説明

ディーゼルエンジン排気ガスの汚染物質を削減するシステム及び方法

【課題】フィルタ手段で煤煙を捕捉することは、移動用ディーゼルエンジン装置および据え付けディーゼルエンジン装置への適用を保障する明確な解決策がない限り、非常に困難かつ捉えどころのない課題である。
【解決手段】ディーゼルエンジンから排出される、粒子、NO、HC、CO、VOC、ナノ粒子、および二酸化硫黄を低減する排気ガス後処理システムであり、システムは酸化触媒、排気ガス冷却システム、粒子変換炉、煤塵収集チェンバ、煤塵処理ドラム、EGR、および水洗浄機を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してディーゼルエンジンに関する。より具体的には、本発明は、ディーゼルエンジンから排出される、粒子状物質、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds; VOCs)、ナノ粒子による汚染(nano-particle count)、NO、HC、CO、SO等の汚染物質を捕捉、除去、および/または破壊するための後処理システムに関する。
【0002】
この出願は、米国仮出願第60/398,473号(出願日2002年7月25日)および米国仮出願第60/454,046号(出願日2003年3月12日)に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
ディーゼルエンジンからの粒子状排出物は、世界中の政府の規制当局から多大な注目を集めている。排出物の健康への影響に関する重要な研究によれば、排出物の毒性が健康に及ぼす影響は、従来認識されていた以上に大きいことが分かっている。ディーゼルエンジンからの排気ガスに含まれる汚染物質の毒性は、大部分が、VOC化合物や、ナノ粒子の形成およびそれによる汚染現象によってもたらされる。VOC化合物もナノ粒子の数も未だ規制されていないが、将来的には、これらの汚染物質の大気中への排出を可能な限り低いレベルに抑える措置が、政府規制という形で採用されるだろう。窒素酸化物はスモッグや酸性雨の発生原因であり、二酸化硫黄は酸性雨の主要原因である。
【0004】
過去十年間で、エンジン技術は劇的な進歩を遂げた。1988年には、ディーゼルエンジンの排気ガスは0.1gm/bhp.hrであったのに対し、現在のディーゼルエンジンは、0.1gm/bhp.hrを達成可能である。現在のディーゼルエンジンは、従来のものより大幅に低汚染化されているが、さらなる低汚染化への要望は、ゼロ排気が達成されるまで止むことはないだろう。現在、USEPAとCARBは、粒子状排出物を0.01gm/bhp.hrまで、NOの排出を0.01gm/bhp.hrまで削減することを目標としており、大型トラック対象の規制を2007年から開始しようとしている。現状では、エンジン技術のみでそのような削減目標を達成することは、不可能ではないとしても非常に困難である。このことから、後処理という選択肢が、規制を遵守するための最も有望な代替手段として浮かび上がってくる。
【0005】
ディーゼル粒子を捕捉し、NOを削減するための後処理技術は、過去25年間多大な注目を集めてきた。後処理技術の大半は、コージライト・セラミック製ウォールフローフィルタ(cordierite ceramic wall-flow filter)、穴の開いた管に巻きつけたセラミックファイバ、金属ファイバ製のフィルタ手段(filtration media)、などによって粒子状物質を捕捉することが中心となっている。そのような装置は粒子トラップとして知られている。
【0006】
粒子トラップは、80〜90%の粒子捕捉率を達成しうる効果的なフィルタ手段であることが実証されている。しかし、フィルタ手段を初期状態に戻して再使用に備えるためには、堆積した煤塵を除去する必要がある。このために開発されたのが、今日「再生処理(regeneration process)」と呼ばれる技術である。再生処理の原理は、堆積した煤塵を単に燃やすことであるが、実用に堪えうる信頼性を達成するには至っていない。この点で、再生処理と粒子トラップを現実に用いることには、厳しい限界がある。例えば、フィルタ手段への煤塵の堆積量が閾値を越え、フィルタ手段を通過することによる圧力低下が顕著となり、エンジンが効率的に稼動しなくなったときには、再生処理を開始しなければならない。統計的には、ディーゼルトラックの走行中の排気ガス温度(温度プロフィール)は、必要なときに再生処理を開始するには低すぎる。このため、再生処理を容易にするために、外部の熱源によってフィルタ手段の温度を上げ、煤塵の発火温度よりも高い温度にして燃焼を開始させる「誘導(強制)再生」という手段が導入された。また、代替案として、フィルタ手段を被覆する形で、あるいはディーゼル燃料への添加物として、貴金属触媒および/または卑金属触媒を用いることが提案された。触媒を用いることで、煤塵の発火温度を620℃から320℃にまで下げることができる。このため、エンジンの稼動中、特に、エンジン負荷の大きい時に、排気ガスの温度を利用して再生処理を行える可能性を高められる。しかし、触媒を用いて再生処理を行うことにより、ディーゼル燃料中の二酸化硫黄化合物による触媒被毒に関する、別の諸問題が生じた。このため、触媒の作用を持続させるために、超低二酸化硫黄含有ディーゼル燃料が導入された。再生処理を実際に行う際の成功率は過去何年かで向上したが、再生処理の諸問題は完全には解消されていない。最終的には、複雑な論理を備えた複雑かつ高価な設備が、過酷な排気ガス環境で稼動すべく配備され、このために、動作の信頼性や耐久性といった他の諸問題が深刻化した。
【0007】
粒子トラップの再生処理に対する最も重大な障害は、動作の信頼性に関するものであり、これは特に移動用装置において重要な要素である。ディーゼルエンジンを備えた乗り物の、路上での走行周期の型は1つではない。ディーゼルエンジンを備えた乗り物の中には、空運転状態が長いものもあれば、混雑した道路を走るものもある。これらの要素は全て、排気ガス温度の低下をもたらすので、受動システムでの再生処理を行えなくなる。これは、触媒の存在下においても同様で、したがって、走行中に不測の問題が生じる。そのような問題は、通常、「強制再生」によって解決できるが、これに伴い、排気ガスへの燃料噴射機(fuel injection in the exhaust)、弁、マイクロプロセッサ、熱電対等の動的部品により、過酷な排気ガス環境下では整備の手間が増加し、信頼性が低下することが分かっている。排気システムまたはその付近にある部品は、30gまでの衝撃荷重に耐え、熱衝撃荷重に耐えられなければならない。ディーゼル排気ガス環境では、動的部品の信頼性が低いことが分かっている。
【0008】
EPAによって450,000マイルの耐久性と150,000マイルの無整備走行距離を要求される粒子トラップシステムにとっては、耐久性も非常に重要な課題である。動的部品およびシステムのほとんどは、不測の衝撃荷重、熱衝撃荷重その他の要素のため、そのような耐久性の基準を充たしていない。
【0009】
NO制御技術には様々なものがあり、重要なNO制御技術としては、希薄燃焼触媒、プラズマ補助触媒、吸着材、選択触媒削減、再循環排気ガス(exhaust gas re-circulations; EGR)がある。これらの公知技術はほぼ全て、NOの排出を25%から90%削減する効果がある。しかし、いずれの技術にも、粒子トラップにまつわる問題と同様の問題がある。生じる問題が扱いやすいという点で、再循環排気ガスが、群を抜いて有望な技術である。ディーゼルエンジンでは、EGRには次の問題がある。(1)煤塵による排気ガスの汚染。これにより、エンジンの吸気システムに問題が生じる。(2)排気ガス温度の高さ。これにより、エンジン性能が低下する。(3)排気ガスをエンジン吸気部に流すための圧力差が不十分であり、適切な循環を得られない。これらの問題のために、ディーゼルエンジン装置におけるEGRの実用化は見送られてきた。ディーゼルエンジンのために、高圧戦略や低圧戦略、およびこれらの組み合わせといった、新たな考え方のEGRが開発された。しかし、公知のEGRは複雑であり、耐久性・信頼性の低下、および高燃費という不利益をもたらす多くの部品が使用される。
【0010】
要約すれば、再生処理およびEGRの適合の問題は、改善されてはいるものの、研究者によって解決されるには至っていない。特に、フィルタ手段で煤煙を捕捉することは、移動用ディーゼルエンジン装置および据え付けディーゼルエンジン装置への適用を保障する明確な解決策がない限り、非常に困難かつ捉えどころのない課題である。よって、適切な技術開発が明確に望まれている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、粒子トラップの分野に関するものであり、上記の問題点に対するいくつかの解決策を提供し、現在の公知技術に代えようとするものである。本発明による手法は、煤塵の微粒子を凝集し、大きい粒子にすることで、排気ガスの流れからの分離を容易にするという点に基礎を置く。凝集粒子を分離するためには、遠心分離と、逆拍動噴射機による分離という、2つの方法がある。分離した粒子は、収集し、硬い小球状に圧縮し、商品として販売できる。あるいは、分離した粒子を、突然の温度上昇や高温点をなくして信頼性・永続性が高まるように制御した環境下で、継続的に燃焼させることもできる。本発明を適用することで、ディーゼル装置のEGRに関する大部分の問題を解決できる、単純かつ頑丈なEGRシステムを構築できる。このシステムは、規制されていない排気物質の、いままでにない高レベルでの制御、例えば、ナノ粒子数の削減、有毒大気汚染物質(VOC)の完全除去、粒子変換炉における圧力低下の低減、ディーゼル排気ガスからのNOや硫酸塩の抽出、などに役立つものである。
【0012】
本発明は、規制されている汚染物質および規制されていない排気物質をディーゼル排気ガスから除去するために、システム全体を用いた手法により、様々な周知の物理的現象・性質を利用する点に基礎を置いている。公知の排気ガス粒子トラップは、濾過機能を備えるという前提に基づいている。本システムの中核となる製品は、粒子変換炉である。本発明による第1の手法は、据え付け型エンジンに適したものであり、濾過処理に代えて凝集処理を行う点に基礎を置いている。粒子凝集器が煤塵で一杯になると、入ってくる粒子状物質は完全に凝集する。つまり、凝集器に入ってくるすべての粒子は、収集され、結合して大きい粒子となり、下流側端部から除去される。凝集器に煤塵が堆積すると、入ってくる粒子の捕捉効率は大幅に向上し、より微小な粒子に対してはさらに高い効率となる。このため、これまでで最も高いナノサイズ粒子の捕捉効率が得られる。凝集器の下流側で吹き飛ばされる粒子は破壊された樹状煤塵(dendrites)であるから、その粒子径は大きい。稼動状態および樹状煤塵が乾いているか濡れているかによって、樹状煤塵は1〜100ミクロンの粒子径を有する。一方、入ってくる粒子の粒子径はナノサイズから1ミクロンであり、平均すると0.1ミクロンである。粒子径が1ミクロン〜100ミクロンであれば、粒子を分離して、最終的には焼却または単なる収集によって廃棄する、新たな可能性が開ける。いずれの場合も、再生処理は、今日ではより信頼性の高い代替策に完全にとって代わられている。粒子を分離し、圧縮して煤塵の小球とする技術は、公知の濾過技術に比較して、より効果的かつ信頼性の高い手法である。燃焼処理もまた、受動的かつ継続的な処理であり、そのため信頼性が高く、持続性があり、再生処理に関する公知の問題を解決できる。
【0013】
再生処理を凝集・分離処理で置き換えることにより、汚染物質削減の新たな可能性が開ける。例えば、公知の粒子トラップの戦略とは逆に、排気ガス温度を可能な限り低くすることで、従来は達成できなかった、排気物質を削減する上での多くの利益が得られる。この利益としては、以下のものが挙げられる(ただし、利益はこれらに限られない)。(1)排気ガス温度を下げることで、排気ガスの流速および粘度が低くなり、3.1という高い係数で圧力低下を低減できる。(2)排気ガス温度を低くすると、VOCの重い破片は凝縮してナノサイズ粒子となり、非常に高い効率で捕捉でき、尾部パイプから除去できるようになる。(3)排気ガス温度を低くすると、多数のナノサイズ粒子が、尾部パイプ内で凝縮する代わりに粒子変換炉内で凝縮する。(4)ディーゼル酸化触媒の代わりに白金触媒を用いることで、SOを酸化して硫酸塩のナノ粒子にでき、このナノ粒子は煤塵の粒子とともに収集できるため、尾部パイプから硫酸化合物を除去できる。(5)この活性白金触媒は、50〜70%のNOを酸化してNOにできる。排気ガスが200°F以下に冷却されると、大量のNOを水に吸着できるため、NOの排出を大幅かつ簡単に削減できる。(6)粒子変換炉の性能は排気ガス温度から独立しており、この点で他の公知技術とは異なる。以下に示す本発明の詳細により、当業者は、上記の利益やその他の利益を容易に理解できるであろう。
【0014】
粒子凝集・分離炉は、本発明の基本的構成要素である。ディーゼル機関から排出される公知の汚染物質の全てを対象に、さらなる付加・改良が、システム設計に対して施される。移動用装置では、排気ガスの燃焼による副産物は、粒子状物質を含んでおらず、したがって、清浄な再循環排気ガス(EGR)として、エンジンの吸気部に送ることができる。EGRは、NOを削減する機能を有する。再循環排気ガスの流れは、尾部パイプに設けた方向転換弁によってさらに変更できる。
【0015】
排気ガスの流れを、焼却炉に向ける代わりに定着チェンバ(settlement chamber)に向ける場合、このチェンバは、エンジン稼動中に、チェンバが一杯になるまで(典型的には3〜6か月後まで)煤塵を収集する。チェンバが一杯になると、オイル交換等の所定の整備手続の中で、チェンバ内の煤塵は廃棄される。整備工場では、粒子は煤塵ドラムに投入され、圧縮されて小球状に加工される。これは、排気ガス尾部パイプを接続し、空運転状態で、堆積した煤塵が排気ガスによって煤塵ドラムに掃き出される(掃気流)ようにすることで可能となる。チェンバを空にして煤塵ドラムに煤塵を詰めるこの作業には、約5分かかる。1つの煤塵ドラムを、10から数百という多くの移動用エンジンに用いることができる。据え付け装置、海用装置、または複数エンジン装置の場合や、煤塵ドラムを設置する空間がある場合は、煤塵チェンバは必要なく、掃気流を煤塵ドラムに直接流せばよい。あるいは、定着チェンバの代わりに、煤塵を収集するための袋を用いてもよい。
【0016】
本発明のシステムによれば、PM、NO、有毒物質(VOC)、ナノ粒子汚染、SOHC、COを効率よく削減できる。さらに、粒子変換炉の単純かつ受動的な性質と、このシステムのバランスの大多数とは、持続性、信頼性、および、後処理技術に関する他の安全上の問題を解決するための、最も有望な手法である。
【0017】
本発明の他の実施形態は、トラックやSUV等の小型ディーゼルエンジン装置に適している。これらの装置のほぼ全て(特に、改良移動用装置)にとって、後処理装置の大きさが決定的に重要である。さらに、一時的モードで稼動中のエンジンでは、乱流および渦効果が大きく、遠心分離機の遠心加速が変化するため、遠心分離機は最適な状態で適切に稼動できない。この実施形態は、遠心分離機を備えていない単体の装置からなる。凝集処理に代えて、準凝集・濾過処理が行われる。この装置は、金網の集合体(composite wire mesh)を含んでおり、この金網の集合体は、濾過金網が付加された金網手段(wire mesh media augmented with filtration screens)を備えている。この準凝集・濾過手段は、凝集原理によって機能し、単一または複数段での濾過を行う、深いフィルタである。この手段は、完全凝集器として機能することが期待されている。したがって、粒子収集効率(手段での圧力低下の増加によって計測する)が低下し始めると、手段を浄化する措置を講ずる必要がある。このため、手段に堆積した大量の煤塵を取り除くための逆拍動噴射機が採用された。凝集し、吹き飛ばされた上流側の煤塵は、筐体の底部に定着する。凝集粒子が攪拌され、上昇して再び金網手段に堆積することを防止するため、穴の開いた仕切り板を用いて、収集した煤塵を分離してもよい。収集した煤塵は、重力および振動によって穴の開いた仕切り板から落下し、排気ガスの主要な流れから分離される。穴の開いた仕切り板と金網の集合体との間の空間には、排気ガスの主要な流れのみが流れる。
【0018】
この準凝集・濾過手段の実施形態は、形状が矩形であり、トラックやバス等の移動用動力源(mobile source)の床下への設置に適した高さを有していてもよいが、これに限られない。あるいは、この実施形態は、一定のトラックやバスへの垂直設置に適した、円筒形の装置であってもよい。いずれの実施形態においても、金網手段を収納するチェンバの数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。金網手段を収納するチェンバの数を増やせば、圧力低下を低減し、煤塵保持効率および煤塵捕捉効率を上げられる。
【0019】
本発明を適用可能な他の分野は、以下の詳細な説明によって明らかとなるだろう。なお、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示すものであり、説明のためのものであって、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】据え付け機関用の完全受動粒子変換炉システムの概略図であり、本発明による排気ガスの流れを示す図である。
【図2】粒子変換炉システムの概略図であり、排気ガスの流れを、本発明による再循環排気ガスの制御に重点を置いて示す図である。
【図3】単一の凝集管を有する本発明の粒子変換炉の縦断面図であり、吸気部、凝集・分離部、および、排気部を示す図であって、図3Aは、A−A線における断面図であり、図3Bは、図3のB−B線における断面図であり、図3Cは、C−C線における断面図である。
【図4】円筒本体に内蔵された2段の分離機および焼却炉を有する本発明の粒子変換炉の縦断面図であって、図4Aは、A−A線における断面図であり、図4Bは、B−B線における断面図であり、図4Cは、C−C線における断面図である。
【図5】図5A・5Bは、内蔵された焼却炉の金網部材の詳細断面図であり、進行中の焼却処理を示す図である。
【図6】複数の凝集管を有する粒子変換炉の縦断面図であって、図6Aは、A−A線における断面図であり、図6Bは、B−B線における断面図であり、図6Cは、C−C線における断面図である。
【図7】複数の凝集管と2段の粒子分離機とを有する粒子変換炉の縦断面図であって、図7Aは、A−A線における断面図であり、図7Bは、B−B線における断面図であり、図7Cは、C−C線における断面図である。
【図8】雑音を減衰させるための複数の迂回開口を有する粒子変換炉の、螺旋部の側面図である。
【図9】窓の設計と、漂流粒子の排出・分離の原理とを示す断面図である。
【図10】金網の集合体を備えた凝集器の断面図である。
【図11】遠心分離機内での流れの移動と、窓の開口の位置とによって決定される、2ミクロン粒子の移動の分析結果を示す図である。
【図12】遠心分離機内での5ミクロン粒子の移動と、窓の開口の位置との分析結果を示す図である。
【図13】煤塵収集チェンバの平面図である。
【図14】煤塵収集チェンバの断面図である。
【図15】焼却炉を内蔵した煤塵収集チェンバの断面図である。
【図16】焼却炉を内蔵した煤塵収集チェンバの平面図である。
【図17】逆拍動噴射機を備えた煤塵処理ドラムの縦断面図である。
【図18】振動機を備えた煤塵処理ドラムの変形断面図である。
【図19】移動機関用の粒子転換炉およびEGRシステムの概略図である。
【図20】移動機関用の平坦な準凝集・濾過粒子変換炉およびEGRの概略図であり、本発明による排気ガスの流れを示す図である。
【図21】移動機関用の平坦な準凝集・濾過粒子変換炉の概略図であり、排気ガスの流れを、異なる逆拍動噴射機の構成および煤塵収集袋の使用に重点を置いて示す図である。
【図22】移動機関用の円筒形準凝集・濾過粒子変換炉の断面図である。
【図23】図23A・23Bはそれぞれ、開いた状態と閉じた状態とにおける引き戸の機構を示す図である。
【図24】図24A・24Bは、凝集・濾過金網手段集合体および準繊維性金網濾過手段の断面図である。
【図25】図25は、図20・22の粒子変換炉と組み合わせた受動焼却炉の構成を示す図である。
【図26】準凝集・濾過粒子変換炉における逆拍動噴射機の制御のための制御論理図である。
【図27】濾過金網を備えた、あるいは備えていない準金網手段の、典型的な収集効率および背圧特性を示す図である。
【図28】VOC、SO、およびNOの捕捉・除去・破壊のための原理を示す論理図である。
【0021】
[図面の簡単な説明]
本発明は、以下の詳細な説明および添付の図面によってより明らかとなるであろう。図1は、据え付け装置用の完全受動粒子変換炉システムの概略図であり、本発明による排気ガスの流れを示す図である。図2は、粒子変換炉システムの概略図であり、排気ガスの流れを、本発明による再循環排気ガスの制御に重点を置いて示す図である。図3は、単一の凝集管を有する本発明の粒子変換炉の縦断面図であり、吸気部、凝集・分離部、および、排気部を示す図である。図3Aは、図3のA−A線における断面図である。図3Bは、図3のB−B線における断面図である。図3Cは、図3のC−C線における断面図である。図4は、円筒本体に内蔵された2段の分離機および焼却炉を有する本発明の粒子変換炉の縦断面図である。図4Aは、図4のA−A線における断面図である。図4Bは、図4のB−B線における断面図である。図4Cは、図4のC−C線における断面図である。図5A・5Bは、内蔵された焼却炉の金網部材の詳細断面図であり、進行中の焼却処理を示す図である。図6は、複数の凝集管を有する粒子変換炉の縦断面図である。図6Aは、図6のA−A線における断面図である。図6Bは、図6のB−B線における断面図である。図6Cは、図6のC−C線における断面図である。図7は、複数の凝集管と2段の粒子分離機とを有する粒子変換炉の縦断面図である。図7Aは、図7のA−A線における断面図である。図7Bは、図7のB−B線における断面図である。図7Cは、図7のC−C線における断面図である。図8は、雑音を減衰させるための複数の迂回開口を有する粒子変換炉の、螺旋部の側面図である。図9は、窓の設計と、漂流粒子の排出・分離の原理とを示す断面図である。図10は、金網の集合体を備えた凝集器の断面図である。図11は、遠心分離機内での流れの移動と、窓の開口の位置とによって決定される、2ミクロン粒子の移動の分析結果を示す図である。連続する2つの矢印間は、落下サイクロン回転(cyclonic rotational turn)(360°)により生じる移動を表す。この図は、3次元流体力学分析により作成されたものであり、粒子の移動を、粒子径および渦効果の影響により強調している。図12は、遠心分離機内での5ミクロン粒子の移動と、窓の開口の位置との分析結果を示す図である。連続する2つの矢印間は、完全サイクロン回転(360°)により生じる移動を表す。図13は、煤塵収集チェンバの平面図である。図14は、煤塵収集チェンバの断面図である。図15は、焼却炉を内蔵した煤塵収集チェンバの断面図である。図16は、焼却炉を内蔵した煤塵収集チェンバの平面図である。図17は、逆拍動噴射機を備えた煤塵処理ドラムの縦断面図である。図18は、機械振動機を備えた煤塵処理ドラムの変形断面図である。図19は、移動用装置の粒子転換炉およびEGRシステムの概略図である。図20は、移動用装置の平坦な準凝集・濾過粒子変換炉およびEGRの概略図であり、本発明による排気ガスの流れを示す図である。図21は、移動用装置の平坦な準凝集・濾過粒子変換炉の概略図であり、排気ガスの流れを、異なる逆拍動噴射機の構成および煤塵収集袋の使用に重点を置いて示す図である。図22は、移動用装置の円筒形準凝集・濾過粒子変換炉の断面図である。図23A・23Bはそれぞれ、開いた状態と閉じた状態とにおける引き戸の機構を示す図である。図24A・24Bは、凝集・濾過金網手段の集合体および準繊維性金網濾過手段の断面図である。図25は、図20・22の粒子変換炉と組み合わせた受動焼却炉の構成を示す図である。図26は、準凝集・濾過粒子変換炉における逆拍動噴射機の制御のための制御論理図である。図27は、濾過金網を備えた、あるいは備えていない準金網手段の、典型的な収集効率および背圧特性を示す図である。図28は、VOC、SO、およびNOの捕捉・除去・破壊のための原理を示す論理図である。
【0022】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
以下に説明する好ましい実施形態は、単なる例示であり、いかなる意味でも、本発明およびその適用範囲・用途を制限する趣旨のものではない。
【0023】
A.システムの簡単な説明
まず、図1は、エンジンからの排気ガスに含まれる汚染物質の削減のための後処理システムを示している。なお、図面中、同一の参照符号が複数図で用いられている場合は、同一または対応する部品を示している。図1に示すシステムは、効率の良い条件(lean condition)下で稼動し、適量の粒子状物質を有する、ディーゼルエンジン、圧縮液体天然ガスエンジン等の様々な内燃エンジンからの排気ガスの後処理に用いることができる。本発明のシステムは、排気ガスに含まれる全ての汚染物質をまとめて破壊・分離・除去するように設計できる。排気ガスに含まれる汚染物質には、粒子状物質およびナノサイズ粒子、揮発性有機化合物、窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素、二酸化硫黄等がある。複数の処理により、大気中に排出された排気ガスから上記した汚染物質の全てを効率よく取り除き、高汚染エンジンを環境的に非常に清浄なエンジンにできる。
【0024】
引き続き図1を参照し、さらに図2〜図7を参照すると、据え付けディーゼルエンジン装置用の本発明の転換炉システムの、好適な実施形態の様々な例が示されている。エンジンの排気菅(manifold)に、酸化触媒10が接続されている。触媒10は、ディーゼル酸化触媒でもよいし、ガソリンエンジン装置で用いるような活性貴金属触媒でもよい。触媒10の次には排気システム50が設けられており、この排気システム50は、粒子転換炉100に入る前の排気ガスの冷却を可能な限りで最大にするように設計されている。可能な冷却状態は、一般に、異なる熱伝導状態を代表する3つの部分(放射部60、次に気体対流部70、次に液体対流部80)に分かれる。
【0025】
据え付けエンジン装置の粒子転換炉については、図3、図4、図6がより詳細に示している。粒子変換炉は、主として吸気部110、凝集器120、遠心分離機130、排気部140からなる。図4および図5A・図5Bに示すように、排気部140では、焼却炉150を用いてもよい。変換炉の出口に設けられた掃気流路は、煤塵収集チェンバ170に配管されている。煤塵収集チェンバ170を出た清浄な排気ガスは、エンジンの空気清浄器への再循環排気ガス(Exhaust Gas Recirculation; EGR)200を形成する。EGRシステムでは、EGR流量を適切に計測するため、軸加速ポンプ171を用いてもよい。煤塵収集チェンバ170で収集された煤塵は、配管を通じて煤塵処理ドラム200に送られ、粒状で再利用される。
【0026】
B.酸化触媒
本発明の酸化触媒10としては、VOC化合物の軽い破片を十分に減少させる一方、VOC化合物の重い破片を通過させ、排気パイプで凝縮して最終的には粒子変換炉で収集できるようなものを選択する。VOCの凝縮された破片は、「粒子径の大きい凝集粒子を生成し、サイクロン分離機内で生じる乱流または渦現象による破壊を防止する」接着材として機能する。したがって、本発明の目的には、より小さい粒子径のディーゼル酸化触媒が適切である。ディーゼル酸化触媒は、炭化水素や一酸化炭素の酸化にも有効であり、二酸化硫黄(SO)の酸化にも若干の効果を有する。一方、活性貴金属触媒は、炭化水素、一酸化炭素、VOC化合物の軽い破片の酸化において非常に有効であり、SOから硫酸塩化合物への酸化、および、NOからNOへの酸化にも、高い効率を発揮する。SOから硫酸塩への酸化は、業界全般で、ディーゼル排気装置においては望ましくない触媒作用として知られている。これは、排出される粒子が増加するためである。一方、触媒作用を受けた後の排気ガスの温度が硫酸塩の凝縮温度より低くなると、ナノサイズの硫酸塩粒子が形成される。この硫酸塩粒子は、煤塵とともに変換炉で収集できる。煤塵と硫酸塩との混合物は、濡れており茶色がかった粒子を形成する。十分に冷却できれば、この方法により、SOによる汚染を排気ガスから効率よく取り除くことができる。なお、NOは、およそ50〜70%の効率で酸化させてNOにできる。NOは反応性が大きいので、変換炉による処理の後に排気ガスを水で洗浄することにより、硫酸塩化合物とともに吸収できる。
【0027】
C.排気ガス冷却システム
排気ガスを冷却するための手段は、エンジン装置や、水などの液体冷却手段を使用できるか否かによって異なる。本発明の手法は、熱伝導状態の性質を利用している。排気ガスが高温で酸化触媒10を離れると、放射排気部60が用いられる。放射排気部60の特徴は、表面積が大きいか、あるいは太いパイプを有する点、および、艶のない黒色などの、放射特性を最大にする表面仕上げを施した点である。放射排気部60の後には、空気/排気熱交換部70を設けてもよい。この空気/排気熱交換部70は、乗り物の移動により排気パイプを通過する外気の相対速度を利用する。排気パイプの表面積を大きくするために、軸方向に波形を形成してもよい。また、複数のパイプを用いてもよい。全てのパイプは、風の発生源を向くように設ける必要がある。
【0028】
最後の部分は、液体/排気熱変換器80である。この液体/排気熱変換器80は、自動車によく用いられるエンジン冷却液、水、などの液体を用いて、必要な冷却を行う。なお、ほとんどのディーゼルエンジンでは、排気ガスの温度が、最大負荷時でおよそ900°〜1000°Fに達する。変換器の入口での目標排気ガス温度は、およそ250°〜300°Fである。水などによる十分な冷却が可能である場合、NOを洗浄する必要があり、排気ガスの温度をさらに低下させ、変換炉の後でおよそ150°〜200°Fとする必要がある。上記した3種類の冷却手段のいずれを選ぶかは、エンジン装置ごとに大きく異なる。一般に、放射部60が群を抜いて高い冷却効果を有し、また最も安価である。第2・第3の冷却手段の用い方は装置によって異なり、共に用いてもよいし、個別に用いてもよい。
【0029】
D.粒子変換炉、完全凝集
図3、4、6、7は、粒子変換炉100の好ましい実施形態をさらに示している。粒子変換炉100の吸気部101は、円形または矩形のパイプから入ってくる流れを、枠113と凝集器102との間の空間に方向転換する。この方向転換は、圧力低下を最小化するため、凝集器へ排気ガスを供給する空間に向かって徐々に広くなった流路によって行われる。
【0030】
粒子変換炉100の凝集部102は、図3・4に示すように単一の殻(shell)であってもよいし、図6・7に示すように、複数の管であってもよい。いずれの実施形態においても、凝集効率を高めるためには、表面積を大きくしなければならない。図6・7に示す複数の管では、全ての流れが遠心分離機に向かう。図3・4に示すような単一の殻では、流れは継続的に遠心分離機に供給され、処理される。したがって、各流路で処理される流れの量は、全流量の一部である。
【0031】
流路中の流量は、凝集器から内部パイプ104までの排気ガスの流れの経路と、凝集器の長さとに応じて決定できる。乱流や渦現象を減らすためには、各流路ごとの合計流量の一部を処理することが望ましい。また、遠心分離による粒子分離処理は、清浄な排気ガスが内部中心管107に向かって内側へ流れる間に、凝集器の内径で粒子を分離しておく処理に限られる。
【0032】
凝集器は、様々な大きさと、図24Aに特に示すような密度とを有する金網手段の集合体から構成される。凝集器102の上流側は、目が粗く実装密度の低い金網からなり、図10に示すように、下流側へ行くにつれて、目がより細かく、実装密度がより高くなっている。この選別条件により、外側の層では大きな粒子を捕捉する一方、より小さい粒子については、目がより細かく密度のより高い金網で捕捉できる。この戦略により、圧力低下を可能な限り抑えながら、粒子捕捉効率を最大化でき、煤塵の堆積をフィルタ全体に均一に分配することができる。さらに、凝集器の上流側に通気孔を設けることにより、凝集器内で粒子を捕捉することができるため、圧力低下を増大させる可能性のある、凝集器の前段での煤塵の層(塊)の形成を防止できる。なお、粒子状物質を凝集させる処理は、図10に示す。
【0033】
凝集器の厚みは、約10mm〜約30mmであり、大部分の装置では、平均して約10mm〜約20mmである。この厚みは、金網の間の空隙への樹状煤塵の形成、および、低い流速と相まって、1ミクロン未満の粒子およびナノサイズ粒子を、ディーゼル排気ガスから非常に高い効率で捕捉し、粒子数(particle count)にして約10〜10個の削減を可能にする。これにより、排気ガスに含まれる毒性汚染物質の主要成分を大幅に除去できる。
【0034】
本発明の凝集器は、他の公知の煤塵フィルタ技術とは全く異なっている。例えば、セラミック製ウォールフロー・モノリス(ceramic wall-flow monolith)は、壁の厚みが平均0.1mm〜0.3mmであるために、1ミクロン未満の粒子およびナノサイズ粒子の捕捉効率が低くなっている。排気ガスを冷却すれば、ナノ粒子の捕捉効率をさらに高めることができる。排気ガスの冷却工程では大量のナノ粒子が形成されること、および、ナノ粒子の形成量は排気ガスが周辺温度まで冷却されたときに最大となることが知られている。排気ガスを900°〜1000°Fの範囲から約250°〜300°Fまで冷却すると、変換炉の前段で、大量のナノ粒子が強制的に凝縮される。残りのナノ粒子数の生成をもたらすVOC化合物の軽い破片は、主に酸化触媒によって破壊されると考えられている。本発明の酸化触媒、排気ガスの冷却、および凝集器を組み合わせることにより、排気ガスが後部パイプを出て行く前に、産業分野に関わらず、ナノ粒子数を最大限に削減できる。
【0035】
E.遠心分離機
本発明の好ましい実施形態の遠心分離機を、図3、4、7に示す。図3の遠心分離機は、同心中核(パイプ)111に取り付けた螺旋部105からなる。凝集器からの排気ガスは、継続的かつ均一に、遠心分離機の全長に対して供給される。同心中核パイプ(cocentric core pipe)は、流路に沿って互いに一定間隔を空けて配置された窓109を備えている。これらの窓は、螺旋部の回転方向に沿って、互いに120°離れて配置されている。排気ガスが回転しながら流れるようにするためには、螺旋部の入口では窓を用いない。凝集冷却板103を用いて、流れが徐々に螺旋運動を行うようにする。流路内で流れが形成されると、凝集板は、内部中核パイプに向かって半径方向に徐々に移動する。したがって、凝集板は、外径から出発して、内部中心に向かって螺旋状に移動する。流路を完全に一回転させるためには、螺旋部が約1.5回転しなければならない。流路を回転させるこの部分では、窓を用いない。中核パイプに隣接する排気ガス層中の粒子を分離するために、凝集板の端部から120°後方で第1の窓を用いる。その後、凝集器から入ってくる流れの速度に応じた速度で、窓は排気ガスの流れの清浄な層を捕捉する。これにより、流路内での流速は、ほぼ一定に保たれる。遠心分離機の開始部をどこにするか、および、第1の窓をどこに配置するかによって、排気ガスが窓に入るまでの回転周期数が決まる。一般に、約2ミクロンを超える大きさの凝集粒子を分離するためには、2回転周期程度が適切である。回転周期数を増やすと、排気ガスはより清浄となる。
【0036】
図11・12は、粒子径と回転との関数で決まる、遠心分離機による粒子分離(移動)の典型例を示す。連続する2つの矢印の間の経路は、サイクロン回転1回(360°回転)分の粒子移動を表している。大きい粒子が小さい粒子よりも早く半径方向に移動することは、明らかである。しかし、遠心分離機内での半径方向への粒子の移動は、乱流と渦現象という2つの現象によって、相反する作用を受ける。いずれの現象も、異なる大きさの粒子のエアゾールモデル化(aerosol modeling)を用いた三次元流体力学分析によって調査した。渦現象は、小さい粒子において支配的であり、遠心方向とは逆方向への粒子の移動を引き起こすことがある。この場合、意図した通りの分離を行えなくなる。しかし、渦現象は、図11・12に示すように、螺旋部の両側付近の局所的領域でしか生じない。したがって、汚染された排気ガスが窓の中へ還流しないように、窓の開口は、渦の領域からは離れた場所に設けられる。
【0037】
約1.0ミクロン以上に至るまでは凝集されていない小さな粒子や、乱流または渦現象によって小さく砕かれた粒子は、中核パイプの外面で収集されることが、実験中に観察された。この観察結果は、遠心運動と相反する。これらの小さい粒子は渦現象によって中核パイプまで運ばれ、その後、粒子収集の拡散モードによって収集されるのではないかと推測される。このような粒子は、いわば漂流して、中核パイプの外面で凝集した後、流れ方向に十分な力で引っ張られる程度の閾値に大きさが達すると、流れ方向に移動し始める。上記の粒子は、全体からみれば少数にすぎないが、何らかの措置をとらなければ、ほぼ完全に窓の中へ還流することになる。
【0038】
図9に示すように、窓107の前には、単純な粒子排出器117または分離機が取り付けられている。凝集粒子を窓の開口の前で開放することで、上記の粒子は、遠心運動によって半径方向に移動し、その結果、清浄な流れ用に設けられた窓に入ることはない。上記の粒子は、慣性により、窓に入る流れとは別の流れを形成する。この現象は、エアゾール科学(aerosol science)の分野では非等速現象と呼ばれている。
【0039】
清浄な排気ガスは、窓の開口内へ漸進的に流入する。収集されて中核パイプ内にある排気ガスは、大気中に排出される。全ての凝集粒子は、分離したままの状態で、遠心分離機の外径またはその近傍で継続的に堆積する。遠心分離機の下流側の端部では、排気ガスの一部が分離された粒子を全て含んでいるとともに、出口または電気焼却炉へ向かっている。排気ガスのこの部分を、掃気流(scavenger flow)と呼ぶ。
【0040】
図4に示すように電気焼却炉117を粒子変換炉の一部として用いる場合、先細になった円錐状の2つの金網が、端部で内部中心111および外部殻115に接続されている。一方、対になる2つの端部(the two mating ends)は相互に固定されている。この構成によれば、金網の集合体(composite screen assembly)を用いることで大きな表面積を得られ、排気ガスの流速を低く保つことができる。掃気流は、円錐状の2つの金網によって二手に分かれる。円錐状の金網の数を2倍にすれば、表面積を2倍にできる(図示せず)。
【0041】
F.焼却炉、好ましい実施形態A
図24A・24Bは、金網の集合体を示している。これらの金網は、それぞれ機能が異なる。第1の金網120は、編み合わせた大型の金網と、広い開口とを有する。金網120の下流側は、セラミック材料等の電気絶縁材料で覆われている。また、この金網120は、12または24ボルトの電源に接続されている。第2の金網121は、第1の金網120と対になる面(the face matting with the first screen 120)に電気絶縁材料が塗布されている他は、第1の金網120と同じものである。第3の金網122は、障壁となる金網であり、50ミクロン未満の開口を有する。第4の金網123は、大型の金網であり、上記した3つの金網120、121、123を構造的に支えている。第1の金網120および第2の金網121の対となる面に塗布されたセラミックは、金網の金属の短絡を二重に防止している。
【0042】
本発明の順序で掃気流が金網の集合体に流れ込むと、凝集された煤塵が、障壁として機能する金網122の外面で収集される。煤塵の粒子は、第1の金網120に達するまで、上流方向に煤塵層を形成し続ける。第1の金網120および第2の金網121で収集された煤塵の粒子は、第1の金網120および第2の金網121の、露出している金属と接触する。煤塵は導電率が高いため、電気回路が形成され、煤塵層の内部で電流が流れる。煤塵は、3〜6秒で熱せられて高温となり、掃気流に含まれる酸素によって、煤塵は非常に早く燃焼する。
【0043】
焼却処理を促進するために、第1の金網120および第2の金網121の露出している金属を、白金で覆ってもよい。貴金属で被覆することにより、煤塵の発火温度が低下し、焼却処理は大幅に改善される。さらに、白金で被覆することで、排気ガスに含まれる酸素が少なくても、効率良く焼却処理を行うことができる。焼却処理により、CO、CO、水蒸気などの副産物が生成される。これらは、いずれも無害な気体であり、第3の金網122を通り抜けられる。
【0044】
灰が第1の金網120と第2の金網121との間に徐々に蓄積することにより、焼却炉の機能が妨げられることがある。大部分の灰は、振動により振り落とされ、焼却炉の底部にある穴に落ちる。金網の集合体を目詰まりさせるおそれのある残った灰は、背圧拍動機を用いた所定の整備によって取り除ける。
【0045】
煤塵は、煤塵の堆積が電気回路を形成する局地的な領域に限って燃焼する。このため、煤塵の燃焼は断続的に(やや継続的に)起こる。金網の集合体の前後では流速が非常に遅いこと、煤塵が金網の広範囲に分散して堆積していること、燃焼する煤塵の量が少ないこと、および、第1の金網120および第2の金網121の熱慣性によって、煤塵の燃焼は制御された環境で起こると考えられる。焼却炉の上流側と下流側との間では、排気ガス温度の、感知できるほどの増加は起こらないだろう。また、金網121・122の材料は、高温での耐食性が高く、炭素や硫黄に対する耐薬品性が高いステンレス鋼である。金網の材料としては、アルファ合金として知られる等級のものなどの、ニッケル、クロム、アルミを多く含む特殊合金が非常に適切である。
【0046】
焼却炉を備える変換炉から出てきた掃気流は、粒子状物質を含まない清浄な状態であり、再循環排気ガス(EGR)として利用できるため、空気清浄フィルタ部材を経由して、エンジンの吸気口に流入させる。掃気(EGR)流を形成するためには、空気清浄器の後に減圧すれば十分である。このシステム構成は、完全に受動的なものである。しかし、EGRの流れは小さく、かつ制御不可能であるから、結果としてNOの削減量も15〜20%と小さい。また、エンジンが空運転状態のときは、空気フィルタ部材の後で加えられる負圧が非常に低いため、EGRの流れは生じない。
【0047】
G.煤塵収集チェンバ
他の好ましい実施形態では、図13・14に示すように、焼却炉の代わりに煤塵収集チェンバ170を用いる。煤塵チェンバ170は、掃気流を取り込むための出口を底部171に1つ有し、清浄な排気ガスを排出するための第2の出口173を上部に有する、単純な構造のチェンバである。このチェンバを出た清浄な排気ガスは、上述したように、再循環排気ガスとなる。
【0048】
煤塵チェンバは、金網174で仕切られた2つの区画を有している。金網174は、煤塵障壁として機能する。掃気流の流量が小さいことに加えて、金網174を、表面積が大きく、約50ミクロン未満の空隙を有するように構成することで、金網の前後では、流速が非常に遅くなる。これにより、金網174は、凝集された煤塵に対する障壁として機能する。煤塵は、金網174の表面に堆積して層(塊)を形成する。金網の下面に煤塵層が堆積し続けると、乗り物の振動および衝撃荷重により、煤塵層は最終的にチェンバの底部に落下する。
【0049】
自身の固有振動数で振動するばねと鋼球とを備えたシステムを用いることで、煤塵層を振り落とす処理を促進できる。この振動システムは、路面とエンジンとから生じる振動を利用している。煤塵チェンバは、エンジンの煤塵排出レベルに応じて、トラックの3〜6か月間の走行から生じた煤塵を収集するように設計できる。煤塵は、チェンバの下半分から、上にある金網まで収集される。チェンバでは、焼却炉を用いてもよい。煤塵チェンバ焼却炉は、底部に位置しており、白金で被覆された2列のねじれ形ステンレス鋼管からなる。下の列は設置されており、高い方の列は12または24ボルトの電源に接続されている。接地管と電源管との間を橋渡ししている煤塵は、継続的に燃焼する。煤塵チェンバで用いる焼却炉は、頑丈であり、単純に設計されている。焼却炉から出る副産物は、EGRシステムの一部としてエンジンの吸気口まで循環する無害な気体である。
【0050】
活性白金酸化触媒を用いたディーゼル装置は、SOを酸化して硫酸塩化合物にする。また、煤塵を燃焼させる代わりに、収集する必要がある。これは単に、硫酸塩化合物は燃えないからである。EGRの一部としてエンジンに硫酸塩化合物を再循環させると、エンジンの吸気システムに不測の損傷を与えるおそれがある。このため、好ましい実施形態では、煤塵を煤塵チェンバで収集し、最終的には煤塵処理ドラム220で処理して小球状にする。この小球状の煤塵は、カーボンブラックという商品として販売する。煤塵チェンバ170は、第2の出口178を、チェンバ170の底部で煤塵処理ドラム220に接続し、トラックの尾部パイプと一時的に接続し、エンジンを空運転に近い状態で約5分間稼動させることにより、空になる。収集した煤塵は、エンジンの排気ガスによって流され、煤塵チェンバ170の底部から煤塵ドラムに運ばれる。
【0051】
H.煤塵処理ドラム
煤塵を燃焼させる代わりに収集した方がよい装置では、図17・18に示すような煤塵処理ドラムが必要である。ドラム200の役割は、穴の底部で煤塵を分離・収集し、定期的に圧縮して、固形化した小球を形成することである。この小球は、容器(プラスチックの袋)の中に放出され、印刷等の用途のために、化学業界に商品として出荷・販売される。煤塵とともに硫黄および硫酸も収集され、小球は茶色がかった色となることがある。
【0052】
煤塵ドラム200は、吸気流量分散螺旋部201を備えている。その周囲には、2つまたは4つの、同心円錐状の障壁金網が取り付けられている。金網202の裏側は、出口管(outlet manifold)203に接続されている。出口管203は、真空増圧送風機204に接続されている。この真空増圧送風機204は、ドラム200内で最低限の流量を確保するために十分な真空を発生する。
【0053】
凝集した煤塵が金網202上に集まると、煤塵層が形成され、金網202の前後で背圧が増加する。したがって、この煤塵層を吹き飛ばすための機構が必要となる。好ましい実施形態は2つある。1つは図17に示す背圧拍動機であり、もう1つは図18に示す金網振動機である。
【0054】
背圧拍動機は、空気タンク206に圧縮空気を送る小さい圧縮機205からなる。空気タンク206はパイプで金網202の裏側に接続されており、圧縮空気は制御弁207を介して放出される。弁207を定期的に作動させることで、高圧空気の波が金網202の裏側へ流れ、煤塵の塊を剥離させる。剥離した煤塵は、穴の底部に落下する。拍動空気(pulsed air)の迂回を防止するために、バネ付き検査弁208が用いられる。
【0055】
ドラム200の中心では、モータ式スピンドル209が圧縮部210を下方に駆動し、円筒形の穴に落下した煤塵を、一定の目盛りに達するまで圧縮する。そして、モータが停止し、第2の周期に備えるため、圧縮部を上方の位置に戻す。圧縮周期を繰り返すと、小球が一定の高さまで堆積する。小球が最大限まで堆積した旨を示す電気信号が生成され、別のモータ式スピンドル211が、底部保持板213を穴から移動させる。モータ式スピンドル209の次の動作周期では、圧縮部が小球を底部台214まで運ぶ。そして、小球は袋212に詰められ、除去されて出荷される。
【0056】
これら2つのモータスピンドルは、上記の工程順に従う論理を有するマイクロプロセッサ(図示せず)によって制御される。煤塵処理ドラムの制御は、煤塵処理ドラムが煤塵収集チェンバに接続されているときに行われる(ONになる)。トラック装置では、チェンバを空にする処理に平均5分かかる。煤塵ドラムへの堆積は3〜6か月のトラックの走行を要することがあるので、煤塵処理ドラムは、たった10台から最大数百台のトラックで使用できる。
【0057】
煤塵層を剥離させる他の好ましい実施の形態としては、図18に示す拍動機または振動機がある。振動機218は、金網202から煤塵の塊を適切に剥離させる。VOC含有量が多く、煤塵が湿っている装置では、逆拍動噴射機による手法が好ましい。一方、VOCの破片が少なく、煤塵が比較的乾いている場合は、単純でより安価な手法である、拍動機/振動機による手法が好ましい。
【0058】
I.粒子変換炉―準凝集/濾過
準凝集/濾過粒子変換炉は、移動用動力装置の変換炉である。この粒子変換炉は、チェンバが1つであってもよいし、複数あってもよい。図20は、大多数の床下移動用装置に好ましい実施形態である、2つのチェンバを備えた変換を示している。チェンバが2つある構成では、吸気は2つのチェンバに分かれて流れる。各流れは、図24A・24Bに示すように、金網の集合体または準集合体ウールおよび濾過金網手段に向かう。スチールウール手段の集合体は、圧力減少が小さく煤塵保持力が低い凝集器手段である点に特徴がある。一方、適切な大きさの開口を有する保持金網を用いれば、濾過効果が向上する。排気ガス温度と煤塵に含まれるVOCの破片の割合とに応じ、排気ガスの流れの上流側で、煤塵が金網に堆積する。堆積した煤塵は、塊を形成しうる。これらの現象により、金網手段の集合体の煤塵保持力/煤塵収集効率が増加するとともに、圧力低下が大きくなる。
【0059】
図19に示す平坦な準凝集/濾過変換炉は、チェンバに入ってくる流れを方向転換し、広げる吸気口255を備えている。チェンバは、仕切り板257で仕切られている。各チェンバは準凝集/濾過手段258を備えている。受動引き戸機構265を図23に示す。排気口271は、清浄な排気ガスを集め、パイプを介して排出する。受動焼却炉280の実施形態Bを図25に示す。
【0060】
図19に示す準凝集/濾過手段は、単一の層でも構成できるし、設計思想が互いに異なる複数の層で構成することもできる。煤塵保持力および煤塵保持効率を最大化するため、上流側の層は大きな粒子を捕捉するように設計されている。また、下流側の層は、小さな粒子を捕捉するように設計されている。これにより、煤塵は手段全域にほぼ均一に堆積し、煤塵の堆積に対する背圧は低下する。図24A・24Bは、3層のスチールウールと、3層のスチールウールおよび金網とを、それぞれ示している。
【0061】
上流側の層のスチールウールは、繊維直径が平均16〜25ミクロンであり(水圧繊維直径ともいう)、実装密度が3%〜6%である(実装密度とは、同一体積の固体の鋼の重量に対する、スチールウールの重量の割合をいう)。金網は、金網目数(1インチあたりの開口数をいう)が50×50または20×50である。これに続く層は、繊維直径がより小さく(例えば25〜32μm)、実装密度がより高く(例えば4%〜8%)、1インチあたりの金網目数がより多い(例えば75×75、100×100、または40×100)。煤塵に含まれるVOCの割合が高い場合は、圧力低下を大きくする「ガム効果(gummy effect)」を防止するため、繊維直径はより大きく、実装密度はより小さく、金網目数はより少なくする必要がある。
【0062】
準凝集/濾過粒子変換炉の他の好ましい実施形態としては、図22に示す円形構成がある。金網手段のこの実施形態では、金網と、仕切り板と、筐体とが、それぞれ円柱形になっている。この変換炉もまた、チェンバが1つであってもよいし、複数であってもよい。この実施形態は、例えば鉛直方向に延びるマフラーを有するトラックのような、一定のトラック装置に好適である。図22は、2つのチェンバを有する典型的な円形構成を示す。円形の実施形態の全ての部材および論理は、平坦な実施形態のものとほぼ同一である。
【0063】
J.逆拍動噴射機システム
金網/スチールウール手段の集合体の上流側に煤塵が堆積すると、樹状煤塵が流れ方向に移動する。その後、手段の下流側の層に煤塵が入り込み、一定の閾値を超えると、煤塵は(凝集粒子として)噴出し始める。その結果、手段の煤塵収集効率は低下し始め、最終的には非常に低い値となる。
【0064】
煤塵が噴出を開始すると、逆拍動噴射機が動作する。この状態は、変換炉での圧力低下が閾値に達したときに生じる。高圧の圧縮空気を金網の下流側に拍動させることで、収集した煤塵は、入ってくる排気ガスの流れとは逆の方向に吹き飛ばされる。この逆拍動噴射機を、十分な量の煤塵を吹き飛ばして取り除けるように設定する。吹き飛ばされた煤塵は、重力によって、チェンバの底部に到達する。入ってくる排気ガスによって煤塵が巻き上げられるのを防止するため、穴の開いた金網を、各チェンバの低いほうの区画に挿入してもよい。煤塵は、金網に開いた穴を通って落下する。排気ガスは、金網の上を通過する。一方、金網の下にある煤塵は、流れが生じないため、閉じ込められる。圧縮空気の拍動は、エンジンが空運転しているときや停止しているときのように、排気ガスの流速が遅い状態で行うのが好ましい。これにより、煤塵を除去する効果を最大化できる。排気ガスは拍動空気の流れとは逆方向に流れているので、排気ガスの流れは、拍動噴射機による効果を打ち消す場合がある。また、拍動噴射機の効果を最大化するために、各チェンバの清浄な排気ガスの排気口に引き戸を設けてもよい。この引き戸は、全ての拍動空気が金網手段を通過するよう、拍動の間に1秒〜2秒間閉じる。
【0065】
K.拍動噴射機システムの制御論理
本発明の制御論理は、金網手段に堆積した煤塵を閾値に達した時に除去し、手段に拍動を送り、次の堆積周期に備えて手段を初期状態に戻すことを基本とする。実際に乗り物が走行している間は、手段での圧力低下を測定することで、手段に堆積した煤塵を測定できる。しかし、圧力低下は、排気ガスの流れによる影響も受けている。乗り物の走行中は、圧力低下を抑えることが望ましいので、圧力スイッチを用いて圧力低下を測定する単純な論理を用いる。この圧力スイッチは、閾値に達した時に電気回路を作動させる。手段への煤塵の堆積が、瞬間的に圧力低下を大きくすることはあまりない。しかし、乗り物の走行周期の間に、大きな圧力低下が繰り返し生じたときは、手段への煤塵の堆積が閾値に達したと判断できる。したがって、制御論理は、閾値以上の大きな圧力低下が生じた時間の長さを加算し、堆積時間の合計が所定の値に達すると、拍動処理を開始する。大きな圧力低下の典型的な閾値は、約40〜60インチの水量である。また、閾値以上の大きな圧力低下が生じた時間の長さの累計の典型的な閾値は、3〜5分である。逆拍動噴射機の制御論理の典型例を図26に示す。
【0066】
拍動噴射機周期開始の条件が充たされ、開始処理が行われたときは、以下の条件も充たさなければならない。第1の条件は、エンジンの1分間あたりの回転数についての条件である。エンジンの1分間あたりの回転数が空運転に近いか、またはエンジンが停止している必要がある。拍動処理は1秒足らずの間に行われるので、1分間あたりの回転数についての条件も、瞬時に充足しなければならない。この条件は、乗り物が停止すれば簡単に充たすことができる。第2の条件は、次のチェンバに拍動を送るための、圧縮空気タンクの再充填に要する時間に関する条件である。乗り物での圧縮空気の供給源に応じて、所要時間は2〜10分である。制御論理図を図26に示す。
【0067】
L.焼却炉―好ましい実施形態「B」
平坦な実施形態または円形の実施形態に最も適した焼却炉は、図4に示す焼却炉である。この焼却炉は、互いに電気的に絶縁されているとともに交互に帯電している複数の板からなる。これらの板は、穴を有していてもよいし、有していなくてもよい。また、これらの板は、高温に対する耐性のあるステンレス鋼からなり、白金等の、非常に活性の高い触媒で覆われていることが望ましい。また、焼却炉を用いる場合は、重力、排気ガスの拍動、および、路面によって生じる衝撃・振動の結果として煤塵が焼却炉に向かって移動するように、平坦な変換炉を少し傾けることが望ましい。互いに逆極性の電荷を帯びている隣り合った板の間を煤塵が橋渡しすると、焼却炉が作動する。これにより強い電流が流れ、煤塵を速やかに燃焼させる。
【0068】
焼却炉は、燃焼の副産物として生成される灰を収容するのに十分な容積を有している。焼却炉の灰は、定期的に取り出して廃棄する必要があると推測される。灰の廃棄は、基準粒子排出量および走行周期に応じて、乗り物が25,000〜150,000マイル走行する間のいずれかの時点で行う。
【0069】
本発明が採用する再循環排気ガス(EGR)は、ディーゼル装置でよく直面する重大な問題を解決できる。第1の問題は、エンジンが空運転または低負荷運転の状態にあるときは、EGRターミナルでの圧力(pressure across EGR terminals)が不十分になり、流量が減ってNOの削減目標を達成できなくなるという問題である。この現象は、エンジンが空運転または低負荷運転の状態にあるときにはよく起こる。高効率軸流増圧送風機241を用いることで、この問題を解決できる。送風機241は、所望のNO削減量を達成するため、および、いかなるエンジン稼動状態でも掃気流を継続的に生じさせるために必要な流れを発生させる。エンジンが中間負荷から高負荷で稼動している場合、送風機241は、EGRターミナルでの大きな圧力差によってEGRの流れを絞り、あたかもEGR制御弁のように機能する。このため、送風機241は電力をほとんど消費しない。空運転または低負荷運転の状態にあるとき、エンジンは中程度の電力を消費する。
【0070】
EGRの流れは、エンジンRMP信号243と絞り状態信号244とに基づく論理を有する、単純な制御部242によって制御される。この構成は、改良ディーゼル装置の構成として最も好ましい。EGR制御論理は、OEMの論理に比べると、非常に単純である。本発明のEGR論理は、NO削減量の最大化および燃料に関する不利益の最小化に立脚している。しかし、本発明のEGR論理によれば、粒子、HC、CO等の目に見える排気物質をどのように増やしてもよい。目に見える基本的な排出物および粒子の増加は、変換炉システムによって削減される。
【0071】
準凝集/濾過変換炉のEGRシステムは、方向転換弁276を用いる。方向転換弁の状態は、図20に示すように、ECU部からの信号によって制御される。方向転換弁は、独特の構成を有しているため、尾部パイプへの流路の面積を狭くして、EGRの流れを正確に送り出すことができる。これにより、方向転換弁は、エンジンの吸気部へのEGRパイプ内の圧力を増加させる。EGRの流れを、吸気フィルタの前に注入できる。この構成により、漂流した凝集粒子がエンジンの吸気システムに入る前に、この凝集粒子をさらに除去できる。
【0072】
本発明のEGR戦略は、EGRに関する主要な公知の問題を解決するものであり、次のように要約できる。(1)EGRの流れは、増圧送風機によって増量され、制御される。(2)EGRの流れからは、エンジンの吸気システムを汚しまたは汚染する可能性のある汚染物質が取り除かれている。(3)排気ガスは、粒子変換炉に入る前に低温に冷却される。帰還EGRラインによって、排気ガスはさらに冷却される。エンジンに再循環した排気ガスは、容積測定効率およびエンジン性能に関する問題を解決する、準冷却EGRであると考えてもよい。
【0073】
N.水洗浄機
水を使用できる場合は、排気ガスの流れから活性NOガスを除去するために、変換炉の後の排気ガスパイプに水を注入する。水洗浄機は、硫酸塩化合物も除去できる。NO除去効率を強化するため、水をアルカリ性にしてもよい。
【0074】
O.システムの作用
ほとんどの据え付け装置では、図1・2のシステムが用いられる。このシステムは、小さいディーゼル酸化触媒と、冷却排気ガスパイプと、粒子変換炉とを備えている。エンジンの立ち上げ段階では、重い一時的な煙が発生し、酸化触媒は非活性である。しかし、VOCの大半は、比較的低温である。言い換えれば、VOCおよび粒子は、液体または固体のナノ粒子の形に凝縮されている。この粒子は、凝集器によって効率よく収集および凝集される。エンジンの暖機運転中は、冷却パイプの冷却効果はほとんどないか、あってもわずかである。エンジンの低負荷運転中または空運転中は、排気ガスの温度が低く、流量が少ない。その結果、サイクロン分離機の遠心分離効果が大幅に低下し、粒子の遠心分離が妨げられる。しかし、この現象は、凝集器による煤塵の保持と、乱流および渦現象の大幅な減少という、他の2つの現象によって軽減される。エンジンの空運転中のように、排気ガスの流量が少ないときは、金金網にかかった樹状煤塵を引っ張る空気力学的な力が非常に弱い。このため、金網の集合体での煤塵の移動が少なくなり、作用モードが凝集モードから保持モードに変化する。この場合、凝集器がフィルタとして機能する。また、乱流および渦も減少する。それでもなお、全体的な効果としては、排気ガスから粒子およびVOC物質が取り除かれる。
【0075】
エンジンが暖まり、エンジンの負荷が上がるにつれて、排気ガス温度は高くなり、流量は増加する。この状態では、酸化触媒が作用し、炭化水素、一酸化炭素、およびVOC化合物の軽い破片の燃焼をもたらす。冷却パイプは、その後のエンジン稼動状態で目標とする250〜300°Fという低温まで排気ガス温度を低下させる。
【0076】
排気ガスを250〜300°Fまで冷却することで、最大負荷時の排気ガスを40%も削減できる。さらに、排気ガスの温度を900〜1000°Fから300〜250°Fまで下げることで、排気ガスの粘性を40%低下させられる。全体的な効果としては、冷却パイプを備えていない変換炉と比較して3.1という高い係数で、粒子変換炉での圧力低下が少なくなる。この係数は、エンジンの最大許容背圧の仕様に準拠するためには不可欠であるとともに、燃料に関する不利益の減少をもたらす。変換炉は健全な減衰関数を有し、変換炉システムがマフラーにとって代わるので、上記した2通りの場合の背圧は、差し引きゼロ(wash)となりうる。全体的な効果としては、変換炉がマフラーにとって代わった場合の燃料に関する不利益は増加しない。
【0077】
金網を用いた凝集器は、他の公知のフィルタ手段に比べると、格段に効率よく1ミクロン未満の粒子を捕捉できる。金網手段の粒子捕捉機構は、慣性衝突(inertial impaction)、捕捉、拡散という3つのモードに分類される。最初の2つの収集モードは、小さな粒子にはあまり効果的でないが、粒子が大きい場合には、適切な単繊維効率を有する。ディーゼル排気ガスは、平均0.1ミクロンという非常に小さな粒子径を有すること、および、ナノ粒子の数が非常に多いことを特徴とする。粒子収集の拡散モードは、ディーゼル煤塵粒子を捕捉する上で最も重要なモードである。小さい粒子は、ブラウン運動と呼ばれる無作為の拡散運動を活発に行い、気体分子と衝突して気体の流れから外れやすい。そのような粒子は最終的に、繊維表面や、繊維の隙間に堆積した煤塵といった硬い面に衝突し、そこに堆積する。小さい粒子の単繊維収集効率(拡散モード)と、全体的な収集効率は、以下の等式で表される。
【0078】
拡散による単繊維収集効率(ξ)は、次の通りである。
【0079】
ξ=2.7Pe−2/3[1+0.39K−1/3.Pe1/3.Kn]+0.624Pe−1
ここで、PeはPe=Vd/Dで表されるペクレット数(Peclet number)、
Vはガス線速度、dは有効繊維直径、
Dは、
D=CKT/3πμ
で表される拡散係数または粒子拡散率(ここで、Cはカニンガム補正係数、Kはボルツマン定数、Tはガス絶対温度、μはガス速度、dは粒子直径)、
Knは、
Kn=2λ/d
で表されるクヌーセン数(ここで、λはガス分子の自由行路、dは有効繊維直径)である。
【0080】
繊維手段の全体的な収集効率は、
ξt=1−EXP−4ξαH/πd
で表される。ここで、αは繊維実装密度、Hはフィルタ厚である。
【0081】
上記の数式は、主要なモードである、粒子収集の拡散モードのみについてのものである。粒子収集の他の2つのモードは、効果が小さいためにここでは取り上げないが、全体的な収集効率は、拡散モードをわずかに上回る。異なる粒子径で上記の等式を解くと、単繊維効率は、粒子径が小さくなるにつれて指数関数的な増加を示す。例えば、粒子径が1.0ミクロンの粒子は、単繊維衝突効率が0.001である。粒子径が0.1ミクロンの粒子は、単繊維捕捉効率が0.007であり、単繊維拡散効率が0.05である。例えば0.02ミクロン(20ナノメートル)のナノサイズ粒子は、単繊維捕捉効率が0.0001であり、単粒子拡散効率が0.300である。これらは、α=0.005、d=10ミクロン、V=8cm/秒、T=200°Cの、古典的な金網手段の場合の数値である。
【0082】
なお、上記の数式は、未使用繊維手段(green fiber media)についてのものである(つまり、樹状煤塵は堆積していない)。繊維手段に煤塵が堆積し始めると、この繊維手段は、繊維径が非常に小さい別の繊維手段として機能し、粒子捕捉効率がさらに増加する。ナノ粒子の捕捉効率は、10という高水準に達しうる(つまり、捕捉する粒子の数で表現すると、入ってくる粒子10個につき1個の粒子のみが繊維を通り抜ける)。さらに、凝集器の設計に関していうと、金網の寸法は大きく、金網目間の空間は50ミクロンを越えている。このような特徴により、収集/捕捉した樹状煤塵が移動し、繊維手段から取り除かれる。試験データによれば、繊維手段上の、捕捉した樹状煤塵は、金属繊維よりも優れた粒子収集モードとしての効果を示している。このことから、新しい繊維手段は、未使用凝集器と呼ばれる。
【0083】
当業者であれば、フィルタと凝集器との主な相違点は保持効率であることが分かるだろう。保持効率は、フィルタでは高く、凝集器ではゼロのはずである。ディーゼルエンジン装置では、空運転時と最大負荷時とでは、流速が大きく異なる。空運転時には、流速が遅いため、凝集器がフィルタ手段として機能し、大量の煤塵を堆積させる。一方、最大負荷時には、凝集器は、入ってくる煤塵よりも多くの、凝集した樹状煤塵を吹き飛ばせる。しかし、空運転状態、中間負荷状態、最大負荷状態という広範囲の稼動状態での平均凝集器保持(捕捉)効率は、ゼロである。ある位置で煤塵が吹き飛ばされると、凝集器では、この状態が自動的に修復される。煤塵が吹き飛ぶと、そこでの流量が増加し、手段のバランスがとれる均衡状態に達するまで、さらに煤塵が堆積する。空運転状態が5時間続くと、粒子変換炉での背圧は、約50%増加しうる。5〜10秒の間にエンジン速度が800RPMから1100RPMの回転数まで増加すると、背圧は40%低下する。これは、煤塵が過剰に堆積した場合の自己修復モードである。
【0084】
凝集粒子を電気焼却炉に誘導でき、煤塵の堆積が電気回路の閾値に達すると、ここで焼却が行われる。煤塵は、導電率が高いため、突入電流により瞬時に加熱される。排気ガスが酸素を含んでおり、焼却炉の金網が白金で被覆されているため、煤塵は低音で瞬時に(典型的には3〜5秒で)燃焼する。焼却炉の金網での煤塵の焼却は局所的かつ断続的に起こるため、焼却炉の下流における温度上昇は、わずかである。また、一箇所で燃焼できる煤塵の量と排気ガスの酸素含有量とは限られており、金網での排気ガスの速度は非常に遅いので、局所的な温度上昇は小さく、金網に損傷をもたらすことはない。燃焼の副産物として、CO、HO、および灰が生成される。灰は、振動と重力とによって、焼却炉の穴の底部に落下する。この穴は大きいため、灰の廃棄が必要となるまでに、走行距離200,000〜400,000マイル相当の堆積した灰を収容できる。しかし、150,000〜200,000マイルごとに灰を廃棄することが推奨される。
【0085】
焼却炉を出た排気ガスは、粒子状物質を含んでおらず、冷却されている。この排気ガスは、NOの排出量を若干減らすため、EGRとして利用できる。NOの排出量を大きく削減することが望まれる場合には、EGRの流れを増大・制御するため、増圧ポンプを用いる。増圧ポンプの制御論理は、エンジン負荷が低いときにも清掃流を維持し、適切な量の排気ガスの再循環を確保することで、NOの削減量を最大化する。燃料経済性への影響を最小化するために、すべてのエンジン稼動状態で、制御されたEGRの流れを管理する。このEGR論理には、エンジンから排出される粒子の数を最小化する機能が欠けているが、これは、粒子の過剰な排出は、後処理システムで非常に効率よく処理できるためである。
【0086】
十分な量の冷却水を備えているか、または海や灌漑用水から冷却水を利用できるディーゼルエンジン装置では、EGRを用いるよりもさらに大きくNOを削減できる可能性がある。この場合、活性白金酸化触媒が推奨される。この触媒は、SOを酸化して硫酸塩にする一方、排気ガスの温度に応じて50%〜70%のNOを酸化してNOにする。排気ガスが、硫酸塩の凝縮温度よりも低い温度に冷却され、変換炉で粒子とともに収集されていれば、硫酸塩を粒子状物質とともに収集できる。変換炉を出た排気ガスを水で洗浄して、200〜150°Fまで温度を低下できる。これにより、反応性NOを水で捕捉することが可能となる。なお、水にアルカリ性物質を添加することが望ましい。NOを水に溶かすと、硝酸が発生する。このような非常に薄い硝酸は、大量の水にはほとんど影響がなく、灌漑用装置では有利な効果をもたらしうる。要約すると、硫酸および粒子は煤塵チェンバで収集される一方、硝酸部分は、大気中に排出される代わりに、水の中に排出され、溶かされる。
【0087】
経験が一時的モードで稼動する小型ディーゼルエンジン装置(Small diesel engine applications, where experience is in the transient mode of operation)には、小さい後処理装置が必要である。重要な要素としては、後処理装置の大きさおよび複雑さが挙げられる。このため、準凝集/濾過手段を用いた他の実施形態が開発された。準凝集/濾過手段は、濾過効率が低いことを特徴とするが、第1の煤塵層が堆積すると、収集効率が高くなる。濾過金網を設けることで、金網の上流側に煤塵層が収集され、収集効率が高まる。煤塵収集効率は、相当時間ほぼ変わらない。この相当時間は8〜40時間であり、エンジンからの排出量により異なる。その後、手段集合体が煤塵で一杯になると、煤塵の噴出が始まり、圧力低下が増加し続ける。圧力低下が一定の閾値に達すると、煤塵堆積周期の開始時に相当する初期状態に、手段を回復または再生させなければならない。しかし、煤塵収集効率を高く保つため、手段集合体にいくらかの煤塵を残しておく。このため、逆拍動噴射機技術が採用された。図27は、逆拍動噴射機効果と新たな堆積周期の開始とを示す、準手段の典型的な収集効率および背圧特性を示している。
【0088】
逆拍動噴射機技術の最も大きな特徴は、それが1秒足らずしか続かないことである。逆拍動噴射機は、エンジンがオフになっているか、空運転状態のときに作動できる。このため、逆拍動噴射機は排気ガスの流れと逆方向に流れるので、逆拍動噴射機の効果を最大化できる。したがって、逆拍動噴射機の効果は、排気ガスの流れによって弱められる。拍動噴射機が動作すると、煤塵が手段から上流側に吹き飛ばされる。その結果、手段が回復し、煤塵濾過または収集の次の周期のための準備が調う。
【0089】
1985年型の古いディーゼルトラックの準凝集/濾過変換炉で行った試験によれば、「未使用」変換炉の煤塵濾過効率は40%であった。約400マイルの堆積の後は、効率が90%に上がった。さらに500マイル走行を継続すると、背圧が55mphで60インチのHOまで上昇した。次に、このシステムでは圧縮空気による拍動を行った。その後、収集効率に目につく変化は起こらない。路面の状態によってサスペンションから生じる変換炉の振動により、距離の関数である圧力低下の増加率が低くなることも確認された。また、変換炉を調べると、手段集合体と濾過金網とに大量の塊が堆積していることが確認された。上述した煤塵の塊は、背圧を低下させうる路面からの振動によって、手段を壊すことがある。1000マイルの走行後、1ポンド前後の煤塵が2つのチェンバの底部から取り出された。
【0090】
変換炉とともに焼却炉を用いる場合、変換炉は、焼却炉の穴への煤塵の移動を助けるため、焼却炉を最も低い位置として傾いた状態で取り付けられる。焼却炉を備えた変換炉は、蓄積した灰を150,000〜200,000マイル毎に廃棄すればよい、手入れの要らない装置であることが期待される。
【0091】
図21に示すように煤塵収集袋272を備えた変換炉は、必ずしも焼却炉を必要としない。また、そのような変換炉は、変換炉の一部として逆拍動噴射機システムを備えていなくてもよい。拍動システムを据え付け型にして、複数の乗り物に使用することもできる。逆拍動空気システムは排気ガス尾部パイプを介して作動し、拍動噴射機は全てのチェンバに対して同時に作用する。煤塵収集袋は、拍動空気の周囲圧力での体積に合わせて膨張できるだけの大きさが必要である。拍動空気は、変換炉の底部で収集された煤塵を、煤塵収集袋に掃き出す。煤塵収集袋が煤塵で一杯になったときは、空の袋と交換する。袋の交換は、基準排出量に応じて、6〜30か月毎に行うと推測される。上記のようなシステムの構成は、少なくとも週に1回はガレージに収容されるトラックやバスといった装置の改造に適している。
【0092】
発明の詳細な説明は単なる例示であって、本発明の趣旨を逸脱しない変更は、本発明の範囲に属する。そのような変更を、本発明の精神および範囲からの逸脱であると解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
規制された汚染物質および規制されていない汚染物質をディーゼルエンジンの排気ガスから除去するディーゼル排気ガス後処理システムであって、
金網手段の集合体からなり粒子状物質を凝集する凝集器と、粒子状物質を分離する分離機とを有するディーゼル粒子変換炉と、
捕捉された粒子を収集し保持する煤塵収集チェンバとを備えたディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項2】
粒子収集チェンバを出た清浄な排気ガスを、エンジン空気清浄フィルタの下流の引き込み口に循環させる排気ガス再循環システムを備えた、請求項1に記載のディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項3】
排気ガスを冷却する排気ガス冷却システムをさらに備えた、請求項1に記載のディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項4】
酸化触媒をさらに備えた、請求項1に記載のディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項5】
上記の排気ガス冷却システムは、
放射モード冷却部と、
周囲空気源を用いて排気ガスを冷却する第1対流モード冷却部と、
液体源を用いて排気ガスを冷却する第2対流モード冷却部とを備え、
放射モード冷却部は、冷却効果を最大化するために、従来のパイプよりも表面積が大きく外面が黒い少なくとも1つのパイプを有する、請求項3に記載のディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項6】
上記の凝集器は、大きさおよび密度が可変の複合金網からなり、この凝集器の金網および密度は、いかなるエンジン稼動状態においても目詰まりを防ぐため、50ミクロンを超える空隙を有している、請求項1に記載のディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項7】
規制された汚染物質および規制されていない汚染物質をディーゼルエンジンの排気ガスから除去する排気ガス後処理システムであって、
粒子状物質を凝集する金網手段を有するディーゼル粒子変換炉、
ディーゼル粒子変換炉と流体をやりとりする空気拍動システム、
粒子変換炉での圧力低下を感知し、所定値の圧力低下に応じて制御信号を生成するセンサ、
金網手段から粒子状物質を除去するために空気拍動システムを作動させる電子制御モジュール(ECU)、および、
焼却炉を備えた、ディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項8】
上記の空気拍動システムは、圧縮空気タンクと、拍動弁と、受動引き戸とを粒子変換炉の筐体内に有する逆拍動噴射機システムである、請求項7に記載のディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項9】
上記のECUは、エンジンの稼動状態を監視し、金網手段に対する逆拍動噴射機の効果を最大化するために、エンジンが停止しているときまたは空運転状態にあるときに限って拍動を開始する、請求項8に記載のディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項10】
受動引き戸集合体は、拍動空気が入ってくることによって閉じられ、この動作によって、入ってくる拍動空気は全て準凝集/濾過手段を通過して煤塵を有効に吹き飛ばし、引き戸は、圧縮ばね動作によって拍動が終了したときに開いた状態に戻る、請求項8に記載のディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項11】
上記の煤塵収集チェンバは、凝集した煤塵を捕捉する障壁手段となる保持金網を備え、チェンバは、金網の底部に堆積した煤塵の塊がチェンバの下半分に落下するように設計され、取り付けられている、請求項1に記載のディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項12】
上記の煤塵収集チェンバは、乗り物の拍動および振動によって振動する、ばねと鋼球とを有する振動システムを備え、この鋼球は、金網の所定位置でハンマー動作を行って煤塵の塊を継続的に取り除き、煤塵の塊の堆積を防止する、請求項1に記載のディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項13】
凝集した煤塵を多数の煤塵処理チェンバから収集する煤塵処理ドラムをさらに備え、このドラムは煤塵を硬い小球に圧縮し、この小球は出荷されて産業用に用いられる、請求項1に記載のディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項14】
上記の煤塵処理ドラムは、堆積した煤塵を金網の集合体から定期的に取り除く後方拍動システムを有する、請求項1に記載のディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項15】
上記の煤塵処理ドラムは、金網の集合体から堆積した煤塵を継続的に取り除く機械振動機を有する、請求項1に記載のディーゼル排気ガス後処理システム。
【請求項16】
ディーゼルエンジンの排気ガス処理方法であって、
硫酸塩の凝縮温度より低い温度まで排気ガスを冷却する工程と、
排気ガス中の粒子を凝集する工程と、
排気ガス中の凝集粒子を収集し、分離する工程とを備えた、排気ガス処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2010−31872(P2010−31872A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215620(P2009−215620)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【分割の表示】特願2004−524727(P2004−524727)の分割
【原出願日】平成15年7月24日(2003.7.24)
【出願人】(505029584)
【Fターム(参考)】