説明

テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板

【課題】 本発明は、タック性が低減されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板、及びそれを用いて形成されたテープキャリアパッケージを提供することを目的とする。
【解決手段】 絶縁フィルム1、この絶縁フィルムの表面に形成された配線パターン3、および樹脂硬化物と多孔性微粒子を含み、前記配線パターンの少なくとも一部を保護するオーバーコート層9を備えることを特徴とするテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板及びテープキャリアパッケージに関する。特にオーバーコート層がフィラーとして多孔性微粒子とりわけ多孔性シリカを含有した硬化性樹脂組成物で構成されたことを特徴とするタック性が低減されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板、及びそれを用いて形成されたテープキャリアパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
テープキャリアパッケージは、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板に、半導体チップなどの電子部品を、例えばTAB(Tape Automated Bonding)やCOF(Chip On Film)などの方式によって搭載したパッケージである。このテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板は、絶縁フィルムの表面に配線パターンが形成され、配線パターンのうちインナーリードやアウターリードなどの接続部を除いた表面が電気絶縁性のオーバーコート層によって保護されている。
【0003】
オーバーコート層は、ポリウレタン樹脂組成物、ポリアミドイミド樹脂組成物、ポリイミド系樹脂組成物などを用いて好適に形成されている。特許文献1、特許文献2にはポリウレタン樹脂組成物が、特許文献3にはポリアミドイミド樹脂組成物が、特許文献4にはポリイミドシロキサン樹脂組成物が、特許文献5には変性ポリイミド樹脂組成物がオーバーコート用組成物として開示されている。
【0004】
半導体チップなどの電子部品は、通常、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板に連続的に搭載される。その工程では、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板は、リール巻きされたリールから必要に応じて連続的に取り出されて使用される。
【0005】
テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板のオーバーコート層は熱硬化性或いは光硬化性の樹脂組成物の塗膜を硬化することによって形成されているが、しばしばオーバーコート層表面のタック性が悪いために(タック性が高い)、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板を直接リール巻きにすると重なり部が張り付いてしまうという問題があった。そのため、一般にPETフィルムなどの剥離フィルムを介してリール巻きにされていた。
【0006】
【特許文献1】特開平11−61037号公報
【特許文献2】特開2007−39673号公報
【特許文献3】特開平11−12500号公報
【特許文献4】特開2004−211064号公報
【特許文献5】特開2006−307183号公報
【特許文献6】特開2002−151809号公報
【特許文献7】特開2006−63297号公報
【特許文献8】特開2007−138095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板のリール巻きにおいて、低コスト化のためにPETフィルムなどの剥離フィルムを用いないリール巻きが求められていた。さらに、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線基板のオーバーコート層を形成するにあたって、連続的にスクリーン印刷などで樹脂組成物を塗布して硬化する際、生産性を向上させるためにより簡易に硬化する(例えば熱硬化であればより低温乃至短時間で硬化する)ことが検討されている。その場合、得られるテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板のタック性がしばしば高くなる(粘着性が高くなる)問題があった。一方で、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板のタック性が高いと、それを用いて半導体チップを実装する実装工程での搬送性に悪くなるために、タック性が低減されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板が強く求められていた。
【0008】
本発明は、タック性が低減されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板、及びそれを用いて形成されたテープキャリアパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の事項に関する。
【0010】
1. 絶縁フィルム、
この絶縁フィルムの表面に形成された配線パターン、および
樹脂硬化物と多孔性微粒子を含み、前記配線パターンの少なくとも一部を保護するオーバーコート層
を備えることを特徴とするテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【0011】
2. 前記オーバーコート層のタック性が、140℃でSUSに張り付かず且つ60℃でポリイミドに張り付かない条件を満たすことを特徴とする上記1記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【0012】
3. 前記多孔性微粒子が、前記樹脂硬化物100質量部に対して、0.1〜50質量部の割合で含有されていることを特徴とする上記1または2記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【0013】
4. 前記多孔性微粒子の平均粒子径が、前記オーバーコート層の厚さより小さく、
前記多孔性微粒子は、オーバーコート層の厚み方向の中心部より、表面に多く存在していることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【0014】
5. 前記多孔性微粒子の平均粒子径が30μm以下で且つ比表面積が200m/g以上であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【0015】
6. 前記多孔性微粒子の細孔容積が、JIS K 5101−13−1の精製あまに油法の吸油量に換算して0.1ml/g以上であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【0016】
7. 前記多孔性微粒子が、多孔性シリカであることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【0017】
8. 前記樹脂硬化物が、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミドシロキサン樹脂および変性ポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂の硬化物を含むことを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【0018】
9. 前記樹脂硬化物が、遠赤外線により加熱処理されて硬化されたものであることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【0019】
10. 剥離フィルムを介さないでリール巻きされたことを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【0020】
11. 上記1〜10のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板を用いて形成されたことを特徴とするテープキャリアパッケージ。
【0021】
12. 多孔性微粒子と硬化性樹脂とを含有し、硬化後に、前記多孔性微粒子が存在しないときに比べて硬化物の表面のタック性が低減されることを特徴とするオーバーコート用硬化性樹脂組成物。
【0022】
13. 硬化後に、140℃でSUSに張り付かず且つ60℃でポリイミドに張り付かない条件のタック性を示すことを特徴とする上記12記載のオーバーコート用硬化性樹脂組成物。
【0023】
14. 前記硬化性樹脂が、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミドシロキサン樹脂および変性ポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂を含むことを特徴とする上記12または13記載のオーバーコート用硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、タック性が低減されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板、及びそれを用いて形成されたテープキャリアパッケージを提供することができる。この結果、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板をリール巻きにするときの剥離フィルムの削減、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板の製造工程における生産性の向上、及びテープキャリアパッケージ用柔軟性配線基板の実装工程における搬送性の向上などが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、前述のとおり、樹脂硬化物中に多孔性微粒子を含有させることにより、オーバーコート層表面のタック性を低減する。従来、オーバーコート層形成のための樹脂組成物では、チキソトロピー性改善のためにシリカ等の無機粒子が含有されている(特許文献1、3他)。しかしこれらの無機粒子は、タック性の改善には効果がなかった。
【0026】
また、特開2002−151809号公報(特許文献6)には、塗料成分にピレスロイド系薬剤などの害虫忌避剤を担持したシリカゲルを含有させたプリント配線板用電子材料が開示されているが、紙−フェノール絶縁層(基材)などのリジッドなプリント配線板の害虫忌避に関するものであり、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線基板のタック性の改良とは関係がない。また、特開2006−63297号公報(特許文献7)には、多孔質物質内に低誘電率化剤を埋め込んだものを含有する樹脂組成物から、絶縁性樹脂フィルムを形成することが記載されているが、オーバーコート層ではなく、タック性の改良とは関係がない。また、特開2007−138095号公報(特許文献8)には、疎水化処理された無機多孔体を含有させて、無機多孔体の吸湿・吸水性を阻害して誘電率の上昇を抑えて高周波数特性を改良した硬化性樹脂組成物が記載されているが、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板のタック性の改良とは関係がない。
【0027】
このように、多孔性微粒子によるオーバーコート層のタック性の低減は従来知られていなかったものである。
【0028】
まず、図面を参照して、本発明の柔軟性配線板の構造について説明する。図1は本発明のテープキャリアパッケージの代表的な一例を部分的に示す概略の平面図であり、図2は、図1のA−A’線における部分的な断面図である。絶縁フィルム1の表面に接着剤層2によって配線パターン3が接着されている。配線パターン3は、デバイスホール4においてインナーリード3aが形成され、折り曲げスリット5を横切っており、端部では他の部品と接続するためのアウターリード3bが形成されている。インナーリード3aには、バンプ6によって半導体チップ7が接続されている。折り曲げスリット5を横切っている配線パターン3の片方の表面には、それを保護するためのフレックス樹脂層8が形成されており、さらに配線パターン3が形成された領域の、前記のインナーリード3aやアウターリード3bが形成された領域を除いた主たる表面には、オーバーコート層(ソルダーレジスト層)9が形成されて配線パターンが保護されている。またインナーリード3aと接続された半導体チップ7は、半導体封止樹脂10によって封止されて保護されている。パッケージ端には、パーフォレーションホール(スプロケットホール)11、テストパッド(配線パターン)3cが設けられている。
【0029】
なお、本発明のテープキャリアパッケージは図1、2に示した具体例に限定されるものではない。図1、2では、折り曲げスリットが2ケ所に形成された例を示したが、折り曲げスリットは1ケ所でも複数ケ所でも構わない。また、折り曲げスリットを横切った配線パターンの片方表面(裏面)だけがフレックス樹脂層で覆われているが、片側表面だけでなく両面ともフレックス樹脂層で覆われていても構わない。
【0030】
図3は、COF技術によるテープキャリアパッケージの代表的構造を示す概略の平面図であり、図4は、図3のB−B’線における概略の断面図である。絶縁フィルム12の表面に配線パターン13が接着されている。配線パターン13には、半導体チップを接続するためのインナーリード13a、他の部品と接続するためのアウターリード13bが形成されている。インナーリード13aは、バンプ14によって半導体チップ15が接続されている。配線パターン13が形成された領域の、前記のインナーリード13aやアウターリード13bが形成された領域を除いた主たる表面には、オーバーコート層(ソルダーレジスト層)16が形成されて配線パターンが保護されている。またインナーリード13aと接続された半導体チップ15は、アンダーフィル材17によって封止されて保護されている。パッケージ端には、パーフォレーションホール(スプロケットホール)18、テストパッド(配線パターン)13cが設けられている。
【0031】
本発明において、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板とは、テープキャリアパケージのうち、半導体チップなどの電子部品やそれらを保護するための封止樹脂などを除いた(およびそれらが形成される前の)、絶縁フィルムの表面に配線パターンが形成され、前記配線パターンのうちインナーリードやアウターリードなどの接続部を除いた、配線パターンが形成された領域の少なくとも一部が電気絶縁性のオーバーコート層によって保護された柔軟性を有する配線板をいう。即ち、テープキャリアパケージ中に存在するものと、テープキャリアパケージ用に提供されるものの両方を意味する。テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板は、必要に応じて接着剤層やフレックス樹脂層などを含んで形成されている。
【0032】
通常、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板は、両端部に配列された一対のパーフォレーションホール(スプロケットホール)を有する長尺の絶縁フィルム上に形成されている。実装工程では、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板はしばしばリール巻きから連続的に取り出されて、半導体チップなどの電子部品の実装、封止樹脂による封止、必要に応じてハンダ処理などがされてテープキャリアパケージが形成される。実装工程では、供給するテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板のみならず、実装工程を経て形成されたテープキャリアパケージもリール巻きで巻き取られる、リールツーリール方式が採用されることもある。
【0033】
本発明で使用される絶縁フィルムは、耐熱性の絶縁フィルムであって、絶縁破壊強さが大きく且つ誘電正接が小さく、耐熱性が高く、可撓性があり且つ適度な剛性を有し、耐薬品性があり、熱収縮率が小さく且つ吸湿に対する寸法安定性に優れた耐熱性ポリマーからなるフィルムが好ましい。好ましくは芳香族ポリイミドフィルム、芳香族ポリアミドイミドフィルム、芳香族ポリエステルフィルムであり、特に芳香族ポリイミドフィルムである。具体的には、宇部興産株式会社製のユーピレックスやデュポン社製のカプトンなどを好適に例示することができる。また2〜150μm厚のもの、通常は5〜125μm厚のものが好適に用いられる。
【0034】
配線パターンは導電性の金属箔によって形成される。金属箔としては銅箔やアルミ箔などが好適である。銅箔は圧延銅箔でも電解銅箔でも構わない。配線パターンの厚みは2〜100μmのものが好適に用いられる。また配線パターンは、線幅が5〜500μm特に20〜300μm程度、線間隔が5〜500μm特に20〜400μm程度のものが好適に用いられる。
【0035】
絶縁フィルムと配線パターンとは直接積層される場合もあるが、接着剤層を介して積層される場合もある。接着剤層は、接着力、絶縁信頼性、耐熱性および耐薬品性が優れ、又硬化後の反りが小さく、平面性に優れたエポキシ系接着剤又はフェノール系接着剤を好適に用いることができる。特に可撓性に優れる変性エポキシ樹脂接着剤が好適であり、具体的には、東レ株式会社製の接着剤フィルムである#7100、#8200、#8600などを好適挙げることができる。接着剤層は1〜30μm特に2〜20μm程度の厚さで好適に用いられる。
【0036】
また、TAB方式のテープキャリアパッケージ用配線板では、絶縁フィルムに折り曲げスリットが形成される。折り曲げスリット部は配線パターンが横切っているので、その配線パターンを保護するためにフレックス樹脂層が設けられる。フレックス樹脂層は、折り曲げスリット部に印刷などの方法によって容易に塗布が可能であって、基材との密着性が良好で、硬化後の絶縁信頼性、密着性、耐熱性及び耐薬品性が良好であり、反りが小さくて平面性に優れ、折り曲げスリット部を折り曲げても、剥離や破断を生じないで十分用いることができる柔軟性や可撓性を有する硬化性樹脂組成物によって好適に形成される。具体的には、例えばポリウレタン樹脂組成物、ポリカーボネート樹脂組成物、ポリアミドイミド樹脂組成物、又はポリイミドシロキサン樹脂組成物の硬化物、中でも特にポリイミドシロキサン樹脂組成物の硬化物が好適に用いられる。具体的には、宇部興産株式会社製のポリイミドシロキサン樹脂組成物からなるユピコートFS−100Lを好適に挙げることができる。なお、フレックス樹脂層は折り曲げスリットを横切った配線パターンの厚さの0.2〜5倍程度の厚さであることが好ましく、0.5〜200μm特に1〜100μm更に5〜50μm程度の厚さで好適に用いられる。
【0037】
オーバーコート層(ソルダーレジスト層)は、配線パターンの表面と配線パターン間のスペースとを含む配線パターン領域の表面を覆った保護膜である。オーバーコート層は、印刷などの方法によって塗布され、次いで乾燥及び加熱或いは光照射などによって硬化する硬化性樹脂組成物によって好適に形成される。オーバーコート層には、反りが小さくて平面性に優れ、絶縁フィルムや配線パターンとの密着性が良好であり、優れた電気絶縁信頼性、耐熱性、耐メッキ性、耐スズ潜り性、耐薬品性、耐溶剤性(例えば、アセトンに対する耐溶剤性)、耐屈曲性(折り曲げても剥離や白化を生じない)、封止樹脂(アンダーフィルなども含む)との良好な密着性などの諸特性が要求される。
【0038】
オーバーコート層は、配線パターンを覆って保護している状態であれば、半導体チップなどの電子部品が未実装の状態の「テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板」に存在するもの、および電子部品が実装された後の「テープキャリアパッケージ」に存在するもののどちらも意味する。しかし、本発明は特に従来問題となっていたタック性を改善することが目的であり、タック性について言及するときは、主として半導体チップなどの電子部品が未実装の状態の「テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板」に存在するオーバーコート層のタック性が対象となる。
【0039】
オーバーコート層は、オーバーコート層の厚さは、0.5〜200μm特に1〜100μm更に1〜50μm程度である(材料については後述する。)。
【0040】
また、封止樹脂やアンダーフィル材は半導体チップを実装した後で半導体チップを保護する目的で用いられるものであり、特に限定されないが通常はエポキシ系樹脂組成物が用いられる。
【0041】
本発明のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板は、オーバーコート層がフィラーとして多孔性微粒子と、樹脂硬化物とを少なくとも含有する。この多孔性微粒子はオーバーコート層表面のタック性を低減する役割を有する。しかも、タック性を低減し、且つオーバーコート層として要求される諸特性を維持または改良する。
【0042】
多孔性粒子は、オーバーコート層の厚み方向の断面を見たとき、中心部より、表面に多く存在することが好ましい。また同時に、絶縁フィルム側面より、表面に多く存在することが好ましい。多孔性粒子が、表面に偏在することは、断面のSEM写真、TEM写真などで確認することができる。表面に多孔性粒子が偏在する理由として、多孔性微粒子を含有した硬化性樹脂組成物を硬化してオーバーコート層を形成する際、多孔性微粒子は、その多孔構造のためにオーバーコート層の表面層により高密度に分布し易い或いはオーバーコート層表面に高密度に位置し易いので、その結果オーバーコート層表面に露呈する樹脂成分の割合を低下させてタック性を低減し、且つオーバーコート層として要求される諸特性を維持または改良すると考えられる。
【0043】
本発明において、多孔性微粒子は細孔を有する多孔性微粒子であれば特に限定されない。多孔性微粒子はレーザー法で測定した数平均粒径が30μm以下であることが、タック性を改良し且つオーバーコート層に要求される他の特性を良好にすることができるので好適である。粒子径が大きくなると配線パターン間を跨ぐようになり、絶縁信頼性が低下することがある。多孔性微粒子の平均粒径は、好ましくは0.001〜30μm、より好ましくは0.005〜10μm、更に好ましくは0.005〜5μm程度である。
【0044】
多孔性粒子の平均粒径は、好ましくはオーバーコート層の層厚より小さく、より好ましくは層厚の1/2より小さい。
【0045】
非多孔性微粒子でも多量に使用することによって、または大きな粒子を使用することによって、タック性を改良することができるかも知れないが、その際にはオーバーコート層として要求される諸特性を低下(例えばオーバーコート層の機械的強度がなくなって折り曲げ時に剥離したり白化を生じる)させるので用いることはできない。
【0046】
多孔性微粒子はオーバーコート層を形成する樹脂組成物に含有される樹脂成分に対して実質的に不活性な材料が好適である。多孔性微粒子の材質としては、例えばシリカ、ガラス、アルミナ、ゼオライト、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、珪藻土、ケイ酸カルシウム等のケイ酸塩、リン酸カルシウム等のリン酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、セオピライトなどのマグネシウムシリケート、活性炭、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、キトサン樹脂、ポリシロキサン樹脂、シリコーンゴム、酢酸セルロース樹脂など、そしてこれらの複合体が挙げられる。
【0047】
また、多孔性微粒子の形状については限定はない。例えば球状、鱗片状、針状、無結晶粉末状、板状、ハニカム状などが挙げられる。球状の場合は、樹脂組成物の流動性を好適に制御できるので好ましい。また、多孔性微粒子は、その表面が親水性のままで好適に用いることができるが、その表面がシランカップリング剤やチタンカップリング剤などによって疎水化処理されたものも、多孔性が維持されているかぎり好適に用いることができる。なお、本発明においては、多孔性微粒子の細孔に化学物質を充填または担持させると、タック性の低減効果がなくなったり、オーバーコート層として要求される諸特性を低下させたり、樹脂成分と化学的な反応を起こしたりするので好適ではない。
【0048】
本発明において、多孔性微粒子は、BET法で測定した比表面積が好ましくは200〜1000m/g、より好ましくは250〜1000m/g程度であることが、オーバーコート層の表面層により高密度で分布し或いはオーバーコート層表面に位置し易くなって、タック性を低減する効果が高いので好適である。さらに、多孔性微粒子の細孔容積が、JIS K 5101−13−1の精製あまに油法で測定した吸油量に換算して、好ましくは0.1ml/g〜10ml/g、より好ましくは0.3〜3ml/gのものが、オーバーコート層の表面層により高密度で分布し或いはオーバーコート層表面に位置し易くなって、タック性を低減する効果が高いので好適である。
【0049】
本発明において、多孔性微粒子としては多孔性シリカが特に好適である。多孔性シリカは、比表面積や細孔容積(吸油量)が好適であり、換言すれば見かけの比重が小さいために、好適にオーバーコート層の表面層により高密度に分布し或いはオーバーコート層表面により高密度に位置し、また樹脂組成物の硬化工程やテープキャリアパッケージの実装工程では安定であって絶縁性能などに悪影響を与えることがなく、オーバーコート層の機械的特性などを低下させることもない。すなわち、タック性の低減効果が大きく且つオーバーコート層としての特性が良好になるので特に好適である。
【0050】
多孔性微粒子特に多孔性シリカは、多孔性微粒子が存在しないときに比べて、硬化物(オーバーコート層)の表面のタック性の低減と共に表面硬度を向上することができる。オーバーコート層の表面硬度が向上すると、表面のタック性低減と同様に、取り扱いが容易になり、耐傷つき性も向上するので、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板の製造工程における生産性の向上、及びテープキャリアパッケージ用柔軟性配線基板の実装工程における搬送性の向上などが可能になる。
【0051】
なお、多孔性微粒子は、その多孔構造のためにオーバーコート層の表面層により高密度に分布し易い或いはオーバーコート層表面に高密度に位置し易いので、その結果オーバーコート層表面に露呈する樹脂成分の割合を低下させてタック性を低減し且つ表面硬度を向上させているから、オーバーコート層全体が剛直になってオーバーコート層に要求される柔軟性を低下させるなどの他の諸特性の低下は抑制される。
【0052】
多孔性シリカとしては、例えば富士シリシア化学株式会社製サイリシア、サイロホービック、サイロスフェア、株式会社トクヤマ社製トクシール、ファインシール、旭硝子エスアイテック株式会社製サンスフェア、M.S.GEL、サンラブリー、水澤化学工業株式会社製ミズカシルなどを好適に挙げることができる。
【0053】
本発明において、多孔性微粒子は硬化性樹脂組成物に含有されて、オーバーコート層形成に用いられる。硬化性樹脂組成物において多孔性微粒子の含有量は、樹脂固形成分100質量部に対して0.1〜50質量部、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.2〜30質量部である。50質量部を越えて含有すると反りが大きくなったり、機械的強度が特に伸びがなくなって折り曲げ時に剥離やクラックが発生したり、白化を生じたりするので好ましくない。また0.1質量部未満ではタック性を改良する効果が小さくなる。
【0054】
本発明において、オーバーコート層を形成する硬化性樹脂組成物は特に限定されるものではない。上記の多孔性微粒子を含むことが必須である以外は、オーバーコート(ソルダーレジスト)用に通常使用されている硬化性樹脂組成物が好適に使用できる。この硬化性樹脂組成物は、熱硬化性でも光硬化性でもよく、熱硬化性と光硬化性とを併せ有した樹脂組成物であってもよい。熱硬化性樹脂組成物としては、出典明示して本明細書の一部とみなす特許文献1〜5に記載されているポリウレタン樹脂組成物、ポリアミドイミド樹脂組成物、ポリイミドシロキサン樹脂組成物、或いは変性ポリイミド樹脂組成物などを好適に挙げることができる。これらの樹脂組成物では、熱硬化させるためのエポキシ樹脂や多価イソシアネートが硬化成分として好適に含有されている。光硬化性樹脂組成物では、樹脂成分にアクリレートやメタクリレートなどの感光性基が導入されている。
【0055】
本発明のオーバーコート層を形成する硬化性樹脂組成物は、スクリーン印刷などの方法によって薄い膜厚の塗膜を形成して硬化させるものであり、通常は溶液組成物である。
【0056】
本発明では、樹脂固形分濃度が20〜80質量%程度の溶液組成物が好適に用いられ、その溶液粘度は、特に限定するものではないが、室温(25℃)での溶液粘度が5〜1000Pa・s特に10〜100Pa・s更に10〜60Pa・sであることがスクリーン印刷などの作業性や溶液物性、得られる硬化絶縁膜の特性などから適当である。
【0057】
溶液組成物の溶媒としては、好適には、含窒素系溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムなど、含硫黄原子溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなど、含酸素溶媒、例えばフェノ−ル系溶媒のクレゾ−ル、フェノ−ル、キシレノ−ルなど、ジグライム系溶媒のジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(ジグライム)、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(トリグライム)、テトラグライムなど、ケトン系溶媒のアセトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、シクロヘキサノン、イソホロンなど、エーテル系溶剤のエチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフランなど、ラクトン系溶媒のγ−ブチロラクトンなど、を挙げることができる。特に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テルなどを好適に使用することができる。
【0058】
また、硬化性樹脂組成物は、通常のオーバーコート用硬化性樹脂組成と同様に非多孔性フィラー(微粉状シリカ、タルク、マイカ、硫酸バリウムなど)、硬化触媒、有機着色顔料、無機着色顔料などの顔料、消泡剤やレベリング剤、防錆剤やイオンキャッチャーなどを含有してもよい。
【0059】
オーバーコート層は、硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷などの方法によって配線パタ−ンを有する絶縁フィルムのパタ−ン面に、乾燥膜の厚さが0.5〜200μm程度特に1〜100μm程度の厚さになるようにスクリ−ン印刷などによって印刷して塗布し、次いで80〜210℃程度好適には100〜200℃で0.1〜120分間好適には1〜60分間程度で加熱処理するか或いは光照射し必要に応じて加熱による後硬化を行うことによって硬化させて形成される。加熱処理はヒーターによる加熱のほかに遠赤外線などを用いた加熱も採用される。
【0060】
オーバーコート層は、配線パターン間のスペースを良好に埋め込み、25℃での初期弾性率が10〜1200MPa程度好ましくは10〜1000MPa程度の柔軟性を有し、十分なレベルの電気絶縁性(通常は体積絶縁抵抗が1012Ω・cm以上、好ましくは1013Ω・cm以上)、260℃で10秒間のハンダ耐熱性を有する。さらに好ましくは、反りが小さくて平面性に優れ、耐屈曲性、基材及び封止樹脂(アンダーフィルなども含む)との密着性、耐溶剤性(例えば、アセトン、イソプロパノ−ル、メチルエチルケトンに対する耐溶剤性)、耐メッキ性、スズ潜り、絶縁信頼性などの諸特性が良好であることが好適である。本発明のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板では、オーバーコート層が前記のような良好な諸特性を有しながら且つタック性を低減することができる。
【0061】
本発明のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板は、オーバーコート層のタック性が、140℃でSUSに張り付かず且つ60℃でポリイミドに張り付かないことが好ましい。このような条件は、多孔性粒子の特性、量を適宜選ぶことにより満たすことができる。
【0062】
本発明のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板は、特に好ましくは、オーバーコート層が、多孔性シリカを含有したポリウレタン樹脂組成物特にポリブタジエンジオール及び/又はポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物との組合せからなるポリウレタン樹脂組成、ポリアミドイミド樹脂組成物、ポリイミドシロキサン樹脂組成物、ポリカーボネート変性ポリイミド樹脂組成物、或いはブタジエン変性ポリイミド樹脂組成物で形成されたものである。その結果、タック性が改良され且つオーバーコート層として要求される諸特性が良好なものである。
【0063】
本発明によって、タック性が低減されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板、及びそれを用いて形成されたテープキャリアパッケージを得ることができる。この結果、剥離フィルムを介さないでリール巻きにすることが可能である。また本発明のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板を用いて実装されたテープキャリアパッケージも剥離フィルムを介さないでリール巻きにすることが可能である。さらに、本発明のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板においては、オーバーコート層を形成するにあたって、硬化性樹脂組成物を塗布して硬化する際、短時間の遠赤外線照射による加熱処理などの簡易な硬化処理工程を容易に採用できるので生産性を向上することができる。さらに、本発明のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板は半導体チップを実装する実装工程での搬送性が良好であるので、実装工程での生産性を向上することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
以下の各例において測定、評価は次の方法で行った。
【0066】
〔SUSとの耐タック性(熱硬化)〕
オーバーコート層用組成物を宇部興産製ポリイミドフィルム(ユーピレックス35SGA)に塗布し、80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理し厚さ約10μm厚の評価用膜を形成した。この評価用の膜サンプルを幅2.5cm、長さ5cmに切り出し、サンプルを作製した。このサンプルを140℃に加熱したホットプレートに塗膜面を上向きに置き、その上にSUS製の錘(底面積2cm×5cm 重量500g)を30秒間乗せ、持ち上げた際、張り付きがない場合を○、張り付いた場合を×とした。
【0067】
〔ポリイミドとの耐タック性(熱硬化)〕
オーバーコート層用組成物を宇部興産製ポリイミドフィルム(ユーピレックス35SGA)に塗布し、80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理し厚さ約10μm厚の評価用の膜を形成した。この評価用の膜サンプルを幅2.5cm、長さ5cmに切り出し、サンプルを作製した。このサンプルを60℃に加熱したホットプレートに塗膜面を上向きに置き、その上に宇部興産製ポリイミドフィルム(ユーピレックス35SGA 面積1cm×5cm)を重ね、更に1kg分銅で30秒間荷重した後、ポリイミドフィルムに張り付いていない場合を○、張り付いた場合を×とした。
【0068】
〔SUSとの耐タック性(遠赤外線硬化)〕
オーバーコート層用組成物を宇部興産製ポリイミドフィルム(ユーピレックス35SGA)に塗布し、遠赤外キュア装置を用い160℃で10分間加熱処理し厚さ約10μm厚の評価用の膜を形成した。この評価用の膜サンプルを幅2.5cm、長さ5cmに切り出し、サンプルを作製した。このサンプルを140℃に加熱したホットプレートに塗膜面を上向きに置き、その上にSUS製の錘(底面積2cm×5cm 重量500g)を30秒間乗せ、持ち上げた際、張り付きがない場合を○、張り付いた場合を×とした。
【0069】
〔ポリイミドとの耐タック性(遠赤外線硬化)〕
オーバーコート層用組成物を宇部興産製ポリイミドフィルム(ユーピレックス35SGA)に塗布し、遠赤外キュア装置を用い160℃で10分間加熱処理し厚さ約10μm厚の評価用の膜を形成した。この評価用の膜サンプルを幅2.5cm、長さ5cmに切り出し、サンプルを作製した。このサンプルを60℃に加熱したホットプレートに塗膜面を上向きに置き、その上に宇部興産製ポリイミドフィルム(ユーピレックス35SGA 面積1cm×5cm)を重ね、更に1kg分銅で30秒間荷重した後、ポリイミドフィルムに張り付いていない場合を○、張り付いた場合を×とした。
【0070】
〔表面硬度〕
厚さ35μmの電解銅箔の光沢面にオーバーコート層用組成物を塗布し、80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理し、厚さ約100μm評価用被膜を形成した。この評価用被膜をJIS K 5600−5−4 引っかき硬度(鉛筆法)にて、評価した。
【0071】
〔初期弾性率〕
80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理して、厚さが約100μmになるように硬化させたシート状試料を、幅1cm、長さ7cmに切り出して試験に用いた。温度25℃、湿度50%RH、クロスヘット速度50mm/分、チャック間距離5cmで測定した。
【0072】
〔ハンダ耐熱性〕
厚さ35μmの電解銅箔の光沢面にオーバーコート層用組成物を塗布し、80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理し、評価用の厚さ約10μmの膜を形成した。評価用の膜上にロジン系フラックス(サンワ化学工業株式会社製:SUNFLUX
SF−270)を塗布した後、サンプルの膜を260℃の半田浴に10秒間接触させた。その後のサンプルの状態を観察して評価した。異常が生じない場合を○、膨れたり、融解した場合を×で示した。
【0073】
〔反り〕
宇部興産製ポリイミドフィルム(ユーピレックス35SGA)にオーバーコート層用組成物を塗布し、80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理し、約10μm厚の評価用の膜を形成した。このポリイミド上硬化評価用膜を5cm×5cmにカットし、4角の高さの平均が1mm未満の場合を○、1mm以上の場合を×で示した。
【0074】
以下の各例で使用した化合物、エポキシ樹脂、硬化触媒、充填材及び多孔性微粒子について説明する。
【0075】
〔テトラカルボン酸〕
2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(宇部興産株式会社製)
〔ジアミン化合物〕
イソホロンジアミン(和光純薬株式会社製)
α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(アミノ当量460)(信越化学工業株式会社製)
ビス(3−カルボキシ−4−アミノフェニル)メタン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシフェニルメタン)(和歌山精化株式会社製)
【0076】
〔アルコール性水酸基を1個有するモノアミン〕
3−アミノプロパノール(和光純薬株式会社製)
〔反応性極性基含有ジオール〕
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(広栄パーストープ株式会社社製)
〔ポリカーボネートジオール〕
クラレポリオールC−2015(株式会社クラレ製、平均分子量2000)
〔ジイソシアネート化合物〕
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製)
【0077】
〔有機溶剤〕
γ―ブチロラクトン(和光純薬株式会社製)
〔エポキシ樹脂〕
エポリード2021P(ダイセル化学工業株式会社製)
エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン株式会社製、エポキシ当量:184〜194)
〔ブロックイソシアネート〕
タケネートB830(三井武田ケミカル株式会社製、NCO(wt%):7.0
デュラネートME20−B80S(旭化成ケミカルズ株式会社製、NCO(wt%):5.8)
【0078】
〔硬化触媒〕
DBU(アルドリッチ株式会社製、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン)
キュアゾール2E4MZ(四国化成工業株式会社製、2−エチル−4−メチルイミダゾール)
〔充填材〕
アエロジル130(日本アエロジル社製 比表面積(BET法):130m/g)
アエロジルR972(日本アエロジル社製 比表面積(BET法):110m/g)
〔フェノール樹脂〕
フェノール・ホルムアルデヒド樹脂H−1(明和化成株式会社製)
〔多孔性微粒子〕
サイロホビック100(疎水性シリカゲル 富士シリシア化学株式会社製 レーザー法平均粒子径 2.7μm 比表面積(BET法):300m/g 吸油量:240ml/100g)
サイリシア310P(親水性シリカゲル 富士シリシア化学株式会社製 レーザー法平均粒子径 2.7μm 比表面積(BET法):300m/g 吸油量:310ml/100g)
サイリシア710(親水性シリカゲル 富士シリシア化学株式会社製 レーザー法平均粒子径 2.8μm 比表面積(BET法):700m/g 吸油量:100ml/100g)
【0079】
〔参考例1〕アルコール性水酸基末端イミドオリゴマー溶液の製造
窒素導入管、ディーンスタークレシバー、冷却管を備えた容量5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物1471g(5モル)、エタノール507g(11モル)及びγ−ブチロラクトン2092gを仕込み、窒素雰囲気下、90℃で1時間撹拌した。次いで、3−アミノプロパノール376g(5モル)、イソホロンジアミン426g(2.5モル)を仕込み、窒素雰囲気下、120℃で2時間、180℃2時間加熱し、イミド化反応により生じた水を反応液中に窒素を吹き込むことで除去した。このアルコール性水酸基末端イミドオリゴマー溶液は、固形分50.3%であった。
【0080】
〔参考例2〕ポリカーボネート変性ポリイミド樹脂溶液の製造
窒素導入管を備えた容量5リットルのガラス製フラスコに、クラレポリオールC−2015N 600g(0.3モル)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート188g(0.75モル)及びγ−ブチロラクトン535gを仕込み、窒素雰囲気下、60℃で3時間撹拌した。次いで、2,2−ビス(4−ヒドロキシメチル)プロピオン酸40.2g(0.3ミリモル)、参考例1で合成したアルコール性水酸基末端イミドオリゴマー溶液499g(0.3ミリモル)、γ−ブチロラクトン100gを加え、80℃で10時間撹拌した。得られた変性ポリイミド樹脂溶液は、ポリマ−固形分濃度55重量%、粘度256Pa・sの溶液であった。(対数粘度ηinhは0.230)
【0081】
〔参考例3〕ポリイミドポリシロキサン樹脂溶液の製造
容量500mlのガラス製フラスコに、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物47.1g(0.16モル)、溶媒のトリグライム(以下、TGと略記することもある。)100gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で加熱撹拌した。α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(アミノ当量460)125.1g(0.136モル)、TG40gを加え、180℃で60分加熱撹拌した。さらにこの反応溶液にビス(3−カルボキシ−4−アミノフェニル)メタン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシフェニルメタン)6.9g(0.024モル)及びTG39gを加え、180℃で15時間加熱撹拌した後、濾過を行った。得られたポリイミドシロキサン反応溶液は、ポリマ−固形分濃度50重量%、ηinh0.200の溶液であった。イミド化率は実質的に100%であった。
【0082】
〔実施例1〕
ガラス製の容器に、参考例2で得たポリカーボネート変性ポリイミド樹脂溶液に、ポリカーボネート変性ポリイミド樹脂100質量部に対して、エポキシ樹脂(エポリード2021P)を10質量部、ブロックイソシアネート(タケネートB830)を20質量部、ブロックイソシアネート(デュラネートME20−B80S)を30質量部、フェノール樹脂H−1を2.5部、硬化触媒DBUを0.5質量部、キュアゾール2E4MZを0.5部、消泡剤OX−881及びγ−ブチロラクトンを60質量部加え、均一に撹拌・混合した。更にフィラーとしてアエロジルR972を7質量部、多孔性微粒子として多孔性シリカ サイロホビックを2質量部を加え混合した後、3本ロールを用い混練し、ポリカーボネート変性ポリイミド樹脂組成物を得た。この組成物の熱硬化もしくは遠赤外線硬化により、所定の厚さの評価用の膜を形成し、SUS面及びポリイミドとのタック性、表面硬度、初期弾性率、ハンダ耐熱性、及び反りについて評価した。
【0083】
〔実施例2〜6〕
多孔性微粒子として、表1に記載した多孔性シリカを添加した以外は実施例1と同様にしてオーバーコート層用組成物を得た。このオーバーコート層用組成物について、実施例1と同様にして評価した。それらの結果を表1に示す。
【0084】
〔実施例7〕
ガラス製の容器に、参考例3で得たポリイミドシロキサン樹脂溶液に、ポリイミドシロキサン樹脂100質量部に対して、エポキシ樹脂(エピコート828EL)を18質量部、硬化触媒2E4MZを0.2部、及び消泡剤DB−100を6質量部加え、均一に撹拌・混合した。更にフィラーとしてアエロジル130を23質量部、多孔性微粒子として多孔性シリカ(サイリシア310P)を10質量部加え混合した後、3本ロールを用い混練し、オーバーコート層用組成物を得た。このオーバーコート層用組成物について、実施例1と同様にして評価した。それらの結果を表1に示す。
【0085】
〔比較例1〕
多孔性シリカを添加せずに実施例1と同様に配合を行い、ポリカーボネート変性ポリイミド組成物を得た。このオーバーコート層用組成物について、実施例1と同様にして評価した。それらの結果を表1に示す。この組成物の熱硬化もしくは遠赤外線硬化により得た膜は、SUS面及びポリイミドとの耐タック性を満足できるものではなかった。
【0086】
〔比較例2〕
多孔性シリカを添加せずに実施例3と同様に配合を行い、ポリイミドシロキサン樹脂組成物を得た。このオーバーコート層用組成物について、実施例1と同様にして評価した。それらの結果を表1に示す。この組成物の熱硬化もしくは遠赤外線硬化により得た評価用膜は、SUS面及びポリイミドとの耐タック性を満足できるものではなかった。
【0087】
〔比較例3〕
多孔性微粒子として、表1に記載した多孔性シリカを添加した以外は実施例1と同様にしてオーバーコート層用組成物を得た。このオーバーコート層用組成物について、実施例1と同様にして評価した。それらの結果を表1に示す。この組成物では、テープキャリアパッケージ用配線基板のオーバーコート層に求められる低反り性を満足できるものではなかった。
【0088】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、タック性が低減されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板、及びそれを用いて形成されたテープキャリアパッケージを提供することができる。この結果、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板をリール巻きにするときの剥離フィルムの削減、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板の製造工程における生産性の向上、及びテープキャリアパッケージ用柔軟性配線基板の実装工程における搬送性の向上などが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明のテープキャリアパッケージの代表的な一例を部分的に示す概略の平面図である。
【図2】図1のA−A’線における部分的な断面図である。
【図3】本発明のテープキャリアパッケージの他の代表的な一例を部分的に示す概略の平面図である。
【図4】図3のB−B’線における部分的な断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 絶縁フィルム
2 接着剤層
3 配線パターン
3a インナーリード(配線パターン)
3b アウターリード(配線パターン)
3c テストパッド(配線パターン)
4 デバイスホール
5 折り曲げスリット
6 バンプ
7 半導体チップ
8 フレックス樹脂層
9 オーバーコート層(ソルダーレジスト層)
10 半導体封止樹脂
11 パーフォレーションホール(スプロケットホール)
12 絶縁フィルム
13 配線パターン
13a インナーリード(配線パターン)
13b アウターリード(配線パターン)
13c テストパッド(配線パターン)
14 バンプ
15 半導体チップ
16 オーバーコート層(ソルダーレジスト層)
17 アンダーフィル剤
18 パーフォレーションホール(スプロケットホール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁フィルム、
この絶縁フィルムの表面に形成された配線パターン、および
樹脂硬化物と多孔性微粒子を含み、前記配線パターンの少なくとも一部を保護するオーバーコート層
を備えることを特徴とするテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項2】
前記オーバーコート層のタック性が、140℃でSUSに張り付かず且つ60℃でポリイミドに張り付かない条件を満たすことを特徴とする請求項1記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項3】
前記多孔性微粒子が、前記樹脂硬化物100質量部に対して、0.1〜50質量部の割合で含有されていることを特徴とする請求項1または2記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項4】
前記多孔性微粒子の平均粒子径が、前記オーバーコート層の厚さより小さく、
前記多孔性微粒子は、オーバーコート層の厚み方向の中心部より、表面に多く存在していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項5】
前記多孔性微粒子の平均粒子径が30μm以下で且つ比表面積が200m/g以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項6】
前記多孔性微粒子の細孔容積が、JIS K 5101−13−1の精製あまに油法の吸油量に換算して0.1ml/g以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項7】
前記多孔性微粒子が、多孔性シリカであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項8】
前記樹脂硬化物が、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミドシロキサン樹脂および変性ポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂の硬化物を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項9】
前記樹脂硬化物が、遠赤外線により加熱処理されて硬化されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項10】
剥離フィルムを介さないでリール巻きされたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板を用いて形成されたことを特徴とするテープキャリアパッケージ。
【請求項12】
多孔性微粒子と硬化性樹脂とを含有し、硬化後に、前記多孔性微粒子が存在しないときに比べて硬化物の表面のタック性が低減されることを特徴とするオーバーコート用硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
硬化後に、140℃でSUSに張り付かず且つ60℃でポリイミドに張り付かない条件のタック性を示すことを特徴とする請求項12記載のオーバーコート用硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
前記硬化性樹脂が、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミドシロキサン樹脂および変性ポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂を含むことを特徴とする請求項12または13記載のオーバーコート用硬化性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−16671(P2009−16671A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178752(P2007−178752)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】