デンドロビウム植物からの生物活性抽出物、その用途及びその調整方法
【課題】眼科疾病、特に網膜色素上皮細胞関連疾患の治療及び/又は予防に有用な新規化合物、及び該化合物を含有する医薬組成物の提供。
【解決手段】下式の構造を有する化合物、及び該化合物を含有する医薬組成物。
(式中、R1とR2は単糖成分であり、好ましくはそれぞれα−アラビノース、β−アラビノース及びβ−キシロースの中の一つから選ばれる。)該化合物は、デンドロビウム植物抽出物から得られる。
【解決手段】下式の構造を有する化合物、及び該化合物を含有する医薬組成物。
(式中、R1とR2は単糖成分であり、好ましくはそれぞれα−アラビノース、β−アラビノース及びβ−キシロースの中の一つから選ばれる。)該化合物は、デンドロビウム植物抽出物から得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物活性を有する植物抽出物の調整方法及び該関連抽出物に関し、特に水溶性有機溶剤又は水溶性有機溶剤と水との混合物を利用して植物抽出物を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アメリカ特許No.7,101,577に記載しているように、デンドロビウム(Dendrobium) 種は早くから眼科疾病の最も貴重な中国産ハーブ(薬剤)として知られている。我々の従来の研究結果によれば、ヘルバ・デンドロビー(Herba Dendrobii)(伝統的に治療効果を有するものとしてのデンドロビウム植物(Dendrobium plant)の総称)はもっとも生物活性を有することを発見している。しかしながら、近年の傾向によれば、その茎部で治療効果を有するデンドロビウム植物(Dendrobium plant)はカウリス・デンドロビー(Caulis Dendrobii)と通称され、その植物全体で治療効果を有するデンドロビウム植物(Dendrobium plant)はヘルバ・デンドロビー(Herba Dendroii)と通称されている。
【0003】
上記アメリカ特許において開示された内容によれば、網膜色素上皮(RPE)細胞は網膜表層の単層細胞であり、ブルーフ膜(Bruch’s membrane)と光受容体との間に位置していることが知られている。RPE細胞が効果的に脈絡膜及び網膜層との有毒物質及び代謝物を除去又は輸送できるので、非常に重要な網膜血管障壁の役割を果たしている。更に、RPE細胞は多くの機能、例えば光線の受容、食桿状細胞及び錐状細胞が光線の刺激を受けて脱落した桿体セグメント(ROS)の食作用、食作用胞の代謝、細胞外基質と黒色素(メラニン)とを合成、薬物を解毒、光受容体の外節再生時に不可欠な物質を提供、ビタミンAを貯蔵及び運送、ロドプシンを合成、網膜の接着力を形成の機能が挙げられる。RPE細胞の正常な食作用は網膜中の光受容体の健康状態の維持に対して相当大きな関連性を有しているので、一旦食作用機能が降下すると光受容体の退化を引起す。RPE細胞は年齢の増加につれて死滅又は他所に転移するが、老化したRPE細胞はなお食作用能力を有する。更に、桿状細胞の損失は錐状細胞の損失よりも多く、老人の視力減退及び疾病の発生を来たす場合があるので、RPE細胞機能の維持は視覚器官にとって非常に重要である。
【0004】
免疫系等において一酸化窒素(NO)は防御の役割を演ずると共に細胞に対して毒性を有し、血管系において一酸化窒素NOはいわゆる内皮細胞由来弛緩因子(EDRF)であり、そして中枢神経系統において一酸化窒素NOは神経伝達物質として作用する。
【0005】
一酸化窒素NOは、一酸化窒素シーンテターゼ(NOS)を介してL−アルギニンをL−シトルリンに転換する過程から解離される。一酸化窒素シーンテターゼ(NOS)はそれぞれニューロンNOS(neuronal NOS),内皮NOS(endothelial NOS)及び免疫NOS(immunologic NOS)の三種の異性体がある。その中で、ニューロンNOS及び内皮NOSは基本型であって、cNOSと略称され、その活性はカルシウムイオンCa++及びカルモジュリン(calmodulin)により調節をされ、解離した一酸化窒素NOの濃度はnM(10−9M)レベルであり、免疫NOSは誘導可能型であって、iNOSと略称されるがその活性はCa++及びカルモジュリン(calmodulin)の調節を受けず、解離した一酸化窒素NOの濃度はmM(10−6M)レベルである。また、cNOSとiNOSの遺伝子はそれぞれ異なる染色体上に位置する。
【0006】
網膜中において、一酸化窒素シーンテターゼ(NOS)は網膜神経細胞(retinal neuron)、RPE細胞、無軸索細胞(amacrine cell)及び視神経節細胞(ganglion cell)、粘質細胞(Muller cells)中に発見されていて、酸化窒素NOは生理学及び病理学において、重要な役割を演じ、眼の機能と密接に関係があることは明らかである。
【0007】
基礎環境又は局所貧血環境(ischemia)下において、一酸化窒素(NO)が網膜血流量を制御する能力を有することが既に発見されている。更には、一酸化窒素NOは糖尿病により引起こされた網膜内血管損害の程度を調節する可能性を有している。しかも、網膜グリア細胞(retinal glial cells)及びRPE細胞がLPS, IFN−γ, TNF−αの刺激を受けた場合、一酸化窒素シーンテターゼ(NOS)を大きく発現し、一酸化窒素(NO)を大量生産することから、つまり、一酸化窒素(NO)は網膜が発症し又は感染を受けた状況下において、防御、保護機構の役割を演ずることができることがわかる。
【0008】
しかしながら、現在に至るまで、光受容体におけるcNOSの位置及び特性はまだ明白ではなく、ある文献では光受容体の本体はcNOS活性を有しており、また他の文献では光受容体セグメントにおいてのみcNOS活性があり、そして解離した一酸化窒素(NO)は光の伝達、神経シナプスの信号伝達、生理学的状態下又は局所貧血状態下の網膜血流量等を調節することができると開示している。iNOSの活性は、また網膜の一部の細胞、例えばRPE細胞及び粘質細胞(Muller cells)等の細胞中において発見されており、そしてある文献では牛網膜色素上皮細胞中の培地において、IFN−γ,LPS,TNF−αの刺激後約12時間経過すれば、大量の一酸化窒素(NO)を解離し、少なくとも96時間持続すると示唆している。サイトカイン(cytokines)のRPE細胞のiNOS活性上における影響は非常に複雑であり、例えば、牛RPEにおいて、LPS及びIFN−γ又はTNF−αの刺激が、大量の一酸化窒素(NO)を解離するのに必要である。bFGFはNOSを抑制する作用を有するが、TGF−βは僅かにNOSの機能を促進する作用を有するにすぎない。ヒトRPE細胞については、必ずインターロイキン−1β(Interleukin−1β)の刺激があってから大量の一酸化窒素(NO)を解離できるが、LPSはヒトRPE刺激するために必要な要素ではなく、TGF−βは明らかにヒトRPE中の一酸化窒素(NO)の解離を抑制できる。
【0009】
細菌の感染を受けた場合、iNOSの発現は有益であり、それにより解離した一酸化窒素(NO)は侵入した微生物を殺すことができ、反対に、ある状況下において、解離した一酸化窒素(NO)を大量に発生しすぎると、却って解離した一酸化窒素NOは自己免疫疾患又は敗血性ショックを引起す。1994年に初めて一酸化窒素NOと眼底の炎症との間係を説明する証拠が提出され、本願出願人はiNOS抑制剤が内毒素により引起された葡萄膜炎を断絶できることをも発見した。他方、IFN−γ及びLPSでRPEを処理して大量の一酸化窒素(NO)を発生させる作用がaFGF、bFGFにより抑制され、且つ抑制はiNOSの発現であり、iNOS mRNAの安定性でないと示唆された。したがって、本願出願人は、FGFは内毒素又はサイトカインにより引起された傷害を受けないようにRPEを保護できると推測した。これからiNOSは網膜中において免役調節の役割をも演ずることができることがわかる。
【0010】
通常の網膜疾患は、糖尿病により引起こされた増殖性糖尿病性網膜症(proliferative diabetic retinopathy)増殖性ガラス体網膜症(proliferative vitreoretinopathy)及び老年性黄斑部変性(Aged−macular degeneration)等があり、そして網膜の疾患はあらゆる眼科疾病において最も治療しにくい疾病である。高血糖(hyperglycemia)が糖化作用の発生を加速して高度に糖化した最終生産物(AGEs)を産出するのは、ずっと糖尿病末期に発症した各種血管・神経併発症と緊密に関係するものと信じられてきた。AGEの形成は還元糖のアルデヒド基又はケトン基が蛋白質の第一級アミノ酸と非酵素的な作用を通して不安定なシッフ塩基(Schiff base)を形成し、更にアマドリ転移(Amadori rearrangement)を通してアマドリ(Amadori)産物を産出してなる。非酵素糖化作用は不可逆反応で且つ多くは長期半減期を有する蛋白質上に発生するのは周知であり、AGEの形成が交差反応(クロス・リンキング)を生じる場合、蛋白質分子はプロテアーゼに対して抵抗性を有するようになるので、AGEの累積は老化の兆候である。年齢の増加につれて、脳部位錐状神経(pyramidal neurons)、ブルーフ膜(Bruch’s membrane)、膠原質蛋白(コラーゲン)中のAGEの含量もこれに伴って上昇する。非酵素糖化作用の反応速度は一次反応であり、反応速度は還元糖と蛋白質の濃度に依存する。通常、糖尿病患者の血糖値は健常人よりも高いので、糖化作用は加速するようになる。糖尿病患者の病気または症状は、動脈粥状硬化、腎臓損傷、血管損傷、神経変性、網膜変性及び卒中を含み、糖尿病患者が健常人よりも高い罹患可能性をもつのは周知のことであり、いずれもAGEと直接的な関係を有する。糖尿病に由来する赤血球の凝集は、主としてアルブミンが糖化された後、その三次構造に変化を生じ、抗凝集の機能を喪失することに起因する。他の研究によれば、糖尿病が腎臓絲球体の透過性の変化を誘引するのは、アルブミンの糖化に起因するもので、賢小球基膜(glomerular basement membrane)の糖化によるものでない。そして糖化された蛋白質はその脳血管障壁のより高い通透能力を持つ。
【0011】
AGEは細胞表面上の一部の受容体又は蛋白質と結合できる。公知の受容体として、スカベンジャ受容体第一型および第二型、AGE受容体(RAGE)、OST−48 (AGE−R1), 80K−H リンタンパク質(AGE−R2), 及び ガレクチン−3(galectin−3) (AGE−R3)が知られている。また、単核球、マクロファージ、内皮細胞、グリア細胞において、AGE受容体が発見された。これらの細胞がAGEに活性化されたとき、細胞外基質蛋白、血管附着分子及び生長因子の発現量を増加させ、異なる細胞型及び信号伝達に依存して、例えば、走化性(ケモタキシス)、血管新生(angiogenesis)、酸化ストレス、細胞増殖又はプログラム細胞死を前記状況に伴って生じる。ヒト脳部の各種細胞は、異なる高度糖化終産物受容体を発現可能であり、AGEを遊離する。この遊離能力が喪失した時、細胞外にAGEの累積をもたらし、中枢神経系統の炎症反応を誘発する。そしてAGEはPRE細胞の網膜血管内皮細胞生長因子、及びPDGF−βの発現を誘導させる。AGEは老化過程中において重要な役割を演ずるので、糖化アルブミンによる病理モデルは新薬の開発に非常に重要である。
【0012】
肝細胞成長因子/散乱因子(HGF/SF)は肝臓で最も重要な成長因子であり、60KDaの重鎖(α鎖)及び30KDaの軽鎖(β鎖)をジスルフィド結合で結合して形成されたものである。新しく形成したHGF/SFはプレプロ HGF/SFであり、酵素で修飾が必要で、ヘテロダイメトリック形に形成した後、生物活性を有する。HGFは多機能の生長因子であり、種々の細胞に対して生長を調節する能力があるばかりでなく、組織回復及び器管再生においても重要な役割を演じている。HGFは体内に十分広く分布しており、その内肝臓の生産量が最大であり、更に、膵臓、胸腺、血液、小腸、胎盤等でも発見されている。また、HGF/SF又はHGF/SF受容体は眼の分泌物及び組織中、例えば涙液・涙腺・角膜に存在しており、これからHGFは眼を調整する役割を有すると推測される。更に、網膜色素上皮(RPE)細胞は同時にHGF及びHGF受容体があるばかりでなく、c−Metのチロシン燐酸化反応もずっと持続的に発現しているので、HGFは網膜色素上皮(RPE)細胞について自己刺激作用をもつ成長因子であり、且つ網膜の分化、傷口の治癒及び網膜血管の新生と関連する。
【0013】
以上の内容から分かるように、RPE細胞は網膜調整機構上で非常に重要な役割を演じている。すなわち、チャイニーズ・ハーブであるデンドロビウム(Dendrobium)種はRPE細胞の部分機能もしくは調整制御機制を増強又は抑制することが知られている。特に、デンドロビウム(Dendrobium)種がRPE細胞の食作用、RPE細胞の一酸化窒素(NO)の形成及び肝細胞成長因子(HGF)の遺伝子発現を増強できることにある。デンドロビウム(Dendrobium)種は、標準状態又は局所失血環境下において、RPE細胞中のbFGF、VEGF及びTGF−βの遺伝子発現量を抑制できる。したがって、RPE細胞活性を増強する因子に関する研究は、人体の健康の改善に対して重要である。過去における研究では、ヘルバ・デンドロビー(Herba Dendrobii)抽出物がRPE細胞の食作用を加速又はAGE分解を増加する効果を有すると知られているが、更に、そのPREの食作用の効果を制御するためにヘルバ・デンドロビー(Herba Dendrobii)からの抽出物に対してより深く理解しなければならない。したがって、出願人は従来の技術の欠点にかんがみ、鋭意に試験及び研究を重ねた結果、ついに本発明の「デンドロビウム(Dendrobium)植物からの抽出物及びその製造方法」を案出した。
【0014】
[発明の内容]
本発明は、以下の式1の構造を有する物質を包含する組成物を提供する。
式中R1とR2は単糖部分である。
【0015】
好ましくは、式中R1とR2は同一又は異なる官能基の中の一つである。
【0016】
好ましくは、式中R1またはR2はそれぞれα−アラビノース、β−アラビノース及びβ−キシロースの中の一つから選ばれる。
【0017】
好ましくは、該物質はアピゼニン6,8−ジ−C−α−L−アラビノピラノシド,アピゼニン6−C−β−D−キシロピラノシル−8−C−α−L−アラビノピラノシド,アピゼニン6−C−α−L−アラビノピラノシド−8−C−β−D−キシロピラノシド及びその混合物の中から一つ選ばれる。
【0018】
好ましくは、式中R1又はR2は同一または異なる官能基であり、且つ、それぞれC−β−D−グルコピラノシル,C−β−D−ガラクトピラノシル,C−β−D−キシロピラノシル,C−β−D−アラビノピラノシル,C−α−L−アラビノピラノシル,C−α−L−ラムノピラノシル及びC−6−デオキシ−キシロ−ヘキソース−4−ウロシルの中の一つから選ばれる。
【0019】
好ましくは、該物質は網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を促進する効果を有する。
【0020】
本願発明の別の態様によれば、請求項1から4の一つに請求された物質が提供され、該物質はRPE細胞関連疾患の治療及び/又は予防に用いられる。
【0021】
好ましくは、RPE細胞関連疾患は、網膜色素上皮細胞退化、老年性黄斑変性、光受容体退化、糖尿病、動脈硬化、血管損傷、網膜神経細胞変性、無軸索細胞変性、視神経節細胞変性、ミュラー細胞変性、葡萄膜炎、網膜血管新生、増殖性網膜変性、網膜炎及びブルーフ(Bruch‘s)膜変性の中から少なくとも一つ選ばれるか、これらの合併症である。
【0022】
本願発明の更に別の態様によれば、請求項1の物質を含む組成物が提供される。
【0023】
好ましくは、該組成物は該物質の担体にとって生理学的に受容可能な担体を含有する。
【0024】
好ましくは、該生理学的に受容可能な担体は薬理学的担体である。
【0025】
好ましくは、該組成物は生理活性組成物である。
【0026】
好ましくは、該生理活性組成物は薬理学的組成物である。
【0027】
好ましくは、該組成物はRPE細胞の食作用を促進させる効果を有する。
【0028】
好ましくは、該組成物はRPE細胞関連疾患の治療及び/又は予防に使用される。
【0029】
本願発明の更に別の態様によれば、請求項1による物質の投与の工程を含む、RPE細胞の活性を促進する方法が提供される。
【0030】
好ましくは、該物質は生理学的に受容可能な担体により運搬される。
【0031】
好ましくは、該物質及び生理学的に受容可能な担体は生理活性組成物である。
【0032】
本願発明の更に別の態様によれば、請求項1〜4の一つによる物質の用途はRPE細胞関連疾患治療及び/又は予防するために薬剤を調整するためである。
【0033】
好ましくは、RPE細胞関連疾患は、網膜色素上皮細胞退化、老年性黄斑変性、光受容体退化、糖尿病、動脈硬化、血管損傷、網膜神経細胞変性、無軸突細胞変性、視神経節細胞変性、ミュラー細胞変性、葡萄膜炎、網膜血管新生、増殖性網膜変性、網膜炎及びブルーフス(Bruch‘s)膜変性の中から少なくとも一つ選ばれるか、これらの合併症である。
【0034】
本願発明の更に別の態様によれば、請求項1〜4による物質をRPE細胞に投与する工程を有する、網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を促進するための方法が提供される。
【0035】
本願発明の目的及び利点は、下記の詳細な説明及び添付の図面詳細に調べられた後、当業者により容易に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の好適な実施例のヘルバ・デンドロビー(Herba Dendorobii)抽出物の分離プロトコールのフローチャートである。
【図2】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3がLC−MSクロマトグラフィで分析して得られた結果を示す。
【図3】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3がHPLCクロマトグラフィで分析して得られた結果を示す。
【図4】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2がLC−MSクロマトグラフィで分析して得られた結果を示す。
【図5】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2がLC−MSクロマトグラフィで再度分析して得られた結果を示す。
【図6】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H3がLC−MSクロマトグラフィで分析して得られた結果を示す。
【図7】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H4をメタノール溶液中に溶解したUVスペクトラム図である。
【図8】本発明のヘルバ・デンドロビー(Herba Dendorobii)抽出物DCMPbL6,7D2H2H3がPRE細胞全食作用に対する効果の柱形図である。
【図9】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3がPRE細胞内食作用に対する効果の柱形図である。
【図10】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2がPRE細胞全食作用に対する効果の柱形図である。
【図11】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2がPRE細胞内食作用に対する効果の柱形図である。
【図12】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H3がPRE細胞全食作用に対する効果の柱形図である。
【図13】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H3がPRE細胞内食作用に対する効果の柱形図である。
【図14】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H4がPRE細胞全食作用に対する効果の柱形図である。
【図15】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H4がPRE細胞内食作用に対する効果の柱形図である。
【0037】
本願発明は以下の実施例の参照によって、より専門的に述べられる。本願の好ましい実施例の以下の詳細な説明は図示と詳細な説明のためにだけここに提出される。また、開示された精密な様式はそれのみに費やされたり限定されるものではない。
【0038】
(1)ヘルバ・デンドロビー抽出物の製造及びその精製活性成分の分離。
【0039】
図1を参照されたい。図1は本発明の好適な実施例のヘルバ・デンドロビー抽出物の分離プロトコールのフローチャートである。以下の方法でヘルバ・デンドロビー中の三種の活性成分を分離できる。1.9kgのヘルバ・デンドロビーをメタノールで三度抽出して、ヘルバ・デンドロビーメタノール抽出物を獲得し、そして該ヘルバ・デンドロビーのメタノール抽出物を再濃縮した後、完全に乾燥させてDCM(Herba Dendrobiiアルコール類粗抽出物)標準品を形成した。乾燥したDCM標準品を2Lのエタノール(EtOAc)中に溶解し、2Lの水で分抽を行って、エタノール及び第1水層を得た。該第1水層を再度2Lのエタノールで2度抽出して全てのエタノール層を収集した後、濃縮を進行し、完全に乾燥してエタノール抽出物を得た。乾燥したエタノール抽出物をそれぞれ4Lのヘキサン及び2Lのメタノールで三度分抽してヘキサン層及びメタノール層を得た。濃縮及び乾燥を経た後、乾燥後のヘキサン層及びメタノール層をそれぞれDCMPe/h標準品(Pe/h)及びDCMPe/m標準品(Pe/m)と命名した。このほかに脱イオン水を添加して第1水層を2Lに調整し、更にブタノール2Lで分配抽出してブタノール層及び第2水層を得、減圧、濃縮、乾燥後、乾燥したブタノール層及び第2水層をDCMPb標準品(Pb)及びDCMPw標準品(Pw)と命名した。Pb標準品はLH20ゲルで分子カラムクロマトグラフィ(2.5x107cm、移動相がメタノール:水=50:50)を行い、活性のスクリーニングを行った後、DCMPbL6,7と命名した標準品を得た。これに続いてダイアイオン(Diaion)SP−20SSでカラムクロマトグラフィ(1x30cm)の吸着を行い、移動相がイソプロパノール:水=20:80である場合、DCMPbL6,7D2と命名した溶出産物を得ることができた。移動相がイソプロパノール:水=30:70である場合、DCMPbL6,7D3と命名した溶出産物を得ることができた。そして移動相がイソパノール:水=40:60である場合、DCMPbL6,7D4と命名した溶出産物を得ることができた。更にDCMPbL6,7D2が再びHPLC逆相(reverse phase)C18カラムクロマトグラフィ(10x300mm)を通過した移動相がメタノール:水:酢酸=35:65:1にある場合に溶出し、DCMPbL6,7D2H2と命名した溶出産物を収集した。
【0040】
従来の研究の成果によれば、DCMPbL6,7D2H2は網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速及び高度糖化最終産物(AGE)分解を増加する効果を有する。更に、網膜色素上皮(RPE)細胞食作用の加速の効果を理解するために、更なる操作が実施された。
【0041】
DCMPbL6,7D2H2は再度HPLC逆相C18カラムクロマトグラフィ(10x300mm)により移動相がメタノール:水:酢酸=40:60:1を用いて溶出して、DCMPbL6,7D2H2H3と命名した溶出産物を得た。また、DCMPbL6,7D2H2H3は再度HPLC逆相C18カラムクロマトグラフィ(4.6x250mm)により移動相がメタノール:水=35:65で溶出して、DCMPbL6,7D2H2H3H2と命名した溶出産物を得た。更に、DCMPbL6,7D2H3もHPLC逆相C18カラムクロマトグラフィ(4.6x250mm)により移動相がメタノール:水=40:60で溶出した結果、DCMPbL6,7D2H2H3H3と命名した溶出産物を得た。また、DCMPbL6,7D2H2H3もHPLC逆相C18カラムクロマトグラフィ(4.6x250mm)により、移動相がメタノール:水=45:55で溶出し、DCMPbL6,7D2H2H3H4と命名した溶出産物を得た。
【0042】
図2は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3をLC−MSクロマトグラフィで分析した結果を示す図である。図2中の分析条件は:マイテイシル(Mightysil)RP−C18カラムが4.6x250mm、5μmであり;移動相が0〜80分間、メタノール/水=20/80から100%メタノールまでの濃度勾配、80〜100分間、100%メタノールであり;注入容量が50μlであり;注入重量が5μgであり;流速が0.25ml/分、UV波長337nmである。
【0043】
図3は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3をHPLCでクロマトグラフィ分析して得た結果を示す図である。図3中の分析条件は:マイテイシル(Mightysil)RP−C18カラムが4.6x250mm、5μmであり;移動相が0〜40分間、メタノール/水=35/65、40〜45分間、メタノール/水=35/65から100%メタノールへの濃度勾配であり、そして45〜60分間、100%メタノールであり;注入容量が250μl、注入重量250μgであり、流速が0.8ml/分、UV波長280nm、312nm及び337nmである。H2はDCMPbL6,7D2H2H3H2を示し、H3がDCMPbL6,7D2H2H3H3を示し、そしてH4がDCMPbL6,7D2H2H3H4を示す。
【0044】
図4は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2をLC−MSクロマトグラフィで分析して得た結果を示す図である。図4中の分析条件は:マイテイシル(Mightysil)RP−C18カラムが4.6x250mm、5μmであり;移動相が0〜80分間にメタノール/水=20/80から100%メタノールへの濃度勾配、80〜100分間に100%メタノールであり;注入容積が100μlであり、注入重量5μgであり;流速が0.8ml/分、UV波長220nmにおいてマススペクトロメータ(MS)でAPCI+モードの条件に設定した。
【0045】
図5は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2を別のLC−MSクロマトグラフィで再度分析して得た結果を示す図である。図5中の分析条件は:マイテイシル(Mightysil)RP−C18カラムが4.6x250mm、5μmであり;移動相が0〜80分間にメタノール/水=20/80から100%メタノールへの濃度勾配、80〜100分間に100%メタノールであり;注入容積が100μlであり、注入重量5μgであり;流速が0.8ml/分、UV波長220nmにおいてマススペクトロメータ(MS)でAPCI+モードの条件に設定した。
【0046】
図6は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H3をLC−MSクロマトグラフィで分析して得た結果を示す図である。図6中の分析条件は:マイテイシル(Mightysil)RP−C18カラムが4.6x250mm、5μmであり;移動相が0〜80分間にメタノール/水=20/80から100%メタノールへの濃度勾配、80〜100分間に100%メタノールであり;注入容積が100μlであり、注入重量5μgであり;流速が0.8ml/分、UV波長220nmにおいてマススペクトロメータ(MS)でAPCI+モードの条件に設定した。
【0047】
図7は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H4(50μg/ml)をメタノール溶液中に溶解したUVスペクトラム図である。図7に示すようにDCMPbL6,7D2H2H3H4は波長(入)が334nmでbandIを有し、波長275nmでbandIIを有しているので該化合物は一種のフラボノイド化合物と推論することができる。
【0048】
以上の結果から、DCMPbL6,7D2H2H3の分子量は約534であり、そしてアピゼニン6,8−ジ−C−α−L−アラビノピラノシド,アピゼニン6−C−β−D−キシロピラノシル−8−C−α−L−アラビノピラノシド,アピゼニン6−C−α−L−アラビノピラノシル−8−C−β−D−キシロピラノシド及びその混合物からその中の一つを選ぶことができるのを発見できる。その中でアピゼニン6−C−β−D−キシロピラノシル−8−C−α−L−アラビノピラノシドの構造は下記に示すとおりである。
【0049】
また、他に、DCMPbL6,7D2H2H3の赤外吸収スペクトル(IR)分析結果(図示せず)もDCMPbL6,7D2H2H3の構造特徴がアピゼニンの6,8−ジ−C−グリコシドの構造特徴と符合していることを示している。
【0050】
更に、DCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3及びDCMPbL6,7D2H2H3H4に試薬(塩化アルミニウム、酢酸ナトリウム又は酢酸ナトリウムと硼酸との混合溶液)を添加した後、紫外吸収スペクトル(UV)でその結果を分析した。UV結果からDCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3及びDCMPbL6,7D2H2H3H4の構造特徴がフラボノイド化合物(C−5及びC−7位置はヒドロキシル基であり、C−3位置はヒドロキシル基ではない)の構造特徴と符合していることを示している。
【0051】
更に、核磁気共鳴スペクトル(NMR)分析後、DCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3及びDCMPbL6,7D2H2H3H4の水素核磁気共鳴スペクトル(H−NHR)及び炭素核磁気共鳴スペクトル(C−NMR)の結果から、その対応する構造特徴がアピゼニンの6,8−Di−C−グリコシドの構造特徴と符合していることを示している。
【0052】
上記結果から、DCMPbL6,7D2H2の物質、例えば、DCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3及びDCMPbL6,7D2H2H3H4は、アピゼニンの6,8−ジ−C−グリコシド又はその誘導体であり、以下の構造を有していることを発見された。
式中、R1とR2は同一または異なる官能基であり、それぞれα−アラビノース(α−Ara)、β−アラビノース(β−Ara)及びキシロース(β−Xyl)の中の一つから選ばれる。R1とR2は同一または異なる単糖成分でありうる。
【0053】
天然のC−糖残基のC−糖鎖フラボノイドはC−β−D−グルコピラノシル,C−β−D−ガラクトピラノシル,C−β−D−キシロピラノシル,C−β−D−アラビノピラノシル,C−α−L−アラビノピラノシル,C−α−L−ラムノピラノシル及びC−6−デオキシ−キシロ−ヘキソース−4−ウロシルを含み、また、上記実験はDCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3、及びDCMPbL6,7D2H2H3H4がいずれも前記したC−グリコシドの主構造を有しているので、上記7種の天然のC−糖鎖フラボノイドからR1及びR2が選ばれる時、その中から48種の対応化合物を得ることができる。同様にR1及びR2が非天然のC−糖鎖残基から選ばれる時、482種の対応化合物を得ることができる。これから、もしC−4´、C−5及びC−7に位置する官能基がその他の官能基に置換された時、対応誘導体の数は莫大になることがわかる。表1はR1とR2の単糖成分の可能な天然官能基の組み合わせを表わす。
【表1】
【0054】
R1とR2の可能な非天然官能基の組み合わせは以下の表2に示すとおりである。
【表2】
【0055】
図8はRPE細胞全食作用に対する本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3の効果を示す柱形図である。図8に示すように、種々の濃度のDCMPbL6,7D2H2H3(0.1,1,10,100μg/ml)はいずれも網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速でき、その関連実験を以下のように簡単に説明する。1×104RPE細胞をウエルごとに96ウエル・マイクロプレートに注入し、5%ウシ胎児血清(FCS)を含有したDMEM培養液中において48時間培養した後、培養液を2%ウシ胎児血清を含有したDMEM培養液に取り替えた。しかる後、それぞれ異なる濃度のDCMPbL6,7D2H2H3をそれぞれ添加し、24時間後、50μlの2×107/ml標識FITC蛍光のROS細胞(FITC−ROS)を各ウエル中に添加して、4時間培養後、2%蔗糖を混合した燐酸塩緩衝液(PBS)で細胞表面に付着していないFITC−ROSを洗浄した。放射波長は485nmで、検出波長は530nmである。1420マルチラブル・カウンター(Multilable counter)(PE)測定システムによって、蛍光強度を検出し、検出した蛍光強度が全食作用の結果を表わす。蛍光クェンチ(Quench)染料を添加すれば、検出された蛍光強度は細胞食作用の結果を表わす。2%ウシ胎児血清(FCS)で処理したRPE細胞の食作用と比較した結果、*はP値が0.05よりも小さいことを表わし,**はP値が0.02よりも小さいことを表わし、***はP値が0.01よりも小さいことを表わし、****はP値が0.001よりも小さいことを表わす。また、図9は、本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3のRPE細胞内食作用に対する効果を示す柱形図である。
【0056】
図10は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2のRPE細胞全食作用に対する効果を示す柱形図である。図10に示すように種々の濃度(0.1,1,10,及び100μg/ml)のDCMPbL6,7D2H2H3H2はいずれも網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速でき、その関連実験内容は以下のように簡単に説明される。1×104RPE細胞をウエルごとに96ウエル・マイクロプレートに注入し、5%ウシ胎児血清(FCS)を含有したDMEM培養液中において48時間培養した後、培養液を2%ウシ胎児血清を含有したDMEM培養液に取り替えた。しかる後、それぞれ異なる濃度のDCMPbL6,7D2H2H3H2をそれぞれ添加し、24時間後、50μlの2×107/ml標識FITC蛍光のROS細胞(FITC−ROS)を各ウエル中に添加して、4時間培養後、2%蔗糖を混合した燐酸塩緩衝液(PBS)で細胞表面に付着していないFITC−ROSを洗浄した。放射波長は485nmで、検出波長は530nmである。1420マルチラブル・カウンター(Multilable counter)(PE)測定システムによって、蛍光強度を検出し、検出した蛍光強度が全食作用の結果を表わす。蛍光クェンチ(Quench)染料を添加すれば、検出された蛍光強度は細胞食作用の結果を表わす。2%ウシ胎児血清(FCS)で処理したRPE細胞の食作用と比較した結果、*はP値が0.05よりも小さいことを表わし,**はP値が0.02よりも小さいことを表わし、***はP値が0.01よりも小さいことを表わし、****はP値が0.001よりも小さいことを表わす。また、図11は、本発明のヘルバ・デンドリビー(Herba Dendrobii)抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2のRPE細胞内食作用に対する効果を示す柱形図である。
【0057】
また、図12は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H3のRPE細胞全食作用に対する効果を示す柱形図である。図12に示すように種々の濃度(0.1,1,10,及び100μg/ml)のDCMPbL6,7D2H2H3H3はいずれも網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速でき、その関連実験内容は以下のように簡単に説明される。1×104RPE細胞をウエルごとに96ウエル・マイクロプレートに注入し、5%ウシ胎児血清(FCS)を含有したDMEM培養液中において48時間培養した後、培養液を2%ウシ胎児血清を含有したDMEM培養液に取り替えた。しかる後、それぞれ異なる濃度のDCMPbL6,7D2H2H3H3をそれぞれ添加し、24時間後、50μlの2×107/ml標識FITC蛍光のROS細胞(FITC−ROS)を各ウエル中に添加して、4時間培養後、2%蔗糖を混合した燐酸塩緩衝液(PBS)で細胞表面に付着していないFITC−ROSを洗浄した。放射波長は485nmで、検出波長は530nmである。1420マルチラブル・カウンター(Multilable counter)(PE)測定システムによって、蛍光強度を検出し、検出した蛍光強度が全食作用の結果を表わす。蛍光クェンチ(Quench)染料を添加すれば、検出された蛍光強度は細胞食作用の結果を表わす。2%ウシ胎児血清(FCS)で処理したRPE細胞の食作用と比較した結果、*はP値が0.05よりも小さいことを表わし,**はP値が0.02よりも小さいことを表わし、***はP値が0.01よりも小さいことを表わし、****はP値が0.001よりも小さいことを表わす。また、図13は、本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H3のRPE細胞内食作用に対する効果を示す柱形図である。
【0058】
図14は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H4のRPE細胞全食作用に対する効果を示す柱形図である。図12に示すように種々の濃度(0.1,1,10,及び100μg/ml)のDCMPbL6,7D2H2H3H4はいずれも網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速でき、その関連実験内容は以下のように簡単に説明される。1×104RPE細胞をウエルごとに96ウエル・マイクロプレートに注入し、5%ウシ胎児血清(FCS)を含有したDMEM培養液中において48時間培養した後、培養液を2%ウシ胎児血清を含有したDMEM培養液に取り替えた。しかる後、それぞれ異なる濃度のDCMPbL6,7D2H2H3H3をそれぞれ添加し、24時間後、50μlの2×107/ml標識FITC蛍光のROS細胞(FITC−ROS)を各ウエル中に添加して、4時間培養後、2%蔗糖を混合した燐酸塩緩衝液(PBS)で細胞表面に付着していないFITC−ROSを洗浄した。放射波長は485nmで、検出波長は530nmである。1420マルチラブル・カウンターPE)測定システムによって、蛍光強度を検出し、検出した蛍光強度が全食作用の結果を表わす。蛍光クェンチ染料を添加すれば、検出された蛍光強度は細胞食作用の結果を表わす。2%ウシ胎児血清(FCS)で処理したRPE細胞の食作用と比較した結果、*はP値が0.05よりも小さいことを表わし,**はP値が0.02よりも小さいことを表わし、***はP値が0.01よりも小さいことを表わし、****はP値が0.001よりも小さいことを表わす。また、図15は、本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H4のRPE細胞内食作用に対する効果を示す柱形図である。
【0059】
図2〜7によれば、DCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3及びDCMPbL6,7D2H2H3H4はアピゼニンの6,8−ジ−C−グリコシドまたはその誘導体の可能性があり、以下の構造を有する。
式中、R1とR2は同一又は異なる官能基であり、それぞれ表1及び表2中の一つから選ばれる。
【0060】
図8ないし図15によれば、DCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3及びDCMPbL6,7D2H2H3H4は網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速することができる。上記に説明したように、上記構造を有する物質は網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速できることが理解される。
【0061】
従来の文献の研究に基づき、網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速できる物質を含む組成物は、下記の変性に対して効果を有し、該変性は、網膜色素上皮(RPE)細胞退化、老人性黄斑変性、光受容体退化、糖尿病、動脈硬化、血管損傷、網膜細胞変性、無軸索細胞変性、視神経節細胞変性、粘質(ミュラー)細胞変性、葡萄膜炎、網膜血管新生、増殖性網膜変性、網膜炎及びブルーフ膜変性及びその合併症の中から少なくとも一つ選ばれる。上記疾患は網膜色素上皮(RPE)細胞関連疾患として一般化されうる。
他に、本発明の実用範囲は極めて広いので、網膜色素上皮(RPE)細胞に対する食作用に局限せず、網膜上皮(RPE)細胞機能の増強及び損傷機能の回復に対しても寄与し、且つ関連する抽出物中に明確な化学構造の新規物質を有しているので、本発明は顕著な新規性及び進歩性を有する。本発明の技術的思想は上記の実施の態様に局限されるものではなく、クレームの範囲を逸脱しない限り、当業者による単純な技術的変更、修飾及び付加はいずれも本発明の技術的範囲に属する。
【技術分野】
【0001】
本発明は生物活性を有する植物抽出物の調整方法及び該関連抽出物に関し、特に水溶性有機溶剤又は水溶性有機溶剤と水との混合物を利用して植物抽出物を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アメリカ特許No.7,101,577に記載しているように、デンドロビウム(Dendrobium) 種は早くから眼科疾病の最も貴重な中国産ハーブ(薬剤)として知られている。我々の従来の研究結果によれば、ヘルバ・デンドロビー(Herba Dendrobii)(伝統的に治療効果を有するものとしてのデンドロビウム植物(Dendrobium plant)の総称)はもっとも生物活性を有することを発見している。しかしながら、近年の傾向によれば、その茎部で治療効果を有するデンドロビウム植物(Dendrobium plant)はカウリス・デンドロビー(Caulis Dendrobii)と通称され、その植物全体で治療効果を有するデンドロビウム植物(Dendrobium plant)はヘルバ・デンドロビー(Herba Dendroii)と通称されている。
【0003】
上記アメリカ特許において開示された内容によれば、網膜色素上皮(RPE)細胞は網膜表層の単層細胞であり、ブルーフ膜(Bruch’s membrane)と光受容体との間に位置していることが知られている。RPE細胞が効果的に脈絡膜及び網膜層との有毒物質及び代謝物を除去又は輸送できるので、非常に重要な網膜血管障壁の役割を果たしている。更に、RPE細胞は多くの機能、例えば光線の受容、食桿状細胞及び錐状細胞が光線の刺激を受けて脱落した桿体セグメント(ROS)の食作用、食作用胞の代謝、細胞外基質と黒色素(メラニン)とを合成、薬物を解毒、光受容体の外節再生時に不可欠な物質を提供、ビタミンAを貯蔵及び運送、ロドプシンを合成、網膜の接着力を形成の機能が挙げられる。RPE細胞の正常な食作用は網膜中の光受容体の健康状態の維持に対して相当大きな関連性を有しているので、一旦食作用機能が降下すると光受容体の退化を引起す。RPE細胞は年齢の増加につれて死滅又は他所に転移するが、老化したRPE細胞はなお食作用能力を有する。更に、桿状細胞の損失は錐状細胞の損失よりも多く、老人の視力減退及び疾病の発生を来たす場合があるので、RPE細胞機能の維持は視覚器官にとって非常に重要である。
【0004】
免疫系等において一酸化窒素(NO)は防御の役割を演ずると共に細胞に対して毒性を有し、血管系において一酸化窒素NOはいわゆる内皮細胞由来弛緩因子(EDRF)であり、そして中枢神経系統において一酸化窒素NOは神経伝達物質として作用する。
【0005】
一酸化窒素NOは、一酸化窒素シーンテターゼ(NOS)を介してL−アルギニンをL−シトルリンに転換する過程から解離される。一酸化窒素シーンテターゼ(NOS)はそれぞれニューロンNOS(neuronal NOS),内皮NOS(endothelial NOS)及び免疫NOS(immunologic NOS)の三種の異性体がある。その中で、ニューロンNOS及び内皮NOSは基本型であって、cNOSと略称され、その活性はカルシウムイオンCa++及びカルモジュリン(calmodulin)により調節をされ、解離した一酸化窒素NOの濃度はnM(10−9M)レベルであり、免疫NOSは誘導可能型であって、iNOSと略称されるがその活性はCa++及びカルモジュリン(calmodulin)の調節を受けず、解離した一酸化窒素NOの濃度はmM(10−6M)レベルである。また、cNOSとiNOSの遺伝子はそれぞれ異なる染色体上に位置する。
【0006】
網膜中において、一酸化窒素シーンテターゼ(NOS)は網膜神経細胞(retinal neuron)、RPE細胞、無軸索細胞(amacrine cell)及び視神経節細胞(ganglion cell)、粘質細胞(Muller cells)中に発見されていて、酸化窒素NOは生理学及び病理学において、重要な役割を演じ、眼の機能と密接に関係があることは明らかである。
【0007】
基礎環境又は局所貧血環境(ischemia)下において、一酸化窒素(NO)が網膜血流量を制御する能力を有することが既に発見されている。更には、一酸化窒素NOは糖尿病により引起こされた網膜内血管損害の程度を調節する可能性を有している。しかも、網膜グリア細胞(retinal glial cells)及びRPE細胞がLPS, IFN−γ, TNF−αの刺激を受けた場合、一酸化窒素シーンテターゼ(NOS)を大きく発現し、一酸化窒素(NO)を大量生産することから、つまり、一酸化窒素(NO)は網膜が発症し又は感染を受けた状況下において、防御、保護機構の役割を演ずることができることがわかる。
【0008】
しかしながら、現在に至るまで、光受容体におけるcNOSの位置及び特性はまだ明白ではなく、ある文献では光受容体の本体はcNOS活性を有しており、また他の文献では光受容体セグメントにおいてのみcNOS活性があり、そして解離した一酸化窒素(NO)は光の伝達、神経シナプスの信号伝達、生理学的状態下又は局所貧血状態下の網膜血流量等を調節することができると開示している。iNOSの活性は、また網膜の一部の細胞、例えばRPE細胞及び粘質細胞(Muller cells)等の細胞中において発見されており、そしてある文献では牛網膜色素上皮細胞中の培地において、IFN−γ,LPS,TNF−αの刺激後約12時間経過すれば、大量の一酸化窒素(NO)を解離し、少なくとも96時間持続すると示唆している。サイトカイン(cytokines)のRPE細胞のiNOS活性上における影響は非常に複雑であり、例えば、牛RPEにおいて、LPS及びIFN−γ又はTNF−αの刺激が、大量の一酸化窒素(NO)を解離するのに必要である。bFGFはNOSを抑制する作用を有するが、TGF−βは僅かにNOSの機能を促進する作用を有するにすぎない。ヒトRPE細胞については、必ずインターロイキン−1β(Interleukin−1β)の刺激があってから大量の一酸化窒素(NO)を解離できるが、LPSはヒトRPE刺激するために必要な要素ではなく、TGF−βは明らかにヒトRPE中の一酸化窒素(NO)の解離を抑制できる。
【0009】
細菌の感染を受けた場合、iNOSの発現は有益であり、それにより解離した一酸化窒素(NO)は侵入した微生物を殺すことができ、反対に、ある状況下において、解離した一酸化窒素(NO)を大量に発生しすぎると、却って解離した一酸化窒素NOは自己免疫疾患又は敗血性ショックを引起す。1994年に初めて一酸化窒素NOと眼底の炎症との間係を説明する証拠が提出され、本願出願人はiNOS抑制剤が内毒素により引起された葡萄膜炎を断絶できることをも発見した。他方、IFN−γ及びLPSでRPEを処理して大量の一酸化窒素(NO)を発生させる作用がaFGF、bFGFにより抑制され、且つ抑制はiNOSの発現であり、iNOS mRNAの安定性でないと示唆された。したがって、本願出願人は、FGFは内毒素又はサイトカインにより引起された傷害を受けないようにRPEを保護できると推測した。これからiNOSは網膜中において免役調節の役割をも演ずることができることがわかる。
【0010】
通常の網膜疾患は、糖尿病により引起こされた増殖性糖尿病性網膜症(proliferative diabetic retinopathy)増殖性ガラス体網膜症(proliferative vitreoretinopathy)及び老年性黄斑部変性(Aged−macular degeneration)等があり、そして網膜の疾患はあらゆる眼科疾病において最も治療しにくい疾病である。高血糖(hyperglycemia)が糖化作用の発生を加速して高度に糖化した最終生産物(AGEs)を産出するのは、ずっと糖尿病末期に発症した各種血管・神経併発症と緊密に関係するものと信じられてきた。AGEの形成は還元糖のアルデヒド基又はケトン基が蛋白質の第一級アミノ酸と非酵素的な作用を通して不安定なシッフ塩基(Schiff base)を形成し、更にアマドリ転移(Amadori rearrangement)を通してアマドリ(Amadori)産物を産出してなる。非酵素糖化作用は不可逆反応で且つ多くは長期半減期を有する蛋白質上に発生するのは周知であり、AGEの形成が交差反応(クロス・リンキング)を生じる場合、蛋白質分子はプロテアーゼに対して抵抗性を有するようになるので、AGEの累積は老化の兆候である。年齢の増加につれて、脳部位錐状神経(pyramidal neurons)、ブルーフ膜(Bruch’s membrane)、膠原質蛋白(コラーゲン)中のAGEの含量もこれに伴って上昇する。非酵素糖化作用の反応速度は一次反応であり、反応速度は還元糖と蛋白質の濃度に依存する。通常、糖尿病患者の血糖値は健常人よりも高いので、糖化作用は加速するようになる。糖尿病患者の病気または症状は、動脈粥状硬化、腎臓損傷、血管損傷、神経変性、網膜変性及び卒中を含み、糖尿病患者が健常人よりも高い罹患可能性をもつのは周知のことであり、いずれもAGEと直接的な関係を有する。糖尿病に由来する赤血球の凝集は、主としてアルブミンが糖化された後、その三次構造に変化を生じ、抗凝集の機能を喪失することに起因する。他の研究によれば、糖尿病が腎臓絲球体の透過性の変化を誘引するのは、アルブミンの糖化に起因するもので、賢小球基膜(glomerular basement membrane)の糖化によるものでない。そして糖化された蛋白質はその脳血管障壁のより高い通透能力を持つ。
【0011】
AGEは細胞表面上の一部の受容体又は蛋白質と結合できる。公知の受容体として、スカベンジャ受容体第一型および第二型、AGE受容体(RAGE)、OST−48 (AGE−R1), 80K−H リンタンパク質(AGE−R2), 及び ガレクチン−3(galectin−3) (AGE−R3)が知られている。また、単核球、マクロファージ、内皮細胞、グリア細胞において、AGE受容体が発見された。これらの細胞がAGEに活性化されたとき、細胞外基質蛋白、血管附着分子及び生長因子の発現量を増加させ、異なる細胞型及び信号伝達に依存して、例えば、走化性(ケモタキシス)、血管新生(angiogenesis)、酸化ストレス、細胞増殖又はプログラム細胞死を前記状況に伴って生じる。ヒト脳部の各種細胞は、異なる高度糖化終産物受容体を発現可能であり、AGEを遊離する。この遊離能力が喪失した時、細胞外にAGEの累積をもたらし、中枢神経系統の炎症反応を誘発する。そしてAGEはPRE細胞の網膜血管内皮細胞生長因子、及びPDGF−βの発現を誘導させる。AGEは老化過程中において重要な役割を演ずるので、糖化アルブミンによる病理モデルは新薬の開発に非常に重要である。
【0012】
肝細胞成長因子/散乱因子(HGF/SF)は肝臓で最も重要な成長因子であり、60KDaの重鎖(α鎖)及び30KDaの軽鎖(β鎖)をジスルフィド結合で結合して形成されたものである。新しく形成したHGF/SFはプレプロ HGF/SFであり、酵素で修飾が必要で、ヘテロダイメトリック形に形成した後、生物活性を有する。HGFは多機能の生長因子であり、種々の細胞に対して生長を調節する能力があるばかりでなく、組織回復及び器管再生においても重要な役割を演じている。HGFは体内に十分広く分布しており、その内肝臓の生産量が最大であり、更に、膵臓、胸腺、血液、小腸、胎盤等でも発見されている。また、HGF/SF又はHGF/SF受容体は眼の分泌物及び組織中、例えば涙液・涙腺・角膜に存在しており、これからHGFは眼を調整する役割を有すると推測される。更に、網膜色素上皮(RPE)細胞は同時にHGF及びHGF受容体があるばかりでなく、c−Metのチロシン燐酸化反応もずっと持続的に発現しているので、HGFは網膜色素上皮(RPE)細胞について自己刺激作用をもつ成長因子であり、且つ網膜の分化、傷口の治癒及び網膜血管の新生と関連する。
【0013】
以上の内容から分かるように、RPE細胞は網膜調整機構上で非常に重要な役割を演じている。すなわち、チャイニーズ・ハーブであるデンドロビウム(Dendrobium)種はRPE細胞の部分機能もしくは調整制御機制を増強又は抑制することが知られている。特に、デンドロビウム(Dendrobium)種がRPE細胞の食作用、RPE細胞の一酸化窒素(NO)の形成及び肝細胞成長因子(HGF)の遺伝子発現を増強できることにある。デンドロビウム(Dendrobium)種は、標準状態又は局所失血環境下において、RPE細胞中のbFGF、VEGF及びTGF−βの遺伝子発現量を抑制できる。したがって、RPE細胞活性を増強する因子に関する研究は、人体の健康の改善に対して重要である。過去における研究では、ヘルバ・デンドロビー(Herba Dendrobii)抽出物がRPE細胞の食作用を加速又はAGE分解を増加する効果を有すると知られているが、更に、そのPREの食作用の効果を制御するためにヘルバ・デンドロビー(Herba Dendrobii)からの抽出物に対してより深く理解しなければならない。したがって、出願人は従来の技術の欠点にかんがみ、鋭意に試験及び研究を重ねた結果、ついに本発明の「デンドロビウム(Dendrobium)植物からの抽出物及びその製造方法」を案出した。
【0014】
[発明の内容]
本発明は、以下の式1の構造を有する物質を包含する組成物を提供する。
式中R1とR2は単糖部分である。
【0015】
好ましくは、式中R1とR2は同一又は異なる官能基の中の一つである。
【0016】
好ましくは、式中R1またはR2はそれぞれα−アラビノース、β−アラビノース及びβ−キシロースの中の一つから選ばれる。
【0017】
好ましくは、該物質はアピゼニン6,8−ジ−C−α−L−アラビノピラノシド,アピゼニン6−C−β−D−キシロピラノシル−8−C−α−L−アラビノピラノシド,アピゼニン6−C−α−L−アラビノピラノシド−8−C−β−D−キシロピラノシド及びその混合物の中から一つ選ばれる。
【0018】
好ましくは、式中R1又はR2は同一または異なる官能基であり、且つ、それぞれC−β−D−グルコピラノシル,C−β−D−ガラクトピラノシル,C−β−D−キシロピラノシル,C−β−D−アラビノピラノシル,C−α−L−アラビノピラノシル,C−α−L−ラムノピラノシル及びC−6−デオキシ−キシロ−ヘキソース−4−ウロシルの中の一つから選ばれる。
【0019】
好ましくは、該物質は網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を促進する効果を有する。
【0020】
本願発明の別の態様によれば、請求項1から4の一つに請求された物質が提供され、該物質はRPE細胞関連疾患の治療及び/又は予防に用いられる。
【0021】
好ましくは、RPE細胞関連疾患は、網膜色素上皮細胞退化、老年性黄斑変性、光受容体退化、糖尿病、動脈硬化、血管損傷、網膜神経細胞変性、無軸索細胞変性、視神経節細胞変性、ミュラー細胞変性、葡萄膜炎、網膜血管新生、増殖性網膜変性、網膜炎及びブルーフ(Bruch‘s)膜変性の中から少なくとも一つ選ばれるか、これらの合併症である。
【0022】
本願発明の更に別の態様によれば、請求項1の物質を含む組成物が提供される。
【0023】
好ましくは、該組成物は該物質の担体にとって生理学的に受容可能な担体を含有する。
【0024】
好ましくは、該生理学的に受容可能な担体は薬理学的担体である。
【0025】
好ましくは、該組成物は生理活性組成物である。
【0026】
好ましくは、該生理活性組成物は薬理学的組成物である。
【0027】
好ましくは、該組成物はRPE細胞の食作用を促進させる効果を有する。
【0028】
好ましくは、該組成物はRPE細胞関連疾患の治療及び/又は予防に使用される。
【0029】
本願発明の更に別の態様によれば、請求項1による物質の投与の工程を含む、RPE細胞の活性を促進する方法が提供される。
【0030】
好ましくは、該物質は生理学的に受容可能な担体により運搬される。
【0031】
好ましくは、該物質及び生理学的に受容可能な担体は生理活性組成物である。
【0032】
本願発明の更に別の態様によれば、請求項1〜4の一つによる物質の用途はRPE細胞関連疾患治療及び/又は予防するために薬剤を調整するためである。
【0033】
好ましくは、RPE細胞関連疾患は、網膜色素上皮細胞退化、老年性黄斑変性、光受容体退化、糖尿病、動脈硬化、血管損傷、網膜神経細胞変性、無軸突細胞変性、視神経節細胞変性、ミュラー細胞変性、葡萄膜炎、網膜血管新生、増殖性網膜変性、網膜炎及びブルーフス(Bruch‘s)膜変性の中から少なくとも一つ選ばれるか、これらの合併症である。
【0034】
本願発明の更に別の態様によれば、請求項1〜4による物質をRPE細胞に投与する工程を有する、網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を促進するための方法が提供される。
【0035】
本願発明の目的及び利点は、下記の詳細な説明及び添付の図面詳細に調べられた後、当業者により容易に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の好適な実施例のヘルバ・デンドロビー(Herba Dendorobii)抽出物の分離プロトコールのフローチャートである。
【図2】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3がLC−MSクロマトグラフィで分析して得られた結果を示す。
【図3】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3がHPLCクロマトグラフィで分析して得られた結果を示す。
【図4】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2がLC−MSクロマトグラフィで分析して得られた結果を示す。
【図5】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2がLC−MSクロマトグラフィで再度分析して得られた結果を示す。
【図6】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H3がLC−MSクロマトグラフィで分析して得られた結果を示す。
【図7】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H4をメタノール溶液中に溶解したUVスペクトラム図である。
【図8】本発明のヘルバ・デンドロビー(Herba Dendorobii)抽出物DCMPbL6,7D2H2H3がPRE細胞全食作用に対する効果の柱形図である。
【図9】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3がPRE細胞内食作用に対する効果の柱形図である。
【図10】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2がPRE細胞全食作用に対する効果の柱形図である。
【図11】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2がPRE細胞内食作用に対する効果の柱形図である。
【図12】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H3がPRE細胞全食作用に対する効果の柱形図である。
【図13】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H3がPRE細胞内食作用に対する効果の柱形図である。
【図14】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H4がPRE細胞全食作用に対する効果の柱形図である。
【図15】本発明のヘルバ・デンドロビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H4がPRE細胞内食作用に対する効果の柱形図である。
【0037】
本願発明は以下の実施例の参照によって、より専門的に述べられる。本願の好ましい実施例の以下の詳細な説明は図示と詳細な説明のためにだけここに提出される。また、開示された精密な様式はそれのみに費やされたり限定されるものではない。
【0038】
(1)ヘルバ・デンドロビー抽出物の製造及びその精製活性成分の分離。
【0039】
図1を参照されたい。図1は本発明の好適な実施例のヘルバ・デンドロビー抽出物の分離プロトコールのフローチャートである。以下の方法でヘルバ・デンドロビー中の三種の活性成分を分離できる。1.9kgのヘルバ・デンドロビーをメタノールで三度抽出して、ヘルバ・デンドロビーメタノール抽出物を獲得し、そして該ヘルバ・デンドロビーのメタノール抽出物を再濃縮した後、完全に乾燥させてDCM(Herba Dendrobiiアルコール類粗抽出物)標準品を形成した。乾燥したDCM標準品を2Lのエタノール(EtOAc)中に溶解し、2Lの水で分抽を行って、エタノール及び第1水層を得た。該第1水層を再度2Lのエタノールで2度抽出して全てのエタノール層を収集した後、濃縮を進行し、完全に乾燥してエタノール抽出物を得た。乾燥したエタノール抽出物をそれぞれ4Lのヘキサン及び2Lのメタノールで三度分抽してヘキサン層及びメタノール層を得た。濃縮及び乾燥を経た後、乾燥後のヘキサン層及びメタノール層をそれぞれDCMPe/h標準品(Pe/h)及びDCMPe/m標準品(Pe/m)と命名した。このほかに脱イオン水を添加して第1水層を2Lに調整し、更にブタノール2Lで分配抽出してブタノール層及び第2水層を得、減圧、濃縮、乾燥後、乾燥したブタノール層及び第2水層をDCMPb標準品(Pb)及びDCMPw標準品(Pw)と命名した。Pb標準品はLH20ゲルで分子カラムクロマトグラフィ(2.5x107cm、移動相がメタノール:水=50:50)を行い、活性のスクリーニングを行った後、DCMPbL6,7と命名した標準品を得た。これに続いてダイアイオン(Diaion)SP−20SSでカラムクロマトグラフィ(1x30cm)の吸着を行い、移動相がイソプロパノール:水=20:80である場合、DCMPbL6,7D2と命名した溶出産物を得ることができた。移動相がイソプロパノール:水=30:70である場合、DCMPbL6,7D3と命名した溶出産物を得ることができた。そして移動相がイソパノール:水=40:60である場合、DCMPbL6,7D4と命名した溶出産物を得ることができた。更にDCMPbL6,7D2が再びHPLC逆相(reverse phase)C18カラムクロマトグラフィ(10x300mm)を通過した移動相がメタノール:水:酢酸=35:65:1にある場合に溶出し、DCMPbL6,7D2H2と命名した溶出産物を収集した。
【0040】
従来の研究の成果によれば、DCMPbL6,7D2H2は網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速及び高度糖化最終産物(AGE)分解を増加する効果を有する。更に、網膜色素上皮(RPE)細胞食作用の加速の効果を理解するために、更なる操作が実施された。
【0041】
DCMPbL6,7D2H2は再度HPLC逆相C18カラムクロマトグラフィ(10x300mm)により移動相がメタノール:水:酢酸=40:60:1を用いて溶出して、DCMPbL6,7D2H2H3と命名した溶出産物を得た。また、DCMPbL6,7D2H2H3は再度HPLC逆相C18カラムクロマトグラフィ(4.6x250mm)により移動相がメタノール:水=35:65で溶出して、DCMPbL6,7D2H2H3H2と命名した溶出産物を得た。更に、DCMPbL6,7D2H3もHPLC逆相C18カラムクロマトグラフィ(4.6x250mm)により移動相がメタノール:水=40:60で溶出した結果、DCMPbL6,7D2H2H3H3と命名した溶出産物を得た。また、DCMPbL6,7D2H2H3もHPLC逆相C18カラムクロマトグラフィ(4.6x250mm)により、移動相がメタノール:水=45:55で溶出し、DCMPbL6,7D2H2H3H4と命名した溶出産物を得た。
【0042】
図2は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3をLC−MSクロマトグラフィで分析した結果を示す図である。図2中の分析条件は:マイテイシル(Mightysil)RP−C18カラムが4.6x250mm、5μmであり;移動相が0〜80分間、メタノール/水=20/80から100%メタノールまでの濃度勾配、80〜100分間、100%メタノールであり;注入容量が50μlであり;注入重量が5μgであり;流速が0.25ml/分、UV波長337nmである。
【0043】
図3は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3をHPLCでクロマトグラフィ分析して得た結果を示す図である。図3中の分析条件は:マイテイシル(Mightysil)RP−C18カラムが4.6x250mm、5μmであり;移動相が0〜40分間、メタノール/水=35/65、40〜45分間、メタノール/水=35/65から100%メタノールへの濃度勾配であり、そして45〜60分間、100%メタノールであり;注入容量が250μl、注入重量250μgであり、流速が0.8ml/分、UV波長280nm、312nm及び337nmである。H2はDCMPbL6,7D2H2H3H2を示し、H3がDCMPbL6,7D2H2H3H3を示し、そしてH4がDCMPbL6,7D2H2H3H4を示す。
【0044】
図4は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2をLC−MSクロマトグラフィで分析して得た結果を示す図である。図4中の分析条件は:マイテイシル(Mightysil)RP−C18カラムが4.6x250mm、5μmであり;移動相が0〜80分間にメタノール/水=20/80から100%メタノールへの濃度勾配、80〜100分間に100%メタノールであり;注入容積が100μlであり、注入重量5μgであり;流速が0.8ml/分、UV波長220nmにおいてマススペクトロメータ(MS)でAPCI+モードの条件に設定した。
【0045】
図5は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2を別のLC−MSクロマトグラフィで再度分析して得た結果を示す図である。図5中の分析条件は:マイテイシル(Mightysil)RP−C18カラムが4.6x250mm、5μmであり;移動相が0〜80分間にメタノール/水=20/80から100%メタノールへの濃度勾配、80〜100分間に100%メタノールであり;注入容積が100μlであり、注入重量5μgであり;流速が0.8ml/分、UV波長220nmにおいてマススペクトロメータ(MS)でAPCI+モードの条件に設定した。
【0046】
図6は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H3をLC−MSクロマトグラフィで分析して得た結果を示す図である。図6中の分析条件は:マイテイシル(Mightysil)RP−C18カラムが4.6x250mm、5μmであり;移動相が0〜80分間にメタノール/水=20/80から100%メタノールへの濃度勾配、80〜100分間に100%メタノールであり;注入容積が100μlであり、注入重量5μgであり;流速が0.8ml/分、UV波長220nmにおいてマススペクトロメータ(MS)でAPCI+モードの条件に設定した。
【0047】
図7は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H4(50μg/ml)をメタノール溶液中に溶解したUVスペクトラム図である。図7に示すようにDCMPbL6,7D2H2H3H4は波長(入)が334nmでbandIを有し、波長275nmでbandIIを有しているので該化合物は一種のフラボノイド化合物と推論することができる。
【0048】
以上の結果から、DCMPbL6,7D2H2H3の分子量は約534であり、そしてアピゼニン6,8−ジ−C−α−L−アラビノピラノシド,アピゼニン6−C−β−D−キシロピラノシル−8−C−α−L−アラビノピラノシド,アピゼニン6−C−α−L−アラビノピラノシル−8−C−β−D−キシロピラノシド及びその混合物からその中の一つを選ぶことができるのを発見できる。その中でアピゼニン6−C−β−D−キシロピラノシル−8−C−α−L−アラビノピラノシドの構造は下記に示すとおりである。
【0049】
また、他に、DCMPbL6,7D2H2H3の赤外吸収スペクトル(IR)分析結果(図示せず)もDCMPbL6,7D2H2H3の構造特徴がアピゼニンの6,8−ジ−C−グリコシドの構造特徴と符合していることを示している。
【0050】
更に、DCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3及びDCMPbL6,7D2H2H3H4に試薬(塩化アルミニウム、酢酸ナトリウム又は酢酸ナトリウムと硼酸との混合溶液)を添加した後、紫外吸収スペクトル(UV)でその結果を分析した。UV結果からDCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3及びDCMPbL6,7D2H2H3H4の構造特徴がフラボノイド化合物(C−5及びC−7位置はヒドロキシル基であり、C−3位置はヒドロキシル基ではない)の構造特徴と符合していることを示している。
【0051】
更に、核磁気共鳴スペクトル(NMR)分析後、DCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3及びDCMPbL6,7D2H2H3H4の水素核磁気共鳴スペクトル(H−NHR)及び炭素核磁気共鳴スペクトル(C−NMR)の結果から、その対応する構造特徴がアピゼニンの6,8−Di−C−グリコシドの構造特徴と符合していることを示している。
【0052】
上記結果から、DCMPbL6,7D2H2の物質、例えば、DCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3及びDCMPbL6,7D2H2H3H4は、アピゼニンの6,8−ジ−C−グリコシド又はその誘導体であり、以下の構造を有していることを発見された。
式中、R1とR2は同一または異なる官能基であり、それぞれα−アラビノース(α−Ara)、β−アラビノース(β−Ara)及びキシロース(β−Xyl)の中の一つから選ばれる。R1とR2は同一または異なる単糖成分でありうる。
【0053】
天然のC−糖残基のC−糖鎖フラボノイドはC−β−D−グルコピラノシル,C−β−D−ガラクトピラノシル,C−β−D−キシロピラノシル,C−β−D−アラビノピラノシル,C−α−L−アラビノピラノシル,C−α−L−ラムノピラノシル及びC−6−デオキシ−キシロ−ヘキソース−4−ウロシルを含み、また、上記実験はDCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3、及びDCMPbL6,7D2H2H3H4がいずれも前記したC−グリコシドの主構造を有しているので、上記7種の天然のC−糖鎖フラボノイドからR1及びR2が選ばれる時、その中から48種の対応化合物を得ることができる。同様にR1及びR2が非天然のC−糖鎖残基から選ばれる時、482種の対応化合物を得ることができる。これから、もしC−4´、C−5及びC−7に位置する官能基がその他の官能基に置換された時、対応誘導体の数は莫大になることがわかる。表1はR1とR2の単糖成分の可能な天然官能基の組み合わせを表わす。
【表1】
【0054】
R1とR2の可能な非天然官能基の組み合わせは以下の表2に示すとおりである。
【表2】
【0055】
図8はRPE細胞全食作用に対する本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3の効果を示す柱形図である。図8に示すように、種々の濃度のDCMPbL6,7D2H2H3(0.1,1,10,100μg/ml)はいずれも網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速でき、その関連実験を以下のように簡単に説明する。1×104RPE細胞をウエルごとに96ウエル・マイクロプレートに注入し、5%ウシ胎児血清(FCS)を含有したDMEM培養液中において48時間培養した後、培養液を2%ウシ胎児血清を含有したDMEM培養液に取り替えた。しかる後、それぞれ異なる濃度のDCMPbL6,7D2H2H3をそれぞれ添加し、24時間後、50μlの2×107/ml標識FITC蛍光のROS細胞(FITC−ROS)を各ウエル中に添加して、4時間培養後、2%蔗糖を混合した燐酸塩緩衝液(PBS)で細胞表面に付着していないFITC−ROSを洗浄した。放射波長は485nmで、検出波長は530nmである。1420マルチラブル・カウンター(Multilable counter)(PE)測定システムによって、蛍光強度を検出し、検出した蛍光強度が全食作用の結果を表わす。蛍光クェンチ(Quench)染料を添加すれば、検出された蛍光強度は細胞食作用の結果を表わす。2%ウシ胎児血清(FCS)で処理したRPE細胞の食作用と比較した結果、*はP値が0.05よりも小さいことを表わし,**はP値が0.02よりも小さいことを表わし、***はP値が0.01よりも小さいことを表わし、****はP値が0.001よりも小さいことを表わす。また、図9は、本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3のRPE細胞内食作用に対する効果を示す柱形図である。
【0056】
図10は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2のRPE細胞全食作用に対する効果を示す柱形図である。図10に示すように種々の濃度(0.1,1,10,及び100μg/ml)のDCMPbL6,7D2H2H3H2はいずれも網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速でき、その関連実験内容は以下のように簡単に説明される。1×104RPE細胞をウエルごとに96ウエル・マイクロプレートに注入し、5%ウシ胎児血清(FCS)を含有したDMEM培養液中において48時間培養した後、培養液を2%ウシ胎児血清を含有したDMEM培養液に取り替えた。しかる後、それぞれ異なる濃度のDCMPbL6,7D2H2H3H2をそれぞれ添加し、24時間後、50μlの2×107/ml標識FITC蛍光のROS細胞(FITC−ROS)を各ウエル中に添加して、4時間培養後、2%蔗糖を混合した燐酸塩緩衝液(PBS)で細胞表面に付着していないFITC−ROSを洗浄した。放射波長は485nmで、検出波長は530nmである。1420マルチラブル・カウンター(Multilable counter)(PE)測定システムによって、蛍光強度を検出し、検出した蛍光強度が全食作用の結果を表わす。蛍光クェンチ(Quench)染料を添加すれば、検出された蛍光強度は細胞食作用の結果を表わす。2%ウシ胎児血清(FCS)で処理したRPE細胞の食作用と比較した結果、*はP値が0.05よりも小さいことを表わし,**はP値が0.02よりも小さいことを表わし、***はP値が0.01よりも小さいことを表わし、****はP値が0.001よりも小さいことを表わす。また、図11は、本発明のヘルバ・デンドリビー(Herba Dendrobii)抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H2のRPE細胞内食作用に対する効果を示す柱形図である。
【0057】
また、図12は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H3のRPE細胞全食作用に対する効果を示す柱形図である。図12に示すように種々の濃度(0.1,1,10,及び100μg/ml)のDCMPbL6,7D2H2H3H3はいずれも網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速でき、その関連実験内容は以下のように簡単に説明される。1×104RPE細胞をウエルごとに96ウエル・マイクロプレートに注入し、5%ウシ胎児血清(FCS)を含有したDMEM培養液中において48時間培養した後、培養液を2%ウシ胎児血清を含有したDMEM培養液に取り替えた。しかる後、それぞれ異なる濃度のDCMPbL6,7D2H2H3H3をそれぞれ添加し、24時間後、50μlの2×107/ml標識FITC蛍光のROS細胞(FITC−ROS)を各ウエル中に添加して、4時間培養後、2%蔗糖を混合した燐酸塩緩衝液(PBS)で細胞表面に付着していないFITC−ROSを洗浄した。放射波長は485nmで、検出波長は530nmである。1420マルチラブル・カウンター(Multilable counter)(PE)測定システムによって、蛍光強度を検出し、検出した蛍光強度が全食作用の結果を表わす。蛍光クェンチ(Quench)染料を添加すれば、検出された蛍光強度は細胞食作用の結果を表わす。2%ウシ胎児血清(FCS)で処理したRPE細胞の食作用と比較した結果、*はP値が0.05よりも小さいことを表わし,**はP値が0.02よりも小さいことを表わし、***はP値が0.01よりも小さいことを表わし、****はP値が0.001よりも小さいことを表わす。また、図13は、本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H3のRPE細胞内食作用に対する効果を示す柱形図である。
【0058】
図14は本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H4のRPE細胞全食作用に対する効果を示す柱形図である。図12に示すように種々の濃度(0.1,1,10,及び100μg/ml)のDCMPbL6,7D2H2H3H4はいずれも網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速でき、その関連実験内容は以下のように簡単に説明される。1×104RPE細胞をウエルごとに96ウエル・マイクロプレートに注入し、5%ウシ胎児血清(FCS)を含有したDMEM培養液中において48時間培養した後、培養液を2%ウシ胎児血清を含有したDMEM培養液に取り替えた。しかる後、それぞれ異なる濃度のDCMPbL6,7D2H2H3H3をそれぞれ添加し、24時間後、50μlの2×107/ml標識FITC蛍光のROS細胞(FITC−ROS)を各ウエル中に添加して、4時間培養後、2%蔗糖を混合した燐酸塩緩衝液(PBS)で細胞表面に付着していないFITC−ROSを洗浄した。放射波長は485nmで、検出波長は530nmである。1420マルチラブル・カウンターPE)測定システムによって、蛍光強度を検出し、検出した蛍光強度が全食作用の結果を表わす。蛍光クェンチ染料を添加すれば、検出された蛍光強度は細胞食作用の結果を表わす。2%ウシ胎児血清(FCS)で処理したRPE細胞の食作用と比較した結果、*はP値が0.05よりも小さいことを表わし,**はP値が0.02よりも小さいことを表わし、***はP値が0.01よりも小さいことを表わし、****はP値が0.001よりも小さいことを表わす。また、図15は、本発明のヘルバ・デンドリビー抽出物DCMPbL6,7D2H2H3H4のRPE細胞内食作用に対する効果を示す柱形図である。
【0059】
図2〜7によれば、DCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3及びDCMPbL6,7D2H2H3H4はアピゼニンの6,8−ジ−C−グリコシドまたはその誘導体の可能性があり、以下の構造を有する。
式中、R1とR2は同一又は異なる官能基であり、それぞれ表1及び表2中の一つから選ばれる。
【0060】
図8ないし図15によれば、DCMPbL6,7D2H2H3、DCMPbL6,7D2H2H3H2、DCMPbL6,7D2H2H3H3及びDCMPbL6,7D2H2H3H4は網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速することができる。上記に説明したように、上記構造を有する物質は網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速できることが理解される。
【0061】
従来の文献の研究に基づき、網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速できる物質を含む組成物は、下記の変性に対して効果を有し、該変性は、網膜色素上皮(RPE)細胞退化、老人性黄斑変性、光受容体退化、糖尿病、動脈硬化、血管損傷、網膜細胞変性、無軸索細胞変性、視神経節細胞変性、粘質(ミュラー)細胞変性、葡萄膜炎、網膜血管新生、増殖性網膜変性、網膜炎及びブルーフ膜変性及びその合併症の中から少なくとも一つ選ばれる。上記疾患は網膜色素上皮(RPE)細胞関連疾患として一般化されうる。
他に、本発明の実用範囲は極めて広いので、網膜色素上皮(RPE)細胞に対する食作用に局限せず、網膜上皮(RPE)細胞機能の増強及び損傷機能の回復に対しても寄与し、且つ関連する抽出物中に明確な化学構造の新規物質を有しているので、本発明は顕著な新規性及び進歩性を有する。本発明の技術的思想は上記の実施の態様に局限されるものではなく、クレームの範囲を逸脱しない限り、当業者による単純な技術的変更、修飾及び付加はいずれも本発明の技術的範囲に属する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1の構造を有する物質:
式中、R1とR2は同一又は異なる単糖成分の一つである。
【請求項2】
請求項1の物質であって、式中、R1とR2はそれぞれα−アラビノース、β−アラビノース及びβ−キシロースの中の一つから選ばれることを特徴とする物質。
【請求項3】
請求項1の物質であって、式中、該物質はアピゼニン6,8−ジ−C−α−L−アラビノピラノシド,アピゼニン6−C−β−D−キシロピラノシル−8−C−α−L−アラビノピラノシド,アピゼニン6−C−α−L−アラビノピラノシル−8−C−β−D−キシロピラノシド及びその混合物から選ばれることを特徴とする物質。
【請求項4】
請求項1の物質であって、式中、R1とR2は同一又は異なる官能基であり、それぞれC−β−D−グルコピラノシル基,C−β−D−ガラクトピラノシル基,C−β−D−キシロピラノシル基,C−β−D−アラビノピラノシル基,C−α−L−アラビノピラノシル基,C−α−L−ラムノピラノシル基及びC−6−デオキシ−キシロ−ヘキソース−4−ウロシル基の中の一つから選ばれることを特徴とする物質。
【請求項5】
請求項1の物質を含有することを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項5記載の組成物であって、前記物質を運搬する生理学的に受容可能な担体を更に含有することを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項1記載の物質を投与する工程からなることを特徴とする網膜色素上皮(RPE)細胞の活性を促進する方法。
【請求項8】
請求項1から4項のいずれか1項に記載の物質を網膜色素上皮(RPE)細胞に投与する工程からなることを特徴とする網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速する方法。
【請求項9】
網膜色素上皮(RPE)細胞関連疾患の治療及び/又は予防のための治療薬の調整物のために、請求項1〜4項いずれか1項に記載の物質の用途。
【請求項10】
前記生理活性を有する組成物は変性に対して薬理活性を有し、前記網膜色素上皮(RPE)細胞関連疾患は網膜色素上皮細胞退化、老人性黄斑変性、光受容体退化、糖尿病、動脈硬化、血管損傷、網膜神経細胞変性、無軸索細胞変性、視神経節細胞変性、ミュラー(粘質)細胞変性、葡萄膜炎、網膜血管新生、増殖性視網膜変性、網膜炎及びブルーフ(Bruch‘s)膜変性及びこれら合併症の中から少なくとも一つ選ばれることを特徴とする請求項9記載の用途。
【請求項1】
式1の構造を有する物質:
式中、R1とR2は同一又は異なる単糖成分の一つである。
【請求項2】
請求項1の物質であって、式中、R1とR2はそれぞれα−アラビノース、β−アラビノース及びβ−キシロースの中の一つから選ばれることを特徴とする物質。
【請求項3】
請求項1の物質であって、式中、該物質はアピゼニン6,8−ジ−C−α−L−アラビノピラノシド,アピゼニン6−C−β−D−キシロピラノシル−8−C−α−L−アラビノピラノシド,アピゼニン6−C−α−L−アラビノピラノシル−8−C−β−D−キシロピラノシド及びその混合物から選ばれることを特徴とする物質。
【請求項4】
請求項1の物質であって、式中、R1とR2は同一又は異なる官能基であり、それぞれC−β−D−グルコピラノシル基,C−β−D−ガラクトピラノシル基,C−β−D−キシロピラノシル基,C−β−D−アラビノピラノシル基,C−α−L−アラビノピラノシル基,C−α−L−ラムノピラノシル基及びC−6−デオキシ−キシロ−ヘキソース−4−ウロシル基の中の一つから選ばれることを特徴とする物質。
【請求項5】
請求項1の物質を含有することを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項5記載の組成物であって、前記物質を運搬する生理学的に受容可能な担体を更に含有することを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項1記載の物質を投与する工程からなることを特徴とする網膜色素上皮(RPE)細胞の活性を促進する方法。
【請求項8】
請求項1から4項のいずれか1項に記載の物質を網膜色素上皮(RPE)細胞に投与する工程からなることを特徴とする網膜色素上皮(RPE)細胞の食作用を加速する方法。
【請求項9】
網膜色素上皮(RPE)細胞関連疾患の治療及び/又は予防のための治療薬の調整物のために、請求項1〜4項いずれか1項に記載の物質の用途。
【請求項10】
前記生理活性を有する組成物は変性に対して薬理活性を有し、前記網膜色素上皮(RPE)細胞関連疾患は網膜色素上皮細胞退化、老人性黄斑変性、光受容体退化、糖尿病、動脈硬化、血管損傷、網膜神経細胞変性、無軸索細胞変性、視神経節細胞変性、ミュラー(粘質)細胞変性、葡萄膜炎、網膜血管新生、増殖性視網膜変性、網膜炎及びブルーフ(Bruch‘s)膜変性及びこれら合併症の中から少なくとも一つ選ばれることを特徴とする請求項9記載の用途。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−150153(P2010−150153A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−327514(P2008−327514)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(504004463)國立陽明大學 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327514(P2008−327514)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(504004463)國立陽明大學 (4)
【Fターム(参考)】
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