説明

ディスプレイ用光学フィルタの製造方法、それに用いるレーザ加工装置、及びディスプレイ用光学フィルタ。

【課題】電磁波シールド性を有するディスプレイ用光学フィルタの製造方法であって、導電層の露出工程を低コストで、且つ高い生産効率で行うことができる製造方法及びディスプレイ用光学フィルタを提供する。
【解決手段】透明基板、その表面全体に形成された導電層、及び導電層表面全体に形成された少なくとも1層の機能層を含む積層体の当該機能層表面の側端部又は側端部近傍に沿って、レーザ光を間欠的に照射しながら走査し、照射領域の機能層を除去して導電層を露出させる工程を含むディスプレイ用光学フィルタの製造方法であって、前記レーザ光の照射を、複数の集光光41が前記機能層表面で、前記走査方向に対して所定の角度Rを持って傾斜する直線的に配列されるように行なうことを特徴とする製造方法及びそれにより得られるディスプレイ用光学フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイなどのディスプレイの画像表示部に用いられ、電磁波シールド性を有するディスプレイ用光学フィルタの製造方法、その製造方法に使用されるレーザ加工装置、及びその製造方法により製造されたディスプレイ用光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、PDP等のディスプレイから発生する不要な電磁波の輻射や赤外線リモコン等の誤作動の原因となる赤外線の輻射を遮蔽するディスプレイ用フィルタとして、フィルタ内にメッシュ状の導電層を設けた、電磁波シールド性および光透過性を有するディスプレイ用光学フィルタが開発されている。
【0003】
上記ディスプレイ用光学フィルタにおいては、導電層による電磁波シールド性が良好に発揮するように導電層とディスプレイ本体の導電面との間で、均一に導通を図る必要がある。そのため、ディスプレイ用光学フィルタからメッシュ状の導電層を外部にはみ出させ、ディスプレイ用光学フィルタの裏側に折り込ませて導通させるか、導電層に接触するように導電性粘着テープを挟み込み外部への導通を図る等の手段が用いられている。
【0004】
また、上記ディスプレイ用光学フィルタには、1枚の基材フィルム上にメッシュ状の導電層を形成し、その上にハードコート層や反射防止層等の機能層を積層させているものも開発されている。この様な光学フィルタにおいては、導電層から外部への導通を図る場合に、例えば、形成した機能層の一部(一般にフィルタの側端部又は側端部近傍)をレーザ照射等により除去して導電層を露出させる手段が用いられている(特許文献1、2)。
【0005】
レーザ照射による光学フィルタの導電層の露出は、表面の機能層のみを除去し、導電層に損傷を与えることがないような微細加工が必要である。導電層が断線したり、剥離したりすると、電磁波シールド性が損なわれるからである。そのため、以下のようなレーザ加工方法が行われる。
【0006】
(1)UVガスレーザ(エキシマレーザ)を用い、ビーム形状をアパーチャグリルで整え、極めて短時間のパルス幅で所定の回数照射することで、表面の機能層のみをアブレーション(瞬間除去)する方法。
【0007】
エキシマレーザによる加工は光化学反応によるもので、非熱加工とも呼ばれ、発熱をほとんど伴わないため、下層部の導電層に影響を与えずに加工可能である。
【0008】
(2)CO2レーザ等の赤外線レーザを用い、ビームのエネルギー出力及びスポットサイズを小さく絞り、表面の機能層の側端部近傍に、繰り返して密に照射することで、スポット状の露出部が密に配置された間欠的露出帯を形成する方法。
【0009】
赤外線レーザの場合は、熱加工であり、一度に大面積の加工を行うと、熱伝導によって下層部の導電層までダメージを与えてしまうため、上述のような小さいスポットサイズで加工する方法が有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−243158号公報
【特許文献2】特開2008−197539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、(1)の方法において、エキシマレーザはレーザ媒質のガスを高速循環させるガス再生装置やハロゲン除去装置を要するため、設備コストやランニングコストが他のレーザ加工装置に比べて大きく、製造コストが高いという問題がある。また、エキシマレーザ加工装置は、一般にレーザ光源を固定し、ワーク(被加工物)を搭載した加工テーブルをX−Y方向に移動するワーク移動方式である。従って、大型の光学フィルタを加工する場合に大型のワークが移動するスペースが必要な点でスペース生産性が大幅に低下するという問題もある。
【0012】
一方、(2)の方法において、CO2レーザ等の赤外線レーザは他のレーザ加工装置に比べて設備コスト及びランニングコストが低いので、コスト面の問題はない。また、赤外線レーザは繰り返し発振が可能であり、ワークを固定し、反射ミラー及び集光レンズを高速移動させる光移動方式により、ワークの表面にスポット状にレーザを繰り返して照射しながら走査することができるので、スペース生産性の面でも問題はない。しかしながら、1度の照射による露出部は小さいスポット状であるため、露出帯を一定の幅を持たせるために、複数回の往復走査が必要になり、露出部の形成に長時間を要するという問題がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、高品質な電磁波シールド性を有するディスプレイ用光学フィルタの製造方法であって、導電層の露出工程を低コストで、且つ高い時間的生産効率で行うことができる製造方法を提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、その製造方法に使用されるレーザ加工装置を提供することにある。
【0015】
更に、本発明の目的は、その製造方法で製造されたディスプレイ用光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、透明基板、その表面全体に形成された導電層、及び導電層表面全体に形成された少なくとも1層の機能層を含む積層体の当該機能層表面の側端部又は側端部近傍に沿って、レーザ光を間欠的に照射しながら走査し、照射領域の機能層を除去して導電層を露出させる工程を含むディスプレイ用光学フィルタの製造方法であって、前記レーザ光の照射を、複数の集光光が、前記機能層表面で前記走査方向に対して所定の角度を持って傾斜する直線的に配列されるように行なうことを特徴とする製造方法によって達成される。即ち、前記レーザ光の1度の照射が、走査方向に直交する方向に一定の幅を持ったレーザ集光光の配列により行われるので、前記導電層を露出させる工程(以下、導電層露出工程と略す)は、レーザ光を間欠的に照射しながら1度の走査で完了することができる。また、前記機能層表面のコーナー部分において走査方向を転換する際、レーザ集光光の配列方向を転換しなくても、転換された走査方向に直交する方向にも一定の幅をもったレーザ集光光の配列とすることができるので、レーザ集光光の配列方向を、レーザ光を分岐、成形する光学素子を含む部分(以下、レーザ光成形部と略す)の回転等によって転換することなく走査を続けることができる。以上により、高い時間的生産効率で導電層露出工程を行うことができる。
【0017】
更に、本発明に係る導電層露出工程は、設備コスト及びランニングコストが安価なCO2レーザ等の赤外線レーザを好適に使用することができるので、低コストの製造方法とすることができる。
【0018】
本発明のディスプレイ用光学フィルタの製造方法の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記光学フィルタの形状が矩形状である。
(2)前記所定の角度が走査方向に対して30〜60度である。これにより、前記レーザ光の照射の第一方向への走査、及び走査方向を転換した際の第二方向への走査、どちらの場合においても、走査方向に直交する方向に、より有効な幅を持ったレーザ集光光の配列とすることができる。所定の角度は40〜50度がより好ましく、45度が特に好ましい。所定の角度が45度であれば、走査方向を90度転換した際に、走査方向に直交する方向の幅が変化しないレーザ集光光の配列にすることができる。
(3)レーザの波長が0.2〜30μmの範囲、更には5〜15μmの範囲である。
(4)前記レーザ集光光の1個の直径が0.4〜1.0mmである。
(5)前記レーザ集光光を重複して照射しない。レーザ集光光を重複して照射すると、機能層の下層である導電層にダメージを与えることになるため、走査方向の転換の際等に、前記レーザ集光光がすでに照射された位置では、レーザ集光光の照射を停止する等により重複照射を避けるのが好ましい。
(6)前記導電層が、メッシュ状金属導電層である。
(7)前記少なくとも1層の機能層がハードコート層である。
(8)透明基板が、プラスチック基板、特にポリエチレンテレフタレートフィルムである。
【0019】
また、上記目的は、本発明のディスプレイ用光学フィルタの製造方法に使用されるレーザ加工装置であって、レーザ光源からレーザ光を出射するためのレーザ発振器を含むレーザ発振手段、レーザ発振手段から出射するレーザ光を次のレーザ照射手段に導くための反射ミラーを含むレーザ案内手段、レーザ案内手段により導かれたレーザ光を前記積層体の機能層表面の側端部又は側端部近傍に沿って集光するための集光レンズを含むレーザ照射手段、及びレーザ照射手段を縦横方向に移動可能な走査手段を含み、且つ前記レーザ案内手段及び/又はレーザ照射手段は、レーザ光の照射を複数の集光光が前記機能層表面で、前記走査方向に対して所定の角度を持って傾斜する直線的に配列されるように行なうレーザ光成形手段を有することを特徴とするレーザ加工装置によっても達成される。
【0020】
本発明のレーザ加工装置の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記所定の角度が走査方向に対して30〜60度である。
(2)前記レーザ発振手段がCO2レーザ発振器を含む。
(3)前記レーザ光成形手段が、回折型光学素子(DOE)を含む。
【0021】
更に、上記目的は本発明のディスプレイ用光学フィルタの製造方法により得られるディスプレイ用光学フィルタによっても達成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のディスプレイ用光学フィルタの製造方法によれば、導電層露出工程において、レーザ光の照射は、複数の集光光が、前記走査方向に対して所定の角度を持って傾斜する直線的に配列されるように行なわれている。即ち、前記レーザ光の1度の照射が、走査方向に直交する方向に一定の幅を持ったレーザ集光光の配列により行われるので、導電層露出工程は、レーザ光を間欠的に照射しながら1度の走査で完了することができる。また、前記走査方向を転換する際、レーザ集光光の配列方向を転換せずに、転換した走査方向に直交する方向にも一定の幅をもったレーザ集光光の配列とすることができるので、レーザ光成形部の回転等により、レーザ集光光の配列方向を転換することなく走査を続けることができる。以上により、高い時間的生産効率で導電層露出工程を行うことができる。なお、レーザ光成形部の回転やスイッチング機構が不要になるため、レーザ光成形部を含むレーザ光を照射しながら走査する部分(以下、レーザ加工光学系と略す)の軽量化が図られ、走査速度の向上も図ることができる。
【0023】
更に、本発明に係る導電層露出工程は、設備コスト及びランニングコストが安価なCO2レーザ等の赤外線レーザを好適に使用することができるので、低コストの製造方法とすることができる。
【0024】
また、本発明のレーザ加工装置は、レーザ光の照射を、複数のレーザ集光光が前記走査方向に対して所定の角度を持って傾斜する直線的に配列するようにレーザ光を分岐、成形して行うために有利なレーザ加工装置である。
【0025】
更に、本発明のディスプレイ用光学フィルタは、本発明の製造方法により製造されているので、生産性に優れ、安価で高品質な電磁波シールド性を有するディスプレイ用光学フィルタであると言える。従って、PDP、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイなどのディスプレイに対して、好適に利用できる光学ディスプレイであると言える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のディスプレイ用光学フィルタの製造方法の代表的な1例を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明のディスプレイ用光学フィルタの製造方法の代表的な1例を説明するための概略平面図であり、図2(a)が本発明の製造方法により導電層が露出された光学フィルタの全体を示し、図2(b)がレーザ集光光の形状を示す図である。
【図3】本発明の製造方法で使用される本発明のレーザ加工装置の1例を示す概略図である。
【図4】本発明の製造方法で得られた本発明のディスプレイ用光学フィルタの好適態様の1例を示す図であり、図4(a)は概略断面図であり、図4(b)は概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のディスプレイ用光学フィルタの製造方法について、図面を参照しながら説明する。図1及び図2は本発明のディスプレイ用光学フィルタの製造方法の代表的な1例を説明するための図であり、図1が概略断面図であり、図2は概略平面図である。
【0028】
矩形状の透明基板12の表面の全域に、メッシュ状の導電層13を形成し(1)(導電層形成工程)、次いで、メッシュ状の導電層13の全域に機能層として合成樹脂からなるハードコート層16を形成する(2)(機能層形成工程)。機能層としては何らかの機能を示す合成樹脂を含む層であればどのようなものでも良い。図1の例においては、ハードコート層16のみであるが、例えば、ハードコート層16の上に反射防止性を得るために、ハードコート層より屈折率の低い低屈折率層や屈折率層の高い高屈折率層を形成しても良い(図示していない)。また、例えば、透明基板12が長尺状の場合、ロール・ツー・ロール方式でこのような積層体を形成しても良い。この場合、得られた積層体のロールから連続的に長尺状の積層体を送り出し、矩形状に裁断して次工程に用いる。
【0029】
次に、得られた矩形状の積層体のハードコート層16の側端部近傍に沿って、レーザ集光光を間欠的に照射しながら全周囲を走査する(3)(導電層露出工程)。これにより、レーザ照射領域の側端部近傍のハードコート層16が除去され、導電層13が露出し、導電層露出領域13’が形成される(4)。この際、レーザ光を、図2(b)に示すように、複数のレーザ集光光41が矢印で示す走査方向に対して所定の角度Rを持って傾斜する直線G上に配列するように照射する。その結果、図2(a)に示すように、点A(走査開始点)から点B(走査方向転換点)までの間は、走査方向に直交する方向に幅Lの導電層露出領域13’(本発明においては複数のレーザ集光光の照射により形成されたスポット状の導電層の露出部が密に配置された(スポット状の露出部が一部で重なっていても良い)間欠的露出領域である)が形成される。また、点Bにて走査方向を90度転換する場合、レーザ集光光の配列方向を転換せずに、走査方向に対して90度−Rの角度を持つレーザ集光光の配列となるので、点Bから点Cの間は走査方向に直交する幅L’の導電層露出領域13’が形成される。
【0030】
レーザ集光光の配列方向を転換するには、後述するレーザ光成形部を回転させたり、2組のレーザ光成形部をスイッチングにより切り換えたりする機構が必要になり、加工精度の低下やレーザ加工光学系の重量が大きくなり、走査する際の加速、減速時間が多く必要になるため走査速度が低下することになる。本発明の方法であれば、上記のような機構が必要でないため、レーザ照射部の軽量化が図られ走査速度を高めることができる。
【0031】
角度Rは走査方向に対して傾斜していれば(0度及び90度以外であれば)、特に制限はない。但し、上述のように走査方向を転換した場合に、レーザ集光光の配列方向を転換せずに、上述の幅L及び幅L’がより有効な幅を持ったレーザ集光光の配列とするため、角度Rは30〜60度が好ましく、40〜50度がより好ましく、特に45度が好ましい。角度Rが45度であれば、走査方向を90度転換した場合に、上述の幅L及び幅L’は同一となる。
【0032】
本発明のディスプレイ用光学フィルタの形状は、特に制限はなく、三角形以上の多角形でも円形でも良い。本発明の製造方法は、特に大型のディスプレイ用光学フィルタに有効であるため、大型製品の需要が高い、図1及び図2に示したような矩形状が好ましい。
【0033】
図1及び図2の例においては、レーザ照射は側端部には照射しないように行っている。これにより、透明基板12の側端部にレーザが照射されなかったハードコート層が残り、端部ハードコート層16’が形成される。この両縁部の細い帯状の導電層露出領域13’の幅(図1(4)のL又は図2(a)のL及びL’)は、一般に1〜100mm、特に2〜50mmが好ましい。また端部ハードコート層16’の細い帯状の領域の幅は、一般に0.1〜20mmであり、特に0.5〜5mmが好ましい。導電層露出工程において、導電層露出領域13’の外側に端部ハードコート層16’を形成させず、側端部に導電層露出領域13’を形成するように側端部に沿ってレーザ照射してハードコート層16を除去しても良い。
【0034】
本発明において、複数のレーザ集光光の照射により露出したスポット状の導電層の密度は、特に制限はないが、導電層露出領域13’の全面積に対して、露出したスポット状の導電層の個数が25〜250個/cm2、好ましくは50〜200個/cm2で、露出したスポット状の導電層の面積率が15〜50%、好ましくは20〜40%が好ましい。これにより、導電層の断線や剥離等のダメージを抑制しながら、ハードコート層16を除去することができ、欠陥のない光学フィルタを製造することができる。また、このような導電層の露出面積率があれば、導電層露出領域13’から外部へ導通させ、十分な電磁波シールド性を有する光学フィルタとすることができる。
【0035】
また、導電層露出領域13’を構成するスポットの形状は、図2(a)及び(b)においては、円形のスポットで示しているが、矩形、楕円形、円形、多角形等どのような形状でも良い。全てのスポットの大きさは同じでも相互に異なっていても良い。一般に同じ大きさである。これらの形状は後述するレーザ光成形部により成形されるレーザ集光光の形状によって決定される。1個のスポットの面積は、一般に、0.1〜30mm2、好ましくは0.1〜5mm2であり、スポット形状が円形の場合、その直径は0.3〜1.0mmが好ましい。
【0036】
本発明における導電層露出工程において、上述のようにレーザ集光光を間欠的に照射しながら全周囲に走査する際、レーザ集光光を重複して照射しないことが好ましい。重複して照射すると露出した導電層部分に、レーザ集光光が照射することになり、導電層に断線等の損傷が生じるからである。従って、図2(a)に示すように、レーザ照射の走査が点C(照射停止点)に達したときレーザ照射を一時停止し、その状態でレーザ集光光のスポットが重複しない点D(照射再開点)まで、レーザ加工光学系が移動させてからレーザ照射を再開するのが好ましい。その後、点E(走査方向転換点)を経て、点F(走査終了点)まで継続して走査できる。なお、点A及び点F近傍におけるレーザ集光光についても重複しないように、予め、点Aの位置を調整しておくのが好ましい。点C近傍の導電層露出領域13’と点D近傍の導電層露出領域13’の間隙、及び点A近傍の導電層露出領域13’と点F近傍の導電層露出領域13’間隙の距離は0.3〜20mmが好ましく、1〜10mmがより好ましい。この距離であれば、安定した電磁波シールド性を得ることができる。
【0037】
また、本発明において、導電層露出領域13’の上に、導電性粘着テープを貼り付け、外部への導通を良好にさせても良い。導電性粘着テープは銀箔、銅箔等の導電性を有するテープ状の部材に金属粉体等の導電性粒子を分散させた粘着剤からなる粘着層を設けたものであればどのようなものでも使用可能である。
【0038】
以上の説明では、透明基板12、導電層13、ハードコート層16からなる積層体にレーザ照射して光学フィルタを得たが、後述するように、ディスプレイ用光学フィルタは、好適にガラス基板に貼付し使用されるので、上記積層体を得た後、後述の粘着剤層等により、ガラス基板に貼付し、その後上記の導電層露出工程を行うこともできる。この場合、積層体がガラス基板上に固定されることから、積層体の位置ズレや積層体の浮きが発生しないため、レーザの照射を所定の位置に確実に行うことができる点で好ましい。
【0039】
本発明の製造方法に使用するレーザはCO2レーザ、YAGレーザ(基本波、2倍波、3倍波)、エキシマレーザ、ルビーレーザ、半導体レーザ、アルゴンレーザ等どのようなものでも良いが、間欠的に照射しながら走査するので、ハードコート層16の照射領域の下層の導電層13の熱的損傷を回避できるため、熱加工に使用されるCO2レーザ等の高出力の赤外線レーザが好適に使用できる。CO2レーザは設備コスト、ランニングコストが安価であるため、本発明の製造方法は低コストの製造方法であると言える。
【0040】
本発明における導電層露出工程(3)に使用するレーザ加工装置について、図3を用いて詳しく説明する。図3は本発明のレーザ加工装置の1例を示す概略図である。図示のように、レーザ加工装置45は、主としてレーザ光31を出射するレーザ発振器30、レーザ光31を伝送する反射ミラー32a〜32c及び33、レーザ光31を成形してレーザ集光光41を照射する、レーザ光成形部40(図3においては回折型光学素子(DOE)34及び集光レンズ35を含む)、被加工物(ワーク)を保持する加工テーブル36で構成される。回折型光学素子(DOE)は、表面にミクロン単位の微細な凹凸を付けることにより光の回折現象を利用した光学素子であり、レーザ光の分岐、成形、ホモジナイズ等の応用が可能である。
【0041】
レーザ発振器30(レーザ発振手段)から出射されたレーザ光31は、反射ミラー群32a〜32c(必要に応じて移動可能になっており、必要に応じて反射ミラーが追加されていても良い)により導かれ、反射ミラー33で90度折り曲げられる。レーザ光31はDOE34で複数に分岐、成形され、集光レンズ35で、上述の積層体のハードコート層16の表面に、複数のレーザ集光光41が前記走査方向に対して所定の角度を持って傾斜する直線的に配列されるように照射される(レーザ照射手段(レーザ光成形手段を有する))。
【0042】
反射ミラー32a〜32c及び33は、一般にレーザ案内手段を構成している。反射ミラー33及びレーザ光成形部40は、レーザ加工光学系42を構成し、一緒に矢印方向(X及びY方向)に移動可能になっている(一般にX−Yプロッターのアーム上に取り付けられる)。レーザ加工光学系42の移動方向と、その他の反射ミラー32a〜32cの移動の組合せにより、レーザ加工光学系42はハードコート層16のレーザ照射領域全域(全周囲の側端部又は側端部近傍)を移動し、走査することができる(走査手段)。
【0043】
レーザ光成形部40によるレーザ光31の分岐及び成形は、上述のような複数のレーザ集光光41に成形できればどのような方法でも良い。光の位相を直接制御でき、精度の高い成形が可能なため、図示のようなDOE34による分岐で複数のレーザ集光光に成形するのが好ましい。DOEとしては、位相変換回折格子、ビームスプリッタ−、ビーム光束多分割素子、ビーム整形光学素子、回折型球面収差補正ハイブリッド集光レンズ、回折型長焦点深度集光レンズ、2波長補正集光レンズ、回折型線状集光レンズ、回折型マイクロレンズアレイ等を挙げることができる。DOEは複数のスポットを走査方向に対して、正確に所定の角度の直線上に配置するため、丸形形状の一部を切り欠くような構造とするのが好ましい。これにより角度の位置決めが容易となる。レーザ光成形部40はレーザ照射手段の前段のレーザ案内手段に有していても良い。
【0044】
レーザ集光光41の数は特に制限はなく、一般に5〜20個、好ましくは8〜15個である。上述のように、複数のレーザ集光光を走査方向に対して所定の角度、好ましくは30〜60度、より好ましくは40〜50度、特に45度で傾斜する直線的に配列することにより、コーナー部分で走査方向を90度転換する場合に、レーザ光成形部40は回転させずにレーザ加工光学系42の移動方向のみ転換することで走査を続けることができる。レーザ集光光の配列方向が走査方向に対して、傾斜していない(即ち直交している)場合、走査方向の転換に応じて、レーザ集光光の配列方向も転換する必要があるため、レーザ光成形部40を回転させたり、レーザ光成形部40を複数設けてスイッチングにより切り換えたりする機構が必要になる。そうすると、駆動部の振動等による加工精度の低下やレーザ加工光学系42の重量が大きくなり、走査する際の加速、減速時間が多く必要になるため走査速度が低下することになる。本発明のレーザ加工装置であれば、上記のような機構が必要でないため、レーザ照射部42の軽量化が図られ、走査速度を高めることができる。
【0045】
本発明のレーザ加工装置において、レーザ発振器は連続波レーザでもパルスレーザでも良い。但し、連続波レーザは照射部分に過剰な熱が付与されやすい傾向にあるため、ハードコート層16のレーザ照射領域の下層の導電層13に熱的損傷が生じ易い。パルスレーザは照射時間のコントロールし易く、熱的損傷の回避が容易な点で好ましい。パルスレーザの波長は特に制限はないが、0.2〜30μm、更には5〜15μmの範囲が好ましい。短波長のレーザは、熱的損傷が生じ難いが、加工に時間がかかり過ぎるため、長波長のレーザ(赤外線レーザ)を用いて短時間照射し、ショット間隔を大きくとって熱的損傷を回避する方が好ましい。パルスレーザ発振器としては、CO2レーザ、YAGレーザ(2倍波、3倍波)、ルビーレーザ、エキシマレーザ、半導体レーザ、アルゴンレーザ等の発振器を用いることができる。本発明のレーザ加工装置においては、高出力の赤外線レーザが好ましく、特に高出力で、且つ設備コスト、ランニングコストが安価なCO2レーザ発振器を使用するのが好ましい。この場合、パルスレーザのパルス幅は1〜1000マイクロ秒、更には100〜800マイクロ秒であることが好ましい。レーザの間欠的な照射はレーザのパルス自体を利用しても良いが(その場合パルス幅は一般に数百マイクロ秒である)、短パルス(一般に百マイクロ秒未満)の場合は、特定数のパルス群でオン−オフすることにより行っても良い。パルスレーザの出力は5〜5kW、相対移動速度1〜3000mm/秒で行うことが好ましい。
【0046】
図4は本発明の製造方法で得られた本発明のディスプレイ用光学フィルタの代表的な1例を示す図であり、図4(a)が概略断面図であり、図4(b)が概略平面図である。
【0047】
図4(a)に示すように、本発明のディスプレイ用光学フィルタは、矩形状の透明基板22の一方の表面全域に、メッシュ状の導電層23が形成され、導電層23の表面全域にハードコート層26が形成されている。ハードコート層26の側端部近傍には全周囲に渡り、レーザ照射によりハードコート層26が除去され、導電層が露出した導電層露出領域23’が形成され、その外側はハードコート層26が残存した端部ハードコート層26’が形成されている。導電層露出領域23’の外側に端部ハードコート層26’がなく、光学フィルタの側端部に沿って導電層露出領域23’があっても良い。
【0048】
本発明のディスプレイ用光学フィルタは、本発明の製造方法により得られているので、図4(b)に示すように、導電層露出領域23’は複数のレーザ集光光の照射により形成されたスポット状の導電層の露出部が密に配置された間欠的露出領域である。露出したスポット状の導電層の密度は、特に制限はないが、導電層露出領域23’の全面積に対して、露出したスポット状の導電層の個数が25〜250個/cm2、好ましくは50〜200個/cm2で、露出したスポット状の導電層の面積率が15〜50%、好ましくは20〜40%が好ましい。また、このような導電層の露出面積率があれば、導電層露出領域13’から外部へ導通させ、十分な電磁波シールド性を有する光学フィルタとすることができる。
【0049】
また、導電層露出領域23’を構成するスポットの形状は、図4(b)においては、円形のスポットで示しているが、矩形、楕円形、円形、多角形等どのような形状でも良い。全てのスポットの大きさは同じでも相互に異なっていても良い。一般に同じ大きさである。これらの形状は上述のレーザ光成形部により成形されるレーザ集光光の形状によって決定される。1個のスポットの面積は、一般に、0.1〜30mm2、好ましくは0.1〜5mm2であり、スポット形状が円形の場合、その直径は0.3〜1.0mmが好ましい。
【0050】
更に、導電層露出領域23’は、図4(b)に示すように矩形状の光学フィルタのコーナー部分(図4(b)中において破線で囲んだ部分)において、光学フィルタの辺に対して所定の角度で傾斜した直線上にある端部で途切れた形状を有するのが好ましい。導電層露出領域23’の間隙の距離は、好ましくは0.3〜20mm、より好ましくは1〜10mmである。この距離であれば、安定した電磁波シールド性を得ることができる。
【0051】
帯状の導電層露出領域23’の幅(図4のL及びL’)は一般に1〜100mm、特に2〜50mmが好ましい。また端部ハードコート層26’の帯状の領域の幅は一般に0.1〜20mm、特に0.5〜5mmが好ましい。図4(b)における幅L及びL’は、上述の製造方法における、レーザ集光光のスポット配列の走査方向に対する角度によって、同一の場合も、異なっている場合もありうる。安定した電磁波シールド性のためには幅L及びL’は同一である(この場合、上記走査方向に対する角度が45度である)のが好ましい。
【0052】
本発明においては、上述のように導電層露出領域の上に、導電性粘着テープを貼付けた構成とし、外部への導通を良好にさせても良い。
【0053】
本発明において、機能層としては、何らかの機能を示す合成樹脂を含む層であれば、どのようなものでも良い。図4(a)においては、導電層23の上にはハードコート層26のみであるが、ハードコート層とハードコート層より屈折率の低い低屈折率層とからなるか(この場合、ハードコート層が導電層と接している)又は、ハードコート層、ハードコート層より屈折率の高い高屈折率層、及びハードコート層より屈折率の低い低屈折率層からなる機能層としても良い。層が多いほど、より良好な反射防止性が得られる。ハードコート層に防眩機能を設けて、防眩層としても良い。また、別の機能層を設けても良い。一般に、近赤外線吸収層、ネオンカット層又は粘着剤層、或いはこれらの層の2層以上の組合せである。図4(a)においては、透明基板22の導電層23を形成した面と反対側の表面全域に、別の機能層として近赤外線吸収層24及びその上に粘着剤層25が形成されている。別の機能層としては近赤外線吸収機能及びネオンカット層を有する粘着剤層、ネオンカット機能を有する近赤外線吸収層及び粘着剤層(この順で透明基板上に設けられている)、或いは近赤外線吸収層、ネオンカット層及び粘着剤層(この順で透明基板上に設けられている)としても良い。
【0054】
本発明のディスプレイ用光学フィルタは、一般に粘着剤層25を介して、PDP等のディスプレイパネルの表示面に貼付したり、ガラス基板に貼付し、PDP等のディスプレイパネルの前面に配置したりして使用する。その際、導電層露出領域23’からディスプレイ本体の筺体等へ導通させ、アースをとることで、電磁波シールド性を達成することができる。
【0055】
本発明のディスプレイ用光学フィルタは、本発明の製造方法により得られているので、安価で電磁波シールド性に優れた光学フィルタである。
【0056】
本発明のディスプレイ用光学フィルタは本発明の製造方法により得られていれば良く、その他の構成は必要に応じて従来技術等を組合せることができる。
【0057】
本発明のディスプレイ用光学フィルタに使用される材料について以下に説明する。
【0058】
本発明における透明基板は、一般に、透明なプラスチックフィルムである。その材料としては、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)であれば特に制限はない。プラスチックフィルムの例としては、ポリエステル{例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート}、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる。これらの中でも、加工時の負荷(熱、溶剤、折り曲げ等)に対する耐性が高く、透明性が特に高い等の点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が好ましい。特に、PETが、加工性に優れているので好ましい。
【0059】
透明基板の厚さとしては、光学フィルタの用途等によっても異なるが、一般に1μm〜10mm、1μm〜5mm、特に25〜250μmが好ましい。
【0060】
本発明における導電層は、一般に10Ω/□以下、好ましくは0.001〜5Ω/□の範囲、特に0.005〜5Ω/□のとなるように設定される。メッシュ状の導電層も好ましい。或いは、導電層は、気相成膜法により得られる層(金属酸化物(ITO等)の透明導電薄膜)でも良い。さらに、ITO等の金属酸化物の誘電体膜とAg等の金属層との交互積層体(例、ITO/銀/ITO/銀/ITOの積層体)であっても良い。
【0061】
メッシュ状の導電層としては金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属を網状にしたもの、透明フィルム上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、透明フィルム上に導電性インクをメッシュ状に印刷したもの、等を挙げることができる。
【0062】
メッシュ状の導電層の場合、メッシュとしては、金属繊維及び/又は金属被覆有機繊維よりなる線径1μm〜1mm、開口率40〜95%のものが好ましい。より好ましい線径は10〜500μm、開口率は50〜95%である。メッシュ状の導電層において、線径が1mmを超えると電磁波シールド性が向上するが、開口率が低下し両立させることができない。1μm未満では、メッシュとしての強度が下がり取扱いが困難となる。また開口率が95%を超えるとメッシュとしての形状を維持することが困難であり、40%未満では光透過性が低下し、ディスプレイからの光量も低下する。
【0063】
なお、メッシュの開口率とは、当該メッシュの投影面積における開口部分が占める面積割合を言う。
【0064】
メッシュ状の導電層を構成する金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステン、錫、鉛、鉄、銀、炭素又はこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、ニッケルが用いられる。
【0065】
金属被覆有機繊維の有機材料としては、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニリデン、アラミド、ビニロン、セルロース等が用いられる。
【0066】
金属箔等の導電性の箔をパターンエッチングしたもの場合、金属箔の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、真鍮、或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、アルミニウムが用いられる。
【0067】
金属箔の厚さは、薄過ぎると取扱い性やパターンエッチングの作業性等の面で好ましくなく、厚過ぎると得られるフィルムの厚さに影響を及ぼし、エッチング工程の所要時間が長くなることから、1〜200μm程度とするのが好ましい。
【0068】
エッチングパターンの形状には特に制限はなく、例えば四角形の孔が形成された格子状の金属箔や、円形、六角形、三角形又は楕円形の孔が形成されたパンチングメタル状の金属箔等が挙げられる。また、孔は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。この金属箔の投影面における開口部分の面積割合は、20〜95%であることが好ましい。
【0069】
上記の他に、メッシュ状の導電層として、フィルム面に、溶剤に対して可溶な材料によってドットを形成し、フィルム面に溶剤に対して不溶な導電材料からなる導電材料層を形成し、フィルム面を溶剤と接触させてドット及びドット上の導電材料層を除去することによって得られるメッシュ状の導電層を用いても良い。
【0070】
導電層上に、さらに金属メッキ層を、導電性を向上させるためは設けても良い(特に、上記溶剤に対して可溶な材料によってドットを形成する方法の場合)。金属メッキ層は、公知の電解メッキ法、無電解メッキ法により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、アルミ、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能であり、好ましくは銅、銅合金、銀、又はニッケルであり、特に経済性、導電性の点から、銅又は銅合金を使用することが好ましい。
【0071】
また、防眩性能を付与させても良い。この防眩化処理を行う場合、(メッシュ)導電層の表面に黒化処理を行っても良い。例えば、金属膜の酸化処理、クロム合金等の黒色メッキ、黒又は暗色系のインクの塗布等を行うことができる。
【0072】
本発明における導電層の上に形成する機能層は、一般にハードコート層とその上に設けられたハードコート層より屈折率の低い低屈折率層との複合膜であるか、或いはハードコート層と低屈折率層との間にさらに高屈折率層が設けられた複合膜である。反射防止のためには基板フィルムより屈折率の低いハードコート層のみであっても有効である。但し、基材フィルムの屈折率が低い場合、基材フィルムより屈折率の高いハードコート層とその上に設けられた低屈折率層との複合膜、或いは低屈折率層上にさらに高屈折率層が設けられた複合膜としても良い。
【0073】
ハードコート層は、アクリル樹脂層、エポキシ樹脂層、ウレタン樹脂層、シリコン樹脂層等の合成樹脂を主成分とする層である。なお、本発明において、ハードコート層とは、JIS5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験でH以上の硬度を有するものをいう。通常、ハードコート層の厚さは1〜50μm、好ましくは1〜20μmである。合成樹脂は、一般にフェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂などの熱硬化性樹脂、又は紫外線硬化性樹脂であり、紫外線硬化性樹脂が好ましい。紫外線硬化性樹脂は、短時間で硬化させることができ、生産性に優れ、またレーザーにより除去し易い点からも好ましい。
【0074】
紫外線硬化性樹脂を用いる場合は、紫外線硬化性樹脂組成物(紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤等からなる)として使用する。
【0075】
紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)としては、例えば、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化2−メチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート等の(メタ)アクリレートモノマー類;ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4′−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2′−4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。これらの紫外線硬化性樹脂を、熱重合開始剤とともに用いて熱硬化性樹脂として使用してもよい。
【0076】
ハードコート層とするには、上記の紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)の内、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0077】
紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤として、紫外線硬化性樹脂の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系叉は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)が好ましい。
【0078】
光重合開始剤の量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0079】
さらに、ハードコート層は、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいても良い。特に、紫外線吸収剤(例、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はベンゾフェノン系紫外線吸収剤)を含むことが好ましく、これによりフィルタの黄変等の防止が効率的に行うことができる。その量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0080】
ハードコート層は、透明基板より屈折率層が低いことが好ましく、上記紫外線硬化性樹脂を用いることにより、一般に透明基板より低い屈折率を得られやすい。従って、透明k場としてはPET等の高い屈折率の材料を用いることが好ましい。このため、ハードコート層は、屈折率を1.60以下にすることが好ましい。層厚は上述の通りである。
【0081】
機能層に高屈折率層を設ける場合は、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に、ITO,ATO,Sb23,SbO2,In23,SnO2,ZnO、AlをドープしたZnO、TiO2等の導電性金属酸化物微粒子(無機化合物)が分散した層(硬化層)とすることが好ましい。金属酸化物微粒子としては、平均粒径10〜10000nm、好ましくは10〜50nmのものが好ましい。特にITO(特に平均粒径10〜50nmのもの)が好ましい。層厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0082】
機能層に低屈折率層を設ける場合は、シリカ、フッ素樹脂等の微粒子、好ましくは中空シリカを10〜40重量%(好ましくは10〜30質量%)がポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に分散した層(硬化層)であることが好ましい。層厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。中空シリカとしては、平均粒径10〜100nm、好ましくは10〜50nm、比重0.5〜1.0、好ましくは0.8〜0.9のものが好ましい。
【0083】
機能層のハードコート層は、可視光線透過率が85%以上であることが好ましい。高屈折率層及び低屈折率層の可視光線透過率も、いずれも85%以上であることが好ましい。
【0084】
機能層がハードコート層と上記2層より構成される場合、例えば、ハードコート層の厚さは2〜20μm、高屈折率層の厚さは50〜150nm、低屈折率層の厚さは50〜150nmであることが好ましい。
【0085】
機能層の、各層を形成するには、例えば、前記の通り、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)に必要に応じ上記の微粒子を配合し、得られた塗工液を、前記の矩形透明基板表面に塗工し、次いで乾燥した後、紫外線照射して硬化すればよい。この場合、各層を1層ずつ塗工し硬化させてもよく、全層を塗工した後、まとめて硬化させてもよい。
【0086】
塗工の具体的な方法としては、アクリル系モノマー等を含む紫外線硬化性樹脂をトルエン等の溶媒で溶液にした塗工液をグラビアコータ等によりコーティングし、その後乾燥し、次いで紫外線により硬化する方法を挙げることができる。このウェットコーティング法であれば、高速で均一に且つ安価に成膜できるという利点がある。このコーティング後に例えば紫外線を照射して硬化することにより密着性の向上、膜の硬度の上昇という効果が得られる。
【0087】
紫外線硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【0088】
前述のように、機能層としてハードコート層の代わりに防眩層を設けることもできる。これにより反射防止効果が大きいものが得られやすい。防眩層は、例えば、バインダ(インクメジウム)に顔料微粒子(例、カーボンブラック、黒色酸化鉄等)を分散させた液、又はポリマー微粒子(例、アクリルビーズ)等の透明フィラー(好ましくは平均粒径1〜10μm)をバインダに分散させた液を塗布、乾燥することにより、或いは金属層を硫化処理等の黒化処理により金属硫化物よりなる防眩層を形成する。特に、前述のハードコート層形成用材料に透明フィラーを加えた液を塗布、硬化させた、ハードコート機能を有する防眩層が好ましい。防眩層の層厚は、一般に0.01〜1μmの範囲である。
【0089】
導電層露出領域の上に導電性粘着テープを貼り付ける場合は、上述のように、導電性粘着テープは導電性を有するテープ状の部材に導電性粒子を分散させた粘着剤からなる粘着層を設けたものであればどのようなものでも使用可能である。テープ状部材は例えば、銀箔、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔又は鉛箔等の金属箔や、導電性樹脂フィルムを用いることができる。テープ状部剤の厚さは通常1〜100μm程度である。また粘着剤は、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコン系粘着剤やエポキシ系、フェノール系樹脂に硬化剤を配合したものを用いることができる。粘着剤に分散させる導電性粒子としては電気的に良好な導体であれば良く、種々のものを使用することができる。例えば、銅、銀、ニッケル等の金属粉体、これらの金属で被覆された樹脂又はセラミック粉体等を使用することができる。導電性粒子の形状には特に制限はなく、例えば、鱗片状、粒状、樹枝状等の任意の形状で使用できる。また、導電性粒子の平均粒径は1〜100μmが好ましく、配合量は粘着剤に対して0.1〜15容量%が好ましい。これらの材料を均一に混合し、テープ状部材にロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、マイカバーコーター、フローコーター、スプレーコーター等により粘着層を塗工することにより、導電性粘着テープを形成することができる。粘着層の厚さは特に制限はないが、5〜100μm程度が通常である。
【0090】
透明基板の導電層と反対側に形成される機能層として近赤外線吸収層を設ける場合は、一般に、基板フィルムの表面に色素等を含む層を形成することにより得られる。近赤外線吸収層は、例えば上記色素及びバインダ樹脂等を含む塗工液を塗工、必要により乾燥、そして硬化させることにより得られる。或いは上記色素及びバインダ樹脂等を含む塗工液を塗工、そして単に乾燥させることによっても得られる。フィルムとして使用する場合は、一般に近赤外線カットフィルムであり、例えば色素等を含有するフィルムである。色素としては、一般に800〜1200nmの波長に吸収極大を有するもので、例としては、フタロシアニン系色素、金属錯体系色素、ニッケルジチオレン錯体系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ポリメチン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、ポリアゾ系色素、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、アントラキノン系色素、を挙げることができ、特にシアニン系色素又、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素が好ましい。これらの色素は、単独又は組み合わせて使用することができる。バインダ樹脂の例としては、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0091】
近赤外線吸収層に、ネオン発光の吸収機能(ネオンカット機能)を付与することにより色調の調節機能を持たせても良い。このために、ネオン発光の吸収層(ネオンカット層)を設けても良いが、近赤外線吸収層にネオン発光の選択吸収色素を含有させても良い。
【0092】
ネオン発光の選択吸収色素としては、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポリアゾ系色素、アズレニウム系色素、ジフェニルメタン系色素、トリフェニルメタン系色素を挙げることができる。このような選択吸収色素は、585nm付近のネオン発光の選択吸収性とそれ以外の可視光波長において吸収が小さいことが必要であるため、吸収極大波長が575〜595nmであり、吸収スペクトル半値幅が40nm以下であるものが好ましい。
【0093】
また、近赤外線やネオン発光の吸収色素を複数種組み合わせる場合、色素の溶解性に問題がある場合、混合による色素間の反応ある場合、耐熱性、耐湿性等の低下が認められる場合には、すべての近赤外線吸収色素を同一の層に含有させる必要はなく、別の層に含有させても良い。また、光学特性に大きな影響を与えない限り、さらに着色用の色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を加えても良い。
【0094】
なお、安定性等に問題がない場合は、近赤外線吸収機能及び/又はネオンカット機能を有する色素を、後述の粘着剤層に加えて、近赤外線吸収機能及び/又はネオンカット機能が付与された粘着剤層としても良い。
【0095】
近赤外線吸収特性としては、850〜1000nmの透過率を、20%以下、さらに15%するのが好ましい。また選択吸収性としては、585nmの透過率が50%以下であることが好ましい。特に前者の場合には、周辺機器のリモコン等の誤作動が指摘されている波長領域の透過度を減少させる効果があり、後者の場合は、575〜595nmにピークを持つオレンジ色が色再現性を悪化させる原因であることから、このオレンジ色の波長を吸収させる効果があり、これにより真赤性を高めて色の再現性を向上させたものである。近赤外線吸収層の層厚は、0.5〜50μmが一般的である。
【0096】
機能層として粘着剤層を設ける場合は、本発明の光学フィルムをディスプレイパネル又はガラス基板に接着する機能を有するものであればどのような樹脂でも使用することができる。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、ブチルアクリレート等から形成されたアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン)及びSBS(スチレン/ブタジエン/スチレン)等の熱可塑性エラストマー(TPE)を主成分とするTPE系粘着剤及び接着剤等も用いることができる。前記粘着剤層の材料として、EVAを使用する場合、EVAとしては酢酸ビニル含有量が5〜50重量%、好ましくは15〜40重量%のものが使用される。酢酸ビニル含有量が5重量%より少ないと透明性に問題があり、また40重量%を超すと機械的性質が著しく低下する上に、成膜が困難となり、フィルム相互のブロッキングが生じ易い。EVAを使用する場合は、必要に応じて有機過酸化物等の架橋剤、物性改良のための各種アクリロキシ基又はメタクリロキシ基及びアリル基含有化合物、光増感剤、シランカップリング剤等の接着促進剤を添加して使用する。
【0097】
また、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいてもよく、また、場合によってはカーボンブラック、疎水性シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤を少量含んでも良い。
【0098】
粘着剤層の層厚は、一般に5〜500μm、特に10〜100μmの範囲が好ましい。
【0099】
光学フィルタは、一般に上記粘着剤層をディスプレイパネルのガラス板に圧着することにより装備することができる。もしくは、ガラス基板に圧着し、これをディスプレイの前面に設置し、光学フィルタとしても良い。
【0100】
上記粘着剤層は、例えばEVAと上述の添加剤とを混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状にシート成形することにより製造される。
【0101】
粘着剤層上には、必要に応じて使用時まで粘着剤層を保護する剥離シートを設けても良い。剥離シートの材料としては、ガラス転移温度が50℃以上の透明のポリマーが好ましく、このような材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等のポリマーを主成分とする樹脂を用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが好適に用いることができる。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0103】
(1)メッシュ状導電層の形成
表面に易接着層(ポリエステルポリウレタン;厚さ20nm)を有する厚さ100μmの長尺状ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(幅:600mm、長さ100m)の易接着層上に、ポリビニルアルコールの20%水溶液をドット状に印刷した。ドット1個の大きさは1辺が234μmの正方形状であり、ドット同士間の間隔は20μmであり、ドット配列は正方格子状である。印刷厚さは、乾燥後で約5μmである。
【0104】
その上に、銅を平均膜厚4μmとなるように真空蒸着した。次いで、常温の水に浸漬し、スポンジで擦ることによりドット部分を溶解除去し、次いで水でリンスした後、乾燥してPETフィルムの全面にメッシュ状導電層を形成した(図1(1)参照)。
【0105】
このフィルム表面の導電層は、正確にドットのネガパターンに対応した正方格子状のものであり、線幅は20μm、開口率は77%であった。また、導電層(銅層)の平均厚さは4μmであった。
【0106】
(2)ハードコート層(機能層)の形成
下記の配合:
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 80質量部
ITO(平均粒径150nm) 20質量部
メチルエチルケトン 100質量部
トルエン 100質量部
イルガキュア184(チバスペシャリティケミカル社製) 4質量部
を混合して得た塗工液を、上記メッシュ状導電層の全面に、バーコータにより塗布し(図1(2)参照)、紫外線照射により硬化させた。これにより、メッシュ状導電層上に厚さ5μmのハードコート層を形成した(屈折率1.52)。
【0107】
(3)低屈折率層の形成
下記の配合
オプスターJN−7212(日本合成ゴム(株)製) 100質量部
メチルエチルケトン 117質量部
メチルイソブチルケトン 117質量部
を混合して得た塗工液を、上記ハードコート層上にバーコータを用いて塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥させ、次いで紫外線照射により硬化させた。これによりハードコート層上に厚さ90nmの低屈折率層(屈折率1.42)を形成した。
【0108】
(4)近赤外線吸収層(ネオンカット機能を有する)の形成
下記の配合:
ポリメチルメタクリレート 30質量部
TAP−2(山田化学工業(株)製) 0.4質量部
Plast Red 8380(有本化学工業(株)製) 0.1質量部
CIR−1085(日本カーリット(株)製) 1.3質量部
IR−10A((株)日本触媒製) 0.6質量部
メチルエチルケトン 152質量部
メチルイソブチルケトン 18質量部
を混合して得た塗工液を、上記PETフィルムの導電層を形成した面と反対側の表面面全面にバーコータを用いて塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥させた。これにより、PETフィルム上に厚さ7μmの近赤外線吸収層(ネオンカット機能を有する)を形成した。
【0109】
(5)粘着剤層の形成
下記の配合:
SKダイン1811L(綜研化学(株)製) 100質量部
硬化剤L−45(綜研化学(株)製) 0.45質量部
トルエン 15質量部
酢酸エチル 4質量部
を混合して得た塗工液を、上記近赤外線吸収層上にバーコータを用いて塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥させた。これにより、近赤外線吸収層上に厚さ25μmの粘着剤層を形成した。
【0110】
(6)導電層露出工程
得られた積層体を矩形状(600mm×400mm)に裁断し、粘着剤層を介してガラス基板に貼付した。
【0111】
次いで図3に示すレーザ加工装置(CO2レーザー発振器を使用)を使用して、ガラス基板上の積層体の低屈折率層の周囲の縁部に、図1(3)及び図2に示した導電層露出工程に従って、レーザ照射して導電層露出領域を形成した。
【0112】
即ち、CO2パルスレーザ(パルス幅として300マイクロ秒、波長;10.6μm、パルスエネルギー;100mJ)を用いて出射したレーザ光を、レーザ光成形部(DOE及び集光レンズ)により、焦点位置において、直径0.55mmの円形の集光光が走査方向に対して、45度傾斜した直線上に12個配列するように、間欠的(オン/オフの各間隔1ミリ秒)に照射した。レーザ照射は矩形状のコーナー部から開始して走査し、コーナー部毎に停止して、レーザ光成形部自体は回転させることなく90度進行方向を転換して走査した。第二のコーナー部では、一度レーザ集光光が照射された部分では、レーザ照射を一時停止してレーザ加工光学系を移動させ、その後レーザ照射を再開して走査を継続した(図2)。コーナー部付近では走査速度を減速、加速させるので、焦点位置でのエネルギーが一定になるように出力等を制御した。走査速度の最大値は1000mm/秒であった。
【0113】
低屈折率層の側端部近傍にスポット状の導電層露出部が連続した帯状の導電層露出領域(幅4.25mm)及び、この領域を介してその外側の端部低屈折率層(幅0.5mm)が形成された。
【0114】
得られたディスプレイ用光学フィルタは、実際にPDPに貼付して使用した場合、良好な電磁波シールド性、透明性を示し、従来のものと遜色ないものであった。
【0115】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明により、安価で高品質な電磁波シールド性を有するディスプレイ用光学フィルタを提供することができる。
【符号の説明】
【0117】
12、22 透明基板
13、23 導電層
13’、23’ 導電層露出領域
16、26 ハードコート層
16’、26’ 端部ハードコート層
24 近赤外線吸収層
25 粘着剤層
30 レーザ発振器
31 レーザ光
32a、32b、32c、33 反射ミラー
34 回折型光学素子(DOE)
35 集光レンズ
36 加工テーブル
40 レーザ光成形部
41 レーザ集光光
42 レーザ加工光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板、その表面全体に形成された導電層、及び導電層表面全体に形成された少なくとも1層の機能層を含む積層体の当該機能層表面の側端部又は側端部近傍に沿って、レーザ光を間欠的に照射しながら走査し、照射領域の機能層を除去して導電層を露出させる工程を含むディスプレイ用光学フィルタの製造方法であって、
前記レーザ光の照射を、複数の集光光が前記機能層表面で、前記走査方向に対して所定の角度を持って傾斜する直線的に配列されるように行なうことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記光学フィルタの形状が矩形状である請求項1に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項3】
前記所定の角度が走査方向に対して30〜60度である請求項1又は2に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法に使用されるレーザ加工装置であって、
レーザ光源からレーザ光を出射するためのレーザ発振器を含むレーザ発振手段、
レーザ発振手段から出射するレーザ光を次のレーザ照射手段に導くための反射ミラーを含むレーザ案内手段、
レーザ案内手段により導かれたレーザ光を前記積層体の機能層表面の側端部又は側端部近傍に沿って集光するための集光レンズを含むレーザ照射手段、及び
レーザ照射手段を縦横方向に移動可能な走査手段を含み、且つ
前記レーザ案内手段及び/又はレーザ照射手段は、レーザ光の照射を複数の集光光が前記機能層表面で、前記走査方向に対して所定の角度を持って傾斜する直線的に配列されるように行なうレーザ光成形手段を有することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
前記所定の角度が走査方向に対して30〜60度である請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザ発振手段がCO2レーザ発振器を含む請求項4又は5に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法により得られるディスプレイ用光学フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−35280(P2011−35280A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182069(P2009−182069)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】