説明

デジタル放送受信装置

【課題】デジタル放送番組の視聴中における受信状態を良好にし、ユーザによる安定した視聴が可能となるデジタル放送受信装置を提供する。
【解決手段】本発明のデジタル放送受信装置は、放送波の受信及び選局を行うチューナと、放送波を復調してデジタル信号を生成する復調部とを備える。また、デジタル放送受信装置の各部を制御する制御部を備える。制御部は、コンテンツの題名または管理情報に対応するコンテンツである本編コンテンツを受信している本編期間を判別する。また、本編コンテンツを受信していない期間である本編外期間を判別する。更に制御部は、本編外期間において、放送波の受信状態が所定の第一指標よりも悪化した場合に、選局されている物理チャンネルと放送局識別情報が同じ、またはこの物理チャンネルと系列が同じである中継/系列局チャンネルを選局するよう、チューナを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送受信機能を有したカーナビゲーションシステムを始めとする、デジタル放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、デジタル放送を移動しながら受信するデジタル放送受信装置が開発されており、例えば、地上デジタル放送受信機能を有したカーナビゲーションシステムが開発されている。
【0003】
地上デジタル放送では、同じ放送局でも、中継局毎に異なる周波数で放送されている場合がある。この場合、受信装置が現在の放送エリアから他の放送エリアに移動した際、或いは放送エリア内であっても、地形や構造物等のために電波の影に移動した際に、受信状態が悪化し、それまで視聴していた番組が視聴できなくなってしまう。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、視聴中の番組の受信状態が悪化すると、自動的に中継局サーチを開始し、中継局が見つかった場合は、その中継局を受信し、中継局が見つからなかった場合は、系列局サーチを開始し、同一系列の放送局が見つかった場合は、その放送局を受信するデジタル放送受信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−188880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1のデジタル放送受信装置では、受信状態が悪化して初めてサーチを開始する。つまり、受信している番組が、番組本編であるか否かを考慮せずに選局動作を行っていた。
【0007】
選局動作においては、受信可能な放送局が見つかり、再び視聴できるようになるまでに、ある程度の時間がかかる。このため、番組本編で選局動作が行われた場合、番組本編の映像/音声に途切れが発生して視聴の妨げとなり、ユーザが視聴したい場面を逃してしまう可能性があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を鑑み、ユーザがデジタル放送番組を視聴している状態における受信状態を良好にし、安定した視聴が可能であるデジタル放送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、放送波の受信及び選局を行うチューナと、前記放送波を復調してデジタル信号を生成する復調部とを備えるデジタル放送受信装置において、前記デジタル信号に含まれるコンテンツのうち、前記コンテンツの題名または管理情報に対応するコンテンツである本編コンテンツを受信している期間である本編期間と、前記本編コンテンツを受信していない期間である本編外期間とを判別し、前記本編外期間において前記放送波の受信状態が予め定められた第一指標よりも悪化した場合に、前記チューナにより選局されている物理チャンネルと放送局識別情報が同じ、または該物理チャンネルと系列が同じである中継/系列局チャンネル(前記チューナの受信中チャンネルを含む)を選局するよう前記チューナを制御する制御部を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、本発明のデジタル放送受信装置は、放送波の受信及び選局を行うチューナと、放送波を復調してデジタル信号を生成する復調部とを備える。また、デジタル放送受信装置の各部を制御する制御部を備える。制御部は、デジタル信号に含まれるコンテンツのうち、コンテンツの題名または管理情報に対応するコンテンツである本編コンテンツを受信している本編期間を判別する。また、本編コンテンツを受信していない期間である本編外期間を判別する。更に制御部は、本編外期間において、放送波の受信状態が所定の第一指標よりも悪化した場合に、選局されている物理チャンネルと放送局識別情報(=ネットワークID)が同じ、またはこの物理チャンネルと系列が同じである中継/系列局チャンネルを選局するよう、チューナを制御する。
【0011】
また、上記構成において、前記制御部は、前記放送波の受信状態が、前記第一指標よりも受信限界に近く設定されている第二指標よりも悪化した場合に、前記本編外期間であるか否かにかかわらず、前記中継/系列局チャンネルを選局するよう前記チューナを制御することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、制御部は、放送波の受信状態が、第一指標よりも受信限界に近く設定されている第二指標よりも悪化した場合に、本編外期間であるか否かにかかわらず、中継/系列局チャンネルを選局するよう前記チューナを制御する。
【0013】
また、上記構成において、前記制御部は、前記コンテンツに含まれる音声の種別、または前記コンテンツ含まれる映像の解析結果に基づいて、前記本編期間と前記本編外期間とを判別することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、制御部は、コンテンツに含まれる音声の種別、またはコンテンツ含まれる映像の解析結果に基づいて、本編期間と本編外期間とを判別する。
【0015】
また、上記構成において、前記チューナは、選局指示された放送波を受信する第一チューナと、前記中継/系列局チャンネルを検出する第二チューナとを含み、前記制御部は、前記第一チューナで受信されている放送波に含まれるコンテンツが前記本編外期間であり、且つ該放送波の受信状態が前記第一指標よりも悪化した場合に、前記第二チューナによって検出された前記中継/系列局チャンネルを選局するよう前記第一チューナを制御することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、チューナは、選局指示された放送波を受信する第一チューナと、前記中継/系列局チャンネルを検出する第二チューナとを含む。制御部は、第一チューナで受信されているコンテンツが本編外期間であり、且つ第一チューナの受信状態が第一指標よりも悪化した場合に、第二チューナによって検出された中継/系列局チャンネルを選局するよう、第一チューナを制御する。
【0017】
また、上記構成において、前記第二チューナは、前記第一チューナが放送波の受信及び選局を行っているか否かにかかわらず、放送波の受信帯域内の全ての物理チャンネルを順次選局し、全ての物理チャンネルについて、放送局を示す放送局識別情報、及び放送波の受信状態を示す受信状態情報を取得して前記中継/系列局チャンネルの検出を行うことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、第二チューナは、第一チューナが放送波の受信及び選局を行っているか否かにかかわらず、放送波の受信帯域内の全ての物理チャンネルを順次選局する。そして、全ての物理チャンネルについて、放送局を示す放送局識別情報、及び放送波の受信状態を示す受信状態情報を取得し、これらの情報に基づいて中継/系列局チャンネルの検出を行う。
【0019】
また、上記構成において、前記制御部は、複数の視聴階層を含む放送波を前記チューナにより受信した場合に、それぞれの視聴階層の変調方式または伝送パラメータに応じて、前記第一指標または前記第二指標を視聴階層毎に設定することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、制御部は、複数の視聴階層を含む放送波をチューナにより受信した場合に、それぞれの視聴階層の変調方式または伝送パラメータに応じて、第一指標または第二指標を視聴階層毎に設定する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のデジタル放送受信装置によれば、受信状態が第一指標を超えた場合に、本編外期間であれば選局を行う。そして更に受信状態が悪化し、第二指標を超えた場合に、本編外期間か否かにかかわらず選局を行う。つまり、ユーザが本編コンテンツを視聴している状態(=本編期間)での選局を、できる限り避けるようにしている。これにより、選局動作に起因する映像の乱れが本編期間に発生する確率を低減し、ユーザが良好な状態で本編コンテンツを視聴できるようにしている。
【0022】
また、第二チューナにより常に中継/系列局チャンネルを検出しておくことにより、本編外期間において、良好な受信状態の中継/系列局チャンネルへの選局を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るデジタル放送受信装置のブロック構成図である。
【図2】受信状態、本編期間、及び選局タイミングの関係を示した模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るバックグラウンドサーチの処理フローを示すフロー図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る選局処理の処理フローを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。ここでは、スペースダイバーシティ方式のデジタル放送受信機能を有したカーナビゲーションシステムを一例として説明する。
<全体構成について>
図1に、本発明に係るカーナビゲーションシステム90(=デジタル放送受信装置)のブロック構成図を示す。カーナビゲーションシステム90は、デジタル放送受信ブロック60を備えており、カーナビゲーションシステム90の電源が入っていれば、デジタル放送受信ブロック60にも給電可能であるが、放送を視聴するか否かは視聴者の操作による。
【0025】
デジタル放送受信ブロック60は、視聴用受信回路ブロック70と、サーチ用受信回路ブロック80とを含んでおり、更に、D/Aコンバータ11、LPF(ローパスフィルタ)/ドライバ12、映像処理部13、D/Aコンバータ14、LPF/ドライバ15を含む。視聴用受信回路ブロック70は、視聴に用いられる受信回路であり、サーチ用受信回路ブロック80は、後に詳述するバックグラウンドサーチに用いられる受信回路である。
【0026】
視聴用受信回路ブロック70は、視聴用のDTVチューナ2、2’(チューナ、第一チューナ)と、復調/合成部3(=復調部)と、オーディオフィルタ4と、オーディオデコーダ5と、ビデオフィルタ6と、ビデオデコーダ7と、データフィルタ8と、データデコーダ9とを含む。DTVチューナ2、2’には、それぞれ、車両に設けられる地上デジタル放送受信用のダイバーシティアンテナ1、1’が接続される。なお、オーディオデコーダ5とビデオデコーダ7は、それぞれ12セグ放送用、1セグ放送用を備え、視聴に応じてベースバンド信号を切り替えて出力できるものとする。
【0027】
DTVチューナ2、2’は、それぞれダイバーシティアンテナ1、1’から地上デジタル放送信号を受信し同一の物理チャンネル(周波数)で選局を行う。選局は、CPU49(=制御部)から周波数データが送られることで行われる。復調/合成部3は、DTVチューナ2、2’から入力される選局された信号を復調、エラー訂正及び合成し、TS(トランスポートストリーム)信号(=デジタル信号)を出力する。
【0028】
オーディオフィルタ4は、TSからオーディオデータのみを抽出し、オーディオデコーダ5は、抽出されたオーディオデータを復号しデジタルオーディオ信号を出力する。D/Aコンバータ11は、オーディオデコーダ5から入力されるデジタルオーディオ信号をアナログベースバンド信号に変換し、LPF/ドライバ12を介して端子A−1に出力する。
【0029】
ビデオフィルタ6は、TSからビデオデータのみを抽出し、ビデオデコーダ7は、抽出されたビデオデータを復号しデジタル映像信号を出力する。映像処理部13は、ビデオデコーダ7から入力されるデジタル映像信号の映像サイズを変更するスケーラ機能や、文字等を重畳するOSD(On Screen Display)機能を有する。D/Aコンバータ14は、映像処理部13から入力される映像信号をアナログ映像信号に変換し、LPF/ドライバ15を介して端子V−1に出力する。
【0030】
データフィルタ8は、伝送パラメータ、NIT(Network Information Table)、番組情報(=題名、管理情報)、データ放送等のデータをTSから抽出し、データデコーダ9は、抽出されたデータを復号する。
【0031】
また、サーチ用受信回路ブロック80は、バックグラウンドサーチ用のDTVチューナ16(=チューナ、第二チューナ)と、復調部17と、オーディオフィルタ4’と、オーディオデコーダ5’と、ビデオフィルタ6’と、ビデオデコーダ7’と、データフィルタ8’と、データデコーダ9’とを含む。DTVチューナ16への入力は、ダイバーシティアンテナ1’から分配される。
【0032】
DTVチューナ16は、DTVチューナ2、2’とは独立して選局可能であり、ダイバーシティアンテナ1’から地上デジタル放送信号を受信し選局を行う。選局は、CPU49から周波数データが送られることで行われる。復調部17は、DTVチューナ16から入力される選局された信号を復調、エラー訂正し、TSを出力する。なお、DTVチューナ16専用のアンテナをダイバーシティアンテナ1、1’とは別に車両に設けてもよい。
【0033】
出力されたTSは、データフィルタ8’へ入力され、NIT等のデータがデータデコーダ9’から出力される。なお、オーディオフィルタ4’、オーディオデコーダ5’、ビデオフィルタ6’及びビデオデコーダ7’は、バックグラウンドサーチを行う用途では不要であるが、例えば、ビデオデコーダ7’の後段に映像処理部13を接続し、映像処理部13でピクチャ・イン・ピクチャ処理を行うようにすれば、異なった物理チャンネルの放送映像を同時に見ることができる。
【0034】
また、例えば、オーディオデコーダ5、ビデオデコーダ7、オーディオデコーダ5’、及びビデオデコーダ7’が出力する映像音声信号をHDD(Hard Disk Drive)53で記録するようにすれば、異なった物理チャンネルの放送番組(=コンテンツ)を同時に録画することも可能である。
【0035】
ラジオ用チューナ/復調部21は、車両に設けられるAM/FMラジオ用アンテナ20に接続され、AM/FMラジオ用アンテナ20からラジオ放送信号を受信し選局を行い、選局された信号を復調し、音声信号を端子A−2に出力する。
【0036】
交通情報受信デコード部41は、車両に設けられる交通情報受信用アンテナ40に接続され、交通情報受信用アンテナ40から交通情報信号を受信しデコードを行い、交通情報を出力する。
【0037】
測位航法装置43は、車両に設けられるGPSアンテナ42に接続され、GPSアンテナ42からGPS信号を受信し、車両位置情報及び車速情報を生成し出力する。
【0038】
慣性航法装置45は、車両に設けられる3軸加速度センサ44に接続され、3軸加速度センサ44から検出信号を受信し、加速度情報及び車速情報を生成し出力する。
【0039】
車速パルス処理部47は、車速パルス入力端子46に接続され、車速パルス入力端子46を介して車両から入力される車速パルスをカウントし、車速情報を生成出力する。
【0040】
CD/DVDドライブ22は、CDまたはDVDから映像音声信号を再生し、再生された映像信号を端子V−3に出力し、再生された音声信号を端子A−3に出力する。描画部54は、ナビゲーション用映像信号を生成し端子V−2に出力する。音声処理部55は、経路案内に必要な音声信号等を生成しミキサイコライザ24に出力する。
【0041】
映像ソースセレクタ30は、端子V−1、V−2、V−3から映像表示装置31への経路を切り替えることで、映像表示装置31に表示させる信号ソースを切り替える。映像表示装置31は、LCDなどで構成される。
【0042】
音声ソースセレクタ23は、端子A−1、A−2、A−3からミキサイコライザ24への経路を切り替えることで、スピーカ26から音声出力させる信号ソースを切り替える。ミキサイコライザ24は、複数の音声ソースをミックスする機能や、音声信号の周波数特性を変化させる機能を有する。パワーアンプ25は、ミキサイコライザ24から入力される音声信号の電力を増幅させ、スピーカ26は、電力増幅された音声信号に基づき音声を発生する。
【0043】
また、操作入力部48は、不図示のハードキー、タッチパネル並びにリモコン受光部を含み、ユーザの操作による操作信号を出力する。CPU49は、各種演算、処理、制御を行う演算処理装置である。RAM50は、CPU49のワークメモリ等に用いられる。ROM51は、CPU49が実行する制御プログラムを格納する。フラッシュメモリ52は、給電がなくても情報を保持する記憶装置である。HDD53は、ナビゲーション用地図データや楽曲ファイル等を格納する大容量の記憶装置である。
<バックグラウンドサーチ処理について>
次に、カーナビゲーションシステム90により行われるバックグラウンドサーチ処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
車両においてイグニッションキーが回され、アクセサリー電源がカーナビゲーションシステム90に供給されると、サーチ用受信回路ブロック80にも電源が供給され、図3のフローチャートが開始される。
【0045】
まず、ステップS1で、CPU49は、選局チャンネル指定用の変数である変数Nを、13に設定する。次に、ステップS2で、CPU49は、独立してタイムアウト時間を設定できる第1タイマ及び第2タイマ(いずれも不図示)をリセットする。第1タイマは、復調同期のタイムアウトを検出するためのタイマである。第2タイマは、NIT取得のタイムアウトを検出するためのタイマである。
【0046】
次に、ステップS3で、CPU49は、物理チャンネルがNチャンネル(初期は13チャンネル)の周波数データをDTVチューナ16に送り、DTVチューナ16にNチャンネルを選局させる。
【0047】
次に、ステップS4で、CPU49は、第1タイマをスタートさせる。次に、ステップS5で、CPU49は、DTVチューナ16が復調同期したか否かを確認する。復調同期していない場合(ステップS5のN)、ステップS6に進み、CPU49は、第1タイマがタイムアウトしたか否かを確認する。
【0048】
タイムアウトしていなければ(ステップS6のN)、ステップS5に戻り、CPU49は、DTVチューナ16が復調同期したかを再度確認する。そして、復調同期せずに第1タイマがタイムアウトすれば(ステップS6のY)、ステップS7に進み、CPU49は、第1タイマをストップし、後述するステップS14に進む。
【0049】
一方、第1タイマがタイムアウトする前にDTVチューナ16が復調同期すれば(ステップS5のY)、ステップS8に進み、CPU49は、第2タイマをスタートさせる。そして、ステップS9で、CPU49は、データデコーダ9’からNITを取得することを試みると共に、復調部17から受信状態の指標となるC/N(Carrier to Noise ratio)及びBER(Bit Error Rate)を取得する。
【0050】
次に、ステップS10で、CPU49は、NITが取得できたか否かを判定する。取得できていなければ(ステップS10のN)、ステップS11に進み、CPU49は、第2タイマがタイムアウトしたか否かを確認する。
【0051】
タイムアウトしていなければ(ステップS11のN)、ステップS9に戻り、CPU49は、再度NITの取得を試み、C/N及びBERを取得する。そして、第2タイマがタイムアウトする前にNITを取得できれば(ステップS10のY)、ステップS13に進む。
【0052】
ステップS13で、CPU49は、取得したNITに含まれるネットワークID(=放送局識別情報)及び取得したC/Nを、現在の選局チャンネル(=Nチャンネル)と対応付けてRAM50に保存する。なおネットワークIDは、放送局を識別するためのコードである。
【0053】
一方、ステップS11で、NITを取得できないまま第2タイマがタイムアウトすれば(ステップS11のY)、ステップS12に進む。ステップS12で、CPU49は、第2タイマをストップし、取得したC/Nを現在の選局チャンネル(=Nチャンネル)と対応付けてRAM50に保存する。
【0054】
なお、ステップS12で、CPU49は、前回処理時に現在と同じ選局チャンネルでネットワークIDが取得できており、RAM50にこのネットワークIDが保存されているか否かを確認する形態でもよい。この形態の場合、保存されていれば、このネットワークIDを今回取得できたネットワークIDとして、現在の選局チャンネルに対応付けて、RAM50に保存する。保存されていなければ、RAM50において、ネットワークIDはブランクにしておく。
【0055】
なお、復調同期せずに第1タイマがタイムアウトした場合(ステップS6のY)、RAM50において現在の選局チャンネルに対応するネットワークID、C/N、及びBERはブランクとなる。
【0056】
ステップS10で時間内にNITが取得できた場合と、ステップS6で第1タイマがタイムアウトした場合と、ステップS11で第2タイマがタイムアウトした場合と、のいずれの場合も、ステップS14に進む。
【0057】
ステップS14で、CPU49は、変数Nを一つインクリメントする。そしてステップS15で、CPU49は、変数Nが62を超えているか否かを判定する。変数Nが62以下の場合(ステップS18のN)、ステップS2に戻り、インクリメントされた変数Nに対応するNチャンネルで選局を行い、上記と同様の処理を再び行う。
【0058】
ステップS15で、変数Nが62を超える場合(ステップS15のY)、ステップS16に進む。ステップS16で、CPU49は、RAM50に記録されている受信可能チャンネルテーブルを更新する。
【0059】
具体的には例えば、上記の処理で保存された13ch〜62chの物理チャンネルに対応するネットワークID及びC/N(=受信状態情報)に基づき、ネットワークIDをキーとして、物理チャンネルとC/Nとを組とする。そして、C/Nの値が大きい順(即ち受信状態が良好な順)にソートする。これにより、新たな受信可能チャンネルテーブルに更新する。
【0060】
このとき、C/Nの値が所定の水準以下のものしかないネットワークIDについては、受信可能チャンネルテーブルに含めないようにする形態でもよい。また、更新された受信可能チャンネルテーブルと、前回の受信可能チャンネルテーブルとを比較することにより、所定のネットワークIDについて、前回はこのネットワークIDに対応していたが今回は対応していない物理チャンネルを検索する形態でもよい。
【0061】
この形態の場合、上記の条件で検索された物理チャンネルを、新たな受信可能チャンネルテーブルにおいて、上記のネットワークIDに対応する物理チャンネルの最後尾に位置させる。なお、この物理チャンネルに対応するC/Nはブランクとする。
【0062】
また、ステップS16において、前回に保存された13ch〜62chまでの物理チャンネル毎のネットワークID及びC/Nは消去する形態でもよい。
【0063】
ステップS16の後は、ステップS1に戻り、Nを13に設定し、再度サーチ処理を開始する。
【0064】
以上のように、地上デジタル放送における全受信帯域に相当する物理チャンネルである13chから62chを、順次選局しながらNIT及びC/Nの取得を試み、受信可能チャンネルテーブルを更新する処理を、常にバックグラウンドで行う。
<視聴用受信回路の選局タイミングについて>
次に、上記の動作と並行して実施する、視聴用受信回路ブロック70の処理について、図2を用いながら説明する。視聴用受信回路ブロック70において選局中のチャンネル(以下、「視聴中チャンネル」という)の受信状態が悪くなった場合、上記のバックグラウンドサーチで受信可能チャンネルテーブルに登録された物理チャンネル(以下、「中継/系列局チャンネル」という)に選局移行させる必要がある。この条件及びタイミングを示したのが、図2である。
【0065】
なお、視聴中チャンネルと異なるネットワークIDを持つ物理チャンネルであっても、予め同系列の放送局であることが確認されている物理チャンネルであれば、中継/系列局チャンネルとして用いることが可能である。
【0066】
図2の最上段は、時間経過に応じた、番組本編(=本編コンテンツ)と番組本編以外との進行状況を示している。図2の中段のグラフは、時間推移に応じた受信状態の変化を示している。図2の最下段は、従来技術の選局移行タイミングと本発明の選局移行タイミングとを示している。
【0067】
本発明では、図2の最上段に示す、番組本編が受信されている期間(以下、「本編期間」という)と、それ以外の期間(以下、「本編外期間」という)とを判別する。そして、できる限り本編外期間において選局移行するよう、制御を行う。
【0068】
なお本編外期間とは、番組本編と直接関わりがない放送期間であり、従って番組名や番組管理情報等から特定できない放送を受信している期間である。例えば、コマーシャル放送や番組宣伝放送等を受信している期間が本編外期間に相当する。
【0069】
具体的な判別方法としては、例えば、音声のステレオ/モノラル(=音声の種別)が切り替わる時点や、映像の色調や輝度(=映像の解析結果)が急激に変化する時点を本編期間と本編外期間との切り替え点とし判別する。或いは無音時間の長さ等を用いて切り換え点を検出し判別する形態でもよい。なお各判別方法の詳細については従来技術と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0070】
図2の中段に示すように、本発明では、受信状態を判別するのにビタビ後BERを用いる。上にいくほど、つまり値が大きくなるほど、受信状態が悪くなる。物理チャンネルの受信状態の指標の一つであるビタビ後BERは、移動時において、時間経過とともに電界強度の変化や、フェージングまたはマルチパスの変化に伴い、値が変化する。
【0071】
図2の中段のグラフにおける二本の曲線のうち、実線曲線は、視聴中チャンネル(例えば18chの親局)のビタビ後BER推移を示している。また破線曲線は、バックグラウンドサーチ等で見つかった中継/系列局チャンネル(例えば27chの中継局)のビタビ後BER推移を示している。
【0072】
ただし、サーチ用受信回路ブロック80は所定の物理チャンネルを連続受信している訳ではない。よって図2に示す破線曲線の値は、所定の時間間隔で適宜補間を行った値となっている。
【0073】
図2の例では、時間経過とともに、視聴中チャンネルの受信状態が徐々に悪化して行き、ビタビ後BERが大きくなっている。逆に中継/系列局チャンネルの受信状態が良くなり、ビタビ後BERが徐々に小さくなっている。ビタビ後BERが大きくなると、やがて受信限界(図中の三つの水平破線の上段)を上回る。
【0074】
従来技術では、この受信限界より少しマージンを持たせたマージンA(=第一指標、図中の三つの水平破線の中段)を設定していた。そしてマージンAよりもビタビ後BERが大きくなった時点で、中継/系列局チャンネルに選局していた。これに対して本発明では、マージンAよりも更にマージンを持たせたマージンB(=第二指標、図中の三つの水平破線の下段)を設定する。
【0075】
図2の最下段は、マージンA及びマージンBを用いた選局移行タイミングを示している。最下段の上側は、従来技術における選局移行タイミングを示している。最下段の下側は、本発明における選局移行タイミングを示している。従来技術では、上側に示すように、視聴中チャンネルの受信状態が所定のマージンAを上回った時点で、本編外期間であるか否かを考慮することなく、選局移行していた。
【0076】
これに対して本発明は、視聴中チャンネルが本編外期間に移行したタイミング(=図2の矢印a)で、視聴中チャンネルのBERがマージンBを超えるか否かを判定する。そしてマージンBを超える場合、マージンAを超えていなくても、選局移行を行う。
【0077】
このように、本編外期間において選局を行うことにより、選局に起因する映像/音声の途切れを本編外期間において発生させる。これにより、本編期間において映像/音声の途切れが発生するのを回避することができる。
<選局処理フローについて>
次に、上記の選局移行タイミングに基づいて実施する選局処理の処理フローについて、図4のフロー図を用いながら説明する。図4に示す処理フローは、例えば、操作入力部48に含まれるハードキーの操作により視聴モードへの移行が行われ、CPU49の制御により視聴用受信回路ブロック70に電源が供給された場合に開始される。
【0078】
ステップS21で、CPU49は、前回の視聴モード終了時、或いはイグニッションキーをオフにしたときのチャンネル番号(いわゆるラストチャンネル)を、フラッシュメモリ52から読み出す。そして読み出したチャンネル番号に対応するネットワークIDを、チャンネルリストから検索する。
【0079】
なお、本実施形態におけるチャンネルリストとは、チャンネル番号とネットワークIDとを対応させたリストであり、フラッシュメモリ52に格納される。CPU49は、現時点での受信可能チャンネルテーブルにおいて、上記で検索されたネットワークIDに対応する物理チャンネルのうち、先頭の物理チャンネルを特定する。
【0080】
CPU49は、特定した物理チャンネルの周波数データをDTVチューナ2、2’に送り、DTVチューナ2、2’に選局させる。すると、オーディオデコーダ5及びビデオデコーダ7から出力される映像音声信号により、映像表示装置31に放送映像が表示されると共に、スピーカ26から放送音声が出力される。
【0081】
次に、ステップS22で、CPU49は、ユーザによる選局操作が検知されたか否かを判定する。選局操作が検知されていない場合(ステップS22のN)、後述するステップS24へ移行する。これにより、視聴中チャンネルの受信状態が受信限界に到達するまで、現在の選局チャンネルが継続される。
【0082】
選局操作が検知された場合(ステップS22のY)、ステップS23で、CPU49は、選局操作により指定されたチャンネルに選局するとともに、ラストチャンネルをフラッシュメモリ52に格納する。
【0083】
次に、ステップS24で、CPU49は、視聴中チャンネルのC/N及びBERを復調器3から取得する。そしてステップS25で、視聴中チャンネルが本編期間であるか否かを判定する。なおこの判定は、上述した、本編期間と本編外期間との判別技術を用いて行う。
【0084】
本編期間である場合(ステップS25のY)、ステップS29で、CPU49は、現在視聴中チャンネルのビタビ後BERがマージンAを超えているか否かを判定する。マージンAを超えている場合(ステップS29のY)、後述するステップS27へ移行する。マージンAを超えていない場合(ステップS29のN)、ステップS30で、CPU49は、所定のウエイト時間を持たせた後、ステップS22に再び戻り、上記の一連の動作を繰り返す。
【0085】
本編期間ではない場合(ステップS25のN)、ステップS26で、CPU49は、視聴中チャンネルのビタビ後BERがマージンBを超えているか否かを判定する。マージンBを超えていない場合(ステップS26のN)、ステップS30へ移行する。マージンBを超えている場合(ステップS26のY)、ステップS27で、CPU49は、視聴中チャンネルより受信状態の良い中継/系列局チャンネルがあるか否かを確認する。
【0086】
受信状態の良い中継/系列局チャンネルがある場合(ステップS27のY)、ステップS28で、CPU49は、中継/系列局チャンネルへの選局を行うよう、視聴用受信回路ブロック70を制御する。選局が完了すると、ステップS30へ移行する。受信状態の良い中継/系列局チャンネルがない場合(ステップS27のN)、選局は行わず、ステップS30へ移行する
以上に説明した本実施形態によれば、本編期間においてマージンAを超えるか、或いは本編外期間においてマージンBを超えた場合に、視聴中チャンネルよりも受信状態の良い中継/系列局チャンネルへ選局移行を行う。
【0087】
このため、移動等により受信状態が悪化しても、直ちに受信状態の良い中継/系列局チャンネルへ切り替えることができる。また、本編期間に選局移行が発生して映像が途切れ、ユーザの視聴の妨げとなる確率を低減できるので、ユーザは放送番組を良好な状態で視聴することができる。
<その他の実施の形態>
以上、好ましい実施の形態及び実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0088】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
【0089】
(A)上記実施形態では、本発明の番組検出処理を実施するデジタル放送受信装置として、カーナビゲーションシステム90を例に説明しているが、これ以外のデジタル放送受信装置において実施する形態でもよい。例えば、ポータブルテレビやテレビ受信機能付き携帯電話等で実施する形態でもよい。
【0090】
(B)上記実施形態では、NIT取得時のタイムアウト時間の長さについては特に明示していないが、サーチしている物理チャンネルの受信状態が悪い場合、良好な場合と比べてこのタイムアウト時間を短くする形態でもよい。例えば、図3ステップS2における第2タイマのセット時間を短くする。これにより、例えば移動速度が速いため受信状態の変動が大きく、所定時間内に安定してNIT取得ができない場合に、早い段階でNIT取得を諦め、巡回サーチの次のタイミングで、再びNIT取得を試みることができる。結果として、受信候補チャンネルリストの完成を速めることができる。
【0091】
(C)上記実施形態では、1セグ/12セグ(=視聴階層)の切り替えについては特に明示していないが、視聴している物理チャンネルの受信状態が悪化した場合に1セグ放送に切り替え、受信状態が良好になった場合に12セグ放送に切り替えるデジタル放送受信装置において、本発明を実施する形態でもよい。この場合、マージンA及びマージンBを、1セグと12セグとで、変調方式や伝送パラメータに応じて個別に設ける。
【0092】
(D)上記実施形態では、視聴用受信回路ブロック70とサーチ用受信回路ブロック80との二つの受信回路ブロックを用いているが、視聴用受信回路ブロック70のみを備えるカーナビゲーションシステム90において、本発明の構成を適用する形態でもよい。
【0093】
(E)上記実施形態では、図2において受信限界、マージンA、及びマージンBを水平破線で示し、ビタビ後BERがマージンA、またはマージンBを超えたタイミングで選局動作を行っているが、必ずしも各マージンが固定値である必要はない。例えば、ビタビ後BERに応じて重み付けられた係数を時間経過とともに積算し、積算値が所定の閾値を超えたタイミングで、選局動作を行う形態でもよい。
【0094】
(F)上記実施形態では、本編外期間の一例としてコマーシャルや番組宣伝を例に説明を行っているが、これ以外の放送が行われている期間を本編外期間とみなす形態でもよい。例えばユーザが視聴中の番組の放送終了が検知され、且つEPGにおいて次に放送予定されている番組の開始時刻が到来していない場合に、本編外期間とみなす形態でもよい。
【符号の説明】
【0095】
1、1’ ダイバーシティアンテナ
2、2’ DTVチューナ(チューナ、第一チューナ)
3 復調/合成部(復調部)
4、4’ オーディオフィルタ
5、5’ オーディオデコーダ
6、6’ ビデオフィルタ
7、7’ ビデオデコーダ
8、8’ データフィルタ
9、9’ データデコーダ
11 D/Aコンバータ
12 LPF/ドライバ
13 映像処理部
14 D/Aコンバータ
15 LPF/ドライバ
16 DTVチューナ(チューナ、第二チューナ)
17 復調部
23 音声ソースセレクタ
24 ミキサイコライザ
25 パワーアンプ
26 スピーカ
30 映像ソースセレクタ
31 映像表示装置
49 CPU(制御部)
50 RAM
60 デジタル放送受信ブロック
70 視聴用受信回路ブロック
80 サーチ用受信回路ブロック
90 カーナビゲーションシステム(放送受信装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送波の受信及び選局を行うチューナと、前記放送波を復調してデジタル信号を生成する復調部とを備えるデジタル放送受信装置において、
前記デジタル信号に含まれるコンテンツのうちの本編コンテンツを受信している期間である本編期間と、前記本編コンテンツを受信していない期間である本編外期間とを判別し、前記本編外期間において前記放送波の受信状態が予め定められた第一指標よりも悪化した場合に、前記チューナにより選局されている物理チャンネルと放送局識別情報が同じ、または該物理チャンネルと系列が同じである中継/系列局チャンネルへ選局を行うよう前記チューナを制御する制御部を備えること、
を特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記放送波の受信状態が、前記第一指標よりも受信限界に近く設定されている第二指標よりも悪化した場合に、前記本編外期間であるか否かにかかわらず、前記中継/系列局チャンネルへ選局を行うよう前記チューナを制御すること
を特徴とする請求項1に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記コンテンツに含まれる音声の種別、または前記コンテンツ含まれる映像の解析結果に基づいて、前記本編期間と前記本編外期間とを判別すること
を特徴とする請求項2に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項4】
前記チューナは、選局指示された放送波を受信する第一チューナと、前記中継/系列局チャンネルを検出する第二チューナとを含み、
前記制御部は、前記第一チューナで受信されている放送波に含まれるコンテンツが前記本編外期間であり、且つ該放送波の受信状態が前記第一指標よりも悪化した場合に、前記第二チューナによって検出された前記中継/系列局チャンネルへ選局を行うよう前記第一チューナを制御すること、
を特徴とする請求項3に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項5】
前記第二チューナは、前記第一チューナが放送波の受信及び選局を行っているか否かにかかわらず、放送波の受信帯域内の全ての物理チャンネルを順次選局し、全ての物理チャンネルについて、放送局を示す放送局識別情報、及び放送波の受信状態を示す受信状態情報を取得して前記中継/系列局チャンネルの検出を行うこと
を特徴とする請求項4に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項6】
前記制御部は、複数の視聴階層を含む放送波を前記チューナにより受信した場合に、それぞれの視聴階層の変調方式または伝送パラメータに応じて、前記第一指標または前記第二指標を視聴階層毎に設定すること
を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のデジタル放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−205224(P2012−205224A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70211(P2011−70211)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】