説明

デジタル情報のコピー防止方法

提供されるデジタル情報の複製を防止する方法は:(a)少なくとも一のコンテンツ提供者(40)、デジタル情報再生のための一つまたは複数の機器(50)を持っている少なくとも一の消費者、前記少なくとも一のコンテンツ提供者(40)から前記少なくとも一の消費者に前記デジタル情報の正規の複製を配送するための第一の配送手段、および前記少なくとも一のコンテンツ提供者(40)から前記少なくとも一の消費者に前記デジタル情報の不正な複製を配送する可能性のある第二の配送手段(20)を有するシステムを提供し、(b)前記少なくとも一のコンテンツ提供者(40)を、前記デジタル情報の正規の複製を前記少なくとも一の顧客に前記第一の配送手段(30)を通じて提供しうるよう構成し、(c)前記少なくとも一のコンテンツ提供者(40)からの前記デジタル情報の複製の第二の配送手段(20)を通じた配送のための構成をし、ここで前記デジタル情報の少なくとも一部分は透かし入れされており、(d)前記一つまたは複数の機器(50)を、提示された透かし入れされたデジタル情報を同定するよう動作し、透かし入れされたデジタル情報の再生を妨げうる透かし検出手段(65、70)を含むよう構成する、ステップを有する。前記第二の配送手段(20)はたとえばダークネットである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル情報のコピーを防止する方法に関するものである。特に、これに限るものではないが、本発明は、善良な販売店、音楽ストア、通信販売業者といった伝統的な頒布ネットワークを通じて消費者に小売りされうる音楽ファイルおよびビデオファイルといったデジタル情報のダークネットにおけるコピーを防止する方法に関する。さらに、本方法は前記の方法を実装に使用するための好適なシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景においては「ダークネット(Darknet)」という用語を使う。ダークネットは、デジタル情報(デジタルコンテンツとしても知られる)を共有するために使われるネットワークおよび技術の集合体として定義される。さらに、ダークネットは物理的に独立したネットワークではなく、インターネットのような既存の通信ネットワークに乗っているソフトウェアアプリケーションおよびソフトウェアプロトコル層である。ダークネットの例としては、ピアツーピアファイル共有、CDおよびDVDのコピーならびに電子メールおよびニュースグループ上での鍵および/またはパスワードの教え合いが含まれる。ここ数年で、ダークネットの総帯域幅、信頼性、有用性、共有ライブラリ規模およびそれについての検索エンジンの可用性は大幅に向上した。
【0003】
一方、最近では価値のある品がますます目に見えにくくなっており、しばしば単にデジタル情報のデータのビットおよび/またはバイトであったり、ビットおよび/またはバイトとして正確に表現できたりする。パケット交換ネットワークの広範な展開およびコンピュータやコーデック技術の進歩により、価値のある品をインターネットを通じてデジタルの形で配送することが実用可能となり、魅力的にさえなった。ネットワークの中でもインターネットは、パーソナル化された高品質のコンテンツの低コスト配送のための著しい機会を提供する。現在の課題は、そのようなコンテンツは不正頒布が比較的容易にされうるということである。そのようなコンテンツの複製および頒布の適法性は著作権関連諸法が定めているが、コンピュータや高速ネットワークが世界中でますます利用可能になるにつれ、そのような法律はますます無力となりつつある。
【0004】
価値のあるデジタル情報(そのような情報をデータオブジェクトとも称する)のダークネット上での複製および頒布は、次の三つの条件が満たされたときに生起する:
(a)何らかの広く頒布されたデータオブジェクトがネットワークユーザーの一部分に複製を許す形で利用可能となる、
(b)ネットワークユーザーはデータオブジェクトの複製が可能であり気に入ることであれば行う、
(c)ネットワークユーザーがデータオブジェクトを迅速に伝達できる大容量回線によって接続されている。
【0005】
このように、ダークネットは、条件(a)に従ったデータオブジェクトの注入から生じる頒布ネットワークであり、データオブジェクトの頒布は条件(b)および(c)に従って生起する。
【0006】
より最近では、たとえばCDの形および同様の媒体上で販売されるようなオーディオ録音に関し、「リップフラッシュ(Ripflash)」という商標名をもつ機器が近年発売された。この機器は179ドル程度で小売りされる装置である。この装置は、たとえばCDプレーヤーのようなオーディオ再生装置につないで、それからたとえばスピーカーを駆動するために出力されるようなアナログ信号などを受信し、その信号をデジタル化して対応するデジタルオーディオファイルを生成するよう動作できる。そうしたファイルは暗号化されていないので、ダークネット上で自由に頒布されうる。その装置はたとえばマイクにつないで単なる音声録音装置とするなど多くの合法的な用途があるので、その装置のメーカーはその装置を製造・販売することで何らかの法律に違反しているとは見なされていない。
【0007】
過去数年の間に、主要な音楽および映画レコーディング会社は、ダークネット上、たとえばインターネットの一部を通じて頒布されるオーディオおよびビデオ記録の不正コピーによって利益が侵食されるのを目にしてきた。そのような不正頒布は一つまたは複数の中央ネットワークサーバーから、あるいはピアツーピアの分散式の頒布方法で行われる。
【0008】
オーディオおよび/またはビデオデータオブジェクトの不正頒布はレコード会社にとって主要な懸念であると報告されている。そんなレコード会社の一例であるソニー・コーポレーションの一部は、音楽アーチストと契約し、その音楽を録音し、その後その音楽があらかじめ記録されたCDおよび/または類似のデータ担体を製造することに関わっている。米国の場合、「出荷単位数」、すなわちレコード店に配送されたり消費者に直接小売りされたりした録音済みCDの数は、2001年には6%超、2002年には6から10%落ちたと報告されている。そのような売り上げの落ち込みはレコード会社に激しい影響を与えている。たとえば、そうしたレコード会社は従業員をレイオフしたり、アーチストを捨てたり、アーチストのツアーおよびビデオのための予算を減らしたり、制作して発売するのに比較的少ない投資ですむ以前の録音の再発売をしようと過去のカタログを渉猟したりする。
【0009】
暗号化、秘密鍵/公開鍵、ならびに価値のあるデータオブジェクトの不正な複製および頒布に対するその他の関連する防壁を使うことは以前にも提案されたことがある。実際には、コンピュータハッカーおよびそのような個人はたいていの場合にそのような防壁を迂回する力があることが見出されている。ひとたび防壁が破られれば、関連するデータオブジェクトのその後の拡散はダークネット上で比較的迅速に起こる。たとえば数日、さらには数時間のうちに起こることさえある。さらに、データオブジェクトのそのような防壁破りおよびその後の不正頒布は、当該データオブジェクトを最初にハッキングした人物が実質匿名のままであり、それゆえ責任追及を免れる状況で生起しうる。さらに、特にピアツーピア頒布が行われる場合には、ハッキングされたデータオブジェクトの頒布者の特定はしばしば事実上不可能である。こうした理由により、著作権侵害を特定して防止する伝統的な方法、たとえば裁判は、緩慢な反応時間および付随する骨の折れる手続きのため有効ではない。
【0010】
前述した防壁が実質迂回可能であり、装置の購入者がCDやDVDといったデータ担持媒体からハッキングされたデータオブジェクトとオリジナルの正規版のデータオブジェクトの両方を再生できる装置を購入する傾向がより強いとの認識から、レコード会社はデータオブジェクトの偽造およびハッキングに対処する別のアプローチが必要とされていることを認識するに至った。
【0011】
たとえば、米国特許出願第US2002/0082999号では、通信ネットワークを通じてデジタル音楽ファイルが不法に頒布されることによるレコード売り上げ高の減少を防止する方法が記載されている。その方法は:
(a)宣伝用のデジタル音楽ファイルを、協力するレコード会社のレコードのオリジナル音楽ファイルの音質を劣化または損傷させることによって制作し、
(b)通信ネットワークを通じて前記宣伝用デジタル音楽ファイルを頒布する、
ステップを有している。
【0012】
この方法の結果、宣伝用の音質を落としたデジタル音楽ファイルが作られ、対応する正式なレコードが発売されるまではそれがネットワーク上で配布され、それによりオリジナルの音楽ファイルと同じ品質の不法なデジタル音楽ファイルのネットワーク上での流通が減少する。しかし、この方法は一人以上の顧客が、その音楽を気に入り、かつその録音の品質には満足せずにオリジナルの音楽ファイルのために完全な価格を払う気になることを前提としている。さらに、当該オリジナル音楽ファイルの複製が少しでも販売されれば、そのコンテンツはその後ダークネットを通じて急速に頒布されることになる。
【0013】
マイクロソフト社による、Peter Biddle, Paul England, Marcus Peindo and Bryan Willman,“The Darknet and the Future of Content Distribution”と題する刊行物では、データオブジェクト中での透かしの使用が知られていることが報告されている。そのような透かしは、データオブジェクトが音楽ファイルおよび/またはビデオファイルである場合には再生時に実質知覚不能となるように構成される。しかし、データオブジェクトに加えられたそのような透かしは電子的な検出にはかかる。画像コンテンツおよびコンピュータプログラムについてはすでにおびただしい数のデジタル透かし方式が知られている。再生装置は、透かしのはいったオリジナルデータオブジェクトとともに動作するよう構成されることになっている。しかし、透かし検出システムの組み込まれた装置はユーザーにとっては透かし検出のない対応する装置に比べて魅力的ではない。よって、そのようなアプローチは国際法規によって義務づけられない限り商業的に失敗する可能性が高い。
【0014】
たとえ透かし入れシステムが義務づけられたとしても、そのようなアプローチはさまざまな技術的な不備のために失敗する可能性が高い。
【0015】
第一の不備は、透かしを担う埋め込み層の細工に対する堅牢性に関するものである。さらに、ほとんどの透かしはハッカーによって潜在的に実行可能な簡単なデータ変換によって除去されることができる。透かしはデータオブジェクトの比較的大きな部分に浸透するよう構成されることもできるが、その場合、対応するデータオブジェクト再生装置は透かし検出目的のために比較的より大きなデータ領域を検索することが要求される。その結果、透かし検索時間が長くなって不適切なものとなる。
【0016】
第二の不備は鍵管理に関するものである。現在のほとんどの透かし入れ方式は広く展開された暗号鍵を必要とする。標準的な透かし入れ方式は、公開アルゴリズム(検出器)および秘密鍵(マーカー)の伝統的な暗号原理に基づいている。ほとんどの透かし入れ方式はマーカーと検出器との間で共通鍵を使う。実際上、これはすべての透かし検出器が秘密鍵を与えられている、典型的には秘密鍵を共有している必要があるということを意味する。熟達したハッカーを含む敵対的な環境においてはそのような秘密鍵を秘密に保つのは難しい。ひとたびそのような秘密鍵が漏れれば、ダークネットはそれを効率的に伝達し、そのような透かし保護を無力にしてしまう。
【0017】
第三の不備は、ソフトウェア的に実装されているオープンなコンピューティング機器上での透かし検出器に関するものである。そのような実装は容易に迂回することができる。すなわち、単にソフトウェアの一部を置き換えるのである。ハードウェアの中に、たとえば既存のコンピューティング装置の中に検出器を入れることは許容できないほど高くつき、非実用的であり、よって不適切である。
【0018】
ダークネットが将来にわたって存続して低コストで高品質のサービスを大きな顧客グループに対して提供するであろうことを示す根拠がある。そのような証拠が意味するところは、多くの市場において、ダークネットは合法的な商売の競争相手であり続けるということである。
【0019】
デジタル情報、たとえばデータオブジェクトの複製を防止するための、たとえば:
(i)暗号化、
(ii)米国特許US2002/0082999で記載されるような劣化コピーの配布、
(iii)透かし入れ、
による従前の試みの欠点にもかかわらず、本発明人は、ダークネット上でのデジタル情報の複製を防止するための代替的なアプローチが必要とされることを認識するに至った。本発明人は本発明によりそのような方法を考案した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の第一の目的は、デジタル情報、たとえば音楽および/または画像データファイルの、公共ネットワーク、たとえばダークネット上での複製を防止するより効果的な方法を提供することである。
【0021】
本発明の第二の目的は、デジタル情報の複製を、該情報中に透かしデータを含めることによって防止するより効果的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第一の側面によれば、デジタル情報の複製を防止する方法であって:
(a)少なくとも一のコンテンツ提供者、デジタル情報再生のための一つまたは複数の機器を持っている少なくとも一の消費者、前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記少なくとも一の消費者に前記デジタル情報の正規の複製を配送するための第一の配送手段、および前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記少なくとも一の消費者に前記デジタル情報の不正な複製を配送する可能性のある第二の配送手段を有するシステムを提供し、
(b)前記少なくとも一のコンテンツ提供者を、前記デジタル情報の正規の複製を前記少なくとも一の顧客に前記第一の配送手段を通じて提供しうるよう構成し、
(c)前記少なくとも一のコンテンツ提供者からの前記デジタル情報の複製の第二の配送手段を通じた配送のための構成をし、ここで前記第二の配送手段を通じて配送される前記デジタル情報の少なくとも一部分は透かし入れされており、
(d)前記一つまたは複数の機器を、提示された透かし入れされたデジタル情報を同定するよう動作し、透かし入れされたデジタル情報の再生を妨げうる透かし検出手段を含むよう構成する、
ステップを有することを特徴とする方法。
【0023】
本発明は、前記第二の配送手段を通じた前記デジタル情報の頒布を少なくとも部分的に失敗させることができるという効果がある。
【0024】
前記少なくとも一のコンテンツ提供者は、たとえば少なくとも一つのレコード会社である。好ましくは、前記デジタル情報の正規の複製には前記検出器によって検出できる透かしは実質存在しない。換言すれば、正規の複製は前記一つまたは複数の機器には検出できない別の種類の透かしを含みうる。
【0025】
好ましくは、前記デジタル情報の透かし入れされている部分はわからないように透かし入れされている。そのような秘匿透かし入れは、前記第二の配送手段が、そこに送られてくる、デジタル情報の再生を防ぐために透かし入れされたデジタル情報をフィルタ処理することを失敗させることができる。
【0026】
海賊コピーを減らすための前記方法を実際上、より効果的にするために、前記透かし検出手段は好ましくは前記一つまたは複数の機器に対する法的な要求である。
【0027】
前記方法を適用する際、前記第二の配送手段がダークネットを含んでいることが有益である。
【0028】
好ましくは、前記第一の配送手段は:インターネットの少なくとも一部、商店/小売業者、郵便配達サービスおよびライブラリ施設のうちの少なくとも一つを有する。そのような第一の配送手段は、当該デジタル情報の販売から導かれる収入が前記少なくとも一のコンテンツ提供者、たとえば少なくとも一つのレコード会社に環流することを保証できるという利点がある。
【0029】
好ましくは、前記デジタル情報の正規の複製は物理的なデータ担体上で伝達される。より好ましくは、前記データ担体はCDおよびDVDの少なくとも一つである。
【0030】
好ましくは、前記少なくとも一のコンテンツ提供者、たとえば少なくとも一つのレコード会社から前記第二の配送手段を通じた配送のために提供される前記デジタル情報の20%超が透かし入れの対象とされる。より好ましくは、前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記第二の配送手段を通じた配送のために提供される前記デジタル情報の50%超が透かし入れの対象とされる。最も好ましくは、前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記第二の配送手段を通じた配送のために提供される前記デジタル情報の80%超が透かし入れの対象とされる。
【0031】
好ましくは、前記第二の配送手段を通じて前記デジタル情報を入手しようとする一人以上の顧客にさらにフラストレーションを与えるため、前記一つまたは複数の機器は、前記デジタル情報が少なくとも部分的に透かし入れされている場合、受信したデジタル情報の再生をランダムに妨げるよう動作しうる。
【0032】
本発明の第二の側面によれば、デジタル情報の複製を防止するシステムであって:
(a)少なくとも一のコンテンツ提供者、たとえば少なくとも一つのレコード会社と、
(b)デジタル情報再生のための一つまたは複数の機器を持っている少なくとも一の消費者と、
(c)前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記少なくとも一の消費者に前記デジタル情報の正規の複製を配送するための第一の配送手段と、
(d)前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記少なくとも一の消費者に前記デジタル情報の複製を配送する可能性のある第二の配送手段とを有しており、
当該システムが:
(e)前記少なくとも一のコンテンツ提供者が、前記デジタル情報の正規の複製を前記少なくとも一の顧客に前記第一の配送手段を通じて提供することができ、
(f)前記第二の配送手段が前記デジタル情報の複製を配送することができ、ここで前記第二の配送手段によって配送される前記デジタル情報の少なくとも一部分は透かし入れされており、
(g)前記一つまたは複数の機器が、提示された透かし入れされたデジタル情報を同定するよう動作し、透かし入れされたデジタル情報の再生を妨げうる透かし検出手段を含む、
よう構成されていることを特徴とするシステム。
【0033】
本システムは、本発明の前記目的の少なくとも一つに対処することができる。
【0034】
好ましくは、前記デジタル情報の正規の複製には前記検出器によって検出できる透かしは実質存在しない。
【0035】
好ましくは、前記デジタル情報の透かし入れされている部分は、わからないように透かし入れされている。
【0036】
好ましくは、前記透かし検出手段は前記一つまたは複数の機器に対する法的な要求である。
【0037】
前記第二の配送手段がダークネットを含んでいることが有益である。
【0038】
好ましくは、前記第一の配送手段は:インターネットの少なくとも一部、商店/小売業者、郵便配達サービスおよびライブラリ施設のうちの少なくとも一つを有する。
【0039】
好ましくは、前記デジタル情報の正規の複製は物理的なデータ担体上で伝達される。より好ましくは、前記データ担体はCDおよびDVDの少なくとも一つである。
【0040】
好ましくは、前記少なくとも一のコンテンツ提供者、たとえば少なくとも一つのレコード会社から前記第二の配送手段を通じた配送のために提供される前記デジタル情報の20%超が透かし入れの対象とされる。より好ましくは、前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記第二の配送手段を通じた配送のために提供される前記デジタル情報の50%超が透かし入れの対象とされる。最も好ましくは、前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記第二の配送手段を通じた配送のために提供される前記デジタル情報の80%超が透かし入れの対象とされる。
【0041】
好ましくは、前記一つまたは複数の機器は、前記デジタル情報が少なくとも部分的に透かし入れされている場合、受信したデジタル情報の再生をランダムに妨げるよう動作しうる。
【0042】
本発明の諸特徴は本発明の範囲から外れることなくいかなる組み合わせで組み合わせることもできることは理解されるであろう。
【0043】
これから本発明の実施形態についてあくまでも例として図面を参照しつつ説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明人は、デジタル情報、たとえばオーディオおよび/またはビデオコンテンツに対応するデータオブジェクトの不正な複製および頒布が:
(a)不正な複製をする気をなくさせるためにダークネット上で頒布されるデータオブジェクトのコピーの少なくとも一部に透かし入れすること、および、
(b)顧客には、データオブジェクト中の透かしデータを検出することができ、透かしデータのないデータオブジェクトを再生することができ、透かし入れされたデータオブジェクトとの再生を妨げる機能を有する再生機器を提供すること、
の相乗的な組み合わせによってより効果的に対処されることを認識するに至った。
【0045】
本発明の方法からはいくつかの恩恵が導かれる。すなわち、前記機器は、データオブジェクトに該機器に検出可能な透かしがない場合には、該機器と互換なフォーマットのすべてのデータオブジェクトを再生するよう動作可能である。よって、該機器は、たとえば過去の年月にわたって蓄積されたCDのコレクションといった以前のデータオブジェクトに対する上位互換性を提供できる。そのような上位互換性は、当該機器を透かし検出機能のない代替製品よりも優先して顧客に受け入れてもらえるようにする上で重要である。
【0046】
ダークネット上で頒布されるデータオブジェクトに挿入される透かしは、好ましくはダークネットの通常のユーザーには実質検出できない、すなわち秘匿されている。
【0047】
本発明の方法についてこれから図1を参照しつつより詳細に説明する。
【0048】
図1では、データオブジェクトの頒布システムの概略図が全体として10で示されて与えられている。システム10はダークネット20および正規の小売りチャネル30を有する。システム10はまた、一つまたは複数のレコード会社、たとえばレコード会社40を組み込んでいる。レコード会社40は、記録済みデータ担体、たとえばCDやDVDの製造業者または供給業者である。代替的に、あるいは追加的に、レコード会社40は総合データコンテンツ提供業者であってもよい。よって、各データ担体にはレコード会社40によって合法的に提供される一つまたは複数のデータオブジェクトが記録済みである。システム10はさらに、一つまたは複数の顧客の再生装置、たとえば全体として50で示され、一点鎖線55で囲まれている顧客機器を含んでいる。機器50は一つまたは複数のデータ担体にアクセスするためのドライブ60を含んでいる。たとえばドライブ60は、CDおよびDVDのうちの一つ以上を受容し、光学的に問い合わせすることのできる光ディスクユニットである。機器50はさらに、バッファ65、透かし検出器70およびデコーダ75を有している。ドライブ60はバッファ65に結合されていて該ドライブ60に与えられたデータ担体から読み出されたデータをそこに提供するようになっている。さらに、バッファ65からの第一のデータ出力はデコーダ75のデータデコード入力に結合されている。デコーダは提示されたデータオブジェクトをデコードしてそれから対応するオーディオおよび/またはビデオ番組素材を生成することができる。さらに、バッファ65からの第二のデータ出力は検出器70に結合されており、透かし解析のためにそこにデータを提供するようになっている。バッファ65が必要なのは、たとえばオーディオデータオブジェクトの場合、動作中該バッファ65を通過するデータオブジェクトのかなりの割合にわたって透かしデータが分布しているからである。データバッファ65はまた、機器50に機械的な耐衝撃堅牢特性を与えることもできる。
【0049】
システム10の動作についてこれから図1を参照しつつ説明する。
【0050】
レコード会社40がデータオブジェクトを生成する。このデータオブジェクトは、黒丸で表された透かし入れされたデータオブジェクト(WDO: watermarked data objects)または白丸で表された透かしのないデータオブジェクト(UDO: non-watermarked data objects)である。
【0051】
レコード会社40は正規のデータオブジェクトをUDOの形で、たとえば通信販売および/または商店/店舗を通じた小売りのためには物理的なCDおよび/またはDVDといったデータ担体に載せて、あるいはたとえばインターネットを通じた善良なデータオブジェクト頒布のためにはデータオブジェクトとして顧客からレコード会社40への支払いと引き替えに頒布する。このように、収入を生み出すために、レコード会社40は、たとえば商店/店舗および/または合法的なインターネット販売といった正規の小売りチャネル30を通じて透かしのないデータオブジェクト(UDO)を一つまたは複数の機器50を所有している一人以上の顧客に頒布する。
【0052】
さらに、レコード会社40はまた、対応する透かしのないデータオブジェクト(UDO)および透かし入れされたデータオブジェクト(WDO)の混合をダークネット20を通じて頒布もする。ダークネット20経由での頒布の論理は、正規の小売りチャネル30を通じて合法的に購入した顧客の少なくとも一部はいずれにせよ透かしのないデータオブジェクト(UDO)の不正コピーをダークネット20経由で頒布するようになるだろうというものである。
【0053】
一つまたは複数の機器50を所有する顧客は多くの場合、ダークネット20を通じてデータオブジェクトの不正コピーを探し求める。当該データオブジェクトのそのような不正コピーが透かし入れされているかどうか、すなわち不正コピーがWDOであるかUDOであるかは意識せずに、顧客はそのような不正データオブジェクトをダウンロードする。顧客がその不正コピーを自分の一つまたは複数の機器50で再生しようとしたとき、WDOであった場合には、その中にあるバッファ65がその中にある検出器70と一緒になって、デコーダ75がそのダークネット20から取得された不正データオブジェクトを再生するのを防止する。しかし、UDOであった場合には、その中にあるバッファ65がその中にある検出器70と一緒になって、デコーダ75がそのダークネット20から取得された不正データオブジェクトを再生するのを許容する。
【0054】
好ましくは、機器50はWDOの再生を妨げるための前記バッファ65および付随する検出器70を含むことが法的効力によって要求される。
【0055】
結果は、一人以上の顧客がダークネット20経由で取得したデータオブジェクトの不正コピーが再生時に信頼できないという経験をすることになる。それに対して、正規の小売りチャネル30を通じて購入された対応するデータオブジェクトの正規のコピーは実質常に確実に再生できる。結果として、顧客はダークネット20を通じた不正コピーを取得することから生じる失望を避けるため、チャネル30経由で正規のデータオブジェクトを購入する気になる。
【0056】
さらに顧客を混乱させるために、顧客の一つまたは複数の機器50は追加的に乱数発生器を含んでおり、透かし入れされたデータオブジェクト(WDO)の存在を検出したときにWDOの再生をランダムに許容したり妨げたりすることも有益である。これにより、ダークネット20経由で取得された一見信頼できない不正データオブジェクトに関連するフラストレーションによって顧客はそのようなデータオブジェクトの正規コピーを善良に取得する気にさせられる。
【0057】
レコード会社40はUDOおよびWDOの多数のコピーをダークネット20を通じて頒布するため、ダークネット20の運営者がダークネット20経由で頒布されるデータオブジェクトのすべてのコピーを検査してそれが透かしデータを含んでいるかどうかを判定することは実際的ではない。したがって、ダークネット20の運営者がダークネット20から顧客にフラストレーションを与えるよう構成されたデータオブジェクトのコピーを除去することは非実際的である。
【0058】
ダークネット20上でレコード会社40によって頒布されるデータオブジェクトのWDOとUDOの比は、予想される不正コピーの度合いに応じて変えることができる。好ましくは、ダークネット20上でレコード会社40によって頒布されるデータオブジェクトの20%超がWDOである。より好ましくは、ダークネット20上でレコード会社40によって頒布されるデータオブジェクトの50%超がWDOである。最も好ましくは、ダークネット20上でレコード会社40によって頒布されるデータオブジェクトの80%超がWDOである。
【0059】
伝統的なアプローチでは透かしデータがないことを再生を妨げるのに利用していたのに対し、本発明は実質逆のアプローチを用いている点で区別される。すなわち、透かしデータが再生を妨げるのである。本発明人は、不正コピー、すなわちダークネット20で近年見られるハッキングおよび/または海賊行為に関わる人間心理を綿密に考察したのちに、そのような逆のアプローチが有益であると認識するに至った。
【0060】
上記において、データコンテンツとして与えられる透かし入りの音楽と透かしなしの音楽との区別をするのが消費者にとって困難であることが好ましい。データが適切な透かし検出ハードウェアが備わっている一つまたは複数の機器で再生されたときにはじめて透かし入りと透かしなしのデータコンテンツの違いが消費者に明らかになるのである。
【0061】
上記に記載された本発明の実施形態は本発明の範囲から外れることなく修正されうることは理解されることであろう。
【0062】
上記において、「含む」「有する」「組み込む」「もつ」「ある」「である」といった表現は、明記されていない追加的な項目および/または構成要素が存在することを排除するものではないと解釈されるものとする。同様に、単数形が複数を指すと解釈される場合もあり、その逆もある。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の方法に従って動作できるシステムの概略図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル情報の複製を防止する方法であって:
(a)少なくとも一のコンテンツ提供者、デジタル情報再生のための一つまたは複数の機器を持っている少なくとも一の消費者、前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記少なくとも一の消費者に前記デジタル情報の正規の複製を配送するための第一の配送手段、および前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記少なくとも一の消費者に前記デジタル情報の不正な複製を配送する可能性のある第二の配送手段を有するシステムを提供し、
(b)前記少なくとも一のコンテンツ提供者を、前記デジタル情報の正規の複製を前記少なくとも一の顧客に前記第一の配送手段を通じて提供しうるよう構成し、
(c)前記少なくとも一のコンテンツ提供者からの前記デジタル情報の複製の第二の配送手段を通じた配送のための構成をし、ここで前記デジタル情報の少なくとも一部分は透かし入れされており、
(d)前記一つまたは複数の機器を、提示された透かし入れされたデジタル情報を同定するよう動作し、透かし入れされたデジタル情報の再生を妨げうる透かし検出手段を含むよう構成する、
ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記デジタル情報の正規の複製に前記検出器に検出できる透かしが実質存在しないことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記デジタル情報の透かし入れされている部分が、わからないように透かし入れされていることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記透かし検出手段が前記一つまたは複数の機器に対する法的な要求であることを特徴とする、請求項1ないし3のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記第二の配送手段がダークネットを含んでいることを特徴とする、請求項1ないし4のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記第一の配送手段が:インターネットの少なくとも一部、商店/小売業者、郵便配達サービスおよびライブラリ施設のうちの少なくとも一つを有することを特徴とする、請求項1ないし5のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記デジタル情報の正規の複製が物理的なデータ担体上で伝達されることを特徴とする、請求項1ないし6のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記データ担体がCDおよびDVDの少なくとも一つであることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記第二の配送手段を通じた配送のために提供される前記デジタル情報の20%より多い部分が透かし入れの対象とされることを特徴とする、請求項1ないし8のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記第二の配送手段を通じた配送のために提供される前記デジタル情報の50%より多い部分が透かし入れの対象とされることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記第二の配送手段を通じた配送のために提供される前記デジタル情報の80%より多い部分が透かし入れの対象とされることを特徴とする、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
前記一つまたは複数の機器が、前記デジタル情報が少なくとも部分的に透かし入れされている場合、受信したデジタル情報の再生をランダムに妨げるよう動作しうることを特徴とする、請求項1ないし11のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
デジタル情報の複製を防止するシステムであって:
(a)少なくとも一のコンテンツ提供者と、
(b)デジタル情報再生のための一つまたは複数の機器を持っている少なくとも一の消費者と、
(c)前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記少なくとも一の消費者に前記デジタル情報の正規の複製を配送するための第一の配送手段と、
(d)前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記少なくとも一の消費者に前記デジタル情報の複製を配送する可能性のある第二の配送手段とを有しており、
当該システムが:
(e)前記少なくとも一のコンテンツ提供者が、前記デジタル情報の正規の複製を前記少なくとも一の顧客に前記第一の配送手段を通じて提供することができ、
(f)前記第二の配送手段が前記デジタル情報の複製を配送することができ、ここで前記第二の配送手段によって配送される前記デジタル情報の少なくとも一部分は透かし入れされており、
(g)前記一つまたは複数の機器が、提示された透かし入れされたデジタル情報を同定するよう動作し、透かし入れされたデジタル情報の再生を妨げうる透かし検出手段を含む、
よう構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項14】
前記デジタル情報の正規の複製に前記検出器に検出できる透かしが実質存在しないことを特徴とする、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記デジタル情報の透かし入れされている部分が、わからないように透かし入れされていることを特徴とする、請求項13または14記載のシステム。
【請求項16】
前記透かし検出手段が前記一つまたは複数の機器に対する法的な要求であることを特徴とする、請求項13ないし15のうちいずれか一項記載のシステム。
【請求項17】
前記第二の配送手段がダークネットを含んでいることを特徴とする、請求項13ないし16のうちいずれか一項記載のシステム。
【請求項18】
前記第一の配送手段が:インターネットの少なくとも一部、商店/小売業者、郵便配達サービスおよびライブラリ施設のうちの少なくとも一つを有することを特徴とする、請求項13ないし17のうちいずれか一項記載のシステム。
【請求項19】
前記デジタル情報の正規の複製が物理的なデータ担体上で伝達されることを特徴とする、請求項13ないし18のうちいずれか一項記載のシステム。
【請求項20】
前記データ担体がCDおよびDVDの少なくとも一つであることを特徴とする、請求項19記載のシステム。
【請求項21】
前記少なくとも一のコンテンツ提供者から提供される前記デジタル情報の20%より大きな部分が透かし入れの対象とされることを特徴とする、請求項13ないし20のうちいずれか一項記載のシステム。
【請求項22】
前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記第二の配送手段を通じた配送のために提供される前記デジタル情報の50%より大きな部分が透かし入れの対象とされることを特徴とする、請求項21記載のシステム。
【請求項23】
前記少なくとも一のコンテンツ提供者から前記第二の配送手段を通じた配送のために提供される前記デジタル情報の80%より大きな部分が透かし入れの対象とされることを特徴とする、請求項21または22記載のシステム。
【請求項24】
前記一つまたは複数の機器が、前記デジタル情報が少なくとも部分的に透かし入れされている場合、受信したデジタル情報の再生をランダムに妨げるよう動作しうることを特徴とする、請求項13ないし23のうちいずれか一項記載のシステム。

【公表番号】特表2007−503040(P2007−503040A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523715(P2006−523715)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051385
【国際公開番号】WO2005/017894
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】