説明

ディスプレイ装置

【課題】2つのセンサ出力の差分による物体を検出する検出信号のS/N比を、さらに向上させる。
【解決手段】表示面200Aと、入力データに応じた強さの光を発生し表示面200Aに出力する光学素子(液晶素子)を含む画素領域PA1と、入射光をそれぞれ受光して光電変換する受光素子(第1および第2センサS1,S2)を対で含むセンサ領域PA2と、センサ領域PA2内で第1センサS1と表示面200Aとの間に配置され、可視光域VLの入射光を吸収して遮断し、非可視光域(IR光)の入射光を透過する光学フィルタ部60と、第1センサS1に対し近接配置される第2センサS2と表示面200Aとの間に配置され、入射光(VL,IRその他の非可視光)を吸収して遮断する光吸収性の遮光部70と、センサ出力の差分を求める演算部(不図示)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示面を備え、前記表示面に、画像や文字等の情報を表示することが可能なディスプレイ装置に関する。特定的に本発明は、表示面に接触または近接する被検出物を検出可能に構成されているディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像や文字等の情報を表示することが可能なディスプレイ装置として、液晶表示装置、有機EL表示装置、電子泳動法を用いた表示装置が知られている。
ディスプレイ装置の薄型化に伴って、映像や文字情報等の表示という本来の機能に加えて、ユーザの指示等を入力する入力装置等の機能を併せ持つ多機能化が要求されている。この要求に応えるものとして、ユーザの指やスタイラスペン(いわゆるタッチペン等)が表示画面に接触または接近したことを検出するディスプレイ装置が知られている。
【0003】
接触検出は、抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネルで行うことができる。タッチパネルを液晶パネル等の表示パネルの表示面側に付加した表示装置が知られている。
しかしながら、タッチパネルの付加が表示パネルの薄型化に不利であり、コスト増の要因になる。特に抵抗膜方式のタッチパネルは、ある程度の強さで画面を押さないと抵抗値変化が検出できず、そのために表示面を歪ませることになる。また抵抗膜方式のタッチパネルは1点検出が原則であり、用途が限られる。
【0004】
タッチパネルを必要としない指示位置検出方式として、指示位置検出のための受光素子を表示パネルに内蔵した、光学式の位置検出機能を備える表示装置が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0005】
光学式の位置検出では、外光の受光量で指などの影を検出する方式が広く用いられている。外光がパネルの表示面から入射するときに物体(人の指やスタイラスペン等、以下、被検出物ともいう)があると、その影において外光を検出する受光素子の出力が低いため、この出力から被検出物の位置を特定する。
【0006】
これに対し、特許文献2に記載された表示装置は、液晶(または有機EL)表示パネル内に非可視光に感度をもつ受光素子(以下、光センサという)を有している。
液晶表示パネルの場合、液晶表示パネルの一方の主面(背面)側にバックライトが配置されている。バックライトからの光は、可視光成分と非可視光成分を含んでおり、液晶表示パネルを透過する際に液晶層で、入力される映像信号に応じた変調を受けて、他の主面(前面または表示面)から出射される。この出射される光(出射光)の可視光成分に対する変調によって、所定の画像表示が行われる。
【0007】
液晶表示パネルの表示面側に接触または近接した物体(被検出物)が存在すると、一部の出射光が被検出物で反射し、反射光となって光センサ側に導かれる。光センサは上記被検出物からの反射光の、特に非可視光成分を検出する。光センサを設けた領域に対応して可視光遮断(非可視光選択)フィルタが設けられ、かつ、この領域では透過光が映像信号に応じた変調を受けないようになっている。このため、表示状態の影響を受けることなく、また周囲の明るさの程度に影響されることなく被検出物の検出が可能である。光センサを多数、規則的(離散的かつ2次元状)に配置することにより被検出物の位置や大きさの検出ができる。
【0008】
有機EL表示装置はバックライトが不要で、画素自体が発光する。この場合は非可視光の発光素子と受光素子とを、パネルの表示領域内に所定の間隔で配置する。被検出物を検出する仕方自体は、上記液晶表示装置と同様である。発光素子からの非可視光が被検出物で反射され、このときの反射光量の違いを、離散的で2次元状に配置された複数の受光素子で検出することにより、上記被検出物の位置や大きさを検出できる。
【0009】
特許文献1に記載された表示装置は、液晶層を画素ごとに分離するスペーサのバックライト側に、光センサが配置されている。光センサの配置領域と異なる画素内の領域に、可視光に感度をもつ受光素子(以下、可視光センサという)の配置領域と、映像信号に応じて液晶層への印加電圧を変えることができ透過光の変調が可能な領域(以下、光変調領域という)とが設けられている。
特許文献1に記載された表示装置は、人の指やスタイラスペン等の被検出物で反射された光を、非可視光と可視光の両方で検出できる構成となっている。
【0010】
特許文献1および2に記載された技術によれば、人の目には見えないため表示映像に影響しない非可視光を用いた物体の検出が行われる。よって、黒画面表示のように可視光の背面から前面へ抜ける透過光の量がほぼゼロに近い場合に、非可視光を前面側に透過させても表示に影響がないことから、黒表示時にも被検出物を検出できる。周囲が暗い、明るいに関係なく物体の検出が可能である。
【特許文献1】特開2005−275644号公報
【特許文献2】特開2006−301864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2では、可視光を遮断し非可視光を選択的に透過するフィルタ(選択透過フィルタ)が配置され、その周囲はブラックマトリクスで遮光されている。
ブラックマトリクスの材料等については特許文献2では言及されていないが、通常、金属をフィルタ層に含むか、フィルタ層とは異なる層の金属膜との組み合わせによりブラックマトリクスの機能を実現することが多い。
【0012】
ところで、本願の出願人は、ディスプレイ装置の表示面における位置検出に関し、2つのセンサを対で設け、第1のセンサ(光電センサ)の検出値から、第2のセンサ(ノイズ除去用センサ)の検出値を減算することで被検出物の検出信号のS/N比を向上する技術を提案している(例えば、特開20007−306896号公報参照)。
【0013】
この2つセンサ出力の差分による手法では、センサの背面から直接センサに届く光や、非検出物に達することなくパネル内の反射等を繰り返すことでセンサに戻される迷光がノイズ成分となるため、これらのノイズ成分をセンサ出力の減算によってキャンセルできる。
この手法は、第1および第2のセンサに同じようなノイズ成分が入射することを意図して、2つのセンサを近接配置する。センサの受光デバイス特性を揃える意味でも近接配置は必須となる。
そして、第2のセンサには、被検出物からの反射光が入らないように遮光する必要がある。
【0014】
しかしながら、例えば特許文献2に示すブラックマトリクスを、この遮光のために用いるとすると、センサ側からの光のブラックマトリクスにおける反射率と、センサ側からの光の選択透過フィルタにおける反射率に差があると、2つのセンサが近接配置されていても、ノイズ成分に差が生じることがある。
例えば、選択透過フィルタが殆ど反射しない材料から形成され、ブラックマトリクスより反射率が低いと、ブラックマトリクスに対応する位置に配置される第2のセンサで、反射により戻される光に因るノイズ成分が大きく、逆に、第1のセンサでは反射に起因するノイズ成分が小さい。
このノイズ成分の大きさの違いは、センサ出力の差分を取った検出結果の精度を低下させる。
【0015】
一方、特許文献1には、「BM層」と称される遮光層がセンサの背面側を覆い、センサに直接入射されるノイズ成分が低減されている。
しかし、背面側での広い面積の遮光では、物体検出に用いられる非可視光の光量が低下してしまう。2つのセンサに背面から入射する非可視光量が同じとすると、遮光層を背面側に設ける場合、センサ出力の信号成分自体が小さくなる、この場合もS/N比の低下につながる。
【0016】
2つのセンサ出力の差分による手法では、センサへの直接入射光は均一なためセンサの背面側を遮光する必要性は余りなく、第2のセンサに対し、物体からの反射光が入射する表示面側を遮光する必要がある。ただし、この場合、第2のセンサに対し表示面側からの光は遮光できても、背面側からの光は遮光されないため、ブラックマトリクス等の遮光部とその隣の選択透過フィルタ部に、背面側からの光に対する反射率の違いがあると、第1および第2センサ間でノイズ成分に差が生じることは避けられない。
【0017】
本発明は、2つのセンサ出力の差分による物体を検出する検出信号のS/N比が、さらに向上した改良されたディスプレイ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一形態(第1形態)に関するディスプレイ装置は、情報が表示される表示面と、入力されたデータに応じた強さの光を発生し前記表示面に出力する光学素子をそれぞれ含む複数の画素領域と、入射光をそれぞれ受光して光電変換する受光素子を対で各々が含む複数のセンサ領域と、前記センサ領域内で第1受光素子と前記表示面との間に配置され、可視光域の入射光を吸収して遮断し、非可視光域の入射光を透過する光学フィルタ部と、前記センサ領域内で、前記第1受光素子に対し近接配置される第2受光素子と前記表示面との間に配置され、入射光を吸収して遮断する光吸収性の遮光部と、前記第1受光素子の出力と、前記第2受光素子との出力から差分を求める演算部と、を有する。
【0019】
本発明の他の形態(第2形態)に関わるディスプレイ装置は、上記第1形態において、前記光学フィルタ部が、特定の波長域の光を選択的に吸収し、その他の波長域の光を透過させる有機顔料をレジストに分散させた第1顔料分散レジストから形成され、前記遮光部が、光の全波長域について吸収性をもつ有機または無機の顔料をレジストに分散させた第2顔料分散レジストから形成されている。
【0020】
本発明の他の形態(第3形態)に関わるディスプレイ装置は、上記第1形態において、前記光学フィルタ部が、特定の第1波長域の光を選択的に吸収し、その他の第2波長域の光を透過させる有機顔料をレジストに分散させた第1顔料分散レジストから形成され、前記遮光部が、前記第1顔料分散レジストの層と、前記第1顔料分散レジストの層の前記表示面と反対の側に配置され、前記第2波長域の光を選択的に吸収し、前記第1波長域の光を透過させる有機顔料をレジストに分散させた第3顔料分散レジストの層と、を含む。
【0021】
本発明の他の形態(第4形態)に関わるディスプレイ装置は、上記第1形態において、前記光学フィルタ部が、特定の第1波長域の光を選択的に吸収し、その他の第2波長域の光を透過させる有機顔料をレジストに分散させた第1顔料分散レジストから形成され、前記遮光部が、金属膜と、少なくとも前記金属膜の前記表示面と反対の面に形成された反射防止膜と、を含む。
【0022】
本発明の他の形態(第5形態)に関わるディスプレイ装置は、上記第4形態において、前記反射防止膜は、入射光を減衰する光吸収性をもつ反射防止膜である。
【0023】
本発明の他の形態(第6形態)に関わるディスプレイ装置は、情報が表示される表示面と、入力されたデータに応じた強さの光を発生し前記表示面に出力する光学素子をそれぞれ含む複数の画素領域と、入射光をそれぞれ受光して光電変換する受光素子を対で各々が含む複数のセンサ領域と、前記センサ領域内で第1受光素子と前記表示面との間に配置され、可視光域の入射光を吸収して遮断し、非可視光域の入射光を透過する光学フィルタ部と、前記センサ領域内で、前記第1受光素子に対し近接配置される第2受光素子と前記表示面との間に配置され、前記表示面側から入射する特定波長域の非可視光を反射し、特定波長域以外の波長域の光を透過し、前記表示面側と反対の側から入射する光を透過する波長選択ミラー部と、前記第1受光素子の出力と、前記第2受光素子との出力から差分を求める演算部と、を有する。
【0024】
本発明の他の形態(第7形態)に関わるディスプレイ装置は、上記第6形態において、前記波長選択ミラー部が、前記表示面側から入射する特定波長域の非可視光を選択的に反射し、前記表示面側から入射する前記特定波長域以外の非可視光および可視光、ならびに、前記表示面側と反対の側から入射する光を透過する、コレステリック液晶組成物を含有する層を含む。
【0025】
以上のように構成される第1〜第5形態では、第1および第2受光素子がセンサ領域内に対で近接配置され配置され、第1受光素子に対応して光学フィルタ部が、第2受光素子に対応して遮光部が配置されている。
第1および第2受光素子の背面側(表示面側と反対の側)からの光は受光素子の配置領域を通過して一部が、光学フィルタ部と遮光部に入る。しかし、光学フィルタ部と遮光部のいずれも光吸収性を有するため、反射することなく透過または吸収される。とくに光学フィルタ部は可視光の入射光を吸収して遮断し、非可視光は透過させる。一方、遮光部は可視光と非可視光を含む入射光を吸収して遮断する。
このため、光学フィルタ部と遮光部で反射する光成分が存在しないか、著しく低減される。
【0026】
光学フィルタ部等から出射される非可視光は、表示面に被検出物が存在する場合、反射して、その反射光(検出光)の一部が光学フィルタ部等を介して第1受光素子に入る。第2受光素子は遮光されているので検出光を(殆ど)受光しない。
第1および第2受光素子の出力が演算部に入力可能となっており、演算部が、第1受光素子の出力から第2受光素子の出力を減算して差分をとる。得られた差分(検出結果)は、ノイズ成分がキャンセルされたものとなる。
【0027】
第6および第7形態では、遮光部の代わりに波長選択ミラー部が設けられている。波長選択ミラー部は、前記表示面側から入射する特定波長域の非可視光を反射し、特定波長域以外の波長域の光を透過し、前記表示面側と反対の側から入射する光を透過する。このため、少なくとも第1および第2受光素子側に、波長選択ミラー部で反射される光成分は存在しないか、著しく小さい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、光学フィルタ部と遮光部(または波長選択ミラー部)で反射する光成分が存在しないか、著しく小さいため、演算部で得られた検出結果のS/N比が高いという利益が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を、赤外(IR)光により被検出物の位置や大きさ等の検出が可能な液晶表示装置を主な例とし、図面を参照して説明する。なお、本発明で被検出物の位置や大きさ等の検出は非可視光に基づいて行われるが、実施形態では主にIR光による検出を例示する。被検出物の位置や大きさ等の検出は、後述するようにIR光以外の非可視光により行うこともできる。
【0030】
《第1実施形態》
本実施形態は、バックライトを有する透過型液晶表示装置に関する。
図1に、透過型液晶表示装置の概略的な全体構成図を示す。また、図2に、図1に示す液晶パネル200の更に詳細な断面図を示す。
【0031】
図1に図解する液晶表示装置100は、表示面200Aを有する液晶パネル200と、バックライト300と、データ処理部400とを有する。
【0032】
図2は、液晶パネル200の表示面200Aから見た面内の領域の有効表示領域PAを示している。詳細は後述するが、有効表示領域PAは、画素領域PA1とセンサ領域PA2に区分できる。
【0033】
液晶パネル200は、図1および図2に示すように、互いに対向して配置されたTFTアレイ基板201と、いわゆる「対向基板」としてのカラーフィルタ基板(以下、CF基板)202と、これらの隙間に封入された液晶からなる液晶層203とを有している。液晶パネル200は、TFTアレイ基板201がバックライト300側に、CF基板202がバックライト300とは反対側になるように、バックライト300に対して対向して配置されている。
以下、液晶層203を中心として、液晶パネル200の厚さ方向におけるバックライト300の側を「背面側」と称し、一方面側と反対の側を、「表示面側」または「前面側」と称する。
【0034】
TFTアレイ基板201は、基体としてガラス基板208を有している。ガラス基板208には、各種の部材が積層的に設けられている。
具体的には、ガラス基板208の背面側に、光を偏光に変換する偏光板206が貼られている。また、画素領域PA1において、ガラス基板208の液晶層203側の面に、ガラス基板208に近い方から順に、画素電極40による凹凸を平坦化するための平坦化膜209と、液晶層203に電圧を印加するために画素PIXr,PIXg,PIXbごとに設けられた画素電極40R,40G,40Bと、液晶層203の液晶分子を配向させるための配向膜210とが積層されている。
【0035】
なお、画素領域PA1において、TFTアレイ基板201に、この他、データ電極(一般に、X電極、データ信号線、ソース信号線と呼ばれることもある)、液晶駆動用のスイッチング素子として機能するTFT、アクティブマトリックス動作のための信号保持容量(液晶の容量を補助するため、補助容量と呼ばれることもある)としてのキャパシタ等が設けられるが、図1および図2では。また、TFTアレイ基板201には、適宜な位置に保護膜や絶縁膜等が設けられる。
図1に示すように、特に液晶パネル200の前面の保護膜表面を「表示面200A」と呼ぶ。
【0036】
CF基板202は、基体としてガラス基板212を有している。ガラス基板212には、各種の部材が積層的に設けられている。
具体的には、ガラス基板212の表示面側には、光を偏光に変換する偏光板207が貼られている。また、ガラス基板212の液晶層203側の面には、ガラス基板212側から近い方から順に、画素PIXr,PIXg,PIXbごとに設けられた赤フィルタ21R、緑フィルタ21G、青フィルタ21B(以下、カラーフィルタ21と呼ぶことがある)と、カラーフィルタ21による凹凸を平坦化するための平坦化膜213と、液晶層203に電圧を印加するために複数の画素PIXr,PIXg,PIXbに共通に設けられた共通電極211と、液晶層203を配向させるための配向膜212とが積層されている。
【0037】
カラーフィルタ21は、カラーフィルタ層204に形成され、所定の波長域の可視光(所定の色の光)を透過させ、その波長域以外の可視光を吸収するものである。可視光以外の波長域、特に赤外光(IR光)については後述する。
可視光における所定の波長域に関し、例えば、国際照明委員会(CIE:Commission Internationale de l'Eclairage)では、赤色の単色光は波長が700[nm]、緑色の単色光は波長が546.1[nm]、青色の単色光は波長が435.8[nm]と定義されており、赤フィルタ21R、緑フィルタ21G、青フィルタ21Bはそれぞれ、上記の波長を含む又は上記の波長に近い波長域(例えば、50〜120[nm]程度の大きさの範囲)において、透過率が高くなる(基本的には、各波長における透過率の相対的な高低により把握されるが、絶対的な高さとしては、例えば、60[%]以上)ように形成されている。カラーフィルタ21は、顔料が用いられるものであってもよいし、染料が用いられるものであってもよい。
【0038】
一方、センサ領域PA2においては、液晶層203に対面するTFTアレイ基板201の表示面側に、図1に示すように、「光センサ」を有する光センサ部1が設けられている。図2のセンサ領域PA2は、光センサ部1の断面を示すものである。
光センサ部1の詳細は後述する。
【0039】
光センサ部1は、いわゆるタッチパネルの機能を液晶パネル200内にもたせるために形成されたものである。液晶パネル200を表示面200A(前面)側から見ると、有効表示領域PA内に規則的に配置される。
図1に、有効表示領域PAに光センサ部1がマトリクス状に配置されている液晶パネル200の一断面を示している。図1において、複数(ここでは4個のみ表示)の光センサ部1が等間隔に配置されている。光センサ部1は、位置検出のためには一方向で4個より十分多い数が必要であり、図1は図示の便宜上、光センサ部1の表示数を4個と少なくしている。位置検出の機能を有効表示領域PAの一部に限定する場合は、その限定された表示領域に光センサ部1が規則的に配置される。
【0040】
表示面200Aの有効表示領域PAから見て、図1に示すように、光センサ部1が形成されている液晶パネル200の領域を「センサ領域PA2」、その他の液晶パネル200の領域を「画素領域PA1」と定義する。なお、これらの領域はパネルの厚み方向も含めた三次元的な領域である。
【0041】
図2において、画素電極40R,40G,40Bと共通電極211は透明電極材料で形成される。
なお、後述するFFS方式の液晶表示装置などでは、図2と異なり、TFTアレイ基板201の表示面側(液晶層側)で画素電極の反液晶層側に、画素電極と対向して全画素共通の共通電極211が形成されている場合がある。
画素電極、対向電極、液晶層203、ならびに、補助容量やスイッチング素子(不図示)を含んで、光変調のための構成が形成されている。この光変調のための部材や材料を含む画素ごとの構成が「液晶素子」と呼ばれることがある。本実施形態の液晶素子は、各種制御線に接続されて制御されることによって、入力されたデータに応じた強さの光を発生し表示面に出力する機能を持つため、「光学素子」の一例に該当する。
【0042】
複数色が1色ずつ対応した複数画素からなる単位、即ち図2に示す画素PIXr,PIXg,PIXbを含んで「画素ユニット」が構成される。画素ユニットに対する光センサ部1の割合は1:1の場合に、光センサ部1の配置密度が最大となる。本実施形態において光センサ部1の配置密度は、上記最大の場合でもよいし、これより小さくてよい。
【0043】
TFTアレイ基板201の背面側に、バックライト300が配置されている。バックライト300は、液晶パネル200の背面に対面しており、液晶パネル200の有効表示領域PAに照明光を出射する。
図1に例示するバックライト300は、光源301と、光源301から照射された光を拡散することよって面状の光に変換する導光板302とを有している。バックライト300は、導光板302に対する光源301の配置位置に応じて、サイドライト型、直下型などがあるが、ここではサイドライト型を例示する。
【0044】
光源301は、液晶パネル200の背後、且つ、液晶パネル200の背面に沿う方向の一方側または両方側に配置される。言い換えると、光源301は、表示面200A(前面)から見た液晶パネル200の1辺、または、対向する2辺に沿って配置される。ただし、光源301を液晶パネル200の3以上の辺に沿って配置しても構わない。
光源301は、例えば、冷陰極管ランプにより構成されている。具体的には、光源301は、ガラス管内の低圧水銀蒸気中のアーク放電により発生する紫外線を蛍光体で可視光線に変換して放射する。なお、光源301は、冷陰極管ランプに限定されず、例えば、LEDやEL素子によって構成されてもよい。
【0045】
ここではLEDにより光源301が構成されている。図1は、白色LEDなどの可視光源301aと、IR光源301bとが対向する2辺に配置されている場合を例示する。
【0046】
導光板302は、例えば、透光性のアクリル板により構成され、光源301からの光を全反射させながら面に沿って(液晶パネル200の背面に沿う方向の一方側から他方側へ)導光する。導光板302の背面には、例えば、導光板302と一体的に形成された、若しくは、導光板302とは別部材により形成された不図示のドットパターン(複数の突部)が設けられており、導光された光はドットパターンにより散乱されて液晶パネル200に照射される。なお、導光板302の背面側には、光を反射する反射シートが設けられてもよいし、導光板302の前面側には、拡散シートやプリズムシートが設けられてもよい。
【0047】
バックライト300は、以上の構成を有するため、液晶パネル200の有効表示領域PAの全面にほぼ均一な平面光を照射する。
【0048】
<液晶表示装置の組み立て>
図3に、図1に示す構成の分解斜視図を示す。
液晶パネル200は、TFTアレイ基板201に画素回路、および、後述するセンサ読み出し回路等を表示面側に形成した後、配向膜210(図2)形成する。TFTアレイ基板201の他方面に、カラーフィルタ層204(図1,図2)と配向膜212(図2)を形成し、スペーサ(不図示)を形成した後、この形成面側が、TFTアレイ基板201の他方面に対面するように、2つの基板を張り合わせる。その後、液晶をスペーサにより形成された基板の対向空間に封入してシールする。TFTアレイ基板201の一方面に偏光板206を配置し、CF基板202の他方面に偏光板207を配置する。
【0049】
液晶パネル200に対し、接続体18を介して回路基板17を電気的に接続する。回路基板17には、例えば、液晶パネル200に画像を表示するための電気信号を液晶パネル200へ出力し、あるいは、表示面200Aに対するユーザの操作を検出するための電気信号が液晶パネル200から入力される、複数のIC等が予め実装されている。ICには、制御部(CPU)が含まれる。回路基板17に、液晶表示装置100を実装する機器のマザーボードに接続するためのフレキシブル基板16を設けている。
【0050】
<液晶パネルの回路構成>
図4は、液晶パネル内の駆動回路の構成例を示すブロック図である。
【0051】
図4に示すように、液晶パネル200は、画素(PIX)がマトリクス状に配置された表示部10を有する。表示部10は、パネルの厚み方向をも含めた3次元的な液晶パネル200の部分である。
図1にも示すが、有効表示領域PAの周囲に周辺領域CAが存在する。周辺領域CAは、TFTアレイ基板201の有効表示領域PA以外の領域をいう。周辺領域CAには、図4に示すように、有効表示領域PA内のTFTと一括して形成されるTFTを含んで構成された幾つかの機能ブロックにより示される駆動回路が形成されている。
【0052】
液晶パネル200は、駆動回路として、垂直ドライバ(V.DRV.)11と、ディスプレイドライバ(D−DRV.)12と、センサドライバ(S−DRV.)13と、選択スイッチアレイ(SEL.SW.)14と、DC/DCコンバータ(DC/DC.CNV.)15とを有する。
【0053】
垂直ドライバ11は、画素ラインを選択のために、水平方向に配線された各種制御線を垂直方向に走査するシフトレジスタ等の機能を有する回路である。
ディスプレイドライバ12は、映像信号のデータ電位をサンプリングしてデータ信号振幅を発生し、列方向の画素で共通な信号線にデータ信号振幅を排出する等の機能を有する回路である。
センサドライバ13は、所定の密度で画素の配置領域内に分散配置された光センサ部1に対し、垂直ドライバ11と同様な制御線の走査と、制御線の走査に同期してセンサ出力(検出データ)の収集を行う回路である。
スイッチアレイ14は、複数のTFTスイッチから構成され、ディスプレイドライバ12によるデータ信号振幅の排出制御と、表示部10からのセンサ出力の制御を行う回路である。
DC/DCコンバータ15は、入力される電源電圧から、液晶パネル200の駆動に必要な電位の各種直流電圧を発生する回路である。
【0054】
ディスプレイドライバ12やセンサドライバ13の入出力信号、その他の信号の液晶パネル200内と外のやり取りは、液晶パネル200に設けられたフレキシブル基板16(図3参照)を介して行われる。
【0055】
なお、液晶駆動IC(ディスプレイドライバ12に相当)と、センサ駆動、センサ出力の読み出しのためのIC(センサドライバ13等に相当)と、画像処理ICを、液晶パネル200内部にSOG実装してもよい。センサ駆動、センサ出力の読み出しのためのICと、画像処理ICを1つのICとしてもよい。この場合、上記入出力信号等のIC間のやり取りは液晶パネル200内でSOG実装端子を介して行われる。
【0056】
図4に示すほかに、クロック信号の発生または外部入力のための構成なども駆動回路に含まれる。
【0057】
<画素部および光センサ部>
本実施形態に関わる液晶表示装置100の特徴の1つは、表示面側の被検出物をIR光が被検出物で反射されて液晶パネル200内に戻される光を検出する2つのセンサ、即ち、第1受光素子(以下、第1センサという)と、第2受光素子(以下、第2センサという)を有していることである。
【0058】
図2に示すように、ガラス基板208に、第1センサS1と、第2センサS2とが、近接配置されている。第1および第2センサS1,S2を、以下、単にセンサSということもある。
第1および第2センサS1,S2は、同一の半導体薄膜から形成され、受光特性が揃う必要があるため、互いに近接して配置されている。
【0059】
第1および第2センサS1,S2は材料を変えてもよいが、受光特性を同じとするために同じ材料、同じパターンから形成し、入射光の分光特性を変えることで、第1センサS1を「物体検出用途」、第2センサS2を「ノイズ成分検出用途」に割り当てることが望ましい。
このため、本実施形態のカラーフィルタ層204には、第1センサS1に対応する位置に光学フィルタ部60が配置され、第2センサS2に対応する位置に遮光部70が形成されている。これらの層につては後述する。
【0060】
図5(A)にセンサSの平面図の一例を、図5(B)に、図5(A)のパターンに対応するセンサSの等価回路の一例を示す。図示するセンサSは、第1または第2センサS1,S2であり、これらは同じ構成を有している。
図5(B)に図解するセンサSは、3つのトランジスタ(ここではNチャネル型TFT)とフォトダイオードPDとを有する。
3つのトランジスタは、リセットトランジスタTS、アンプトランジスタTA、読み出しトランジスタTRである。
【0061】
フォトダイオードPDは、アノードがストレージノードSNに接続され、カソードが電源電圧VDDの供給線(以下、VDD線)31に接続されている。フォトダイオードPDは、後述するようにPIN構造またはPDN構造を有し、I(intrinsic)領域(PIN構造の真性半導体領域)またはD(doped)領域(PDN構造のN領域)に対し絶縁膜を介して電界を及ぼすコントロールゲートCGを備える。フォトダイオードPDは、逆バイアスされて使用され、そのときの空乏化の程度をコントロールゲートCGで制御することにより、感度を最適化(通常、最大化)できる構造を有する。
なお、フォトダイオードPDを、「受光素子」の一例としてもよい。
【0062】
リセットトランジスタTSは、ドレインがストレージノードSNに接続され、ソースが基準電圧VSSの供給線(以下、VSS線)32に接続され、ゲートがリセット信号(RESET)の供給線(以下、リセット線)33に接続されている。リセットトランジスタTSは、ストレージノードSNをフローティング状態からVSS線32への接続状態に切り替え、ストレージノードSNを放電して、その蓄積電荷量をリセットする。
【0063】
アンプトランジスタTAは、ドレインがVDD線31に接続され、ソースが読み出しトランジスタTRを介して検出電位Vdet(または検出電流Idet)の出力線(以下、検出線)35に接続され、ゲートがストレージノードSNに接続されている。
読み出しトランジスタTRは、ドレインがアンプトランジスタTAのソースに接続され、ソースが検出線35に接続され、ゲートがリード制御信号(READ)の供給線(以下、リード制御線)34に接続されている。
【0064】
アンプトランジスタTAは、リセット後に再びフローティング状態となったストレージノードSNにフォトダイオードPDで発生した正電荷が蓄積されると、その蓄積された電荷量(受光電位)を増幅する作用がある。読み出しトランジスタTRは、アンプトランジスタTAで増幅された受光電位を、検出線35に排出するタイミングを制御するトランジスタである。一定時間の蓄積時間が経過すると、リード制御信号(READ)が活性化して読み出しトランジスタTRがオンするため、アンプトランジスタTAは、ソースとドレインに電圧が印加されて、そのときのゲート電位に応じた電流を流す。これにより受光電位に応じ、振幅が増大した電位変化が検出線35に出現し、この電位変化が、検出電位Vdetとして検出線35から光センサ部1の外部に出力される。あるいは、受光電位に応じて値が変化する検出電流Idetが、検出線35から光センサ部1の外部に出力される。
【0065】
図5(A)は、図4のようにCF基板202と貼り合わされて液晶が封入される前のTFTアレイ基板201の上面視を示す。
図5(A)に示すパターン図において図5(B)に示す素子やノードには同一符号を付しているため、素子間の電気的接続は明らかである。
VDD線31、VSS線32および検出線35は、例えばアルミニウム(AL)の配線層から形成され、リセット線33とリード制御線34はゲートメタル(GM)、例えばモリブデンMoから形成されている。ゲートメタル(GM)はアルミニウム(AL)の配線層より下層に形成される。ゲートメタル(GM)より上層で、アルミニウム(AL)より下層の階層に、ポリシリコン(PS)層が4つ孤立して配置されている。リセットトランジスタTS、読み出しトランジスタTR、アンプトランジスタTAおよびフォトダイオードPDは、それぞれPS層を有している。
【0066】
トランジスタにおいては、ゲートメタル(GM)と交差するPS層箇所の一方と他方に、N型不純物が導入されてソースとドレインが形成されるトランジスタ構造となっている。
これに対し、フォトダイオードPDでは、PS層からなる薄膜半導体層36の一方と他方にP型とN型の逆導電型の不純物が導入されているためダイオード構造となっている。P型の不純物領域が、フォトダイオードPDのアノード(A)領域あるいはストレージノードSNを構成する。N型の不純物領域が、フォトダイオードPDのカソード(K)領域を構成し、コンタクトを介して上層のVDD線31と接続されている。
【0067】
なお、図5(A)に示す平面図において、3つのトランジスタ(TR,TS,TA)が有する受光領域(I領域またはD領域)のバックライト側は、夫々のトランジスタがもつ電極によって遮光されているが、前面側も外光から遮光する必要がある。
同様な理由から、画素(PIX)のスイッチング素子SWの前面側も遮光されている。
【0068】
図6に、FFS(Field Fringe Switching)方式の液晶の画素(PIX)におけるTFTアレイ基板201の上面視を示す。FFS方式の液晶は、別名を「In Plane Switching(IPS)−Pro」方式の液晶」とも言う。
図6には、TFTアレイ基板201を基体として形成された画素電極40と、各種配線と、スイッチング素子SWと、それらの接続が示されている。
【0069】
画素電極40は透明電極層(TE)で形成され、複数のスリットを有している。特に図示していないが、画素電極40の下方に共通電極が画素電極40と対面して形成される。共通電極は、全画素共通な透明電極層(TE)で形成される。
画素電極40は、コンタクト41を介して下層のアルミニウム(AL)等からなる内部配線42と接続されている。内部配線42が、ポリシリコン(PS)からなるスイッチング素子SWの薄膜半導体層43に形成されたソースとドレインの一方に接続されている。薄膜半導体層43のソースとドレインの他方に、アルミニウム(AL)からなる信号線45が接続されている。薄膜半導体層43の下層に交差する垂直走査線44が、モリブデン(Mo)等のゲートメタル(GM)から形成され、信号線45と直交する向きに配置されている。
【0070】
なお、図6に示す各種パターンを有するTFTアレイ基板201の上方(不図示の部分)には、CF基板202が重ねられ、これら2つの基板間に液晶層203が形成される(図1参照)。また、偏光板206と偏光板207が、2つの基板に配置されている。
ここで液晶層203は、ネマチック液晶で構成される。TFTアレイ基板201およびCF基板202の外側面に接着剤を介して密着状態で設けられている偏光板206と偏光板207は、クロスニコル状態で設けられる。
信号線45および垂直走査線44(ゲートメタル(GM))の材料としては、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、これらの複合層(例えば、Ti/Al)、または、これらの合金層を用いることが可能である。
【0071】
<フォトダイオードPDの構造と受光特性>
図7(A)にPIN構造のフォトダイオードPDを、図7(B)にPDN構造のフォトダイオードPDを、それぞれ示す。
フォトダイオードPDの薄膜半導体層36において、受光感度を有する領域が、PIN構造(図7(A))では不純物が導入されていないI領域であり、PDN構造(図7(B))ではN型不純物が低濃度に導入されたD領域(N領域)である。
【0072】
例えば図示のように薄膜半導体層36に逆バイアスを印加すると、I領域またはD領域の内部に空乏層が拡がる。この空乏化を促進するためにバックゲート制御(コントロールゲートCGによる電界制御)を行う。ただし、PIN構造ではP領域からせいぜい10[μm]程度の空乏化であるが、PDN構造ではD領域のほぼ全域が空乏化され、それだけ受光感度を有する面積が広いという利点がある。
本実施形態では、PIN構造、PDN構造のいずれも採用可能である。
【0073】
かかる構造の位置センサとしてのフォトダイオードPDは、非可視光、例えば赤外光に感度を持つように設計されている。フォトダイオードPDは赤外光感度が大きいと望ましいが、可視光や近紫外光に感度が大きい場合は、赤外光を選択的に透過させるIRフィルタと組み合わせて用いるとよい。
【0074】
非可視光は、例えば、赤外光または紫外光を含む。なお、紫外光(これも非可視光の一例である。)と可視光との波長の境界は360[nm]〜400[nm]、可視光と赤外光との波長の境界は760[nm]〜830[nm]としている。ただし、実用的には、350[nm]以下の波長を紫外光、700[nm]以上の波長を赤外光としてもよい。ここでは非可視光の波長範囲を350[nm]以下、700[nm]以上とする。ただし、本実施形態において、非可視光の波長の境界は、上記360[nm]〜400[nm]、760[nm]〜830[nm]の範囲内で任意に規定してよい。
【0075】
非可視光として赤外光(IR光)を用いる場合、IR光に感度をもつフォトダイオードPDの薄膜半導体層36(図7)は、価電子帯と伝導帯間のエネルギーバンドギャップが1.1[eV]と、可視光の受光素子のエネルギーバンドギャップ(例えば1.6[eV])より小さい値をもつ多結晶シリコン、もしくは、結晶シリコンから形成することが好ましい。エネルギーバンドギャップEgは、Eg=hν(hはプランク定数、ν=1/λ(λは光の波長))より最適な値が算出される。
【0076】
一方、アモルファスシリコン、または、微結晶シリコンから薄膜半導体層36(図7)を形成すると、それらの半導体材料はエネルギーバンドギャップ準位に分布を持つため、赤外線、紫外線に対しても、その受光能力(感度)をもつ。したがって、これらの半導体材料から形成したフォトダイオードPDは、可視光のみならず、赤外線、紫外線の非可視光においても受光能力を有し、これにより、可視光と非可視光の受光素子として利用可能となる。
【0077】
以上から、本実施形態に好適に利用できるフォトダイオードPDは、その薄膜半導体層36が、多結晶シリコン、結晶シリコン、アモルファスシリコン、または、微結晶シリコンから形成される。いずれにしても、本実施形態におけるフォトダイオードPDは、可視光の受光のために設計された通常のフォトダイオードより赤外線の吸収係数が大きくなるように半導体材料が選択され、設計するとよい。そのような設計が難しい場合に、光学フィルタ部60(光学フィルタ部)の存在により、通常のフォトダイオードを用いることも可能である。
【0078】
<演算部>
図2に示すように、第1センサS1からの第1検出電位Vdet1と、第2センサS2からの第2検出電位Vdet2とを入力し、その差分をとって検出信号Sdetを発生する演算部403が設けられている。演算部403は、図1のデータ処理部400内に設けられ、例えば制御部401の演算機能により実現してもよいし、例えば位置検出部402内に回路として実現してもよい。
通常、第1センサS1の出力と第2センサS2の出力をシリアル入力し、これらをコンパレータの入力に保持させ、入力が揃ったらコンパレータにより差分をとり、差分を増幅して検出信号Sdetを発生させるなどの方法が採られる。あるいは、コンパレータの閾値を制御して各出力ごとにレベルを検出し、後で差分をとってもよい。また、ディジタル値に変換した後に差分を演算してもよい。各出力のレベルは、クロック信号に同期した一定時間の電荷蓄積により決められる。
【0079】
<光学フィルタ部および遮光部の材料>
本実施形態の大きな特徴である、光学フィルタ部および遮光部の材料と、それによる特性の相違について説明する。
一般に「光学フィルタ」とは、所望の波長域の光を選択的に透過、反射するものである。
これに対して、本実施形態における光学フィルタ部60(図2)は、可視光を殆ど反射しないで吸収して遮光し、非可視光の一部、即ち所望の波長域の非可視光を殆ど反射しないで透過させる材料から形成している。
【0080】
一般に「遮光」とは、一方の面から他方の面に光を通さないことを意味し、遮光のために光を反射する、吸収するは問わない。よって、カラーフィルタ層204に形成されることがあるブラックマトリクスなどの遮光のための部材は、光を反射して遮光する場合がある。
これに対して、本実施形態における遮光部70(図2)は、可視光と非可視光の両方を反射しないで吸収し、これにより遮光する材料から形成されている。
【0081】
このように特定の波長領域の光を選択的に透過(吸収)させるためには、感光性を用いるレジスト材料に特定の波長領域の光を選択的に透過(吸収)する顔料を分散させた、顔料分散レジストを用いることが有効である。
言い換えると、本実施形態における光学フィルタ部60が、『特定の波長域の光を選択的に吸収し、その他の波長域の光を透過させる有機顔料をレジストに分散させた顔料分散レジスト(他の実施形態で引用する場合、「第1顔料分散レジスト」という)から形成されている。これに加えて、本実施形態の遮光部70が、『光の全波長域について吸収性をもつ有機または無機の顔料をレジストに分散させた顔料分散レジスト(他の実施形態で引用する場合、「第2顔料分散レジスト」という)から形成されている。
本実施形態では、光学フィルタ部60と遮光部70は共に単層構造であることを基本とするが、例えば、背面側に反射防止のための全波長透過膜を設けることを排除するものではない。
【0082】
光学フィルタ部60に用いるレジスト材料としては、アクリル系、ポリイミド系、ノボラック系等を用いることができる。IR波長域を選択透過させるための有機顔料としては、アゾ顔料化合物(例えば、「山陽色素株式会社」製など)を用いることができる。
また、光学フィルタ部60の基本的な形成手法は、顔料分散レジストを基板上に塗布し、マスク露光、現像、ベークのプロセスを経ることにより、所望のパターン形状を得るという、半導体プロセス技術を用いる。
【0083】
遮光部70用いるレジスト材料としては、アクリル系、ポリイミド系、ノボラック系等を用いることができる。
全波長について吸収を持つ有機または無機の顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック等の顔料用いることができる。
遮光部70の形成方法は、光学フィルタ部60と同様に、顔料分散レジストを基板上に塗布し、マスク露光、現像、ベークのプロセスを経ることにより、所望のパターン形状を得るという、半導体プロセス技術を用いる。
【0084】
<実施例>
図8に、本発明の第1実施形態の構成図を示す。図8は、図2の一部を抜粋した部分に対応する。
可視光を遮光し赤外光を透過する光学フィルタ部60としては、本実施例では、有機顔料をレジストに分散させた第1顔料分散レジスト(図8では「顔料ブラック層61」と表示)を用いている。顔料ブラック層61の有機顔料としては、銅フタロシアニン化合物(青、緑)、アゾ顔料(赤)化合物、レジストとしてはアクリル系感光レジストを用いている。
【0085】
可視光および赤外光を遮光する遮光部70としては、本実施例では、カーボン微粒子をアクリル系感光レジストに分散させた顔料分散レジストを用いている。図8では、これを「カーボンブラック層71」と表示している。
【0086】
図9に、顔料ブラック層61およびカーボンブラック層71の分光透過率特性を示す。
顔料ブラック層61では赤外線を選択的に透過し、カーボンブラック層71では全波長領域を遮光していることが図9から分かる。
【0087】
<動作例>
次に、図1〜図8を参照して、液晶表示装置100の動作の一例を説明する。
液晶パネル200の背面側に設置されたバックライト300からの照明光は、液晶パネル200内に入射され、偏光板206、TFTアレイ基板201、液晶層203、カラーフィルタ層204、CF基板202、および、偏光板207を、この順で透過して、前面から外部に出射される。
この透過の最中に照明光は偏光や変調を受けて偏波面や光強度等が変化する。
【0088】
バックライト300からの照明光は、図8の場合、偏光板206を通ってTFTアレイ基板201に入射される。
図8に示すように、TFTアレイ基板201には第1および第2センサS1,S2が形成されているが、そのバックライト側に照明光が入射され、これにより第1および第2検出電位Vdet1,Vdet2にノイズ成分が発生する。しかし、このノイズ成分は均一な照明光の直接光によるものであるためセンサ間で同レベルであり、演算部403により除去される。
その他の光は、例えば図5(A)に破線で示す光センサ部1内の開口部、および、図6に示す画素(PIX)内の配線間の開口部を通ってTFTアレイ基板201から出力される。
【0089】
TFTアレイ基板201から出た光は、液晶層203、カラーフィルタ層204、CF基板202、および、偏光板207(図1)を透過して、表示面200Aから画面表示のために外部に出力される。
【0090】
この透過の過程で、偏光板206の透過時に透過光が第1の方向に偏光される。液晶層203内を光が透過する間に、液晶分子の光学異方性の効果により透過光の偏光方向が液晶の分子配列方向にそって所定角度変化する。偏光板207の透過時に、透過光が上記第1の方向と所定の角度ずれた第2の方向に偏光される。
【0091】
この3度の偏光作用のうち、液晶層203を透過中の偏光角度は、入力される映像信号の電位に応じて液晶層203に印加する電界強度を制御することによって、画素ごとに独立に変化する。このため各画素を通過する光は、映像信号の電位に応じた明るさに変化する変調を受けて液晶パネル200から出射され、所定の画像表示に供せられる。
【0092】
既に説明したように、液晶パネル200は、画像を表示する有効表示領域PAを有し、その画素領域PA1に複数の画素が配置されている。有効表示領域PAのセンサ領域PA2に、いわゆるタッチパネルの機能を実現するために人の指やスタイラスペン等の被検出物を検出する受光素子を含む光センサ部1が配置されている。
光センサ部1を通過する光は、画素を透過する光のような、電気信号による変調を受けることなく、そのまま液晶パネル200の表示面200Aから出射される。
【0093】
画像表示の途中で、例えばアプリケーションに応じて表示コンテンツに、ユーザ指示を促す場合があり、このような場合、図8に示すように、ユーザが指(またはスタイラスペン等)で表示画面を軽くタッチする。
指またはスタイラスペン等の被検出物が表示画面に接触または近接すると、液晶パネル200から出射される光が、被検出物で反射され液晶パネル200内に戻される。この戻された光(反射IR光(IR_R)および反射可視光(VL_R))は、液晶パネル200内の層界面や配線等の反射物で屈折や反射を繰り返すため、一般に、反射光は液晶パネル200で広がって進む。よって、被検出物の大きさにもよるが、反射光は、顔料ブラック層61を透過できるため第1センサS1に到達する。一方、カーボンブラック層71に達する反射光は吸収されて、遮断される。
【0094】
第1センサS1に到達した反射光の一部が、所定の逆バイアスが印加されたフォトダイオードPDに入射すると、フォトダイオードPDが光電変換を行って電荷を、例えばアノード(A)電極から出力する。このときの電荷量はIR受光量に比例した受光データを表す。受光データ(電荷量)は、既に説明した図5(B)に示す読み出し回路の検出線35から検出電位Vdet(または検出電流Idet)となって出力される。
【0095】
一方、第2センサS2でも同様な検出動作を行う。ただし、非検出物からの反射光は遮光されており、第2センサS2には、迷光などのノイズ成分となる光が入射される。このノイズ成分は第1センサS1でも同レベルであるため、演算部403によってキャンセルされる。
【0096】
このときのノイズ成分には、既に説明したように、顔料ブラック層61およびカーボンブラック層71では反射がない、また、あっても殆ど無視できるほど小さいため、顔料ブラック層61やカーボンブラック層71からの反射光は含まれない。
もし仮に反射が生じ、かつ、反射率に違いがあると、ノイズ成分が第1センサS1と第2センサS2で異なるため、検出精度が低下する。しかし、本実施形態における顔料ブラック層61(光学フィルタ部60)と、カーボンブラック層71(遮光部70)では、少なくとも背面側での反射は起こらないようになっている。よって、反射による検出精度の低下はない。
【0097】
より詳細には、検出電位Vdet(または検出電流Idet)は、図4に示すスイッチアレイ14によってセンサドライバ13側に送られ、ここで受光データとして収集され、さらに図1に示すデータ処理部400内の位置検出部402に入力される。位置検出部402または制御部401は、検出電位Vdetまたは検出電流Idetごとの行と列のアドレスの組を液晶パネル200側から順次、リアルタイムに入力している。このためデータ処理部400内で、不図示のメモリに、被検出物のパネル内位置情報(検出電位Vdetまたは検出電流Idet)が行と列方向のアドレス情報と関連付けられて当該メモリに蓄えられる。
図2に示す演算部403は、例えばメモリに格納する前に、検出信号Sdetを発生させ、これをメモリに格納するとよい。
【0098】
液晶表示装置100は、メモリ内の情報に基づいて、被検出物の位置情報と表示情報と重ね合わせることにより、「ユーザが表示情報に基づいた指示を指またはスタイラスペン等を用いて行った」、あるいは、「ユーザがスタイラスペン等を表示画面上で移動させることにより所定の情報を入力した」ことが判別できる。つまり、液晶表示装置100は、タッチパネルを液晶パネル200に付加した場合と同様な機能を、タッチパネルを付加していない薄型の表示パネルにより実現することができている。このような表示パネルを、「インセルタッチパネル」と称する。
【0099】
本実施形態によれば、ノイズ除去用受光センサには、バックライトからの直接光(赤外、可視)が入射し、観測面側の可視光および赤外光はカーボンブラックによりカットされる。一方、赤外線用受光センサには、バックライトからの直接光(赤外、可視)と、観測面側の赤外光(シグナル)が入射し、可視ノイズは顔料ブラックによりカットされる。
この構成により、赤外線用受光センサ信号から、ノイズ除去用受光センサ信号を引くことにより、バックライトからの直接光を相殺して、赤外光(シグナル)を得ることが可能となる。
このとき光学フィルタ部60および遮光部70が少なくとも背面側で反射を起こさないため、物体検出の精度が、より向上するという利益が得られる。
【0100】
《第2実施形態》
図10に、本発明の第2実施形態の構成図を示す。図10は、図2の一部を抜粋した部分に対応する。
光学フィルタ部60としては、第1実施形態と同じ顔料ブラック層61を用いている。
一方、遮光部70は、顔料ブラック層61と同一の層を有し、その背面側に、赤外吸収フィルタ層72を積層している。赤外吸収フィルタ層72は、「第2顔料分散レジストの層」の一例である。
言い換えると、第2実施形態の遮光部70は、『第1顔料分散レジストの層(顔料ブラック層61)と、顔料ブラック層61の表示面と反対の側に配置され、第2波長域(IR波長域)の光を選択的に吸収し、その他の第1波長域の光を透過させる有機顔料をレジストに分散させた第3顔料分散レジストの層(赤外吸収フィルタ層72)と、を含む』ことが、本実施形態の特徴である。
【0101】
赤外吸収フィルタ層72としては、赤外を吸収する有機顔料をレジストに分散させた顔料分散レジストを用いている。
赤外を吸収する有機顔料としては、チタン/アルミ/鉄フタロシアニン化合物、レジストとしてはアクリル系感光レジストを用いている。
【0102】
図11に、顔料ブラック層61と赤外吸収フィルタ層72の積層膜の分光透過率特性を示す。
顔料ブラック層61では赤外線を選択的に透過し、赤外吸収フィルタ層72では、赤外線を遮光している。
【0103】
その他の構成、即ち、図10に図2と同一符号を付した構成、その他の図1〜図7に示す構成、および、基本的な動作は第1実施形態と共通する。
【0104】
第1実施形態と同様に、第2センサS2には、バックライト300からの直接光(赤外、可視)が入射し、観測面側(表示面側)の可視光(外光を含む)は顔料ブラック層61で、赤外光は赤外吸収フィルタ層72でカットされる。
一方、第1センサS1には、バックライト300からの直接光(赤外、可視)と、観測面側の赤外光(シグナル)が入射し、可視ノイズは顔料ブラック層61によりカットされる。
このとき顔料ブラック層61の背面側、赤外吸収フィルタ層72の背面側で反射が生じない、あるいは、生じても無視できるほど小さいため、図2に示す演算部403から得られる検出信号Sdetの精度が向上している。
【0105】
《第3実施形態》
図12に、本発明の第3実施形態の構成図を示す。図12は、図2の一部を抜粋した部分に対応する。
光学フィルタ部60としては、第1および第2の実施形態と同じ顔料ブラック層61を用いている。また、「波長選択ミラー部」としてのコレステリック選択反射膜73が、第2センサS2の上に選択的に配置されている。
【0106】
図13に、コレステリック選択反射膜73の構造を示す。また、図14に、コレステリック選択反射膜73の分光反射率特性を示す。
コレステリック選択反射膜73の選択反射波長は、λ=850[nm]に設定されており、コレステリック回転方向が右まわり、または左まわりの1層構造(図13(A))と、右回りおよび左まわりの2層積層構造(図13(B))の何れかを用いることができる。図13(A)の場合は、VA、ECB等のλ/4板をパネル外側または図2の配向膜212と偏光板207との間等に配置してもよい。
このλ/4板を配置したモードで、かつ、赤外光での偏光度が十分ある偏光板207等を用いた場合には、パネル入射光が円偏光になっているので1層構造で十分である。上記条件を満たさない場合には、2層構造にすることが有効である。
【0107】
コレステリック選択反射膜73をパターニングするためには、コレステリック選択反射膜73上にレジストを塗布し、マスク露光、現像、エッチング、レジスト剥離のプロセスを経ることにより、所望のパターンを得ることができる。また、コレステリック液晶に感光性を持たせ、マスク露光によりパターニングしてもよい。
【0108】
その他の構成、即ち、図10に図2と同一符号を付した構成、その他の図1〜図7に示す構成、および、基本的な動作は第1実施形態と共通する。
【0109】
図12において、第2センサS2には、バックライト300からの直接光(赤外、可視)が入射し、観測面側の可視光は顔料ブラック層61で、赤外光はコレステリック選択反射膜73でカット(反射)される。
一方、第1センサS1には、バックライト300からの直接光(赤外、可視)と、観測面側の赤外光(シグナル)が入射し、可視ノイズは顔料ブラック層61によりカットされる。
この構成により、赤外線用受光センサ信号から、ノイズ除去用受光センサ信号を引くことにより、バックライトからの直接光を相殺して、赤外光(シグナル)を得ることが可能となる。
【0110】
本実施形態に関わる表示装置は、以上の説明に限定されず、以下の種々の変形が可能である。
【0111】
<変形例1>
第1実施形態において、遮光部70を得る方法として、金属薄膜を用いることもできる。金属薄膜としては、クロム、チタンなどが用いられる。反射防止のために、酸化膜等で誘電体多層膜にして所望の波長領域での反射防止をすることが有効である。この反射防止膜は、特に背面側で光吸収性を有するように多層膜構造や材料が決められている。
金属薄膜のパターニング方法としては、金属薄膜上にレジストを塗布し、マスク露光、現像、エッチング、レジスト剥離のプロセスを経ることにより、所望のパターンを得ることができる。
【0112】
<変形例2>
第1〜第3実施形態は、反射型液晶表示装置に適用できる。
一般的な反射型液晶パネルは、図1において、バックライト300がなく、代わりに、液晶層203と表示面200Aとの間に、照明部(フロントライト)が配置される。
この場合でも、フロント側からセンサ配置領域に入って迷光となる光が、光学フィルタ部60と遮光部70で吸収され、それらからの反射がないためノイズ成分となる光量が第1センサS1と第2センサS2で同じとなり、検出感度がより向上する。
【0113】
<変形例3>
第3実施形態において、特定の波長領域の光を選択反射させる手段としては、コレステリック選択反射膜73として、誘電体多層膜の干渉を用いる方法、コレステリック液晶のカイラルピッチにより選択反射波長をコントロールする方法を適用してもよい。
【0114】
<変形例4>
変形例4では、非可視光を受光する受光素子としてのフォトダイオードPDの他に、可視光を主成分とする外光を検出し、その検出結果に応じて図1に示すバックライト300から出力される光の強度を制御する例を示す。ここでは第1実施形態の変形例を説明するが、バックライト等の照明部を有する限り、変形例4は他の実施形態にも適用できる。
【0115】
外光を検出する外光センサは、特に図示しないが、図1に示す液晶パネル200において、有効表示領域PAまたは周辺領域CAに配置される。外光センサの配置の位置および個数は任意である。
外光センサを有効表示領域PA内に配置する場合、外光センサを、非可視光を受光する光センサ(フォトダイオードPD)と同様にマトリクス状に配置することができる。この場合、各外光センサを、周囲に存在する複数の光センサから等距離の位置に配置する。例えばフォトダイオードPDと外光センサとが、有効表示領域PAの平面視で市松模様を形成するようにするとよい。
市松模様でなくとも、外光センサを等間隔で配置してよい。このほか、外光センサを、有効表示領域PAの四隅付近に配置する、有効表示領域PAの外側辺のうち、少なくとも1辺に近い位置に並べて配置するなど、配置と数に制限はない。
【0116】
外光センサの基本構成は、図5と同様な等価回路や平面パターンが適用できる。ただし、外光センサのフォトダイオードは、光センサとしてのフォトダイオードPDとは、薄膜半導体層の材料などが異なってよい。例えば、外光センサは、350[nm]から700[nm]の波長範囲にて規定される可視光に感度を持つように、外光センサの薄膜半導体層を、エネルギーバンドギャップがブロードに分布しているアモルファスシリコンまたは微結晶シリコンで形成するとよい。例えば、外光センサの薄膜半導体層としては、そのエネルギーバンドギャップが1.6[eV]のものを用いることができる。
なお、非可視センサのフォトダイオードPDにおいてもアモルファスシリコンまたは微結晶シリコンを薄膜半導体層の材料に用い得ることは既に述べたが、この場合の薄膜半導体層と、外光センサの薄膜半導体層とは、エネルギーバンドギャップが違うため赤外の吸収特性が異なるように形成されたものを使用する。ただし、可視光センサおよび光センサとして、エネルギーバンドギャップが異なり感度が多少低いが、ポリシリコンまたは結晶シリコンを薄膜半導体層の材料に用いることは可能である。このような場合、フィルタ側に波長選択性を持たせるとよい。
【0117】
図1に示すデータ処理部400は、外光センサによって得られた受光データに基づいて、バックライト300が照明光を出射する動作を制御する。制御部401の制御を受けた位置検出部402が、外光の輝度に比例した信号(蓄積電荷量)の振幅を受光データ、即ち、電圧値(検出電位Vdet)、もしくは、電流値(検出電流Idet)によって検出する。制御部401が、検出結果に基づいて、液晶表示装置のバックライト300の発光強度を調整する。
これにより、外光センサによって得られた受光データにおいて、受光した光の強度が大きい場合には、バックライト300が、より大きな強度の照明光を照射するように制御される。受光した光の強度が小さい場合には、バックライト300が、より小さな強度の照明光を照射するように制御される。
【0118】
薄膜トランジスタの画素スイッチを有する表示装置において、一般に、外光(特に太陽光)が差し込む環境においては、表示装置は表示パネルの表面層の反射によりコントラストが低下し、画像を良好に認識できないことがある。そのため、表示パネル自身から表面の外に出射される光の輝度を、表示パネルの表面の反射輝度以上にする必要がある。そのためには、表示パネルを背面から照射するバックライト300の発光強度を、より強く制御する。
また、暗闇等の外光の強度が極めて低い状態においては、表示パネルの表面での反射光による画質低下(コントラスト低下)は発生せず、バックライト300の発光強度を落とす必要がある。変形例4では、表示装置の表面輝度を下げることが可能となり、これにより、バックライト300の消費電力を削減することができる。
本変形例4では、このような画質低下(コントラスト低下)と消費電力の削減を、外光量の変化に応じて適応的に制御できる利点がある。
【0119】
図15は、変形例4において、外光センサを有効表示領域PAに形成した場合(表示領域内配置の適用)と、周辺領域CAに形成した場合(表示領域内配置の非適用)とにおいて得られる、受光データの入力光強度に対する変化を示す図である。図15において、横軸は、外光の照度(単位:ルクス[lx])を示しており、縦軸は、その外光センサから得られる受光データの値を照度換算したもの(単位:[lx])を示している。図15において、実線は、外光センサの表示領域内配置が適用された場合の曲線であり、破線は、表示領域内配置が非適用の場合の曲線である。
【0120】
図15に示すように、たとえば、1000[lx]の外光が入射した際には、外光センサを周辺領域CAに形成した場合には、約100[lx]の照度に対応した受光データが得られるのに対して、有効表示領域PAに形成した場合には、約1000[lx]の照度に対応した受光データが得られる。このように、外光センサを有効表示領域PAに設けることによって、高い強度の光を受光できる。
よって図15からは、外光センサを有効表示領域PA内に配置するほうが望ましいことが分かる。
【0121】
図16に、変形例4を適用しないで指先を検出したときの画面((A))と、変形例4を適用して指先を検出したときの画面((B))とを示す。
図16に示す画面は、マトリックス状に細かく配置された複数の光センサ部の各出力を、検出(白)と非検出(黒)のドット表示として、それを画面上でマッピングしたものである。
図16からも、外光センサを有効表示領域PA内に配置したほうが、検出精度が高いことが分かる。
【0122】
変形例4によれば、画質低下(コントラスト低下)と消費電力の削減を、外光量の変化に応じて適応的に制御できる利点に加え、特に周囲の外光量が少ない場合に、必要以上のバックライト300光量が液晶パネルに入射されないことから、その分、可視光の迷光が発生する防止または抑制できる。このことは、図7等に示す光センサとしてのフォトダイオードPDが、非可視光(例えばIR光)以外に、可視光にも感度を持つ場合に位置検出の精度を向上させることができる利益をもたらす。
【0123】
なお、変形例4では、外光センサにより検出される外光強度がある程度大きいと判断されるときは、光センサ部1の出力と外光センサの出力とから、外光による被検出物の影を検出し、その検出結果に基づいて、被検出物の有無、位置あるいは大きさを検出してもよい。
【0124】
<変形例5:その他の変形可能点>
本実施形態およびその変形例4において、非可視光として赤外線(IR光)を主として説明に用いたが、紫外線であってもよい。
【0125】
バックライト300は、光源及び導光部材を有するものに限定されず、例えば、複数のLEDを2次元に配列したバックライトのように、光源のみを有するものであってもよい。また、バックライト300は、面光源に限定されず、線光源や点光源であってもよい。導光部材は、板状のもの(導光板302)に限定されず、例えば、長尺状の直方体状のものや立方体状のものであってもよい。
【0126】
読み出し回路(図5)における、フォトダイオードPD、リセットトランジスタTS、アンプトランジスタTAおよび読み出しトランジスタTR、ならびに、画素回路におけるスイッチング素子SWを含む全てのTFT構造、コントロールゲートCGをもつTFD(Thin Film Diode)構造を、トップゲート型として形成してもよい。この場合、TFDの受光領域(I領域またはD領域)、TFTのチャネル形成領域の少なくとも背面側を遮光層で覆ってバックライト300からの直接光が、これらの受光領域やチャネル形成領域に入らないようにするとよい。
【0127】
<変形例6>
本実施形態およびその変形例は、液晶表示装置に限らず、有機EL表示装置などの自発光型表示装置、電子ペーパーに応用可能な電子遊動を用いた表示装置などに広く適用できる。
電子遊動を用いた表示装置は、画素電極と対向基板(透明基板)に備えられる共通電極との間に、電子インクを備える。電子インクは、図1における液晶層203に代わるもので、液体中に懸濁する、正に帯電した白の粒子と負に帯電した黒の粒子とを有する複数のマイクロカプセルを備える。電子遊動は、画素電極と共通電極間に印加される電界が正の場合と負の場合で、画素電極側と共通電極側に移動する粒子が白と黒で反転し、透明基板側に移動する白の粒子の割合が多いときに画素が明るく観測者から見えることを利用して、入力データに応じた画素の階調表示を可能とする。このため、液晶層の光変調の仕方以外は、上記の実施形態の説明がほぼ同様に適用できる。
一方、有機EL表示装置は、バックライトが不要で、表示パネル内で画素ごとに積層された有機材料膜自体が、印加する電界の大きさに応じた輝度で発光する現象を利用している。それ以外は、上記の実施形態の説明がほぼ同様に適用できる。
【0128】
<表示装置の適用製品例>
実施形態およびその変形例1〜6は、以下の各種製品の文字や画像の表示部品と適用できる。
具体的には、テレビジョン受像装置、パーソナルコンピュータ等のモニタ装置、携帯電話、ゲーム機、PDAなどの映像再生機能を持つモバイル機器、スチルカメラやビデオカメラ等の撮影装置、カーナビゲーション装置などの車載機器などに、上記実施形態およびその変形例1〜6が適用可能である。
【0129】
本実施形態およびその変形例によれば、以下の利益が得られる。
表示パネルの前面側に配置する、2層導電性フィルムもしくは薄型ガラスを有する抵抗式や静電容量式のタッチパネルが必要でなくなる。つまり、タッチパネルの機能を表示パネル内に具備する「インセルタッチパネル」が実現できる。このため、表示装置のコンパクト化、特に薄型化が達成できる。
【0130】
検出位置の受光データとアドレスが組みでメモリに格納されるため、複数の離れた箇所の同時検出が可能である。また、被検出物の位置のみならず、その大きさを検出することもできる。
【0131】
こととき、センサに入射するバックライトからの直接入射光、表示パターンに依存した迷光によるノイズの問題を、バックライトからの直接入射光(可視光、赤外光)、外光(可視光)、表示光の表面での散乱光(可視光)のノイズを分離して、観測面から入射する赤外光だけを取り出すことが可能なデバイス構造とすることにより解決し、環境や表示パターンによらず確実に位置検出可能な入力機能一体型画像表示装置を提供することができる。
【0132】
変形例4では、可視光による外光検知を表示装置の表示領域で実施することが可能となる。とくに外光センサを有効表示領域内に配置した場合、外光センサを表示領域外に配置する方式に比べて、表示装置上の表面輝度をより正確に測定することが可能となり、そのためバックライトの発光強度の制御精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の第1〜第3実施形態に関わる透過型液晶表示装置の概略的な全体構成図である。
【図2】図1に示す液晶パネル200の更に詳細な断面図である。
【図3】図1に示す構成の分解斜視図である。
【図4】本発明の第1〜第3実施形態に関わる液晶パネル内の駆動回路の構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1〜第3実施形態に関わり、(A)は光センサ部の平面図、(B)は(A)のパターンに対応する光センサ部の等価回路図を示す。
【図6】本発明の第1〜第3実施形態に関わる画素に対応するTFTアレイ基板部分の平面図である。
【図7】本発明の第1〜第3実施形態に関わるPIN構造((A))と、PDN構造((B))のフォトダイオードを概略的に示す図である。
【図8】本発明の第1実施形態に関わり、図2をより詳細にして作用の説明を行うための断面図である。
【図9】顔料ブラック層およびカーボンブラック層の分光透過率特性を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態に関わり、図2をより詳細にして作用の説明を行うための断面図である。
【図11】顔料ブラック層と赤外吸収フィルタ層の積層膜の分光透過率特性を示すグラフである。
【図12】本発明の第3実施形態に関わり、図2をより詳細にして作用の説明を行うための断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に関わり、コレステリック選択反射膜の模式的な構造図である。
【図14】本発明の第3実施形態に関わり、コレステリック選択反射膜の分光反射率特性を示すグラフである。
【図15】本発明の実施形態の変形例4に関わり、受光データの入力光強度に対する変化を示すグラフである。
【図16】変形例4に関わり、外光センサの表示領域内配置を適用しない場合((A))と、適用した場合((B))の指先を検出したときの検出結果を示す図である。
【符号の説明】
【0134】
1…光センサ部、10…表示部、11…垂直ドライバ、12…ディスプレイドライバ、13…センサドライバ、14…選択スイッチアレイ、15…DC/DCコンバータ、12…選択スイッチ、13…垂直ドライバ、14…ディスプレイドライバ、15…センサドライバ、21R等…フィルタ、31…VDD線、32…VSS線、33…リセット線、34…リード制御線、35…検出線、36…薄膜半導体層、60…光学フィルタ部、61…顔料ブラック層、70…遮光部、71…カーボンブラック層、72…赤外吸収フィルタ層、73…コレステリック選択反射膜、100…液晶表示装置、200…液晶パネル、200A…表示面、201…TFTアレイ基板、202…CF基板、203…液晶層、300…バックライト300、400…データ処理部、401…制御部、402…位置検出部、403…演算部、PA…有効表示領域、PA1…画素領域、PA2…センサ領域、CA…周辺領域、PIX…画素、PD…フォトダイオード、S1…第1センサ、S2…第2センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報が表示される表示面と、
入力されたデータに応じた強さの光を発生し前記表示面に出力する光学素子をそれぞれ含む複数の画素領域と、
入射光をそれぞれ受光して光電変換する受光素子を対で各々が含む複数のセンサ領域と、
前記センサ領域内で第1受光素子と前記表示面との間に配置され、可視光域の入射光を吸収して遮断し、非可視光域の入射光を透過する光学フィルタ部と、
前記センサ領域内で、前記第1受光素子に対し近接配置される第2受光素子と前記表示面との間に配置され、入射光を吸収して遮断する光吸収性の遮光部と、
前記第1受光素子の出力と、前記第2受光素子との出力から差分を求める演算部と、
を有するディスプレイ装置。
【請求項2】
前記光学フィルタ部が、特定の波長域の光を選択的に吸収し、その他の波長域の光を透過させる有機顔料をレジストに分散させた第1顔料分散レジストから形成され、
前記遮光部が、光の全波長域について吸収性をもつ有機または無機の顔料をレジストに分散させた第2顔料分散レジストから形成されている
請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
前記光学フィルタ部が、特定の第1波長域の光を選択的に吸収し、その他の第2波長域の光を透過させる有機顔料をレジストに分散させた第1顔料分散レジストから形成され、
前記遮光部が、
前記第1顔料分散レジストの層と、
前記第1顔料分散レジストの層の前記表示面と反対の側に配置され、前記第2波長域の光を選択的に吸収し、前記第1波長域の光を透過させる有機顔料をレジストに分散させた第3顔料分散レジストの層と、を含む
請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項4】
前記光学フィルタ部が、特定の第1波長域の光を選択的に吸収し、その他の第2波長域の光を透過させる有機顔料をレジストに分散させた第1顔料分散レジストから形成され、
前記遮光部が、
金属膜と、
少なくとも前記金属膜の前記表示面と反対の面に形成された反射防止膜と、
を含む
請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項5】
前記反射防止膜は、入射光を減衰する光吸収性をもつ反射防止膜である
請求項4に記載のディスプレイ装置。
【請求項6】
情報が表示される表示面と、
入力されたデータに応じた強さの光を発生し前記表示面に出力する光学素子をそれぞれ含む複数の画素領域と、
入射光をそれぞれ受光して光電変換する受光素子を対で各々が含む複数のセンサ領域と、
前記センサ領域内で第1受光素子と前記表示面との間に配置され、可視光域の入射光を吸収して遮断し、非可視光域の入射光を透過する光学フィルタ部と、
前記センサ領域内で、前記第1受光素子に対し近接配置される第2受光素子と前記表示面との間に配置され、前記表示面側から入射する特定波長域の非可視光を反射し、特定波長域以外の波長域の光を透過し、前記表示面側と反対の側から入射する光を透過する波長選択ミラー部と、
前記第1受光素子の出力と、前記第2受光素子との出力から差分を求める演算部と、
を有するディスプレイ装置。
【請求項7】
前記波長選択ミラー部が、前記表示面側から入射する特定波長域の非可視光を選択的に反射し、前記表示面側から入射する前記特定波長域以外の非可視光および可視光、ならびに、前記表示面側と反対の側から入射する光を透過する、コレステリック液晶組成物を含有する層を含む
請求項6に記載のディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−151039(P2009−151039A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328069(P2007−328069)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】