デフォルメ地図の自動生成装置、方法、及びプログラム、並びにナビゲーション機器とサーバ
【課題】 小型の情報処理機器に搭載されるごく小さいディスプレイに表示される場合でも十分に高い視認性を維持するデフォルメ地図、を比較的少ない計算量で生成する装置及び方法、を提供する。
【解決手段】 主経路データ記憶部(31)は与えられた電子地図から主経路を取り出す。周辺経路データ記憶部(32)は主経路周辺の経路を周辺経路として設定する。周辺経路データ修正部(33)は周辺経路上のアークをデフォルメされた主経路に接続する。テンプレート記憶部(34)は単純図形を表すテンプレートを記憶する。類似度評価部(35A)は経路区分と単純図形との間の類似度を数値化する。適合図形決定部(35B)は各経路区分について、最高の類似度を示す単純図形を適合図形として決定する。経路分割部(35C)は適合図形のない経路区分を二分する。デフォルメデータ算出部(36)はバネモデルを用いて経路区分を変形し、その適合図形に接近させる。
【解決手段】 主経路データ記憶部(31)は与えられた電子地図から主経路を取り出す。周辺経路データ記憶部(32)は主経路周辺の経路を周辺経路として設定する。周辺経路データ修正部(33)は周辺経路上のアークをデフォルメされた主経路に接続する。テンプレート記憶部(34)は単純図形を表すテンプレートを記憶する。類似度評価部(35A)は経路区分と単純図形との間の類似度を数値化する。適合図形決定部(35B)は各経路区分について、最高の類似度を示す単純図形を適合図形として決定する。経路分割部(35C)は適合図形のない経路区分を二分する。デフォルメデータ算出部(36)はバネモデルを用いて経路区分を変形し、その適合図形に接近させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はGIS(Geographic Information System:地理情報システム)に関し、特にGISでのデフォルメ地図の自動生成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
GISとは、電子化された地図、いわゆる電子地図(数値地図とも言う)に様々な情報(空間データ)をリンクさせてデータベース化し、それらの情報を地理情報と関係づけて視覚化するときにそのデータベースを利用するシステム、を言う。GISは、例えば、防災情報システム、エリアマーケティング、施設管理システム、及び観光案内システムで利用される。GISは更に、パソコン/カーナビゲーションシステムでの利用を通じ、一般の人々にとっても馴染み深いものになっている。特にインターネットの普及により最新の地図が容易に入手可能であるので、GISの利用者は増大を続けている。
【0003】
近年では更に、携帯電話の高性能化/多機能化が携帯電話網へのGISの導入を容易にした。特に電子地図とGPSとの併用により、携帯電話を用いたナビゲーションシステムが実現されている。ここで、電子地図は外部のサーバから携帯電話網を通してダウンロードされる。
携帯電話が著しく普及した現在、このナビゲーションシステムの需要は今後、更に増大することが予想される。
【0004】
しかし、携帯電話のような小型の情報処理機器を用いたナビゲーションシステムには次のような問題点がある。その一つは、ディスプレイが一般に小さいことである。もう一つは、電子地図を外部のサーバからダウンロードする場合、伝送されるべき電子地図のデータ量に比べて通信速度が一般に不十分なことである。
ディスプレイが小さいとき、現在地点から目的地点までの経路全体が表示されるとその経路の細部がわかりにくく、逆に、経路の細部が十分にわかる程度に拡大されるとその経路全体が表示されない。このように、小さいディスプレイでは表示される経路の視認性が一般に低い。
通信速度が不十分であるとき、サーバに対して経路の探索要求が送信された時点から、その経路を含む電子地図がサーバからダウンロードされてディスプレイに表示される時点までの待ち時間が長い。更に、表示される電子地図の切換がユーザの移動には即応できない。
【0005】
小型の情報処理機器を用いた従来のナビゲーションシステムでは、上記の問題点の解消を目的として、電子地図そのままに代えてデフォルメ地図が利用される。
電子地図では、交差点及び曲がり角がノードで表され、道路がノード間を結ぶアーク(リンクとも言う)で表される。すなわち、電子地図はノードとアークとの集合を表すデータ(ベクトルデータとも言う)である。
デフォルメ地図では、電子地図に含まれる情報のうち、特徴的な形状に関する情報が強調され、その情報以外の情報が省略される。それにより、デフォルメ地図は元の地図より正確ではないが、単純化される。その単純化により、デフォルメ地図は一般に、元の地図より視認性が高い。更に、デフォルメ地図のデータ量は元の電子地図のデータ量より十分に小さい。従って、デフォルメ地図はサーバから短時間でダウンロードされる。それ故、ナビゲーションシステムの応答速度が高く、すなわち操作性が高い。
【0006】
上記の単純化、すなわちデフォルメの手法には例えば、次のようなものが含まれる。
・道路の直線化:直線に近い道路は直線又はより直線に近い線に変形する。例えば、隣接する二つのアーク間の角度が180°に近いとき、それら二つのアークを一つのアークに置換し、又は二つのアーク間の角度をより180°に近い値に調節する。
歩行者は一般に、道路の小さい湾曲、及び交差点を挟んだ道路方向の小さな変化には気付きにくい。そのような気付きにくい形状はナビゲーションでは一般に不要であるので、それらの形状に関する情報はナビゲーション機能を損なうことなく、省略できる。その省略によりデフォルメ地図のデータ量が低減する。更に、そのような詳細な形状の省略は道路の形状を単純化するので、デフォルメ地図の視認性が向上する。
・道路方向の量子化:道路の直線部分の方向が一定角度(例えば45°)の整数倍で近似される。例えば、隣接する二つのアーク間の角度が45°刻みで量子化される。
この量子化により道路方向の種類が限られるので、デフォルメ地図の視認性が一般に向上し、かつデフォルメ地図のデータ量が低減する。
・ランドマーク情報の省略:目的地までの経路からは遠く離れているランドマーク、及びその経路周辺ではあってもあまり目立たないランドマークに関する情報が省略される。その省略は、ナビゲーション機能を損なうことなくデフォルメ地図のデータ量を低減させ、かつデフォルメ地図の視認性を向上させる。
【0007】
従来のナビゲーションシステムによるデフォルメ地図の生成方法としては、例えば次のようなものが知られる(例えば、特許文献1、2、3参照)。
・所定のメッシュが地図に重ねられ、地図上のノードの一部がメッシュ上に移され、地図上のアークがメッシュ上に移されたノード間の線分に置換される(特許文献1図7、8参照)。
・地図上のノードごとに、そのノードで接続されるアークの中から基準のアークが選択され、その基準のアークと他のアークとの角度が一定角度刻みで量子化(正規化)される(特許文献2図9参照)。
・地図上の全てのアークについて、その長さと隣接する二つのアーク間の角度とが調節される。アークの伸縮量と上記角度の所定角度からのずれとが均衡するまで、その調節が反復される(特許文献3図3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平10−74042号公報
【特許文献2】特開平10−198267号公報
【特許文献3】特開2004−139485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
小型の情報処理機器、特に携帯電話に対しては小型化の要請が極めて高い。従って、ディスプレイの拡大はほとんど望めない。それ故、小型の情報処理機器を用いたナビゲーションシステムの更なる普及には、更に高い視認性を持つデフォルメ地図が求められる。
デフォルメ地図の視認性の更なる向上には、デフォルメによる図形の単純化が幾何学的のみならず、心理的にも有効と認められるものが好ましい。すなわち、デフォルメ地図が見た目に単純であるだけでなく、実際の景色からユーザにより観念される地図に近いことが好ましい。
【0010】
ナビゲーションシステムでは、経路の探索要求の入力から探索された経路の表示までの時間が短いほど好ましい。更に、ユーザの移動又は経路周辺の状況変化に合わせて地図が即座に切り換わることが好ましい。
小型の情報処理機器を用いた上記のナビゲーションシステムではデフォルメ地図が利用されるので、そのデフォルメ地図の生成に要する時間が短く維持されねばならない。特にデフォルメ地図の生成に必要な計算量が小さく抑えられねばならない。
【0011】
本発明は、小型の情報処理機器に搭載されるごく小さいディスプレイに表示される場合でも十分に高い視認性を維持するデフォルメ地図、を比較的少ない計算量で生成する装置及び方法、の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるデフォルメ地図の自動生成装置は、
所定の地点から目的地点までの主経路をノードとアークとの集合として表すデータ、を記憶する主経路データ記憶部;
所定の単純図形を表すデータであるテンプレート、を記憶するテンプレート記憶部;
主経路を表すデータに基づき主経路を経路区分に階層的に分割し、テンプレートと経路区分を表すデータとに基づき経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表すテンプレートをその経路区分の適合テンプレートとして記憶する適合テンプレート選択部;及び、
経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき、その経路区分よりその適合図形に形状が近似する変形経路区分、を表すデータを計算し、変形経路区分の全てを表すデータ全体を、デフォルメされた主経路を表すデータとして記憶するデフォルメデータ算出部;
を有する。
【0013】
本発明によるデフォルメ地図の自動生成方法は、
(A) 所定の地点から目的地点までの主経路をノードとアークとの集合として表すデータを取得し、メモリに記憶するステップ;
(B) 主経路を表すデータに基づき主経路を経路区分に階層的に分割し、テンプレートと経路区分を表すデータとに基づき、経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表すテンプレートをその経路区分の適合テンプレートとしてメモリに記憶するステップ;及び、
(C) 経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき変形経路区分を表すデータを計算し、変形経路区分の全てを表すデータ全体をデフォルメされた主経路を表すデータとしてメモリに記憶するステップ;
を有する。
【0014】
ここで、ノードは主経路上の交差点及び曲がり角等、特徴的な地点の位置情報(例えば二次元的な座標及び高度)を表し、アークは主経路に含まれる道路の形状に関する情報(例えば、両端の座標、幅、湾曲、及び起伏)を表す。単純図形は好ましくは、直線、円弧(楕円弧を含む)、又は正弦曲線等、単純な線図である。経路区分は、主経路をノードとアークとの集合としてみた場合での(連結な)部分集合に当たる。
【0015】
人が手書き等で地図をデフォルメして単純化する場合は一般に、地図中の経路を単純図形の組み合わせで表現する傾向が認められる。この単純化を、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置及び方法は自動化する。従って、デフォルメによる地図の単純化が幾何学的のみならず、心理的にも有効と認められる。すなわち、デフォルメ地図が見た目に単純であるだけでなく、実際の景色からユーザにより観念される地図に近い。それ故、本発明によるデフォルメ地図は視認性が高い。
【0016】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置では好ましくは、
主経路を表すデータとテンプレートとに基づき経路区分と単純図形との間の類似度を数値化する類似度評価部;
経路区分のそれぞれについて、数値化された類似度の中で最も高いものが所定の閾値以上であるとき、その最高の類似度を示す単純図形をその経路区分の適合図形として決定する適合図形決定部;及び、
経路区分のうち適合図形を持たないものをそれぞれ、所定の割合で二つ以上の経路区分に分割する経路分割部;
を適合テンプレート選択部が有する。
【0017】
それに対応して本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法では好ましくは、
主経路を表すデータとテンプレートとに基づき、経路区分と単純図形との間の類似度を数値化するサブステップ;
経路区分のそれぞれについて、数値化された類似度の中で最も高いものが所定の閾値以上であるとき、その最高の類似度を示す単純図形をその経路区分の適合図形として決定するサブステップ;及び、
経路区分のうち適合図形を持たないものをそれぞれ、所定の割合で二つ以上の経路区分に分割するサブステップ;
を上記のステップ(B)が有する。
【0018】
ここで、類似度に関する上記の閾値はユーザにより調節可能なパラメータとされても良い。更に、経路区分の分割の割合は好ましくは、ほぼ均等である。すなわち、ノード又はアークがほぼ同数ずつ、分配される。但し、隣接する二つの経路区分は一端のノードを共有する。
【0019】
経路区分の分割は好ましくは、全ての経路区分について適合図形が決定されるまで反復される。それにより、主経路が階層的に分割され、各階層で適合図形により近似される。すなわち、一つの単純図形による近似の範囲が単純図形に対する類似度に応じて階層的に細分化される。この近似は人による上記の近似を自動化したものとみなせるので、適合図形の集合全体が主経路を数値的のみならず視覚的にも良好に近似する。特に、近似のプロセスが主経路の全体から細部へと進行するので、適合図形の集合全体と主経路の全体との間の類似度が数値的のみならず視覚的にも高い。
更に、類似度の数値化、及びその類似度に基づく適合図形の決定のいずれについても必要な計算量は比較的少ない。
【0020】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置では更に好ましくは、
経路区分の全てが適合図形を持つとき、類似度評価部が隣接する二つの経路区分を一つの経路区分とみなして類似度を数値化し、
適合図形決定部がその一つの経路区分について適合図形の決定に成功したとき、その一つの経路区分を表すデータで上記の隣接する二つの経路区分を表すデータを置換する。
【0021】
それに対応して本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法では更に好ましくは、
経路区分の全てが適合図形を持つとき、隣接する二つの経路区分を一つの経路区分とみなして類似度を数値化するサブステップ;及び、
その一つの経路区分について適合図形の決定に成功したとき、その一つの経路区分を表すデータで上記の隣接する二つの経路区分を表すデータを置換するサブステップ;
をステップ(B)が更に有する。
【0022】
与えられた主経路に対して決定される適合図形の集合は実際には、経路区分への分割の仕方に依存する。デフォルメ地図のデータ量の削減には、適合図形の集合に含まれる単純図形の数ができる限り少ないことが望ましい。
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置及び方法は、与えられた主経路に対して適合図形の集合を一旦決定したとき、隣接する二つの経路区分を上記の通り統合して、適合図形の決定を再度試みる。この経路区分の統合は好ましくは適合図形の再決定に失敗するまで反復される。こうして、主経路とデフォルメされた主経路との間の類似度が高く維持されたまま、デフォルメされた主経路のデータ量が削減される。
【0023】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置では好ましくは、デフォルメデータ算出部が、
経路区分上のノードをその経路区分の適合図形上の一点に対応づけ、
ノードと一点とを所定の比率で内分する点を変形経路区分上のノードとして設定し、
経路区分上の二つのノードがアークで接続されるとき、変形経路区分上の対応する二つのノードを接続するアークを設定する。
【0024】
それに対応して本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法では好ましくは、
経路区分上のノードをその経路区分の適合図形上の一点に対応づけるサブステップ;
ノードと一点とを所定の比率で内分する点を変形経路区分上のノードとして設定するサブステップ;及び、
経路区分上の二つのノードがアークで接続されるとき、変形経路区分上の対応する二つのノードを接続するアークを設定するサブステップ;
をステップ(C)が含む。
【0025】
本発明によるこのデフォルメ地図自動生成装置及び方法では、変形経路区分が比較的少ない計算量で得られる。
変形経路区分の計算では更に好ましくは、内分比がユーザにより調節可能なパラメータである。それにより、ユーザはデフォルメされた主経路を実際に見ながら、最高の視認度が得られるようにデフォルメの度合を最適化できる。その作用は、適合図形の決定で用いられる、数値化された類似度に対する閾値についても同様である。
【0026】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置は好ましくは、
主経路に連結する周辺経路をノードとアークとの集合として表すデータを記憶する周辺経路データ記憶部;及び、
周辺経路を表すデータに基づき、周辺経路に含まれるアークを移動させ、そのアークを伸縮させ、それによりそのアークをデフォルメされた主経路又は既に移動済みの周辺経路に含まれる他のノードに接続する周辺経路データ修正部;
を有する。
【0027】
それに対応して本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法は好ましくは、
主経路に連結する周辺経路をノードとアークとの集合として表すデータを取得し、メモリに記憶するステップ;及び、
周辺経路を表すデータに基づき、周辺経路に含まれるアークを移動させ、そのアークを伸縮させ、それによりそのアークをデフォルメされた主経路又は既に移動済みの周辺経路に含まれる他のノードに接続するステップ;
を有する。
【0028】
デフォルメされた主経路と元の主経路とでは対応するノードの座標が一般に異なる。本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置及び方法は、そのノードの変位に合わせて周辺経路を表すデータを変換する。ここで、その変換にはアークの並進、回転、及び伸縮が含まれる。それにより、変換された周辺経路とデフォルメされた主経路との間の接続関係(トポロジー)が、元の周辺経路と元の主経路との間のトポロジーと同等にできる。
【0029】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置は更に好ましくは、
適合テンプレート選択部が、周辺経路を表すデータに基づき周辺経路を経路区分に階層的に分割し、テンプレートと経路区分を表すデータとに基づき経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表すテンプレートをその経路区分の適合テンプレートとして記憶し、
デフォルメデータ算出部が周辺経路に含まれる経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき変形経路区分を表すデータを計算し、変形経路区分の全てを表すデータ全体を、デフォルメされた周辺経路を表すデータとして記憶する。
【0030】
それに対応して本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法は更に好ましくは、
周辺経路を表すデータに基づき周辺経路を経路区分に階層的に分割し、テンプレートと経路区分を表すデータとに基づき経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表すテンプレートをその経路区分の適合テンプレートとしてメモリに記憶するステップ;及び、
経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき変形経路区分を表すデータを計算し、変形経路区分の全てを表すデータ全体を、デフォルメされた周辺経路を表すデータとしてメモリに記憶するステップ;
を有する。
【0031】
経路区分の分割は好ましくは、全ての経路区分について適合図形が決定されるまで反復される。それにより、周辺経路が主経路と同様、階層的に分割され、各階層で適合図形により近似される。従って、適合図形の集合全体は主経路と共に、周辺経路も良好に近似する。すなわち、デフォルメ地図全体の視認性が高い。
更に、適合図形の決定及び変形経路区分の計算のいずれについても必要な計算量は、主経路に関するそれらと同様に比較的少ない。
【0032】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置は更に好ましくは、
周辺経路データ記憶部が主経路と周辺経路とを表すデータに基づき、主経路上のノードで互いに連結する主経路上のアークと周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を計算して記憶し、
デフォルメデータ算出部が、その角度、及びデフォルメされた主経路とデフォルメされた周辺経路とを表すデータに基づき、デフォルメされた主経路上のノードで互いに連結するデフォルメされた主経路上のアークとデフォルメされた周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を調整する。
【0033】
それに対応して本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法は更に好ましくは、
主経路と周辺経路とを表すデータに基づき、主経路上のノードで互いに連結する主経路上のアークと周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を計算し、メモリに記憶するステップ;及び、
その角度、及びデフォルメされた主経路とデフォルメされた周辺経路とを表すデータに基づき、デフォルメされた主経路上のノードで互いに連結するデフォルメされた主経路上のアークとデフォルメされた周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を調整するステップ;
を有する。
【0034】
主経路上のノードに連結する周辺経路上のアークは一般に、同じノードで互いに連結する主経路上の二つのアークの成す角を二分する。例えば、その二つの角度の関係がデフォルメの前後で同等とみなせるように、デフォルメされた主経路と周辺経路とについて、対応する二つの角度が調節される。好ましくは、その二つの角度の比がデフォルメの前後で保存される。それにより、デフォルメされた主経路上のアークとデフォルメされた周辺経路上のアークとの間で、重なり及び交差が回避される。更に、主経路の方向と周辺経路の方向との関係がデフォルメの前後で同等とみなせるので、歩行者が実際に見る景色とデフォルメ地図との間には違和感が少ない。
【0035】
本発明によるデフォルメ地図の自動生成プログラムは、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法に含まれる各ステップをCPUに実行させる。それにより、通常の情報処理機器であればいずれも、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置として機能する。
【0036】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置は好ましくは、次のようなナビゲーション機器に搭載される。そのナビゲーション機器は、
目的地点を表すデータ、を設定する目的地点データ設定部;
目的地点へ向かう経路の起点を表すデータ、を設定する起点データ設定部;
目的地点と起点とを含む所定範囲の地図をノードとアークとの集合として表すデータ、を設定する地図データ設定部;及び、
目的地点、起点、及び地図を表すデータに基づき、起点から目的地点までの経路を表すノードとアークとの集合を所定の条件に従って決定する経路データ算出部;
を有する経路探索装置;
経路探索装置により決定されたノードとアークとの集合を主経路を表すデータとし、デフォルメされた主経路を表すデータを計算する、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置;並びに、
デフォルメされた主経路を表すデータに基づき、デフォルメされた主経路を画像として表示する表示装置;
を具備する。
【0037】
起点データ設定部は好ましくはGPSを含む。その場合、ナビゲーション機器の現在位置が起点として設定され、その起点を表すデータがGPSを用いて計算されても良い。その他に、起点を表すデータがユーザにより直接入力されても良い。
【0038】
地図データ設定部は例えば、HDD若しくはCD/DVDドライブ等のディスク記録再生装置、又は半導体メモリを含み、それらにより広範囲の電子地図を予め記憶していても良い。その他に、より好ましくは、
上記のナビゲーション機器が外部のサーバと通信するインタフェース、を更に具備し、
地図データ設定部が、目的地点と起点とを表すデータをインタフェースを通してサーバに送信し、地図を表すデータ(すなわち電子地図)をサーバから受信する。
ここで、インタフェースによるサーバとの通信には例えば、LAN(無線LANを含む)、電話回線、携帯電話網、又はインターネットが利用される。
このように、必要な範囲の電子地図を必要なときに外部のサーバからダウンロードする場合、ナビゲーション機器には大容量の記憶装置が搭載されなくても良い。更に、サーバに最新の電子地図が備えられている限り、上記のナビゲーション機器のユーザは電子地図の更新に関する手間を削減できる。
【0039】
経路データ算出部に課せられる上記所定の条件には好ましくは「経路が最短であること」が含まれる。その他に、「経路が所定の中継点又は経路を通ること」等、既存のナビゲーションシステムで経路探索時に用いられている様々な条件が含まれても良い。
【0040】
本発明による上記のナビゲーション機器は、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置を用いて、探索された経路をデフォルメ地図として表示する。従って、上記のナビゲーション機器が例えば携帯電話のように小型のディスプレイしか持たないものであっても、それに表示されるデフォルメ地図の視認性が高い。更に、地図のデフォルメに必要な計算量が比較的少ないので、例えば携帯電話のようにCPUパワーが比較的低い情報処理機器でも、デフォルメ地図を素早く計算できる。特にユーザの移動に合わせて地図が切り換えられる場合、及びユーザがデフォルメの程度を調節する場合等で、デフォルメ地図の再計算が早い。こうして、上記のナビゲーション機器は操作性が高い。
【0041】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置は上記のようなナビゲーション機器の他に次のようなナビゲーション機器に搭載されても良い。そのナビゲーション機器は、
外部のサーバと通信するインタフェース;
目的地点を表すデータ、を設定し、上記のインタフェースを通してサーバへ送信する目的地点データ設定部;
目的地点へ向かう経路の起点を表すデータ、を設定し、上記のインタフェースを通してサーバへ送信する起点データ設定部;
起点から目的地点までの経路を表すノードとアークとの集合、を上記のインタフェースを通してサーバから受信し、その集合を主経路を表すデータとし、デフォルメされた主経路を表すデータを計算する、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置;並びに、
デフォルメされた主経路を表すデータに基づき、デフォルメされた主経路を画像として表示する表示装置;
を有する。
すなわち、本発明によるこのナビゲーション機器は上記のものとは異なり、起点と目的地点とを表すデータを外部のサーバにアップロードし、それら起点と目的地点との間の経路探索をそのサーバに実行させる。それにより、サーバからダウンロードされる電子地図の範囲が探索された経路周辺に限られる。従って、ダウンロードされるべきデータ量が低減し、ダウンロードに要する時間が短縮される。
【0042】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置は次のようなナビゲーションサーバに搭載されても良い。そのナビゲーションサーバは、
外部の端末と通信するインタフェース;
端末から上記のインタフェースを通して受信されるデータに基づき、目的地点を表すデータ、を設定する目的地点データ設定部;
端末から上記のインタフェースを通して受信されるデータに基づき、目的地点へ向かう経路の起点を表すデータ、を設定する起点データ設定部;
目的地点と起点とを含む所定範囲の地図をノードとアークとの集合として表すデータ、を設定する地図データ設定部;及び、
目的地点、起点、及び上記の地図を表すデータに基づき、起点から目的地点までの経路を表すノードとアークとの集合を所定の条件に従って決定する経路データ算出部;
を有する経路探索装置;並びに、
経路探索装置により決定されたノードとアークとの集合を主経路を表すデータとし、デフォルメされた主経路を表すデータを計算し、そのデータを上記のインタフェースを通して端末へ送信する、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置;
を具備する。
ここで、上記の端末は好ましくは、携帯電話等、小型の情報処理機器である。
【0043】
目的地点データ設定部と起点データ設定部とは例えば、目的地点と起点とのそれぞれの名称、住所、又は電話番号を表すテキストデータを端末から受信しても良い。その他に、端末がGPSを搭載する場合、起点データ設定部が端末の現在地点を表すGPSデータを受信しても良い。
【0044】
地図データ設定部は例えば、自身に内蔵されるHDD若しくはCD/DVDドライブ等のディスク記録再生装置、又は半導体メモリに広範囲の電子地図を予め記憶していても良い。その他に、ネットワーク上の他のサーバに構築される、電子地図に関するデータベースにアクセスしても良い。
【0045】
経路データ算出部に課せられる上記所定の条件には好ましくは「経路が最短であること」が含まれる。その他に、「経路が所定の中継点又は経路を通ること」等、既存のナビゲーションシステムで経路探索時に用いられている様々な条件が含まれても良い。
【0046】
本発明による上記のナビゲーションサーバは本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置を用いて、探索された経路をデフォルメし、デフォルメされた経路を表すデータを端末へ送信する。端末はそのデフォルメされた経路をディスプレイに表示する。従って、その端末が例えば携帯電話のように小型のディスプレイしか持たないものであっても、それに表示されるデフォルメ地図の視認性が高い。
更に、デフォルメされた経路を表すデータ量は比較的少ないので、ダウンロードに要する時間が短い。特に、ユーザの移動に合わせて地図が切り換えられる場合、及びユーザがデフォルメの度合を調節する場合等で、再計算されたデフォルメ地図の再ダウンロードが早い。その上、本発明による上記のナビゲーションサーバが多数の端末から同時に経路探索の要求を受けるとき、要求一つ当たりの処理時間が短いのでサーバがダウンしにくい。こうして、上記のナビゲーションサーバと端末とによるナビゲーションシステムは操作性が高い。
【発明の効果】
【0047】
本発明によるデフォルメ地図自動生成装置及び方法は上記の通り、十分に高い視認性を持つデフォルメ地図を少ない計算量で生成できる。特に携帯電話等、小型の情報処理機器によるGISの利用では、表示される経路の視認性及び操作性の向上の面で、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置及び方法が有利である。
例えば、防災情報システムへの導入では、被害状況、予測、及び避難経路等、災害に関する情報が、携帯電話を通してより多数の人々へ効率良く配信できる。そのとき特に、デフォルメ地図の視認性の高さから、緊急時でもユーザが情報を的確に把握できる。
その他に、施設/観光案内システムへの導入では、携帯電話による操作の手軽さ、及び経路情報のわかりやすさからシステム利用者の拡大が見込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の最良の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。このナビゲーションシステムは好ましくは携帯電話10を端末として用い、更に地図データサーバ20を備える。その他に、例えばPDA及びノートパソコンのように、CPUパワーの高い小型情報処理機器が端末として用いられても良い。
ナビゲーションでは、携帯電話10が基地局30と携帯電話網/インターネット40とを通して地図データサーバ20にアクセスし、必要な範囲の電子地図をダウンロードする。携帯電話10は更に、ダウンロードされた電子地図に基づき経路を探索し、探索された経路をデフォルメしてディスプレイに表示する。
【0049】
携帯電話10は、経路探索装置1、インタフェース2、デフォルメ地図自動生成装置3、及び表示装置4を有する。
経路探索装置1は所定の起点から目的地点までの経路を探索し、起点、目的地点、及び探索された経路を含む範囲の電子地図を出力する。
インタフェース2はアンテナ2Aを通して基地局30との間で無線通信を行う。基地局30の中継により、携帯電話10は携帯電話網/インターネット40に接続される。
【0050】
デフォルメ地図自動生成装置3は経路探索装置1から電子地図を読み込み、その電子地図に基づき、探索された経路及びその周辺について、デフォルメ地図を作成する。ここで、デフォルメ地図自動生成装置3の機能は好ましくは、携帯電話10のCPUが所定のナビゲーションプログラムを実行することにより実現される。デフォルメ地図自動生成装置3はその他に、専用のLSIで構成されても良い。デフォルメ地図自動生成装置3の構成/機能の詳細については後述する。
表示装置4は例えば小型液晶ディスプレイを制御し、ナビゲーションの操作画面及びデフォルメ地図等の情報をそのディスプレイに表示する。
【0051】
経路探索装置1は、ユーザインタフェース11、GPS12、目的地点データ設定部13、起点データ設定部14、地図データ設定部15、及び経路データ算出部16を有する。
ユーザインタフェース11は例えばキーパッドを含む。ユーザはユーザインタフェース11を通し、目的地点又は起点を表すデータ(例えば住所、名称、又は電話番号を表すテキストデータ)を経路探索装置1に入力する。
GPS12は、複数のGPS衛星からのマイクロ波を受信し、受信のタイミングのずれから携帯電話10の現在位置を計算する。
【0052】
目的地点データ設定部13は例えば表示装置4を制御し、ディスプレイを通してユーザに目的地点を表すデータの入力を促す。目的地点データ設定部13は更に、ユーザインタフェース11を通して入力されるデータから目的地点を設定し、その目的地点を表すデータを地図データ設定部15に渡す。
起点データ設定部14は、GPS12により計算された携帯電話10の現在位置を読み込み、その現在位置を探索すべき経路の起点として設定し、その起点を表すデータを地図データ設定部15に渡す。起点データ設定部14はその他に、目的地点データ設定部13と同様に、ユーザインタフェース11を通して入力されるデータから起点を設定しても良い。
【0053】
地図データ設定部15はインタフェース2を通して地図データサーバ20に対し、電子地図のダウンロードを要求する。そのとき、そのサーバ20にアップロードされるデータには、起点及び目的地点を表すデータが含まれる。
地図データ設定部15は続いて、インタフェース2を通して地図データサーバ20から、起点と目的地点とを含む所定範囲(又は図郭)の電子地図をダウンロードする。
その他に、例えば携帯電話10が大容量の記憶装置を内蔵するとき、それを利用して広範囲の電子地図を搭載しても良い。その場合、地図データ設定部15は地図データサーバ20に代え、搭載される電子地図から、起点と目的地点とを含む所定範囲を検索しても良い。
【0054】
経路データ算出部16は地図データ設定部15によりダウンロードされた電子地図を読み込み、それに基づき、起点から目的地点までの経路を所定の条件に従って求める。その条件には好ましくは「経路が最短であること」が含まれる。その他に、「経路が所定の中継点又は経路を通ること」等が含まれても良い。
最短経路の探索には好ましくはダイクストラ(Dijkstra)法が用いられる。
【0055】
目的地点データ設定部13、起点データ設定部14、地図データ設定部15、及び経路データ算出部16の各機能は好ましくは、携帯電話10のCPUが所定のナビゲーションプログラムを実行することにより実現される。それらはその他に、それぞれ専用のLSIで構成されても良い。
【0056】
地図データサーバ20は、インタフェース21、地図データ検索部22、及び電子地図データベース23を有する。
インタフェース21は携帯電話網/インターネット40に接続され、外部の情報処理機器(特に携帯電話10)との間で通信を行う。
【0057】
地図データ検索部22はインタフェース21を通して携帯電話10から、電子地図のダウンロード要求、及び起点と目的地点とを表すデータを受信する。地図データ検索部22はそのとき、それらのデータから起点と目的地点とのそれぞれについて電子地図上での座標を割り出し、それらの座標を含む所定範囲(又は図郭)の電子地図を電子地図データベース23から検索する。検索された電子地図はインタフェース21を通して携帯電話10へ送信される。
【0058】
電子地図データベース23は広範囲の電子地図を記憶する。電子地図は例えば道路に関する地図情報を次のような態様で含む。
図8は、道路に関する地図情報と電子地図に含まれるデータとの対応関係を示す図である。図郭線BL内の道路地図(図8の(a)参照)は、対応する電子地図ではノード(点)とアーク(線分)との集合として表現される(図8の(b)参照)。
ノードは、特徴的な地点、例えば、交差点、曲がり角、及び道路と図郭線BLとの交点の位置情報(例えば二次元的な座標及び高度)を表す。
アークは、ノードで表される各地点間を結ぶ道路の形状に関する情報(例えば、両端の座標、幅、湾曲、及び起伏)を表す。
【0059】
本発明の実施形態1によるナビゲーションシステムは上記の携帯電話10と地図データサーバ20とを用いて、以下のステップS1〜S9でデフォルメ地図の表示を行う(図2参照)。
<ステップS1>
携帯電話10のユーザがナビゲーションプログラムを起動させる。まず、目的地点データ設定部13がディスプレイを通してユーザに目的地点を表すデータの入力を促す。ユーザはユーザインタフェース11を通して目的地点を表すデータ(例えば、名称、住所、又は電話番号)を入力する。目的地点データ設定部13はそのデータを地図データ設定部15に渡す。
<ステップS2>
起点データ設定部14がGPS12により計算された携帯電話10の現在位置を読み込み、その現在位置を探索すべき経路の起点として設定し、その起点を表すデータを地図データ設定部15に渡す。
<ステップS3>
地図データ設定部15がインタフェース2を通して地図データサーバ20に対して電子地図のダウンロードを要求し、起点及び目的地点を表すデータをそのサーバ20にアップロードする。
【0060】
<ステップS4>
地図データサーバ20では、地図データ検索部22がインタフェース21を通して携帯電話10から、電子地図のダウンロード要求、及び起点と目的地点とを表すデータを受信する。地図データ検索部22は起点と目的地点とのそれぞれの座標を計算し、それらの座標を含む所定範囲(又は図郭)の電子地図を電子地図データベース23から検索する。
<ステップS5>
携帯電話10では、地図データ設定部15がインタフェース2を通して地図データサーバ20から、地図データ検索部22により検索された電子地図をダウンロードする。
【0061】
<ステップS6>
経路データ算出部16が、ダウンロードされた電子地図に基づき、例えば起点から目的地点までの最短経路を求める。
<ステップS7>
デフォルメ地図自動生成装置3が、上記の最短経路を含む電子地図を経路探索装置1から読み込み、その電子地図に基づき最短経路及びその周辺についてデフォルメ地図を作成する。その詳細については後述する。
<ステップS8>
表示装置4がデフォルメ地図をディスプレイに表示する。
<ステップS9>
ユーザがディスプレイに表示されたデフォルメ地図の視認性を確認する。その視認性を向上させる目的で、ユーザがデフォルメの程度の変更を携帯電話10に対して要求する。そのとき、デフォルメ地図自動生成装置3がデフォルメの程度を表すパラメータを再設定する。そのパラメータの再設定により、処理がステップS7から反復される。
こうして、ユーザが実際にデフォルメ地図を見ながらデフォルメの程度を調節し、その視認性を最適化できる。
【0062】
図3は、デフォルメ地図自動生成装置3の構成を示すブロック図である。デフォルメ地図自動生成装置3は、主経路データ記憶部31、周辺経路データ記憶部32、周辺経路データ修正部33、テンプレート記憶部34、適合テンプレート選択部35、及びデフォルメデータ算出部36を有する。
主経路データ記憶部31は経路探索装置1により探索された最短経路を主経路として設定する。すなわち、経路探索装置1から読み込まれた電子地図からその主経路を構成するノードとアークとの集合を取り出し、携帯電話10に内蔵されるメモリに記憶する。
周辺経路データ記憶部32は経路探索装置1から読み込まれた電子地図のうち、主経路以外の経路を周辺経路として設定する。すなわち、その周辺経路を構成するノードとアークとの集合を、携帯電話10に内蔵されるメモリに記憶する。
周辺経路データ記憶部32は更に、主経路と周辺経路とを表すデータに基づき、主経路上のノードで互いに連結する主経路上のアークと周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を計算する。それらのデータもメモリに記憶される。
【0063】
例えば、図8の(a)に示される図郭線BL内の地図が、起点Aと目的地点Bとを含む地図として検索された場合を想定する。その地図に対応する電子地図には、図8の(b)に示されるノードとアークとの集合が含まれる。ここで、起点Aと目的地点Bとはそれぞれノードとして表される。
経路探索装置1により探索された最短経路は、起点Aと目的地点Bとを表す二つのノードを結ぶアークA1、A2、A3、A4、A5、及び、各アークの端点にあるノードN1、N2、N3、N4の集合として表される。主経路データ記憶部31はその集合を、主経路を表すデータとしてメモリに記憶する。
図郭線BL内のノードとアークとの集合(図8の(b)参照)から主経路を表す集合を除いたものを、周辺経路データ記憶部32は周辺経路を表すデータとしてメモリに記憶する。
【0064】
周辺経路データ記憶部32は更に、例えば主経路上のノードN1に連結する周辺経路上のアークA6について、同じノードN1に連結する主経路上の二つのアークA1とA2とのそれぞれと成す角度θ1とφ1とを計算する。同じノードN1に連結する周辺経路の別のアークA7についても同様に、主経路上の二つのアークA1とA2とのそれぞれと成す角度θ2とφ2とが計算される。主経路上の他のノードA、N2、N3、N4、及びBについても同様な角度が計算される。それらの角度θ1、φ1、θ2、φ2、…は、周辺経路を示すデータと共に、メモリに記憶される。
【0065】
デフォルメ地図自動生成装置3はまず主経路をデフォルメし、続いて周辺経路をデフォルメする(詳細は後述)。デフォルメされた主経路と元の主経路とでは対応するノードの座標が一般に異なる。すなわち、デフォルメされた主経路が一般に、元の周辺経路からは分離される。
周辺経路データ修正部33は、周辺経路データ記憶部32からは周辺経路を表すデータを読み込み、デフォルメデータ算出部36からはデフォルメされた主経路を表すデータを読み込む。周辺経路データ修正部33は更にそれらのデータに基づき、周辺経路に含まれるアークの移動(並進/回転)及び伸縮を行う。それにより、そのアークがデフォルメされた主経路に含まれるノード、又は周辺経路に含まれる既に移動済みのノードに接続される。こうして、主経路と周辺経路との間のトポロジーが主経路のデフォルメの前後で不変に保たれる。
【0066】
テンプレート記憶部34は一般に複数のテンプレートを記憶する。テンプレートは所定の単純図形を表すデータ(より正確には、関数)である。単純図形には好ましくは、直線、楕円弧、及び正弦曲線が含まれる(例えば、図9に太い実線で示される線図TL、TE、TS参照)。単純図形としてその他の単純な線図が含まれても良い。
【0067】
適合テンプレート選択部35は、主経路又は周辺経路を経路区分に階層的に分割し、経路区分ごとに最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表すテンプレートをその経路区分の適合テンプレートとして記憶する。
適合テンプレート選択部35のこの機能は、好ましくは、類似度評価部35A、適合図形決定部35B、及び経路分割部35Cの各機能に分けられる。
【0068】
類似度評価部35Aは主経路データ記憶部31又は周辺経路データ記憶部32から、連結なノードとアークとの集合を一つの経路区分として読み込む。ここで、経路区分の設定には、例えば経路分割部35Cから読み込まれる経路区分の分割に関する情報が参照される。特に周辺経路については、経路区分が大きな屈曲及び分岐を含まないように設定される(詳細は後述)。
類似度評価部35Aは更に、テンプレート記憶部34に記憶されるテンプレートに基づき、経路区分と単純図形との間の類似度を数値化する。この数値化は好ましくは、テンプレートによる経路区分の最小二乗近似で行われる。すなわち、経路区分上の各ノードと単純図形との間のずれが二乗され、経路区分上の全てのノードについて加算される。更に、その二乗和が最小化されるように、テンプレートに含まれるパラメータが決定される。その二乗和の最小値(以下、適合度という)が経路区分と単純図形との間の類似度を数値化したものとして利用される。ここで、適合度が小さいほど、類似度は高い。
【0069】
図9は、単純図形TL、TE、TSのそれぞれと経路区分との間の適合度の計算を示す図である。
直線TLは、経路区分の両端のノードE1とE2とを結ぶ線分E1−E2として与えられる(図9の(a)参照)。直線TLと経路区分との間の適合度fLは、直線TLと経路区分上のノードNi(i=1、2、3、…、n)との間の距離yi(i=1、2、3、…、n)(直線TLをx軸とみなすときの各ノードのy座標の大きさ)の二乗和として定義される:
fL=Σi=1n (yi)2。
ここで、経路区分上のノード数(両端を除く)をnとする。図9の(a)ではノード数nが3である。
【0070】
半楕円弧TEは、経路区分の両端のノードE1とE2とを結ぶ線分E1−E2を長軸として与えられる(図9の(b)参照)。半楕円弧TEと経路区分との間の適合度fEは、半楕円弧TEと経路区分上のノードNi(i=1、2、3、…、n)のそれぞれとの間の、半楕円弧TEの短軸方向での距離fi(i=1、2、3、…、n)の二乗和として定義される。すなわち、線分E1−E2をx軸とみなし、経路区分の一端のノードE1を原点((x,y)=(0,0))とみなすとき、経路区分上のノードNi(i=1、2、3、…、n)の各座標を(xi,yi)(i=1、2、3、…、n)とおくと、適合度fEは次式で定義される:
fE=Σi=1n (fi)2=Σi=1n [yi−b{1−(xi/a)2}1/2]2。
ここで、a、bはそれぞれ、半楕円弧TEの長軸と短軸との長さを表す。図9の(b)では経路区分上のノード数nが3である。
より単純なデフォルメ地図を得るには、適合図形は直線に近い方が好ましい。半楕円弧TEでは、短軸の長さbが長軸の長さaより十分短いように設定される(a≪b)。
【0071】
正弦曲線TSは、経路区分の両端のノードE1とE2とを節とし、それらのノードE1、E2を結ぶ線分E1−E2の長さを半周期として与えられる(図9の(c)参照)。正弦曲線TSと経路区分との間の適合度fSは、正弦曲線TSと経路区分上のノードNi(i=1、2、3、…、n)のそれぞれとの間の、正弦曲線TSの振幅方向での距離fi(i=1、2、3、…、n)の二乗和として定義される。すなわち、線分E1−E2をx軸とみなし、経路区分の一端のノードE1を原点((x,y)=(0,0))とみなすとき、経路区分上のノードNi(i=1、2、3、…、n)の各座標を(xi,yi)(i=1、2、3、…、n)とおくと、適合度fSは次式で定義される:
fS=Σi=1n (fi)2=Σi=1n [yi−Asin(2πxi/T)]2。
ここで、A、Tはそれぞれ、正弦曲線TSの振幅の半値と周期とを表す。図9の(c)では経路区分上のノード数nが3である。
半楕円弧TEと同様に、正弦曲線TSは直線に近い方が好ましいので、振幅の半値Aが周期Tより十分短いように設定される(A≪T)。
【0072】
適合図形決定部35Bは与えられた経路区分と各単純図形との間の適合度fL、fE、fSを比較し、その中の最小値を決定する。
ここで、適合図形は直線に近い方が好ましい。例えば、半楕円弧TEの適合度fEが重みwE(wE≧1)倍に増大され、正弦曲線TSの適合度fSが重みwS(wS≧1)倍に増大されても良い。それらの乗算結果が直線TLの適合度fLと比較されることにより、半楕円弧TE又は正弦曲線TSが適合図形として採用される確率が、直線TLが採用される確率より十分に低い。
【0073】
適合図形決定部35Bは更に、適合度の最小値を所定の閾値αと比較する。
適合度の最小値が閾値α以下であるとき、その最小値に対応する単純図形がその経路区分の適合図形として決定される。更に、適合図形を表すテンプレートのパラメータ(例えば、直線TLについては両端の座標;半楕円弧TEについては長軸の両端の座標と両軸の長さa、b;正弦曲線TSについては両端の座標、振幅の半値A、及び周期T)が適合テンプレートのパラメータとしてメモリに記憶される。
適合度の最小値が閾値αを超えるとき、その経路区分に対しては適合図形が決定されない。
【0074】
経路分割部35Cは適合図形決定部35Bから、経路区分とその適合図形の有無とを表すデータを読み込む。
その経路区分に対して適合図形が与えられているとき、その経路区分を表すデータがそのまま、メモリに記憶される。
その経路区分に対して適合図形が与えられていないとき、経路分割部35Cはその経路区分を好ましくは二つの経路区分にほぼ等しく分割する。すなわち、ノード又はアークがほぼ同数ずつ分配される。但し、分割された二つの経路区分は一端のノードを共有する。ここで、分割数が3以上に設定されても良く、分割の割合が等分以外に設定されても良い。
経路分割部35Cは更に、分割に関する情報(例えば、分割の有無、分割された経路区分間で共有されるノード、及び各経路区分の適合図形の有無)を類似度評価部35Aに提供する。
【0075】
デフォルメデータ算出部36は、与えられた経路区分について、その経路区分よりその適合図形に形状が近似する変形経路区分を次のように求める(図10参照)。図10では、与えられた経路区分E1−N1−N2−N3−E2上のアークが実線で示され、その適合図形TL又はTEが太い実線で示され、変形経路区分E1−Nd1−Nd2−Nd3−E2上のアークが破線で示される。
まず、経路区分上のノードNi(i=1、2、3、…)から、経路区分の両端のノードE1とE2とを結ぶ線分E1−E2に垂線を下ろす。それらの垂線と適合図形TL又はTEとの交点Qi(i=1、2、3、…)を求める。
次に、経路区分上のノードNiの座標を(xi,yi)(i=1、2、3、…)とおき、上記の垂線と適合図形との交点Qiの座標を(xTi,yTi)(i=1、2、3、…)とおく。そのとき、変形経路区分上のノードNdiの座標(xDi,yDi)(i=1、2、3、…)が次式(1)と(2)とで定義される:
【0076】
xDi−xi=−ki(xi−xTi)、 (1)
yDi−yi=−ki(yi−yTi)。 (2)
【0077】
ここで、定数kiは0以上1以下であり、好ましくは経路区分上の各ノードで一定である:0≦ki≦1、ki=k。すなわち、変形経路区分上のノードNdiは、経路区分上のノードNiと適合図形上の交点Qiとを結ぶ線分NiQiをki:(1−ki)に内分する点として定義される。
図10では、経路区分の両端のノードE1とE2とを結ぶ直線がx軸とみなされる。この場合は、経路区分上のノードNi、適合図形上の交点Qi、及び変形経路区分上のノードNdiがy軸方向に並ぶ(xDi=xi=xTi)。変形経路区分上のノードNdiと線分NiQiとの間の距離は式(2)で決まる。
【0078】
一般には(0<ki<1)、変形経路区分上のノードNdiは経路区分上のノードNiと適合図形上の交点Qiとの中間に位置する。従って、変形経路区分上のノードNdiが経路区分上のノードNiより適合図形上の交点Qiに近い。それ故、変形経路区分は経路区分より適合図形との適合度が高い。
経路区分のデフォルメの程度は定数ki、すなわち、線分NiQiの内分比で調節される。定数kiが0に等しいとき(ki=0)、変形経路区分上のノードNdiは経路区分上のノードNiと一致し(Ndi=Ni)、すなわち経路区分はデフォルメされない。定数kiの増大に伴い、変形経路区分上のノードNdiが適合図形上の交点Qiに接近する。すなわち、デフォルメの程度が上がる。定数kiが1に等しいとき(ki=1)、変形経路区分上のノードNdiは適合図形上の交点Qiと一致する(Ndi=Qi)。この場合、デフォルメの程度が最も高い。
【0079】
式(1)、(2)は直感的には、変形経路区分上のノードNdiと経路区分上のノードNiとを結ぶ仮想的なバネ(自然長=0)の力が、変形経路区分上のノードNdiと適合図形上の交点Qiとを結ぶ仮想的なバネ(自然長=0)の力と釣り合うための条件から得られる。定数kiはそれら二つのバネ間でのバネ定数の比で決まる。以下、式(1)、(2)を用いた経路区分のデフォルメをバネモデルといい、定数kiをバネ定数という。
デフォルメデータ算出部36は、このバネモデルにより得られた変形経路区分の全てを表すデータ全体を、デフォルメされた主経路を表すデータとしてメモリに記憶する。
【0080】
デフォルメ地図自動生成装置3は上記の構成を用いて、以下のサブステップSS1〜SS7でデフォルメ地図を生成する(図4参照)。サブステップSS1〜SS7の全体が上記のステップS7を構成する。
<サブステップSS1>
主経路データ記憶部31が経路探索装置1から、探索された経路を含む電子地図を読み込む。主経路データ記憶部31は探索された経路を主経路として設定し、周辺経路データ記憶部32は電子地図に含まれるその他の経路を周辺経路として設定する。主経路及び周辺経路を構成するノードとアークとの集合がそれぞれ、メモリに記憶される。
周辺経路データ記憶部32は更に、主経路上のノードで互いに連結する主経路上のアークと周辺経路上のアークとについて両者の成す角度を計算し、それらの角度をメモリに記憶する。
<サブステップSS2>
適合テンプレート選択部35が、主経路を表すノードとアークとの集合に基づき主経路を経路区分に階層的に分割し、経路区分ごとに適合図形を決定し、適合テンプレートをメモリに記憶する。
このサブステップSS2はより詳細には、以下のサブステップSS11〜SS19に分けられる(図5、6参照)。
【0081】
<サブステップSS11>
類似度評価部35Aが主経路データ記憶部31から経路区分を読み込む。最初は、主経路全体が一つの経路区分として設定される。経路分割部35Cから経路区分の分割に関する情報が読み込まれるときは、経路分割部35Cにより分割された複数の経路区分の一つが類似度評価の対象として設定される。
そのように設定された経路区分と各単純図形との間の適合度fL、fE、fSがそれぞれ、類似度評価部35Aにより計算される。
<サブステップSS12>
適合図形決定部35Bが類似度評価部35Aにより計算された適合度fL、fE、fSを比較し、その中の最小値を決定する。更にその最小値を所定の閾値αと比較する。
適合度の最小値が閾値αを超えるとき、処理はサブステップSS13へ進む。
適合度の最小値が閾値α以下であるとき、処理はサブステップSS14へ分岐する。
<サブステップSS13>
経路分割部35Cが適合図形決定部35Bから、経路区分とその適合図形の有無とを表すデータを読み込む。その経路区分に対しては適合図形が与えられていないので、経路分割部35Cはその経路区分を二つの経路区分にほぼ等しく分割する。
経路分割部35Cは更に、分割に関する情報を類似度評価部35Aに提供する。類似度評価部35Aはその情報に基づき、適合図形を持たない経路区分について、サブステップS11を反復する。
【0082】
<サブステップSS14>
適合度の最小値に対応する単純図形が適合図形として決定される。更に、適合図形を表すテンプレートが適合テンプレートとしてメモリに記憶される。
<サブステップSS15>
類似度評価部35Aは、経路分割部35Cから読み込んだ分割に関する情報を参照し、経路分割部35Cにより分割された経路区分全てについて適合図形の有無をチェックする。
経路区分全てについて適合図形が決定されたとき、処理はサブステップSS16へ進む。
適合図形を持たない経路区分が残っているとき、処理はサブステップSS11から反復される。
【0083】
サブステップSS11〜SS15の処理は例えば、図11の(a)、(b)、及び(c)に図示される。
図11の(a)は、起点Aから目的地点Bまでの主経路を示す。まず、この主経路全体が一つの経路区分P0として設定され、その経路区分P0と各単純図形との間の適合度が計算される(サブステップSS11)。この経路区分P0については閾値α以下の適合度を持つ単純図形が得られない(サブステップSS12)。従って、経路区分P0が二つの経路区分に分割される(サブステップSS13)。
【0084】
図11の(b)は、経路区分P0から分割された二つの経路区分P1とP2とを示す。二つの経路区分P1とP2とのそれぞれに含まれるノード/アークは元の経路区分(主経路)P0に含まれるノード/アークの約半数である。特に、主経路P0に含まれるノードが奇数個(=9個)であり、二つの経路区分P1とP2とは端点のノードC1を共有するので、二つの経路区分P1とP2とではノードとアークとのそれぞれの数が等しい。
主経路P0に含まれるノードが仮に偶数個であれば、例えば目的地点Bに近い方の経路区分、すなわち第一の経路区分P1が、起点Aに近い方の経路区分、すなわち第二の経路区分P2よりノードとアークとを一つずつ多く含む。
【0085】
最初に、第一の経路区分P1が選択され、それと各単純図形との間の適合度が計算される(サブステップSS11)。第一の経路区分P1については、閾値α以下の適合度を持つ単純図形T1が得られる。従って、その単純図形T1が第一の経路区分P1の適合図形として決定される(サブステップSS14)。
次に、第二の経路区分P2が選択され(サブステップSS15)、それと各単純図形との間の適合度が計算される(サブステップSS11)。第二の経路区分P2については、閾値α以下の適合度を持つ単純図形が得られない(サブステップSS12)。従って、第二の経路区分P2が更に二つの経路区分に分割される(サブステップSS13)。
【0086】
図11の(c)は、第二の経路区分P2から分割された二つの小経路区分P21とP22とを示す。二つの小経路区分P21とP22とのそれぞれに含まれるノード/アークは第二の経路区分P2に含まれるノード/アークの約半数である。第二の経路P2に含まれるノードが奇数個(=5個)であり、二つの小経路区分P21とP22とは端点のノードC2を共有するので、二つの小経路区分P21とP22とではノードとアークとのそれぞれの数が等しい。
【0087】
最初に、第一の小経路区分P21が選択され、それと各単純図形との間の適合度が計算される(サブステップSS11)。第一の小経路区分P21については、閾値α以下の適合度を持つ単純図形T2が得られる。従って、その単純図形T2が第一の小経路区分P21の適合図形として決定される(サブステップSS14)。
次に、第二の小経路区分P22が選択され(サブステップSS15)、それと各単純図形との間の適合度が計算される(サブステップSS11)。第二の経路区分P2についても、閾値α以下の適合度を持つ単純図形T3が得られる。従って、その単純図形T3が第二の小経路区分P22の適合図形として決定される(サブステップSS14)。
こうして、主経路P0に含まれる全ての経路区分P1、P21、P22について適合図形が決定されたので、処理が次のサブステップSS16へ進む。
【0088】
サブステップSS11〜SS15の処理により上記の通り、主経路が経路区分に階層的に分割され、経路区分ごとに適合図形が決定される。
ここで、適合図形の集合は実際には、経路区分への分割の仕方に依存する。一方、デフォルメ地図のデータ量の削減には、適合図形の集合に含まれる単純図形の数ができる限り少ないことが望ましい。
以下のサブステップSS16〜SS19では、隣接する二つの経路区分を一旦、一つの経路区分とみなし、その適合図形の決定を再度試みる(図6参照)。もしその決定が成功すれば、元の二つの経路区分が一つの経路区分に統合される(すなわち、その一つの経路区分を表すデータで元の二つの経路区分を表すデータが置換される)。この経路区分の統合が適合図形の再決定に失敗するまで反復される。
【0089】
<サブステップSS16>
類似度評価部35Aが、隣接する二つの経路区分を一つの経路区分として設定する。
ここで、経路区分の分割(サブステップSS11〜SS15)の履歴が記憶されるときは、設定された経路区分が経路分割部35Cによる分割を受けたことのある経路区分であるか否か、がまずチェックされても良い。もし設定された経路区分が経路分割部35Cによる分割を受けたことがあれば、その経路区分に対しては適合図形が得られないことが既知である。その場合は、処理がサブステップSS19に分岐しても良い。
類似度評価部35Aは更に、設定された経路区分と各単純図形との間の適合度fL、fE、fSをそれぞれ計算する。
<サブステップSS17>
適合図形決定部35Bが、類似度評価部35Aにより計算された適合度fL、fE、fSの最小値を決定する。更にその最小値を所定の閾値αと比較する。
適合度の最小値が閾値α以下であるとき、処理はサブステップSS18へ進む。
適合度の最小値が閾値αを超えるとき、処理はサブステップSS19へ分岐する。
【0090】
<サブステップSS18>
経路分割部35Cが適合図形決定部35Bから、経路区分とその適合図形の有無とを表すデータを読み込む。その経路区分に対しては適合図形が与えられているので、経路分割部35Cはその経路区分を表すデータで、メモリに記憶される元の二つの経路区分を表すデータを置換する。経路分割部35Cは更に、主経路について保持する分割に関する情報を書き換える。
こうして、隣接する二つの経路区分が一つの経路区分に統合される。
<サブステップSS19>
類似度評価部35Aは、経路分割部35Cから分割に関する情報を読み込み、その情報に基づき、他の隣接する二つの経路区分について統合を試みたか否かをチェックする。まだ統合を試みていない経路区分対があれば、それらについて処理がサブステップS16から反復される。可能な経路区分対の全てについて統合が試みられていれば、処理が次のサブステップSS3へ進む(図4参照)。
【0091】
サブステップSS16〜SS19の処理は、図11に示される例については図12に図示される。
起点Aから目的地点Bまでの主経路は、二つのノードC1とC2とで、三つの経路区分P1、P21、及びP22に分割される。各経路区分P1、P21、P22には適合図形T1、T2、T3が与えられている(図11の(c)参照)。
【0092】
まず、目的地点Bに最も近い共有ノードC1で連結する第一の経路区分P1と第一の小経路区分P21とが一つの経路区分P1Aとみなされ、その経路区分P1Aと各単純図形との間の適合度が計算される(サブステップSS16)(図12参照)。
この経路区分P1Aについては、閾値α以下の適合度を持つ単純図形T4が得られる。従って、その単純図形T4が経路区分P1Aの適合図形として決定される(サブステップSS17)。
更に、経路区分P1Aに対して適合図形T4が与えられたので、メモリに記憶される元の二つの経路区分P1とP21とを表すデータが経路区分P1Aを表すデータで置換される(サブステップSS18)。
こうして、二つの経路区分P1とP21とが一つの経路区分P1Aに統合される。
【0093】
その統合後、目的地点Bに最も近い共有ノードC2で連結する経路区分P1Aと第二の小経路区分P22とについてはまだ統合が試みられていないので、それらを一つの経路区分とみなして統合処理が開始される(サブステップSS19)。特にその経路区分は主経路全体と一致するので、その適合図形は得られない。図12に示される例ではその他には、隣接する二つの経路区分は含まれない。こうして、可能な経路区分対の全てについて統合処理が完了する。
【0094】
<サブステップSS3>
デフォルメデータ算出部36は、主経路に含まれる各経路区分について、その経路区分よりその適合図形に形状が近似する変形経路区分をバネモデルで求める(図10参照)。デフォルメデータ算出部36は更に、バネモデルにより得られた変形経路区分の全てを表すデータ全体を、デフォルメされた主経路を表すデータとしてメモリに記憶する。こうして、主経路のデフォルメが完了する。
<サブステップSS4>
周辺経路データ修正部33が、周辺経路に含まれるアークの並進/回転/伸縮を行う。それにより、周辺経路がデフォルメされた主経路に接続される。特に、主経路と周辺経路との間のトポロジーが主経路のデフォルメの前後で不変に保たれる。
このサブステップSS4はより詳細には、以下のサブステップSS21〜SS24に分けられる(図7参照)。
【0095】
<サブステップSS21>
周辺経路データ修正部33は、デフォルメされた主経路と周辺経路とに含まれるアーク全体の集合を、位置が確定しているアーク(以下、確定アークという)の集合と、位置が確定していないアーク(以下、未確定アークという)の集合とに分ける。サブステップSS21の最初の実行時では、デフォルメされた主経路に含まれるアークが確定アークとして登録される。
確定アークの位置は一般に、主経路がデフォルメされる前の元のアークの位置とは異なる(逆に、未確定アークの位置は元のアークの位置と等しい)。周辺経路データ修正部33は、元の位置では隣接していた確定アークと未確定アークとの対を全て検索し、その未確定アークをその確定アークに接続されるべきアークとして選択する。
<サブステップSS22>
サブステップSS21でアークが選択されたとき、処理がサブステップSS23へ進む。
サブステップSS21でアークが選択されなかったとき、サブステップSS4が終了する。
【0096】
<サブステップSS23>
周辺経路データ修正部33は、選択された未確定アークをそれぞれ移動させる。それにより、各未確定アークとその接続対象の確定アークとが、元の位置では接続されていた端点で再び接続される。
ここで、未確定アークの移動は好ましくは並進である。しかし、例えば選択された複数の未確定アークの端点が一カ所で重なっていた場合、それらの端点が移動後も同じ位置で重なることは、並進だけでは一般に実現されない。そのような場合は、それら複数の未確定アークの一部又は全部を回転させ、更には伸縮させる。こうして、選択された未確定アーク全体のトポロジーが確定アークへの接続の前後で不変に保たれる。
<サブステップSS24>
サブステップSS23の処理により確定アークに接続された未確定アーク全ての位置が確定される。それにより、それらの未確定アークが確定アークに変更される。
処理はその後、サブステップSS21から反復される。
【0097】
サブステップSS21〜SS24の処理は例えば、図13に図示される。
起点Aから目的地点Bまでの主経路は、四つのノードN1、N2、N3、N4と五つのアークA1、A2、A3、A4、A5とを含み、全体で一つの経路区分を構成する。その主経路の適合図形として起点Aと目的地点Bとを結ぶ線分TLが与えられている(図13の(a)参照)。
【0098】
主経路がデフォルメされ、四つのノードNd1、Nd2、Nd3、Nd4と五つのアークAd1、Ad2、Ad3、Ad4、Ad5とが線分TLに接近する(図13の(b)参照)。それらのアークAd1、Ad2、…、Ad5の位置が確定され、確定アークとして登録される。一方、周辺経路に含まれるアークが未確定アークとして登録される(サブステップSS21)。
図13の(b)に細い破線で示される通り、確定アークAd1、Ad2、…、Ad5の位置は元のアークA1、A2、…、A5の位置とは異なる。元のアークA1、A2、…、A5と隣接していた未確定アークが全て検索される。それにより、未確定アークA6、A7、A8、…、A14が各確定アークAd1、Ad2、…、Ad5に接続されるべきアークとして選択される(サブステップSS21)。
【0099】
選択された未確定アークA7、A8、…、A13が移動し、確定アークAd1、…、Ad5に接続される(サブステップSS23)。ここで、起点Aに連結する未確定アークA6と目的地点Bに連結する未確定アークA14とは移動しない。更に、移動後の未確定アークAd7、Ad8、…、Ad13の端点に、元の位置で連結していたノードNd5、Nd6、…、Nd10が重ねられる(図13の(c)参照)。
図13の(c)では、未確定アークのほとんどが並進だけで主経路上のアークAd1、…、Ad5に接続される。しかし、選択された未確定アークA8とA9とは端点が一つのノードN6で重なっていた(図13の(b)参照)ので、それらの端点が並進だけでは重ならない。未確定アークAd8とAd9とは並進に加え、元の長さから伸縮する。それにより端点がノードNd6で重なる。
こうして、移動後の未確定アークAd6〜Ad14全体のトポロジーが元の未確定アークA6〜A14全体のトポロジーと等しく保たれる。
【0100】
確定アークAd1〜Ad5に接続された未確定アークAd6〜Ad14全ての位置が確定される。それにより、それらの未確定アークAd6〜Ad14が確定アークに変更される。
続いて、新たな確定アークAd6〜Ad14とそれらの元の位置(アークA6〜A14)で隣接していた未確定アークが選択され、上記と同様な方法で新たな確定アークAd6〜Ad14に接続される。
以下、未確定アークの全てが確定アークに変更されるまで同様な処理が反復される。
【0101】
<サブステップSS5>
適合テンプレート選択部35が、周辺経路を経路区分に階層的に分割し、経路区分ごとに適合図形を決定し、適合テンプレートをメモリに記憶する。この処理は以下の点を除き、主経路に対する処理(サブステップSS2)と全く同様である。
周辺経路は主経路とは異なり、一般に分岐を含む。従って、周辺経路は予め、分岐を含まない経路区分に分割されていなければならない。その分割は例えば次のように行う。
【0102】
周辺経路に含まれるアークの中から、隣接する二つのアークが選択され、それらのアーク間の角度が計算される。その角度と180°との差(以下、接続角という)が所定の閾値以下であるとき、それらの二つのアークとそれらの端点に位置するノードとが同じ経路区分に割り当てられる。すなわち、周辺経路は直線に近い部分ごとに経路区分として分割される。
この分割処理は例えば図14で図示される。図14には周辺経路に含まれる六つの連続するアークA1、A2、A3、…、A6が示される。第一のアークA1と第二のアークA2との間の接続角をθ1、第二のアークA2と第三のアークA3との間の接続角をθ2、第三のアークA3と第四のアークA4との間の接続角をθ3、第四のアークA4と第五のアークA5との間の接続角をθ4、第五のアークA5と第六のアークA6の間の接続角をθ5、とする。
図14では、第三のアークA3と第四のアークA4との間の接続角θ3だけが所定の閾値を超える。従って、六つのアークA1〜A6は第三のアークA3と第四のアークA4との間で二つの経路区分P1とP2とに分割される。すなわち、第一〜第三のアークA1〜A3が一つの経路区分P1に割り当てられ、第四〜第六のアークA4〜A6が別の経路区分P2に割り当てられる。ここで、第三のアークA3と第四のアークA4との間に位置するノードNcは二つの経路区分P1とP2とに共有される。
【0103】
分岐点では三つ以上のアークが連結する。それらのアークが成す接続角の中から最小の接続角が選択される。その最小の接続角が所定の閾値以下であれば、その接続角を成す二つのアークが一つの経路区分に割り当てられ、その後の分割処理からは除外される。残りのアークが成す接続角から最小の接続角が選択され、その最小の接続角が所定の閾値以下であれば、その接続角を成す二つのアークが別の経路区分に割り当てられ、その後の分割処理からは除外される。以下、除外されていないアーク、又は所定の閾値以下の接続角を成すアークの対がなくなるまで、上記の分割処理が反復される。
【0104】
この分割処理は例えば図15に図示される。図15では、六つのアークA1、A2、…、A6が一つのノードNcで連結する。
図15の(a)では接続角θ1が最小の接続角であり、更に所定の閾値以下である。従って、その接続角θ1を成す第一のアークA1と第四のアークA4、及びそれらの端点に位置するノードN1とN4が第一の経路区分P1に割り当てられ、以下の分割処理からは除外される。
図15の(b)では接続角θ2が最小の接続角であり、更に所定の閾値以下である。従って、その接続角θ2を成す第二のアークA2と第五のアークA5、及びそれらの端点に位置するノードN2とN5が第二の経路区分P2に割り当てられ、以下の分割処理からは除外される。
図15の(c)では接続角θ3が唯一の接続角であるが、所定の閾値を超える。従って、その接続角θ3を成す第三のアークA3と第六のアークA6、及びそれらの端点に位置するノードN3とN6とは別々の経路区分P3とP4とにそれぞれ分割される。
【0105】
<サブステップSS6>
デフォルメデータ算出部36が周辺経路に含まれる各経路区分について、その経路区分よりその適合図形に形状が近似する変形経路区分をバネモデルで求める。バネモデルによるデフォルメ処理は主経路に対するデフォルメ処理(サブステップSS3)と全く同様である(図10参照)。但し、隣接する二つの経路区分間の接続がデフォルメにより失われた場合は、経路区分ごとに移動させ、元の接続を復活させる。
デフォルメデータ算出部36は更に、バネモデルにより得られた変形経路区分の全てを表すデータ全体を、デフォルメされた周辺経路を表すデータとしてメモリに記憶する。
【0106】
<サブステップSS7>
主経路上のノードに連結する周辺経路上のアークは一般に、同じノードに連結する主経路上の二つのアークの成す角を二分する。その二つの角度の比は主経路と周辺経路とのデフォルメにより変化する。
デフォルメデータ算出部36は主経路と周辺経路とのデフォルメ処理後、主経路上のノードに連結する周辺経路上のアークをそのノードの周りに回転させる。それにより、そのアークがそのノードに連結する主経路上の二つのアークと成す二つの角度について、両者の比がデフォルメ前の値に調整される。ここで、周辺経路データ記憶部32によりメモリに記憶された主経路上のアークと周辺経路上のアークとの間の角度θ1、φ1、θ2、φ2、…(図8の(b)参照)に基づき、アークの回転角が計算される。
【0107】
この角度比の調整処理は例えば図16に図示される。
図16には主経路の一つの経路区分と周辺経路の一つの経路区分とが示される。主経路の経路区分は四つのノードE1、N1、N2、E2と三つのアークA1、A2、A3とを含む。その経路区分の適合図形として端点E1とE2とを結ぶ線分TLが与えられている。周辺経路の経路区分は三つのノードN1、N3、N4と二つのアークA4、A5とを含む(図16の(a)参照)。
主経路上のノードN1に連結する周辺経路上のアークA4について、同じノードN1に連結する主経路上の二つのアークA1とA2とのそれぞれと成す角度θa、φaが、デフォルメ処理の前に計算される。更に、それらの角度又は両者の比θa:φaがメモリに記憶される。
【0108】
主経路がデフォルメされ、二つのノードNd1、Nd2と三つのアークAd1、Ad2、Ad3とが線分TLに接近する(図16の(b)参照)。
更に、周辺経路の経路区分に含まれるアークAb4、Ab5とノードNb3、Nb4とが移動し、アークAb4が主経路上のノードNd1に接続される。そのとき、主経路上のノードNd1に連結する周辺経路上のアークAb4について、同じノードNd1に連結する主経路上の二つのアークAd1とAd2とのそれぞれと成す角度θb、φbは一般に、元の角度θa、φaから変化する。
周辺経路の経路区分に対し、正弦曲線TSが適合図形として与えられる。
【0109】
周辺経路がデフォルメされ、ノードNc3と二つのアークAc4、Ac5とが線分TL2TSに接近する(図16の(c)参照)。そのとき、主経路上のノードNd1に連結する周辺経路上のアークAc4について、同じノードNd1に連結する主経路上の二つのアークAd1とAd2とのそれぞれと成す角度θc、φcは一般に、元の角度θb、φbから更に変化する。
【0110】
主経路上のノードNd1に連結する周辺経路上のアークAd4、Ad5、及びノードNd3、Nd4がそのノードNd1の周りに回転する(図16の(d)参照)。それにより、そのアークAd4がそのノードNd1に連結する主経路上の二つのアークAd1とAd2とのそれぞれと成す角度θd、φdについて、両者の比がデフォルメ前の値に調整される。すなわち、θd:φd=θa:φa。
こうして、デフォルメされた主経路と周辺経路との間で、アークの交差が回避される。
更に、主経路の方向と周辺経路の方向との関係がデフォルメの前後で同等とみなせるので、歩行者が実際に見る景色とデフォルメ地図との間には違和感が少ない。
以上で、周辺経路のデフォルメが完了する。
【0111】
デフォルメ地図の作成では、主経路と周辺経路とのデフォルメの他に、例えばランドマーク(建造物、信号、看板等、ナビゲーションでの目標物になり得るもの)の表示位置が以下のように決定されても良い。
主経路と周辺経路とに対するデフォルメ処理の前に、元の電子地図に含まれるランドマークごとに、そのランドマーク(の代表点)から同じ電子地図に含まれる各アークに下ろした垂線の長さが計算され、最短の垂線が選択される。
更に、その最短の垂線の長さが所定の閾値と比較される。その最短の垂線の長さがその閾値以下であれば、その最短の垂線の長さ、その垂線の端点を通るアーク、及びその垂線とそのアークとの交点によるそのアークの内分比が、その垂線の端点に位置するランドマークの位置情報としてメモリに記憶される。
主経路と周辺経路とに対するデフォルメ処理の後、ランドマークが上記の位置情報に基づき、デフォルメ地図上に次のように位置づけられる。まず、そのランドマークの位置情報に含まれる垂線の長さ、アーク、及び内分比がメモリから読み出される。次に、そのアークがデフォルメ地図の中から特定され、そのアークをその内分比で内分する点が計算される。最後に、そのアークとその内分点で直交する直線上の点で、その内分点からその垂線の長さと等しい距離に位置する点が計算される。こうして得られた点が、そのランドマークのデフォルメ地図上の代表点としてメモリに記憶される。
【0112】
図17と図18とには、デフォルメ前の地図(a)と本発明によるデフォルメ地図(b)とが例示される。起点(現在地点)Aから目的地点Bまでの主経路がデフォルメ前の地図(a)では太線Mで示され、デフォルメ地図(b)では太線Mdで示される。これらのデフォルメ地図では、バネ定数k=1、適合度の閾値α=100、及び半楕円弧TEの適合度fEと正弦曲線TSの適合度fSとに対する重みwE=wS=1が設定されている。
図17の(a)、(b)を比較すれば明らかな通り、特に現在地点Aの近傍で主経路Mdが滑らかにデフォルメされている。
更に、図18の(a)、(b)を比較すれば明らかな通り、主経路Mdが単純であり、見やすい。その上、周辺経路では細かい湾曲が減り、滑らかにデフォルメされている。
【0113】
図19と図20とには、バネ定数kとデフォルメの程度との関係が例示される。起点(現在地点)Aから目的地点Bまでの主経路がデフォルメ前の地図(a)では太線Mで示され、デフォルメ地図(b)、(c)、(d)、(e)ではそれぞれ太線M、Md1、Md2、Md3で示される。
図19の(b)、(c)、(d)、(e)では、バネ定数kがそれぞれ、0、0.5、0.8、1に設定されている。図20の(b)、(c)、(d)では、バネ定数kがそれぞれ、0、0.5、1に設定されている。すなわち、(b)ではデフォルメが行われず(主経路Mが元の地図(a)に示される主経路Mと等しい)、(c)、(d)、(e)の順でデフォルメの程度が強い。
一方、図19と図20とでは共に、適合度の閾値α=100、及び半楕円弧TEの適合度fEと正弦曲線TSの適合度fSとに対する重みwE=wS=1が設定されている。
【0114】
図19の(b)と(e)とを比較すれば明らかな通り、図19の(e)では主経路Md3が直線部分を多く含み、見やすい。しかし、例えば、図19の(b)に示される交差点Cでは主経路Mが左折しているのに対し、図19の(e)に示される交差点Cdでは主経路Md3が直進するように表示される。この形状の変化は、図19の(c)、(d)に示される通り、バネ定数kを低減し、デフォルメの程度を下げれば軽減される。すなわち、ユーザはバネ定数kの調節を通してデフォルメの程度を制御することにより、デフォルメ地図の視認性を最適化できる。
【0115】
図20の(b)と(d)とを比較すれば明らかな通り、図20の(d)では主経路Md2が直線部分を多く含み、見やすい。しかし、例えば、図20の(b)に示される三つの交差点C1、C2、C3ではいずれも、主経路Mが突き当たりを右折している。それに対し、図20の(d)に示される三つの交差点Cd1、Cd2、Cd3ではいずれも、主経路Mdが直進するように表示される。図20の(d)では更に、目的地点B付近で、元の地図には存在しない周辺経路の交差Crが生じている。これらの形状の変化は、図20の(d)に示される通り、バネ定数kを低減し、デフォルメの程度を下げれば軽減される。すなわち、ユーザはバネ定数kの調節を通して、デフォルメ地図の視認性を最適化できる。
【0116】
図21には、適合度の閾値αとデフォルメの程度との関係が例示される。起点(現在地点)Aから目的地点Bまでの主経路がデフォルメ前の地図(a)では太線Mで示され、デフォルメ地図(b)、(c)、(d)、(e)ではそれぞれ、太線M、Md1、Md2、Md3で示される。(b)、(c)、(d)、(e)では適合度の閾値αがそれぞれ、0、30、50、80に設定されている。更に、バネ定数k=1、及び半楕円弧TEの適合度fEと正弦曲線TSの適合度fSとに対する重みwE=wS=1が設定されている。
(b)では経路区分が最小単位まで分割されても適合図形が決定されないので、デフォルメが行われない(主経路Mが元の地図(a)に示される主経路Mと等しい)。一方、(c)、(d)、(e)を比較すれば明らかな通り、適合度の閾値αの増大に伴い、主経路の滑らかさが向上する。こうして、デフォルメの程度は適合度の閾値αの調節でも制御できる。
【0117】
図22には、半楕円弧TEの適合度fEと正弦曲線TSの適合度fSとに対する重みwE=wS=wとデフォルメの程度との関係が例示される。起点(現在地点)Aから目的地点Bまでの主経路がデフォルメ前の地図(a)では太線Mで示され、デフォルメ地図(b)、(c)、(d)ではそれぞれ太線Md1、Md2、Md3で示される。(b)、(c)、(d)では重みwがそれぞれ、1.0、5.0、10に設定されている。更に、バネ定数k=1、及び適合度の閾値α=400が設定されている。
(b)では主経路Md1が中間点D1を境に、二本の曲線に分割される。(c)では主経路Md2が中間点D1を境に、一本の直線と一本の曲線とに分割される。(d)では主経路Md3が二つの中間点D1とD2とを境に、三本の直線に分割される。すなわち、重みwが大きいほど、主経路は直線を多く含む。
こうして、デフォルメの程度は重みwE=wS=wの調節でも制御できる。
【0118】
本発明の実施形態1による上記のナビゲーションシステムでは、端末である携帯電話10がデフォルメ地図自動生成装置3を用いて、探索された経路をデフォルメ地図として表示する。従って、小型のディスプレイでも、表示されるデフォルメ地図の視認性が高い。
更に、地図のデフォルメに必要な計算量が比較的少ないので、携帯電話10のCPUパワーが比較的低くくても、デフォルメ地図が外部のサーバにアクセスすることなく、素早く計算される。特にユーザの移動に合わせて地図が切り換えられる場合、及びユーザがデフォルメの程度を調節する場合等で、デフォルメ地図の再計算が早い。こうして、上記のナビゲーションシステムは操作性が高い。
【0119】
《実施形態2》
図23は、本発明の実施形態2によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。このナビゲーションシステムは、経路探索がサーバで行われる点で、本発明の実施形態1によるナビゲーションシステム(図1参照)とは異なる。図23では、図1に示される構成要素と同様な構成要素に対し、図1に示される符号と同じ符号が付される。更に、それら同様な構成要素の詳細については、実施形態1についての説明が援用される。
【0120】
本発明の実施形態2によるナビゲーションシステムは好ましくは、携帯電話10Aを端末として用い、更にナビゲーションサーバ20Aを備える。その他に、例えばPDA及びノートパソコンのように、CPUパワーの高い小型情報処理機器が端末として用いられても良い。
ナビゲーションでは、携帯電話10Aが基地局30と携帯電話網/インターネット40とを通してナビゲーションサーバ20Aにアクセスし、経路探索を要求し、探索された経路を含む所定範囲の電子地図をダウンロードする。携帯電話10Aは更に、ダウンロードされた電子地図をデフォルメしてディスプレイに表示する。
【0121】
携帯電話10Aは、ユーザインタフェース11、GPS12、目的地点データ設定部13A、起点データ設定部14A、インタフェース2、デフォルメ地図自動生成装置3、及び表示装置4を有する。
目的地点データ設定部13Aは例えば表示装置4を制御し、ディスプレイを通してユーザに目的地点を表すデータの入力を促す。目的地点データ設定部13Aは更に、ユーザインタフェース11を通して入力されるデータから目的地点を設定する。
起点データ設定部14AはGPS12から携帯電話10Aの現在位置を読み込み、その現在位置を探索すべき経路の起点として設定する。起点データ設定部14Aはその他に、目的地点データ設定部13Aと同様に、ユーザインタフェース11を通して入力されるデータから起点を設定しても良い。
目的地点と起点とを表すデータは経路探索を要求するためのコマンドと共に、インタフェース2を通してナビゲーションサーバ20Aにアップロードされる。
目的地点データ設定部13Aと起点データ設定部14との各機能は好ましくは、携帯電話10AのCPUが所定のナビゲーションプログラムを実行することにより実現される。それらはその他に、それぞれ専用のLSIで構成されても良い。
【0122】
デフォルメ地図自動生成装置3は、探索された経路を含む電子地図をナビゲーション20Aから、インタフェース2を通して読み込む。その他の機能については本発明の実施形態1によるものと同様である。
【0123】
ナビゲーションサーバ20Aは、インタフェース21、経路探索装置1A、及び電子地図データベース23を有する。
経路探索装置1Aは地図データ設定部15Aと経路データ算出部16とを有し、それらを用いて、所定の起点から目的地点までの経路を探索し、起点、目的地点、及び探索された経路を含む範囲の電子地図を出力する。
【0124】
地図データ設定部15Aはインタフェース21を通して携帯電話10Aから、経路探索を要求するコマンド、及び起点と目的地点とを表すデータを受信する。地図データ設定部15Aはそのとき、それらのデータから起点と目的地点とのそれぞれについて電子地図上での座標を割り出し、それらの座標を含む所定範囲(又は図郭)の電子地図を電子地図データベース23から検索する。
【0125】
経路データ算出部16Aは地図データ設定部15Aにより検索された電子地図を読み込み、それに基づき、起点から目的地点までの経路を所定の条件に従って求める。その条件には好ましくは「経路が最短であること」が含まれる。その他に、「経路が所定の中継点又は経路を通ること」等が含まれても良い。
最短経路の探索には好ましくはダイクストラ(Dijkstra)法が用いられる。
算出された最短経路を表すデータは、その最短経路を含む電子地図と共に、インタフェース21と通して携帯電話10Aに送信される。
【0126】
本発明の実施形態2によるナビゲーションシステムは上記の携帯電話10Aとナビゲーションサーバ20Aとを用いて、図24に示されるフローチャートに従ってデフォルメ地図の表示を行う。図24では、本発明の実施形態1によるデフォルメ地図の表示に含まれるステップS7〜9と同様なステップについては図2に示される符号S7〜9と同じ符号が付される(図2参照)。更に、それら同様なステップS7〜9の詳細については、実施形態1についての説明が援用される。
<ステップS1A>
携帯電話10Aのユーザがナビゲーションプログラムを起動させる。まず、目的地点データ設定部13Aがディスプレイを通してユーザに目的地点を表すデータの入力を促す。ユーザはユーザインタフェース11を通して目的地点を表すデータを入力する。
<ステップS2A>
起点データ設定部14AがGPS12により計算された携帯電話10の現在位置を読み込み、その現在位置を探索すべき経路の起点として設定する。
<ステップS3A>
目的地点データ設定部13Aと起点データ設定部14Aとがインタフェース2を通してナビゲーションサーバ20Aに対して経路探索を要求し、起点及び目的地点を表すデータをそのサーバ20Aにアップロードする。
【0127】
<ステップS4A>
ナビゲーションサーバ20Aでは、地図データ設定部15Aがインタフェース21を通して携帯電話10Aから、経路探索の要求、及び起点と目的地点とを表すデータを受信する。地図データ設定部14Aは起点と目的地点とのそれぞれの座標を計算し、それらの座標を含む所定範囲(又は図郭)の電子地図を電子地図データベース23から検索する。
<ステップS5A>
検索された電子地図に基づき、経路データ算出部16Aが例えば起点から目的地点までの最短経路を求める。
<ステップS6A>
探索された最短経路を含む電子地図が携帯電話10Aにダウンロードされ、インタフェース2を通してデフォルメ地図自動生成装置3に入力される。
【0128】
本発明の実施形態2による上記のナビゲーションシステムでは、携帯電話10Aが起点と目的地点とを表すデータをナビゲーションサーバ20Aにアップロードし、それら起点と目的地点との間の経路探索をそのサーバ20Aに実行させる。それにより、サーバ20Aからダウンロードされる電子地図の範囲が探索された経路周辺に限られる。従って、ダウンロードされるべきデータ量が低減し、ダウンロードに要する時間が短縮される。
特に、ユーザの移動に合わせて地図が切り換えられる場合、及びユーザがデフォルメの度合を調節する場合等でも、デフォルメ地図の再表示が早い。その上、ナビゲーションサーバ20Aが多数の端末から同時に経路探索の要求を受けるとき、要求一つ当たりの処理時間が短いのでサーバ20Aがダウンしにくい。
こうして、上記のナビゲーションシステムは操作性が高い。
【0129】
《実施形態3》
図25は、本発明の実施形態3によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。このナビゲーションシステムは、デフォルメ地図の生成がサーバで行われる点で、本発明の実施形態2によるナビゲーションシステム(図23参照)とは異なる。図25では、図23に示される構成要素と同様な構成要素に対し、図23に示される符号と同じ符号が付される。更に、それら同様な構成要素の詳細については、実施形態1及び2についての説明が援用される。
【0130】
本発明の実施形態3によるナビゲーションシステムは好ましくは、携帯電話10Bを端末として用い、更にナビゲーションサーバ20Bを備える。その他に、例えばPDA及びノートパソコンのように、CPUパワーの高い小型情報処理機器が端末として用いられても良い。
ナビゲーションでは、携帯電話10Bが基地局30と携帯電話網/インターネット40とを通してナビゲーションサーバ20Bにアクセスし、経路探索を要求し、探索された経路を含む所定範囲のデフォルメ地図をダウンロードする。携帯電話10Bは更に、ダウンロードされたデフォルメ地図をディスプレイに表示する。
【0131】
携帯電話10Bは、ユーザインタフェース11、GPS12、インタフェース2、及び表示装置4を有する。
ユーザインタフェース11は、ユーザから入力される目的地点又は起点を表すデータを、インタフェース2を通してナビゲーションサーバ20Bにアップロードする。
GPS12は携帯電話10Bの現在位置を計算し、その現在位置を、インタフェース2を通してナビゲーションサーバ20Bにアップロードする。
ユーザインタフェース11とGPS12との上記の機能は好ましくは、携帯電話10BのCPUが所定のナビゲーションプログラムを、ナビゲーションサーバ20Bからダウンロードした上で実行することにより実現される。
【0132】
ナビゲーションサーバ20Bは、インタフェース21、経路探索装置1B、デフォルメ地図自動生成装置3B、及び電子地図データベース23を有する。
経路探索装置1Aは、目的地点データ設定部13B、起点データ設定部14B、地図データ設定部15B、及び経路データ算出部16Bを有する。
目的地点データ設定部13Bは携帯電話10Bから、経路探索の要求を示すコマンドを受信する。目的地点データ設定部13Bはそのとき、所定のナビゲーションプログラムを携帯電話10Bに対して送信する。そのプログラムにより、例えば表示装置4を制御し、ディスプレイを通してユーザに目的地点を表すデータの入力を促す。目的地点データ設定部13Bは更にインタフェース21を通して携帯電話10Bから目的地点を表すデータを受信し、その目的地点を探索すべき経路の終点として設定する。
起点データ設定部14Bは、目的地点データ設定部13Bと同様に、インタフェース21を通して携帯電話10Bから所定の起点又は携帯電話10Bの現在位置を表すデータを受信し、その起点又は現在位置を探索すべき経路の起点として設定する。
【0133】
地図データ設定部15Bは、設定された起点と目的地点とのそれぞれについて電子地図上での座標を割り出し、それらの座標を含む所定範囲(又は図郭)の電子地図を電子地図データベース23から検索する。
経路データ算出部16Bは地図データ設定部15Bにより検索された電子地図を読み込み、それに基づき、起点から目的地点までの経路を所定の条件に従って求める。その条件には好ましくは「経路が最短であること」が含まれる。その他に、「経路が所定の中継点又は経路を通ること」等が含まれても良い。
最短経路の探索には好ましくはダイクストラ(Dijkstra)法が用いられる。
【0134】
デフォルメ地図自動生成装置3Bは、探索された経路を含む電子地図を経路探索装置1Bから読み込む。デフォルメ地図の生成機能については本発明の実施形態1によるものと同様である。
生成されたデフォルメ地図は、インタフェース21を通して携帯電話10Bに送信され、携帯電話10Bの表示装置4によりディスプレイに表示される。
【0135】
本発明の実施形態3によるナビゲーションシステムは上記の携帯電話10Bとナビゲーションサーバ20Bとを用いて、図26に示されるフローチャートに従ってデフォルメ地図の表示を行う。図26では、本発明の実施形態2によるデフォルメ地図の表示に含まれるステップS4A、S5A、S8と同様なステップについては図24に示される符号S4A、S5A、S8と同じ符号が付される(図24参照)。更に、それら同様なステップS4A、S5A、S8の詳細については、実施形態1及び2についての説明が援用される。
【0136】
<ステップS1B>
ユーザが携帯電話10Bを用い、ナビゲーションサーバ20Bに対して経路探索を要求する。
目的地点データ設定部13Bは携帯電話10Bに対して所定のプログラムを送信し、ディスプレイを通してユーザに目的地点を表すデータの入力を促す。
<ステップS2B>
起点データ設定部14Bは携帯電話10Bに対して所定のプログラムを送信し、GPS12に携帯電話10Bの現在位置を計算させる。又は、ディスプレイを通してユーザに起点を表すデータの入力を促す。
<ステップS3B>
目的地点データ設定部13Bが携帯電話10から目的地点を表すデータを読み込み、その目的地点を探索すべき経路の終点として設定する。
起点データ設定部14Aが携帯電話10から現在位置又は起点を表すデータを読み込み、その現在位置又は起点を探索すべき経路の起点として設定する。
【0137】
<ステップS7B>
探索された経路を含むデフォルメ地図がデフォルメ地図自動生成装置3Bから携帯電話10Bにダウンロードされる。
<ステップS9B>
ユーザがディスプレイに表示されたデフォルメ地図の視認性を確認する。その視認性を向上させる目的で、ユーザがデフォルメの程度の変更を携帯電話10Bに対して要求する。その要求はナビゲーションサーバ20Bに送信される。デフォルメ地図自動生成装置3Bはその要求の受信時、デフォルメの程度を表すパラメータ(例えば、バネ定数k、適合度の閾値α、適合度の重みwE、wS)を再設定する。そのパラメータの再設定により、処理がステップS7から反復される。
こうして、ユーザが実際にデフォルメ地図を見ながらデフォルメの程度を調節し、その視認性を最適化できる。
【0138】
本発明の実施形態3による上記のナビゲーションシステムでは、携帯電話10Bが起点と目的地点とを表すデータをナビゲーションサーバ20Bにアップロードし、それら起点と目的地点との間の経路探索、及び探索された経路を含むデフォルメ地図の生成を、そのサーバ20Bに実行させる。こうして、携帯電話のようにCPUパワーが比較的低い情報処理機器でも、デフォルメ地図の表示によるナビゲーションシステムの端末として利用できる。
ここで、デフォルメされた経路を表すデータ量は比較的少ないので、ダウンロードに要する時間が短い。特に、ユーザの移動に合わせて地図が切り換えられる場合、及びユーザがデフォルメの度合を調節する場合等で、再計算されたデフォルメ地図の再ダウンロードが早い。その上、ナビゲーションサーバ20Bが多数の端末から同時に経路探索の要求を受けるとき、要求一つ当たりの処理時間が短いのでサーバ20Bがダウンしにくい。
こうして、上記のナビゲーションシステムは操作性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明によるデフォルメ地図自動生成装置及び方法は上記の通り、携帯電話又はサーバ等の情報処理機器を用いて、視認性の高いデフォルメ地図を自動的に生成する。このように本発明は明らかに、産業上利用可能な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の実施形態1によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図の表示を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図自動生成装置3の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図の生成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態1による主経路のデフォルメに関するフローチャートの前半である。
【図6】本発明の実施形態1による主経路のデフォルメに関するフローチャートの後半である。
【図7】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図の生成中、デフォルメされた主経路と周辺経路との接続を示すフローチャートである。
【図8】道路に関する地図情報と電子地図に含まれるデータとの対応関係を示す図である。
【図9】本発明の実施形態1によるテンプレート記憶部34に記憶されるテンプレートが示す単純図形(直線TL、楕円弧TE、及び正弦曲線TS)を示す図である。
【図10】与えられた経路区分E1−N1−N2−N3−E2上のアーク(実線)、その適合図形TL又はTE(太い実線)、及び変形経路区分E1−Nd1−Nd2−Nd3−E2上のアーク(破線)を示す図である。
【図11】本発明の実施形態1による主経路のデフォルメについて、サブステップSS11〜SS15の処理を示す図である。(a)は、起点Aから目的地点Bまでの主経路P0を最初の経路区分P0とみなす処理を示す。(b)は、経路区分P0を二つの経路区分P1とP2とに分割する処理を示す。(c)は、第二の経路区分P2を二つの小経路区分P21とP22とに分割する処理を示す。
【図12】本発明の実施形態1による主経路のデフォルメについて、サブステップSS16〜SS19の処理を示す図である。
【図13】本発明の実施形態1による主経路のデフォルメについて、サブステップSS21〜SS24の処理を示す図である。(a)は、起点Aから目的地点Bまでの主経路(A−A1−N1−…N4−A5−B)を含む図郭内の電子地図を示す。(b)は、主経路をデフォルメし、四つのノードNd1、Nd2、Nd3、Nd4と五つのアークAd1、Ad2、Ad3、Ad4、Ad5とを線分TLに接近させる処理を示す。(c)は、選択された未確定アークA7、A8、…、A13を移動させ、確定アークAd1、…、Ad5に接続する処理を示す。
【図14】本発明の実施形態1による周辺経路のデフォルメについて、周辺経路に含まれる六つの連続するアークA1、A2、A3、…、A6に対する二つの経路区分P1とP2とへの分割処理を示す図である。
【図15】本発明の実施形態1による周辺経路のデフォルメについて、一つのノードで連結する周辺経路上の複数のアークに対する経路区分への分割処理を示す図である。(a)は、一つのノードNcで連結する六つのアークA1、A2、…、A6から最初の経路区分P1を分割する処理を示す。(b)は、残り四つのアークA2、A3、A5、A6から第二の経路区分P2を分割する処理を示す。(c)は、残り二つのアークA3、A6を二つの経路区分P3、P4に分割する処理を示す。
【図16】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図の生成について、デフォルメされた主経路上のアークとデフォルメされた周辺経路上のアークとの成す角度の比を調整する処理を示す図である。(a)は、主経路の一つの経路区分E1−A1−N1…A3−E2と周辺経路の一つの経路区分N2−A4−N3−A5−N4とを示す。(b)は、主経路をデフォルメし、二つのノードNd1、Nd2と三つのアークAd1、Ad2、Ad3とを線分TLに接近させる処理を示す。(c)は、周辺経路をデフォルメし、ノードNc3と二つのアークAc4、Ac5とを正弦曲線TSに接近させる処理を示す。(d)は、主経路上のノードNd1に連結する周辺経路上のアークAd4をそのノードNd1の周りに回転させる処理を示す。
【図17】デフォルメ前の地図(a)と本発明の実施形態1によるデフォルメ地図(b)との一例を示す図である。
【図18】デフォルメ前の地図(a)と本発明の実施形態1によるデフォルメ地図(b)との別な例を示す図である。
【図19】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図について、バネ定数kとデフォルメの程度との関係の一例を示す図である。(a)はデフォルメ前の地図を示し、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ、バネ定数k=0、0.5、0.8、1のデフォルメ地図を示す。
【図20】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図について、バネ定数kとデフォルメの程度との関係の別な例を示す図である。(a)はデフォルメ前の地図を示し、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、バネ定数k=0、0.5、1のデフォルメ地図を示す。
【図21】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図について、適合度の閾値αとデフォルメの程度との関係を例示する図である。(a)はデフォルメ前の地図を示し、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ、適合度の閾値α=0、30、50、80のデフォルメ地図を示す。
【図22】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図について、半楕円弧と正弦曲線との適合度に対する重みwE=wS=wとデフォルメの程度との関係を例示する図である。(a)はデフォルメ前の地図を示し、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、重みw=1.0、5.0、10のデフォルメ地図を示す。
【図23】本発明の実施形態2によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図24】本発明の実施形態2によるデフォルメ地図の表示を示すフローチャートである。
【図25】本発明の実施形態3によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図26】本発明の実施形態3によるデフォルメ地図の表示を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0141】
31 主経路データ記憶部
32 周辺経路データ記憶部
33 周辺経路データ修正部
34 テンプレート記憶部
35 適合テンプレート選択部
35A 類似度評価部
35B 適合図形決定部
35C 経路分割部
36 デフォルメデータ算出部
【技術分野】
【0001】
本発明はGIS(Geographic Information System:地理情報システム)に関し、特にGISでのデフォルメ地図の自動生成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
GISとは、電子化された地図、いわゆる電子地図(数値地図とも言う)に様々な情報(空間データ)をリンクさせてデータベース化し、それらの情報を地理情報と関係づけて視覚化するときにそのデータベースを利用するシステム、を言う。GISは、例えば、防災情報システム、エリアマーケティング、施設管理システム、及び観光案内システムで利用される。GISは更に、パソコン/カーナビゲーションシステムでの利用を通じ、一般の人々にとっても馴染み深いものになっている。特にインターネットの普及により最新の地図が容易に入手可能であるので、GISの利用者は増大を続けている。
【0003】
近年では更に、携帯電話の高性能化/多機能化が携帯電話網へのGISの導入を容易にした。特に電子地図とGPSとの併用により、携帯電話を用いたナビゲーションシステムが実現されている。ここで、電子地図は外部のサーバから携帯電話網を通してダウンロードされる。
携帯電話が著しく普及した現在、このナビゲーションシステムの需要は今後、更に増大することが予想される。
【0004】
しかし、携帯電話のような小型の情報処理機器を用いたナビゲーションシステムには次のような問題点がある。その一つは、ディスプレイが一般に小さいことである。もう一つは、電子地図を外部のサーバからダウンロードする場合、伝送されるべき電子地図のデータ量に比べて通信速度が一般に不十分なことである。
ディスプレイが小さいとき、現在地点から目的地点までの経路全体が表示されるとその経路の細部がわかりにくく、逆に、経路の細部が十分にわかる程度に拡大されるとその経路全体が表示されない。このように、小さいディスプレイでは表示される経路の視認性が一般に低い。
通信速度が不十分であるとき、サーバに対して経路の探索要求が送信された時点から、その経路を含む電子地図がサーバからダウンロードされてディスプレイに表示される時点までの待ち時間が長い。更に、表示される電子地図の切換がユーザの移動には即応できない。
【0005】
小型の情報処理機器を用いた従来のナビゲーションシステムでは、上記の問題点の解消を目的として、電子地図そのままに代えてデフォルメ地図が利用される。
電子地図では、交差点及び曲がり角がノードで表され、道路がノード間を結ぶアーク(リンクとも言う)で表される。すなわち、電子地図はノードとアークとの集合を表すデータ(ベクトルデータとも言う)である。
デフォルメ地図では、電子地図に含まれる情報のうち、特徴的な形状に関する情報が強調され、その情報以外の情報が省略される。それにより、デフォルメ地図は元の地図より正確ではないが、単純化される。その単純化により、デフォルメ地図は一般に、元の地図より視認性が高い。更に、デフォルメ地図のデータ量は元の電子地図のデータ量より十分に小さい。従って、デフォルメ地図はサーバから短時間でダウンロードされる。それ故、ナビゲーションシステムの応答速度が高く、すなわち操作性が高い。
【0006】
上記の単純化、すなわちデフォルメの手法には例えば、次のようなものが含まれる。
・道路の直線化:直線に近い道路は直線又はより直線に近い線に変形する。例えば、隣接する二つのアーク間の角度が180°に近いとき、それら二つのアークを一つのアークに置換し、又は二つのアーク間の角度をより180°に近い値に調節する。
歩行者は一般に、道路の小さい湾曲、及び交差点を挟んだ道路方向の小さな変化には気付きにくい。そのような気付きにくい形状はナビゲーションでは一般に不要であるので、それらの形状に関する情報はナビゲーション機能を損なうことなく、省略できる。その省略によりデフォルメ地図のデータ量が低減する。更に、そのような詳細な形状の省略は道路の形状を単純化するので、デフォルメ地図の視認性が向上する。
・道路方向の量子化:道路の直線部分の方向が一定角度(例えば45°)の整数倍で近似される。例えば、隣接する二つのアーク間の角度が45°刻みで量子化される。
この量子化により道路方向の種類が限られるので、デフォルメ地図の視認性が一般に向上し、かつデフォルメ地図のデータ量が低減する。
・ランドマーク情報の省略:目的地までの経路からは遠く離れているランドマーク、及びその経路周辺ではあってもあまり目立たないランドマークに関する情報が省略される。その省略は、ナビゲーション機能を損なうことなくデフォルメ地図のデータ量を低減させ、かつデフォルメ地図の視認性を向上させる。
【0007】
従来のナビゲーションシステムによるデフォルメ地図の生成方法としては、例えば次のようなものが知られる(例えば、特許文献1、2、3参照)。
・所定のメッシュが地図に重ねられ、地図上のノードの一部がメッシュ上に移され、地図上のアークがメッシュ上に移されたノード間の線分に置換される(特許文献1図7、8参照)。
・地図上のノードごとに、そのノードで接続されるアークの中から基準のアークが選択され、その基準のアークと他のアークとの角度が一定角度刻みで量子化(正規化)される(特許文献2図9参照)。
・地図上の全てのアークについて、その長さと隣接する二つのアーク間の角度とが調節される。アークの伸縮量と上記角度の所定角度からのずれとが均衡するまで、その調節が反復される(特許文献3図3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平10−74042号公報
【特許文献2】特開平10−198267号公報
【特許文献3】特開2004−139485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
小型の情報処理機器、特に携帯電話に対しては小型化の要請が極めて高い。従って、ディスプレイの拡大はほとんど望めない。それ故、小型の情報処理機器を用いたナビゲーションシステムの更なる普及には、更に高い視認性を持つデフォルメ地図が求められる。
デフォルメ地図の視認性の更なる向上には、デフォルメによる図形の単純化が幾何学的のみならず、心理的にも有効と認められるものが好ましい。すなわち、デフォルメ地図が見た目に単純であるだけでなく、実際の景色からユーザにより観念される地図に近いことが好ましい。
【0010】
ナビゲーションシステムでは、経路の探索要求の入力から探索された経路の表示までの時間が短いほど好ましい。更に、ユーザの移動又は経路周辺の状況変化に合わせて地図が即座に切り換わることが好ましい。
小型の情報処理機器を用いた上記のナビゲーションシステムではデフォルメ地図が利用されるので、そのデフォルメ地図の生成に要する時間が短く維持されねばならない。特にデフォルメ地図の生成に必要な計算量が小さく抑えられねばならない。
【0011】
本発明は、小型の情報処理機器に搭載されるごく小さいディスプレイに表示される場合でも十分に高い視認性を維持するデフォルメ地図、を比較的少ない計算量で生成する装置及び方法、の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるデフォルメ地図の自動生成装置は、
所定の地点から目的地点までの主経路をノードとアークとの集合として表すデータ、を記憶する主経路データ記憶部;
所定の単純図形を表すデータであるテンプレート、を記憶するテンプレート記憶部;
主経路を表すデータに基づき主経路を経路区分に階層的に分割し、テンプレートと経路区分を表すデータとに基づき経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表すテンプレートをその経路区分の適合テンプレートとして記憶する適合テンプレート選択部;及び、
経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき、その経路区分よりその適合図形に形状が近似する変形経路区分、を表すデータを計算し、変形経路区分の全てを表すデータ全体を、デフォルメされた主経路を表すデータとして記憶するデフォルメデータ算出部;
を有する。
【0013】
本発明によるデフォルメ地図の自動生成方法は、
(A) 所定の地点から目的地点までの主経路をノードとアークとの集合として表すデータを取得し、メモリに記憶するステップ;
(B) 主経路を表すデータに基づき主経路を経路区分に階層的に分割し、テンプレートと経路区分を表すデータとに基づき、経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表すテンプレートをその経路区分の適合テンプレートとしてメモリに記憶するステップ;及び、
(C) 経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき変形経路区分を表すデータを計算し、変形経路区分の全てを表すデータ全体をデフォルメされた主経路を表すデータとしてメモリに記憶するステップ;
を有する。
【0014】
ここで、ノードは主経路上の交差点及び曲がり角等、特徴的な地点の位置情報(例えば二次元的な座標及び高度)を表し、アークは主経路に含まれる道路の形状に関する情報(例えば、両端の座標、幅、湾曲、及び起伏)を表す。単純図形は好ましくは、直線、円弧(楕円弧を含む)、又は正弦曲線等、単純な線図である。経路区分は、主経路をノードとアークとの集合としてみた場合での(連結な)部分集合に当たる。
【0015】
人が手書き等で地図をデフォルメして単純化する場合は一般に、地図中の経路を単純図形の組み合わせで表現する傾向が認められる。この単純化を、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置及び方法は自動化する。従って、デフォルメによる地図の単純化が幾何学的のみならず、心理的にも有効と認められる。すなわち、デフォルメ地図が見た目に単純であるだけでなく、実際の景色からユーザにより観念される地図に近い。それ故、本発明によるデフォルメ地図は視認性が高い。
【0016】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置では好ましくは、
主経路を表すデータとテンプレートとに基づき経路区分と単純図形との間の類似度を数値化する類似度評価部;
経路区分のそれぞれについて、数値化された類似度の中で最も高いものが所定の閾値以上であるとき、その最高の類似度を示す単純図形をその経路区分の適合図形として決定する適合図形決定部;及び、
経路区分のうち適合図形を持たないものをそれぞれ、所定の割合で二つ以上の経路区分に分割する経路分割部;
を適合テンプレート選択部が有する。
【0017】
それに対応して本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法では好ましくは、
主経路を表すデータとテンプレートとに基づき、経路区分と単純図形との間の類似度を数値化するサブステップ;
経路区分のそれぞれについて、数値化された類似度の中で最も高いものが所定の閾値以上であるとき、その最高の類似度を示す単純図形をその経路区分の適合図形として決定するサブステップ;及び、
経路区分のうち適合図形を持たないものをそれぞれ、所定の割合で二つ以上の経路区分に分割するサブステップ;
を上記のステップ(B)が有する。
【0018】
ここで、類似度に関する上記の閾値はユーザにより調節可能なパラメータとされても良い。更に、経路区分の分割の割合は好ましくは、ほぼ均等である。すなわち、ノード又はアークがほぼ同数ずつ、分配される。但し、隣接する二つの経路区分は一端のノードを共有する。
【0019】
経路区分の分割は好ましくは、全ての経路区分について適合図形が決定されるまで反復される。それにより、主経路が階層的に分割され、各階層で適合図形により近似される。すなわち、一つの単純図形による近似の範囲が単純図形に対する類似度に応じて階層的に細分化される。この近似は人による上記の近似を自動化したものとみなせるので、適合図形の集合全体が主経路を数値的のみならず視覚的にも良好に近似する。特に、近似のプロセスが主経路の全体から細部へと進行するので、適合図形の集合全体と主経路の全体との間の類似度が数値的のみならず視覚的にも高い。
更に、類似度の数値化、及びその類似度に基づく適合図形の決定のいずれについても必要な計算量は比較的少ない。
【0020】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置では更に好ましくは、
経路区分の全てが適合図形を持つとき、類似度評価部が隣接する二つの経路区分を一つの経路区分とみなして類似度を数値化し、
適合図形決定部がその一つの経路区分について適合図形の決定に成功したとき、その一つの経路区分を表すデータで上記の隣接する二つの経路区分を表すデータを置換する。
【0021】
それに対応して本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法では更に好ましくは、
経路区分の全てが適合図形を持つとき、隣接する二つの経路区分を一つの経路区分とみなして類似度を数値化するサブステップ;及び、
その一つの経路区分について適合図形の決定に成功したとき、その一つの経路区分を表すデータで上記の隣接する二つの経路区分を表すデータを置換するサブステップ;
をステップ(B)が更に有する。
【0022】
与えられた主経路に対して決定される適合図形の集合は実際には、経路区分への分割の仕方に依存する。デフォルメ地図のデータ量の削減には、適合図形の集合に含まれる単純図形の数ができる限り少ないことが望ましい。
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置及び方法は、与えられた主経路に対して適合図形の集合を一旦決定したとき、隣接する二つの経路区分を上記の通り統合して、適合図形の決定を再度試みる。この経路区分の統合は好ましくは適合図形の再決定に失敗するまで反復される。こうして、主経路とデフォルメされた主経路との間の類似度が高く維持されたまま、デフォルメされた主経路のデータ量が削減される。
【0023】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置では好ましくは、デフォルメデータ算出部が、
経路区分上のノードをその経路区分の適合図形上の一点に対応づけ、
ノードと一点とを所定の比率で内分する点を変形経路区分上のノードとして設定し、
経路区分上の二つのノードがアークで接続されるとき、変形経路区分上の対応する二つのノードを接続するアークを設定する。
【0024】
それに対応して本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法では好ましくは、
経路区分上のノードをその経路区分の適合図形上の一点に対応づけるサブステップ;
ノードと一点とを所定の比率で内分する点を変形経路区分上のノードとして設定するサブステップ;及び、
経路区分上の二つのノードがアークで接続されるとき、変形経路区分上の対応する二つのノードを接続するアークを設定するサブステップ;
をステップ(C)が含む。
【0025】
本発明によるこのデフォルメ地図自動生成装置及び方法では、変形経路区分が比較的少ない計算量で得られる。
変形経路区分の計算では更に好ましくは、内分比がユーザにより調節可能なパラメータである。それにより、ユーザはデフォルメされた主経路を実際に見ながら、最高の視認度が得られるようにデフォルメの度合を最適化できる。その作用は、適合図形の決定で用いられる、数値化された類似度に対する閾値についても同様である。
【0026】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置は好ましくは、
主経路に連結する周辺経路をノードとアークとの集合として表すデータを記憶する周辺経路データ記憶部;及び、
周辺経路を表すデータに基づき、周辺経路に含まれるアークを移動させ、そのアークを伸縮させ、それによりそのアークをデフォルメされた主経路又は既に移動済みの周辺経路に含まれる他のノードに接続する周辺経路データ修正部;
を有する。
【0027】
それに対応して本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法は好ましくは、
主経路に連結する周辺経路をノードとアークとの集合として表すデータを取得し、メモリに記憶するステップ;及び、
周辺経路を表すデータに基づき、周辺経路に含まれるアークを移動させ、そのアークを伸縮させ、それによりそのアークをデフォルメされた主経路又は既に移動済みの周辺経路に含まれる他のノードに接続するステップ;
を有する。
【0028】
デフォルメされた主経路と元の主経路とでは対応するノードの座標が一般に異なる。本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置及び方法は、そのノードの変位に合わせて周辺経路を表すデータを変換する。ここで、その変換にはアークの並進、回転、及び伸縮が含まれる。それにより、変換された周辺経路とデフォルメされた主経路との間の接続関係(トポロジー)が、元の周辺経路と元の主経路との間のトポロジーと同等にできる。
【0029】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置は更に好ましくは、
適合テンプレート選択部が、周辺経路を表すデータに基づき周辺経路を経路区分に階層的に分割し、テンプレートと経路区分を表すデータとに基づき経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表すテンプレートをその経路区分の適合テンプレートとして記憶し、
デフォルメデータ算出部が周辺経路に含まれる経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき変形経路区分を表すデータを計算し、変形経路区分の全てを表すデータ全体を、デフォルメされた周辺経路を表すデータとして記憶する。
【0030】
それに対応して本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法は更に好ましくは、
周辺経路を表すデータに基づき周辺経路を経路区分に階層的に分割し、テンプレートと経路区分を表すデータとに基づき経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表すテンプレートをその経路区分の適合テンプレートとしてメモリに記憶するステップ;及び、
経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき変形経路区分を表すデータを計算し、変形経路区分の全てを表すデータ全体を、デフォルメされた周辺経路を表すデータとしてメモリに記憶するステップ;
を有する。
【0031】
経路区分の分割は好ましくは、全ての経路区分について適合図形が決定されるまで反復される。それにより、周辺経路が主経路と同様、階層的に分割され、各階層で適合図形により近似される。従って、適合図形の集合全体は主経路と共に、周辺経路も良好に近似する。すなわち、デフォルメ地図全体の視認性が高い。
更に、適合図形の決定及び変形経路区分の計算のいずれについても必要な計算量は、主経路に関するそれらと同様に比較的少ない。
【0032】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置は更に好ましくは、
周辺経路データ記憶部が主経路と周辺経路とを表すデータに基づき、主経路上のノードで互いに連結する主経路上のアークと周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を計算して記憶し、
デフォルメデータ算出部が、その角度、及びデフォルメされた主経路とデフォルメされた周辺経路とを表すデータに基づき、デフォルメされた主経路上のノードで互いに連結するデフォルメされた主経路上のアークとデフォルメされた周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を調整する。
【0033】
それに対応して本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法は更に好ましくは、
主経路と周辺経路とを表すデータに基づき、主経路上のノードで互いに連結する主経路上のアークと周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を計算し、メモリに記憶するステップ;及び、
その角度、及びデフォルメされた主経路とデフォルメされた周辺経路とを表すデータに基づき、デフォルメされた主経路上のノードで互いに連結するデフォルメされた主経路上のアークとデフォルメされた周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を調整するステップ;
を有する。
【0034】
主経路上のノードに連結する周辺経路上のアークは一般に、同じノードで互いに連結する主経路上の二つのアークの成す角を二分する。例えば、その二つの角度の関係がデフォルメの前後で同等とみなせるように、デフォルメされた主経路と周辺経路とについて、対応する二つの角度が調節される。好ましくは、その二つの角度の比がデフォルメの前後で保存される。それにより、デフォルメされた主経路上のアークとデフォルメされた周辺経路上のアークとの間で、重なり及び交差が回避される。更に、主経路の方向と周辺経路の方向との関係がデフォルメの前後で同等とみなせるので、歩行者が実際に見る景色とデフォルメ地図との間には違和感が少ない。
【0035】
本発明によるデフォルメ地図の自動生成プログラムは、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成方法に含まれる各ステップをCPUに実行させる。それにより、通常の情報処理機器であればいずれも、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置として機能する。
【0036】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置は好ましくは、次のようなナビゲーション機器に搭載される。そのナビゲーション機器は、
目的地点を表すデータ、を設定する目的地点データ設定部;
目的地点へ向かう経路の起点を表すデータ、を設定する起点データ設定部;
目的地点と起点とを含む所定範囲の地図をノードとアークとの集合として表すデータ、を設定する地図データ設定部;及び、
目的地点、起点、及び地図を表すデータに基づき、起点から目的地点までの経路を表すノードとアークとの集合を所定の条件に従って決定する経路データ算出部;
を有する経路探索装置;
経路探索装置により決定されたノードとアークとの集合を主経路を表すデータとし、デフォルメされた主経路を表すデータを計算する、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置;並びに、
デフォルメされた主経路を表すデータに基づき、デフォルメされた主経路を画像として表示する表示装置;
を具備する。
【0037】
起点データ設定部は好ましくはGPSを含む。その場合、ナビゲーション機器の現在位置が起点として設定され、その起点を表すデータがGPSを用いて計算されても良い。その他に、起点を表すデータがユーザにより直接入力されても良い。
【0038】
地図データ設定部は例えば、HDD若しくはCD/DVDドライブ等のディスク記録再生装置、又は半導体メモリを含み、それらにより広範囲の電子地図を予め記憶していても良い。その他に、より好ましくは、
上記のナビゲーション機器が外部のサーバと通信するインタフェース、を更に具備し、
地図データ設定部が、目的地点と起点とを表すデータをインタフェースを通してサーバに送信し、地図を表すデータ(すなわち電子地図)をサーバから受信する。
ここで、インタフェースによるサーバとの通信には例えば、LAN(無線LANを含む)、電話回線、携帯電話網、又はインターネットが利用される。
このように、必要な範囲の電子地図を必要なときに外部のサーバからダウンロードする場合、ナビゲーション機器には大容量の記憶装置が搭載されなくても良い。更に、サーバに最新の電子地図が備えられている限り、上記のナビゲーション機器のユーザは電子地図の更新に関する手間を削減できる。
【0039】
経路データ算出部に課せられる上記所定の条件には好ましくは「経路が最短であること」が含まれる。その他に、「経路が所定の中継点又は経路を通ること」等、既存のナビゲーションシステムで経路探索時に用いられている様々な条件が含まれても良い。
【0040】
本発明による上記のナビゲーション機器は、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置を用いて、探索された経路をデフォルメ地図として表示する。従って、上記のナビゲーション機器が例えば携帯電話のように小型のディスプレイしか持たないものであっても、それに表示されるデフォルメ地図の視認性が高い。更に、地図のデフォルメに必要な計算量が比較的少ないので、例えば携帯電話のようにCPUパワーが比較的低い情報処理機器でも、デフォルメ地図を素早く計算できる。特にユーザの移動に合わせて地図が切り換えられる場合、及びユーザがデフォルメの程度を調節する場合等で、デフォルメ地図の再計算が早い。こうして、上記のナビゲーション機器は操作性が高い。
【0041】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置は上記のようなナビゲーション機器の他に次のようなナビゲーション機器に搭載されても良い。そのナビゲーション機器は、
外部のサーバと通信するインタフェース;
目的地点を表すデータ、を設定し、上記のインタフェースを通してサーバへ送信する目的地点データ設定部;
目的地点へ向かう経路の起点を表すデータ、を設定し、上記のインタフェースを通してサーバへ送信する起点データ設定部;
起点から目的地点までの経路を表すノードとアークとの集合、を上記のインタフェースを通してサーバから受信し、その集合を主経路を表すデータとし、デフォルメされた主経路を表すデータを計算する、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置;並びに、
デフォルメされた主経路を表すデータに基づき、デフォルメされた主経路を画像として表示する表示装置;
を有する。
すなわち、本発明によるこのナビゲーション機器は上記のものとは異なり、起点と目的地点とを表すデータを外部のサーバにアップロードし、それら起点と目的地点との間の経路探索をそのサーバに実行させる。それにより、サーバからダウンロードされる電子地図の範囲が探索された経路周辺に限られる。従って、ダウンロードされるべきデータ量が低減し、ダウンロードに要する時間が短縮される。
【0042】
本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置は次のようなナビゲーションサーバに搭載されても良い。そのナビゲーションサーバは、
外部の端末と通信するインタフェース;
端末から上記のインタフェースを通して受信されるデータに基づき、目的地点を表すデータ、を設定する目的地点データ設定部;
端末から上記のインタフェースを通して受信されるデータに基づき、目的地点へ向かう経路の起点を表すデータ、を設定する起点データ設定部;
目的地点と起点とを含む所定範囲の地図をノードとアークとの集合として表すデータ、を設定する地図データ設定部;及び、
目的地点、起点、及び上記の地図を表すデータに基づき、起点から目的地点までの経路を表すノードとアークとの集合を所定の条件に従って決定する経路データ算出部;
を有する経路探索装置;並びに、
経路探索装置により決定されたノードとアークとの集合を主経路を表すデータとし、デフォルメされた主経路を表すデータを計算し、そのデータを上記のインタフェースを通して端末へ送信する、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置;
を具備する。
ここで、上記の端末は好ましくは、携帯電話等、小型の情報処理機器である。
【0043】
目的地点データ設定部と起点データ設定部とは例えば、目的地点と起点とのそれぞれの名称、住所、又は電話番号を表すテキストデータを端末から受信しても良い。その他に、端末がGPSを搭載する場合、起点データ設定部が端末の現在地点を表すGPSデータを受信しても良い。
【0044】
地図データ設定部は例えば、自身に内蔵されるHDD若しくはCD/DVDドライブ等のディスク記録再生装置、又は半導体メモリに広範囲の電子地図を予め記憶していても良い。その他に、ネットワーク上の他のサーバに構築される、電子地図に関するデータベースにアクセスしても良い。
【0045】
経路データ算出部に課せられる上記所定の条件には好ましくは「経路が最短であること」が含まれる。その他に、「経路が所定の中継点又は経路を通ること」等、既存のナビゲーションシステムで経路探索時に用いられている様々な条件が含まれても良い。
【0046】
本発明による上記のナビゲーションサーバは本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置を用いて、探索された経路をデフォルメし、デフォルメされた経路を表すデータを端末へ送信する。端末はそのデフォルメされた経路をディスプレイに表示する。従って、その端末が例えば携帯電話のように小型のディスプレイしか持たないものであっても、それに表示されるデフォルメ地図の視認性が高い。
更に、デフォルメされた経路を表すデータ量は比較的少ないので、ダウンロードに要する時間が短い。特に、ユーザの移動に合わせて地図が切り換えられる場合、及びユーザがデフォルメの度合を調節する場合等で、再計算されたデフォルメ地図の再ダウンロードが早い。その上、本発明による上記のナビゲーションサーバが多数の端末から同時に経路探索の要求を受けるとき、要求一つ当たりの処理時間が短いのでサーバがダウンしにくい。こうして、上記のナビゲーションサーバと端末とによるナビゲーションシステムは操作性が高い。
【発明の効果】
【0047】
本発明によるデフォルメ地図自動生成装置及び方法は上記の通り、十分に高い視認性を持つデフォルメ地図を少ない計算量で生成できる。特に携帯電話等、小型の情報処理機器によるGISの利用では、表示される経路の視認性及び操作性の向上の面で、本発明による上記のデフォルメ地図自動生成装置及び方法が有利である。
例えば、防災情報システムへの導入では、被害状況、予測、及び避難経路等、災害に関する情報が、携帯電話を通してより多数の人々へ効率良く配信できる。そのとき特に、デフォルメ地図の視認性の高さから、緊急時でもユーザが情報を的確に把握できる。
その他に、施設/観光案内システムへの導入では、携帯電話による操作の手軽さ、及び経路情報のわかりやすさからシステム利用者の拡大が見込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の最良の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。このナビゲーションシステムは好ましくは携帯電話10を端末として用い、更に地図データサーバ20を備える。その他に、例えばPDA及びノートパソコンのように、CPUパワーの高い小型情報処理機器が端末として用いられても良い。
ナビゲーションでは、携帯電話10が基地局30と携帯電話網/インターネット40とを通して地図データサーバ20にアクセスし、必要な範囲の電子地図をダウンロードする。携帯電話10は更に、ダウンロードされた電子地図に基づき経路を探索し、探索された経路をデフォルメしてディスプレイに表示する。
【0049】
携帯電話10は、経路探索装置1、インタフェース2、デフォルメ地図自動生成装置3、及び表示装置4を有する。
経路探索装置1は所定の起点から目的地点までの経路を探索し、起点、目的地点、及び探索された経路を含む範囲の電子地図を出力する。
インタフェース2はアンテナ2Aを通して基地局30との間で無線通信を行う。基地局30の中継により、携帯電話10は携帯電話網/インターネット40に接続される。
【0050】
デフォルメ地図自動生成装置3は経路探索装置1から電子地図を読み込み、その電子地図に基づき、探索された経路及びその周辺について、デフォルメ地図を作成する。ここで、デフォルメ地図自動生成装置3の機能は好ましくは、携帯電話10のCPUが所定のナビゲーションプログラムを実行することにより実現される。デフォルメ地図自動生成装置3はその他に、専用のLSIで構成されても良い。デフォルメ地図自動生成装置3の構成/機能の詳細については後述する。
表示装置4は例えば小型液晶ディスプレイを制御し、ナビゲーションの操作画面及びデフォルメ地図等の情報をそのディスプレイに表示する。
【0051】
経路探索装置1は、ユーザインタフェース11、GPS12、目的地点データ設定部13、起点データ設定部14、地図データ設定部15、及び経路データ算出部16を有する。
ユーザインタフェース11は例えばキーパッドを含む。ユーザはユーザインタフェース11を通し、目的地点又は起点を表すデータ(例えば住所、名称、又は電話番号を表すテキストデータ)を経路探索装置1に入力する。
GPS12は、複数のGPS衛星からのマイクロ波を受信し、受信のタイミングのずれから携帯電話10の現在位置を計算する。
【0052】
目的地点データ設定部13は例えば表示装置4を制御し、ディスプレイを通してユーザに目的地点を表すデータの入力を促す。目的地点データ設定部13は更に、ユーザインタフェース11を通して入力されるデータから目的地点を設定し、その目的地点を表すデータを地図データ設定部15に渡す。
起点データ設定部14は、GPS12により計算された携帯電話10の現在位置を読み込み、その現在位置を探索すべき経路の起点として設定し、その起点を表すデータを地図データ設定部15に渡す。起点データ設定部14はその他に、目的地点データ設定部13と同様に、ユーザインタフェース11を通して入力されるデータから起点を設定しても良い。
【0053】
地図データ設定部15はインタフェース2を通して地図データサーバ20に対し、電子地図のダウンロードを要求する。そのとき、そのサーバ20にアップロードされるデータには、起点及び目的地点を表すデータが含まれる。
地図データ設定部15は続いて、インタフェース2を通して地図データサーバ20から、起点と目的地点とを含む所定範囲(又は図郭)の電子地図をダウンロードする。
その他に、例えば携帯電話10が大容量の記憶装置を内蔵するとき、それを利用して広範囲の電子地図を搭載しても良い。その場合、地図データ設定部15は地図データサーバ20に代え、搭載される電子地図から、起点と目的地点とを含む所定範囲を検索しても良い。
【0054】
経路データ算出部16は地図データ設定部15によりダウンロードされた電子地図を読み込み、それに基づき、起点から目的地点までの経路を所定の条件に従って求める。その条件には好ましくは「経路が最短であること」が含まれる。その他に、「経路が所定の中継点又は経路を通ること」等が含まれても良い。
最短経路の探索には好ましくはダイクストラ(Dijkstra)法が用いられる。
【0055】
目的地点データ設定部13、起点データ設定部14、地図データ設定部15、及び経路データ算出部16の各機能は好ましくは、携帯電話10のCPUが所定のナビゲーションプログラムを実行することにより実現される。それらはその他に、それぞれ専用のLSIで構成されても良い。
【0056】
地図データサーバ20は、インタフェース21、地図データ検索部22、及び電子地図データベース23を有する。
インタフェース21は携帯電話網/インターネット40に接続され、外部の情報処理機器(特に携帯電話10)との間で通信を行う。
【0057】
地図データ検索部22はインタフェース21を通して携帯電話10から、電子地図のダウンロード要求、及び起点と目的地点とを表すデータを受信する。地図データ検索部22はそのとき、それらのデータから起点と目的地点とのそれぞれについて電子地図上での座標を割り出し、それらの座標を含む所定範囲(又は図郭)の電子地図を電子地図データベース23から検索する。検索された電子地図はインタフェース21を通して携帯電話10へ送信される。
【0058】
電子地図データベース23は広範囲の電子地図を記憶する。電子地図は例えば道路に関する地図情報を次のような態様で含む。
図8は、道路に関する地図情報と電子地図に含まれるデータとの対応関係を示す図である。図郭線BL内の道路地図(図8の(a)参照)は、対応する電子地図ではノード(点)とアーク(線分)との集合として表現される(図8の(b)参照)。
ノードは、特徴的な地点、例えば、交差点、曲がり角、及び道路と図郭線BLとの交点の位置情報(例えば二次元的な座標及び高度)を表す。
アークは、ノードで表される各地点間を結ぶ道路の形状に関する情報(例えば、両端の座標、幅、湾曲、及び起伏)を表す。
【0059】
本発明の実施形態1によるナビゲーションシステムは上記の携帯電話10と地図データサーバ20とを用いて、以下のステップS1〜S9でデフォルメ地図の表示を行う(図2参照)。
<ステップS1>
携帯電話10のユーザがナビゲーションプログラムを起動させる。まず、目的地点データ設定部13がディスプレイを通してユーザに目的地点を表すデータの入力を促す。ユーザはユーザインタフェース11を通して目的地点を表すデータ(例えば、名称、住所、又は電話番号)を入力する。目的地点データ設定部13はそのデータを地図データ設定部15に渡す。
<ステップS2>
起点データ設定部14がGPS12により計算された携帯電話10の現在位置を読み込み、その現在位置を探索すべき経路の起点として設定し、その起点を表すデータを地図データ設定部15に渡す。
<ステップS3>
地図データ設定部15がインタフェース2を通して地図データサーバ20に対して電子地図のダウンロードを要求し、起点及び目的地点を表すデータをそのサーバ20にアップロードする。
【0060】
<ステップS4>
地図データサーバ20では、地図データ検索部22がインタフェース21を通して携帯電話10から、電子地図のダウンロード要求、及び起点と目的地点とを表すデータを受信する。地図データ検索部22は起点と目的地点とのそれぞれの座標を計算し、それらの座標を含む所定範囲(又は図郭)の電子地図を電子地図データベース23から検索する。
<ステップS5>
携帯電話10では、地図データ設定部15がインタフェース2を通して地図データサーバ20から、地図データ検索部22により検索された電子地図をダウンロードする。
【0061】
<ステップS6>
経路データ算出部16が、ダウンロードされた電子地図に基づき、例えば起点から目的地点までの最短経路を求める。
<ステップS7>
デフォルメ地図自動生成装置3が、上記の最短経路を含む電子地図を経路探索装置1から読み込み、その電子地図に基づき最短経路及びその周辺についてデフォルメ地図を作成する。その詳細については後述する。
<ステップS8>
表示装置4がデフォルメ地図をディスプレイに表示する。
<ステップS9>
ユーザがディスプレイに表示されたデフォルメ地図の視認性を確認する。その視認性を向上させる目的で、ユーザがデフォルメの程度の変更を携帯電話10に対して要求する。そのとき、デフォルメ地図自動生成装置3がデフォルメの程度を表すパラメータを再設定する。そのパラメータの再設定により、処理がステップS7から反復される。
こうして、ユーザが実際にデフォルメ地図を見ながらデフォルメの程度を調節し、その視認性を最適化できる。
【0062】
図3は、デフォルメ地図自動生成装置3の構成を示すブロック図である。デフォルメ地図自動生成装置3は、主経路データ記憶部31、周辺経路データ記憶部32、周辺経路データ修正部33、テンプレート記憶部34、適合テンプレート選択部35、及びデフォルメデータ算出部36を有する。
主経路データ記憶部31は経路探索装置1により探索された最短経路を主経路として設定する。すなわち、経路探索装置1から読み込まれた電子地図からその主経路を構成するノードとアークとの集合を取り出し、携帯電話10に内蔵されるメモリに記憶する。
周辺経路データ記憶部32は経路探索装置1から読み込まれた電子地図のうち、主経路以外の経路を周辺経路として設定する。すなわち、その周辺経路を構成するノードとアークとの集合を、携帯電話10に内蔵されるメモリに記憶する。
周辺経路データ記憶部32は更に、主経路と周辺経路とを表すデータに基づき、主経路上のノードで互いに連結する主経路上のアークと周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を計算する。それらのデータもメモリに記憶される。
【0063】
例えば、図8の(a)に示される図郭線BL内の地図が、起点Aと目的地点Bとを含む地図として検索された場合を想定する。その地図に対応する電子地図には、図8の(b)に示されるノードとアークとの集合が含まれる。ここで、起点Aと目的地点Bとはそれぞれノードとして表される。
経路探索装置1により探索された最短経路は、起点Aと目的地点Bとを表す二つのノードを結ぶアークA1、A2、A3、A4、A5、及び、各アークの端点にあるノードN1、N2、N3、N4の集合として表される。主経路データ記憶部31はその集合を、主経路を表すデータとしてメモリに記憶する。
図郭線BL内のノードとアークとの集合(図8の(b)参照)から主経路を表す集合を除いたものを、周辺経路データ記憶部32は周辺経路を表すデータとしてメモリに記憶する。
【0064】
周辺経路データ記憶部32は更に、例えば主経路上のノードN1に連結する周辺経路上のアークA6について、同じノードN1に連結する主経路上の二つのアークA1とA2とのそれぞれと成す角度θ1とφ1とを計算する。同じノードN1に連結する周辺経路の別のアークA7についても同様に、主経路上の二つのアークA1とA2とのそれぞれと成す角度θ2とφ2とが計算される。主経路上の他のノードA、N2、N3、N4、及びBについても同様な角度が計算される。それらの角度θ1、φ1、θ2、φ2、…は、周辺経路を示すデータと共に、メモリに記憶される。
【0065】
デフォルメ地図自動生成装置3はまず主経路をデフォルメし、続いて周辺経路をデフォルメする(詳細は後述)。デフォルメされた主経路と元の主経路とでは対応するノードの座標が一般に異なる。すなわち、デフォルメされた主経路が一般に、元の周辺経路からは分離される。
周辺経路データ修正部33は、周辺経路データ記憶部32からは周辺経路を表すデータを読み込み、デフォルメデータ算出部36からはデフォルメされた主経路を表すデータを読み込む。周辺経路データ修正部33は更にそれらのデータに基づき、周辺経路に含まれるアークの移動(並進/回転)及び伸縮を行う。それにより、そのアークがデフォルメされた主経路に含まれるノード、又は周辺経路に含まれる既に移動済みのノードに接続される。こうして、主経路と周辺経路との間のトポロジーが主経路のデフォルメの前後で不変に保たれる。
【0066】
テンプレート記憶部34は一般に複数のテンプレートを記憶する。テンプレートは所定の単純図形を表すデータ(より正確には、関数)である。単純図形には好ましくは、直線、楕円弧、及び正弦曲線が含まれる(例えば、図9に太い実線で示される線図TL、TE、TS参照)。単純図形としてその他の単純な線図が含まれても良い。
【0067】
適合テンプレート選択部35は、主経路又は周辺経路を経路区分に階層的に分割し、経路区分ごとに最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表すテンプレートをその経路区分の適合テンプレートとして記憶する。
適合テンプレート選択部35のこの機能は、好ましくは、類似度評価部35A、適合図形決定部35B、及び経路分割部35Cの各機能に分けられる。
【0068】
類似度評価部35Aは主経路データ記憶部31又は周辺経路データ記憶部32から、連結なノードとアークとの集合を一つの経路区分として読み込む。ここで、経路区分の設定には、例えば経路分割部35Cから読み込まれる経路区分の分割に関する情報が参照される。特に周辺経路については、経路区分が大きな屈曲及び分岐を含まないように設定される(詳細は後述)。
類似度評価部35Aは更に、テンプレート記憶部34に記憶されるテンプレートに基づき、経路区分と単純図形との間の類似度を数値化する。この数値化は好ましくは、テンプレートによる経路区分の最小二乗近似で行われる。すなわち、経路区分上の各ノードと単純図形との間のずれが二乗され、経路区分上の全てのノードについて加算される。更に、その二乗和が最小化されるように、テンプレートに含まれるパラメータが決定される。その二乗和の最小値(以下、適合度という)が経路区分と単純図形との間の類似度を数値化したものとして利用される。ここで、適合度が小さいほど、類似度は高い。
【0069】
図9は、単純図形TL、TE、TSのそれぞれと経路区分との間の適合度の計算を示す図である。
直線TLは、経路区分の両端のノードE1とE2とを結ぶ線分E1−E2として与えられる(図9の(a)参照)。直線TLと経路区分との間の適合度fLは、直線TLと経路区分上のノードNi(i=1、2、3、…、n)との間の距離yi(i=1、2、3、…、n)(直線TLをx軸とみなすときの各ノードのy座標の大きさ)の二乗和として定義される:
fL=Σi=1n (yi)2。
ここで、経路区分上のノード数(両端を除く)をnとする。図9の(a)ではノード数nが3である。
【0070】
半楕円弧TEは、経路区分の両端のノードE1とE2とを結ぶ線分E1−E2を長軸として与えられる(図9の(b)参照)。半楕円弧TEと経路区分との間の適合度fEは、半楕円弧TEと経路区分上のノードNi(i=1、2、3、…、n)のそれぞれとの間の、半楕円弧TEの短軸方向での距離fi(i=1、2、3、…、n)の二乗和として定義される。すなわち、線分E1−E2をx軸とみなし、経路区分の一端のノードE1を原点((x,y)=(0,0))とみなすとき、経路区分上のノードNi(i=1、2、3、…、n)の各座標を(xi,yi)(i=1、2、3、…、n)とおくと、適合度fEは次式で定義される:
fE=Σi=1n (fi)2=Σi=1n [yi−b{1−(xi/a)2}1/2]2。
ここで、a、bはそれぞれ、半楕円弧TEの長軸と短軸との長さを表す。図9の(b)では経路区分上のノード数nが3である。
より単純なデフォルメ地図を得るには、適合図形は直線に近い方が好ましい。半楕円弧TEでは、短軸の長さbが長軸の長さaより十分短いように設定される(a≪b)。
【0071】
正弦曲線TSは、経路区分の両端のノードE1とE2とを節とし、それらのノードE1、E2を結ぶ線分E1−E2の長さを半周期として与えられる(図9の(c)参照)。正弦曲線TSと経路区分との間の適合度fSは、正弦曲線TSと経路区分上のノードNi(i=1、2、3、…、n)のそれぞれとの間の、正弦曲線TSの振幅方向での距離fi(i=1、2、3、…、n)の二乗和として定義される。すなわち、線分E1−E2をx軸とみなし、経路区分の一端のノードE1を原点((x,y)=(0,0))とみなすとき、経路区分上のノードNi(i=1、2、3、…、n)の各座標を(xi,yi)(i=1、2、3、…、n)とおくと、適合度fSは次式で定義される:
fS=Σi=1n (fi)2=Σi=1n [yi−Asin(2πxi/T)]2。
ここで、A、Tはそれぞれ、正弦曲線TSの振幅の半値と周期とを表す。図9の(c)では経路区分上のノード数nが3である。
半楕円弧TEと同様に、正弦曲線TSは直線に近い方が好ましいので、振幅の半値Aが周期Tより十分短いように設定される(A≪T)。
【0072】
適合図形決定部35Bは与えられた経路区分と各単純図形との間の適合度fL、fE、fSを比較し、その中の最小値を決定する。
ここで、適合図形は直線に近い方が好ましい。例えば、半楕円弧TEの適合度fEが重みwE(wE≧1)倍に増大され、正弦曲線TSの適合度fSが重みwS(wS≧1)倍に増大されても良い。それらの乗算結果が直線TLの適合度fLと比較されることにより、半楕円弧TE又は正弦曲線TSが適合図形として採用される確率が、直線TLが採用される確率より十分に低い。
【0073】
適合図形決定部35Bは更に、適合度の最小値を所定の閾値αと比較する。
適合度の最小値が閾値α以下であるとき、その最小値に対応する単純図形がその経路区分の適合図形として決定される。更に、適合図形を表すテンプレートのパラメータ(例えば、直線TLについては両端の座標;半楕円弧TEについては長軸の両端の座標と両軸の長さa、b;正弦曲線TSについては両端の座標、振幅の半値A、及び周期T)が適合テンプレートのパラメータとしてメモリに記憶される。
適合度の最小値が閾値αを超えるとき、その経路区分に対しては適合図形が決定されない。
【0074】
経路分割部35Cは適合図形決定部35Bから、経路区分とその適合図形の有無とを表すデータを読み込む。
その経路区分に対して適合図形が与えられているとき、その経路区分を表すデータがそのまま、メモリに記憶される。
その経路区分に対して適合図形が与えられていないとき、経路分割部35Cはその経路区分を好ましくは二つの経路区分にほぼ等しく分割する。すなわち、ノード又はアークがほぼ同数ずつ分配される。但し、分割された二つの経路区分は一端のノードを共有する。ここで、分割数が3以上に設定されても良く、分割の割合が等分以外に設定されても良い。
経路分割部35Cは更に、分割に関する情報(例えば、分割の有無、分割された経路区分間で共有されるノード、及び各経路区分の適合図形の有無)を類似度評価部35Aに提供する。
【0075】
デフォルメデータ算出部36は、与えられた経路区分について、その経路区分よりその適合図形に形状が近似する変形経路区分を次のように求める(図10参照)。図10では、与えられた経路区分E1−N1−N2−N3−E2上のアークが実線で示され、その適合図形TL又はTEが太い実線で示され、変形経路区分E1−Nd1−Nd2−Nd3−E2上のアークが破線で示される。
まず、経路区分上のノードNi(i=1、2、3、…)から、経路区分の両端のノードE1とE2とを結ぶ線分E1−E2に垂線を下ろす。それらの垂線と適合図形TL又はTEとの交点Qi(i=1、2、3、…)を求める。
次に、経路区分上のノードNiの座標を(xi,yi)(i=1、2、3、…)とおき、上記の垂線と適合図形との交点Qiの座標を(xTi,yTi)(i=1、2、3、…)とおく。そのとき、変形経路区分上のノードNdiの座標(xDi,yDi)(i=1、2、3、…)が次式(1)と(2)とで定義される:
【0076】
xDi−xi=−ki(xi−xTi)、 (1)
yDi−yi=−ki(yi−yTi)。 (2)
【0077】
ここで、定数kiは0以上1以下であり、好ましくは経路区分上の各ノードで一定である:0≦ki≦1、ki=k。すなわち、変形経路区分上のノードNdiは、経路区分上のノードNiと適合図形上の交点Qiとを結ぶ線分NiQiをki:(1−ki)に内分する点として定義される。
図10では、経路区分の両端のノードE1とE2とを結ぶ直線がx軸とみなされる。この場合は、経路区分上のノードNi、適合図形上の交点Qi、及び変形経路区分上のノードNdiがy軸方向に並ぶ(xDi=xi=xTi)。変形経路区分上のノードNdiと線分NiQiとの間の距離は式(2)で決まる。
【0078】
一般には(0<ki<1)、変形経路区分上のノードNdiは経路区分上のノードNiと適合図形上の交点Qiとの中間に位置する。従って、変形経路区分上のノードNdiが経路区分上のノードNiより適合図形上の交点Qiに近い。それ故、変形経路区分は経路区分より適合図形との適合度が高い。
経路区分のデフォルメの程度は定数ki、すなわち、線分NiQiの内分比で調節される。定数kiが0に等しいとき(ki=0)、変形経路区分上のノードNdiは経路区分上のノードNiと一致し(Ndi=Ni)、すなわち経路区分はデフォルメされない。定数kiの増大に伴い、変形経路区分上のノードNdiが適合図形上の交点Qiに接近する。すなわち、デフォルメの程度が上がる。定数kiが1に等しいとき(ki=1)、変形経路区分上のノードNdiは適合図形上の交点Qiと一致する(Ndi=Qi)。この場合、デフォルメの程度が最も高い。
【0079】
式(1)、(2)は直感的には、変形経路区分上のノードNdiと経路区分上のノードNiとを結ぶ仮想的なバネ(自然長=0)の力が、変形経路区分上のノードNdiと適合図形上の交点Qiとを結ぶ仮想的なバネ(自然長=0)の力と釣り合うための条件から得られる。定数kiはそれら二つのバネ間でのバネ定数の比で決まる。以下、式(1)、(2)を用いた経路区分のデフォルメをバネモデルといい、定数kiをバネ定数という。
デフォルメデータ算出部36は、このバネモデルにより得られた変形経路区分の全てを表すデータ全体を、デフォルメされた主経路を表すデータとしてメモリに記憶する。
【0080】
デフォルメ地図自動生成装置3は上記の構成を用いて、以下のサブステップSS1〜SS7でデフォルメ地図を生成する(図4参照)。サブステップSS1〜SS7の全体が上記のステップS7を構成する。
<サブステップSS1>
主経路データ記憶部31が経路探索装置1から、探索された経路を含む電子地図を読み込む。主経路データ記憶部31は探索された経路を主経路として設定し、周辺経路データ記憶部32は電子地図に含まれるその他の経路を周辺経路として設定する。主経路及び周辺経路を構成するノードとアークとの集合がそれぞれ、メモリに記憶される。
周辺経路データ記憶部32は更に、主経路上のノードで互いに連結する主経路上のアークと周辺経路上のアークとについて両者の成す角度を計算し、それらの角度をメモリに記憶する。
<サブステップSS2>
適合テンプレート選択部35が、主経路を表すノードとアークとの集合に基づき主経路を経路区分に階層的に分割し、経路区分ごとに適合図形を決定し、適合テンプレートをメモリに記憶する。
このサブステップSS2はより詳細には、以下のサブステップSS11〜SS19に分けられる(図5、6参照)。
【0081】
<サブステップSS11>
類似度評価部35Aが主経路データ記憶部31から経路区分を読み込む。最初は、主経路全体が一つの経路区分として設定される。経路分割部35Cから経路区分の分割に関する情報が読み込まれるときは、経路分割部35Cにより分割された複数の経路区分の一つが類似度評価の対象として設定される。
そのように設定された経路区分と各単純図形との間の適合度fL、fE、fSがそれぞれ、類似度評価部35Aにより計算される。
<サブステップSS12>
適合図形決定部35Bが類似度評価部35Aにより計算された適合度fL、fE、fSを比較し、その中の最小値を決定する。更にその最小値を所定の閾値αと比較する。
適合度の最小値が閾値αを超えるとき、処理はサブステップSS13へ進む。
適合度の最小値が閾値α以下であるとき、処理はサブステップSS14へ分岐する。
<サブステップSS13>
経路分割部35Cが適合図形決定部35Bから、経路区分とその適合図形の有無とを表すデータを読み込む。その経路区分に対しては適合図形が与えられていないので、経路分割部35Cはその経路区分を二つの経路区分にほぼ等しく分割する。
経路分割部35Cは更に、分割に関する情報を類似度評価部35Aに提供する。類似度評価部35Aはその情報に基づき、適合図形を持たない経路区分について、サブステップS11を反復する。
【0082】
<サブステップSS14>
適合度の最小値に対応する単純図形が適合図形として決定される。更に、適合図形を表すテンプレートが適合テンプレートとしてメモリに記憶される。
<サブステップSS15>
類似度評価部35Aは、経路分割部35Cから読み込んだ分割に関する情報を参照し、経路分割部35Cにより分割された経路区分全てについて適合図形の有無をチェックする。
経路区分全てについて適合図形が決定されたとき、処理はサブステップSS16へ進む。
適合図形を持たない経路区分が残っているとき、処理はサブステップSS11から反復される。
【0083】
サブステップSS11〜SS15の処理は例えば、図11の(a)、(b)、及び(c)に図示される。
図11の(a)は、起点Aから目的地点Bまでの主経路を示す。まず、この主経路全体が一つの経路区分P0として設定され、その経路区分P0と各単純図形との間の適合度が計算される(サブステップSS11)。この経路区分P0については閾値α以下の適合度を持つ単純図形が得られない(サブステップSS12)。従って、経路区分P0が二つの経路区分に分割される(サブステップSS13)。
【0084】
図11の(b)は、経路区分P0から分割された二つの経路区分P1とP2とを示す。二つの経路区分P1とP2とのそれぞれに含まれるノード/アークは元の経路区分(主経路)P0に含まれるノード/アークの約半数である。特に、主経路P0に含まれるノードが奇数個(=9個)であり、二つの経路区分P1とP2とは端点のノードC1を共有するので、二つの経路区分P1とP2とではノードとアークとのそれぞれの数が等しい。
主経路P0に含まれるノードが仮に偶数個であれば、例えば目的地点Bに近い方の経路区分、すなわち第一の経路区分P1が、起点Aに近い方の経路区分、すなわち第二の経路区分P2よりノードとアークとを一つずつ多く含む。
【0085】
最初に、第一の経路区分P1が選択され、それと各単純図形との間の適合度が計算される(サブステップSS11)。第一の経路区分P1については、閾値α以下の適合度を持つ単純図形T1が得られる。従って、その単純図形T1が第一の経路区分P1の適合図形として決定される(サブステップSS14)。
次に、第二の経路区分P2が選択され(サブステップSS15)、それと各単純図形との間の適合度が計算される(サブステップSS11)。第二の経路区分P2については、閾値α以下の適合度を持つ単純図形が得られない(サブステップSS12)。従って、第二の経路区分P2が更に二つの経路区分に分割される(サブステップSS13)。
【0086】
図11の(c)は、第二の経路区分P2から分割された二つの小経路区分P21とP22とを示す。二つの小経路区分P21とP22とのそれぞれに含まれるノード/アークは第二の経路区分P2に含まれるノード/アークの約半数である。第二の経路P2に含まれるノードが奇数個(=5個)であり、二つの小経路区分P21とP22とは端点のノードC2を共有するので、二つの小経路区分P21とP22とではノードとアークとのそれぞれの数が等しい。
【0087】
最初に、第一の小経路区分P21が選択され、それと各単純図形との間の適合度が計算される(サブステップSS11)。第一の小経路区分P21については、閾値α以下の適合度を持つ単純図形T2が得られる。従って、その単純図形T2が第一の小経路区分P21の適合図形として決定される(サブステップSS14)。
次に、第二の小経路区分P22が選択され(サブステップSS15)、それと各単純図形との間の適合度が計算される(サブステップSS11)。第二の経路区分P2についても、閾値α以下の適合度を持つ単純図形T3が得られる。従って、その単純図形T3が第二の小経路区分P22の適合図形として決定される(サブステップSS14)。
こうして、主経路P0に含まれる全ての経路区分P1、P21、P22について適合図形が決定されたので、処理が次のサブステップSS16へ進む。
【0088】
サブステップSS11〜SS15の処理により上記の通り、主経路が経路区分に階層的に分割され、経路区分ごとに適合図形が決定される。
ここで、適合図形の集合は実際には、経路区分への分割の仕方に依存する。一方、デフォルメ地図のデータ量の削減には、適合図形の集合に含まれる単純図形の数ができる限り少ないことが望ましい。
以下のサブステップSS16〜SS19では、隣接する二つの経路区分を一旦、一つの経路区分とみなし、その適合図形の決定を再度試みる(図6参照)。もしその決定が成功すれば、元の二つの経路区分が一つの経路区分に統合される(すなわち、その一つの経路区分を表すデータで元の二つの経路区分を表すデータが置換される)。この経路区分の統合が適合図形の再決定に失敗するまで反復される。
【0089】
<サブステップSS16>
類似度評価部35Aが、隣接する二つの経路区分を一つの経路区分として設定する。
ここで、経路区分の分割(サブステップSS11〜SS15)の履歴が記憶されるときは、設定された経路区分が経路分割部35Cによる分割を受けたことのある経路区分であるか否か、がまずチェックされても良い。もし設定された経路区分が経路分割部35Cによる分割を受けたことがあれば、その経路区分に対しては適合図形が得られないことが既知である。その場合は、処理がサブステップSS19に分岐しても良い。
類似度評価部35Aは更に、設定された経路区分と各単純図形との間の適合度fL、fE、fSをそれぞれ計算する。
<サブステップSS17>
適合図形決定部35Bが、類似度評価部35Aにより計算された適合度fL、fE、fSの最小値を決定する。更にその最小値を所定の閾値αと比較する。
適合度の最小値が閾値α以下であるとき、処理はサブステップSS18へ進む。
適合度の最小値が閾値αを超えるとき、処理はサブステップSS19へ分岐する。
【0090】
<サブステップSS18>
経路分割部35Cが適合図形決定部35Bから、経路区分とその適合図形の有無とを表すデータを読み込む。その経路区分に対しては適合図形が与えられているので、経路分割部35Cはその経路区分を表すデータで、メモリに記憶される元の二つの経路区分を表すデータを置換する。経路分割部35Cは更に、主経路について保持する分割に関する情報を書き換える。
こうして、隣接する二つの経路区分が一つの経路区分に統合される。
<サブステップSS19>
類似度評価部35Aは、経路分割部35Cから分割に関する情報を読み込み、その情報に基づき、他の隣接する二つの経路区分について統合を試みたか否かをチェックする。まだ統合を試みていない経路区分対があれば、それらについて処理がサブステップS16から反復される。可能な経路区分対の全てについて統合が試みられていれば、処理が次のサブステップSS3へ進む(図4参照)。
【0091】
サブステップSS16〜SS19の処理は、図11に示される例については図12に図示される。
起点Aから目的地点Bまでの主経路は、二つのノードC1とC2とで、三つの経路区分P1、P21、及びP22に分割される。各経路区分P1、P21、P22には適合図形T1、T2、T3が与えられている(図11の(c)参照)。
【0092】
まず、目的地点Bに最も近い共有ノードC1で連結する第一の経路区分P1と第一の小経路区分P21とが一つの経路区分P1Aとみなされ、その経路区分P1Aと各単純図形との間の適合度が計算される(サブステップSS16)(図12参照)。
この経路区分P1Aについては、閾値α以下の適合度を持つ単純図形T4が得られる。従って、その単純図形T4が経路区分P1Aの適合図形として決定される(サブステップSS17)。
更に、経路区分P1Aに対して適合図形T4が与えられたので、メモリに記憶される元の二つの経路区分P1とP21とを表すデータが経路区分P1Aを表すデータで置換される(サブステップSS18)。
こうして、二つの経路区分P1とP21とが一つの経路区分P1Aに統合される。
【0093】
その統合後、目的地点Bに最も近い共有ノードC2で連結する経路区分P1Aと第二の小経路区分P22とについてはまだ統合が試みられていないので、それらを一つの経路区分とみなして統合処理が開始される(サブステップSS19)。特にその経路区分は主経路全体と一致するので、その適合図形は得られない。図12に示される例ではその他には、隣接する二つの経路区分は含まれない。こうして、可能な経路区分対の全てについて統合処理が完了する。
【0094】
<サブステップSS3>
デフォルメデータ算出部36は、主経路に含まれる各経路区分について、その経路区分よりその適合図形に形状が近似する変形経路区分をバネモデルで求める(図10参照)。デフォルメデータ算出部36は更に、バネモデルにより得られた変形経路区分の全てを表すデータ全体を、デフォルメされた主経路を表すデータとしてメモリに記憶する。こうして、主経路のデフォルメが完了する。
<サブステップSS4>
周辺経路データ修正部33が、周辺経路に含まれるアークの並進/回転/伸縮を行う。それにより、周辺経路がデフォルメされた主経路に接続される。特に、主経路と周辺経路との間のトポロジーが主経路のデフォルメの前後で不変に保たれる。
このサブステップSS4はより詳細には、以下のサブステップSS21〜SS24に分けられる(図7参照)。
【0095】
<サブステップSS21>
周辺経路データ修正部33は、デフォルメされた主経路と周辺経路とに含まれるアーク全体の集合を、位置が確定しているアーク(以下、確定アークという)の集合と、位置が確定していないアーク(以下、未確定アークという)の集合とに分ける。サブステップSS21の最初の実行時では、デフォルメされた主経路に含まれるアークが確定アークとして登録される。
確定アークの位置は一般に、主経路がデフォルメされる前の元のアークの位置とは異なる(逆に、未確定アークの位置は元のアークの位置と等しい)。周辺経路データ修正部33は、元の位置では隣接していた確定アークと未確定アークとの対を全て検索し、その未確定アークをその確定アークに接続されるべきアークとして選択する。
<サブステップSS22>
サブステップSS21でアークが選択されたとき、処理がサブステップSS23へ進む。
サブステップSS21でアークが選択されなかったとき、サブステップSS4が終了する。
【0096】
<サブステップSS23>
周辺経路データ修正部33は、選択された未確定アークをそれぞれ移動させる。それにより、各未確定アークとその接続対象の確定アークとが、元の位置では接続されていた端点で再び接続される。
ここで、未確定アークの移動は好ましくは並進である。しかし、例えば選択された複数の未確定アークの端点が一カ所で重なっていた場合、それらの端点が移動後も同じ位置で重なることは、並進だけでは一般に実現されない。そのような場合は、それら複数の未確定アークの一部又は全部を回転させ、更には伸縮させる。こうして、選択された未確定アーク全体のトポロジーが確定アークへの接続の前後で不変に保たれる。
<サブステップSS24>
サブステップSS23の処理により確定アークに接続された未確定アーク全ての位置が確定される。それにより、それらの未確定アークが確定アークに変更される。
処理はその後、サブステップSS21から反復される。
【0097】
サブステップSS21〜SS24の処理は例えば、図13に図示される。
起点Aから目的地点Bまでの主経路は、四つのノードN1、N2、N3、N4と五つのアークA1、A2、A3、A4、A5とを含み、全体で一つの経路区分を構成する。その主経路の適合図形として起点Aと目的地点Bとを結ぶ線分TLが与えられている(図13の(a)参照)。
【0098】
主経路がデフォルメされ、四つのノードNd1、Nd2、Nd3、Nd4と五つのアークAd1、Ad2、Ad3、Ad4、Ad5とが線分TLに接近する(図13の(b)参照)。それらのアークAd1、Ad2、…、Ad5の位置が確定され、確定アークとして登録される。一方、周辺経路に含まれるアークが未確定アークとして登録される(サブステップSS21)。
図13の(b)に細い破線で示される通り、確定アークAd1、Ad2、…、Ad5の位置は元のアークA1、A2、…、A5の位置とは異なる。元のアークA1、A2、…、A5と隣接していた未確定アークが全て検索される。それにより、未確定アークA6、A7、A8、…、A14が各確定アークAd1、Ad2、…、Ad5に接続されるべきアークとして選択される(サブステップSS21)。
【0099】
選択された未確定アークA7、A8、…、A13が移動し、確定アークAd1、…、Ad5に接続される(サブステップSS23)。ここで、起点Aに連結する未確定アークA6と目的地点Bに連結する未確定アークA14とは移動しない。更に、移動後の未確定アークAd7、Ad8、…、Ad13の端点に、元の位置で連結していたノードNd5、Nd6、…、Nd10が重ねられる(図13の(c)参照)。
図13の(c)では、未確定アークのほとんどが並進だけで主経路上のアークAd1、…、Ad5に接続される。しかし、選択された未確定アークA8とA9とは端点が一つのノードN6で重なっていた(図13の(b)参照)ので、それらの端点が並進だけでは重ならない。未確定アークAd8とAd9とは並進に加え、元の長さから伸縮する。それにより端点がノードNd6で重なる。
こうして、移動後の未確定アークAd6〜Ad14全体のトポロジーが元の未確定アークA6〜A14全体のトポロジーと等しく保たれる。
【0100】
確定アークAd1〜Ad5に接続された未確定アークAd6〜Ad14全ての位置が確定される。それにより、それらの未確定アークAd6〜Ad14が確定アークに変更される。
続いて、新たな確定アークAd6〜Ad14とそれらの元の位置(アークA6〜A14)で隣接していた未確定アークが選択され、上記と同様な方法で新たな確定アークAd6〜Ad14に接続される。
以下、未確定アークの全てが確定アークに変更されるまで同様な処理が反復される。
【0101】
<サブステップSS5>
適合テンプレート選択部35が、周辺経路を経路区分に階層的に分割し、経路区分ごとに適合図形を決定し、適合テンプレートをメモリに記憶する。この処理は以下の点を除き、主経路に対する処理(サブステップSS2)と全く同様である。
周辺経路は主経路とは異なり、一般に分岐を含む。従って、周辺経路は予め、分岐を含まない経路区分に分割されていなければならない。その分割は例えば次のように行う。
【0102】
周辺経路に含まれるアークの中から、隣接する二つのアークが選択され、それらのアーク間の角度が計算される。その角度と180°との差(以下、接続角という)が所定の閾値以下であるとき、それらの二つのアークとそれらの端点に位置するノードとが同じ経路区分に割り当てられる。すなわち、周辺経路は直線に近い部分ごとに経路区分として分割される。
この分割処理は例えば図14で図示される。図14には周辺経路に含まれる六つの連続するアークA1、A2、A3、…、A6が示される。第一のアークA1と第二のアークA2との間の接続角をθ1、第二のアークA2と第三のアークA3との間の接続角をθ2、第三のアークA3と第四のアークA4との間の接続角をθ3、第四のアークA4と第五のアークA5との間の接続角をθ4、第五のアークA5と第六のアークA6の間の接続角をθ5、とする。
図14では、第三のアークA3と第四のアークA4との間の接続角θ3だけが所定の閾値を超える。従って、六つのアークA1〜A6は第三のアークA3と第四のアークA4との間で二つの経路区分P1とP2とに分割される。すなわち、第一〜第三のアークA1〜A3が一つの経路区分P1に割り当てられ、第四〜第六のアークA4〜A6が別の経路区分P2に割り当てられる。ここで、第三のアークA3と第四のアークA4との間に位置するノードNcは二つの経路区分P1とP2とに共有される。
【0103】
分岐点では三つ以上のアークが連結する。それらのアークが成す接続角の中から最小の接続角が選択される。その最小の接続角が所定の閾値以下であれば、その接続角を成す二つのアークが一つの経路区分に割り当てられ、その後の分割処理からは除外される。残りのアークが成す接続角から最小の接続角が選択され、その最小の接続角が所定の閾値以下であれば、その接続角を成す二つのアークが別の経路区分に割り当てられ、その後の分割処理からは除外される。以下、除外されていないアーク、又は所定の閾値以下の接続角を成すアークの対がなくなるまで、上記の分割処理が反復される。
【0104】
この分割処理は例えば図15に図示される。図15では、六つのアークA1、A2、…、A6が一つのノードNcで連結する。
図15の(a)では接続角θ1が最小の接続角であり、更に所定の閾値以下である。従って、その接続角θ1を成す第一のアークA1と第四のアークA4、及びそれらの端点に位置するノードN1とN4が第一の経路区分P1に割り当てられ、以下の分割処理からは除外される。
図15の(b)では接続角θ2が最小の接続角であり、更に所定の閾値以下である。従って、その接続角θ2を成す第二のアークA2と第五のアークA5、及びそれらの端点に位置するノードN2とN5が第二の経路区分P2に割り当てられ、以下の分割処理からは除外される。
図15の(c)では接続角θ3が唯一の接続角であるが、所定の閾値を超える。従って、その接続角θ3を成す第三のアークA3と第六のアークA6、及びそれらの端点に位置するノードN3とN6とは別々の経路区分P3とP4とにそれぞれ分割される。
【0105】
<サブステップSS6>
デフォルメデータ算出部36が周辺経路に含まれる各経路区分について、その経路区分よりその適合図形に形状が近似する変形経路区分をバネモデルで求める。バネモデルによるデフォルメ処理は主経路に対するデフォルメ処理(サブステップSS3)と全く同様である(図10参照)。但し、隣接する二つの経路区分間の接続がデフォルメにより失われた場合は、経路区分ごとに移動させ、元の接続を復活させる。
デフォルメデータ算出部36は更に、バネモデルにより得られた変形経路区分の全てを表すデータ全体を、デフォルメされた周辺経路を表すデータとしてメモリに記憶する。
【0106】
<サブステップSS7>
主経路上のノードに連結する周辺経路上のアークは一般に、同じノードに連結する主経路上の二つのアークの成す角を二分する。その二つの角度の比は主経路と周辺経路とのデフォルメにより変化する。
デフォルメデータ算出部36は主経路と周辺経路とのデフォルメ処理後、主経路上のノードに連結する周辺経路上のアークをそのノードの周りに回転させる。それにより、そのアークがそのノードに連結する主経路上の二つのアークと成す二つの角度について、両者の比がデフォルメ前の値に調整される。ここで、周辺経路データ記憶部32によりメモリに記憶された主経路上のアークと周辺経路上のアークとの間の角度θ1、φ1、θ2、φ2、…(図8の(b)参照)に基づき、アークの回転角が計算される。
【0107】
この角度比の調整処理は例えば図16に図示される。
図16には主経路の一つの経路区分と周辺経路の一つの経路区分とが示される。主経路の経路区分は四つのノードE1、N1、N2、E2と三つのアークA1、A2、A3とを含む。その経路区分の適合図形として端点E1とE2とを結ぶ線分TLが与えられている。周辺経路の経路区分は三つのノードN1、N3、N4と二つのアークA4、A5とを含む(図16の(a)参照)。
主経路上のノードN1に連結する周辺経路上のアークA4について、同じノードN1に連結する主経路上の二つのアークA1とA2とのそれぞれと成す角度θa、φaが、デフォルメ処理の前に計算される。更に、それらの角度又は両者の比θa:φaがメモリに記憶される。
【0108】
主経路がデフォルメされ、二つのノードNd1、Nd2と三つのアークAd1、Ad2、Ad3とが線分TLに接近する(図16の(b)参照)。
更に、周辺経路の経路区分に含まれるアークAb4、Ab5とノードNb3、Nb4とが移動し、アークAb4が主経路上のノードNd1に接続される。そのとき、主経路上のノードNd1に連結する周辺経路上のアークAb4について、同じノードNd1に連結する主経路上の二つのアークAd1とAd2とのそれぞれと成す角度θb、φbは一般に、元の角度θa、φaから変化する。
周辺経路の経路区分に対し、正弦曲線TSが適合図形として与えられる。
【0109】
周辺経路がデフォルメされ、ノードNc3と二つのアークAc4、Ac5とが線分TL2TSに接近する(図16の(c)参照)。そのとき、主経路上のノードNd1に連結する周辺経路上のアークAc4について、同じノードNd1に連結する主経路上の二つのアークAd1とAd2とのそれぞれと成す角度θc、φcは一般に、元の角度θb、φbから更に変化する。
【0110】
主経路上のノードNd1に連結する周辺経路上のアークAd4、Ad5、及びノードNd3、Nd4がそのノードNd1の周りに回転する(図16の(d)参照)。それにより、そのアークAd4がそのノードNd1に連結する主経路上の二つのアークAd1とAd2とのそれぞれと成す角度θd、φdについて、両者の比がデフォルメ前の値に調整される。すなわち、θd:φd=θa:φa。
こうして、デフォルメされた主経路と周辺経路との間で、アークの交差が回避される。
更に、主経路の方向と周辺経路の方向との関係がデフォルメの前後で同等とみなせるので、歩行者が実際に見る景色とデフォルメ地図との間には違和感が少ない。
以上で、周辺経路のデフォルメが完了する。
【0111】
デフォルメ地図の作成では、主経路と周辺経路とのデフォルメの他に、例えばランドマーク(建造物、信号、看板等、ナビゲーションでの目標物になり得るもの)の表示位置が以下のように決定されても良い。
主経路と周辺経路とに対するデフォルメ処理の前に、元の電子地図に含まれるランドマークごとに、そのランドマーク(の代表点)から同じ電子地図に含まれる各アークに下ろした垂線の長さが計算され、最短の垂線が選択される。
更に、その最短の垂線の長さが所定の閾値と比較される。その最短の垂線の長さがその閾値以下であれば、その最短の垂線の長さ、その垂線の端点を通るアーク、及びその垂線とそのアークとの交点によるそのアークの内分比が、その垂線の端点に位置するランドマークの位置情報としてメモリに記憶される。
主経路と周辺経路とに対するデフォルメ処理の後、ランドマークが上記の位置情報に基づき、デフォルメ地図上に次のように位置づけられる。まず、そのランドマークの位置情報に含まれる垂線の長さ、アーク、及び内分比がメモリから読み出される。次に、そのアークがデフォルメ地図の中から特定され、そのアークをその内分比で内分する点が計算される。最後に、そのアークとその内分点で直交する直線上の点で、その内分点からその垂線の長さと等しい距離に位置する点が計算される。こうして得られた点が、そのランドマークのデフォルメ地図上の代表点としてメモリに記憶される。
【0112】
図17と図18とには、デフォルメ前の地図(a)と本発明によるデフォルメ地図(b)とが例示される。起点(現在地点)Aから目的地点Bまでの主経路がデフォルメ前の地図(a)では太線Mで示され、デフォルメ地図(b)では太線Mdで示される。これらのデフォルメ地図では、バネ定数k=1、適合度の閾値α=100、及び半楕円弧TEの適合度fEと正弦曲線TSの適合度fSとに対する重みwE=wS=1が設定されている。
図17の(a)、(b)を比較すれば明らかな通り、特に現在地点Aの近傍で主経路Mdが滑らかにデフォルメされている。
更に、図18の(a)、(b)を比較すれば明らかな通り、主経路Mdが単純であり、見やすい。その上、周辺経路では細かい湾曲が減り、滑らかにデフォルメされている。
【0113】
図19と図20とには、バネ定数kとデフォルメの程度との関係が例示される。起点(現在地点)Aから目的地点Bまでの主経路がデフォルメ前の地図(a)では太線Mで示され、デフォルメ地図(b)、(c)、(d)、(e)ではそれぞれ太線M、Md1、Md2、Md3で示される。
図19の(b)、(c)、(d)、(e)では、バネ定数kがそれぞれ、0、0.5、0.8、1に設定されている。図20の(b)、(c)、(d)では、バネ定数kがそれぞれ、0、0.5、1に設定されている。すなわち、(b)ではデフォルメが行われず(主経路Mが元の地図(a)に示される主経路Mと等しい)、(c)、(d)、(e)の順でデフォルメの程度が強い。
一方、図19と図20とでは共に、適合度の閾値α=100、及び半楕円弧TEの適合度fEと正弦曲線TSの適合度fSとに対する重みwE=wS=1が設定されている。
【0114】
図19の(b)と(e)とを比較すれば明らかな通り、図19の(e)では主経路Md3が直線部分を多く含み、見やすい。しかし、例えば、図19の(b)に示される交差点Cでは主経路Mが左折しているのに対し、図19の(e)に示される交差点Cdでは主経路Md3が直進するように表示される。この形状の変化は、図19の(c)、(d)に示される通り、バネ定数kを低減し、デフォルメの程度を下げれば軽減される。すなわち、ユーザはバネ定数kの調節を通してデフォルメの程度を制御することにより、デフォルメ地図の視認性を最適化できる。
【0115】
図20の(b)と(d)とを比較すれば明らかな通り、図20の(d)では主経路Md2が直線部分を多く含み、見やすい。しかし、例えば、図20の(b)に示される三つの交差点C1、C2、C3ではいずれも、主経路Mが突き当たりを右折している。それに対し、図20の(d)に示される三つの交差点Cd1、Cd2、Cd3ではいずれも、主経路Mdが直進するように表示される。図20の(d)では更に、目的地点B付近で、元の地図には存在しない周辺経路の交差Crが生じている。これらの形状の変化は、図20の(d)に示される通り、バネ定数kを低減し、デフォルメの程度を下げれば軽減される。すなわち、ユーザはバネ定数kの調節を通して、デフォルメ地図の視認性を最適化できる。
【0116】
図21には、適合度の閾値αとデフォルメの程度との関係が例示される。起点(現在地点)Aから目的地点Bまでの主経路がデフォルメ前の地図(a)では太線Mで示され、デフォルメ地図(b)、(c)、(d)、(e)ではそれぞれ、太線M、Md1、Md2、Md3で示される。(b)、(c)、(d)、(e)では適合度の閾値αがそれぞれ、0、30、50、80に設定されている。更に、バネ定数k=1、及び半楕円弧TEの適合度fEと正弦曲線TSの適合度fSとに対する重みwE=wS=1が設定されている。
(b)では経路区分が最小単位まで分割されても適合図形が決定されないので、デフォルメが行われない(主経路Mが元の地図(a)に示される主経路Mと等しい)。一方、(c)、(d)、(e)を比較すれば明らかな通り、適合度の閾値αの増大に伴い、主経路の滑らかさが向上する。こうして、デフォルメの程度は適合度の閾値αの調節でも制御できる。
【0117】
図22には、半楕円弧TEの適合度fEと正弦曲線TSの適合度fSとに対する重みwE=wS=wとデフォルメの程度との関係が例示される。起点(現在地点)Aから目的地点Bまでの主経路がデフォルメ前の地図(a)では太線Mで示され、デフォルメ地図(b)、(c)、(d)ではそれぞれ太線Md1、Md2、Md3で示される。(b)、(c)、(d)では重みwがそれぞれ、1.0、5.0、10に設定されている。更に、バネ定数k=1、及び適合度の閾値α=400が設定されている。
(b)では主経路Md1が中間点D1を境に、二本の曲線に分割される。(c)では主経路Md2が中間点D1を境に、一本の直線と一本の曲線とに分割される。(d)では主経路Md3が二つの中間点D1とD2とを境に、三本の直線に分割される。すなわち、重みwが大きいほど、主経路は直線を多く含む。
こうして、デフォルメの程度は重みwE=wS=wの調節でも制御できる。
【0118】
本発明の実施形態1による上記のナビゲーションシステムでは、端末である携帯電話10がデフォルメ地図自動生成装置3を用いて、探索された経路をデフォルメ地図として表示する。従って、小型のディスプレイでも、表示されるデフォルメ地図の視認性が高い。
更に、地図のデフォルメに必要な計算量が比較的少ないので、携帯電話10のCPUパワーが比較的低くくても、デフォルメ地図が外部のサーバにアクセスすることなく、素早く計算される。特にユーザの移動に合わせて地図が切り換えられる場合、及びユーザがデフォルメの程度を調節する場合等で、デフォルメ地図の再計算が早い。こうして、上記のナビゲーションシステムは操作性が高い。
【0119】
《実施形態2》
図23は、本発明の実施形態2によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。このナビゲーションシステムは、経路探索がサーバで行われる点で、本発明の実施形態1によるナビゲーションシステム(図1参照)とは異なる。図23では、図1に示される構成要素と同様な構成要素に対し、図1に示される符号と同じ符号が付される。更に、それら同様な構成要素の詳細については、実施形態1についての説明が援用される。
【0120】
本発明の実施形態2によるナビゲーションシステムは好ましくは、携帯電話10Aを端末として用い、更にナビゲーションサーバ20Aを備える。その他に、例えばPDA及びノートパソコンのように、CPUパワーの高い小型情報処理機器が端末として用いられても良い。
ナビゲーションでは、携帯電話10Aが基地局30と携帯電話網/インターネット40とを通してナビゲーションサーバ20Aにアクセスし、経路探索を要求し、探索された経路を含む所定範囲の電子地図をダウンロードする。携帯電話10Aは更に、ダウンロードされた電子地図をデフォルメしてディスプレイに表示する。
【0121】
携帯電話10Aは、ユーザインタフェース11、GPS12、目的地点データ設定部13A、起点データ設定部14A、インタフェース2、デフォルメ地図自動生成装置3、及び表示装置4を有する。
目的地点データ設定部13Aは例えば表示装置4を制御し、ディスプレイを通してユーザに目的地点を表すデータの入力を促す。目的地点データ設定部13Aは更に、ユーザインタフェース11を通して入力されるデータから目的地点を設定する。
起点データ設定部14AはGPS12から携帯電話10Aの現在位置を読み込み、その現在位置を探索すべき経路の起点として設定する。起点データ設定部14Aはその他に、目的地点データ設定部13Aと同様に、ユーザインタフェース11を通して入力されるデータから起点を設定しても良い。
目的地点と起点とを表すデータは経路探索を要求するためのコマンドと共に、インタフェース2を通してナビゲーションサーバ20Aにアップロードされる。
目的地点データ設定部13Aと起点データ設定部14との各機能は好ましくは、携帯電話10AのCPUが所定のナビゲーションプログラムを実行することにより実現される。それらはその他に、それぞれ専用のLSIで構成されても良い。
【0122】
デフォルメ地図自動生成装置3は、探索された経路を含む電子地図をナビゲーション20Aから、インタフェース2を通して読み込む。その他の機能については本発明の実施形態1によるものと同様である。
【0123】
ナビゲーションサーバ20Aは、インタフェース21、経路探索装置1A、及び電子地図データベース23を有する。
経路探索装置1Aは地図データ設定部15Aと経路データ算出部16とを有し、それらを用いて、所定の起点から目的地点までの経路を探索し、起点、目的地点、及び探索された経路を含む範囲の電子地図を出力する。
【0124】
地図データ設定部15Aはインタフェース21を通して携帯電話10Aから、経路探索を要求するコマンド、及び起点と目的地点とを表すデータを受信する。地図データ設定部15Aはそのとき、それらのデータから起点と目的地点とのそれぞれについて電子地図上での座標を割り出し、それらの座標を含む所定範囲(又は図郭)の電子地図を電子地図データベース23から検索する。
【0125】
経路データ算出部16Aは地図データ設定部15Aにより検索された電子地図を読み込み、それに基づき、起点から目的地点までの経路を所定の条件に従って求める。その条件には好ましくは「経路が最短であること」が含まれる。その他に、「経路が所定の中継点又は経路を通ること」等が含まれても良い。
最短経路の探索には好ましくはダイクストラ(Dijkstra)法が用いられる。
算出された最短経路を表すデータは、その最短経路を含む電子地図と共に、インタフェース21と通して携帯電話10Aに送信される。
【0126】
本発明の実施形態2によるナビゲーションシステムは上記の携帯電話10Aとナビゲーションサーバ20Aとを用いて、図24に示されるフローチャートに従ってデフォルメ地図の表示を行う。図24では、本発明の実施形態1によるデフォルメ地図の表示に含まれるステップS7〜9と同様なステップについては図2に示される符号S7〜9と同じ符号が付される(図2参照)。更に、それら同様なステップS7〜9の詳細については、実施形態1についての説明が援用される。
<ステップS1A>
携帯電話10Aのユーザがナビゲーションプログラムを起動させる。まず、目的地点データ設定部13Aがディスプレイを通してユーザに目的地点を表すデータの入力を促す。ユーザはユーザインタフェース11を通して目的地点を表すデータを入力する。
<ステップS2A>
起点データ設定部14AがGPS12により計算された携帯電話10の現在位置を読み込み、その現在位置を探索すべき経路の起点として設定する。
<ステップS3A>
目的地点データ設定部13Aと起点データ設定部14Aとがインタフェース2を通してナビゲーションサーバ20Aに対して経路探索を要求し、起点及び目的地点を表すデータをそのサーバ20Aにアップロードする。
【0127】
<ステップS4A>
ナビゲーションサーバ20Aでは、地図データ設定部15Aがインタフェース21を通して携帯電話10Aから、経路探索の要求、及び起点と目的地点とを表すデータを受信する。地図データ設定部14Aは起点と目的地点とのそれぞれの座標を計算し、それらの座標を含む所定範囲(又は図郭)の電子地図を電子地図データベース23から検索する。
<ステップS5A>
検索された電子地図に基づき、経路データ算出部16Aが例えば起点から目的地点までの最短経路を求める。
<ステップS6A>
探索された最短経路を含む電子地図が携帯電話10Aにダウンロードされ、インタフェース2を通してデフォルメ地図自動生成装置3に入力される。
【0128】
本発明の実施形態2による上記のナビゲーションシステムでは、携帯電話10Aが起点と目的地点とを表すデータをナビゲーションサーバ20Aにアップロードし、それら起点と目的地点との間の経路探索をそのサーバ20Aに実行させる。それにより、サーバ20Aからダウンロードされる電子地図の範囲が探索された経路周辺に限られる。従って、ダウンロードされるべきデータ量が低減し、ダウンロードに要する時間が短縮される。
特に、ユーザの移動に合わせて地図が切り換えられる場合、及びユーザがデフォルメの度合を調節する場合等でも、デフォルメ地図の再表示が早い。その上、ナビゲーションサーバ20Aが多数の端末から同時に経路探索の要求を受けるとき、要求一つ当たりの処理時間が短いのでサーバ20Aがダウンしにくい。
こうして、上記のナビゲーションシステムは操作性が高い。
【0129】
《実施形態3》
図25は、本発明の実施形態3によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。このナビゲーションシステムは、デフォルメ地図の生成がサーバで行われる点で、本発明の実施形態2によるナビゲーションシステム(図23参照)とは異なる。図25では、図23に示される構成要素と同様な構成要素に対し、図23に示される符号と同じ符号が付される。更に、それら同様な構成要素の詳細については、実施形態1及び2についての説明が援用される。
【0130】
本発明の実施形態3によるナビゲーションシステムは好ましくは、携帯電話10Bを端末として用い、更にナビゲーションサーバ20Bを備える。その他に、例えばPDA及びノートパソコンのように、CPUパワーの高い小型情報処理機器が端末として用いられても良い。
ナビゲーションでは、携帯電話10Bが基地局30と携帯電話網/インターネット40とを通してナビゲーションサーバ20Bにアクセスし、経路探索を要求し、探索された経路を含む所定範囲のデフォルメ地図をダウンロードする。携帯電話10Bは更に、ダウンロードされたデフォルメ地図をディスプレイに表示する。
【0131】
携帯電話10Bは、ユーザインタフェース11、GPS12、インタフェース2、及び表示装置4を有する。
ユーザインタフェース11は、ユーザから入力される目的地点又は起点を表すデータを、インタフェース2を通してナビゲーションサーバ20Bにアップロードする。
GPS12は携帯電話10Bの現在位置を計算し、その現在位置を、インタフェース2を通してナビゲーションサーバ20Bにアップロードする。
ユーザインタフェース11とGPS12との上記の機能は好ましくは、携帯電話10BのCPUが所定のナビゲーションプログラムを、ナビゲーションサーバ20Bからダウンロードした上で実行することにより実現される。
【0132】
ナビゲーションサーバ20Bは、インタフェース21、経路探索装置1B、デフォルメ地図自動生成装置3B、及び電子地図データベース23を有する。
経路探索装置1Aは、目的地点データ設定部13B、起点データ設定部14B、地図データ設定部15B、及び経路データ算出部16Bを有する。
目的地点データ設定部13Bは携帯電話10Bから、経路探索の要求を示すコマンドを受信する。目的地点データ設定部13Bはそのとき、所定のナビゲーションプログラムを携帯電話10Bに対して送信する。そのプログラムにより、例えば表示装置4を制御し、ディスプレイを通してユーザに目的地点を表すデータの入力を促す。目的地点データ設定部13Bは更にインタフェース21を通して携帯電話10Bから目的地点を表すデータを受信し、その目的地点を探索すべき経路の終点として設定する。
起点データ設定部14Bは、目的地点データ設定部13Bと同様に、インタフェース21を通して携帯電話10Bから所定の起点又は携帯電話10Bの現在位置を表すデータを受信し、その起点又は現在位置を探索すべき経路の起点として設定する。
【0133】
地図データ設定部15Bは、設定された起点と目的地点とのそれぞれについて電子地図上での座標を割り出し、それらの座標を含む所定範囲(又は図郭)の電子地図を電子地図データベース23から検索する。
経路データ算出部16Bは地図データ設定部15Bにより検索された電子地図を読み込み、それに基づき、起点から目的地点までの経路を所定の条件に従って求める。その条件には好ましくは「経路が最短であること」が含まれる。その他に、「経路が所定の中継点又は経路を通ること」等が含まれても良い。
最短経路の探索には好ましくはダイクストラ(Dijkstra)法が用いられる。
【0134】
デフォルメ地図自動生成装置3Bは、探索された経路を含む電子地図を経路探索装置1Bから読み込む。デフォルメ地図の生成機能については本発明の実施形態1によるものと同様である。
生成されたデフォルメ地図は、インタフェース21を通して携帯電話10Bに送信され、携帯電話10Bの表示装置4によりディスプレイに表示される。
【0135】
本発明の実施形態3によるナビゲーションシステムは上記の携帯電話10Bとナビゲーションサーバ20Bとを用いて、図26に示されるフローチャートに従ってデフォルメ地図の表示を行う。図26では、本発明の実施形態2によるデフォルメ地図の表示に含まれるステップS4A、S5A、S8と同様なステップについては図24に示される符号S4A、S5A、S8と同じ符号が付される(図24参照)。更に、それら同様なステップS4A、S5A、S8の詳細については、実施形態1及び2についての説明が援用される。
【0136】
<ステップS1B>
ユーザが携帯電話10Bを用い、ナビゲーションサーバ20Bに対して経路探索を要求する。
目的地点データ設定部13Bは携帯電話10Bに対して所定のプログラムを送信し、ディスプレイを通してユーザに目的地点を表すデータの入力を促す。
<ステップS2B>
起点データ設定部14Bは携帯電話10Bに対して所定のプログラムを送信し、GPS12に携帯電話10Bの現在位置を計算させる。又は、ディスプレイを通してユーザに起点を表すデータの入力を促す。
<ステップS3B>
目的地点データ設定部13Bが携帯電話10から目的地点を表すデータを読み込み、その目的地点を探索すべき経路の終点として設定する。
起点データ設定部14Aが携帯電話10から現在位置又は起点を表すデータを読み込み、その現在位置又は起点を探索すべき経路の起点として設定する。
【0137】
<ステップS7B>
探索された経路を含むデフォルメ地図がデフォルメ地図自動生成装置3Bから携帯電話10Bにダウンロードされる。
<ステップS9B>
ユーザがディスプレイに表示されたデフォルメ地図の視認性を確認する。その視認性を向上させる目的で、ユーザがデフォルメの程度の変更を携帯電話10Bに対して要求する。その要求はナビゲーションサーバ20Bに送信される。デフォルメ地図自動生成装置3Bはその要求の受信時、デフォルメの程度を表すパラメータ(例えば、バネ定数k、適合度の閾値α、適合度の重みwE、wS)を再設定する。そのパラメータの再設定により、処理がステップS7から反復される。
こうして、ユーザが実際にデフォルメ地図を見ながらデフォルメの程度を調節し、その視認性を最適化できる。
【0138】
本発明の実施形態3による上記のナビゲーションシステムでは、携帯電話10Bが起点と目的地点とを表すデータをナビゲーションサーバ20Bにアップロードし、それら起点と目的地点との間の経路探索、及び探索された経路を含むデフォルメ地図の生成を、そのサーバ20Bに実行させる。こうして、携帯電話のようにCPUパワーが比較的低い情報処理機器でも、デフォルメ地図の表示によるナビゲーションシステムの端末として利用できる。
ここで、デフォルメされた経路を表すデータ量は比較的少ないので、ダウンロードに要する時間が短い。特に、ユーザの移動に合わせて地図が切り換えられる場合、及びユーザがデフォルメの度合を調節する場合等で、再計算されたデフォルメ地図の再ダウンロードが早い。その上、ナビゲーションサーバ20Bが多数の端末から同時に経路探索の要求を受けるとき、要求一つ当たりの処理時間が短いのでサーバ20Bがダウンしにくい。
こうして、上記のナビゲーションシステムは操作性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明によるデフォルメ地図自動生成装置及び方法は上記の通り、携帯電話又はサーバ等の情報処理機器を用いて、視認性の高いデフォルメ地図を自動的に生成する。このように本発明は明らかに、産業上利用可能な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の実施形態1によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図の表示を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図自動生成装置3の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図の生成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態1による主経路のデフォルメに関するフローチャートの前半である。
【図6】本発明の実施形態1による主経路のデフォルメに関するフローチャートの後半である。
【図7】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図の生成中、デフォルメされた主経路と周辺経路との接続を示すフローチャートである。
【図8】道路に関する地図情報と電子地図に含まれるデータとの対応関係を示す図である。
【図9】本発明の実施形態1によるテンプレート記憶部34に記憶されるテンプレートが示す単純図形(直線TL、楕円弧TE、及び正弦曲線TS)を示す図である。
【図10】与えられた経路区分E1−N1−N2−N3−E2上のアーク(実線)、その適合図形TL又はTE(太い実線)、及び変形経路区分E1−Nd1−Nd2−Nd3−E2上のアーク(破線)を示す図である。
【図11】本発明の実施形態1による主経路のデフォルメについて、サブステップSS11〜SS15の処理を示す図である。(a)は、起点Aから目的地点Bまでの主経路P0を最初の経路区分P0とみなす処理を示す。(b)は、経路区分P0を二つの経路区分P1とP2とに分割する処理を示す。(c)は、第二の経路区分P2を二つの小経路区分P21とP22とに分割する処理を示す。
【図12】本発明の実施形態1による主経路のデフォルメについて、サブステップSS16〜SS19の処理を示す図である。
【図13】本発明の実施形態1による主経路のデフォルメについて、サブステップSS21〜SS24の処理を示す図である。(a)は、起点Aから目的地点Bまでの主経路(A−A1−N1−…N4−A5−B)を含む図郭内の電子地図を示す。(b)は、主経路をデフォルメし、四つのノードNd1、Nd2、Nd3、Nd4と五つのアークAd1、Ad2、Ad3、Ad4、Ad5とを線分TLに接近させる処理を示す。(c)は、選択された未確定アークA7、A8、…、A13を移動させ、確定アークAd1、…、Ad5に接続する処理を示す。
【図14】本発明の実施形態1による周辺経路のデフォルメについて、周辺経路に含まれる六つの連続するアークA1、A2、A3、…、A6に対する二つの経路区分P1とP2とへの分割処理を示す図である。
【図15】本発明の実施形態1による周辺経路のデフォルメについて、一つのノードで連結する周辺経路上の複数のアークに対する経路区分への分割処理を示す図である。(a)は、一つのノードNcで連結する六つのアークA1、A2、…、A6から最初の経路区分P1を分割する処理を示す。(b)は、残り四つのアークA2、A3、A5、A6から第二の経路区分P2を分割する処理を示す。(c)は、残り二つのアークA3、A6を二つの経路区分P3、P4に分割する処理を示す。
【図16】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図の生成について、デフォルメされた主経路上のアークとデフォルメされた周辺経路上のアークとの成す角度の比を調整する処理を示す図である。(a)は、主経路の一つの経路区分E1−A1−N1…A3−E2と周辺経路の一つの経路区分N2−A4−N3−A5−N4とを示す。(b)は、主経路をデフォルメし、二つのノードNd1、Nd2と三つのアークAd1、Ad2、Ad3とを線分TLに接近させる処理を示す。(c)は、周辺経路をデフォルメし、ノードNc3と二つのアークAc4、Ac5とを正弦曲線TSに接近させる処理を示す。(d)は、主経路上のノードNd1に連結する周辺経路上のアークAd4をそのノードNd1の周りに回転させる処理を示す。
【図17】デフォルメ前の地図(a)と本発明の実施形態1によるデフォルメ地図(b)との一例を示す図である。
【図18】デフォルメ前の地図(a)と本発明の実施形態1によるデフォルメ地図(b)との別な例を示す図である。
【図19】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図について、バネ定数kとデフォルメの程度との関係の一例を示す図である。(a)はデフォルメ前の地図を示し、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ、バネ定数k=0、0.5、0.8、1のデフォルメ地図を示す。
【図20】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図について、バネ定数kとデフォルメの程度との関係の別な例を示す図である。(a)はデフォルメ前の地図を示し、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、バネ定数k=0、0.5、1のデフォルメ地図を示す。
【図21】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図について、適合度の閾値αとデフォルメの程度との関係を例示する図である。(a)はデフォルメ前の地図を示し、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ、適合度の閾値α=0、30、50、80のデフォルメ地図を示す。
【図22】本発明の実施形態1によるデフォルメ地図について、半楕円弧と正弦曲線との適合度に対する重みwE=wS=wとデフォルメの程度との関係を例示する図である。(a)はデフォルメ前の地図を示し、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、重みw=1.0、5.0、10のデフォルメ地図を示す。
【図23】本発明の実施形態2によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図24】本発明の実施形態2によるデフォルメ地図の表示を示すフローチャートである。
【図25】本発明の実施形態3によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図26】本発明の実施形態3によるデフォルメ地図の表示を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0141】
31 主経路データ記憶部
32 周辺経路データ記憶部
33 周辺経路データ修正部
34 テンプレート記憶部
35 適合テンプレート選択部
35A 類似度評価部
35B 適合図形決定部
35C 経路分割部
36 デフォルメデータ算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の地点から目的地点までの主経路をノードとアークとの集合として表すデータ、を記憶する主経路データ記憶部;
所定の単純図形を表すデータであるテンプレート、を記憶するテンプレート記憶部;
前記主経路を表すデータに基づき前記主経路を経路区分に階層的に分割し、前記テンプレートと前記経路区分を表すデータとに基づき前記経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表す前記テンプレートをその経路区分の適合テンプレートとして記憶する適合テンプレート選択部;及び、
前記経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき、その経路区分よりその適合図形に形状が近似する変形経路区分、を表すデータを計算し、前記変形経路区分の全てを表すデータ全体を、前記デフォルメされた主経路を表すデータとして記憶するデフォルメデータ算出部;
を有するデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項2】
前記主経路を表すデータと前記テンプレートとに基づき前記経路区分と前記単純図形との間の類似度を数値化する類似度評価部;
前記経路区分のそれぞれについて、数値化された前記類似度の中で最も高いものが所定の閾値以上であるとき、その最高の類似度を示す前記単純図形をその経路区分の前記適合図形として決定する適合図形決定部;及び、
前記経路区分のうち前記適合図形を持たないものをそれぞれ、所定の割合で二つ以上の経路区分に分割する経路分割部;
を前記適合テンプレート選択部が有する、
請求項1記載のデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項3】
前記経路区分の全てが前記適合図形を持つとき、前記類似度評価部が隣接する二つの前記経路区分を一つの経路区分とみなして前記類似度を数値化し、
前記適合図形決定部が前記一つの経路区分について前記適合図形の決定に成功したとき、その一つの経路区分を表すデータで前記隣接する二つの経路区分を表すデータを置換する、
請求項2記載のデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項4】
前記デフォルメデータ算出部が、
前記経路区分上のノードをその経路区分の適合図形上の一点に対応づけ、
前記ノードと前記一点とを所定の比率で内分する点を前記変形経路区分上のノードとして設定し、
前記経路区分上の二つのノードがアークで接続されるとき、前記変形経路区分上の対応する二つのノードを接続するアークを設定する、
請求項1記載のデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項5】
前記主経路に連結する周辺経路をノードとアークとの集合として表すデータを記憶する周辺経路データ記憶部;及び、
前記周辺経路を表すデータに基づき、前記周辺経路に含まれるアークを移動させ、そのアークを伸縮させ、それによりそのアークを前記デフォルメされた主経路又は既に移動済みの前記周辺経路に含まれる他のノードに接続する周辺経路データ修正部;
を有する、請求項1記載のデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項6】
前記適合テンプレート選択部が、前記周辺経路を表すデータに基づき前記周辺経路を経路区分に階層的に分割し、前記テンプレートと前記経路区分を表すデータとに基づき前記経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表す前記テンプレートをその経路区分の適合テンプレートとして記憶し、
前記デフォルメデータ算出部が前記周辺経路に含まれる経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき前記変形経路区分を表すデータを計算し、前記変形経路区分の全てを表すデータ全体を、前記デフォルメされた周辺経路を表すデータとして記憶する、
請求項5記載のデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項7】
前記周辺経路データ記憶部が前記主経路と前記周辺経路とを表すデータに基づき、前記主経路上のノードで互いに連結する前記主経路上のアークと前記周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を計算して記憶し、
前記デフォルメデータ算出部が前記デフォルメされた主経路と前記デフォルメされた周辺経路とを表すデータと前記角度とに基づき、前記デフォルメされた主経路上のノードで互いに連結する前記デフォルメされた主経路上のアークと前記デフォルメされた周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を調整する、
請求項6記載のデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項8】
(A) 所定の地点から目的地点までの主経路をノードとアークとの集合として表すデータを取得し、メモリに記憶するステップ;
(B) 前記主経路を表すデータに基づき前記主経路を経路区分に階層的に分割し、所定の単純図形を表すデータであるテンプレートと前記経路区分を表すデータとに基づき、前記経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表す前記テンプレートをその経路区分の適合テンプレートとしてメモリに記憶するステップ;及び、
(C) 前記経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき、その経路区分よりその適合図形に形状が近似する変形経路区分、を表すデータを計算し、前記変形経路区分の全てを表すデータ全体を、前記デフォルメされた主経路を表すデータとしてメモリに記憶するステップ;
を有するデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項9】
前記主経路を表すデータと前記テンプレートとに基づき、前記経路区分と前記単純図形との間の類似度を数値化するサブステップ;
前記経路区分のそれぞれについて、数値化された前記類似度の中で最も高いものが所定の閾値以上であるとき、その最高の類似度を示す前記単純図形をその経路区分の前記適合図形として決定するサブステップ;及び、
前記経路区分のうち前記適合図形を持たないものをそれぞれ、所定の割合で二つ以上の経路区分に分割するサブステップ;
を前記ステップ(B)が有する、請求項8記載のデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項10】
前記経路区分の全てが前記適合図形を持つとき、隣接する二つの前記経路区分を一つの経路区分とみなして前記類似度を数値化するサブステップ;及び、
前記一つの経路区分について前記適合図形の決定に成功したとき、その一つの経路区分を表すデータで前記隣接する二つの経路区分を表すデータを置換するサブステップ;
を前記ステップ(B)が更に有する、請求項9記載のデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項11】
前記経路区分上のノードをその経路区分の適合図形上の一点に対応づけるサブステップ;
前記ノードと前記一点とを所定の比率で内分する点を前記変形経路区分上のノードとして設定するサブステップ;及び、
前記経路区分上の二つのノードがアークで接続されるとき、前記変形経路区分上の対応する二つのノードを接続するアークを設定するサブステップ;
を前記ステップ(C)が含む、請求項8記載のデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項12】
前記主経路に連結する周辺経路をノードとアークとの集合として表すデータを取得し、メモリに記憶するステップ;及び、
前記周辺経路を表すデータに基づき、前記周辺経路に含まれるアークを移動させ、そのアークを伸縮させ、それによりそのアークを前記デフォルメされた主経路又は既に移動済みの前記周辺経路に含まれる他のノードに接続するステップ;
を有する、請求項8記載のデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項13】
前記周辺経路を表すデータに基づき前記周辺経路を経路区分に階層的に分割し、前記テンプレートと前記経路区分を表すデータとに基づき前記経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表す前記テンプレートをその経路区分の適合テンプレートとしてメモリに記憶するステップ;及び、
前記経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき前記変形経路区分を表すデータを計算し、前記変形経路区分の全てを表すデータ全体を、前記デフォルメされた周辺経路を表すデータとしてメモリに記憶するステップ;
を有する、請求項12記載のデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項14】
前記主経路と前記周辺経路とを表すデータに基づき、前記主経路上のノードで互いに連結する前記主経路上のアークと前記周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を計算し、メモリに記憶するステップ;及び、
前記デフォルメされた主経路と前記デフォルメされた周辺経路とを表すデータと前記角度とに基づき、前記デフォルメされた主経路上のノードで互いに連結する前記デフォルメされた主経路上のアークと前記デフォルメされた周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を調整するステップ;
を有する、請求項13記載のデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項15】
請求項8に記載される各ステップをCPUに実行させるための、デフォルメ地図の自動生成プログラム。
【請求項16】
目的地点を表すデータ、を設定する目的地点データ設定部;
前記目的地点へ向かう経路の起点を表すデータ、を設定する起点データ設定部;
前記目的地点と前記起点とを含む所定範囲の地図をノードとアークとの集合として表すデータ、を設定する地図データ設定部;及び、
前記目的地点、前記起点、及び前記地図を表すデータに基づき、前記起点から前記目的地点までの経路を表すノードとアークとの集合を所定の条件に従って決定する経路データ算出部;
を有する経路探索装置;
前記経路探索装置により決定されたノードとアークとの集合を前記主経路を表すデータとし、デフォルメされた主経路を表すデータを計算する、請求項1記載のデフォルメ地図自動生成装置;並びに、
前記デフォルメされた主経路を表すデータに基づき、前記デフォルメされた主経路を画像として表示する表示装置;
を具備するナビゲーション機器。
【請求項17】
前記ナビゲーション機器が、外部のサーバと通信するインタフェース、を更に具備し、
前記地図データ設定部が、前記目的地点と前記起点とを表すデータを前記インタフェースを通して前記サーバに送信し、前記地図を表すデータを前記サーバから受信する、
請求項16記載のナビゲーション機器。
【請求項18】
外部のサーバと通信するインタフェース;
目的地点を表すデータ、を設定し、前記インタフェースを通して前記サーバへ送信する目的地点データ設定部;
前記目的地点へ向かう経路の起点を表すデータ、を設定し、前記インタフェースを通して前記サーバへ送信する起点データ設定部;
前記起点から前記目的地点までの経路を表すノードとアークとの集合、を前記インタフェースを通して前記サーバから受信し、その集合を前記主経路を表すデータとし、デフォルメされた主経路を表すデータを計算する、請求項1記載のデフォルメ地図自動生成装置;並びに、
前記デフォルメされた主経路を表すデータに基づき、前記デフォルメされた主経路を画像として表示する表示装置;
を有するナビゲーション機器。
【請求項19】
外部の端末と通信するインタフェース;
前記端末から前記インタフェースを通して受信されるデータに基づき、目的地点を表すデータ、を設定する目的地点データ設定部;
前記端末から前記インタフェースを通して受信されるデータに基づき、前記目的地点へ向かう経路の起点を表すデータ、を設定する起点データ設定部;
前記目的地点と前記起点とを含む所定範囲の地図をノードとアークとの集合として表すデータ、を設定する地図データ設定部;及び、
前記目的地点、前記起点、及び前記地図を表すデータに基づき、前記起点から前記目的地点までの経路を表すノードとアークとの集合を所定の条件に従って決定する経路データ算出部;
を有する経路探索装置;並びに、
前記経路探索装置により決定されたノードとアークとの集合を前記主経路を表すデータとし、デフォルメされた主経路を表すデータを計算し、そのデータを前記インタフェースを通して前記端末へ送信する、請求項1記載のデフォルメ地図自動生成装置;
を具備するナビゲーションサーバ。
【請求項1】
所定の地点から目的地点までの主経路をノードとアークとの集合として表すデータ、を記憶する主経路データ記憶部;
所定の単純図形を表すデータであるテンプレート、を記憶するテンプレート記憶部;
前記主経路を表すデータに基づき前記主経路を経路区分に階層的に分割し、前記テンプレートと前記経路区分を表すデータとに基づき前記経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表す前記テンプレートをその経路区分の適合テンプレートとして記憶する適合テンプレート選択部;及び、
前記経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき、その経路区分よりその適合図形に形状が近似する変形経路区分、を表すデータを計算し、前記変形経路区分の全てを表すデータ全体を、前記デフォルメされた主経路を表すデータとして記憶するデフォルメデータ算出部;
を有するデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項2】
前記主経路を表すデータと前記テンプレートとに基づき前記経路区分と前記単純図形との間の類似度を数値化する類似度評価部;
前記経路区分のそれぞれについて、数値化された前記類似度の中で最も高いものが所定の閾値以上であるとき、その最高の類似度を示す前記単純図形をその経路区分の前記適合図形として決定する適合図形決定部;及び、
前記経路区分のうち前記適合図形を持たないものをそれぞれ、所定の割合で二つ以上の経路区分に分割する経路分割部;
を前記適合テンプレート選択部が有する、
請求項1記載のデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項3】
前記経路区分の全てが前記適合図形を持つとき、前記類似度評価部が隣接する二つの前記経路区分を一つの経路区分とみなして前記類似度を数値化し、
前記適合図形決定部が前記一つの経路区分について前記適合図形の決定に成功したとき、その一つの経路区分を表すデータで前記隣接する二つの経路区分を表すデータを置換する、
請求項2記載のデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項4】
前記デフォルメデータ算出部が、
前記経路区分上のノードをその経路区分の適合図形上の一点に対応づけ、
前記ノードと前記一点とを所定の比率で内分する点を前記変形経路区分上のノードとして設定し、
前記経路区分上の二つのノードがアークで接続されるとき、前記変形経路区分上の対応する二つのノードを接続するアークを設定する、
請求項1記載のデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項5】
前記主経路に連結する周辺経路をノードとアークとの集合として表すデータを記憶する周辺経路データ記憶部;及び、
前記周辺経路を表すデータに基づき、前記周辺経路に含まれるアークを移動させ、そのアークを伸縮させ、それによりそのアークを前記デフォルメされた主経路又は既に移動済みの前記周辺経路に含まれる他のノードに接続する周辺経路データ修正部;
を有する、請求項1記載のデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項6】
前記適合テンプレート選択部が、前記周辺経路を表すデータに基づき前記周辺経路を経路区分に階層的に分割し、前記テンプレートと前記経路区分を表すデータとに基づき前記経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表す前記テンプレートをその経路区分の適合テンプレートとして記憶し、
前記デフォルメデータ算出部が前記周辺経路に含まれる経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき前記変形経路区分を表すデータを計算し、前記変形経路区分の全てを表すデータ全体を、前記デフォルメされた周辺経路を表すデータとして記憶する、
請求項5記載のデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項7】
前記周辺経路データ記憶部が前記主経路と前記周辺経路とを表すデータに基づき、前記主経路上のノードで互いに連結する前記主経路上のアークと前記周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を計算して記憶し、
前記デフォルメデータ算出部が前記デフォルメされた主経路と前記デフォルメされた周辺経路とを表すデータと前記角度とに基づき、前記デフォルメされた主経路上のノードで互いに連結する前記デフォルメされた主経路上のアークと前記デフォルメされた周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を調整する、
請求項6記載のデフォルメ地図の自動生成装置。
【請求項8】
(A) 所定の地点から目的地点までの主経路をノードとアークとの集合として表すデータを取得し、メモリに記憶するステップ;
(B) 前記主経路を表すデータに基づき前記主経路を経路区分に階層的に分割し、所定の単純図形を表すデータであるテンプレートと前記経路区分を表すデータとに基づき、前記経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表す前記テンプレートをその経路区分の適合テンプレートとしてメモリに記憶するステップ;及び、
(C) 前記経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき、その経路区分よりその適合図形に形状が近似する変形経路区分、を表すデータを計算し、前記変形経路区分の全てを表すデータ全体を、前記デフォルメされた主経路を表すデータとしてメモリに記憶するステップ;
を有するデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項9】
前記主経路を表すデータと前記テンプレートとに基づき、前記経路区分と前記単純図形との間の類似度を数値化するサブステップ;
前記経路区分のそれぞれについて、数値化された前記類似度の中で最も高いものが所定の閾値以上であるとき、その最高の類似度を示す前記単純図形をその経路区分の前記適合図形として決定するサブステップ;及び、
前記経路区分のうち前記適合図形を持たないものをそれぞれ、所定の割合で二つ以上の経路区分に分割するサブステップ;
を前記ステップ(B)が有する、請求項8記載のデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項10】
前記経路区分の全てが前記適合図形を持つとき、隣接する二つの前記経路区分を一つの経路区分とみなして前記類似度を数値化するサブステップ;及び、
前記一つの経路区分について前記適合図形の決定に成功したとき、その一つの経路区分を表すデータで前記隣接する二つの経路区分を表すデータを置換するサブステップ;
を前記ステップ(B)が更に有する、請求項9記載のデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項11】
前記経路区分上のノードをその経路区分の適合図形上の一点に対応づけるサブステップ;
前記ノードと前記一点とを所定の比率で内分する点を前記変形経路区分上のノードとして設定するサブステップ;及び、
前記経路区分上の二つのノードがアークで接続されるとき、前記変形経路区分上の対応する二つのノードを接続するアークを設定するサブステップ;
を前記ステップ(C)が含む、請求項8記載のデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項12】
前記主経路に連結する周辺経路をノードとアークとの集合として表すデータを取得し、メモリに記憶するステップ;及び、
前記周辺経路を表すデータに基づき、前記周辺経路に含まれるアークを移動させ、そのアークを伸縮させ、それによりそのアークを前記デフォルメされた主経路又は既に移動済みの前記周辺経路に含まれる他のノードに接続するステップ;
を有する、請求項8記載のデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項13】
前記周辺経路を表すデータに基づき前記周辺経路を経路区分に階層的に分割し、前記テンプレートと前記経路区分を表すデータとに基づき前記経路区分のそれぞれの形状と最も近似する単純図形をその経路区分の適合図形として決定し、その適合図形を表す前記テンプレートをその経路区分の適合テンプレートとしてメモリに記憶するステップ;及び、
前記経路区分のそれぞれについて、その適合テンプレートとその経路区分を表すデータとに基づき前記変形経路区分を表すデータを計算し、前記変形経路区分の全てを表すデータ全体を、前記デフォルメされた周辺経路を表すデータとしてメモリに記憶するステップ;
を有する、請求項12記載のデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項14】
前記主経路と前記周辺経路とを表すデータに基づき、前記主経路上のノードで互いに連結する前記主経路上のアークと前記周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を計算し、メモリに記憶するステップ;及び、
前記デフォルメされた主経路と前記デフォルメされた周辺経路とを表すデータと前記角度とに基づき、前記デフォルメされた主経路上のノードで互いに連結する前記デフォルメされた主経路上のアークと前記デフォルメされた周辺経路上のアークとについて、両者の成す角度を調整するステップ;
を有する、請求項13記載のデフォルメ地図の自動生成方法。
【請求項15】
請求項8に記載される各ステップをCPUに実行させるための、デフォルメ地図の自動生成プログラム。
【請求項16】
目的地点を表すデータ、を設定する目的地点データ設定部;
前記目的地点へ向かう経路の起点を表すデータ、を設定する起点データ設定部;
前記目的地点と前記起点とを含む所定範囲の地図をノードとアークとの集合として表すデータ、を設定する地図データ設定部;及び、
前記目的地点、前記起点、及び前記地図を表すデータに基づき、前記起点から前記目的地点までの経路を表すノードとアークとの集合を所定の条件に従って決定する経路データ算出部;
を有する経路探索装置;
前記経路探索装置により決定されたノードとアークとの集合を前記主経路を表すデータとし、デフォルメされた主経路を表すデータを計算する、請求項1記載のデフォルメ地図自動生成装置;並びに、
前記デフォルメされた主経路を表すデータに基づき、前記デフォルメされた主経路を画像として表示する表示装置;
を具備するナビゲーション機器。
【請求項17】
前記ナビゲーション機器が、外部のサーバと通信するインタフェース、を更に具備し、
前記地図データ設定部が、前記目的地点と前記起点とを表すデータを前記インタフェースを通して前記サーバに送信し、前記地図を表すデータを前記サーバから受信する、
請求項16記載のナビゲーション機器。
【請求項18】
外部のサーバと通信するインタフェース;
目的地点を表すデータ、を設定し、前記インタフェースを通して前記サーバへ送信する目的地点データ設定部;
前記目的地点へ向かう経路の起点を表すデータ、を設定し、前記インタフェースを通して前記サーバへ送信する起点データ設定部;
前記起点から前記目的地点までの経路を表すノードとアークとの集合、を前記インタフェースを通して前記サーバから受信し、その集合を前記主経路を表すデータとし、デフォルメされた主経路を表すデータを計算する、請求項1記載のデフォルメ地図自動生成装置;並びに、
前記デフォルメされた主経路を表すデータに基づき、前記デフォルメされた主経路を画像として表示する表示装置;
を有するナビゲーション機器。
【請求項19】
外部の端末と通信するインタフェース;
前記端末から前記インタフェースを通して受信されるデータに基づき、目的地点を表すデータ、を設定する目的地点データ設定部;
前記端末から前記インタフェースを通して受信されるデータに基づき、前記目的地点へ向かう経路の起点を表すデータ、を設定する起点データ設定部;
前記目的地点と前記起点とを含む所定範囲の地図をノードとアークとの集合として表すデータ、を設定する地図データ設定部;及び、
前記目的地点、前記起点、及び前記地図を表すデータに基づき、前記起点から前記目的地点までの経路を表すノードとアークとの集合を所定の条件に従って決定する経路データ算出部;
を有する経路探索装置;並びに、
前記経路探索装置により決定されたノードとアークとの集合を前記主経路を表すデータとし、デフォルメされた主経路を表すデータを計算し、そのデータを前記インタフェースを通して前記端末へ送信する、請求項1記載のデフォルメ地図自動生成装置;
を具備するナビゲーションサーバ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2006−171584(P2006−171584A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366878(P2004−366878)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(300042144)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ関西 (7)
【出願人】(500304590)株式会社キュービック (5)
【出願人】(500134056)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(300042144)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ関西 (7)
【出願人】(500304590)株式会社キュービック (5)
【出願人】(500134056)
【Fターム(参考)】
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