デシタビンの塩
本発明は、デシタビンの塩の他に、本明細書に記載した塩の合成方法にも関する。医薬組成物及び前記デシタビン塩を使用する方法もまた提供される。前記は、例えば癌及び血液学的異常のような症状を治療するために前記の塩又はその医薬組成物を投与する方法を含む。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
背景技術
いくつかのアザシトシンヌクレオシド、例えば5-アザ-2'-デオキシシチジン(デシタビンとも称される)及び5-アザシチジン(アザシチジンとも称される)が、その関連する天然のヌクレオシド、それぞれ2'-デオキシシチジン及びシチジンのアンタゴニストとして開発されてきた。アザシトシンとシトシンとの間の唯一の構造的相違は、アザシトシンのシトシン環の5位に窒素が存在し、それに対してシトシンのこの位置には炭素が存在することである。
デシタビンの2つの異性形を区別することができる。β-アノマーが活性形である。水溶液中でのデシタビンの分解の態様は、(a)活性なβ-アノマーの不活性なα-アノマーへの変換(Pompon et al. (1987) J. Chromat. 388:113-122);(b)アザ-ピリミジン環の開環によるN-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2'-デオキシ-(リボフラノシル)-ウレアの生成(Mojaverian and Repta (1984) J. Pharm. Pharmacol. 36:728-733);及び(c)その後のグアニジン化合物の生成(Kissinger and Stemm (1986) J. Chromat. 353:309-318)である。
デシタビンは多数の薬理学的特徴を有する。分子レベルでは、前記はDNA取り込みについてS期依存性である。細胞レベルでは、デシタビンは細胞分化を誘発し、血液学的毒性を示す。in vivoでは短い半減期を有するにもかかわらず、デシタビンは優れた組織分布を示す。
デシタビンの機能の1つは、特異的に及び強力にDNAのメチル化を阻害するその能力である。シトシンの5-メチルシトシンへのメチル化はDNAのレベルで生じる。細胞内部では、デシタビンは先ず初めにその活性形、リン酸化された5-アザ-デオキシシチジンにデオキシシチジンキナーゼによって変換される(前記キナーゼは主として細胞周期のS期に合成される)。デオキシシチジンキナーゼの触媒部位に対するデシタビンの親和性は天然の基質、デオキシシチジンに類似する(Momparler et al. (1985) 30:287-299)。デオキシシチジンキナーゼによるその三リン酸形への変換後、デシタビンは、天然の基質、dCTPの速度に類似する速度で複製中のDNAに取り込まれる(Bouchard and Momparler (1983) Mol. Pharmacol. 24:109-114)。
【0002】
DNA鎖へのデシタビンの取り込みは低メチル化効果をもつ。各クラスの分化細胞はそれ自身の明確なメチル化パターンを有する。染色体の複製後、このメチル化パターンを保存するために、親の鎖上の5-メチルシトシンは、相補的な娘DNA鎖上でメチル化を誘導するために機能する。シトシンの5位の炭素を窒素に置換することはDNAメチル化のこの正常なプロセスを妨害する。メチル化の固有の部位で5-メチルシトシンをデシタビンに置き換えることは、(おそらくは前記酵素とデシタビンとの間の共有結合の形成のために)DNAメチルトランスフェラーゼの不可逆的な不活化をもたらす(Juttermann et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11797-11801)。DNAメチルトランスフェラーゼ(メチル化に必要な酵素)を特異的に阻害することによって、腫瘍サプレッサー遺伝子の異常なメチル化を防ぐことができよう。
デシタビンは、無菌的な注射用凍結乾燥粉末として、緩衝塩(例えばリン酸二水素カリウム)、pH調節物質(例えば水酸化ナトリウム)とともに一般的に供給される。例えば、デシタビンは、スーパーゲン社(SuperGen, Inc.,)によって、20mLのガラスのバイアルに充填された凍結乾燥粉末として供給される。前記バイアルは50mgのデシタビン、一塩基性リン酸二水素カリウム及び水酸化ナトリウムを含む。10mLの注射用滅菌水で再構成されたとき、1mLは、5mgのデシタビン、6.8mgのKH2PO4及びほぼ1.1mgのNaOHを含む。生じた溶液のpHは6.5−7.5である。この再構成された溶液は、更に冷却輸液液(すなわち0.9%塩化ナトリウム;又は0.5%デキストロース;又は5%グルコース;又は乳酸リンゲル液)に1.0又は0.1mg/mLの濃度に希釈することができる。未開封バイアルは典型的には冷蔵(2−8℃;36−46゜F)下で、本来のパッケージ中で保存される。
デシタビンは、もっとも典型的には注射によって、例えば静脈内ボーラス、持続的静脈内輸液、又は静脈内輸液によって患者に投与される。デシタビンと同様に、アザシチジンもまた水溶液として処方され、患者の静脈内にデリバーされる。アザシチジンの臨床試験によれば、より長時間又は持続的輸液が短時間輸液よりも有効であった(Santini et al. (2001) Ann. Int. Med. 134:573-588)。しかしながら、静脈内輸液の時間は、デシタビン又はアザシチジンの分解及び水溶液中での前記薬剤の低溶解性によって制限される。本発明は、そのような問題に対して刷新的な溶液を提供する。
【0003】
発明の開示
発明の要旨
本発明にしたがえばシチジン類似体の塩が提供される。
ある実施態様では、前記シチジン類似体は5-アザ-2'-デオキシシチジン又は5-アザシチジンである。
また別の実施態様では、シチジン類似体の塩は、酸、場合によって約5以下のpKaを有する酸、場合によって約4以下のpKaを有する酸、場合によって約3から約0の範囲のpKaを有する酸、又は場合によって約3から約-10の範囲のpKaを有する酸を用いて合成される。
好ましくは、前記酸は以下から成る群から選択される:塩酸、L-乳酸、酢酸、リン酸、(+)-L-酒石酸、クエン酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、コハク酸、EDTA、マレイン酸、メタンスルホン酸、HBr、HF、HI、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、亜リン酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、カルボン酸、スルホン酸、アスコルビン酸、炭酸、及びフマル酸。特にスルホン酸は、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸及びトルエンスルホン酸から成る群から選択される。
更に別の実施態様では、デシタビンの塩が提供される。前記デシタビンの塩は、好ましくは、塩酸塩、メシレート、EDTA、亜硫酸塩、L-アスパラギン酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、L-グルタミン酸塩、(+)-L-酒石酸塩、クエン酸塩、L-乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、ヘキサン酸塩、酪酸塩、又はプロピオン酸塩から成る群から選択される。
前記実施態様のある変型では、前記デシタビンの塩は、14.79゜、23.63゜及び29.81゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の塩酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき125−155℃、場合によって130−144℃での溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様のまた別の変型では、前記デシタビンの塩は、8.52゜、22.09゜及び25.93゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターン特徴とする結晶形のメシレート塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき125−140℃、又は場合によって125−134℃での溶融吸熱を特徴とする。
【0004】
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、7.14゜、22.18゜及び24.63゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のEDTA塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−90℃、165−170℃及び170−200℃、又は場合によって73℃、169℃及び197℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、15.73゜、19.23゜及び22.67゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の亜硫酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき100−140℃での溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、21.61゜、22.71゜及び23.24゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のL-アスパラギン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−100℃、170−195℃及び195−250℃、又は場合によって86℃、187℃及び239℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、20.81゜、27.38゜及び28.23゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のマレイン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき95−130℃及び160−180℃、又は場合によって119℃及び169℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、17.09゜、21.99゜及び23.21゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のリン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき130−145℃での溶融吸熱を特徴とする。
【0005】
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.33゜、21.39゜及び30.99゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のL-グルタミン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−100℃、175−195℃及び195−220℃、又は場合によって84℃、183℃及び207℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、7.12゜、13.30゜及び14.22゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の(+)-L-酒石酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき60−110℃及び185−220℃、場合によって91℃及び203℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.31゜、14.23゜及び23.26゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のクエン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−100℃及び160−220℃、又は場合によって84℃及び201℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.27゜、21.13゜及び23.72゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のL-乳酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−100℃及び160−210℃、又は場合によって84℃及び198℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.30゜、22.59゜及び23.28゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のコハク酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−100℃及び190−210℃、又は場合によって79℃及び203℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
【0006】
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、7.14゜、14.26゜及び31.25゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の酢酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき60−90℃及び185−210℃、又は場合によって93℃及び204℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.27゜、22.54゜及び23.25゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のヘキサン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき60−90℃及び190−210℃、又は場合によって93℃及び204℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.28゜、22.57゜及び23.27゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の酪酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき40−90℃及び190−210℃、又は場合によって89℃及び203℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.29゜、22.52゜及び23.27゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のプロピオン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−110℃及び190−210℃、又は場合によって94℃及び204℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
【0007】
更に別の実施態様では、前記アザシチジンの塩が提供される。前記アザシチジンの塩は、塩酸塩、メシレート塩、EDTA塩、亜硫酸塩、L-アスパラギン酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、L-グルタミン酸塩、(+)-L-酒石酸塩、クエン酸塩、L-乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、ヘキサン酸塩、酪酸塩、又はプロピオン酸塩である。
前記実施態様にしたがえば、前記アザシチジンの塩は、18.58゜、23.03゜及び27.97゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のメシレート塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−80℃、80−110℃及び110−140℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
更にまた本発明にしたがえば、望ましくない細胞分裂を伴う疾患を対象者で治療する方法が提供される。前記方法は、その必要がある対象者に医薬的に有効な量のシチジン類似体の塩を投与することを含む。前記疾患は、良性腫瘍、癌、血液学的異常、アテローム性硬化症、外科手術による体組織の傷害、異常な創傷治癒、異常な血管形成、組織の線維症を生じる疾患、反復性運動異常、高度に血管が形成されない組織の異常、器官移植に伴う増殖性応答であり得る。特に前記疾患は、骨髄形成異常症候群、非小細胞肺癌、又は鎌状赤血球貧血である。
本発明の塩は種々の態様で処方され、シチジン類似体による治療に感受性を有する疾患に罹患している患者に、種々の投与経路(例えば静脈内、筋肉内、皮下注射、経口投与及び吸入)によりデリバーすることができる。
本発明はまた、シチジン類似体の塩を合成、処方及び製造する方法を提供する。
【0008】
詳細な説明
本発明はシチジン類似体(例えばデシタビン及びアザシチジン)の塩を提供し、前記は、種々の疾患及び症状(例えば骨髄形成異常症候群(MDS)、非小細胞肺(NSCL)癌、及び鎌状赤血球貧血)の治療用医薬として用いることができる。この刷新的なアプローチを用いて、これまでこのタイプの薬剤の産業的開発に悪影響を及ぼしてきた3つの主要なハードル、すなわち水性環境における加水分解、もっとも医薬的に許容され得る溶媒での低溶解性、及び経口による貧弱な生体利用性が克服される。
本発明にしたがえば、シチジン類似体の固体状態及び溶液特性は塩の形成によって改変される。本発明者らは、塩の形成は可溶性の改善及びこのタイプの薬剤(例えばデシタビン及びアザシチジン)の安定性の改善をもたらすことができると考えている。水溶性の強化もまた薬剤そのものの毒性を潜在的に低下させることができる。それらのより容易な腎からの排除のおかげで、それらは蓄積されにくくなり、更に一期及び二期代謝に要求される肝のミクロゾームの過剰負荷を軽減するであろう。更にまた、安定性の強化は前記薬剤のより大胆な製造を可能にし、種々の処方物の開発を容易にする。
本発明の塩は種々の態様で処方することができ、シチジン類似体による治療に感受性を有する疾患(例えば血液学的異常、良性腫瘍、悪性腫瘍、再狭窄及び炎症性疾患)を罹患する患者に種々の投与経路(例えば静脈内、筋肉内、皮下注射、経口投与及び吸入)によりデリバーすることができる。
本発明はまた、シチジン類似体の塩を合成、処方及び製造する方法、並びに種々の疾患及び症状を治療するために前記の塩を用いる方法を提供する。
以下は、本発明の詳細な説明、並びに本発明の塩、組成物、使用、合成、処方及び製造方法の好ましい実施態様である。
1.シチジン類似体及び誘導体の塩
本発明のある特徴は、シチジン類似体又は誘導体の塩の形態、好ましくは5-アザ-2'-デオキシシチジン(デシタビン1)又は5-アザシチジン(アザシチジン2)の塩であり、その化学構造は下記に記載される:
【0009】
【化1】
【0010】
いくつかの実施態様では、酸から塩基性薬剤への十分な陽子の移転を担保にするために、新規に形成された共役酸及び共役塩基は最初の酸及び塩基性薬剤よりも弱くなければならない。一般的には前記薬剤のpKaよりも少なくとも約2ユニット弱い。2つのpKa値、7.61+0.03及び3.58+0.06がデシタビンについて見出された。好ましい実施態様では、約5より低いpKa、又は場合によって3から-10のpKaをもつ酸を用いて、デシタビンの塩が、アザシチジン並びに他のシチジン類似体及び誘導体の塩と同様に合成される。適切な酸の例は表1aに列挙されている。
表1a:デシタビン、アザシチジン並びに他のシチジン類似体及び誘導体の合成に用いることができる酸の例
【0011】
【0012】
好ましい実施態様では、デシタビン及びアザシチジン塩は強酸(pKa<0)で形成される。他の好ましい実施態様では、デシタビン塩は中性付近のpHの溶液中でデシタビン遊離塩基よりも改善された安定性を示す。“中性付近のpH”とは約7±1、±2又は±3のpHを意味する。
好ましい実施態様では、いくつかのシチジン類似体の塩、例えばデシタビン塩は、水溶液中でN-5のイミン窒素から6-炭素にわたって何らかのタイプの保護イオン複合体を示すことができる。理論に拘束されないが、そのようなイオン複合体は、周囲の水分子からの求核攻撃に対して防御になるのかもしれない。下記の図は、保護イオン複合体(1a、1b)の生成を示し(例えば本発明のデシタビン塩のいくつかの好ましい実施態様で形成されると推測される)、式中、Xは共役塩基、例えばクロリド、メシレート又はホスフェートである。
【0013】
【化2】
【0014】
図示されているように、一時的なイオン付加物はデシタビンの5位及び6位にわたって形成され、おそらく溶液中での加水分解的切断に対する防御として役立つ。
本発明のある実施態様は酸で合成されるデシタビンの塩である。いくつかの実施態様は以下の酸で合成される塩を含む:HCl、L-乳酸、酢酸、リン酸、(+)-L-酒石酸、クエン酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、コハク酸、EDTA、マレイン酸及びメタンスルホン酸。他の実施態様には他の一般的な酸のデシタビン塩が含まれる。適切な無機酸の例には、HBr、HF、HI、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、亜リン酸、過塩素酸、塩素酸及び亜塩素酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切なカルボン酸の例には、アスコルビン酸、炭酸及びフマル酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切なスルホン酸の例には、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸及びトルエンスルホン酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
好ましくは、酸対デシタビンのモル比は約0.01対約10モル等価物である。好ましい実施態様は強酸(pKa<0)のデシタビン塩を含む。より好ましい実施態様は、デシタビンヒドロクロリド(3)及びデシタビンメシレート(4)を含み、下記に図示されている(前記は例えば元素分析から決定されるように1:1のモル等価物で生成することができる)。
【0015】
【化3】
【0016】
いくつかの好ましい実施態様は中等度の酸(0<pKa<3)のデシタビン塩を含む。中等度の酸で形成される好ましい塩にはデシタビンEDTA(5)、L-アスパルテート(6)、マレエート(7)、及びL-グルタメート(8)が含まれ、これらは下記に示される:
【0017】
【化4】
【0018】
中等度の酸(0<pKa<3)で生成される更に好ましい他の塩にはデシタビンスルファイト(9)又はホスフェート(10)が含まれ、これらは下記に示される:
【0019】
【化5】
【0020】
いくつかの実施態様は弱酸(3<pKa<5)のデシタビン塩を含む。弱酸で生成される塩の例にはデシタビン(+)-L-タルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、及びデシタビンプロピオネート(18)が含まれ、これらの各々は下記に示される:
【0021】
【化6】
【0022】
本発明の第二の特徴はアザシチジンの塩の形態である。ある実施態様はメタンスルホン酸のアザシチジンの塩、例えばアザシチジンメシレート(19)で、下記に示されている:
【0023】
【化7】
【0024】
他の実施態様には無機又は有機酸のアザシチジン塩が含まれる。適切な無機酸の例には、HCl、HBr、HF、HI、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、過塩素酸、塩素酸及び亜塩素酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切なカルボン酸の例には、酢酸、アスコルビン酸、酪酸、炭酸、クエン酸、EDTA、フマル酸、ヘキサン酸、L-乳酸、マレイン酸、プロピオン酸、コハク酸および(+)-L-酒石酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。アザシチジン塩を生成するための他の適切な酸には硫酸及びアミノ酸が含まれる。適切なスルホン酸の例には、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸及びトルエンスルホン酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切なアミノ酸の例にはL-アスパラギン酸及びL-グルタミン酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本発明はまたシチジン類似体の単離された塩を包含する。シチジン類似体の単離された塩とは、混合物中に少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは50%、又はもっとも好ましくは80%のシチジン類似体の塩が存在するシチジン類似体塩を指す。
2.本発明の医薬処方物
本発明にしたがえば、シトシン類似体の塩は、種々の疾患及び症状を治療するために医薬的に許容できる組成物に処方することができる。
本発明の医薬的に許容できる組成物は、本発明の1つ又は2つ以上の塩を、1つ又は2つ以上の非毒性の医薬的に許容できる担体及び/又は希釈剤及び/又は補助剤及び/又は賦形剤(本明細書では包括的に“担体”物質と称される)、並びに所望する場合は他の活性な成分と一緒に含む。
本発明の塩は、下記に記載されるように任意の経路によって(好ましくはそのような経路に適応させた医薬組成物の形態で)、更に治療される症状にしたがって投与される。前記化合物及び組成物は、例えば経口的に、非経口的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻内に、リポソームにより、吸入により、膣内に、眼内に、局部デリバリー(例えばカテーテル又はステントによって)により、皮下に、脂肪内に、関節内に、又は脊髄内に投与することができる。
前記医薬処方物は、場合によって、前記組成物の安定性の強化、生成物の溶液中での維持、又は本処方物の投与に付随する副作用(例えば潜在的潰瘍形成、血管刺激又は溢血)の予防のために十分な量で添加される賦形剤を含むことができる。賦形剤の例には、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、デキストロクス、シクロデキストリン(例えばα-、β-及びγ-シクロデキストリン)及び改変非晶質シクロデキストリン(例えばヒドロキシプロピル-、ヒドロキシエチル-、グルコシル-、マルトシル-、マルトトリシル-、カルボキシアミドメチル-、カルボキシメチル-、スルホブチルエーテル-、及びジエチルアミノ-置換α-、β-及びγ-シクロデキストリン)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。シクロデキストリン、例えばエンキャプシン(Encapsin(商標);Janssen Pharmaceuticals)又は等価物をこの目的に用いることができる。
【0025】
経口投与のためには、医薬組成物は、例えば錠剤、カプセル、懸濁物又は液体の形態であることができる。前記医薬組成物は、好ましくは治療的に有効量の活性成分を含む服用ユニットの形態で製造することができる。そのような服用ユニットの例は錠剤及びカプセルである。治療目的のためには、前記錠剤及びカプセルは活性成分の他に通常の担体、例えば以下を含むことができる:結合剤、例えばアラビアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ソルビトール又はトラガカントゴム;充填剤、例えばリン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、トウモロコシデンプン、ソルビトール又はシュクロース;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ又はタルク;崩壊剤、例えばジャガイモデンプン;香料若しくは着色剤;又は許容可能な湿潤剤。経口用液体調製物は、一般的には水性若しくは油性溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、又はエリキシルの形態であり、通常の添加物(例えば懸濁剤、乳化剤、非水性物質、保存料、着色剤及び香料)を含むことができる。液体調製物のための添加物の例にはアラビアゴム、アーモンド油、エチルアルコール、分別化ココナッツ油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、水素添加食用脂肪、レシチン、メチルセルロース、メチル若しくはプロピルパラ-ヒドロキシベンゾエート、プロピレングリコール、ソルビトール又はソルビン酸が含まれる。
局所使用のためには、本発明の塩はまた、皮膚又は鼻及び喉の粘膜に適用するために適切な形態で調製することができ、前記はクリーム、軟膏、液状スプレー又は吸入剤、ロゼンジ又は喉の塗布薬の形態をとり得る。そのような局所処方物は更に化合物、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)を含み活性成分の表面の浸透を促進することができる。
眼又は耳への適用のためには、本発明の塩は液体又は半液体形で提供することができ、前記は、軟膏、クリーム、ローション、ペイント又はパウダーとして疎水性又は親水性基剤中で処方される。
直腸投与のためには、本発明の塩は、通常の担体(例えばカカオ脂、ロウ、又は他のグリセリド)と混合した座薬の形態で投与することができる。
【0026】
また別には、本発明の塩は、デリバリー時に、適切な医薬的に許容できる適切な担体中で再構成される粉末の形態であってもよい。
前記医薬組成物は注射により投与することができる。非経口投与のための処方物は水性又は非水性の等張な無菌的注射溶液又は懸濁液の形態であり得る。これらの溶液又は懸濁液は、経口投与のための処方物での使用について述べた1つ又は2つ以上の担体を含む無菌的粉末又は顆粒から調製することができる。塩は、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム及び種々の緩衝液に溶解することができる。
ある実施態様では、本発明の塩は、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はその組み合わせを含む非水性溶媒中で溶媒化された化合物を含む医薬的に許容できる組成物に処方することができる。本化合物デシタビンはそのような医薬処方物で安定であり、前記処方物は使用前に長期にわたって保存できるであろうと考えられる。
上記で考察したように、デシタビンによる従来の臨床的処置では、薬剤の分解を最小限にするために、デシタビンは凍結乾燥粉末として供給され、投与前に、少なくとも40容積%の溶媒(例えばWFI)中の水を含む冷水溶液で再構成され、更に冷却輸液液で希釈される。そのような処方物及び治療計画はいくつかの欠点を有する。第一に、冷却溶液中のデシタビンの冷蔵が必須となり、前記は操作を煩雑にし、高温での保存に堪え得る処方物よりも経済的に望ましくない。第二に水溶液中でのデシタビンの急速な分解のために、再構成したデシタビン溶液は、もしデシタビン溶液が7時間未満冷蔵庫で保存されていた場合、最大で3時間しか患者に輸液できない。更にまた、冷却液の輸液は強い不快及び苦痛を患者にもたらし、そのような治療計画に対する患者の抵抗を引き起こし得る。
【0027】
シチジン類似体の固体状態及び溶液特性を改変することによって、本発明の塩を含む医薬組成物は、従来のデシタビン及びアザシチジンによる臨床的処置に付随する、上記に列挙した問題を回避することができる。本発明の塩は、少なくとも40容積%の溶媒、場合によって少なくとも80%、又は場合によって少なくとも90容積%の溶媒中の水を含む水性溶液で処方することができる。本発明の塩のこれらの処方物は、水溶液中で処方されたデシタビン又はアザシチジンの遊離塩基型よりも化学的により安定である。
また別には、本発明の塩は、溶媒中に40%未満の水、場合によって溶媒中に20%未満の水、場合によって溶媒中に10%未満の水、又は場合によって溶媒中に1%未満の水を含む溶液中で処方することができる。ある変型では、前記医薬処方物は実質的に無水形で保存される。場合によって、水を吸収させるために乾燥剤を前記医薬処方物に添加してもよい。
強化された安定性のおかげで、本発明の処方物は周囲温度で保存及び輸送することができ、それによって薬剤操作コストが顕著に削減される。更にまた、本発明の処方物は、患者に投与する前に長期にわたって都合よく保存することができる。更にまた、本発明の処方物は、通常の輸液液(冷却する必要がない)で希釈し、室温で患者に投与することができる、それによって冷却液の輸液に付随する患者の不快を回避することができる。
また別の実施態様では、本発明の塩は種々の濃度で溶解される。例えば、前記処方物は場合によって0.1から200mg、1から100mg、1から50mg、2から50mg、2から100mg、5から100mg、10から100mg、又は20から100mgの本発明の塩を溶液1mL当たりに含むことができる。単位溶液当たりの本発明の塩の具体的な例には2、5、10、20、22、25、30、40及び50mg/mLが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0028】
更にまた別の実施態様では、本発明の塩は、グリセリン及び種々の濃度のプロピレングリコールを混合した溶媒中で溶解される。溶媒中のプロピレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−80%又は50−70%である。
更に別の実施態様では、本発明の塩は、グリセリン及びポリエチレングリコール(PEG)(例えばPEG300、PEG400及びPEG1000)を混合した溶媒中に種々の濃度で溶解される。溶媒中のポリエチレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−80%又は50−70%である。
更にまた別の実施態様では、本発明の塩は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びグリセリンを混合した溶媒中に種々の濃度で溶解される。溶媒中のプロピレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−60%又は20−40%であり、更に溶媒中のポリエチレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−80%又は50−70%である。
プロピレングリコールの添加は更に化学的安定性を改善し、処方物の粘度を低下させ、本発明の塩の溶媒への溶解を促進すると考えられる。
前記医薬組成物は更に、前記処方物のpHが約4から8になるような割合で処方物に添加される酸性化剤を含むことができる。前記酸性化剤は有機酸でもよい。有機酸の例には、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、ギ酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、マレイン酸、グルタミン酸、コハク酸、アスパラギン酸、ジアトリゾイック酸(diatrizoic acid)、及び酢酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。前記酸性化剤はまた、無機酸(例えば塩酸、硫酸、リン酸、及び硝酸)でもよい。
【0029】
酸化剤を処方物に添加して相対的に中性pH(例えば4−8内)に維持することは、本発明の化合物の溶媒中への容易な溶解を促進し、前記処方物の長期安定性を強化すると考えられる。アルカリ溶液では、N-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2-デオキシリボフラノシルウレアへのデシタビンの急速な可逆的分解が生じ、前記物質は不可逆的に分解して1-β-D-2'-デオキシリボフラノシル-3-グアニルウレアを生成する。前記加水分解の第一段階は、N-アミジニウム-N'-(2-デオキシ-β-D-エリスロペントフラノシル)ウレアホルメート(AUF)を含む。上昇温度での第二期の分解はグアニジンの生成を含む。酸性溶液では、N-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2-デオキシリボフラノシルウレア及びいくつかの未同定化合物が生成される。強酸(pH<2.2)溶液では、5-アザシトシンが生成される。したがって、比較的中性のpHを維持することは本発明の塩を含む処方物のために有利であろう。
ある変型では、酸化剤は溶媒1mLにつき0.01−0.2mg、場合によって0.04−0.1mg又は0.03−0.07mgの濃度のアスコルビン酸である。
本医薬処方物のpHは、pH4からpH8、好ましくはpH5からpH7、より好ましくはpH5.5からpH6.8に調節することができる。
前記医薬処方物は、好ましくは、25℃で7、14、21、28又はそれより長い日数の間少なくとも80%、90%、95%又は前記を超えて安定である。前記医薬処方物はまた、好ましくは、40℃で7、14、21、28又はそれより長い日数の間少なくとも80%、90%、95%又は前記を超えて安定である。
【0030】
ある実施態様では、本発明の医薬処方物は、グリセリンを提供し前記グリセリンに本発明の化合物を溶解させることによって調製される。前記は、例えば本発明の塩を前記グリセリンに添加するか、又は本発明の塩にグリセリンを添加することによって実施することができる。それらを混合することによって本発明の医薬処方物が生成される。
場合によって、前記方法は更に、本発明の塩がグリセリンによって溶媒化される速度を高める追加の工程を含む。実施することができる追加の工程の例には、攪拌、加熱、溶媒化時間の延長、及び微細化した本発明の化合物の適用、並びに前記の組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
ある変型では、攪拌が適用される。攪拌の例には、機械的攪拌、超音波処理、通常の混合、通常の攪拌、及び前記の組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。例えば、処方物の機械的攪拌は、シルバーソンマシーン社(Silverson Machines Inc., East Longmeadow, MA)が製造したシルバーソン・ホモジナイザーを用い製造元のプロトコルにしたがって実施することができる。
また別の変型では、熱を用いることができる。場合によって、処方物を水浴中で加熱することができる。好ましくは、加熱処方物の温度は70℃未満、好ましくは25℃から40℃であろう。例示すれば、処方物は37℃に加熱される。
更に別の変型では、本発明の塩は長時間にわたってグリセリンで溶媒化される。
更に別の変型では、本発明の塩の微細化形がまた用いられ、溶媒化カイネティクスが高められる。場合によって、微細化はミリングプロセスによって実施することができる。例示すれば、微細化は、ミクロン・テクノロジー社(Micron Technology Inc; Boise, ID)、インクフリュード・エネルギー・アルジェット社(IncFluid Energy Aljet Inc; Boise, IDTelford, PA)によって製造された、マルバーン・マスターサイザー・エアージェットミルによって実施されるジェットミリングプロセスによって製造元のプロトコルにしたがって実施することができる。
【0031】
場合によって、本方法は更に、前記医薬処方物のpHを一般的に用いられる方法によって調節することを含む。ある変型では、pHは、酸(例えばアスコルビン酸)又は塩基(例えば水酸化ナトリウム)の添加によって調節される。別の変型では、pHは緩衝溶液、例えば(エチレンジニトリロ)四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)の溶液の添加によって調節され、安定化される。デシタビン及びアザシチジンはpH感受性であることが判明しているので、前記医薬処方物のpHを約7に調節することによって治療用成分の安定性を高めることができる。
場合によって、前記方法は更に、本発明の未溶解塩を医薬処方物から分離することを含む。分離は任意の適切な技術によって実施することができる。例えば、適切な分離方法には、前記医薬処方物のろ過、沈降及び遠心のうち1つ又は2つ以上が含まれよう。本発明の化合物の未溶解粒子によるクロッギングは、前記医薬処方物の投与の障害となり、患者にとっては潜在的な危険となり得る。未溶解の本発明の化合物を医薬処方物から分離することによって、本治療用生成物の投与を促進し、その安全性を高めることができる。
場合によって、前記方法は更に医薬処方物の滅菌を含むことができる。滅菌は任意の適切な技術によって実施することができる。例えば、適切な滅菌方法には、1つ又は2つ以上の無菌的ろ過、化学物質、放射線照射、加熱ろ過及び医薬処方物への殺菌物質の添加が含まれ得る。
場合によって、前記方法は更に、乾燥剤、緩衝剤、抗酸化剤、安定化剤、抗菌剤及び医薬的に不活性な薬剤から成る群から選択される1つ又は2つ以上のメンバーを添加することができる。ある変型では、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、アスコルビン酸塩及びその混合物)を添加することができる。また別の変型では、グリコールのような安定化剤を添加することができる。
【0032】
3.本発明の塩又はその処方物を含む容器又はキット
本発明で開示した本発明の塩及びそれらの処方物は、無菌的容器、例えば種々のサイズ及び容量の注入ビン、ガラスバイアル又はアンプルに収納することができる。前記無菌的容器は、場合によって粉末又は結晶形態の固体塩、又は前記の溶液処方物(1−50mL、1−25mL、1−20mL又は1−10mLの容積)を含むことができる。無菌的容器は前記医薬処方物の無菌性の維持を可能にし、輸送および保存を容易にし、従来の滅菌工程を必要とせずに医薬処方物の投与を可能にする。
本発明はまた、その必要がある宿主に本発明の化合物を投与するためのキットを提供する。ある実施態様では、前記キットは、固体(好ましくは粉末)の本発明の塩、及び希釈液(水、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はその組合せを含む)を含む。前記固体塩及び希釈液の混合は、好ましくは本発明の医薬処方物の生成をもたらす。例えば、前記キットは、固体形の本発明の塩を含む第一の容器、及び水を含む希釈液を含む容器コンテナーを含むことができ、この場合、本発明の固体化合物への希釈液の添加によって、本発明の塩を投与するための医薬処方物が生成される。本発明の固体塩及び希釈液の混合は、希釈液1mLにつき場合によって0.1から200mg、場合によって溶媒1mLにつき0.1から100mg、2mgから50mg、5mgから30mg、10mgから25mgの本発明の塩を含む医薬処方物を生じることができる。
ある実施態様では、前記希釈液はプロピレングリコール及びグリセリンの併用であり、この場合、溶媒中のプロピレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−60%又は20−40%である。
ある実施態様では、前記希釈液はポリエチレングリコール及びグリセリンの併用であり、この場合、溶媒中のポリエチレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−60%又は20−40%である。
更にまたある実施態様にしたがえば、前記希釈液はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びグリセリンの併用であり、この場合、溶媒中のプロピレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−60%又は20−40%であり、溶媒中のポリエチレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−60%又は20−40%である。
【0033】
前記希釈液はまた、場合によって40%、20%、10%、5%、2%又は2%未満の水を含む。ある変型では、前記希釈液は無水物であり、場合によって更に乾燥剤を含むことができる。前記希釈液はまた場合によって1つ又は2つ以上の乾燥剤、グリコール、抗酸化剤及び/又は抗菌剤を含むことができる。
前記キットは、場合によって更に指示物を含むことができる。前記指示物には、どのようにして本発明の固体塩及び希釈液を混合し医薬処方物を生成すべきかを記載することができる。前記指示物にはまた、どのようにして生成された医薬処方物を患者に投与するかを記載することができる。前記指示物には場合によって本発明の投与方法を記載することができることに注目されたい。
前記希釈液及び本発明の塩は、別個の容器に入れることができる。前記容器は異なるサイズであってもよい。例えば、前記容器は1−50mL、1−25mL、1−20mL及び1−10mLの希釈液を含むことができる。
容器又はキットで提供される前記医薬処方物は、直接投与に適した形態であってもよいが、また、患者に投与されるものに対応して希釈を必要とする濃縮形態であってもよい。例えば本発明で開示される医薬処方物は、輸液により直接投与するために適した形態であってもよい。
本明細書で開示される方法及びキットは、本発明の化合物を含む医薬組成物の安定性及び治療効果が更に強化又は補足され得る融通性を提供する。
【0034】
4.本発明の塩及びその処方物を投与する方法
本発明の塩/処方物は、任意の経路で、好ましくは下記に詳述するようにそのような経路に適応させた医薬組成物の形態で、更に治療される症状に応じて投与することができる。前記化合物又は処方物は、例えば経口的に、非経口的に、局所的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻内に、リポソームにより、吸入により、膣内に、眼内に、抹消デリバリーにより(例えばカテーテル又はステントによって)、皮下に、脂肪内に、関節内に、又は脊髄内に投与することができる。本発明の化合物及び/又は組成物はまた、徐放投薬形で投与又は同時投与してもよい。
本発明の塩/処方物は、任意の通常の投薬形で投与又は同時投与することができる。本発明に関して同時投与とは、統合的治療過程において2つ以上の治療薬を投与して、臨床的成果を改善することと規定される。そのような同時投与はまた、広範囲の同時存在性、すなわちオーバーラップする期間に及ぶ存在であり得る。
本発明の塩/処方物は、宿主(例えば患者)に0.1−1000mg/m2、場合によって1−200mg/m2、場合によって1−150mg/m2、場合によって1−100mg/m2、場合によって1−75mg/m2、場合によって1−50mg/m2、場合によって1−40mg/m2、場合によって1−30mg/m2、場合によって1−20mg/m2、場合によって5−30mg/m2の用量で投与することができる。
例えば、本発明の塩は、注射用の無菌的粉末として、場合によって緩衝塩(例えば二水素カリウム)及びpH改変剤(例えば水酸化ナトリウム)とともに供給することができる。この処方物は、好ましくは2−8℃で保存される(前記温度は前記薬剤を少なくとも2年間安定に維持することができる)。この粉末処方物は10mLの注射用の滅菌水で再構成することができる。この溶液は当分野で公知の輸液液で更に希釈することができる。前記輸液液は、例えば0.9%塩化ナトリウム注射液、5%デキストロース注射液及び乳酸リンゲル注射液である。再構成し希釈した溶液は、最大能力のデリバリーのために4−6時間以内に用いることが好ましい。
【0035】
好ましい実施態様では、本発明の塩/処方物は、患者に注射によって、例えば皮下注射、静脈内ボーラス注射、持続的静脈輸液、及び1時間静脈輸液によって投与される。場合によって、本発明の化合物/組成物は、各治療サイクルにつき1−24時間の静脈内輸液により3−5日間、0.1−1000mg/m2/日の用量で、場合によって1−1000mg/m2/日の用量で、場合によって1−150mg/m2/日の用量で、場合によって1−100mg/m2/日の用量で、場合によって2−50mg/m2/日の用量で、場合によって10−30mg/m2/日の用量で、場合によって5−20mg/m2/日の用量で患者に投与される。
デシタビン又はアザシチジンについては、50mg/m2未満の用量は通常の癌療法で用いられる用量よりはるかに低いと考えられる。そのような低用量のデシタビン又はアザシチジンの類似体/誘導体を用いることによって、異常なメチル化により癌細胞でサイレントになっている転写活性が活性化され、下流のシグナルトランスダクションの引き金をひき、細胞増殖の停止、分化及びアポトーシスをもたらす(前記は最終的にはこれら癌細胞死をもたらす)。しかしながら、この低い投与量は正常な細胞に対する全身的細胞毒性作用は低く、したがって、治療される患者に対する副作用は少ない。
前記医薬処方物は、輸液液、治療用化合物、栄養液、抗菌液、緩衝剤及び安定化剤を含む群から選択される1つ又は2つ以上のメンバーとともに、任意の通常の形態で同時投与することができる。
上記に述べたように、本発明の塩は、本発明の化合物を非水性溶媒(例えばグリセリン)中で溶媒化することによって液体形に処方することができる。前記液体の医薬処方物は直接投与することができる(例えば更なる希釈を要しない)という更なる利点を提供し、したがって投与まで安定な形態で保存することができる。更にまた、グリセリンは水と容易に混合することができるので、前記処方物は簡単にかつ容易に投与前に更に希釈することができる。例えば、前記医薬処方物は、患者に投与する180分前、60分前、40分前、30分前、20分前、10分前、5分前、2分前、1分前又は1分間未満に水で希釈することができる。
【0036】
患者に前記医薬処方物を静脈内に投与することができる。好ましい投与経路は静脈内輸液である。場合によって、本発明の医薬処方物は従来の再構成をすることなく直接輸液することができる。
ある実施態様では、前記医薬処方物は、コネクター、例えばYサイトコネクターから輸液することができる。前記コネクターは3つのアームを有し、各アームはチューブに連結されている。例として、種々のサイズのバクスター(Baxter(商標))Y-コネクターを用いることができる。前記医薬処方物を含む容器をチューブと結合し、前記チューブは前記コネクターの1つのアームに結合される。輸液液、例えば0.9%塩化ナトリウム、5%デキストロース又は乳酸リンゲル液は、Y-サイトコネクターの他方のアームに結合させたチューブから輸液される。この輸液液及び前記医薬処方物はYサイトコネクター内で混合される。生じた混合物は、Yサイトコネクターの第三のアームに連結されたチューブから患者に輸液される。従来技術と比較してこの投与方法の利点は、本発明の化合物が、それが患者の身体に入る前に輸液液と混合され、したがって水との接触のためにシチジン類似体の分解が生じる時間が短縮されるという点である。例えば、本発明の化合物は、患者の身体に入る10分前、5分前、2分前又は1分前未満で混合される。
前記医薬処方物の安定性が強化された結果、患者は、1、2、3、4、5時間又はそれより長い時間、前記処方物を輸液され得る。長時間輸液は、治療処方物の投与スケジュールを融通性のあるものにすることができる。
また別には、又は前記に加えて、患者の必要性に応じて輸液速度及び輸液容積を調節することができる。前記医薬処方物の輸液の調節は現存のプロトコルにしたがって実施することができる。
【0037】
前記医薬処方物は、輸液液、治療用化合物、栄養液、抗菌液、緩衝剤及び安定化剤を含む群から選択される1つ又は2つ以上のメンバーとともに、任意の通常の形態で同時投与することができる。場合によって、治療用成分は本発明の処方物と同時投与することができる。前記治療用成分には、抗新形成剤、アルキル化剤、レチノイドスーパーファミリーのメンバーである薬剤、抗生物質、ホルモン剤、植物由来剤、生物学的薬剤、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節剤、及びモノクローナル抗体が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本発明に関して同時輸液とは、統合的治療過程において2つ以上の治療薬を輸液して、臨床的成果を改善することと規定される。そのような同時輸液はまた同時発生でも、オーバーラップでも、又は連続的であってもよい。ある具体的な例では、前記医薬処方物及び輸液液の同時輸液はY-タイプコネクターから実施することができる。
静脈内に投与された医薬処方物の薬理学的動態及び代謝は、静脈内に投与された本発明の塩の薬理学的動態及び代謝に類似する。
ヒトでは、デシタビンは、バイオアッセイで測定したとき、7分の半減期及び10−35分の規模の最終半減期(terminal half-life)を有する分布相を示す。分布容積は約4.6L/kgである。短い血中半減期は、環のシチジンデアミナーゼによる脱アミノ化によるデシタビンの急速な不活化のためである。ヒトでのクリアランスは高く、126mL/分/kgの規模である。血漿曲線下の面積は5人の患者の合計で408μg/h/Lであり、ピーク血漿濃度は2.01μMであった。患者では、デシタビン濃度は、3時間輸液として100mg/m2で投与したとき約0.4μg/mL(2μM)であった。より長時間輸液(40時間まで)時の血中濃度は約0.1から0.4μg/mLであった。40−60時間で1mg/kg/hの輸液速度での輸液により、0.43−0.76μg/mLの血中濃度が達成された。1mg/kg/hの輸液速度での定常状態血中濃度は、0.2−0.5μg/mLであると概算された。輸液中断後の半減期は12−20分である。100mg/m2で6時間輸液時におけるデシタビンの定常状態血中濃度は、0.31−0.39μg/mLであると概算された。600mg/m2の輸液中の濃度範囲は0.41−16μg/mLであった。ヒトでのデシタビンの脳脊髄液への浸透は、36時間の静脈内輸液の終了時には血中濃度の14−21%に達する。未変化のデシタビンの尿中排泄は低く、全投与量の0.01%未満から0.9%の範囲であり、排泄と用量又は血中薬剤レベルとの間に相関性は存在しない。高いクリアランス値及び尿中全排泄が投与用量の1%未満であることは、デシタビンは代謝プロセスによって迅速にかつ大半が排除されることを提唱している。
【0038】
デシタビン又はアザシチジンの遊離塩基型と比較して本発明の塩/組成物の安定性の強化のお陰で、それらは保存においてより長い保存期間を有し、更にデシタビン又はアザシチジンの臨床使用に付随する問題を回避することができる。例えば、本発明の塩は凍結乾燥粉末として、場合によって賦形剤(例えばシクロデキストリン)、酸(例えばアスコルビン酸)、アルカリ(水酸化ナトリウム)、又は緩衝塩(一塩基性リン酸二水素カリウム)とともに供給され得る。凍結乾燥粉末は、注射(例えば静脈内、腹腔内、筋肉内又は皮下注射)のために滅菌水で再構成することができる。場合によって、前記粉末は、水性又は非水性溶媒(水に混和性の溶媒(例えばグリセリン、プロピレングリコール、エタノール及びPEG)を含む)で再構成することができる。得られた溶液は患者に直接投与するか、又は輸液液、例えば0.9%塩化ナトリウム、5%デキストロース、5%グルコース及び乳酸リンゲル輸液液で更に希釈することができる。
本発明の塩/処方物は周囲条件下で又は管理環境下(例えば冷蔵庫(2−8℃;36−46゜F))で保存することができる。デシタビンと比較してそれらの優れた安定性のお陰で、本発明の塩/処方物は、室温で保存し、従来の薬剤溶液の冷却を必要とすることなく注射液で再構成し、患者に投与することができる。
更にまた、それらの化学的な安定性のために、本発明の化合物/組成物は、デシタビンの血中半減期と比較してより長い半減期を有するはずである。したがって、本発明の化合物/組成物は、デシタビン又はアザシチジンの場合よりも低い用量及び/又は少ない頻度で患者に投与することができる。
【0039】
5.本発明の塩又はその処方物の適応症
本明細書に開示した本発明の塩/処方物は多くの治療的及び予防的用途を有する。好ましい実施態様では、シチジンの類似体及び誘導体の塩型(デシタビン及びアザシチジンの塩型を含む)は、シチジン類似体又は誘導体(例えばデシタビン又はアザシチジンに遊離塩基型)による治療に感受性を有する極めて多様な疾患の治療に用いられる。本発明の塩/処方物を用いて治療することができる好ましい適応症には、望ましくない又は無制御の細胞分裂を伴うものが含まれる。そのような適応症には、良性腫瘍、種々のタイプの癌(例えば原発性腫瘍及び転移腫瘍)、再狭窄(例えば冠状動脈、頸動脈及び脳動脈病巣)、血液学的異常、内皮細胞の異常な刺激(アテローム性硬化症)、外科手術による体組織の傷害、異常な創傷治癒、異常な血管形成、組織の線維症を生じる疾患、反復性運動異常、高度に血管が形成されていない組織の異常、及び器官移植に伴う増殖性応答が含まれる。
一般的には、良性腫瘍内の細胞はそれらの分化特徴を維持し、完全に無制御な態様で分裂することはない。良性腫瘍は通常は局在し非転移性である。本発明を用いて治療することができる具体的な良性腫瘍のタイプには血管腫、肝細胞アデノーマ、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴覚神経腫、神経線維腫、胆管アデノーマ、胆管嚢胞腺腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生過形成、トラコーマ及び化膿性肉芽腫が含まれる。
悪性腫瘍では、細胞は未分化になり、身体の増殖制御シグナルに応答せず、無制御な態様で分裂する。悪性腫瘍は侵襲性であり、遠位部位に拡散することができる(転移)。悪性腫瘍は、一般的に2つのカテゴリー、原発性及び二次性に分けられる。原発腫瘍は、それらが見出される組織で直接的に生じる。二次腫瘍、又は転移はどこか他の場所で発生し、いまや遠位器官に拡散した腫瘍である。転移の一般的な経路は、隣接する構造物中への直接的な増殖であり、血管系又はリンパ系を通って拡散し、組織平面及び体腔(腹腔液、脳脊髄液など)に沿って進んでいく。
【0040】
本発明を用いて治療することができる癌又は悪性腫瘍(原発性又は二次性)の具体的タイプには、乳癌、皮膚癌、骨の癌、前立腺癌、肝癌、肺癌、脳の癌、喉頭の癌、胆嚢の癌、膵臓の癌、直腸の癌、傍甲状腺の癌、腺組織の癌、神経組織の癌、頭部及び頸部の癌、結腸の癌、胃癌、気管支の癌、腎臓の癌、基底細胞癌、扁平上皮癌(潰瘍型及び乳頭状型の両型)、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、ベチクルム(veticulum)細胞肉腫、ミエローマ、巨細胞腫瘍、小細胞肺癌、胆石、小島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性及び慢性リンパ球性及び顆粒球性腫瘍、毛様細胞腫瘍、アデノーマ、過形成、髄様癌、クロム親和性細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節神経腫(intestinal ganglloneuroma)、過形成角膜神経腫、マルファン症候群様体質腫瘍(marfanoid habitus tumor)、ウィルム腫瘍、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫瘍(leimyomater tumor)、子宮頸部形成異常及び前記部位に発生する癌、神経芽腫、網膜芽腫、軟組織肉腫、悪性類癌腫、局所性皮膚病巣、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性及び他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫、真性赤血球増加症、腺癌、多発性グリア芽細胞腫、白血病、リンパ腫、悪性メラノーマ及び類表皮癌、並びに他の癌腫及び肉腫が含まれる。
血液学的異常には、血液細胞の形成異常変化をもたらし得る血球の異常増殖及び血液学的悪性疾患(例えば種々の白血病)が含まれる。血液学的異常の例には、急性類骨髄球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄形成不全症候群及び鎌状赤血球貧血が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
いくつかの実施態様では、本発明の塩を用いて、遺伝性血液異常及び/又はヘモグロビン欠損異常(例えば鎌状赤血球貧血)を含む血液異常が治療される。いくつかの実施態様では、本発明の塩を用いて癌を治療することができる。前記癌には、白血病、前白血病及び他の骨髄関連癌、例えば骨髄形成異常症候群(MDS)とともに肺癌、例えば非小細胞肺癌(NSCL)が含まれる。NSCLには類表皮癌又は扁平上皮癌、腺癌及び大型細胞癌が含まれ得る。MDSには、不応性貧血、形質転換中の過剰芽球を有する不応性貧血、及び骨髄単球性白血病が含まれ得る。
【0041】
本発明は、対象動物を治療するための方法、医薬組成物及びキットを提供する。本明細書で用いられる、“対象動物”という用語はヒトと同様に他の動物を含む。本明細書で用いられる、“治療する”という用語は、治療的利益を達成すること及び/又は予防的利益を達成することを含む。治療的利益とは、治療される根幹の異常の根絶又は軽減を意味する。例えば鎌状赤血球貧血の患者で、治療的利益には根幹の鎌状赤血球貧血の根絶又は軽減が含まれる。更にまた、治療的利益は、患者が根幹の異常になお罹患しているという事実にも関わらず、改善が患者で観察されるように、根幹の異常に付随する1つ又は2つ以上の生理学的徴候が根絶又は軽減されることにより達成される。例えば、本発明の塩は、鎌状赤血球貧血が根絶されたときだけでなく、鎌状赤血球貧血に付随する、手足症候群、疲労及び/又はクライシス時に受ける痛みの重篤度又は時間(疼痛エピソード)のような他の異常又は不快に関して患者で改善が観察されるときもまた治療的利益を提供している。同様に、本発明の塩は、癌(例えばMDS又はNSCL)に付随する症状(貧血、アザの形成、持続感染、腫瘍のサイズなどを含む)の軽減で治療的利益を提供することができる。
予防的利益のために、本発明の塩は、癌又は血液異常を発症するおそれのある患者、又はそのような症状の1つ又は2つ以上の生理学的徴候を報告している患者に、たとえ前記症状の診断が未だ行われていないとしても投与することができる。
必要な場合又は所望される場合には、本発明の塩は他の治療薬と併用して投与することができる。本発明の化合物及び組成物と同時投与することができる治療薬の選択は、部分的には治療される症状に左右されるであろう。他の治療薬の例には、抗新形成薬、アルキル化剤、レチノイドスーパーファミリーのメンバーである薬剤、抗生物質、ホルモン剤、植物由来薬剤、生物学的製剤、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節剤、及びモノクローナル抗体が含まれるが、ただしこれらに限定されない。例えば、鎌状赤血球貧血では、本発明の塩は、抗生物質及び/又はヒドロキシウレアとともに投与することができる。MDS又はNSCLの場合、本発明の塩は化学療法剤とともに投与することができる。
本発明で使用される適切な医薬組成物には、活性成分が有効な量で、すなわち治療される症状(例えば血液異常(例えば鎌状赤血球貧血)、MDS及び/又は癌(例えばNSCL))で、治療的及び/又は予防的利益を達成するために有効な量で存在する組成物が含まれる。
【実施例】
【0042】
以下の実施例は本発明の詳細を説明することを意図し、いずれの態様においても本実施例によって本発明を制限しようとするものではない。
1.シチジン類似体の塩の合成
1)デシタビンの塩の生成:
本発明のいくつかの実施態様では、デシタビンの塩の調製は、デシタビン及び酸(例えば表1aに含まれる酸)を溶媒(表1bに列挙した溶媒)中で-70℃から100℃で0から24時間混合し、-70℃から25℃で結晶化させ、更にろ過及び溶媒からの再結晶化による精製を実施することを含む。
【0043】
表1b:塩の調製で用いることができる溶媒の例
いくつかの実施態様では、デシタビン塩は強酸から調製された。ある実施態様では、例えば上記に示したデシタビンヒドロクロリド(3)は、丸底フラスコ(100-mL)でデシタビン(0.25g、3.7mmol)をメタノール(40mL)中に懸濁することによって調製された。混合物を穏やかに22℃で攪拌した。HClガス(2倍過剰より少なくはない)を攪拌メタノール溶液中に完全な溶解に達するまで吹き込んだ。前記溶液を1/3容積に濃縮し、窒素ガスをフラッシュし、ゴムの隔壁で栓をし、12時間以上結晶化(0℃)させた。結晶生成物の第1回目の収穫をろ過し、無水エーテル(5mL)で洗浄し、12時間以上真空中で乾燥させた。ろ液を50mLのエーレンマイヤーフラスコに戻し、十分な無水エーテルを白濁点まで添加した。前記溶液を窒素でフラッシュし、ゴムの隔壁で栓をし、12時間以上結晶化(0℃)させた。結晶生成物の第2回目の収穫をろ過し、無水エーテル(40mL)で洗浄し、12時間以上真空中で乾燥させた。
ある実施態様では、例えば上記に示したデシタビンメシレート(4)は、丸底フラスコ(250-mL)でデシタビン(1.0g、3.7mmol)をメタノール(80mL)中に懸濁することによって調製された。前記溶液を窒素でフラッシュし、ゴムの隔壁で栓をし、穏やかに周囲温度で10分間攪拌した。メタンスルホン酸(4.0mL)を前記ゴムの隔壁からゆっくりと注入し、混合物を穏やかに1時間攪拌した。デシタビンの懸濁物は直ちに消失し、混合物はデシタビンメシレートが結晶化する前に透明になった。結晶を4時間以上完全に結晶化(0℃)させた。生成物をろ過中にMeOH(50mL)で十分に洗浄し、12時間以上真空中で乾燥させた。
【0044】
デシタビン塩はまた中等度の酸からも調製された。いくつかの実施態様では、例えば上記に記載した、デシタビンEDTA(5)、L-アスパルテート(6)、マレエート(7)、又はL-グルタメート(8)は以下の方法で調製することができる。メタノール(100mL)及びデシタビン(1.0g)を添加する前にエチレンジアミン四酢酸(EDTA、1.409g、4.8mmol)、L-アスパラギン酸(641mg)、マレイン酸(610mg、5.3mmol)又はL-グルタミン酸(709mg)を250mLの丸底フラスコに秤量し、更に前記混合物を50℃で1時間又はそれより長時間、前記溶液が透明になるまで攪拌した。ろ液を約1/2容積に濃縮し、結晶化を惹起させた。前記溶液を窒素でフラッシュし、ゴムの隔壁で栓をし、4時間以上結晶化(0℃)させた。結晶生成物の第1回目の収穫をろ過し、12時間以上、真空中で乾燥させた。メタノール中で、デシタビンは、EDTAと1:1モル等価物(5)を、L-アスパラギン酸と1:1.5モル等価物(6)を、マレイン酸と0.78モル等価物(7)を、及びL-グルタミン酸と1:1.5モル等価物(8)を形成した(下記表2もまた参照されたい)。
更にいくつかの実施態様では、上記に示した例えばデシタビンスルファイト(9)、ホスフェート(10)が、デシタビン(1.0g、3.7mmol)を丸底フラスコ(250mL)のメタノール(80mL)に懸濁することによって調製された。前記溶液を窒素ガスでフラッシュし、ゴムの隔壁で栓をし、穏やかに周囲温度で10分攪拌した。亜硫酸(4.0mL)又はリン酸(0.8mL)をゴムの隔壁からゆっくりと注入し、前記混合物を更に穏やかに1時間攪拌した。デシタビンの懸濁物は消失し、デシタビン塩が再結晶化される前に混合物は透明になった。結晶は4時間以上で完全に結晶化された(0℃)。生成物をろ過中にMeOH(50mL)で十分に洗浄し、真空中で12時間以上乾燥させた。メタノール中で、デシタビンは、亜硫酸(9)及びリン酸と1:1モル等価物を形成した(下記表2もまた参照されたい)。
更にいくつかの実施態様では、デシタビン塩は弱酸(3.0<pKa<5)から調製された。例えば(+)-L-酒石酸、クエン酸、L-乳酸、コハク酸、酢酸、ヘキサン酸、酪酸又はプロピオン酸(それぞれ上記の11−18)のデシタビン塩が以下の方法によって調製された:デシタビン(1.0g、4.4mmol)を丸底フラスコ(50mL)のメタノール(50mL)に懸濁し、酸(液体酸:0.4−4.4mL;固体酸:2−5g)を添加する前に窒素をフラッシュし封をした。各々を超音波発生装置上で30−55℃で完全に溶解するまで加熱した。30分後に完全な溶解が完了していない場合は、更に追加のエタノール(5mL)を10分毎に添加した。前記溶液を23℃に冷却し、続いて0℃で12時間以上保存した。結晶生成物の第1回目の収穫をろ過し、真空中で12時間以上乾燥させた。
弱酸(3.0<pKa<5)から調製されたデシタビンの塩はより激甚ではない結果を示した。例えば、メタノール中では、デシタビンは、(+)-L-酒石酸、クエン酸、L-乳酸、コハク酸、酢酸、ヘキサン酸、酪酸又はプロピオン酸と1:1モル等価物に対応する塩を容易には形成しない(それぞれ上記記載の11−18)。その代わりに、酸の割合が0.03から0.19モル等価物に変動するものが得られた(表2をまた参照されたい)。前記は部分的な塩形成が存在することを示しているのかもしれない。しかしながら、このことは必ずしも、これらの弱酸の1:1モル等価物塩を他の溶媒を用いて調製することができないことを意味しない。
2)アザシチジン塩の生成:
本明細書に記載したデシタビン塩のための合成技術は対応するアザシチジンの塩の調製に応用することができる。アザシチジンの類似体塩はまた、デシタビン塩の調製で使用した酸から調製することができる。例えば、本発明のいくつかの実施態様では、アザシチジンの塩の調製はアザシチジン及び酸(例えば表1aに含まれる酸)の混合物を攪拌することを含む。
例えば、アザシチジンメシレート(上記に記載した(19))は、強酸のメタンスルホン酸を用いて生成されるアザシチジン塩である。いくつかの実施態様では、アザシチジンメシレート(19)は、アザシチジン(0.5g、2.0mmol)を丸底フラスコ(100mL)のメタノール(40mL)に懸濁することによって調製された。前記溶液を窒素ガスでフラッシュし、ゴムの隔壁で栓をし、穏やかに周囲温度で10分間攪拌した。メタンスルホン酸(2.0mL)を前記ゴムの隔壁からゆっくりと注入し、混合物を穏やかに1時間攪拌した。デシタビンの懸濁物は直ちに消失し、混合物は透明になった。混合物の容積を真空中で半分に減少させ、アザシチジンメシレートの結晶を4時間以上完全に結晶化(0℃)させた。生成物をろ過中にMeOH(40mL)で十分に洗浄し、真空中で12時間以上乾燥させた。アザシチジンは1:1モル等価物のメシレート塩(19)を容易に生成することができる。
【0045】
2.デシタビン及びアザシチジン塩の可溶性
表2は、遊離デシタビン及び遊離アザシチジンと比較した、本発明のいくつかの実施態様についての溶解速度及び全可溶性とともに他の選択した特性を示す。溶解速度は、1.0mgのサンプルが水に溶解するために要する時間を規準にする。ほとんどの実施態様(例えばほとんどのデシタビン塩)についての溶解速度は、遊離塩基のそれよりも優れている。例えば、デシタビンヒドロクロリド(3)(混合で1秒)及びデシタビンメシレート(4)(超音波で3秒)はデシタビン遊離塩基(1)(超音波で3秒)より優れている。理論に拘束されないが、より速い溶解速度は、製造時の加水分解を減少させるとともに、粉末形の再構成時間を短縮することができる。驚くべきことに、アザシチジンメシレート(19)の溶解速度は、しかしながら遊離アザシチジン塩基(2)よりも低いことが見出された。すなわち、表2に示すように、アザシチジンメシレート塩(19)の溶解速度(超音波で1分)はアザシチジン遊離塩基(2)(混合で3秒)よりも遅い。
外観的全可溶性は、1.0mLの脱イオン水を含む5-mLバイアルに5mgのサンプルを連続的に添加し、前記混合物を1分超音波処理することによって決定した。懸濁物が形成されるまで、更に追加のサンプルを5mgずつ増加させて添加し、1分の超音波処理をくり返した。ほとんどのデシタビン塩の全可溶性はデシタビン遊離塩基より良好であるか、又は少なくとも同じである。デシタビンヒドロクロリド(3)(280mg/mL)及びデシタビンメシレート(4)(195mg/mL)の外観的全可溶性(前記はそれぞれ遊離塩基の241mg/mL及び137mg/mLと等価である)は、デシタビン遊離塩基(1)(8−10mg/mL)よりも実質的に高い。1:1モル比の塩(例えばデシタビン-HCl及びデシタビンメシレート)は、10倍以上デシタビンの可溶性を増加させる。同様に、デシタビンスルファイト(9)及びデシタビンホスフェート(10)は、それぞれ80mg/mL及び50mg/mL(それぞれ59mg/mL及び35mg/mLの遊離デシタビン塩基と等価である)の可溶性を示す。しかしながら当業者は、いくつかの他のデシタビン塩については、全可溶性の測定は、それらの1:1の遊離塩基:酸モル比を表していないかもしれないことを理解してよう。
一方、上記に記載したように、驚くべきことにその溶解速度が遊離アザシチジン塩基(2)よりも低いことが見出されたアザシチジンメシレート(19)に関しては、外観的全可溶性は大きく強化され、アザシチジン遊離塩基(2)の14mg/mLと比較して前記塩(19)で205mg/mL(遊離塩基の137mg/mLと等価)である。
【0046】
表2:デシタビン及びアザシチジンの塩の選択した特性の要旨
#元素分析を規準にする
*デシタビン又はアザシチジン遊離塩基等価物
【0047】
表3は、遊離デシタビン及び遊離アザシチジンと比較した本発明のある種の実施態様の融点及び吸湿性を示す。例えば、デシタビンヒドロクロリド(3)(130℃)及びデシタビンメシレート(4)(125℃)の観察された融点(分解点)は、デシタビン遊離塩基結晶無水物(1)のそれとは異なっている(190℃)。アザシチジンメシレート(19)の観察された融点(分解点)(138℃)もまたアザシチジン遊離塩基(2)のそれとは異なっている(230℃)。
表3はまた、ある種の塩は対応する遊離塩基よりわずかに吸湿性であることを示している。デシタビンヒドロクロリド(3)及びデシタビンメシレート(4)の56%相対湿度(RH)で1週間後のパーセント質量増加は、デシタビン遊離塩基(1)と同様であった。98%RHでは、デシタビンヒドロクロリドは、デシタビンよりもはるかに大量の水分を取り込んだ(わずかに2.88質量増加に対して65.5%の質量増加)。デシタビンメシレートは、しかしながら2.84%のわずかな質量増加を示し、98%RHでデシタビンよりも吸湿性ではないと決定された。前記にもかかわらず、アザシチジンメシレート(19)は遊離アザシチジン(2)よりもはるかに吸湿性であることが示された。
【0048】
表3:固体状態のデシタビン及びアザシチジンの塩型の安定性
【0049】
表4は、本発明のある種のデシタビン及びアザシチジン塩の水溶液安定性を示す。水溶液安定性は、0.5mg/mLの薬剤濃度でpH7.0及び2.5のリン酸緩衝液で調べた。アッセイ条件は以下のとおりであった:移動相−40±0.5mLのメタノール及び2000mLの酢酸アンモニウム(10mM)の混合物;カラム温度−15±2℃;流速−1.7mL/分;注入容積−5μL;検出波長−220nm;及び分析時間−25分。
pH7.0及び2.5のリン酸緩衝液(0.05M)中のデシタビン塩のいくつかの溶液安定性は、デシタビン遊離塩基と少なくとも同じ安定性を有する。pH7.0では、デシタビンヒドロクロリド(3)及びデシタビン遊離塩基(1)は、周囲条件下で約30分後(87.59%及び87.17%)及び24時間後(それぞれ81.07%及び84.07%)に類似のパーセント回収を示した。デシタビンメシレート(4)は、pH7.0で周囲条件下で30分後及び24時間後(それぞれ91.19%及び89.49%)にわずかに良好なパーセント回収を示した。
pH2.5では、周囲条件下で、デシタビンメシレート(4)及びデシタビン遊離塩基(1)は、ほぼ30分後(55.96%及び57.09%)及び24時間後(それぞれ48.77%及び50.38%)に類似の%回収を示した。デシタビンヒドロクロリド(3)は、30分後に極めて良好な%回収(77.89%)を示したが、最終的にはデシタビン遊離塩基(1)と類似の値(49.90%)に減少した。デシタビンL-アスパルテート(6)及びデシタビンスルファイト(9)もまた多少デシタビンを安定させるように見える。例えば、デシタビンスルファイト(9)(30分後に95.96%及び24時間後に92.96%)の安定性は、デシタビン遊離塩基(1)(30分後に57.09%及び24時間後に50.8%)と比較してpH2.5で改善される。
アザシチジンメシレート(19)に関しては、この1:1塩の安定性は遊離アザシチジン塩基(2)よりもわずかに低い。
【0050】
表4:pH7.0及び2.5のリン酸緩衝液(0.05M)中の塩(0.5mg/mL)の安定性
【0051】
3.デシタビン及びアザシチジン塩の熱解析法
ここでは、塩型のいくつかについて、微分走査熱量測定法(Differential Scanning Calorimetry;DSC)、熱重量分析(TGA)、X線回折(XRD)及び赤外(IR)分光分析を含む“フィンガープリント”解析が提供される。ここに提供したDSCのための数値は、各々が“約”という語によって修飾されることを意図する。例えばここに提供したDSC値は、提示された数値±1℃、±2℃、±3℃、±4℃、±5℃、±6℃、±7℃、±8℃、±9℃、及び少なくとも±10℃を表す。
上記で述べたように、デシタビンヒドロクロリド(3)(130℃)及びデシタビンメシレート(4)(125℃)について表3で示した検出融(分解)点は、デシタビン遊離塩基結晶無水物(1)(190℃)とは異なっている。これらの値は、微分走査熱量測定法(DSC)プロット(周囲温度から250℃、10℃/分)によって確認された。図1−17は、それぞれ、デシタビンヒドロクロリド(3)、デシタビンメシレート(4)、デシタビンEDTA(5)、デシタビンL-アスパルテート(6)、デシタビンマレエート(7)、デシタビンL-グルタメート(8)、デシタビンスルファイト(9)、デシタビンホスフェート(10)、デシタビンタルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-(+)-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、デシタビンプロピオネート(18)及びアザシチジンメシレート(19)のDSCプロットを示す。
図1に示すように、デシタビンヒドロクロリド(3)は、約130℃から始まり144℃で最高潮に達する主要な熱現象を経る。図2に示すように、デシタビンメシレート(4)は、約125℃から始まり134℃で最高潮に達する主要な熱現象を有する。125℃−130℃近くでの開始を示すこれらのDSC吸熱現象はその溶融と一致し、前記は放熱現象を伴う。この事象はデシタビンヒドロクロリドもデシタビンメシレートも分解とともに溶融することを示している。
【0052】
これら2つの新規な塩の熱解析は、それらが無水型であることを提唱している。図18及び19は、それぞれデシタビンヒドロクロリド(3)及びデシタビンメシレート(4)のTGAプロットを示している。各々についてのTGAプロットは、サンプルの分解点までは質量の低下を示さない。図18が示すように、デシタビンヒドロクロリド(3)のTGAプロットは、およそ150℃で出現し、38%を超える質量低下をもたらす急峻な分解曲線を示す。前記分解曲線は最終的にはおよそ200から250℃でプラトーに達する。特定の仮説に拘束されないが、下記に図示するように、分解時の塩化水素の消失が150℃辺りでのトリアジン環の開環を伴うようである。
【0053】
【化8】
【0054】
図19はデシタビンメシレート(4)のTGAプロットを示す。前記では、2つの主要な連続的分解事象は150℃辺り及び200から250℃辺りに出現する。第一の事象は15%の質量低下を表し、一方、第二の事象は14%となる。特定の仮説に拘束されないが、下記に示すように、デシタビンメシレートはデシタビンヒドロクロリドの場合と類似の段階で分解する可能性がある。例えば、デシタビンヒドロクロリドの場合に仮定されたように、デシタビンメシレートの分解はトリアジン環の開環を伴う可能性がある。しかしながら、対照的に遊離デシタビンでのトリアジンの切断は190℃辺りまで発生しない。
【0055】
【化9】
【0056】
図20−34は、本発明の更に別の塩についてのTGAプロットを示す:すなわち、それぞれデシタビンEDTA(5)、デシタビンL-アスパルテート(6)、デシタビンマレエート(7)、デシタビンL-グルタメート(8)、デシタビンスルファイト(9)、デシタビンホスフェート(10)、デシタビンタルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-(+)-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、デシタビンプロピオネート(18)、及びアザシチジンメシレート(19)である。
デシタビンEDTA(5)、デシタビンL-アスパルテート(6)、デシタビンマレエート(7)、デシタビンL-グルタメート(8)、デシタビンスルファイト(9)、デシタビンホスフェート(10)についてのDSC及びTGAプロット(それぞれ図3−8及び図20−25)から、これらの塩は遊離デシタビンではないことが分かる。したがって、(上記の表2に示したように)デシタビンスルファイト(9)及びデシタビンホスフェート(10)はそれぞれ80mg/mL及び50mg/mLの可溶性(又はそれぞれ遊離塩基の59mg/mL及び35mg/mLと等価)を有する。デシタビンタルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-(+)-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、デシタビンプロピオネート(18)(それぞれ図9−16及び26−33)のDSC及びTGAプロットから、これら粗塩混合物はもっぱらデシタビンを含んでいることが分かる。したがって、表2に示したこれら粗塩混合物の可溶性の測定は、純粋な1:1モル等価塩を表しているわけではない可能性がある。それにもかかわらず、表4に示すように、これら粗塩混合物の可溶性は、わずかしか良好でないとしても、少なくともデシタビンと同じ程度に良好である。
上記で述べたように、アザシチジンメシレート(19)(138℃)について表3に示したように検出された融(分解)点は、アザシチジン遊離塩基(2)(230℃)のそれと異なっている。この値は、図17に示すようにDSCプロット(周囲温度から250℃、10℃/分)によって確認された。図17に示すように、アザシチジンメシレート(19)は、70℃、95℃及び118℃辺りで主要な熱現象を経る。70−130℃近くで開始するこれらの吸熱現象は、溶融(前記は放熱現象を伴う)と一致する。この態様は、アザシチジンメシレートは分解とともに溶融し得ることを示している。
更にまた、図34に示すように、アザシチジンメシレートのTGAプロット、一連の主要な分解事象は70℃辺りから250℃で生じる。150℃の前の分解事象は10%未満の質量低下となり、一方、250℃までの連続的な分解はほぼ50%の質量低下となる。
【0057】
4.デシタビン及びアザシチジン塩のX線回折及び赤外スペクトル
フィンガープリントXRDもまた、本発明のある種の実施態様について得られた。図35−51は、それぞれデシタビンヒドロクロリド(3)、デシタビンメシレート(4)、デシタビンEDTA(5)、デシタビンL-アスパルテート(6)、デシタビンマレエート(7)、デシタビンL-グルタメート(8)、デシタビンスルファイト(9)、デシタビンホスフェート(10)、デシタビンタルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-(+)-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、デシタビンプロピオネート(18)及びアザシチジンメシレート(19)のXRDパターンを示す。
IRスペクトルもまた本発明のある種の実施態様について得られた。図52−68は、それぞれデシタビンヒドロクロリド(3)、デシタビンメシレート(4)、デシタビンEDTA(5)、デシタビンL-アスパルテート(6)、デシタビンマレエート(7)、デシタビンL-グルタメート(8)、デシタビンスルファイト(9)、デシタビンホスフェート(10)、デシタビンタルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-(+)-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、デシタビンプロピオネート(18)及びアザシチジンメシレート(19)のIR吸収スペクトルを示す。
デシタビンヒドロクロリド(3)(図52)及びデシタビンメシレート(4)(図53)のIRスペクトルから、デシタビンに存在する全ての官能基がデシタビンヒドロクロリド及びデシタビンメシレート塩で無傷であることは当業者には理解されよう。S=O(伸縮振動)の特徴的に強力な吸収は、デシタビンメシレート(4)については1169cm-1で出現し、前記はデシタビン遊離塩基では存在しない。
【0058】
5.解析データの要旨
表5は、デシタビンヒドロクロリド(3)、デシタビンメシレート(4)、デシタビンEDTA(5)、デシタビンL-アスパルテート(6)、デシタビンマレエート(7)、デシタビンL-グルタメート(8)、デシタビンスルファイト(9)、デシタビンホスフェート(10)、デシタビンタルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-(+)-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、デシタビンプロピオネート(18)及びアザシチジンメシレート(19)のDSC、TGA、XRD及びIRスペクトルを含む、本発明のデシタビン及びアザシチジンに関するある種の実施態様についての解析データの要旨を、対応する図(上記で考察)とともに提供する。比較のために、デシタビン遊離塩基(1)、デシタビン水和物(‘1)及びアザシチジン遊離塩基(2)のデータもまた提供される。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
6.デシタビンメシレートの貧血ヒヒへの経口投与
上記に記載したように、本発明は、化学的安定性、可溶性、及び生体利用性(特に経口投与について)が改善された新規なデシタビン塩を提供する。本実施例では、我々は、デシタビン塩(デシタビンメシレート)は、経口投与で生体が利用可能であり、鎌状赤血球貧血の動物モデルにおいてHbFの増加、並びにε-及びγ-グロビン遺伝子のDNAメチル化の低下に有効であることを示す(前記デシタビン塩は貧血のヒヒ(パピオ・アヌビス(Papio anubis))に経口投与された)。
胎児性ヘモグロビン(HbF)のレベルの増加は鎌状赤血球症の重篤度を軽減することが知られている。DNAメチルトランスフェラーゼを阻害する薬剤、5-アザ-2'-デオキシシチジン(デシタビン)の皮下及び静脈内投与は、ヒドロキシウレア耐性鎌状赤血球症患者及び実験的誘発貧血ヒヒでHbFレベルを増加させた。DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤5-アザシチジンの経口投与は、テトラヒドロウリジン(シチジンデアミナーゼ阻害剤)と併用されたときにのみ有効であることが判明した。マウスでは、経口投与されたデシタビンの9%のみが生体利用性を有する。
本実施例で、我々は、デシタビンメシレートは、皮下投与の有効用量よりも8−36倍高い用量で経口投与されたときに、HbFを増加させ、DNA脱メチル化を引き起こすことができることを示した。3匹のヒヒを10日間の急性瀉血によって貧血にし、薬剤治療過程の間ヘマトクリット20で維持した。最初の出血後でデシタビンメシレート投与前のHbFレベルは6.3−13.9%であった。各ヒヒは、10日間異なる経口投与用量のDACメシレート(18.7mg/kg/日、9.35mg/kg/日、4.1mg/kg/日)を与えられた。より高い用量を投与された2匹の動物のピークHbFは、低い用量のデシタビン(0.52mg/kg/日)の皮下注射後の動物で観察されるレベルに匹敵した。二スルファイトシークェンス分析によって、ε-及びγ-グロビン遺伝子のメチル化は、18.7mg/kg/日及び9.35mg/kg/日で処置された動物では50%を超える減少をもたらすことが示されたが、より低い用量(4.1mg/kg/日)で処置された動物では極めてわずかな変化しか観察されなかった。クロマチン免疫沈澱(ChIP)実験によって、瀉血動物ではβ-グロビンプロモーターに結合するアセチル化ヒストンH3及びH4のレベルは、γ-グロビンプロモーターに結合するものよりも5−6倍高いことが示された。より高用量の薬剤で処置された2匹の動物では、デシタビンメシレートに続いて、等しいレベルのアセチル化ヒストンH3及びH4がγ-及びβ-グロビンプロモーターに結合していた。これらの結果は下記の表6に要約される。したがってこれらの実験は、経口投与されたデシタビンメシレートは、貧血ヒヒで、HbFを増加させ、ε-及びγ-グロビン遺伝子のDNAメチル化を減少させ、γ-グロブリンプロモーターに結合するヒストンH3及びH4のアセチル化を増加させることを示した。
【0063】
表6:経口投与デシタビンメシレートのHbF及びDNAメチル化に対する効果
*デシタビンメシレート経口投与
本発明に対して、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく多くの変更及び改変を実施することが可能であり、更にそのような変更及び改変は本発明の範囲内に包含され得ることは当業者には明白であろう。
全ての刊行物、特許及び特許出願、並びにウェブサイトは参照によりその全体が、あたかも前記の刊行物、特許及び特許出願、並びにウェブサイトの各々を具体的にかつ個々に参照によりその全体を本明細書に含むことを指示したかのごとくに本明細書に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】デシタビンヒドロクロリドのDSCプロットを示す。
【図2】デシタビンメシレートのDSCプロットを示す。
【図3】デシタビンEDTAのDSCプロットを示す。
【図4】デシタビンL-アスパルテートのDSCプロットを示す。
【図5】デシタビンマレエートのDSCプロットを示す。
【図6】デシタビンL-グルタメートのDSCプロットを示す。
【図7】デシタビンスルファイトのDSCプロットを示す。
【図8】デシタビンホスフェートのDSCプロットを示す。
【図9】デシタビンタルトレートのDSCプロットを示す。
【図10】デシタビンシトレートのDSCプロットを示す。
【図11】デシタビンL-(+)-ラクテートのDSCプロットを示す。
【図12】デシタビンスクシネートのDSCプロットを示す。
【図13】デシタビンアセテートのDSCプロットを示す。
【図14】デシタビンヘキサノエートのDSCプロットを示す。
【図15】デシタビンブチレートのDSCプロットを示す。
【図16】デシタビンプロピオネートのDSCプロットを示す。
【図17】アザシチジンメシレートのDSCプロットを示す。
【図18】デシタビンヒドロクロリドのTGAプロットを示す。
【図19】デシタビンメシレートのTGAプロットを示す。
【図20】デシタビンEDTAのTGAプロットを示す。
【図21】デシタビンL-アスパルテートのTGAプロットを示す。
【図22】デシタビンマレエートのTGAプロットを示す。
【図23】デシタビンL-グルタメートのTGAプロットを示す。
【図24】デシタビンスルファイトのTGAプロットを示す。
【図25】デシタビンホスフェートのTGAプロットを示す。
【図26】デシタビンタルトレートのTGAプロットを示す。
【図27】デシタビンシトレートのTGAプロットを示す。
【図28】デシタビンL-(+)-ラクテートのTGAプロットを示す。
【図29】デシタビンスクシネートのTGAプロットを示す。
【図30】デシタビンアセテートのTGAプロットを示す。
【図31】デシタビンヘキサノエートのTGAプロットを示す。
【図32】デシタビンブチレートのTGAプロットを示す。
【図33】デシタビンプロピオネートのTGAプロットを示す。
【図34】アザシチジンメシレートのTGAプロットを示す。
【図35】デシタビンヒドロクロリドのXRDパターンを示す。
【図36】デシタビンメシレートのXRDパターンを示す。
【図37】デシタビンEDTAのXRDパターンを示す。
【図38】デシタビンL-アスパルテートのXRDパターンを示す。
【図39】デシタビンマレエートのXRDパターンを示す。
【図40】デシタビンL-グルタメートのXRDパターンを示す。
【図41】デシタビンスルファイトのXRDパターンを示す。
【図42】デシタビンホスフェートのXRDパターンを示す。
【図43】デシタビンタルトレートのXRDパターンを示す。
【図44】デシタビンシトレートのXRDパターンを示す。
【図45】デシタビンL-(+)-ラクテートのXRDパターンを示す。
【図46】デシタビンスクシネートのXRDパターンを示す。
【図47】デシタビンアセテートのXRDパターンを示す。
【図48】デシタビンヘキサノエートのXRDパターンを示す。
【図49】デシタビンブチレートのXRDパターンを示す。
【図50】デシタビンプロピオネートのXRDパターンを示す。
【図51】アザシチジンメシレートのXRDパターンを示す。
【図52】デシタビンヒドロクロリドのIR吸収スペクトルを示す。
【図53】デシタビンメシレートのIR吸収スペクトルを示す。
【図54】デシタビンEDTAのIR吸収スペクトルを示す。
【図55】デシタビンL-アスパルテートのIR吸収スペクトルを示す。
【図56】デシタビンマレエートのIR吸収スペクトルを示す。
【図57】デシタビンL-グルタメートのIR吸収スペクトルを示す。
【図58】デシタビンスルファイトのIR吸収スペクトルを示す。
【図59】デシタビンホスフェートのIR吸収スペクトルを示す。
【図60】デシタビンタルトレートのIR吸収スペクトルを示す。
【図61】デシタビンシトレートのIR吸収スペクトルを示す。
【図62】デシタビンL-(+)-ラクテートのIR吸収スペクトルを示す。
【図63】デシタビンスクシネートのIR吸収スペクトルを示す。
【図64】デシタビンアセテートのIR吸収スペクトルを示す。
【図65】デシタビンヘキサノエートのIR吸収スペクトルを示す。
【図66】デシタビンブチレートのIR吸収スペクトルを示す。
【図67】デシタビンプロピオネートのIR吸収スペクトルを示す。
【図68】アザシチジンメシレートのIR吸収スペクトルを示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
背景技術
いくつかのアザシトシンヌクレオシド、例えば5-アザ-2'-デオキシシチジン(デシタビンとも称される)及び5-アザシチジン(アザシチジンとも称される)が、その関連する天然のヌクレオシド、それぞれ2'-デオキシシチジン及びシチジンのアンタゴニストとして開発されてきた。アザシトシンとシトシンとの間の唯一の構造的相違は、アザシトシンのシトシン環の5位に窒素が存在し、それに対してシトシンのこの位置には炭素が存在することである。
デシタビンの2つの異性形を区別することができる。β-アノマーが活性形である。水溶液中でのデシタビンの分解の態様は、(a)活性なβ-アノマーの不活性なα-アノマーへの変換(Pompon et al. (1987) J. Chromat. 388:113-122);(b)アザ-ピリミジン環の開環によるN-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2'-デオキシ-(リボフラノシル)-ウレアの生成(Mojaverian and Repta (1984) J. Pharm. Pharmacol. 36:728-733);及び(c)その後のグアニジン化合物の生成(Kissinger and Stemm (1986) J. Chromat. 353:309-318)である。
デシタビンは多数の薬理学的特徴を有する。分子レベルでは、前記はDNA取り込みについてS期依存性である。細胞レベルでは、デシタビンは細胞分化を誘発し、血液学的毒性を示す。in vivoでは短い半減期を有するにもかかわらず、デシタビンは優れた組織分布を示す。
デシタビンの機能の1つは、特異的に及び強力にDNAのメチル化を阻害するその能力である。シトシンの5-メチルシトシンへのメチル化はDNAのレベルで生じる。細胞内部では、デシタビンは先ず初めにその活性形、リン酸化された5-アザ-デオキシシチジンにデオキシシチジンキナーゼによって変換される(前記キナーゼは主として細胞周期のS期に合成される)。デオキシシチジンキナーゼの触媒部位に対するデシタビンの親和性は天然の基質、デオキシシチジンに類似する(Momparler et al. (1985) 30:287-299)。デオキシシチジンキナーゼによるその三リン酸形への変換後、デシタビンは、天然の基質、dCTPの速度に類似する速度で複製中のDNAに取り込まれる(Bouchard and Momparler (1983) Mol. Pharmacol. 24:109-114)。
【0002】
DNA鎖へのデシタビンの取り込みは低メチル化効果をもつ。各クラスの分化細胞はそれ自身の明確なメチル化パターンを有する。染色体の複製後、このメチル化パターンを保存するために、親の鎖上の5-メチルシトシンは、相補的な娘DNA鎖上でメチル化を誘導するために機能する。シトシンの5位の炭素を窒素に置換することはDNAメチル化のこの正常なプロセスを妨害する。メチル化の固有の部位で5-メチルシトシンをデシタビンに置き換えることは、(おそらくは前記酵素とデシタビンとの間の共有結合の形成のために)DNAメチルトランスフェラーゼの不可逆的な不活化をもたらす(Juttermann et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11797-11801)。DNAメチルトランスフェラーゼ(メチル化に必要な酵素)を特異的に阻害することによって、腫瘍サプレッサー遺伝子の異常なメチル化を防ぐことができよう。
デシタビンは、無菌的な注射用凍結乾燥粉末として、緩衝塩(例えばリン酸二水素カリウム)、pH調節物質(例えば水酸化ナトリウム)とともに一般的に供給される。例えば、デシタビンは、スーパーゲン社(SuperGen, Inc.,)によって、20mLのガラスのバイアルに充填された凍結乾燥粉末として供給される。前記バイアルは50mgのデシタビン、一塩基性リン酸二水素カリウム及び水酸化ナトリウムを含む。10mLの注射用滅菌水で再構成されたとき、1mLは、5mgのデシタビン、6.8mgのKH2PO4及びほぼ1.1mgのNaOHを含む。生じた溶液のpHは6.5−7.5である。この再構成された溶液は、更に冷却輸液液(すなわち0.9%塩化ナトリウム;又は0.5%デキストロース;又は5%グルコース;又は乳酸リンゲル液)に1.0又は0.1mg/mLの濃度に希釈することができる。未開封バイアルは典型的には冷蔵(2−8℃;36−46゜F)下で、本来のパッケージ中で保存される。
デシタビンは、もっとも典型的には注射によって、例えば静脈内ボーラス、持続的静脈内輸液、又は静脈内輸液によって患者に投与される。デシタビンと同様に、アザシチジンもまた水溶液として処方され、患者の静脈内にデリバーされる。アザシチジンの臨床試験によれば、より長時間又は持続的輸液が短時間輸液よりも有効であった(Santini et al. (2001) Ann. Int. Med. 134:573-588)。しかしながら、静脈内輸液の時間は、デシタビン又はアザシチジンの分解及び水溶液中での前記薬剤の低溶解性によって制限される。本発明は、そのような問題に対して刷新的な溶液を提供する。
【0003】
発明の開示
発明の要旨
本発明にしたがえばシチジン類似体の塩が提供される。
ある実施態様では、前記シチジン類似体は5-アザ-2'-デオキシシチジン又は5-アザシチジンである。
また別の実施態様では、シチジン類似体の塩は、酸、場合によって約5以下のpKaを有する酸、場合によって約4以下のpKaを有する酸、場合によって約3から約0の範囲のpKaを有する酸、又は場合によって約3から約-10の範囲のpKaを有する酸を用いて合成される。
好ましくは、前記酸は以下から成る群から選択される:塩酸、L-乳酸、酢酸、リン酸、(+)-L-酒石酸、クエン酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、コハク酸、EDTA、マレイン酸、メタンスルホン酸、HBr、HF、HI、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、亜リン酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、カルボン酸、スルホン酸、アスコルビン酸、炭酸、及びフマル酸。特にスルホン酸は、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸及びトルエンスルホン酸から成る群から選択される。
更に別の実施態様では、デシタビンの塩が提供される。前記デシタビンの塩は、好ましくは、塩酸塩、メシレート、EDTA、亜硫酸塩、L-アスパラギン酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、L-グルタミン酸塩、(+)-L-酒石酸塩、クエン酸塩、L-乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、ヘキサン酸塩、酪酸塩、又はプロピオン酸塩から成る群から選択される。
前記実施態様のある変型では、前記デシタビンの塩は、14.79゜、23.63゜及び29.81゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の塩酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき125−155℃、場合によって130−144℃での溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様のまた別の変型では、前記デシタビンの塩は、8.52゜、22.09゜及び25.93゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターン特徴とする結晶形のメシレート塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき125−140℃、又は場合によって125−134℃での溶融吸熱を特徴とする。
【0004】
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、7.14゜、22.18゜及び24.63゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のEDTA塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−90℃、165−170℃及び170−200℃、又は場合によって73℃、169℃及び197℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、15.73゜、19.23゜及び22.67゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の亜硫酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき100−140℃での溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、21.61゜、22.71゜及び23.24゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のL-アスパラギン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−100℃、170−195℃及び195−250℃、又は場合によって86℃、187℃及び239℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、20.81゜、27.38゜及び28.23゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のマレイン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき95−130℃及び160−180℃、又は場合によって119℃及び169℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、17.09゜、21.99゜及び23.21゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のリン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき130−145℃での溶融吸熱を特徴とする。
【0005】
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.33゜、21.39゜及び30.99゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のL-グルタミン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−100℃、175−195℃及び195−220℃、又は場合によって84℃、183℃及び207℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、7.12゜、13.30゜及び14.22゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の(+)-L-酒石酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき60−110℃及び185−220℃、場合によって91℃及び203℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.31゜、14.23゜及び23.26゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のクエン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−100℃及び160−220℃、又は場合によって84℃及び201℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.27゜、21.13゜及び23.72゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のL-乳酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−100℃及び160−210℃、又は場合によって84℃及び198℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.30゜、22.59゜及び23.28゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のコハク酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−100℃及び190−210℃、又は場合によって79℃及び203℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
【0006】
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、7.14゜、14.26゜及び31.25゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の酢酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき60−90℃及び185−210℃、又は場合によって93℃及び204℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.27゜、22.54゜及び23.25゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のヘキサン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき60−90℃及び190−210℃、又は場合によって93℃及び204℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.28゜、22.57゜及び23.27゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の酪酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき40−90℃及び190−210℃、又は場合によって89℃及び203℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
前記実施態様の更に別の変型では、前記デシタビンの塩は、13.29゜、22.52゜及び23.27゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のプロピオン酸塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−110℃及び190−210℃、又は場合によって94℃及び204℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
【0007】
更に別の実施態様では、前記アザシチジンの塩が提供される。前記アザシチジンの塩は、塩酸塩、メシレート塩、EDTA塩、亜硫酸塩、L-アスパラギン酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、L-グルタミン酸塩、(+)-L-酒石酸塩、クエン酸塩、L-乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、ヘキサン酸塩、酪酸塩、又はプロピオン酸塩である。
前記実施態様にしたがえば、前記アザシチジンの塩は、18.58゜、23.03゜及び27.97゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のメシレート塩である。前記塩は更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−80℃、80−110℃及び110−140℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする。
更にまた本発明にしたがえば、望ましくない細胞分裂を伴う疾患を対象者で治療する方法が提供される。前記方法は、その必要がある対象者に医薬的に有効な量のシチジン類似体の塩を投与することを含む。前記疾患は、良性腫瘍、癌、血液学的異常、アテローム性硬化症、外科手術による体組織の傷害、異常な創傷治癒、異常な血管形成、組織の線維症を生じる疾患、反復性運動異常、高度に血管が形成されない組織の異常、器官移植に伴う増殖性応答であり得る。特に前記疾患は、骨髄形成異常症候群、非小細胞肺癌、又は鎌状赤血球貧血である。
本発明の塩は種々の態様で処方され、シチジン類似体による治療に感受性を有する疾患に罹患している患者に、種々の投与経路(例えば静脈内、筋肉内、皮下注射、経口投与及び吸入)によりデリバーすることができる。
本発明はまた、シチジン類似体の塩を合成、処方及び製造する方法を提供する。
【0008】
詳細な説明
本発明はシチジン類似体(例えばデシタビン及びアザシチジン)の塩を提供し、前記は、種々の疾患及び症状(例えば骨髄形成異常症候群(MDS)、非小細胞肺(NSCL)癌、及び鎌状赤血球貧血)の治療用医薬として用いることができる。この刷新的なアプローチを用いて、これまでこのタイプの薬剤の産業的開発に悪影響を及ぼしてきた3つの主要なハードル、すなわち水性環境における加水分解、もっとも医薬的に許容され得る溶媒での低溶解性、及び経口による貧弱な生体利用性が克服される。
本発明にしたがえば、シチジン類似体の固体状態及び溶液特性は塩の形成によって改変される。本発明者らは、塩の形成は可溶性の改善及びこのタイプの薬剤(例えばデシタビン及びアザシチジン)の安定性の改善をもたらすことができると考えている。水溶性の強化もまた薬剤そのものの毒性を潜在的に低下させることができる。それらのより容易な腎からの排除のおかげで、それらは蓄積されにくくなり、更に一期及び二期代謝に要求される肝のミクロゾームの過剰負荷を軽減するであろう。更にまた、安定性の強化は前記薬剤のより大胆な製造を可能にし、種々の処方物の開発を容易にする。
本発明の塩は種々の態様で処方することができ、シチジン類似体による治療に感受性を有する疾患(例えば血液学的異常、良性腫瘍、悪性腫瘍、再狭窄及び炎症性疾患)を罹患する患者に種々の投与経路(例えば静脈内、筋肉内、皮下注射、経口投与及び吸入)によりデリバーすることができる。
本発明はまた、シチジン類似体の塩を合成、処方及び製造する方法、並びに種々の疾患及び症状を治療するために前記の塩を用いる方法を提供する。
以下は、本発明の詳細な説明、並びに本発明の塩、組成物、使用、合成、処方及び製造方法の好ましい実施態様である。
1.シチジン類似体及び誘導体の塩
本発明のある特徴は、シチジン類似体又は誘導体の塩の形態、好ましくは5-アザ-2'-デオキシシチジン(デシタビン1)又は5-アザシチジン(アザシチジン2)の塩であり、その化学構造は下記に記載される:
【0009】
【化1】
【0010】
いくつかの実施態様では、酸から塩基性薬剤への十分な陽子の移転を担保にするために、新規に形成された共役酸及び共役塩基は最初の酸及び塩基性薬剤よりも弱くなければならない。一般的には前記薬剤のpKaよりも少なくとも約2ユニット弱い。2つのpKa値、7.61+0.03及び3.58+0.06がデシタビンについて見出された。好ましい実施態様では、約5より低いpKa、又は場合によって3から-10のpKaをもつ酸を用いて、デシタビンの塩が、アザシチジン並びに他のシチジン類似体及び誘導体の塩と同様に合成される。適切な酸の例は表1aに列挙されている。
表1a:デシタビン、アザシチジン並びに他のシチジン類似体及び誘導体の合成に用いることができる酸の例
【0011】
【0012】
好ましい実施態様では、デシタビン及びアザシチジン塩は強酸(pKa<0)で形成される。他の好ましい実施態様では、デシタビン塩は中性付近のpHの溶液中でデシタビン遊離塩基よりも改善された安定性を示す。“中性付近のpH”とは約7±1、±2又は±3のpHを意味する。
好ましい実施態様では、いくつかのシチジン類似体の塩、例えばデシタビン塩は、水溶液中でN-5のイミン窒素から6-炭素にわたって何らかのタイプの保護イオン複合体を示すことができる。理論に拘束されないが、そのようなイオン複合体は、周囲の水分子からの求核攻撃に対して防御になるのかもしれない。下記の図は、保護イオン複合体(1a、1b)の生成を示し(例えば本発明のデシタビン塩のいくつかの好ましい実施態様で形成されると推測される)、式中、Xは共役塩基、例えばクロリド、メシレート又はホスフェートである。
【0013】
【化2】
【0014】
図示されているように、一時的なイオン付加物はデシタビンの5位及び6位にわたって形成され、おそらく溶液中での加水分解的切断に対する防御として役立つ。
本発明のある実施態様は酸で合成されるデシタビンの塩である。いくつかの実施態様は以下の酸で合成される塩を含む:HCl、L-乳酸、酢酸、リン酸、(+)-L-酒石酸、クエン酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、コハク酸、EDTA、マレイン酸及びメタンスルホン酸。他の実施態様には他の一般的な酸のデシタビン塩が含まれる。適切な無機酸の例には、HBr、HF、HI、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、亜リン酸、過塩素酸、塩素酸及び亜塩素酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切なカルボン酸の例には、アスコルビン酸、炭酸及びフマル酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切なスルホン酸の例には、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸及びトルエンスルホン酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
好ましくは、酸対デシタビンのモル比は約0.01対約10モル等価物である。好ましい実施態様は強酸(pKa<0)のデシタビン塩を含む。より好ましい実施態様は、デシタビンヒドロクロリド(3)及びデシタビンメシレート(4)を含み、下記に図示されている(前記は例えば元素分析から決定されるように1:1のモル等価物で生成することができる)。
【0015】
【化3】
【0016】
いくつかの好ましい実施態様は中等度の酸(0<pKa<3)のデシタビン塩を含む。中等度の酸で形成される好ましい塩にはデシタビンEDTA(5)、L-アスパルテート(6)、マレエート(7)、及びL-グルタメート(8)が含まれ、これらは下記に示される:
【0017】
【化4】
【0018】
中等度の酸(0<pKa<3)で生成される更に好ましい他の塩にはデシタビンスルファイト(9)又はホスフェート(10)が含まれ、これらは下記に示される:
【0019】
【化5】
【0020】
いくつかの実施態様は弱酸(3<pKa<5)のデシタビン塩を含む。弱酸で生成される塩の例にはデシタビン(+)-L-タルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、及びデシタビンプロピオネート(18)が含まれ、これらの各々は下記に示される:
【0021】
【化6】
【0022】
本発明の第二の特徴はアザシチジンの塩の形態である。ある実施態様はメタンスルホン酸のアザシチジンの塩、例えばアザシチジンメシレート(19)で、下記に示されている:
【0023】
【化7】
【0024】
他の実施態様には無機又は有機酸のアザシチジン塩が含まれる。適切な無機酸の例には、HCl、HBr、HF、HI、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、過塩素酸、塩素酸及び亜塩素酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切なカルボン酸の例には、酢酸、アスコルビン酸、酪酸、炭酸、クエン酸、EDTA、フマル酸、ヘキサン酸、L-乳酸、マレイン酸、プロピオン酸、コハク酸および(+)-L-酒石酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。アザシチジン塩を生成するための他の適切な酸には硫酸及びアミノ酸が含まれる。適切なスルホン酸の例には、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸及びトルエンスルホン酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切なアミノ酸の例にはL-アスパラギン酸及びL-グルタミン酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本発明はまたシチジン類似体の単離された塩を包含する。シチジン類似体の単離された塩とは、混合物中に少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは50%、又はもっとも好ましくは80%のシチジン類似体の塩が存在するシチジン類似体塩を指す。
2.本発明の医薬処方物
本発明にしたがえば、シトシン類似体の塩は、種々の疾患及び症状を治療するために医薬的に許容できる組成物に処方することができる。
本発明の医薬的に許容できる組成物は、本発明の1つ又は2つ以上の塩を、1つ又は2つ以上の非毒性の医薬的に許容できる担体及び/又は希釈剤及び/又は補助剤及び/又は賦形剤(本明細書では包括的に“担体”物質と称される)、並びに所望する場合は他の活性な成分と一緒に含む。
本発明の塩は、下記に記載されるように任意の経路によって(好ましくはそのような経路に適応させた医薬組成物の形態で)、更に治療される症状にしたがって投与される。前記化合物及び組成物は、例えば経口的に、非経口的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻内に、リポソームにより、吸入により、膣内に、眼内に、局部デリバリー(例えばカテーテル又はステントによって)により、皮下に、脂肪内に、関節内に、又は脊髄内に投与することができる。
前記医薬処方物は、場合によって、前記組成物の安定性の強化、生成物の溶液中での維持、又は本処方物の投与に付随する副作用(例えば潜在的潰瘍形成、血管刺激又は溢血)の予防のために十分な量で添加される賦形剤を含むことができる。賦形剤の例には、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、デキストロクス、シクロデキストリン(例えばα-、β-及びγ-シクロデキストリン)及び改変非晶質シクロデキストリン(例えばヒドロキシプロピル-、ヒドロキシエチル-、グルコシル-、マルトシル-、マルトトリシル-、カルボキシアミドメチル-、カルボキシメチル-、スルホブチルエーテル-、及びジエチルアミノ-置換α-、β-及びγ-シクロデキストリン)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。シクロデキストリン、例えばエンキャプシン(Encapsin(商標);Janssen Pharmaceuticals)又は等価物をこの目的に用いることができる。
【0025】
経口投与のためには、医薬組成物は、例えば錠剤、カプセル、懸濁物又は液体の形態であることができる。前記医薬組成物は、好ましくは治療的に有効量の活性成分を含む服用ユニットの形態で製造することができる。そのような服用ユニットの例は錠剤及びカプセルである。治療目的のためには、前記錠剤及びカプセルは活性成分の他に通常の担体、例えば以下を含むことができる:結合剤、例えばアラビアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ソルビトール又はトラガカントゴム;充填剤、例えばリン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、トウモロコシデンプン、ソルビトール又はシュクロース;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ又はタルク;崩壊剤、例えばジャガイモデンプン;香料若しくは着色剤;又は許容可能な湿潤剤。経口用液体調製物は、一般的には水性若しくは油性溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、又はエリキシルの形態であり、通常の添加物(例えば懸濁剤、乳化剤、非水性物質、保存料、着色剤及び香料)を含むことができる。液体調製物のための添加物の例にはアラビアゴム、アーモンド油、エチルアルコール、分別化ココナッツ油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、水素添加食用脂肪、レシチン、メチルセルロース、メチル若しくはプロピルパラ-ヒドロキシベンゾエート、プロピレングリコール、ソルビトール又はソルビン酸が含まれる。
局所使用のためには、本発明の塩はまた、皮膚又は鼻及び喉の粘膜に適用するために適切な形態で調製することができ、前記はクリーム、軟膏、液状スプレー又は吸入剤、ロゼンジ又は喉の塗布薬の形態をとり得る。そのような局所処方物は更に化合物、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)を含み活性成分の表面の浸透を促進することができる。
眼又は耳への適用のためには、本発明の塩は液体又は半液体形で提供することができ、前記は、軟膏、クリーム、ローション、ペイント又はパウダーとして疎水性又は親水性基剤中で処方される。
直腸投与のためには、本発明の塩は、通常の担体(例えばカカオ脂、ロウ、又は他のグリセリド)と混合した座薬の形態で投与することができる。
【0026】
また別には、本発明の塩は、デリバリー時に、適切な医薬的に許容できる適切な担体中で再構成される粉末の形態であってもよい。
前記医薬組成物は注射により投与することができる。非経口投与のための処方物は水性又は非水性の等張な無菌的注射溶液又は懸濁液の形態であり得る。これらの溶液又は懸濁液は、経口投与のための処方物での使用について述べた1つ又は2つ以上の担体を含む無菌的粉末又は顆粒から調製することができる。塩は、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム及び種々の緩衝液に溶解することができる。
ある実施態様では、本発明の塩は、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はその組み合わせを含む非水性溶媒中で溶媒化された化合物を含む医薬的に許容できる組成物に処方することができる。本化合物デシタビンはそのような医薬処方物で安定であり、前記処方物は使用前に長期にわたって保存できるであろうと考えられる。
上記で考察したように、デシタビンによる従来の臨床的処置では、薬剤の分解を最小限にするために、デシタビンは凍結乾燥粉末として供給され、投与前に、少なくとも40容積%の溶媒(例えばWFI)中の水を含む冷水溶液で再構成され、更に冷却輸液液で希釈される。そのような処方物及び治療計画はいくつかの欠点を有する。第一に、冷却溶液中のデシタビンの冷蔵が必須となり、前記は操作を煩雑にし、高温での保存に堪え得る処方物よりも経済的に望ましくない。第二に水溶液中でのデシタビンの急速な分解のために、再構成したデシタビン溶液は、もしデシタビン溶液が7時間未満冷蔵庫で保存されていた場合、最大で3時間しか患者に輸液できない。更にまた、冷却液の輸液は強い不快及び苦痛を患者にもたらし、そのような治療計画に対する患者の抵抗を引き起こし得る。
【0027】
シチジン類似体の固体状態及び溶液特性を改変することによって、本発明の塩を含む医薬組成物は、従来のデシタビン及びアザシチジンによる臨床的処置に付随する、上記に列挙した問題を回避することができる。本発明の塩は、少なくとも40容積%の溶媒、場合によって少なくとも80%、又は場合によって少なくとも90容積%の溶媒中の水を含む水性溶液で処方することができる。本発明の塩のこれらの処方物は、水溶液中で処方されたデシタビン又はアザシチジンの遊離塩基型よりも化学的により安定である。
また別には、本発明の塩は、溶媒中に40%未満の水、場合によって溶媒中に20%未満の水、場合によって溶媒中に10%未満の水、又は場合によって溶媒中に1%未満の水を含む溶液中で処方することができる。ある変型では、前記医薬処方物は実質的に無水形で保存される。場合によって、水を吸収させるために乾燥剤を前記医薬処方物に添加してもよい。
強化された安定性のおかげで、本発明の処方物は周囲温度で保存及び輸送することができ、それによって薬剤操作コストが顕著に削減される。更にまた、本発明の処方物は、患者に投与する前に長期にわたって都合よく保存することができる。更にまた、本発明の処方物は、通常の輸液液(冷却する必要がない)で希釈し、室温で患者に投与することができる、それによって冷却液の輸液に付随する患者の不快を回避することができる。
また別の実施態様では、本発明の塩は種々の濃度で溶解される。例えば、前記処方物は場合によって0.1から200mg、1から100mg、1から50mg、2から50mg、2から100mg、5から100mg、10から100mg、又は20から100mgの本発明の塩を溶液1mL当たりに含むことができる。単位溶液当たりの本発明の塩の具体的な例には2、5、10、20、22、25、30、40及び50mg/mLが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0028】
更にまた別の実施態様では、本発明の塩は、グリセリン及び種々の濃度のプロピレングリコールを混合した溶媒中で溶解される。溶媒中のプロピレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−80%又は50−70%である。
更に別の実施態様では、本発明の塩は、グリセリン及びポリエチレングリコール(PEG)(例えばPEG300、PEG400及びPEG1000)を混合した溶媒中に種々の濃度で溶解される。溶媒中のポリエチレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−80%又は50−70%である。
更にまた別の実施態様では、本発明の塩は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びグリセリンを混合した溶媒中に種々の濃度で溶解される。溶媒中のプロピレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−60%又は20−40%であり、更に溶媒中のポリエチレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−80%又は50−70%である。
プロピレングリコールの添加は更に化学的安定性を改善し、処方物の粘度を低下させ、本発明の塩の溶媒への溶解を促進すると考えられる。
前記医薬組成物は更に、前記処方物のpHが約4から8になるような割合で処方物に添加される酸性化剤を含むことができる。前記酸性化剤は有機酸でもよい。有機酸の例には、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、ギ酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、マレイン酸、グルタミン酸、コハク酸、アスパラギン酸、ジアトリゾイック酸(diatrizoic acid)、及び酢酸が含まれるが、ただしこれらに限定されない。前記酸性化剤はまた、無機酸(例えば塩酸、硫酸、リン酸、及び硝酸)でもよい。
【0029】
酸化剤を処方物に添加して相対的に中性pH(例えば4−8内)に維持することは、本発明の化合物の溶媒中への容易な溶解を促進し、前記処方物の長期安定性を強化すると考えられる。アルカリ溶液では、N-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2-デオキシリボフラノシルウレアへのデシタビンの急速な可逆的分解が生じ、前記物質は不可逆的に分解して1-β-D-2'-デオキシリボフラノシル-3-グアニルウレアを生成する。前記加水分解の第一段階は、N-アミジニウム-N'-(2-デオキシ-β-D-エリスロペントフラノシル)ウレアホルメート(AUF)を含む。上昇温度での第二期の分解はグアニジンの生成を含む。酸性溶液では、N-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2-デオキシリボフラノシルウレア及びいくつかの未同定化合物が生成される。強酸(pH<2.2)溶液では、5-アザシトシンが生成される。したがって、比較的中性のpHを維持することは本発明の塩を含む処方物のために有利であろう。
ある変型では、酸化剤は溶媒1mLにつき0.01−0.2mg、場合によって0.04−0.1mg又は0.03−0.07mgの濃度のアスコルビン酸である。
本医薬処方物のpHは、pH4からpH8、好ましくはpH5からpH7、より好ましくはpH5.5からpH6.8に調節することができる。
前記医薬処方物は、好ましくは、25℃で7、14、21、28又はそれより長い日数の間少なくとも80%、90%、95%又は前記を超えて安定である。前記医薬処方物はまた、好ましくは、40℃で7、14、21、28又はそれより長い日数の間少なくとも80%、90%、95%又は前記を超えて安定である。
【0030】
ある実施態様では、本発明の医薬処方物は、グリセリンを提供し前記グリセリンに本発明の化合物を溶解させることによって調製される。前記は、例えば本発明の塩を前記グリセリンに添加するか、又は本発明の塩にグリセリンを添加することによって実施することができる。それらを混合することによって本発明の医薬処方物が生成される。
場合によって、前記方法は更に、本発明の塩がグリセリンによって溶媒化される速度を高める追加の工程を含む。実施することができる追加の工程の例には、攪拌、加熱、溶媒化時間の延長、及び微細化した本発明の化合物の適用、並びに前記の組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
ある変型では、攪拌が適用される。攪拌の例には、機械的攪拌、超音波処理、通常の混合、通常の攪拌、及び前記の組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。例えば、処方物の機械的攪拌は、シルバーソンマシーン社(Silverson Machines Inc., East Longmeadow, MA)が製造したシルバーソン・ホモジナイザーを用い製造元のプロトコルにしたがって実施することができる。
また別の変型では、熱を用いることができる。場合によって、処方物を水浴中で加熱することができる。好ましくは、加熱処方物の温度は70℃未満、好ましくは25℃から40℃であろう。例示すれば、処方物は37℃に加熱される。
更に別の変型では、本発明の塩は長時間にわたってグリセリンで溶媒化される。
更に別の変型では、本発明の塩の微細化形がまた用いられ、溶媒化カイネティクスが高められる。場合によって、微細化はミリングプロセスによって実施することができる。例示すれば、微細化は、ミクロン・テクノロジー社(Micron Technology Inc; Boise, ID)、インクフリュード・エネルギー・アルジェット社(IncFluid Energy Aljet Inc; Boise, IDTelford, PA)によって製造された、マルバーン・マスターサイザー・エアージェットミルによって実施されるジェットミリングプロセスによって製造元のプロトコルにしたがって実施することができる。
【0031】
場合によって、本方法は更に、前記医薬処方物のpHを一般的に用いられる方法によって調節することを含む。ある変型では、pHは、酸(例えばアスコルビン酸)又は塩基(例えば水酸化ナトリウム)の添加によって調節される。別の変型では、pHは緩衝溶液、例えば(エチレンジニトリロ)四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)の溶液の添加によって調節され、安定化される。デシタビン及びアザシチジンはpH感受性であることが判明しているので、前記医薬処方物のpHを約7に調節することによって治療用成分の安定性を高めることができる。
場合によって、前記方法は更に、本発明の未溶解塩を医薬処方物から分離することを含む。分離は任意の適切な技術によって実施することができる。例えば、適切な分離方法には、前記医薬処方物のろ過、沈降及び遠心のうち1つ又は2つ以上が含まれよう。本発明の化合物の未溶解粒子によるクロッギングは、前記医薬処方物の投与の障害となり、患者にとっては潜在的な危険となり得る。未溶解の本発明の化合物を医薬処方物から分離することによって、本治療用生成物の投与を促進し、その安全性を高めることができる。
場合によって、前記方法は更に医薬処方物の滅菌を含むことができる。滅菌は任意の適切な技術によって実施することができる。例えば、適切な滅菌方法には、1つ又は2つ以上の無菌的ろ過、化学物質、放射線照射、加熱ろ過及び医薬処方物への殺菌物質の添加が含まれ得る。
場合によって、前記方法は更に、乾燥剤、緩衝剤、抗酸化剤、安定化剤、抗菌剤及び医薬的に不活性な薬剤から成る群から選択される1つ又は2つ以上のメンバーを添加することができる。ある変型では、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、アスコルビン酸塩及びその混合物)を添加することができる。また別の変型では、グリコールのような安定化剤を添加することができる。
【0032】
3.本発明の塩又はその処方物を含む容器又はキット
本発明で開示した本発明の塩及びそれらの処方物は、無菌的容器、例えば種々のサイズ及び容量の注入ビン、ガラスバイアル又はアンプルに収納することができる。前記無菌的容器は、場合によって粉末又は結晶形態の固体塩、又は前記の溶液処方物(1−50mL、1−25mL、1−20mL又は1−10mLの容積)を含むことができる。無菌的容器は前記医薬処方物の無菌性の維持を可能にし、輸送および保存を容易にし、従来の滅菌工程を必要とせずに医薬処方物の投与を可能にする。
本発明はまた、その必要がある宿主に本発明の化合物を投与するためのキットを提供する。ある実施態様では、前記キットは、固体(好ましくは粉末)の本発明の塩、及び希釈液(水、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はその組合せを含む)を含む。前記固体塩及び希釈液の混合は、好ましくは本発明の医薬処方物の生成をもたらす。例えば、前記キットは、固体形の本発明の塩を含む第一の容器、及び水を含む希釈液を含む容器コンテナーを含むことができ、この場合、本発明の固体化合物への希釈液の添加によって、本発明の塩を投与するための医薬処方物が生成される。本発明の固体塩及び希釈液の混合は、希釈液1mLにつき場合によって0.1から200mg、場合によって溶媒1mLにつき0.1から100mg、2mgから50mg、5mgから30mg、10mgから25mgの本発明の塩を含む医薬処方物を生じることができる。
ある実施態様では、前記希釈液はプロピレングリコール及びグリセリンの併用であり、この場合、溶媒中のプロピレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−60%又は20−40%である。
ある実施態様では、前記希釈液はポリエチレングリコール及びグリセリンの併用であり、この場合、溶媒中のポリエチレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−60%又は20−40%である。
更にまたある実施態様にしたがえば、前記希釈液はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びグリセリンの併用であり、この場合、溶媒中のプロピレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−60%又は20−40%であり、溶媒中のポリエチレングリコールの濃度は0.1−99.9%、場合によって1−90%、10−60%又は20−40%である。
【0033】
前記希釈液はまた、場合によって40%、20%、10%、5%、2%又は2%未満の水を含む。ある変型では、前記希釈液は無水物であり、場合によって更に乾燥剤を含むことができる。前記希釈液はまた場合によって1つ又は2つ以上の乾燥剤、グリコール、抗酸化剤及び/又は抗菌剤を含むことができる。
前記キットは、場合によって更に指示物を含むことができる。前記指示物には、どのようにして本発明の固体塩及び希釈液を混合し医薬処方物を生成すべきかを記載することができる。前記指示物にはまた、どのようにして生成された医薬処方物を患者に投与するかを記載することができる。前記指示物には場合によって本発明の投与方法を記載することができることに注目されたい。
前記希釈液及び本発明の塩は、別個の容器に入れることができる。前記容器は異なるサイズであってもよい。例えば、前記容器は1−50mL、1−25mL、1−20mL及び1−10mLの希釈液を含むことができる。
容器又はキットで提供される前記医薬処方物は、直接投与に適した形態であってもよいが、また、患者に投与されるものに対応して希釈を必要とする濃縮形態であってもよい。例えば本発明で開示される医薬処方物は、輸液により直接投与するために適した形態であってもよい。
本明細書で開示される方法及びキットは、本発明の化合物を含む医薬組成物の安定性及び治療効果が更に強化又は補足され得る融通性を提供する。
【0034】
4.本発明の塩及びその処方物を投与する方法
本発明の塩/処方物は、任意の経路で、好ましくは下記に詳述するようにそのような経路に適応させた医薬組成物の形態で、更に治療される症状に応じて投与することができる。前記化合物又は処方物は、例えば経口的に、非経口的に、局所的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻内に、リポソームにより、吸入により、膣内に、眼内に、抹消デリバリーにより(例えばカテーテル又はステントによって)、皮下に、脂肪内に、関節内に、又は脊髄内に投与することができる。本発明の化合物及び/又は組成物はまた、徐放投薬形で投与又は同時投与してもよい。
本発明の塩/処方物は、任意の通常の投薬形で投与又は同時投与することができる。本発明に関して同時投与とは、統合的治療過程において2つ以上の治療薬を投与して、臨床的成果を改善することと規定される。そのような同時投与はまた、広範囲の同時存在性、すなわちオーバーラップする期間に及ぶ存在であり得る。
本発明の塩/処方物は、宿主(例えば患者)に0.1−1000mg/m2、場合によって1−200mg/m2、場合によって1−150mg/m2、場合によって1−100mg/m2、場合によって1−75mg/m2、場合によって1−50mg/m2、場合によって1−40mg/m2、場合によって1−30mg/m2、場合によって1−20mg/m2、場合によって5−30mg/m2の用量で投与することができる。
例えば、本発明の塩は、注射用の無菌的粉末として、場合によって緩衝塩(例えば二水素カリウム)及びpH改変剤(例えば水酸化ナトリウム)とともに供給することができる。この処方物は、好ましくは2−8℃で保存される(前記温度は前記薬剤を少なくとも2年間安定に維持することができる)。この粉末処方物は10mLの注射用の滅菌水で再構成することができる。この溶液は当分野で公知の輸液液で更に希釈することができる。前記輸液液は、例えば0.9%塩化ナトリウム注射液、5%デキストロース注射液及び乳酸リンゲル注射液である。再構成し希釈した溶液は、最大能力のデリバリーのために4−6時間以内に用いることが好ましい。
【0035】
好ましい実施態様では、本発明の塩/処方物は、患者に注射によって、例えば皮下注射、静脈内ボーラス注射、持続的静脈輸液、及び1時間静脈輸液によって投与される。場合によって、本発明の化合物/組成物は、各治療サイクルにつき1−24時間の静脈内輸液により3−5日間、0.1−1000mg/m2/日の用量で、場合によって1−1000mg/m2/日の用量で、場合によって1−150mg/m2/日の用量で、場合によって1−100mg/m2/日の用量で、場合によって2−50mg/m2/日の用量で、場合によって10−30mg/m2/日の用量で、場合によって5−20mg/m2/日の用量で患者に投与される。
デシタビン又はアザシチジンについては、50mg/m2未満の用量は通常の癌療法で用いられる用量よりはるかに低いと考えられる。そのような低用量のデシタビン又はアザシチジンの類似体/誘導体を用いることによって、異常なメチル化により癌細胞でサイレントになっている転写活性が活性化され、下流のシグナルトランスダクションの引き金をひき、細胞増殖の停止、分化及びアポトーシスをもたらす(前記は最終的にはこれら癌細胞死をもたらす)。しかしながら、この低い投与量は正常な細胞に対する全身的細胞毒性作用は低く、したがって、治療される患者に対する副作用は少ない。
前記医薬処方物は、輸液液、治療用化合物、栄養液、抗菌液、緩衝剤及び安定化剤を含む群から選択される1つ又は2つ以上のメンバーとともに、任意の通常の形態で同時投与することができる。
上記に述べたように、本発明の塩は、本発明の化合物を非水性溶媒(例えばグリセリン)中で溶媒化することによって液体形に処方することができる。前記液体の医薬処方物は直接投与することができる(例えば更なる希釈を要しない)という更なる利点を提供し、したがって投与まで安定な形態で保存することができる。更にまた、グリセリンは水と容易に混合することができるので、前記処方物は簡単にかつ容易に投与前に更に希釈することができる。例えば、前記医薬処方物は、患者に投与する180分前、60分前、40分前、30分前、20分前、10分前、5分前、2分前、1分前又は1分間未満に水で希釈することができる。
【0036】
患者に前記医薬処方物を静脈内に投与することができる。好ましい投与経路は静脈内輸液である。場合によって、本発明の医薬処方物は従来の再構成をすることなく直接輸液することができる。
ある実施態様では、前記医薬処方物は、コネクター、例えばYサイトコネクターから輸液することができる。前記コネクターは3つのアームを有し、各アームはチューブに連結されている。例として、種々のサイズのバクスター(Baxter(商標))Y-コネクターを用いることができる。前記医薬処方物を含む容器をチューブと結合し、前記チューブは前記コネクターの1つのアームに結合される。輸液液、例えば0.9%塩化ナトリウム、5%デキストロース又は乳酸リンゲル液は、Y-サイトコネクターの他方のアームに結合させたチューブから輸液される。この輸液液及び前記医薬処方物はYサイトコネクター内で混合される。生じた混合物は、Yサイトコネクターの第三のアームに連結されたチューブから患者に輸液される。従来技術と比較してこの投与方法の利点は、本発明の化合物が、それが患者の身体に入る前に輸液液と混合され、したがって水との接触のためにシチジン類似体の分解が生じる時間が短縮されるという点である。例えば、本発明の化合物は、患者の身体に入る10分前、5分前、2分前又は1分前未満で混合される。
前記医薬処方物の安定性が強化された結果、患者は、1、2、3、4、5時間又はそれより長い時間、前記処方物を輸液され得る。長時間輸液は、治療処方物の投与スケジュールを融通性のあるものにすることができる。
また別には、又は前記に加えて、患者の必要性に応じて輸液速度及び輸液容積を調節することができる。前記医薬処方物の輸液の調節は現存のプロトコルにしたがって実施することができる。
【0037】
前記医薬処方物は、輸液液、治療用化合物、栄養液、抗菌液、緩衝剤及び安定化剤を含む群から選択される1つ又は2つ以上のメンバーとともに、任意の通常の形態で同時投与することができる。場合によって、治療用成分は本発明の処方物と同時投与することができる。前記治療用成分には、抗新形成剤、アルキル化剤、レチノイドスーパーファミリーのメンバーである薬剤、抗生物質、ホルモン剤、植物由来剤、生物学的薬剤、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節剤、及びモノクローナル抗体が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本発明に関して同時輸液とは、統合的治療過程において2つ以上の治療薬を輸液して、臨床的成果を改善することと規定される。そのような同時輸液はまた同時発生でも、オーバーラップでも、又は連続的であってもよい。ある具体的な例では、前記医薬処方物及び輸液液の同時輸液はY-タイプコネクターから実施することができる。
静脈内に投与された医薬処方物の薬理学的動態及び代謝は、静脈内に投与された本発明の塩の薬理学的動態及び代謝に類似する。
ヒトでは、デシタビンは、バイオアッセイで測定したとき、7分の半減期及び10−35分の規模の最終半減期(terminal half-life)を有する分布相を示す。分布容積は約4.6L/kgである。短い血中半減期は、環のシチジンデアミナーゼによる脱アミノ化によるデシタビンの急速な不活化のためである。ヒトでのクリアランスは高く、126mL/分/kgの規模である。血漿曲線下の面積は5人の患者の合計で408μg/h/Lであり、ピーク血漿濃度は2.01μMであった。患者では、デシタビン濃度は、3時間輸液として100mg/m2で投与したとき約0.4μg/mL(2μM)であった。より長時間輸液(40時間まで)時の血中濃度は約0.1から0.4μg/mLであった。40−60時間で1mg/kg/hの輸液速度での輸液により、0.43−0.76μg/mLの血中濃度が達成された。1mg/kg/hの輸液速度での定常状態血中濃度は、0.2−0.5μg/mLであると概算された。輸液中断後の半減期は12−20分である。100mg/m2で6時間輸液時におけるデシタビンの定常状態血中濃度は、0.31−0.39μg/mLであると概算された。600mg/m2の輸液中の濃度範囲は0.41−16μg/mLであった。ヒトでのデシタビンの脳脊髄液への浸透は、36時間の静脈内輸液の終了時には血中濃度の14−21%に達する。未変化のデシタビンの尿中排泄は低く、全投与量の0.01%未満から0.9%の範囲であり、排泄と用量又は血中薬剤レベルとの間に相関性は存在しない。高いクリアランス値及び尿中全排泄が投与用量の1%未満であることは、デシタビンは代謝プロセスによって迅速にかつ大半が排除されることを提唱している。
【0038】
デシタビン又はアザシチジンの遊離塩基型と比較して本発明の塩/組成物の安定性の強化のお陰で、それらは保存においてより長い保存期間を有し、更にデシタビン又はアザシチジンの臨床使用に付随する問題を回避することができる。例えば、本発明の塩は凍結乾燥粉末として、場合によって賦形剤(例えばシクロデキストリン)、酸(例えばアスコルビン酸)、アルカリ(水酸化ナトリウム)、又は緩衝塩(一塩基性リン酸二水素カリウム)とともに供給され得る。凍結乾燥粉末は、注射(例えば静脈内、腹腔内、筋肉内又は皮下注射)のために滅菌水で再構成することができる。場合によって、前記粉末は、水性又は非水性溶媒(水に混和性の溶媒(例えばグリセリン、プロピレングリコール、エタノール及びPEG)を含む)で再構成することができる。得られた溶液は患者に直接投与するか、又は輸液液、例えば0.9%塩化ナトリウム、5%デキストロース、5%グルコース及び乳酸リンゲル輸液液で更に希釈することができる。
本発明の塩/処方物は周囲条件下で又は管理環境下(例えば冷蔵庫(2−8℃;36−46゜F))で保存することができる。デシタビンと比較してそれらの優れた安定性のお陰で、本発明の塩/処方物は、室温で保存し、従来の薬剤溶液の冷却を必要とすることなく注射液で再構成し、患者に投与することができる。
更にまた、それらの化学的な安定性のために、本発明の化合物/組成物は、デシタビンの血中半減期と比較してより長い半減期を有するはずである。したがって、本発明の化合物/組成物は、デシタビン又はアザシチジンの場合よりも低い用量及び/又は少ない頻度で患者に投与することができる。
【0039】
5.本発明の塩又はその処方物の適応症
本明細書に開示した本発明の塩/処方物は多くの治療的及び予防的用途を有する。好ましい実施態様では、シチジンの類似体及び誘導体の塩型(デシタビン及びアザシチジンの塩型を含む)は、シチジン類似体又は誘導体(例えばデシタビン又はアザシチジンに遊離塩基型)による治療に感受性を有する極めて多様な疾患の治療に用いられる。本発明の塩/処方物を用いて治療することができる好ましい適応症には、望ましくない又は無制御の細胞分裂を伴うものが含まれる。そのような適応症には、良性腫瘍、種々のタイプの癌(例えば原発性腫瘍及び転移腫瘍)、再狭窄(例えば冠状動脈、頸動脈及び脳動脈病巣)、血液学的異常、内皮細胞の異常な刺激(アテローム性硬化症)、外科手術による体組織の傷害、異常な創傷治癒、異常な血管形成、組織の線維症を生じる疾患、反復性運動異常、高度に血管が形成されていない組織の異常、及び器官移植に伴う増殖性応答が含まれる。
一般的には、良性腫瘍内の細胞はそれらの分化特徴を維持し、完全に無制御な態様で分裂することはない。良性腫瘍は通常は局在し非転移性である。本発明を用いて治療することができる具体的な良性腫瘍のタイプには血管腫、肝細胞アデノーマ、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴覚神経腫、神経線維腫、胆管アデノーマ、胆管嚢胞腺腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生過形成、トラコーマ及び化膿性肉芽腫が含まれる。
悪性腫瘍では、細胞は未分化になり、身体の増殖制御シグナルに応答せず、無制御な態様で分裂する。悪性腫瘍は侵襲性であり、遠位部位に拡散することができる(転移)。悪性腫瘍は、一般的に2つのカテゴリー、原発性及び二次性に分けられる。原発腫瘍は、それらが見出される組織で直接的に生じる。二次腫瘍、又は転移はどこか他の場所で発生し、いまや遠位器官に拡散した腫瘍である。転移の一般的な経路は、隣接する構造物中への直接的な増殖であり、血管系又はリンパ系を通って拡散し、組織平面及び体腔(腹腔液、脳脊髄液など)に沿って進んでいく。
【0040】
本発明を用いて治療することができる癌又は悪性腫瘍(原発性又は二次性)の具体的タイプには、乳癌、皮膚癌、骨の癌、前立腺癌、肝癌、肺癌、脳の癌、喉頭の癌、胆嚢の癌、膵臓の癌、直腸の癌、傍甲状腺の癌、腺組織の癌、神経組織の癌、頭部及び頸部の癌、結腸の癌、胃癌、気管支の癌、腎臓の癌、基底細胞癌、扁平上皮癌(潰瘍型及び乳頭状型の両型)、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、ベチクルム(veticulum)細胞肉腫、ミエローマ、巨細胞腫瘍、小細胞肺癌、胆石、小島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性及び慢性リンパ球性及び顆粒球性腫瘍、毛様細胞腫瘍、アデノーマ、過形成、髄様癌、クロム親和性細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節神経腫(intestinal ganglloneuroma)、過形成角膜神経腫、マルファン症候群様体質腫瘍(marfanoid habitus tumor)、ウィルム腫瘍、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫瘍(leimyomater tumor)、子宮頸部形成異常及び前記部位に発生する癌、神経芽腫、網膜芽腫、軟組織肉腫、悪性類癌腫、局所性皮膚病巣、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性及び他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫、真性赤血球増加症、腺癌、多発性グリア芽細胞腫、白血病、リンパ腫、悪性メラノーマ及び類表皮癌、並びに他の癌腫及び肉腫が含まれる。
血液学的異常には、血液細胞の形成異常変化をもたらし得る血球の異常増殖及び血液学的悪性疾患(例えば種々の白血病)が含まれる。血液学的異常の例には、急性類骨髄球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄形成不全症候群及び鎌状赤血球貧血が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
いくつかの実施態様では、本発明の塩を用いて、遺伝性血液異常及び/又はヘモグロビン欠損異常(例えば鎌状赤血球貧血)を含む血液異常が治療される。いくつかの実施態様では、本発明の塩を用いて癌を治療することができる。前記癌には、白血病、前白血病及び他の骨髄関連癌、例えば骨髄形成異常症候群(MDS)とともに肺癌、例えば非小細胞肺癌(NSCL)が含まれる。NSCLには類表皮癌又は扁平上皮癌、腺癌及び大型細胞癌が含まれ得る。MDSには、不応性貧血、形質転換中の過剰芽球を有する不応性貧血、及び骨髄単球性白血病が含まれ得る。
【0041】
本発明は、対象動物を治療するための方法、医薬組成物及びキットを提供する。本明細書で用いられる、“対象動物”という用語はヒトと同様に他の動物を含む。本明細書で用いられる、“治療する”という用語は、治療的利益を達成すること及び/又は予防的利益を達成することを含む。治療的利益とは、治療される根幹の異常の根絶又は軽減を意味する。例えば鎌状赤血球貧血の患者で、治療的利益には根幹の鎌状赤血球貧血の根絶又は軽減が含まれる。更にまた、治療的利益は、患者が根幹の異常になお罹患しているという事実にも関わらず、改善が患者で観察されるように、根幹の異常に付随する1つ又は2つ以上の生理学的徴候が根絶又は軽減されることにより達成される。例えば、本発明の塩は、鎌状赤血球貧血が根絶されたときだけでなく、鎌状赤血球貧血に付随する、手足症候群、疲労及び/又はクライシス時に受ける痛みの重篤度又は時間(疼痛エピソード)のような他の異常又は不快に関して患者で改善が観察されるときもまた治療的利益を提供している。同様に、本発明の塩は、癌(例えばMDS又はNSCL)に付随する症状(貧血、アザの形成、持続感染、腫瘍のサイズなどを含む)の軽減で治療的利益を提供することができる。
予防的利益のために、本発明の塩は、癌又は血液異常を発症するおそれのある患者、又はそのような症状の1つ又は2つ以上の生理学的徴候を報告している患者に、たとえ前記症状の診断が未だ行われていないとしても投与することができる。
必要な場合又は所望される場合には、本発明の塩は他の治療薬と併用して投与することができる。本発明の化合物及び組成物と同時投与することができる治療薬の選択は、部分的には治療される症状に左右されるであろう。他の治療薬の例には、抗新形成薬、アルキル化剤、レチノイドスーパーファミリーのメンバーである薬剤、抗生物質、ホルモン剤、植物由来薬剤、生物学的製剤、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節剤、及びモノクローナル抗体が含まれるが、ただしこれらに限定されない。例えば、鎌状赤血球貧血では、本発明の塩は、抗生物質及び/又はヒドロキシウレアとともに投与することができる。MDS又はNSCLの場合、本発明の塩は化学療法剤とともに投与することができる。
本発明で使用される適切な医薬組成物には、活性成分が有効な量で、すなわち治療される症状(例えば血液異常(例えば鎌状赤血球貧血)、MDS及び/又は癌(例えばNSCL))で、治療的及び/又は予防的利益を達成するために有効な量で存在する組成物が含まれる。
【実施例】
【0042】
以下の実施例は本発明の詳細を説明することを意図し、いずれの態様においても本実施例によって本発明を制限しようとするものではない。
1.シチジン類似体の塩の合成
1)デシタビンの塩の生成:
本発明のいくつかの実施態様では、デシタビンの塩の調製は、デシタビン及び酸(例えば表1aに含まれる酸)を溶媒(表1bに列挙した溶媒)中で-70℃から100℃で0から24時間混合し、-70℃から25℃で結晶化させ、更にろ過及び溶媒からの再結晶化による精製を実施することを含む。
【0043】
表1b:塩の調製で用いることができる溶媒の例
いくつかの実施態様では、デシタビン塩は強酸から調製された。ある実施態様では、例えば上記に示したデシタビンヒドロクロリド(3)は、丸底フラスコ(100-mL)でデシタビン(0.25g、3.7mmol)をメタノール(40mL)中に懸濁することによって調製された。混合物を穏やかに22℃で攪拌した。HClガス(2倍過剰より少なくはない)を攪拌メタノール溶液中に完全な溶解に達するまで吹き込んだ。前記溶液を1/3容積に濃縮し、窒素ガスをフラッシュし、ゴムの隔壁で栓をし、12時間以上結晶化(0℃)させた。結晶生成物の第1回目の収穫をろ過し、無水エーテル(5mL)で洗浄し、12時間以上真空中で乾燥させた。ろ液を50mLのエーレンマイヤーフラスコに戻し、十分な無水エーテルを白濁点まで添加した。前記溶液を窒素でフラッシュし、ゴムの隔壁で栓をし、12時間以上結晶化(0℃)させた。結晶生成物の第2回目の収穫をろ過し、無水エーテル(40mL)で洗浄し、12時間以上真空中で乾燥させた。
ある実施態様では、例えば上記に示したデシタビンメシレート(4)は、丸底フラスコ(250-mL)でデシタビン(1.0g、3.7mmol)をメタノール(80mL)中に懸濁することによって調製された。前記溶液を窒素でフラッシュし、ゴムの隔壁で栓をし、穏やかに周囲温度で10分間攪拌した。メタンスルホン酸(4.0mL)を前記ゴムの隔壁からゆっくりと注入し、混合物を穏やかに1時間攪拌した。デシタビンの懸濁物は直ちに消失し、混合物はデシタビンメシレートが結晶化する前に透明になった。結晶を4時間以上完全に結晶化(0℃)させた。生成物をろ過中にMeOH(50mL)で十分に洗浄し、12時間以上真空中で乾燥させた。
【0044】
デシタビン塩はまた中等度の酸からも調製された。いくつかの実施態様では、例えば上記に記載した、デシタビンEDTA(5)、L-アスパルテート(6)、マレエート(7)、又はL-グルタメート(8)は以下の方法で調製することができる。メタノール(100mL)及びデシタビン(1.0g)を添加する前にエチレンジアミン四酢酸(EDTA、1.409g、4.8mmol)、L-アスパラギン酸(641mg)、マレイン酸(610mg、5.3mmol)又はL-グルタミン酸(709mg)を250mLの丸底フラスコに秤量し、更に前記混合物を50℃で1時間又はそれより長時間、前記溶液が透明になるまで攪拌した。ろ液を約1/2容積に濃縮し、結晶化を惹起させた。前記溶液を窒素でフラッシュし、ゴムの隔壁で栓をし、4時間以上結晶化(0℃)させた。結晶生成物の第1回目の収穫をろ過し、12時間以上、真空中で乾燥させた。メタノール中で、デシタビンは、EDTAと1:1モル等価物(5)を、L-アスパラギン酸と1:1.5モル等価物(6)を、マレイン酸と0.78モル等価物(7)を、及びL-グルタミン酸と1:1.5モル等価物(8)を形成した(下記表2もまた参照されたい)。
更にいくつかの実施態様では、上記に示した例えばデシタビンスルファイト(9)、ホスフェート(10)が、デシタビン(1.0g、3.7mmol)を丸底フラスコ(250mL)のメタノール(80mL)に懸濁することによって調製された。前記溶液を窒素ガスでフラッシュし、ゴムの隔壁で栓をし、穏やかに周囲温度で10分攪拌した。亜硫酸(4.0mL)又はリン酸(0.8mL)をゴムの隔壁からゆっくりと注入し、前記混合物を更に穏やかに1時間攪拌した。デシタビンの懸濁物は消失し、デシタビン塩が再結晶化される前に混合物は透明になった。結晶は4時間以上で完全に結晶化された(0℃)。生成物をろ過中にMeOH(50mL)で十分に洗浄し、真空中で12時間以上乾燥させた。メタノール中で、デシタビンは、亜硫酸(9)及びリン酸と1:1モル等価物を形成した(下記表2もまた参照されたい)。
更にいくつかの実施態様では、デシタビン塩は弱酸(3.0<pKa<5)から調製された。例えば(+)-L-酒石酸、クエン酸、L-乳酸、コハク酸、酢酸、ヘキサン酸、酪酸又はプロピオン酸(それぞれ上記の11−18)のデシタビン塩が以下の方法によって調製された:デシタビン(1.0g、4.4mmol)を丸底フラスコ(50mL)のメタノール(50mL)に懸濁し、酸(液体酸:0.4−4.4mL;固体酸:2−5g)を添加する前に窒素をフラッシュし封をした。各々を超音波発生装置上で30−55℃で完全に溶解するまで加熱した。30分後に完全な溶解が完了していない場合は、更に追加のエタノール(5mL)を10分毎に添加した。前記溶液を23℃に冷却し、続いて0℃で12時間以上保存した。結晶生成物の第1回目の収穫をろ過し、真空中で12時間以上乾燥させた。
弱酸(3.0<pKa<5)から調製されたデシタビンの塩はより激甚ではない結果を示した。例えば、メタノール中では、デシタビンは、(+)-L-酒石酸、クエン酸、L-乳酸、コハク酸、酢酸、ヘキサン酸、酪酸又はプロピオン酸と1:1モル等価物に対応する塩を容易には形成しない(それぞれ上記記載の11−18)。その代わりに、酸の割合が0.03から0.19モル等価物に変動するものが得られた(表2をまた参照されたい)。前記は部分的な塩形成が存在することを示しているのかもしれない。しかしながら、このことは必ずしも、これらの弱酸の1:1モル等価物塩を他の溶媒を用いて調製することができないことを意味しない。
2)アザシチジン塩の生成:
本明細書に記載したデシタビン塩のための合成技術は対応するアザシチジンの塩の調製に応用することができる。アザシチジンの類似体塩はまた、デシタビン塩の調製で使用した酸から調製することができる。例えば、本発明のいくつかの実施態様では、アザシチジンの塩の調製はアザシチジン及び酸(例えば表1aに含まれる酸)の混合物を攪拌することを含む。
例えば、アザシチジンメシレート(上記に記載した(19))は、強酸のメタンスルホン酸を用いて生成されるアザシチジン塩である。いくつかの実施態様では、アザシチジンメシレート(19)は、アザシチジン(0.5g、2.0mmol)を丸底フラスコ(100mL)のメタノール(40mL)に懸濁することによって調製された。前記溶液を窒素ガスでフラッシュし、ゴムの隔壁で栓をし、穏やかに周囲温度で10分間攪拌した。メタンスルホン酸(2.0mL)を前記ゴムの隔壁からゆっくりと注入し、混合物を穏やかに1時間攪拌した。デシタビンの懸濁物は直ちに消失し、混合物は透明になった。混合物の容積を真空中で半分に減少させ、アザシチジンメシレートの結晶を4時間以上完全に結晶化(0℃)させた。生成物をろ過中にMeOH(40mL)で十分に洗浄し、真空中で12時間以上乾燥させた。アザシチジンは1:1モル等価物のメシレート塩(19)を容易に生成することができる。
【0045】
2.デシタビン及びアザシチジン塩の可溶性
表2は、遊離デシタビン及び遊離アザシチジンと比較した、本発明のいくつかの実施態様についての溶解速度及び全可溶性とともに他の選択した特性を示す。溶解速度は、1.0mgのサンプルが水に溶解するために要する時間を規準にする。ほとんどの実施態様(例えばほとんどのデシタビン塩)についての溶解速度は、遊離塩基のそれよりも優れている。例えば、デシタビンヒドロクロリド(3)(混合で1秒)及びデシタビンメシレート(4)(超音波で3秒)はデシタビン遊離塩基(1)(超音波で3秒)より優れている。理論に拘束されないが、より速い溶解速度は、製造時の加水分解を減少させるとともに、粉末形の再構成時間を短縮することができる。驚くべきことに、アザシチジンメシレート(19)の溶解速度は、しかしながら遊離アザシチジン塩基(2)よりも低いことが見出された。すなわち、表2に示すように、アザシチジンメシレート塩(19)の溶解速度(超音波で1分)はアザシチジン遊離塩基(2)(混合で3秒)よりも遅い。
外観的全可溶性は、1.0mLの脱イオン水を含む5-mLバイアルに5mgのサンプルを連続的に添加し、前記混合物を1分超音波処理することによって決定した。懸濁物が形成されるまで、更に追加のサンプルを5mgずつ増加させて添加し、1分の超音波処理をくり返した。ほとんどのデシタビン塩の全可溶性はデシタビン遊離塩基より良好であるか、又は少なくとも同じである。デシタビンヒドロクロリド(3)(280mg/mL)及びデシタビンメシレート(4)(195mg/mL)の外観的全可溶性(前記はそれぞれ遊離塩基の241mg/mL及び137mg/mLと等価である)は、デシタビン遊離塩基(1)(8−10mg/mL)よりも実質的に高い。1:1モル比の塩(例えばデシタビン-HCl及びデシタビンメシレート)は、10倍以上デシタビンの可溶性を増加させる。同様に、デシタビンスルファイト(9)及びデシタビンホスフェート(10)は、それぞれ80mg/mL及び50mg/mL(それぞれ59mg/mL及び35mg/mLの遊離デシタビン塩基と等価である)の可溶性を示す。しかしながら当業者は、いくつかの他のデシタビン塩については、全可溶性の測定は、それらの1:1の遊離塩基:酸モル比を表していないかもしれないことを理解してよう。
一方、上記に記載したように、驚くべきことにその溶解速度が遊離アザシチジン塩基(2)よりも低いことが見出されたアザシチジンメシレート(19)に関しては、外観的全可溶性は大きく強化され、アザシチジン遊離塩基(2)の14mg/mLと比較して前記塩(19)で205mg/mL(遊離塩基の137mg/mLと等価)である。
【0046】
表2:デシタビン及びアザシチジンの塩の選択した特性の要旨
#元素分析を規準にする
*デシタビン又はアザシチジン遊離塩基等価物
【0047】
表3は、遊離デシタビン及び遊離アザシチジンと比較した本発明のある種の実施態様の融点及び吸湿性を示す。例えば、デシタビンヒドロクロリド(3)(130℃)及びデシタビンメシレート(4)(125℃)の観察された融点(分解点)は、デシタビン遊離塩基結晶無水物(1)のそれとは異なっている(190℃)。アザシチジンメシレート(19)の観察された融点(分解点)(138℃)もまたアザシチジン遊離塩基(2)のそれとは異なっている(230℃)。
表3はまた、ある種の塩は対応する遊離塩基よりわずかに吸湿性であることを示している。デシタビンヒドロクロリド(3)及びデシタビンメシレート(4)の56%相対湿度(RH)で1週間後のパーセント質量増加は、デシタビン遊離塩基(1)と同様であった。98%RHでは、デシタビンヒドロクロリドは、デシタビンよりもはるかに大量の水分を取り込んだ(わずかに2.88質量増加に対して65.5%の質量増加)。デシタビンメシレートは、しかしながら2.84%のわずかな質量増加を示し、98%RHでデシタビンよりも吸湿性ではないと決定された。前記にもかかわらず、アザシチジンメシレート(19)は遊離アザシチジン(2)よりもはるかに吸湿性であることが示された。
【0048】
表3:固体状態のデシタビン及びアザシチジンの塩型の安定性
【0049】
表4は、本発明のある種のデシタビン及びアザシチジン塩の水溶液安定性を示す。水溶液安定性は、0.5mg/mLの薬剤濃度でpH7.0及び2.5のリン酸緩衝液で調べた。アッセイ条件は以下のとおりであった:移動相−40±0.5mLのメタノール及び2000mLの酢酸アンモニウム(10mM)の混合物;カラム温度−15±2℃;流速−1.7mL/分;注入容積−5μL;検出波長−220nm;及び分析時間−25分。
pH7.0及び2.5のリン酸緩衝液(0.05M)中のデシタビン塩のいくつかの溶液安定性は、デシタビン遊離塩基と少なくとも同じ安定性を有する。pH7.0では、デシタビンヒドロクロリド(3)及びデシタビン遊離塩基(1)は、周囲条件下で約30分後(87.59%及び87.17%)及び24時間後(それぞれ81.07%及び84.07%)に類似のパーセント回収を示した。デシタビンメシレート(4)は、pH7.0で周囲条件下で30分後及び24時間後(それぞれ91.19%及び89.49%)にわずかに良好なパーセント回収を示した。
pH2.5では、周囲条件下で、デシタビンメシレート(4)及びデシタビン遊離塩基(1)は、ほぼ30分後(55.96%及び57.09%)及び24時間後(それぞれ48.77%及び50.38%)に類似の%回収を示した。デシタビンヒドロクロリド(3)は、30分後に極めて良好な%回収(77.89%)を示したが、最終的にはデシタビン遊離塩基(1)と類似の値(49.90%)に減少した。デシタビンL-アスパルテート(6)及びデシタビンスルファイト(9)もまた多少デシタビンを安定させるように見える。例えば、デシタビンスルファイト(9)(30分後に95.96%及び24時間後に92.96%)の安定性は、デシタビン遊離塩基(1)(30分後に57.09%及び24時間後に50.8%)と比較してpH2.5で改善される。
アザシチジンメシレート(19)に関しては、この1:1塩の安定性は遊離アザシチジン塩基(2)よりもわずかに低い。
【0050】
表4:pH7.0及び2.5のリン酸緩衝液(0.05M)中の塩(0.5mg/mL)の安定性
【0051】
3.デシタビン及びアザシチジン塩の熱解析法
ここでは、塩型のいくつかについて、微分走査熱量測定法(Differential Scanning Calorimetry;DSC)、熱重量分析(TGA)、X線回折(XRD)及び赤外(IR)分光分析を含む“フィンガープリント”解析が提供される。ここに提供したDSCのための数値は、各々が“約”という語によって修飾されることを意図する。例えばここに提供したDSC値は、提示された数値±1℃、±2℃、±3℃、±4℃、±5℃、±6℃、±7℃、±8℃、±9℃、及び少なくとも±10℃を表す。
上記で述べたように、デシタビンヒドロクロリド(3)(130℃)及びデシタビンメシレート(4)(125℃)について表3で示した検出融(分解)点は、デシタビン遊離塩基結晶無水物(1)(190℃)とは異なっている。これらの値は、微分走査熱量測定法(DSC)プロット(周囲温度から250℃、10℃/分)によって確認された。図1−17は、それぞれ、デシタビンヒドロクロリド(3)、デシタビンメシレート(4)、デシタビンEDTA(5)、デシタビンL-アスパルテート(6)、デシタビンマレエート(7)、デシタビンL-グルタメート(8)、デシタビンスルファイト(9)、デシタビンホスフェート(10)、デシタビンタルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-(+)-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、デシタビンプロピオネート(18)及びアザシチジンメシレート(19)のDSCプロットを示す。
図1に示すように、デシタビンヒドロクロリド(3)は、約130℃から始まり144℃で最高潮に達する主要な熱現象を経る。図2に示すように、デシタビンメシレート(4)は、約125℃から始まり134℃で最高潮に達する主要な熱現象を有する。125℃−130℃近くでの開始を示すこれらのDSC吸熱現象はその溶融と一致し、前記は放熱現象を伴う。この事象はデシタビンヒドロクロリドもデシタビンメシレートも分解とともに溶融することを示している。
【0052】
これら2つの新規な塩の熱解析は、それらが無水型であることを提唱している。図18及び19は、それぞれデシタビンヒドロクロリド(3)及びデシタビンメシレート(4)のTGAプロットを示している。各々についてのTGAプロットは、サンプルの分解点までは質量の低下を示さない。図18が示すように、デシタビンヒドロクロリド(3)のTGAプロットは、およそ150℃で出現し、38%を超える質量低下をもたらす急峻な分解曲線を示す。前記分解曲線は最終的にはおよそ200から250℃でプラトーに達する。特定の仮説に拘束されないが、下記に図示するように、分解時の塩化水素の消失が150℃辺りでのトリアジン環の開環を伴うようである。
【0053】
【化8】
【0054】
図19はデシタビンメシレート(4)のTGAプロットを示す。前記では、2つの主要な連続的分解事象は150℃辺り及び200から250℃辺りに出現する。第一の事象は15%の質量低下を表し、一方、第二の事象は14%となる。特定の仮説に拘束されないが、下記に示すように、デシタビンメシレートはデシタビンヒドロクロリドの場合と類似の段階で分解する可能性がある。例えば、デシタビンヒドロクロリドの場合に仮定されたように、デシタビンメシレートの分解はトリアジン環の開環を伴う可能性がある。しかしながら、対照的に遊離デシタビンでのトリアジンの切断は190℃辺りまで発生しない。
【0055】
【化9】
【0056】
図20−34は、本発明の更に別の塩についてのTGAプロットを示す:すなわち、それぞれデシタビンEDTA(5)、デシタビンL-アスパルテート(6)、デシタビンマレエート(7)、デシタビンL-グルタメート(8)、デシタビンスルファイト(9)、デシタビンホスフェート(10)、デシタビンタルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-(+)-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、デシタビンプロピオネート(18)、及びアザシチジンメシレート(19)である。
デシタビンEDTA(5)、デシタビンL-アスパルテート(6)、デシタビンマレエート(7)、デシタビンL-グルタメート(8)、デシタビンスルファイト(9)、デシタビンホスフェート(10)についてのDSC及びTGAプロット(それぞれ図3−8及び図20−25)から、これらの塩は遊離デシタビンではないことが分かる。したがって、(上記の表2に示したように)デシタビンスルファイト(9)及びデシタビンホスフェート(10)はそれぞれ80mg/mL及び50mg/mLの可溶性(又はそれぞれ遊離塩基の59mg/mL及び35mg/mLと等価)を有する。デシタビンタルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-(+)-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、デシタビンプロピオネート(18)(それぞれ図9−16及び26−33)のDSC及びTGAプロットから、これら粗塩混合物はもっぱらデシタビンを含んでいることが分かる。したがって、表2に示したこれら粗塩混合物の可溶性の測定は、純粋な1:1モル等価塩を表しているわけではない可能性がある。それにもかかわらず、表4に示すように、これら粗塩混合物の可溶性は、わずかしか良好でないとしても、少なくともデシタビンと同じ程度に良好である。
上記で述べたように、アザシチジンメシレート(19)(138℃)について表3に示したように検出された融(分解)点は、アザシチジン遊離塩基(2)(230℃)のそれと異なっている。この値は、図17に示すようにDSCプロット(周囲温度から250℃、10℃/分)によって確認された。図17に示すように、アザシチジンメシレート(19)は、70℃、95℃及び118℃辺りで主要な熱現象を経る。70−130℃近くで開始するこれらの吸熱現象は、溶融(前記は放熱現象を伴う)と一致する。この態様は、アザシチジンメシレートは分解とともに溶融し得ることを示している。
更にまた、図34に示すように、アザシチジンメシレートのTGAプロット、一連の主要な分解事象は70℃辺りから250℃で生じる。150℃の前の分解事象は10%未満の質量低下となり、一方、250℃までの連続的な分解はほぼ50%の質量低下となる。
【0057】
4.デシタビン及びアザシチジン塩のX線回折及び赤外スペクトル
フィンガープリントXRDもまた、本発明のある種の実施態様について得られた。図35−51は、それぞれデシタビンヒドロクロリド(3)、デシタビンメシレート(4)、デシタビンEDTA(5)、デシタビンL-アスパルテート(6)、デシタビンマレエート(7)、デシタビンL-グルタメート(8)、デシタビンスルファイト(9)、デシタビンホスフェート(10)、デシタビンタルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-(+)-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、デシタビンプロピオネート(18)及びアザシチジンメシレート(19)のXRDパターンを示す。
IRスペクトルもまた本発明のある種の実施態様について得られた。図52−68は、それぞれデシタビンヒドロクロリド(3)、デシタビンメシレート(4)、デシタビンEDTA(5)、デシタビンL-アスパルテート(6)、デシタビンマレエート(7)、デシタビンL-グルタメート(8)、デシタビンスルファイト(9)、デシタビンホスフェート(10)、デシタビンタルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-(+)-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、デシタビンプロピオネート(18)及びアザシチジンメシレート(19)のIR吸収スペクトルを示す。
デシタビンヒドロクロリド(3)(図52)及びデシタビンメシレート(4)(図53)のIRスペクトルから、デシタビンに存在する全ての官能基がデシタビンヒドロクロリド及びデシタビンメシレート塩で無傷であることは当業者には理解されよう。S=O(伸縮振動)の特徴的に強力な吸収は、デシタビンメシレート(4)については1169cm-1で出現し、前記はデシタビン遊離塩基では存在しない。
【0058】
5.解析データの要旨
表5は、デシタビンヒドロクロリド(3)、デシタビンメシレート(4)、デシタビンEDTA(5)、デシタビンL-アスパルテート(6)、デシタビンマレエート(7)、デシタビンL-グルタメート(8)、デシタビンスルファイト(9)、デシタビンホスフェート(10)、デシタビンタルトレート(11)、デシタビンシトレート(12)、デシタビンL-(+)-ラクテート(13)、デシタビンスクシネート(14)、デシタビンアセテート(15)、デシタビンヘキサノエート(16)、デシタビンブチレート(17)、デシタビンプロピオネート(18)及びアザシチジンメシレート(19)のDSC、TGA、XRD及びIRスペクトルを含む、本発明のデシタビン及びアザシチジンに関するある種の実施態様についての解析データの要旨を、対応する図(上記で考察)とともに提供する。比較のために、デシタビン遊離塩基(1)、デシタビン水和物(‘1)及びアザシチジン遊離塩基(2)のデータもまた提供される。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
6.デシタビンメシレートの貧血ヒヒへの経口投与
上記に記載したように、本発明は、化学的安定性、可溶性、及び生体利用性(特に経口投与について)が改善された新規なデシタビン塩を提供する。本実施例では、我々は、デシタビン塩(デシタビンメシレート)は、経口投与で生体が利用可能であり、鎌状赤血球貧血の動物モデルにおいてHbFの増加、並びにε-及びγ-グロビン遺伝子のDNAメチル化の低下に有効であることを示す(前記デシタビン塩は貧血のヒヒ(パピオ・アヌビス(Papio anubis))に経口投与された)。
胎児性ヘモグロビン(HbF)のレベルの増加は鎌状赤血球症の重篤度を軽減することが知られている。DNAメチルトランスフェラーゼを阻害する薬剤、5-アザ-2'-デオキシシチジン(デシタビン)の皮下及び静脈内投与は、ヒドロキシウレア耐性鎌状赤血球症患者及び実験的誘発貧血ヒヒでHbFレベルを増加させた。DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤5-アザシチジンの経口投与は、テトラヒドロウリジン(シチジンデアミナーゼ阻害剤)と併用されたときにのみ有効であることが判明した。マウスでは、経口投与されたデシタビンの9%のみが生体利用性を有する。
本実施例で、我々は、デシタビンメシレートは、皮下投与の有効用量よりも8−36倍高い用量で経口投与されたときに、HbFを増加させ、DNA脱メチル化を引き起こすことができることを示した。3匹のヒヒを10日間の急性瀉血によって貧血にし、薬剤治療過程の間ヘマトクリット20で維持した。最初の出血後でデシタビンメシレート投与前のHbFレベルは6.3−13.9%であった。各ヒヒは、10日間異なる経口投与用量のDACメシレート(18.7mg/kg/日、9.35mg/kg/日、4.1mg/kg/日)を与えられた。より高い用量を投与された2匹の動物のピークHbFは、低い用量のデシタビン(0.52mg/kg/日)の皮下注射後の動物で観察されるレベルに匹敵した。二スルファイトシークェンス分析によって、ε-及びγ-グロビン遺伝子のメチル化は、18.7mg/kg/日及び9.35mg/kg/日で処置された動物では50%を超える減少をもたらすことが示されたが、より低い用量(4.1mg/kg/日)で処置された動物では極めてわずかな変化しか観察されなかった。クロマチン免疫沈澱(ChIP)実験によって、瀉血動物ではβ-グロビンプロモーターに結合するアセチル化ヒストンH3及びH4のレベルは、γ-グロビンプロモーターに結合するものよりも5−6倍高いことが示された。より高用量の薬剤で処置された2匹の動物では、デシタビンメシレートに続いて、等しいレベルのアセチル化ヒストンH3及びH4がγ-及びβ-グロビンプロモーターに結合していた。これらの結果は下記の表6に要約される。したがってこれらの実験は、経口投与されたデシタビンメシレートは、貧血ヒヒで、HbFを増加させ、ε-及びγ-グロビン遺伝子のDNAメチル化を減少させ、γ-グロブリンプロモーターに結合するヒストンH3及びH4のアセチル化を増加させることを示した。
【0063】
表6:経口投与デシタビンメシレートのHbF及びDNAメチル化に対する効果
*デシタビンメシレート経口投与
本発明に対して、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく多くの変更及び改変を実施することが可能であり、更にそのような変更及び改変は本発明の範囲内に包含され得ることは当業者には明白であろう。
全ての刊行物、特許及び特許出願、並びにウェブサイトは参照によりその全体が、あたかも前記の刊行物、特許及び特許出願、並びにウェブサイトの各々を具体的にかつ個々に参照によりその全体を本明細書に含むことを指示したかのごとくに本明細書に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】デシタビンヒドロクロリドのDSCプロットを示す。
【図2】デシタビンメシレートのDSCプロットを示す。
【図3】デシタビンEDTAのDSCプロットを示す。
【図4】デシタビンL-アスパルテートのDSCプロットを示す。
【図5】デシタビンマレエートのDSCプロットを示す。
【図6】デシタビンL-グルタメートのDSCプロットを示す。
【図7】デシタビンスルファイトのDSCプロットを示す。
【図8】デシタビンホスフェートのDSCプロットを示す。
【図9】デシタビンタルトレートのDSCプロットを示す。
【図10】デシタビンシトレートのDSCプロットを示す。
【図11】デシタビンL-(+)-ラクテートのDSCプロットを示す。
【図12】デシタビンスクシネートのDSCプロットを示す。
【図13】デシタビンアセテートのDSCプロットを示す。
【図14】デシタビンヘキサノエートのDSCプロットを示す。
【図15】デシタビンブチレートのDSCプロットを示す。
【図16】デシタビンプロピオネートのDSCプロットを示す。
【図17】アザシチジンメシレートのDSCプロットを示す。
【図18】デシタビンヒドロクロリドのTGAプロットを示す。
【図19】デシタビンメシレートのTGAプロットを示す。
【図20】デシタビンEDTAのTGAプロットを示す。
【図21】デシタビンL-アスパルテートのTGAプロットを示す。
【図22】デシタビンマレエートのTGAプロットを示す。
【図23】デシタビンL-グルタメートのTGAプロットを示す。
【図24】デシタビンスルファイトのTGAプロットを示す。
【図25】デシタビンホスフェートのTGAプロットを示す。
【図26】デシタビンタルトレートのTGAプロットを示す。
【図27】デシタビンシトレートのTGAプロットを示す。
【図28】デシタビンL-(+)-ラクテートのTGAプロットを示す。
【図29】デシタビンスクシネートのTGAプロットを示す。
【図30】デシタビンアセテートのTGAプロットを示す。
【図31】デシタビンヘキサノエートのTGAプロットを示す。
【図32】デシタビンブチレートのTGAプロットを示す。
【図33】デシタビンプロピオネートのTGAプロットを示す。
【図34】アザシチジンメシレートのTGAプロットを示す。
【図35】デシタビンヒドロクロリドのXRDパターンを示す。
【図36】デシタビンメシレートのXRDパターンを示す。
【図37】デシタビンEDTAのXRDパターンを示す。
【図38】デシタビンL-アスパルテートのXRDパターンを示す。
【図39】デシタビンマレエートのXRDパターンを示す。
【図40】デシタビンL-グルタメートのXRDパターンを示す。
【図41】デシタビンスルファイトのXRDパターンを示す。
【図42】デシタビンホスフェートのXRDパターンを示す。
【図43】デシタビンタルトレートのXRDパターンを示す。
【図44】デシタビンシトレートのXRDパターンを示す。
【図45】デシタビンL-(+)-ラクテートのXRDパターンを示す。
【図46】デシタビンスクシネートのXRDパターンを示す。
【図47】デシタビンアセテートのXRDパターンを示す。
【図48】デシタビンヘキサノエートのXRDパターンを示す。
【図49】デシタビンブチレートのXRDパターンを示す。
【図50】デシタビンプロピオネートのXRDパターンを示す。
【図51】アザシチジンメシレートのXRDパターンを示す。
【図52】デシタビンヒドロクロリドのIR吸収スペクトルを示す。
【図53】デシタビンメシレートのIR吸収スペクトルを示す。
【図54】デシタビンEDTAのIR吸収スペクトルを示す。
【図55】デシタビンL-アスパルテートのIR吸収スペクトルを示す。
【図56】デシタビンマレエートのIR吸収スペクトルを示す。
【図57】デシタビンL-グルタメートのIR吸収スペクトルを示す。
【図58】デシタビンスルファイトのIR吸収スペクトルを示す。
【図59】デシタビンホスフェートのIR吸収スペクトルを示す。
【図60】デシタビンタルトレートのIR吸収スペクトルを示す。
【図61】デシタビンシトレートのIR吸収スペクトルを示す。
【図62】デシタビンL-(+)-ラクテートのIR吸収スペクトルを示す。
【図63】デシタビンスクシネートのIR吸収スペクトルを示す。
【図64】デシタビンアセテートのIR吸収スペクトルを示す。
【図65】デシタビンヘキサノエートのIR吸収スペクトルを示す。
【図66】デシタビンブチレートのIR吸収スペクトルを示す。
【図67】デシタビンプロピオネートのIR吸収スペクトルを示す。
【図68】アザシチジンメシレートのIR吸収スペクトルを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デシタビンの塩。
【請求項2】
前記塩が、酸により合成される、請求項1の塩。
【請求項3】
前記酸が、約5以下のpKaを有する、請求項2の塩。
【請求項4】
前記酸が、約4以下のpKaを有する、請求項2の塩。
【請求項5】
前記酸のpKaが、約3から約-10の範囲である、請求項2の塩。
【請求項6】
前記酸が、塩酸、L-乳酸、酢酸、リン酸、(+)-L-酒石酸、クエン酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、コハク酸、EDTA、マレイン酸及びメタンスルホン酸から成る群から選択される、請求項2の塩。
【請求項7】
前記酸が、HBr、HF、HI、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、亜リン酸、過塩素酸、塩素酸及び亜塩素酸から成る群から選択される、請求項2の塩。
【請求項8】
前記酸が、カルボン酸又はスルホン酸である、請求項2の塩。
【請求項9】
前記カルボン酸が、アスコルビン酸、炭酸、及びフマル酸から成る群から選択される、請求項8の塩。
【請求項10】
前記スルホン酸が、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸及びトルエンスルホン酸から成る群から選択される、請求項8の塩。
【請求項11】
前記塩が、塩酸塩、メシレート、EDTA、亜硫酸塩、L-アスパラギン酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、L-グルタミン酸塩、(+)-L-酒石酸塩、クエン酸塩、L-乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、ヘキサン酸塩、酪酸塩、又はプロピオン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項12】
前記塩が、14.79゜、23.63゜及び29.81゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の塩酸塩である、請求項1の塩。
【請求項13】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき125−155℃の溶融吸熱を特徴とする、請求項12の塩。
【請求項14】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき130−144℃の溶融吸熱を特徴とする、請求項12の塩。
【請求項15】
前記塩が、8.52゜、22.09゜及び25.93゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターン特徴とする結晶形のメシレート塩である、請求項1の塩。
【請求項16】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき140℃の溶融吸熱を特徴とする、請求項15の塩。
【請求項17】
前記塩が、7.14゜、22.18゜及び24.63゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のEDTA塩である、請求項1の塩。
【請求項18】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−90℃、165−170℃及び170−200℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項17の塩。
【請求項19】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき73℃、169℃及び197℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項17の塩。
【請求項20】
前記塩が、15.73゜、19.23゜及び22.67゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の亜硫酸塩である、請求項1の塩。
【請求項21】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき100−140℃での溶融吸熱を特徴とする、請求項20の塩。
【請求項22】
前記塩が、21.61゜、22.71゜及び23.24゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のL-アスパラギン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項23】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−100℃、170−195℃及び195−250℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項22の塩。
【請求項24】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき86℃、187℃及び239℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項22の塩。
【請求項25】
前記塩が、20.81゜、27.38゜及び28.23゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のマレイン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項26】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき95−130℃及び160−180℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項25の塩。
【請求項27】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき119℃及び169℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項25の塩。
【請求項28】
前記塩が、17.09゜、21.99゜及び23.21゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のリン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項29】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき130−145℃での溶融吸熱を特徴とする、請求項28の塩。
【請求項30】
前記塩が、13.33゜、21.39゜及び30.99゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のL-グルタミン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項31】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−100℃、175−195℃及び195−220℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項30の塩。
【請求項32】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき84℃、183℃及び207℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項30の塩。
【請求項33】
前記塩が、7.12゜、13.30゜及び14.22゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の(+)-L-酒石酸塩である、請求項1の塩。
【請求項34】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき60−110℃及び185−220℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項33の塩。
【請求項35】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき91℃及び203℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項33の塩。
【請求項36】
前記塩が、13.31゜、14.23゜及び23.26゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のクエン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項37】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−100℃及び160−220℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項36の塩。
【請求項38】
前記塩が更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき84℃及び201℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項36の塩。
【請求項39】
前記塩が、13.27゜、21.13゜及び23.72゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のL-乳酸塩である、請求項1の塩。
【請求項40】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−100℃及び160−210℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項39の塩。
【請求項41】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき84℃及び198℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項39の塩。
【請求項42】
前記塩が、13.30゜、22.59゜及び23.28゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のコハク酸塩である、請求項1の塩。
【請求項43】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−100℃及び190−210℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項42の塩。
【請求項44】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき79℃及び203℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項42の塩。
【請求項45】
前記塩が、7.14゜、14.26゜及び31.25゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の酢酸塩である、請求項1の塩。
【請求項46】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき60−90℃及び185−210℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項45の塩。
【請求項47】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき93℃及び204℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項45の塩。
【請求項48】
前記塩が、13.27゜、22.54゜及び23.25゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のヘキサン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項49】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−90℃及び190−210℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項48の塩。
【請求項50】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき93℃及び204℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項48の塩。
【請求項51】
前記塩が、13.28゜、22.57゜及び23.27゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の酪酸塩である、請求項1の塩。
【請求項52】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき40−90℃及び190−210℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項51の塩。
【請求項53】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき89℃及び203℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項51の塩。
【請求項54】
前記塩が、13.29゜、22.52゜及び23.27゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のプロピオン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項55】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−110℃及び190−210℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項54の塩。
【請求項56】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき94℃及び204℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項54の塩。
【請求項57】
請求項1の塩を含む医薬組成物。
【請求項58】
前記医薬組成物が、その中に塩が溶解されている液体形である、請求項57の医薬組成物。
【請求項59】
前記塩が、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、又はその組合せを含む非水性溶媒に溶解されている、請求項58の医薬組成物。
【請求項60】
前記医薬組成物が、その中に塩が溶解されている水溶液である、請求項58の医薬組成物。
【請求項61】
前記医薬組成物が、経口投与形である、請求項57の医薬組成物。
【請求項62】
前記経口投与形が、錠剤、カプセル、懸濁物又は液体である、請求項61の医薬組成物。
【請求項63】
請求項57に記載の医薬組成物を含む滅菌容器。
【請求項64】
前記容器が、バイアル、注入器、又はアンプルである、請求項63の容器。
【請求項65】
前記医薬組成物が、液体形であり、前記容器が1から50mLの医薬組成物を含む、請求項63の容器。
【請求項66】
固体形のデシタビンの塩を収納する第一の容器、及び、水、食塩水、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、又はその組合せを含む希釈液を収納する第二の容器を含む、キット。
【請求項67】
塩が、凍結乾燥粉末の形態である、請求項66のキット。
【請求項68】
前記塩が、結晶形である、請求項66のキット。
【請求項69】
前記第一の容器の塩の量が、0.1から200mgである、請求項66のキット。
【請求項70】
前記第一の容器の塩の量が5から50mgである、請求項66のキット。
【請求項71】
前記希釈液が、プロピレングリコール及びグリセリンの組合せであり、更に前記希釈液中のプロピレングリコールの濃度が20−80%である、請求項66のキット。
【請求項72】
更に、デシタビンの固体塩及び希釈液を混合して医薬処方物を作成する方法を記載した指示書を含む、請求項66のキット。
【請求項73】
望ましくない細胞分裂を伴う疾患を対象者で治療する方法であって、前記方法が、その必要がある対象者に医薬的に有効な量の請求項1の塩を投与することを含む、前記治療方法。
【請求項74】
請求項1の塩が、前記対象者に対して、経口的に、非経口的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻内に、リポソームにより、吸入により、膣内に、眼内に、局部デリバリーにより、皮下に、脂肪内に、関節内に又は脊髄内に投与される、請求項73の方法。
【請求項75】
請求項1の塩が、対象者に経口的に投与される、請求項73の方法。
【請求項76】
前記疾患が、良性腫瘍、癌、血液学的異常、アテローム性硬化症、外科手術による体組織の傷害、異常な創傷治癒、異常な血管形成、組織の線維症を生じる疾患、反復性運動異常、高度に血管が形成されない組織の異常、及び器官移植に伴う増殖性応答から成る群から選択される、請求項73の方法。
【請求項77】
前記疾患が、骨髄形成異常症候群、白血病、悪性腫瘍、及び鎌状赤血球貧血である、請求項73の方法。
【請求項1】
デシタビンの塩。
【請求項2】
前記塩が、酸により合成される、請求項1の塩。
【請求項3】
前記酸が、約5以下のpKaを有する、請求項2の塩。
【請求項4】
前記酸が、約4以下のpKaを有する、請求項2の塩。
【請求項5】
前記酸のpKaが、約3から約-10の範囲である、請求項2の塩。
【請求項6】
前記酸が、塩酸、L-乳酸、酢酸、リン酸、(+)-L-酒石酸、クエン酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、コハク酸、EDTA、マレイン酸及びメタンスルホン酸から成る群から選択される、請求項2の塩。
【請求項7】
前記酸が、HBr、HF、HI、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、亜リン酸、過塩素酸、塩素酸及び亜塩素酸から成る群から選択される、請求項2の塩。
【請求項8】
前記酸が、カルボン酸又はスルホン酸である、請求項2の塩。
【請求項9】
前記カルボン酸が、アスコルビン酸、炭酸、及びフマル酸から成る群から選択される、請求項8の塩。
【請求項10】
前記スルホン酸が、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸及びトルエンスルホン酸から成る群から選択される、請求項8の塩。
【請求項11】
前記塩が、塩酸塩、メシレート、EDTA、亜硫酸塩、L-アスパラギン酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、L-グルタミン酸塩、(+)-L-酒石酸塩、クエン酸塩、L-乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、ヘキサン酸塩、酪酸塩、又はプロピオン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項12】
前記塩が、14.79゜、23.63゜及び29.81゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の塩酸塩である、請求項1の塩。
【請求項13】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき125−155℃の溶融吸熱を特徴とする、請求項12の塩。
【請求項14】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき130−144℃の溶融吸熱を特徴とする、請求項12の塩。
【請求項15】
前記塩が、8.52゜、22.09゜及び25.93゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターン特徴とする結晶形のメシレート塩である、請求項1の塩。
【請求項16】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき140℃の溶融吸熱を特徴とする、請求項15の塩。
【請求項17】
前記塩が、7.14゜、22.18゜及び24.63゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のEDTA塩である、請求項1の塩。
【請求項18】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−90℃、165−170℃及び170−200℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項17の塩。
【請求項19】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき73℃、169℃及び197℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項17の塩。
【請求項20】
前記塩が、15.73゜、19.23゜及び22.67゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の亜硫酸塩である、請求項1の塩。
【請求項21】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき100−140℃での溶融吸熱を特徴とする、請求項20の塩。
【請求項22】
前記塩が、21.61゜、22.71゜及び23.24゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のL-アスパラギン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項23】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−100℃、170−195℃及び195−250℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項22の塩。
【請求項24】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき86℃、187℃及び239℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項22の塩。
【請求項25】
前記塩が、20.81゜、27.38゜及び28.23゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のマレイン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項26】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき95−130℃及び160−180℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項25の塩。
【請求項27】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき119℃及び169℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項25の塩。
【請求項28】
前記塩が、17.09゜、21.99゜及び23.21゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のリン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項29】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき130−145℃での溶融吸熱を特徴とする、請求項28の塩。
【請求項30】
前記塩が、13.33゜、21.39゜及び30.99゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のL-グルタミン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項31】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−100℃、175−195℃及び195−220℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項30の塩。
【請求項32】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき84℃、183℃及び207℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項30の塩。
【請求項33】
前記塩が、7.12゜、13.30゜及び14.22゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の(+)-L-酒石酸塩である、請求項1の塩。
【請求項34】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき60−110℃及び185−220℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項33の塩。
【請求項35】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき91℃及び203℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項33の塩。
【請求項36】
前記塩が、13.31゜、14.23゜及び23.26゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のクエン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項37】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−100℃及び160−220℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項36の塩。
【請求項38】
前記塩が更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき84℃及び201℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項36の塩。
【請求項39】
前記塩が、13.27゜、21.13゜及び23.72゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のL-乳酸塩である、請求項1の塩。
【請求項40】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき30−100℃及び160−210℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項39の塩。
【請求項41】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき84℃及び198℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項39の塩。
【請求項42】
前記塩が、13.30゜、22.59゜及び23.28゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のコハク酸塩である、請求項1の塩。
【請求項43】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−100℃及び190−210℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項42の塩。
【請求項44】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき79℃及び203℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項42の塩。
【請求項45】
前記塩が、7.14゜、14.26゜及び31.25゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の酢酸塩である、請求項1の塩。
【請求項46】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき60−90℃及び185−210℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項45の塩。
【請求項47】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき93℃及び204℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項45の塩。
【請求項48】
前記塩が、13.27゜、22.54゜及び23.25゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のヘキサン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項49】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−90℃及び190−210℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項48の塩。
【請求項50】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき93℃及び204℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項48の塩。
【請求項51】
前記塩が、13.28゜、22.57゜及び23.27゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形の酪酸塩である、請求項1の塩。
【請求項52】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき40−90℃及び190−210℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項51の塩。
【請求項53】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき89℃及び203℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項51の塩。
【請求項54】
前記塩が、13.29゜、22.52゜及び23.27゜に回折ピーク(2θ)を有するX線回折パターンを特徴とする結晶形のプロピオン酸塩である、請求項1の塩。
【請求項55】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき50−110℃及び190−210℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項54の塩。
【請求項56】
前記塩が、更に、微分走査熱量測定方法により走査速度10℃/分で測定したとき94℃及び204℃での多数の可逆的溶融吸熱を特徴とする、請求項54の塩。
【請求項57】
請求項1の塩を含む医薬組成物。
【請求項58】
前記医薬組成物が、その中に塩が溶解されている液体形である、請求項57の医薬組成物。
【請求項59】
前記塩が、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、又はその組合せを含む非水性溶媒に溶解されている、請求項58の医薬組成物。
【請求項60】
前記医薬組成物が、その中に塩が溶解されている水溶液である、請求項58の医薬組成物。
【請求項61】
前記医薬組成物が、経口投与形である、請求項57の医薬組成物。
【請求項62】
前記経口投与形が、錠剤、カプセル、懸濁物又は液体である、請求項61の医薬組成物。
【請求項63】
請求項57に記載の医薬組成物を含む滅菌容器。
【請求項64】
前記容器が、バイアル、注入器、又はアンプルである、請求項63の容器。
【請求項65】
前記医薬組成物が、液体形であり、前記容器が1から50mLの医薬組成物を含む、請求項63の容器。
【請求項66】
固体形のデシタビンの塩を収納する第一の容器、及び、水、食塩水、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、又はその組合せを含む希釈液を収納する第二の容器を含む、キット。
【請求項67】
塩が、凍結乾燥粉末の形態である、請求項66のキット。
【請求項68】
前記塩が、結晶形である、請求項66のキット。
【請求項69】
前記第一の容器の塩の量が、0.1から200mgである、請求項66のキット。
【請求項70】
前記第一の容器の塩の量が5から50mgである、請求項66のキット。
【請求項71】
前記希釈液が、プロピレングリコール及びグリセリンの組合せであり、更に前記希釈液中のプロピレングリコールの濃度が20−80%である、請求項66のキット。
【請求項72】
更に、デシタビンの固体塩及び希釈液を混合して医薬処方物を作成する方法を記載した指示書を含む、請求項66のキット。
【請求項73】
望ましくない細胞分裂を伴う疾患を対象者で治療する方法であって、前記方法が、その必要がある対象者に医薬的に有効な量の請求項1の塩を投与することを含む、前記治療方法。
【請求項74】
請求項1の塩が、前記対象者に対して、経口的に、非経口的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻内に、リポソームにより、吸入により、膣内に、眼内に、局部デリバリーにより、皮下に、脂肪内に、関節内に又は脊髄内に投与される、請求項73の方法。
【請求項75】
請求項1の塩が、対象者に経口的に投与される、請求項73の方法。
【請求項76】
前記疾患が、良性腫瘍、癌、血液学的異常、アテローム性硬化症、外科手術による体組織の傷害、異常な創傷治癒、異常な血管形成、組織の線維症を生じる疾患、反復性運動異常、高度に血管が形成されない組織の異常、及び器官移植に伴う増殖性応答から成る群から選択される、請求項73の方法。
【請求項77】
前記疾患が、骨髄形成異常症候群、白血病、悪性腫瘍、及び鎌状赤血球貧血である、請求項73の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図22】
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【図39】
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【図41】
【図42】
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【図47】
【図48】
【図49】
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【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
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【図64】
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【図59】
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【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【公表番号】特表2008−514638(P2008−514638A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533752(P2007−533752)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/034779
【国際公開番号】WO2006/037024
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(501170688)スーパージェン インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/034779
【国際公開番号】WO2006/037024
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(501170688)スーパージェン インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
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