説明

ディップフラックスユニット

【課題】吸着ノズルの移動を妨げることなく、浸漬ポイントにおける膜厚を検出することが可能なディップフラックスユニットを提供することを課題とする。
【解決手段】ディップフラックスユニット5は、基部50と、基部50に取り付けられ、吸着ノズル320に吸着される電子部品320aが浸漬される浸漬ポイントAを有する液体の膜512aが形成される転写台512を有し、浸漬ポイントAにおいて電子部品320aに液体が転写される転写位置と、吸着ノズル320の移動範囲外の退避位置と、の間を移動する可動部51と、転写台512に対して移動し、液体に当接することにより液体の膜厚を調整する当接部520を有するスキージ52と、退避位置において浸漬ポイントAの膜厚を検出する膜厚検出センサ53と、膜厚検出センサ53により検出される膜厚を基に、当接部520の転写台512に対する高度を調整する高度調整部54と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装機において、例えば、電子部品のバンプにフラックスを付着させる際に用いられるディップフラックスユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、ディップフラックスユニットは、電子部品実装機に取り付けられている。ディップフラックスユニットは、回路基板に装着する前の電子部品にフラックスを付着させる際に用いられる。
【0003】
ディップフラックスユニットには、フラックスの膜が形成されている。電子部品のバンプは、当該膜に浸漬される。浸漬により、膜からバンプにフラックスが転写される。バンプに対するフラックスの転写量は、はんだに対する電子部品の濡れ性などを左右する重要なファクターである。このため、フラックスの膜厚の管理は重要である。
【0004】
この点、特許文献1のディップフラックスユニットは、膜厚検出センサを備えている。特許文献1の[図1]、[0032]に示されているように、膜厚検出センサは、アイドラローラの下流側であって、吸着ノズルの上流側に配置されている。膜厚検出センサにより検出されたフラックスの膜厚が最適でない場合、フラックスチャンバ移動モータが駆動され、フラックスチャンバ出口の間隙の高さが調整される。すなわち、フラックスの膜厚が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−130985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のディップフラックスユニットの膜厚検出センサは、吸着ノズルの上流側に配置されている。言い換えると、膜厚検出センサは、吸着ノズルに吸着された電子部品が実際にフラックスに浸漬される浸漬ポイントの、上流側に配置されている。このように、膜厚検出センサの検出ポイントと浸漬ポイントとは、互いにずれている。このため、最も重要な、浸漬ポイントにおけるフラックスの膜厚を、検出することができない。したがって、膜厚の検出精度が低い。
【0007】
仮に、膜厚検出センサが吸着ノズルに近接して配置されている場合、膜厚検出センサの検出ポイントと、浸漬ポイントと、を略一致させることができる。しかしながら、吸着ノズルは、電子部品を搬送するために用いられるものである。例えば、吸着ノズルは、部品供給装置から画像処理装置を経由して回路基板まで、電子部品を搬送する際に用いられる。また、吸着ノズルは、部品供給装置からディップフラックスユニット、画像処理装置を経由して回路基板まで、電子部品を搬送する際に用いられる。このように、吸着ノズルの移動経路は多岐に亘る。このため、吸着ノズルの移動範囲は広い。したがって、膜厚検出センサを吸着ノズルに近接して配置すると、不可避的に膜厚検出センサに吸着ノズルが干渉することになる。よって、膜厚検出センサを吸着ノズルに近接して配置することは困難である。
【0008】
本発明のディップフラックスユニットは、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、吸着ノズルの移動を妨げることなく、浸漬ポイントにおける膜厚を検出することが可能なディップフラックスユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明のディップフラックスユニットは、電子部品を吸着して移動する吸着ノズルを有する電子部品実装機に、取り付けられる基部と、該基部に取り付けられ、該吸着ノズルに吸着される該電子部品が浸漬される浸漬ポイントを有する液体の膜が形成される転写台を有し、該浸漬ポイントにおいて該電子部品に該液体が転写される転写位置と、該吸着ノズルの移動範囲外の退避位置と、の間を移動する可動部と、該転写台に対して移動し、該液体に当接することにより該液体の膜厚を調整する当接部を有するスキージと、該退避位置において該浸漬ポイントの該膜厚を検出する膜厚検出センサと、該膜厚検出センサにより検出される該膜厚を基に、該当接部の該転写台に対する高度を調整する高度調整部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のディップフラックスユニットは、基部と、可動部と、スキージと、膜厚検出センサと、高度調整部と、を備えている。このうち、可動部は、転写位置と退避位置との間を移動可能である。転写位置においては、液体の膜の浸漬ポイントに、電子部品が浸漬される。退避位置においては、膜厚検出センサにより、浸漬ポイントの膜厚が検出される。すなわち、可動部が転写位置と退避位置との間を移動することにより、退避位置における膜厚検出センサの検出ポイントと、転写位置における電子部品の浸漬ポイントと、は一致することになる。このため、浸漬ポイントにおける液体の膜厚を、検出することができる。したがって、膜厚の検出精度が高い。
【0011】
また、退避位置は、吸着ノズルの移動範囲外に設定されている。このため、膜厚検出センサに吸着ノズルが干渉しない。したがって、浸漬ポイントにおける膜厚が検出できるにもかかわらず、吸着ノズルの移動が妨げられない。
【0012】
また、スキージの当接部の高度は、膜厚検出センサにより検出される膜厚を基に、調整される。当接部の高度が高い場合、膜厚が厚くなる。一方、当接部の高度が低い場合、膜厚が薄くなる。このため、当接部の高度を調整することにより、膜厚を調整することができる。
【0013】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、さらに、前記膜厚検出センサを、前記可動部の移動方向に対して交差する方向に、移動させるセンサ駆動部を備える構成とする方がよい。
【0014】
本構成によると、膜厚検出センサは、可動部つまり転写台に対して、二方向に移動することができる。このため、転写位置における浸漬ポイントの場所によらず、退避位置において浸漬ポイントの膜厚を測定することができる。また、浸漬ポイントが複数存在する場合であっても、複数の浸漬ポイントの膜厚を測定することができる。
【0015】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記可動部は、さらに、前記転写台を直線方向に移動可能に支持するフレームを有し、前記スキージは、該フレームに取り付けられる構成とする方がよい。
【0016】
本構成によると、膜厚調整の際、固定されたスキージに対して、転写台が移動する。このため、スキージが移動する場合と比較して、当接部の高度が安定化しやすい。したがって、液体全体に亘って膜厚がばらつきにくい。
【0017】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記高度調整部は、水平方向に延在すると共に自身の軸回りに揺動可能であって前記スキージが固定される揺動軸と、該揺動軸に固定される揺動アームと、該揺動アームを揺動させるロッドと、を有する構成とする方がよい。本構成によると、スキージを上下方向に揺動させることができる。このため、当接部の高度を調整することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、吸着ノズルの移動を妨げることなく、浸漬ポイントにおける膜厚を検出することが可能なディップフラックスユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一実施形態のディップフラックスユニットが取り付けられた電子部品実装機の斜視図である。
【図2】同電子部品実装機の上面図である。
【図3】同ディップフラックスユニットの斜視図である。
【図4】同ディップフラックスユニットの短手方向断面図である。
【図5】同ディップフラックスユニットの高度調整部の拡大斜視図である。
【図6】同ディップフラックスユニットの転写位置における長手方向断面図である。
【図7】同ディップフラックスユニットの退避位置における長手方向断面図である。
【図8】薄膜化工程の第一段階の転写台付近の長手方向断面図である。
【図9】同工程の第二段階の転写台付近の長手方向断面図である。
【図10】同工程の第三段階の転写台付近の長手方向断面図である。
【図11】厚膜化工程の転写台付近の長手方向断面図である。
【図12】第二実施形態のディップフラックスユニットが取り付けられた電子部品実装機の吸着ノズルの下面図である。
【図13】同ディップフラックスユニットの膜厚検出センサ付近の斜視分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のディップフラックスユニットの実施の形態について説明する。
【0021】
<<第一実施形態>>
<電子部品実装機の機械的構成>
まず、本実施形態のディップフラックスユニットが取り付けられた電子部品実装機の構成について説明する。図1に、電子部品実装機の斜視図を示す。図2に、同電子部品実装機の上面図を示す。図1においては、モジュール3のハウジングを透過して示す。図2においては、モジュール3のハウジングを削除して示す。また、Y方向スライダ310、Y方向ガイドレール312、X方向ガイドレール313を一点鎖線で示す。図1、図2に示すように、電子部品実装機1は、ベース2と、モジュール3と、デバイステーブル4と、ディップフラックスユニット5と、備えている。
【0022】
[ベース2、モジュール3]
ベース2は、工場の床面Fに配置されている。モジュール3は、ベース2の上面に配置されている。モジュール3は、基板搬送装置30と、XYロボット31と、装着ヘッド32と、パーツカメラ34とを、備えている。
【0023】
(基板搬送装置30)
基板搬送装置30は、固定壁300と、前方可動壁301fと、後方可動壁301rと、第一バックアップテーブル302fと、第二バックアップテーブル302rと、左右一対のガイドレール303L、303Rと、第一搬送コンベア304fと、第二搬送コンベア304rと、基部305とを、備えている。
【0024】
基部305は、長方形板状を呈している。基部305は、ベース2の上面に配置されている。左右一対のガイドレール303L、303Rは、各々、前後方向に延在している。左右一対のガイドレール303L、303Rは、基部305の上面の左縁および右縁に、離間して配置されている。
【0025】
固定壁300は、基部305の上面前縁に立設されている。固定壁300は、下方に開口するC字板状を呈している。固定壁300のC字両端は、左右一対のガイドレール303L、303Rの前端に連なっている。
【0026】
前方可動壁301fは、固定壁300の後方に配置されている。前方可動壁301fは、下方に開口するC字板状を呈している。前方可動壁301fのC字両端は、左右一対のガイドレール303L、303Rに、前後方向に摺動可能に取り付けられている。固定壁300と前方可動壁301fとの間には、第一レーンL1が区画されている。
【0027】
後方可動壁301rは、前方可動壁301fの後方に配置されている。後方可動壁301rは、下方に開口するC字板状を呈している。後方可動壁301rのC字両端は、左右一対のガイドレール303L、303Rに、前後方向に摺動可能に取り付けられている。前方可動壁301fと後方可動壁301rとの間には、第二レーンL2が区画されている。
【0028】
このように、前方可動壁301f、後方可動壁301rは、前後方向(固定壁300に対して、近接−離間する方向)に移動可能である。このため、第一レーンL1の搬送幅、第二レーンL2の搬送幅は、各々、拡縮可能である。
【0029】
第一搬送コンベア304fは、前後一対のコンベアベルトを備えている。前後一対のコンベアベルトは、各々、左右方向(回路基板の搬送方向)に延在している。前方のコンベアベルトは、固定壁300の後面に配置されている。後方のコンベアベルトは、前方可動壁301fの前面に配置されている。前後一対のコンベアベルトには、第一回路基板B1が架設されている。第一回路基板B1は、第一搬送コンベア304fにより、第一レーンL1を、左から右に向かって搬送される。
【0030】
第二搬送コンベア304rは、前後一対のコンベアベルトを備えている。前後一対のコンベアベルトは、各々、左右方向に延在している。前方のコンベアベルトは、前方可動壁301fの後面に配置されている。後方のコンベアベルトは、後方可動壁301rの前面に配置されている。前後一対のコンベアベルトには、第二回路基板B2が架設されている。第二回路基板B2は、第二搬送コンベア304rにより、第二レーンL2を、左から右に向かって搬送される。
【0031】
第一バックアップテーブル302fは、長方形板状を呈している。第一バックアップテーブル302fは、第一回路基板B1の下方に配置されている。第一バックアップテーブル302fは、昇降可能である。第一バックアップテーブル302fの上面には、多数のバックアップピンが配置されている。第一回路基板B1は、多数のバックアップピンにより下方から支持される。
【0032】
第二バックアップテーブル302rは、長方形板状を呈している。第二バックアップテーブル302rは、第二回路基板B2の下方に配置されている。第二バックアップテーブル302rは、昇降可能である。第二バックアップテーブル302rの上面には、多数のバックアップピンが配置されている。第二回路基板B2は、多数のバックアップピンにより下方から支持される。
【0033】
(XYロボット31)
X方向は左右方向に対応している。Y方向は前後方向に対応している。XYロボット31は、Y方向スライダ310と、X方向スライダ311と、左右一対のY方向ガイドレール312と、上下一対のX方向ガイドレール313とを、備えている。
【0034】
左右一対のY方向ガイドレール312は、モジュール3のハウジング内部空間の上面に配置されている。左右一対のY方向ガイドレール312は、各々、前後方向に延在している。Y方向スライダ310は、左右方向に長いブロック状を呈している。Y方向スライダ310は、左右一対のY方向ガイドレール312に、前後方向に摺動可能に取り付けられている。
【0035】
上下一対のX方向ガイドレール313は、Y方向スライダ310の前面に配置されている。X方向スライダ311は、長方形板状を呈している。X方向スライダ311は、上下一対のX方向ガイドレール313に、左右方向に摺動可能に取り付けられている。
【0036】
(装着ヘッド32、パーツカメラ34)
装着ヘッド32は、X方向スライダ311に取り付けられている。このため、装着ヘッド32は、XYロボット31により、前後左右方向に移動可能である。また、装着ヘッド32は、X方向スライダ311に対して、下方に摺動可能である。装着ヘッド32の下面からは、円筒状のホルダ(図略)が突設されている。ホルダは、軸回りに回転可能である。ホルダには、吸着ノズル320が取り付けられている。吸着ノズル320には、配管(図略)を介して、負圧、または正圧が供給される。パーツカメラ34は、固定壁300の前方に配置されている。パーツカメラ34は、吸着ノズル320が吸着した電子部品を撮像するために用いられる。
【0037】
[デバイステーブル4、ディップフラックスユニット5]
デバイステーブル4は、モジュール3の前面に装着されている。ディップフラックスユニット5は、デバイステーブル4の上面に取り付けられている。図3に、ディップフラックスユニットの斜視図を示す。なお、可動部51にハッチングを施す。図4に、同ディップフラックスユニットの短手方向断面図を示す。
【0038】
図3、図4に示すように、ディップフラックスユニット5は、基部50と、可動部51と、スキージ52と、膜厚検出センサ53と、高度調整部54と、ケーブル55と、を備えている。
【0039】
(基部50、膜厚検出センサ53)
基部50は、基部本体500と、ケーブル連結部501と、左右一対のガイドレール502と、センサ保持部503と、ブラケット504と、を備えている。基部本体500は、前方から見て、上方に開口するC字板状を呈している。基部本体500は、デバイステーブル4の上面に取り付けられている。基部本体500は、前後方向に延在している。ケーブル連結部501は、基部本体500の底壁上面の前端に配置されている。左右一対のガイドレール502は、各々、前後方向に延在している。左右一対のガイドレール502は、基部本体500の底壁上面に配置されている。センサ保持部503は、前方から見て、下方に開口するC字状を呈している。ブラケット504は、左方から見て、L字状を呈している。ブラケット504は、センサ保持部503のC字中央部に配置されている。膜厚検出センサ53は、ブラケット504に取り付けられている。膜厚検出センサ53は、レーザーセンサである。
【0040】
(可動部51、スキージ52、ケーブル55)
可動部51は、可動部本体510と、ガイドレール511と、転写台512と、被ガイド片513と、フレーム514と、シリンジ保持部515と、シリンジ516と、液送管517と、ケーブル連結部518と、を備えている。
【0041】
可動部本体510は、ブロック状を呈している。可動部本体510は、基部本体500の上方に配置されている。可動部本体510の下面には、左右一対の被ガイド凹部510aが配置されている。被ガイド凹部510aは、基部50のガイドレール502に摺接している。このため、アクチュエーター(図略)により、可動部51は、基部50に対して、前後方向に移動可能である。
【0042】
ガイドレール511は、前後方向に延在している。ガイドレール511は、可動部本体510の上面に配置されている。転写台512は、浅底のトレイ状を呈している。転写台512は、可動部本体510の上方に配置されている。転写台512の内部には、フラックスの膜512aが形成されている。フラックスは、本発明の液体の概念に含まれる。被ガイド片513は、細板状を呈している。被ガイド片513の下面には、被ガイド凹部513aが配置されている。被ガイド凹部513aは、ガイドレール511に摺接している。このため、アクチュエーター(図略)により、転写台512は、可動部本体510に対して、後述する転写位置と退避位置との間で、前後方向に移動可能である。
【0043】
フレーム514は、上方から見て、後方に開口するC字状を呈している。フレーム514は、可動部本体510の左右両端から架設されている。フレーム514は、転写台512を跨いでいる。
【0044】
シリンジ保持部515は、左方から見て、L字板状を呈している。シリンジ保持部515は、可動部本体510の前方に配置されている。シリンジ516は、円筒状を呈している。シリンジ516の内部には、フラックスが貯留されている。シリンジ516は、シリンジ保持部515の立壁に、クリップ515aおよびベルト515bにより、固定されている。ケーブル連結部518は、シリンジ保持部515の底壁に配置されている。
【0045】
ケーブル55は、可動部51のケーブル連結部518と、基部50のケーブル連結部501と、の間に配置されている。ケーブル55には、電源線、信号線などが収容されている。
【0046】
液送管517は、シリンジ516の下面に取り付けられている。スキージ52は、左方から見て逆V字板状を呈している。スキージ52は、フレーム514の左右両縁間に、後述する揺動軸540を介して、揺動可能に取り付けられている。スキージ52の逆V字両端には、当接部が配置されている。液送管517の下流端は、スキージ52の内部に挿入されている。液送管517を介して、スキージ52の内部には、フラックスが供給される。
【0047】
(高度調整部54)
図5に、ディップフラックスユニットの高度調整部の拡大斜視図を示す。図5に示すように、高度調整部54は、揺動軸540と、揺動アーム541と、ロッド542と、アクチュエーター543と、を備えている。揺動軸540は、丸棒状を呈している。揺動軸540は、フレーム514の左右両縁間に架設されている。揺動軸540には、スキージ52が固定されている。このため、スキージ52は、揺動軸540と共に、揺動軸540の軸回りに揺動可能である。揺動アーム541は、細板状を呈している。揺動アーム541の上端は、揺動軸540に固定されている。揺動アーム541は、スキージ52の右側に配置されている。揺動アーム541の下端には、スリット541aが形成されている。アクチュエーター543は、可動部本体510の右面に配置されている。ロッド542の後端は、アクチュエーター543に連結されている。ロッド542の前端からは、ピン542aが右側に突出している。ピン542aは、スリット541aに係合している。ロッド542は、アクチュエーター543により、前後方向に往復動可能である。
【0048】
<電子部品実装機の回路基板生産時の動き>
次に、電子部品実装機1の回路基板生産時の動きについて簡単に説明する。図6に、ディップフラックスユニットの転写位置における長手方向断面図を示す。なお、図6に示すのは、図4のVI−VI断面である。
【0049】
図6に示すように、転写位置においては、可動部本体510がガイドレール502を後方に移動することにより、可動部51が基部50の後方に配置されている。また、被ガイド片513がガイドレール511を後方に移動することにより、転写台512が可動部本体510の後方に配置されている。転写台512には、膜512aが形成されている。吸着ノズル320(図1、図2参照)には、電子部品320aが吸着されている。吸着ノズル320は、XYロボット31、装着ヘッド32により駆動される。図6に白抜き矢印で示すように、電子部品320aのバンプは、吸着ノズル320を下降させることにより、膜512aに浸漬される。膜512aにおける、電子部品320aが浸漬される部分は、浸漬ポイントAである。電子部品320aのバンプには、所定量のフラックスが付着する。図1、図2に示すように、フラックス付着後の電子部品320aは、吸着ノズル320に吸着されたまま、パーツカメラ34の上方を通過する。この際、電子部品320aの姿勢などが撮像される。撮像後の電子部品320aは、第一回路基板B1または第二回路基板B2に装着される。
【0050】
<電子部品実装機の膜厚測定時の動き>
次に、電子部品実装機1の膜厚測定時の動きについて説明する。図7に、ディップフラックスユニットの退避位置における長手方向断面図を示す。図7に示すように、膜厚測定時においては、まず、電子部品実装機の演算部(図略)が、アクチュエーターにより、図6の転写位置から図7の退避位置に、ディップフラックスユニット5を切り替える。退避位置においては、可動部本体510がガイドレール502を前方に移動することにより、可動部51が基部50の前方に配置されている。膜512aの浸漬ポイントAは、膜厚検出センサ53の直下に配置されている。次いで、演算部の指示により、浸漬ポイントAの膜厚が、膜厚検出センサ53により検出される。すなわち、膜厚検出センサ53は、レーザーの膜512aの表面の反射光と、膜512aの底面の反射光との差分から、膜厚を検出する。
【0051】
検出された浸漬ポイントAの膜厚が所望の膜厚と一致する場合は、演算部が、アクチュエーターにより、図7の退避位置から図6の転写位置に、ディップフラックスユニット5を切り替える。
【0052】
検出された浸漬ポイントAの膜厚が所望の膜厚よりも厚い場合は、演算部は、薄膜化工程を実行する。図8に、薄膜化工程の第一段階の転写台付近の長手方向断面図を示す。なお、図8は、図7の枠VIII内の部分に対応している。図9に、同工程の第二段階の転写台付近の長手方向断面図を示す。図10に、同工程の第三段階の転写台付近の長手方向断面図を示す。
【0053】
具体的には、演算部は、図8中に白抜き矢印Y1で示すように、スキージ52に対して、転写台512を後方に移動させる。そして、スキージ52を膜512aの前端付近に配置する。続いて、図8中に白抜き矢印Y2で示すように、高度調整部54(図5参照)により、スキージ52を所定角度だけ揺動させる。そして、前方の当接部520を膜512aに浸漬させる。なお、当接部520の浸漬深さが、膜512aの削り代に相当する。また、所望の膜厚に対応する。
【0054】
それから、図9中に白抜き矢印Y3で示すように、スキージ52に対して、転写台512を前方に移動させる。そして、当接部520により、膜512aの余剰分を削り取る。続いて、図10中に白抜き矢印Y4で示すように、高度調整部54(図5参照)により、スキージ52を所定角度だけ揺動させる。そして、前方の当接部520の代わりに、後方の当接部520を、膜512aの表面に当接させる。最後に、図10に白抜き矢印Y5で示すように、スキージ52に対して、転写台512を後方に移動させる。そして、フラックスを塗り拡げる。このようにして、薄膜化工程が実行される。その後、再度、図7に示すように、浸漬ポイントAの膜厚が、膜厚検出センサ53により検出される。検出された浸漬ポイントAの膜厚が所望の膜厚よりも厚い場合は、演算部は、薄膜化工程を再度実行する。
【0055】
一方、検出された浸漬ポイントAの膜厚が所望の膜厚よりも薄い場合は、演算部は、厚膜化工程を実行する。図11に、厚膜化工程の転写台付近の長手方向断面図を示す。具体的には、演算部は、図11中に白抜き矢印Y6で示すように、スキージ52に対して、転写台512を後方に移動させる。そして、スキージ52を膜512aの前端付近に配置する。続いて、図11中に白抜き矢印Y7で示すように、高度調整部54(図5参照)により、スキージ52を所定角度だけ揺動させる。そして、当接部520を膜512aの表面から浮いた位置に固定する。なお、当接部520の浮き代が、膜512aの盛り代に相当する。また、所望の膜厚に対応する。膜厚の増加分は、スキージ52の内部に貯留されたフラックスのロール512bにより、補填される。ロール512bだけでは膜厚の増加分が足りない場合は、図7に示すように、液送管517を介して、シリンジ516からスキージ52の内部に、フラックスを供給する。膜厚の調整が完了したら、演算部が、アクチュエーターにより、図7の退避位置から図6の転写位置に、ディップフラックスユニット5を切り替える。
【0056】
<作用効果>
次に、本実施形態のディップフラックスユニット5の作用効果について説明する。本実施形態のディップフラックスユニット5によると、可動部51が図6の転写位置と図7の退避位置との間を移動することにより、退避位置における膜厚検出センサ53の検出ポイントと、転写位置における電子部品320aの浸漬ポイントAと、が一致することになる。このため、浸漬ポイントAにおけるフラックスの膜厚を、検出することができる。したがって、膜厚の検出精度が高い。
【0057】
また、図7の退避位置は、吸着ノズル320の移動範囲外に設定されている。このため、膜厚検出センサ53に吸着ノズル320が干渉しない。したがって、浸漬ポイントAにおける膜厚が検出できるにもかかわらず、吸着ノズル320の移動が妨げられない。
【0058】
また、スキージ52の当接部520の高度は、膜厚検出センサ53により検出される膜厚を基に、調整される。当接部520の高度が高い場合、膜厚が厚くなる。一方、当接部520の高度が低い場合、膜厚が薄くなる。このため、当接部520の高度を調整することにより、膜厚を調整することができる。
【0059】
また、本実施形態のディップフラックスユニット5によると、膜厚調整の際、固定されたスキージ52に対して、転写台512が移動する。このため、スキージ52が移動する場合と比較して、当接部520の高度が安定化しやすい。したがって、フラックス全体に亘って膜厚がばらつきにくい。
【0060】
また、本実施形態のディップフラックスユニット5は、高度調整部54を備えている。このため、スキージ52を揺動させることにより、当接部520の高度を簡単に調整することができる。
【0061】
また、本実施形態のディップフラックスユニット5によると、膜厚の測定、調整を自動で行うことができる。このため、膜厚の測定、調整を手動で行う場合と比較して、ダウンタイムを削減することができる。
【0062】
<<第二実施形態>>
本実施形態のディップフラックスユニットと第一実施形態のディップフラックスユニットとの相違点は、装着ヘッドのホルダに、八点式の吸着ノズルが配置されている点である。また、センサ駆動部が配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0063】
図12に、吸着ノズルの下面図を示す。なお、図1と対応する部位については同じ符号で示す。図12に示すように、吸着ノズル320には、八点の吸着孔320bが開設されている。八点の吸着孔320bには、各々、電子部品が吸着される。
【0064】
図13に、本実施形態のディップフラックスユニットの膜厚検出センサ付近の斜視分解図を示す。なお、図3と対応する部位については同じ符号で示す。図13に示すように、センサ駆動部8は、上下一対のガイドレール503aと、ブラケット504と、アクチュエーター(図略)と、を備えている。上下一対のガイドレール503aは、各々、左右方向に延在している。上下一対のガイドレール503aは、センサ保持部503の前面に配置されている。ブラケット504の後面には、上下一対の被ガイド凹部504aが配置されている。上下一対の被ガイド凹部504aは、各々、左右方向に延在している。被ガイド凹部504aは、ガイドレール503aを左右方向に摺動可能である。このため、アクチュエーターにより、ブラケット504つまり膜厚検出センサ53は、センサ保持部503を左右方向に移動可能である。
【0065】
本実施形態のディップフラックスユニットは、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態のディップフラックスユニットと、同様の作用効果を有する。また、本実施形態のディップフラックスユニットは、センサ駆動部8を備えている。このため、膜厚検出センサ53は、左右方向に移動可能である。並びに、膜厚検出センサ53つまり可動部は、前後方向に移動可能である。したがって、膜厚検出センサ53は、前後左右方向に移動可能である。よって、図12に示すように、吸着ノズル320に八点の吸着孔320bが開設されている場合であっても、つまり浸漬ポイントが八点ある場合であっても、全ての浸漬ポイントの膜厚を、確実に検出することができる。
【0066】
<<その他>>
以上、本発明のディップフラックスユニットの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0067】
上記実施形態においては、高度調整部54でスキージ52を揺動させることにより、当接部520の高度を調整した。しかしながら、サーボモータやボールねじ機構などでスキージ52を上下動させることにより、当接部520の高度を調整してもよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、可動部51が直線状に動くタイプのディップフラックスユニット5を用いたが、例えば特開2008−10525号公報の[図5]に開示されているように、円板状の可動部が回転するタイプのディップフラックスユニットを用いてもよい。また、上記実施形態においては、膜厚調整の際、スキージ52を固定し転写台512を移動させたが、転写台512を固定しスキージ52を移動させてもよい。
【0069】
また、図5に示すように、ロッド542の前方にストッパを配置してもよい。そして、ストッパをアクチュエーターで前後動させることにより、ロッド542の移動量、つまりスキージ52の揺動角度を調整してもよい。
【0070】
膜厚測定を行うタイミングは特に限定しない。例えば、20分に1回、2時間に1回など、生産時の経過時間によりタイミングを決定してもよい。また、第一回路基板B1、第二回路基板B2の生産数、電子部品320aの装着数などにより、タイミングを決定してもよい。また、ディップフラックスユニット5に用いられる液体としては、フラックスの他、はんだペースト、銀ペーストなどを用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1:電子部品実装機、2:ベース、3:モジュール、4:デバイステーブル、5:ディップフラックスユニット、8:センサ駆動部。
30:基板搬送装置、31:ロボット、32:装着ヘッド、34:パーツカメラ、50:基部、51:可動部、52:スキージ、53:膜厚検出センサ、54:高度調整部、55:ケーブル。
300:固定壁、301f:前方可動壁、301r:後方可動壁、302f:第一バックアップテーブル、302r:第二バックアップテーブル、303L:ガイドレール、303R:ガイドレール、304f:第一搬送コンベア、304r:第二搬送コンベア、305:基部、310:Y方向スライダ、311:X方向スライダ、312:Y方向ガイドレール、313:X方向ガイドレール、320:吸着ノズル、320a:電子部品、320b:吸着孔、500:基部本体、501:ケーブル連結部、502:ガイドレール、503:センサ保持部、503a:ガイドレール、504:ブラケット、504a:被ガイド凹部、510:可動部本体、510a:被ガイド凹部、511:ガイドレール、512:転写台、512a:膜、512b:ロール、513:被ガイド片、513a:被ガイド凹部、514:フレーム、515:シリンジ保持部、515a:クリップ、515b:ベルト、516:シリンジ、517:液送管、518:ケーブル連結部、520:当接部、540:揺動軸、541:揺動アーム、541a:スリット、542:ロッド、542a:ピン、543:アクチュエーター。
A:浸漬ポイント、B1:第一回路基板、B2:第二回路基板、F:床面、L1:第一レーン、L2:第二レーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を吸着して移動する吸着ノズルを有する電子部品実装機に、取り付けられる基部と、
該基部に取り付けられ、該吸着ノズルに吸着される該電子部品が浸漬される浸漬ポイントを有する液体の膜が形成される転写台を有し、該浸漬ポイントにおいて該電子部品に該液体が転写される転写位置と、該吸着ノズルの移動範囲外の退避位置と、の間を移動する可動部と、
該転写台に対して移動し、該液体に当接することにより該液体の膜厚を調整する当接部を有するスキージと、
該退避位置において該浸漬ポイントの該膜厚を検出する膜厚検出センサと、
該膜厚検出センサにより検出される該膜厚を基に、該当接部の該転写台に対する高度を調整する高度調整部と、
を備えるディップフラックスユニット。
【請求項2】
さらに、前記膜厚検出センサを、前記可動部の移動方向に対して交差する方向に、移動させるセンサ駆動部を備える請求項1に記載のディップフラックスユニット。
【請求項3】
前記可動部は、さらに、前記転写台を直線方向に移動可能に支持するフレームを有し、
前記スキージは、該フレームに取り付けられる請求項1または請求項2に記載のディップフラックスユニット。
【請求項4】
前記高度調整部は、水平方向に延在すると共に自身の軸回りに揺動可能であって前記スキージが固定される揺動軸と、該揺動軸に固定される揺動アームと、該揺動アームを揺動させるロッドと、を有する請求項3に記載のディップフラックスユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−43904(P2012−43904A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182499(P2010−182499)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】