説明

デバイスの表面で導電型歪みセンサを形成するための方法

【課題】導電型歪みセンサをデバイスの表面上で形成するための、より簡単な方法を提供する。
【解決手段】本発明は、デバイスの表面における歪みを計測するために、該デバイスの該表面で導電型歪みセンサを形成するための方法であって、ステップ:(a)デバイスを準備すること、(b)任意的に該デバイスの表面に絶縁層を設けること、(c)ステップ(b)で得られた該絶縁層の上に第1の金属の粒子の分布を作ること、および(d)ステップ(c)で得られた該第1の金属の粒子の分布の少なくとも一部分の上に、無電解めっき法又は電着法を用いて第2の金属の層を堆積させること、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスの表面における歪を計測するために、そのデバイスの表面で導電型歪みセンサを形成するための方法、及びその方法によって得られるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
導電型歪みセンサは、対象とする環境下に置かれたデバイスの部品またはデバイスそのものの表面における歪みをモニタするために使用される。そのようなセンサの使用は、誘起された歪みの関数である固有の電気的性質の計測に基づいている。このような仕方で、機械的部品の性能は特定の条件の下において理解できる。
【0003】
導電型歪みセンサは、可撓性のポリマー箔の上に堆積せられた金属箔で作ることが出来ることはよく知られている。そうして得られたその箔の上に、次にレジストのパタンが施与され、そしてその金属箔の一部分がエッチングによって取り除かれ、その結果、歪みがモニタされる必要があるデバイス上に装着され得るセンサ箔ができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、導電型歪みセンサをデバイスの表面で形成するための、より簡単な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、表面における歪みが計測される必要があるデバイスのその表面で歪みセンサが直接に形成されるところの一連の特定のステップを利用するとき、これを成し得ることが今見い出された。
【0006】
従って、本発明は、デバイスの表面における歪みを計測するために、上記デバイスの該表面で導電型歪みセンサを形成する方法であって、ステップ:
(a)デバイスを準備すること、
(b)任意的に該デバイスの表面に絶縁層を設けること、
(c)ステップ(b)において得られた上記絶縁層の上に第1の金属の粒子の分布を作ること、および
(d)ステップ(c)において得られた上記第1の金属の粒子の分布の少なくとも一部分の上に、無電解めっき法又は電着法を用いて第2の金属の層を堆積させること、
を含む、上記方法に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に従う方法で得られた製品を図式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましくは、本発明に従って使用されるべき上記第1の金属は、コバルト、ニッケル、銅、ロジウム、パラジウム、白金、銀及び金から成る群から選択される。
【0009】
更に好ましくは、上記第1の金属はパラジウムである。
【0010】
本発明に従えば、上記第2の金属は、銅、ニッケル、錫、銀および金から成る群から選択される。これらの金属の合金も適切に使うことができる。特に適切な合金は、例えば、銅-ニッケル合金である。
【0011】
また適切には、堆積されるべき第2の金属は、例えばニッケル-リンおよびニッケル-ホウ素のような金属を含んだ化合物から得ることができる。
【0012】
本発明に従えば、ステップ(b)は任意的に実行されてもよい。上記デバイスが金属デバイスである場合、または上記デバイスがその他の導電性物質で作られる場合には、ステップ(b)は実行されるであろう。しかしながら、上記デバイスが絶縁物質、例えばプラスチックのような合成物質で作られている場合には、上記デバイスは、第1の金属の粒子の分布が上記デバイス上に作られるスナップに直接に付され、その後、第2の金属の層が第1の金属の粒子の分布の少なくとも一部分の上に堆積せられる。
【0013】
したがって、導電性物質で作られたデバイスを利用するとき、本発明はデバイスの表面における歪みを計測するために導電型歪みセンサをそのデバイスの表面で形成する方法であって、ステップ:
(a)導電性物質で作られたデバイスを準備すること、
(b)該デバイスの表面に絶縁層を設けること、
(c)ステップ(b)において得られた該絶縁層の上に第1の金属の粒子の分布を作ること、および
(d)ステップ(c)において得られた該第1の金属の粒子の分布の少なくとも一部分の上に、無電解めっき法又は電着法を用いて第2の金属の層を堆積させる、
を含む前記方法、を提供する。
【0014】
上記デバイスが絶縁物質で作られている場合、本発明はデバイスの表面における歪みを計測するために、導電型歪みセンサをそのデバイスの表面で形成する方法であって、ステップ:
(a)絶縁物質で作られたデバイスを準備すること、
(b)該デバイス上に第1の金属の粒子の分布を作ること、および
(c)ステップ(c)において得られた該第1の金属の粒子の分布の少なくとも一部分の上に、無電解めっき法又は電着法を用いて第2の金属の層を堆積させる、
を含む前記方法、を提供する。
【0015】
本発明の有利な点の1つは、ステップ(b)において、絶縁層を該デバイスの表面に直接に施与できる点であり、一方従来のシステムでは、金属層はポリマー基体上に施与される必要があり、そうして得られた金属/ポリマー箔は、さらにデバイスの表面に接着される必要がある。
【0016】
第2の金属の層が導電型歪みセンサの抵抗層を構成することが理解されるであろう。
【0017】
好ましくは、本発明に従う方法において、ステップ(c)においては、第1の金属の粒子の分布が、第1の金属の粒子又はイオンを含む溶液を用いて、マイクロコンタクト法、スプレー法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スタンプ法、パッド印刷法またはインクジェト印刷法によって作られる。そのような金属の粒子又はイオンを含む溶液の好適な例として、Noviganth AK(Atotech社)、又は、MID Select 9040(Enthone-OMI社)のような商用の溶液があるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、そのような溶液は、スズイオンで安定化されたコロイド状又はイオン状態のパラジウムの酸性溶液である。魅力的な溶液は、20−100mg/lのパラジウム、2−5g/lのスズと2.5−3.5g/lの塩化金属を含んでいる。問題となるパラメータが使用される堆積工程に一層適合するように、その組成が調整されうることを当業者は理解するだろう。
【0018】
より好ましくは、ステップ(c)において、第1の金属の粒子の分布が、第1の金属の粒子を含む溶液を使用するスタンプという手段によって作られる。
【0019】
上記スタンプ法は、次のように実行されうる。第1に、粒子の溶液はスタンプ上に堆積される。それは堆積せられるべき物質で濡らされたスポンジ上にそのスタンプを置くことによって可能である。この濡れたスタンプは、次いで基体に対して押しつけられ得る。印加される圧力及びスタンプが基体に対して押しつけられる時間に応じて、鮮明な転移がなされ得る。しかし、この方法を次の転移のために繰り返す前に、そのスタンプは清浄にされる必要がありうる。
【0020】
第1の金属の粒子は、適切には1nmから10μmの範囲の、好ましくは1nmから50nmの範囲の平均粒子径を有する。これらの範囲は、使用される溶液に含まれる粒子に対しては勿論、絶縁層上に分布された粒子にも適用される。
【0021】
好ましくは、ステップ(d)又はステップ(c)において、デバイスが絶縁物質で作られている場合、第2の金属の層が、第1の金属の粒子の全体の分布上に堆積させられ、その結果、第1の金属の粒子は第2の金属の層によって全面的に覆われるようになる。
【0022】
本発明に従えば、ステップ(d)又はステップ(c)において、第2の金属の層は、無電解めっき法又は電着法を用いて、第1の金属の粒子の分布上に適切に堆積させられる。好ましくは、第2の金属の層は、ステップ(d)又はステップ(c)において、無電解めっき法を用いて、第1の金属の粒子の分布上に堆積させられる。
【0023】
無電解めっき法においては、溶液中のイオン状態において利用可能な金属が、還元剤によって、適切な触媒表面で金属形に還元されうるという原理が使われる。さらに、その金属自身もまた、その還元反応に対しては触媒であり、そのままで自己触媒的に働く。無電解めっき法の一般的な文献として、例えば、グレン、O.マロリー、ジュアンB.ハジュ(Glenn, O. Mallory and Juan B. Hajdu)により編集された「無電解めっき法の基礎と応用 (Electroless Plating Fundamentals & Application)」ニューヨーク(1990年)が参考になる。無電解めっき法では適切には、第1の金属の分布上に堆積されるべき第2の金属を含む溶液が使われる。適切な金属を含む溶液には、Enplate EN 435E (Enthone社)又はEnplate MID Select 9070 (Enthone社)のような商用の溶液があるが、これらに限定されるものではない。後者の溶液は、典型的には、1−6g/lの銅、20−100g/lの錯化剤、及び5−50ml/lのホルムアルデヒド(還元剤)を含んでいる。そのような溶液は、典型的には、pH値が11−14の間である。前者の溶液は、典型的には、4−8g/lのニッケル、30−60g/lの錯化剤、及び10−30g/lの次亜リン酸塩(還元剤)を含んでいる。そのような溶液は、典型的には、pH値が4−6の間である。本発明で使われる無電解めっき法では、好ましくは、銅及び/またはニッケルを含んだ溶液が使用される。
【0024】
好ましくは、第2の金属の層が、絶縁層上の第1の金属の分布を完全に被覆する。
【0025】
特別に魅力的な本発明の実施態様においては、ステップ(d)の後、第2の金属を用いる電着法が、第2の金属が絶縁層上の第1の金属の分布を完全に被覆するように施与される。
【0026】
本発明で使用されるべき絶縁層は適切には、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテル・エーテル・ケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチルテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクタム、ポリアミド、パリレン、ポリナフタレン、ポリイミド、アクリレート、エポキシド、エポキシ、エポキシアミン、ビニル単量体、フェノール樹脂およびメラミンから成る群から選択された物質を含む。
【0027】
絶縁物質は、好ましくは、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル又はポリアミドを含む。
【0028】
適切には絶縁層は、スプレー法、インクジェット法、スクリーン印刷法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、ラミネート法またはスタンプ法を用いて、デバイスの表面上に施与される。
【0029】
絶縁層の厚さは、適合的には1ミクロンから500ミクロンの間であろうが、好ましくは、10ミクロンから200ミクロンの間である。
【0030】
導電型歪みセンサがその表面で形成されるべきデバイスは、そのようなセンサが一般的に適用される任意の種類のデバイスでよい。
【0031】
適切にはデバイスには、クランク軸、操縦シャフトまたはロッド、スタビライザ、板状材料、航空機翼、着陸ギア、パイプまたは転がり軸受けが含まれるが、しかしこれらに限定はされない。
【0032】
ステップ(d)の後、電着法によって、第3の金属が第2の金属上に施与される請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【実施例】
【0033】
歪みセンサがその上に取り付けられるころ軸受けは、先ず、清浄にされる。その軸受けが電気伝導性材料で作られていた故に、電気的絶縁物質の第1の層が施与されなければならなかった。これは、その軸受けの表面上への絶縁性ラッカーのスプレーによってなされた。次に、パラジウムをシードされた溶液(Atotech社のNovigranth AK)が、この絶縁層上に選択的に堆積させられた。この選択的堆積は、pdmsスタンプ手段によってなされた。選択的にシードされた得られた製品は、次に50g/lのシュウ酸溶液に4分間浸漬された。その後、洗浄され、それからEnplate MID Select 9070溶液(Enthone社)で満たされた無電解めっき浴に、50℃の温度で15分間浸漬された。このやり方で、約3ミクロンの銅の層が、選択的に堆積されたパラジウム・パタン上に堆積させられた。この銅の層は、電着法(これは275g/lの硫酸銅溶液及び60g/lの硫酸溶液を利用したものである)を用いて前記層上により多くの銅を付着させることにより、より厚く堆積させられた。そのようにして得られた酸性銅浴は、約4A/dmの電流密度を有していた。こうして得られた製品が、図1に図式的に示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスの表面における歪みを計測するために、該デバイスの該表面で導電型歪みセンサを形成する方法であって、ステップ:
(a)デバイスを準備すること、
(b)任意的に該デバイスの表面に絶縁層を設けること、
(c)ステップ(b)で得られた該絶縁層の上に第1の金属の粒子の分布を作ること、および
(d)ステップ(c)で得られた該第1の金属の粒子の分布の少なくとも一部分の上に、無電解めっき法又は電着法を用いて第2の金属の層を堆積させること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
該第1の金属は、コバルト、ニッケル、銅、ロジウム、パラジウム、白金、銀及び金から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該第1の金属はパラジウムである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該第2の金属は、銅、ニッケル、ニッケル-リン、ニッケル-ホウ素、錫、銀及びこれらの合金から成る群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該第2の金属は、銅または銅-ニッケル合金である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)において、該第1の金属の粒子の分布は、該第1の金属の粒子またはイオンを含む溶液を用いて、マイクロコンタクト法、スプレー法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スタンプ法、パッド印刷法またはインクジェト印刷法によっておこなわれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(c)において、該第1の金属の粒子の分布は、該第1の金属の粒子を含む溶液を使ってスタンプ法によっておこなわれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(d)において、該第2の金属の層は、該第1の金属の粒子の完全な分布の上に堆積される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(d)において、該第2の金属の層は、無電解めっき法によって、該第1の金属の粒子の分布の上に堆積される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該無電解めっき法において、銅及び/又はニッケルを含有する溶液を利用する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(d)の後、第3の金属が、電着法によって、該第2の金属の層の上に施与される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該第3の金属は、銅、ニッケル、ニッケル-リン、ニッケル-ホウ素、錫、銀、金およびそれらの合金から成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該絶縁層は、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテル・エーテル・ケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチルテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクタム、ポリアミド、パリレン、ポリナフタレン、ポリイミド、アクリレート、エポキシド、エポキシ、エポキシアミン、ビニル単量体、フェノール樹脂およびメラミンから成る群から選択される物質を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
該絶縁層は、スプレー法、インクジェト印刷法、スクリーン印刷法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、ラミネート法またはスタンプ法を用いて、該デバイスの表面上に施与される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
該デバイスは、クランク軸、操縦シャフトまたはロッド、スタビライザ、板状材料、航空機翼、着陸ギア、パイプまたは転がり軸受けを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−528260(P2010−528260A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507346(P2010−507346)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050281
【国際公開番号】WO2008/140309
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(502015784)ネーデルランドセ オルガニサティエ フォール トエゲパストナトールヴェテンシャッペリク オンデルゾエク ティエヌオー (41)
【Fターム(参考)】