説明

デュアルX線管ゲーティング

コンピュータ断層撮影の再構成方法は、少なくとも2つのx線源14から同時に放射線を放射する段階、少なくとも2つのx線源14の各々の出力状態を、複数のそれぞれのクロス散乱サンプリング期間50、52、54、56内で切り替え、対応する1つの組の検出器24を用いて、少なくとも2つのx線源14のうちのその他によって放射されたクロス散乱放射線を検出する段階であり、複数のクロス散乱サンプリング期間は、少なくとも2つのx線源14が少なくとも1つのフレームの全体にわたって同時に放射線を放射することを可能にするよう、複数のフレームにまたがって角度的に隔てて配置される段階、各組の検出器24の散乱補正データを、対応するクロス散乱サンプルから取得する段階、投影データを、対応する散乱補正データを用いて散乱補正する段階、及び散乱補正された投影データを再構成し、少なくとも1つの画像を生成する段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医用撮像システムに関する。本発明は特に、コンピュータ断層撮影(CT)、より具体的には、マルチチューブ撮像システムの散乱補正技術に適用される。
【背景技術】
【0002】
従来のマルチチューブCT撮像システムにおけるX線管(チューブ)は、双方のチューブが同時に共通の撮像領域に放射線を放出するように、同時駆動されることが可能である。このように複数のチューブを同時駆動するとき、撮像システムは、単一チューブシステムに対して高い時間分解能と速いデータ収集とを提供することができる。例えば、回転方向に互いに90°だけ角度的にずらされた2つのチューブを有するシステムは、単一チューブシステムと同じデータを、ほぼ半分の時間で収集することができる。他の一例においては、このようなシステムを心臓CTに使用すると、180°のガントリー角の一部でのデータ収集により、180°再構成法に十分なデータが検出される。しかしながら、複数のチューブが同時に放射線を放射するため、各検出器は主(プライマリ)放射線とクロス散乱放射線とを検出する。クロス散乱放射線は、信号対雑音比を大きく低下させ得るとともに、再構成画像内にアーチファクトを生じさせ得るものであり、従来の散乱防止グリッドはクロス散乱放射線を好ましく低減することができない。
【0003】
クロス散乱を抑制する1つの手法は、如何なる所与の時点においても1つのチューブのみが放射線を放射するよう、複数のチューブを代わる代わる駆動することである。しかしながら、こうすることは、非効率的なチューブの使用(例えば、デュアルチューブシステムでは約50%)、低下した時間分解能、及び検出される光子の数の減少(例えば、デュアルチューブシステムではほぼ半減)をもたらす。光子の減少を解決するためには、チューブのパワーは従来の大電力チューブの技術的限界を超えるまで増大されなければならなくなり得る。他の1つの手法は、データを散乱補正することを含む。例えば、各ビューすなわち各フレームの間、少なくとも1つのチューブを“オフ”にすることができる。そして、非動作状態にされたチューブと対を為す検出器を用いて、クロス散乱データを検出することができる。そして、クロス散乱データを用いて、該検出器で検出された投影データを散乱補正することが可能である。このようなシステムは特許文献1に記載されているが、そのシステムを用いると、各ビュー内の或る期間中、少なくとも1つのチューブは放射線を放射していないため、やはり、チューブ効率及び統計量が悪化されてしまう。
【特許文献1】米国特許第6876719号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願に係る以下の態様は、上述の問題及びその他の問題を解決する改善されたクロス散乱補正技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様に従って、コンピュータ断層撮影の再構成方法は、撮像領域の周りを回転する少なくとも2つのx線源から同時に撮像領域に放射線を放射し、対応する組の検出器を用いて、前記少なくとも2つのx線源のうちの対応する1つによって放射された主放射線と、前記少なくとも2つのx線源のうちのその他によって放射されたクロス散乱放射線とを含む投影データを検出する段階を有する。当該方法は更に、前記少なくとも2つのx線源の各々の出力状態を、複数のそれぞれのクロス散乱サンプリング期間内で切り替え、対応する1つの組の検出器を用いて、前記少なくとも2つのx線源のうちのその他によって放射されたクロス散乱放射線を検出する段階を含む。複数のクロス散乱サンプリング期間は、前記少なくとも2つのx線源が少なくとも1つのフレームの全体にわたって同時に放射線を放射することを可能にするよう、複数のフレームにまたがって角度的に隔てて配置される。当該方法は更に、各組の検出器の散乱補正データを、対応するクロス散乱サンプルから取得する段階、投影データを、対応する散乱補正データを用いて散乱補正する段階、及び散乱補正された投影データを再構成し、少なくとも1つの画像を生成する段階を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、様々な構成要素及びそれらの配置、並びに様々な段階及びそれらの編成の形態を取り得る。図面は、好適実施形態を例示するためだけのものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0007】
図1を参照するに、医用撮像システム10が例示されている。医用撮像システム10は、被検体を照射する複数のx線源と投影データを検出する複数の検出器とを含んでいる。x線源が同時に放射線を放射しているとき、投影データは主放射線及びクロス散乱放射線の双方を含んでいる。その後、投影データはクロス散乱放射線の寄与分を除去するように処理され、散乱補正されたデータは1つ以上の画像を形成するように再構成される。一例において、クロス散乱の寄与分は、散乱補正信号を用いて投影データから除去される。この散乱補正信号は、x線源がデータ収集サイクル全体を通して回転するときにデータが収集される複数のフレームにまたがって周期的に、1つ以上の検出器を用いてクロス散乱放射線のみ(主放射線なし)をサンプリングし、これらサンプルから散乱補正信号を生成することによって作り出すことが可能である。複数のクロス散乱サンプル間の角度的なサンプリング(又はフレーム)増分は、クロス散乱放射線の角周波数、所望の信号対雑音比、例えば心臓モニタ装置などからのゲーティング信号、及び/又はその他の技術に基づいて決定することができる。各フレームに関する散乱補正信号を得るため、検出されたサンプル群から更なるクロス散乱サンプルを生成するよう、補間又はこれに類するものを使用し得る。
【0008】
医用撮像システム10はスキャナ12を含んでおり、スキャナ12は、Nを1より大きい整数として、N個のx線源14、14(ここでは集合的にx線源14と呼ぶ)を有している。複数のx線源14は、長手方向軸すなわちz軸18に直交するアクシャル面すなわち横断面16内で互いに対して角度的にオフセット(例えば、60°、90°、120°等)された位置に配置されている。一例において、x線源14は回転式ガントリー20の周りに配置される。ガントリー20を撮像領域22の周りで回転させることにより、x線源14は撮像領域の周りを回転する。他の一例においては、x線源14は、例えば電子ビームを電子的に屈折させる技術などのその他の技術によって撮像領域22の周りを回転させられる。スキャン中、複数のx線源14は、同時に撮像領域22に放射線を放射するよう、データ収集サイクルの少なくとも一部の全体にわたって同時駆動され得る。
【0009】
スキャナ12は更に、N組の検出器24、24(ここでは集合的に検出器24と呼ぶ)を含んでいる。検出器24の各組は、複数のx線源14のうちの1つに対向する或る角度の円弧内にあり、該x線源との間で撮像領域22を画成している。一例において、検出器24の各組内の各検出器は、複数のx線源14のうちの特定の1つに対応し、それとともに回転する(例えば、第3世代システム)。他の一例においては、検出器24の各組内の検出器群は、如何なる瞬間においても、x線源14の角度位置によって決定される角度位置にある(例えば、第4世代システム)。検出器24の各組内の各検出器は、アクティブに放射しているx線源14からの放射線を検出する。撮像領域22内の例えばヒトである被検体は支持体26によって支持される。支持体26は、ヘリカルスキャン、アクシャルスキャン及び/又はその他のスキャンを実行する前、最中及び/又は後に、例えば支持体26をz軸18及び/又は1つ以上のその他の軸に沿って移動させることによって、被検体を検査領域22内の好適位置に導くよう、移動可能にされてもよい。
【0010】
x線源14の各々は制御部28によって制御される。一例において、この制御は、複数のx線源14のうちの1つ以上を同時に“オン”あるいは“オフ”することを含む。全てのx線源14が同時に“オン”にされるとき、全てのx線源14が同時に撮像領域22に放射線を放射するよう、x線源14の各々は同時に放射線を放射する。結果として、各検出器は、複数のx線源14のうちの対応する1つからの主放射線と、その他のx線源14からのクロス散乱放射線とを検出し、検出された主放射線及びクロス散乱放射線を表す信号(投影データ)を生成する。各検出器にて更にクロス散乱放射線のみ(主放射線なし)を検出することにより、各検出器に関する散乱補正信号を生成し、それを1つ以上のフレームにわたる投影データを散乱補正するために使用することにより、投影データからクロス散乱の寄与分を実質的に除去することができる。
【0011】
一例において、一組の検出器24内の1つ以上の検出器を用いてクロス散乱放射線を検出する。これは、該一組の検出器24に主放射線を放射しているx線源14を一時的に“オフ”し、それにより、その他のx線源14によって放射された放射線のみが該一組の検出器24によって検出されるようにすることによって行われる。このクロス散乱放射線の検出は、検出器24の各組内の1つ以上の検出器に関するクロス散乱データを取得するため、1つ以上のその他のx線源14に対しても行い得る。この技術をデュアルx線源構成で用いると、放射線を放射しているx線源14に対応する検出器24によって主放射線のみを検出し、他方の検出器24によってクロス散乱放射線を検出することが可能である。他の一手法においては、複数のx線源14のうち1つを除く全てを“オフ”にすることによってクロス散乱放射線を検出し、その他のx線源14と対を為す検出器24を用いて上記1つのx線源14からのクロス散乱放射線の寄与を検出することが可能である。放射線を放射しているx線源14に対応する検出器24は同時に主放射線を検出し得る。放射線を放射するx線源14を交代させることにより、各x線源14からのクロス散乱の寄与を各検出器によって検出することができ、主放射線が各検出器24によって検出され得る。得られた主放射線のみの信号は(詳細に後述するように)、例えば、散乱補正されたデータをクリーンな、散乱なしの主信号と比較し、好適な散乱補正が行われたかを決定することによって、散乱補正技術の精度を高めるために使用され得る。さらに、主信号は、主の寄与分及びクロス散乱の寄与分の双方を有する信号から主信号を減算することによってクロス散乱寄与分を取得するために使用され得る。
【0012】
典型的に、クロス散乱放射線は、角度位置にわたってゆっくりと、主放射線に対して変化する。その結果、1つ以上のフレームの全体を通して複数のx線源14が同時に放射線を放射するよう、クロス散乱のサンプリングは、各データ収集サイクル内の複数のフレームにまたがって、均一あるいは不均一に角度的に隔てて配置され得る。サンプリングされた複数のフレーム間のデータ点を生成するため、補間又はそれに類するもの等の技術が使用することができる。データ収集中にクロス散乱放射線を検出する角周波数を決定するため、様々な技術を使用し得る。
【0013】
一例において、クロス散乱をサンプリングする頻度を決定するため、分析部30が使用される。例えば、(ファントム測定を行うことにより、)x線源14は、検出器の組24の1つ以上によってクロス散乱放射線のみが検出されるように駆動され得る。得られたクロス散乱情報は分析部30に提供される。分析部30は、角度位置に対するクロス散乱放射線の変化率を測定し得る。散乱補正信号を生成するのに十分なサンプルが捕捉されるよう、この率に基づいてクロス散乱サンプリングが設定され得る。他の一例においては、この率は分析部30に提供される。
【0014】
角度方向のクロス散乱サンプリング間隔は、複数のx線源が各データ収集サイクル内のフレーム群の比較的大きい割合の間に同時に放射線を放射し、x線源14が同時に放射線を放射しない時間量を最小化するよう、x線源14をより効率的に使用するために調整され得る。結果として、統計量が改善され、ノイズが低減され得る。クロス散乱の変化率と得られた統計との組み合わせを用いることにより、散乱補正性能、統計量、及びx線源の効率的な使用の間で所望のバランスを達成するよう、システムが最適化され得る。
【0015】
非限定的な例として、クロス散乱の角度方向のサンプリングが、クロス散乱放射線の角周波数及び/又は所望の統計量の関数として決定されると仮定する。また、これによりクロス散乱が9°の角度ごとに検出されると仮定する。サンプリング間にて、複数のx線源14は同時に放射線を放射する。これにより、90°の間に、複数のx線源14のうちの少なくとも1つが放射線を放射しないクロス散乱測定が10回もたらされる。データ収集サイクルにおいて90°の間に250個のフレーム(すなわちビュー)を仮定すると、複数のx線源14は、ほぼ96%の時間、同時に放射線を放射することになる。この角度方向のクロス散乱サンプリング間隔は、散乱補正及び/又は統計量の結果に応じて増大あるいは縮小され得る。複数のx線源14が同時に放射線を放射する時間の相対的な割合を、好適なクロス散乱信号を得るのに十分な情報を取得することとバランスさせることにより、検出される光子の数を、統計量を改善するように増大させることができるとともに、データを再構成に好ましく散乱補正することができる。
【0016】
他の一例において、或る構成要素により、クロス散乱を測定する時を指し示すトリガー信号が提供される。例えば、予測的(プロスペクティブ)ゲーティングによる心臓CTへの適用では、各検出器のクロス散乱サンプリング間隔を決定するために、心臓の電気的活動又は運動状態を測定する装置32(例えば、ECG/EKG)が使用され得る。例えば、被検体をスキャンしながら心臓の電気的活動を監視することにより、投影データが検出される心臓位相群の間にクロス散乱放射線が検出されるよう、x線源14をゲーティングすることが可能となる。位相群の間のこれらの最中には投影データは検出されないので、投影データの統計量に影響を及ぼすことなく、散乱補正信号を生成するのに十分なサンプリングが得られるよう、角度方向のサンプリングを増加あるいは減少させ得る。サンプリングレートは患者線量(ドーズ)に基づいてもよい。チューブのパワーが同一のままであると仮定すると、サンプリングレートが高いほど患者線量が高くなるためである。必要に応じて、クロス散乱放射線はここで開示する技術によって上記心臓位相中に検出されてもよい。これらのサンプルは、心臓位相群の間に収集されたサンプルとともに、散乱補正信号を得るために使用され得る。上述のように、必要に応じて検出されたサンプルからサンプルを生成するため、補間又はその他の技術を使用し得る。
【0017】
分析部30はまた、クロス散乱補正の結果を監視し、各データ収集サイクル中にクロス散乱サンプリングを増加あるいは減少させるよう、角度方向のサンプリングを変化させることができる。上述のように、複数のx線源14のうちの1つ以上を様々に“オフ”することにより、放射線を放射しているx線源14に対応する検出器24によって主放射線(クロス散乱放射線なし)を検出するとともに、このx線源14からのクロス散乱放射線をその他の検出器24によって検出することが可能である。得られた主放射線信号は散乱補正信号とともに補正検証部34に提供される。補正検証部34は、クロス散乱補正されたデータ点群を対応する主信号のデータ点群と比較する。一例において、この差が所望範囲内になく、且つこの差がクロス散乱サンプリングの関数であると決定された場合、分析部30は、各データ収集サイクルの角度方向のサンプリングを増加させることができる。この増加は、実際のクロス散乱の寄与分をよりよく表す信号、ひいては、より良好な散乱補正をもたらし得る。他の一例においては、この差が所望範囲内にある限りにおいて、分析部30は、好適な散乱補正を維持しながら、より多くの光子を検出し、統計量を改善するようにサンプリングを変化させ得る。クロス散乱サンプリングの増加又は減少は、初期推定を行い、所望の目標に収束するように反復ごとに該推定を調整する反復法によって、あるいは機械学習などによって支援される決定に自動的に基づいて、決定されることが可能である。このような決定及び調整は、被検体をスキャンする前及び/又は最中に行われ得る。
【0018】
他の一実施形態において、人体の相異なる器官又は領域に対応し、且つ/或いは意図される収集プロトコルに適合するファントム上で、一連の散乱測定が実行される。一例において、スキャナ内にそれぞれのファントムを導入し、各スキャン手順に対しn回の散乱測定スキャン(n個の検出器の各々に対して1回)を行うことにより、スキャン手順ごとに各検出器に関してクロス散乱関数が測定され得る。他の一例においては、モンテカルロ法又はその他の方法を用いて、それぞれのスキャナ配置及びファントムの包括的な散乱シミュレーションを行うことにより、スキャン手順ごとに各検出器に関してクロス散乱関数が測定され得る。そして、これらのクロス散乱関数に基づいて、手順ごとの最適サンプリングが決定され得る。この情報は制御部28によって使用されることができ、制御部28は、選択された手順に関する最適補正サンプリングを選択し得る。認識されるように、これにより、手順ごとに散乱サンプリングの好適な最適化を得るための、各手順に関するおおよその散乱関数が提供され得る。
【0019】
上述のように、制御部28は、各検出器が、複数のx線源14が放射線を放射しているとき(例えば、各データ収集サイクルの比較的大きい割合に及ぶ)、主放射線及びクロス散乱放射線を同時に検出し、複数のx線源14のうちの対応する1つのみが放射線を放射しているとき、主放射線のみを検出し、且つ対応するx線源14が放射線を放射していないとき、クロス散乱放射線のみを検出するよう、x線源14を制御する。結果として、投影データは、主放射線の寄与分を有しないデータ点を含むことになる。これらの信号は、補間部36に提供されることができ、補間部36は、主の寄与及びクロス散乱の寄与の双方を含むデータ点を生成するよう、データを補間する。クロス散乱放射線のみを表す信号は、上述の角度方向のサンプリングに基づいて角度方向に隔てられたクロス散乱サンプル群を含む。従って、クロス散乱サンプルは全てのフレームで取得されるわけではない。これらの信号もまた補間部36に提供されることができ、補間部36は、所望数のビューすなわちフレームに対応するサンプル群を有する散乱信号を作り出すよう、検出されたサンプルを補間してサンプルを生成する。好適な補間技術は、線形補間、多項式補間、スプライン補間などを含む。
【0020】
補間された信号は補正部38に提供される。補正部38は、散乱補正信号を用いて、主の寄与及びクロス散乱の寄与を有する信号を散乱補正する。一例において、主信号及びクロス信号の双方の寄与を有する信号から散乱補正信号を減算し、それによりクロス散乱を実質的に除去して主放射線信号を提供するよう、減算アルゴリズム40が用いられる。純粋な主放射線のデータサンプルも存在する場合、これらのデータサンプルは、散乱補正の品質の向上及び/又は調査のために使用され得る。認識されるように、得られた散乱補正信号は、スライス数に関係なく、投影データを補正するために使用され得る。故に、一例において、クロス散乱放射線はスライス数に対応するが、散乱補正はスライス数が増加しても損なわれない。散乱補正された信号は再構成システム42に提供される。再構成システム42は主信号を再構成し、スキャンされた被検体領域を表すボリュームデータを生成する。再構成システム42によって生成されたボリューム画像データは画像プロセッサ44によって処理される。そして、生成された画像は、表示され、フィルム化され、アーカイブされ、処置中の臨床医に伝送され(例えば、電子メール化される等)、その他の撮像モダリティからの画像と融合され、更に処理され(例えば、測定ユーティリティ、可視化ユーティリティ、及び/又は専用可視化システムによって)、記憶され、等々されることが可能である。
【0021】
計算システム(又はコンソール)46は、操作者とスキャナ12との相互作用、及び/又はスキャナ12の制御を円滑化する。計算システム46によって実行されるソフトウェアアプリケーションは、操作者がスキャナ12の動作の設定及び/又は制御を行うことを可能にする。例えば、操作者は計算システム46とやり取りして、収集スキームやスキャンプロトコルを選択すること、スキャンの開始、一時停止及び終了を行うこと、画像を閲覧すること、ボリューム画像データを操作すること、データの様々な特徴(例えば、CT値、ノイズ等)を測定すること等々を行うことができる。好適な収集スキームの例は、以下に限られないが、データが180°に扇角を足し合わせた角度範囲で検出される180°アクシャルデータ収集、ヘリカルスキャン、及び複数サイクルゲーティングによるアクシャルスキャンを含む。計算システム46は、以下に限られないが例えばx線管の電圧や電流、クロス散乱の角度サンプリング、補間アルゴリズム等の命令及び/又はパラメータを含む様々な情報を、制御部28に信号伝達する。制御部28はこれらの情報を用いてスキャナ12を制御する。
【0022】
図2は、撮像システム10に関し、クロス散乱放射線を周期的にサンプリングするための典型的なx線源駆動パターンを、ガントリーの回転角及びフレーム番号の関数として例示している。図の簡潔さ及び明瞭さのため、2つのパターンのみを示している。駆動パターン48はx線源14を活性化し、放射線を放射させる。放射された放射線は対応する検出器24によって検出される。同時に、駆動パターン48はx線源14を活性化し、放射線を放射させる。放射された放射線は対応する検出器24によって検出される。双方のx線源14は同時に放射線を放射しているので、各検出器24は他方のx線源14によって放射された放射線(クロス散乱放射線)をも検出する。結果として、双方の検出器24及び24は、x線源14及び14が同時に放射線を放射している限りにおいて、主放射線及びクロス散乱放射線を検出する。
【0023】
クロス散乱サンプリング期間50において、駆動パターン48は、x線源14がもはや放射線を放射しない(あるいは、ごく僅かな量の放射線のみを放射する)ようにx線源14を非活性化する。この期間中、検出器の組24はx線源14に関連するクロス散乱放射線を検出し、検出器24はx線源14によって放射された主放射線を検出する。クロス散乱サンプリング期間50の経過後、x線源14は再び放射線を放射し始める。クロス散乱期間52において、駆動パターン48はx線源14を非活性化する。クロス散乱期間52においてx線源14は放射線を放射していないので、検出器24はx線源14に関連するクロス散乱放射線を検出し、検出器24はx線源14に関連する主放射線を検出する。クロス散乱期間52の経過後、x線源14は再び放射線を放射し始める。クロス散乱期間50、52は、図示のように連続していてもよいし、角度間隔すなわちフレーム間隔によって隔てられていてもよい。より多くのクロスサンプリングデータ点を取得するため、期間54、56を含む更なるクロス散乱期間が実行され得る。
【0024】
上述のように、クロス散乱サンプリング周波数は、ガントリー角に対するクロス散乱放射線の変化率、x線源14の効率的な利用、及び/又は統計量に基づいて設定され得る。加えて、あるいは代替的に、角度方向のサンプリングは、ECG信号又はその他の信号によってトリガーされてもよい。この例においては、各x線源14に関するクロス散乱サンプリングは、約9°の角度又は約20フレームである。認識されるように、クロス散乱サンプリング期間は、データ収集サイクル全体にわたって均一に隔てられてもよいし、不均一に隔てられてもよい。
【0025】
認識されるように、焦点が異なるz位置に配置された少なくとも2つのx線源を備え、且つ各x線源に対して少なくとも1つの検出器を備えるシステムの場合、スキャン中に散乱の測定値を大雑把にサンプリングすること、又は心臓スキャン中の関心のない心臓位相を散乱測定に用いることによってクロス散乱が測定されてもよい。
【0026】
図3は、医用撮像システムを用いて被検体をスキャンする非限定的な一手法を示している。段階58にて、複数のx線源14のうちの2つ以上がともに、同時に撮像領域22に放射線を放射するよう活性化される。段階60にて、クロス散乱放射線が、複数組の検出器24のうちの少なくとも1つによって検出される。上述のように、これは、複数のx線源14のうちの1つを選択的にオフし、それにより、該x線源に対応する検出器の組24が、その他のx線源によって放射されたクロス散乱放射線を検出するようにすることにより達成され得る。これは、検出器ごとにクロス散乱サンプルを取得するため、各組の検出器24に対して繰り返され得る。
【0027】
これらサンプルを取得する周波数は、例えば上述したような様々な手法によって決定され得る。例えば、一手法において、角度方向のサンプリング周波数は、クロス散乱放射線が角度変化する周波数に基づいて設定され得る。加えて、あるいは代替的に、角度方向のサンプリング周波数は、データ収集時間の比較的大きい割合にわたって複数のx線源14が同時に放射線を放射するよう、複数のx線源14を効率的に駆動するように設定される。加えて、あるいは代替的に、角度方向のサンプリング周波数は、統計を改善するように設定されてもよい。加えて、あるいは代替的に、角度方向のサンプリングは信号(例えば、ECG信号)によってトリガーされてもよい。
【0028】
段階62にて、対応するデータが収集されなかったビューのデータ点を生成するよう、投影データ、及びクロス散乱放射線のみを表すデータが補間される。例えば、補間部36が、検出されたサンプルを補間し、クロス散乱が検出されなかった期間中のデータ点を生成する。段階64にて、補間された信号が補正部38に提供され、補正部38が、散乱補正信号を用いて、主の寄与及びクロス散乱の寄与を有する信号を散乱補正する。例えば減算などの様々な散乱補正技術が使用され得る。段階66にて、散乱補正された信号が再構成システム42によって再構成され、スキャンされた被検体領域を表すボリュームデータが生成される。ボリューム画像は、表示され、フィルム化され、アーカイブされ、伝送され、その他の撮像モダリティからの画像と融合され、更に処理され、記憶され、等々され得る。
【0029】
ここで説明したシステム及び/又は方法やそれらの派生形は、以下に限られないが例えば心臓CTや高時間分解能スキャン等の用途、及び複数のx線源を用いるその他の用途に関連して使用され得る。
【0030】
好適な実施形態を参照しながら本発明を説明してきた。以上の詳細な説明を読み、理解した者は改良及び改変に想到し得る。本発明は、添付の特許請求の範囲又はその均等範囲に入る限りにおいて、そのような全ての改良及び改変を含むとして解釈されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】データ収集フレーム群にてクロス散乱放射線を周期的にサンプリングし、これらクロス散乱サンプル群から、投影データを散乱補正するための散乱補正信号を取得する、マルチソース医用撮像システムを例示する図である。
【図2】クロス散乱放射線を周期的にサンプリングするための典型的なx線源駆動パターンを例示する図である。
【図3】複数のx線源を同時に用いて被検体を同時照射する医用撮像システム用に散乱補正信号を生成するための典型的な一手法を例示する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像領域の周りを回転する少なくとも2つのx線源から同時に前記撮像領域に放射線を放射し、対応する組の検出器を用いて、前記少なくとも2つのx線源のうちの対応する1つによって放射された主放射線と、前記少なくとも2つのx線源のうちのその他によって放射されたクロス散乱放射線とを含む投影データを検出する段階;
前記少なくとも2つのx線源の各々の出力状態を、複数のそれぞれのクロス散乱サンプリング期間内で切り替え、対応する1つの組の検出器を用いて、前記少なくとも2つのx線源のうちのその他によって放射されたクロス散乱放射線を検出する段階であり、前記複数のクロス散乱サンプリング期間は、前記少なくとも2つのx線源が少なくとも1つのフレームの全体にわたって同時に放射線を放射することを可能にするよう、複数のフレームにまたがって角度的に隔てて配置される、段階;
各組の検出器の散乱補正データを、対応するクロス散乱サンプルから取得する段階;
前記投影データを、対応する散乱補正データを用いて散乱補正する段階;及び
散乱補正された投影データを再構成し、少なくとも1つの画像を生成する段階;
を有するコンピュータ断層撮影の再構成方法。
【請求項2】
前記クロス散乱サンプルを補間することにより、サンプリングされたフレーム間のフレームのクロス散乱サンプルを生成する段階、を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クロス散乱放射線が回転角に伴って変化する角周波数を決定する段階;及び
クロス散乱サンプリングの角度方向の間隔を、クロス散乱の前記角周波数の関数として計算する段階;
を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
画像放射線の統計量を決定する段階;及び
所望の統計量を達成するよう、前記クロス散乱サンプリングの角度方向の間隔を調整する段階;
を更に含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記統計量は信号対雑音比を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
データ収集時間の比較的大きい割合で同時に放射線を放射することと、再構成のために前記投影データを散乱補正するためのクロス散乱信号を得るためにクロス散乱サンプルを収集することとをバランスさせることによって、クロス散乱サンプリングの角度方向の間隔を最適化する段階、を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記角度方向の間隔は、データ収集サイクルの90%より多くで同時に放射線を放射することに基づく、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
クロス散乱サンプルが検出される時を決定するためトリガー信号を用いる段階、を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記トリガー信号は心臓の電気的活動に対応する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
心臓CTスキャン中に同時に取得された、スキャンされる被検心臓のECGを用いて、クロス散乱信号の収集をゲーティングする段階、を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ゲーティングは、クロス散乱サンプリングを、投影データが検出される心臓位相群の間の期間に行わせる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
クロス散乱サンプリングのための前記角度方向の間隔は、データ収集サイクルの全体にわたって均一あるいは不均一の何れかである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記x線源のうちの1つのみが放射線を放射しているときに主放射線サンプルを検出する段階;及び
散乱補正性能を決定するため、前記主放射線サンプルを、散乱補正された投影サンプルと比較する段階;
を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
180°に扇角を足し合わせた角度にわたってデータが検出される180°アクシャル収集、複数サイクルゲーティングによるアクシャルスキャン、及びヘリカルスキャンのうちの少なくとも1つを含むデータ収集法を用いること、を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
撮像領域の周りを回転し、前記撮像領域に放射線を同時に放射する少なくとも2つのx線源であり、当該少なくとも2つのx線源の各々がそれぞれのクロス散乱サンプリング期間内に非活性化され、前記クロス散乱サンプリング期間において、非活性化されたx線源に関するクロス散乱放射線が、当該少なくとも2つのx線源が少なくとも1つのデータ収集フレームの全体にわたって同時に放射線を放射することを可能にする角度方向のサンプリング間隔でサンプリングされる、少なくとも2つのx線源;
前記少なくとも2つのx線源の各々の少なくとも1つの検出器であり、前記少なくとも2つのx線源が同時に放射線を放射するときの投影データ、及び前記非活性化されたx線源に関するクロス散乱放射線を検出する少なくとも1つの検出器;
サンプリングされたフレーム間のフレームに関するサンプルを生成するよう、検出されたクロス散乱サンプルから散乱補正サンプルを作り出す補間部;
投影データを、対応する散乱補正データを用いて散乱補正を実行する補正部;及び
散乱補正された投影データを再構成し、少なくとも1つの画像を生成する再構成システム;
を有するコンピュータ断層撮影システム。
【請求項16】
前記少なくとも2つのx線源は、少なくとも2つの連続したデータ収集フレームの全体にわたって、同時に放射線を放射する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記角度方向のクロス散乱サンプリング間隔はクロス散乱の角周波数の関数である、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記角度方向のクロス散乱サンプリング間隔は更に、撮像統計量及びx線源効率のうちの少なくとも一方の関数である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
投影データが検出されない心臓位相中にクロス散乱サンプルを取得するよう、クロス散乱放射線のサンプリングを制御する装置、を更に含む請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
クロス散乱のサンプリングの前記角度方向の間隔は、データ収集サイクルの全体にわたって均一あるいは不均一の何れかである、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
前記少なくとも2つのx線源の各々の前記少なくとも1つの検出器は更に、前記x線源のうちの対応する1つのみが放射線を放射するときに主放射線サンプルを検出する、請求項15に記載のシステム。
【請求項22】
前記主放射線サンプルは、前記散乱補正の精度を高めるために使用される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
放射線が、180°に扇角を足し合わせた角度にわたってデータが検出される180°アクシャル収集、複数サイクルゲーティングによるアクシャルスキャン、及びヘリカルスキャンのうちの少なくとも1つにおいて収集される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記散乱補正は前記撮像領域内の照射ボリュームの幅に依存しない、請求項15に記載のシステム。
【請求項25】
前記検出器はコーンビーム検出器である、請求項15に記載のシステム。
【請求項26】
前記x線源は回転面内で互いに対して角度方向にずらして配置される、請求項15に記載のシステム。
【請求項27】
前記x線源の焦点は、z軸に沿った2つの異なる位置に配置される、請求項15に記載のシステム。
【請求項28】
撮像領域に少なくとも2つのx線源により同時に放射線を放射する手段;
前記少なくとも2つのx線源の各々を選択的に、それぞれのクロス散乱サンプリング期間中にオフにし、オフにされたx線源に関するクロス散乱放射線を、前記少なくとも2つのx線源が少なくとも1つのデータ収集フレームの全体にわたって同時に放射線を放射することを可能にする角度方向のサンプリング間隔でサンプリングする手段;
前記少なくとも2つのx線源によって放射された放射線を検出する手段;
検出されたクロス散乱サンプルから、所望数のフレームの散乱補正信号を作り出す手段;
散乱補正データを用いて投影データを散乱補正する手段;及び
散乱補正された投影データを再構成し、少なくとも1つの画像を生成する手段;
を有するCT撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−540941(P2009−540941A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516635(P2009−516635)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/071095
【国際公開番号】WO2007/149749
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】