説明

データ処理装置、画像表示装置および撮像装置

【課題】 多くの手間や時間を要することなく、投射される画像の画質低下を抑制可能なデータ処理装置、画像表示装置および撮像装置を提供する 。
【解決手段】 データ処理装置200は、画像表示装置51によってスクリーン53上に投射表示される飛び飛びの階調のテストパターンの画像を、撮像装置52を介して順次入力する。データ処理装置200は、スクリーン53中の点e、f、g、hの部分の画像のデータのみをサンプリングし、サンプリング結果より点e、f、g、hにおける全階調に対応する階調補正値を補間演算により算出する。続いてデータ処理装置200は、点e、f、g、hの階調補正値に基づき、補間演算によって点e、f、g、h以外の部分の階調補正値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、データ処理装置、画像表示装置および撮像装置に関し、さらに詳しくは比較的粗いサンプリング間隔でサンプリングされたデータに基づき、補間によって比較的細かいサンプリング間隔に対応する補正データを生成し、入力されるデータを上記補正データに基づいて補正するデータ処理装置、画像表示装置および撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】輝度むらを補正可能な投写型画像表示装置(以下、本明細書中では投写型画像表示装置を単に「表示装置」と称する)として、特開平8−第223519号公報に開示されるものがある。この表示装置では、投射スクリーン上に表示される画像を撮像カメラにより撮影する。このとき、画面を碁盤の目状の複数の領域に分割して撮影し、投射スクリーン上の輝度を各領域ごとに求める。続いて、求められた各領域ごとの輝度に基づいて、各領域に対応する輝度補正値を求める。表示装置にはメモリが設けられており、投射スクリーンの分割領域のそれぞれに対応する輝度補正値が上記メモリに記録される。
【0003】上記表示装置で投射表示を行う場合、この表示装置に入力される入力映像信号に同期させて、投射スクリーンの上記分割領域に対応するアドレス値をアドレスカウンタで設定する。このアドレス値に対応してメモリから輝度補正値が順次読み出される。読み出された輝度補正値をD/A変換回路でアナログ値に変換することによりアナログ補正値を得て、このアナログ補正値と入力映像信号とを演算処理することにより、投射スクリーン上での輝度むらを補正する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】たとえば、3管式あるいは3板式の電子カメラや投写型表示装置に代表されるような、ダイクロイックミラーを用いる装置では、ダイクロイックミラーに入射する光の入射角度によって分光特性が変化する。この、入射角度の違いによって分光特性が変化する現象により、シェーディングを生じる。このシェーディングにより、投射される画面上で輝度むらを生じる。入射角度の違いにより生じる上記分光特性の変化が、各色光ごとに異なっていると、投射される画面上の場所場所に応じてカラーバランスが変化して色むらを生じる。色むらを生じると、たとえば無彩色の画像信号が入力されているにもかかわらず、画面上の場所に応じて色付きを生じる。この色むらの補正を、先に説明したようにアナログ的に行おうとすると、補正回路を構成する部品自体の特性のばらつきや製品性能のばらつきにより、補正しきれない場合がある。
【0005】これに対して、上述した色むらや輝度むらの補正をディジタル的に補正することが考えられる。この場合、先に説明したような方法により、投射した画面を碁盤の目状の複数の領域に分割して撮影し、投射スクリーン上の輝度を各領域ごとに求め、各領域ごとに輝度補正値を求める方法が適用できる。そして、上述したアナログ補正に代えて、先述したメモリから読み出される補正値を用いて入力映像信号をディジタル補正する。
【0006】しかし、投射した画面を碁盤の目状の複数の領域に分割して撮影する際の分割数が少ないと、ある分割領域内に対応する入力映像信号は同じ補正値を用いて補正されるので、補正がきめ細かく行われない。つまり、投射される画面を構成する画素の一つ一つに着目すると、補正しきれずに残る誤差、すなわち残存誤差が存在する。この残存誤差は、隣接する分割領域の境界を隔てて急に変化することもある。すると、残存誤差の急な変化によって、補正されずに残る輝度むらや色むらも上記境界を隔てて急に変化するので、投射される画像の画質を低下させる要因となっていた。
【0007】上述のような、分割された領域間で生じる輝度むらや色むらの急な変化を抑制するには、表示される画像の画素ごとに補正をすることも考えられる。しかし、このようにすると、補正値を得るのに多くの手間と時間を要するとともに、補正値を記憶するのに必要なメモリ空間も莫大なものになるという問題点を有する。
【0008】本発明の目的は、多くの手間や時間を要することなく、なおかつ補正値を記憶するのに必要なメモリ容量も少なくて済み、投射される画像の画質低下を抑制可能なデータ処理装置、画像表示装置および撮像装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】一実施の形態を示す図1R>1、図2に対応付けて以下の発明を説明する。
(1) 請求項1に記載の発明に係るデータ処理装置は、第1の標本化間隔で標本化されたデータ中から、第1の標本化間隔よりも大きな第2の標本化間隔でサンプルデータを抽出するサンプルデータ抽出手段84と;サンプルデータから、補間処理によって第1の標本化間隔よりも大きく、かつ第2の標本化間隔よりも小さな第3の標本化間隔を有する補正データを生成する補正データ生成手段84と;補正データに基づいて補正前データを補正し、補正後データを生成する補正手段77、78および79とを有することにより上述した目的を達成する。
(2) 請求項2に記載の発明に係るデータ処理装置は、補正データを、補正前データの値に対する補正後データの値の関係を定義するルックアップテーブルに記憶されるものである。
(3) 請求項3に記載の発明は、入力されるデータに基づく画像を表示する画像表示装置に適用される。そして、請求項1または2に記載のデータ処理装置と;補正手段77、78および79により生成される補正後データに基づいて画像を表示するための表示信号を出力する表示信号出力手段80とを有するものである。
(4) 請求項4に記載の発明は、撮影レンズにより形成される被写体像を光電変換して画像信号を出力する光電変換装置を有する撮像装置に適用される。そして、請求項1または2に記載のデータ処理装置を有し;補正手段77、78および79は、光電変換装置から出力される画像信号に基づいて生成される画像データである補正前データを補正して補正後データを生成するものである。
(5) 請求項5に記載の発明に係る画像表示装置は、予め定められた複数種類のテストパターン画像を表示するためのテストパターンデータを生成するテストパターン生成手段82と;テストパターンデータに基づく表示画像の少なくとも一部を入力して画像データを出力する表示画像モニタ手段52とをさらに有し;サンプルデータ抽出手段84は、表示画像モニタ手段52から出力される画像データよりサンプルデータを抽出するものである。
(6) 請求項6に記載の発明に係る画像表示装置は、画像の表示階調数をMとしたときに、テストパターン生成手段82で生成されるテストパターンの種類数はM未満としたものである。
(7) 請求項7に記載の発明に係る画像表示装置は、補正データ生成手段84が、表示される画像に生じるシェーディングおよび色むらのうちの少なくともいずれかを抑制するように補正データを生成するものである。
(8) 請求項8に記載の発明に係る画像表示装置は、表示画像モニタ手段52が、画像表示装置51と一体に、または画像表示用のスクリーン53と一体に設けられるものである。
(9) 請求項9に記載の発明に係る画像表示装置は、M未満の数のテストパターンにより得られた結果より、テストパターン生成手段82で生成されないテストパターンに対応する補正信号を補間して求めるものである。
(10) 請求項10に記載の発明に係る撮像装置は、請求項1または2に記載のデータ処理装置と、複数種類のテストパターンデータに基づく画像の少なくとも一部を撮像して画像データを出力する光電変換手段52とを有し;サンプルデータ抽出手段84は、光電変換手段52から出力される画像データよりサンプルデータを抽出するものである。
(11) 請求項11に記載の発明に係る撮像装置は、画像表示階調数をMとしたときに、テストパターンの種類数をM未満としたものである。
(12) 請求項12に記載の発明に係る撮像装置は、M未満の数のテストパターンにより得られた結果より、撮像されないテストパターンに対応する補正信号を補間して求めるものである。
(13) 請求項13に記載の発明に係るデータ処理装置は、画像信号を第1の標本化間隔で標本化したデータ中から、第1の標本化間隔よりも大きな第2の標本化間隔でサンプルデータを抽出するサンプルデータ抽出手段84と;サンプルデータから、補間処理によって第1の標本化間隔よりも大きく、かつ第2の標本化間隔よりも小さな第3の標本化間隔を有する補正データを生成する補正データ生成手段84と;補正データに基づいて画像信号を補正し、補正された画像信号を生成する補正手段77、78および79とを有するものである。
(14) 請求項14に記載の発明に係る画像表示装置は、画像信号を第1の標本化間隔で標本化したデータ中から、第1の標本化間隔よりも大きな第2の標本化間隔でサンプルデータを抽出するサンプルデータ抽出手段84と;サンプルデータから、補間処理によって第1の標本化間隔よりも大きく、かつ第2の標本化間隔よりも小さな第3の標本化間隔を有する補正データを生成する補正データ生成手段84と;補正データに基づいて画像信号を補正し、補正された画像信号を出力する補正手段77、78および79と;補正手段84で補正され、出力される画像信号に基づいて、画像を表示する表示手段80とを有するものである。
(15) 請求項15に記載の発明係る撮像装置は、被写体像を光電変換して画像信号を出力する光電変換手段52と、画像信号を第1の標本化間隔で標本化したデータ中から、第1の標本化間隔よりも大きな第2の標本化間隔でサンプルデータを抽出するサンプルデータ抽出手段84と;サンプルデータから、補間処理によって第1の標本化間隔よりも大きく、かつ第2の標本化間隔よりも小さな第3の標本化間隔を有する補正データを生成する補正データ生成手段84と;補正データに基づいて画像信号を補正し、補正された画像信号を生成する補正手段77、78および79とを有するものである。
(16) 請求項16に記載の発明に係る撮像装置は、複数種類のテストパターンに基づく画像の少なくとも一部を撮像して画像信号を出力する光電変換手段52と;画像信号を第1の標本化間隔で標本化したデータ中から、第1の標本化間隔よりも大きな第2の標本化間隔でサンプルデータを抽出するサンプルデータ抽出手段84と;サンプルデータから、補間処理によって第1の標本化間隔よりも大きく、かつ第2の標本化間隔よりも小さな第3の標本化間隔を有する補正データを生成する補正データ生成手段84と;補正データに基づいて画像信号を補正し、補正された画像信号を生成する補正手段とを77、78および79有するものである。
【0010】なお、本発明の構成を説明する上記課題を解決するための手段の項では、本発明を分かり易くするために発明の実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の形態に係るデータ処理装置を備える画像表示装置の概略的構成を示す図である。画像表示装置51は、撮像装置52とデータ処理装置200とを備える。画像表示装置51は、たとえば投写型液晶プロジェクタであり、外部機器から入力される映像信号に基づく画像を生成する液晶ライトバルブ、液晶ライトバルブで生成された画像を照明する光源、そして光源で照明された画像をスクリーン53上に投射する投射レンズなどを備えて構成される。画像表示装置51は、スクリーン53に表示されている画像を入力(撮像)するための撮像装置52と、撮像装置52から出力される画像信号を処理するためのデータ処理装置200とをさらに備える。これらの撮像装置52およびデータ処理装置200は、画像表示装置51に一体に組み込まれている。
【0012】撮像装置52およびデータ処理装置200には、画像表示装置51本体の電源部より電力が供給される構成となっている。画像表示装置51には、不図示のキャリブレーション動作設定スイッチが設けられている。このスイッチを操作者が操作してキャリブレーションモードに設定することにより、撮像装置52およびデータ処理装置200に電力が供給される。一方、通常の使用状態、すなわち外部機器から入力される映像信号に基づく画像をスクリーン53に投射する状態では、撮像装置52およびデータ処理装置200には電力が供給されない。したがって、無駄な電力の消費が抑制される。なお、スクリーン53上で×印で示される4つの点e、f、gおよびhについては後で説明する。
【0013】図2は、画像表示装置51の内部構成を概略的に示すブロック図である。端子71、72および73には、それぞれスクリーン53の画像を表示するためのアナログのR、G、B画像信号が入力され、A/Dコンバータ74、75および76でディジタル画像信号に変換される。A/Dコンバータ74、75および76によるA/D変換のタイミングは、アドレス供給回路87から出力されるタイミング信号によって制御される。
【0014】アドレス供給回路87は、端子85に入力される水平同期信号および端子86に入力される垂直同期信号から上述したA/D変換のタイミング信号とアドレス信号とを生成する。アドレス供給回路87で生成されたアドレス信号は、ルックアップテーブル(以下、本明細書中ではルックアップテーブルを「LUT」と称する)77、78および79に入力される。
【0015】アドレス供給回路87の内部構成を概略的に示す図3を参照し、アドレス供給回路87についてさらに詳しく説明する。端子85から入力される水平同期信号は、位相比較器91に入力される。位相比較器91の他入力には、後述する水平カウンタ93のTC端子から出力される信号が入力される。位相比較器91に入力される二つの信号の位相差に応じたアナログ電圧信号が位相比較器91からVCO92に入力される。
【0016】VCO92は、位相比較器91からの入力電圧に応じた周波数のパルス信号を出力する。VCO92から出力されるパルス信号は、A/Dコンバータ74、75および76と、水平カウンタ93のクロック端子(CK)とに入力される。水平カウンタ93は、N進カウンタであり、クロック端子からN個のパルスが入力されるとターミナルカウント端子(TC)から一つのパルスが出力される。ターミナルカウント端子から出力される信号は位相比較器91に入力され、上述したように端子85より入力される水平同期信号と位相比較される。
【0017】水平カウンタ93は、VCO92から出力されるパルス信号の数をカウントし、出力端子(Qn)よりカウント値を出力する。このカウント値は、Nに達するとリセットされる。水平カウンタ93から出力される信号はパラレル信号であり、このパラレル信号がLUT77、78および79に入力される水平アドレス信号となる。上記Nは、画像表示装置51の水平方向の表示解像度に応じて設定されるものであり、画像表示装置51の仕様に応じて固定してもよいし、この画像表示装置51がいわゆるマルチスキャンタイプのものであるならば、入力される映像信号に応じて自動あるいは手動で設定変更可能としてもよい。
【0018】ターミナルカウント端子(TC)から出力されるパルス信号はまた、垂直カウンタ94のクロック端子(CK)に入力される。端子86から入力される垂直同期信号は、垂直カウンタ94のリセット端子(RST)に入力される。垂直カウンタ94は、水平カウンタ93から入力されるパルス信号の数をカウントし、出力端子(Qn)よりカウント値を出力する。このカウント値は、リセット端子に垂直同期信号が入力されるとリセットされる。垂直カウンタ94の出力信号も水平カウンタ93の出力信号と同様、パラレル信号であり、LUT77、78および79に入力される垂直アドレス信号となる。
【0019】再び図2を参照して、画像表示装置51の内部構成を説明する。LUT77、78および79の出力は、それぞれスイッチ81の端子Aに接続される。スイッチ81の端子Bにはテストパターン発生回路82の出力が接続される。スイッチ81が端子Aに接続されている場合には、LUT77、78および79から出力される画像データがLCDドライバ80に入力される。LCDドライバ80は、入力される画像データに基づいて不図示の液晶ライトバルブ等に駆動信号を出力する。なお、テストパターン発生回路82の詳細については後で説明する。
【0020】データ処理装置200は、CPU84およびワーキングメモリ83などから構成される。CPU84は、後で詳しく説明するキャリブレーション動作時に、テストパターン発生回路82に対してテストパターン生成指令信号を発し、スイッチ81を端子Bに切り換える。すると、スクリーン53(図1)に所定のテストパターンが投射表示される。撮像装置52はこのとき、スクリーン53上に投射されている画像を入力、すなわち撮影し、画像信号をワーキングメモリ83に出力する。CPU84は、ワーキングメモリ83に記憶されている上記画像信号を後述するように処理し、シェーディングおよび色むらのうちの少なくともいずれかを補正するための補正値を算出してLUT77、78および79に出力する。LUT77、78および79はこれらの補正値を記憶する。
【0021】以上に説明したように構成される画像表示装置51において、この画像表示装置51が有するデータ処理装置200により行われるキャリブレーション動作と、画像表示装置51により行われる画像表示動作とについて順次説明する。なお、以下では説明を簡略化するため、画像表示装置51の表示解像度は水平方向、垂直方向とも各6画素であるものとする。また、R、G、B各色の階調は3ビット、すなわち0(最も暗い)〜7(最も明るい)の8階調であるものとするが、本発明がこれらの値に限定されるものではない。
【0022】− キャリブレーション動作 −図4は、データ処理装置200に組み込まれるCPU84により実行されるキャリブレーション手順を説明するフローチャートである。以下、図1〜図7を参照してCPU84により実行されるキャリブレーション手順について説明する。
【0023】ステップS101においてCPU84は、スイッチ81を端子Bに切り換える。なお、このスイッチ81の切換に関してはCPU84が自動的に行うのに代えて操作者が手動で切り換えるものであってもよい。
【0024】ステップS102においてCPU84は、テストパターン発生回路82にテストパターン生成指令信号を発する。テストパターン発生回路82は、CPU84から出力される指令信号に応答して以下に説明するテストパターンを生成する。すると、スクリーン53上に所定のテストパターンが表示される。
【0025】本実施の形態において、スクリーン53上に投射されるテストパターンは、R、G、Bが同じ階調値であるニュートラルグレイの一様なパターンである。このとき、階調値が0、4、7と変えられるのに応じてスクリーン53上に投射されるテストパターンは黒、グレイ、白と変化する。ただし、ここでスクリーン53上に投射される画像は、何の補正も施されていない。このため、R、G、B各色の液晶ライトバルブのγ特性(入力信号に対する表示画像の濃度の特性)のばらつきや、シェーディング等の影響を受ける。その結果、本来中間色を有する均一なパターンがスクリーン53に表示されるべきところ、スクリーン53上の場所によって輝度むらを生じたり、色付き(色むら)を生じたりする。
【0026】スクリーン53上に投射表示されるテストパターンの画像は、撮像装置52により入力され、この撮像装置52から画像データが出力される。CPU84は、スクリーン53に表示されるテストパターンの種類、すなわちニュートラルグレイのパターンの階調を0、4、7と変えては撮像装置52から出力される画像データをワークメモリ83に取り込む動作を所定回数(本実施の形態においては3回)繰り返す。以下、本実施の形態の説明中では、スクリーン53に表示されるテストパターンの画像を、撮像装置52によって入力することを「サンプリング」あるいは「サンプルする」と表現し、サンプリングしてワークメモリ83に記憶される画像データを「サンプルデータ」と称する。
【0027】なお、撮像装置52の入出力特性は、厳密に調整されたものであるか、あるいはその特性が厳密に測定されているものを用いることが望ましい。なぜならば、撮像装置52で入力されたスクリーン53の表示画像に基づいて画像表示装置51のシェーディングや色むらなどを補正するからである。もし、撮像装置52の入出力特性が管理されていないと、補正結果は撮像装置52の入出力特性の影響を受け、望ましい補正結果が得られない。
【0028】ステップS103においてCPU84は、ワーキングメモリ83に記憶されているサンプルデータから階調補正値算出用の補正式を算出する。この、補正式を算出する際のサンプルデータについて図5(a)を参照し、以下に説明する。
【0029】図5(a)は、スクリーン53上に投射表示される画像の有効表示領域の部分を縦横それぞれ6分割し、各領域ごとに番号を付したものを示している。本実施の形態において画像表示装置51は縦横それぞれ6画素、計36画素の表示解像度を有しているので、1〜36の番号の付された領域のそれぞれが一つの表示画素に対応する。CPU84がステップS103で補正式を算出するときには、図5(a)の領域8、11、26および29のサンプルデータが用いられる。この領域8、11、26および29は、図1に示されるスクリーン53上の点e、f、g、およびhに対応している。
【0030】ここで、領域8のサンプルデータが以下の表1に示されるとおりであったと仮定する。
【表1】


【0031】表1のサンプルデータでは、R、G、B3色のうちのGのデータはテストパターンの階調値と同じ値となっている。つまり、テストパターンの階調値をDt、サンプルデータの階調値をDsとすると、Ds=Dtとなっているので階調補正値算出用の方程式を求めることは不要である。一方、R色およびB色についてはそれぞれ図6(a)、図6(b)のグラフで示されるように実測値と理想値とが乖離している状態となっている。
【0032】図6(a)、図6(b)を参照してサンプルデータからR色およびB色の階調補正値算出用の方程式を求める手順について説明する。
【0033】図6(a)のグラフより、領域8における画像表示装置51のR色の投射表示特性は、入力値0に対しての0レベルで、入力値4に対して3のレベルで、そして入力値7に対して6のレベルで投射表示されていることがわかる。逆に表現すると、投射表示される画像の輝度レベルを3にするために入力値は4とすればよいことがわかる。すなわち、0〜3の入力値に対する補正値は、図6(a)の直線aより求め、3〜7の入力値に対する補正値は図6(a)の直線bより求めればよい。このとき、図6(a)のグラフにおける縦軸(サンプルデータの階調値)を入力(補正前)データの階調値Diと、横軸(テストパターンの階調値)を出力(補正後)データDoと置き換え、方程式Do=f(Di)を求めればよい。すると、図6(a)における直線aの方程式は、Do=4/3Di … 式(1)
となり、直線bの方程式は、Do=Di+1 … 式(2)
となる。
【0034】図6(b)のグラフからも、上述したのと同様にして、0〜4の入力値Diに対する補正値Doは図6(b)の直線aから求め、4〜7の入力値Diに対する補正値Doは図6(b)の直線bから求めればよい。そして、図6(b)の直線aの方程式は、Do=4/3Di−4/3 … 式(3)
となり、直線bの方程式は、Do=3/2Di−2 … 式(4)
となる。CPU84は、以上に説明したアルゴリズムに従ってステップS103の処理を行う。以上では領域8のサンプルデータに基づく処理を例にとって説明をしたが、CPU84は領域11、26および29のサンプルデータに基づく処理も同様に行う。以上のようにしてCPU84は、領域8、11、26および29のサンプルデータに基づいてR、G、B各色の階調補正値算出用の方程式をステップS103で求める。
【0035】ステップS104においてCPU84は、ステップS103で求められた式を用いて階調補正値を算出する。CPU84による補正値算出結果の一例を以下の表2に示す。
【表2】


【0036】上記表2は、領域8の階調補正値のみを示す。この表2において、R色の入力値Di(補正前データ)が7のとき、式(2)で算出される補正値Doは8となる。しかし、階調値は0〜7までしか存在し得ないので、このような場合には補正値Doを7とする。
【0037】同様に、B色の入力値Diが0のとき、式(3)で算出される補正値Doは−4/3となるが、上述したのと同様の理由により補正値Doを0とする。B色の入力値Diが7のときの補正値Doも同様にして7とする。また、表2は式(1)〜式(4)において計算された結果の小数点以下第1位を四捨五入したものを示している。なお、ここでは、ステップS103、S104において、サンプルデータ以外の補正値の算出を1次(線形)補間して求める構成としたが、本発明は上記の例に限定されるものではない。
【0038】CPU84によるステップS101〜ステップS104の処理により、領域8、11、26および29におけるR、G、B各色の階調補正値が求められる。ところで、上記階調補正値算出手順を、領域1〜36、すなわち表示画素のすべてに対応して繰り返し行うこともできるが、階調補正値の算出に多くの時間を要する。本実施の形態において、画像表示装置51の表示解像度は36画素であるので、時間を要する程度はたかが知れている。しかし、この表示解像度がSVGA(800×600画素)、XGA(1024×768画素)、さらには1280×1024画素、1600×1200画素と増すにつれて、サンプリングに要する時間もサンプルデータを記憶するメモリ容量も、補正式の算出に要する時間も飛躍的に増す。
【0039】本実施の形態では、領域8の階調補正値を領域1、2、7および8の階調補正値として共用する。同様に、領域11の階調補正値を領域5、6、11および12の、領域26の階調補正値を領域25、26、31および32の、そして領域29の階調補正値を領域29、30、35および36の階調補正値としてそれぞれ共用する。上述のように、一つの領域の階調補正値を4つの領域の階調補正値として共用することにより、階調補正値を記憶するのに必要なメモリ容量を削減することができる。以下、図5(b)に示されるように、領域1、2、7および8で占められる領域を領域Aと定義し、残りの部分についても同様に領域B、C、…、H、Iと定義する。つまり、ステップS101〜ステップS104の処理により、領域A、C、GおよびIの階調補正値が求められたことになる。
【0040】ステップS105においてCPU84は、領域A、C、GおよびIのR、G、B各色および各階調の階調補正値を用いて、以下に説明するように領域B、D、E、FおよびHそれぞれに対応する階調補正値を補間演算によって求める。
【0041】たとえば、領域BにおけるR色の階調0に対応する階調補正値を求める場合、A、Cそれぞれの領域におけるR色の階調0の階調補正値を足して2で割る。同様に、領域BにおけるR色の階調1〜7、G色およびB色の階調0〜7についても領域AおよびCそれぞれの階調補正値を平均して求める。以上の平均値算出の処理により、領域BにおけるR、G、B各色各階調の階調補正値が算出される。
【0042】上述したのと同様の手順により、CPU84は領域AおよびGの階調補正値を各色各階調ごとに平均して領域Dの階調補正値を算出する。CPU84はさらに、領域CおよびIの階調補正値より領域Fの階調補正値を、領域GおよびIの階調補正値より領域Hの階調補正値を算出する。CPU84はまた、領域Eの階調補正値に関して、領域A、C、GおよびIの各色各階調の階調補正値をそれぞれ足して4で割ることにより求める。なお、上記の例では領域B、D〜F、Hの各色各階調の階調補正値を、領域A、C、G、Iの階調補正値より平均をとることにより求める方法について説明したが、たとえば、領域分割数が多くなった場合など、別の補間方法により求めても良い。
【0043】ステップS106においてCPU84は、ステップS103〜ステップS105の処理を経て算出された領域A〜Iの各色各階調の階調補正値をLUT77、78および79に転送する。このとき、LUT77には領域A〜IのR色各階調の、LUT78には領域A〜IのG色各階調の、そしてLUT79には領域A〜IのB色各階調の階調補正値が格納される。
【0044】ここで、アドレス供給回路87とLUT77〜79のそれぞれとの間に接続されるアドレスバスについて説明する。既に説明したとおり、LUT77〜79は、図5(a)の領域1〜36のすべてに対する階調補正値が格納されているのではなく、図5(b)の領域A〜Iに対応する階調補正値が格納されている。つまり、図5(a)における領域1、2、7および8に対しては図5(b)における領域Aの階調補正値が用いられる。具体的には、アドレス供給回路87から出力される水平、垂直両方向それぞれのアドレスバスのうちのLSBが省かれていて、バス幅が2ビット節約されている。このようにアドレスバスのLSBが省略されることにより、図5(a)の水平方向に000、001、…、100、101と2進数で記されているアドレスデータは図5R>5(b)の水平方向に00、01、10と記されるものとなる。本実施の形態では、上述のようにしてアドレスバス幅を2ビット省略できるのに加え、LUT77、78および79の記憶容量を、表示画素のすべてに対応する補正値を記憶するものに比べて1/4とすることができる。また、キャリブレーションに際して測定点を減じることができるのに加え、先述のとおり8階調のうちの3階調のみで測定を行うことでキャリブレーションに要する時間を大幅に減じることが可能となる。
【0045】たとえば、表示解像度が1,024×768(バス幅で表現すると水平方向10ビット×垂直方向10ビット)で、R、G、B各色の表示階調が256(バス幅で表現すると色数2ビット×階調8ビット)のものでは、表示画素のすべてに対応する補正値を記憶しようとすると30ビットものアドレスバス幅を要することになる。そして、キャリブレーション時の測定に要する時間も莫大なものとなってしまう。この点、本発明によればキャリブレーション時の測定に要する時間を大幅に減じるとともに、ハードウェア規模を縮小することが可能となる。
【0046】以上の実施の形態では、水平方向および垂直方向のそれぞれで2画素ずつ、計4画素分に相当する領域を一つの領域としてLUT77、78および79に記憶する例について説明したが、本発明は上記の例に限られない。たとえば水平方向垂直方向のそれぞれに対して3画素あるいはそれ以上の画素をひとまとめにしてもよい。また、水平垂直それぞれの方向にまとめる画素数は必ずしも等しくする必要はなく、たとえば水平方向に3画素、垂直方向に2画素をひとまとめにしたり、水平方向はひとまとめにせず、垂直方向にのみ4画素をひとまとめにしたりするものであってもよい。このとき、2の倍数の画素をひとまとめにする場合にはアドレス供給回路87とLUT77〜79およびワーキングメモリ83とLUT77〜79との間に接続されるアドレスバスをLSB側から順次省いてゆけばよい。また、ひとまとめする画素数が2の倍数でないときにはアドレス供給回路87とLUT77〜79との間およびワーキングメモリ83とLUT77〜79との間に、ひとまとめにする画素数に応じたエンコーダ等のロジック回路を介在させればLUT77、78および79に接続されるアドレスバスの本数を減じることができる。
【0047】ここで、シェーディングや色むら等の特性について説明する。これらの特性は、表示画面上の水平・垂直方向の位置に応じて変化する。この特性の変化を波として捕らえた場合、周波数という尺度で特性の変化の度合いを表すことができる。この場合、特性の変化は表示画面の空間内で生じるものなので、空間周波数という尺度で特性の変化の度合いを表すことができる。以下、本明細書中では、「シェーディングや色むら等の特性」を単に「表示むら特性」と称する。
【0048】一方、表示される画像は水平・垂直両方向にメッシュ状に分割された複数の画素で構成されている。つまり、表示される画像は2次元の平面上に配列される複数の画素で構成されている。そして画素一つ一つの色は、R、G、B3色それぞれの階調値の組み合わせで定義される。いわば、2次元の表示画面が上記画素の配列ピッチで定義される標本化間隔で標本化(量子化)されているといえる。
【0049】表示むら特性の変化を、上述した「画素の配列ピッチで定義される標本化間隔」という尺度で見たときに、表示むら特性の変化度合い(空間周波数)は、上記標本化間隔でサンプリングし得る空間周波数の最大値に比べて十分に低い。いま、表示対象となる画像データの標本化間隔を第1の標本化間隔と定義し、キャリブレーション時にサンプリングする際の標本化間隔を第2の標本化間隔と定義する。また、サンプリングした結果を補間して得られる補正値の標本化間隔を第3の標本化間隔と定義する。
【0050】もし、キャリブレーション時に要する時間や補正値を記憶するLUTの容量に制限がないのであれば、第2の標本化間隔を第1の標本化間隔と等しくすればよい。この場合、補間演算は不要となる。しかし、実際には表示される画素数が100万画素前後、あるいは100万画素を越すようになると、第2の標本化間隔を第1の標本化間隔と等しくしたのではキャリブレーションに要する時間とLUTの記憶容量は莫大なものとなる。したがって、本発明のように第1の標本化間隔を有するデータ中から第2の標本化間隔でサンプルデータを抽出し、補間によって第3の標本化間隔を有する補正データを生成することが、キャリブレーションに要する時間を短縮するのと、補正データを記憶するメモリの容量を減じる上で有効である。
【0051】第2の標本化間隔は、補正対象となる表示むらの有する最高空間周波数の2倍の値を超すサンプリング周波数(ナイキスト周波数)となるようにすることが望ましい。このように第2の標本化間隔を定めることにより、表示むら特性自体を一義的に標本化することができる。したがって、第2の標本化間隔でサンプリングした表示むら特性を補間処理し、得られた第3の標本化間隔を有する補正データによって補正対象のデータを補正することにより、残留誤差を最小限に抑制することができる。
【0052】第3の標本化間隔については、この間隔を大きくして第2の標本化間隔に近づけるほど補正データを記憶するためのLUT77、78および79の容量を減じることが可能となる。その反面、一つの補正データで補正する対象となるデータ(表示領域)が増すことになるので、補正データによって補正しきれずに残る残留誤差が増すことになる。つまり、第3の標本化間隔と、表示される画像の質とはトレードオフの関係にある。したがって、第3の標本化間隔は、表示する画像に求められる画質に応じて、第1の標本化間隔よりも大きく、第2の標本化間隔よりも小さい任意の値に定めればよい。
【0053】以上では、画像の画素配列方向の標本化間隔について説明したが、階調方向にも同様のことがいえる。たとえば、R、G、B各色の表示階調が256階調を有するものである場合、この256階調で定義される階調の間隔が上記第1の標本化間隔に対応する。そして、液晶ライトバルブのγ特性を標本化しうる標本化間隔を第2の標本化間隔と定め、表示する画像に求められる画質に応じて第3の標本化間隔を定めてもい。
【0054】以上の説明からも明らかなように、標本化間隔の「間隔」は、あるデータが分布している空間における文字通りの間隔のみならず、力やエネルギ等の、測定可能なあらゆる物理量の標本化間隔(量子化に際しての分解能に対応)をも含む。たとえば、ある電流信号があったとして、その電流信号をA/D変換する際の分解能が1mAであったとする。この場合の標本化間隔は1mAということになる。また、ある時間軸に沿って変化する信号があれば、その時間軸に沿う方向(標本化に際してのインターバルに対応)にも、「間隔」を適用できる。つまり、本実施の形態において、データ処理装置200は画像信号を処理するものであったが、他の信号(データ)を処理するものにも本発明は適用可能である。
【0055】CPU84による以上に説明した階調補正値の算出手順は、たとえば画像表示装置51の電源投入時毎に行われる。あるいは、工場出荷時等に行われるものであってもよい。工場出荷時に行われるものである場合、撮像装置52は画像表示装置51に必ずしも内蔵される必要はない。すなわち、画像表示装置51の組立ラインに設置されている撮像装置を組み立て途中の画像表示装置51に接続して上記階調補正値を算出すればよい。この場合、画像表示装置51とは独立した撮像装置をスクリーン53の投射面に略正対させるように設置しておけばよい。あるいはスクリーン53を磨りガラス状のもので構成し、このスクリーン53の裏面側に撮像装置52を設置しておき、キャリブレーション時にスクリーン53の裏面より投射像を撮影することも可能である。このとき、スクリーン53と撮像装置52とを一体に設置することでスクリーン53と撮像装置52との相対位置を固定することができる。
【0056】また、上述のように撮像装置52が画像表示装置51とは独立して設けられるものである場合、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ(不図示)にキャリブレーションにより求められた階調補正値を記憶させておくことが望ましい。そして、LUT77〜79はRAMで構成し、画像表示装置51の電源投入時に、フラッシュメモリからLUT77〜79のそれぞれに階調補正値を転送することが望ましい。なお、ワーキングメモリ83からLUT77〜79、あるいは不図示のフラッシュメモリからLUT77〜79への階調補正値の転送に際してはA/Dコンバータ74〜76それぞれの出力がディセイブル(Disable)される。同様に、画像表示装置51が画像を投射表示する際にはワーキングメモリ83がディセイブルされてLUT77〜79の入力に接続されるバスから切り離される。
【0057】− 画像の投射表示 −LUT77〜79のそれぞれには、以上に説明したように階調補正値が記憶され、画像表示装置51が投射表示を行う場合には入力される映像信号に対して以下のように階調補正がなされる。
【0058】画像表示装置51の投射表示動作に際し、端子71〜73のそれぞれには、スクリーン53に投射表示する画像のR、G、B各色のアナログ映像信号が入力され、端子85、86のそれぞれには水平同期信号および垂直同期信号が入力される。また、スイッチ81は端子Aに切り換えられる。
【0059】アドレス供給回路87からA/Dコンバータ74〜76のそれぞれにタイミング信号が供給されるのに応じて、ディジタルデータに変換された映像信号がLUT77〜79のそれぞれに供給される。このとき、アドレス供給回路87からLLUT77〜79のそれぞれには、A/Dコンバータ74〜76のそれぞれから出力されるディジタルの映像信号(階調データ)が、表示画面中のどの画素に対応するものかを示すアドレス信号が供給される。
【0060】LUT77〜79は、A/Dコンバータ74〜76から出力される階調データおよびアドレス供給回路87から出力されるアドレス信号に基づいて階調補正された映像信号(階調データ)をLCDドライバ80に出力する。LCDドライバ80が不図示の液晶ライトバルブ等の画像生成装置に駆動信号を出力するのに応じ、この画像生成装置で生成された画像がスクリーン53に投射表示される。
【0061】以上では、キャリブレーションに際してたとえば図5(a)の領域8の階調補正値を図5(b)の領域Aの階調補正値とする例について説明したが、領域A内の任意の1画素に対応する領域、すなわち図5(a)の例では領域1、2、7および8のうちのいずれかの階調補正値を領域Aの階調補正値とするものであってもよい。あるいは、ある特定の領域に含まれる複数の画素に対応する領域を測定して得られる複数の階調補正値に対して統計処理を施し、この統計処理結果をもって上記特定領域の階調補正値としてもよい。たとえば、図5R>5(a)、図5(b)を参照して説明すると、領域Aの階調補正値は領域1および8の階調補正値を平均、加重平均、あるいは相乗平均等をして求めてもよい。上述のように処理することにより、撮像装置52から出力される映像信号中のノイズ成分の影響を減じることができる。このノイズ成分をさらに低減するには、撮像装置52が、図7にその一例が示されるようなノイズリデューサの機能を有していることが望ましい。図7に示されるノイズリデューサは巡回型と呼ばれ、入力される映像信号に対してフレーム単位である係数が乗じられ、加算されて出力されるものである。なお、このノイズリデューサは、電気回路で構成されるものであってもよいし、ソフトウェア処理により図7に示すものと同等の機能を実現するものであってもよい。
【0062】また、階調方向の補間(図4のステップS103〜ステップS104の処理)および表示画素の配列方向の補間(図4のステップS105の処理)については、直線補間のみならず、多項式近似等を用いて非線形の補間をするものであってもよい。
【0063】図4に示されるフローチャートでは、ステップS103、S104においてまず階調方向に補間を行い、続いてステップS105において画素の並び方向に補間を行って階調補正値を算出する手順が示されている。これに対して、まず画素の並び方向に補間を行い、続いて階調方向に補間を行って階調補正値を算出することも可能である。
【0064】以上の実施の形態の説明では、画像表示装置51が投射表示を行う際、A/Dコンバータ74、75および76から出力されるデータがLUT77、78および79により補正される例について説明した。これに代えて、情報処理装置200のCPU84、あるいは別に設けられるハードロジックやCPU等により、LUT77、78および79の機能を代行するものであってもよい。つまり、第2の標本化間隔でサンプリングした表示むら特性を、上記CPU84、あるいは別設のハードロジックやCPUが補間処理し、第3の標本化間隔を有する、補正を施すためのデータを生成し、A/Dコンバータ74、75および76から出力されるデータに対して補正をする動作をリアルタイムで行うこともできる。
【0065】以上の実施の形態の説明では、撮像装置52としていわゆるカラーの撮像装置を用い、スクリーン53にニュートラルグレイのテストパターンを投射表示する例について説明した。上記例では、一つのテストパターンを投射すれば、R、G、B3色のサンプルデータがほぼ同時に得られるのでサンプリングを高速に行うことができるという利点を有する。これに代えて、サンプリングに要する時間が多少増加するものの、撮像装置52をモノクロの撮像装置とすることも可能である。この場合、テストパターンはニュートラルグレイのものでなく、R、G、B単色のテストパターンを時系列的に切り換えて表示し、その都度サンプリングをすればよい。
【0066】以上の実施の形態の説明では、投写型の画像表示装置に本発明を適用する例について説明したが、本発明はその他の表示装置や撮像装置等に適用することもできる。たとえば、撮像装置に本発明を適用する場合について説明する。撮像装置は、装着される撮影レンズにより形成される被写体像を光電変換して画像信号を出力する光電変換装置を有する。光電変換装置の後段に接続される画像処理回路は、光電変換装置から出力される画像信号に対して予め定められた処理を行ってからA/D変換し、画像データを生成する。
【0067】このように構成される撮像装置から出力される画像データに基づく画像がディスプレイモニタ等に表示される。そして、ディスプレイモニタ上に表示されている画像を、別の撮像装置や光電変換装置等を用いてサンプリングし、撮像装置の出力信号に補正を加えるためのデータを生成する。このとき、ディスプレイモニタの表示特性や、ディスプレイモニタに表示される画像をサンプリングするための撮像装置は厳密に較正されたものであるか、あるいはその特性が既知であるものを用いることが望ましい。また、テストパターンとしては表示装置等に表示されるものを用いてもよいし、所定のテストパターンが描かれているテストチャートを用いてもよい。また、上記サンプリングに際し、ディスプレイモニタへ表示することはせずに、撮像装置から出力される画像データを直接データ処理装置に入力してサンプリングし、補正データを生成するものであってもよい。
【0068】以上に説明した撮像装置を有する機器としては、ディジタルスチルカメラやビデオカメラなどがある。これらのディジタルスチルカメラやビデオカメラは、画像データを磁気テープやフラッシュメモリ等の記憶装置に記録するための記録部をさらに有する。
【0069】以上の発明の実施の形態と請求項との対応において、CPU84がサンプルデータ抽出手段、補正データ生成手段を、LUT77、78および79が補正手段を、LCDドライバ80が表示信号出力手段を、テストパターン発生回路82がテストパターン生成手段を、撮像装置52が表示画像モニタ手段をそれぞれ構成する。
【0070】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれば以下の効果を奏する。
(1) 請求項1または13に記載の発明によれば、第1の標本化間隔で標本化されたデータ中から、第1の標本化間隔よりも大きな第2の標本化間隔でサンプルデータを抽出し、このサンプルデータから、補間処理によって第1の標本化間隔よりも大きく、第2の標本化間隔よりも小さな第3の標本化間隔を有する補正データを生成し、この補正データに基づいて補正前データを補正することにより、サンプルデータの抽出に要する時間を短縮できるのに加え、補正データの記憶に必要なメモリ空間を最小限にすることができる。
(2) 請求項2に記載の発明によれば、補正データをルックアップテーブルとした場合には従来よりも少ない容量のメモリ素子で構成できる。
(3) 請求項3に記載の発明によれば、画像表示装置の較正に要する時間を短縮できるので操作性に優れる。また、補正データを記憶するためのメモリ空間を最小限にすることができるので、画像表示装置の製造コストを抑制することが可能となる。
(4) 請求項4、10、15または16に記載の発明によれば、撮像装置の較正に要する時間を短縮できるので操作性に優れる。また、補正データを記憶するためのメモリ空間を最小限にすることができるので、撮像装置の製造コストを抑制することが可能となる。
(5) 請求項5に記載の発明によれば、画像表示装置単体で較正を行うことができるので、表示性能を常に高い状態に維持することが容易となる。
(6) 請求項6に記載の発明によれば、表示階調数未満の種類数のテストパターンを生成してサンプルデータを抽出することにより、サンプルデータの抽出に要する時間を減じることができ、較正に要する時間を減じることが可能となる。
(7) 請求項7に記載の発明によれば、表示される画像に生じるシェーディングおよび色むらのうちの少なくともいずれかを抑制でき、表示される画像の画質を向上させることができる。
(8) 請求項8に記載の発明によれば、表示画像モニタ手段が画像表示装置または画像表示用のスクリーンと一体に設けられることにより、画像表示装置の可搬性を向上させることができる。また、表示画像モニタ手段と画像表示装置または画像表示用のスクリーンとの間の相対位置が一定になるのでデータの補正精度が高まり、より鮮明な表示画像を得ることができる。
(9) 請求項9に記載の発明によれば、表示する画像の階調数未満の数のテストパターンにより得られた結果より、テストパターン生成手段で生成されないテストパターンに対応する補正信号を補間して求めることにより、搭載するメモリの容量やアドレスバスの幅が減じられる。
(10) 請求項14に記載の発明によれば、画像表示装置の較正に要する時間を短縮できるので操作性に優れる。また、補正データを記憶するためのメモリ空間を最小限にすることができるので、画像表示装置の製造コストを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の実施の形態に係るデータ処理装置を備える画像表示装置の概略的構成を示す図である。
【図2】 図2は、本発明の実施の形態に係るデータ処理装置を備える画像表示装置の内部構成の概略を説明するブロック図である。
【図3】 図3は、アドレス供給回路の内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】 図4は、データ処理装置に組み込まれるCPUにより実行されるキャリブレーション手順を説明するフローチャートである。
【図5】 図5は、階調補正値の算出手順を説明する図である。
【図6】 図6は、階調補正値算出用の方程式を求める手順を説明する図である。
【図7】 図7は、撮像装置に組み込まれるノイズリデューサの機能を概念的に示すブロック図である。
【符号の説明】
51 … 画像表示装置 52 … 撮像装置
53 … スクリーン 71、72、73 … 端子
74、75、76 … A/Dコンバータ 77、78、79 … LUT
80 … LCDドライバ
82 … テストパターン発生回路 84 … CPU
85、86 … 端子
87 … アドレス供給回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】第1の標本化間隔で標本化されたデータ中から、前記第1の標本化間隔よりも大きな第2の標本化間隔でサンプルデータを抽出するサンプルデータ抽出手段と、前記サンプルデータから、補間処理によって前記第1の標本化間隔よりも大きく、かつ前記第2の標本化間隔よりも小さな第3の標本化間隔を有する補正データを生成する補正データ生成手段と、前記補正データに基づいて補正前データを補正し、補正後データを生成する補正手段とを有することを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】請求項1に記載のデータ処理装置において、前記補正データは、前記補正前データの値に対する前記補正後データの値の関係を定義するルックアップテーブルに記憶されることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項3】入力されるデータに基づく画像を表示する画像表示装置であって、請求項1または2に記載のデータ処理装置と、前記補正手段により生成される前記補正後データに基づいて画像を表示するための表示信号を出力する表示信号出力手段とを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】撮影レンズにより形成される被写体像を光電変換して画像信号を出力する光電変換装置を有する撮像装置であって、請求項1または2に記載のデータ処理装置を有し、前記補正手段は、前記光電変換装置から出力される前記画像信号に基づいて生成される画像データである前記補正前データを補正して前記補正後データを生成することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】請求項3に記載の画像表示装置において、予め定められた複数種類のテストパターン画像を表示するためのテストパターンデータを生成するテストパターン生成手段と、前記テストパターンデータに基づく表示画像の少なくとも一部を入力して画像データを出力する表示画像モニタ手段とをさらに有し、前記サンプルデータ抽出手段は、前記表示画像モニタ手段から出力される画像データより前記サンプルデータを抽出することを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】請求項5に記載の画像表示装置において、前記画像の表示階調数をMとしたときに、前記テストパターン生成手段で生成されるテストパターンの種類数はM未満であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】請求項5または6に記載の画像表示装置において、前記補正データ生成手段は、表示される画像に生じるシェーディングおよび色むらのうちの少なくともいずれかを抑制するように前記補正データを生成することを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】請求項5〜7のいずれか1項に記載の画像表示装置において、前記表示画像モニタ手段は、前記画像表示装置と一体に、または画像表示用のスクリーンと一体に設けられることを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】請求項6に記載の画像表示装置において、前記M未満の数のテストパターンにより得られた結果より、前記テストパターン生成手段で生成されないテストパターンに対応する補正信号を補間して求めることを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】請求項1または2に記載のデータ処理装置と、複数種類のテストパターンデータに基づく画像の少なくとも一部を撮像して画像データを出力する光電変換手段とを有し、前記サンプルデータ抽出手段は、前記光電変換手段から出力される画像データより前記サンプルデータを抽出することを特徴とする撮像装置。
【請求項11】請求項10に記載の撮像装置において、前記画像表示階調数をMとしたときに、前記テストパターンの種類数はM未満であることを特徴とする撮像装置。
【請求項12】請求項11に記載の撮像装置において、前記M未満の数のテストパターンにより得られた結果より、撮像されないテストパターンに対応する補正信号を補間して求めることを特徴とする撮像装置。
【請求項13】画像信号を第1の標本化間隔で標本化したデータ中から、前記第1の標本化間隔よりも大きな第2の標本化間隔でサンプルデータを抽出するサンプルデータ抽出手段と、前記サンプルデータから、補間処理によって前記第1の標本化間隔よりも大きく、かつ前記第2の標本化間隔よりも小さな第3の標本化間隔を有する補正データを生成する補正データ生成手段と、前記補正データに基づいて前記画像信号を補正し、補正された画像信号を生成する補正手段とを有することを特徴とするデータ処理装置。
【請求項14】画像信号を第1の標本化間隔で標本化したデータ中から、前記第1の標本化間隔よりも大きな第2の標本化間隔でサンプルデータを抽出するサンプルデータ抽出手段と、前記サンプルデータから、補間処理によって前記第1の標本化間隔よりも大きく、かつ前記第2の標本化間隔よりも小さな第3の標本化間隔を有する補正データを生成する補正データ生成手段と、前記補正データに基づいて前記画像信号を補正し、補正された画像信号を出力する補正手段と、前記補正手段で補正され、出力される前記画像信号に基づいて、画像を表示する表示手段とを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項15】被写体像を光電変換して画像信号を出力する光電変換手段と、前記画像信号を第1の標本化間隔で標本化したデータ中から、前記第1の標本化間隔よりも大きな第2の標本化間隔でサンプルデータを抽出するサンプルデータ抽出手段と、前記サンプルデータから、補間処理によって前記第1の標本化間隔よりも大きく、かつ前記第2の標本化間隔よりも小さな第3の標本化間隔を有する補正データを生成する補正データ生成手段と、前記補正データに基づいて前記画像信号を補正し、補正された画像信号を生成する補正手段とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項16】複数種類のテストパターンに基づく画像の少なくとも一部を撮像して画像信号を出力する光電変換手段と、前記画像信号を第1の標本化間隔で標本化したデータ中から、前記第1の標本化間隔よりも大きな第2の標本化間隔でサンプルデータを抽出するサンプルデータ抽出手段と、前記サンプルデータから、補間処理によって前記第1の標本化間隔よりも大きく、かつ前記第2の標本化間隔よりも小さな第3の標本化間隔を有する補正データを生成する補正データ生成手段と、前記補正データに基づいて前記画像信号を補正し、補正された画像信号を生成する補正手段とを有することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2001−134252(P2001−134252A)
【公開日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−311781
【出願日】平成11年11月2日(1999.11.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】