説明

デュプレクサ

【課題】縦モード共振器型フィルタを備えた受信側フィルタによりバランス出力すると共に、送信側フィルタの通過域に対して受信側フィルタの通過域を低域側に設定したデュプレクサにおいて、送信側フィルタの通過域において良好な減衰特性を持つ受信側フィルタを提供する。
【解決手段】アンテナポート1と一対のバランス受信ポート3、3との間に、各々SAW共振子からなる直列腕22と並列腕23とを備えた第1のラダー型フィルタ24と、縦モード共振器型フィルタ25とをアンテナポート1側からこの順番で設けると共に、各々のバランス受信ポート3、3と前記縦モード共振器型フィルタ25とを接続する信号路36、36に各々設けられたSAW共振子からなる直列腕27、27と、これら信号路36、36間を接続するSAW共振子からなる並列腕28とを含む第2のラダー型フィルタ26を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦モード共振器型フィルタを備えた受信側フィルタによりバランス出力するデュプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末や携帯電話の基地局に用いられるデュプレクサは、例えば図12に示すように、共通のアンテナポート100に対して接続された送信(Tx)側フィルタ101及び受信(Rx)側フィルタ102を備えており、近年では受信側フィルタ102から一対の受信ポート(出力ポート)105、105に対して差動(バランス)出力するタイプが主流となっている。送信側フィルタ101としては、例えば各々SAW(Surface Acoustic Wave)共振子からなる直列腕103及び並列腕104をラダー型に接続したラダー型フィルタが用いられ、また受信側フィルタ102としては、バランス出力が容易な縦モード共振器型フィルタ106が用いられる。そして、これらの送信側フィルタ101の通過域及び受信側フィルタ102の通過域は、送信信号及び受信信号の混信を抑えるために互いに異なる帯域に設定されると共に、無駄な(利用されない)周波数帯域が形成されないように、互いにできるだけ近接するように設定される。図12中107は送信ポートであり、108はデュプレクサが形成される圧電基板である。尚、デュプレクサには、受信信号が送信側フィルタ101に回り込むことを抑えるために、図示しない移相器が設けられている。また、送信側フィルタ101及び受信側フィルタ102は、図12では簡略化して示している。
【0003】
受信側フィルタ102を構成する縦モード共振器型フィルタ106は、例えば図13に示すように、通過域よりも低域側では良好な減衰特性(大きな減衰量)となるが、通過域よりも高域側では緩やかなスロープ状の膨らみが形成されるので、当該高域側では低域側と比較して減衰特性が悪くなって(減衰量が小さくなって)しまう。そこで、このようなデュプレクサでは、送信側フィルタ101の通過域に対応する帯域において受信側フィルタ102の減衰量が大きくなるように、受信側フィルタ102の通過域よりも低域側に送信側フィルタ101の通過域が設定される。
【0004】
一方、近年において携帯端末に使用される周波数帯域が割り当てられていく中で、例えばUMTS FDD Band13、Band20(Band14)などのように、受信側フィルタ102の通過域よりも高域側に送信側フィルタ101の通過域を設定する場合がある。この場合には、受信側フィルタ102として縦モード共振器型フィルタ106を用いると、既述の図13に示したように、この受信側フィルタ102では送信側フィルタ101の通過域において例えば50dB程度の減衰量を確保することが困難である。そのため、受信側フィルタ102の通過域よりも高域側に送信側フィルタ101の通過域を設定する場合には、受信側フィルタ102の通過域よりも高域側において減衰量を大きくするために、例えば送信側フィルタ101と同様にアンバランス出力のラダー型フィルタが受信側フィルタ102として用いられる。従って、受信側フィルタ102からバランス出力するためには、例えばバランなどと呼ばれる外付け部品をデュプレクサの外部に設けて、当該外付け部品を用いて1つの受信ポート105から取り出される信号をアンバランス−バランス変換する必要があるので、デュプレクサ(詳しくはデュプレクサが搭載される電子部品)が大型化してしまう。
【0005】
特許文献1には、2つの平衡信号端子6、7とIDT81、85とを各々接続する信号線同士の間に、1ポート型SAW共振子を並列に接続したフィルタが記載されており、また特許文献2、3にはデュプレクサが記載されている。しかし、これらの文献には既述の課題については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−254410号公報(段落0048〜0052、図12)
【特許文献2】特開2006−157174号公報
【特許文献3】国際公開WO2007/040052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、縦モード共振器型フィルタを備えた受信側フィルタによりバランス出力すると共に、受信側フィルタの通過域を送信側フィルタの通過域よりも低域側に設定したデュプレクサにおいて、送信側フィルタの通過域において良好な減衰特性の得られる受信側フィルタを備えたデュプレクサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のデュプレクサは、
アンテナポートと、送信ポートと、平衡信号を受信する平衡信号端子からなる受信ポートと、を備えたデュプレクサにおいて、
前記アンテナポートと前記送信ポートとの間に設けられ、弾性波共振子及び弾性波フィルタの少なくとも一方を含む送信側フィルタと、
前記アンテナポートと前記受信ポートとの間に設けられ、その通過域が前記送信側フィルタの通過域よりも低域側に設定された受信側フィルタと、を備え、
この受信側フィルタは、
不平衡−平衡変換機能を有する縦モード共振器型フィルタと、
前記アンテナポートと前記縦モード共振器型フィルタとの間に設けられ、各々弾性波共振子からなる直列腕と並列腕とがラダー型に接続された第1のラダー型フィルタと、
前記縦モード共振器型フィルタの平衡信号端子と前記受信ポートの平衡信号端子とを接続する一対の信号路に各々介設された弾性波共振子からなる直列腕と前記一対の信号路の間に設けられた弾性波共振子からなる並列腕とを有する第2のラダー型フィルタと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、受信側フィルタについて、アンテナポートと平衡信号端子からなる受信ポートとの間に、各々弾性波共振子からなる直列腕と並列腕とがラダー型に接続された第1のラダー型フィルタと、縦モード共振器型フィルタとをアンテナポート側からこの順番で設けると共に、縦モード共振器型フィルタの平衡信号端子と前記受信ポートの平衡信号端子とを接続する一対の信号路に各々介設された弾性波共振子からなる直列腕と、前記一対の信号路の間に設けられた弾性波共振子からなる並列腕と、を有する第2のラダー型フィルタを設けている。そのため、受信側フィルタの通過域よりも高域側において良好な減衰特性が得られるので、当該高域側に前記送信側フィルタの通過域を設定した場合であっても、優れた減衰特性を持つデュプレクサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のデュプレクサの一例を示す平面図である。
【図2】前記デュプレクサの一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図3】前記デュプレクサにおいて得られる周波数特性を示す特性図である。
【図4】前記デュプレクサの他の例を示す平面図である。
【図5】前記デュプレクサの他の例を示す平面図である。
【図6】前記デュプレクサの他の例を示す平面図である。
【図7】前記デュプレクサの他の例を示す平面図である。
【図8】前記デュプレクサの他の例を示す模式図である。
【図9】前記他の例の具体例を示す縦断面図である。
【図10】前記デュプレクサの他の例を示す平面図である。
【図11】前記デュプレクサの他の例を示す平面図である。
【図12】従来のデュプレクサを示す平面図である。
【図13】従来のデュプレクサにおいて得られる周波数特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態のデュプレクサの一例について、図1を参照して説明する。このデュプレクサは、図示しないアンテナに接続されるアンテナポート1と、このアンテナポート1を介して携帯電話端末や携帯電話の基地局(以下、「携帯端末等」と言う)から外部に信号を出力する送信ポート2と、アンテナポート1において受信される外部の信号を受け取って携帯端末等に伝達する一対のバランス(差動)受信ポート(出力ポート)3、3と、を備えており、概略矩形に形成された例えばタンタル酸リチウム(LiTaO3)からなる圧電基板5上に配置されている。アンテナポート1と送信ポート2との間には送信(Tx)側フィルタ11が設けられ、アンテナポート1と受信ポート3、3との間には受信(Rx)側フィルタ21が設けられている。アンテナポート1とこれら送信側フィルタ11及び受信側フィルタ21との間には、位相調整及びマッチングを行うための素子80が設けられている。尚、アンテナポート1を圧電基板5上に設ける場合には、外部の図示しないアンテナと送信側フィルタ11及び受信側フィルタ21とを接続する接続部位(後述の直列信号路31と直列信号路33との接続部位)がアンテナポート1となる。
【0012】
圧電基板5は、当該圧電基板5における外縁の短辺6及び長辺7のうち長辺7に平行な方向に弾性波が伝搬するように構成されている。また、既述のアンテナポート1は、圧電基板5の2つの長辺7、7の一方側の長辺7に近接配置され、送信ポート2及び受信ポート3、3は、他方側の長辺7に各々近接配置されている。送信ポート2において携帯端末等に対するインピーダンスは、例えば50Ωに設定されており、受信ポート3、3において携帯端末等に対するインピーダンスは、各々例えば100Ω〜300Ωこの例では200Ωに設定されている。
【0013】
送信側フィルタ11は、各々SAW共振子からなる直列腕12及び並列腕13がラダー型に組み合わされてラダー型フィルタを構成している。圧電基板5上においてアンテナポート1の形成された領域を奥側、送信ポート2及び受信ポート3、3の配置された領域を手前側と呼ぶと、送信側フィルタ11では、この例では3つの直列腕12が奥側から手前側に向かって一列に配置されており、アンテナポート1から伸びる金属膜などからなる直列信号路31により、互いに隣接する直列腕12、12同士が接続されている。
【0014】
この直列信号路31は、これら3つの直列腕12よりも手前側の領域に伸び出しており、当該領域が既述の送信ポート2をなしている。また、互いに隣接する直列腕12、12同士の間には、金属膜などからなる並列信号路32の一端側が接続されており、この並列信号路32の他端側は、各々並列腕13を介して接地ポート4に接続されている。これら直列腕12及び並列腕13の各々は、電極指42が櫛歯状に交差するように形成されたIDT(インターディジタルトランスデューサ)電極41と、弾性波の伝搬方向においてこのIDT電極41を両側から挟むように配置された反射器45、45とを備えている。尚、各々の並列腕13から接地ポート4を介して接地される導電路は、図2に当該並列腕13を簡略化して示すように、インダクタ成分を含んでいるが、図1では省略している。後述の並列腕23、28も同様である。
【0015】
これらの直列腕12及び並列腕13は、送信側フィルタ11において形成される通過域が832MHz〜862MHz程度となるように構成されている。具体的には、直列腕12における直列共振周波数(共振点)と、並列腕13における並列共振周波数(反共振点)と、が既述の通過域内の周波数例えば847MHzにおいて揃うように、これら直列腕12及び並列腕13におけるIDT電極41の電極指42及び反射器45のグレーティング電極指46の配列パターン(励振する弾性波の波長の長さ)が各々設定されている。図1中43はIDT電極41のバスバー、47は反射器45のグレーティングバスバーである。尚、図1ではIDT電極41及び反射器45については簡略化して模式的に示している。
【0016】
続いて、受信側フィルタ21について詳述する。この受信側フィルタ21は、手前側から奥側に向かって圧電基板5を見た時に、既述の送信側フィルタ11に対して左側に配置されている。また、受信側フィルタ21は、各々SAW共振子からなる直列腕22及び並列腕23がラダー型に組み合わされた第1のラダー型フィルタ24と、不平衡−平衡変換機能を有する縦モード共振器型フィルタ25と、各々SAW共振子からなる直列腕27及び並列腕28がラダー型に組み合わされた第2のラダー型フィルタ26と、がアンテナポート1側から受信ポート3、3側に向かってこの順番で接続されている。この例では、縦モード共振器型フィルタ25は2つ設けられている。
【0017】
第1のラダー型フィルタ24における直列腕22及び並列腕23は、各々既述のIDT電極41と、弾性波の伝搬方向においてIDT電極41の両側に配置された反射器45、45と、から構成されている。直列腕22の奥側のバスバー43は、直列信号路33を介してアンテナポート1に接続されている。直列腕22の手前側のバスバー43には、直列信号路34の一端側が接続されており、この直列信号路34の他端側は、2本に分岐して縦モード共振器型フィルタ25、25に向かって各々伸び出している。直列腕22とこれら縦モード共振器型フィルタ25、25との間における直列信号路34には、並列腕23の奥側のバスバー43から伸びる並列信号路35が接続されている。並列腕23の手前側のバスバー43は、圧電基板5の短辺6側に伸び出して接地ポート4をなしている。
【0018】
縦モード共振器型フィルタ25、25の各々は、弾性波の伝搬方向に沿って配置された3つのIDT電極41と、これらIDT電極41の並びの一端側及び他端側に配置された反射器45、45とを備えている。各々の縦モード共振器型フィルタ25において、3つのIDT電極41のうち両側のIDT電極41、41における奥側のバスバー43には既述の直列信号路34が各々接続され、これらIDT電極41、41の手前側のバスバー43は各々手前側に伸び出して接地ポート4をなしている。また、縦モード共振器型フィルタ25、25の中央のIDT電極41の各々は、奥側のバスバー43が接地ポート4をなすと共に、受信ポート3に向かって伸びる直列信号路36の一端側が手前側のバスバー43に接続されている。縦モード共振器型フィルタ25、25において、中央のIDT電極41の各々における手前側のバスバー43、43は、各々平衡信号端子をなしている。
【0019】
各々の縦モード共振器型フィルタ25と受信ポート3の平衡信号端子との間における直列信号路36には、各々SAW共振子からなる直列腕27が介設されている。また、2つの縦モード共振器型フィルタ25、25のうち一方の縦モード共振器型フィルタ25と直列腕27との間における直列信号路36と、他方の縦モード共振器型フィルタ25と直列腕27との間における直列信号路36との間を接続するように、SAW共振子からなる並列腕28が設けられている。この並列腕28は、並列信号路37を介してこれら直列信号路36、36に接続されている。これら2つの直列腕27、27及び1つの並列腕28により、第2のラダー型フィルタ26が構成される。各々の直列腕27及び並列腕28は、既述のIDT電極41と2つの反射器45、45とを備えている。
【0020】
この受信側フィルタ21は、送信側フィルタ11の通過域よりも低域側例えば791MHz〜821MHzに当該受信側フィルタ21の通過域が位置するように、受信側フィルタ21にて伝搬する弾性波の波長が設定されている。即ち、送信側フィルタ11の通過域に対して、受信側フィルタ21の通過域が低域側から隣接している。具体的には、各々の直列腕22、27の共振点と、並列腕23、28の反共振点と、が受信側フィルタ21の通過域内の周波数例えば806MHzにおいて揃うように、これら直列腕22、27及び並列腕23、28における電極指42及びグレーティング電極指46の配列パターンが設定されている。また、縦モード共振器型フィルタ25、25については、例えば受信側フィルタ21の通過域における中心周波数例えば806MHzに対応する波長の弾性波が伝搬するように、電極指42及びグレーティング電極指46の配列パターンが設定されている。各々の縦モード共振器型フィルタ25、25は、一対の受信ポート3、3において受け取られる信号同士の位相が180°変わるように、各々の電極指42が配列されている。
【0021】
このデュプレクサでは、携帯端末等から送信ポート2、送信側フィルタ11及びアンテナポート1を介して例えば832MHz〜862MHzの信号が外部に送信される。また、外部からの例えば791MHz〜821MHzの信号は、アンテナポート1、受信側フィルタ21及び一対の受信ポート3、3を介して携帯端末等において受け取られる。この時、受信側フィルタ21として、縦モード共振器型フィルタ25、25に加えて第1のラダー型フィルタ24及び第2のラダー型フィルタ26を設けているので、図3に示すように、当該受信側フィルタ21では、送信側フィルタ11の通過域に対応する帯域における減衰量が極めて大きくなっている。そのため、送信側フィルタ11からアンテナポート1に向かって送信される信号が受信側フィルタ21に回り込んで来たとしても、受信側フィルタ21では当該信号を減衰させることができるので、受信側フィルタ21においてこの信号による干渉や悪影響が極めて小さくなる。
【0022】
上述の実施の形態によれば、アンテナポート1と一対の受信ポート3、3との間に、第1のラダー型フィルタ24、縦モード共振器型フィルタ25及び第2のラダー型フィルタ26をアンテナポート1側からこの順番で設けているので、受信側フィルタ21の通過域よりも高域側において極めて大きな減衰量を得る(良好な減衰特性を得る)ことができる。そのため、受信側フィルタ21の通過域に対して送信側フィルタ11の通過域が高域側から隣接するようにこれら通過域を設定した場合においても、受信側フィルタ21では当該送信側フィルタ11の通過域に対応する帯域において50dB程度もの大きな減衰量を得ることができる。従って、縦モード共振器型フィルタ25を用いて一対の受信ポート3、3にバランス出力すると共に、受信側フィルタ21の通過域よりも送信側フィルタ11の通過域を高域側に設定するタイプのデュプレクサに本発明の受信側フィルタ21を適用することによって、減衰特性に優れたデュプレクサを得ることができる。
【0023】
また、一対の送信ポート3、3に対してバランス出力するにあたり、受信側フィルタ21としてラダー型フィルタではなく、縦モード共振器型フィルタ25を用いているので、例えばデュプレクサの外部にアンバランスーバランス変換するための部品を設けなくて済む。そのため、デュプレクサあるいは当該デュプレクサの搭載される電子部品の大型化を抑えながら、バランス出力できる。
【0024】
更に、受信ポート3、3の携帯端末等に対する出力インピーダンスは、既述のように、送信ポート2において携帯端末等に対するインピーダンスに比べて高く設定されている。そのため、ラダー型フィルタ24、26を送信側フィルタ11側ではなく受信側フィルタ21側に設けることによって、これらラダー型フィルタ24、26についてもインピーダンスを受信ポート3、3のインピーダンスに合わせることができる。そのため、これらラダー型フィルタ24、26の寸法を小さく抑えることができるので、小型で且つ減衰特性に優れたデュプレクサを得ることができる。
【0025】
更にまた、縦モード共振器型フィルタ25、35よりもアンテナポート1側に第1のラダー型フィルタ24を配置しているので、当該第1のラダー型フィルタ24がいわば移相器の役目も果たすため、送信側フィルタ11側から受信側フィルタ21側への信号の回り込みを抑えることができる。
また、縦モード共振器型フィルタ25、35の前段側(アンテナポート1側)及び後段側(受信ポート3、3側)の両方にラダー型フィルタ24(26)を配置しているので、入出力終端インピーダンス(受信側フィルタ21のアンテナポート1に対するインピーダンス及び受信側フィルタ21の受信ポート3、3に対するインピーダンス)を容易に調整できる。また、SAW共振子を直列腕として配置すると、ESD(Electric static discharge)に対する耐性が強くなることから、縦モード共振器型フィルタ25の前段側及び後段側に直列腕22、27を配置することにより、ESD耐性に優れたデュプレクサを得ることができる。
更にまた、例えば一対の受信ポート3、3から携帯端末等に対して出力される信号のうち一方の位相がずれようとしても、2つの直列信号路36、36間に並列腕28を並列に設けているので、これら受信ポート3、3における位相のずれがいわば中和され、一対の受信ポート3、3間における位相のバランスを調整できる。
【0026】
既述の例では、受信側フィルタ21に2つの縦モード共振器型フィルタ25、25を設けたが、この縦モード共振器型フィルタ25はアンバランス信号をバランス信号に変換するものであり、従って1つだけであっても良い。図4は、縦モード共振器型フィルタ25を1つだけ配置した例を示している。縦モード共振器型フィルタ25は、弾性波の伝搬方向に沿って配置された5つのIDT電極41と、これらIDT電極41の並びの一端側及び他端側に設けられた反射器45、45とを備えている。
【0027】
これら5つのIDT電極41のうち両側のIDT電極41、41及び中央のIDT電極41の奥側のバスバー43には直列信号路34が各々接続され、これらIDT電極41の手前側のバスバー43は接地ポート4をなしている。そして、これら直列信号路34に奥側のバスバー43が接続されたIDT電極41、41の間に配置されたIDT電極41の各々は、奥側のバスバー43が接地ポート4をなしており、手前側のバスバー43に接続された直列信号路36が受信ポート3に向かって各々伸び出している。この例においても、既述のように受信側フィルタ21の通過域よりも高域側において大きな減衰量が得られる。このように、縦モード共振器型フィルタ25におけるIDT電極41の数量及び当該縦モード共振器型フィルタ25の数量については、一対の受信ポート3、3からバランス出力できるように構成すれば良い。
【0028】
また、第2のラダー型フィルタ26については、図5に示すように、受信ポート3、3と縦モード共振器型フィルタ25との間の2つの直列信号路36、36に対して並列に接続される並列腕28を2つ配置しても良い。この場合には、受信側フィルタ21の通過域よりも高域側においてより大きな減衰量が得られる。
【0029】
更に、図6に示すように、アンテナポート1と送信側フィルタ11との間及びアンテナポート1と受信側フィルタ21との間に、位相調整やマッチングを行うための伝送線路やインダクタやコンデンサからなる移相器60、60を設けても良い。
更にまた、図7に示すように、送信側フィルタ11と受信側フィルタ21とを各々別の圧電基板5a、5b上に配置しても良い。この場合には、圧電基板5a、5bが例えばアルミナなどからなる図示しない基板上に各々配置されると共に、当該基板に設けられたアンテナポート1にこれらフィルタ11、21から各々伸びる直列信号路31、33が例えばワイヤ61などを介して各々接続される。また、これら送信側フィルタ11及び受信側フィルタ21を別々のパッケージ内に収納して封止し、これらフィルタ11、21を一つの携帯端末等に搭載すると共に共通のアンテナに接続しても良い。
【0030】
また、各フィルタ11、21における直列腕12、22、27及び並列腕13、23、28として、既述の例では弾性表面波を利用したSAW共振子を配置したが、SAW共振子としては1ポート共振子や2ポート共振子などであっても良いし、図8に示すように、圧電基板5の内部領域を伝搬する弾性波を利用した弾性波共振子70例えばFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)、SMR(Solid Mounted Resonator)あるいはBAWR(Bulk Acoustic Wave Resonator)などであっても良い。即ち、弾性波共振子にはSAW共振子が含まれる。
従って、本発明の受信側フィルタ21は、一対の受信ポート3、3に対してバランス出力するための縦モード共振器型フィルタ25について弾性表面波を利用するように構成すれば良い。SAW共振子以外の弾性波共振子70例えばFBARを用いる場合には、既述のように通過域を設定するにあたって、図9に示すように、当該弾性波共振子70に用いられる圧電薄膜71の膜厚t2を調整しても良いし、この膜厚t2に代えて、あるいは膜厚t2と共に、下部電極72及び上部電極73の夫々の膜厚t1、t3の少なくとも一方を調整しても良い。また、送信側フィルタ11については、既述の共振子をラダー型に接続したSAWフィルタの他に、共振子に代えて、あるいは共振子と共に弾性波フィルタ(elastic wave filter:縦モード共振器型フィルタ、SAWフィルタ、FBARフィルタ、誘電体フィルタ)を用いた構成であっても良い。尚、図8では弾性波共振子70や信号路を簡略化して示している。また、図9において74は例えばシリコン(Si)などからなる基板、75は当該基板74に形成された凹部(空隙)である。
【0031】
ここで、第2のラダー型フィルタ26の他の構成について、図10及び図11を参照して説明する。既述の例では、直列腕27、27と縦モード共振器型フィルタ25との間に並列腕28を接続したが、図10に示すように当該並列腕23が介設された並列信号路37の一端側を直列腕27と受信ポート3との間に接続しても良い。また、図11に示すように、並列信号路37の一端側及び他端側について、2つの直列腕27のうち一方側の直列腕27と受信ポート3との間及び他方の直列腕27と受信ポート3との間に夫々接続しても良い。
【0032】
また、圧電基板5としては、既述のタンタル酸リチウムに代えて、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)などの圧電作用を有する基板を用いても良いし、圧電性を有する基板あるいは圧電性を持たない基板上に、これら圧電作用を有する薄膜を1層以上形成した基板を用いても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 アンテナポート
2 送信ポート
3 受信ポート
5 圧電基板
11 送信側フィルタ
21 受信側フィルタ
24 第1のラダー型フィルタ
25 縦モード共振器型フィルタ
26 第2のラダー型フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナポートと、送信ポートと、平衡信号を受信する平衡信号端子からなる受信ポートと、を備えたデュプレクサにおいて、
前記アンテナポートと前記送信ポートとの間に設けられ、弾性波共振子及び弾性波フィルタの少なくとも一方を含む送信側フィルタと、
前記アンテナポートと前記受信ポートとの間に設けられ、その通過域が前記送信側フィルタの通過域よりも低域側に設定された受信側フィルタと、を備え、
この受信側フィルタは、
不平衡−平衡変換機能を有する縦モード共振器型フィルタと、
前記アンテナポートと前記縦モード共振器型フィルタとの間に設けられ、各々弾性波共振子からなる直列腕と並列腕とがラダー型に接続された第1のラダー型フィルタと、
前記縦モード共振器型フィルタの平衡信号端子と前記受信ポートの平衡信号端子とを接続する一対の信号路に各々介設された弾性波共振子からなる直列腕と前記一対の信号路の間に設けられた弾性波共振子からなる並列腕とを有する第2のラダー型フィルタと、を備えたことを特徴とするデュプレクサ。

【図2】
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【図3】
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【図13】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−85279(P2012−85279A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194056(P2011−194056)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】