ディスクブレーキの防振ゴムによるブレーキトルク受け機構
【課題】パッドの巻き込みによりブレーキアームに発生する回転モーメントを打ち消すことができるディスクブレーキの防振ゴムによるブレーキトルク受け機構を提供する。
【解決手段】基体2と、その基体に対して支持ピンを介して支持された一対のブレーキアーム1と、基体側に設けたアクチュエータの作動により前記一対のブレーキアームの一端部を揺動・押圧しブレーキパッドをディスクロータに押圧するように構成したディスクブレーキにおいて、前記ブレーキアームを基体に取り付けた支持ピン3の両端2点で支持する構成を採用しており、さらに前記ブレーキアームの支持ピン3による支持部には、防振ゴム5を設けたことを特徴としている。このような構成とすることで、防振ゴムの作用によりブレーキ作動時に、ブレーキディスクロータとブレーキ間に倒れが発生してもブレーキ開放時にはブレーキパッドを元の状態に復帰させることができる。
【解決手段】基体2と、その基体に対して支持ピンを介して支持された一対のブレーキアーム1と、基体側に設けたアクチュエータの作動により前記一対のブレーキアームの一端部を揺動・押圧しブレーキパッドをディスクロータに押圧するように構成したディスクブレーキにおいて、前記ブレーキアームを基体に取り付けた支持ピン3の両端2点で支持する構成を採用しており、さらに前記ブレーキアームの支持ピン3による支持部には、防振ゴム5を設けたことを特徴としている。このような構成とすることで、防振ゴムの作用によりブレーキ作動時に、ブレーキディスクロータとブレーキ間に倒れが発生してもブレーキ開放時にはブレーキパッドを元の状態に復帰させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体側に設けたアクチュエータの作動により一対のブレーキアームの一端部を揺動・押圧し前記ブレーキアームの他端部に設置されたブレーキパッドをディスクロータに押圧挟持するように構成したディスクブレーキにおいて、ブレーキ作動時にブレーキパッドの巻き込み作動によりブレーキアームに発生する回転モーメントを打ち消すことができるディスクブレーキの防振ゴムによるブレーキトルク受け機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両において使用されるディスクブレーキ装置にあって、特に鉄道車両用のディスクブレーキ(鉄道車両用キャリパブレーキ)では、ブレーキが取り付けられるばね上とディスクロータが取り付けられるばね下との相対移動が大きいことから、これに対応できる機構が要求され、一般的には大きな相対移動に容易に適応できるリンクの連結による梃子式のブレーキが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−315422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例について、図11を参照して構成を簡単に説明すると、この鉄道ディスクブレーキ装置(鉄道車両用キャリパブレーキ)は、ディスクDを挟圧するところのブレーキパッドを取着したブレーキヘッド207、207がそれぞれ取り付けられた2つのキャリパレバー(ブレーキアーム)206、206と、進出方向または退避方向の少なくともいずれか一方へ駆動される可動ロッド215を備えるアクチュエータ214を備えており、また、このディスクブレーキ装置201は、可動ロッド215に枢結される回転伝達アーム216と、この回転伝達アーム216に係合する伸縮軸210を備えている。この装置では、アクチュエータ214の可動ロッド215の進出に伴う回転伝達アーム216の押出し回転により、ネジ機構によってネジ体213が外方へ押し出されて、ブレーキアーム206、206を支持ピン205の回りにて揺動させ、ブレーキパッドを取着したブレーキヘッド207、207がディスクDを挟圧して、ブレーキ動作が行われる。ブレーキパッドが摩耗すると、回転伝達アーム216の超過ストロークにより、基体に固定された隙間調整棒221にカム板219の切欠部220の端部が接触して、ウォームギヤ217が回転し、隙間調整ギヤ218が回転して自動隙間調整がなされる。
【0005】
前記従来例のものでは、可動ロッド215の進出動作は、回転伝達アーム216を介して伸縮軸210の伸張動作に変換され、かつ、その力を増力されてキャリパレバー206、206に伝達されることとなっている。しかも、増力変換機構を構成する回転伝達アーム216に、カム板219、切欠部220、ウォームギヤ217、隙間調整ギヤ218等からなる隙間調整機構が設けられているため、ディスクDとブレーキパッドとの隙間を自動調整できる高機能なディスクブレーキ装置201のコンパクトな構成が提供できる。
【0006】
ところで前記した従来型鉄道車両用キャリパブレーキでは、ブレーキパッドが取りつけられるバネ上とディスクが取りつけられるバネ下との相対変位が大きいため、ブレーキ部分とディスクとの間に倒れが発生することがある。もし、ディスクとブレーキ部との間に倒れが発生すると、ライニング(摩擦材)の引きずり、磨耗に繋がる。こうした事態に対応するため、図11の従来例ではパッドのブレーキトルクを受けるアーム206がボディ205と支点軸のボルトで締結され車輪左右動(枕木方向)へ追従する。また車輪のローリングに対してはボディ205とサポート202を係合するボルトによってボディ全体を振り子状態でハンギング(吊り下げ式)して対応している。この様に車輪追従のためにボディ全体を揺さぶる構造において、各部の強度を考慮し、軽量に設計することが難しかった。
【0007】
そこで本発明は、ディスクブレーキ(鉄道車両用キャリパブレーキ)において、ブレーキ作動時にブレーキパッド側に発生するブレーキ接線力(ブレーキパッド巻き込み作用)によってブレーキアームに発生するモーメントを確実に打ち消すことができる2点支持防振ゴムによるブレーキトルク受け機構を提供し、前記モーメントの打ち消し作用によりブレーキパッドの偏摩耗を抑制することができる。
また、前記2点支持防振ゴムにより、ブレーキ作動時に、ディスクロータとブレーキパッド間に倒れが発生してもブレーキ開放時には防振材の弾性力(反力)によりブレーキパッドを元の状態に復帰させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明は、本発明が採用した課題を解決するための手段は、
基体と、その基体に対して支持ピンを介して旋回および揺動可能に支持された一対のブレーキアームと、基体側に設けたアクチュエータの作動により前記一対のブレーキアームの一端部を揺動・押圧し前記ブレーキアームの他端部に設置されたブレーキパッドをディスクロータに押圧するように構成したディスクブレーキにおいて、前記ブレーキアームは基体に取り付けた支持ピンで支持されており、前記ブレーキアームの支持ピンによる支持部には、防振ゴムを設けたことを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記基体に取り付けた支持ピンは、両端2点で支持されており、少なくとも同支持部の1点には防振ゴムが設けられていることを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記防振ゴムは、インナ、アウタとそれらの間に設けた振動防止ゴムで構成されていることを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記基体に取り付ける支持ピンは、テーパローラベアリングを介して基体に取り付けられていることを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記防振ゴムにはブレーキアームの外側に位置する部分に鍔を設けたことを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記防振ゴムのインナ、アウタの少なくとも一方にはブレーキアームの外側に位置する部分に鍔を設けたことを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記防振ゴムのインナには基体部分に取り付けたスリーブと係合する回転止めを設けたことを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記回転止めは、前記防振ゴムのインナと、そのインナ間に配置されるスリーブの両者に互いの相対回転を禁止する凹凸部で形成され、前記凹凸部を係合嵌合させることにより回転を防止することを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、
基体にブレーキアームを支持する支持部に、ブレーキ作動時にブレーキパッドの巻き込みによりブレーキアームに発生するモーメントを打ち消すことができる防振ゴムを設けたことにより、ブレーキ接線力(ブレーキパッド巻き込み力)によりブレーキアームに発生するモーメントを減少させることができる。
また、本願発明に係る2点支持防振ゴムによるトルク受け機構では、防振ゴムがパッド接線力方向の力によるテコ部の回転を打ち消す方向に働くように作用するため、パッドの偏摩耗を防止することができる。
また、ブレーキアームを支持する支持ピンを基体に取り付ける取り付け部にテーパローラベアリングを配置することにより、パッド接線方向の力をテーパローラベアリング部で確実に受けることができる。
また、防振ゴムのブレーキアームの外側に位置するインナ、アウタ、振動防止ゴムのいずれかには、鍔を形成することによりパッド接線方向の力を鍔部で確実に受けることができる。
また、防振ゴムのインナには基体部分に配置したスリーブと係合する回転止めを設けることにより、基体とブレーキアームとの間に相対的な変位が発生することを防止できる。 さらに、前記回転止めを、前記防振ゴムのインナと、そのインナ間に配置されるスリーブの両者に互いの相対回転を禁止する凹凸部で構成することにより、両者の一体化を確実にすることができる。
防振ゴムを使用することにより、防振ゴムの径方向の弾性力により、ブレーキ時のゴムの撓みによる支点位置のズレを最小限とすることができる。
テコ部(支持部)にブレーキ接線力が加わった場合、防振ゴムのつば部の圧縮力でブレーキ接線力を受けることができる。
また、防振ゴムインナ+スリーブインナとすることによって、ボルト締結した時に規定以上の軸力がつば部に挟まれているゴムに加わらないようにしている。
以上のように、防振ゴムの作用によりブレーキ作動時に、ブレーキディスクロータとブレーキ間に倒れが発生してもブレーキ開放時にはブレーキパッドを元の状態に復帰させることができる等々の特有の優れた作用効果を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、基体と、その基体に対して支持ピンを介して旋回および揺動可能に支持された一対のブレーキアームと、基体側に設けたアクチュエータの作動により前記一対のブレーキアームの一端部を揺動・押圧し前記ブレーキアームの他端部に設置されたブレーキパッドをディスクロータに押圧するように構成したディスクブレーキにおいて、前記ブレーキアームを基体に取り付けた支持ピンの両端2点で支持する構成を採用しており、さらに前記ブレーキアームの支持ピンによる支持部には、防振ゴムを設けたことを特徴としている。このような構成とすることで、防振ゴムの作用によりブレーキ作動時に、ブレーキディスクロータとブレーキ間に倒れが発生してもブレーキ開放時にはブレーキパッドを元の状態に復帰させることができ、また簡素な構成を実現できる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明に係るディスクブレーキの好適な実施例を図面に基づいて説明すると、図1は本発明のディスクブレーキの正面図であり、図2は同ブレーキの側面図、図3は同ブレーキの平面図、図4はブレーキアームの作動を説明するための斜視図、図5は基体とブレーキアームとを支持する第1実施例としての支持ピン部の拡大図、図6は基体とブレーキアームとを支持する第2実施例としての支持ピン部の拡大図、図7は防振ゴムの平面図である。
【0012】
図1〜図3を参照して本発明に係るディスクブレーキの概略的な構成を説明すると、同キャリパブレーキは、図示せぬディスクロータに対向して配置された一対のブレーキアーム1を備えており、このブレーキアーム1はキャリパブレーキの基体2に対して軸(支持ピン)3を中心に揺動できるように軸支持されている。ブレーキアーム1の図中下端にはパッドホルダ4を介して公知のブレーキパッド4aが取りつけられており、またブレーキアーム1の図中上端にはブレーキアーム1を拡開作動する不図示のアクチュエータが結合されている。
これらの基本的な構成は従来のディスクブレーキと同様でありさらに詳細な説明は省略する。
【0013】
図5を参照して第1実施例としての支持ピン3部の構成を説明する。
ブレーキアーム1は基体2に対して支持ピン3によって軸支持されており、ブレーキアーム1と支持ピン3との間には防振ゴム5が配置されている。
具体的には、基体2には支持ピン3が圧入貫通保持され、支持ピン3の両端にはブレーキアーム1が後述する防振ゴム5を介して2点で支持されている。支持ピン3にはカラー6が装着され、そのカラー6とブレーキアーム1との間に防振ゴム5が配置される。防振ゴム5は図7に示す平面形状をしており、図5に示すように金属性のインナ5aとアウタ5cの間に振動防止ゴム5bが加硫接着されて構成されている。また図5中、前記2点支持部にはカラー6が配置され、このカラー6には鍔6aが形成されており、さらに、前記カラー6の一部6bが基体2内に挿入されている。前記支持ピン3の一端側(図5中左側)にも鍔3aが形成されている。前記支持ピン3には前記カラー、防振ゴムを介してブレーキアームが取り付けられるが、この時、防振ゴムは圧入により支持ピン部に取り付けられ、防振ゴム留輪8により固定される。この状態でナット7により締め付けると、支持ピン3の鍔3aとナット7の作用によりブレーキアーム1を基体2に対して防振ゴム5bで支持することになり、ゴムの弾性により揺動および回転(ねじれ)可能に支持する。なお、図5中、9は軸用ワッシャである。
【0014】
上記構成からなるディスクブレーキの作動を説明する。
このディスクブレーキでは図示せぬアクチュエータを作動するとブレーキアーム1が支持ピン3を中心に拡開方向に移動し、これに伴ってブレーキアーム1下端に設けたブレーキパッド4aがディスクロータを押圧・挟持してブレーキを働かせることができる。
【0015】
図4において、ブレーキ作動すると、ブレーキパッドを保持するパッドホルダ4には図4中A矢印で示す方向にブレーキ接線力が働き、この接線力はブレーキアーム1にも作用し、この時のブレーキアーム1の接線方向の移動を支持ピン3両端に配置した防振ゴム5のせん断力により受け止める。さらにブレーキ接線力はブレーキパッド4aに巻き込み力を発生し、この巻き込み作用によりブレーキパッド4aに回転モーメントが働くが、この回転モーメントはブレーキアーム1にも作用する。しかし、このブレーキアーム1の回転モーメントも前記防振ゴム5の径方向の弾性力により吸収され、抑制され、ブレーキパッド4aの偏摩耗を確実に防止することができる。
【0016】
次に図6を参照して第2実施例としての支持ピン部分の構成を説明する。第2実施例は基体2と支持ピン3との部分にテーパローラベアリング10を設けた点で第1実施例と相違しており、その他は第2実施例も第1実施例と同様に、ブレーキアーム1は基体2に対して支持ピン3によって軸支持されており、ブレーキアーム1と支持ピン3との間には第1実施例と同様に防振ゴム5が配置されている。そして第1実施例と同じく、支持ピン3にはカラー6が装着され、そのカラー6とブレーキアーム1との間に防振ゴム5が圧入されている。防振ゴム5は第1実施例と同様の形状をしており、防振ゴム5は金属性のインナ5aとアウタ5cの間に振動防止ゴム5bが加硫接着されて構成されている。本実施例では防振ゴムのカラー6とテーパローラベアリング10のインナとが接触するように配置され、この構成によりブレーキ接線力がテーパローラベアリング10に伝わるようになっている。また、ディスクの倒れによる支持部の移動量は防振ゴム5の径方向の弾性力により吸収する。本実施例のように基体2と支持ピン3の間にテーパローラベアリング10を配置することにより、ブレーキパッド4a接線方向の力をテーパローラベアリング10で確実に受けることができる。図6の構成は支点ボルトを軸回転自由として、防振ゴムへのねじれを防止したことが特徴である。
【0017】
さらに図8〜図9を参照して第3実施例としての支持ピン3部の構成を説明する。図8は基体2とブレーキアーム1とを支持する第3実施例としての支持ピン部の拡大図、図9(a)は基体2と支持ピン3との間に配置するスリーブ11の平面図、(b)は同スリーブ11の断面図、図9(c)は基体2と支持ピン3との間に配置する防振ゴム5の平面図、(d)は同防振ゴム5の断面図である。第3実施例は基体2と支持ピン3との間に配置するスリーブ11と防振ゴム5との間に回転止め手段を設けた点に特徴がある。
図8に示すように、防振ゴム5には図に示す如くインナー5a、アウター5cのそれぞれに防振ゴム5の軸方向への移動を防止する鍔5d、5eが形成されている。なお、前記鍔5d、5eはインナー、アウターの内のいずれか一つに設けることもできる。
【0018】
防振ゴム5のインナー5aには図9(d)に示すように後述するスリーブ11と係合する凹部5fが形成されている。一方、支持ピン3と基体2との間には二つのスリーブ11が配置されている。前記スリーブ11はそれぞれ金属材料によって図9(b) に示すように鍔付き部品として構成されており、さらにスリーブ11には図9(a)に示すように前記防振ゴム5のインナ側と当接する部分に、防振ゴム5のインナー側に形成した凹部5fに嵌合する凸部11bが適宜個数形成されており、前記インナ側の凹部5fとスリーブ11に形成した凸部11bを嵌合できる構成として回転止めとしている。なお、二つのスリーブ11同士の間にも同様の回り止め手段11e、11fが設けられている。またスリーブ11の外側には無給油式の低摩擦ベアリング12が取り付けられる。
【0019】
図8に示すように基体2と支持ピン3との間に前記スリーブ11を配置し、シール13を介してストップリング14によりスリーブ11を基体2側に固定する。このように基体2と支持ピン3の間にスリーブ11を介在させ、さらにこのスリーブ11と防振ゴム5側のインナーとを回転止め手段により結合することによりナット7を締め上げる時に、ボルト及び座面間の摩擦による防振ゴムのねじれを防止することができ(図10参照)、ブレーキアーム1と基体2との相対回転を可能とする。さらにパッド4a接線方向の力をスリーブ11部分で確実に受けることができる。また、ブレーキアーム支持部にブレーキ接線力が加わった場合、接線力は防振ゴム5を経由し基体のスリーブ11に伝わる。スリーブ11に伝わった接線力はスリーブ11の鍔11aを介して基体2にも加わるため、ブレーキ接線力が加わりながら支持ピンが回転する場合でも回転抵抗を減少させることができる。なお、防振ゴム5およびスリーブ11に形成する回転止め構成として、インナー側を凸部にスリーブ側を凹部にしたり、あるいは交互に凹凸を形成したものでもよい。さらに相対回転を防止する種々の形状を採用することができる。図10に防振ゴム5、スリーブ11との配置関係斜視図を示す。
【0020】
ところで、上記ディスクブレーキにおいては、ブレーキ作動時にはブレーキ接線力等の力によりブレーキパッド4a側とディスクロータ側との間に相対変位が生じるが、ブレーキ開放時にはディスクロータとブレーキパッド4aが元の位置に戻ることが重要である。もし、ブレーキパッド4aが元の位置に復帰しない場合には、両者の間の位置関係がずれ、ブレーキパッド4aの引きずり、摩耗が発生することがある。このため、本発明では、仮にブレーキ作動時にディスクロータに倒れが生じても、支持ピン3の両端に配置した2個の防振ゴム5の復元力でブレーキ開放時にディスクロータとブレーキパッド4aが元の位置に戻ることになる。
【0021】
より詳細には、ディスクロータが倒れることによりディスクロータがブレーキパッド4aに当たり、ブレーキパッド4aはディスクロータに押されて傾こうとする。ディスクロータに倒れが生じると防振ゴム5を撓ませながらブレーキパッド4aがディスクロータに追従する。ブレーキが開放されディスクロータの倒れが無くなると、防振ゴム5の反力でブレーキアーム1、即ちブレーキパッド4aが元の位置(元の姿勢)へ戻り、ブレーキパッド4aの引きずり、摩耗、破損等を防止することができる。こうして、防振ゴムを採用することで、ブレーキ作動時に、ディスクロータとブレーキ間に倒れが発生してもブレーキ開放時にはブレーキパッド4aを元の状態に復帰させることができる。
【0022】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、トルク受けとしての機能を有する防振ゴムの材質、形状等を適宜変更することができる。また回転止め機構も当接する部品同士の相対回転を確実に止めることができる機構であれば種々の機構を採用することができる。
前述した実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、鉄道用ブレーキキャリパに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のディスクブレーキの正面図である。
【図2】同ブレーキの側面図である。
【図3】同ブレーキの平面図である。
【図4】ブレーキアームの作動を説明するための斜視図である。
【図5】基体とブレーキアームとを支持する第1実施例としての支持ピン部の拡大図である。
【図6】基体とブレーキアームとを支持する第2実施例としての支持ピン部の拡大図である。
【図7】防振ゴムの平面図である。
【図8】基体2とブレーキアーム1とを支持する第3実施例としての支持ピン部の拡大図である。
【図9】(a)は基体2と支持ピン3との間に配置するスリーブ11の平面図、(b)は同スリーブ11の断面図、(c)は基体2と支持ピン3との間に配置する防振ゴム5の平面図、(d)は同防振ゴム5の断面図である。
【図10】防振ゴム、スリーブとの配置関係斜視図を示す。
【図11】従来の鉄道車両用キャリパブレーキの説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ブレーキアーム
2 基体 3 支持ピン
3 鍔
4 パッドホルダ
4a ブレーキパッド
5 防振ゴム
5a インナー
5b 振動防止ゴム
5c アウタ
6 カラー
6a 鍔
7 ナット
8 防振ゴム用留輪
9 軸用ワッシャ
10 テーパローラベアリング
11 スリーブ
11a 凹部
12 低摩擦ベアリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体側に設けたアクチュエータの作動により一対のブレーキアームの一端部を揺動・押圧し前記ブレーキアームの他端部に設置されたブレーキパッドをディスクロータに押圧挟持するように構成したディスクブレーキにおいて、ブレーキ作動時にブレーキパッドの巻き込み作動によりブレーキアームに発生する回転モーメントを打ち消すことができるディスクブレーキの防振ゴムによるブレーキトルク受け機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両において使用されるディスクブレーキ装置にあって、特に鉄道車両用のディスクブレーキ(鉄道車両用キャリパブレーキ)では、ブレーキが取り付けられるばね上とディスクロータが取り付けられるばね下との相対移動が大きいことから、これに対応できる機構が要求され、一般的には大きな相対移動に容易に適応できるリンクの連結による梃子式のブレーキが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−315422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例について、図11を参照して構成を簡単に説明すると、この鉄道ディスクブレーキ装置(鉄道車両用キャリパブレーキ)は、ディスクDを挟圧するところのブレーキパッドを取着したブレーキヘッド207、207がそれぞれ取り付けられた2つのキャリパレバー(ブレーキアーム)206、206と、進出方向または退避方向の少なくともいずれか一方へ駆動される可動ロッド215を備えるアクチュエータ214を備えており、また、このディスクブレーキ装置201は、可動ロッド215に枢結される回転伝達アーム216と、この回転伝達アーム216に係合する伸縮軸210を備えている。この装置では、アクチュエータ214の可動ロッド215の進出に伴う回転伝達アーム216の押出し回転により、ネジ機構によってネジ体213が外方へ押し出されて、ブレーキアーム206、206を支持ピン205の回りにて揺動させ、ブレーキパッドを取着したブレーキヘッド207、207がディスクDを挟圧して、ブレーキ動作が行われる。ブレーキパッドが摩耗すると、回転伝達アーム216の超過ストロークにより、基体に固定された隙間調整棒221にカム板219の切欠部220の端部が接触して、ウォームギヤ217が回転し、隙間調整ギヤ218が回転して自動隙間調整がなされる。
【0005】
前記従来例のものでは、可動ロッド215の進出動作は、回転伝達アーム216を介して伸縮軸210の伸張動作に変換され、かつ、その力を増力されてキャリパレバー206、206に伝達されることとなっている。しかも、増力変換機構を構成する回転伝達アーム216に、カム板219、切欠部220、ウォームギヤ217、隙間調整ギヤ218等からなる隙間調整機構が設けられているため、ディスクDとブレーキパッドとの隙間を自動調整できる高機能なディスクブレーキ装置201のコンパクトな構成が提供できる。
【0006】
ところで前記した従来型鉄道車両用キャリパブレーキでは、ブレーキパッドが取りつけられるバネ上とディスクが取りつけられるバネ下との相対変位が大きいため、ブレーキ部分とディスクとの間に倒れが発生することがある。もし、ディスクとブレーキ部との間に倒れが発生すると、ライニング(摩擦材)の引きずり、磨耗に繋がる。こうした事態に対応するため、図11の従来例ではパッドのブレーキトルクを受けるアーム206がボディ205と支点軸のボルトで締結され車輪左右動(枕木方向)へ追従する。また車輪のローリングに対してはボディ205とサポート202を係合するボルトによってボディ全体を振り子状態でハンギング(吊り下げ式)して対応している。この様に車輪追従のためにボディ全体を揺さぶる構造において、各部の強度を考慮し、軽量に設計することが難しかった。
【0007】
そこで本発明は、ディスクブレーキ(鉄道車両用キャリパブレーキ)において、ブレーキ作動時にブレーキパッド側に発生するブレーキ接線力(ブレーキパッド巻き込み作用)によってブレーキアームに発生するモーメントを確実に打ち消すことができる2点支持防振ゴムによるブレーキトルク受け機構を提供し、前記モーメントの打ち消し作用によりブレーキパッドの偏摩耗を抑制することができる。
また、前記2点支持防振ゴムにより、ブレーキ作動時に、ディスクロータとブレーキパッド間に倒れが発生してもブレーキ開放時には防振材の弾性力(反力)によりブレーキパッドを元の状態に復帰させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明は、本発明が採用した課題を解決するための手段は、
基体と、その基体に対して支持ピンを介して旋回および揺動可能に支持された一対のブレーキアームと、基体側に設けたアクチュエータの作動により前記一対のブレーキアームの一端部を揺動・押圧し前記ブレーキアームの他端部に設置されたブレーキパッドをディスクロータに押圧するように構成したディスクブレーキにおいて、前記ブレーキアームは基体に取り付けた支持ピンで支持されており、前記ブレーキアームの支持ピンによる支持部には、防振ゴムを設けたことを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記基体に取り付けた支持ピンは、両端2点で支持されており、少なくとも同支持部の1点には防振ゴムが設けられていることを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記防振ゴムは、インナ、アウタとそれらの間に設けた振動防止ゴムで構成されていることを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記基体に取り付ける支持ピンは、テーパローラベアリングを介して基体に取り付けられていることを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記防振ゴムにはブレーキアームの外側に位置する部分に鍔を設けたことを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記防振ゴムのインナ、アウタの少なくとも一方にはブレーキアームの外側に位置する部分に鍔を設けたことを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記防振ゴムのインナには基体部分に取り付けたスリーブと係合する回転止めを設けたことを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
また、前記回転止めは、前記防振ゴムのインナと、そのインナ間に配置されるスリーブの両者に互いの相対回転を禁止する凹凸部で形成され、前記凹凸部を係合嵌合させることにより回転を防止することを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構である。
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、
基体にブレーキアームを支持する支持部に、ブレーキ作動時にブレーキパッドの巻き込みによりブレーキアームに発生するモーメントを打ち消すことができる防振ゴムを設けたことにより、ブレーキ接線力(ブレーキパッド巻き込み力)によりブレーキアームに発生するモーメントを減少させることができる。
また、本願発明に係る2点支持防振ゴムによるトルク受け機構では、防振ゴムがパッド接線力方向の力によるテコ部の回転を打ち消す方向に働くように作用するため、パッドの偏摩耗を防止することができる。
また、ブレーキアームを支持する支持ピンを基体に取り付ける取り付け部にテーパローラベアリングを配置することにより、パッド接線方向の力をテーパローラベアリング部で確実に受けることができる。
また、防振ゴムのブレーキアームの外側に位置するインナ、アウタ、振動防止ゴムのいずれかには、鍔を形成することによりパッド接線方向の力を鍔部で確実に受けることができる。
また、防振ゴムのインナには基体部分に配置したスリーブと係合する回転止めを設けることにより、基体とブレーキアームとの間に相対的な変位が発生することを防止できる。 さらに、前記回転止めを、前記防振ゴムのインナと、そのインナ間に配置されるスリーブの両者に互いの相対回転を禁止する凹凸部で構成することにより、両者の一体化を確実にすることができる。
防振ゴムを使用することにより、防振ゴムの径方向の弾性力により、ブレーキ時のゴムの撓みによる支点位置のズレを最小限とすることができる。
テコ部(支持部)にブレーキ接線力が加わった場合、防振ゴムのつば部の圧縮力でブレーキ接線力を受けることができる。
また、防振ゴムインナ+スリーブインナとすることによって、ボルト締結した時に規定以上の軸力がつば部に挟まれているゴムに加わらないようにしている。
以上のように、防振ゴムの作用によりブレーキ作動時に、ブレーキディスクロータとブレーキ間に倒れが発生してもブレーキ開放時にはブレーキパッドを元の状態に復帰させることができる等々の特有の優れた作用効果を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、基体と、その基体に対して支持ピンを介して旋回および揺動可能に支持された一対のブレーキアームと、基体側に設けたアクチュエータの作動により前記一対のブレーキアームの一端部を揺動・押圧し前記ブレーキアームの他端部に設置されたブレーキパッドをディスクロータに押圧するように構成したディスクブレーキにおいて、前記ブレーキアームを基体に取り付けた支持ピンの両端2点で支持する構成を採用しており、さらに前記ブレーキアームの支持ピンによる支持部には、防振ゴムを設けたことを特徴としている。このような構成とすることで、防振ゴムの作用によりブレーキ作動時に、ブレーキディスクロータとブレーキ間に倒れが発生してもブレーキ開放時にはブレーキパッドを元の状態に復帰させることができ、また簡素な構成を実現できる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明に係るディスクブレーキの好適な実施例を図面に基づいて説明すると、図1は本発明のディスクブレーキの正面図であり、図2は同ブレーキの側面図、図3は同ブレーキの平面図、図4はブレーキアームの作動を説明するための斜視図、図5は基体とブレーキアームとを支持する第1実施例としての支持ピン部の拡大図、図6は基体とブレーキアームとを支持する第2実施例としての支持ピン部の拡大図、図7は防振ゴムの平面図である。
【0012】
図1〜図3を参照して本発明に係るディスクブレーキの概略的な構成を説明すると、同キャリパブレーキは、図示せぬディスクロータに対向して配置された一対のブレーキアーム1を備えており、このブレーキアーム1はキャリパブレーキの基体2に対して軸(支持ピン)3を中心に揺動できるように軸支持されている。ブレーキアーム1の図中下端にはパッドホルダ4を介して公知のブレーキパッド4aが取りつけられており、またブレーキアーム1の図中上端にはブレーキアーム1を拡開作動する不図示のアクチュエータが結合されている。
これらの基本的な構成は従来のディスクブレーキと同様でありさらに詳細な説明は省略する。
【0013】
図5を参照して第1実施例としての支持ピン3部の構成を説明する。
ブレーキアーム1は基体2に対して支持ピン3によって軸支持されており、ブレーキアーム1と支持ピン3との間には防振ゴム5が配置されている。
具体的には、基体2には支持ピン3が圧入貫通保持され、支持ピン3の両端にはブレーキアーム1が後述する防振ゴム5を介して2点で支持されている。支持ピン3にはカラー6が装着され、そのカラー6とブレーキアーム1との間に防振ゴム5が配置される。防振ゴム5は図7に示す平面形状をしており、図5に示すように金属性のインナ5aとアウタ5cの間に振動防止ゴム5bが加硫接着されて構成されている。また図5中、前記2点支持部にはカラー6が配置され、このカラー6には鍔6aが形成されており、さらに、前記カラー6の一部6bが基体2内に挿入されている。前記支持ピン3の一端側(図5中左側)にも鍔3aが形成されている。前記支持ピン3には前記カラー、防振ゴムを介してブレーキアームが取り付けられるが、この時、防振ゴムは圧入により支持ピン部に取り付けられ、防振ゴム留輪8により固定される。この状態でナット7により締め付けると、支持ピン3の鍔3aとナット7の作用によりブレーキアーム1を基体2に対して防振ゴム5bで支持することになり、ゴムの弾性により揺動および回転(ねじれ)可能に支持する。なお、図5中、9は軸用ワッシャである。
【0014】
上記構成からなるディスクブレーキの作動を説明する。
このディスクブレーキでは図示せぬアクチュエータを作動するとブレーキアーム1が支持ピン3を中心に拡開方向に移動し、これに伴ってブレーキアーム1下端に設けたブレーキパッド4aがディスクロータを押圧・挟持してブレーキを働かせることができる。
【0015】
図4において、ブレーキ作動すると、ブレーキパッドを保持するパッドホルダ4には図4中A矢印で示す方向にブレーキ接線力が働き、この接線力はブレーキアーム1にも作用し、この時のブレーキアーム1の接線方向の移動を支持ピン3両端に配置した防振ゴム5のせん断力により受け止める。さらにブレーキ接線力はブレーキパッド4aに巻き込み力を発生し、この巻き込み作用によりブレーキパッド4aに回転モーメントが働くが、この回転モーメントはブレーキアーム1にも作用する。しかし、このブレーキアーム1の回転モーメントも前記防振ゴム5の径方向の弾性力により吸収され、抑制され、ブレーキパッド4aの偏摩耗を確実に防止することができる。
【0016】
次に図6を参照して第2実施例としての支持ピン部分の構成を説明する。第2実施例は基体2と支持ピン3との部分にテーパローラベアリング10を設けた点で第1実施例と相違しており、その他は第2実施例も第1実施例と同様に、ブレーキアーム1は基体2に対して支持ピン3によって軸支持されており、ブレーキアーム1と支持ピン3との間には第1実施例と同様に防振ゴム5が配置されている。そして第1実施例と同じく、支持ピン3にはカラー6が装着され、そのカラー6とブレーキアーム1との間に防振ゴム5が圧入されている。防振ゴム5は第1実施例と同様の形状をしており、防振ゴム5は金属性のインナ5aとアウタ5cの間に振動防止ゴム5bが加硫接着されて構成されている。本実施例では防振ゴムのカラー6とテーパローラベアリング10のインナとが接触するように配置され、この構成によりブレーキ接線力がテーパローラベアリング10に伝わるようになっている。また、ディスクの倒れによる支持部の移動量は防振ゴム5の径方向の弾性力により吸収する。本実施例のように基体2と支持ピン3の間にテーパローラベアリング10を配置することにより、ブレーキパッド4a接線方向の力をテーパローラベアリング10で確実に受けることができる。図6の構成は支点ボルトを軸回転自由として、防振ゴムへのねじれを防止したことが特徴である。
【0017】
さらに図8〜図9を参照して第3実施例としての支持ピン3部の構成を説明する。図8は基体2とブレーキアーム1とを支持する第3実施例としての支持ピン部の拡大図、図9(a)は基体2と支持ピン3との間に配置するスリーブ11の平面図、(b)は同スリーブ11の断面図、図9(c)は基体2と支持ピン3との間に配置する防振ゴム5の平面図、(d)は同防振ゴム5の断面図である。第3実施例は基体2と支持ピン3との間に配置するスリーブ11と防振ゴム5との間に回転止め手段を設けた点に特徴がある。
図8に示すように、防振ゴム5には図に示す如くインナー5a、アウター5cのそれぞれに防振ゴム5の軸方向への移動を防止する鍔5d、5eが形成されている。なお、前記鍔5d、5eはインナー、アウターの内のいずれか一つに設けることもできる。
【0018】
防振ゴム5のインナー5aには図9(d)に示すように後述するスリーブ11と係合する凹部5fが形成されている。一方、支持ピン3と基体2との間には二つのスリーブ11が配置されている。前記スリーブ11はそれぞれ金属材料によって図9(b) に示すように鍔付き部品として構成されており、さらにスリーブ11には図9(a)に示すように前記防振ゴム5のインナ側と当接する部分に、防振ゴム5のインナー側に形成した凹部5fに嵌合する凸部11bが適宜個数形成されており、前記インナ側の凹部5fとスリーブ11に形成した凸部11bを嵌合できる構成として回転止めとしている。なお、二つのスリーブ11同士の間にも同様の回り止め手段11e、11fが設けられている。またスリーブ11の外側には無給油式の低摩擦ベアリング12が取り付けられる。
【0019】
図8に示すように基体2と支持ピン3との間に前記スリーブ11を配置し、シール13を介してストップリング14によりスリーブ11を基体2側に固定する。このように基体2と支持ピン3の間にスリーブ11を介在させ、さらにこのスリーブ11と防振ゴム5側のインナーとを回転止め手段により結合することによりナット7を締め上げる時に、ボルト及び座面間の摩擦による防振ゴムのねじれを防止することができ(図10参照)、ブレーキアーム1と基体2との相対回転を可能とする。さらにパッド4a接線方向の力をスリーブ11部分で確実に受けることができる。また、ブレーキアーム支持部にブレーキ接線力が加わった場合、接線力は防振ゴム5を経由し基体のスリーブ11に伝わる。スリーブ11に伝わった接線力はスリーブ11の鍔11aを介して基体2にも加わるため、ブレーキ接線力が加わりながら支持ピンが回転する場合でも回転抵抗を減少させることができる。なお、防振ゴム5およびスリーブ11に形成する回転止め構成として、インナー側を凸部にスリーブ側を凹部にしたり、あるいは交互に凹凸を形成したものでもよい。さらに相対回転を防止する種々の形状を採用することができる。図10に防振ゴム5、スリーブ11との配置関係斜視図を示す。
【0020】
ところで、上記ディスクブレーキにおいては、ブレーキ作動時にはブレーキ接線力等の力によりブレーキパッド4a側とディスクロータ側との間に相対変位が生じるが、ブレーキ開放時にはディスクロータとブレーキパッド4aが元の位置に戻ることが重要である。もし、ブレーキパッド4aが元の位置に復帰しない場合には、両者の間の位置関係がずれ、ブレーキパッド4aの引きずり、摩耗が発生することがある。このため、本発明では、仮にブレーキ作動時にディスクロータに倒れが生じても、支持ピン3の両端に配置した2個の防振ゴム5の復元力でブレーキ開放時にディスクロータとブレーキパッド4aが元の位置に戻ることになる。
【0021】
より詳細には、ディスクロータが倒れることによりディスクロータがブレーキパッド4aに当たり、ブレーキパッド4aはディスクロータに押されて傾こうとする。ディスクロータに倒れが生じると防振ゴム5を撓ませながらブレーキパッド4aがディスクロータに追従する。ブレーキが開放されディスクロータの倒れが無くなると、防振ゴム5の反力でブレーキアーム1、即ちブレーキパッド4aが元の位置(元の姿勢)へ戻り、ブレーキパッド4aの引きずり、摩耗、破損等を防止することができる。こうして、防振ゴムを採用することで、ブレーキ作動時に、ディスクロータとブレーキ間に倒れが発生してもブレーキ開放時にはブレーキパッド4aを元の状態に復帰させることができる。
【0022】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、トルク受けとしての機能を有する防振ゴムの材質、形状等を適宜変更することができる。また回転止め機構も当接する部品同士の相対回転を確実に止めることができる機構であれば種々の機構を採用することができる。
前述した実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、鉄道用ブレーキキャリパに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のディスクブレーキの正面図である。
【図2】同ブレーキの側面図である。
【図3】同ブレーキの平面図である。
【図4】ブレーキアームの作動を説明するための斜視図である。
【図5】基体とブレーキアームとを支持する第1実施例としての支持ピン部の拡大図である。
【図6】基体とブレーキアームとを支持する第2実施例としての支持ピン部の拡大図である。
【図7】防振ゴムの平面図である。
【図8】基体2とブレーキアーム1とを支持する第3実施例としての支持ピン部の拡大図である。
【図9】(a)は基体2と支持ピン3との間に配置するスリーブ11の平面図、(b)は同スリーブ11の断面図、(c)は基体2と支持ピン3との間に配置する防振ゴム5の平面図、(d)は同防振ゴム5の断面図である。
【図10】防振ゴム、スリーブとの配置関係斜視図を示す。
【図11】従来の鉄道車両用キャリパブレーキの説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ブレーキアーム
2 基体 3 支持ピン
3 鍔
4 パッドホルダ
4a ブレーキパッド
5 防振ゴム
5a インナー
5b 振動防止ゴム
5c アウタ
6 カラー
6a 鍔
7 ナット
8 防振ゴム用留輪
9 軸用ワッシャ
10 テーパローラベアリング
11 スリーブ
11a 凹部
12 低摩擦ベアリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、その基体に対して支持ピンを介して旋回および揺動可能に支持された一対のブレーキアームと、基体側に設けたアクチュエータの作動により前記一対のブレーキアームの一端部を揺動・押圧し前記ブレーキアームの他端部に設置されたブレーキパッドをディスクロータに押圧するように構成したディスクブレーキにおいて、前記ブレーキアームは基体に取り付けた支持ピンで支持されており、前記ブレーキアームの支持ピンによる支持部には、防振ゴムを設けたことを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項2】
前記基体に取り付けた支持ピンは、両端2点で支持されており、少なくとも同支持部の1点には防振ゴムが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項3】
前記防振ゴムは、インナ、アウタとそれらの間に設けた振動防止ゴムで構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項4】
前記基体に取り付ける支持ピンは、テーパローラベアリングを介して基体に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項5】
前記防振ゴムにはブレーキアームの外側に位置する部分に鍔を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項6】
前記防振ゴムのインナ、アウタの少なくとも一方にはブレーキアームの外側に位置する部分に鍔を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項7】
前記防振ゴムのインナには基体部分に取り付けたスリーブと係合する回転止めを設けたことを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれかに記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項8】
前記回転止めは、前記防振ゴムのインナと、そのインナ間に配置されるスリーブの両者に互いの相対回転を禁止する凹凸部で形成され、前記凹凸部を係合嵌合させることにより回転を防止することを特徴とする請求項7に記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項1】
基体と、その基体に対して支持ピンを介して旋回および揺動可能に支持された一対のブレーキアームと、基体側に設けたアクチュエータの作動により前記一対のブレーキアームの一端部を揺動・押圧し前記ブレーキアームの他端部に設置されたブレーキパッドをディスクロータに押圧するように構成したディスクブレーキにおいて、前記ブレーキアームは基体に取り付けた支持ピンで支持されており、前記ブレーキアームの支持ピンによる支持部には、防振ゴムを設けたことを特徴とするディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項2】
前記基体に取り付けた支持ピンは、両端2点で支持されており、少なくとも同支持部の1点には防振ゴムが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項3】
前記防振ゴムは、インナ、アウタとそれらの間に設けた振動防止ゴムで構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項4】
前記基体に取り付ける支持ピンは、テーパローラベアリングを介して基体に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項5】
前記防振ゴムにはブレーキアームの外側に位置する部分に鍔を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項6】
前記防振ゴムのインナ、アウタの少なくとも一方にはブレーキアームの外側に位置する部分に鍔を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項7】
前記防振ゴムのインナには基体部分に取り付けたスリーブと係合する回転止めを設けたことを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれかに記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【請求項8】
前記回転止めは、前記防振ゴムのインナと、そのインナ間に配置されるスリーブの両者に互いの相対回転を禁止する凹凸部で形成され、前記凹凸部を係合嵌合させることにより回転を防止することを特徴とする請求項7に記載のディスクブレーキのトルク受け機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−162340(P2009−162340A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1781(P2008−1781)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】
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