説明

デバイス管理装置及びプログラム

【課題】ネットワークに接続されている複数のデバイスの通信設定を管理し易い管理装置を提供する。
【解決手段】管理装置10は、記憶装置14とコントローラ(管理プログラム16)を備える。記憶装置は、複数の異なる通信設定を記憶している。コントローラは、通信設定を設定してデバイスと通信する。このコントローラは、以下の処理を実行する。(1)記憶された夫々の通信設定ごとに、デバイスとの通信を試行する試行処理。(2)通信の試行に応答するデバイスを特定する監視処理。(3)記憶された夫々の通信設定に対応付けられた複数の表示エリアを画面に表示する表示処理。表示処理は、特定したデバイスを示すシンボル画像を、夫々の通信設定に対応付けられた表示エリアにグループ分けして表示する。ユーザは、画面を一瞥するだけで、同じ通信設定が設定されているデバイス群を容易に把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに接続されており、通信設定が個別に設定可能な複数のデバイスを管理するデバイス管理装置とデバイス管理用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタやファクシミリ、或いはコピー機など、ネットワークに接続されている複数のデバイスを、ネットワークを介して一つあるいは少数の端末で管理する技術が知られている。デバイスを管理する装置(以下、管理装置と称する)が複数のデバイスを効率よく管理するための技術が例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−154967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
管理装置とデバイスは、特定の通信プロトコル(例えば、SNMP:Simple Network Management Protocol)に基づいて通信する。通信プロトコルに関する設定(通信設定)は、夫々のデバイスに設定されている。デバイスには予めデフォルトの通信設定が設定されているが、デバイス毎に異なる通信設定に変更可能である。
通信プロトコルの中には、管理装置とデバイスが利用する通信設定が対応する場合に限って、相互に通信を許容するものが存在する。例えば、SNMPv3(Simple Network Management Protocol Version3)では、ユーザ名、認証キー、暗号化キー、及びコンテキストと呼ばれる通信設定が用いられる。暗号化キーには公開キーと秘密キーが存在し、管理装置が有している公開キー(或いは秘密キー)と、デバイスが有している秘密キー(或いは公開キー)に対応関係が成立していないと通信が確立できない。
通信設定はデバイスごとに個別に設定可能であるため、複数のデバイスをひとつの管理装置で管理する場合、デバイスと通信設定の関係を、管理装置を扱うユーザが把握し難い。
本明細書では、ネットワークに接続されている複数のデバイスの通信設定を管理し易くする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される一つの技術は、ネットワークに接続されており、通信設定が個別に設定可能な複数のデバイスを管理するデバイス管理装置である。
このデバイス管理装置は、記憶装置とコントローラを備える。
記憶装置は、複数の異なる通信設定を記憶している。複数の通信設定は、典型的にはユーザが入力してよい。コントローラは、通信設定を設定してデバイスと通信する。このコントローラは、以下の処理を実行することを特徴とする。
(1)記憶された夫々の通信設定ごとに、デバイスとの通信を試行する試行処理。
(2)通信の試行に応答するデバイスを特定する監視処理。
(3)記憶された夫々の通信設定に対応付けられた複数の表示エリアを画面に表示するとともに、夫々の通信設定による通信の試行に応答したデバイスを示すシンボル画像を、その通信設定に対応付けられた表示エリアに表示する表示処理。
「シンボル画像」とは、典型的にはいわゆるアイコンでよい。また「通信設定」は、ユーザ名、認証キー、暗号化キー、及びコンテキストの中の少なくとも1つの情報を含むセキュリティ関係の通信設定であってよい。また、「表示エリア」とは、画面に表示されるいわゆる「ウインドウ」であってよい。
【0006】
上記のデバイス管理装置は、記憶した通信設定ごとに、夫々の通信設定に対応しているデバイス(夫々の通信設定に基づく通信試行に応答するデバイス)を特定する。特定したデバイスを示すシンボル画像を、夫々の通信設定に対応付けられた表示エリアにグループ分けして表示する。ユーザは、画面を一瞥するだけで、同じ通信設定が設定されているデバイス群を容易に把握することができる。すなわち、ユーザは、複数のデバイスを通信設定ごとに一まとまりにして容易に管理することができる。
【0007】
上記のデバイス管理装置のコントローラは、一の表示エリアの外に表示されているシンボル画像を当該表示エリア内に移動する指示をユーザから受けると、移動されたシンボル画像が示すデバイスに、その一の表示エリアに対応付けられている通信設定を設定するコマンドを送信することが好ましい。
上記の技術的特徴を備えることによって、ユーザは、所望の通信設定に対応付けられている表示エリアにデバイスのシンボル画像(アイコン)を移動するだけで、デバイスの通信設定を容易に変更することができる。
「シンボル画像を移動する」とは、典型的にはいわゆる「ドラッグアンドドロップ」操作に相当する。
また、「一の表示エリアの外」とは、画面上で「一の表示エリア」以外の全てのエリアであってよいし、他の表示エリア内であってもよい。
「通信設定を設定するコマンド」とは、厳密には、「デバイスに通信設定を設定することを要求するコマンド」を意味する。
【0008】
コントローラは、表示エリアに対応付けられている通信設定が変更されると、変更された通信設定に対応付けられている表示エリアに表示されているシンボル画像が示すデバイスに、変更された通信設定を設定するコマンドを送信することが好ましい。
表示エリア内に表示されている複数のシンボル画像が示す複数のデバイスの通信設定を一斉に変更することができる。
【0009】
コントローラは、通信設定が対応付けられている表示エリア内に表示されているシンボル画像を、通信設定が対応付けられていない別の表示エリアに移動する指示をユーザから受けると、移動されたシンボル画像が示すデバイスに、デバイスのデフォルトの通信設定を設定するコマンドを送信することが好ましい。
なお、「通信設定が対応付けられていない別の表示エリア」とは、コントローラが表示した複数の表示エリアのいずれでもない表示領域であってよい。或いは、通信設定を対応付けたウインドウとは別にコントローラが表示するウインドウであってもよい。
上記の技術的特徴によって、デバイスの通信設定をデフォルトの状態に容易に設定し直すことができる。「デフォルトの通信設定」は、典型的には個々のデバイスに予め記憶されている通信設定でよい。
【0010】
本明細書によって開示される技術は、コンピュータプログラムとして具現化されてよい。
本明細書によって開示される一つの技術によると、記憶された通信設定毎に表示エリア(ウインドウ)が表示される。そして、ネットワークに接続されたデバイスのうち、夫々の通信設定に基づいて応答することのできるデバイスが、シンボル画像となって夫々の表示エリアに表示される。同じ通信設定が設定されているデバイスがひとまとまりに表示されるのでデバイスを管理し易い。また、表示されているシンボル画像を特定の表示エリアに移動するだけでデバイスの通信設定を変更することができる。また、表示エリアに対応付けられている通信設定を変更すると、その表示エリアに表示されているデバイスの通信設定を一括して変更することができる。このように、上記のデバイス管理装置は、通信設定毎に区分けされた複数の表示エリアとその表示エリア内に表示されたシンボル画像によって、異なる通信設定が設定された複数のデバイスを視覚的に管理することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ネットワークに接続されており、通信設定が個別に設定可能な複数のデバイスを容易に管理する技術を実現できる。
【実施例】
【0012】
図面を参照して実施例のデバイス管理装置を説明する。デバイス管理装置10は、ネットワーク90に接続されている。以下、「デバイス管理装置10」を単純に「管理装置10」と称する。ネットワーク90には、5つのネットワークデバイス92a、92b、92c、92d、及び92eが接続されている。ネットワークデバイス92aはプリンタである。ネットワークデバイス92bは、プリンタ92aと異なるプリンタである。ネットワークデバイス92cは、複合機である。ネットワークデバイス92dは、コピー機である。ネットワークデバイス92eは、ファクシミリ機である。以下では、ネットワークデバイス92a、92b、92c、92d、及び92eを、夫々デバイス1、デバイス2、デバイス3、デバイス4、及びデバイス5と称する。管理装置10が管理するデバイスは、デバイス1〜4である。デバイス5は、管理装置10の管理外のデバイスである。
管理装置10は、CPU12と記憶装置14を備えている。管理装置10には、キーボード30とディスプレイ32が接続されている。管理装置10は、ディスプレイの画面上の画像(アイコン等)を操作するためのマウス(不図示)が接続されている。
管理装置10と各デバイスは、SNMPv3(Simple Network Management Protocol Version3)に基づいて相互に通信することができる。SNMPv3に基づいて2つのデバイス(デバイスと管理装置)の間に通信を確立するためには、夫々のデバイスが、対応する通信設定(通信コンフィグレーションと呼ばれる場合がある)を有している必要がある。通信設定の具体的な項目には、ユーザ名、認証キー、暗号化キー、及びコンテキストと呼ばれるものがある。「対応する通信設定」とは、例えば暗号化のための秘密キーと公開キーの対応関係が成立していることを意味する。以下では説明を簡単にするため、「対応する通信設定」を「同じ通信設定」と表現する。すなわち、管理装置10とデバイスは、「同じ通信設定」を有している場合に限って通信することができる。
各デバイスは、個別の通信設定を設定することが可能である。従って管理装置10は、個々のデバイスの通信設定と同じ通信設定を有している必要がある。通信設定は、記憶装置14にファイルとして記憶されている。図1に示す記憶装置14は、管理装置10が各デバイスと通信するための通信設定として、デフォルト設定ファイル24を記憶している。特に設定値の指定がない場合には、管理装置10は、このデフォルト設定ファイル24に記憶された通信設定を用いて、各デバイスとの通信を試みる。さらに、記憶装置14は、第1の通信設定が記述されている第1設定ファイル20と、第2の通信設定が記述されている第2設定ファイル22を記憶している。これら設定ファイルは、ユーザが、キーボードやマウスを操作することにより、適宜、変更や追加をすることができる。例えば、デバイスに設定する通信設定には、そのデバイスの特性により、同じユーザが管理するデバイスであっても、共通の通信設定を行うことができない項目がある。デバイスごとに異なる通信設定が設定されている場合には、管理装置10に設定されたデフォルトの通信設定だけでは、すべてのデバイスと通信を行うことができない。デバイスごとに異なる通信設定について、新たなファイルを追加し、その追加したファイルに記述された通信設定を用いてデバイスと通信を試みることにより、すべての管理対象となるデバイスとの通信を行うことができる。なお、これら追加した設定ファイルについては、デフォルトと異なる通信設定を有する項目についてのみ記述していてもよい。このような場合は、デフォルトと共通の通信設定を有する項目については、デフォルト設定ファイルに基づき、そのデバイスとの通信を試みればよい。
記憶装置14はまた、CPU12が実行する管理プログラム16を記憶している。CPU10が管理プログラム16を実行することによって、管理装置10の機能が実現する。管理プログラム16は、管理装置10の「コントローラ」と換言してよい。なお、図1に示す「PGM」の記号は、「プログラム」を意味する。
【0013】
管理プログラム16に記述されている主な処理について説明する。
管理プログラム16は、キーボード30やマウスなどの入力デバイスから入力されるユーザの指示を受け付ける。ユーザの指示の代表的なものに、通信設定の入力や、画面上のアイコンの移動などがある。管理プログラム16は、ユーザが入力する第1、第2通信設定を夫々第1設定ファイル20と第2設定ファイル22に記述して保存する。
【0014】
管理プログラム16は、定期的にデバイス探索処理を実行する。このデバイス探索処理は、ネットワークに接続されている複数のデバイスの中から通信設定が同じデバイスを特定し、特定したデバイスをグループ化してディスプレイ32に表示する処理である。デバイス探索・表示処理のフローチャートを図2に示す。図3に、デバイス探索・表示処理の結果、ディスプレイ32に表示される画面32aを示す。
本実施例では、デバイス1とデバイス2に第1通信設定が設定されており、デバイス3に第2通信設定が設定されているケースを想定する。管理装置10において、第1通信設定は、第1設定ファイル20に記述されている。第2通信設定は、第2設定ファイル22に記述されている。第1通信設定と第2通信設定は異なる。デバイス4には、第1、第2通信設定と異なる第3通信設定が設定されている。この第3通信設定は、管理装置10が記憶しているデフォルト設定ファイル24に記述されている通信設定と同じである。なお、デバイス5は、これら第1から第3通信設定のいずれとも異なる通信設定が設定されている。このデバイス5に設定されている通信設定は、管理装置10のユーザが把握していないため、このデバイス5に設定されている通信設定が記述された設定ファイルは、ユーザにより作成されていない。すなわち、このデバイス5と通信可能な通信設定が記述された設定ファイルは、記憶装置14には記憶されていない。
このデバイス探索処理を実行すると、管理装置10のディスプレイには、複数のエリアが表示される。このエリアは、記憶装置14に記憶された設定ファイルの数だけ異なるウインドウとして表示する。各ウインドウは、各設定ファイルの通信設定と対応付けられている。すなわち、本実施例では、第1通信設定に対応する第1ウインドウ40aと、第2通信設定に対応する第2ウインドウ40bとが表示される。なお、管理装置10のデフォルトの通信設定に対応する表示エリアとして、第1ウインドウ40aと第2ウインドウ40b以外のエリア40cを有する。
管理装置10は、記憶されているひとつの設定ファイル(例えば第1設定ファイル20)から通信設定(第1通信設定)を読み出す(ステップS100)。管理装置10は、読み出した第1通信設定に対応付けた第1ウインドウ40a(図3参照)を表示する(ステップS102)。管理装置10は、読み出した第1通信設定で通信を試行する(ステップS104)。「通信の試行」とは、設定した通信設定で応答することをデバイスに求めるコマンドを送信すると換言してよい。通信設定の詳細な説明と、通信試行の手順の詳細な説明は、SNMPv3の規格で定義されているので省略する。
次に、管理装置10は、デバイスから応答があるか否か一定時間(待ち時間)の間だけ待つ(ステップS106、ステップS110)。デバイス1とデバイス2には第1通信設定が設定されているので、これらのデバイスは、ステップS104の通信試行に応答する。
管理装置10は、待ち時間の間にデバイスからの応答を受信すると(ステップS106:YES)、応答したデバイスを特定する(ステップS108)。応答データには、応答したデバイスのIPアドレスや名称が含まれているので、これらIPアドレスや名称によって、応答したデバイスを特定する。管理装置10は、デバイス1の応答データから、応答したデバイスの名称が「デバイス1」であると特定することができる。同様に、管理装置10は、デバイス2の応答データから、応答したデバイスの名称が「デバイス2」であると特定することができる。
管理装置10は、待ち時間が経過すると(ステップS110:YES)、特定したデバイス(デバイス1とデバイス2)を示すアイコン(シンボル画像)を、ステップS102で表示した第1ウインドウ内に表示する(ステップS112)。換言すれば、管理装置10は、読み込んだ通信設定に対応付けられたウインドウを表示するとともに(ステップS102)、読み込んだ通信設定での通信の試行に応答したデバイスを特定し(ステップS108)、特定したデバイスを示すアイコンをウインドウ内に表示する(ステップS112)。ステップS112の実行の結果、図3に示すように、画面32aに、デバイス1を示すアイコン42aとデバイス2を示すアイコン42bが、第1ウインドウ40a内に表示される。デバイス1を示すアイコン42a(シンボル画像)は、「Device1」の文字列を含む画像である。「Device1」の文字列を含むことによって、アイコン42aがデバイス1を示すことをユーザに理解し易くしている。
管理装置10は、記憶装置14に記憶されている設定ファイルの全てについて上記の処理を繰り返す(ステップS114:YES)。記憶装置14には、第2設定ファイルが記憶されているので、次に第2設定ファイルに記述されている第2通信設定について上記の処理を繰り返す。その結果、図3に示すように、第2通信設定に対応付けられた第2ウインドウ40bが表示される。第2ウインドウ40bの内部には、第2通信設定での通信試行に応答したデバイス3を示すアイコン42cが表示される。
【0015】
続いて、記憶装置14に記憶されているデフォルト設定ファイル24に記述されているデフォルトの通信設定について、上記の処理を行う。その結果、図3に示すように、デフォルトの通信設定、すなわち、第3通信設定に基づく通信試行に応答したデバイス4を示すアイコン42dが、表示エリア40cに表示される。 すべての通信設定についてのデバイス探索処理が終了すると、S114の判断がNOとなり、本処理が終了する。
【0016】
図2に示した処理によって、図3の表示が得られる。この表示から明らかなように、管理装置10は、同じ通信設定を有するデバイスをグループ化して表示することができる。管理装置10のユーザは、画面32aを一瞥するだけで、同じ通信設定が設定されているデバイスを把握することができる。そして、管理対象でないデバイス5については、いずれの表示エリアにも表示されない。したがって、ユーザが管理するべきデバイスのみが、いずれかの表示エリアに表示される。管理対象外のデバイスのアイコンが表示されることはない。このように、管理装置10を用いると、複数の管理対象デバイスの管理が容易に行える。また、各デバイスと個別に通信を行う場合には、各デバイスのアイコンがグループ化して表示されているので、どのような通信設定により通信を行えばよいのか、容易に把握できる。
【0017】
次に、管理装置10が、特定のデバイスの通信設定を変更する処理を説明する。図4は、アイコンの移動による通信設定変更処理のフローチャートを示す。
管理装置10は、ユーザによる画面上でのアイコン移動を常に監視している(ステップS200)。管理装置10は、一のウインドウ(例えば第1ウインドウ40a)の外側に表示されているデバイスアイコン(例えばデバイスアイコン42d)をそのウインドウ(第1ウインドウ40a)内に移動するユーザの指示を受け付ける(ステップS200:YES)。ユーザの指示を受け付けると、ユーザが指定したデバイスアイコン42dが示すデバイスを特定する(ステップS202)。デバイスアイコン42dは、デバイス4を示している。
管理装置10は、特定したデバイス(デバイス4)に、第1ウインドウ40aに対応付けられている第1通信設定を設定することを要求する設定コマンドを、デバイス4と通信可能な第3通信設定に基づいて送信する(ステップS204)。設定コマンドを受信したデバイス4は、コマンドに従って、第1通信設定を自らに設定する。続いて、管理装置10は、設定変更を要求した変更後の設定、すなわち第1通信設定に基づいて、デバイス4と通信を試みる。その結果、デバイス4との通信が成功すれば、デバイス4の設定変更が成功したと判断し、デバイス4からの応答がなければ、設定変更が成功しなかったと判断する(ステップS206)。設定が成功した場合(ステップS206:YES)、管理装置10は、デバイス4を示すデバイスアイコン42dを、第1ウインドウ40a内に表示する(ステップS208)。設定が成功しなかった場合(ステップS206:NO)、管理装置10は、元の位置にデバイスアイコン42dを表示する(ステップS210)。すなわち、管理装置10は、デバイスアイコン42dを第1ウインドウ40a内に移動する指示をユーザから受け付けたにも関わらず、デバイスアイコン42dを元の位置に表示する。なお、S206で、デバイス4からの応答がなかった場合に、設定変更が成功しなかったと判断しているが、所定時間の間にデバイス4から応答がなかった場合、管理装置10自らの通信設定を第3通信設定(変更前のデバイス4の通信設定)に切り換えて、デバイス4と通信を試みて、設定変更が成功しなかったことを確認してもよい。
第2ウインドウ40b内に表示されているデバイスアイコン42cを第1ウインドウ40a内に移動するユーザの指示を受け付けた場合も同様である。また、第1ウインドウ40a内に表示されているデバイスアイコン42aを第2ウインドウ40b内に移動する指示を受けたときも同様である。
ユーザは、デバイスを示すアイコンをウインドウ内に移動するだけで、アイコンが示すデバイスに、ウインドウに対応付けられた通信設定を設定させることができる。デバイスの通信設定をアイコン操作だけで変更することができる。
【0018】
次に、管理装置10が、同じ通信設定が設定されている複数のデバイスの通信設定を一括して変更する処理を説明する。図5は、記憶されている通信設定の変更による通信設定変更処理のフローチャートを示す。
管理装置10は、記憶されている設定ファイルをユーザが編集したか否かを監視している(ステップS300)。今、一のウインドウ(例えば第1ウインドウ40a)に対応付けられている第1通信設定(第1設定ファイル20に記述されている通信設定)をユーザが変更するケースを想定する。管理装置10は、第1設定ファイル20に記述された第1通信設定が変更されたことを検知する(ステップS300:YES)。管理装置10は、第1設定ファイルに対応付けられている第1ウインドウ40a内に表示されているデバイスアイコンが示すデバイスを特定する(ステップS302)。特定したデバイスに、変更された通信設定を設定することを要求する設定コマンドを送信する(ステップS304)。設定コマンドを受信したデバイス(デバイス1とデバイス2)は、コマンドに従って、第1通信設定を自らに設定する。
次に管理装置10は、設定コマンドを送信したデバイスが、指定した通信設定の設定に成功したか否かを確認する(ステップS306)。この確認は次のとおり行われる。管理装置10は、設定変更を要求した変更後の設定により、設定コマンドを送信した各デバイスと通信を試みる。この通信試行に対してデバイスが応答した場合に、設定変更が成功したと判断できる。通信試行に対してデバイスが応答しなかった場合は、設定変更が成功しなかったと判断できる。
管理装置10は、設定に成功しなかったデバイスを検知した場合(ステップS306:YES)、そのデバイスを示すアイコンを第1ウインドウ40aから消去する(ステップS308)。
上記の処理によって、ユーザは、同じ通信設定が設定されている複数のデバイスの通信設定を一括して修正することができる。
【0019】
次に、デバイスにデフォルトの通信設定を設定させる処理について説明する。各デバイスは、自己に設定されているデフォルトの通信設定(例えば、工場出荷時にROMに記憶した通信設定)を記憶している。今、ユーザが、通信設定が対応付けられている表示エリア(例えば第1ウインドウ40a)内に表示されているシンボル画像(例えばデバイスアイコン42a)を、表示エリア40cに移動する指示を管理装置10に与えるケースを想定する。
管理装置10は、ユーザの指示を受けると、ユーザが移動を指示したデバイスアイコン(ウインドウ外への移動を指示されたデバイスアイコン42a)を検知する(ステップS400)。次いで管理装置10は、検知したデバイスアイコン42aが示すデバイスを特定する(ステップS402)。デバイスアイコン42aは、デバイス1を示している。管理装置10は、特定したデバイス(デバイス1)に、デバイスのデフォルトの通信設定を設定することを要求する設定コマンドを、デバイス1に設定されている通信設定、すなわち、第1通信設定により送信する(ステップS404)。デバイス1は、設定コマンドに応答して、デバイス1のデフォルトの通信設定を設定する。続いて、管理装置10は、管理装置10のデフォルトの通信設定(デフォルト設定ファイル24に記述されている通信設定)を用いて、デバイス1との通信を試みる(ステップS406)。デバイス1のデフォルトの通信設定が、管理装置10のデフォルトの通信設定と一致する可能性があるからである。通信試行に対してデバイス1からの応答があれば、デバイス1のデフォルトの通信設定が、管理装置10のデフォルトの通信設定と同じであると判断する(ステップS408:YES)。そして、表示エリア40cに、デバイス1のデバイスアイコン42aを表示する(ステップS410)。一方、通信試行に対してデバイス1からの応答がなければ、デバイス1のデフォルトの通信設定が、管理装置10のデフォルトの通信設定と異なると判断する(ステップS408:NO)。この場合は、デバイス1のデバイスアイコン42aを、いずれの表示エリアにも表示させない。すなわち、デバイスアイコン42aを画面から消去する(ステップS412)。以上の処理により、デバイス1は、管理装置10の管理対象外のデバイスとなる。デバイス1を再び管理対象とするためには、ユーザが、デバイス1の通信設定を行うことから開始することとなる。
ユーザは、デバイスを示すアイコンを移動するだけで、そのデバイスにデフォルトの通信設定を設定することができる。また、デバイスの通信設定が、デフォルトの通信設定に変更されたことにより、そのデバイスに対応するデバイスアイコンが画面に表示されなくなる。したがって、そのデバイスが、ユーザの管理対象から外れたことを、ユーザが画面を一瞥するだけで、容易に把握できる。
【0020】
次に、管理装置による確認処理について説明する。この処理は、図2に示したステップS108の処理に続いて実行される。この処理は、ユーザによる通信設定の変更が各デバイスで許可されているか否かを確認する処理である。図7に確認処理のフローチャートを示す。
管理装置10は、ステップS108で特定したデバイスに、通信設定の変更が許可されているか否かを問い合わせる(ステップS500)。デバイスは、この問い合わせに応答して、通信設定の変更が許可されているか否か通知するメッセージを管理装置10に送信する。
管理装置10は、通信設定の変更が許可されていない旨のメッセージを受信すると(ステップS500:YES)、ステップS502の処理を実行する。管理装置10は、通信設定の変更が許可されている旨のメッセージを受信すると(ステップS500:NO)、確認処理を終了する。
ステップS502では、ステップS112で表示したアイコン(ステップS108で特定したデバイスを示すアイコン)に、変更禁止を示すマークを付加する。図8に、確認処理後の画面32aの一例を示す。図8に示すとおり、デバイス1を示すアイコン42aに、変更禁止を示すマーク44が付加される。変更禁止のマークを付加することによって、ユーザは、各デバイスが設定変更可能か否かを一目で把握することができる。
【0021】
以上説明した実施例の好適な変形例を以下に記す。
例えば、デバイス探索・表示処理は、定期的に起動されなくともよい。例えば、新たなデバイスの接続が検知された場合に起動されてもよい。新たなデバイスの接続の検知は、通信設定を用いない通信プロトコルで検知することができる。その処理は、例えばSNMPに規定されている。また、デバイスにデフォルトの通信設定を設定させる場合には、管理装置10のデフォルトの通信設定に対応する表示エリア40cに、デフォルトの通信設定を設定させるデバイスに対応するデバイスアイコンを移動させるようにしたが、これに限らない。例えば、ゴミ箱を示すアイコンのように、特定のアイコンを画面上に表示させ、そのアイコン上にデバイスアイコンを移動させると、そのデバイスに、デフォルトの通信設定を設定させる要求コマンドが送信されるようにしてもよい。
また、画面に表示される表示エリアの一つとして、デバイスの通信設定が、デフォルトの通信設定であるデバイスを示すデバイスアイコンを表示するデフォルト表示エリアを設けてもよい。この場合は、管理装置10の記憶装置14には、ネットワークに接続された各デバイスのデフォルトの通信設定が記述されたデバイスデフォルト設定ファイルをさらに記憶している。図2で、第1設定ファイル、第2設定ファイル等、および、デフォルト設定ファイルに記憶された通信設定により通信を試みた後、このデバイスデフォルト設定ファイルに記述されたすべてのデバイスのデフォルトの通信設定について、それぞれ通信を試みる。その結果、いずれかのデバイスのデフォルトの通信設定における通信により応答のあったデバイスについて、そのデバイスのデバイスアイコンを、デフォルト表示エリア内に表示する。これにより、まだ通信設定が未設定のデバイスを、ユーザが画面を一瞥するだけで容易に把握することができる。このようなデフォルト表示エリアを設けた場合には、管理装置10から、デバイスにデフォルトの通信設定を設定させる指示を受けると、そのデバイスを示すデバイスアイコンは、このデフォルト表示エリアに表示されることとなる。なお、1つのデフォルト表示エリアに、すべてのデフォルト設定のデバイスのアイコンを表示したが、それぞれ通信設定ごとに異なる表示エリアに区分して表示してもよい。
なお、本実施例では、SNMPv3に基づいて、相互に通信を行うことについて記載したが、SNMPv1のように、SNMPv3より下位の通信プロトコルでも通信を行うことができる。ただし、このSNMPv1における通信は、SNMPv3における通信ほど、セキュリティが高くない。したがって、この管理プログラムをより高いセキュリティ下で動作させるためには、SNMPv1の通信プロトコルで通信を行う設定になっているデバイスについては、いずれの表示エリアにも表示させない。
このように、SNMPv1で動作するデバイスについて、いずれの表示エリアにも表示させないことにより、ユーザが、デバイスアイコンを移動させて、デバイスに新たな通信設定を設定させることもできない。すなわち、本実施例のように、デバイスアイコンを移動させることで、そのデバイスアイコンに対応するデバイスに新たな通信設定を設定させる場合には、そのデバイスに対して、新たな通信設定を、デバイスに設定されている通信設定を用いて送信しなければならない。つまり、SNMPv1に設定されているデバイスに対して、SNMPv1の通信プロトコルで、SNMPv3の通信プロトコルに必要な通信設定(例えば、認証キーのような秘匿性の高い情報も含まれる通信設定)が送信されてしまう。SNMPv1の通信プロトコルにより通信を行う設定がされているデバイスについては、そのデバイスアイコンを表示させないことにより、上述のようなセキュリティを十分に確保できない状況を未然に防止することができる。
なお、SNMPv1に設定されているデバイスは、SNMPv1からSNMPv3へ通信プロトコルを変更することにより、該当する表示エリアに、デバイスアイコンが表示されることとなる。また、デバイスがデフォルトの通信設定に設定されると、通信プロトコルがSNMPv1に変更されるデバイスであれば、上述のようにデフォルト表示エリアを設けた場合であっても、このデフォルト表示エリアにも、SNMPv1に変更されたデバイスは表示させない。
【0022】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】管理装置の模式的ブロック図である。
【図2】デバイス探索・表示処理のフローチャート図である。
【図3】管理装置の画面の一例を示す図である。
【図4】通信設定変更処理(アイコン移動)のフローチャート図である。
【図5】通信設定変更処理(記憶された通信設定の変更)のフローチャート図である。
【図6】デフォルト通信設定への変更処理のフローチャート図である。
【図7】確認処理のフローチャート図である。
【図8】画面の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
10:管理装置
12:CPU
14:記憶装置
16:管理プログラム
20:第1設定ファイル
22:第2設定ファイル
90:ネットワーク
92:デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続されており、通信設定が個別に設定可能な複数のデバイスを管理するデバイス管理装置であり、
複数の異なる通信設定を記憶している記憶手段と、
通信設定を設定してデバイスと通信するコントローラを備えており、当該コントローラは、
記憶された夫々の通信設定ごとに、デバイスとの通信を試行する試行処理と、
通信の試行に応答するデバイスを特定する監視処理と、
記憶された夫々の通信設定に対応付けられた複数の表示エリアを画面に表示するとともに、夫々の通信設定による通信の試行に応答したデバイスを示すシンボル画像を、その通信設定に対応付けられた表示エリアに表示する表示処理と、
を実行することを特徴とするデバイス管理装置。
【請求項2】
コントローラは、一の表示エリアの外に表示されているシンボル画像を当該表示エリア内に移動する指示を受けると、移動されたシンボル画像が示すデバイスに、当該表示エリアに対応付けられている通信設定を設定するコマンドを送信することを特徴とする請求項1に記載のデバイス管理装置。
【請求項3】
コントローラは、表示エリアに対応付けられている通信設定が変更されると、変更された通信設定に対応付けられている表示エリアに表示されているシンボル画像が示すデバイスに、変更された通信設定を設定するコマンドを送信することを特徴とする請求項1又は2に記載のデバイス管理装置。
【請求項4】
コントローラは、通信設定が対応付けられている表示エリア内に表示されているシンボル画像を、通信設定が対応付けられていない別の表示エリアに移動する指示を受けると、移動されたシンボル画像が示すデバイスに、デバイスのデフォルトの通信設定を設定するコマンドを送信することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のデバイス管理装置。
【請求項5】
ネットワークに接続されているコンピュータを、ネットワークに接続されており通信設定が個別に設定可能な複数のデバイスを管理するデバイス管理装置のためのコンピュータプログラムであり、デバイス管理装置のコンピュータに、以下の処理、即ち、
複数の異なる通信設定を記憶する記憶処理、
記憶された夫々の通信設定ごとにデバイスとの通信を試行する試行処理、
通信の試行に応答するデバイスを特定する監視処理、
記憶された夫々の通信設定に対応付けられた複数の表示エリアを画面に表示するとともに、夫々の通信設定による通信の試行に応答したデバイスを示すシンボル画像を、その通信設定に対応付けられた表示エリアに表示する表示処理、
を実行させることを特徴とするデバイス管理用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−157729(P2009−157729A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336423(P2007−336423)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】