータ中の該当データ
104 サンプルデータ中の非該当データ
105 テストデータ中の該当データ
106 テストデータ中の非該当データ
107 変更後のテンプレート
108 調整後のテンプレート
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の表面上の欠陥分布を分類するために、分類の基準となる欠陥分布パターンの特徴が記述されたテンプレートを調整するテンプレート調整方法および装置に関する。
【0002】
また、この発明は、そのように調整されたテンプレートを用いて基板の表面上の欠陥分布を分類する欠陥分布分類方法および装置に関する。
【0003】
また、この発明は、上記テンプレート調整方法または欠陥分布分類方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【0004】
また、この発明は、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0005】
半導体ウェハ、半導体ディスプレイ、ハードディスク磁気ヘッドなどの薄膜デバイスの製造工程では、歩留まりの向上や安定化を目的として様々な検査が実施される。歩留まりが低下した場合、これらの検査の結果の調査や解析を行って迅速に原因を特定して対策を施すことで、歩留まり低下による損害を最小限に食い止めることができる。
【0006】
一般に、歩留まり低下の原因を解析する方法としては、解析担当者が光学顕微鏡や走査電子顕微鏡などを用いて欠陥の状態を観察する物理的な解析と、工程から収集された検査情報に対して統計的または経験的な処理を行う数値的な解析とがある。数値的な解析を効率的に行うために製造工程には検査情報や処理履歴を収集する仕組みが設置されることが多く、解析担当者はこの仕組みを通して不良が発生した薄膜デバイスの検査結果を閲覧したり、複数の薄膜デバイスの欠陥位置を重ね合わせて表示したりすることができる。特に、製造プロセスや製造装置に起因する異常では、欠陥がその異常に固有の特徴的な分布をなして薄膜デバイス上に現れることが多く、その調査に後者の機能が多用される。
【0007】
欠陥分布を把握するには製造工程内で検査された各々の薄膜デバイス上の欠陥の位置を確認する必要があるが、製造される薄膜デバイスの数は膨大であり、全てを担当者の人手によって確認することは難しい。そこで、発生した欠陥数が多い薄膜デバイスを複数ピックアップして欠陥の分布を確認したり、ある期間内に製造または検査された薄膜デバイスを重ね合わせて分布を確認したりという方法が取られる。しかしながら、前者の方法では欠陥数は多いが特徴的な欠陥分布が表れていない薄膜デバイスも確認する必要があるために作業に無駄が多く、欠陥数が少ないが特徴的な欠陥分布を持つ薄膜デバイスをチェックできないという問題がある。後者の方法では、特徴的な欠陥分布を持つ薄膜デバイスと特徴的な欠陥分布を持たない薄膜デバイスが混在してしまって問題となっている異常を判別しにくい。どちらの方法であっても、特徴的な欠陥分布が発生しているかどうかを判断するためには多くの作業が必要であり、その精度も担当者の製造に関する知識や経験に依存する。また、工程の異常の見過ごしや問題発覚の遅延が生じないためには、担当者が常に監視をし続けなければならない。これらの問題を解決するため、薄膜デバイスの欠陥分布が注目すべき特徴的なパターンを示すか否かを自動的に分類する手法が提案されている。
【0008】
そのような分類手法としては、例えば特許文献1(特開平11−45919号公報)の図9、図10、図11等に記載されているように、解析担当者が特徴的な欠陥分布パターンをテンプレートとして入力し、その欠陥分布パターンと実際の欠陥分布とを比較する方法が知られている。この特許文献1では、図25に示すように、解析担当者は、テンプレートを設定するために、半導体ウェハを格子状に分割した微小領域に対して、各領域に欠陥が分布しているか否かを入力する。このとき、欠陥が分布する領域には1、欠陥が分布しない領域には0を与える。入力された内容は、欠陥分布パターンを表す2値画像からなるテンプレートとして分類装置に記憶される。一方、半導体デバイスの検査結果については、上記微小領域に該当する領域に対して領域内の欠陥総数がある閾値を超えた場合は1、超えない場合は0が付与された2値画像データが作成され、作成された2値画像に対して膨張・縮小処理を施して欠陥が集中した領域を塊状に繋ぎ合わせる処理を行う。そして、上記テンプレートの欠陥分布パターンと半導体デバイスの検査結果を表す2値画像データとの間で画像マッチングが行われる。特許文献1の方法は欠陥分布パターンを担当者が決定するため、担当者の意図した欠陥分布を表現しやすく、分類結果を理解しやすいという利点がある。特許文献1では、半導体デバイスの分類結果が担当者の望む分類結果に対してどの程度正確であるかは、担当者が入力するテンプレートの内容、つまり欠陥分布パターンに依存する。しかしながら、人間は曖昧な欠陥分布であっても欠陥分布を分類することができるため、担当者は目的の欠陥分布を実際の欠陥分布よりも単純なパターンとして把握する傾向がある。また、欠陥分布は薄膜デバイス毎に少しずつ異なっているので、個々の薄膜デバイスの欠陥分布から担当者が実際の欠陥分布を正確に把握するのは困難である。
【0009】
そこで、例えば特許文献2(特開2003−59984号公報)の図9、図10等に記載されているように、人がテンプレートを与えずに、自動的にテンプレートを作成する手法も提案されている。特許文献2では、半導体ウェハを複数の部分領域に分割し、目的の欠陥分布パターンに該当する形状を表現するように部分領域を網羅的に組み合わせたテンプレートを作成する。しかしながら、特許文献2の手法では、このような手法でテンプレートとして生成できる欠陥分布パターンは環状の分布と塊状の分布に限定されている上に、生成されるテンプレート数が膨大になる。また、テンプレートは完全に自動的に生成されるので担当者の意図が入っておらず、分類結果を担当者が直感的に理解することが難しいという問題がある。
【特許文献1】特開平11−45919号公報
【特許文献2】特開2003−59984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明の課題は、人が設定したテンプレートを、実際の欠陥分布により正確に適合するように自動的に調整できるテンプレート調整方法および装置を提供することにある。
【0011】
また、この発明の課題は、そのように調整されたテンプレートを用いて基板の表面上の欠陥分布を自動的に分類する欠陥分布分類方法および装置を提供することにある。
【0012】
また、この発明の課題は、上記テンプレート調整方法または欠陥分布分類方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
【0013】
また、この発明の課題は、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、この発明のテンプレート調整方法は、
基板の表面上の欠陥分布を分類するために、分類の基準となる欠陥分布パターンの特徴が記述されたテンプレートを調整するテンプレート調整方法であって、
或る基板群の欠陥分布を分類するために設定されたテンプレートと、上記基板群の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類して得られたデータ群とを用意して、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を加えるとともに、上記データ群を用いて上記変更後のテンプレートの良否を評価する調整処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0015】
ここで「基板」とは、欠陥をもつ検査対象である薄膜デバイス、半導体ウェハなどを広く指す。
【0016】
この発明のテンプレート調整方法によれば、人が設定したテンプレートとデータ群とをコンピュータに入力して、上記調整処理をコンピュータに実行させることによって、上記テンプレートを実際の欠陥分布により正確に適合するように自動的に調整できる。しかも、元のテンプレートを人が設定することによって、調整処理後のテンプレートは、完全に自動的に生成されたものではなく、その人の意図を反映したものとなる。
【0017】
一実施形態のテンプレート調整方法では、
上記データ群は第1のデータ群と第2のデータ群を含み、
上記コンピュータは、上記調整処理として、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を施して新たなテンプレートを作成する第1ステップと、
上記変更後のテンプレートと上記第1のデータ群から分類の基準となるパラメータを導出する第2ステップと、
上記パラメータを用いて上記第2のデータ群を分類する第3ステップと、
上記第3ステップでの分類結果から上記第1ステップで作成した上記変更後のテンプレートの良否を評価する第4ステップと
を順次繰り返し行うことを特徴とする。
【0018】
この一実施形態のテンプレート調整方法によれば、良好に調整されたテンプレートが得られる。したがって、上記テンプレートを用いて基板の表面上の欠陥分布を分類することで、分類の正確さを高めることができる。
【0019】
この発明の欠陥分布分類方法は、上記発明のテンプレート調整方法によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かをコンピュータに分類させることを特徴とする。
【0020】
この発明の欠陥分布分類方法によれば、上記基板の表面上の欠陥分布を精度良く自動的に分類できる。
【0021】
別の局面では、この発明の欠陥分布分類方法は、上記一実施形態のテンプレート調整方法によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かをコンピュータに分類させる第5ステップを備え、
上記第3ステップでは計算量の少ない分類手法を用いる一方、上記第5ステップでは上記第3ステップよりも分類精度を向上させるように計算量が多い分類手法を用いることを特徴とする。
【0022】
この発明の欠陥分布分類方法によれば、上記基板の表面上の欠陥分布を精度良く自動的に分類できる。しかも、上記第3ステップでは計算量の少ない分類手法を用いるので、コンピュータの処理負荷を軽減することができる。
【0023】
この発明のテンプレート調整装置は、
基板の表面上の欠陥分布を分類するために、分類の基準となる欠陥分布パターンの特徴が記述されたテンプレートを調整するテンプレート調整装置であって、
或る基板群の欠陥分布を分類するために設定されたテンプレートと、上記基板群の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを人が分類して得られたデータ群とを入力する入力部と、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を加えるとともに、上記データ群を用いて上記変更後のテンプレートの良否を評価する調整処理部を備えたことを特徴とする。
【0024】
この発明のテンプレート調整装置によれば、入力部が上記テンプレートとデータ群とを入力して、上記調整処理部が、上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を加えるとともに、上記データ群を用いて上記変更後のテンプレートの良否を評価する。したがって、自動的にテンプレートを調整できる。
【0025】
一実施形態のテンプレート調整装置では、
上記データ群は第1のデータ群と第2のデータ群を含み、
上記調整処理部は、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を施して新たなテンプレートを作成する第1手段と、
上記変更後のテンプレートと上記第1のデータ群から分類の基準となるパラメータを導出する第2手段と、
上記パラメータを用いて上記第2のデータ群を分類する第3手段と、
上記第3手段での分類結果から上記第1手段で作成した上記変更後のテンプレートの良否を評価する第4手段と
を備え、上記第1乃至第4手段による処理を順次繰り返すようになっていることを特徴とする。
【0026】
この一実施形態のテンプレート調整装置によれば、良好に調整されたテンプレートが得られる。したがって、上記テンプレートを用いて基板の表面上の欠陥分布を分類することで、分類の正確さを高めることができる。
【0027】
この発明の欠陥分布分類装置は、
上記発明のテンプレート調整装置を含み、
上記テンプレート調整装置によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類する分類部を備えたことを特徴とする。
【0028】
この発明の欠陥分布分類装置によれば、上記基板の表面上の欠陥分布を精度良く分類できる。
【0029】
一実施形態のテンプレート調整方法は、上記コンピュータは、上記テンプレートを染色体に対応させて、上記第1乃至4ステップを実現するために遺伝的アルゴリズムを用いることを特徴とする。
【0030】
この一実施形態のテンプレート調整方法によれば、より効率良くテンプレートの調整を行うことができる。
【0031】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記遺伝的アルゴリズムは、上記テンプレートに対応する染色体をなす遺伝子に対して変更を施して新たな染色体を複数作成し、作成された複数の染色体を初期集団とすることを特徴とする。
【0032】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンの特徴は、基板の表面における1つまたは複数の部分領域を表すパラメータであることを特徴とする。
【0033】
このようなパラメータは、例えば上記各部分領域内の欠陥密度が互いに異なるような態様で、導出される。
【0034】
一実施形態のテンプレート調整方法は、
上記コンピュータは、遺伝的アルゴリズムを用いて上記第1乃至4ステップを実現するように、上記テンプレートを染色体に対応させるとともに、上記基板の表面を格子状に区切って設定された各小領域にそれぞれ上記染色体をなす遺伝子を対応させ、上記各遺伝子にそれぞれ、その遺伝子に対応する小領域が上記部分領域のいずれに属するかを表す値を持たせることを特徴とする。
【0035】
一実施形態のテンプレート調整方法では、二つの染色体の間の交叉は、上記基板の表面上に1つまたは複数の小領域を含む範囲を設定し、一方の染色体の上記範囲に対応する遺伝子の値と他方の染色体の上記範囲に対応する遺伝子の値とを、互いに対応付けて交換する操作で実現されることを特徴とする。
【0036】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記染色体の突然変異は、上記基板の表面上に設定された或る部分領域を、その部分領域内の或る小領域を定める境界の辺に沿って分割する操作で実現されることを特徴とする。
【0037】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記染色体の突然変異は、互いに異なる複数の部分領域を連結して1つの部分領域とする操作で実現されることを特徴とする。
【0038】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記染色体の突然変異は、上記基板の表面上の或る部分領域に属する或る小領域に対応する遺伝子の値と一致するように、その小領域の周辺の別の小領域に対応する遺伝子の値を変化させて、上記部分領域を拡張する操作で実現されることを特徴とする。
【0039】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記第1ステップにおいて上記テンプレートが変更される範囲を制限するように、上記テンプレートの変更可能範囲を上記コンピュータに入力することを特徴とする。
【0040】
この一実施形態のテンプレート調整方法によれば、人の認識を越えて上記テンプレートが変更されるのを制限することができる。
【0041】
一実施形態のテンプレート調整方法では、上記第3ステップでの分類結果および上記第4ステップでの上記変更後のテンプレートの良否の評価を上記コンピュータに表示させ、上記変更後のテンプレートの採否を上記コンピュータに入力することを特徴とする。
【0042】
この一実施形態のテンプレート調整方法によれば、人の認識を越えて上記テンプレートが変更されるのを制限することができる。
【0043】
一実施形態のテンプレート調整方法では、母集団の各染色体に対応するテンプレートによる上記第2のデータ群の分類結果を上記コンピュータに表示させ、どの染色体から新しい染色体を生成するかを上記コンピュータに入力することを特徴とする。
【0044】
この一実施形態のテンプレート調整方法によれば、人の認識を越えて上記テンプレートが変更されるのを制限することができる。
【0045】
一実施形態のテンプレート調整方法では、母集団の各染色体に対応するテンプレートによる上記第2のデータ群の分類結果を上記コンピュータに表示させ、各染色体を淘汰するか否かを上記コンピュータに入力することを特徴とする。
【0046】
この一実施形態のテンプレート調整方法によれば、人の認識を越えて上記テンプレートが変更されるのを制限することができる。
【0047】
この発明のテンプレート調整プログラムは、上記発明のテンプレート調整方法をコンピュータに実行させるためのテンプレート調整プログラムである。
【0048】
この発明の欠陥分布分類プログラムは、上記発明のテンプレート調整方法によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類する欠陥分布分類方法をコンピュータに実行させるための欠陥分布分類プログラムである。
【0049】
この発明の記録媒体は、上記テンプレート調整プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0050】
別の局面では、この発明の記録媒体は、上記欠陥分布分類プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0052】
図1は、本発明の一実施形態のテンプレート調整方法の概念を模式的に示している。このテンプレート調整方法は、基板としての薄膜デバイスの欠陥分布を分類するために用いられるテンプレートを調整するものである。
【0053】
本発明のテンプレート調整方法は、分類すべき欠陥分布の特徴について担当者が入力したテンプレート100と、図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した薄膜デバイスの欠陥分布についてテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するかどうかを担当者が分類して得られた第1のデータ群としてのサンプルデータ101と、同じく図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した薄膜デバイスの欠陥分布についてテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するかどうかを担当者が分類して得られた第2のデータ群としてのテストデータ102とを予め用意する。サンプルデータ101は、テンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するデータ群103と、それに該当しないデータ群104とを含む。テストデータ102も、テンプレート100に記述された欠陥分布に該当するデータ群105と、それに該当しないデータ群106とを含む。以下では、欠陥分布パターンに該当するデータ群を「該当データ」と呼び、欠陥分布パターンに該当しないデータ群を「非該当データ」と呼ぶ。
【0054】
ステップS101では、担当者が設定したテンプレート100に変更を施して、新たなテンプレート107を作成する。具体的な変更の方法はテンプレート100の内容によって様々な方法がありえるので、詳細は実施例として後述する。
【0055】
ステップS102では、新しく作成した(変更後の)テンプレート107とサンプルデータ101を用いて、サンプルデータ101を正確に分類する基準となるパラメータを導出する。
【0056】
このステップS102の処理について、図2を用いて具体的に説明する。
【0057】
図2中のステップS201では、サンプルデータ101内の個々の欠陥分布データ201と変更後のテンプレート107を用いて、欠陥データ201の特徴量ベクトル202を抽出する。特徴量ベクトルとは、該当データ103と非該当データ104を識別するために適当な値を欠陥分布から計算して得られた、1つまたは複数の要素からなるベクトルで表される。特徴量抽出処理S201および特徴量ベクトル202の内容は、分類すべき欠陥分布の形状およびサンプルデータ101に適した形で任意に設計され得る。
【0058】
ステップS202では、ステップS201によって取り出した各々の欠陥分布データ201の特徴量ベクトル202から、サンプルデータ101の該当データ103と非該当データ104をなるべく正確に分類できるように定めた境界線を表す識別関数を求める。
【0059】
識別関数について図3を用いて説明する。特徴量ベクトル202が「特徴量1」「特徴量2」の2成分を持つ2次元ベクトルで表され、図3中に示すように該当データ103の特徴量ベクトル(記号●で表す。)と非該当データ104の特徴量ベクトル(記号×で表す。)が2次元座標上に表されたとする。このとき、該当データ103と非該当データ104は、曲線301によって識別することができる。このように、該当データ103と非該当データ104の境界を表す関数を識別関数と言う。ステップS202によって得られた識別関数およびそれに関連する値を、ここでは「パラメータ」(符号203で表す。)と呼ぶ。
【0060】
図1中のステップS103では、ステップS102で導出したパラメータ203を用いて、テストデータ102を分類する。ステップS102と同様の特徴量抽出処理S201でテストデータに含まれる各データの特徴量ベクトル202を導出し、得られた特徴量ベクトル202に対してパラメータ203内に記述される識別関数を適用することで分類が実施される。
【0061】
ステップS103の分類処理について、図4を用いて説明する。曲線301は、パラメータ203で表される識別関数である。テストデータ102に含まれた或る欠陥分布データから特徴量ベクトル401および402が得られたとする。ここで、特徴量ベクトル401は識別関数301の上側に存在するので「該当データ」に分類され、特徴量ベクトル402は識別関数301の下側に存在するので「非該当データ」に分類される。
【0062】
なお、ステップS202の識別関数の導出およびステップS103の分類については、パターン認識の分野でk−NN法やニューラルネットワークによる識別法など様々な手法が提案されている。本発明ではいずれの手法を用いてもよいので、詳しい説明は省略する。
【0063】
図1中のステップS104では、ステップS103での分類結果から、変更後のテンプレート107の良否を評価する。テストデータ102に含まれるデータは、予め担当者によってテンプレート100に記述された欠陥分布パターンを用いて該当データ105と非該当データ106とに分類されている。従って、図4の特徴量ベクトル401の抽出元であるテストデータが該当データ105に含まれている場合は正確に分類されており、非該当データ106に含まれている場合は誤って分類されていると判断できる。したがって、変更後のテンプレート107から導出された識別関数301がどの程度正確にテストデータ102を分類するかを評価できる。このようにしてテストデータ102に含まれるデータのうち正しく分類された割合を計算することで、テンプレート107を用いて分類した場合の分類精度を評価することができる。
【0064】
ステップS105では、変更後のテンプレート107での分類精度と変更前のテンプレート100の分類精度とを比較する。図示していないが、1回目の変更の比較を行う際には、ステップS105での処理を行う前に、担当者が入力したテンプレート100に対してステップS102〜S104の処理を行って分類精度を算出しておく。
【0065】
変更後のテンプレート107が変更前のテンプレート100よりも分類精度が良かった場合、ステップS106によって変更後のテンプレート107が暫定的なテンプレートとして採用される。
【0066】
変更後のテンプレート107が変更前のテンプレート100よりも分類精度が悪かった場合、ステップS107によって変更後のテンプレート107は棄却され、変更前のテンプレート100が暫定的なテンプレートとして採用される。
【0067】
以上の処理を、ステップS108で所定の終了条件が満たされると判断されるまで繰り返し行うことで、調整後のテンプレート108を得ることができる。所定の終了条件とは、予め定められた回数だけ繰り返しを行ったか、あるいは、テンプレートの評価値が目標の値まで向上したかどうか、などが上げられる。調整後のテンプレート108は担当者が入力したテンプレート100、即ち担当者が認識している欠陥分布の特徴に対して、テストデータ102の分類精度を向上させるように変更を施して調整されたものである。従って、S101におけるテンプレートの変更の程度およびS108における終了条件を適切に設定することにより、担当者にとって容易に理解でき、且つ分類精度の高いテンプレートを作成することができる。
【0068】
図5に本発明によるテンプレート調整装置500の構成を示す。このテンプレート調整装置500は、入力部としてのデータ入力部502、テンプレート変更部506、パラメータ導出部507、テンプレート評価部508、評価結果比較部509、特徴量抽出部513、終了条件判定部510、テンプレート出力部511、サンプルデータ記憶部503、テストデータ記憶部504、および暫定テンプレート記憶部505で構成されている。テンプレート変更部506、パラメータ導出部507、テンプレート評価部508、評価結果比較部509および特徴量抽出部513が調整処理部520を構成している。このテンプレート調整装置500のデータ入力部502、テンプレート出力部511に対して、それぞれ入力装置501、出力装置512が接続されている。
【0069】
入力装置501は、例えばキーボードやマウスなどで構成される。この例では、入力装置501は、テンプレート調整装置500に対して、担当者が設定したテンプレート100の内容を表す情報を入力したり、図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した薄膜デバイスの欠陥分布についてテンプレート100で記述される欠陥分布パターンに該当するかどうかを担当者が分類して得られた第1のデータ群としてのサンプルデータ101、および同じく図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した薄膜デバイスの欠陥分布についてテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するかどうかを担当者が判断して得られた第2のデータ群としてのテストデータ102を入力するために用いられる。
【0070】
データ入力部502は、入力装置501からテンプレート調整装置500に送信された各種の情報を受け取って適切に振り分けるために働く。これにより、サンプルデータ101はサンプルデータ記憶部503に記憶され、テストデータ102はテストデータ記憶部504に記憶される。また、テンプレート100の内容を表す情報はパラメータ導出部507に渡される。
【0071】
サンプルデータ記憶部503は、入力装置501から入力されたサンプルデータ101、即ち各薄膜デバイスの欠陥分布の情報と、その薄膜デバイスがテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを表す情報とを組にして記憶する。
【0072】
テストデータ記憶部504は、入力装置501から入力されたテストデータ102、即ち各薄膜デバイスの欠陥分布の情報と、その薄膜デバイスがテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを表す情報とを組にして記憶する。
【0073】
暫定テンプレート記憶部505は、図1の処理においてその時点で採用されている暫定的なテンプレート(この例では、テンプレート107とする。)の内容を表す情報と、そのテンプレート107の評価値とを組にして記憶する。また、必要があれば、それらの情報と組にして、ステップS102で導出したパラメータ203などの、テンプレート107に関連するその他の情報を記憶しても良い。
【0074】
テンプレート変更部506は、暫定テンプレート記憶部505に記憶されたテンプレートの情報を取り出してステップS101の処理を行って新しいテンプレート107を作成し、パラメータ導出部507にテンプレート107を渡す。
【0075】
パラメータ導出部507は、テンプレート変更部506からテンプレート107を受け取り、サンプルデータ記憶部503からサンプルデータ101の情報を取り出す。これらの情報からステップS109の処理を行ってパラメータ203を導出し、テンプレート評価部508にテンプレート107と導出したパラメータ205を渡す。
【0076】
テンプレート評価部508は、パラメータ導出部507からテンプレート107と導出したパラメータ203を受け取り、テストデータ記憶部504からテストデータ102の情報を取り出す。これらの情報から、ステップS103の処理を行ってテストデータ102を分類し、更にステップS104の処理を行ってテンプレート107を評価して、テンプレート107とその評価値を評価結果比較部509に渡す。
【0077】
評価結果比較部509は、暫定テンプレート記憶部505から取り出した暫定テンプレートの評価値と、テンプレート評価部508から受け取ったテンプレート107の評価値に対してステップS105の比較処理を行う。テンプレート107の評価値の方が高かった場合、評価結果比較部509は暫定テンプレート記憶部505に記憶されているテンプレート情報と評価値をテンプレート107の内容を表す情報と評価値に置き換えるステップS106の処理を行う。テンプレート107の評価値の方が低かった場合には、テンプレート107に関する情報を破棄するステップS107の処理を行う。
【0078】
終了条件判定部510は、調整処理部520による一連の処理が終了する毎にステップS108の処理に従って終了条件が満たされたかどうかを判定し、終了条件が満たされていなければテンプレート変更部506を呼び出す。終了条件が満たされていればテンプレート出力部511を呼び出す。
【0079】
テンプレート出力部511は、調整処理部520による一連の処理が終了して終了条件が満たされた時点で、暫定テンプレート記憶部505に記憶されたテンプレート107(正確には、その内容を表す情報を指す。以下同様。)を調整後のテンプレート108として取り出し、テンプレート調整装置500に接続された出力装置512に対して送信する。
【0080】
出力装置512は、モニタや紙出力、あるいは磁気ディスクや携帯用半導体メモリなどを通して調整後のテンプレート108の結果を出力する。
【0081】
なお、入力装置501から入力されたテンプレート100は、前で説明したようにパラメータ導出部507に渡されて一連の処理が実行される。このとき、評価結果比較部509は、暫定テンプレート記憶部505の内容が空白であるので、テンプレート100の情報と評価値を暫定テンプレート記憶部505に記憶することで、後の処理を行うことができる。
【0082】
また、パラメータ導出部507およびテンプレート評価部508の処理では、テンプレート107に従ってサンプルデータ101またはテストデータ102から特徴量を抽出する共通の処理が存在する。そこで、図5の構成では、この処理をパラメータ導出部507およびテンプレート評価部508から切り離して特徴量抽出部513として構成し、パラメータ導出部507およびテンプレート評価部508から特徴量抽出部513を呼び出すようにしている。ただし、特徴量抽出処理は、パラメータ導出部507およびテンプレート評価部508の内部で行っても良い。
【0083】
また、入力装置501と出力装置512は同一の装置、例えば出力装置としての表示部に入力装置としてのペン入力タブレット部を重ねて一体に構成した装置としても良い。また、入力装置501と出力装置512は、テンプレート調整装置500内に含まれていても良い。
【0084】
また、テンプレート出力部511はステップS102でテンプレート108から導出したパラメータなどの情報をテンプレート108と共に出力装置512に送信し、出力装置512は送られたそれらの情報を出力しても良い。
【0085】
以上に述べたように、このテンプレート調整装置500によれば、上述のテンプレート調整方法を実施することができる。
【0086】
次に、上記テンプレート調整方法によって得られた調整後のテンプレート108を用いて、製造工程において薄膜デバイスに発生した欠陥分布を分類する欠陥分布分類方法について説明する。図6にその欠陥分布分類方法の概念を模式的に示す。
【0087】
この欠陥分布分類方法では、まず、担当者が入力したテンプレート100の内容を表す情報と、図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した薄膜デバイスの欠陥分布データ601と、同じく図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した薄膜デバイスの欠陥分布についてテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを担当者が分類して得られたデータ群としてのサンプルデータ602とを予め用意する。サンプルデータ602は、テンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するデータ群である該当データ603とそれに該当しないデータ群である非該当データ604とを含む。なお、サンプルデータ602は、サンプルデータ101と同一である必要はない。サンプルデータ101とサンプルデータ602の違いについては後述する。
【0088】
担当者が入力したテンプレート100は、図1中の一連のステップS101〜S108を含むテンプレート調整ステップS601によって調整される。これにより、調整後のテンプレート108を得る。
【0089】
ステップS602では、調整後のテンプレート108およびサンプルデータ602を用いてパラメータの導出処理を行う。ステップS602における導出処理の概念はステップS102における導出処理と同様であるが、導出に用いるアルゴリズムは異なっていても良い。ステップS102とステップS602の導出処理の違いについては後述する。
【0090】
ステップS602によって得られたパラメータ605で記述された識別関数を用いて、図示しない薄膜デバイス検査装置から取得した欠陥分布データ601に対する分類処理S603を行い、分類結果606を得る。なお、パラメータ605はテンプレート作成時に一度計算すればよく、次回欠陥分布データ601の分類を行う際には最初に欠陥分布データを分類した際に計算したパラメータ605を再利用できる。
【0091】
ステップS102におけるパラメータの導出処理とステップS602におけるパラメータの導出処理の違いについて説明する。上で説明したように、ステップS102とステップS602の導出処理は双方とも図2に示した概念で行われるが、ステップS202で用いる導出アルゴリズムは互いに異なっていても良い。これは、以下の理由による。ステップS102は、テンプレートを調整する都度繰り返して実行される。一方、ステップS602は、最初に欠陥分布データ601を分類するまでに一度実行すればよい。また、ステップS102でのパラメータの導出はテンプレートの調整が目的であるので得られる識別関数によるテストデータ102の識別精度はそれほど高くなくても良いが、ステップS602でのパラメータの導出は欠陥分布データ601の分類が目的であり、得られる識別関数は高精度で欠陥分布データ601を分類できる必要がある。以上の目的の違いと実際の計算機での処理負荷を考慮すると、ステップS102では例えばk−NN法など得られる識別関数の精度はそれほど良くないが計算量が少ないアルゴリズムを用いてテンプレートの調整を行う一方、ステップS602では得られたテンプレート108に対して例えばニューラルネットワークによる識別法など計算量が多いアルゴリズムを用いてより精度の高い識別関数を導出することが、効率が良い。サンプルデータ101とサンプルデータ602を比較すると、同様の理由でサンプルデータ101はサンプルデータ602と比べてデータ数を少なくすることが、効率が良い。ただし、サンプルデータ101とサンプルデータ602の欠陥分布の傾向が異なると、調整されたテンプレート108がサンプルデータ602には適していない場合があるので、二つのサンプルデータの欠陥分布は互いに同じ傾向を持つ必要がある。なお、ステップS201の特徴量抽出処理は、ステップS102とステップS602で同一である。
【0092】
もし、計算機の性能や処理時間に十分余裕がある場合には、ステップS102とS602の識別アルゴリズム、およびサンプルデータ101とサンプルデータ602に同一のものを使用しても良い。この場合、ステップS602におけるパラメータの導出処理は省略でき、ステップS102で得られたパラメータ203をパラメータ605として取り扱って欠陥データの分類処理S603を行えばよい。
【0093】
次に、上記欠陥分布分類方法を実施する欠陥分布分類装置700の構成を図7に示す。この欠陥分布分類装置700は、入力部としてのデータ入力部703、テンプレート調整部704、パラメータ導出部705、パラメータ記憶部706、分類部としてのデータ分類部708、データ出力部709、データ通信部707、サンプルデータ記憶部703で構成されている。この欠陥分布分類装置700のデータ入力部703、データ出力部709、データ通信部707に対して、それぞれ入力装置501、出力装置512、検査装置710が接続されている。
【0094】
入力装置701は、例えばキーボードやマウスなどで構成される。この例では、入力装置701は、欠陥分布分類装置700に対して、担当者が設定したテンプレート100の内容を表す情報を入力したり、薄膜デバイス検査装置710から取得した薄膜デバイスの欠陥分布についてテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するかどうかを担当者が分類して得られた第1のデータ群としてのサンプルデータ101、第2のデータ群としてのテストデータ102、および第3のデータ群としてのサンプルデータ603を入力するために用いられる。
【0095】
データ入力部702は、入力装置701から欠陥分布分類装置700に送信された各種の情報を受け取って適切に振り分けるために働く。これにより、サンプルデータ602はサンプルデータ記憶部703に記憶され、その他の情報はテンプレート調整部705に渡される。
【0096】
サンプルデータ記憶部703は、入力装置701から入力されたサンプルデータ、即ち各薄膜デバイスの欠陥分布の情報と、その薄膜デバイスがテンプレート100に記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを表す情報とを組にして記憶する。
【0097】
テンプレート調整部704は、入力装置701から入力されたテンプレート100の内容を表す情報、サンプルデータ101、およびテストデータ102を受け取って調整してテンプレート108を作成し、調整後のテンプレート108をパラメータ導出部705に渡す。テンプレート調整部704の内部構成はテンプレート調整装置500と同様である。
【0098】
パラメータ導出部705は、テンプレート調整部704から調整後のテンプレート108を受け取り、サンプルデータ記憶部703からサンプルデータ603の情報を取り出す。これらの情報からステップS607の処理を行ってパラメータ608を導出し、パラメータ記憶部706に記憶させる。
【0099】
データ通信部707は、薄膜デバイス検査装置710から分類すべき欠陥分布データ711を受け取って、データ分類部708に渡す。
【0100】
データ分類部708は、データ通信部707から欠陥分布データ711を受け取ると、パラメータ記憶部706からパラメータ605に記述された識別関数を取り出し、その識別関数を用いて欠陥分布データ711についての分類処理を行う。得られた分類結果は、欠陥分布データ711と共にデータ出力部709に送られる。
【0101】
データ出力部709は、欠陥分布データ711とその分類結果を出力装置712に送信する。
【0102】
出力装置712は、液晶ディスプレイなどの表示機器や紙出力、あるいは磁気ディスクや携帯用半導体メモリなどを通して欠陥分布データ711の分類結果を出力する。
【0103】
上記の通り、テンプレート調整部704の構成はテンプレート調整装置500と同様である。従って、図8に示すように、テンプレート調整部704をテンプレート調整装置500として欠陥分布分類装置700とは別に構成することも可能である。この図8に示す構成では、入力装置701はテンプレート調整装置500から調整後のテンプレート108を受け取って、調整後のテンプレート108およびサンプルデータ602を欠陥分布分類装置700に対して送信する。データ入力部703は、テンプレート108をパラメータ導出部705に渡す。
【0104】
以上に述べたように、この欠陥分布分類装置700によれば、上述の欠陥分布分類方法を実施することができる。
【0105】
なお、本発明のテンプレート調整方法および欠陥分布分類方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして構築しても良い。
【0106】
また、そのようなプログラムをCD−ROMなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して配布できるようにしても良い。上記プログラムを汎用コンピュータにインストールすることで、汎用コンピュータによって上記テンプレート調整方法及び欠陥分布分類方法を実行することが可能である。
【実施例1】
【0107】
次に、実施例1として、基板としてのウェハの表面上の欠陥分布を分類するために、分類の基準となるテンプレートを調整するテンプレート調整方法について具体的に説明する。この実施例1では、欠陥分布の特徴および特徴量は、欠陥分布を判断するためにウェハ上で注目すべき任意の1つまたは複数の部分領域と、それぞれの部分領域の欠陥数の傾向で表すものとする。
【0108】
図9に、実施例1のテンプレート調整方法の手順を模式的に示す。担当者は、分類すべき欠陥形状の特徴を記述するテンプレート900と、図示しないウェハ検査装置から取得したウェハの欠陥分布についてテンプレート900に記述された欠陥分布パターンに該当するかどうかを担当者が分類して得られたサンプルデータ901と、同じく図示しないウェハ検査装置から取得したウェハの欠陥分布についてテンプレート900に記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを担当者が分類して得られたテストデータ902とを予め用意する。この例では、テンプレート900には、ウェハの周辺に対応する領域に、欠陥分布を判断するために注目すべき2つの部分領域903,904が設定されている。サンプルデータ901およびテストデータ902における図示しないウェハ検査装置から取得したウェハの欠陥分布とは、各ウェハで検出された欠陥905の少なくとも座標に関する情報を含む情報である。担当者は、サンプルデータ901に含まれるウェハの欠陥分布に関して、部分領域903周辺に欠陥が集中しているウェハを該当データ906、部分領域903周辺に欠陥が集中していないウェハを非該当データ907として分類する。テストデータ902も、サンプルデータ901と同様に、該当データ908と非該当データ909に分類する。
【0109】
このように設定されたテンプレート900、サンプルデータ901およびテストデータ902に対して、図1中に示したのと同様の処理手順に従ってテンプレートの調整を行う。
【0110】
まず、ステップS101では、テンプレート900の変更処理を行う。ここでの変更とは、任意の部分領域の拡大縮小、部分領域の分割処理などである。図中では、テンプレート900の部分領域903が部分領域911および部分領域912に分割されて、新たなテンプレート910が作成されている。ステップS101においてテンプレート900に対して与える変更は、ランダムに選択しても良いし、例えば全欠陥の重心方向に拡大するなど、欠陥の分布情報から選択しても良い。
【0111】
次に、ステップS102で、新しく作成した(変更後の)テンプレート910とサンプルデータ901を用いて、サンプルデータ901を正確に分類する基準となるパラメータの導出を行う。実施例1における特徴量抽出処理S201を以下に説明する。テンプレート910がr個の部分領域{R1,…,Rr}で定義されているとする。このとき、欠陥分布データiの総欠陥数をD、テンプレート910の部分領域Rkに対応する領域に存在する欠陥数をDkとしたとき、特徴量ベクトルFiを次の(数1)のように定める。
【数1】
【0112】
特徴量ベクトルFiの計算方法について、図10の例で説明する。サンプルデータ901に含まれる欠陥分布データ1001において、部分領域1002はテンプレート910の部分領域903に、部分領域1003はテンプレート910の部分領域912に、部分領域1004はテンプレート910の部分領域904にそれぞれ対応する。図10より、欠陥分布データ1001の総欠陥数は15、部分領域1002に含まれる欠陥数は6、部分領域1003に含まれる欠陥数は0、部分領域1004に含まれる欠陥数は9であるので、この欠陥分布データ1001から抽出される特徴量ベクトルは(6/15,0/15,9/15)となる。サンプルデータ901に含まれる全ての欠陥分布データについて特徴量ベクトルを求めた後、識別関数導出処理S202でパラメータ203を導出する。
【0113】
次にステップS103でテストデータ902の分類を行う。ここで、テストデータ902に含まれる欠陥分布データからの特徴量ベクトルは、ステップS102と同様に(数1)により求める。
【0114】
次にステップS104でテンプレート910を評価する。テストデータ902のうち該当データ908に含まれるデータ数をNp、非該当データ909に含まれるテストデータの数Nnとし、該当データ908に含まれるデータのうちテンプレート910から導出された識別関数で正確に分類されたデータの数をNtp、非該当データ909に含まれるデータのうち正確に分類されたデータの数をNtnとすると、変更後のテンプレート910の評価値Eは例えば次の(数2)のように定義される。
【数2】
【0115】
この(数2)において、aおよびbは該当データ608の識別と非該当データ609の識別のどちらをより重視するかを調整する変数である。a>bであれば該当データの識別がより重視され、a<bであれば非該当データの識別がより重視される。
【0116】
この後、ステップS105からS108の処理を行うことでテンプレート900の調整を行い、調整後のテンプレート913を得ることができる。
【0117】
この実施例1では、基板としてのウェハの表面上の欠陥分布を判断するために、ウェハ上で注目すべき2つの複数の部分領域をテンプレートとして設定し、それぞれの部分領域の欠陥数の傾向を特徴量としたが、本発明はこのテンプレートおよび特徴量に限定されるものではない。例えば、テンプレートとして記述する欠陥分布の特徴を関数として表し、関数の係数を調整してもよい。
【実施例2】
【0118】
次に、実施例2として、欠陥分布の特徴に対する担当者の認識をよりテンプレート100に反映させるため、テンプレート100が変更される範囲を制限する方法について説明する。
【0119】
テンプレート100の変更範囲を制限する第1の方法は、テンプレート100作成時にテンプレートの変更可能範囲を含めてテンプレート100として設定しておき、ステップS101におけるテンプレートの変更ではその範囲内での変更のみ許可する方法である。
【0120】
例えば実施例1で説明した図9のテンプレート900について、図11Aに示すように、部分領域903上に、担当者が必ず単一の部分領域として確保したい制限領域1101を設定する。このとき、ステップS101において、図11Bに示すように制限領域1101を分割しない範囲で部分領域903を複数の部分領域1102,1103,1104に分割する変更(制限領域1101を部分領域1103が包含する)や、図11Cに示すように制限領域1101をすべて含むように部分領域903を拡大(部分領域1105に)する変更は許される。しかし、図11Dに示すように部分領域1106,1107を設けて制限領域1101を分割するような変更や、図11Eに示すように制限領域1101の一部を含まなくなるように部分領域903を縮小(部分領域1108に)する変更は許可されない。
【0121】
テンプレート100の変更範囲を制限する第2の方法は、変更後のテンプレート107の評価が変更前のテンプレートの評価よりも良かった場合、実際にその変更を暫定的なテンプレートに反映するかどうかの判断を担当者に委ねる方法である。図12は、図1の方法を基本としてそのような方法を採用した例を示している。ステップS105において、変更後のテンプレート107が変更前のテンプレートよりも評価が良かった場合、ステップS1201で担当者に対して変更後のテンプレートおよび評価値を提示する。ステップS1202で担当者はそれらから実際に変更を行うかどうか確認し、変更を了承した場合はステップS106によって変更が採用される。一方、担当者が変更を了承しなかった場合は、ステップS107にて変更前のテンプレートよりも評価が低かったときと同様に、変更後のテンプレート107は棄却され、変更前のテンプレートが採用される。
【0122】
図13は、この第2の方法を実施できるように図5の装置を変更してなるテンプレート調整装置の構成を示している。なお、この図13では図5から変更のない部分については省略している。評価結果比較部509にて変更後のテンプレート107が変更前のテンプレートよりも評価が良いと判断されると、テンプレート調整装置1300は、テンプレート出力部511を介して変更後のテンプレート107およびその評価値を出力装置512に送る。出力装置512は、液晶ディスプレイなどの表示機器によって変更後のテンプレート107およびその評価値を担当者に提示する。担当者は、テンプレート107の内容を確認した上で、変更後のテンプレート107を了承するかどうかを入力装置501に入力する。入力された内容はデータ入力部502を介して評価結果比較部509に送られて、テンプレート107を採用するかどうかが決定される。
【0123】
以上、2つの方法によって、テンプレートに対する変更可能範囲を制限して、欠陥分布の特徴に対する担当者の認識をより反映した調整を行うことができる。
【実施例3】
【0124】
次に、実施例3として、図1に示したテンプレート調整方法を遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm:GA)を用いて実現する方法について説明する。
【0125】
GAとは生物の進化過程を模して作られた、確率的探索手法の1つである。GAの基本的な処理の流れを図14に示す。GAでは問題の解(ここではテンプレート)は染色体と呼ばれる数字列で表現される。問題の解を染色体として表現する手法を決定することをコーディングと呼ぶ。
【0126】
ステップS1401はアルゴリズム開始時に複数の染色体をランダムに生成する。ステップS1401で生成され、以後の処理の母集団となる染色体群を初期集団と呼ぶ。
【0127】
ステップS1402では、母集団の各染色体が表現する解が目的の問題の解をどの程度満足するのかが評価される。この評価値を適応度と呼ぶ。
【0128】
ステップS1403は、アルゴリズムの終了条件の評価を行う。ステップS1403において、予め定めた終了条件を満たしていればアルゴリズムは終了となり、終了条件を満たしていない場合は以後の処理が実施される。
【0129】
ステップS1404では、母集団の中から適応度によって決定される確率で2つの染色体を選び出す。この操作を選択と呼ぶ。
【0130】
ステップS1405では、ステップS1404で選択された2つの染色体の一部を入れ換えて新たな2つの染色体を生成する。この操作を交叉と呼ぶ。
【0131】
ステップS1406では、ステップS1405で生成された染色体に対して、ある定められた確率で値を変化させる。この操作を突然変異と呼ぶ。
【0132】
ステップS1404からステップS1406の操作は遺伝的操作と呼ばれる。
【0133】
ステップS1407では、上記遺伝的操作を繰り返して所定の個体数を生成したかどうかを判断し、所定の個体数に達していない場合は遺伝的操作を繰り返して新たな染色体を生成する。所定の個体数に達していた場合、ステップS1408で母集団の染色体と新たな染色体を入れ換えて世代交代を行う。
【0134】
GAでは、以上の処理を繰り返すことで、染色体を遺伝的に変化させながらより良い解に近づけていくことができる。本発明では、上記の処理を図1に示した方法の各々のステップに対応させることでより効率よくテンプレートの調整を行う。
【0135】
次に、実施例1で説明した手順にGAを適用して本発明を実現する方法の例を説明する。
【0136】
図15に、分類すべき欠陥形状の特徴を記述するテンプレート1500をコーディングする仕方を模式的に示す。図15上段に示すように、テンプレート1500には、ウェハの周辺に対応する領域に、2つの部分領域1501,1502が設定されている。符号1503は、ウェハ内で部分領域1501,1502が設定されていない残りの領域を示している。このテンプレートのコーディングに際しては、まず図15中段に示すように、テンプレート1500の部分領域別のマップを作成する。このとき、ウェハ内で部分領域1501,1502が設定されていない残りの領域1503も1つの部分領域として考えてマップを作成する。すなわち、テンプレート1500では、ウェハ内の領域1501,1502,1503のそれぞれに対応した部分領域マップ1504,1505,1506を作成する。更に、図15下段に示すように、それぞれの部分領域マップを格子状の小領域に分割する。そして、これら小領域のそれぞれを染色体(これを染色体Aと呼ぶ。)の遺伝子に対応させて、それぞれの部分領域マップについてテンプレート1500で設定された部分領域に該当する遺伝子の値を1、該当しない遺伝子の値を0とし、ウェハの範囲外に存在する遺伝子の値を−1とする。これにより、テンプレート1500を(部分領域数×格子の縦方向の数×格子の横方向の数)次元の配列としてコーディングできる。即ち、テンプレートは、テンプレート上の部分領域の数をr、ウェハを分割する格子の縦方向の数をh、横方向の数をνとすると、染色体Aは次の(数3)を満たす(r×h×ν)の3次元配列構造をもつ数字列として表される。
【数3】
【0137】
ここで、gi,j,kは染色体Aにおいてi番目の部分領域の小領域(j,k)を表す遺伝子である。
【0138】
次に、図16を用いて、上述の初期集団の生成(図14中のステップS1401)について具体的に説明する。本発明は担当者が入力したテンプレート100の調整を目的としているため、初期集団を全くのランダムで作成するのではなくテンプレート100から生成する。まず、図16中のステップS1601では、担当者が入力したテンプレート900を(数3)で表される染色体にコーディングする。次に、ステップS1602では、この染色体に対して後に詳細を説明する突然変異を適用して、テンプレートに変更を施す。これらのステップが予め定められた初期集団の個体数に達するまで繰り返し(ステップS1603)、初期集団1604を生成する。
【0139】
次に、上述の染色体の評価方法(図14中のステップS1402)を具体的に説明する。母集団に含まれる個々の染色体の適応度は、図1におけるステップS102〜S104の手順でその染色体が表現するテンプレートを用いてテストデータを分類したときの分類精度とする。即ち、染色体mの適応度Fitnessmを、(数2)を用いて次の(数4)のように表す。
【数4】
【0140】
これにより、母集団中の染色体を、その適応度に従って順位付けすることができる。
【0141】
次に、上述の終了条件の評価(図14中のステップS1403)について具体的に説明する。GAでは、終了条件として様々な条件を定めることができる。本発明の終了条件としては、規定回数の世代交代が終了したかどうかといった条件や、母集団中の染色体が全て同じ値となったかどうかといった条件、最も適応度の高い染色体の分類精度が目標精度に達したかどうかなどが考えられる。いずれの終了条件を設定しても良く、複数の条件を組み合わせてもよい。
【0142】
次に、上述の選択の方法(図14中のステップS1404)について具体的に説明する。まず、各染色体に対して適応度に従った選択確率を設定する。選択確率の設定方法としては様々な手法が提案されており、いずれを採用しても良い。例えば、各染色体の選択確率として適応度の値に比例した確率を与える方法を採用する。そして、設定された選択確率に従って、母集団から2つの染色体を選択する。
【0143】
次に、上述の交叉の方法(図14中のステップS1405)について説明する。交叉の操作は染色体の構造や問題の性質によって異なる。この例では、交叉は、上述のステップS1404で選択された二つの染色体のうち、一方の染色体の或る範囲に対応する遺伝子の値と他方の染色体のその範囲に対応する遺伝子の値とを、互いに対応付けて交換することによって行う。
【0144】
例えば図15中に示した染色体Aと、図17下段に示す染色体Bとが、上述のステップS1404で選択されたものとする。図17上段に示すテンプレート1700には、注目しない部分領域1704も含めて4つの部分領域1701,1702,1703,1704が設定されている。これにより、図17下段に示すように、染色体Bは(4×h×ν)の配列で表現されている。染色体Aの次元数は(3×h×ν)であり、染色体Bの次元数は(4×h×ν)であるから、染色体Aの方が染色体Bよりも次元数が少ない例である。
【0145】
図18は、二つの染色体A,Bが選択された場合における交叉の手順を例示している。交叉のために二つの染色体A,Bが選択されると、まず、両者の配列の次元を揃えるため、配列が少ない方の染色体Aに対して、図18最上段の右端に示すように、ウェハの範囲内の遺伝子が全て0に設定された配列(「部分領域4」に対応)1801を追加して次元数を(4×h×ν)に揃える。次に、ウェハ上の(h×ν)の領域から、交叉の対象となる範囲をランダムに選択し、部分領域を表す各々の配列についてその範囲を設定する。図18の例では、交叉の対象となる範囲1802が、染色体Aおよび染色体Bのそれぞれの4つの部分領域について設定されている。最後に、一方の染色体Aの範囲1802に対応する遺伝子の値と他方の染色体Bの範囲1802に対応する遺伝子の値とを、互いに対応付けて交換する。なお、この操作の結果、ウェハ範囲内の遺伝子の値が全て0の部分領域を表す配列が作成された場合、その部分領域を表す配列は削除する。この交叉の手順を経て、図18の下半分に示すように染色体A’と染色体B’が生成される。なお、より効率の良い交叉を行うために、それぞれの部分領域を面積や位置で並び替えてから交叉させても良い。
【0146】
次に、上述の突然変異(図14中のステップS1406)について説明する。突然変異の操作は、交叉によって生成された遺伝子に対して或る確率で行われるが、交叉の操作と同様に染色体の構造や問題の性質によって実現方法が異なる。ここでは、突然変異の操作として、部分領域の拡張、部分領域の分割、および部分領域の結合の3種類を行う。
【0147】
部分領域の拡張は、ウェハ上の範囲内の或る部分領域に属する或る小領域をランダムに選択し、その小領域に対応する遺伝子の値と一致するように、各部分領域でその小領域の周辺の別の小領域に対応する遺伝子の値を変化させる(コピーする)操作である。例えば図19の上段左に示すように、或る小領域1901が選択されたとする。コピー数がn=4と設定されている場合、図19の上段右に示すように、小領域1901の遺伝子の値を、その上下左右に隣接する小領域の遺伝子の値としてコピーする。ただし、隣接する小領域がウェハの範囲外であるとき、即ち遺伝子の値が−1であるときは、コピーしない。コピー数がn=8と設定されている場合、図19の下段右に示すように、n=4の場合に加えて、小領域1901の遺伝子の値を、斜め方向に隣接する小領域の遺伝子の値としてもコピーする。nの値は、4、8、またはそれ以外の値のいずれでもよく、ウェハ上の格子の解像度などを考慮して決定する。図20に、上述の染色体A’に対してコピー数がn=4として拡張を行った例を示す。ウェハ上の領域2001が選択されると、各部分領域で領域2001に該当する遺伝子の値が、上下左右に隣接する小領域の遺伝子の値としてコピーされる。この例では、部分領域1および部分領域4は該当位置の遺伝子と4近傍の遺伝子が同じ値なので変化しないが、部分領域2は該当位置の上と左の遺伝子の値が変化して部分領域が大きくなっており、部分領域3は該当位置の上と左の遺伝子の値が変化して部分領域が小さくなっている。
【0148】
部分領域の分割は、或る部分領域の或る小領域をランダムに選択し、その部分領域を、その小領域を定める境界の辺に沿って分割する操作である。例えば図21の上段左に示すように、或る小領域2101が選択されたとする。このとき、その小領域2101に対してそれぞれ右上部分I、左上部分II、左下部分III、右下部分IVを分割する4通りの分割パターンから1つがランダムに選択される。そして、図21の右半分に示すように、その小領域2101が属する部分領域が、分割パターン毎にそれぞれ2つに分割される。図22は、染色体A’の部分領域2について小領域2201が選択され、図21中に示す分割パターンIIIで分割が行われた態様を示している。この結果、染色体A’の部分領域数は5に増加する。
【0149】
部分領域の結合は、染色体で表現された互いに異なる複数の部分領域を連結して1つの部分領域とする操作である。図23は、図18中に示した染色体A’の部分領域2と部分領域4との結合の様子を例示している。部分領域2,4の結合処理によって、染色体A’の部分領域の数は4から3に減少する。
【0150】
上記3つの突然変異は、単一の染色体に対して複数回実施しても良い。
【0151】
既述のように、ステップS1404からステップS1406の遺伝的操作を所定の数の染色体が生成されるまで繰り返し(ステップS1407)、母集団の染色体と入れ換えることで新しい世代の母集団を生成する(ステップS1408)。染色体を入れ換える手法はいくつか提案されており本発明ではいずれを用いても良い。例えば、前の世代の母集団で適応度の良い染色体を一定数残し、残りの染色体を新しい世代と入れ換えても良い。
【0152】
このようにして、図1に示したテンプレート調整方法を遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて実現することができる。これにより、担当者の入力したテンプレートに対してより効率よくテンプレートを調整することができる。なお、上記の説明は一例であって、染色体の表現や遺伝的操作はテンプレートとして定義される情報に合わせて、その他の方法で実現しても良い。例えば、テンプレートとして欠陥分布の特徴を関数として表している場合、染色体は上記説明のような構造ではなく関数の係数を羅列した配列で表現され、遺伝的操作も上記説明とは異なる方法で実現される。また、図1に示したテンプレート調整方法の場合であっても、異なる実装方法が可能である。例えば、染色体を図15に示した構造ではなく、図24に示すように(h×ν)の数列で表し、遺伝子の値を各々の部分領域に割り当てられた番号で表しても良い。問題の解や染色体の構造が変わると遺伝的操作も異なる手法で実装されるが、本発明はその内容を問わない。
【0153】
図1に示したテンプレート調整方法の流れと図14に示したGAの流れとを比較すると、テンプレートの変更S101は遺伝的操作S1404〜S1406に相当し、テストデータの分類S103およびテンプレートの評価S104は染色体の評価S1402に相当し、変更後のテンプレートを採用するか否かの判断S105は染色体の入れ換えS1408に相当する。
【実施例4】
【0154】
次に、実施例4として、GAを用いる場合にテンプレートが変更される範囲を制限する方法について説明する。
【0155】
GAを用いる場合にテンプレートが変更される範囲を制限する第1の方法は、染色体の入れ替えS1408において、前の世代の母集団の染色体のうち、いずれの染色体を新しい染色体と入れ替えるかを担当者が入力する方法である。
【0156】
GAを用いる場合にテンプレートが変更される範囲を制限する第2の方法は、選択S1404において、どの染色体を淘汰、つまり選択するかを担当者が入力する方法である。
【0157】
上記2つの方法のいずれを用いて実現しても良いし、両方の方法を併用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の一実施形態のテンプレート調整方法の概念を模式的に示す図である。
【図2】図1中のパラメータ導出処理S102を説明する図である。
【図3】識別関数の概念を示す図である。
【図4】データの分類処理を説明する図である。
【図5】本発明の一実施形態のテンプレート調整装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態の欠陥分布分類方法の概念を模式的に示す図である。
【図7】本発明の一実施形態の欠陥分布分類装置の構成を示す図である。
【図8】図7の欠陥分布分類装置の変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施例1のテンプレート調整方法を模式的に示す図である。
【図10】実施例1のテンプレート調整方法における特徴量ベクトルの計算方法を説明する図である。
【図11A】テンプレートに変更を制限するための制限領域を設定した例を説明する図である。
【図11B】図11A中の制限領域を設定した場合にテンプレートの変更が許される例を示す図である。
【図11C】図11A中の制限領域を設定した場合にテンプレートの変更が許される別の例を示す図である。
【図11D】図11A中の制限領域を設定した場合にテンプレートの変更が制限される例を示す図である。
【図11E】図11A中の制限領域を設定した場合にテンプレートの変更が制限される別の例を示す図である。
【図12】本発明の実施例2のテンプレート調整方法を模式的に示す図である。
【図13】実施例2のテンプレート調整方法を実施するためのテンプレート調整装置の構成を示す図である。
【図14】GAの基本的な流れを示す図である。
【図15】本発明の実施例3のテンプレート調整方法において、テンプレートを染色体にコーディングする方法を模式的に示す図である。
【図16】実施例3のテンプレート調整方法における初期集団を生成する方法を示す図である。
【図17】実施例3のテンプレート調整方法における染色体の1例を表す図である。
【図18】実施例3のテンプレート調整方法における交叉を説明する図である。
【図19】実施例3のテンプレート調整方法における突然変異の1つである部分領域の拡張の概念を模式的に示す図である。
【図20】実施例3のテンプレート調整方法における突然変異の1つである部分領域の拡張の態様を模式的に示す図である。
【図21】実施例3のテンプレート調整方法における突然変異の1つである部分領域の分割の概念を模式的に示す図である。
【図22】実施例3のテンプレート調整方法における突然変異の1つである部分領域の分割を模式的に説明する図である。
【図23】実施例3のテンプレート調整方法における突然変異の1つである部分領域の結合を説明する図である。
【図24】実施例3のテンプレート調整方法において、テンプレートを染色体にコーディングする図15とは別の方法を模式的に示す図である。
【図25】従来例の欠陥分布分類方法を模式的に説明する図である。
【符号の説明】
【0159】
100 担当者が入力したテンプレート
101 サンプルデータ
102 テストデータ
103 サンプルデータ中の該当データ
104 サンプルデータ中の非該当データ
105 テストデータ中の該当データ
106 テストデータ中の非該当データ
107 変更後のテンプレート
108 調整後のテンプレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上の欠陥分布を分類するために、分類の基準となる欠陥分布パターンの特徴が記述されたテンプレートを調整するテンプレート調整方法であって、
或る基板群の欠陥分布を分類するために設定されたテンプレートと、上記基板群の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類して得られたデータ群とを用意して、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を加えるとともに、上記データ群を用いて上記変更後のテンプレートの良否を評価する調整処理をコンピュータに実行させることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項2】
請求項1記載のテンプレート調整方法において、
上記データ群は第1のデータ群と第2のデータ群を含み、
上記コンピュータは、上記調整処理として、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を施して新たなテンプレートを作成する第1ステップと、
上記変更後のテンプレートと上記第1のデータ群から分類の基準となるパラメータを導出する第2ステップと、
上記パラメータを用いて上記第2のデータ群を分類する第3ステップと、
上記第3ステップでの分類結果から上記第1ステップで作成した上記変更後のテンプレートの良否を評価する第4ステップと
を順次繰り返し行うことを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項3】
請求項1に記載のテンプレート調整方法によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かをコンピュータに分類させることを特徴とする欠陥分布分類方法。
【請求項4】
請求項2に記載のテンプレート調整方法によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かをコンピュータに分類させる第5ステップを備え、
上記第3ステップでは計算量の少ない分類手法を用いる一方、上記第5ステップでは上記第3ステップよりも分類精度を向上させるように計算量が多い分類手法を用いることを特徴とする欠陥分布分類方法。
【請求項5】
基板の表面上の欠陥分布を分類するために、分類の基準となる欠陥分布パターンの特徴が記述されたテンプレートを調整するテンプレート調整装置であって、
或る基板群の欠陥分布を分類するために設定されたテンプレートと、上記基板群の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類して得られたデータ群とを入力する入力部と、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を加えるとともに、上記データ群を用いて上記変更後のテンプレートの良否を評価する調整処理部を備えたことを特徴とするテンプレート調整装置。
【請求項6】
請求項5記載のテンプレート調整装置において、
上記データ群は第1のデータ群と第2のデータ群を含み、
上記調整処理部は、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を施して新たなテンプレートを作成する第1手段と、
上記変更後のテンプレートと上記第1のデータ群から分類の基準となるパラメータを導出する第2手段と、
上記パラメータを用いて上記第2のデータ群を分類する第3手段と、
上記第3手段での分類結果から上記第1手段で作成した上記変更後のテンプレートの良否を評価する第4手段と
を備え、上記第1乃至第4手段による処理を順次繰り返すようになっていることを特徴とするテンプレート調整装置。
【請求項7】
請求項5記載のテンプレート調整装置を含み、
上記テンプレート調整装置によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類する分類部を備えたことを特徴とする欠陥分布分類装置。
【請求項8】
請求項2に記載のテンプレート調整方法において、
上記コンピュータは、上記テンプレートを染色体に対応させて、上記第1乃至4ステップを実現するために遺伝的アルゴリズムを用いることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項9】
請求項8に記載のテンプレート調整方法において、
上記遺伝的アルゴリズムは、上記テンプレートに対応する染色体をなす遺伝子に対して変更を施して新たな染色体を複数作成し、作成された複数の染色体を初期集団とすることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項10】
請求項2に記載のテンプレート調整方法において、
上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンの特徴は、基板の表面における1つまたは複数の部分領域を表すパラメータであることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項11】
請求項10に記載のテンプレート調整方法において、
上記コンピュータは、遺伝的アルゴリズムを用いて上記第1乃至4ステップを実現するように、上記テンプレートを染色体に対応させるとともに、上記基板の表面を格子状に区切って設定された各小領域にそれぞれ上記染色体をなす遺伝子を対応させ、上記各遺伝子にそれぞれ、その遺伝子に対応する小領域が上記部分領域のいずれに属するかを表す値を持たせることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項12】
請求項11に記載のテンプレート調整方法において、
二つの染色体の間の交叉は、上記基板の表面上に1つまたは複数の小領域を含む範囲を設定し、一方の染色体の上記範囲に対応する遺伝子の値と他方の染色体の上記範囲に対応する遺伝子の値とを、互いに対応付けて交換する操作で実現されることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項13】
請求項11に記載のテンプレート調整方法において、
上記染色体の突然変異は、上記基板の表面上に設定された或る部分領域を、その部分領域内の或る小領域を定める境界の辺に沿って分割する操作で実現されることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項14】
請求項11に記載のテンプレート調整方法において、
上記染色体の突然変異は、互いに異なる複数の部分領域を連結して1つの部分領域とする操作で実現されることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項15】
請求項11に記載のテンプレート調整方法において、
上記染色体の突然変異は、上記基板の表面上の或る部分領域に属する或る小領域に対応する遺伝子の値と一致するように、その小領域の周辺の別の小領域に対応する遺伝子の値を変化させて、上記部分領域を拡張する操作で実現されることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項16】
請求項2に記載のテンプレート調整方法において、
上記第1ステップにおいて上記テンプレートが変更される範囲を制限するように、上記テンプレートの変更可能範囲を上記コンピュータに入力することを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項17】
請求項2に記載のテンプレート調整方法において、
上記第3ステップでの分類結果および上記第4ステップでの上記変更後のテンプレートの良否の評価を上記コンピュータに表示させ、上記変更後のテンプレートの採否を上記コンピュータに入力することを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項18】
請求項8に記載のテンプレート調整方法において、
母集団の各染色体に対応するテンプレートによる上記第2のデータ群の分類結果を上記コンピュータに表示させ、どの染色体から新しい染色体を生成するかを上記コンピュータに入力することを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項19】
請求項8に記載のテンプレート調整方法において、
母集団の各染色体に対応するテンプレートによる上記第2のデータ群の分類結果を上記コンピュータに表示させ、各染色体を淘汰するか否かを上記コンピュータに入力することを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項20】
請求項1に記載のテンプレート調整方法をコンピュータに実行させるためのテンプレート調整プログラム。
【請求項21】
請求項1に記載のテンプレート調整方法によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類する欠陥分布分類方法をコンピュータに実行させるための欠陥分布分類プログラム。
【請求項22】
請求項20に記載のテンプレート調整プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項23】
請求項21に記載の欠陥分布分類プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
基板の表面上の欠陥分布を分類するために、分類の基準となる欠陥分布パターンの特徴が記述されたテンプレートを調整するテンプレート調整方法であって、
或る基板群の欠陥分布を分類するために設定されたテンプレートと、上記基板群の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類して得られたデータ群とを用意して、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を加えるとともに、上記データ群を用いて上記変更後のテンプレートの良否を評価する調整処理をコンピュータに実行させることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項2】
請求項1記載のテンプレート調整方法において、
上記データ群は第1のデータ群と第2のデータ群を含み、
上記コンピュータは、上記調整処理として、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を施して新たなテンプレートを作成する第1ステップと、
上記変更後のテンプレートと上記第1のデータ群から分類の基準となるパラメータを導出する第2ステップと、
上記パラメータを用いて上記第2のデータ群を分類する第3ステップと、
上記第3ステップでの分類結果から上記第1ステップで作成した上記変更後のテンプレートの良否を評価する第4ステップと
を順次繰り返し行うことを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項3】
請求項1に記載のテンプレート調整方法によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かをコンピュータに分類させることを特徴とする欠陥分布分類方法。
【請求項4】
請求項2に記載のテンプレート調整方法によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かをコンピュータに分類させる第5ステップを備え、
上記第3ステップでは計算量の少ない分類手法を用いる一方、上記第5ステップでは上記第3ステップよりも分類精度を向上させるように計算量が多い分類手法を用いることを特徴とする欠陥分布分類方法。
【請求項5】
基板の表面上の欠陥分布を分類するために、分類の基準となる欠陥分布パターンの特徴が記述されたテンプレートを調整するテンプレート調整装置であって、
或る基板群の欠陥分布を分類するために設定されたテンプレートと、上記基板群の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類して得られたデータ群とを入力する入力部と、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を加えるとともに、上記データ群を用いて上記変更後のテンプレートの良否を評価する調整処理部を備えたことを特徴とするテンプレート調整装置。
【請求項6】
請求項5記載のテンプレート調整装置において、
上記データ群は第1のデータ群と第2のデータ群を含み、
上記調整処理部は、
上記テンプレートにおける欠陥分布パターンの特徴に変更を施して新たなテンプレートを作成する第1手段と、
上記変更後のテンプレートと上記第1のデータ群から分類の基準となるパラメータを導出する第2手段と、
上記パラメータを用いて上記第2のデータ群を分類する第3手段と、
上記第3手段での分類結果から上記第1手段で作成した上記変更後のテンプレートの良否を評価する第4手段と
を備え、上記第1乃至第4手段による処理を順次繰り返すようになっていることを特徴とするテンプレート調整装置。
【請求項7】
請求項5記載のテンプレート調整装置を含み、
上記テンプレート調整装置によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類する分類部を備えたことを特徴とする欠陥分布分類装置。
【請求項8】
請求項2に記載のテンプレート調整方法において、
上記コンピュータは、上記テンプレートを染色体に対応させて、上記第1乃至4ステップを実現するために遺伝的アルゴリズムを用いることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項9】
請求項8に記載のテンプレート調整方法において、
上記遺伝的アルゴリズムは、上記テンプレートに対応する染色体をなす遺伝子に対して変更を施して新たな染色体を複数作成し、作成された複数の染色体を初期集団とすることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項10】
請求項2に記載のテンプレート調整方法において、
上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンの特徴は、基板の表面における1つまたは複数の部分領域を表すパラメータであることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項11】
請求項10に記載のテンプレート調整方法において、
上記コンピュータは、遺伝的アルゴリズムを用いて上記第1乃至4ステップを実現するように、上記テンプレートを染色体に対応させるとともに、上記基板の表面を格子状に区切って設定された各小領域にそれぞれ上記染色体をなす遺伝子を対応させ、上記各遺伝子にそれぞれ、その遺伝子に対応する小領域が上記部分領域のいずれに属するかを表す値を持たせることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項12】
請求項11に記載のテンプレート調整方法において、
二つの染色体の間の交叉は、上記基板の表面上に1つまたは複数の小領域を含む範囲を設定し、一方の染色体の上記範囲に対応する遺伝子の値と他方の染色体の上記範囲に対応する遺伝子の値とを、互いに対応付けて交換する操作で実現されることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項13】
請求項11に記載のテンプレート調整方法において、
上記染色体の突然変異は、上記基板の表面上に設定された或る部分領域を、その部分領域内の或る小領域を定める境界の辺に沿って分割する操作で実現されることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項14】
請求項11に記載のテンプレート調整方法において、
上記染色体の突然変異は、互いに異なる複数の部分領域を連結して1つの部分領域とする操作で実現されることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項15】
請求項11に記載のテンプレート調整方法において、
上記染色体の突然変異は、上記基板の表面上の或る部分領域に属する或る小領域に対応する遺伝子の値と一致するように、その小領域の周辺の別の小領域に対応する遺伝子の値を変化させて、上記部分領域を拡張する操作で実現されることを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項16】
請求項2に記載のテンプレート調整方法において、
上記第1ステップにおいて上記テンプレートが変更される範囲を制限するように、上記テンプレートの変更可能範囲を上記コンピュータに入力することを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項17】
請求項2に記載のテンプレート調整方法において、
上記第3ステップでの分類結果および上記第4ステップでの上記変更後のテンプレートの良否の評価を上記コンピュータに表示させ、上記変更後のテンプレートの採否を上記コンピュータに入力することを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項18】
請求項8に記載のテンプレート調整方法において、
母集団の各染色体に対応するテンプレートによる上記第2のデータ群の分類結果を上記コンピュータに表示させ、どの染色体から新しい染色体を生成するかを上記コンピュータに入力することを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項19】
請求項8に記載のテンプレート調整方法において、
母集団の各染色体に対応するテンプレートによる上記第2のデータ群の分類結果を上記コンピュータに表示させ、各染色体を淘汰するか否かを上記コンピュータに入力することを特徴とするテンプレート調整方法。
【請求項20】
請求項1に記載のテンプレート調整方法をコンピュータに実行させるためのテンプレート調整プログラム。
【請求項21】
請求項1に記載のテンプレート調整方法によって調整されたテンプレートを用いて、基板の表面上の欠陥分布が上記テンプレートに記述された欠陥分布パターンに該当するか否かを分類する欠陥分布分類方法をコンピュータに実行させるための欠陥分布分類プログラム。
【請求項22】
請求項20に記載のテンプレート調整プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項23】
請求項21に記載の欠陥分布分類プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2007−164256(P2007−164256A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356120(P2005−356120)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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